平成15年(ワ)第16055号損害賠償請求事件平成16年3月15日口頭弁論終結判決原告株式会社オットー原告訴訟代理人弁護士藤田耕三同田辺信彦同加野理代同橋本裕幸同補佐人弁理士村田幸雄同松本悟被告日誠コンクリート株式会社被告林田セメント工業株式会社被告琴海生コン株式会社被告長崎生コンクリート株式会社被告4名訴訟代理人弁護士近藤惠嗣同梅澤健同訴訟復代理人弁護士丸山隆 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 原告の請求 1 被告日誠コンクリート株式会社は,原告に対し,6000万円及びこれに対する平成15年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支 事実及び理由 第1 原告の請求 1 被告日誠コンクリート株式会社は,原告に対し,6000万円及びこれに対する平成15年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告林田セメント工業株式会社は,原告に対し,6000万円及びこれに対する平成15年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告琴海生コン株式会社は,原告に対し,3000万円及びこれに対する平成15年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 被告長崎生コンクリート株式会社は,原告に対し,500万円及びこれに対する平成15年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要原告は,後記の防波堤用異形コンクリートブロックの特許権の共有者であるところ,コンクリート会社である被告らの製造販売するコンクリートは原告の特許発明における硬化前の混練物と同一であり,当該コンクリートの硬化体によりなるコンクリートブロックは,当該特許発明の技術的範囲に属すると主張し,特許法101条1号,2号による特許権侵害を理由として,被告らに損害賠償を求めているものである。 1 前提となる事実(当事者間に争いのない事実及び証拠により容易に認定される事実。証拠により認定した事実については,末尾に証拠を掲げた。)(1) 原告は,土木工事業,建築工事業,管工事業,屋根工事業及びタイル・れんが・ブロック工事業等を目的とする株式会社である。 被告日誠コンクリート株式会社(以下「被告日誠」という。)は,生コンクリートの製造及び販売等を目的とする株式会社である。 被告林田セメント工業株式会社(以下「被告林田」という。)は,セメント二次製品類製造販売並びにセメント瓦製造 誠」という。)は,生コンクリートの製造及び販売等を目的とする株式会社である。 被告林田セメント工業株式会社(以下「被告林田」という。)は,セメント二次製品類製造販売並びにセメント瓦製造販売等を目的とする株式会社である。 被告琴海生コン株式会社(以下「被告琴海」という。)は,コンクリートによる製品の製造販売等を目的とする株式会社である。 被告長崎生コンクリート株式会社(以下「被告長崎」という。)は,生コンクリート製造販売に関する事業等を目的とする株式会社である。 (2) 原告は,株式会社水工建(以下「水工建」という。)と,次のような内容の特許権(以下「本件特許権」という)を共有している(甲1,2)。 ア発明の名称防波堤用異形コンクリートブロック及びその製造方法イ出願日平成5年1月19日ウ出願番号 05-023652エ公開年月日平成6年8月2日オ公開番号特開平6-211554カ登録日平成14年3月29日キ特許番号特許第3291810号(3) 本件特許権に係る明細書(平成14年1月15日付け手続補正書(乙3)による補正後のもの。以下「本件明細書」という。)の特許請求の範囲第1項の記載は次のとおりである(以下,同項に記載されている発明を「本件特許発明」という。本判決末尾添付の本件特許権に係る特許公報(甲2。以下「本件公報」という。)参照)。 「水セメント比0.4~0.6のセメントペースト100重量部と細骨材100~450重量部と粗骨材150~500重量部との混練物の硬化体からなる防波堤用異形コンクリートブロックであり,該硬化体の比重は 「水セメント比0.4~0.6のセメントペースト100重量部と細骨材100~450重量部と粗骨材150~500重量部との混練物の硬化体からなる防波堤用異形コンクリートブロックであり,該硬化体の比重は2.4~2.6であって,かつ上記細骨材は砂と粒径5.0~0.1mm,比重2.9~5.0の酸化鉄系鉄鉱石とからなり,上記粗骨材は砂利からなり,そして上記細骨材の内訳は砂10~90重量%,酸化鉄系鉄鉱石90~10重量%からなるものであり,さらに上記セメントペーストと細骨材からなるモルタルの比重が2.1~2.56であることを特徴とする防波堤用異形コンクリートブロック。」(4) 本件特許発明を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下「構成要件A」などという。)A セメントペースト100重量部と細骨材100~450重量部と粗骨材150~500重量部との混練物の硬化体からなる防波堤用異形コンクリートブロックでありB 上記硬化体の比重は2.4~2.6であってC 上記セメントペーストの水セメント比は0.4~0.6D 上記細骨材の内訳は砂10~90重量%,酸化鉄系鉄鉱石90~10重量%からなるE 上記酸化鉄系鉄鉱石の粒径は5.0~0.1mmF 上記酸化鉄系鉄鉱石の比重は2.9~5.0G 上記粗骨材は砂利からなり,H 上記セメントペーストと上記細骨材からなるモルタルの比重が2.1~2.56であるI ことを特徴とする防波堤用異形コンクリートブロック(5) 被告製品についてア被告日誠は,次の(ア),(イ)の構成を有するコンクリート(以下「被告日誠製品(1)」「被告日誠製品(2)」といい,各構成を「被告日誠製品(1 ク(5) 被告製品についてア被告日誠は,次の(ア),(イ)の構成を有するコンクリート(以下「被告日誠製品(1)」「被告日誠製品(2)」といい,各構成を「被告日誠製品(1)構成a」「被告日誠製品(2)構成a」などという。)を製造販売している(甲3ないし5)。 (ア) 被告日誠製品(1)a セメントペーストと細骨材と粗骨材との混練物の硬化体からなる防波堤用異形コンクリートブロックでありb 上記硬化体の比重は2.55であってc 上記セメントペーストの水セメント比は0.54e 細骨材に含まれる酸化鉄系鉄鉱石の粒径は8.0~0mmf 上記酸化鉄系鉄鉱石の比重は4.8g 上記粗骨材は砕石からなるi ことを特徴とするコンクリート(イ) 被告日誠製品(2)a セメントペーストと細骨材と粗骨材との混練物の硬化体からなる防波堤用異形コンクリートブロックでありb 上記硬化体の比重は2.6であってc 上記セメントペーストの水セメント比は0.54e 細骨材に含まれる酸化鉄系鉄鉱石の粒径は8.0~0mmf 上記酸化鉄系鉄鉱石の比重は4.8g 上記粗骨材は砕石からなるi ことを特徴とするコンクリートイ被告林田は,次の構成を有するコンクリート(以下「被告林田製品」といい,各構成を「被告林田製品構成a」などという。)を製造販売している(甲6,7)。 a セ ートイ被告林田は,次の構成を有するコンクリート(以下「被告林田製品」といい,各構成を「被告林田製品構成a」などという。)を製造販売している(甲6,7)。 a セメントペーストと細骨材と粗骨材との混練物の硬化体からなる防波堤用異形コンクリートブロックでありb 上記硬化体の比重は2.55であってc 上記セメントペーストの水セメント比は0.54e 細骨材に含まれる酸化鉄系鉄鉱石の粒径は8.0~0mmf 上記酸化鉄系鉄鉱石の比重は4.65g 上記粗骨材は砕石からなるi ことを特徴とするコンクリートウ被告琴海は,次の構成を有するコンクリート(以下「被告琴海製品」といい,各構成を「被告琴海製品構成a」などという。)を製造販売している(甲8,9)。 a セメントペーストと細骨材と粗骨材との混練物の硬化体からなる防波堤用異形コンクリートブロックでありb 上記硬化体の比重は2.55であってc 上記セメントペーストの水セメント比は0.48e 細骨材に含まれる酸化鉄系鉄鉱石の粒径は8.0~0mmf 上記酸化鉄系鉄鉱石の比重は4.7g 上記粗骨材は砕石からなるi ことを特徴とするコンクリートエ被告長崎は,次の構成を有するコンクリート(以下「被告長崎製品」といい,各構成を「被告長崎製品構成a」などという。以下,被告日誠製品(1),被告日誠製品(2),被告林田製品,被告琴海製品及び被告長崎製品を総 は,次の構成を有するコンクリート(以下「被告長崎製品」といい,各構成を「被告長崎製品構成a」などという。以下,被告日誠製品(1),被告日誠製品(2),被告林田製品,被告琴海製品及び被告長崎製品を総称して「各被告製品」という。)を製造販売している(甲10)。 a セメントペーストと細骨材と粗骨材との混練物の硬化体からなる防波堤用異形コンクリートブロックでありb 上記硬化体の比重は2.55であってc 上記セメントペーストの水セメント比は0.54e 細骨材に含まれる酸化鉄系鉄鉱石の粒径は8.0~0mmf 上記酸化鉄系鉄鉱石の比重は4.73g 上記粗骨材は砕石からなるi ことを特徴とするコンクリート(6) 各被告製品の構成b,c及びfは,それぞれ,構成要件B,C及びFを充足する。 (7) 各被告製品には,混和材として高性能AE減水剤が,セメントペーストに高炉セメントがそれぞれ使用され,被告琴海製品には,混和材としてフライアッシュが使用されている(甲3ないし10,弁論の全趣旨)。 2 争点(1) 各被告製品は構成要件Eを充足するか(争点1)(2) 各被告製品は構成要件Gを充足するか(争点2)(3) 混和剤を含有する被告製品が本件特許発明の技術的範囲に属するか(争点3)(4) 均等の成否(争点4)(5) 間接侵害の成否(争点5)(6) 損害(争点6)第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1(各被告製品は構成要件Eを充足するか)(原告)(1) 構成要件Eの「酸化鉄系鉄鉱石の粒径は5. 点5)(6) 損害(争点6)第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1(各被告製品は構成要件Eを充足するか)(原告)(1) 構成要件Eの「酸化鉄系鉄鉱石の粒径は5.0~0.1mm」の意義本件特許発明においては,酸化鉄系鉄鉱石は,細骨材として構成されているところ(構成要件D),細骨材とは,一般的に「10mmふるいを全部通り,5mmふるいを重量で85%以上通る骨材」を意味している(甲11,12)。 したがって,構成要件Eの「酸化鉄系鉄鉱石の粒径は5.0~0.1mm」との文言は,細骨材の一般的定義に従って,「酸化鉄系鉄鉱石は,10mm網のふるいを全部通り,5mm網のふるいに,質量で15%以下とどまる」ことを意味すると解すべきである。 また,本件明細書の発明の詳細な説明欄においては,酸化鉄系鉄鉱石の粒径について何ら触れられておらず(本件公報7欄28行ないし8欄44行),かえって,本件明細書の発明の詳細な説明欄において,「細骨材の一部に用いられる酸化鉄系鉄鉱石としては,‥‥‥粒径が約5.0~0.1mm」(同7欄15行ないし18行)と記載され,酸化鉄系鉄鉱石の粒径が「約」で記載されていることからも,構成要件Eが,粒径5.0mmを超える酸化鉄系鉄鉱石の存在を一切除外するものではないことが明らかである。 これに対し,被告らは,①原告主張の解釈によると,細骨材と粗骨材の区別が不明確になり,粒径5.0ないし8.0mmの酸化鉄系鉄鉱石については,細骨材であるか粗骨材であるか区別できないことになる,②補正経過からすれば原告のような解釈はとり得ない,③本件特許発明の作用効果に鑑みれば,細骨材として特許請求の範囲に記載されている粒径より大きい粒径のものを用いる合理的理由が 区別できないことになる,②補正経過からすれば原告のような解釈はとり得ない,③本件特許発明の作用効果に鑑みれば,細骨材として特許請求の範囲に記載されている粒径より大きい粒径のものを用いる合理的理由がない旨主張する。 しかし,上記①については,骨材は配合する段階で「10mmのふるいを全部通り,5mmのふるいを質量で85%通る」骨材であれば細骨材であり,「5mmふるいに質量で85%とどまる」骨材であれば粗骨材をいうのであって,何ら不明確な点はない。被告らは,配合した後の状態で細骨材と粗骨材を区別できない旨主張するが,細骨材であるか粗骨材であるかは配合する段階で区別するものであるから,被告らの主張は失当である。 また,上記②については,補正の過程で除かれたのは,「粒径40ないし0.5mmの粗骨材」であって,細骨材について粒径5.0mm以上のものを除外するものではない。 さらに,③本件特許発明の作用効果で重要なのは,細骨材が一般的な細骨材に比して比重が重いことであって,粒径の限定に臨界的意義があるわけではない(比重と重量についての数値限定は,本件明細書で詳細に記載されている(本件公報7欄28行ないし8欄29行。段落【0018】,【0019】,【0020】)のに対し,粒径の数値限定について理由が記載されていないことからも明らかである。)。粒径5.0mm以上の鉄鉱石が含まれる場合であってもモルタルと粗骨材との比重分離を回避できることは,甲16の実験結果,本件特許出願過程で分割出願された特許第3405350号特許公報(甲15)の9欄24行ないし10欄19行(段落【0026】)において,粒径40ないし5.0mmの酸化鉄系鉄鉱石を粗骨材として含有するコンクリートブロックであってもモルタルの比重と粗骨材の比重 公報(甲15)の9欄24行ないし10欄19行(段落【0026】)において,粒径40ないし5.0mmの酸化鉄系鉄鉱石を粗骨材として含有するコンクリートブロックであってもモルタルの比重と粗骨材の比重が近似していれば両者が比重分離を起こさない旨の実験結果から明らかである。 (2) 各被告製品は構成要件Eを充足するか上記のとおり,構成要件Eの「酸化鉄系鉄鉱石の粒径は5.0~0.1mm」とは,「酸化鉄系鉄鉱石は,10mm網のふるいを全部通り,5mm網のふるいに,質量で15%以下とどまる」と解釈される。 そして,各被告製品の酸化鉄系鉄鉱石は,粒径が8.0ないし0mmであり,その配合において「細骨材」として扱われている(甲3ないし10)から,粒径5.0ないし8.0mmの酸化鉄系鉄鉱石は,「細骨材」の一般的定義で許容される程度の割合,すなわち質量で15%未満にとどまることは明らかである。 これに対し,被告らは,各被告製品の構成eにおける細骨材は,粒径5. 0ないし8.0mmの酸化鉄系鉄鉱石が10ないし20重量%であると主張するが根拠がない。 よって,各被告製品の構成eは,構成要件Eを充足する。 (被告ら)(1) 構成要件Eの「酸化鉄系鉄鉱石の粒径は5.0~0.1mm」の意義特許請求の範囲の文言に「酸化鉄系鉄鉱石の粒径は5.0~0.1mm」と明記されているのであるから,構成要件Eの酸化鉄系鉄鉱石は,文言どおり粒径は5.0~0.1mmのものと解釈すべきである。 これに対し,原告は,構成要件Eの「酸化鉄系鉄鉱石の粒径は5.0~0.1mm」は,粒径5.0ないし0.1mmの骨材が85重量%以上含まれていることを意味するのであって,粒径5.0mmないし8.0mmの骨材が し,原告は,構成要件Eの「酸化鉄系鉄鉱石の粒径は5.0~0.1mm」は,粒径5.0ないし0.1mmの骨材が85重量%以上含まれていることを意味するのであって,粒径5.0mmないし8.0mmの骨材が15重量%未満含まれている構成をも包含する旨主張する。 たしかに,「細骨材」について,上記のように定義している文献も存在する。しかしながら,上記のような定義は,コンクリートを配合するための材料を調達する見地からの定義であって,本件のように,配合されてしまったコンクリートを分析するための定義ではない。 仮に原告主張のとおりに解釈すると,細骨材と粗骨材のいずれにも粒径5. 0ないし8.0mmの骨材粒子が含まれることになり,製品の中に含まれる粒径5.0ないし8.0mmの骨材粒子を細骨材と粗骨材のいずれに帰属するものとすべきか一義的に決定できないことになって不合理である。 また,次のような本件特許発明の出願経緯からみても,原告は,細骨材の粒径を5.0ないし0.1mmに限定したものである。すなわち,原告は,本件特許出願の出願公開(平成6年8月2日)当時,本件特許発明の特許請求の範囲において,「粗骨材は砂利及び粒径40~5.0mm,比重2.9~5.0の酸化鉄系鉄鉱石とからなり」,「硬化体の比重は2.4~2.9であって」と記載していたが,平成13年11月13日付の拒絶理由通知を受けて,粗骨材から「粒径40~5.0mm,比重2.9~5.0の酸化鉄系鉄鉱石」との構成を削除し,硬化体の比重を「2.4~2.56」に引下げた。上記のような出願経緯からすると,原告は,本件特許発明から粒径5.0mmを超える酸化鉄系鉄鉱石を排除したというべきである。なお,粗骨材から粒径5.0mmを超える酸化鉄系鉄鉱石を除外しただけであって細骨材からは除外 経緯からすると,原告は,本件特許発明から粒径5.0mmを超える酸化鉄系鉄鉱石を排除したというべきである。なお,粗骨材から粒径5.0mmを超える酸化鉄系鉄鉱石を除外しただけであって細骨材からは除外していないとの反論も考えられるが,配合する人間が「細骨材」と考えていようが「粗骨材」と考えていようが,粒径5.0mmを超える酸化鉄系鉄鉱石が配合されることには変わりないのであって,原告は,本件防波堤用異形コンクリートブロックにそのような酸化鉄系鉄鉱石が配合される構成を除外したと考えざるを得ない。 さらに,本件特許発明の作用効果に鑑みれば,細骨材として,特許請求の範囲に記載されている粒径より粒径の大きいものを使用する合理的理由はない。すなわち,本件特許発明は,モルタルと粗骨材との比重分離を回避して全体として均質な防波堤用異形コンクリートブロックを構成することにある(本件公報4欄15行ないし20行)。これは,モルタルを構成する成分は分離せずに均一に形成されていることを前提にするものであると考えられる(モルタル内で比重分離が生じては,モルタルと粗骨材の比重分離を防止しても全体として均質な防波堤用異形コンクリートブロックを構成することはできない。)。そして,分離する傾向は,比重差が大きいほど大きく,粒径が大きいほど大きいところ,酸化鉄系鉄鉱石の比重は本件明細書の実施例において4.58であり,その他のモルタル構成成分である砂や砂利の比重(2.6)に比して大きいものである。したがって,砂及び砂利よりはるかに比重の大きい酸化鉄系鉄鉱石については,粒径が5.0mmであっても,均一なモルタルの形成を期待することは難しい。したがって,モルタルを形成する成分の一つとしての酸化鉄系鉄鉱石は,粒径が5.0mmより小さいことが求められることがあるとしても が5.0mmであっても,均一なモルタルの形成を期待することは難しい。したがって,モルタルを形成する成分の一つとしての酸化鉄系鉄鉱石は,粒径が5.0mmより小さいことが求められることがあるとしても,これを超える粒径をも包含していると解する余地はない。 (2) 各被告製品は構成要件Eを充足するか上記のように,構成要件Eの「酸化鉄系鉄鉱石の粒径は5.0~0.1mm」と明記されているのであるから,構成要件Eの酸化鉄系鉄鉱石は,文言どおり粒径が5.0ないし0.1mmのものと解釈すべきである。 そして,各被告製品に含まれる酸化鉄系鉄鉱石は,粒径5.0ないし8mmの骨材を10ないし20%程度含むから,各被告製品は構成要件Eを充足しているということはできない。 なお,上記粒径の酸化鉄系鉄鉱石を,構成要件Eの細骨材に帰属させず,粗骨材に帰属させる場合には,各被告製品は,構成要件Eを充足することになるが,その場合,「粗骨材は砂利からなり」とする構成要件Gを充足しないことになる。 2 争点2(各被告製品は構成要件Gを充足するか)(原告)(1) 構成要件Gの「砂利」の意義構成要件Gの「砂利」は,砕石を含む。 一般に「砂利」とは,自然作用によって岩石からできた粗骨材をいい,「砕石」とは岩石をクラッシャーなどで粉砕し,人工的に作った粗骨材をいうが,両者はコンクリート用粗骨材としては本質的に何ら異なるものではなく,同様に扱われている。そして,本件明細書の発明の詳細な説明に,「砂利:比重2.65,平均粒径7mmの砕石砂利」(本件公報8欄50行)と記載されていることからも,「砂利」には,「砕石」も含まれる。 (2) 各被告製品は構成要件Gを充足するか上記の 2.65,平均粒径7mmの砕石砂利」(本件公報8欄50行)と記載されていることからも,「砂利」には,「砕石」も含まれる。 (2) 各被告製品は構成要件Gを充足するか上記のとおり,「砂利」には「砕石」も含まれるから,各被告製品の構成gの「上記粗骨材は砕石からなり」は,構成要件Gの「上記粗骨材は砂利からなり」と同一の構成であって,各被告製品は,構成要件Gを充足する。 (被告ら)(1) 構成要件Gの「砂利」の解釈原告は,「砂利」と「砕石」が同等である旨主張するが,コンクリート用材料に関する技術用語として,両者は明確に区別されている。すなわち,両者は,角ばりや表面組織の粗さの程度に違いがあり,砕石を用いる際は,砂利を用いる際より,単位数量や細骨材率の値を増加させなければ同等のワーカビリティーを得られないのである。 このことは,甲11に,「砕石の場合には,角ばりや表面組織の粗さの程度が大きいので,ワーカビリティーの良好なコンクリートを得るためには,河川砂利を用いる場合に比べて単位水量や細骨材率の値を増加させる必要がある」と記載され,甲12には「砕石・砕砂砂利・砂と同様に取り扱ってよいが,問題点としては,粒度,粒形,微粒分などがあり,コンクリートのワーカビリティーに及ぼす影響が大きい。」と記載されていることからも明らかである。 また,本件明細書に,特許請求の範囲のとおりに比重を限定した趣旨として,ワーカビリティーを良好にする目的であることが記載されている(本件公報7欄28行ないし8欄44行)ことからも,砂利と砕石を同等に扱うことは出来ないことが明らかである。 (2) 各被告製品は構成要件Gを充足するか上記のとおり,「砂利」と「砕石」は区別 8行ないし8欄44行)ことからも,砂利と砕石を同等に扱うことは出来ないことが明らかである。 (2) 各被告製品は構成要件Gを充足するか上記のとおり,「砂利」と「砕石」は区別されるところ,各被告製品の構成gは,「上記粗骨材は砕石からなり」とするものであり,構成要件Gは「上記粗骨材は砂利からなり」とするものであるから,両者は構成を異にしており,各被告製品は構成要件Gを充足しない。 3 争点3(混和剤を含有する被告製品が本件特許発明の技術的範囲に属するか)(原告)本件特許発明は,特別な分離阻止剤を添加することなく比重分離減少を阻止するものである。 被告らは,上記の点を取り上げて,各被告製品は,混和剤として高性能AE減水剤を,被告琴海製品には混和剤としてフライアッシュを使用していることをもって,各被告製品は,本件特許発明の技術的範囲に該当しない旨主張する。 しかし,各被告製品に使用されている高性能AE減水剤等は,特別な分離阻止剤に該当しない。すなわち,本件明細書には,「一般の生コンクリートにおけると同様,通常添加量の微少量の減水剤(高分子アニオン活性剤),AE剤等も添加した。」(段落【0025】)と記載されており,高性能AE減水剤は,「特別な分離防止剤」ではなく,本件特許発明においても適宜添加し得るものである。 各被告製品が,上記のような添加物を使用しなくても分離しないことは,甲16の実験証明書から明らかである。 さらに,被告らは,各被告製品が高炉セメントを使用している点をもって本件特許発明に属しない旨主張するが,本件特許発明は,セメントペーストの種類を限定していない。 (被告ら)原告は,平成14年1月15日付意見書において「本発明によれば,そうし って本件特許発明に属しない旨主張するが,本件特許発明は,セメントペーストの種類を限定していない。 (被告ら)原告は,平成14年1月15日付意見書において「本発明によれば,そうしたモルタルと粗骨材の分離防止を特別な分離防止剤を添加することなしに簡易に実現させ,均質で優れた比重2.4~2.6の防波堤用異形コンクリートブロックを提供することができたのです。」と記載しているのであるから,本件特許発明は,特別な分離阻止剤を添加することなく比重分離現象を阻止するものである。 ところが,各被告製品においては高性能AE減水剤を使用し,被告琴海製品においては混和剤としてフライアッシュを使用することにより,モルタルと粗骨材の分離を回避している。また,各被告製品は,セメントペーストに高炉セメントを使用している。 このように,被告製品は,文言上,本件特許発明の技術的範囲に属さないだけでなく,本件特許発明の作用効果も有していないから,本件特許発明の技術的範囲に属さない。 4 争点4(均等の成否)(原告)特許請求の範囲に記載された構成中に対象物件等と異なる部分(以下「相違部分」という。)が存在する場合であっても,以下の①ないし⑤の要件(以下「第1要件」等という。)を満たす場合には,上記対象製品等は,特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして特許発明の技術的範囲に属するものと解するのが相当である。 ① 相違部分が特許発明の本質的部分ではないこと② 相違部分を対象製品等におけるものと置き換えても特許発明の目的を達成することができ,同一の作用効果を奏するものであること③ 当業者が,上記のように置き換えることについて,対象製品製造当時,容易に想到することができたこと④ 対象製品 明の目的を達成することができ,同一の作用効果を奏するものであること③ 当業者が,上記のように置き換えることについて,対象製品製造当時,容易に想到することができたこと④ 対象製品等が,特許発明の特許出願時における公知技術と同一又は当業者がこれから容易に推考できたものではないこと⑤ 対象製品等が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものにあたるなど特段の事情がないことしたがって,仮に各被告製品の構成e及び同構成gが,特許請求の範囲に記載された構成と異なるとしても,次のとおり,各被告製品は,5つの均等要件を満たすから,本件特許発明の構成と均等なものとして特許発明の技術的範囲に属する。 (1) 第1要件(相違部分が特許発明の本質的部分ではないこと)ア各被告製品の構成eとの相違部分について本件特許発明は,比重の大きい酸化鉄系鉄鉱石を使用することによって,モルタルの比重を高め,モルタルの比重と砂利からなる粗骨材の比重とを可能な限り近似させることによって,モルタルと粗骨材との比重分離を回避する発明であり,本件特許発明の本質的部分は「水セメント比を0.4~0.6とした点」,「モルタル比重を2.1~2.56とした点」,「細骨材を100~450重量部(セメントペースト100重量部に対して)とした点」,「粗骨材を150~500重量部(セメントペースト100重量部に対して)とした点」である。 したがって,本件特許発明の特許請求の範囲に記載された構成中,各被告製品の構成eとの相違部分である「上記酸化鉄系鉄鉱石の粒径は5.0~0.1mm」との構成(以下「相違部分①」という。)は,本件特許発明の本質的部分ではない。 イ各被告製品の 中,各被告製品の構成eとの相違部分である「上記酸化鉄系鉄鉱石の粒径は5.0~0.1mm」との構成(以下「相違部分①」という。)は,本件特許発明の本質的部分ではない。 イ各被告製品の構成gとの相違部分について本件特許発明の本質的部分は上記ア記載のとおりであって,かかる本件特許発明の本質的部分と,粗骨材の種類が砂利であるか砕石であるかは無関係であるから,本件特許発明の特許請求の範囲に記載された構成中,各被告製品の構成gとの相違部分である「上記粗骨材は砂利からなり」との構成は,本件特許発明の本質的部分ではない。 (2) 第2要件(相違部分を対象製品等におけるものと置き換えても特許発明の目的を達成することができ,同一の作用効果を奏するものであること)ア各被告製品の構成eとの相違部分について本件特許発明の作用効果は,モルタルと粗骨材との比重分離を回避することであるが,このような作用効果は,細骨材に比重の大きい酸化鉄系鉄鉱石を使用することによって,モルタルの比重を高め,モルタルの比重と砂利からなる粗骨材の比重とを可能な限り近似させることによって,得られるのであるから,被告製品のように,鉄鉱石の粒径を0ないし8mmにしたとしても,同様の上記作用効果が得られることに変わりはない。実験結果においても,粒径8.0ないし5mmの鉄鋼石が15%程度含まれている場合でもコンクリート内部での比重分離は生じていない(甲16)。 したがって,本件特許発明の特許請求の範囲に記載された構成中,各被告製品の構成eとの相違部分である「上記酸化鉄系鉄鉱石の粒径は5.0~0.1mm」との構成を各被告製品構成eと置き換えても特許発明の目的を達成することができ,同一の作用効果を奏するものである。 各被告製品の構成eとの相違部分である「上記酸化鉄系鉄鉱石の粒径は5.0~0.1mm」との構成を各被告製品構成eと置き換えても特許発明の目的を達成することができ,同一の作用効果を奏するものである。 イ各被告製品の構成gとの相違部分について本件特許発明の作用効果は上記ア記載のとおりであって,砂利と砕石は,「自然作用によって岩石からできた粗骨材」であるか,「岩石をクラッシャなどで粉砕し人工的に作った粗骨材」であるかという点で異なるにすぎず,本件特許発明において,砂利を砕石に置き換えても,モルタルと粗骨材との比重分離を回避するという作用効果に変わりはない。 したがって,本件特許発明の特許請求の範囲に記載された構成中,各被告製品の構成gとの相違部分である「上記粗骨材は砂利からなり」との構成を各被告製品の構成eと置き換えても特許発明の目的を達成することができ,同一の作用効果を奏するものである。 (3) 第3要件(当業者が,上記のように置き換えることについて,対象製品製造当時,容易に想到することができたこと)ア塙被告製品の構成eとの相違部分について細骨材とは「10mmのふるいを全部通り,5mmのふるいに質量で15%程度とどまる骨材」であるというのが当業者の一般的な認識であるから,本件特許発明の特許請求の範囲に記載された構成中,各被告製品の構成eとの相違部分である「上記酸化鉄系鉄鉱石の粒径は5.0~0.1mm」との構成を各被告製品構成eの「粒径0ないし8mmの細骨材」に置き換えることは当業者にとって容易に想到し得るものである。 イ塙被告製品の構成gとの相違部分いついて上記のとおり,砂利と砕石の違いは,自然作用によってできたか,人工 に置き換えることは当業者にとって容易に想到し得るものである。 イ塙被告製品の構成gとの相違部分いついて上記のとおり,砂利と砕石の違いは,自然作用によってできたか,人工的にクラッシャで粉砕したかという点だけであるから,砂利を砕石に置き換えることは当業者が容易に想到し得るものである。 (4) 第4要件(対象製品等が,特許発明の特許出願時における公知技術と同一又は当業者がこれから容易に推考できたものではないこと)本件特許出願当時,当業者にとっては,鉄鉱石を骨材に採用すると,比重を大きくすることができる一方で,分離の問題を生じることは,周知の事項であり,製品の比重と分離の問題を勘案して一般的な砂やバラスの置換量を適当な範囲に設定することは当業者が適宜なし得る事項であった。 そして,本件特許発明出願当時,①特開平1-201055号公報(乙5),②特開平1-317147号公報(乙6),③特開平1-301549号公報(乙7)に記載されている技術が公知であったが,各被告製品の構成は,これらの公知技術と同一又はこれらの公知技術から当業者が容易に推考することができたということはできない。 すなわち,上記①の公知技術は,鉄鉱石が粗骨材とされており,砕石や砂利を配合することは示されていないから,モルタルの比重と砕石からなる粗骨材の比重とを近似させることによりモルタルと粗骨材との比重分離を回避する構成が示されていたとは言えず,当該公知技術から当業者が容易に想到することができたということはできない。また,上記②の公知技術は,「細骨材に比重の高い砂鉄を使用し,混和剤に超微粉水砕スラグ又は超微粉水砕スラグと炭素繊維を加えることにより,この分離現象の発生を阻止する」構成が開示されており(乙6第2頁 また,上記②の公知技術は,「細骨材に比重の高い砂鉄を使用し,混和剤に超微粉水砕スラグ又は超微粉水砕スラグと炭素繊維を加えることにより,この分離現象の発生を阻止する」構成が開示されており(乙6第2頁左下欄第18行ないし右下欄第1行),上記③の公知技術には,「細骨材に比重の高い砂鉄を使用し,混和剤にシリカヒューム又はシリカヒュームと炭素繊維を加えることによりこの分離減少の発生を阻止」する構成が示されており,いずれも細骨材ではなく粗骨材を酸化鉄系鉄鉱石とし,モルタルと粗骨材との比重分離を回避するために,超微粉砕スラグ,シリカヒューム,炭素繊維といった分離阻止剤の添加を必須とする構成であるから,「砂及び酸化鉄系鉄鉱石の細骨材の比重とを近似させることによってモルタルと粗骨材との比重分離を回避し」,「特別な分離阻止剤を添加することなしに,従来技術においてしばしば発生した比重分離現象の発生を阻止できる防波堤用異形コンクリートブロック」と同一又はこれらの公知技術から当業者が容易に推考することができたということはできない。 したがって,本件特許出願時に,被告製品の「粒径8ないし0,比重4. 65ないし4.8の酸化鉄系鉄鉱石を細骨材として使用することによりモルタルの比重は2.42ないし2.56と大きくなり,砕石からなる粗骨材の比重(2.58ないし2.77)と近似させ,これによりモルタルと粗骨材との比重分離を回避する」という構成は,当業者が容易に推考できるものではなかった。 (5) 第5要件(対象製品等が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものにあたるなど特段の事情がないこと)原告が出願経緯で除外したのは「粒径40~5mmの範囲に分布するほとんどが粒径5mm以上の鉄鉱石からなる粗骨材」であって, 囲から意識的に除外されたものにあたるなど特段の事情がないこと)原告が出願経緯で除外したのは「粒径40~5mmの範囲に分布するほとんどが粒径5mm以上の鉄鉱石からなる粗骨材」であって,「5mmふるいに質量で15%以下とどまる少量の粒径5mm以上の鉄鉱石を含む細骨材」を除外したものではない。細骨材の構成については,当初から「細骨材は砂と,粒径5.0~0.1mm,比重2.9~5.0の酸化鉄系鉄鉱石とからなり」と記載しており,出願手続過程において変化させていない。 (6) なお,被告らは,各被告製品に含まれる酸化鉄系鉄鉱石のうち粒径5.0ないし8.0mmのものは,粗骨材に分類されることを前提として,本件特許発明の特許請求の範囲に記載された構成中,各被告製品の構成eとの相違部分である「上記酸化鉄系鉄鉱石の粒径は5.0~0.1mm」との構成が均等の第1要件ないし第3要件を満たさない旨主張するが,各被告製品に含まれる酸化鉄系鉄鉱石のうち粒径5.0ないし8.0mmのものは細骨材に分類されるのであるから,被告らの主張はそもそも前提を誤っている。 (被告ら)原告は,各被告製品は,本件特許発明の構成と均等なものとして特許発明の技術的範囲に属すると主張するので,以下,反論する。 (1) 第1要件(相違部分が特許発明の本質的部分ではないこと)ア本件特許発明の本質的部分は,粗骨材の比重とモルタルの比重を近づけることによってモルタルと粗骨材が分離しないようにすることである。 一方,各被告製品は「細骨材に含まれる酸化鉄系鉄鉱石の粒径は8.0~0mm」との構成(構成e)を備えており,本件特許発明の特許請求の範囲に記載された構成中,「上記酸化鉄系鉄鉱石の粒径は5.0~0.1mm」との構成が,各被 材に含まれる酸化鉄系鉄鉱石の粒径は8.0~0mm」との構成(構成e)を備えており,本件特許発明の特許請求の範囲に記載された構成中,「上記酸化鉄系鉄鉱石の粒径は5.0~0.1mm」との構成が,各被告製品の構成と相違する。 本件特許発明においては,細骨材と粗骨材とは粒径5mmをもって区別すべきものであるから,各被告製品のように粒径5.0ないし8.0mmの鉄鉱石が含まれる場合,当該鉄鉱石は,粗骨材に含まれることになり,鉄鉱石(4.65ないし4.80)の比重は,砂利の比重(2.65)より大きいから,粗骨材に鉄鉱石が含まれるということになると,粗骨材の比重が大きくなり,モルタルとの比重分離が生じる。 そうすると,本件特許発明の特許請求の範囲に記載された構成と,各被告製品の構成eとの相違部分である「上記酸化鉄系鉄鉱石の粒径は8.0~0mm」との構成,すなわち粗骨材に粒径5.0ないし8.0mmの酸化鉄系鉄鉱石を含む構成は,粗骨材の比重とモルタルの比重を近づけることによってモルタルと粗骨材が分離しないようにするという本件特許発明の本質的部分に関わる。 イこれに対し,原告は,各被告製品のように粒径5.0ないし8.0mmの鉄鉱石が含まれる場合,当該鉄鉱石は,細骨材に分類されると主張するが,仮に原告主張のように解したとしても,本件特許発明の特許請求の範囲に記載された構成と各被告製品の構成eとの相違部分は本件特許発明の本質的部分に関わる。 すなわち,本件明細書には,「2.56を超える場合には,モルタルとしての細骨材の比重が大きくなり,したがって相対的にセメントペーストの比重が小さくなるため,モルタル自体の分離,すなわちセメントペーストと細骨材との比重分離が生じやすくなる」と記載して,セメントペーストと 細骨材の比重が大きくなり,したがって相対的にセメントペーストの比重が小さくなるため,モルタル自体の分離,すなわちセメントペーストと細骨材との比重分離が生じやすくなる」と記載して,セメントペーストと細骨材の比重分離を問題としている(本件公報7欄45行以下)ことから,本件特許発明は,粗骨材の比重とモルタルの比重を近づけることによってモルタルと粗骨材が分離しないようにすることを本質的部分とするだけでなく,セメントペーストと細骨材の間でも比重分離を生じさせないことをも本質的部分とするものである。 本件明細書の表2実施例No.1では,比重2.21のモルタルと,平均粒径7mm,比重2.65の粗骨材との比重分離を回避することを前提としているのであるから,その中に,上記粗骨材より粒径及び比重ともに大きい粒径8.0ないし5mm,比重4.65ないし4.80の鉄鉱石が存在することが本件特許発明の本質と無関係であるということはあり得ない。このように,本件特許発明は,モルタルと粗骨材との間の比重分離を生じさせないことだけでなく,モルタル中のセメントペーストと細骨材との間の比重分離を回避することも本件特許発明の本質的部分であることは明らかである。 そうすると,本件特許発明の特許請求の範囲に記載された構成中,各被告製品の構成eとの相違部分である「上記酸化鉄系鉄鉱石の粒径は5.0~0.1mm」との構成は,セメントペーストと細骨材の間で比重分離を生じさせないようにするための構成であるから,本件特許発明の本質的部分である。 (2) 第2要件(相違部分を対象製品等におけるものと置き換えても特許発明の目的を達成することができ,同一の作用効果を奏するものであること)ア各被告製品は「細骨材に含まれる酸化鉄系鉄鉱石の粒径は8.0~0 相違部分を対象製品等におけるものと置き換えても特許発明の目的を達成することができ,同一の作用効果を奏するものであること)ア各被告製品は「細骨材に含まれる酸化鉄系鉄鉱石の粒径は8.0~0mm」との構成(構成e)を備えており,本件特許発明の特許請求の範囲に記載された構成中,「上記酸化鉄系鉄鉱石の粒径は5.0~0.1mm」(構成要件E)との構成が,各被告製品の構成と相違するが,当該部分を構成eと置き換えると本件特許発明の目的を達することができない。 すなわち,本件特許発明の作用効果は,「砂及び砂鉄等の酸化鉄系鉄鉱石の細骨材とセメントペーストからなるモルタルの比重と,砂利からなる粗骨材の比重とを可能な限り近似させることによって,モルタルと粗骨材との比重分離を回避し,全体として均質な防波堤用異形コンクリートブロックを構成する」ことにある(本件公報4欄15行ないし20行)。ところが,本件特許発明の構成要件Eの「酸化鉄系鉄鉱石の粒径は5.0~0.1mm」を各被告製品の構成e「酸化鉄系鉄鉱石の粒径は8.0~0mm」に置き換えると,粒径5.0ないし8.0mmの酸化鉄系鉄鉱石が粗骨材に含まれることになるから,粗骨材の比重が重くなり,モルタルと粗骨材の比重分離が生じ,本件特許発明の目的を達成することができない。 この点について,原告は,甲16の実験結果を根拠に,粒径8.0ないし5mmの鉄鉱石が15%未満含まれていたとしても,比重分離は生じない旨主張する。しかし,甲16の実験は,①手で比重分離が生じないように撹拌している,②型枠の内径に比べて粗骨材の粒径が大きい場合には比重分離が起きにくいところ,甲16の供試体は,内径154mmの塩ビパイプの型枠を用いて粒径40ないし20mmの粗骨材が比重分離するか否かを実 いる,②型枠の内径に比べて粗骨材の粒径が大きい場合には比重分離が起きにくいところ,甲16の供試体は,内径154mmの塩ビパイプの型枠を用いて粒径40ないし20mmの粗骨材が比重分離するか否かを実験しており,通常より比重分離が生じにくい条件下でなされている,③比較対照された普通コンクリートの約3倍の混和剤を使用して鉄鉱石入コンクリートを作成している,④普通コンクリートは水セメント比が57.7%であるのに対し,鉄鉱石入コンクリートは53.7%である,⑤普通コンクリートと鉄鉱石入りコンクリートでは空気量が異なっている,⑥セメントペースト,細骨材,粗骨材を全て配合した状態ではなく,セメントペースト,細骨材を配合した状態で実験すべきであるのにそうしていない点で正しい実験結果が得られているとは言えないから,原告の上記主張は採用できない。 イこれに対し,原告は,各被告製品のように粒径5.0ないし8.0mmの鉄鉱石が含まれる場合,当該鉄鉱石は,細骨材に分類されると主張するが,仮に原告主張のように解したとしても,同様のことがいえる。 すなわち,本件特許発明の作用効果は,上記ア記載のとおりであり,かかる作用効果を実現するためにはセメントペーストと細骨材の間の比重分離をも回避する必要がある。ところが,本件特許発明の構成要件Eの「酸化鉄系鉄鉱石の粒径は5.0~0.1mm」を各被告製品の構成e「酸化鉄系鉄鉱石の粒径は8.0~0mm」に置き換えると,粒径5.0ないし8.0mmの酸化鉄系鉄鉱石が細骨材に含まれることによって,細骨材の比重が重くなり,セメントペーストと細骨材の比重分離が生じ,本件特許発明の目的を達成することができない。 甲16の実験結果に対する反論は上記アのとおりである。 (3) 第3要件(当 くなり,セメントペーストと細骨材の比重分離が生じ,本件特許発明の目的を達成することができない。 甲16の実験結果に対する反論は上記アのとおりである。 (3) 第3要件(当業者が,上記のように置き換えることについて,対象製品製造当時,容易に想到することができたこと)前記のとおり,粒径5.0mm~8.0mmの鉄鉱石が細骨材ではなく,粗骨材に含まれるとする解した場合には,モルタルと粗骨材が分離するのであるから,砂利のみからなる粗骨材と鉄鉱石を含む粗骨材について置換可能性・置換容易性がないことは明らかである。 (4) 第4要件(対象製品等が,特許発明の特許出願時における公知技術と同一又は当業者がこれから容易に推考できたものではないこと)本件特許出願の前から,鉄鉱石を用いてコンクリートの比重を大きくする技術は公知技術であった。各被告製品は,かかる公知技術を実施したものにすぎない。 (5) 第5要件(対象製品等が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものにあたるなど特段の事情がないこと)本件特許出願当初は,粒径5~40mmの鉄鉱石が粗骨材として含まれているコンクリートブロックが記載されていたが,補正によって粒径5mm以上の酸化鉄系鉄鉱石は,意識的に除外されたというべきである。 5 争点5(間接侵害の成否等)(原告)(1) 特許法101条1号各被告製品は,いずれも長崎地区広域漁業整備工事に従事する特定建設工事共同企業体から,防波堤用異形コンクリートブロックの生産に用いるものとして,発注されたものであり,いずれも本件各製品の生産にのみ用いるものとして製造販売されていることが明らかである。 共同企業体から,防波堤用異形コンクリートブロックの生産に用いるものとして,発注されたものであり,いずれも本件各製品の生産にのみ用いるものとして製造販売されていることが明らかである。 これに対し,被告らは,各被告製品は,カウンター・ウェイト,船舶バラスト,重量機械基盤用コンクリート,放射線遮へい用コンクリート,係船用ブロック等各種用途に用いることが出来るので,本件特許発明の生産にのみ用いる物には当たらないと主張する。 しかし,コンクリートは用途に応じて粗骨材,細骨材等の配合を調整する必要があり,各被告製品のように防波堤用コンクリートとして配合されたものを他の用途に直ちに転用できるものではない。また,被告ら主張の用途は,抽象的にはそのとおりであっても,商業的,経済的に実用性ある用途として社会通念上通用し,承認され得るものではなく,また,現実にそのような用途が現に通用し,承認されたものとして実用化されているということもできない。 したがって,各被告製品は,特許法101条1号の「その物の生産にのみ用いる物」に該当する。 (2) 特許法101条2号各被告製品は,本件特許発明に係る物の生産に用いる物であってその発明による課題の解決に不可欠なものであるところ,被告らは,本件特許発明が特許発明であること及び各被告製品が本件特許発明の実施に用いられることを知りながら,業として,その生産,譲渡を行ったものである。 したがって,各被告製品の生産,譲渡のうち,平成15年1月以降の行為は,特許法101条2号に該当する。 (3) 共同不法行為万が一,被告らの各被告製品の生産,譲渡につき,間接侵害が成立しない場合であっても,被告らの上記行為は,各被告製品の納入を は,特許法101条2号に該当する。 (3) 共同不法行為万が一,被告らの各被告製品の生産,譲渡につき,間接侵害が成立しない場合であっても,被告らの上記行為は,各被告製品の納入を受けて防波堤用異形コンクリートブロックを製造した,訴外若築・長崎西部特定建設工事共同企業体,訴外三基・田浦特定建設工事共同企業体,上滝・山口特定建設工事共同企業体又は訴外平尾・錦特定建設工事共同企業体と共同で本件特許権を侵害したというべきであるから,被告らは,上記各共同企業体と連帯して賠償する責任を負うべきである。 (被告ら)(1) 特許法101条1号各被告製品は,通常の重量コンクリートであり,防波堤用異形コンクリートブロックに限らず,カウンター・ウェイト,船舶バラスト,重量機械基盤用コンクリート,放射線遮へい用コンクリート,係船用ブロック等の各種用途に用いることができる。かかる用途のうち重量機械基盤用コンクリート,放射線遮へい用コンクリートは,本件明細書にも記載されている(本件公報3欄20行ないし22行。 段落【0002】)。その他,宅地・農園等の囲い用ブロック,駐車場用地擁壁,海岸舗装等の用途においても,高比重コンクリートの使用が望ましいことがあり,これらの用途にも用いられる。 6 争点6(損害)(原告)被告らは,平成14年11月から平成15年3月までの間に各被告製品を製造販売し,それらはすべて防波堤用異形コンクリートブロックの生産のために使用された。 各被告製品の販売数量,単位数量当たりの利益の額及び被告らが得た利益の総額は,別紙の販売数量欄,単位数量当たりの利益欄,利益総額欄記載のとおりである。 したがって,原告及び水工建の被った損害は,被告日誠の被告日 位数量当たりの利益の額及び被告らが得た利益の総額は,別紙の販売数量欄,単位数量当たりの利益欄,利益総額欄記載のとおりである。 したがって,原告及び水工建の被った損害は,被告日誠の被告日誠製品(1)及び(2)の販売により6000万円,被告林田の被告林田製品の販売により6000万円,被告琴海の被告琴海製品の販売により3000万円,被告長崎の被告長崎製品の販売により500万円をそれぞれ下回ることはない。 そして,原告は,水工建から,各被告製品の製造販売による本件特許権の侵害に基づく被告らに対する損害賠償請求権を譲り受けた。 (被告ら)各被告製品の販売数量,単位数量当たりの利益の額及び被告らが得た利益の総額に関する認否は留保する。原告の損害に関する主張は争う。 第4 当裁判所の判断 1 争点1(各被告製品は構成要件Eを充足するか)(1) 構成要件Eの「酸化鉄系鉄鉱石の粒径は5.0~0.1mm」の意義特許発明の技術的範囲は,願書に添付した明細書の特許請求の範囲の記載に基づいて確定しなければならないところ(特許法70条1項),本件明細書の特許請求の範囲には,「細骨材は砂と粒径5.0~0.1mm,比重2.9~5.0の酸化鉄系鉄鉱石とからなり」と記載されている。 原告は,「細骨材」の一般的定義が「10mm網のふるいを全部通り,5mm網のふるいに,質量で15%以下とどまる」粒径の骨材であることを根拠に,構成要件Eの「酸化鉄系鉄鉱石の粒径は5.0~0.1mm」を「酸化鉄系鉄鉱石は,10mm網のふるいを全部通り,5mm網のふるいに,質量で15%以下とどまる」と解すべきであると主張する。なるほど,コンクリート標準示方書(甲11)には,コンクリート材料としての「細骨材」とは,「1 10mm網のふるいを全部通り,5mm網のふるいに,質量で15%以下とどまる」と解すべきであると主張する。なるほど,コンクリート標準示方書(甲11)には,コンクリート材料としての「細骨材」とは,「10mm網のふるいを全部通り,5mm網のふるいを質量で85%以上通る骨材」を意味すると記載されている。しかしながら,構成要件Eは,「酸化鉄系鉄鉱石の粒径を5.0~0.1mm」とすることを要件としているのであるから,本件特許発明においては,酸化鉄系鉄鉱石からなる骨材については,5.0~0.1mmという粒径を満足することを要件としているというべきである。 原告は,構成要件Eが酸化鉄系鉄鉱石の粒径を5.0~0.1mmと規定しているのは,酸化鉄系鉄鉱石が細骨材であることをいうものであって,粒径が5.0mm以下であることに意味があるものではないと主張する。しかし,①本件特許発明において,細骨材として扱われている砂については何ら粒径の範囲を規定していないことからすれば,酸化鉄系鉄鉱石については細骨材の一般的定義とは別途にその粒径を特定していると解されること,②乙1によれば,本件特許発明の補正前の明細書においては,酸化鉄系鉄鉱石は細骨材としてだけでなく粗骨材としても添加されており,両者の粒径はそれぞれ「5.0~0.1mm」,「40~5. 0mm」と区別されていたこと,からすれば,構成要件Eにおける,酸化鉄系鉄鉱石の粒径が5.0~0.1mmであるとの規定は,粒径を「5.0~0.1mm」という具体的範囲とすることを規定していると解するのが相当であって,当該範囲の規定が,一般的な「細骨材」の大きさの定義,すなわち「10mm網のふるいを全部通り,5mm網のふるいを質量で85%以上通る」という定義と同義であると解することはできない。原告は,本件明細書の発 囲の規定が,一般的な「細骨材」の大きさの定義,すなわち「10mm網のふるいを全部通り,5mm網のふるいを質量で85%以上通る」という定義と同義であると解することはできない。原告は,本件明細書の発明の詳細な説明欄に「細骨材の一部に用いられる酸化鉄系鉄鉱石としては,‥‥‥粒径が約5.0~0.1mm」と記載されていることを指摘するが(本件公報7欄15行ないし18行),この記載は,細骨材のうち,酸化鉄系鉄鉱石については具体的に上記の粒径であることが要求されることを記載したものであり,むしろ上記の解釈に沿うものである。 上記のとおり,構成要件Eは,細骨材として添加される酸化鉄系鉄鉱石が5.0~0.1mmの粒径を満たすことを意味するものである。 (2) 各被告製品は構成要件Eを充足するか上記のとおり,構成要件Eの「酸化鉄系鉄鉱石の粒径は,5.0~0.1mm」は,文言どおり,細骨材を構成する酸化鉄系鉄鉱石の粒径が5.0ないし0.1mmであることを要するものと解釈されるところ,各被告製品の構成eは,「酸化鉄系鉄鉱石の粒径は8.0~0mm」であるから,各被告製品は,構成要件Eを充足しない。 2 争点4(均等の成否)(1) 均等論について特許発明の技術的範囲は,願書に添付した明細書の特許請求の範囲の記載に基づいて確定しなければならず(特許法70条1項),特許請求の範囲に記載された構成中に対象製品等と異なる部分が存する場合には,右対象製品等は,特許発明の技術的範囲に属するということはできない。しかし,特許請求の範囲に記載された構成中に対象製品等と異なる部分が存する場合であっても,①上記部分が特許発明の本質的部分ではなく,②上記部分を対象製品等におけるものと置き換えても,特許発明の目的を達する 特許請求の範囲に記載された構成中に対象製品等と異なる部分が存する場合であっても,①上記部分が特許発明の本質的部分ではなく,②上記部分を対象製品等におけるものと置き換えても,特許発明の目的を達することができ,同一の作用効果を奏するものであって,③上記のように置き換えることに,当業者が,対象製品等の製造等の時点において容易に想到することができたものであり,④対象製品等が,特許発明の特許出願時における公知技術と同一又は当業者がこれから右出願時に容易に推考できたものではなく,かつ,⑤対象製品等が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情もないときは,右対象製品等は,特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして,特許発明の技術的範囲に属するものと解するのが相当である(最高裁平成6年(オ)第1083号同10年2月24日第三小法廷判決・民集52巻1号113頁参照。以下,上記①を「第1要件」などといい,①ないし⑤の要件を総称して「均等の要件」という。)。 (2) そして,本件特許発明と各被告製品の構成をそれぞれ比較すると,本件特許発明の特許請求の範囲に記載された構成においては,「酸化鉄系鉄鉱石の粒径は5.0ないし0.1mm」とされているのに対し,各被告製品においては「酸化鉄系鉄鉱石の粒径は8.0ないし0mm」とされており,異なっている。 そこで,以下,各被告製品が,上記相違部分の存在にもかかわらず,本件特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして本件特許発明の技術的範囲に属するものといえるかについて検討する。 ア第1要件(ア) 本件特許発明の本質的部分について酸化鉄系鉄鉱石の粒径を5.0ないし0.1mmとすることが本件特 といえるかについて検討する。 ア第1要件(ア) 本件特許発明の本質的部分について酸化鉄系鉄鉱石の粒径を5.0ないし0.1mmとすることが本件特許発明の本質的部分か否かにつき争いがあるので,この点について検討する。 a 本件明細書の記載本件明細書の発明の詳細な説明欄には次のような記載がある。 ①「従来,重量コンクリートの製造において,かんらん石,鉄鉱石などの粗骨材に砂などの細骨材とセメント,水とを混合して,これを流し込み打設していたが,鉄鉱石は比重が高いため,下方に沈んでしまう分離現象が生じる問題があった。そこで,水セメント比を小さくして打設施工しようとすると,施工性が悪くなり,製品コンクリートの化学的,機械的特性等が劣化してしまう。」(本件公報3欄23行ないし30行)②「本発明者は種々研究の結果,細骨材に比重が高く,化学安定性に優れた酸化鉄系鉄鉱石を使用することにより,特別な分離阻止剤を添加することなしに,従来技術においてしばしば発生した比重分離現象の発生を阻止できる防波堤用異形コンクリートブロックの製造に成功した。」(本件公報3欄31行ないし37行)③「本発明は,施工時における高比重骨材とセメントペーストとの分離を回避し,高比重,高化学安定性の防波堤用異形コンクリートブロックを提供しようとするものであって,すなわち,水セメント比0.4~0.6のセメントペースト100重量部と細骨材100~450重量部と粗骨材150~500重量部との混練物の硬化体からなる防波堤用異形コンクリートブロックであり,該硬化体の比重は2.4~2.6であって,かつ上記細骨材は砂と粒径5.0~ 部と細骨材100~450重量部と粗骨材150~500重量部との混練物の硬化体からなる防波堤用異形コンクリートブロックであり,該硬化体の比重は2.4~2.6であって,かつ上記細骨材は砂と粒径5.0~0.1mm,比重2.9~5.0の酸化鉄系鉄鉱石とからなり,上記粗骨材は砂利からなり,そして上記細骨材の内訳は砂10~90重量%,酸化鉄系鉄鉱石90~10重量%からなるものであり,さらに上記セメントペーストと細骨材からなるモルタルの比重が2.1~2.56であることを特徴とする防波堤用異形コンクリートブロック‥‥‥である。」(本件公報3欄38行ないし4欄13行)④「本発明では,砂及び砂鉄等の酸化鉄系鉄鉱石の細骨材とセメントペーストからなるモルタルの比重と,砂利からなる粗骨材の比重とを可能な限り近似させることによって,モルタルと粗骨材との比重分離を回避し全体として均質な防波堤用異形コンクリートブロックを構成するものである」(本件公報4欄15行ないし20行)⑤「モルタル比重を2.1~2.56とした点についは,‥‥‥これが2.56を超える場合には,モルタルとしての細骨材の比重が大きくなり,したがって,相対的にセメントペーストの比重が小さくなるため,モルタル自体の分離,すなわちセメントペーストと細骨材との比重差分離が生じやすくなる。」(本件公報7欄42行ないし49行)b 出願経過① 本件特許発明の補正前の明細書には,次のとおり記載されていた(本件特許権に係る公開特許公報(乙1)1欄1行ないし16行,9欄6行ないし8行)。 ・特許請求の範囲欄第1項「水セメント比0.4~0.6のセメントペースト100重量 報(乙1)1欄1行ないし16行,9欄6行ないし8行)。 ・特許請求の範囲欄第1項「水セメント比0.4~0.6のセメントペースト100重量部と細骨材100~450重量部と粗骨材150~500重量部との混練物の硬化体からなる防波堤用異形コンクリートブロックであり,該硬化体の比重は2.4~2.9であって,かつ上記細骨材は砂と粒径5.0~0.1mm,比重2.9~5.0の酸化鉄系鉄鉱石とからなり,上記粗骨材は砂利及び粒径40~5.0mm,比重2.9~5.0の酸化鉄系鉄鉱石とからなり,そして上記細骨材の内訳は砂10~90重量%,酸化鉄系鉄鉱石90~10重量%からなり,上記粗骨材の内訳は砂利100~0重量%及び酸化鉄系鉄鉱石0~100重量%からなるものであり,さらに上記セメントペーストと細骨材からなるモルタルの比重が2.1~2. 9であることを特徴とする防波堤用異形コンクリートブロック。」・発明の詳細な説明の実施例「表2において試料番号No.1~No.6の供試体は本発明の範囲内のものであるがNo.7の供試体は本発明範囲外のものである。」② 審査官は,平成13年11月13日付の拒絶理由通知において次のⅰのとおり指摘したものであるところ,同拒絶理由において引用されている引用文献2(特開平01-317147号公報)の5頁11行ないし6頁9行には,次のⅱのような記載がある(乙2,乙5ないし7)。 ⅰ 「鉄鉱石を骨材に採用すると,比重を大きくすることができる一方で,分離の問題が発生することは周知の事項であるので‥‥‥,引用文献1においても,求める製品の比重と分離の問題を勘案して,一般的な骨材であ 「鉄鉱石を骨材に採用すると,比重を大きくすることができる一方で,分離の問題が発生することは周知の事項であるので‥‥‥,引用文献1においても,求める製品の比重と分離の問題を勘案して,一般的な骨材である砂やバラスの置換量を適当な範囲に設定することは当業者が適宜なし得る事項である。」ⅱ 「従来,重量コンクリートの製造においては,かんらん石,各種鉄鉱石などの粗骨材に砂などの細骨材とセメント,水とを混合して,これを打設施工していたが,粗骨材の鉄鉱石は比重が高いため,下方へ沈んでしまう分離現象が生じ,その結果不均質な組成の機械的,化学的特性の劣化した重量コンクリート製品となってしまう問題があった。/本発明者は種々の研究の結果,細骨材に比重の高い砂鉄を使用し,そして混和剤に超微粉水砕スラグ又は超微粉水砕スラグと炭素繊維を加えることにより,この分離現象の発生を阻止できることを見出した。/細骨材に砂鉄を用いることによって,粗骨材,細骨材の双方共に比重の高い材料とする一方,セメントと水からなるセメントペースト分は比重の低い材料となったので,比重差から粗,細骨材が沈降し,セメントペースト分が上方に残って分離が生じるものと予想されたけれども,この予想を覆すことができた。」③ 原告は,平成14年1月15日付の手続補正書(乙3)により,本件特許発明の明細書の記載(甲15)を次のⅰないしⅲのように訂正し,意見書(乙4)において,次のⅳのように述べた。 ⅰ 特許請求の範囲の「粗骨材は砂利及び粒径40~5.0mm,比重2.9~5.0の酸化鉄系鉄鉱石とからなり」を「粗骨材は砂利からなり」に訂正した。 ⅱ 特許請求の範囲の「セメントペーストと細骨材からなるモルタルの比重」 5.0mm,比重2.9~5.0の酸化鉄系鉄鉱石とからなり」を「粗骨材は砂利からなり」に訂正した。 ⅱ 特許請求の範囲の「セメントペーストと細骨材からなるモルタルの比重」について「2.1~2.9」から「2.1~2.56」に引下げた。 ⅲ 発明の詳細な説明の実施例の記載において前記①の記載を,「表2において,試料番号No.1~No.3の供試体は,本発明の範囲内のものであるが,No.4~No.7の供試体は本発明範囲外のものである。」との記載に変更した。 ⅳ 「引用文献2及び3には,本願発明の特徴である『モルタルと粗骨材の比重を可能な限り近似させることによって,モルタルと粗骨材との比重差分離を回避し,全体として均質な防波堤用異形コンクリートブロックを構成せんとする点,特に『砂と,粒径5.0~0.1mm,比重2.9~5.0の酸化鉄系鉄鉱石とからなり,比重が2.1~2.56のモルタルと砂利を一定割合で混合することによって,モルタルと粗骨材との比重差分離を回避し,全体として均質な防波堤用異形コンクリートブロックを構成せんとする点』については,何らの記載が見いだせません。」c 均等の第1要件についての判断特許発明の本質的部分とは,特許請求の範囲に記載された特許発明の構成のうちで,当該特許発明特有の課題解決手段を基礎づける特徴的部分,言い換えれば,当該部分が他の構成に置き換えられるならば全体として当該特許発明の技術的思想とは別個のものと評価されるような部分をいう。そして,発明が各構成要件の有機的な結合により特定の作用効果を奏するものであることに照らせば,対象製品との相違が特許発明における本質的部分に係るものであるかどうかを判断す 評価されるような部分をいう。そして,発明が各構成要件の有機的な結合により特定の作用効果を奏するものであることに照らせば,対象製品との相違が特許発明における本質的部分に係るものであるかどうかを判断するに当たっては,特許請求の範囲の記載だけでなく,特許発明を先行技術と対比して課題の解決手段における特徴的原理を確定すべきである。 本件においては,前記a,b記載のとおり,本件特許出願以前に,粒径を限定することなく酸化鉄系鉄鉱石を用いて,全体の比重を増加させつつ比重分離を生じさせない防波堤用コンクリートブロックに関する発明が存在していたところ(乙5ないし7),本件特許の出願人である原告及び水工健は出願経過において,特許庁審査官から上記発明の存在を指摘されて,粒径40ないし5.0mmの酸化鉄系鉄鉱石を除外する補正を行った上,「モルタルと粗骨材の比重を限りなく近似させることによって,モルタルと粗骨材との比重差分離を回避し,全体として均質な防波堤用異形コンクリートブロックを構成する点,特に『砂と,粒径5.0~0.1mm,比重2.9~5.0の酸化鉄系鉄鉱石とからなり,比重が2.1~2.56のモルタルと砂利を一定割合で混合することによって,モルタルと粗骨材との比重差分離を回避し,全体として均質な防波堤用異形コンクリートブロックを構成せんとする点』」が本願発明の特徴であるとの意見を述べて特許査定を得たものである(乙2~4)。 上記によれば,「砂と,粒径5.0~0.1mm,比重2.9~5.0の酸化鉄系鉄鉱石とからなり,比重が2.1~2.56のモルタルと砂利」を用いることは,先行技術に見られない本件特許発明特有の解決手段として位置付けられているものというべきであるから,本件特許発明の本質的部分を構成すると なり,比重が2.1~2.56のモルタルと砂利」を用いることは,先行技術に見られない本件特許発明特有の解決手段として位置付けられているものというべきであるから,本件特許発明の本質的部分を構成するというべきである。したがって,「砂と,粒径5.0~0.1mm,比重2.9~5.0の酸化鉄系鉄鉱石とからなり,比重が2.1~2.56のモルタルと砂利」と異なる構成は,本件特許発明の本質的部分を含まない。 (イ) そうすると,被告各製品は,細骨材中の鉄鉱石の粒径が0ないし8.0mmであり(各被告製品の構成e),この点で本件明細書の特許請求の範囲に記載された構成要件Eの「酸化鉄系鉄鉱石の粒径は,5.0~0.1mm」と構成を異にするところ,構成要件Eの「酸化鉄系鉄鉱石の粒径は,5.0~0.1mm」との部分は,上記のとおり本件特許発明の本質的部分を構成するものであるから,各被告製品は,均等の第1要件を満たさない。 イ第5要件また,本件特許発明の上記アのような出願経過に照らせば,粒径40ないし5.0mmの酸化鉄系鉄鉱石を除外する補正を行って,酸化鉄系鉄鉱石の粒径を5.0~0.1mmと限定したものというべきである。 被告各製品は,細骨材に粒径5.0ないし8.0mmの鉄鉱石を含んでおり(各被告製品の構成e),この点で本件明細書の特許請求の範囲に記載された構成と異なっているところ,当該相違部分は,上記のとおり,特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものというべきであるから,各被告製品は,均等の第5要件も満たさない。 (3) 小括以上のとおり,各被告製品は,第1要件及び第5要件を満たさないから,本件特許発明の構成と均等なものということはできない。 告製品は,均等の第5要件も満たさない。 (3) 小括以上のとおり,各被告製品は,第1要件及び第5要件を満たさないから,本件特許発明の構成と均等なものということはできない。 3 以上によれば,各被告製品は,本件特許発明における硬化前の混練物の備える要件を充足せず,またこれと均等ということもできないから,各被告製品の硬化体によりなるコンクリートブロックが,本件特許発明の技術的範囲に属するということはできない。 したがって,原告の本訴請求は,その余の点について判断するまでもなく,理由がない。 よって主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第46部裁判長裁判官三村量一 裁判官吉川泉 裁判官青木孝之は,退官のため署名押印することができない。 裁判長裁判官三村量一(別紙)
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