判決平成15年3月5日長崎地方裁判所平成14年(わ)第223号,第235号詐欺被告事件 主文 被告人Aを懲役3年に,被告人Bを懲役2年にそれぞれ処する。 被告人両名に対し,この裁判確定の日から3年間,それぞれその刑の執行を猶予する。 理由 (罪となるべき事実)被告人Aは,造船業等を営む甲株式会社の代表取締役社長で,平成13年6月からは,同社乙造平成12年1月から同社の乙造船所所長代理,同年6月から同社取締役乙造船所長,平成13年16月から同社取締役乙造船所副所長兼勤労部長,同年12月から同社取締役乙造船所副所長であっ事業主等の行う職業訓練に対して都道府県が助成・援助する生涯能力開発給付金制度を利用し,同る職業訓練を実施したかのように仮装して同給付金名下に長崎県から金員を詐取しようと企て第1 同社勤労部長Cらと共謀の上,あらかじめ長崎県知事に対し,同県佐世保市a所在甲株式会する予定である旨の職業訓練計画届を提出した上,平成12年4月19日ころ,長崎市b町c能力開発課において,同課職員を介して同給付金支給決定権限を有する同課課長Dに対し,真6日から平成12年3月10日まで同社従業員201名に対し上記給付金支給制度に適合するした事実は全くないのに,これあるように装い,上記職業訓練を実施した旨記載された生涯能て,同給付金1億5126万7782円の支給を申請し,さらに,同年11月8日,同造船所るため調査に訪れた上記Dらに対し,上記申請書どおりの職業訓練を実施した旨虚偽の事実をを誤信させ,よって,同人をして,同年12月7日,1億5124万6782円の上記給付金 8日,同造船所るため調査に訪れた上記Dらに対し,上記申請書どおりの職業訓練を実施した旨虚偽の事実をを誤信させ,よって,同人をして,同年12月7日,1億5124万6782円の上記給付金同決定に基づき長崎県出納局出納課総括課長補佐Eらをして,長崎県佐世保市e町f番g号所株式会社名義の当座預金口座に同金額を振込入金させ第2 同社勤労部課長Fらと共謀の上,あらかじめ長崎県知事に対し,上記同様の職業訓練計画届9日ころ,上記長崎県商工労働部職業能力開発課において,同課職員を介して同給付金支給決実は,同造船所が平成12年7月10日から平成13年3月30日まで同社従業員311名にる搭載取付技術の教育等の職業訓練を実施した事実は全くないのに,これあるように装い,上た生涯能力開発給付金支給申請書を提出して,同給付金2億6711万3000円の支給を申同造船所において,同申請内容等を審査するため調査に訪れた上記職業能力開発課職員らに対を実施した旨虚偽の事実を申し向けるなどし,その旨上記Dらを誤信させ,よって,同人をし5000円の上記給付金の支給を決定させ,同年12月27日,同決定に基づき長崎県出納局式会社名義の当座預金口座に同金額を振込入金させもって,それぞれ人を欺いて財物を交付させたものである。 (証拠の標目)(省略)(事実認定の補足説明)被告人両名は,冒頭手続において,いずれも事実を認めているが,被告人Aの弁護人らは,判示平成11年7月ころ,長崎県知事に対し,職業訓練計画届を提出した時点においては,職業訓練を本件給付金の支給申請の時点においては,職業訓練は実施していないのではないかと思いながらもことを承認したにすぎない旨主張し,同被告人も被告人質問においてはこれに沿う供述をしている当初は職業訓練を行うつ 件給付金の支給申請の時点においては,職業訓練は実施していないのではないかと思いながらもことを承認したにすぎない旨主張し,同被告人も被告人質問においてはこれに沿う供述をしている当初は職業訓練を行うつもりであったかのような供述もしている。ところで,本件で被告人Aが問れも共謀に基づく共同正犯としての責任なのであるから,いくら給付金を受給することそれ自体がものであり,また,代表取締役として従業員らを監督すべき立場にあるといっても,単に被告人B知りながらこれを制止しなかったというのみで,直ちに被告人Aに共謀共同正犯による詐欺罪が成であり,被告人Aは,実質的には,少なくとも判示第1の犯行は否認しているといえるので,以下,同被告人の罪責について検討する。 関係証拠によれば,被告人Aは,平成10年6月に甲株式会社の代表取締役に就任し,同社の経船業界は海外の造船業の伸張等により競争が激化するとともに,折からの不況の影響もあり,売上相当に厳しい状況にあり,平成11年度決算においては,最悪の場合には40億円にも上る赤字が被告人は,自ら「50(ごーまる)運動」と称して全社をあげて経費節減に取り組むとともに,経件費節減の方策として,国が中高年労働者の雇用の安定のために,出向を受け入れた事業者に対しある中高年労働移動雇用安定奨励金を利用することを企図し,自社の従業員を下請会社に出向させ注することにより,出向者には従前どおりの業務に従事させて自社の生産規模を維持しながら,下質的に自社の人件費の節減をはかろうと考えたこと,被告人Aは,上記奨励金の受給にあたってはれていたことから,可能な限り多くの奨励金を受給するため,原則として自社に勤務する45歳以させることとし,千数百名の全従業員のうち約1200名を下請会社に出向させて,その申請を行いては,出向以前の甲における雇用保険 ,可能な限り多くの奨励金を受給するため,原則として自社に勤務する45歳以させることとし,千数百名の全従業員のうち約1200名を下請会社に出向させて,その申請を行いては,出向以前の甲における雇用保険期間が不足しているとの理由で却下されたため,これらのの受給が可能か否かを検討した結果,本件職業能力開発給付金の申請を行う旨企図し,部下であるんだことが明らかに認められる。 かかる本件給付金の申請に至る経過によれば,そもそも本件給付金の受給が計画されたのは,中金の申請が一部却下されたことを契機とするものであり,当初から積極的に従業員の能力向上等をて,その計画を整え,届出に及んだものではなく,したがって,その計画届の内容も,被告人AかBにおいて,急きょ間に合わせたものに過ぎない。そもそも,上記中高年労働移動雇用安定奨励金自社の従業員を下請先に出向させた上,その下請会社に自社の業務を発注することにより,形式的るものの,出向者の業務自体は従前どおりという実体を伴わない形式的なものであり,その奨励金替として本件給付金申請が計画されたものである以上,その受給にあたって,本制度が予定していことが真剣に考えられていたとは考えにくい。加えて,被告人Aが本件給付金の受給を企図した時た経営状態にあったほか,これを回復するため受注した造船作業の着工を間近に控えた時期でもあいては多忙な状況が予想され,現にその後,特に塗装関係について多くのクレームが船主側から寄程が遅れ,船主側に対する莫大な遅延損害金の支払まで余儀なくされ,他部門から造船部門へ人員人手不足が生じてもいるのであり,そのような時期に,従業員の約2割にものぼる約300名ものたり,実際に職業訓練を行う意図であったと強弁する被告人Aの公判供述は,はなはだ現実離れし人は,中高年労働者の出向受入に伴う奨励金の申請が却下さ のような時期に,従業員の約2割にものぼる約300名ものたり,実際に職業訓練を行う意図であったと強弁する被告人Aの公判供述は,はなはだ現実離れし人は,中高年労働者の出向受入に伴う奨励金の申請が却下された約300名については,以前から出向させていたいわば余剰人員であり,甲の業務に従事させることが予定されていなかった人員で練を実施することは十分に可能であり,実際にこれを行う意思であったと供述する。しかし,本件るためには,その対象となる労働者は,職業訓練の行われる日はこれにのみ従事し,残業等はできできないという生産性のない職業訓練であることが要件とされているものであり,しかもその支給われる賃金よりも低額であるから,かかる職業訓練の実施による有形無形の手間や費用を度外視し全く役立たず,むしろこれを増大させる要因となるものである。被告人Aは,さらに,本職業訓練点に立って,将来の人員削減や労働者自身の能力向上と雇用の確保,その対象者が出向することとの相互的発展までをも見据えた上で計画したものであるという。しかし,被告人Aは,本件給付金示した会合において,この給付金により赤字を補填する旨言明したことは出席した関係者の供述やあり,かかる発言からすれば,同被告人は,自社における当時の逼迫した経営状態を少しでも回復かでも縮減しようとの意図から,本件給付金の受給を計画したことが明らかであり,そのことは,により給付金を得ようとしていたことを如実に示している。 以上によれば,被告人Aは,平成11年7月に職業訓練計画届を県に提出した当時から,実際に付金を受給する意図を有していたものと認められ,これを前提に,被告人Bらに対し,その具体的人においても,そのような被告人Aの意図を受けて犯行に及んだものと認められるから,被告人A詐欺罪が成立する。 (法令の適用)被告人両名 たものと認められ,これを前提に,被告人Bらに対し,その具体的人においても,そのような被告人Aの意図を受けて犯行に及んだものと認められるから,被告人A詐欺罪が成立する。 (法令の適用)被告人両名の判示各所為は,いずれも刑法60条,246条1項にそれぞれ該当するところ,以るから,同法47条本文,10条により,いずれも犯情の重い判示第2の罪の刑に法定の加重をし3年に,被告人Bを懲役2年にそれぞれ処し,被告人両名に対し,情状により同法25条1項を適間それぞれその刑の執行を猶予することとする。 (量刑の理由)本件は,甲株式会社の当時の代表取締役社長であった被告人Aが,同社の当時の造船所長代理等都道府県が,労働者の職業訓練の受講を援助し,企業の人材育成と労働者の職業能力の開発向上をする労働者に対し,職業訓練を行う事業主等に対し,労働者の賃金等を助成する生涯能力開発給付職業訓練を行っていないにもかかわらず,これを行ったかのように仮装して,長崎県から,2年度余りの支給を受けて詐取したという詐欺の事案である。 被告人Aは,自らが代表取締役社長を務める甲が,折からの不況の影響等により大幅な赤字が見あったため,これを少しでも回復したいとの意図から,実際に職業訓練を実施することなく,上記人Bらに指示してその支給申請手続を行わせるなどしたもので,いわゆる一部上場企業で佐世保市役として,法を厳格に遵守すべき立場にありながら,これを無視し,自社の利益のみを追求しようきものはない。 本件犯行が企図された経過をみると,自社の45歳以上の従業員を下請会社に出向させることに計画された際に,その申請の一部が却下されたことを契機として,他の公的助成金の受給が可能かたものであるから,その意味では,犯行の発端そのものは被告人らにとって予定外であった面もあてなされた訓練計画届を 画された際に,その申請の一部が却下されたことを契機として,他の公的助成金の受給が可能かたものであるから,その意味では,犯行の発端そのものは被告人らにとって予定外であった面もあてなされた訓練計画届を受理するよう国会議員秘書らに働きかけてもらい,それが受理されるや,て,本件犯行のいわば事務担当役として実行犯の中心的立場にあった被告人Bにおいて,部下の者もとより内容虚偽の訓練実施報告書,着工申請書,出勤表,配置転換証明書等種々の書類を作成し際には,事前に関係者で協議を重ね,ヒアリングの対象者とされた訓練受講者や労働組合関係者らどして職業訓練の実施を装うなど,被告人らの指揮の下,いわば会社をあげて偽装工作を行ったもならしめた本件給付金制度そのものやその支給手続にかかる不正を誘発する要因がなかったのかとの犯行態様が会社ぐるみで行われた計画的,組織的で大掛かりな,かつ手の込んだものであること加えて,被告人らは,これらの犯行を2年度にわたって繰り返し,その被害額も合計3億770しかもこれら給付金は,雇用保険制度における能力開発事業を財源とするものであり,被告人らはに充てられるべき財源の中から上記の金員を詐取したもので,この点でも本件犯行は悪質というほ被告人Aは,甲の代表取締役の地位にあって,同社の経営全般を掌握するとともに,本件犯行を係者を犯罪に巻き込み,会社ぐるみで職業訓練の実施を偽装させ,給付金を騙し取ったものであっ犯者に比して格段に重い。 一方,被告人Bは,2年度にわたる本件給付金の受給にあたって,被告人Aからその手腕,能力けてその手続を進め,自らあるいは部下の者らに命じて職業訓練を実施したかのような種々の偽装役を担った者の中では,最も中心的な立場にあって,犯行を積極的に推し進めたものである。なお人は,判示第1の犯行に関して,県に計画届を提出 るいは部下の者らに命じて職業訓練を実施したかのような種々の偽装役を担った者の中では,最も中心的な立場にあって,犯行を積極的に推し進めたものである。なお人は,判示第1の犯行に関して,県に計画届を提出した時点においては,単なる業務部長の地位に造船所長らの決裁を仰いだ上でその提出に及んでおり,後にその支給申請を行った際にも,職業訓知悉しているこれらの者に伺いを立てて申請に及んでいるのであるから,上記決裁権者らもまた本任はこれら決裁権者に比して軽いなどと主張するが,刑事責任の有無,軽重は,当然ながら,社内れるものではなく,被告人Aの指示を受けて犯罪の実行の中心的役割を担った被告人Bの責任と,に直接手を染めたものでもなく,被告人Aの意向であることから被告人Bらの行為を黙認した決裁とはできない。 以上のことからすると,被告人らの刑責はいずれも軽視することができない。 一方,本件で被告人らが詐取した金額は,甲により,長崎県に対し,利息分を含めて全額返還済らの厳しい経済情勢や自社の逼迫した経営状態を背景として,企業維持の目的でなされた犯行であ当化されるものではないが,少なくとも被告人ら個人の私利私欲に基づいてなされた犯行ではない告人は,公判において,本件犯行を企図した当初の認識について不合理な弁解をしている部分はあの従業員や県民,国民に対する謝罪の意思を表明し,本件を機に会社の代表取締役を辞任してもおとは間違いないと考えられること,当公判廷に出廷した同被告人の家族や知人らが,同被告人の会価し,早期の社会復帰を望む旨証言しており,これらが同被告人の更生の資源となり得ると考えら自社の代表取締役社長である被告人Aから指示を受け,上司の命令でもあり自社の利益のためには実行したもので,その意味では従属的立場にあったこと,同被告人についても,罪を認めて謝罪すており 得ると考えら自社の代表取締役社長である被告人Aから指示を受け,上司の命令でもあり自社の利益のためには実行したもので,その意味では従属的立場にあったこと,同被告人についても,罪を認めて謝罪すており,本件について真摯に反省していると認められること,同被告人の妻が同被告人の更生に協らも同被告人の早期の社会復帰を望んでいること,いずれの被告人についてもこれまで前科前歴が情も存するので,以上の事情を総合考慮し,被告人らに対しては,主文の刑を科した上,いずれも思料した。 よって,主文のとおり判決する。 (求刑被告人Aに対し懲役3年,被告人Bに対し懲役2年6月)平成15年3月5日長崎地方裁判所刑事部裁判長裁判官山本恵三裁判官鈴嶋晋一裁判官髙石博司
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