平成25(ネ)809 損害賠償請求控訴,同附帯控訴事件

裁判年月日・裁判所
平成26年6月6日 名古屋高等裁判所 津地方裁判所 平成23(ワ)409
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判決文本文17,266 文字)

平成26年6月6日判決名古屋高等裁判所平成25年(ネ)第809号,平成26年(ネ)第26号損害賠償請求控訴,同附帯控訴事件(原審・津地方裁判所平成23年(ワ)第409号)主文 1 控訴人の本件控訴を棄却する。 2 被控訴人の附帯控訴に基づき,原判決を次のとおり変更する。 3 控訴人は,被控訴人に対し,2億4941万4130円及びこれに対する平成23年4月29日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 訴訟費用は第1,2審とも控訴人の負担とする。 5 この判決は,第3項に限り仮に執行することができる。 事実 及び理由第1 当事者の求めた裁判 1 控訴人の控訴の趣旨(1) 原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。 (2) 上記取消しに係る被控訴人の請求を棄却する。 (3) 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。 2 被控訴人の附帯控訴の趣旨主文2項ないし5項同旨第2 事案の概要 1 本件は,普通地方公共団体である被控訴人が,斎場建設のため,土地所有者との間で土地の売買契約を締結し,建物所有者との間で建物移転の補償契約を締結したことにつき,当時の市長であった控訴人が適正な価格を超える代金額及び補償額で契約を締結したことが違法であり,被控訴人が上記各契約に基づき平成23年4月28日に上記契約当事者である土地及び建物所有者に支払った金員(遅延損害金を含む。)のうち,適正価格を超える部分2億4941万 4130円(売買契約につき1億5720万円,補償契約につき6325万3221円,これらに対する平成20年9月12日から平成23年4月28日までの確定遅延損害金2896万0909円)相当の損害を被ったと主張して,控訴人に対し,不法行為に基づく損害賠償請求として,2億4941万4 これらに対する平成20年9月12日から平成23年4月28日までの確定遅延損害金2896万0909円)相当の損害を被ったと主張して,控訴人に対し,不法行為に基づく損害賠償請求として,2億4941万4130円及びこれに対する上記支払日の翌日である同月29日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 原審は,売買契約について,控訴人が,適正な価格を上回る代金額で契約を締結したことには少なくとも重大な過失があり,被控訴人は,支払済みの代金額と適正価格(及び控訴人が損害賠償として被控訴人に支払済みの金員の合計額)との差額である1億5720万円の損害を被ったとしたが,補償契約については,補償額は正当な価格を超えるが,控訴人に裁量権の逸脱又は濫用も,故意又は過失も認め難いとして,上記1億5720万円及びこれに対する平成20年9月12日から平成23年4月28日までの年5分の割合による確定遅延損害金2065万1342円及び1億5720万円に対する同月29日以降の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で請求を認容し,その余の請求を棄却した。そこで,控訴人が上記認容部分を取り消して被控訴人の請求を棄却することを求めて控訴し,被控訴人は,附帯控訴し,上記棄却部分を取り消して請求全額を認容することを求めた。 2 前提事実,争点及び争点に関する当事者の主張の要旨は,以下のとおり付加,訂正するほかは,原判決「事実及び理由」の「第2 事案の概要」の1ないし3に記載のとおりであるから,これを引用する。 (1) 原判決12頁12行目の「金額であった。」の次に,行を改めて,次のとおり付加し,同行目の「そこで,」から22行目末尾までを削除する。 「 被控訴人は,H第2鑑定の評価額をH第1鑑定の評価額と比較し,より高額で 12行目の「金額であった。」の次に,行を改めて,次のとおり付加し,同行目の「そこで,」から22行目末尾までを削除する。 「 被控訴人は,H第2鑑定の評価額をH第1鑑定の評価額と比較し,より高額であることを違法性の根拠として主張する。しかし,両鑑定の価格時点の間には,β工業団地の開発とβ工業団地γ線の整備の進捗状況に大きな進展 があり,そのため,H第2鑑定では,本件牧場地の存する近隣地域の地域特性が農家集落地域から業務混在地域に変更された結果,選択した取引事例が異なり,また,β工業団地γ線の整備による利便性の上昇等が評価額に反映されたのであって,H鑑定士によるこれらの分析,評価に不動産鑑定士に与えられた裁量の逸脱を認めるべき特段の事情がない以上,H第2鑑定は正当であって,H第1鑑定との比較を前提とする被控訴人の上記主張は理由がない。」(2) 原判決12頁23行目の「c」を,「b」と訂正し,13頁7行目の「原告は」を,「H第2鑑定の価格時点では,上述のとおり,本件牧場地の地域特性が変更されたのであるから,H第1鑑定を前提にすることは」と,9行目の「参考にしており」を,「参考にすることになり」と,10行目の「d」を,「c」と各訂正する。 (3) 原判決13頁15行目の「必要性」を,「緊急性・必要性」と,14頁3行目の「適合していたことから」を,「適合する唯一の場所として」と各訂正する。 (4) 原判決18頁12行目末尾の次に,「また,本件算定書の損失補償額は,被控訴人(斎場建設室)が平成9年2月に算出した補償金概算見積額(1億7000万円)の約2倍にも上っており,これらのことからすると,本件算定書の損失補償額は,正当化できない程度の高額なものというべきである。 このことに,本件算定書の作成者であるMは,当時,控訴人がその理事 00万円)の約2倍にも上っており,これらのことからすると,本件算定書の損失補償額は,正当化できない程度の高額なものというべきである。 このことに,本件算定書の作成者であるMは,当時,控訴人がその理事に就任しており,公平な第三者機関とはいえないことを考え併せると,本件算定書は,信用できないというべきである。」を付加する。 (5) 原判決19頁2行目の「『未調査時の補償資産額』」を,「被控訴人(斎場建設室)が平成9年2月に算出した補償金概算見積額」と,4行目の「5割増しと」を,「2倍に」と各訂正する。 (6) 原判決21頁21行目の「『未調査時の補償資産額』」を,「被控訴人 (斎場建設室)が平成9年2月に算出した補償金概算見積額」と訂正する。 第3 当裁判所の判断 1 前記前提事実,掲記の証拠及び弁論の全趣旨により認定できる事実は,以下のとおり付加,訂正するほかは,原判決「事実及び理由」の「第3 当裁判所の判断」の1に記載のとおりであるからこれを引用する。 (1) 原判決54頁21行目末尾の次に,行を改めて,次のとおり付加する。 「 控訴人は,被控訴人市長として,斎場建設事業を7大事業の一つの柱に掲げており,斎場建設事業推進のために平成7年10月,プロジェクトチームとして斎場建設室を設置し,同事業は,本件斎場の建設に意欲的な控訴人のリーダーシップによって進められていった(甲35,乙30)。」(2) 原判決55頁5行目末尾の次に,行を改めて,次のとおり付加する。 「(3) 被控訴人(斎場建設室)担当者らは,平成8年2月ころから,牧場主及びその他5名と価格交渉を開始し,その他5名との間では,J鑑定に基づくβ工業団地の用地取得価格である現況宅地部分1万3600円/㎡,現況山林部分3000円/㎡で交渉し,平成10年12月ころまでに, びその他5名と価格交渉を開始し,その他5名との間では,J鑑定に基づくβ工業団地の用地取得価格である現況宅地部分1万3600円/㎡,現況山林部分3000円/㎡で交渉し,平成10年12月ころまでに,上記単価で売買することの内諾を得た(ただし,H第2鑑定後である平成11年5月14日に内諾内容が変更されている〔乙36〕)。(甲35~37,50,51)しかし,牧場主は,当初から,移転先での牧場経営に必要な費用の補償を被控訴人に求めており,被控訴人(斎場建設室)担当者らとの価格交渉の際に,坪15万円(4万5454円/㎡)を希望するなどしたため,被控訴人(斎場建設室)担当者らは,J鑑定に基づくβ工業団地の用地取得価格での合意は困難と判断し,J鑑定士に対し,J鑑定における評価額より高い評価額となる鑑定を依頼しようとしたが実現しなかった。そこで,被控訴人(斎場建設室)の担当者らは,平成8年10月ころ,本件牧場地の正常価格の鑑定をH鑑定士に依頼し,H第1鑑定を得て,牧場主に同鑑 定の評価額である現況宅地部分1万9300円/㎡,現況山林部分5500円/㎡での買収を提案したが,平成10年12月,牧場主から,提案の金額では了解できない旨の回答を得た。被控訴人(斎場建設室)の担当者らは,控訴人から,市長室に呼ばれ,牧場主が金額に納得していないから見直すようにという趣旨の指示を受け,H鑑定士と面談し,牧場主との交渉経緯等を説明したところ,H鑑定士から,本件牧場地が2万4000円/㎡くらいにはなるのではないかという趣旨の回答を得た。(甲16,35ないし37,60,61,乙7)なお,被控訴人(斎場建設室)の担当者らは,平成9年1月,牧場主が移転先の用地を取得し,造成工事等をするためには,9億8000万円の費用を要することを前提に,牧場主への支払総 ,60,61,乙7)なお,被控訴人(斎場建設室)の担当者らは,平成9年1月,牧場主が移転先の用地を取得し,造成工事等をするためには,9億8000万円の費用を要することを前提に,牧場主への支払総額をできる限り上記金額に近づけなければならないと考えていた(なお,牧場主は,平成13年3月23日の保安林指定解除申請時には,移転先での事業費〔用地取得費を除く。〕として7億0300万円を計上している〔乙11〕。)。(甲49,56の1・2,61)(上記認定に関し,控訴人は,その他5名から,J鑑定を前提とするβ工業団地の用地取得価格で本件土地を売買することの内諾を得たことはないと主張し,書証〔乙35~37〕を提出するが,これら書証からは,β共有財産管理委員会において,区長が契約はこれからであり,概ねの内示金額である旨の回答をしたこと,最終的には,被控訴人がその他5名との間でも,H第2鑑定の評価額に基づく代金で本件各土地の売買契約を締結し,同代金を支払ったことは認められるものの,これらの事実のみでは,上記認定を左右するに足りない。また,控訴人は,被控訴人がH第2鑑定を得る前の平成8年2月ころから牧場主との間で本件牧場地の価格交渉をした事実はなく,したがって,牧場主から,H第1鑑定による代金額の提案を拒否された事実も,控訴人が斎場建設室の担当者らに金額を見直すよう指示をした事実もないと主張し,その作成 の陳述書〔乙30〕及び本人尋問において,牛舎の移転先が決まらず,用地取得費用等の予測が付かない状況で価格交渉などできるはずがない旨供述し,X〔平成8年当時,被控訴人の斎場建設室副参事〕も,その作成の陳述書〔乙33〕において,同旨の供述をしている。しかし,上記前提事実のとおり,本件損失補償基準によれば,公共用地は土地の正常な取引価格によって 8年当時,被控訴人の斎場建設室副参事〕も,その作成の陳述書〔乙33〕において,同旨の供述をしている。しかし,上記前提事実のとおり,本件損失補償基準によれば,公共用地は土地の正常な取引価格によって補償されるべきものであり,移転先の用地取得費用等によって左右されるべきものではないから,上記各供述内容は,その理由付け自体,不合理であるし,そもそも,公共用地の取得においては,その価格いかんが双方の最大の関心事なのであるから,本件牧場地が本件斎場の建設用地に決まり,かつ,平成8年2月当時,本件牧場地に近接する土地を鑑定評価したJ鑑定が,同年11月時点では,本件牧場地を鑑定評価したH第1鑑定が存在した以上,被控訴人としては,速やかに牧場主と価格交渉に入ることが可能であり,かつ,自然な経緯なのであって,これに反する上記各供述内容は不自然で,にわかには信用できない。そして他に,上記認定を左右するに足りる証拠はない。)上記のとおり,本件牛舎を含む牧場主所有の牛舎の移転先とすることが求められたβ地区qの土地は,保安林に指定されていたところ,被控訴人(斎場建設室)の担当者らは,平成8年5月22日,Yと協議した結果,保安林指定解除申請の理由が斎場建設に伴う牛舎の移転ではなく,牛舎の建設となるため,保安林の指定の解除は大変厳しいという見通しを持っていたため,移転先を別の土地にすることを検討したが,牧場主が納得しなかったため,平成10年11月ころ,β地区qが本件牛舎を含む牧場主所有の牛舎の移転先として確定した。(甲49,60)。」(3) 原判決55頁6行目の「(3)」を,「(4)」と訂正し,24行目冒頭から56頁16行目末尾までを削除する。 (4) 原判決56頁21行目の「25,26」を,「25~27」と訂正する。 (5) 原判決56頁25 (3)」を,「(4)」と訂正し,24行目冒頭から56頁16行目末尾までを削除する。 (4) 原判決56頁21行目の「25,26」を,「25~27」と訂正する。 (5) 原判決56頁25行目の「原告は」を,「控訴人の上記指示を受けた被控訴人(斎場建設室)の担当者らは」と訂正し,26行目の「H鑑定士は,」の次に,「被控訴人の担当者から,評価額が決まり次第,知らせて欲しいと依頼されていたため,」を付加し,57頁1行目の「同月16日頃」から2行目の「報告した上,」までを削除し,同行目の「甲35」を,「乙34」と訂正する。 (6) 原判決57頁5行目の「被告は,」の次に,「H第2鑑定の提出前である」を,6行目の「建設計画に関し,」の次に,「用地購入費については,」を各付加し,7行目の「実施し,」を,「実施して新たな鑑定評価を得,補償金については,」と訂正する。 (7) 原判決57頁13行目末尾の次に,「(乙25)」を付加する。 (8) 原判決57頁25行目末尾の次に,行を改めて,次のとおり付加する。 「 しかし,このころ,被控訴人(斎場建設室)の担当者らは,t県の担当者らから,保安林の指定の解除は難しい旨を告げられており,本件協定書作成後である平成11年5月18日及び同年6月10日にも,t県の担当者らと本件牛舎の移転のための保安林解除について協議し,同担当者らから,個人申請であるのになぜ市が書類を作成するのかとか,代替施設の設置というだけでは,森林法26条が規定する指定の理由の消滅にも公益上の理由にも該当しないため解除できず,事務的に応じられない,市が申請した場合は通常半年くらいであるが,個人申請なら今年度は無理と考えるなどと告げられていた(甲49,59,乙17)。」(9) 原判決57頁26行目の「牧場主ほか5名」を,「牧場 じられない,市が申請した場合は通常半年くらいであるが,個人申請なら今年度は無理と考えるなどと告げられていた(甲49,59,乙17)。」(9) 原判決57頁26行目の「牧場主ほか5名」を,「牧場主及びその他5名」と訂正し,同行目から58頁1行目にかけての「土地所有者らとの間で,」の次に,「売買代金をH第2鑑定の評価額どおりに定めた」を,2行目末尾の次に,「牧場主との間で,補償金を本件算定書の損失補償額のとおりに定めた」を各付加する。 (10)原判決58頁25行目の「否定した」を,「その意思はない旨回答した」と訂正し,59頁1行目の「平成11年8月頃」を,「平成12年2月14日」と訂正し,同行目の「土地の一部を,」の次に「牧場主から,」を,2行目の「甲35」の次に「,乙44」を,各付加する。 (11)原判決59頁9行目の「提出し,」を,「提出し,これを踏まえて同年10月,t県の担当者と協議したが,同担当者から,林野庁と協議したが公益上の理由がないので解除できない,森林法26条が規定する指定の理由の消滅に該当しないとの見解を示され,保安林の指定の解除は難しい旨を告げられた。控訴人は,かかる経緯を把握しており,保安林の指定の解除に向けて有力な政治家に働きかけるなどしていた(甲57)。また,そのころ,当該保安林付近で絶滅危惧種のオオタカの営巣が疑われ,調査が行われることとなり,保安林解除の手続は進まなくなった。被控訴人は,ようやく,」と訂正し,12行目の「甲21」の次に,「,35~37,45,48,49,乙19,30,39」を付加し,13行目冒頭から17行目末尾までを削除し,19行目及び21行目の各「同時平行着工」を,いずれも「同時併行着工」と訂正する。 2 争点に対する当裁判所の判断当裁判所は,被控訴人の控訴人に対する 13行目冒頭から17行目末尾までを削除し,19行目及び21行目の各「同時平行着工」を,いずれも「同時併行着工」と訂正する。 2 争点に対する当裁判所の判断当裁判所は,被控訴人の控訴人に対する請求は,全部理由があると判断する。 その理由は,以下のとおり付加,訂正するほかは,原判決「事実及び理由」中の「第3 当裁判所の判断」の2ないし7に記載のとおりであるから,これを引用する。 (1) 原判決27頁4行目の「H鑑定士は」から9行目の「困難である。」までを,「控訴人は,H第1鑑定とH第2鑑定の評価額に乖離があるのは,両鑑定の価格時点の間に,β工業団地の開発とβ工業団地γ線の整備の進捗状況に大きな進展があったからであると主張し,」と,10行目の「上記事情」 を,「β工業団地の開発等の事情」と,各訂正する。 (2) 原判決28頁7行目冒頭から8行目末尾までを,「β工業団地の開発及びβ工業団地γ線の整備がH第1鑑定の価格時点よりも進展したとの事情があるとしても,そうした事情のみではH第2鑑定における評価額の大幅な上昇を合理的に説明できるとはいい難い。」と訂正する。 (3) 原判決28頁25行目の「H第2鑑定には」から29頁10行目の「しかも,」までを,「控訴人は,β工業団地の開発及びβ工業団地γ線の整備が進捗したことにより,H第2鑑定では,本件牧場地の存する近隣地域の地域特性が農家集落地域から業務混在地域に変更され,取引事例比較法に基づく比準価格算出のための取引事例の選択がH第1鑑定とは異なった結果,本件牧場地の評価額が上昇した旨主張するところ,H鑑定士も,別件証人尋問(甲16)及び国土庁鑑定官宛質問事項回答書(乙4)において,同旨の説明をし,業務混在地域とは,山林,原野,田畑などの中に工場,倉庫が混在して存在する場所を想定 するところ,H鑑定士も,別件証人尋問(甲16)及び国土庁鑑定官宛質問事項回答書(乙4)において,同旨の説明をし,業務混在地域とは,山林,原野,田畑などの中に工場,倉庫が混在して存在する場所を想定している旨の説明をしている。しかし,H第2鑑定の価格時点において,同鑑定が本件牧場地の近隣地域ととらえた地域は,ほとんどが山林か田畑で,工場があるといってもわずかに存在するだけの地域であり,仮に,業務混在地域と分析するにしても,成熟度の非常に低い場所であったことはH鑑定士自身が認めているところ(甲16)」と訂正し,11行目から12行目にかけての「地域であり,」の次に,「H鑑定士の分析に係る上記」を付加する。 (4) 原判決29頁22行目の「また」から25行目の「被告は,」までを,「控訴人は,H第2鑑定の現況宅地部分の評価額が,本件牧場地に隣接するβ工業団地の用地取得に当たって作成されたJ鑑定①の評価額より大幅に高額であることについて,」と訂正する。 (5) 原判決30頁11行目の「J鑑定①」から12行目の「いえない。」までを,「控訴人の上記主張は理由がない。むしろ,上記認定事実のとおり,そ の他5名からは,その他5名所有地をJ鑑定①を前提とするβ工業団地の用地取得価格(1万3600円/㎡)で売買することの内諾を得ていたことや,牧場主からも,本件牧場地と同番の土地の一部を上記同額の単価で購入したことからすると,J鑑定①の評価額は,本件各土地の評価額の算定においても十分参考となり得るものであって,H第2鑑定の評価額がJ鑑定①の評価額よりも大幅に高額であることは,H第2鑑定の不合理性を基礎付ける一つの事情とみることができるというべきである。」と訂正する。 (6) 原判決31頁3行目末尾の次に,行を改めて,次のとおり付加する。 「オ 幅に高額であることは,H第2鑑定の不合理性を基礎付ける一つの事情とみることができるというべきである。」と訂正する。 (6) 原判決31頁3行目末尾の次に,行を改めて,次のとおり付加する。 「オ以上によれば,H第1鑑定とH第2鑑定の評価額の大幅な乖離を正当化すべき事情は見当たらない。加えて,上記認定事実及び弁論の全趣旨によれば,控訴人は,被控訴人市長として,本件斎場を本件牧場地に建設することに意欲的で,被控訴人(斎場建設室)の担当者らも,常にその意を受けて職務遂行に当たっていたと認めるべきところ,上記認定事実のとおり,同担当者らは,牧場主に支払うべき代金及び補償金の総額を,移転先での牧場経営に必要な費用にできる限り近づける必要があると考え,β工業団地の用地取得価格より高額なH第1鑑定の評価額を牧場主に提示したが,了解できない旨の回答を得たため,了解を得られるような高い価格を設定するために再度,H鑑定士に鑑定を依頼したという経緯があり,したがって,控訴人以下,被控訴人(斎場建設室)担当者らの関心事は,もっぱらH第2鑑定の評価額(が牧場主の意向に沿うものであるか)のみにあったものと推測され,そのため,評価額算出過程の合理性が吟味された形跡は全くないのである。これらのことからすると,本件各売買契約における適正な代金額の認定においては,H第2鑑定の評価額に依拠することはできないというべきである。 控訴人は,不動産の価格評価における分析,判断は,不動産鑑定士の裁量に委ねられるべきであると主張するが,上述した検討結果を踏まえる と,本件においては,H第2鑑定の評価額(現況宅地部分)について,不動産鑑定士の裁量の範囲内のものとして是認することはできないというべきである。」(7) 原判決31頁11行目の「被告が指摘するように」を, おいては,H第2鑑定の評価額(現況宅地部分)について,不動産鑑定士の裁量の範囲内のものとして是認することはできないというべきである。」(7) 原判決31頁11行目の「被告が指摘するように」を,「もっとも」と,16行目の「なっているものではあるが」を,「なっており,上記認定事実のとおりのH第1鑑定が作成されるに至った経緯(被控訴人〔斎場建設室〕の担当者らが,牧場主との間ではJ鑑定に基づくβ工業団地の用地取得価格による合意は困難と判断して,H鑑定士に鑑定を依頼したという経緯)も踏まえると,H第1鑑定の評価額も,正常な取引価格より高い価格が算出されているのではないかとの疑念がないではないが」と訂正する。 (8) 原判決33頁4行目末尾の次に,行を改めて,次のとおり付加する。 「 控訴人は,H第1鑑定とH第2鑑定とでは,本件牧場地の存する近隣地域の特性が異なるから,H第1鑑定の評価額に時価修正をすることは相当ではない旨主張する。しかし,本件牧場地の地域特性を業務混在地域と分析し,取引事例として住宅や工場等が密集し,国道に近接する地域を選択することに合理性が認められないことは上述したとおりであるから,地域特性の分析及びこれに基づく取引事例の選択に合理性があることを前提とした控訴人の上記主張は,採用できない。」(9) 原判決34頁25行目末尾の次に,行を改めて,次のとおり付加する。 「オ以上によれば,本件各土地の正常な取引価格の上限は,別紙1物件目録の各価格欄記載のとおりであり,その合計額は4億5000万8938円であるから,本件各売買契約の代金総額6億2719万6288円(α市土地開発公社先行取得手数料57万4473円を控除後の金額)は,これを1億7718万7350円超過していることになる。」(10)原判決35頁7行目の「u地区 代金総額6億2719万6288円(α市土地開発公社先行取得手数料57万4473円を控除後の金額)は,これを1億7718万7350円超過していることになる。」(10)原判決35頁7行目の「u地区」を,「β地区」と訂正し,9行目の「速やかに」を削除し,10行目の「必要性は高かったということができる」 を,「必要性がなかったとはいいきれない」と訂正する。 (11)原判決35頁13行目の「左右されるところ,」の次に,「上記認定事実のとおり,」を付加する。 (12)原判決35頁18行目冒頭から36頁7行目末尾までを,次のとおり訂正する。 「 しかし,本件牧場地の取得の条件ともいうべき牧場主所有の牛舎の移転については,牧場主が希望する牛舎の移転先が保安林に指定されており,上記認定事実によれば,その解除には相当の困難を伴い,仮に解除されるとしても相当の期間を要することが当初から明らかであった上(オオタカの営巣等の調査があったとはいえ,現に,事前相談書の提出から解除予定告示まで2年3か月以上を要している。),控訴人は,このことを認識しつつ,牧場主との間で,本件牧場地の引渡しを解除予定通知からさらに18か月も猶予する内容の本件協定書(甲52)を取り交わしているのであるから,控訴人が主張するように本件斎場の用地確保が緊急の課題であったならば,そもそも,そのような困難な条件を付され,条件が成就したとしても早期に明渡しのされない本件牧場地を取得の対象として計画を推し進めた控訴人の判断が合理性を有するものであったかには大きな疑問があるといわなければならない。上記認定事実のとおり,同時併行着工はされず,本件斎場の建設の着手までに長期間を要した結果,市長の交代に伴う方針転換により,結局,本件牧場地が本件斎場の建設用地に供されることはなかったので らない。上記認定事実のとおり,同時併行着工はされず,本件斎場の建設の着手までに長期間を要した結果,市長の交代に伴う方針転換により,結局,本件牧場地が本件斎場の建設用地に供されることはなかったのであるが,このことは,結果論ではなく,控訴人の上記判断が必ずしも合理性を有するものでなかったことを裏付けているというべきである。 加えて,上述したとおり,本件各売買契約の代金額は,H第2鑑定に依拠するところ,同鑑定の評価額は,上記検討のとおり正常な取引価格の上限とすべきH第1鑑定の評価額よりさらに4割近くも高額なもので,かかる高額な代金額が設定されたのは,上記認定事実のとおり,移転先での牧場経営に 必要な費用を代金(及び補償金)で賄いたい牧場主の意向に沿った高い価格を算出するために,H鑑定士に再度,鑑定を依頼したことに起因するが,そのような発想自体,公共用地は土地の正常な取引価格により補償すべきとする本件損失補償基準に照らし,許されるものではない。」と訂正する。 (13)原判決36頁9行目の「困難性や」から10行目の「決定されたことを」までを,「困難性,牧場主との価格交渉が難航していたことなどを」と,11行目の「牧場主との」から14行目の「ことからすると」までを,「上述したとおりの代金額決定の経緯や,本件牧場地を本件斎場の建設用地として計画を推し進めた控訴人の判断の合理性に大いに疑問があることからすると」と,15行目の「判断が」を,「判断は,」と各訂正する。 (14)原判決36頁17行目の「被告は」から37頁3行目末尾までを,次のとおり訂正する。 「 控訴人は,公共団体の長による売買代金額の決定が裁量権の範囲の逸脱又は濫用に当たるか否かの判断資料として,代金額と適正価格との比較に重きを置くことは,公共団体の長をして行政目的の遂行 正する。 「 控訴人は,公共団体の長による売買代金額の決定が裁量権の範囲の逸脱又は濫用に当たるか否かの判断資料として,代金額と適正価格との比較に重きを置くことは,公共団体の長をして行政目的の遂行に消極的ならしめ,行政の迅速,円満な遂行を阻害するという弊害を招くので,相当ではないと主張する。しかし,上述したとおり,本件では,代金額が正常な取引価格の上限とすべき価格より高額であることのみではなく,かかる代金額の決定の経緯,すなわち,移転先での事業の継続に必要な費用の捻出という本件損失補償基準によれば正当化されない牧場主の意向に沿うべく,高い価格を算出するために鑑定を依頼し,正常な取引価格から乖離した評価額に依拠して代金額を決定したという経緯に加え,そもそも,正常な取引価格から乖離した高額の支出をしてまで,かつ,長期間の明渡猶予期間を本件協定書で約束してまで,その取得の条件である保安林の指定の解除に相当の困難と期間を伴うことが当初から予想された本件牧場地を,緊急性ある(と控訴人が主張する)本件斎場の建設用地として取得すべきであったかに大いに疑問があるこ とを踏まえて,裁量権の逸脱又は濫用の有無を判断しているのであるから,控訴人の上記主張は採用できない。」(15)原判決37頁5行目の「以上によれば」から9行目末尾までを,「上記認定事実のとおりの本件各売買契約の代金額決定に至る経緯に照らせば,控訴人は,H第2鑑定の評価額が正常な取引価格から乖離した高額なものであることを認識した上で,同評価額どおりの代金額で本件各売買契約を締結したものと認められるから,不法行為の成立要件としての故意があったというべきである。そうでないとしても,後述するとおり,少なくとも重大な過失が認められるべきである。」と訂正し,10行目の冒頭に,「すなわち, と認められるから,不法行為の成立要件としての故意があったというべきである。そうでないとしても,後述するとおり,少なくとも重大な過失が認められるべきである。」と訂正し,10行目の冒頭に,「すなわち,」を付加する。 (16)原判決37頁24行目の「聞くと,」の次に,「鑑定書の提出を待つことなく,したがって評価額の算出過程を全く検討しないまま,」を付加する。 (17)原判決39頁1行目冒頭から11行目末尾までを削除する。 (18)原判決39頁16行目の「1億5720万円が」を,「1億5720万円及びこれに対する牧場主への支払を余儀なくされた平成20年9月12日から平成23年4月28日までの確定遅延損害金の合計額が」と訂正する。 (19)原判決39頁23行目の「甲25」から同行目の「47」までを,「甲21,22,25~27,33~40,47,69,乙30」と訂正し,40頁14行目の「あった」の次に,「(乙30)」を付加する。 (20)原判決40頁18行目の「団体で,」の次に,「t県内の市町村長がその理事に就任しており(控訴人も平成9年5月から平成10年5月までその理事であった〔甲69〕。),」を付加する。 (21)原判決40頁26行目末尾の次に,「なお,本件算定書に添付されている各建物の図面は,A棟の平面図,E棟の平面図及び立面図のみである。」を付加する。 (22)原判決42頁10行目の「1.5倍」を,「2倍」と訂正する。 (23)原判決42頁18行目の「できない。」の次に,行を改めて,次のとおり付加し,同行目の「また,」から43頁8行目末尾までを削除する。 「 しかしながら,本件算定書は,N意見書と比較すると基礎等に関する補償額で約3680万円,O意見書と比較すると本件牛舎の移転補償額全体で約8627万円も高額であり,こ 8行目末尾までを削除する。 「 しかしながら,本件算定書は,N意見書と比較すると基礎等に関する補償額で約3680万円,O意見書と比較すると本件牛舎の移転補償額全体で約8627万円も高額であり,この差異は,本件算定書が基礎図面のないまま,統計数値によって推計されたものであることに起因している。 上記前提事実のとおり,公共用地の取得に伴う損失補償基準細則によれば,建物等の移転料は,従前の建物と同種同等の建物を建築することが合理的と認められる場合には再築工法によるものとし,その場合の移転料を従前の建物の推定再建築費を前提に算出するものとしている。そうすると,再築工法によって補償額が算定された本件においては,建物の移転料の算定にあたり,従前の建物の現状,品質等を現地調査し,採寸したりするだけでなく,目視では判断できない基礎の構造などを把握するため,設計図書などの図面を可能な限り入手すべきである(甲26,34)。証拠(甲27,28)によれば,別件訴訟1の原告らは,B棟を建設した際の現場監督らからB棟の基礎の図面を入手しているところ,補償額の算定に当たって,同図面の入手が困難であったような事情は全くうかがえない。むしろ,AないしD棟は建築後5ないし7年しか経過していないため,建築確認申請の際の設計図書を入手するのが当然であり,BないしD棟は,メーカーに設計図書等の資料を請求すれば入手できたと考えられる(甲34)。しかも,Mは,α市土地開発公社(理事長は,当時の被控訴人市長である控訴人)から依頼されたβ工業団地用地買収に係る工場移転の補償額算定にあたっては,工場の設計図書に基づき補償額を算出しており,同公社は,このようにして算出された補償額からさらに2ないし3割減額した金額で損失補償した事実が認められるのである(甲27)。ところが,本件では, ては,工場の設計図書に基づき補償額を算出しており,同公社は,このようにして算出された補償額からさらに2ないし3割減額した金額で損失補償した事実が認められるのである(甲27)。ところが,本件では,被控訴人は,平成10年3月30日,基礎に関する図面が添付されていない本件算定書の提出を受けた 後,補償額の算出過程を精査,検討し,その金額を見直すこともなく,本件算定書どおりの補償額で本件物件移転補償契約を締結している。上記認定事実のとおり,被控訴人(斎場建設室)の担当者らは,本件各土地上に本件斎場を建設することに意欲的であった控訴人の意を受け,移転先での牧場経営に必要な費用を賄いたいという牧場主の意向にできる限り沿わなければならないと考えており,本件各売買契約の代金額設定の際には,より高い価格を求めてH第2鑑定を依頼した経緯があるが,牧場主の意向に沿うためには,代金と補償金等の合計額がこれを満たす必要があるから,控訴人としては,代金額のみならず補償額についても,そのような観点から関心を抱いていたことは,容易に推測される(現に,控訴人自身,本件訴訟手続において,代金と補償金の合計額が7億円未満では牧場主は本件牧場地の買収に応じないので,被控訴人が適正額として主張する代金と補償金の額は相当でないと主張しているのである。)。 そうすると,本件算定書の補償額が適正な補償額を超えるものであった場合には,本件物件移転補償契約を締結した控訴人の判断における裁量権の逸脱又は濫用が問題となり得るため,以下,適正な補償額について検討する。」(24)原判決43頁9行目の「(5)」を,「(4)」と,26行目の「(6)」を,「(5)」と,44頁17行目の「(7)」を,「(6)」と,45頁12行目の「(8)」を,「(7)」と各訂正する。 (25)原 判決43頁9行目の「(5)」を,「(4)」と,26行目の「(6)」を,「(5)」と,44頁17行目の「(7)」を,「(6)」と,45頁12行目の「(8)」を,「(7)」と各訂正する。 (25)原判決46頁9行目の「上記」から11行目の「相当ではなく」までを,「上記『建物の鑑定評価必携』には,1立方メートル当たりの単価として1万2000円という数値が掲げられているのであるから,この数値と控訴人がB棟の取壊費用として算出した上記1平方メートル当たりの単価とを比較することには意味がなく」と訂正する。 (26)原判決46頁12行目冒頭から47頁9行目末尾までを,次のとおり訂正 する。 「 (8) 本件牛舎移転の必要性等本件各土地を取得する必要性等(前記3(6))において検討したとおり,本件斎場の建設用地として本件牧場地を取得する必要性がなかったとはいいきれないから,本件牛舎移転の必要性もただちには否定できない。 しかし,本件牧場地取得のためには,保安林の指定の解除という相当な困難を伴い,長期間を要することが想定されたのであるから,緊急の課題である本件斎場の建設用地として本件牧場地の取得を推し進めた控訴人の判断が合理的なものであったかについては大いに疑問がある。 加えて,上述したとおり,本件物件移転補償契約の補償額は,適正な補償額より2割以上も高額であるところ,その根拠たる本件算定書は,入手が困難とは認められない基礎に関する図面がないまま,安易に統計数値で推計したもので,牛糞置き場(E棟)のほとんど雨ざらしになるような柱を,最も高級と思われる一部屋の造作が上等な床の間等を有する部屋の柱と評価し算定するなど,一見して不合理な点を含んでいる。しかも,現地をみないまま積算したとはいえ,牛舎のメーカーや本件牛舎の建築 柱を,最も高級と思われる一部屋の造作が上等な床の間等を有する部屋の柱と評価し算定するなど,一見して不合理な点を含んでいる。しかも,現地をみないまま積算したとはいえ,牛舎のメーカーや本件牛舎の建築業者に問い合わせるなどして算定した概算見積額の倍の金額にもなっているところ,概算見積額の倍になることが不相当とはいえないというような事情は一件記録を精査しても見当たらない。本件算定書は,このように不合理な点を含んでいるにもかかわらず,被控訴人において,補償額の算出過程が精査,検討されて補償額が見直されることはなく,控訴人は,本件算定書の補償額どおりの金額で本件物件移転補償契約を締結しているのであるが,上述したとおり,控訴人以下,被控訴人(斎場建設室)の担当者らが牧場主の意向に沿うような高い金額を設定したい意向を有し,売買代金額の決定に際してはH第2鑑定を実施した 経緯があることを考え併せると,本件算定書については,あえて見直しを行わなかったものと推認せざるを得ない。 そうすると,本件斎場の用地を確保するという本件物件移転補償契約の目的や必要性,本件斎場の性質に伴う用地確保の困難性,牧場主との価格交渉が難航していたことなどを考慮しても,本件物件移転補償契約の補償額は高額であり,牧場主の意向に沿うべく,一見して不合理な点を含んだ本件算定書の精査,検討による見直しをあえて行わず,本件算定書の補償額どおりの金額で本件物件移転補償契約を締結した控訴人の判断は,本件牧場地を対象として計画を推し進めた判断の合理性それ自体に大いに疑問があることをも勘案すると,その裁量権の範囲を逸脱し,又は濫用したものであったといわざるを得ない。 7 控訴人の故意又は過失(本件物件移転補償契約について)上述したところからすると,控訴人は,本件算定書に不合理な すると,その裁量権の範囲を逸脱し,又は濫用したものであったといわざるを得ない。 7 控訴人の故意又は過失(本件物件移転補償契約について)上述したところからすると,控訴人は,本件算定書に不合理な点が含まれ,その補償額が適正な価格より高額なものとなっている可能性があることを知りながら,あえて見直しを行うことなく,その補償額どおりの金額で本件物件移転補償契約を締結したものというべきであるから,不法行為の成立要件としての故意があったというべきである。そうでないとしても,上述したところからすると,控訴人が本件算定書の補償額算出過程の精査,検討による見直しを怠ったまま,その補償額どおりで本件物件移転補償契約を締結したことには,少なくとも重大な過失が認められるというべきである。 8 被控訴人の損害(本件物件移転補償契約について)以上によれば,本件物件移転補償契約の締結によって被控訴人が被った損害額は,同契約の補償金3億4849万7278円から,適正な補償額2億8524万4057円を差し引いた6325万3221円及びこれに対する牧場主への支払を余儀なくされた平成20年9月12日から平成2 3年4月28日までの確定遅延損害金の合計額ということになる。 9 控訴人の不法行為責任(まとめ)以上によれば,控訴人が本件各売買契約及び本件物件移転補償契約を締結したことは,その裁量権の範囲を逸脱又は濫用したものとして違法であり,控訴人の故意又は過失も認められるから,控訴人は,被控訴人に対し,不法行為に基づき,上述したとおりの被控訴人が被った損害額2億4941万4130円(本件各売買契約につき1億5720万円,本件物件移転補償契約につき6325万3221円及びこれらに対する平成20年9月12日から平成23年4月28日までの確定遅延損害金28 億4941万4130円(本件各売買契約につき1億5720万円,本件物件移転補償契約につき6325万3221円及びこれらに対する平成20年9月12日から平成23年4月28日までの確定遅延損害金2896万0909円)を賠償する義務がある。」(27)原判決47頁10行目の「7」を,「10」と訂正する。 第4 結論以上によれば,被控訴人の請求は全て理由があるから,控訴人の控訴を棄却し,被控訴人の附帯控訴に基づき,請求を一部棄却した原判決を変更することとして主文のとおり判決する。 名古屋高等裁判所民事第4部裁判長裁判官筏津順子裁判官金谷和彦裁判官秋武郁代

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