令和2(ワ)2956 特許権侵害差止等請求事件

裁判年月日・裁判所
令和3年5月20日 大阪地方裁判所
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判決文本文37,634 文字)

- 1 -令和3年5月20日判決言渡同日判決原本交付裁判所書記官令和2年(ワ)第2956号特許権侵害差止等請求事件口頭弁論終結の日令和3年3月15日判決 原告株式会社ジェイ・エム・シー(以下「原告会社」という。)原告 P1原告ら訴訟代理人弁護士福山勝紀同補佐人弁理士本田史樹 被告株式会社トーケン同訴訟代理人弁護士山根良一同山根聡一郎同訴訟代理人弁理士鎌田直也 主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実 及び理由 第1 請求 1 被告は,別紙物件目録記載の製品を製造し,譲渡し,又は譲渡の申出をしてはならない。 2 被告は,別紙物件目録記載の製品を廃棄せよ。 3 被告は,別紙方法目録1記載の方法を使用してはならない。 4 被告は,原告会社に対し,1000万円及びこれに対する令和2年4月29 日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 - 2 - 5 被告は,原告P1に対し,50万円及びこれに対する令和2年4月29日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 本件は,発明の名称を「硬貨の製造方法」とする特許(以下「本件特許」という。また,本件特許に係る特許請求の範囲請求項1記載の発明を「本件発明1」, 同2記載の発明を「本件発明2」といい,こ 1 本件は,発明の名称を「硬貨の製造方法」とする特許(以下「本件特許」という。また,本件特許に係る特許請求の範囲請求項1記載の発明を「本件発明1」, 同2記載の発明を「本件発明2」といい,これらを併せて「本件各発明」という。)に係る特許権(以下「本件特許権」という。)を共有する原告らが,別紙物件目録記載の製品(以下「被告製品」という。)の製造に当たり被告が使用する別紙方法目録1記載の方法(以下「被告方法1」という。)は本件各発明の技術的範囲に属し,被告による被告方法1の使用及び同使用による被告製品の製造並びに製造した 被告製品の販売及び販売の申出は本件特許権を侵害する行為であるとして,被告に対し,以下の請求をする事案である。 (1) 原告らの請求本件特許権に基づく,被告製品の製造,譲渡,譲渡の申出及び被告方法1の使用の差止(特許法(以下「法」という。)100条1項)並びに被告製品の廃棄(同 条2項)(2) 原告会社の請求本件特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条,法102条2項)及び不当利得返還請求(民法704条)の一部請求として,1000万円並びにこれに対する訴状送達の日の翌日(令和2年4月29日)から支払済みまで平成 29年法律第44号による改正前の民法所定の年5%の割合による遅延損害金及び遅延利息の支払(3) 原告P1の請求本件特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条,法102条3項)の一部請求として,50万円及びこれに対する令和2年4月29日から支払済 みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5%の割合による遅延- 3 -損害金の支払 2 前提事実(争いのない事実,掲記の証拠及び弁論の全趣旨より容易に認定できる事実。なお,枝番号の で平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5%の割合による遅延- 3 -損害金の支払 2 前提事実(争いのない事実,掲記の証拠及び弁論の全趣旨より容易に認定できる事実。なお,枝番号のある証拠で枝番号の記載のないものは全ての枝番号を含む。)(1) 当事者 原告会社は,パチスロコイン,ゲームコイン,特殊コイン(バッティング・駐車場・ゴルフ等)の製造及び販売,光学機器の開発,製造及び販売等を目的とする会社である。 原告P1は,令和元年12月16日,原告会社より本件特許権の一部を譲り受けた者である。 被告は,各種コインメダル,メダル洗浄機,遊戯関連商品の製造販売,キーホルダー,プレート,ピンバッチ等の販売,工業用電気機械設備,装置の設計,製作,施工及び販売等を目的とする会社である。 (2) 本件特許権ア原告らは,次の本件特許権を共有している。 特許番号第3787502号発明の名称硬貨の製造方法優先日平成12年3月8日出願日平成13年3月8日登録日平成18年3月31日 訂正審決確定日平成31年3月14日特許請求の範囲別紙特許審決公報中の特許請求の範囲請求項1及び請求項2に各記載のとおり(以下,同別紙中の特許訂正明細書を「本件訂正明細書」といい,また,別紙特許公報中の図面を「本件図面」という。)イ本件特許に係るその他の主な手続の経緯は,以下のとおりである。 平成15年11月7日付け拒絶理由通知- 4 -平成16年1月13日意見書及び手続補正書提出同年8月25日付け拒絶査定同年9月30日拒絶査定不服審判請求平成17年12月15日付け拒絶理由通知平成18年2月14日意 1月13日意見書及び手続補正書提出同年8月25日付け拒絶査定同年9月30日拒絶査定不服審判請求平成17年12月15日付け拒絶理由通知平成18年2月14日意見書及び手続補正書提出 同年2月27日付け審決ウ原告会社は,平成30年9月7日,特許庁に対し,本件特許に係る明細書及び特許請求の範囲の訂正につき訂正審判を請求した(訂正2018-390131 号。以下「本件訂正審判」という。)。これに対し,特許庁は,平成31年3月5日,これを認める審決をし,同月14日,同審決は確定した(以下「本件訂正」という。)。 なお,本件訂正前の明細書及び特許請求の範囲の記載は,別紙特許公報の特許請求の範囲及び発明の詳細な説明に各記載のとおりである。 (3) 本件各発明の構成要件の分説本件各発明をそれぞれ構成要件に分説すると,次のとおりである。 ア本件発明1 A 遊戯場で使用される硬貨の製造方法であって,B 硬貨をプレスして表面に模様を表すための金型の表面に,C 金型の厚み方向へ切削可能な同時三軸制御NC フライス機を用い,金型に対して一定のパターンで切削深さと,水平面に対する金型の切削角度と,を変えながら金型表面上を移動させ,傾斜面を含む特定のパターンを金型上に描き,これを金 型表面全体に繰り返すことにより繰り返し模様からなる地模様を形成すること,及び,D1 平面彫刻機により硬貨の表面に浮き出る文字,図形等の模様に対応する部分を切削することによって,E 得られた金型の凹凸部を含む表面全体を金属製ブラシを回転させながら磨き 込んだ後,- 5 -F この金型を用いてプレスすることによって硬貨の表面に立体的な幾何学的地模様と,この幾何学的地模様から浮き出る文 部を含む表面全体を金属製ブラシを回転させながら磨き 込んだ後,- 5 -F この金型を用いてプレスすることによって硬貨の表面に立体的な幾何学的地模様と,この幾何学的地模様から浮き出る文字,図形等の模様を得ることを特徴とする硬貨の製造方法。 イ本件発明2A 遊戯場で使用される硬貨の製造方法であって, B 硬貨をプレスして表面に模様を表すための金型の表面に,C 金型の厚み方向へ切削可能な同時三軸制御NC フライス機を用い,金型に対して一定のパターンで切削深さと,水平面に対する金型の切削角度と,を変えながら金型表面上を移動させ,傾斜面を含む特定のパターンを金型上に描き,これを金型表面全体に繰り返すことにより繰り返し模様からなる地模様を形成すること,及 び,D2 同じく同時三軸制御NC フライス機により硬貨の表面に浮き出る文字,図形等の模様に対応する部分をV 溝状に切削することによって,E 得られた金型の凹凸部を含む表面全体を金属製ブラシを回転させながら磨き込んだ後, F この金型を用いてプレスすることによって硬貨の表面に立体的な幾何学的地模様と,この幾何学的地模様から浮き出る文字,図形等の模様を得ることを特徴とする硬貨の製造方法。 (4) 被告の行為等ア被告による被告製品の製造及び販売 被告は,被告製品を,顧客の要望に応じて文字,図形等の模様(以下「地模様以外の模様」ということがある。)を適宜加えて製造,販売及び販売の申出をしている(甲3~5,22)。 イ被告方法の特定被告が被告製品の製造に当たって用いる方法(以下「被告製造方法」という。) の構成については,後記のとおり当事者間に争いがあるが,被告製造方法が「遊戯- 6 -場で使用される硬貨の製造方法」(構成要 告製品の製造に当たって用いる方法(以下「被告製造方法」という。) の構成については,後記のとおり当事者間に争いがあるが,被告製造方法が「遊戯- 6 -場で使用される硬貨の製造方法」(構成要件A)を充足することについては,当事者間に争いがない。 (5) 存続期間の満了本件特許権は,令和3年3月8日にその存続期間を満了して消滅した。 3 主な争点 (1) 本件各発明の技術的範囲への属否(争点1)ア文言侵害の成否(争点1-1)イ均等侵害の成否(争点1-2)(2) 無効理由の有無(争点2)ア訂正要件違反の有無(争点2-1) イサポート要件違反の有無(争点2-2)ウ実施可能要件違反の有無(争点2-3)エ明確性要件違反の有無(争点2-4)(3) 原告らの損害額,原告会社の損失額・被告の利得額(争点3)第3 当事者の主張 1 文言侵害の成否(争点1―1)〔原告らの主張〕(1) 本件各発明の構成要件についてア 「金型」(構成要件B,C,E及びF)の意義プレス金型に関する工程は原金型に関する工程がなければ硬貨を製造することが できず,原金型に関する工程はプレス金型に関する工程がなければ硬貨を製造することができない。その意味で,両工程は一体不可分の関係にある。 加えて,本件各発明は硬貨の製造方法の発明であり,金型という物の発明ではない。また,本件訂正明細書中には,金型が1つであるという限定はない。本件訂正明細書記載の実施形態が同一の金型を一連の工程において作成,使用するものであ るとしても,その実施形態に限定されるものではない。 - 7 -さらに,本件各発明の作用効果は,硬貨表面の地模様に立体彫りによる変化を起こし,硬貨の輝きを増し,硬貨の装 ,使用するものであ るとしても,その実施形態に限定されるものではない。 - 7 -さらに,本件各発明の作用効果は,硬貨表面の地模様に立体彫りによる変化を起こし,硬貨の輝きを増し,硬貨の装飾価値あるいは遊戯価値を高めることであり,そのために,地模様以外の模様に対応する部分をV溝状に切削することである。これにより,光の反射面が増大し,さらに地模様以外の模様の側縁部は凸部の立ち上がりによる影が生じないので輝きが増すと同時に,地模様以外の模様により傾斜面 が種々の方向に向いているので,色々な角度で光を反射するという作用効果を奏する。金型が1つであるか否かは,このような本件各発明の作用効果に関係がない。 以上より,「金型」(構成要件B,C,E及びF)は,1つに限定されない。 イ 「切削」(構成要件C及びD1)の意義「切削」とは,金属などを切り削ることであるところ,放電加工も,デザインを 転写する際に金属である金型を削っている以上,切削の一種である。また,被告製造方法は,本件発明1に電極製作及び放電加工の工程を付加したものであるため,放電加工が切削加工に含まれるか否かは関係がない。 ウ 「金型に対して…水平面に対する金型の切削角度と,を変えながら金型表面上を移動させ」(構成要件C)の意義 「角度」(構成要件C)とは,金型の切削面の傾斜角度,すなわち水平面に対する金型の切削角度を意味し,切削工具自身の角度を意味しない。また,本件訂正明細書においても,「加工工具がZ軸に対する傾斜角度を変えながら移動する」ことに限定する趣旨の記載はない。 そうすると,「金型に対して…水平面に対する金型の切削角度と,を変えながら 金型表面上を移動させ」(構成要件C)には,加工工具が金型のZ 軸に対する傾斜角度を変えずに移動する場合 載はない。 そうすると,「金型に対して…水平面に対する金型の切削角度と,を変えながら 金型表面上を移動させ」(構成要件C)には,加工工具が金型のZ 軸に対する傾斜角度を変えずに移動する場合も含まれる。 エ 「平面彫刻機」(構成要件D1)の意義「平面彫刻機」(構成要件D1)とは,平面彫刻機の機能を有する機械であればよく,同時三軸制御NC フライス機と平面彫刻機の機能を併せ持つ機械も,「平面 彫刻機」に含まれる。本件訂正明細書上,平面彫刻機と同時三軸制御NC フライス- 8 -機が使い分けられているとしても,平面彫刻機の機能を有する機械が平面彫刻機と異なるものということはできない。 オ 「磨き込」み(構成要件E)の意義「得られた金型の凹凸部を含む表面全体を金属製ブラシを回転させながら磨き込んだ後」(構成要件E)との構成は,「金属製ブラシで磨く」ことを説明したもの に過ぎず,「磨き込」みとは,磨きの程度で限定するものではない。 (2) 被告製造方法の構成について被告製造方法の構成は,被告方法1のとおりである(以下,「FANUCROBODORILL α-T21iE」を「被告機械」という。)。 (3) 構成要件の充足について ア構成要件Bと構成b「金型」(構成要件B(及びC,E,F))は1つに限定されず,「原金型」も「プレス金型」も「金型」である。被告製品を製造する工程において,原金型に関する工程とプレス金型に関する工程が存在するとしても,両工程は一体不可分の関係にあり,いずれか一方の工程のみを取り出して本件各発明と比較するべきではな い。 そうすると,「金型」(構成b)が原金型であり,プレス金型を作製する用途に用いられるものであるとしても,「硬貨をプレスして表面に模様を表すための金型」( 件各発明と比較するべきではな い。 そうすると,「金型」(構成b)が原金型であり,プレス金型を作製する用途に用いられるものであるとしても,「硬貨をプレスして表面に模様を表すための金型」(構成要件B)であることに違いはない。 したがって,被告製品1の構成bは,「硬貨をプレスして表面に模様を表すため の金型の表面に」(構成要件B)を充足する。 イ構成要件Cと構成c(ア) 被告機械は,金型の厚み方向へ切削可能な同時三軸制御NC 加工装置であり,フライス加工に適したものである。したがって,被告機械は,「金型の厚み方向へ切削可能な同時三軸制御NC フライス機」(構成要件C)に該当する。 (イ) 「金型に対して一定のパターンで切削深さと,水平面に対する金型の切削角度- 9 -と,を変えながら金型表面上を移動させ,傾斜面を含む特定のパターンを金型上に描き,これを金型表面全体に繰り返すことにより繰り返し模様からなる地模様を形成すること」(構成要件C)とは,金型を前後左右に移動させつつ,切削用の工具を上下に移動させながら彫ることにより,金型の切削面を斜めに彫ることを可能とすると共に,切削用の工具の上下のパターン設定により,金型に対する切削の深さ を変えながら彫ることができることによって,金型の切削面の傾斜角度を様々に変化させることを可能とし,これにより金型に立体的な地模様を描くことを意味する。 他方,「ワーク(金型)を横方向(X軸方向)及び前後方向(Y軸方向)に移動させるとともに,工具を上下方向(Z軸方向)に移動させる3軸制御によって原金型表面全体に繰り返し模様からなる地模様を形成する」(構成c)とは,金型を前後 左右に移動させつつ,切削用の工具を上下に移動させ,金型に対する切削の深さを変えながら彫ることで,金型 よって原金型表面全体に繰り返し模様からなる地模様を形成する」(構成c)とは,金型を前後 左右に移動させつつ,切削用の工具を上下に移動させ,金型に対する切削の深さを変えながら彫ることで,金型の切削面の傾斜角度を様々に変化させることを可能とし,これにより金型に立体的な地模様を描く方法を意味する。 したがって,「ワーク(金型)を横方向(X軸方向)及び前後方向(Y軸方向)に移動させるとともに,工具を上下方向(Z軸方向)に移動させる3軸制御によっ て原金型表面全体に繰り返し模様からなる地模様を形成する」(構成c)は,「金型に対して一定のパターンで切削深さと,水平面に対する金型の切削角度と,を変えながら金型表面上を移動させ,傾斜面を含む特定のパターンを金型上に描き,これを金型表面全体に繰り返すことにより繰り返し模様からなる地模様を形成すること」(構成要件C)に該当する。 (ウ) 以上より,被告方法1の構成cは構成要件Cを充足する。 なお,前記アと同様の理由から,構成cの金型が「原金型」であることは,構成cが構成要件Cを充足することを妨げない。 ウ構成要件D1 と構成d「文字,図形等の模様に対応する部分」(構成要件D1)は,「文字,図形等の 模様に対応する部分の外縁」(構成d)を含む。また,被告機械は,硬貨の模様部- 10 -分の表面に浮き出る部分を切削するものであり,平面彫刻機としての機能も有している同種の工作機械である。 したがって,(被告機械によって)「文字,図形等の模様に対応する部分の外縁を切削する」(構成d)は,「平面彫刻機により硬貨の表面に浮き出る文字,図形等の模様に対応する部分を切削する」(構成要件D1)を充足する。 エ構成要件Eと構成e及びg「原金型の表面を金属製ブラシで処理 d)は,「平面彫刻機により硬貨の表面に浮き出る文字,図形等の模様に対応する部分を切削する」(構成要件D1)を充足する。 エ構成要件Eと構成e及びg「原金型の表面を金属製ブラシで処理する」(構成e)及び「原金型の表面を回転させた金属製のブラシで処理する」(構成g)は,構成b~dにより得られた金型の表面全体につき,金属製ブラシを使用し,これを回転させながら磨くものである。したがって,構成e及びgは,「得られた金型の凹凸部を含む表面全体を金属 製ブラシを回転させながら磨き込」むこと(構成要件E)を充足する。 なお,前記アと同様の理由から,構成e及びgの金型が「原金型」 であることは,構成e及びgが構成要件Eを充足することを妨げない。 オ構成要件Fと構成i及びj前記アのとおり,「金型」(構成要件B(及びC,E,F))は1つに限定され ず,「原金型」も「プレス金型」も「金型」であり,一体不可分の関係にある原金型に関する工程とプレス金型に関する工程のうち後者の工程のみを取り出して本件各発明と比較するべきではない。 「このプレス金型を用いて真鍮材料をプレスすることにより真鍮製硬貨を成形する」(構成i)及び「成形した真鍮製硬貨の表面にニッケルメッキ処理を施して1 0㎛以下のニッケル被膜を形成し,硬貨を完成する」(構成j)との構成は,金型を用いてプレスすることで,硬貨の表面に立体的な幾何学的地模様と,この幾何学的地模様から浮き出る文字,図形等の模様を得ることを特徴とする硬貨を製造するものである。 したがって,被告方法1の構成i及びjは,「この金型を用いてプレスすること によって硬貨の表面に立体的な幾何学的地模様と,この幾何学的地模様から浮き出- 11 -る文字,図形等の模様を得ることを特徴とする硬貨の製 の構成i及びjは,「この金型を用いてプレスすること によって硬貨の表面に立体的な幾何学的地模様と,この幾何学的地模様から浮き出- 11 -る文字,図形等の模様を得ることを特徴とする硬貨の製造方法」(構成要件F)を充足する。 カ小括以上のとおり,被告製造方法(被告方法1)は,本件発明1の構成要件をいずれも充足するから,その技術的範囲に属する。 キ本件発明2について(ア) 被告製造方法が本件発明2のB,C,E及びFを充足することは,前記ア,イ,エ及びオのとおりである。 (イ) 構成要件D2 と構成d前記ウと同様に,「文字,図形等の模様に対応する部分」(構成要件D2)は, 「文字,図形等の模様に対応する部分の外縁」(構成d)を含む。 また,被告機械は,NC フライス機の概念に含まれる工作機械であり,かつ,硬貨の模様部分の表面に浮き出る部分を切削するという点で,これと共通している。 さらに,被告製品には,凹形状又は凸形状ではなく,斜めにカットされたV形状の模様が付されたものが含まれている。 したがって,被告方法1の(被告機械により)「文字,図形等の模様に対応する部分の外縁を切削する」(構成d)は,「同じく同時三軸制御NC フライス機により硬貨の表面に浮き出る文字,図形等の模様に対応する部分をV溝状に切削する」(構成要件D2)を充足する。 (ウ) 小括 以上より,被告製造方法(被告方法1)は,本件発明2の構成要件をいずれも充足することから,その技術的範囲に属する。 〔被告の主張〕(1) 本件各発明の構成要件についてア 「金型」(構成要件B,C,E及びF)の意義 本件各発明に係る特許請求の範囲の記載には,各工程において「金型」の語が一- 12 -貫して用いられている。 件各発明の構成要件についてア 「金型」(構成要件B,C,E及びF)の意義 本件各発明に係る特許請求の範囲の記載には,各工程において「金型」の語が一- 12 -貫して用いられている。また,「得られた金型の…」(構成要件E),「この金型を用いて」(構成要件F)という文言から,構成要件B及びCの「金型」と構成要件E及びFの「金型」とは,同じ金型であることが明確に表現されている。さらに,本件訂正明細書及び本件図面にも,同一の金型を一連の工程において一貫して作製ないし使用する実施形態しか開示されていない。 このため,本件各発明は,単一の金型に切削等の一連の処理を施し,その金型自体を用いて硬貨を製造するという発明であり,原金型とプレス金型というような,異なる局面で用いられる異種の金型が,いずれも本件各発明の「金型」に相当するという解釈は成り立たない。 イ 「切削」(構成要件C及びD1)の意義 「切削」(構成要件C及びD1)とは,「同時三軸制御NC フライス機」を用いた「切削」であるから,「刃物」を用いた「切削」すなわち刃物を用いて切削対象物を削ることを意味する。他方,放電加工とは,一般に「電極とワークとの間で発生するアーク放電によって,ワークを熱し,溶かしながら加工を行う」ことをいい,刃物を用いて「切り削る」ことを意味する「切削」とは加工の態様が異なる。 したがって,「切削」には,放電加工は含まれない。 ウ 「金型に対して…水平面に対する金型の切削角度と,を変えながら金型表面上を移動させ」(構成要件C)の意義「切削角度」につき,「金型の切削面の傾斜角度」すなわち金型の切削作業完了後におけるその切削された面の傾斜角度を意味するものと理解することは,そもそ も言葉自体の意味からかけ離れている上,「金型 切削角度」につき,「金型の切削面の傾斜角度」すなわち金型の切削作業完了後におけるその切削された面の傾斜角度を意味するものと理解することは,そもそ も言葉自体の意味からかけ離れている上,「金型表面上を移動させ」のように切削作業中の手順が動的に描写されていることとの整合性を欠く。本件訂正明細書及び本件図面にも上記理解を裏付ける記載はなく,かえって,切削工具が金型に対して傾斜した状態で切削作業が行われている図が明確に描かれている。 したがって,「金型に対して,…水平面に対する金型の切削角度と,を変えなが ら金型表面上を移動させ」(構成要件C)には,少なくとも金型と切削工具との相- 13 -対的な傾斜角度が変化しないものは含まれない。 また,このように構成要件Cには切削工具を傾斜させる切削態様が含まれる以上,これに用いられる「同時三軸制御NC フライス機」は,少なくとも切削工具を傾斜させることができる構造となっていることを要する。 エ 「平面彫刻機」(構成要件D1)の意義 本件各発明において,「同時三軸制御NC フライス機」(構成要件C)と「平面彫刻機」(構成要件D1)とは,用語として明確に使い分けられている。本件訂正明細書においてもこの点は同様である。したがって,「同時三軸制御NC フライス機」と「平面彫刻機」とは,異種の機械を意味すると解されるとともに,「平面彫刻機」にて行う工程は,「平面彫刻機」としての機能を有し得る「同時三軸制御 NC フライス機」等三軸制御の工作機械で代替することはできず,専用品としての「平面彫刻機」にて行うことを要する。 オ 「磨き込」み(構成要件E)の意義「磨き込」み(構成要件E)とは,本件特許出願に係る拒絶査定不服審判において原告会社が提出した意見書の内容に鑑みると,その程度が一 機」にて行うことを要する。 オ 「磨き込」み(構成要件E)の意義「磨き込」み(構成要件E)とは,本件特許出願に係る拒絶査定不服審判において原告会社が提出した意見書の内容に鑑みると,その程度が一般的なバフ研磨を超 える研磨の状態であることを意味すると解され,バフ研磨にすら満たない研磨の状態までもこれに該当するということはできない。 (2) 被告製造方法について被告製造方法は,別紙方法目録2記載のとおりである(以下「被告方法2」という。)。被告方法2は,大きくは,原金型に関する工程(構成p~構成t)とプレ ス金型に関する工程(構成u~構成y)に分類される。 (3) 構成要件の非充足についてアプレス金型が本件各発明の「金型」に相当すると解した場合(ア) 構成要件C及びD1 と構成u被告方法2において,プレス金型の地模様及び地模様以外の模様は,いずれも放 電加工機を用いた放電加工により形成され(構成u),NC フライス機の切削によ- 14 -り形成されるものではなく,また,平面彫刻機を用いた切削により形成されるものでもない。 したがって,被告方法2の構成uは,構成要件C及びD1 を充足しない。 (イ) 構成要件Eと構成v被告方法2においては,プレス金型の表面を金属製ブラシで処理し,放電加工 により発生したスケールの除去を行う(構成v)。金属製ブラシとプレス金型とが擦れ合う以上,多少なりとも研磨に類する作用が奏されること自体は否定できないものの,被告方法2においては,構成vに続き,「プレス金型の表面を,ダイヤモンドペーストを用いてバフ研磨を施す」(構成w)ことから,構成vにおいて研磨に類する作用が奏されているとしても,それはバフ研磨を下回る研磨作用である。 そうである以上,構成vにより研 イヤモンドペーストを用いてバフ研磨を施す」(構成w)ことから,構成vにおいて研磨に類する作用が奏されているとしても,それはバフ研磨を下回る研磨作用である。 そうである以上,構成vにより研磨に類する作用が奏されているとしても,それは「磨き込」み(構成要件E)には該当しない。 したがって,被告方法2の構成vは,構成要件Eを充足しない。 (ウ) 小括以上のとおり,被告製造方法(被告方法2)は,少なくとも本件発明1の構成要 件C,D1 及びEを充足しないから,その技術的範囲に属しない。 (エ) 本件発明2について被告方法2の構成u及びvが構成要件C及びEを充足しないことは,前記(ア)及び(イ)のとおりである。 また,被告方法2においては,プレス金型の地模様以外の模様を放電加工機を用 いた放電加工により形成しており(構成u),同時三軸制御NC フライス機の切削により形成するものではない。したがって,被告方法2の構成uは,構成要件D2を充足しない。 以上より,被告製造方法(被告方法2)は,本件発明2の構成要件C,D2 及びEを充足しないから,その技術的範囲に属しない。 イ原金型が本件各発明の「金型」に相当すると解した場合- 15 -(ア) 構成要件B及びFについて被告方法2の原金型は,硬貨をプレスする用途に用いられるものではなく,電極部材を介してプレス金型を作製する用途に用いられるものである(構成t,u)。 このため,被告方法2は,少なくとも「硬貨をプレスして表面に模様を表すための金型の表面に」(構成要件B),「この金型を用いてプレスすることによって」 (構成要件F)を充足しない。 (イ) 構成要件C及びD1 と構成p被告方法2は,被告機械を用いて,地模様以外の模様と地模様とを連続的 件B),「この金型を用いてプレスすることによって」 (構成要件F)を充足しない。 (イ) 構成要件C及びD1 と構成p被告方法2は,被告機械を用いて,地模様以外の模様と地模様とを連続的に形成するものであり(構成p),地模様を同時三軸制御NC フライス機で,地模様以外の模様を平面彫刻機で,それぞれ異なる装置を用いて別工程で形成するものではな い。前記(1)エのとおり,本件発明1における「同時三軸制御NC フライス機」(構成要件C)と「平面彫刻機」(構成要件D1)とは,異種の機械であるから,被告方法2の構成pは,構成要件C及びD1 を充足しない。また,被告機械は専用品としての「平面彫刻機」ではないから,その点でも構成pは構成要件D1 を充足しない。 さらに,被告方法2においては,被告機械を用い,これにセットした原金型用ワークを横方向(X軸方向)及び前後方向(Y軸方向)に移動させつつ,原金型用ワークを切削する工具を上下方向(Z軸方向)に移動させる三軸制御により切削を行い(構成p),切削工具や原金型用ワークをセットしたテーブルが傾斜するものではない。そもそも,被告機械は,切削工具を傾斜させることが可能な構造ではない。 このように,被告方法2において,被告機械の切削工具による原金型の切削角度は不変であるから,被告方法2の構成pは,(切削工具を傾斜させる機構を備える)「同時三軸制御NC フライス機」(構成要件C)を充足せず,かつ,「金型に対して,…水平面に対する金型の切削角度…を変えながら金型表面上を移動させ」(構成要件C)を充足しない。 (ウ) 構成要件Eと構成q及びs- 16 -被告方法2においては,原金型の表面を金属製ブラシで処理し,切削加工で発生したバリ取りや焼き入れにより発生したスケール 件C)を充足しない。 (ウ) 構成要件Eと構成q及びs- 16 -被告方法2においては,原金型の表面を金属製ブラシで処理し,切削加工で発生したバリ取りや焼き入れにより発生したスケールの除去を行うが(構成q,s),その金属製ブラシにより「磨き込」むことはしない。 したがって,被告方法2の構成q及びsは,構成要件Eを充足しない。 (エ) 小括 以上のとおり,被告方法2は,少なくとも本件発明1の構成要件B,C,D1,E及びFを充足しないから,その技術的範囲に属しない。 (オ) 本件発明2について被告方法2が本件発明2の構成要件B,C,E及びFを充足しないことは,前記(ア)~(ウ)のとおりである。 また,被告方法2において,地模様以外の模様に対応する部分は凹形状又は凸形状に形成され(構成p),V溝状には形成されない。被告製品には,V形状(倒立V形状)と解釈される余地のある,いわゆるギザギザ形状の模様も含まれているが,この種の模様は地模様に限られており,地模様以外の模様は全て平坦な天面を有し,V形状にはなっていない。 したがって,構成pは,本件発明の構成要件D2 を充足しない。 以上より,被告方法2は,本件発明2の構成要件B,C,D2,E及びFを充足しないから,その技術的範囲に属しない。 2 均等侵害の成否(争点1-2)〔原告らの主張〕 (1) 本件各発明の作用効果は,硬貨表面の地模様に立体彫りによる変化を起こし,硬貨の輝きを増し,硬貨の装飾価値あるいは遊戯価値を高めることであり,そのために,地模様以外の模様に対応する部分をV溝状に切削することである。これにより光の反射面が増大し,さらに地模様以外の模様の側縁部は凸部の立ち上がりによる影が生じないので輝きが増すと同時に,地模様以外の模 ,地模様以外の模様に対応する部分をV溝状に切削することである。これにより光の反射面が増大し,さらに地模様以外の模様の側縁部は凸部の立ち上がりによる影が生じないので輝きが増すと同時に,地模様以外の模様により傾斜面が種々の 方向に向いているので,色々な角度で光を反射するという作用効果を奏する。この- 17 -ような作用効果を生じさせるための技術的思想の中核をなす特徴的部分は,金型に対して一定のパターンで切削の深さと,水平面に対する金型の切削角度と,を変えながら金型表面上を移動させ,傾斜面を含む特定のパターンを金型上に描くことと,地模様以外の模様に対応する部分をV溝状に切削することであり,これらの部分が本件各発明の本質的部分である。 他方,同時三軸制御NC フライス機を用いて硬貨のプレス加工に用いる金型そのものの地模様を切削により形成することは,本件各発明の本質的部分ではない。 (2) 「金型」についてア原金型とプレス金型の2つの金型を用いるか否かは,上記本件各発明の作用効果に関係がなく,この相違部分は,本件各発明の本質的部分ではない。 イ本件特許において,「金型」を原金型とプレス金型の2つの金型を用いる方法に置き換えても,本件各発明と同一の作用効果を奏すると共に,そのように置き換えることは,当業者にとって,被告方法1の実施に当たり容易に想到し得たものである。 (3) 「切削」について ア同時三軸制御NC フライス機による切削か放電加工による切削かは,本件各発明の作用効果に関係がなく,この相違部分は,本件各発明の本質的部分ではない。 イ放電加工も切削の一種であり,同時三軸制御NC フライス機による切削と置換可能であり,被告方法1の実施時において,当業者は,そのように置き換えることを容易に想到でき 発明の本質的部分ではない。 イ放電加工も切削の一種であり,同時三軸制御NC フライス機による切削と置換可能であり,被告方法1の実施時において,当業者は,そのように置き換えることを容易に想到できる。 ウ本件特許については,出願当初から特許請求の範囲に「同時三軸制御NC フライス機」と記載されているだけであり,同時三軸制御NC フライス機を用いた切削技術以外の地模様の形成技術につき,その出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情はなく,また,「同時三軸制御NC フライス機」に限定する旨の補正も行っていない。したがって,外形的に見て, 同時三軸制御NC フライス機を用いた切削技術以外の地模様の形成技術を特許請求- 18 -の範囲から意識的に除外したものに当たるなどの特段の事情が存在するとはいえない。 (4) 地模様以外の模様に係る工作機械についてア地模様以外の模様に係る工作機械が被告機械か平面彫刻機か(本件発明1につき),また,被告機械か同時三軸制御NC フライス機か(本件発明2につき)は, 本件各発明の作用効果には関係がなく,この相違部分も,本件各発明の本質的部分ではない。 イ被告機械は,平面彫刻機(本件発明1につき)ないし同時三軸制御NC フライス機(本件発明2につき)としての機能も有する同種の工作機械であり,地模様以外の模様に対応する部分を切削する点で共通しており,この点が本件各発明の目 的達成においては重要な要素であるところ,平面彫刻機を被告機械に置き換えても,本件発明1の作用効果と同じ作用効果を奏する。 ウ被告機械は,本件各発明当時にはなかった新しい工作機械であり,被告方法1の実施時において,平面彫刻機(本件発明1につき)ないし同時三軸制御NC フ 本件発明1の作用効果と同じ作用効果を奏する。 ウ被告機械は,本件各発明当時にはなかった新しい工作機械であり,被告方法1の実施時において,平面彫刻機(本件発明1につき)ないし同時三軸制御NC フライス機(本件発明2につき)を被告機械に置き換えることは,当業者が容易に想 到し得たことである。 エ均等の第5要件について(ア) 被告方法1は,同時三軸制御NC フライス機や平面彫刻機にはない機能を用いて硬貨を製造したわけではなく,これらの機械が有する機能を用いて硬貨を製造しているから,このような方法を原告会社が本件特許の出願経過において意識的に 除外しているとはいえない。 また,本件各発明の特許請求の範囲には,特許出願当初から「同時三軸制御NCフライス機」と記載されているだけであり,同時三軸制御NC フライス機を用いた切削技術以外の形成技術につき,その出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情はないし,「同時三軸制御NC フライ ス機」に限定する旨の補正も行っていない。したがって,外形的に見て,同時三軸- 19 -制御NC フライス機を用いた切削技術以外の形成技術を特許請求の範囲から意識的に除外したものに当たるなどの特段の事情が存在するとはいえない。 (イ) 本件発明2については,地模様以外の模様に対応する箇所をV溝状に切削する方法に限定し,これ以外の態様を特許請求の範囲から除外したこともない。 (5) 「磨き込」みについて ア 「金属製ブラシによる研磨」(構成要件E)か「金属製ブラシによる汚れ落とし+バフ研磨」(被告方法1の構成e,g及びh)かは,本件各発明の作用効果に関係がなく,この相違部分は,本件各発明の本質的部分ではない。 イ 「金属製ブラシによる研磨」と「金属 ブラシによる汚れ落とし+バフ研磨」(被告方法1の構成e,g及びh)かは,本件各発明の作用効果に関係がなく,この相違部分は,本件各発明の本質的部分ではない。 イ 「金属製ブラシによる研磨」と「金属製ブラシによる汚れ落とし+バフ研磨」とは,硬貨の輝きを増し,硬貨の装飾価値あるいは遊戯価値を高めるという同じ目 的を達成することができ,硬貨に輝きを増させるという同じ作用効果を奏する。 ウバフ研磨は従来から行われている研磨方法であり,被告方法1の実施時において,「金属製ブラシによる研磨」を「金属製ブラシによる汚れ落とし+バフ研磨」に置き換えることは,当業者が容易に想到し得たことである。 エバフ研磨技術を用いた構成を特許請求の範囲から意識的に除外したことはな い。 (6) 小括以上より,被告方法1は,本件各発明に係る特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして,本件各発明の技術的範囲に属する。 〔被告の主張〕 (1) 「金型」について本件各発明の課題及び効果は,硬貨の輝きを増し,硬貨の装飾価値あるいは遊戯価値を高めることであるところ,このような効果は,硬貨のプレス加工に用いられる金型自体に,精密な切削加工を得意とする同時三軸制御NC フライス機を用いて地模様等を切削することにより初めて得られるものである。プレス金型の地模様等 を切削加工ではなく放電加工により形成している場合,放電加工は切削加工に比し- 20 -て必ずしも精密な加工に適したものではないことから,同等の硬貨の輝き等を得ることができない。 したがって,「金型」を「原金型」及び「プレス金型」に置換すると,本件各発明と同様の作用効果を奏することができなくなる。 (2) プレス金型が本件各発明の「金型」に相当すると解した場合 ア本件 がって,「金型」を「原金型」及び「プレス金型」に置換すると,本件各発明と同様の作用効果を奏することができなくなる。 (2) プレス金型が本件各発明の「金型」に相当すると解した場合 ア本件発明1について(ア) 「切削」についてa 本件発明1は,切削技術を用いて硬貨の地模様に変化をつけることを課題とし,これに対応する解決手段として構成要件B,C及びFの構成を採用したのであるから,同時三軸制御NC フライス機を用いて硬貨のプレス加工に用いる金型の地 模様を切削により形成することは,本件発明1の本質的部分に含まれる。 他方,被告方法2において,プレス金型の地模様は,同時三軸制御NC フライス機を用いた切削ではなく,放電加工により形成されている。したがって,被告方法2は,本件発明1と本質的部分に関して相違する。 b 放電加工は,必ずしも切削加工に比して精密な加工に適したものではなく, 切削加工と同等の輝き等を得ることができない。したがって,「切削」を「放電加工」に置換すると,本件発明1と同一の作用効果を奏することができなくなる。 c 原告会社は,本件特許出願の審査及び拒絶査定不服審判の過程において,同時三軸制御NC フライス機を用いて地模様を切削形成する点が本件発明1の特徴点であることを繰り返し強調し,その結果,本件特許が成立した。これは,同時三軸 制御NC フライス機を用いた切削技術以外の地模様の形成技術を特許請求の範囲から除外したと外形的に評価し得る行動といえる。したがって,原告会社は,被告方法2のように放電加工技術を用いて地模様を形成する構成を,特許請求の範囲から意識的に除外している。 (イ) 「磨き込」みについて a 本件発明1の構成要件Eを被告方法2の構成wに置換すると,本件発明1に- 術を用いて地模様を形成する構成を,特許請求の範囲から意識的に除外している。 (イ) 「磨き込」みについて a 本件発明1の構成要件Eを被告方法2の構成wに置換すると,本件発明1に- 21 -いう「磨き込み」の状態には達することができず,硬貨の輝きを増すという作用効果が十分に奏されなくなる。被告方法2を用いた硬貨は一定の輝きを有しているが,それは構成yによるものである。 b 原告会社は,本件特許出願の拒絶査定不服審判の過程において,金型の表面全体を金属製ブラシで磨き込む点を本件発明1の特徴とした上で,これを「当業者 の技術常識として硬貨の製造金型に施す手法としては到底考えられないような手法」と主張しており,光沢を出す手法が金属製ブラシでの「磨き込み」であることを強調し,金属製ブラシによる「磨き込み」以外の研磨技術,特にバフ研磨技術を「バフ研磨では,到底達成できるものではな」いとしている。このことから,金型の表面全体を金属製ブラシで磨き込む手法は,本件発明1の本質的な部分であるといえ ると共に,原告会社は,それ以外の方法による磨き込みの手法は特許請求の範囲から除外したと外形的に評価し得る。したがって,原告会社は,被告方法2のようなバフ研磨技術に係る構成は,本件発明1とその本質的部分において相違すると共に,特許請求の範囲から意識的に除外されたものといえる。 イ本件発明2について (ア) 「切削」についてa 前記ア(ア)と同様に,同時三軸制御NC フライス機を用いて硬貨のプレス加工に用いる金型の地模様を切削により形成することは,本件発明2の本質的部分に含まれる。また,硬貨の地模様以外の模様についても,同様の課題に対応する解決手段として構成要件D2 の構成を採用したのであるから,これを同時三軸制御NC フ 形成することは,本件発明2の本質的部分に含まれる。また,硬貨の地模様以外の模様についても,同様の課題に対応する解決手段として構成要件D2 の構成を採用したのであるから,これを同時三軸制御NC フ ライス機を用いて切削により形成することは,本件発明2の本質的部分に含まれる。 他方,被告方法2においては,プレス金型の地模様及び地模様以外の模様は,同時三軸制御NC フライス機を用いた切削ではなく,放電加工により形成されている。 したがって,被告方法2は,本件発明2と本質的部分に関して相違する。 b 均等の第2要件及び第5要件を充たさないことは,前記ア(ア)b及びcと同 様である。 - 22 -(イ) 「磨き込」みについて前記ア(イ)と同様である。 (3) 原金型が本件各発明の「金型」に相当すると解した場合ア本件発明1について(ア) 「切削」について 前記((2)ア(ア)a)のとおり,同時三軸制御NC フライス機を用いて硬貨のプレス加工に用いる金型そのものの地模様を切削加工により形成することは,本件発明1の本質的部分に含まれる。 他方,被告方法2においては,硬貨をプレスするプレス金型自体の地模様は放電加工により形成され,そのプレス金型を作製するための原金型の地模様が切削加工 により形成されるに過ぎない。 したがって,被告方法2は,本件発明1と本質的部分において相違する。 (イ) 地模様以外の模様に係る工作機械について原告会社は,本件特許出願の拒絶査定不服審判の過程で提出した手続補正書において,地模様の形成と地模様以外の模様の形成とを異なる機械を用いて異なる工程 により行うことを引用例に開示されていない本件発明1の特徴点として主張している。このように,原告会社は,地模様と地模様以外の模様それぞれ 地模様以外の模様の形成とを異なる機械を用いて異なる工程 により行うことを引用例に開示されていない本件発明1の特徴点として主張している。このように,原告会社は,地模様と地模様以外の模様それぞれの形成につき,同じ機械を用いて同時工程により行うことを特許請求の範囲から除外したと外形的に評価し得る行動をとっている。したがって,原告会社は,被告方法2のように同一の機械を用いて地模様の形成と地模様以外の模様の形成とを同時に行う構成を特 許請求の範囲から意識的に除外しているといえる。 イ本件発明2について(ア) 前記ア(ア)と同様に,「切削」の点で,被告方法2は,本件発明2と本質的部分において相違する。 (イ) 本件発明2においては,構成要件D2 との関係で,その作用効果は,「得ら れる硬貨の表面の文字等の部分は側縁部から傾斜を有して浮き出るので,…側縁部- 23 -は凸部の立ち上がりによる影が生じないので輝きが増すと同時に,…傾斜面が種々の方向を向いているので,色々な角度で光を反射する」などとされているところ,これを被告方法2の構成pに置換すると,地模様以外の模様に対応する部分は,平坦な底面とその両側からほぼ垂直に立ち上がる一対の側面からなることになり,ここには一対の傾斜面が存在しないことから,硬貨において「凸部の(両側面の)立 ち上がりによる影が生じる」等して,硬貨表面の輝きが失われてしまう。 このように,被告方法2の構成に置換すると,本件発明2の作用効果が奏されなくなる。 (ウ) 原告会社は,本件特許出願の審査及び拒絶査定不服審判の過程において,地模様以外の模様に対応する箇所を「V溝状」に切削する以外の態様を特許請求の範 囲から除外したと外形的に評価し得る行動をとっている。したがって,被告方法2のような 査定不服審判の過程において,地模様以外の模様に対応する箇所を「V溝状」に切削する以外の態様を特許請求の範 囲から除外したと外形的に評価し得る行動をとっている。したがって,被告方法2のような凹形状に切削する態様は,特許請求の範囲から意識的に除外されている。 3 無効理由の有無(争点2)(1) 訂正要件違反の有無(争点2-1)〔被告の主張〕 本件各発明は,特許の設定登録がされた時点では,「金型の厚み方向及び任意の角度の斜め方向へ切削可能な同時三軸制御NC フライス機を用い,金型に対して一定のパターンで切削深さと角度を変えながら金型表面上を移動させ,傾斜面を含む特定のパターンを金型上に描き,これを金型表面全体に繰り返すことにより繰り返し模様からなる地模様を形成すること,及び」(以下「訂正前構成要件C」とい う。)とあったものを,本件訂正により構成要件Cのとおり訂正したものである。 「金型の厚み方向及び任意の角度の斜め方向へ切削可能な同時三軸制御NC フライス機を用い,金型に対して一定のパターンで切削深さと角度を変えながら金型表面上を移動させ」(訂正前構成要件C)との文言を素直に読めば,フライス機の切削工具の傾斜角度を変えながら金型の切削を行うと理解される。このような解釈は, 本件図面の図1,図4等や本件訂正前の明細書の記載からも裏付けられる。 - 24 -そうすると,仮に「金型に対して一定のパターンで切削深さと角度を変えながら金型表面上を移動させ,傾斜面を含む特定のパターンを金型上に描き,」(構成要件C)が,金型を前後左右に移動させつつ,切削用の工具を上下に移動させながら彫ることで,金型の切削された面が斜めに彫刻されている状態を意味すると解されるならば,本件訂正は,訂正前の明細書及び本件図面に記載し ,金型を前後左右に移動させつつ,切削用の工具を上下に移動させながら彫ることで,金型の切削された面が斜めに彫刻されている状態を意味すると解されるならば,本件訂正は,訂正前の明細書及び本件図面に記載した事項の範囲を超え ていることになり,また,実質的に特許請求の範囲が変更されていることになる。 したがって,本件訂正は,法126条5項及び6項に違反してされたものであり,本件特許は,特許無効審判により無効にされるべきものであるから(法123条1項8号),原告らは,被告に対し,本件特許権を行使することができない(法104条の3第1項)。 〔原告らの主張〕本件訂正前の特許請求の範囲請求項1及び2には,「金型の厚み方向及び任意の角度の斜め方向へ切削可能な」と記載されており,加工工具がZ軸に対する傾斜角度を変えながら移動することに限定していない。また,上記各請求項の記載は,加工工具がZ軸に対する傾斜角度を変えながら移動することが「可能」と表現されて いることから,加工工具がZ軸に対する傾斜角度を変えずに移動することを含む概念である。このことは,当業者であれば当然に認識することができる。したがって,本件訂正は,特許請求の範囲の拡張又は変更に該当しない。また,本件訂正前の明細書の記載も,「加工工具がZ軸に対する傾斜角度を変えずに移動する」ことを除くとは解釈できず,そのような限定も行っていない。本件図面の図1,図4及び図 8の記載はいずれも誤りである。 したがって,本件訂正につき,訂正要件違反はない。 (2) サポート要件違反の有無(争点2-2)〔被告の主張〕仮に「金型に対して一定のパターンで切削深さと角度を変えながら金型表面上を 移動させ,傾斜面を含む特定のパターンを金型上に描き」(構成要件C)が,金型- 争点2-2)〔被告の主張〕仮に「金型に対して一定のパターンで切削深さと角度を変えながら金型表面上を 移動させ,傾斜面を含む特定のパターンを金型上に描き」(構成要件C)が,金型- 25 -を前後左右に移動させつつ,切削用の工具を傾斜させることなく上下のみに移動させながら彫ることで,金型の切削された面が斜めに彫刻されている状態を意味していると解されるならば,本件各発明は,発明の詳細な説明に記載されたものといえず,本件特許は,特許請求の範囲の記載が法36条6項1号の要件を満たしていない特許出願に対してされたものとなる。 すなわち,本件訂正明細書【0017】及び【0030】並びに本件図面の図1及び図4には,切削用の工具を傾斜させながら切削作業を行う様子が描かれている。本件訂正明細書には,切削作業時における切削用の工具の姿勢の状態を描写した記載はほかに存在しない。また,本件特許出願の当時,多軸制御NC フライス機を用いて切削用の工具を相対的に傾斜させながら切削作業を行うことは一般的に行われており, 本件訂正明細書及び本件図面の上記記載は,このような技術常識にも整合する。 したがって,本件訂正明細書の上記記載に上記技術常識を加味すれば,当業者は,多軸制御NC フライス機を用いて切削用の工具を傾斜させながら切削作業を行うことにより,「硬貨表面の地模様に立体型彫りによる変化を起こし,硬貨の輝きを増し,硬貨の装飾価値あるいは遊戯価値を高めた,硬貨の製造方法を提供する」(本 件訂正明細書【0011】)という課題が解決可能であると認識することはできても,本件各発明のように,切削用の工具を傾斜させることなく切削作業を行うことにより上記課題を解決可能であると認識することはできない。 したがって,本件特許は特許無効審判により無効 識することはできても,本件各発明のように,切削用の工具を傾斜させることなく切削作業を行うことにより上記課題を解決可能であると認識することはできない。 したがって,本件特許は特許無効審判により無効にされるべきものであるから(法123条1項4号),原告らは,被告に対し,本件特許権を行使できない。 〔原告らの主張〕前記(1)〔原告らの主張〕の事情に加え,本件図面の図1及び図4はあくまで加工工具の一例を示したものに過ぎず,また,これらの記載の誤りは,本件各発明の作用効果に影響を及ぼすものではない。コインを製造する当業者にとって,切削用工具を傾斜させることなく切削作業を行うことは優先日当時の技術常識であり,切 削用工具を傾斜させなくても本件各発明の課題を解決することができると認識し得- 26 -る範囲のものである。 本件特許の優先日当時,三軸に回転軸及び傾斜軸を加えた五軸の加工機が公知であったとしても,硬貨を製造するための金型の加工に傾斜軸は不要かつ不適当であり,また,これらの加工機は,硬貨の製造に用いられておらず,用いる必要もなかったことから,当業者にとって技術常識にはなり得ない。そもそも,本件各発明の 課題は,五軸の加工機が技術常識か否かにかかわらず,当業者が解決することができると認識し得る範囲のものである。仮に,明細書等の内容につき当業者が五軸の加工機であると認識したとしても,五軸にはX軸,Y軸及びZ軸の三軸も含まれるため,当業者が,本件各発明の課題を解決することができると認識し得る範囲のものである。 したがって,本件特許につき,サポート要件違反はない。 (3) 実施可能要件違反の有無(争点2-3)〔被告の主張〕仮に,本件各発明の構成要件Cが,金型を前後左右に移動させつつ,切削用の工具を傾斜させ て,本件特許につき,サポート要件違反はない。 (3) 実施可能要件違反の有無(争点2-3)〔被告の主張〕仮に,本件各発明の構成要件Cが,金型を前後左右に移動させつつ,切削用の工具を傾斜させることなく上下のみに移動させながら彫ることで,金型の切削された 面が斜めに彫刻されている状態を意味していると解されるとすれば,本件特許出願に係る発明の詳細な説明の記載は,当業者が本件各発明を実施可能な程度に明確かつ十分に記載したものとはいえず,本件特許は,法36条4項1号の要件を満たしていない特許出願に対してされたものとなる。 すなわち,前記(2)〔被告の主張〕のとおり,本件訂正明細書の発明の詳細な説 明の記載には,多軸制御NC フライス機を用いて切削用の工具を傾斜させながら切削作業を行うことで,金型の切削面を斜めに彫刻することしか記載されていないところ,本件特許出願の当時,既に一般的に多軸制御NC フライス機を用いて切削用の工具を相対的に傾斜させながら切削作業が行われていたことを加味すれば,当業者は,過度の試行錯誤なしには,本件各発明のように切削用の工具を全く傾斜させ ることなく切削作業を行うことで金型の切削面を斜めに彫刻することは実施できな- 27 -い。 したがって,本件特許は,特許無効審判により無効にされるべきものであるから(法123条1項4号),原告らは,被告に対し,本件特許権を行使できない。 〔原告らの主張〕上記(1)〔原告らの主張〕の事情によれば,当業者は,加工工具がZ軸に対する 傾斜角度を変えずに移動することを含んでいると認識することから,過度の試行錯誤なしに金型の切削面を斜めに彫刻することを実施し得る。 また,本件特許の優先日当時,当業者にとって,同時三軸制御NC フライス機という用語がX軸 ることを含んでいると認識することから,過度の試行錯誤なしに金型の切削面を斜めに彫刻することを実施し得る。 また,本件特許の優先日当時,当業者にとって,同時三軸制御NC フライス機という用語がX軸・Y軸・Z軸の三軸であることは技術常識であるから,同時三軸制御NC フライス機を用いて金型の切削面を斜めに切削することは,当業者にとって, 本件訂正明細書により過度の試行錯誤なしに実施し得る。 仮に当業者が五軸の加工機であると認識したとしても,加工工具を斜めに傾斜させなくても金型の切削面を斜めに切削できることは当業者であれば当然に認識することができ,当業者は,これを過度な試行錯誤なしに実施し得る。 したがって,本件特許につき,実施可能要件違反はない。 (4) 明確性要件違反の有無(争点2-4)〔被告の主張〕仮に,本件各発明の構成要件Cが,金型を前後左右に移動させつつ,切削用の工具を傾斜させることなく上下のみに移動させながら彫ることで,金型の切削された面が斜めに彫刻されている状態を意味していると解されるとすれば,本件各発明は 明確であるとはいえず,本件特許は,特許請求の範囲の記載が法36条6項2号の要件を満たしていない特許出願に対してされたものとなる。 すなわち,「金型に対して一定のパターンで切削深さと,水平面に対する金型の切削角度と,を変えながら金型表面上を移動させ,」(構成要件C)の「切削角度」とは,「金型の切削面の傾斜角度」すなわち金型の切削作業完了後におけるその切 削された面の傾斜角度を意味すると解すると,そのような解釈は,言葉自体の意味- 28 -からかけ離れている上,「金型表面上を移動させ」のように,切削作業中の手順が動的に描写されていることとの整合性を欠く。また,本件訂正明細書及び本件図 と,そのような解釈は,言葉自体の意味- 28 -からかけ離れている上,「金型表面上を移動させ」のように,切削作業中の手順が動的に描写されていることとの整合性を欠く。また,本件訂正明細書及び本件図面にも,上記解釈を裏付ける記載や技術常識は存在しない。 このため,本件各発明に係る特許請求の範囲の記載につき,当業者が上記解釈のとおりに解釈することはほぼ不可能であり,そのような解釈は,予測可能性及び法 的安定性が害され,第三者に不測の不利益を及ぼすものといえる。 したがって,本件特許は,特許無効審判により無効にされるべきものであるから(法123条1項4号),原告らは,被告に対し,本件特許権を行使できない。 〔原告らの主張〕本件訂正審判においては,本件訂正前の特許請求の範囲請求項1及び2につき, 訂正の目的は「明瞭でない記載の釈明」(法126条1項3号)に該当するとして,本件訂正後の請求項1及び2への訂正が認められている。 したがって,本件特許につき,明確性要件違反はない。 4 原告らの損害額,原告会社の損失額・被告の利得額(争点3)〔原告らの主張〕 (1) 被告の売上高及び利益率被告は,遅くとも平成18年8月頃から現在まで,被告製品の販売により,少なくとも年間1億3200万円の売上高を上げている。その利益率は,少なくとも10%である。 (2) 平成29年5月~令和2年4月の間の原告らの損害額 ア原告会社について原告会社は,令和元年12月16日,本件特許権の持分30%を原告P1に譲渡した。そうすると,平成29年5月~令和2年4月の間の原告会社の損害額は,合計3395万円と推定される(法102条2項)。 ¥10,000,000*31 か月(H29.5.1~R1.11.30)*10 た。そうすると,平成29年5月~令和2年4月の間の原告会社の損害額は,合計3395万円と推定される(法102条2項)。 ¥10,000,000*31 か月(H29.5.1~R1.11.30)*10%=¥31,000,000 ¥10,000,000/30 日*15 日(R1.12.1~R1.12.15)*10%≒500,000- 29 -[¥10,000,000/30 日*15 日(R1.12.16~R1.12.31 のうち15 日)*10%+¥10,000,000*3 か月(R2.1.1~R2.3.31)*10%]*70%≒¥2,450,000イ原告P1について本件各発明の実施料相当額は,販売額の10%を下らない。そうすると,原告P1の損害額は,合計105万円となる(法102条3項) [¥10,000,000/30 日*15 日(R1.12.16~R1.12.31 のうち15 日)*10%+¥10,000,000*3 か月(R2.1.1~R2.3.31)*10%]*×30%≒¥1,050,000(3) 原告会社の損失額・被告の利得額平成22年5月~平成29年4月の間の被告による被告製品の売上高は,少なくとも9億2400万円となる。その間,被告は,原告会社に対し,本件特許権に係 る実施料を支払う必要があったため,その実施料相当額が原告会社の損失額かつ被告の利得額となる。ここで,本件各発明の実施料相当額は,売上高の10%を下らない。 したがって,被告が原告会社に返還すべき利得は9240万円である。 (4) 弁護士・弁理士費用 原告らは,本件訴訟提起のため,弁護士及び弁理士費用を支出しているところ,被告の不法行為による損害額の10%である合計350万円(原告会社につき340万,原告P 4) 弁護士・弁理士費用 原告らは,本件訴訟提起のため,弁護士及び弁理士費用を支出しているところ,被告の不法行為による損害額の10%である合計350万円(原告会社につき340万,原告P1につき10万円)は,損害額に加算される。 (5) 小括以上より,原告らは,被告の行為により少なくとも合計1億3090万円の損害 を被っているところ,被告に対し,原告会社は,その一部である1000万円及び訴状送達の日の翌日(令和2年4月29日)からの遅延損害金及び遅延利息の支払を,原告P1はその一部である50万円の支払及び訴状送達の日の翌日からの遅延損害金の支払をそれぞれ求める。 〔被告の主張〕 否認ないし争う。 - 30 -第4 当裁判所の判断 1 本件訂正明細書の記載(1) 本件訂正明細書(甲8)には,以下の記載がある。 ア発明の属する技術分野「この発明は,遊戯施設内のメダル遊戯機などに使用される硬貨(金属メダル) の製造方法に関するもので,特に,硬貨表面の装飾に関するものである。」(【0001】)イ従来技術「硬貨の表面には,各遊戯施設を表す名称や略称からなる文字,あるいは遊戯施設を表す特有の図形等からなる模様が描かれてており,別施設の硬貨がまぎれこま ないようにしている。」(【0003】)「これらの硬貨の表面に描かれた模様は,図6に示すように,硬貨を製造するプレス機1に設置されるプレス用金型2,2に予め彫りこまれており,硬貨3をプレス及び打ち抜きする際,同時にプレス圧力により硬貨3の表面に金型2の凹凸が反転して表現されるものである。」(【0004】) 「硬貨3の表面にあらわされた文字となる断面凸状に浮き出た凸部4は,金型2において凹状に彫られた部分に対応し,プレス金 表面に金型2の凹凸が反転して表現されるものである。」(【0004】) 「硬貨3の表面にあらわされた文字となる断面凸状に浮き出た凸部4は,金型2において凹状に彫られた部分に対応し,プレス金型2に対して硬貨3の表面に浮き出る部分を,平面彫刻機5で厚み方向に掘り込んで行う。」(【0005】)「平面彫刻機5のように,厚み方向にのみ切削する切削工具では,切削した文字等の部分及び切削を行わなかった部分は,平面仕上げであり,金属の地肌のままの 色合いであるが,金型2の切削を行わなかった平面部分(金型2の断面凸部)を放電加工機で不規則かつ微細に地金を削り取り,いわゆるナシ地仕上げを行ったり,硬貨3の凸部4に対応する部分(金型2の断面凹部)は細かく研磨して鏡面仕上げとすることを行い,該金型2によりプレスされて得られた硬貨3の表面において,地模様部分をナシ地仕上げ,文字等の凸部4は鏡面仕上げにし,硬貨3の肉眼観察 における装飾効果を高めたりしている。」(【0006】)- 31 -「図8は,金型2に対して,金型2の厚み方向及び任意の角度の斜め方向へ切削可能な立体彫刻機6を用い,金型2に対して人物や動植物等の立体的な図形を彫り込み,得られた硬貨3の表面に任意の断面形状を持つ凸部7を形成し,この凸部7により人物や動植物を立体的に表現して,より硬貨3の装飾効果を高めたものである。」(【0008】) ウ発明が解決しようとする課題「これらの硬貨は,表面に浮き出た文字や図形により,当該硬貨が使用される遊戯施設を表示したり装飾硬貨を高めることができるが,文字や図形の部分を除いた地模様は,前述のように,平面仕上げ,鏡面仕上げ,ナシ地仕上げのいずれかであり,変化に乏しい。」(【0009】) 「又,メダル遊戯機で使用される硬貨 ことができるが,文字や図形の部分を除いた地模様は,前述のように,平面仕上げ,鏡面仕上げ,ナシ地仕上げのいずれかであり,変化に乏しい。」(【0009】) 「又,メダル遊戯機で使用される硬貨は,一般の貨幣硬貨に比べてコスト等の兼ね合いがあって高価な金属は使用し難く,表面の輝きが鈍いものが多い。」(【0010】)「この発明の課題は,硬貨表面の地模様に立体型彫りによる変化を起こし,硬貨の輝きを増し,硬貨の装飾価値あるいは遊戯価値を高めた,硬貨の製造方法を提供 するものである。」(【0011】)エ課題を解決するための手段「請求項1の発明は,切削深さを任意に変えられる同時三軸制御NC フライス機を,硬貨表面に描かれる人物や動植物等の図形に用いるのではなく,これを金型の表面に対して一定パターンで繰り返すことにより,硬貨の地金部分に,鏡面仕上げ やナシ地仕上げによらない立体的な幾何学的模様からなる新たな地模様を描き出し,硬貨の装飾価値を高めるものである。」(【0013】)「請求項2の発明は,…請求項1の発明で用いる同時三軸制御NC フライス機を用いて,硬貨の表面に浮き出る文字,図形等の模様に対応する部分をV溝状に切削しておけば,得られる硬貨の表面の文字等の部分は側縁部から傾斜を有して浮き出 るので,平面彫刻機によって彫り込むものに比較して,模様部分の表面積が増加し- 32 -て光の反射面が増大し,更に浮き出た文字等の側縁部は凸部の立ち上がりによる影が生じないので輝きが増すと同時に,文字,図形等の模様により傾斜面が種々の方向を向いているので,色々な角度で光を反射する。」(【0014】,【0015】)オ発明の実施の形態「図1に示すように,立体彫り用の同時三軸制御NC フライス機9を用い,金型 2に対 の方向を向いているので,色々な角度で光を反射する。」(【0014】,【0015】)オ発明の実施の形態「図1に示すように,立体彫り用の同時三軸制御NC フライス機9を用い,金型 2に対して一定のパターンで切削深さと,水平面に対する金型の切削角度と,を変えながら,横方向に移動させ,特定のパターンを金型2上に描く。」(【0017】)「この作業を繰り返すことにより,金型2の表面に,繰り返し模様からなる地模様を形成する。」(【0018】)「次に,従来と同様,平面彫刻機によって,最終的に硬貨の表面に浮き出る文字, 図形等の硬貨が使用される場所に応じた模様を,金型2の所定位置に彫りこむ。」(【0020】)「彫刻が済んだ金型2に対し,ダイヤモンド粒子を用いて金属製ブラシや羽ブラシを回転させながら磨き込み,金型2のバリ等を削除したり角を滑らかにし,プレス後の硬貨が角張らないようにしたり,プレス後の硬貨の金型2との剥離性を高め たりする。」(【0022】)「次に,従来例で示した図と同様に,金型2をプレス機1に設定し,プレス圧力により硬貨3の表面に金型2の模様を反転転写する。」(【0024】)「図4は,…金型2の切削時に,同時三軸制御NC フライス機9を用いて,硬貨の表面に浮き出る文字,図形等の模様に対応する部分を,一定の角度傾斜させて二 つの方向から切削してゆき,断面V形状のV溝10 を形成する。」(【0030】)「図5は,図4のように文字等の模様部分をV溝10 に形成した金型2を用いて作成された硬貨3を示すもので…表面に文字「J」を形成した例としたものである。」(【0031】)「文字部分は,図4の金型2のV溝により形成されているので,その断面は2つ の傾斜面11 を有している。」(【0032】) 表面に文字「J」を形成した例としたものである。」(【0031】)「文字部分は,図4の金型2のV溝により形成されているので,その断面は2つ の傾斜面11 を有している。」(【0032】)- 33 -「この文字は,側縁部から傾斜面11 を有して地金から部分から浮き出ているので,平面彫刻機によって彫り込んだ金型により得られた断面凸形状のものに比較して,文字部分の表面積が増加して光の反射面が増大すると共に,浮き出た文字等の側縁部から連続して傾斜面11 を有して浮き上がっていくので,凸部の立ち上がりによる影が生じないので輝きが増す。」(【0033】) 「また,文字の傾斜面11 が硬貨3の表面で種々の方向を向いているので,色々な角度で光を反射するので,図3で示した地模様と共に,より輝きが増すことになる。」(【0034】)カ発明の効果「この発明の硬貨の製造方法によれば,従来,平面仕上げ,鏡面仕上げ,又はナ シ地仕上げのみであった硬貨の地模様に,立体的幾何学模様からなる地模様が得られ,硬貨の輝きを増し,硬貨の装飾価値あるいは遊戯価値を高めることができる。」(【0035】)「更に,硬貨の表面に表される文字,図形等の模様も,金型においてV溝状に形成しておけば,硬貨表面の輝きがより増すことになる。」(【0036】) 2 文言侵害の成否(争点1-1)(1) 「金型」(構成要件B,C,E及びF)の意義ア特許請求の範囲の記載本件発明1に係る特許請求の範囲請求項1には,「硬貨をプレスして表面に模様を表すための金型の表面に」(構成要件B),「金型の厚み方向へ切削可能な同時 三軸制御NC フライス機を用い,金型に対して…切削深さと,水平面に対する金型の切削角度と,を変えながら金型表面上を移動させ, の金型の表面に」(構成要件B),「金型の厚み方向へ切削可能な同時 三軸制御NC フライス機を用い,金型に対して…切削深さと,水平面に対する金型の切削角度と,を変えながら金型表面上を移動させ,…特定のパターンを金型上に描き,これを金型表面全体に繰り返すことにより繰り返し模様からなる地模様を形成すること」(構成要件C)及び「平面彫刻機により硬貨の表面に浮き出る文字,図形等の模様に対応する部分を切削することによって」(構成要件D1),繰り返 し模様からなる地模様及び硬貨の表面に浮き出る文字,図形等の模様に対応する部- 34 -分を形成した金型を得,こうして「得られた金型の…表面全体を…磨き込んだ後」(構成要件E),「この金型を用いてプレスすることによって硬貨の表面に立体的な幾何学的地模様と,この幾何学的地模様から浮き出る文字,図形等の模様を得る」(構成要件F)との構成が記載されている。 これによれば,上記請求項の記載は,「硬貨をプレスして表面に模様を表すため の金型」(構成要件B)を得る工程として,その表面に「繰り返し模様からなる地模様」の形成(構成要件C)及び「硬貨の表面に浮き出る文字,図形等の模様に対応する部分」の切削(構成要件D1)を施す2つの工程を特定した上で,これらの工程を経て「得られた金型」につき磨き込む工程(構成要件E)を更に経ることにより,プレスに用いる金型を得,「この金型を用いてプレスすることによって硬貨 の表面に…地模様と,…文字,図形等の模様を得る」という硬貨の製造方法(構成要件F)を示しているものと理解される。本件発明2に係る特許請求の範囲請求項2の記載も,「文字,図形等の模様に対応する部分」の切削に関する構成につき構成要件D1 に代えて構成要件D2 の構成が示されている点を除き,同様である。 解される。本件発明2に係る特許請求の範囲請求項2の記載も,「文字,図形等の模様に対応する部分」の切削に関する構成につき構成要件D1 に代えて構成要件D2 の構成が示されている点を除き,同様である。すなわち,本件各発明において,構成要件B,C,D1(又はD2)及びEは,「硬貨 の製造方法」(構成要件A,F)に含まれるプレスに用いる金型すなわちプレス金型を得る工程を特定するものといえる。少なくとも,本件各発明に係る各請求項には,「繰り返し模様からなる地模様」の形成(構成要件C)及び「硬貨の表面に浮き出る文字,図形等の模様に対応する部分」の切削(構成要件D1)を施す2つの工程(又はこれにより「得られた金型」を磨き込む工程(構成要件E)を更に含む 3つの工程)を経て得られた原金型をもとに,何らかの加工工程を経てプレス金型を得る工程を経ることをうかがわせる記載はない。 イ本件訂正明細書の記載前記(1)認定に係る本件訂正明細書において,「金型」は,「プレス用金型2,2」(【0004】)とされた後は一貫して「金型2」と表記されている。 また,発明の実施の形態においては,同時三軸制御NC フライス機9を用いて特- 35 -定のパターンを描くことを繰り返すことにより,その表面に繰り返し模様からなる地模様を形成した金型(【0017】,【0018】)に,平面彫刻機により,最終的に硬貨の表面に浮き出る文字等の模様を彫り込み(【0020】),彫刻が済んだ金型2を磨き込み(【0022】),「次に,…金型2をプレス機1に設定し,プレス圧力により硬貨3の表面に金型2の模様を反転転写する。」(【0024】)とされており,プ レスに用いる金型2それ自体に地模様の形成等の加工を施すことを内容とする記載がされている(本件発明2に係る実施例を示 硬貨3の表面に金型2の模様を反転転写する。」(【0024】)とされており,プ レスに用いる金型2それ自体に地模様の形成等の加工を施すことを内容とする記載がされている(本件発明2に係る実施例を示したものと理解される【0030】,【0031】の記載も,これを前提とするものと理解される。)。 他方,本件訂正明細書には,地模様の形成等の加工を施された原金型をもとに,何らかの加工工程を経てプレス金型を得る工程を経ることをうかがわせる記載はな い。 ウ小括以上のとおり,特許請求の範囲及び本件訂正明細書の記載によれば,「金型」(構成要件B,C,E及びF)は,プレス金型を意味すると解されるのであって,「金型」は1つに限定されず,プレス金型及びこれを作製するための原金型を区別 することなく包摂するものとして「金型」の語が用いられているものと解することはできない。 エ原告らの主張について原告らは,プレス金型に関する工程と原金型に関する工程は一体不可分の関係にあること,本件各発明は硬貨の製造方法の発明であり,金型という物の発明ではな いこと,本件訂正明細書中に金型が1つであるという限定がないこと,金型が1つであることは本件各発明の作用効果に関係がないことなどから,「金型」(構成要件B,C,E及びF)は1つに限定されない旨を主張する。 しかし,上記ア及びイのとおり,本件各発明に係る特許請求の範囲及び本件訂正明細書の各記載は,いずれも,本件各発明である硬貨の製造方法において用いられ る「金型」としてはプレス金型のみを念頭に置いたものと理解され,少なくとも,- 36 -原金型をもとにプレス金型を得る工程を経ることをうかがわせる記載はない。 また,硬貨の製造に当たり,硬貨そのものの製造に用いられるプレス金型を得るために たものと理解され,少なくとも,- 36 -原金型をもとにプレス金型を得る工程を経ることをうかがわせる記載はない。 また,硬貨の製造に当たり,硬貨そのものの製造に用いられるプレス金型を得るためには必然的ないし一般的にまずその原金型を得ることを要することその他プレス金型に関する工程と原金型に関する工程が一体不可分の関係にあることが当業者にとって技術常識であることを裏付けるに足りる証拠はない。さらに,仮に,硬貨 の製造に当たりプレス金型及び原金型を用いることが必然的ないし一般的であるとした場合,原金型に形成された模様等をプレス金型に転写等する工程が必要となる。 本件各発明の作用効果は,「硬貨の地模様に,立体的幾何学模様からなる地模様が得られ,硬貨の輝きを増し,硬貨の装飾価値あるいは遊戯価値を高めること」(本件訂正明細書【0035】)であるから,上記転写等の工程を経てもなおこの作用効果 を奏することを要するところ,本件各発明に係る特許請求の範囲及び本件訂正明細書の各記載には上記転写等の工程の構成に関するものはなく,また,そのような記載がなくとも,上記転写等の工程につき,その構成を特定しなくても上記作用効果を奏し得るものが行われることが当業者にとって技術常識であることを裏付けるに足りる証拠もない。そうである以上,特許請求の範囲及び本件訂正明細書の各記載 にかかわらず,当業者の技術常識に基づき,「金型」(構成要件B,C,E及びF)は1つに限定されないと解することはできない。 したがって,この点に関する原告らの主張は採用できない。 (2) 被告製造方法の構成について被告製造方法の構成につき,原告らは被告方法1である旨を主張するのに対し, 被告は被告方法2と主張する。もっとも,原告も,被告方法1の構成のうち構成b~gまでは 被告製造方法の構成について被告製造方法の構成につき,原告らは被告方法1である旨を主張するのに対し, 被告は被告方法2と主張する。もっとも,原告も,被告方法1の構成のうち構成b~gまでは原金型に関する工程,構成h~jはプレス金型に関する工程として主張しており,被告製造方法がこれらの2つの工程を含むこと,被告機械を用いて原金型の表面に地模様及び地模様以外の模様に対応する部分を切削加工により作製することは,いずれも当事者間に争いがない。 (3) 被告製造方法の構成要件充足性について- 37 -前記(1)のとおり,「金型」(構成要件B,C,E及びF)とはプレス金型を意味すると解される。したがって,被告方法1の工程のうち原金型に関する工程に係る構成c~gは,本件各発明の構成要件C,D1(本件発明1)ないしD2(本件発明2)及びEを充足しない。 また,被告方法1の工程のうちプレス金型に関する工程においては,「硬貨をプ レスして表面に模様を表すための金型の表面に」(構成b)施す加工につき,「プレス金型の表面にダイヤモンドペーストを用いてバフ研磨を施す」(構成h)ことしか示されていない。そうすると,原告らの主張を前提としても,被告製造方法の構成は,少なくとも本件各発明の構成要件C及びD1 ないしD2 を充足しない。 したがって,仮に被告製造方法の構成につき被告方法1のとおりであるとしても, 被告製造方法の構成は,少なくとも本件各発明の構成要件C及びD1 ないしD2 を充足しない。これに反する原告らの主張は採用できない。 なお,被告製造方法の構成につき被告方法2のとおりであったとしても,被告方法2におけるプレス金型に関する工程は構成u~yであるところ,「硬貨をプレスして表面に模様を表すための金型の表面に」施す加工とし お,被告製造方法の構成につき被告方法2のとおりであったとしても,被告方法2におけるプレス金型に関する工程は構成u~yであるところ,「硬貨をプレスして表面に模様を表すための金型の表面に」施す加工としては放電加工が行われ, 切削加工は行われない。したがって,被告製造方法の構成につき被告方法2のとおりであったとしても,同様に,被告製造方法の構成は,少なくとも本件各発明の構成要件C及びD1 ないしD2 を充足しない。 (4) 小括以上のとおり,被告製造方法は,その余の点につき論ずるまでもなく,少なくと も本件各発明の構成要件C及びD1(本件発明1)ないしD2(本件発明2)を充足しない。 3 均等侵害の成否(争点1-2)(1) 特許請求の範囲に記載された構成中に,相手方が製造等する製品又は用いる方法(以下「対象製品等」という。)と異なる部分が存する場合であっても,異 なる部分が特許発明の本質的部分ではなく(第1要件),上記部分を対象製品等に- 38 -おけるものと置き換えても,特許発明の目的を達することができ,同一の作用効果を奏するものであって(第2要件),上記のように置き換えることに,当業者が,対象製品等の製造の時点において容易に想到することができたものであり(第3要件),対象製品等は,特許発明の特許出願時における公知技術と同一又は当業者がこれから当該出願時に容易に推考できたものではなく(第4要件),かつ,対象製 品等が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情もないとき(第5要件)は,当該対象製品等は,特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして,特許発明の技術的範囲に属するものと解するのが相当である(最高裁平成10年2月24日第三小法廷判決・民集 ないとき(第5要件)は,当該対象製品等は,特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして,特許発明の技術的範囲に属するものと解するのが相当である(最高裁平成10年2月24日第三小法廷判決・民集52巻1号113頁参照)。 このうち,第1要件について,特許発明における本質的部分とは,当該特許発明の特許請求の範囲の記載のうち,従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分であると解すべきである。また,上記本質的部分は,特許請求の範囲及び明細書の記載に基づいて,特許発明の課題及び解決手段とその効果を把握した上で,特許発明の特許請求の範囲の記載のうち,従来技術に見られない特有の技術 的思想を構成する特徴的部分が何であるかを確定することによって認定される。さらに,対象製品等との相違部分が非本質的部分であるかどうかを判断する際には,上記のとおり確定される特許発明の本質的部分を対象製品等が共通に備えているかどうかを判断し,これを備えていると認められる場合には,相違部分は本質的部分ではないと判断すべきであり,対象製品等に,従来技術に見られない特有の技術的 思想を構成する特徴的部分以外で相違する部分があるとしても,そのことは第1要件の充足を否定する理由とはならない。 (2) 本件各発明の本質的部分本件各発明に係る特許請求の範囲及び本件訂正明細書の各記載によれば,本件各発明の本質的部分については,以下のとおりと認められる。 すなわち,従来,硬貨の表面に描かれた模様は,硬貨を製造するプレス機に設置- 39 -されるプレス金型に予め彫り込まれ,硬貨をプレス及び打ち抜きする際,硬貨の表面に金型の凹凸が反転して表現されていたところ,プレス金型に対して硬貨の表面に浮き出る部分は,平面彫刻機で彫り込んで行われていた。しか ス金型に予め彫り込まれ,硬貨をプレス及び打ち抜きする際,硬貨の表面に金型の凹凸が反転して表現されていたところ,プレス金型に対して硬貨の表面に浮き出る部分は,平面彫刻機で彫り込んで行われていた。しかし,平面彫刻機のように厚み方向のみ切削する切削工具では,切削した部分及び切削を行わなかった部分は平面仕上げであり,金属の地肌のままの色合いであるため,放電加工機で不 規則かつ微細に地金を削り取りいわゆるナシ地仕上げを行ったり,切削した部分を細かく研磨して鏡面仕上げを行ったりし,また,立体彫刻機で人物や動物等立体的な図形を彫り込み,得られた硬貨の表面の凸部に人物等を立体的に表現して,硬貨の装飾効果を高めていた。しかし,これらの方法によっても,図形等の部分を除いた硬貨の地模様に対応する部分は,平面仕上げ,鏡面仕上げ,ナシ地仕上げのいず れかであり変化に乏しく,また,メダル遊戯機で使用される硬貨は,コスト等の兼ね合いがあり,高価な金属の使用が難しく,表面の輝きが鈍いものが多いという課題があった。本件各発明は,こうした課題に対し,硬貨の表面の地模様に立体彫りによる変化を起こし,硬貨の輝きを増し,硬貨の装飾価値等を高めることを目的とするものである。具体的には,本件発明1は,切削深さを任意に変えられる同時三 軸制御NC フライス機を,硬貨表面に描かれる人物や動植物等の図形に用いるのではなく,金型の表面に対して一定パターンで切削を繰り返すことにより硬貨の地金部分に立体的な幾何学的模様からなる新たな地模様を描き出し,硬貨の装飾価値を高めるものである。本件発明2は,本件発明1と同様の方法で硬貨の地模様を描き出すことに加え,同じく同時三軸制御NC フライス機により地模様以外の模様に対 応する部分をV溝状に切削することで,当該模様部分の表面積 本件発明2は,本件発明1と同様の方法で硬貨の地模様を描き出すことに加え,同じく同時三軸制御NC フライス機により地模様以外の模様に対 応する部分をV溝状に切削することで,当該模様部分の表面積の増加等により硬貨の表面の輝きを増加させ,硬貨の装飾価値等を高めるものである。 以上を踏まえると,本件各発明に係る特許請求の範囲の記載のうち,少なくとも「金型の厚み方向へ切削可能な」切削工具「を用い,金型に対して一定のパターンで切削深さと,水平面に対する金型の切削角度と,を変えながら金型表面上を移動 させ,傾斜面を含む特定のパターンを金型上に描き,これを金型表面全体に繰り返- 40 -すことにより繰り返し模様からなる地模様を形成すること」は,従来技術には見られない特有の技術的思想を有する本件各発明の特徴的部分すなわち本質的部分であるといえる。さらに,本件発明2においては,これに加え,上記工具「により硬貨の表面に浮き出る文字,図形等の模様に対応する部分をV溝状に切削すること」も,特徴的部分すなわち本質的部分ということができる。 (3) 前記のとおり,本件各発明における「金型」(構成要件B,C,E及びF)はプレス金型を意味し,また,被告製造方法の構成については当事者間に争いがあるものの,被告製造方法が原金型に関する工程とプレス金型に関する工程という2つの工程を含むこと,被告機械を用いて原金型の表面に地模様及び地模様以外の模様に対応する部分を切削加工により作製することは,当事者間に争いがない。これを 踏まえると,本件各発明においては,プレス金型の厚み方向へ切削可能な切削工具を用い,プレス金型に対して一定のパターンで切削深さと,水平面に対するプレス金型の切削角度と,を変えながらプレス金型表面全体に繰り返すことにより繰り返し模様か レス金型の厚み方向へ切削可能な切削工具を用い,プレス金型に対して一定のパターンで切削深さと,水平面に対するプレス金型の切削角度と,を変えながらプレス金型表面全体に繰り返すことにより繰り返し模様からなる地模様を形成し,本件発明2においては,これに加えて,上記工具により硬貨の表面に浮き出る地模様以外の模様に対応する部分をV溝上に切削して プレス金型を得るのに対し,被告製造方法においては,被告機械を用いて原金型の表面に地模様及び地模様以外の模様に対応する部分を切削加工により作製し,こうして得られた原金型から(特定されない加工方法(被告方法1)又は放電加工(被告方法2)により)プレス金型を得る点で相違する。そうすると,被告製造方法は,本件各発明の本質的部分を共通に備えているとはいえない。 したがって,本件各発明と被告製造方法の相違部分は,本件各発明の本質的部分に当たる。 (4) 原告らの主張についてこれに対し,原告らは,本件各発明の本質的部分は,金型に対して一定のパターンで切削の深さと,水平面に対する金型の切削角度と,を変えながら金型表面上を 移動させ,傾斜面を含む特定のパターンを金型上に描くことと,地模様以外の模様- 41 -に対応する部分をV溝状に切削することであり,原金型とプレス金型の2つの金型を用いるか否かは本件各発明の本質的部分ではないなどと主張する。 しかし,前記のとおり,原金型からプレス金型に対する転写等の工程につき,その構成を特定しなくても,本件各発明の作用効果を奏し得るものが行われることが当業者にとって技術常識であるとは認められないことをも踏まえると,金型につき 原金型とプレス金型の2つを用いるか否かは,本件各発明の本質的部分に係る相違部分というべきである。 したがって,この点に関する原告ら 術常識であるとは認められないことをも踏まえると,金型につき 原金型とプレス金型の2つを用いるか否かは,本件各発明の本質的部分に係る相違部分というべきである。 したがって,この点に関する原告らの主張は採用できない。 (5) 小括以上のとおり,本件各発明と被告製造方法との相違部分は,本件各発明の本質的 部分に当たることから,被告製造方法は,均等の第1要件を欠き,本件各発明に係る特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして,その技術的範囲に属するものということはできない。 4 まとめ以上より,被告製造方法は,本件各発明のいずれの技術的範囲にも属さないか ら,その余の点につき判断するまでもなく,被告による被告製品の製造等は,本件特許権を侵害するものとはいえない。 第5 結論よって,原告らの請求はいずれも理由がないから,これらをいずれも棄却することとして,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第26民事部 裁判長裁判官 杉浦正樹- 42 - 裁判官 杉浦一輝 裁判官 布目真利子 子どもが学校に行くことは、教育を受ける権利であり、社会において重要な役割を果たすことが期待されています。したがって、保護者は子どもが適切な教育を受けられるように努める必要があります。教育の機会を平等に提供することは、すべての子どもにとって基本的な権利です。

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