平成16年7月12日判決言渡平成11年(ワ)第13320号損害賠償請求事件口頭弁論終結日平成16年5月17日判決東京都江戸川区ab-c-d原告 A東京都江戸川区中央1-4-1被告江戸川区上記代表者区長 B上記指定代理人 C同 D同 E 主文 1 被告は,原告に対し,金5万円を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は,これを6分し,その1を被告の負担とし,その余は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告は,原告に対し,金31万5650円を支払え。 第2 事案の概要本件は,被告の職員である原告が,被告に対し,被告が,原告を受動喫煙下に置かないように,職場を完全に禁煙にするか又は喫煙場所を区画して換気系統を別にする必要があったにもかかわらず,これを怠り,原告を受動喫煙下に置いて健康被害等を与えたとして,主位的には,安全配慮義務違反の債務不履行に基づき,予備的には,不法行為又は国家賠償法1条1項に基づき,医療費及び慰謝料の一部である31万5650円の損害賠償を求めた事案である。 1 前提となる事実(1) 原告は,平成7年4月1日,被告の職員として採用され,同日から平成8年3月31日まで,江戸川区役所都市開発部再開発課再開発第一係(以下,江戸川区役所都市開発部を「都市開発部」,都市 (1) 原告は,平成7年4月1日,被告の職員として採用され,同日から平成8年3月31日まで,江戸川区役所都市開発部再開発課再開発第一係(以下,江戸川区役所都市開発部を「都市開発部」,都市開発部再開発課を「再開発課」,再開発課再開発第一係を「再開発一係」という。)に配属され,同年4月1日から平成11年3月31日まで,江戸川保健所予防課業務係(以下,江戸川保健所を「保健所」,保健所予防課を「予防課」,予防課業務係を「業務係」という。)に配属され,その後も被告の職員として勤務している者である(当事者間に争いがない。)。 (2) 都市開発部のある江戸川区役所本庁舎北棟1階執務室(以下「北棟1階執務室」という。)は,平成7年4月当時,床面積が371.7平方メートルであり,北側,西側及び南側に窓があり,北棟に設置されている中央式空気調和機によって,毎時2160立方メートルの外気が処理されて室内に送風されると同時に,同量の空気が室外に排出されており,このほか,同室西側の窓1か所及び天井2か所にいずれも毎時360立方メートルの排気能力のある換気扇が3機,同室の天井に空気清浄機が3機,それぞれ設置されていた。 北棟1階執務室においては,当時,職員は自席で喫煙することを許されており,都市開発部の職員88名中37名,再開発一係についてみると,職員7名中4名が喫煙者であった(甲54(枝番を含む。以下同じ。),88,乙1,2,21,27から29まで)。また,同室においては,同年10月末ころ,窓5か所及び壁1か所にいずれも毎時720立方メートルの排気能力のある換気扇が6機増設され,増設された各換気扇の付近に喫煙場所が設置され,職員は喫煙場所で喫煙することとされた(甲33,37,52,88,114,乙19,20)。 (3) 予防課及び保健所衛生課 る換気扇が6機増設され,増設された各換気扇の付近に喫煙場所が設置され,職員は喫煙場所で喫煙することとされた(甲33,37,52,88,114,乙19,20)。 (3) 予防課及び保健所衛生課(以下「衛生課」という。)のある保健所2階事務室は,平成8年4月当時,床面積が205.8平方メートルであり,保健所全体について,中央式空気調和機によって,毎時2万0400立方メートルの外気が処理されて保健所内に送風されると同時に,同量の空気が所外に排出され,また,毎時3510立方メートルの排気能力のある排風機によって換気が行われており,このほか,保健所2階事務室東側隅の衛生課庶務係係長席の後ろ及び同室外のエレベーターホールに喫煙場所が設置され,室内の喫煙場所の上方の窓には毎時1140立方メートルの排気能力のある換気扇が1機,室外の喫煙場所の横には空気清浄機能の備わった空気調節装置(以下「エアハンドリングユニット」という。)が1機,それぞれ設置されていた。保健所2階事務室においては,当時,職員は喫煙場所で喫煙することとされており,原告の席は,室内の喫煙場所から約19メートル,室外の喫煙場所から約10メートル離れていた。保健所2階事務室の職員58名中15名,業務係についてみると,職員10名中2名が喫煙者であった(甲37,38,88,乙6,8)。 2 争点(1) 被告には,原告に対する安全配慮義務違反が認められるか。 (2) 原告には,上記の安全配慮義務違反による損害が認められるか。 3 争点に関する当事者の主張(1) 争点(1)についてア原告の主張(ア) 受動喫煙とは,他人の吸ったたばこの煙を吸わされることをいい,環境たばこ煙(以下「ETS」という。)とは,喫煙の行われている室内の空気にたばこ いてア原告の主張(ア) 受動喫煙とは,他人の吸ったたばこの煙を吸わされることをいい,環境たばこ煙(以下「ETS」という。)とは,喫煙の行われている室内の空気にたばこの煙が残留拡散している状態をいう。 日常生活で出会う受動喫煙は,ダイオキシン,自動車の排ガス,放射線,アスベストなどの環境汚染物質を規制する共通基準を5000倍も上回る危険因子である。日常生活で出会う受動喫煙によって発病することが確実な疾患として,心筋こうそく,肺がん,副鼻腔がん,急性肺炎,急性気管支炎,気管支ぜん息,慢性呼吸器症状,中耳炎,低体重出生及び乳幼児突然死症候群が,発病する可能性のある疾患として,脳こうそく,くも膜下出血,子宮頚がん,乳がん,成人の気管支ぜん息の悪化,呼吸機能低下,小児の全身麻酔トラブル,自然流産,知能低下,多動症及びペルテス病が,それぞれ指摘されており,これらは,米国環境保護庁(以下「EPA」という。)の平成4年の報告書「受動喫煙の呼吸器への健康影響:肺がん及び他の呼吸器疾患」(以下「EPA報告」という。),カリフォルニア州環境保護庁の平成9年の報告書草案「環境たばこ煙暴露のもたらす健康影響」(以下「CAL-EPA報告」という。),世界保健機関(以下「WHO」という。)の報告等各種の研究報告に裏付けられ,常識となっている。 (イ) 喫煙対策をめぐる社会情勢についてみると,WHOは,昭和61年段階で加盟国に職場の分煙化を勧告しており,我が国では,平成4年7月1日,労働安全衛生法71条の3に基づき,労働省告示59号「事業者が講ずべき快適な職場環境の形成のための措置に関する指針」(以下「労働省告示59号」という。)が出され,その空気環境の項において,「必要に応じ作業場内における喫煙場所を指 き,労働省告示59号「事業者が講ずべき快適な職場環境の形成のための措置に関する指針」(以下「労働省告示59号」という。)が出され,その空気環境の項において,「必要に応じ作業場内における喫煙場所を指定する等の喫煙対策を講ずること」が明記され,東日本旅客鉄道株式会社は,平成6年において,既に職場の禁煙化を認めており,その他,多くの日本を代表するような企業や公共交通機関も,平成7年当時において,禁煙化や分煙化を行っていた。人事院職員局が同年度に実施した「民間企業の勤務条件制度」によれば,従業員100人以上の企業の7割が喫煙対策を行っており,厚生省が同年3月に発表した「たばこ行動計画」及び平成8年3月に発表した「公共の場所における分煙のあり方検討会報告書」によれば,保健所は,その性格上,禁煙原則に立脚した対策をすべきであると指摘されていた。同年2月には,労働省が「職場における喫煙対策のためのガイドライン」(以下「労働省ガイドライン」という。)を発表し,同年6月には,国会において喫煙対策の推進を求めた原告の請願が採択され,その後,国会の会議場が禁煙となり,平成9年3月には,人事院が「公務職場における喫煙対策に関する指針作成検討会報告」(以下「人事院指針」という。)を発表した。 東京都についてみると,平成3年に竣工した東京都庁本庁舎においては,通称ニコチンルームと呼ばれる喫煙場所(廊下を隔てた別室にあり,換気も別系統となっているもの)が設置され,同所以外はすべて禁煙とされていた。平成4年には,特別区の保健所課長が,喫煙対策には第3種換気設備,すなわち,直接外に煙を出すことのできる別系統の換気設備が必要であると述べており,同様の見解が既に一般的に知られていた。平成5年には,東京都が「いきいき都民の健康づくり計画」において喫煙対策の推 備,すなわち,直接外に煙を出すことのできる別系統の換気設備が必要であると述べており,同様の見解が既に一般的に知られていた。平成5年には,東京都が「いきいき都民の健康づくり計画」において喫煙対策の推進を掲げており,平成6年1月に東京都が実施した健康に関する世論調査によれば,都民の7割以上が分煙化を進めるべきだとしている。平成7年11月には,東京都が平成5年の喫煙対策の推進の計画を受けて全庁舎の分煙化の具体的計画を発表し,平成8年3月には,都議会において喫煙対策の推進を求めた原告の請願が採択され,平成9年には,東京都分煙化ガイドラインが制定された。東京23区の区役所についてみると,平成6年9月の都政新報の調査によれば,組織として分煙を行っているところが8区,職場ごとに対応しているところが3区,一部庁舎が分煙となっているところが1区,禁煙タイムを実施しているところが1区,検討中であるところが5区,新築の庁舎について対応するとしているところが2区であって,既に大半の区で喫煙対策が行われていた。江戸川区内の公共施設のうち,江戸川都税事務所は,保健所との合同庁舎であったが,江戸川都税事務所使用部分については,執務室外に区画した喫煙場所を設置してその中に空気清浄機を設置しており,また,江戸川区鹿骨保健相談所は,既に禁煙となっていた。 (ウ) 北棟1階執務室においては,平成7年4月当時,37名の喫煙者が常時自席で喫煙しており,室内に設置されていた換気扇や空気清浄機によっても,秒速2メートル以上で拡散する0.01ミクロンのETSを集じんし,排出するには不十分であったため,室内にはETSが充満し,原告は,受動喫煙を余儀なくされた。原告は,同年5月ころから,被告に対し,再三にわたって,北棟1階執務室の外に喫煙場所を設置して室内を禁煙とするよう には不十分であったため,室内にはETSが充満し,原告は,受動喫煙を余儀なくされた。原告は,同年5月ころから,被告に対し,再三にわたって,北棟1階執務室の外に喫煙場所を設置して室内を禁煙とするよう求めたが,被告がこれに応じることはなかった。同室においては,同年10月末ころ,前記1(2)のとおり換気扇及び喫煙場所が設置されたが,喫煙場所が区画されていなかったこと,喫煙場所の一つが原告の席のすぐ後ろにあったこと,自席で喫煙する職員もいたこと,換気扇の増設に対応した吸気口の増設が行われていなかったこと及びそもそも増設された換気扇ではETSを集じんし,排出することができなかったことなどから,原告は,依然として受動喫煙を余儀なくされた。 保健所2階事務室においては,平成8年4月当時,前記1(3)のとおり喫煙場所が設置され,室内の喫煙場所には換気扇が1機,室外の喫煙場所にはエアハンドリングユニットが1機,それぞれ設置されていたが,換気扇やエアハンドリングユニットによっても,ETSを集じんし,排出するには不十分であったこと,エアハンドリングユニットの吸引力は換気扇の吸引力に比べて強く,喫煙場所がいずれも区画されておらず,流体が壁面に沿って流れる性質を有しているため,室内の喫煙場所で発生したETSが外へ排出されずに室外のエアハンドリングユニットの方へ引っ張られ,壁際にあった原告の席まで滞留していたこと及び来客の際には自席で喫煙することが許されており,それ以外の場合にも喫煙場所ではなく自席で喫煙する職員がいたことから,原告は,受動喫煙を余儀なくされた。原告は,同年6月ころから平成9年6月ころまで,被告に対し,喫煙に関する研究論文が発表されるなどの折に触れて,保健所2階事務室の外に喫煙場所を設置して室内を禁煙とすることなどの喫煙対策を求め れた。原告は,同年6月ころから平成9年6月ころまで,被告に対し,喫煙に関する研究論文が発表されるなどの折に触れて,保健所2階事務室の外に喫煙場所を設置して室内を禁煙とすることなどの喫煙対策を求めたが,被告がこれに応じることはなく,被告がベランダに喫煙場所を設置して保健所内を禁煙とすると約束したのは,平成10年度末であり,それも原告が業務係に在籍していた間には実施されなかった。 (エ) 国は,公務員に対し,国が公務遂行のために設置すべき場所,施設若しくは器具等の設置管理又は公務員が国若しくは上司の指示の下に遂行する公務の管理に当たって,公務員の生命及び健康等を危険から保護するように配慮すべき義務を負い,この法理は地方公共団体についても適用される。そして,地方公共団体は,身体に重大な危険を与える危険物が勤務場所に存在している場合,上記の義務に基づいてその危険物を除去する義務を負っているところ,ETSが身体に重大な危険を与える危険物であり,ETSを除去するには通常の換気設備では不十分であるから,被告としては,平成7年4月の段階で職場を完全に禁煙にするか又は喫煙場所を区画して換気系統を別にする必要があったにもかかわらず,これを怠り,原告に受動喫煙を余儀なくさせたものである。生命及び身体の安全は,人権の最たるものであるから,これらが侵害される場合には,最新の医学的知見に基づいて措置がなされるべきであって,社会通念という観念を持ち出すことには慎重でなければならないし,そもそも,平成7年当時,ETSの危険性は医学界の常識であり,喫煙対策としては職場を完全に禁煙にするか又は喫煙場所を区画して換気系統を別にする必要があることが一般的に知られていたから,喫煙対策をめぐる当時の社会情勢と比較しても,被告の対応が遅れていたものである。 職場を完全に禁煙にするか又は喫煙場所を区画して換気系統を別にする必要があることが一般的に知られていたから,喫煙対策をめぐる当時の社会情勢と比較しても,被告の対応が遅れていたものである。 イ被告の主張(ア) 受動喫煙とは,ETS,すなわち,喫煙者が吸入して吐き出した主流煙とたばこの先から立ち上る副流煙とが環境大気中で混合,拡散,希釈され,かつ,その一部が酸化反応等により化学的変化を受けた化学物質群に暴露されることをいう。 化学物質の人体に与える危険性又は有害性の評価は,一般的に,①有害性の確認(化学物質が有害であるかどうかの確認),②用量・反応評価(化学物質への暴露量と健康障害との関係の定量的な解明),③暴露評価(化学物質に人が日常生活を通じてどの程度暴露されるかの実態把握),④リスク判定の四つの段階から成り立っているが,各種の報告から見て,ETSの有害性(①)及びETSの健康影響に関する用量・反応評価(②)については,いずれも確認されているといえる状況にはなく,ETSの暴露評価(③)については,ETSが一般に相当程度希釈されると考えられるので,ETSへの暴露が副流煙への直接的暴露と比較して極めて低濃度の暴露であるといえ,また,ETSが様々な化学物質の複合体で,かつ,それぞれ極微量であり,室内にはETS以外にも同じ化学物質を発生させる発生源が数多くあり,それらを除去してETSから発生した化学物質のみを測定するのが大変困難である上,ETSを他の指標によって代替して測定することには,問題点が指摘されているなどの理由から,現段階ではETSへの暴露量を正確に把握することのできる方法が確立されているといえるような状況にはなく,以上の点を総合すると,現時点での受動喫煙のリスクに関する科学的な評価(④)で るなどの理由から,現段階ではETSへの暴露量を正確に把握することのできる方法が確立されているといえるような状況にはなく,以上の点を総合すると,現時点での受動喫煙のリスクに関する科学的な評価(④)では,人の健康に影響を及ぼすものとはいえない。 受動喫煙と肺がんとの関係を指摘する疫学研究については,様々な問題があり,現状では,受動喫煙が原因で肺がんが発症するということは全く証明されておらず,受動喫煙と呼吸器疾患との関係についても,全く証明されていないし,原告の依拠するEPA報告については,重要な方法論上の欠陥等の様々な問題点が指摘されており,平成10年7月17日には,ノースカロライナ連邦地方裁判所が,EPAの研究結果は不十分な統計的手法を基礎にしており無効であるとの判決をしているのであって,受動喫煙の健康影響について格別の意義を持つものではない。 (イ) 喫煙対策をめぐる社会情勢についてみると,労働省は,平成8年2月,労働省ガイドラインを公表し,その中で,職場における喫煙対策の指針を示し,厚生省は,同年3月,「公共の場所における分煙のあり方検討会報告書」を公表し,その中で,公共の場所における分煙の指針を示し,人事院は,平成9年3月,人事院指針を公表し,その中で,公務職場における喫煙対策に関する指針を示した。また,東京都は,平成7年の東京都総合3か年計画において公表された方針,すなわち,約3000か所の都立施設を平成12年度末までに分煙化することを目標とするとの方針に基づき,この目標を達成するための具体的な指針として,平成9年5月に,「東京都立施設における分煙化基準」を公表した。 このように,国や東京都が官公庁の庁舎を含む公共の場所における喫煙対策の統一的な指針を示したのは,平成8年2月以降のことであり,しかも ,平成9年5月に,「東京都立施設における分煙化基準」を公表した。 このように,国や東京都が官公庁の庁舎を含む公共の場所における喫煙対策の統一的な指針を示したのは,平成8年2月以降のことであり,しかも,それらの指針は,いずれも公共の場所における望ましい喫煙対策として空間分煙を推奨していたのであって,公共の場所を全面的に禁煙とすることまでを求めているものではなかった。 人事院が平成8年6月に実施した「官署における喫煙対策実施状況調査」によれば,官署として統一的に何らかの対策を実施している官署の割合は,58.1パーセントで,複数回答による喫煙対策の内容をみると,空気清浄機の設置が29.1パーセント,会議中禁煙が23.7パーセント,禁煙タイムの実施が14.8パーセント,事務室内一切禁煙が3.8パーセントであり,人事院が同年10月に実施した「民間企業の勤務条件制度等調査」によれば,何らかの喫煙対策を講じている企業の割合は,69.1パーセントで,講じられている対策は,喫煙所の設置が47.7パーセント,事務室内一切禁煙が33.8パーセント,会議中禁煙が33.6パーセント,空気清浄機の設置が27.9パーセントであった。また,平成9年5月に発表された「都立施設分煙化推進計画」によれば,平成8年度において何らかの喫煙対策を講じている東京都立施設の割合は,81.9パーセントで,講じられている対策は,分煙が56.7パーセント,一部分煙が21.4パーセント,禁煙が1.6パーセント,時間分煙が1.2パーセントであった。東京23区の区役所についてみると,平成7年4月の時点で喫煙場所を特定する形での空間分煙を実施していたのは8区だけであり,そのうち,4区は庁舎の新築等により喫煙場所を設計段階から計画して建設した庁舎で分煙を実施したもので,既存庁舎での 年4月の時点で喫煙場所を特定する形での空間分煙を実施していたのは8区だけであり,そのうち,4区は庁舎の新築等により喫煙場所を設計段階から計画して建設した庁舎で分煙を実施したもので,既存庁舎での実施は4区にとどまっていた。 (ウ) 被告においては,昭和61年ころから,保健所について,乳幼児,妊産婦,病弱者等が多数来所するという施設の性質上,所内の喫煙対策の必要性が認識され,管理職を中心に,同所内における分煙対策として,1階部分については全面的に禁煙とし,2階部分についてはトイレ及び会議室を禁煙とし,その他の部分を分煙とするなどの対策が実施されて,被告における分煙対策のさきがけとなった。平成5年ころには,生活振興部保険年金課でも職員によって自主的に分煙が実施されており,江戸川区役所の内部でも一部の職員の中から執務室の分煙の実施を求める声もあったが,喫煙をする職員の中にはこれに難色を示す者もいる状態であった。しかしながら,社会的に受動喫煙の対策として空間分煙が有効な対策ではないかとの議論もなされ,まだ一部ではあるが東京都庁のように新築の庁舎で分煙を実施するものもみられるようになっていたことなどから,同年度に開催された3回の江戸川区安全衛生委員会(以下「安全衛生委員会」という。)においても,区役所の全庁的な問題として喫煙対策が集中的に議論され,その結果,第3回目の安全衛生委員会では,委員全体として分煙が望ましいことが確認された。平成6年3月7日の江戸川区議会予算特別委員会では,区議会議員から,「病院その他の事業所で分煙を実施するものが見られるようであるが,区役所も分煙を検討すべきではないのか。」との趣旨の質問がなされたので,当時の戸村雄一総務課長が「喫煙は基本的には職員の常識の問題であるが,現在委員会でも喫煙対策が議論されてい 見られるようであるが,区役所も分煙を検討すべきではないのか。」との趣旨の質問がなされたので,当時の戸村雄一総務課長が「喫煙は基本的には職員の常識の問題であるが,現在委員会でも喫煙対策が議論されているので,その方向も踏まえながらこの問題を検討したい。」との趣旨の答弁をしていた。同年6月2日の安全衛生委員会では,分煙を具体的に実施するための方策として,分煙場所の確保や空気清浄機の設置などのハード面及び職員に対する啓発活動などのソフト面の双方にわたっての検討がなされた。そして,平成7年ころには,公共的な空間における分煙を求める方向が社会的に強まりつつあったこと,区役所に来庁する住民の中からも執務室の分煙を求める要望がなされていたことから,執務室の全庁的な分煙も受け入れざるを得ないという雰囲気が形成されつつあった。 北棟1階執務室においては,原告が再開発一係に配属された平成7年4月当時,前記1(2)のとおりの機器が設置されていたため,室内のETSは,それらによって直ちに吸引されて室外に排出されており,室内にETSが充満していたことはなかった。 原告は,配属当日,再開発一係係長F(以下「F係長」という。)に対し,自分は気管支が弱く,たばこの煙が苦手であるから配慮してほしいと申し入れ,これに対し,F係長は,係員と相談し,仕事の内容,分担等を考慮しつつ,できる限り原告の要望に応えるため,再開発一係内の座席配置を変更し,原告の向かい側に配置していた者を喫煙者から非喫煙者へ変更した。原告は,平成7年5月2日,安全衛生委員会の事務局を所管している江戸川区役所総務部職員課福利係の係長G(以下「G係長」という。)に対し,職場の喫煙対策について相談し,これに対し,G係長は,換気扇等の設備の拡充や空間分煙について安全衛生委 の事務局を所管している江戸川区役所総務部職員課福利係の係長G(以下「G係長」という。)に対し,職場の喫煙対策について相談し,これに対し,G係長は,換気扇等の設備の拡充や空間分煙について安全衛生委員会で検討していること,分煙は方向性としてはできているが時間がかかること,禁煙については現段階では難しいことを話した。原告は,同年6月ころ,F係長に対し,自席の机上に卓上用の空気清浄機を置かせてほしいと申し入れ,F係長は,これを許可した。 当時のH江戸川区長は,平成7年6月28日,区役所庁舎内執務室でたばこを吸うことが,喫煙しない職員や執務室に来所した住民に迷惑を及ぼすことにもなるので,同庁舎内執務室では,原則として禁煙としたいとの方針を表明し,同年7月4日の安全衛生委員会では,区長の方針を受けて,同庁舎内執務室の分煙化の徹底を推進するという方針を決定し,併せて,職員に対し,同庁舎内執務室の分煙化について啓発を強力に図っていくとともに,庁舎の管理者に対し,空気清浄機の更なる増設を要望した。 北棟1階執務室においては,平成7年10月末ころ,前記1(2)のとおり分煙が実施され,同年11月からは,これを含めて区役所内の各課等46職場中43職場及びいわゆる出先機関68職場中53職場で分煙が実施された。これらの実施時点においては,予算上の制約等から空気清浄機や換気扇の設置された喫煙場所を確保できない職場もあり,職員の中にも少数ではあるが,注意をされても自席で喫煙する者もあるなど,必ずしも万全の分煙化ができたとは言い切れないものがあった。しかしながら,その後は,空気清浄機や換気扇の設置された喫煙場所が増加ないし拡大され,また,職員に対する啓発活動が徹底されており,現在では,上記の問題は相当な程度にまで改善されている。 ものがあった。しかしながら,その後は,空気清浄機や換気扇の設置された喫煙場所が増加ないし拡大され,また,職員に対する啓発活動が徹底されており,現在では,上記の問題は相当な程度にまで改善されている。 北棟においては,建築物における衛生的環境の確保に関する法律(以下「ビル管理法」という。)の適用がないものの,同法に準じた空気環境測定が2か月ごとに行われており,同年度の測定結果によれば,いずれも,ビル管理法施行令の定める建築物環境衛生管理基準(以下「ビル管理法基準」という。)及び労働省ガイドラインの示した基準(以下「労働省ガイドライン基準」という。)を満たしていたものであって,北棟1階執務室は,室内で勤務する職員の生命や健康を害するような環境にはなかった。 原告は,平成8年4月1日付けで,業務係に異動となった。これに先立ち,原告は,再開発課が全面禁煙にならないのであれば異動させてほしい旨要望し,平成7年10月中旬ころに行われた職員の異動希望調書作成時において,別の職場への異動を希望していたものであり,原告の異動は,このような原告の要望を受けて行われたものであって,採用されて1年での異動は被告においても極めて異例の対応であった。 保健所2階事務室においては,原告が業務係に配属された平成8年4月当時,前記1(3)のとおり機器及び喫煙場所が設置されており,たばこの煙はそれらの機器によって吸引されていた上,原告の席が室内の喫煙場所から約19メートル,室外の喫煙場所から約10メートル離れていたことから,原告の席までETSが滞留することはなかった。 保健所においては,ビル管理法の適用がないものの,平成10年12月8日,同月21日及び平成11年1月14日の3回,同法に準じた空気環 原告の席までETSが滞留することはなかった。 保健所においては,ビル管理法の適用がないものの,平成10年12月8日,同月21日及び平成11年1月14日の3回,同法に準じた空気環境測定が行われ,その測定結果によれば,ビル管理法基準及び労働省ガイドライン基準を満たしていた。 (エ) 被告は,雇用主が,被雇用者に対して,その職場において受動喫煙しないよう配慮すべき義務を負っていることを否定するものではないが,非喫煙者の利益を保護すべきであるとしても,喫煙のし好及び習慣は,長年にわたり社会的に容認されており,なお喫煙を楽しみたい者が相当数いることもまた現実であることから,一方的に喫煙者のし好のみを無視することは適切ではなく,喫煙者の喫煙の自由も相当程度尊重すべきであり,受動喫煙の健康影響が明確にされていない現状において,被告の安全配慮義務違反は,平成7年当時の官公署や民間企業などの喫煙対策と比較して被告の喫煙対策が著しく遅れている場合に初めて認められるべきものである。本件についてこれをみるに,被告は,原告からの訴えを受け止め,原告の職場の執務環境に配慮して,原告のために,通常は採らない対応をしてきたものであるし,被告の喫煙対策を当時の社会情勢と比較してみても,国や東京都が官公庁の庁舎を含む公共の場所における喫煙対策の統一的な指針を示したのが平成8年2月以降であったこと,それらの指針がいずれも公共の場所における望ましい喫煙対策として空間分煙を推奨しており,原告が主張するように公共の場所を全面的に禁煙とすることまでを求めているものではなかったこと,当時の被告の対策は平成8年時点の官公署や民間企業における喫煙対策の中で最も多い割合を占める類型に含まれていたものであり,東京23区の区役所中10番目であったことなどからし いるものではなかったこと,当時の被告の対策は平成8年時点の官公署や民間企業における喫煙対策の中で最も多い割合を占める類型に含まれていたものであり,東京23区の区役所中10番目であったことなどからして,著しく遅れていたものとはいえず,被告に安全配慮義務違反は認められないものというべきである。 (2) 争点(2)についてア原告の主張原告は,北棟1階執務室における勤務によって受動喫煙を余儀なくされ,副鼻腔炎,咽頭炎,喉頭炎等にり患しており,これらは受動喫煙による健康被害の典型的症状である。 また,原告は,受動喫煙による呼吸困難,鼻やのどの痛み等を和らげるため,平成7年6月ころから,自席の机上に卓上用の空気清浄機を置き,その吹き出し口から出る空気を吸うようにしたが,その際,空気清浄機の方を向いて不自然な姿勢をとらざるを得なかったため,頚椎に無理な負担がかかり,たばこの煙を吸い込むことによる激しいせき込みや受動喫煙による頚部椎間板の変性などとあいまって,頚部椎間板ヘルニアにり患し,平成8年1月2日にその旨の診断を受けて,約1年にわたる治療の後,右腕に巧ち性障害を残して症状が固定化した。原告は,ほかに上記障害の原因となるような外傷を受けたことがなく,発症当時27歳であって加齢的変化を生じるような年齢ではないから,この頚部椎間板ヘルニアと受動喫煙との間には因果関係がある。 原告は,平成7年6月14日,耳鼻咽喉科であるI医院において,慢性副鼻腔炎,急性増悪症,慢性喉頭炎及び慢性咽頭炎との診断を受け,医療費として1180円を支払い,同年12月26日,同医院において,急性喉頭炎,急性副鼻腔炎兼急性咽頭炎との診断を受け,医療費として600円を支払ったほか,同月21日及び平成8年1月11日,J 受け,医療費として1180円を支払い,同年12月26日,同医院において,急性喉頭炎,急性副鼻腔炎兼急性咽頭炎との診断を受け,医療費として600円を支払ったほか,同月21日及び平成8年1月11日,J大学病院の呼吸器科において,受動喫煙による急性障害の疑いとの診断を受け,医療費として5870円を支払った。 本訴において,原告は,これらの医療費7650円と,原告が受動喫煙により頚部椎間板ヘルニアなどにり患し,通院を余儀なくされたほか,受動喫煙問題についてやゆされるなどしたことによる精神的苦痛に対する慰謝料151万4000円の内金30万8000円との合計31万5650円を請求する。 イ被告の主張北棟1階執務室及び保健所2階事務室の換気は,前記のとおりいずれも十分であり,原告が受動喫煙を余儀なくされたとはいえないし,原告主張の各疾患のうち,急性喉頭炎,急性副鼻腔炎,急性咽頭炎等の原因としては,ウイルス等の感染性のものに加えて,アレルギー,物理化学的刺激,疲労等が考えられるが,大部分はウイルス等の感染性によるものであり,それ以外の場合でも多くの要因が考えられるので,受動喫煙に起因してこれらの症状を発したとはいえない。また,頚部椎間板ヘルニアについては,医学的に見れば,若年者の繰り返すささいな外傷,スポーツ外傷,中高年の変性した椎間板への小外力の加重などが原因で発症するものであるとされており,受動喫煙との因果関係を肯定するものがないこと,北棟1階執務室においてたばこの煙が充満していた事実はないから,原告が不自然な体勢をとって執務せざるを得なかったこともなく(そもそも上司がそれを容認するものとも考えられない。),しかも,原告が執務時間中のすべてを同室で過ごしたと認められる日数は,延べ152日に過ぎず,こ 然な体勢をとって執務せざるを得なかったこともなく(そもそも上司がそれを容認するものとも考えられない。),しかも,原告が執務時間中のすべてを同室で過ごしたと認められる日数は,延べ152日に過ぎず,この程度の期間で頚部椎間板ヘルニアにり患したというのは医学的にみても余りに不自然であることから,この頚部椎間板ヘルニアと受動喫煙との間に因果関係は認められない。 第3 争点に対する当裁判所の判断 1 争点(1)について(1) 前記前提となる事実に加え,証拠(甲1から4まで,9から19まで,21から31まで,33から44まで,46から56まで,59から62まで,63から67まで,68の2から7まで,71から73まで,75から85まで,88から98まで,100から104まで,106,107,109から111まで,114から122まで,124から135まで,137,138,検甲1から5まで,乙1から31まで,33,55から59まで,証人F,証人K,原告本人)及び弁論の全趣旨を総合すれば,以下の事実が認められる。 ア受動喫煙とは,非喫煙者が自らの意志とは無関係に,たばこの煙に暴露され,それを吸引させられている状態をいう。 喫煙による健康影響としては,能動喫煙によって,喫煙者自身が肺がん等を患う可能性が上昇するだけでなく,受動喫煙の急性影響として,眼症状(かゆみ,痛み,涙,瞬目),鼻症状(くしゃみ,鼻閉,かゆみ,鼻汁),頭痛,せき,ぜん鳴等が自覚されることが知られている。 受動喫煙の慢性影響については,これまでに多数の研究報告が行われている。 国立がんセンター疫学部長であった平山雄博士は,昭和56年,受動喫煙による健康被害に関する研究を発表し,その中で,昭和41年から16年間にわたり,26万人以上の日本人の死因と生活習慣との関連 いる。 国立がんセンター疫学部長であった平山雄博士は,昭和56年,受動喫煙による健康被害に関する研究を発表し,その中で,昭和41年から16年間にわたり,26万人以上の日本人の死因と生活習慣との関連について,一般家庭の住民を対象に前向き調査(疫学調査の対象となる事象が調査開始時点より後に発生した場合,調査計画に従って追跡的に調査していく方法)を行った結果,夫が喫煙者の場合は,夫が非喫煙者の場合と比べて,たばこを吸わない妻の肺がんのリスクが1.5から3倍に高まると報告した(以下「平山研究」という。)。EPAは,平成4年発表のEPA報告の中で,日本を含めて世界中で行われた約30件の疫学調査を批評し,証拠の重みを解析した結果,米国において受動喫煙が非喫煙者の肺がんのリスクを20パーセント高めているとの結論に達し,ETSを,EPAの定義によるA級発がん物質(ヒトにがんを起こすことが確証された物質)であると認定した。米国心臓協会は,同協会機関誌に発表された受動喫煙と心臓病に関する評論の結論を受けて,同年,「環境たばこ煙と心疾患」と題した声明を発表し,その中で,非喫煙者の心筋こうそく死のリスクを30パーセント高める受動喫煙は虚血性心疾患の重大な危険因子であるとし,受動喫煙被害をなくすために力を尽くすと宣言した。WHOは,同年,世界禁煙デーに際し,受動喫煙が健康に影響を及ぼすこと,従業員を受動喫煙などの健康被害から守ることが雇用主の義務であることなどを指摘した。ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディスン誌は,平成6年,「たばこのヒューマンコスト」と題する総説を掲載し,その中で,EPA報告を支持し,受動喫煙が肺がんや心臓病等の原因になることを指摘した。カリフォルニア州環境保護庁は,平成9年2月,CAL-EPA報告を発表し,その中で,受動喫煙がもた 総説を掲載し,その中で,EPA報告を支持し,受動喫煙が肺がんや心臓病等の原因になることを指摘した。カリフォルニア州環境保護庁は,平成9年2月,CAL-EPA報告を発表し,その中で,受動喫煙がもたらす健康影響のうち,確実なものとして,低出生体重児,未熟児,乳幼児突然死症候群,子供の急性下気道感染症,子供の気管支ぜん息の発病と悪化,子供の慢性呼吸器症状,子供の中耳炎,成人の目鼻の刺激症状,肺がん,副鼻腔がん,心臓病死及び冠状動脈疾患り患率を,可能性のあるものとして,自然流産,認識・行動障害,成人の気管支ぜん息の悪化,のう胞線維症悪化,呼吸機能低下及び子宮頚がんを指摘している。また,その後の研究報告によれば,受動喫煙によって気管支炎や気管支ぜん息等の呼吸器疾患を生じさせ,悪化させることが指摘されており,そのほかにも,受動喫煙の慢性影響を指摘する多くの研究報告がなされている。 このような研究報告に対しては,ETSの暴露評価が不十分であること,交絡因子(調べようとする危険因子以外の表面に出ない背景因子で,疾病の出現頻度に影響を与えるもの)や偏り(観察者が観察を行うとき,偶然に生じる誤差のほかに加わってくる系統誤差,すなわち,理論上の問題,器械の調整不良,観察者個人の癖などにより規則的な差として導入される誤差)の補正が不十分であること,証拠の重みの評価に問題があることなどを指摘して,受動喫煙の慢性影響がいまだ証明されていないとする研究報告が存在する。しかしながら,そのような批判にもかかわらず,なお多数の疫学研究が,受動喫煙の慢性影響として肺がんのリスクの増加を指摘し,更には,受動喫煙と心臓疾患との関係や肺がん以外の呼吸器疾患との関係等についても指摘していることからすれば,非喫煙者を継続的に受動喫煙下に置くことによって,非喫煙者の肺がん等の リスクの増加を指摘し,更には,受動喫煙と心臓疾患との関係や肺がん以外の呼吸器疾患との関係等についても指摘していることからすれば,非喫煙者を継続的に受動喫煙下に置くことによって,非喫煙者の肺がん等のリスクが増加することは否定できないものと考えられる。 イ大蔵省は,平成元年5月,たばこ事業等審議会において,「喫煙と健康の問題に関連するたばこ事業のあり方」について審議,答申を行い,その答申の中で,「いわゆる受動喫煙(「環境中たばこ煙」への暴露)については,その影響を示唆する研究結果が出されてきたことなどから,公衆衛生上の注意が喚起されているが,喫煙者が直接吸入する主流煙に比して非喫煙者が受動的に吸入するたばこ煙の濃度は希薄であり,したがって,仮に受動喫煙と肺がんとの間に関連があったとしても,その関連は極めて弱いものと考えられ,現状では十分な蓋然性をもって裏付けるには至っていない。」との認識が示されていた。 東京都は,平成3年に竣工した東京都庁本庁舎において,通称ニコチンルームと呼ばれる喫煙場所(廊下を隔てた別室にあり,換気も別系統となっているもの)を設置し,同所以外をすべて禁煙とした。 平成4年7月1日,平成4年法律第55号による改正後の労働安全衛生法71条の3に基づき,労働省告示59号が出され,その空気環境の項において,「屋内作業場では,空気環境における浮遊粉じんや臭気等について,労働者が不快と感ずることのないよう維持管理されるよう必要な措置を講ずることとし,必要に応じ作業場内における喫煙場所を指定する等の喫煙対策を講ずること。」と指摘されていた。 前記のとおり,平成4年にEPA報告が発表され,これ以降,内外において,受動喫煙による非喫煙者への健康影響に関する研究報告が多数発表されるようになったところ,厚 こと。」と指摘されていた。 前記のとおり,平成4年にEPA報告が発表され,これ以降,内外において,受動喫煙による非喫煙者への健康影響に関する研究報告が多数発表されるようになったところ,厚生省は,平成5年,「喫煙と健康第2版」を公表し,その中で,受動喫煙の健康影響について,「受動喫煙の急性影響は粘膜の煙への暴露によるものと,鼻腔を通して肺に吸引され,そこから吸収された煙によるものとがある。眼症状(かゆみ,痛み,涙,瞬目),鼻症状(くしゃみ,鼻閉,かゆみ,鼻汁),頭痛,せき,ぜん鳴などが主な粘膜の反応として自覚されるものである(以下略)」,「受動喫煙の肺がん発生に関するリスクの有意性は,現在のところ世界的にみて全面的には受け入れられるにはいたっていないものの,その後にいたっても,わが国を含む多くの国々でその危険性に対して危ぐの念が表明されている。1990年までの25の研究のうち20は夫が喫煙する場合の相対危険度が1.1~2.3と1.0を上回っており,これらのうち13は統計学的に有意であり,総合的に見ると偶然をはるかにこえ,また,複数の疫学的研究結果をまとめて検討するメタアナリシスによっても,10編以上の成績からみて,夫の喫煙による非喫煙配偶者の肺がん相対危険度は1.3~1.5とされ,喫煙する配偶者をもつ非喫煙者である妻の肺がんのリスクは高まっていると考えられている。」と指摘した。 厚生省は,平成7年3月,「たばこ行動計画」をまとめ,その中で,職場での受動喫煙の影響の排除,減少対策について,「職場における分煙については特定の人々が社会的な必要から日常的にかつ選択の余地なく相当程度の時間を過ごす場所であることから職場の状況を踏まえつつ非喫煙者に十分配慮した対策を積極的に推進すべきである。」と指摘した。 東京都は,平 会的な必要から日常的にかつ選択の余地なく相当程度の時間を過ごす場所であることから職場の状況を踏まえつつ非喫煙者に十分配慮した対策を積極的に推進すべきである。」と指摘した。 東京都は,平成7年,東京都総合3か年計画において,都内約3000か所の都立施設について,平成12年度末までには100パーセント分煙化を達成するとともに,公共の場の分煙化を促進することを目標とする方針を公表した。 東京23区の区役所のうち,平成7年4月当時までに何らかの喫煙対策を講じていたのは8区であり,そのうち4区については,庁舎新築に伴い実施されたものであったが,残りの4区については,既存の庁舎で喫煙対策を講じたものであった。喫煙対策の内容としては,喫煙場所の指定と空気清浄機の設置が最も多く,喫煙場所に間仕切りをしていない庁舎も少なくなかった。同年度中には被告を除いて更に3区で喫煙対策が実施されており,その内容はいずれも喫煙場所の設置であった。 労働省は,平成8年2月,労働省ガイドラインを公表し,その中で,受動喫煙による非喫煙者の健康への影響が報告されていること及び受動喫煙が非喫煙者に対して不快感,ストレス等も与えていることが指摘されており,職場における労働者の健康の確保や快適な職場環境の形成の促進の観点から,受動喫煙を防止するための労働衛生上の対策が求められていることを指摘し,他方で,喫煙が個人のし好に強くかかわるものとして喫煙に対し寛容な社会的認識がなお一部に残る中にあって,職場における喫煙対策を推進するに当たっては,喫煙者と非喫煙者が相互の立場を尊重することが重要であると指摘し,喫煙対策の方法として,事業場全体を常に禁煙とする方法(全面禁煙),時間帯を定めて事業場全体を禁煙とする方法(時間分煙)及び喫煙室でのみ喫煙を認める又 が相互の立場を尊重することが重要であると指摘し,喫煙対策の方法として,事業場全体を常に禁煙とする方法(全面禁煙),時間帯を定めて事業場全体を禁煙とする方法(時間分煙)及び喫煙室でのみ喫煙を認める又は喫煙対策機器等の設置によってたばこの煙の拡散を制御し,受動喫煙を防止する方法(空間分煙)の三つの方法があるが,喫煙者と非喫煙者の間で合意を得やすい空間分煙を進めることが適切であると指摘した。 厚生省は,平成8年3月,「公共の場所における分煙のあり方検討会報告書」を公表し,その中で,受動喫煙による非喫煙者への健康影響については,流涙,鼻閉,頭痛等の諸症状や呼吸抑制,心拍増加,血管収縮等生理学的反応等の急性影響が認められているとともに,慢性影響については,肺がん,呼吸器疾患等へのリスクを示す疫学的研究があり,公衆衛生上の取組が求められていると指摘した上,公共の場所における分煙の基本原則として,不特定多数の人が社会的な必要のために利用する公共の場所では,非喫煙者に対する受動喫煙の健康への影響や不快感を排除又は減少することを目的として,分煙を進めることが必要であること及び分煙対策を推進するに当たっては,受動喫煙に対する基本認識やたばこをめぐる現状等を踏まえ,非喫煙者と喫煙者のコンセンサスが得られるよう努めるなど社会生活の調和の中で十分な配慮がなされる必要があることを指摘した。 東京都議会は,平成8年3月,喫煙対策の推進を求めた原告の請願を採択し,国会も,同年,喫煙対策の推進を求めた原告の請願を採択し,これに伴い,国会については,会議場等の禁煙化が実施された。 東京都は,平成8年5月,平成7年の東京都総合3か年計画で示された分煙化の計画を具体化するため,分煙化推進組織として,東京都分煙化推進会議を ては,会議場等の禁煙化が実施された。 東京都は,平成8年5月,平成7年の東京都総合3か年計画で示された分煙化の計画を具体化するため,分煙化推進組織として,東京都分煙化推進会議を設置し,また,平成8年7月,分煙化に対する意見を広く求めるため,学識経験者や公募による委員,行政関係者等で構成する東京都分煙化ガイドライン検討会を設置した。 人事院が平成8年6月に実施した「官署における喫煙対策実施状況調査」の結果によれば,官署として統一的に何らかの喫煙対策を実施しているのは1093官署中635官署と全体の58.1パーセントであり,複数回答による喫煙対策の内容をみると,空気清浄機の設置が29.1パーセント(318官署),会議中禁煙が23.7パーセント(259官署),禁煙タイムの実施が14.8パーセント(162官署),喫煙場所の設置が13.3パーセント(145官署),事務室内一切禁煙が3.8パーセント(42官署),事務室内に喫煙コーナー設置が2.7パーセント(29官署)であった。また,人事院が同年10月に実施した「民間企業の勤務条件制度等調査」の結果によれば,何らかの喫煙対策を講じている企業の割合は69.1パーセントで,講じられている対策は,事務室以外の場所に喫煙のために特別に区切った場所としての喫煙所の設置が47.7パーセントと最も多く,次いで,事務室内一切禁煙が33.8パーセント,会議中禁煙が33.6パーセント,空気清浄機の設置が27.9パーセントであった。 労働省は,平成8年10月,労働省ガイドラインの内容を解説したものとして,「やさしい空気環境へ-職場における喫煙対策推進マニュアル-」(以下「労働省マニュアル」という。)を発表し,この中で,受動喫煙によるヒトへの影響として,上記「喫煙と健康 の内容を解説したものとして,「やさしい空気環境へ-職場における喫煙対策推進マニュアル-」(以下「労働省マニュアル」という。)を発表し,この中で,受動喫煙によるヒトへの影響として,上記「喫煙と健康第2版」以降に発表された総説や論文を中心に,受動喫煙の健康影響について,EPA報告を含めてより踏み込んだ内容に言及し,受動喫煙の長期暴露による慢性影響として,持続性せきやたんなどの呼吸器症状や肺機能の低下,冠状動脈疾患(心筋こうそく,狭心症),肺がんとの関連が指摘されていること,ETSの暴露だけで臨床的に有意な肺機能の障害を起こすことはないものと思われるが,長期間暴露によりせきやたんの症状を訴える率が高くなるほか,わずかな肺機能の低下をもたらす可能性も否定できないことなどを指摘した。また,施設,設備面の対策として,喫煙室や喫煙コーナー(エアーカーテン,パーティション等によって区画された喫煙可能な空間のこと)の設置等を行うことをあげ,既存の建築物については創意工夫によって喫煙室等の設置を図ることとし,喫煙室等には,たばこの煙が拡散する前に吸引して屋外に排気する方式の喫煙対策又は空気清浄装置でたばこの煙を除去して屋内に排気する方式の喫煙対策機器を設置し,これを適切に稼働させるとともに,その点検等を行い,適切に維持管理することなどを指摘した。 人事院は,平成9年3月,人事院指針を公表し,その中で,非喫煙者に対する受動喫煙の影響を排除し減少させるため,非喫煙者と喫煙者の間で合意が得られやすい事務室内は禁煙とし,別に喫煙場所を設けるといういわゆる空間分煙を原則として,具体的対策を講じることが必要であるとした。 東京都は,平成9年3月の東京都分煙化ガイドライン検討会の報告を受けて,同年5月,東京都分煙化ガイドラインを発表す 空間分煙を原則として,具体的対策を講じることが必要であるとした。 東京都は,平成9年3月の東京都分煙化ガイドライン検討会の報告を受けて,同年5月,東京都分煙化ガイドラインを発表するとともに,都立施設分煙化推進計画を発表し,後者の中で,平成8年度において何らかの喫煙対策を講じている東京都立施設の割合は81.9パーセントで,内訳は分煙が56.7パーセント,一部分煙が21.4パーセント,禁煙が1.6パーセント,時間分煙が1.2パーセント等であったことを指摘した。 ウ被告においては,昭和61年ころから,保健所について,乳幼児,妊産婦,病弱者等が多数来所するという施設の性質上,所内の喫煙対策の必要性が認識され,管理職を中心に,同所内における分煙対策として,診察室等のある1階部分については全面的に禁煙とし(ただし,1階エレベーターホールについては,来所者がたばこを捨てるための灰皿が1台置かれていた。),2階部分についてはトイレ及び会議室を禁煙とし(ただし,トイレについては,清掃の関係から吸い殻を入れるための空き缶が置かれていた。),その他の部分を分煙とするなどの対策が実施されて,被告における分煙対策のさきがけとなった。平成5年ころには,生活振興部保険年金課でも職員によって自主的に分煙が実施され,喫煙が社会的な問題となりつつあったこともあって,安全衛生委員会において,喫煙対策が議論され,同年度の安全衛生委員会の意見として,喫煙者と非喫煙者がそれぞれいるという実態を前提に,分煙化が望ましいとの認識が確認され,平成6年度の安全衛生委員会においては,分煙化の具体案が議論された。 このような状況の下,原告は,平成7年4月1日,再開発一係に配属された。都市開発部のある北棟1階執務室は,当時,前記前提となる事実(2)のとおりの 会においては,分煙化の具体案が議論された。 このような状況の下,原告は,平成7年4月1日,再開発一係に配属された。都市開発部のある北棟1階執務室は,当時,前記前提となる事実(2)のとおりの状況であった。 原告は,配属当日,北棟1階執務室内において自席での喫煙が許されている状況を見て,F係長に対し,自分は気管支が弱く,たばこの煙が苦手であるから配慮してほしいと申し入れた。F係長は,原告に対し,原告がたばこの煙を吸うことによってぜん息の発作等を起こすのか尋ねたところ,原告からそうではないとの返答を受けたため,仕事に差し支えるほどではないと受け止めたものの,原告の申入れに配慮して,原告の席を喫煙者の席から少しでも離すため,再開発一係内の座席配置を変更し,原告の向かい側に配置していた者を喫煙者から非喫煙者に変更した(ただし,原告の席の隣,斜め向かい及び斜め後ろには,それぞれ喫煙者の席があった。)。 原告は,再開発一係に配属された後,眼の痛み,のどの痛み,頭痛等を自覚するようになり,その症状は平成8年4月に業務係に異動するまで続いた。原告は,職場の先輩や特別区職員相談室の相談員に対して,職場での喫煙に悩まされている旨相談し,平成7年5月2日には,G係長に対し,区として分煙を推進してほしい旨相談した。これに対し,G係長は,換気扇等の設備の拡充や空間分煙について委員会で検討していること,分煙は方向性としてはできているが,時間がかかること,禁煙については現段階では難しいことなどを話した。また,原告は,同月上旬,再開発課課長L(以下「L課長」という。)に対し,喫煙の問題について相談し,北棟全体を禁煙にして喫煙は屋外ですることや既存のスペースを活用して空間分煙を行うことなどの喫煙対策を要望したところ,L課長は,本庁舎内において分煙が行われつ 。)に対し,喫煙の問題について相談し,北棟全体を禁煙にして喫煙は屋外ですることや既存のスペースを活用して空間分煙を行うことなどの喫煙対策を要望したところ,L課長は,本庁舎内において分煙が行われつつあり,同庁舎を全面的に禁煙とすることは,同庁舎内で勤務している喫煙する職員及び喫煙しない職員全体にかかわることであるから,現段階で直ちにこれを実施することは困難であると話した。 原告は,平成7年5月末ころ及び同年6月14日,耳鼻咽喉科であるI医院で受診し,慢性副鼻腔炎,急性増悪症,慢性喉頭炎及び慢性咽頭炎との診断を受けた。原告は,受診の際,医師から,たばこが原告の疾患に悪いと言われたものの,原告の疾患が受動喫煙によるものであるとの診断を受けたわけではなかった。 原告は,たばこの煙を避けるためにマスクを掛けるようになり,平成7年6月ころからは,F係長の許可を得て,自席の机上に卓上用の空気清浄機を置き,その吹き出し口から出る空気を吸うようになった。 原告は,職場内部での相談では喫煙対策が進まなかったため,米国で地方議会が喫煙対策の先べんをつけたことを参考に,平成7年6月21日,江戸川区議会に対し,江戸川区の公共施設の禁煙化及び分煙化の推進並びに江戸川区有施設の速やかな喫煙対策を求めて請願を行った。この請願は,間もなくL課長らの知るところとなり,L課長は,原告に対し,原告の身体上の苦痛については理解し,対策を講じることを約束するとともに,「陳情の目的は達成されたはずであってこれ以上問題を拡大する必要は乏しいのではないか。喫煙対策は組織の中でできる。」などと述べて,請願の取下げを説得した。 当時のH江戸川区長は,平成7年6月28日,江戸川区議会において,区議会議員の質問に答え,本庁舎内執務室でたばこを吸うことが,喫煙 組織の中でできる。」などと述べて,請願の取下げを説得した。 当時のH江戸川区長は,平成7年6月28日,江戸川区議会において,区議会議員の質問に答え,本庁舎内執務室でたばこを吸うことが,喫煙しない職員や執務室に来所した住民に迷惑を及ぼすことにもなるので,執務室では原則として禁煙としたいとの方針を表明し,これを受けて,同年7月4日の安全衛生委員会では,庁舎執務室の分煙の徹底を推進するという方針を決定し,空間分煙の進め方として,各課・事業所において喫煙者と非喫煙者との合意を基礎に,それぞれの箇所で工夫をして喫煙コーナーを設置することとした。原告は,L課長から喫煙対策を約束されたことなどから,同日,一応請願を取り下げ,区長らに謝罪した。 北棟1階執務室においては,上記の安全衛生委員会の方針等を踏まえて,平成7年10月末ころ,窓5か所及び壁1か所にいずれも毎時720立方メートルの排気能力のある換気扇が増設され,増設された各換気扇の付近に喫煙場所が設置され,職員は自席ではなく喫煙場所で喫煙することとされた。もっとも,各喫煙場所がパーティション等で区画されていたわけではなく,原告の席の後方二,三メートルの位置にも喫煙場所が設置されていたほか,管理職や再開発課の職員など一部の職員は喫煙場所での喫煙をおおむね守っていたが,都市開発部の職員の中にはこれを守らず,自席で喫煙する者もいなかったわけではない。 原告は,L課長に対し,執務室内に喫煙場所を設置して換気扇を増設するのではなく,執務室外に喫煙場所を設置して執務室内を禁煙にしてほしいと要請したが,L課長は,喫煙者の権利も尊重しなければならないので無理であると話した。原告は,都市開発部部長M(以下「M部長」という。)に対しても,同じような要請を行ったが,M部長は,急激な改革はでき 請したが,L課長は,喫煙者の権利も尊重しなければならないので無理であると話した。原告は,都市開発部部長M(以下「M部長」という。)に対しても,同じような要請を行ったが,M部長は,急激な改革はできないと話した。もっとも,M部長は,平成7年11月1日付けで,「分煙の徹底について」と題する通知を出し,喫煙職員に対して,指定場所での喫煙をなお一層徹底するよう促した。原告は,同日ころ,江戸川区役所総務部職員課福利係に対し,禁煙に関する資料とともに,原告が,咽頭炎,喉頭炎,副鼻腔炎等の医師の診断を受けており,急性症状として受動喫煙との因果関係が推断されること,当時の被告の分煙対策である換気扇の設置が不十分であることなどを指摘して,区役所執務室の原則禁煙と執務室外の喫煙場所の設置を求める要望書を提出したが,この要望は聞き入れられなかった。 平成7年11月から,北棟1階執務室の上記対策を含めて本庁舎内の各課等46職場中43職場及びいわゆる出先機関68職場中53職場で分煙が実施された。 原告は,平成7年12月中旬ころから,たんに血が混じるようになり,同月26日,I医院において,急性喉頭炎及び急性副鼻腔炎兼急性咽頭炎との診断を受けたほか,同月21日及び平成8年1月11日,J大学病院の呼吸器科で受診したところ,同大学病院の医師は,原告に対し,呼気中一酸化炭素濃度及び血液の検査を行った上で,原告の申出を踏まえ,原告について血たん,咽頭痛,頭痛等の受動喫煙による急性障害が疑われること,原告について勤務後受診時には喫煙の指標である呼気中一酸化炭素濃度が高値をとっており,明らかに受動喫煙環境下にあると考えられること,症状等より,今後,同様の環境下では健康状態の悪化が予想されるので,非喫煙環境下での就業が望まれることなどが記載された診断書を発行した。 をとっており,明らかに受動喫煙環境下にあると考えられること,症状等より,今後,同様の環境下では健康状態の悪化が予想されるので,非喫煙環境下での就業が望まれることなどが記載された診断書を発行した。また,原告は,平成7年10月ころからせきをするたびに首に異常を感じていたところ,平成8年1月1日,首に激痛を感じ,同月2日,整形外科において,頚部椎間板ヘルニアとの診断を受けた。頚部椎間板ヘルニアについては,約1年にわたる治療の後,右腕に巧ち性障害を残して症状が固定化した。 原告は,平成8年1月12日,L課長に対し,上記J大学病院の診断書を示し,何とかしてほしいと申し出たが,L課長は,被告において原告をその希望に沿って業務係に異動させるまでの間,原告の上記申出に対し特段の措置を講ずることがなかった。 北棟においては,ビル管理法の適用がないものの,再開発課内にも測定点を設定して,空気環境測定を2か月ごとに行っており,その平成7年度の測定結果は,いずれも,ビル管理法基準及び労働省ガイドライン基準を満たしていたものであったが,再開発課内の測定点は,原告の席と比べて喫煙場所から離れた所にあり,測定が行われる前には再開発課内での喫煙を控える職員もいたため,上記結果は,室内で喫煙者が普段通り喫煙していた場合の室内の空気環境,とりわけ原告の席の付近の空気環境までを示したものではなかった。 なお,北棟1階については,原告の異動後,執務室外である1階のホールに空気清浄機の設置された喫煙場所が設けられ,都市開発部の職員は執務室外の喫煙場所において喫煙するよう変更された。 原告は,平成8年4月1日,業務係に異動となった。原告は,かねてよりL課長に対し,再開発課が全面禁煙にならないのであれば異動させてほしい旨要望し,平成7年10月中 喫煙するよう変更された。 原告は,平成8年4月1日,業務係に異動となった。原告は,かねてよりL課長に対し,再開発課が全面禁煙にならないのであれば異動させてほしい旨要望し,平成7年10月中旬ころに行われた職員の異動希望調書において,別の職場への異動を希望していたものであるところ,原告の上記異動は,このような原告の要望を受けて行われたものであって,採用されて1年での異動は被告においても極めて異例の対応であった。 予防課及び衛生課のある保健所2階事務室は,当時,前記前提となる事実(3)のとおりの状況であり,室内の喫煙場所を利用するのは主として衛生課の職員であり,室外の喫煙場所を利用するのは主として来庁者及び予防課の職員であった(なお,平成9年から,業務係に喫煙者が2名配属されたが,両名は室外の喫煙場所を利用しており,そのうち1名は後に2階ベランダに出て喫煙していた。)。喫煙場所はパーティション等で区画されておらず,衛生課の職員の中には依然として自席で喫煙する者もいたが,都市開発部に比べて喫煙者が少なく,喫煙場所での喫煙もそれなりに守られている状態であった。 原告の席は,配属当初,業務係のカウンターに近いところに配置されていたが,その席が室外の喫煙場所からわずか数メートルしか離れていなかったため,原告は,業務係係長N(以下「N係長」という。)に相談し,室内の喫煙場所から約19メートル,室外の喫煙場所から約10メートル離れ,たばこの煙が流れてきにくい予防課の一番奥に原告の席を指定してもらった。 原告は,平成8年6月ころから平成9年6月ころまで,保健所所長に対し,東京都の方針,厚生省や人事院のガイドライン,喫煙に対する研究論文が発表されるなどの折に触れて喫煙対策を求めたが,保健所所長は,「禁煙は抵抗が大きくてでき から平成9年6月ころまで,保健所所長に対し,東京都の方針,厚生省や人事院のガイドライン,喫煙に対する研究論文が発表されるなどの折に触れて喫煙対策を求めたが,保健所所長は,「禁煙は抵抗が大きくてできず,完全分煙は予算がなくてできない。パーティションによって喫煙場所を区画してその他の場所を禁煙とすることについては,ろう屋みたいなところで喫煙するのはいやだとの声が多いためにできないし,余り厳しくやると人間関係が悪くなるので,現状以上の喫煙対策は難しい。」と回答し,話合いは平行線のままであった。原告は,その間の同年2月ころには,保健所内のトイレの中でたばこの吸い殻入れに使用されていた空き缶をすべて撤去し,同年3月ころには,東京都分煙化ガイドライン検討報告を示して,保健所所長に対し,喫煙対策を求めるなどしたが,更なる喫煙対策は行われなかった。 原告は,平成10年3月28日付けで,特別区人事委員会に対し,保健所庁舎内及び江戸川区役所庁舎内の禁煙化及び分煙化を求める措置要求を行った。 保健所においては,平成10年4月ころ,衛生課長Oを中心として所内禁煙の方向で話合いが進められ,トイレに禁煙の表示が行われ,吸い殻入れに使用されていた空き缶を撤去することとされるとともに,所内に分煙及び禁煙の表示がなされて,喫煙対策の周知が図られ,同年7月ころには昼食時間帯を除いて食堂の一角が喫煙場所となったことを受けて,室外の喫煙場所が廃止され,同時期に,1階エレベーターホールに設置されていた灰皿も玄関入口の風除室に移動され,平成11年3月末には,室内の喫煙場所も撤去され,2階ベランダのみが喫煙場所となり,室内は完全に禁煙となった。 保健所においては,ビル管理法の適用がないものの,保健所2階事務室に測定点を設けて,室外の喫煙場所が廃止された後の も撤去され,2階ベランダのみが喫煙場所となり,室内は完全に禁煙となった。 保健所においては,ビル管理法の適用がないものの,保健所2階事務室に測定点を設けて,室外の喫煙場所が廃止された後の平成10年12月8日,同月21日及び平成11年1月14日の3回,空気環境測定を行っており,その測定結果によれば,平成10年12月8日の炭酸ガス平均値がビル管理法基準を上回っていたものの,その他については,いずれもビル管理法基準及び労働省ガイドライン基準を満たしており,とりわけ,浮遊粉じん量についてみると,労働省ガイドライン基準の10分の1程度に収まっていた。 原告は,平成11年4月1日付けで,江戸川区立平井福祉センターへ異動となり,同年5月11日付けで,同センターを禁煙とする措置要求を追加した。なお,同センターは,老人娯楽室以外は事務室を含めすべて禁煙となっていたが,老人娯楽室は,開放された空間ではなく遮断された空間となっており,室内には換気扇が2台設置されていた。 特別区人事委員会は,平成12年2月21日,平成10年3月28日付けの措置要求については却下,平成11年5月11日付けの措置要求については棄却する旨判定した。 (2) 前記認定のとおり,原告は,被告の職員に任命され,地方公共団体である被告との間において勤務関係にある者であるから,被告は,その職員である原告に対し,被告が公務遂行のために設置すべき場所,施設若しくは器具等の設置管理又は原告が被告若しくは上司の指示の下に遂行する公務の管理に当たって,原告の生命及び健康等を危険から保護するよう配慮すべき義務を負うものと解される。 そして,前記認定のとおり,我が国においても,労働省告示59号の中で,「屋内作業場では,空気環境における浮遊粉じんや臭気等について, ら保護するよう配慮すべき義務を負うものと解される。 そして,前記認定のとおり,我が国においても,労働省告示59号の中で,「屋内作業場では,空気環境における浮遊粉じんや臭気等について,労働者が不快と感ずることのないよう維持管理されるよう必要な措置を講ずることとし,必要に応じ作業場内における喫煙場所を指定する等の喫煙対策を講ずること。」と指摘されていたこと,厚生省が平成5年に公表した「喫煙と健康第2版」の中で,受動喫煙の急性影響としては眼症状(かゆみ,痛み,涙,瞬目),鼻症状(くしゃみ,鼻閉,かゆみ,鼻汁),頭痛,せき,ぜん鳴等が自覚されるものであり,受動喫煙の慢性影響としての肺がん発生に関するリスクの有意性については,当時において世界的にみて全面的に受け入れられるには至っていないものの,我が国を含む多くの国々でその危険性に対して危ぐの念が表明されている旨指摘されていたこと,厚生省が平成7年3月に公表した「たばこ行動計画」の中で,職場での受動喫煙の影響の排除,減少対策について,「職場における分煙については特定の人々が社会的な必要から日常的にかつ選択の余地なく相当程度の時間を過ごす場所であることから職場の状況を踏まえつつ非喫煙者に十分配慮した対策を積極的に推進すべきである」と指摘されていたこと,平成7年当時,喫煙対策が社会的にも要請され,喫煙対策を行う企業や官公署が増えつつあったこと,平成8年には労働省ガイドラインや労働省マニュアルが公表され,それ以降,職場における喫煙対策について,更に社会的にも検討が進んでいったことなどを併せ考えると,被告は,原告が再開発一係及び業務係に配属されていた当時において,公務の遂行のために設置した施設等の管理又は原告が被告若しくは上司の指示の下に遂行する公務の管理に当たり,当該施設等の状況に応じ, と,被告は,原告が再開発一係及び業務係に配属されていた当時において,公務の遂行のために設置した施設等の管理又は原告が被告若しくは上司の指示の下に遂行する公務の管理に当たり,当該施設等の状況に応じ,一定の範囲において受動喫煙の危険性から原告の生命及び健康を保護するよう配慮すべき義務を負っていたものというべきである。 もっとも,その義務の内容は,上記危険の態様,程度,被害結果の状況等に応じ,具体的状況に従って決すべきものであるところ,上記のとおり,受動喫煙の危険性が,急性影響としての眼症状,鼻症状,頭痛,せき,ぜん鳴等の自覚及び慢性影響としての肺がん等のリスクの増加であり,受動喫煙の暴露時間や暴露量を無視して一律に論ずることのできない性質のものであったこと,当時の我が国においては,喫煙が個人のし好に強くかかわるものとして喫煙に対し寛容な社会的認識がなお残っており,喫煙対策の推進に当たっても喫煙者と非喫煙者が相互の立場を尊重することが重要であると考えられていたこと,当時の喫煙対策としては喫煙時間や喫煙場所を限るという意味での分煙が一般的であり,労働省ガイドラインや労働省マニュアルに掲げられた各種の分煙対策についても,即時に全面的な導入を図るべきものとされていたわけではなく,当該施設の具体的状況に応じ,喫煙場所を設けたり,喫煙時間帯を定めたりするなどの分煙対策をある程度段階的に実施していくことを予定されていたとみられることなどは,上記の配慮すべき義務の内容を検討するに当たってしんしゃくすべき事柄であると考えられる。 (3) そこで,まず,再開発一係配属期のうち平成7年4月ころから平成8年1月11日ころまでについてみると,前記認定のとおり,北棟1階執務室においては,平成7年4月当時,前記前提となる事実(2)のとおりの状況であったところ, 発一係配属期のうち平成7年4月ころから平成8年1月11日ころまでについてみると,前記認定のとおり,北棟1階執務室においては,平成7年4月当時,前記前提となる事実(2)のとおりの状況であったところ,F係長による再開発一係内での座席配置の変更や卓上用空気清浄機の持ち込み許可のほか,同年10月末ころ,前記前提となる事実(2)のとおり換気扇及び喫煙場所が設置されたというのであり,喫煙場所が依然として執務室内にあり,また,パーティション等で区画されていたわけではなかったために,換気設備の位置,能力等を勘案しても,原告の席までたばこの煙が流れてきていた可能性は否定できないものの,喫煙をめぐる当時の社会情勢の下で官公署や民間企業において一般的に採用されていた分煙対策が執られていたものと評価できること,また,執務室内における受動喫煙により前述のような急性影響が生ずることは否定し難く,原告の自覚する眼の痛み,のどの痛み,頭痛等の症状もその影響であると推認されるものの,受動喫煙の影響は上記程度のものにとどまるものであり,原告が受診したI医院における慢性副鼻腔炎等の診断結果や整形外科における頚部椎間板ヘルニアとの診断結果が執務室内における受動喫煙に起因することを認めるに足りる確たる証拠はなく,受動喫煙との因果関係は不明であること,平成7年5月ころから同年12月ころまでに原告がした喫煙対策の申入れは,いずれも,受動喫煙による疾患の疑いが明示された診断書などを示してなされたものではなく,むしろ,受動喫煙を防止するために一般的な喫煙対策を求めるという色彩の強いものであったこと,当時,北棟1階執務室において,原告以外に受動喫煙による健康被害を訴えた者がいたことをうかがわせるような証拠はなく,北棟1階執務室の空気環境測定結果が一応ビル管理法基準の範囲内にあったことなど こと,当時,北棟1階執務室において,原告以外に受動喫煙による健康被害を訴えた者がいたことをうかがわせるような証拠はなく,北棟1階執務室の空気環境測定結果が一応ビル管理法基準の範囲内にあったことなどにかんがみると,被告が原告の生命及び健康を受動喫煙の危険性から保護するよう配慮すべき義務に違反したとまではいえないというべきである。 しかしながら,再開発一係配属期のうち,平成8年1月12日から同年3月31日までについてみると,前記認定のとおり,原告は,同年1月12日,L課長に対し,原告について血たん,咽頭痛,頭痛等の受動喫煙による急性障害が疑われること,原告について勤務後受診時には喫煙の指標である呼気中一酸化炭素濃度が高値をとっており,明らかに受動喫煙環境下にあると考えられること,症状等より,今後,同様の環境下では健康状態の悪化が予想されるので,非喫煙環境下での就業が望まれることなどが記載された前記J大学病院の診断書を示し,何とかしてほしいと申し出たというのであり,上記診断書の記載内容から直ちに上記急性障害と執務室内における受動喫煙との間に法的な因果関係を認め得るかどうかはともかくとして,執務室内の分煙状況等にかんがみても,被告としては,原告が,執務室内においてなお受動喫煙環境下に置かれる可能性があることを認識し得たものと認められるから,上記診断書に記載された医師の指摘を踏まえた上で,受動喫煙による急性障害が疑われる原告を受動喫煙環境下に置くことによりその健康状態の悪化を招くことがないよう,原告の席の後方二,三メートルの位置に設置されていた喫煙場所を撤去するなどして原告の席を喫煙場所から遠ざけるとともに,自席での禁煙を更に徹底させるなど,速やかに必要な措置を講ずるべきであったにもかかわらず,同年4月1日に原告をその希望に沿って異動させ 煙場所を撤去するなどして原告の席を喫煙場所から遠ざけるとともに,自席での禁煙を更に徹底させるなど,速やかに必要な措置を講ずるべきであったにもかかわらず,同年4月1日に原告をその希望に沿って異動させるまでの間,特段の措置を講ずることなく,これを放置していたのであるから,被告は,原告の生命及び健康を受動喫煙の危険性から保護するよう配慮すべき義務に違反したものといわざるを得ない。 次に,平成8年4月1日以降の業務係配属期についてみると,前記認定のとおり,保健所においては,既に昭和61年以来,当該施設の性質にかんがみて分煙対策が導入され,1階は禁煙,2階の会議室とトイレも禁煙,その他の部分は分煙とするなどの対策が実施されており,被告における分煙対策のさきがけとなった職場であること,保健所2階事務室においては,前記前提となる事実(3)のとおりの分煙対策が実施されており,北棟1階執務室に比べてそれなりに分煙は守られていたことに加え,喫煙者数が北棟1階執務室に比べて半分程度であったこと,喫煙場所はパーティション等で区画されていなかったものの,原告は,N係長に相談し,室内の喫煙場所から約19メートル,室外の喫煙場所から約10メートル離れ,たばこの煙が流れてきにくい予防課の一番奥に原告の席を指定してもらったこと,平成10年4月にはトイレに禁煙の表示が行われ,吸い殻入れに使用されていた空き缶を撤去することとされるとともに,所内に分煙及び禁煙の表示がなされて,喫煙対策の周知が図られ,同年7月ころには室外の喫煙場所が廃止され,平成11年4月からは室内の喫煙場所も廃止され,喫煙はベランダのみで行うとの分煙対策が更に進められたこと,原告が,業務係配属期において,受動喫煙による上記急性障害がなお残存しているとか,その急性障害が更に悪化したといった内容の診断書を 廃止され,喫煙はベランダのみで行うとの分煙対策が更に進められたこと,原告が,業務係配属期において,受動喫煙による上記急性障害がなお残存しているとか,その急性障害が更に悪化したといった内容の診断書を提示した形跡はなく,平成8年4月1日から平成11年3月31日までに原告がした喫煙対策の申入れも受動喫煙に関する一般的な知見を示してなされたものであったこと,被告が,平成8年当時,既に実施済みであった分煙対策に加え,N係長による座席配置の変更,保健所所長による相談等を経ながら原告に対応しつつ,更に平成10年以降,禁煙原則に立脚した分煙対策を推進したことなどに照らせば,被告が原告の生命及び健康を受動喫煙の危険性から保護するよう配慮すべき義務に違反したとはいえないというべきである。 2 争点(2)について(1) 争点(1)について説示したとおり,被告の安全配慮義務違反は,平成8年1月12日以降のことであるから,原告の主張する各損害のうちそれより前に生じた損害については,いずれの損害も安全配慮義務違反との因果関係を欠くものである。 (2) そこで,被告の安全配慮義務違反と相当因果関係にある慰謝料について検討するに,前記説示のとおり,原告が,平成8年1月12日に,L課長に対し,原告について受動喫煙による急性障害が疑われ,症状等より,今後,同様の環境下では健康状態の悪化が予想されるので,非喫煙環境下での就業が望まれることなどが記載された医師の診断書を示し,配慮を求めたのであるから,被告は,受動喫煙による急性障害が疑われる原告を受動喫煙環境下に置くことによりその健康状態の悪化を招くことがないよう速やかに必要な措置を講ずるべきであったにもかかわらず,同年4月1日に原告をその希望に沿って異動させるまでの間,特段の措置を講ずることなく,これを放置し,その間 その健康状態の悪化を招くことがないよう速やかに必要な措置を講ずるべきであったにもかかわらず,同年4月1日に原告をその希望に沿って異動させるまでの間,特段の措置を講ずることなく,これを放置し,その間,原告において眼の痛み,のどの痛み,頭痛等が継続していたというのであり,かかる義務違反の態様に加え,これにより原告の被った精神的肉体的苦痛の内容,程度,期間等本件に顕れた諸般の事情にかんがみれば,原告に対する慰謝料の金額としては5万円をもって相当と認める。 第4 結論よって,原告の請求は,慰謝料5万円の支払を求める限度で理由があるから,これを認容し,その余については,理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第6部 裁判長裁判官土肥章大 裁判官田中寿生裁判官古市文孝
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