平成14(ワ)200 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
平成16年10月12日 鳥取地方裁判所 鳥取地方裁判所
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判決文本文28,019 文字)

平成14年(ワ)第200号損害賠償請求事件(口頭弁論終結日平成16年7月12日)判決 主文 1 被告は,原告に対し,110万円及びこれに対する平成14年11月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用はこれを10分し,その9を原告の,その余を被告の負担とする。 事実及び理由 第1 原告の求めた裁判被告は,原告に対し,1650万円及びこれに対する平成14年11月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 前提となる事実(証拠等の掲記のない事実は,当事者間に争いがない。)(1)国(承継前の被告)は,国立学校設置法により,国立鳥取大学(以下「被告大学」という。)を設置し,運営していた。 本件提訴後の平成16年4月1日,国立大学法人法(平成15年法律第112号)に基づき,国立大学法人鳥取大学(承継後の被告)が成立し,同法人が,被告大学の業務に係る国の事務を承継し,本件訴訟における国の地位を承継した。 (2)原告は,平成12年3月8日当時50歳の男性であり,被告大学工学部物質工学科(以下「工学部」及び「物質工学科」という。)に勤務する助教授である。 (3)平成12年3月8日,原告は,物質工学科C研究室原告担当分室(以下「原告研究室」という。)に所属し,自らが指導していた女子学生(以下「本件女子学生」という。)を誘って鳥取市内の居酒屋で飲食し,強度の酩酊状態にあった本件女子学生をラブホテルに連れて行き,翌朝にかけて,熟睡していた本件女子学生の衣服及び下着を脱がせ,目を覚ました本件女子学生をベッドに押し倒すなどの行為をした(以下「本件セクハラ行為」という。)。 (4)同年3月28日,本件女子学生は,物質工学科に所属するA技官(女性で 生の衣服及び下着を脱がせ,目を覚ました本件女子学生をベッドに押し倒すなどの行為をした(以下「本件セクハラ行為」という。)。 (4)同年3月28日,本件女子学生は,物質工学科に所属するA技官(女性で,被告大学セクシャルハラスメント職員相談員であった。以下「A技官」という。)に対し,本件セクハラ行為の相談を申し入れ,被告大学は,同年3月31日までに,本件セクハラ行為について調査を開始することとした。 (5)被告大学学長B(以下「B学長」という。)は,同年4月1日付けで,原告に対し,被告大学大学院工学研究科の担当を免ずる,俸給の調整額は支給しないとの命令を行った(甲2)。 (6)同年4月27日,被告大学評議会は,本件セクハラ行為について懲戒処分審査を行い,原告に対し停職6月の懲戒処分を行うのが相当である旨議決した(甲6,乙9)。 (7)同年5月12日,B学長は,原告に対し,停職6か月(同年5月13日から同年11月12日まで)の懲戒処分を行った(乙11,12。以下「本件懲戒処分」という。)。 (8)同年7月5日,本件女子学生は,本件セクハラ行為は準強制わいせつ罪及び強制わいせつ罪に該当するとして,原告を鳥取地方検察庁に刑事告訴し(甲7),同年8月1日,本件セクハラ行為により損害を被ったとして,原告を相手に,鳥取地方裁判所に不法行為に基づく損害賠償の訴えを提起した(乙27)。原告は,本件セクハラ行為は恋愛の駆引きの延長上の行為であり,本件女子学生の合意があったと主張してこれを争ったが,平成13年1月25日,一部認容判決(認容額110万円)が言い渡された。原告は控訴したが,同年3月1日,訴訟外において,原告が本件女子学生に対し150万円を支払うこと,本件女子学生は上記告訴を取り消すことなどを内容とする示談が成立し,原告は控訴を取り下げるとともに,本件 告は控訴したが,同年3月1日,訴訟外において,原告が本件女子学生に対し150万円を支払うこと,本件女子学生は上記告訴を取り消すことなどを内容とする示談が成立し,原告は控訴を取り下げるとともに,本件女子学生は告訴を取り消した(甲7,8)。 (9)平成12年8月上旬ころ,物質工学科所属の学生,大学院生ら220名が,物質工学科C教授(以下「C教授」という。)に対し,原告の免職処分を要求する内容の要望書(以下「本件要望書」という。)を提出した(乙15)。 (10)同年11月12日,原告の停職期間が満了した。 (11)同年11月13日,物質工学科長(当時)D教授(以下「D教授」という。)は,C教授を通じ,原告に対し,次の内容のD教授名義の書面(以下「本件業務命令書」という。)を交付した。 「 E殿当分の間,講義,研究指導,研究活動,学内委員はやらなくてもよいので,次のとおりとする。 1 居室として,情報処理教育施設の一室を当てる。移転の一切は,学科及び学部で行う。 2 化学棟には立ち入らない。 3 学科で指示する学内外のセクシャルハラスメントに関する研修会等に出席する。 4 毎月,セクシャルハラスメントに関する論文を学科長宛てに提出する。(工学部事務室のメールボックスに投函するか,郵送する。)以上物質工学科学科長 D 幹」(12)原告は,その後,本件業務命令書記載の内容に従い,被告大学が用意した情報処理教育施設の一室に移転し,同所で勤務を続け,セクシャルハラスメントに関するレポート等の提出を続けた。 なお,上記施設は,工学部の複数の学科棟からなる大きな建物の脇にある1階建ての建物で,5室 報処理教育施設の一室に移転し,同所で勤務を続け,セクシャルハラスメントに関するレポート等の提出を続けた。 なお,上記施設は,工学部の複数の学科棟からなる大きな建物の脇にある1階建ての建物で,5室からなり,原告が与えられた部屋(以下「本件部屋」という。)は27㎡のゼミナール室であり,他の4室は空き部屋であった(乙42)。 (13)平成14年9月18日,物質工学科長(当時)F教授(以下F教授」という。)は,原告に対し,次の内容の同人名義の書面を交付した。 「 業務命令について平成12年11月13日復職の際手交して,業務命令を発していることについては,本日付をもって下記のとおり解除する。 なお,教育環境の秩序保持に努め,個人に対する中傷やデマを吹聴しないよう注意されたい。 記○ 講義等について平成14年度後期から講義を担当する。 ○ 研究指導について平成14年度後期から研究指導を行う。 ○ 大学院担当について平成15年度から担当する。 ○ 研究活動について研究グループに所属して,その方針に従って活動する。 ○ 校費,旅費について教育研究活動に応じて学科の基準により配分する。 ○ 学内委員について平成15年度から委員を担当する。 ○ 学科会議への出席について学科会議に出席する。 ○ 居室について化学棟2F研究室とする。 ○ 業務報告書について必要としない。 ○ 図書館・食堂・学科建物への接近禁止等について実質的に解消している。 以上」(14)同年9月27日,原告は,以前使用していた物質工学科・生物応用工学科棟内の研究室に戻り,同所において勤務するようになった。 (15)同年10月2日,原告は,平成14年度後期の講義担当に復帰し,同月4日,被告大学工学部は,原告分の職員旅 いた物質工学科・生物応用工学科棟内の研究室に戻り,同所において勤務するようになった。 (15)同年10月2日,原告は,平成14年度後期の講義担当に復帰し,同月4日,被告大学工学部は,原告分の職員旅費及び校費を物質工学科に配分した。 (16)同年11月12日,原告は,物質工学科教室会議に復帰した。 2 原告の請求(訴訟物)原告は,物質工学科長らが行った工学部化学棟への立入禁止等の業務命令は,退職を強要する目的で行われた違法な業務命令であるなどとして,被告に対し,国家賠償法に基づく損害賠償として慰謝料1500万円及び弁護士費用相当損害金150万円並びにこれらに対する違法行為後であり訴状送達日の翌日である平成14年11月26日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を請求している。 3 争点(1)物質工学科長らによる業務命令の違法性(2)原告の損害第3 争点に関する当事者の主張 1 原告の主張(1)本件業務命令の内容D教授らは,原告に対し,以下の業務命令を行った。 ア D教授は,原告に対し,平成12年11月13日,次の業務命令を発した(以下「本件業務命令1」という。)。 ① 当分の間,原告が一切の講義,研究指導,研究活動及び学内委員を行うことを禁止する。 ② 原告の従来の研究室の使用を禁止し,居室として情報処理教育施設の一室を割り当てる。 ③ 原告の工学部化学棟及び生物棟への立入り並びに物質工学科教室会議の出席を禁止するとともに,図書館及び学生食堂への立入り並びに学生及び教職員との会話については,自主的に行動を抑制されるよう強く要請する。 ④ 原告は学科で指示するセクシャルハラスメントに関する研修会等に出席せよ。 ⑤ 原告は,毎月,セクシャルハラスメントに関する論文を学科長宛てに提出せよ。 イ被告大学は,前提となる事実の 要請する。 ④ 原告は学科で指示するセクシャルハラスメントに関する研修会等に出席せよ。 ⑤ 原告は,毎月,セクシャルハラスメントに関する論文を学科長宛てに提出せよ。 イ被告大学は,前提となる事実のとおり,同年4月1日付けで,原告の大学院工学研究科の担当を,正式な手続きを経ないまま違法に罷免した(以下「本件業務命令2」という。)。原告は現在まで大学院の担当を外されたままであり,違法状態が継続している。 ウ平成13年7月13日,物質工学科長(当時)F教授が統括する物質工学科教室会議は,原告を長期出張の扱いとし,平成12年度及び平成13年度の出張費を一切認めなかった(以下「本件業務命令3」という。)。 エ物質工学科長D教授(平成12年度)及び同F教授(平成13年度)は,平成12年度及び平成13年度の校費を一切認めなかった(以下「本件業務命令4」といい,本件業務命令1ないし4を総称して「本件業務命令」という。)。 (2)本件業務命令の違法性ア憲法39条違反等本件業務命令は,いずれも原告に対する不利益処分であり,内容的には懲戒処分に該当するが,以下のような手続上の違法性がある。 (ア)本件業務命令は,教育公務員特例法9条所定の評議会の審査を経ていない。 (イ)行政処分においても憲法39条に定める二重処罰禁止の法理が適用されるところ,本件業務命令は,停職6月の本件懲戒処分が終了した直後,本件懲戒処分の理由である本件セクハラ行為を理由として発せられたものである。したがって,原告は同一の事実について二重に懲戒処分を受けていることになり,本件業務命令は憲法39条に違反している。 イその他の手続違反(ア)本件業務命令は,原告に対し著しく不利益な処分であるにもかかわらず,国家公務員法89条所定の手続きを経ずにされたもので,違法である。 (イ)本件業務 39条に違反している。 イその他の手続違反(ア)本件業務命令は,原告に対し著しく不利益な処分であるにもかかわらず,国家公務員法89条所定の手続きを経ずにされたもので,違法である。 (イ)本件業務命令2は,日付を遡らせて行われたもので,違法である。 ウ本件業務命令は,不必要な義務を命じたものであり,仮に何らかの必要性を認めることができるとしても,職務命令としての相当性を欠き,違法性がある。 すなわち,本件業務命令1により,原告は,本件部屋を居室と定められたが,これは情報処理教育施設とは名ばかりの廃屋と見まごう物置き同然の建物であり,原告はそこに一切の備品もなく強制的に移動させられた。支給されたのは机及び椅子一式のみであり,原告は自ら保管していたFAXとパソコンを自宅から持ち込まなければならなかった。上記情報処理教育施設はいわば反省部屋というべきものであり,原告は,そこに隔離された上で反省文を書くという無意味な作業を命じられた。 エ本件業務命令は,いずれも原告を精神的に追いつめることにより,原告がストレスに耐えきれなくなり,自ら被告大学を退職させるための嫌がらせの一環として行われたものであり,全体が違法行為である。 (2) 本件業務命令をした者らの故意,過失D教授らは,本件業務命令が違法であることを知っていただけでなく,物質工学科の総意として,上記(1)ウのとおり,原告を自ら被告大学を退職するように企図するという悪意をもって,本件業務命令を行った。 (3)これに対し,被告は,本件業務命令は学生らに対する良好な教育研究環境の確保・提供,及び職員らに対する良好な職場環境の確保・提供のための行為であって本件懲戒処分とは別の処分である旨主張する。 しかし,本件業務命令3及び4は,単なる予算の問題であり,学内の秩序維持とは完全に無関係である。 らに対する良好な職場環境の確保・提供のための行為であって本件懲戒処分とは別の処分である旨主張する。 しかし,本件業務命令3及び4は,単なる予算の問題であり,学内の秩序維持とは完全に無関係である。そもそも本件セクハラ行為は原告が泥酔した女子学生をいわゆるラブホテルに連れて行ったというものであり,学内の秩序維持とは無関係である。 職務命令の要件は,① 権限ある上司から発令されたこと,② 職務に関するものであること,③ 職務命令の内容が適法かつ実行可能なものであることであるが,物質工学科長であるD教授に,図書館や学生食堂への立入を管理する権限や原告にセクハラ研修をさせる権限はなく,まして学生との会話を禁止する権限はない。 また,被告は,原告が学生やA技官らを脅迫し,彼らが恐怖を感じたことを強調するが,彼らが現実に原告からの報復を心配した形跡はなく,被告が原告に対して行った「隔離」の必要性を裏付けるものはない。 (4)原告の損害原告は,反省部屋ともいえる情報処理教育施設の一室に,いわば軟禁されたような状況で,来る日も来る日も女性問題に関する報告書を書くことを強要され(そのことを相談するための会話や本来の教育研究活動も禁止され,精神的に孤立させられたことと相まって),精神的に極度のストレスを受けるようになり,このストレスから不眠,頭痛の症状を発症するようになった。そのため,平成13年1月20日から医師の処方で睡眠薬を服用しているが(甲19),このような状態が1年以上続いたため,うつ病を発症し,ついに平成14年9月23日及び同年10月5日の2度にわたり,自殺未遂を行うところまで精神的に追いつめられるに至った(甲20)。 原告のストレスは家庭内での原告の行動にも異常をきたし,妻からも見捨てられて別居している。 このように,原告は,本件業務 わたり,自殺未遂を行うところまで精神的に追いつめられるに至った(甲20)。 原告のストレスは家庭内での原告の行動にも異常をきたし,妻からも見捨てられて別居している。 このように,原告は,本件業務命令により,精神的な病気にまで追い込まれ,生命の危険にさらされ,家庭を崩壊されるに至った。原告の受けた精神的苦痛はこれを金銭に評価すると1500万円を下らない。 弁護士費用は150万円が相当である。 2 被告の主張(1)本件業務命令の内容ア本件業務命令1本件業務命令1の内容は,平成12年11月13日に原告に交付された本件業務命令書記載のとおりである。 したがって,原告主張(1)ア①については,講義,研究活動及び学内委員を行うには及ばないという趣旨に理解すべきであり,同③のうち物質工学科教室会議への出席禁止,図書館及び学生食堂への立入り並びに学生及び教職員との会話の抑止要請については,本件業務命令1の内容を構成していない。 イ本件業務命令2被告大学が,平成12年4月1日付けで,「原告の鳥取大学大学院工学研究科の担当を免ずる」「俸給の調整額は支給しない」との決定を行ったことは認める(甲2)。 ウ本件業務命令3及び4本件業務命令3及び4が命令されたことはない。 平成12年度の旅費及び校費については,停職期間終了後の平成12年12月7日付けで,工学部から物質工学科に対し,原告分の職員旅費3万6000円及び校費29万6000円が配分され(乙36),これらはいずれもC研究室に再配分され,正当な支出目的があれば原告のために支出できる態勢が整っていたが,旅費については原告が出張する機会がなかったため支出されず,校費については原告が使用するセクシャルハラスメント関係の書籍購入に支出されている(乙37の1,2)。 平成13,14年度について たが,旅費については原告が出張する機会がなかったため支出されず,校費については原告が使用するセクシャルハラスメント関係の書籍購入に支出されている(乙37の1,2)。 平成13,14年度については,原告の研究グループの所属が未定であったため,工学部から物質工学科に対する原告分の職員旅費及び校費の配分を留保する取扱いがされ(乙36の3,4),本件業務命令1が正式解除された後である平成14年10月4日付けで,工学部から物質工学科に対して,原告分の職員旅費3万4500円,校費55万5000円が配分され(乙36の5),これらはいずれも原告の主催する環境科学分野に再配分され,原告の教育研究活動のために支出されている。 なお,職員旅費及び校費の具体的配分額が,教官数等の数値を積算根拠として決定されるとしても,このことから,個々の教官が,大学当局に対し,職員旅費等を請求しうる具体的権利を有しているとは到底いえないから,このような観点からも,本件業務命令3及び4が国家賠償法上の違法行為であるとの原告の主張は失当である。 (2)本件業務命令の違法性についてア憲法39条違反等について本件業務命令1は,学生らに対して良好な教育研究環境,職員らに対しては良好な職場環境を確保すべき職務上の義務を負っていた物質工学科長が,鳥取大学における学科長に関する規則(乙4の1)3条に基づいて発したものであり,その法的性質は国家公務員法98条1項所定の職務命令であって,制裁としての性格を有する懲戒処分とは全く異質のものである。 本件業務命令2は,本件懲戒処分のため原告が大学院工学研究科担当の職務を遂行することが困難となったためこれを免じたものであり,その法的性質は国家公務員法98条1項所定の職務命令であって,制裁としての性質を有する懲戒処分とは全く異質なものであ 学院工学研究科担当の職務を遂行することが困難となったためこれを免じたものであり,その法的性質は国家公務員法98条1項所定の職務命令であって,制裁としての性質を有する懲戒処分とは全く異質なものである。 したがって,本件業務命令が懲戒処分であるという前提で,二重処罰を禁止した憲法39条違反等をいう原告の主張は失当である。 イその他の手続違反について(ア)原告は,本件業務命令の手続違反を主張するが,本件業務命令はいずれも原告に対し著しく不利益な処分(国家公務員法89条1項)を行うものではないから,処分の事由を記載した説明書を交付する必要はなく,D教授らの行った手続に何ら違法はない。 (イ)本件業務命令2に関し,被告大学における大学院担当は,4月下旬ころまでに大学院生らが当該年度に専攻する研究過程を決定するのを受けて,5月上旬ころから5月半ばころにかけて各教員間の調整が行われた後,4月1日付けに遡って被告大学学長が発令するというのが例年の取扱いであって,本件で被告大学が原告の大学院工学研究科担当を免じ,大学院を担当することによる俸給調整額は支給しないこととしたことについて,例年どおりの取扱いが行われたにすぎないのであるから,これを正式な手続を経ていないなどとする原告の主張は失当である。 ウ本件業務命令の必要性について原告は,本件セクハラ行為の後,本件懲戒処分を受けるまでの間,本件セクハラ行為を隠ぺいするため,本件女子学生及び本件セクハラ行為の相談を受けていた友人の学生らを罵倒し,卒業を白紙に戻すと述べて脅迫するなどの行為をした。また,原告は,本件懲戒処分中,学生らが本件要望書を提出したことを知り,平成12年10月15日,数名の学生に対し,「これは刑事事件に相当すると思っております。…至急,手紙かメールで小生に謝罪してください。時間が ,本件懲戒処分中,学生らが本件要望書を提出したことを知り,平成12年10月15日,数名の学生に対し,「これは刑事事件に相当すると思っております。…至急,手紙かメールで小生に謝罪してください。時間がありません。」などと脅迫めいた電子メールを送付し,別の学生に対し,本件要望書の首謀者を教えるよう要求した脅迫めいた手紙を送付し,学生らを畏怖させた。さらに,原告は,同月11日,本件女子学生から事情を聴取したA技官に対し,「良い解決法があれば直ちに実行ください。時間は残されておりません。」などと脅迫めいた要求を行い,A技官を畏怖させた。なお,原告は,平成13年10月25日ころ,F教授に宛てた電子メールにおいて,A技官作成の聴取書の信用性を執拗に攻撃し始めており,この事実を知ったA技官は,後に,物質工学科職員宛てに原告の報復が恐ろしいとの電子メールを送っている。 本件業務命令1は,このような状況を踏まえ,第1次的に学生らに対する良好な教育研究環境を確保・提供し,第2次的に(すなわち,原告の攻撃の対象となっていた学生が修士課程を修了した後である平成14年4月から同年9月18日までは)職員らに対する良好な職場環境を確保・提供するという正当な目的によってされたものであり,違法ではない。 本件業務命令2は,本件懲戒処分のため原告が大学院工学研究科担当の職務を遂行することが困難となったためこれを免じたものであり,何ら不当性はない。 (3)本件業務命令をした者らの故意,過失争う。 (4)原告の損害争う。 第4 当裁判所の判断 1 証拠(甲1ないし4,6ないし8,11ないし29,31ないし34,乙7ないし37,42ないし45,50ないし56,58ないし77〔各枝番を含む。〕,証人D,同F及び原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる(争いの ,11ないし29,31ないし34,乙7ないし37,42ないし45,50ないし56,58ないし77〔各枝番を含む。〕,証人D,同F及び原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる(争いのない事実を含む。)。 (1)本件セクハラ行為後,本件懲戒処分までア 3月8日(特に断らない限り,平成12年),原告は,かねてから思いを寄せていた本件女子学生を,卒業祝いであると誘って,鳥取市内の居酒屋で飲食し,強度の酩酊状態にあった本件女子学生をラブホテルに連れて行き,翌朝にかけて,熟睡していた本件女子学生の衣服及び下着を脱がせ,目を覚ました本件女子学生をベッドに押し倒すなどの本件セクハラ行為をした。 イ 3月9日,原告は,本件女子学生を原告研究室のスキーに何度も誘い,他の学生にも本件女子学生を誘うよう何度も働きかけたが,本件女子学生は原告の誘いを断った。 ウ 3月10日,原告は,本件女子学生に対し,早朝から夜中にかけて,自己の本件女子学生に対する恋愛感情等を書いた電子メールを6通送付した。原告は,本件女子学生が実験室にいなかったため腹を立て,残って実験をしていた学生を怒鳴り付けるなどした(乙8の37頁)。 本件女子学生は,本件セクハラ行為後,本件女子学生の同級生で原告研究室に所属するG(以下「G」という。),H(以下「H」という。)らに相談していたが,原告が電子メールを消去するかもしれないと考え,鍵の掛かっている実験室内に廊下側の天窓から入り,原告から送られてきた電子メールをフロッピーディスクに保存した。 エ 3月11日,原告は,本件女子学生が鍵を掛けていたはずの実験室内に入ったことを知り,他の学生が協力したことを疑って,他の学生を怒鳴り付けるなどした(乙8の10頁ないし12頁)。 原告は,本件女子学生に対し,原告運転の車両ないし喫茶店内 掛けていたはずの実験室内に入ったことを知り,他の学生が協力したことを疑って,他の学生を怒鳴り付けるなどした(乙8の10頁ないし12頁)。 原告は,本件女子学生に対し,原告運転の車両ないし喫茶店内において,今後1週間恋人として付き合ってほしい,付き合わなければG,Hにかけた情(卒論作成において与えた便宜)を白紙に戻し,Gらの卒業論文を取り消すなどと述べ,本件女子学生に交際を迫ったが,本件女子学生はこれに応じなかった。原告は,Gが交際を邪魔しているのだろうなどと述べた。 原告は,同日午後4時ころから午後8時ころまでの間,Gを自分の研究室に呼び,約4時間にわたって詰問したため,Gは泣き出した。 オ 3月12日,原告は,Gを自分の研究室に呼び,前日と同様約4時間にわたって詰問した。本件女子学生が,Hら原告研究室の同級生らと共にGの自宅を訪れ,何を言われたのか聞くと,Gは,原告から本件女子学生とのことに首を突っ込むな,邪魔をするなと言われたと返答した。また,その際,本件女子学生は,G,Hらに,原告から恋人として付き合わなければG及びHの卒業論文を取り消すと言われたことを話した(乙43第89頁以降,乙44第204頁以降)。 原告は,本件女子学生に対し,交際を求める内容のメールを数通送付した。 カ 3月13日,原告は,本件女子学生に対し,G宛として,自分が本件女子学生に思いを寄せていたこと,本件女子学生と交際する希望を捨てていないこと,Gを信頼していないことに加え,「君には君の卒論を書いてもらう。当たり前のこと!序論の僕が書いた所は消し,自分の序論にすること!本文の反応機構も削除。実験項は過去に知られていない,君が新しく発見した所だけにしなさい!私情を捨てた当然の事として自分の卒論にしてください!!!!!!!」と記載した電子メールを送付した(乙8 と!本文の反応機構も削除。実験項は過去に知られていない,君が新しく発見した所だけにしなさい!私情を捨てた当然の事として自分の卒論にしてください!!!!!!!」と記載した電子メールを送付した(乙8の153頁)。 キ 3月24日,本件女子学生は,被告大学を卒業した。 原告研究室には,4年生として,本件女子学生のほか,G,H,I(以下「I」という。),J(以下「J」という。),K(以下「K」という。)らが在籍していたが,H,I,J及びKの4名は,大学院に進学し,他の研究室に所属した。 ク 3月28日,本件女子学生は,A技官に対し,本件セクハラ行為に関し相談に乗ってほしい旨連絡した。A技官は,職員に対する相談員ではあったが,学生に対する相談員ではなかったため,学生相談員に相談した方が良いのではないかと答えたが,本件女子学生は,知らない人よりも面識のあるA技官に相談したいと述べたので,3月31日に面談することとなった。 A技官は,F教授(当時工学部長)に,上記セクシャルハラスメント相談の申出があったことを報告した。 ケ 3月30日,F教授は,L 副学長(当時)を通じ,B学長に対し,セクハラの事実関係が明らかになるまで,原告に対する教授昇任発令を留保されたい旨述べ,B学長はこれを了承した(1月17日,工学部教授会において,原告の教授昇任は相当であるとの議決がされていた。)。 コ 3月31日,A技官は,H及びI同席の下,本件女子学生と面談し,4月1日付け「セクシャルハラスメント相談」と題する調書(乙8の10頁ないし12頁。以下「A調書」という。)を作成した。 同日,B学長は,原告に関する3月8日付け人事異動伺(4月1日付けで原告に対し教授昇任発令をする旨)の決裁を廃案とするとの決裁をした。 サ 4月2日,D教授(当時物質工学科長)は,物質工学科教授会 同日,B学長は,原告に関する3月8日付け人事異動伺(4月1日付けで原告に対し教授昇任発令をする旨)の決裁を廃案とするとの決裁をした。 サ 4月2日,D教授(当時物質工学科長)は,物質工学科教授会を開催し,原告に対し本件セクハラ行為に関する事実確認を行った。原告は,本件女子学生とラブホテルに行ったことは認めたものの,本件女子学生との仲は「大人の恋愛」だったと述べ,セクシャルハラスメントであることを否定した。教授会終了後,F教授は,原告に対し,4月3日に予定されていた4月1日付け教授昇任発令は行われない旨伝えた。 シ 4月3日,学生相談員Nら2名が,H及びI同席の下,本件女子学生と面談し,4月4日付け調書(乙8の7頁ないし9頁)を作成した。 ス 4月4日,工学部は,被告大学セクシャル・ハラスメント学生相談委員会の調査依頼を受け,工学部実情調査委員会を設置して実情調査を開始した。 セ 4月6日,工学部実情調査委員会の調査として,M教授(以下「M教授」という。)及びO教授(以下「O教授」という。)が,もとC研究室(原告研究室を含む)所属の学生数名(H,I,J,K及びP)及びQ技官(以下「Q技官」という。)らから事情聴取を行った。学生らは,M教授らに対し,原告は本件女子学生に対し周囲の者からも分かるような好意的態度をとっていたこと,本件セクハラ行為後,Gが原告から呼び出され,卒業はどうにでもなると言われたと聞いていること,原告は自分の思い通りにならないと激高するところがあり,その点が恐ろしいこと,C研究室の修士課程の学生にかなりの動揺があり,原告と顔を合わせたくないので研究室に行けない状態であり,問題をできるだけ早く解決してほしいこと,原告の指導は今後絶対に受けたくないことなどを述べた。 同日,D教授が上記の学生らを引率して廊下を歩いていたとこ わせたくないので研究室に行けない状態であり,問題をできるだけ早く解決してほしいこと,原告の指導は今後絶対に受けたくないことなどを述べた。 同日,D教授が上記の学生らを引率して廊下を歩いていたところ,偶然原告と遭遇し,Hら学生が後ずさりし立ちつくしたことがあった。 ソ 4月13日から5月12日までの間,原告は,F教授の要請を受け,自宅謹慎した。 タ 4月27日,被告大学は,本件セクハラ行為について懲戒処分審査を行い,原告に対しては停職6月の懲戒処分を行うのが相当である旨を決議した(甲6,乙9)。 チ 5月8日,物質工学科教職員19名は,原告に対し,自らの意思で辞職することを求める旨の書面を交付した(甲13)。 ツ 5月12日,B学長は,原告に対し,停職6月(5月13日から11月12日まで)の本件懲戒処分を行い,原告はこれに服した。 (2)本件懲戒処分後,停職期間満了までア 5月15日(特に断らない限り,平成12年),B学長は,本件懲戒処分により大学院の授業及び研究指導が不可能となったとの工学部の見解(乙13)を踏まえ,原告に対し,同年4月1日付けをもって,被告大学大学院工学研究科の担当を免ずる,俸給の調整額は支給しないとの決定をした(甲2)。 イ 5月31日,D教授は,原告に対し,辞職を求める趣旨の電子メールを送付した(甲15)。この後,8月22日までの間,D教授,R教授及びC教授から原告に対し,辞職を求め,又は進退を決するよう求める旨の電子メールが,度々送付された。 ウ 7月5日,本件女子学生は,本件セクハラ行為は準強制わいせつ罪及び強制わいせつ罪に該当するとして,原告を鳥取地方検察庁に刑事告訴し(甲7),8月1日,本件セクハラ行為により損害を被ったとして,鳥取地方裁判所に不法行為に基づく損害賠償の訴えを提起した(乙27)。原告は,本件セ 罪に該当するとして,原告を鳥取地方検察庁に刑事告訴し(甲7),8月1日,本件セクハラ行為により損害を被ったとして,鳥取地方裁判所に不法行為に基づく損害賠償の訴えを提起した(乙27)。原告は,本件セクハラ行為は恋愛の駆引きの延長上の行為であり,本件女子学生の合意があったと主張してこれを争ったが,平成13年1月25日,一部認容判決(認容額110万円)が言い渡された。 原告は控訴したが,同年3月1日,訴訟外において,原告が本件女子学生に対し150万円を支払うこと,本件女子学生は上記告訴を取り消すことなどを内容とする示談が成立し,原告は控訴を取り下げるとともに,本件女子学生は告訴を取り消した(甲7,8)。 エ 8月上旬ころ,H,I,J,Kらが中心となって,物質工学科所属の学生,大学院生ら220名が,C教授に対し,原告の免職処分を要求する内容の本件要望書を提出した(乙15)。本件要望書には,原告が本件懲戒処分後通常勤務に戻ることへの抗議,原告が本件女子学生に対し,執拗に交際を迫り,要求に従わなければ本人のみならず友人学生らの卒業もさせないなどの言動を繰り返したこと,本件女子学生から相談を受けた学生にも連日,数時間にわたり口止めや罵倒を続けたこと,かかる原告の行為に気づいた他の学生に対しても同様に口止めをし,罵倒したこと,原告の教育者としての適格性は極めて疑問であることなどが記載されていた。 オ 9月8日,D教授ほか物質工学科教授5名は,被告大学内において原告と面談し,学生らから原告の辞職を求める署名が提出されていることなどを告げ,原告の進退を尋ねたところ,原告は,現時点では何ともいえないと返答した。D教授らは,原告に対し,復職後の勤務態様に関し,善良な教育研究環境の保持を考えれば,授業担当は当分の間難しいこと,卒業論文及び研究指導も当分の間難しい ,原告は,現時点では何ともいえないと返答した。D教授らは,原告に対し,復職後の勤務態様に関し,善良な教育研究環境の保持を考えれば,授業担当は当分の間難しいこと,卒業論文及び研究指導も当分の間難しいこと,セクシャルハラスメントに関する勉強をし月1回程度レポートを提出してもらう必要があると述べたところ,原告は,やむを得ないと思うと返答した。また,D教授らは,原告に対し,上記勤務態様であれば,研究室も不要になると述べたが,原告は返答しなかった(乙18)。 カ 9月25日,10月8日,及び10月11日,原告は,F教授に対し,学部長として本件要望書の当否に関する考えを明らかにすること,学生に対する早急な処分を行い,本件要望書の首謀者の氏名を明らかにすることなどを希望し,被告大学が対処しないのであれば名誉毀損として刑事事件にするつもりであるとする電子メールを送付した(乙19ないし21)。 キ 10月11日,原告は,A技官に対し,本件要望書の首謀者を名誉毀損として刑事告発するつもりである,本件要望書関与者からの謝罪は当然であり,原告はA技官が本件要望書の詳細を知っていると推測しているとの文章に続き,「良い解決法があれば直ちに実行ください。時間は残されておりません。」などと記載した電子メールを送付した(乙23)。 ク 10月15日,原告は,Pに対し,本件要望書記載の事実は虚偽であり,本件要望書は刑事事件に相当すると考えていること,及び「万が一他者からの噂を鵜呑みにし,関与していたなら,至急,手紙かメールで小生に謝罪してください。時間がありません。」と記載した電子メールを送付した(乙24)。Pは,F教授に対し,上記電子メールを転送し,対処を求めた。 原告は,同日ころ,H,I,J及びKに対しても,Pに対する電子メールとほぼ同内容の手紙を送付した(乙25, 子メールを送付した(乙24)。Pは,F教授に対し,上記電子メールを転送し,対処を求めた。 原告は,同日ころ,H,I,J及びKに対しても,Pに対する電子メールとほぼ同内容の手紙を送付した(乙25,26,証人D)。 ケ 10月18日,原告は,F教授に対し,復帰後の命令には従うつもりであるが,命令は文書で伝えてほしいとの電子メールを送付した(乙29の1資料8のメール(48))。 コ 11月12日,原告の本件懲戒処分に基づく停職期間が満了した。 (3)停職期間満了後(平成12年)ア 11月13日(特に断らない限り,平成12年),D教授は,原告に対し,当分の間,① 学生に対する講義及び研究指導,学内委員,並びに研究活動を免じる,②居室として,本件部屋を当て,移転の一切は工学部及び物質工学科で行う,③ 化学棟に立ち入ることを禁止する,④ 物質工学科が指示する,学内外のセクハラに関する研修会等に出席すること,⑤ 毎月,セクハラに関する論文を学科長宛てに提出することという本件業務命令1(その法的性質は国家公務員法98条1項所定の職務命令であるが,便宜上「業務命令」という。)を出し,C教授が原告にこれを伝えた。また,C教授は,原告に対し,可能な限り他の者とは会わないように,とりわけ学生とは会わないようにと強く述べた。 原告は,C教授に対し,本件業務命令1を文書化してほしいと述べたため,C教授は,原告に対し,D教授作成に係る本件業務命令書を交付した。 原告は,直ちに本件部屋に赴いたが,本件部屋の中には,電話とモップがあるのみで,椅子や机もなかった。 D教授らは,原告の研究室内にある荷物を近日中に本件部屋へ運び込むことを予定しており,C教授はそのことを原告に伝えた。原告は,C教授を通じ,原告の研究室を見せてほしい旨要請したが,D教授は,原告が学生と接触 は,原告の研究室内にある荷物を近日中に本件部屋へ運び込むことを予定しており,C教授はそのことを原告に伝えた。原告は,C教授を通じ,原告の研究室を見せてほしい旨要請したが,D教授は,原告が学生と接触することをおそれ,これを拒否した。D教授らは,土曜日であれば学生がいないので問題がないと考え,11月18日(土曜日)に荷物を移動させることとし,そのための準備を進めた。 イ 11月14日ないし15日ころ,被告大学の事務官が,本件部屋へ長机,椅子及び原告のパソコンを運んだ。 同日ころ,原告は,C教授に対し,11月18日に荷物を移動させるのであれば,休日出勤命令を出すように要求した。C教授と工学部事務長は,原告が屁理屈を言っているがそのままにしておけば原告の方から折れてくるだろうと考え,荷物の移動を中止した。その後,被告大学が原告の荷物を本件部屋に移動させることはなかった。 ウ同年12月から平成13年12月まで,原告は,毎月,セクシャルハラスメント,女性問題等に関する長文の論文を作成し,D教授ないしF教授に提出した(乙50の1ないし13)。 (4)停職期間満了後(平成13年)ア 4月2日(特に断らない限り,平成13年),原告は,人事院に対し,教授昇任処分が取り消されたとして,審査請求をした(乙28)が,同請求は,平成14年11月8日,却下された(甲11)。 イ 4月9日,原告は,F教授からの要請に応じ,M教授(当時工学部長)に対し,謝罪文を提出した(乙30)。 ウ 4月16日,原告は,人事院に対し,教授への地位回復,本件業務命令1の撤回等を求める行政措置要求を行った(乙29の1)。 エ 4月17日,M教授は,本件部屋において,原告と面談した。M教授は,原告が現場復帰するのは相当なリスクがあることを告げ,原告に対し,本件女子学生に行った行為の何が 置要求を行った(乙29の1)。 エ 4月17日,M教授は,本件部屋において,原告と面談した。M教授は,原告が現場復帰するのは相当なリスクがあることを告げ,原告に対し,本件女子学生に行った行為の何が悪いと思い,誰に何について謝っているのか,現場復帰後にはどう対処するのかなどを書いた書面を提出するように述べた(乙30)。 オ 4月26日,原告は,M教授に対し,「謝罪反省文」を提出した(乙32)。上記謝罪反省文には,本件女子学生に対し悪意を抱いたことはないが,「周囲に多大な御迷惑をかけたことには,深く反省し重ねて謝罪いたします。」,本件女子学生との間の民事訴訟判決の結論には不満があることなどが記載されていた。 カ 6月13日,F教授は,H,I,J及びKと面談したところ,同人らは,原告に対し今でも恐怖感を持っていると述べた。 キ 9月7日から平成14年5月24日にかけて,原告は,Q技官に対し,平成12年4月分の俸給袋の交付を何度も要求するメールを出した。 Q技官は,平成14年2月7日,F教授に対し,原告が恐ろしいとして,対処を求めるメールを送付した。 ク 10月21日,物質工学科教室会議は,上記謝罪反省文等を検討した結果,「セクハラ行為を行ったと原告は認めていないし,反省していない。したがって,将来同種の行為を繰り返すことを憂慮する。」との結論を出し,F教授は原告に対しその旨伝えた。 ケ 10月25日ころ,原告は,F教授宛の電子メールにおいて,A調書は虚偽であるなどと述べ,上記事実を知ったA技官は,物質工学科職員に対し,10月29日,原告の報復が恐ろしいので,原告が物質工学科に復帰すれば,被告大学を辞めようと考えているとの電子メールを送付した(乙23)。 コ 10月30日,F教授は,原告に対し,電子メールをもって,本件業務命令1⑤(毎月,セクシャル で,原告が物質工学科に復帰すれば,被告大学を辞めようと考えているとの電子メールを送付した(乙23)。 コ 10月30日,F教授は,原告に対し,電子メールをもって,本件業務命令1⑤(毎月,セクシャルハラスメントに関する論文を学科長宛てに提出すること)を解除することを伝えた。 サ 11月5日ないし7日ころ,F教授は,原告に対し,図書館への立入を禁止するとの業務命令は出していないと述べたため,原告はこれ以降,自由に図書館へ行き始めた(証人F,原告本人)。 シ 11月20日,原告は,被告大学が開催したセクシャルハラスメント研修会に参加した(乙51)。 (5)停職期間満了後(平成14年)ア 1月18日(特に断らない限り,平成14年),F教授は,原告に対し,電子メールにより,原告が物質工学科の一員として教育研究に携われることを模索していることを伝え,復帰の手順及び要望等を申し出るように述べた。 イ 2月28日,原告は,被告大学が開催したセクシャルハラスメント研修会に参加した(乙52)。 ウ 3月7日,原告は,物質工学科教室会議において開催された「E先生の考えを聞く会」に出席し,本件セクハラ行為に対する自己の考えを述べた(乙35,69)。 エ 4月15日ころ,工学部教授会は,原告のセクハラに対する考え方では職場の一員として信頼できないとの結論を出し,原告の平成14年度4月時点における現場復帰は見送られた(乙35)。 オ 7月23日ないし25日,被告大学において,人事院の事実調査が行われた。 人事院担当者は,F教授に対し,人事院があっせん案を提示するのは難しいので,被告大学側が解決に向けて動くようにと勧めた。 カ 9月18日,F教授は,原告に対し,前提となる事実(13)記載の文書を交付し,本件業務命令1を解除した。 キ 9月27日,原告は,以前使用していた生物 被告大学側が解決に向けて動くようにと勧めた。 カ 9月18日,F教授は,原告に対し,前提となる事実(13)記載の文書を交付し,本件業務命令1を解除した。 キ 9月27日,原告は,以前使用していた生物応用工学科棟内の研究室に戻り,同所において勤務するようになった。 ク 10月2日,原告は,平成14年度後期の講義担当に復帰し,10月4日,被告大学工学部は,原告分の職員旅費及び校費を物質工学科に配分した。 ケ 11月12日,原告は,物質工学科教室会議に復帰した。 2 本件業務命令の内容について(1)本件業務命令1についてア前記1(3)アに説示したとおり,当時の物質工学科長であるD教授は,原告に対し,平成12年11月13日,① 学生に対する講義及び研究指導,学内委員,並びに研究活動を免じる,② 居室として,本件部屋を当て,移転の一切は工学部及び物質工学科で行う,③ 化学棟に立ち入ることを禁止する,④ 物質工学科が指示する,学内外のセクハラに関する研修会等に出席すること,⑤毎月,セクハラに関する論文を学科長宛てに提出することを内容とする本件業務命令1(その法的性質は,国家公務員法98条1項所定の職務命令である。なお,鳥取大学における学科長に関する規則〔乙4の1〕3条参照。)を発したことが認められる。 イこの点に関し,被告は,本件業務命令1①は,講義,研究活動及び学内委員を行うには及ばないという趣旨であり,本件業務命令1に含まれていないかのような主張をする。しかし,本件業務命令1①は,本件業務命令書柱書きに明示されており,また,本件業務命令1の原案となった平成12年9月29日付け「E助教授復職後の対応について」と題する書面(乙73)にも,「教育環境を悪化させないための措置」と並んで「工学部の授業及び卒業研究指導を担当させない。」,「工学研究科 った平成12年9月29日付け「E助教授復職後の対応について」と題する書面(乙73)にも,「教育環境を悪化させないための措置」と並んで「工学部の授業及び卒業研究指導を担当させない。」,「工学研究科の授業を担当させない。」「学内及び工学部内の各種委員会の委員は担当させない。」と記載されていることによれば,上記事項は本件業務命令1の内容を構成しているというべきである。なお,本件業務命令1①の研究活動に関し,本件業務命令書には「研究活動…はやらなくてもよい」と研究活動を免除するかのような記載がされているものの,研究活動は,講義等と異なり,他者への義務よりもむしろ原告自らのために行う側面が強く,他の業務命令の内容や,本件部屋の状況,運び込まれた物品などを総合考慮すると,本件業務命令1は,原告に対し,研究活動義務を免除するのみならず,被告大学内における研究活動を事実上禁止する趣旨に理解することができる。 ウ他方,原告は,本件業務命令1には,生物棟への立入りを禁止するとともに,図書館及び学生食堂への立入り並びに学生及び教職員との会話については,自主的に行動を抑制されるよう強く要請するという事項も含まれる旨主張する。 しかしながら,これらの事項は,上記書面(乙73)にも全く記載されておらず,原告もこれらをC教授から聞いたのみであり,命令権者であるD教授からは聞いたことがない旨供述している。また,仮に原告の主張に従ったとしても,会話を禁止する部分については,「要請する」という,原告の意思に委ねられた文言となっており,原告も本件業務命令1の直後図書館へ行ったことがあることが認められる(原告本人)。 これらの事情によれば,C教授は,原告に対し,可能な限り他の者とは会わないように,とりわけ学生とは会わないようにと強く述べたことは認められるが,それ以上の とがあることが認められる(原告本人)。 これらの事情によれば,C教授は,原告に対し,可能な限り他の者とは会わないように,とりわけ学生とは会わないようにと強く述べたことは認められるが,それ以上のことを述べたとは認められず,また,上記発言も職務命令には含まれておらず,C教授が原告に任意に要請したにとどまると認めるのが相当である。 原告は,平成14年9月18日に交付された書面(前提となる事実(13))の記載から,図書館への立入禁止等が業務命令であったことが前提となっていると主張するが,この点は原告と被告との主張が当時から対立していたものであり,争う実益がないから原告の言い分に会わせたとする被告の主張も一応合理的であり,上記認定を覆すに足りない。 エなお,本件業務命令書には,物質工学科学教室会議の出席を禁止することは明示的に記載されていないが,物質工学科学教室会議への出席は物質工学科における研究活動に付随する行為というべきであるから,研究活動を免ずるとの条項に含まれていると解すべきである。 (2)本件業務命令2について前記1(2)ア記載のとおり,平成12年5月15日,B学長は,本件懲戒処分により大学院の授業及び研究指導が不可能となったとの工学部の見解を踏まえ,原告に対し,同年4月1日付けをもって,大学院工学研究科の担当を免ずる,俸給の調整額は支給しないとの決定をした。これは,本件業務命令1と同様,職務命令(国家公務員法98条1項)に該当する。 (3)本件業務命令3,4について証拠(乙36の1ないし5,乙53ないし55,58ないし67)によれば,以下の事実が認められる。 被告大学において,職員旅費及び校費の配分は,教員等の頭数に応じて,被告大学から各学部へ,学部から各学科へ,学科から各研究グループへと順次配分されている。 平成12 ,以下の事実が認められる。 被告大学において,職員旅費及び校費の配分は,教員等の頭数に応じて,被告大学から各学部へ,学部から各学科へ,学科から各研究グループへと順次配分されている。 平成12年度において,被告大学は,原告分を含み工学部へ予算配分し,工学部は,原告が本件懲戒処分により物質工学科助教授としての研究教育活動を停止されていたため,原告分を含まず物質工学科へ予算配分し,原告分の職員旅費及び校費は,工学部に共通経費として留保された。その後,平成12年12月,工学部は,本件懲戒処分の期間が満了したことを受け,原告の職員旅費及び校費の約半年分を物質工学科へ追加配分し,物質工学科は,原告が所属していたC研究室へこれを追加配分した。その後,追加配分された予算のうち,7450円が書籍代として支出された。 平成13年度において,被告大学は,原告分を含み工学部へ予算配分し,工学部は,平成12年度末にC教授が退官し原告が所属すべき研究室が未定であったため,原告分を含まず物質工学科へ予算配分し,原告分の職員旅費及び校費は,工学部に共通経費として留保された。原告において支出が必要であれば,工学部から直接支出されることとなった。もっとも,平成13年度は,原告分の予算は全く支出されなかった。 平成14年度においても,平成13年度と同様,原告分の職員旅費及び校費は工学部に留保され,原告において支出が必要であれば,工学部から直接支出されることとなった。もっとも,平成14年9月18日,本件業務命令1が解除されたため,同年10月ないし11月,原告分の職員旅費及び校費は,工学部から物質工学科へ,物質工学科から新たに原告が所属することとなったE研究室へ順次配分され,これらは原告の出張や研究教育活動に使用された。 この点に関し,原告は,原告に対し職員旅費及び 校費は,工学部から物質工学科へ,物質工学科から新たに原告が所属することとなったE研究室へ順次配分され,これらは原告の出張や研究教育活動に使用された。 この点に関し,原告は,原告に対し職員旅費及び校費を一切認めない旨の業務命令があったと主張するが,かかる命令がされたと認めるに足りる証拠はない。なお,上記に認定した予算配分等は,被告大学内部における予算上の措置であって,原告に対する指揮命令ではないから,原告に対する職務命令ないし業務命令でないことは明らかである。 3 本件業務命令の違法性以上を前提として,本件業務命令が原告に対する違法行為となるか否かを検討する。 (1)本件業務命令の手続的違法性原告は,本件業務命令が実質的な懲戒処分であるとした上で,これらの命令は,教育公務員特例法9条や憲法39条に反し,手続的に違法であると主張するので,以下,検討する。 ア本件業務命令1について前記1において認定したとおり,原告は,本件セクハラ行為後,本件女子学生に対しG,Hらの卒業を妨害するかのような言動を行い,本件女子学生と交際するための障害と考えたGを数時間に渡って詰問し,現に,Gに対し,卒業間近になって,同人の卒業論文のうち原告の指導に寄るところが大きい部分を削除するよう要求するなど大きな圧力を加え,その結果,H,Iらは,原告を強く畏怖していた。さらに,原告は,本件懲戒処分後もH,I,A技官らに対し,本件要望書の首謀者を知らせることや謝罪を要求し,本件業務命令1の解除が検討された平成13年から14年にかけても,A技官やQ技官を非難する電子メールを送付するなど著しく相当性を欠く行動を行っていた。そして,被告大学も,本件セクハラ行為の事実調査等を通じ,かかる事実経過を十分認識していた。これらの事実に照らせば,本件業務命令1の目的は,当初 ルを送付するなど著しく相当性を欠く行動を行っていた。そして,被告大学も,本件セクハラ行為の事実調査等を通じ,かかる事実経過を十分認識していた。これらの事実に照らせば,本件業務命令1の目的は,当初は学生らに対する良好な教育研究環境を確保,提供し,平成14年4月以降は職員らに対する良好な職場環境を確保,提供することにあったと認めるのが相当である。 原告は,本件業務命令1は,本件セクハラ行為を二重に懲罰する目的で行われた実質的な懲戒処分であり,教育公務員特例法9条や憲法39条に反する旨主張するが,本件業務命令の目的は上記のとおりであるから,仮に本件業務命令1により原告が不利益を被ったとしても,それが業務命令として相当性を欠くことにより違法となるか否かはともかく,実質的な懲戒処分と認めることはできず,上記法令違反による手続的な違法があるとは認められない。 イ本件業務命令2について被告大学が,本件業務命令2により,大学院の担当を免じたのは,原告が本件懲戒処分により,大学院の職務を遂行することができなくなったことによるものと認められ,実質的な懲戒処分が改めて加えられたと認めることはできない。 したがって,本件業務命令2に,原告が主張する手続的な違法はない。 ウ本件業務命令3,4上記2(3)のとおり,本件業務命令3,4が,原告に対する職務命令ないし業務命令であるとはいえず,実質的な懲戒処分と解することもできない。 したがって,本件業務命令3,4に,原告が主張する手続的な違法はない。 エ以上によると,本件業務命令を懲戒処分と解することはできず,教育公務員特例法9条違反や憲法39条違反の問題は生じない。 (2)その余の手続違反についての判断ア本件業務命令を懲戒処分と解することができないのは,上記(1)のとおりであり,後記(3)に述べるとこ 公務員特例法9条違反や憲法39条違反の問題は生じない。 (2)その余の手続違反についての判断ア本件業務命令を懲戒処分と解することができないのは,上記(1)のとおりであり,後記(3)に述べるところによると,違法性を認めることができたとしても,直ちに,国家公務員法89条の著しく不利益な処分であるとまではいえず,同条所定の手続違反があるとはいえない。 イ本件において,大学院工学研究科の担当を免じ,俸給の調整額は支給しないとの4月1日付けの決定が5月15日に行われており,手続上好ましいとはいえないが,そのこと自体によって,原告に精神的損害を与えたとは考えられず,原告の主張する不法行為を構成するとはいえない。 (3)本件業務命令1の相当性ア学生に対する講義,研究指導等を免じた点について大学は,学術の中心として,広く知識を授けるとともに,深く専門の学芸を教授研究し,知的,道徳的及び応用的能力を展開させることを目的とするものであり(学校教育法52条),大学助教授たる原告にとって,学生に対する教育,指導は,研究活動と並んで職務の中核をなしているから,これを制限するためには,かかる制限を正当化し得るに足りる相当性が必要である。しかし,他方,教育は,単に知識を授けるための作業ではなく,学生と教員との人格的つながりを通じて行われるものであるから,教員には高い倫理性,道徳性が要求され,何よりも学生との間の強い信頼関係が不可欠である。 本件において,原告は,前記1のとおり,本件セクハラ行為後,本件女子学生に対しG,Hらの卒業を妨害するかのような言動を行い,本件女子学生と交際するための障害と考えたGを数時間に渡って詰問するなどし,その結果,H,Iらは,原告を強く畏怖し,さらに,物質工学科所属の学生ら220名は,本件要望書を提出し,原告から教育を受ける 件女子学生と交際するための障害と考えたGを数時間に渡って詰問するなどし,その結果,H,Iらは,原告を強く畏怖し,さらに,物質工学科所属の学生ら220名は,本件要望書を提出し,原告から教育を受けることに拒否的な態度を表明するに至った。加えて,原告は,本件懲戒処分により停職中にもかかわらず,本件要望書の首謀者と考えたH,Iらに謝罪を要求する手紙を送付している。 かかる事実によれば,原告は,本件懲戒処分の期間が満了した平成12年11月13日の時点において,学生からの信頼を失っており,本件懲戒処分の期間満了後,直ちに学生に対する指導を行わせた場合,場合によっては学生による授業拒否等大きな混乱が発生した可能性も認められ,しかも,かかる事態は,上記にあげた一連の著しく相当性を欠く行為により,原告が自ら招いた結果といわざるを得ない。また,平成12年9月8日,原告自身も,直ちに従来通り学生に対する指導が行えないことに対し,やむを得ない旨の返答をしている。 以上によれば,平成12年11月13日の時点において,学生に対する講義,研究指導等を免じたことには相当の合理性があったものというべきであり,本件業務命令1のうち,学生に対する講義,研究指導等を免ずる部分は職務命令として適法であったものと認められる。 しかし,本件業務命令1は,期限を定めることなく命じられ,結局は,本件懲戒処分による停職期間が満了した後,約1年10か月間継続されたのであるが,それだけの期間,本件業務命令1が必要であったかについては,別途考慮する必要があるところ,原告に対して恐怖心を抱いていたと認められるHらは,平成12年4月に大学院に進学し,平成14年3月には,修士課程を修了する予定であったことを考えると,遅くとも,平成14年4月以降も本件業務命令1を継続しなければならなかったと認 と認められるHらは,平成12年4月に大学院に進学し,平成14年3月には,修士課程を修了する予定であったことを考えると,遅くとも,平成14年4月以降も本件業務命令1を継続しなければならなかったと認めることは困難である。 そうすると,上記の措置は,平成12年11月13日の時点においては,適法であったと認められるものの,少なくとも,平成14年4月以降,同年9月18日まで継続したことは違法といわざるを得ない。 イセクシャルハラスメントに関する研修会等に出席し,毎月,セクシャルハラスメントに関する論文を提出することを命じた点について本件において,原告が前提となる事実記載の本件セクハラ行為を行ったことは前記1(1)のとおりであり,かつ原告がセクシャルハラスメントについて適切な認識を欠いていたことは原告自身が認めるところである(原告本人)から,原告に対し,セクシャルハラスメントに関する適切な教育を行うことは,むしろ,被告大学の義務ともいうべきであり,原告に対し,セクシャルハラスメントに関する研修会等に出席し,毎月,セクシャルハラスメントに関する論文を提出することを要求することが直ちに違法であるとは認められない。 また,その内容も,毎月ひとつの論文の提出を命じるというものではあるが,その内容や分量について特段の定めはなく,原告に課した義務の内容が相当性を超えるといった事情は窺えない。 なお,原告は,物質工学科長であるD教授には,原告にセクハラ研修を命ずる権限がないと主張するが,学科長は,当該学科の教育研究に関し,総括する権限を有しており(乙4の1),これには職場環境整備に関する権限をも含んでいると解すべきであるから,D教授は,原告に対する意識教育の一環としてセクハラ研修等を命ずる権限を有していたと認められる。 よって,この点に関する原告の主 これには職場環境整備に関する権限をも含んでいると解すべきであるから,D教授は,原告に対する意識教育の一環としてセクハラ研修等を命ずる権限を有していたと認められる。 よって,この点に関する原告の主張は,理由がない。 ウ学内委員を免じたこと原告に対し,学内委員を免じたことについては,原告に対し,改めて何らかの義務を課することにはならず,これが相当性を欠く命令であるとはいえない。 エ被告大学内での研究活動を事実上禁止し,居室として本件部屋を当て,化学棟に立ち入ることを禁止したことなどについて前記アのとおり,研究活動は,教育活動と共に,原告の職務の中心をなしているというべきであるが,被告は,かかる研究活動を事実上禁止したことも,学生らに対する良好な教育研究環境を確保,提供するために必要であったと主張する。 しかしながら,研究活動は,教育活動と異なり学生と接点を持たないかたちで行うことも可能であり,原告が学生らから信頼を失っており,恐れられていたという前記認定事実を前提としても,学生らに対する良好な教育研究環境を確保,提供するために,原告の研究活動を事実上禁止する必要性があったとはいい難い。 また,原告を従来の研究室から本件部屋へ移転させたことも,Hらに不当な圧力を加えることを防止するのであれば,端的にその旨の職務命令を出し,ないしは工学部内において同人らと会いにくいような場所へ移動すれば十分であって,少なくとも本件部屋へ移転させるほどの必要性があったとは認められない。 加えて,職務命令とは認められないが,前記に認定したとおり,原告はC教授らから他人とりわけ学生と会わないよう強く要請されており,また,研究活動を免ずるとの職務命令により,所属する研究室が定められず,研究のための予算も工学部に留保されており,従来の研究室の荷物も運ばれず, から他人とりわけ学生と会わないよう強く要請されており,また,研究活動を免ずるとの職務命令により,所属する研究室が定められず,研究のための予算も工学部に留保されており,従来の研究室の荷物も運ばれず,特段する事のないまま本件部屋に一人置かれているという状態が1年10か月にわたり継続した。 かかる措置は,前記に認定した原告の学生に対する不当な行為を前提としても,学生らに対する良好な教育研究環境を確保,提供するために必要があったといえず,また原告が忍受すべき限度を超えているものというべきであり,原告に対する違法行為と認められる。 (4)本件業務命令2の相当性前記(1)イのとおり,被告大学が,本件業務命令2により,大学院の担当を免じたのは,原告が本件懲戒処分により,大学院の職務を遂行することができなくなったことによるものと認められ,違法とは認められない。 また,本件懲戒処分後も,原告を大学院の担当に任じなかったことについては,誰にどのような教育職務を担当させるかは,大学の自治にかんがみ,被告大学に広い裁量権があると認められ,上記の措置が裁量権を逸脱したと認めるに足りる証拠はない。 (5)本件業務命令3,4の相当性前記2(3)のとおり,本件業務命令3,4が,原告に対する職務命令ないし業務命令として命じられたことはなく,その相当性が問題になることもない。 結局,前記2(3)のとおり,本件業務命令1に基づく原告の勤務の実態に応じて,出張費や校費の支出が少なかったものであり,その前提となる本件業務命令1について違法があるとしても,出張費や校費の支給自体に不相当な取扱いがあったと認めることはできない。 (6)本件業務命令の全体としての違法性原告は,本件業務命令は,原告を精神的に追いつめることにより,自ら被告大学を退職させるために行われたと主張し 不相当な取扱いがあったと認めることはできない。 (6)本件業務命令の全体としての違法性原告は,本件業務命令は,原告を精神的に追いつめることにより,自ら被告大学を退職させるために行われたと主張し,D教授らが辞職を要求したことなどを指摘する。 たしかに,前記1(2)アのとおり,D教授らは,本件懲戒処分による停職期間中,原告に対し,辞職を求める趣旨の電子メールを送付したことが認められる。しかしながら,D教授らによる辞職要求は,あくまで個人としての立場によるものと認められるから,かかる事実をもって,本件業務命令が,原告の主張する意図に基づくものであると認めることはできない。 また,前述するとおり,本件業務命令には行き過ぎといえる点があるが,前記1のとおり,原告の学生らに対する働きかけに起因する事態は,被告大学の憂慮するところであったことは容易に推測でき,本件業務命令が,原告を退職させる意図に基づくものと断定することは困難である。 4 本件業務命令をした者らの故意,過失上記3によると,D教授らが,本件業務命令を行った際,原告を退職させる意図を有していたと認めることはできないものの,上記3に判断したところによると,少なくとも,原告の後記損害の発生について,過失があったということができる。 5 原告の被った損害証拠(甲19ないし21,33,34及び原告本人)及び弁論の全趣旨によると,原告は,本件セクハラ行為が露見し,被告大学から本件懲戒処分を受けた後,前記認定したとおり違法な本件業務命令を受け,その結果,さまざまなストレスにより精神的に疲弊し,うつ病と診断され,家庭内においても行動に異常を来たし,2度にわたる自殺未遂を繰り返したことなどが認められる。特に,本件業務命令のうち,約1年10か月にわたり居室を本件部屋に限定され,半ば隔離された状 つ病と診断され,家庭内においても行動に異常を来たし,2度にわたる自殺未遂を繰り返したことなどが認められる。特に,本件業務命令のうち,約1年10か月にわたり居室を本件部屋に限定され,半ば隔離された状態で研究活動を禁じられたことにより受けた精神的なストレスは大きいといわなくてはならない。 しかし,原告は,自己のセクハラ行為により本件懲戒処分を受け,その結果,6か月間の停職を受け,また,これらの事実が新聞報道されたりしたことが認められ,上記の原告の精神的なストレスは,むしろ,これらの事実に起因するところが大きいと推測され,少なくとも,本件業務命令のみに起因するとはいえない(ちなみに,2回の自殺未遂は,本件業務命令が解除された後の出来事である。)。 さらにいうならば,前記1(1),(2)に述べた,学生の対応に照らすと,本件業務命令が行われず,原告が,従来どおり,学生に対して,講義,研究指導を行った場合に起こりうる事態を想像すると,別の精神的ストレスが生じたであろうことは,容易に想像することができる。 そうすると,前記3で検討した,本件業務命令の違法性の内容,程度に,上述した事情を総合すると,違法な本件業務命令等により原告の被った精神的損害は100万円をもって相当と認める。 また,弁護士費用相当損害として10万円を認める。 6 以上によれば,原告の本訴請求は110万円及びこれに対する平成14年11月26日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金を求める限度で理由があるからこれを認容し,その余の請求は理由がないからこれを棄却することとし,訴訟費用の負担について民事訴訟法64条本文,61条を適用し,仮執行宣言については相当でないからこれを付さないこととし,主文のとおり判決する。 鳥取地方裁判所民事部裁判長裁判官 の負担について民事訴訟法64条本文,61条を適用し,仮執行宣言については相当でないからこれを付さないこととし,主文のとおり判決する。 鳥取地方裁判所民事部裁判長裁判官山田陽三裁判官山本和人裁判官神原浩

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