判決平成13年12月12日福井地方裁判所敦賀支部平成13年(わ)第16号傷害被告事件 主文 被告人を懲役3月に処する。 未決勾留日数中その刑期にみつるまでの分をその刑に算入する。 訴訟費用は被告人の負担とする。 理由 (犯罪事実)被告人は,被告人の父親でありかつ被告人が勤務している有限会社Bの経営者Cが被告人に無断で被告人の給与を当時被告人と不和であった被告人の妻に直接渡すことにしたのを知って,腹を立て,平成13年4月5日午後5時ころ,福井県所在の有限会社B事務所において,同人を怒鳴りつけるなどし,これをたしなめようとした同人に対し,その頭部などを拳で数回殴り,ソファーに倒れ込んだ同人の腰のあたりを数回足蹴りにし,プラスティック製状差し(全長約35センチメートル)で同人の頭部を1回殴打する暴行を加え,その暴行により,同人に全治1週間を要する頭部打撲,頭部擦過傷の傷害を負わせた。 (事実認定の補足説明)本件公訴事実は,「被告人は,平成13年4月5日午後5時ころ,福井県所在の有限会社B事務所において,C(当74年)に対し,その頭部等を手拳及びプラスチック製の状差しで数回殴打し,その腰部等を数回足蹴にするなどの暴行を加え,よって同人に全治1週間を要する頭部打撲,頭部擦過傷の傷害を負わせたものである。」というものであるが,被告人は第1回公判において,状差しで頭部を1回殴った事実は認め,その他の事実は否認する答弁をし,弁護人も被告人は状差しで被害者の頭部を1回殴ったことをのぞき,意図的な暴行として,被害者の頭部を拳で殴ったり,被害者の腰などを足蹴りしたことはなかったと弁論しており,当裁判所は,前記犯罪事実のとおりの認定をしたので,以下事実認定を補足して説明する。 証人C及び同Eの公判供述によると,判示の犯罪事実 たり,被害者の腰などを足蹴りしたことはなかったと弁論しており,当裁判所は,前記犯罪事実のとおりの認定をしたので,以下事実認定を補足して説明する。 証人C及び同Eの公判供述によると,判示の犯罪事実のとおりの事実が認められる。両証人の供述はほぼ一致しており,詳細で具体的で,迫真性もあり,十分信用できる。両証人の供述に必ずしも一致しない点があることは弁護人が指摘するとおりであるが,それらは何れも比較的微細な点に過ぎず,かつ,C証人の供述の方が曖昧であったり,E証人の供述した暴行事実を記憶していなかったりしているもので,C証人が実の息子から暴言を吐きかけられ,相当興奮して,けんか腰でたしなめにいったが反対に被告人の暴力をほとんど一方的に受けたものであり,E証人はそれを傍らで心配しながら見ていたという状況であるから,C証人の記憶が一部欠落したり混乱していてもむしろ当然であって自然であると考えられるのであり,E証人の供述に沿って事実を認定することが妥当である。同証人が記憶を曲げてまで被告人に不利益な供述をする理由はうかがわれない。 弁護人の主張に答えながら,なお,事実認定の理由を敷衍して説明する。 状差しで被害者の頭部を殴打したのは1回である点については,前記両証人の証言が一致するところであり,当裁判所もそのように認定した。なお,この状差しで殴打した回数があたかも争点であるかの状況を呈したのは,公訴事実中に「その頭部等を手拳及びプラスチック製の状差しで数回殴打し,」との状差しでの殴打も数回あったとも読める記載があるためで,証拠上これが1回だけだったことは明白である。 拳で被害者の頭部を殴打した点については,弁護人はもみ合いの中で被告人の胸ぐらをつかむなどした被害者をふりほどこうなどとして,たまたま手が被害者の頭部に当たったようなことはあった とは明白である。 拳で被害者の頭部を殴打した点については,弁護人はもみ合いの中で被告人の胸ぐらをつかむなどした被害者をふりほどこうなどとして,たまたま手が被害者の頭部に当たったようなことはあったかも知れないが,意図的に殴ったことはないと弁論しているのであるが,前記の両証人の供述を総合すると,たまたま当たったという状況ではなく,拳のどの部分がどのような角度で当たったかは判然としないものの意図的に拳を被害者の頭部にある程度の勢いで当てるような暴行が数度あり,その衝撃で被害者が被告人のシャツの胸元をつかんだままでソファーの上にへたり込んだと認められる。 被害者の腰のあたりを足蹴りにした点については,E証人の供述に迫真性が大変あり記憶は鮮明であると考えられるので,それにしたがって認定した。 被告人の暴行状況に関する供述は曖昧で不自然なところが多く,被告人自身も半ば認めているように記憶が不鮮明であると思われ,信用できない。 (累犯前科)被告人は,平成7年11月6日福井地方裁判所敦賀支部で覚せい剤取締法違反の罪により懲役1年6月に処せられ,平成9年2月14日その刑の執行を受け終わり,その後犯した覚せい剤取締法違反の罪により,大津地方裁判所で平成10年3月25日懲役1年10月に処せられ,平成11年11月5日その刑の執行を受け終わったものであり,検察事務官作成の前科調書及び判決書謄本によりこれらの事実を認める。 (法令の適用)被告人の判示所為は,刑法204条に該当するが,所定刑中懲役刑を選択し,前記の前科があるので,同法59条,56条1項,57条により3犯の加重をした刑期の範囲内で,被告人を懲役3月に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中その刑期にみつるまでの分をその刑に算入し,訴訟費用については刑事訴訟法181条1項本文により被告人に負 り3犯の加重をした刑期の範囲内で,被告人を懲役3月に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中その刑期にみつるまでの分をその刑に算入し,訴訟費用については刑事訴訟法181条1項本文により被告人に負担させることとする。 (刑を定めるに際して考慮した事情)本件は実の父親に暴行を加え負傷させたという傷害の事案であるが,本件に至る経過及び犯行状況は以下の通りである。 被告人は,当時妻と不和で,妻のカバンから携帯電話や妻が経営する飲食店の支払いに必要な現金を取り上げるなどしたため,妻は義父に当たる本件被害者に事情を話して被告人の給料を直接渡して欲しいと懇願した。被害者は,以前から被告人の暴力などで相談を受けたこともあり,この妻の窮状を見かねて,会社の給与支払担当者に指示して被告人の給料を直接その妻に渡すこととし,給与支払担当者から被告人の給料を受け取った。被告人は,事件当日給与支払担当者から,これを聞いて逆上し,電話で被害者に乱暴に文句を言ったため,被害者はこれをたしなめようと被告人がいる本件事件現場の事務所にやってきた。 被害者に対面するや被告人は被害者に対して,けんか腰で怒鳴りつけたため,被害者は被告人をぶん殴ってでもたしなめようと思い被告人の胸ぐらをつかんだ。 被告人は被害者の頭部を数回殴り,ソファーにへたり込んだ被害者の腰のあたりを数回足蹴りにし,近くにあったソファーを持ち上げようとしたがうまく持ち上がらず,被害者の上方に掛かっていた全長約35センチのプラスティック製状差しを手にとってこれで被害者の頭部を1回強打し,その際,状差しは破損し,以上の被告人の暴行により被害者は頭部に負傷した。 なお,被告人が妻の金を取り上げたことについては,被告人は否定する供述をしているのであるが,捜査段階における供述でも公判供述でも一貫して取り上げら 上の被告人の暴行により被害者は頭部に負傷した。 なお,被告人が妻の金を取り上げたことについては,被告人は否定する供述をしているのであるが,捜査段階における供述でも公判供述でも一貫して取り上げられたことを供述している被告人の妻の供述が信用できる。同人は,その後取り上げられた金が出てきたが,多分それは被告人が後で返したものであろうという趣旨を公判で供述しているが,その供述は不自然で唐突であり信用できない。 以上の犯行に至る経緯に鑑みると,本件の動機は,暴力を使ってでも妻を自分の意のままにしようとしていた被告人が,その手段として金を取り上げ,妻を服従させようとしたが,妻が父親を頼って父親が妻に同情して給料を直接渡し,被告人のもくろみが外されてしまったことに対する一種の腹いせと考えられ,その犯行態様も高齢の父親に対し物まで使って一方的に暴行を加えているのであり,本件犯行は悪質かつ危険であり,前科や妻に対する暴力をも併せて考えると被告人には粗暴な傾向がうかがわれ,その責任は軽くなく,懲役刑の選択は余儀ない。 他方で,幸い怪我は比較的軽かったこと,被告人は3か月以上拘束された後保釈されてから,父親にわびを入れ,妻を含めた家族の親和に努めることを誓約したため,被害者である父親とは和解し,昼間は父親と共に生活しており,父親も被害者を許し,このまま家族が仲良く暮らせることを望んでいる。以上の事実によれば,被害者の処罰感情は薄れ,同じような原因で暴力事件が起こるおそれは小さくなったと考えられ,以上の事情は被告人に有利に酌むべき事情である。 以上を考慮した結果,懲役3月に処した上,未決勾留日数中その刑期にみつるまでの分を本刑に算入することとした。 (検察官松田啓三,弁護人F出席)(求刑懲役8月)平成13年12月12日福井地方裁判所敦賀支部裁判 果,懲役3月に処した上,未決勾留日数中その刑期にみつるまでの分を本刑に算入することとした。 (検察官松田啓三,弁護人F出席)(求刑懲役8月)平成13年12月12日福井地方裁判所敦賀支部裁判官柳本つとむ
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