平成11(行ウ)6等 事業認定取消請求事件(甲事件),収用裁決取消請求事件(乙事件)

裁判年月日・裁判所
平成15年12月26日 岐阜地方裁判所 公用負担・公用収用など
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判決文本文135,027 文字)

主文 1 甲事件原告ら及び乙事件原告らの請求をいずれも棄却する。 2 併合前の甲事件における訴訟費用は甲事件原告らの負担とし,その余は甲事件原告ら及び乙事件原告らの負担とする。 事実及び理由 第1章当事者の求めた裁判第1 甲事件 1 甲事件原告ら(1) 建設大臣が,平成10年12月24日付けで,建設省告示第2177号により告示した下記事業認定を取り消す。 記起業者の名称水資源開発公団,電源開発株式会社事業の種類一級河川木曽川水系徳山ダム建設工事及びこれに伴う附帯工事起業地土地・収用の部分岐阜県揖斐郡α1地内等ほか(2) 訴訟費用は甲事件被告の負担とする。 2 甲事件被告(1) 甲事件原告らの請求を棄却する。 (2) 訴訟費用は甲事件原告らの負担とする。 第2 乙事件 1 乙事件原告ら(1) 乙事件被告が平成13年5月23日付けでした一級河川木曽川水系徳山ダム建設工事及びこれに伴う附帯工事に関する権利取得裁決及び明渡裁決のうち,別紙共有持分目録記載の共有持分に係る部分を取り消す。 (2) 訴訟費用は乙事件被告の負担とする。 2 乙事件被告(1) 乙事件原告らの請求をいずれも棄却する。 (2) 訴訟費用は乙事件原告の負担とする。 第2章事案の概要等第1 事案の概要 1 甲事件甲事件は,徳山ダム建設事業を施行する土地(以下「本件起業地」という。)内にある別紙物件目録記載の土地(以下「本件土地」という。)につき共有持分を有する甲事件原告らが,建設大臣(平成10年法律第103号中央省庁等改革基本法及びこれに基づく中央省 本件起業地」という。)内にある別紙物件目録記載の土地(以下「本件土地」という。)につき共有持分を有する甲事件原告らが,建設大臣(平成10年法律第103号中央省庁等改革基本法及びこれに基づく中央省庁改編前のもの。以下同じ。)が平成10年12月24日付けで土地収用法(以下「法」という。)に基づいてした一級河川木曽川水系徳山ダム建設工事及びこれに伴う附帯工事に係る事業認定(以下「本件事業認定」といい,徳山ダム建設事業を「本件事業」という。)に関し,新規の水道用水及び工業用水は必要なく,本件事業認定の基礎となった水需要予測は不合理であり,他方,同事業により環境的利益が失われるなどの理由により,本件事業認定が法20条1号から4号までに違反すると主張して,建設大臣の地位を承継した甲事件被告に対し,本件事業認定の取消しを求めた事件である。 2 乙事件乙事件は,本件土地に共有持分を有する乙事件原告らが,乙事件被告に対し,本件裁決が本件事業認定の違法性を承継することを理由に,乙事件被告が平成13年5月23日付けでした本件事業に関する権利取得裁決及び明渡裁決のうち,乙事件原告らの共有持分にかかる部分が違法であると主張して,その取消しを求めた事案である。 第2 当事者間に争いのない事実 1 当事者等(1) 甲事件原告ら及び乙事件原告ら(以下,両事件の原告らを合わせて「原告ら」という。)は,本件土地について,別紙共有持分目録記載の持分割合による共有持分を有している者である。 なお,甲事件原告と乙事件原告は一部重複するが完全には一致せず,甲事件のみの原告及び乙事件のみの原告がいる。 (2) 建設大臣は,本件事業認定当時,法20条1項に基づき,法17条1項の規定に係る事業を行うものについて事業認定の権限を有していた者である 甲事件のみの原告及び乙事件のみの原告がいる。 (2) 建設大臣は,本件事業認定当時,法20条1項に基づき,法17条1項の規定に係る事業を行うものについて事業認定の権限を有していた者である。 (3) 乙事件被告は,法51条に基づいて設置された独立の行政委員会である。 (4) 甲事件被告参加人独立行政法人水資源機構(独立行政法人水資源機構法〔平成14年法律第182号〕附則2条1項により,水資源開発公団の地位を承継。以下,特に断りのない限り「公団」という。)及び同電源開発株式会社(以下「電源開発株式会社」という。)は,いずれも本件事業の起業者である(以下,甲事件被告及び甲事件被告参加人両名並びに乙事件被告を合わせて「被告ら」という。)。 なお,公団は,水資源開発促進法(以下「促進法」という。)の規定による水資源開発基本計画に基づく水資源の開発又は利用のための事業を実施すること等により,国民経済の成長と国民生活の向上に寄与することを目的とする法人である(水資源開発公団法〔ただし,独立行政法人水資源機構附則6条により廃止される前のもの。以下「公団法」という。〕1条,2条)。 2 徳山ダムの概要(1) 徳山ダムは,「木曽川水系における水資源の総合的な開発及び利用の合理化の基本となる水資源開発基本計画」(以下,変更等の前後を含めて「フルプラン」と総称する。)に関して,公団が公団法18条1項1号イに基づき建設するダムである。本件起業地は,揖斐川の河口から約90㎞上流の揖斐川本流で,岐阜県揖斐郡α1内(旧徳山村が藤橋村に廃置分合される前の旧徳山村と旧藤橋村の村境付近)に位置している。 (2) 徳山ダムの工事計画の概要は次のとおりである。 ア型式中央・水壁型ロックフィルダムイ堤 村に廃置分合される前の旧徳山村と旧藤橋村の村境付近)に位置している。 (2) 徳山ダムの工事計画の概要は次のとおりである。 ア型式中央・水壁型ロックフィルダムイ堤高  161.0mウ堤頂長  415.0mエ堤長標高406.0mオ堤体積約1390万‰カ事業費約2540億円(昭和60年度単価)(3) 徳山ダムの建設目的本件事業に関する事業実施計画(甲事件乙10の5。以下,甲事件の甲,乙,丙号証をそれぞれ,単に「甲○,乙○,丙○」といい,乙事件の乙号証を「乙事件乙○」という。)によれば,徳山ダムは,その設置目的を①洪水調節,②流水の正常な機能の維持,③新規利水,④発電とする多目的ダムであるとされている(ただし,原告らは,徳山ダムは新規利水を基本目的とするダムであり,上記その余の目的は付加されたものにすぎないと主張する。)。 (4) 徳山ダムの建設工事本件事業は昭和46年に着工され,平成19年度に完成する予定である。 3 本件事業認定に至る経緯ア当初のフルプラン内閣総理大臣は,促進法4条1項に基づき,目標年次を昭和50年度として,フルプラン(当初のフルプラン)を策定し,昭和43年10月15日の閣議決定を経て,これを決定した。 イ旧フルプラン内閣総理大臣は,上記アの当初のフルプランの目標年次を昭和60年度とする全部変更を行い,昭和48年3月23日の閣議決定を経て,これを決定した(以下「旧フルプラン」という。)。 この全部変更により,本件事業のうち洪水調節,流水の正常な機能の維持及び新規利水を目的とする部分は旧フルプランに基づく事業となり,旧フルプランにおいて本件事業に関する基本的な事項が定 )。 この全部変更により,本件事業のうち洪水調節,流水の正常な機能の維持及び新規利水を目的とする部分は旧フルプランに基づく事業となり,旧フルプランにおいて本件事業に関する基本的な事項が定められた。旧フルプランは,昭和57年3月26日に一部変更されている。 ウ新フルプラン内閣総理大臣は,旧フルプランの目標年次を平成12年度とする全部変更を行い,平成5年3月26日の閣議決定を経て,これを決定した(以下「新フルプラン」という。)。新フルプランは,平成8年11月22日,平成9年12月19日にそれぞれ一部変更されている。 エ事業実施方針(公団法19条)建設大臣は,昭和51年4月27日,公団法19条1項に基づき,「徳山ダム建設事業に関する事業実施方針」(以下「事業実施方針」という。)を定め,内閣総理大臣を経て,これを公団に指示した。その後,事業実施方針は,昭和63年12月28日,平成9年12月26日にそれぞれ変更されている。 オ事業実施計画(公団法20条)公団は,上記エの指示を受け,昭和51年9月28日,公団法20条1項に基づき,「徳山ダム建設事業に関する事業実施計画」(以下「事業実施計画」という。)を作成し,建設大臣は,公団法20条1項に基づき,これを認可した。 その後,前記エの2回の事業実施方針変更に伴い,公団は,平成元年2月13日,平成10年1月8日に事業実施計画を変更し,それぞれ建設大臣の同計画変更の認可を受けている。 4 本件事業認定公団及び電源開発株式会社は,建設大臣に対し,平成10年6月10日付けで,法16条及び法138条1項に基づき,本件事業認定の申請を行った(乙20は上記事業認定申請書である。)。 これに対し,建設大臣は,平成10年12月2 建設大臣に対し,平成10年6月10日付けで,法16条及び法138条1項に基づき,本件事業認定の申請を行った(乙20は上記事業認定申請書である。)。 これに対し,建設大臣は,平成10年12月24日付けで,法20条に基づいて本件事業認定を行い,同日これを告示した(建設省告示第2177号,乙23)。 5 本件裁決建設大臣は,乙事件被告に対し,平成11年11月17日付けで,本件事業に係る権利取得裁決の申請及び明渡裁決の申立てをした(平成11年岐収委第7,8号収用事件)。 これに対して,乙事件被告は,乙事件原告ら及び本件土地に共有持分を有するその余の者らに対し,平成13年5月23日付けで,権利取得裁決及び明渡裁決を行った(以下,合わせて「本件裁決」という。)。 6 地位の承継建設大臣がした本件事業認定は,平成13年1月6日,中央省庁等改革関係法施行法(平成11年法律第160号)が施行されたことに伴い,同法1301条により,同法1068条による改正後の法に基づき甲事件被告(国土交通大臣)がした処分とみなされる。 第3 争点 1 本件事業認定の適法性(甲事件)(1) 法20条1号要件該当性(2) 法20条2号要件該当性(3) 法20条3号要件該当性(4) 法20条4号要件該当性 2 本件裁決の適法性(乙事件)第3章争点に関する当事者の主張第1 争点1(1)(法20条1号要件該当性)について【被告らの主張】本件事業は,公団と電源開発株式会社が共同して,洪水調節,流水の正常な機能の維持,新規利水及び発電を目的とする多目的ダムを建設するものであり,法3条17号の2,34号の2,35号に該当する事業である(乙10の5)。 したがって,本件事業は法20条1号の要件に 機能の維持,新規利水及び発電を目的とする多目的ダムを建設するものであり,法3条17号の2,34号の2,35号に該当する事業である(乙10の5)。 したがって,本件事業は法20条1号の要件に適合する。 【原告らの主張】本件事業が法3条34号の2の事業に該当するのは,徳山ダムが,公団が起業者として公団法により建設する水資源開発施設だからである。 ところで,公団は水資源開発基本計画に基づいて水資源開発施設を建設することを目的とする特殊法人であるから(公団法18条1項1号),公団が建設できるのは水資源開発施設であるところ,公団がこのような施設を建設できるのは,当該施設に水資源開発施設として新規利水の目的があるからであって,新規利水と他の目的が併存する多目的ダム(特定多目的ダム法2条1項)の場合とは異なり,流水の正常な機能の維持,洪水調節等は,新規利水目的に付加された付随的な目的にすぎない。 したがって,後記第3のとおり新規利水の必要性を欠く以上,本件事業は,法20条1号の要件に適合しない。 第2 争点1(2)(法20条2号要件該当性)について【被告らの主張】本件事業のうち,新規利水,流水の正常な機能の維持及び洪水調節を目的とする部分は,公団が,公団法19条1項により,建設大臣から内閣総理大臣を経て事業実施方針の指示を受け,公団法20条1項により建設大臣から事業実施計画の認可を受け,昭和51年10月1日,公団法20条の2により建設大臣から承継して実施するものであり,本件事業のうちの発電を目的とする部分は,電源開発株式会社が,昭和57年12月8日の第90回電源開発調整審議会の議を経て,電源開発促進法3条1項に規定する電源開発基本計画において決定された新規着手電源開発として実施するものである。また, 電源開発株式会社が,昭和57年12月8日の第90回電源開発調整審議会の議を経て,電源開発促進法3条1項に規定する電源開発基本計画において決定された新規着手電源開発として実施するものである。また,本件事業実施に当たり必要な許認可については,いずれも既に取得されている。 これらのことから,公団及び電源開発株式会社は,いずれも本件事業を遂行する十分な意思と能力を有する起業者である。 したがって,本件事業は法20条2号の要件に適合する。 【原告らの主張】法20条2号は,起業者の事業遂行の意思,能力について規定するところ,能力とは,法的,経済的,実際的に事業を遂行することができることをいい,そのうち経済的な事業遂行能力とは,事業に要する経費の財源について財源確保がされていることをいう。 しかるに,公団は事業に要する経費の最終的な自己財源がなく,新規利水分については借入金及び開発水の用途に応じた国庫補助金を,洪水調節,流水の正常な機能の維持分については国からの交付金をそれぞれ財源とする。そして,上記新規利水の借入金は,ダム完成後にダムで開発した水を水道や工業用水道の用に供する者に転嫁して負担させることになっているところ,地方財政法6条,地方公営企業法2条1項からすれば,本件事業の経費は当該企業の経営に伴う収入をもって充てなければならず(独立採算制),徳山ダム建設事業費負担金は工業用水道事業者が負担し,利用者からの給水料金で回収すべきものである。ところが,水需要がないと,開発水を水道や工業用水道の用に供して経費を支弁することができず,水資源開発施設は財源を失う結果となる。 したがって,後記第3のとおり,水需要がなく開発水が水道や工業用水道の用に供されないことが明らかである以上,公団は,本件事業を行う財政的 ことができず,水資源開発施設は財源を失う結果となる。 したがって,後記第3のとおり,水需要がなく開発水が水道や工業用水道の用に供されないことが明らかである以上,公団は,本件事業を行う財政的基盤を有しないから,法20条2号の要件に適合しない。 第3 争点1(3)(法20条3号要件該当性)について【被告らの主張】 1 比較衡量法20条3号の「事業計画が土地の適正かつ合理的な利用に寄与するものであること」の要件は,その文言及び「公共の利益の増進と私有財産との調整を図り,もって国土の適正且つ合理的な利用に寄与する」という法目的(法1条)に照らすと,当該事業計画が国土全体の土地利用の観点からみて適正かつ合理的であることを要する旨を規定したもので,事業計画全体の合理性に関する要件を定めたものと解される。それゆえ,当該土地がその事業の用に供されることによって得られる公共の利益と,当該土地がその事業の用に供されることによって失われる利益とを比較衡量した結果,前者が後者に優越すると認められる場合に,この要件に適合すると解すべきである。 そして,事業計画全体の合理性の有無は,事柄の性質上極めて政策的,専門技術的なものであること,法20条3号の文言が「事業計画が土地の適正かつ合理的な利用に寄与するものであること」と概括的な規定にとどまっていることからすれば,事業認定権者である建設大臣の裁量に委ねられていると解すべきである。 したがって,本件事業認定についても,建設大臣の判断に社会通念上著しく不相当な点があり,その裁量権の逸脱,濫用があったと認められる場合に,初めて本件事業認定は法20条3号に適合せず,違法となるというべきである。 2 本件起業地が本件事業の用に供されることによって得られる公共の利益(1) 都市用水の確保 たと認められる場合に,初めて本件事業認定は法20条3号に適合せず,違法となるというべきである。 2 本件起業地が本件事業の用に供されることによって得られる公共の利益(1) 都市用水の確保ア関係県知事の意見等本件事業は,昭和48年,旧フルプランに初めて位置付けられ,平成9年,新フルプランの一部変更により,新規利水については,平成13年度以降発生する水需要に対処する施設とされ,新規利水容量は約1億6600万‰と定められた。フルプランの決定及び変更については,内閣総理大臣が,関係行政機関の長に協議し,かつ,関係県知事及び水資源開発審議会の意見を聴き,いずれも異議ない旨の回答を得た。 また,建設大臣が平成9年12月に定めた事業実施方針の中の供給予定地域別,水道用水,工業用水別の開発水量については,関係行政機関の長との協議,関係県知事からの意見聴取等を踏まえて定められている。 公団は,事業実施方針に基づいて事業実施計画を作成し,主務大臣である建設大臣の認可を受けているが,その作成に当たっては,関係県知事と協議し利水者の意見を聴くとともに,徳山ダム新築に要する費用負担につき費用負担者の同意を得た。 さらに,徳山ダム建設事業審議委員会(以下「ダム審」という。)においても,審議過程で,利水者である各自治体の意向が示され,これらの意向を尊重し,徳山ダムにおいて12‰/Sの都市用水を確保することが適当であると考えるとの意見が述べられた。 上記の関係県知事の意見等から,本件事業による都市用水の確保が必要であることは明らかである。 イ本件水需要予測本件事業による都市用水の確保が必要であることは,建 上記の関係県知事の意見等から,本件事業による都市用水の確保が必要であることは明らかである。 イ本件水需要予測本件事業による都市用水の確保が必要であることは,建設大臣の指示に基づき,公団が本件事業認定の申請前に作成した本件事業に係る水需要推計(以下「本件水需要予測」という。)からも明らかであり,かつ,本件水需要予測は後記(ア),(イ)のとおり合理的なものである。 なお,水道用水の需要量推計に当たって,名古屋地域と尾張地域は水道事業の供給区分は異なるものの,社会・経済的に一体の地域であることから,将来需要量の推計に当たり両地域を合わせて取り扱い,両地域を合わせて推計した将来需要量を平成7年度までの両地域の最大給水量ベースの実績値で按分して,それぞれの地域の需要量とした。この算出方法は,両地域の地理的・社会的一体性から合理的なものである。 (ア) 水道用水の需要推計水道用水の需要推計は,将来の給水人口に1人1日当たり給水量を乗じて算出した。 A 給水人口の将来推計本件事業による供給予定地域での過去の給水人口の動向を踏まえて,将来の給水人口を推計した。その際,過去の実績を用いて将来給水人口を一次関数で推計する時系列分析手法を採用したが,これは一般的な方法として幅広く使用されているもので合理的である。 a 大垣地域の将来給水人口将来給水人口については,今後も岐阜県内における都市部への人口集中や大垣地域の発展が見込まれることから,過去10年間(昭和60年度から平成7年度)の増加が今後も継続するものとして,過去10年間の人口増加年間3600人,平成7年度の 県内における都市部への人口集中や大垣地域の発展が見込まれることから,過去10年間(昭和60年度から平成7年度)の増加が今後も継続するものとして,過去10年間の人口増加年間3600人,平成7年度の給水人口実績36万人(乙66)を基に将来給水人口を推計した。 将来給水人口(平成30年度)36万人+0.36万人/年×23年=約44万人b 名古屋・尾張地域の将来給水人口将来給水人口については,当該地域における過去10年間(昭和60年度から平成7年度)の増加が今後も継続するものとして推計した。過去10年間の人口増加が年間1.4万人,平成7年度の給水人口実績372万人(乙71)を基に将来給水人口を推計した。 将来給水人口(平成30年度)372万人+1.4万人/年×23年=約404万人B 1人1日当たり平均給水量(日平均給水量原単位)の将来推計国土庁(当時。以下同じ)資料「水資源白書」には,本件事業の供給予定地域を含む東海地域における水道用水の1人1日当たり使用量(有効水量)が経年的に示されているが,これに渇水のあった年の影響度等を書き加えたものが乙67・2-2である。これに基づき,渇水の影響を受けたと思われるデータを除いて使用データとし,最小二乗法により年増加量を推定し,この傾向が今後も継続するものと推定した。なお,東海地域のデータを用いたことは,平成30年度という遠い将来の推計をするために,合理的な範囲で広くデータの母集団を収集すべきことから適当であるし,渇水の影響を受けたと思われる年のデータを傾向からはずれたものとして捨象した点も,統計処理で通常行われること 将来の推計をするために,合理的な範囲で広くデータの母集団を収集すべきことから適当であるし,渇水の影響を受けたと思われる年のデータを傾向からはずれたものとして捨象した点も,統計処理で通常行われることで合理的である。 これによると,昭和50年から平成6年までの年増加量は4.9L/人/日/年である(乙67・2-1)。そして,これを有効率で除することにより,日平均給水量原単位ベースの年増加量が算出できるところ,本件事業認定時直近の平成7年度における東海地域での有効率の実績値は0.9(乙68,乙115-226頁)であるから,これを用いて除すると,日平均給水量原単位ベースの年増加量は,4.9L/人/日/年÷0.9=約5.4L/人/日/年となる。この値を用いて大垣地域,名古屋・尾張地域の1人1日当たり平均給水量を推計した。 a 大垣地域の1人1日当たり平均給水量大垣地域の平成7年度の日平均給水量原単位の実績値は388L/人/日(乙69)であり,これを基に平成30年度の将来値を算出した。 日平均給水量原単位の推計値(平成30年度)388L/人/日+5.4L/人/日/年×23年=約512L/人/日b 名古屋・尾張地域の1人1日当たり平均給水量名古屋・尾張地域の平成7年度の日平均給水量原単位の実績値377L/人/日(乙72-9頁)を基に日平均給水量原単位の年増加量5.4L/人/日/年を加算することにより将来値を算定した。 名古屋・尾張地域の平成7年度の日平均給水量原単位の実績値377L/人/日(乙72-9頁)を基に日平均給水量原単位の年増加量5.4L/人/日/年を加算することにより将来値を算定した。 日平均給水量原単位の推計値(平成30年度)377L/人/日+5.4L/人/日/年×23年=約501L/人/日C 将来需要量の推計年間を通じて安定的に水道用水の供給を確保するためには,ピーク時の需要に対応できるようにすることが必要である。このため,負荷率(平均給水量と最大給水量との比)を用いて,日平均給水量を日最大給水量に換算する必要がある。 そこで,Aで求めた将来の給水人口にBで求めた将来の日平均給水原単位を乗ずることにより,日平均給水量ベースの将来需要量を算出し,これを負荷率で除して日最大給水量に換算することにより,将来時点における水道用水の需要量を算定した。 将来需要量=将来の給水人口×将来の日平均給水量原単位÷負荷率a 大垣地域の水道用水の需要量推計Aa及びBaで推計した将来給水人口及び日平均給水量原単位の推計値並びに負荷率を基に,大垣地域における水道用水の将来需要量を算出する。 大垣地域の水使用の形態は名古屋地域に近いものと考えられるから,名古屋・尾張地域と同値を用いて負荷率を推計した。名古屋市上水道事業の過去10年間(昭和60年度から平成7年度)における負荷率の実績は,74から80%の範囲となっているが(乙70),負荷率は気象等の影響を受けて変動することから,計画上の余裕を考慮して70%とした 。なお, 成7年度)における負荷率の実績は,74から80%の範囲となっているが(乙70),負荷率は気象等の影響を受けて変動することから,計画上の余裕を考慮して70%とした 。なお,長期的,先行的に水資源開発を進める立場から,余裕を考えて将来の負荷率を設定することは当然であり,名古屋地域の負荷率の過去10年間における最低値が74%であることから,本件水需要予測において将来の負荷率を70%としたもので合理的である。 将来需要量の推計値(平成30年度)44万人×512L/人/日÷0.7=約32万‰/日b 名古屋・尾張地域の水道用水の需要量推計Ab及びBbで推計した将来給水人口及び日平均給水量原単位の推計値並びに負荷率を基に,名古屋・尾張地域における水道用水の将来需要量を算出する。負荷率はaと同じく70%とした。 将来需要量の推計値(平成30年度)404万人×501L/人/日÷0.7=約289万‰/日次に,こうして推計した将来需要量を名古屋・尾張各地域ごとの需要量に分配する。分配に当たっては,最近の両地域の日最大給水量の実績値を用いて按分することとした。両地域の日最大給水量の実績値の割合(平成5年度から平成7年度までの平均)は,名古屋地域では63.8%,尾張地域では36.2%であるのでこの割合を用いた。 平成30年度における両地域の需要量名古屋地域 289万‰/日×0.638 6.2%であるのでこの割合を用いた。 平成30年度における両地域の需要量名古屋地域 289万‰/日×0.638=約184万‰/日尾張地域 289万‰/日×0.362=約105万‰/日こうして推計した需要量のうち名古屋地域については,ほぼ全量を名古屋市水道事業によっているため,上記の算出値がそのまま名古屋地域における需要量となる。 他方,尾張地域については,愛知県水道事業によるもののほか,地下水,伏流水によるもの等他の供給源によるものが含まれることから,愛知県水道事業に係る需要量を算出する必要がある。平成7年度の尾張地域の1日最大給水量実績のうち,愛知県水道事業以外に係るものは約30万‰/日である(乙72-11頁)。このうち大半は地下水,伏流水によるものであり,尾張地域が我が国有数の地盤沈下地域であることから,将来,地下水の取水増加は考え難い。そこで,将来における地下水等の取水量は現在と同量であると仮定して,尾張地域における愛知県水道事業に係る需要量を推計した。 尾張地域における愛知県水道事業に係る将来需要量105万‰/日-30万‰/日=約75万‰/日(イ) 工業用水の需要量推計将来時点における工業用水(淡水)の需要量(将来淡水補給量)を推計する手法としては,将来の工業出荷額に将来の工業出荷額当たりの水需要量(補給水原単位)を乗じる手法 需要量推計将来時点における工業用水(淡水)の需要量(将来淡水補給量)を推計する手法としては,将来の工業出荷額に将来の工業出荷額当たりの水需要量(補給水原単位)を乗じる手法が一般に用いられるが,工業用水の場合は使用した水(淡水使用量)の一部が循環利用等により回収,再利用されているので,工業出荷額当たりの水需要量(補給水源単位)を推計するためには,この回収,再利用される回収水の淡水使用量に対する割合(回収率)を考慮して推計する必要がある。 A 工業出荷額の将来推計将来の工業出荷額は,過去の実質工業出荷額のトレンドを基に推計する。 a 大垣地域の工業出荷額工業出荷額の将来推計に当たっては,これが経済指標の要素であることから実質伸び率を用いて推計することが合理的である。大垣地域の昭和60年度及び平成7年度の実質工業出荷額は,平成7年度の価格換算でそれぞれ0.8兆円,1.02兆円であり(乙74-D欄),過去10年間の平均伸び率を求めると年率2.4%となる(乙74-欄外)。この伸び率は,過去の工業出荷額のトレンドを示すものであり,この伸び率が今後も継続するものとして将来の工業出荷額を推計した。 工業出荷額の将来推計値(平成30年度)1.02兆円×(1.024)23 =約1.76兆円b 名古屋地域の工業出荷額工業出荷額の将来推計に当たっては,過去10年間の実質伸び率を用いて推計した。名古屋地域の昭和60年度及び平成7年度の実質工業出荷額は,平成7年度の価格換算でそれぞれ4.2兆円,5.6兆円であり(乙75-D欄),これから過去10年間 去10年間の実質伸び率を用いて推計した。名古屋地域の昭和60年度及び平成7年度の実質工業出荷額は,平成7年度の価格換算でそれぞれ4.2兆円,5.6兆円であり(乙75-D欄),これから過去10年間の平均伸び率を求めると年率2.7%となる(乙75-欄外)。この伸び率は,過去の工業出荷額のトレンドを示すものであり,この伸び率が今後も継続するものとして将来の工業出荷額を推計した。 工業出荷額の将来推計値(平成30年度)5.6兆円×(1.027)23=約10.3兆円以上のとおり,バブル景気前,バブル景気の絶頂期及びバブル崩壊後の低成長期のすべてを含む昭和60年から平成7年までの実績値からそのトレンドを評価判断し,その動向に基づいて将来の工業出荷額を推計した手法に誤りはなく,大垣地域の工業出荷額の伸び率を年平均2.4%,名古屋地域の伸び率を年平均2.7%とした推計結果も,経済成長率として穏当な数値で過大ではないから,上記推計は合理的である。 B 工業出荷額当たり需要量(補給水原単位)の将来推計工業用水は,業種によっては再利用が進んでおり,使用した淡水の一部を循環利用等により回収,再利用しているため,工業用水の需要量を算出するに当たっては,延べの値である淡水使用量から回収再利用分を差し引いた水の量(淡水補給量)に換算する必要がある。 このため,まず,各年の使用水量の実績値を実質工業出荷額で除して各年の工業出荷額当たりの工業用水使用水量(使用水原単位)を求め,次に,使用水原単位の過去の実測値のトレンドからこの使用水原単位の将来値を推計した。 その上で更に回収率の将来推計値を用いて工 で除して各年の工業出荷額当たりの工業用水使用水量(使用水原単位)を求め,次に,使用水原単位の過去の実測値のトレンドからこの使用水原単位の将来値を推計した。 その上で更に回収率の将来推計値を用いて工業出荷額当たりの水需要量(補給水原単位)の将来推計値を算出した。 回収率とは,循環利用等により再利用される回収水の淡水使用量に対する割合であるが,回収率についても過去の実績値のトレンドからその将来値を推計した。 将来の工業出荷額当たりの水需要量(補給水原単位)=将来の工業出荷額当たりの工業用水使用水量(使用水原単位)×(1-回収率の将来推計値)a 大垣地域の補給水原単位(a) 使用水原単位についてまず,使用水原単位を算出するため,大垣地域における昭和60年度から平成7年度までの使用水量実績を各年の工業出荷額を平成7年価格に換算して求めた実質工業出荷額で除し,これによって求められた使用水原単位の動向を評価判断したところ,平成3年度から平成7年度までの使用水原単位にはほとんど変化が認められなかった(乙115-79頁)。そこで,今後も平成7年度の使用水原単位の実績値である55.4‰/日/億円に近似した数値をもって推移していくものと予測し,これを将来値として推計した。 本来使用水原単位は,産業構造の大転換がない限り大きく変動する性質のものではないところ,東海地方においてこのような大転換があったと認められず,近い将来にこれがあるとも認められないので,上記の予測,推計は合理的である。 (b) 回収率について回収率についても大垣 転換があったと認められず,近い将来にこれがあるとも認められないので,上記の予測,推計は合理的である。 (b) 回収率について回収率についても大垣地域における過去の実績値のトレンドをみると,昭和60年度から平成7年度まで過去10年間にわたってほとんど変化が認められなかったため(乙74-H欄),今後も平成7年度の回収率の実績値である34.2%の近似値をもって推移していくものと予測し,これを将来値として推計した。 回収率の向上は,行政や産業界の支援策等が存在しない以上,企業の自主的な取組みに委ねざるを得ず,過去の実績を無視して向上すると仮定することはできないから,上記推計は合理的である。 (c) 補給水原単位について上記使用水原単位の将来値及び回収率の将来値を用いて次のとおり,大垣地域における平成30年度の補給水原単位を推計した。 補給水原単位の推計値(平成30年度)55.4‰/日/億円 ×(1-0.342)=約36.5‰/日/億円b 名古屋地域の補給水原単位(a) 使用水原単位について名古屋地域においても大垣地域と同じ手法で補給水原単位の将来値を予測した。 まず,使用水原単位を算出するために,名古屋地域における昭和60年度から平成7年度までの使用水量実績をそれぞれ各年の実質工業出荷額(乙115-78頁)で除し,これによって求められた使用水原単位のトレンドを評価判断したところ,平成3年度か 屋地域における昭和60年度から平成7年度までの使用水量実績をそれぞれ各年の実質工業出荷額(乙115-78頁)で除し,これによって求められた使用水原単位のトレンドを評価判断したところ,平成3年度から平成7年度までの使用水原単位のトレンドには大きな変化が認められなかった。 そこで,今後も平成7年度の使用水原単位の実績値である31.2‰/日/億円に近似した数値をもって推移していくものと予測し,これを将来値として推計した。 (b) 回収率について次に,回収率についても,名古屋地域における過去の実績値の動向を検討したところ,昭和60年度から平成7年度まで過去10年間にわたって約80%を上限とし,平成2年以降はむしろ若干の減少傾向が認められる(乙115-78頁)。したがって,今後も名古屋地域の回収率は,80%前後で推移していくと予測し,これを将来値として推計した。 (c) 補給水原単位についてこれらを用いて名古屋地域における平成30年度の補給水原単位を推計した。 補給水原単位の推計値(平成30年度)31.2‰/日/億円×(1-0.8)=約6.2‰/日/億円C 将来需要量の推計工業用水の将来需要量(将来淡水補給量)は,Aで求めた将来の工業出荷額にBで求めた将来の補給水原単位を乗ずることによって算出する。 将来工業用水需要量(将来淡水補給量)=将来の補給水原単位×将来の工業出荷額a 大垣地域の工業用水の需要量 とによって算出する。 将来工業用水需要量(将来淡水補給量)=将来の補給水原単位×将来の工業出荷額a 大垣地域の工業用水の需要量推計Aa及びBaで推計した将来の工業出荷額及び補給水原単位を基に大垣地域における工業用水の将来需要量を推計した。 将来需要量の推計値(平成30年度)36.5万‰/日×1.76兆円=約64万‰/日b 名古屋地域の工業用水の需要量推計Ab及びBbで推計した将来の工業出荷額及び補給水原単位を基に名古屋地域における工業用水の将来需要量(淡水補給量)を推計した。 将来需要量の推計値(平成30年度)6.2万‰/日×10.3兆円=約63.9万‰/日こうして推計した淡水補給量には,名古屋市工業用水道事業によるもののほか,名古屋市水道事業,愛知県工業用水道事業からの受水等他の供給源によるものが含まれることから,名古屋市工業用水道事業に係る需要量を算出する必要がある。 平成7年における淡水補給量の水源別内訳のうち地下水については,名古屋地域が我が国有数の地盤沈下地域であることから,将来地下水取水量が増加することは考え難いため,今後の需要増に対しては残りの水源で対応するものとした。同年における水源別補給量の実績値のうち地下水を除いた26.5万‰/日に占める名古屋市工業用水道事業の割合は約28.7%であるところ,今後の需要増に対しては 対しては残りの水源で対応するものとした。同年における水源別補給量の実績値のうち地下水を除いた26.5万‰/日に占める名古屋市工業用水道事業の割合は約28.7%であるところ,今後の需要増に対しては,この割合でそれぞれの水源が対応するものと仮定し,名古屋市工業用水道事業に対する将来需要量を推計した。将来需要量から地下水依存分を減じた淡水補給量は,63.9万‰/日-8.9万‰/日=55万‰/日となるので,名古屋市工業用水道事業に係る将来需要量は,次のとおりとなる。 将来需要量の推計値(平成30年度)55万‰/日×0.287=約16万‰/日本件水需要予測で用いた工業出荷額,使用水原単位及び回収率を説明変数とする推計手法は,一般的に用いられているものであり,建設省(当時。以下同じ。)「河川砂防技術基準(案)」(以下「技術基準案」という。)に示されている合理的なものである。 ウ建設大臣が考慮したその他の事情建設大臣は,本件事業による都市用水の確保の必要性を判断する上で,以下の事情も考慮した。 (ア) 近年の少雨化傾向に対応した渇水対策の必要性A 近年の木曽川水系における渇水被害の状況木曽川水系では,近年,降水量が減少傾向にあり毎年のように渇水による被害が頻発している。特に,平成6年渇水では,取水制限率が農業用水で65%,水道用水で35%,更に工業用水で65%と過去最悪の状態となり,愛知県の11市10町において初めて時間給水に陥るという深刻な事態となり,木曽川水系に水源を依存する地域において約590万人の市民が節水を強いられた。ま ,更に工業用水で65%と過去最悪の状態となり,愛知県の11市10町において初めて時間給水に陥るという深刻な事態となり,木曽川水系に水源を依存する地域において約590万人の市民が節水を強いられた。また,工場等の事業所では一部運転休止などにより,約300の事業所で合計約300億円という大きな損害が発生するなど,木曽川に依存する地域の市民生活,経済活動に計り知れない影響がもたらされた。 B 利水安全度の低下ダム等の水資源開発施設の計画に当たっては,一般に,利水安全度10分の1で計画されている。ところが,近年,少雨化傾向にあり,ダム等の水資源開発施設が,計画された開発水量を安定的に供給できない年が多くなってきており,利水安全度が低下している。 木曽川水系では,最近の降水実績を基に利水安全度を計算すると,既存ダムすべてを活用しても,その開発水量の全量に水利権が設定されていないにもかかわらず,利水安全度は3分の1にとどまっている。 (イ) 地盤沈下対策の必要性我が国最大の海抜ゼロメートル地帯を抱える濃尾平野において,名古屋を中核にした産業の飛躍的発展に伴い大量の地下水が利用されたため,自噴水が次第に姿を消し,次いで地下水位が低下して地盤沈下が発生した。 木曽川水系で利用されてきた地下水は主に被圧地下水であり,被圧地下水を過剰揚水したことにより帯水層内の地下水位が急激に低下し,被圧地下水の圧力が低下し,それを補うために粘土層の土中に含まれる水が絞り出され,粘土層内の土粒子間が収縮し,その結果として地盤沈下が発生する。このような地盤沈下は,洪水・内水氾濫等の災害,塩水の遡上等を引き起こし,建物や道路・橋梁等の交通施設,ガス・水道等の 水が絞り出され,粘土層内の土粒子間が収縮し,その結果として地盤沈下が発生する。このような地盤沈下は,洪水・内水氾濫等の災害,塩水の遡上等を引き起こし,建物や道路・橋梁等の交通施設,ガス・水道等の地下埋設施設等の構造物に被害をもたらす。 そこで,地盤沈下抑制のため,国においては,総合的な地盤沈下防止対策を推進するため,昭和60年4月26日の関係閣僚会議決定において濃尾平野地域地盤沈下防止等対策要綱(昭和60年地盤沈下防止等対策関係閣僚会議決定,乙41。以下「沈下対策要綱」という。)が策定され,これに基づき地下水採取の抑制が講じられてきた。 しかし,平成6年渇水時には,河川水の取水制限を補うため大量の地下水が汲み上げられ,本件事業の都市用水供給予定地域である大垣地域の観測点では,平成6年度に4.6㎝の沈下,愛知県尾張地域や名古屋市においても約2㎝の沈下が生じており,2㎝以上の沈下発生面積は約77k㎡に及んでいる。 沈下対策要綱では,地下水採取目標量を設定し,目標量以内に抑制するための諸施策を推進することとしており,これらの施策の一つとして,水源の表流水への転換を掲げ,代替水源の確保に係る事業として本件事業が明記されている。 (ウ) 長期的・先行的な水資源開発の必要性水資源開発施設の計画を進めるに当たっては,事業者,利水者間で十分な調整を行う必要があり,また,開発の適地が希少で代替性に乏しく,複雑な権利関係を調整して初めて建設が可能となる上,計画から完成に至るまで長期間を要する。このため,このような施設の整備は,一時的な経済の変動や水需要の状況に左右されることなく,長期的な観点に立って立案されるべきである。 また,水資 完成に至るまで長期間を要する。このため,このような施設の整備は,一時的な経済の変動や水需要の状況に左右されることなく,長期的な観点に立って立案されるべきである。 また,水資源開発は,需給がひっ迫してから整備を行った場合,施設が完成するまでの間は都市用水等の安定的な供給が阻害されるから,将来の経済,社会の発展にも対応できるよう,先行的に開発を進めることが重要であるから,ある時点において,一時的に水の需要量と供給量に差があることは当然である。 (エ) 木曽川水系で建設が予定されている唯一の水資源開発施設現時点においては,木曽川水系では本件事業以外には水資源開発を目的に含むダム等の建設は予定されていない。仮に,今後,木曽川水系において新たなダム等の水資源開発施設が計画されたとしても,その完成には長期間を要するから,供給予定地域の水需要に対応できる施設である徳山ダムによる開発水量は重要である。 (オ) 本件事業の供給予定地域における将来展望我が国の三大都市圏の一つである中部圏は,第五次全国総合開発計画において,その発展の基本方向を「先端的産業技術の世界的中枢としての役割りを果たし,全世界を対象に多様な交流が活発に行われる地域」とされており,この開発整備の基本方針に沿い,本地域では,東海環状自動車道が事業化されるなど,各種産業の立地や人口の増加等により,今後も着実に発展することが期待されている。 水道用水の使用量は,こうした中部圏の将来展開並びに核家族化や下水道整備に伴う水洗トイレ化の進展などの生活水準の向上,オフィスやホテルなどの都市施設の高度化などを勘案すると,今後も増加基調で推移するものと考えられる。 (2) 流水の正常な機能の維持 水道整備に伴う水洗トイレ化の進展などの生活水準の向上,オフィスやホテルなどの都市施設の高度化などを勘案すると,今後も増加基調で推移するものと考えられる。 (2) 流水の正常な機能の維持ア流水の正常な機能の維持の公益性(ア) 流水の正常な機能の維持の必要性A 不特定容量河川管理は,河川法に基づき,舟運,漁業,地下水位の維持,流水の清潔の保持等の流水の機能を低水時にも正常に維持するという観点から行わなければならない。そのため,当該河川の有する諸機能を総合的に考慮し,渇水時において維持すべきであるとして定められた流量(維持流量)と,維持流量が定められた地点より下流における既得水利権量の確保のために必要な流量(水利流量)の両方を満足する流量(正常流量)が,当該河川の主要な地点で確保される必要がある(河川法1条,16条,河川法施行令10条。乙34の1)。そこで,河川管理者は,本来河川が持っている機能を満足する最低限の流況を確保するため,様々な河川環境を維持するために必要な流量(維持流量)を確保するほか,農業用水等の既得用水を確保するための流量(水利流量)を保全することが必要である。このため,10年に1回程度の河川流量の少ない年を利水基準年として定め,この利水基準年においてこれらを満足する流量(正常流量)を確保できない場合には,ダム等によって補給(不特定補給)することが必要となる。これにより河川の流水の正常な機能が維持されるのであり,このためのダム容量が不特定容量である。 不特定容量は,水道,工業用水のように特定の利水者への補給が目的ではないという意味で不特定容量と呼ばれ ,通常計画目標とされる10年に1回程度発生する規模の渇水時におい 不特定容量は,水道,工業用水のように特定の利水者への補給が目的ではないという意味で不特定容量と呼ばれ ,通常計画目標とされる10年に1回程度発生する規模の渇水時においても,流水の正常な機能の維持が可能となるように設けられる。 B 渇水対策容量河川管理において,通常計画目標とされる10年に1回程度発生する規模の渇水を超える異常渇水時においても,流水の正常な機能を維持するため最低限必要な維持流量をダム等により確保し,緊急水を補給できるような措置を講じることが必要となる場合がある。このような異常渇水時に安全に水を確保できるように異常渇水対策がとられ,そのためにダムに貯留する容量を渇水対策容量という。不特定容量は,計画規模の渇水以内の渇水に対応するものであるのに対し,渇水対策容量は,計画規模を超えるような異常渇水時に出動するものである。 (イ) 木曽川水系における渇水の状況我が国は,梅雨期や台風期に降雨が集中し,河川の勾配が急で流路延長が短い等といった,安定的な水資源の確保を図る上で気象的・地理的に不利な国土条件にあるところ,近年の少雨化傾向という自然的要因,ひっ迫する水需要に急激に対応してきたという社会的要因によって,木曽川水系においても渇水が頻発している。 A 自然的要因平成8年2月,建設省は,全国の主要な一級水系に水道水源を依存している地域を対象に,現況の都市用水の水需要及びダム等の施設能力の下での利水安全度を算定して発表したが,その結果,木曽川水系では,3年に1回程度発生する規模以上の渇水に対しては安定的に取水することができない(利水安全度3分の1)という結果であった。このような利水安全度の低下が,木曽川水系 発表したが,その結果,木曽川水系では,3年に1回程度発生する規模以上の渇水に対しては安定的に取水することができない(利水安全度3分の1)という結果であった。このような利水安全度の低下が,木曽川水系において渇水が頻発する原因の一つであり,同水系においては利水安全度の回復が課題となっている。 B 社会的要因急激な都市用水の需要の増加に対応しようとすれば,農業用水を中心とする既存利水者,都市用水に係る新規利水者の双方に対して必要な安全度が確保されるように,ダム等の水資源開発施設に不特定容量と新規利水容量を確保することが望ましい。しかし,昭和30年代半ばから同40年代にかけての経済成長と人口増加が余りにも急激過ぎ,大量の都市用水を早急に供給してほしいという要請が社会から強力になされ,この要請に応えるために,不特定容量の確保は後回しとされた。このため,木曽川水系のダムは,最近になって運用開始されたものを除いて不特定容量を有しておらず,木曽川水系は,渇水に弱い地域となっている。 (ウ) 徳山ダムによる流水の正常な機能の維持A 不特定容量による効果徳山ダムは,揖斐川の流水の正常な機能を維持するため,不特定容量として,洪水期は約5800万‰,非洪水期は約1億0700万‰の容量が確保される。この容量により,10年に1回程度発生する規模の渇水時においても,α2地点で17‰/S,α3地点で10‰/Sの流量が確保できるように計画されている。 この不特定容量による効果は,徳山ダム完成後につき試算すると,最小流量は,昭和23年と同37年を除けば17‰/Sを概ね満足しており,昭和17年から同42年までの26か年のうち3番目に少ない この不特定容量による効果は,徳山ダム完成後につき試算すると,最小流量は,昭和23年と同37年を除けば17‰/Sを概ね満足しており,昭和17年から同42年までの26か年のうち3番目に少ない渇水のときにも概ね17‰/Sが確保できる。17‰/Sというのは上記26年間のうち3番目の流量であるから,概ね10分の1の安全度が確保できることを表している。 これによって,西濃用水などの揖斐川における既得用水が安定的に取水可能となるとともに,河川環境の維持に寄与する。 B 渇水対策容量による効果また,徳山ダムは,揖斐川だけではなく木曽川及び長良川を含めた木曽三川において近年頻発する渇水状況に対処するため,10年に1回程度発生する渇水の規模を超える異常渇水時に木曽川水系の流水の正常な機能を維持するため,渇水対策容量として,洪水期,非洪水期にかかわらず,約5300万‰の容量を確保するよう計画されている。 徳山ダムは,事業実施方針において,洪水期は約1億8200万‰,非洪水期は約2億1900万‰を利水容量としたが,その後,ダム審が示した「徳山ダム建設事業の今後の進め方について」において,「渇水に強い木曽川水系とするため,徳山ダムの渇水対策容量について,徳山ダムによる新規開発水量のうち名古屋市の水道用水を3‰/S減量する分に相当する容量を充当する」とされたことから,平成9年12月に事業実施方針の変更の指示がなされ,この3‰/Sに相当する利水容量5300万‰を渇水対策容量としたが,上記容量は合理的であり,これを機動的に運用することにより,異常渇水時において有効な渇水対策が可能となる。 近年 としたが,上記容量は合理的であり,これを機動的に運用することにより,異常渇水時において有効な渇水対策が可能となる。 近年,木曽川水系においては,降水量が減少傾向にあり渇水が頻発しており,しばしば長期にわたる取水制限を余儀なくされ,市民生活,経済活動に著しい影響を与えているほか,魚類を始め河川環境にも大きな影響を与えている。 特に平成6年渇水では,木曽川の河川流量は平年値を大きく下回って,維持流量を大きく下回り,木曽川に依存するこの地域の市民生活,経済活動に与えた影響は計り知れないものがあった。揖斐川においても,平成6年7月中旬から9月中旬にかけてα2地点の観測流量が0‰/Sとなる日があり,揖斐川本川で水が涸れるという異常事態となった。仮に,この当時に徳山ダムの渇水対策容量が確保されていれば,木曽川及び揖斐川の維持流量の改善に向けた緊急水の補給が可能となったものである。 C 不特定容量及び渇水対策容量の他水系との整備状況比較揖斐川を含む木曽川水系は,他の主要な一級河川水系と比較しても,不特定容量や渇水対策容量が劣っており,これを補強することが必要である。 (3) 洪水調節ア揖斐川の治水対策の必要性我が国において,①降水量が多く,梅雨時や台風時に集中して多量の雨が降るという気象条件,②国土が狭く細長いことに加え,中央部に急峻な山脈が縦断しているため,多量の雨水が一気に河道を流れるという地形条件,③太古の昔は海であった所に洪水により運搬された土砂が堆積して形成された沖積平野に,人口・資産が集中し,高度に土地利用がなされ,社会・経済活動が営まれているという社会条件により,古来から今日に至るまで洪水の被 海であった所に洪水により運搬された土砂が堆積して形成された沖積平野に,人口・資産が集中し,高度に土地利用がなされ,社会・経済活動が営まれているという社会条件により,古来から今日に至るまで洪水の被害が絶えない。特に,沖積平野において河川の氾濫によって被害が生じないようにするために堤防を築くと,河川を堤防で閉じ込める結果,洪水によって山地から運ばれてくる土砂は河床に堆積して河床の上昇をもたらし,これに対して,堤防を嵩上げして河川の氾濫による被害を防ぐことが行われてきた。このように,河床の上昇と堤防の嵩上げを繰り返すと,いわゆる「天井川」となって洪水時は背後地盤より高い水位で洪水が流れるため,万一河川が氾濫した場合には甚大な洪水被害を被ることになる。 一級河川木曽川水系の木曽川,長良川,揖斐川の三川は,5県に流域を持ち,約9100k㎡の流域面積を有する我が国有数の大河川である。これら三川は,水源こそ遠く離れているが,それぞれ濃尾平野に流れ込み,広大な平野を貫流して,ほとんど同一地点に集まって伊勢湾に注いでいることから,「木曽三川」と呼ばれている。揖斐川は,これら木曽三川の中で最西端に位置し,その源を岐阜県と福井県の県境の冠山に発し,坂内川,粕川,根尾川,牧田川,津屋川,大江川,多度川,肱江川等と合流して,伊勢湾に注ぐ幹線流路延長約121㎞,流域面積約1840k㎡の河川である。 乙15-3頁の「木曽川水系年平均降水量の地域分布図」により,木曽三川流域の降水量の地域分布特性を見ると,特に揖斐川流域の年平均降水量は木曽三川の中で最も多く,上流域は年平均降水量が3000㎜以上にもなり,日本の年平均降水量1714㎜をはるかに超えている。また,木曽三川の出水原因の多くが南西から北東に通過する低気圧及び台風であるため,降雨は西に位置す く,上流域は年平均降水量が3000㎜以上にもなり,日本の年平均降水量1714㎜をはるかに超えている。また,木曽三川の出水原因の多くが南西から北東に通過する低気圧及び台風であるため,降雨は西に位置する揖斐川流域から降り始め,揖斐川は,木曽三川の中で最も流路延長が短く,河床の縦断勾配も急なことから,最も早く洪水が発生する傾向にある。しかも,揖斐川は,濃尾平野を流下する中下流域では洪水時の河川水位が周辺の地盤高よりかなり高いため,洪水時に万一堤防が決壊すると,洪水流は地盤高の低い市街地や耕作地等に氾濫し,大きな浸水被害を及ぼすおそれがある。 イ工事実施計画における揖斐川の治水計画一般に,治水対策としては,長期的な整備目標(計画)を定め,目標とする洪水を設定して,その洪水に対して安全であるように河川整備を進めることになるが,河川法は,水系ごとに工事実施基本計画の策定を義務付け,かかる工事実施基本計画において,基本高水並びにその河道及び洪水調節ダムへの配分に関する事項,主要な地点における計画高水流量に関する事項等について定めることとされている。 そして,揖斐川の治水計画は,木曽川水系工事実施基本計画(乙231。以下「工事実施計画」という。)によるものであり,昭和40年3月に決定され,その後部分改訂を経て,現在のものは平成6年6月に部分改訂されて決定されたものである。平成9年に河川法が改正され,従来の工事実施計画に代わって河川整備基本方針(河川法16条)及び河川整備計画(河川法16条の2)を策定することとされたが,木曽川水系ではまだ河川整備基本方針等が策定されておらず,改正に伴う経過措置(河川法の一部を改正する法律〔平成9年法律第69号〕)附則2条1項)として,従来の工事実施計画の一部が河川整備 とされたが,木曽川水系ではまだ河川整備基本方針等が策定されておらず,改正に伴う経過措置(河川法の一部を改正する法律〔平成9年法律第69号〕)附則2条1項)として,従来の工事実施計画の一部が河川整備基本方針等とみなされている。 (ア) 治水上の計画目標揖斐川の治水上の計画目標は,100年に1回の確率(年超過確率1/100)で発生する可能性のある洪水に対応できることである。乙15-6頁の「全国の主要河川における計画目標」のとおり,全国的に見て主要な一級河川の中には1/150,1/200という安全度の高い計画目標を設定しているものが多いことと比べ,揖斐川の1/100という計画目標は,全国の主要河川の規模から見て低い水準である。 (イ) 計画降雨量の設定揖斐川流域において,雨量データが存在している明治26年から昭和40年までの73年間における各年の流域平均2日雨量の最大値から統計学的手法を用いて年超過確率100分の1,すなわち本流域で平均して100年に1回の確率で発生する可能性がある2日雨量395㎜(計画降雨量)を算出している。なお,計画降雨の継続時間については,1日から3日を採用する場合が多く,主要河川においては2日を採用した例が多いことから,揖斐川においても2日を採用している。 (ウ) 計画降雨群の設定降雨の時間分布及び地域分布が異なる5つの降雨パターン(昭和28年9月,昭和34年8月,同年9月,昭和35年8月,昭和40年9月)を代表的なものとして選定し, その際の実際の降雨量を計画降雨量395㎜となるように引き伸ばして計画降雨群を設定している。 (エ) 基本高水の設定 を代表的なものとして選定し, その際の実際の降雨量を計画降雨量395㎜となるように引き伸ばして計画降雨群を設定している。 (エ) 基本高水の設定計画降雨群を,全国的に見ても利用例が多い降雨量と流量の関係を表す流出解析モデルを適用して,計画降雨群によるα2地点の洪水流量の時間的変化を示すハイドログラフ群を作成している。このハイドログラフ群のうち,α2地点のピーク流量が最大となるのは,昭和34年9月洪水を基にしたハイドログラフであり,そのピーク流量が6300‰/Sとなる。したがって,揖斐川のα2地点の基本高水には,この昭和34年9月洪水型のハイドログラフが採用され,基本高水のピーク流量が6300‰/Sとされた。 徳山ダムを含む揖斐川の治水計画では,地域的・時間的分布が異なる5つの降雨パターン(計画降雨〔群〕)について流出計算を行い,各基準地点のピーク流量が最大となったものを当該基準地点の基本高水としている。すなわち,代表5洪水の中でピーク流量が最大となる洪水の降雨パターンは安全に流下することはもちろん,ほかの4つの異なる洪水の降雨パターンについても安全に流下させることができるように計画されている。 (オ) 計画高水流量の設定計画高水流量とは,基本高水をダム等の洪水調節施設により調節した後の河道の最大流量をいい,これを安全に流下させることが治水計画の基本となる。ところで,現在の河道の形状は永年の治水の努力の過程における洪水の経験から得られた洪水への対処の集積として形成されてきたものであることから をいい,これを安全に流下させることが治水計画の基本となる。ところで,現在の河道の形状は永年の治水の努力の過程における洪水の経験から得られた洪水への対処の集積として形成されてきたものであることから,これを無視して,全川にわたって全く新しく作り直すという河川改修の方法は,経済的,社会的にも治水技術上も合理的でない。このため,揖斐川の治水計画において,計画高水流量は,原則として昭和38年時点の計画に定められた各基準地点の流量を大きく変えないで,α2地点でも3900‰/Sと定められた。また,川幅はほぼ現状のままとして,浚渫,築堤等を行うとともに,基本高水のピーク流量6300‰/Sと計画高水流量3900‰/Sとの差である2400‰/Sについて,既設の横山ダム及び建設中の徳山ダムを含む上流ダム群で洪水調節を行うことにより洪水を軽減させることにしている。この結果,揖斐川の計画高水流量は乙15-6頁「揖斐川計画高水流量配分図」のとおりとなっている。 (カ) 河道計画の設定計画河道は,計画高水流量を安全に流すために必要な断面と平面形状を有するとともに,安定的に維持されるよう設定される。具体的には,計画高水流量を計画高水位以下の水位で流すことができるか,堤防の法線,縦横断形状が適切に設定されているかなどについて検討し,逐次修正を行いながら最良の河道計画を決定する。 A 計画高水位計画高水位は,沿川の地盤高を上回る高さを極力小さくし,既往洪水の最高水位以下に設定することが望ましいとされており,現在の堤防の形状は,通 A 計画高水位計画高水位は,沿川の地盤高を上回る高さを極力小さくし,既往洪水の最高水位以下に設定することが望ましいとされており,現在の堤防の形状は,通常経験し得る洪水位に対しては経験則上安全であると考えられていることも考慮して,既往最大の洪水位程度に設定されていることが多い。 揖斐川については,昭和38年時点の計画では,既往最高水位を記録した昭和34年9月洪水の実績水位を踏まえ,各基準地点の計画高水位が定められていたが,現計画でも,これらの水位を変えずに,α2地点でTP12.09m,α4地点TP7.96m等と決定されている。 B 水理計算河道内に計画高水流量が流下した場合の水位を計算するため水理計算を実施しているところ,一般に水理計算手法には, 等流計算,不等流計算,不定流計算があるものの,揖斐川のような大河川では,不等流計算を用いることが標準的な方法である。そして,不等流計算の基礎方程式は,次のとおりである。 dh = ib-n2/R4/3・(Q/A)2+α1Q2/gA3・∂A/∂xdx 1-α1Q2/gA3・∂A/∂hh:水深x:流れ方向の距離g:重力加速度Q:流量A:流水断面積α1:エネルギー補正係数i:河床勾配R:径深n:マニングの粗度係数C 粗度係数 α1:エネルギー補正係数i:河床勾配R:径深n:マニングの粗度係数C 粗度係数粗度係数とは,流水が河道を流下する際の抵抗の大きさを表す係数であり,一般に,河川の水理計算を行う際の粗度係数としては,河川の特性に適合し,扱いも簡便なマニングの粗度係数を用いる。 過去に当該河川が経験した洪水時の水位と流量の記録を基に不等流計算によって水位が適切に再現されるよう試行錯誤的に逆算して実績の粗度係数が求められるが,河川流水の作用,河川改修,植生の変化等により,その値が変化するため,固定値ではなく一定の幅を有する。このため,計画高水流量を流下可能な河道計画を検討する際に用いる粗度係数を設定する方法として,改修完了後の河道が既往洪水の発生当時の河道と大きく変わらない場合には,既往洪水の解析結果の中から最大となる粗度係数を採用するのが適当であるが,揖斐川は河道改修として河道掘削による河床の整正,既存の高水敷の整正により粗度の低下が想定されることを考慮し,既往洪水から推定された粗度係数を総合的に検討して河道計画を検討する際に用いる粗度係数とした。 D 堤防の法線揖斐川の堤防の法線は,沿川の土地利用状況,河道の維持,事業費等を勘案し,原則として昭和38年時点の計画に定められた平面計画を大きく変えないで定めている。 E 河道の縦横断形状揖斐川の河道の縦横断形状は,前記計画高水位,堤防の法線を基に,計画高水流量を計画高水位以下で安全に流下させることができるかどうか,不等流計算を用いながら現実 縦横断形状揖斐川の河道の縦横断形状は,前記計画高水位,堤防の法線を基に,計画高水流量を計画高水位以下で安全に流下させることができるかどうか,不等流計算を用いながら現実的な河道断面を技術的に検討することはもちろん,河道の縦横断形状は長期的に見ると洪水の履歴等に応じて変動するのが自然であり,局所的な深掘れを生じることもあるので,安定した河道を作るため堤内地盤高,地下水位,用水の取水位置や既設の重要構造物の敷高等に配慮し,さらに魚類等の遡上・降下,瀬や淵の形成等の生物の生息空間等にも配慮して定める。また,堤防の安全性等から複断面形状としている。 (キ) 徳山ダム建設による治水上の効果揖斐川の治水計画においては,浚渫,築堤等の河道改修とともに,基本高水のピーク流量と計画高水流量との差を徳山ダム及び横山ダム等の上流ダム群により調節することとしており,徳山ダムは,この上流ダム群の中の主要な施設として位置付けられている。具体的には,ダム建設地点における計画高水流量1920‰/Sのうち1720‰/Sを調節し,200‰/Sだけを下流に放流し,下流での洪水被害を防ぐこととし,このための洪水調節容量として約1億‰を確保するよう計画されている。 徳山ダム建設による揖斐川の治水上の効果としては,次のとおり,揖斐川の治水安全度の向上,下流等における洪水時の水位上昇の抑制という2つの効果がある。 A 治水安全度の向上治水安全度とは,現実の河川の状況,既存のダム等の現状等からみて,確率論的に何年に1回程度の洪水に対応できるかということである。揖斐川の治水安全度は,現況河道を 安全度の向上治水安全度とは,現実の河川の状況,既存のダム等の現状等からみて,確率論的に何年に1回程度の洪水に対応できるかということである。揖斐川の治水安全度は,現況河道を前提として,既設の横山ダムによる洪水調節機能を考慮すると,年超過確率で約15分の1で,15年に1回程度の洪水に対応できるが,徳山ダムが完成し,その洪水調節機能が加わると,年超過確率で約30分の1となり,30年に1回程度の洪水に対応できるようになる。 B 洪水時の水位上昇の抑制徳山ダムによる洪水調節機能により,乙15-10頁「ダムによる水位低下効果図」に示されるように,ダム下流のほぼ全川にわたり洪水時の水位が低下する。また,乙15-10頁「同図(α2地点横断図)」にみられるように,昭和34年9月洪水と同様の型の計画規模の洪水を想定した試算によれば,基準地点であるα2地点で,約1.4mの水位低下がある。同試算によれば,徳山ダムがない場合又は横山ダムのみがある場合には,堤防の高さぎりぎりまで水位が上昇することとなって破堤に至る危険性が極めて高いが,徳山ダムが完成すればこのような水位上昇を抑え,また,揖斐川本川の水位が低下することにより本川に流入する支川の水位の低下をもたらし,ポンプ等による内水の排水効果を高めることができ,治水上非常に有益である。 (ク) 代替案との比較揖斐川の治水対策の代替案としては,徳山ダムを建設せずに河道の計画高水流量を増大させる案として,引堤案(堤防を堤内地側に引いて川幅を広げる方法),堤防嵩上げ案(堤防を高くする方法),河床掘削増大案(河床を掘り下げる方法)の3つの案が考えられる。 しかし,引堤案は,大量の家屋 堤案(堤防を堤内地側に引いて川幅を広げる方法),堤防嵩上げ案(堤防を高くする方法),河床掘削増大案(河床を掘り下げる方法)の3つの案が考えられる。 しかし,引堤案は,大量の家屋移転と用地買収がほぼ全川にわたって必要で長期間を要することとなるし,堤防嵩上げ案は,現在よりも水位が高くなり堤防等に未知の力が加わるほか,内水排除が困難となり,多数の橋梁の架け替えが必要となる等の問題があり,河床掘削増大案は,既に相当程度河床を掘削するとされている現在の徳山ダム等による治水計画よりも,更に大規模な掘削となるほか,河床の安定性等について十分な検証が必要であり,橋脚の根入れが不足し多数の橋梁の架け替えを要する等の問題があり,結局,上記3案はいずれも揖斐川の流域の現状からすると,社会経済的に影響が大きく,現実性がないことから採用が困難であると結論づけられたものである。 このように,徳山ダム建設と河道改修による現在の揖斐川の治水計画は,他の代替案と比較しても最も経済的かつ合理的なものである。 (ケ) 揖斐川の現況流下能力現況流下能力とは,現況の河道において,すなわち,単純に堤防の強度等の条件を考慮せず,計画高水位以下の河積で流下させることができる最大の流量のことであり,河道形状は現状のままとし,ある仮定した洪水流量を流下させた場合の水位を不等流計算で計算し,もし,ある区間で計画高水位を超える場合には仮定した洪水流量を小さくして再び同じ計算を行い,これを繰り返して現況の河道において計画高水位以下で流せる最大の流量を算出する。 揖斐川の現況流下能力は,α2地点の少し下流の河口から35㎞から40㎞で3400‰/Sである。この計算は,出発水位を2.5mとし,平成4年, 以下で流せる最大の流量を算出する。 揖斐川の現況流下能力は,α2地点の少し下流の河口から35㎞から40㎞で3400‰/Sである。この計算は,出発水位を2.5mとし,平成4年,平成5年の実測に基づく現況河床を与件として,洪水の実績の粗度係数を使用して不等流計算により算出されたものであるが,同図から明らかなように,海から順に不等流計算により水位計算をしていくと,α2地点のやや下流で流量3400‰/Sの流量のときに計画高水位に触れる計算結果になっている。 前記のとおり,実績の粗度係数は,ある幅を有するとともに植生の変化等により値が変化するものであるから,現在の河道の流下能力を求める場合に用いる現況の粗度係数としては,現在の河道の状態を可能な限り反映できるものとして,計画高水位近くまで実際に水位が上昇した最近の大規模な洪水発生時の記録から推定された粗度係数を基本として設定する必要がある。さらに,このような実績粗度係数が複数存在する場合には,安全を考えてどのタイプの洪水も一応流下が可能となる値をとるべきであり,最大の値を用いることが適当である。 揖斐川の現況河道の流下能力算定に当たっては,計画高水位を超えた大きな規模で近年に発生した洪水の実績の粗度係数を全川にわたり検討し,現況の粗度係数として用いている。 このように,α2地点で3400‰/Sを超える流量となるときには,堤防や護岸の整備の基準となる計画高水位を超える危険な状態となり,洪水を安全に流下させることのできない状況となることが予想される。 ウ小括以上のとおり,治水対策として徳山ダム建設は必要である。 (4) 発電ア一般に,電力は経済社会活動を支えるために必要不可欠な 況となることが予想される。 ウ小括以上のとおり,治水対策として徳山ダム建設は必要である。 (4) 発電ア一般に,電力は経済社会活動を支えるために必要不可欠な基幹エネルギーであり,その低廉かつ安定的な供給は国民的な課題である。このため,電気事業者には電気事業法18条により供給義務が課せられており,中部電力株式会社等の一般電気事業者と電源開発株式会社等の一般電気事業者を補完する卸電気事業者とが相互に協調し,広域電源の開発を始めとする広域運営の拡大強化を推進する等,その供給責任を果たすべく最大限の努力がされている。 イ本件事業認定申請時において,東海地方を中心とする中部電力株式会社管内の最大需要電力は,年平均伸び率で約2.1%と予想された。この最大需要電力の今後の増加傾向に対応し,電力の安定供給を確保するため,供給予備率が約8%から10%となるよう,電源開発を着実に進める必要がある。 ウ徳山発電所(最大出力40万kW)は,上記電源開発の一環に位置付けられ,電源開発株式会社が建設するもので,電源開発促進法3条1項に基づき,電源開発基本計画の新規着手開発電源として,昭和57年12月開催の第90回電源開発調整審議会の議を経て決定されたものである。徳山発電所で発電される電力は,電源開発株式会社から中部電力株式会社に供給され,同社により管内へ供給される。徳山発電所の運転開始により,中部電力株式会社管内の平成20年度の電力需給バランスは,事業認定申請時の想定によると,供給力が3460万kWから3500万kWに,供給予備率が7.7%から8.9%となり,電力の安定供給のための供給力確保に寄与する。 徳山発電所は,徳山ダムの貯水池を上部調整池とし,下流に中部電力株式会社が別の 500万kWに,供給予備率が7.7%から8.9%となり,電力の安定供給のための供給力確保に寄与する。 徳山発電所は,徳山ダムの貯水池を上部調整池とし,下流に中部電力株式会社が別の事業として建設する杉原ダムの貯水池を下部調整池として,上部調整池からの河川流入水及び下部調整池から上部調整池への揚水分を発電に利用し,その後下流へ放流する混合揚水式発電所であり,水力発電の特性である起動・停止が頻繁にかつ短時間で行えること,出力の変化速度が速いこと等の優れた負荷追従特性も有している。 エ以上のように,徳山ダムは,出力調整能力に優れる揚水式発電所の特長を活かして,電力需要の変動時の調整力,電力需要ピーク時の供給力として電力の安定供給に重要な役割を担うとともに,河川流水の水力エネルギーを有効利用するもので,必要である。 3 本件起業地が本件事業の用に供されることにより失われる利益(1) 環境への影響と保全対策ア本件事業による環境への影響ダム事業による環境への影響は,ダム堤体,付替道路等の施設の存在による地形改変の影響,貯水池の出現による影響,設置された施設の供用に伴う水質変化・振動・騒音,貯水池及び放流設備の供用に伴う水温変化,富栄養化や付替道路交通による振動・騒音の影響等が考えられ,環境調査によって現状の環境を十分に把握し,現状改変に対する影響の評価を行うとともに,影響の程度に応じて環境保全対策が適切に実施される必要がある。 建設大臣は,本件事業の事業認定の審査に当たり,本件事業による環境への影響を考慮するため,環境調査や保全対策等の取組みについて,公団から提出された資料等を基に確認した。 イ本件事業における環境調査等の経緯 当たり,本件事業による環境への影響を考慮するため,環境調査や保全対策等の取組みについて,公団から提出された資料等を基に確認した。 イ本件事業における環境調査等の経緯(ア) 環境調査の経緯本件事業に係る環境調査については,昭和51年度から同53年度にかけて,動植物関係の専門家による生物相調査が行われ,その結果は,「岐阜県揖斐川上流域生物相調査報告書」として取りまとめられた。 公団は,前記生物相調査実施から年月が経過したこと等から,平成2年度から環境に関する文献調査等を実施するとともに,平成3年度以降,環境調査の実施と環境保全対策に対する指導・助言を得ることを目的として,当地域の環境に精通した専門家で構成する徳山ダム生物調査会を設置し,当調査会の指導・助言の下,生物相に関する現地調査を進めるとともに,具体的な環境保全対策の実施についての検討を進めた。また,ダムサイト地点の水質についても,昭和54年から継続して調査が実施されている。 本件起業地を含む周辺地域の大型猛禽類の調査については,平成8年8月に設置された「徳山ダムワシタカ類研究会」の指導・助言の下,徳山ダム周辺のワシタカ類の生息状況と繁殖期行動圏の内部構造を把握するための調査が実施された。 (イ) ダム審における環境に関する審議このような環境調査結果や環境保全対策等について,本件事業の目的・内容等について審議し,建設省中部地方建設局長,公団中部支社長に対して意見を述べることを目的として設置された徳山ダム建設事業審議委員会(以下「ダム審」という。)や同環境部会において審議がなされた。 環境部会は,本件事業に関する環境調査,環境保全対策 見を述べることを目的として設置された徳山ダム建設事業審議委員会(以下「ダム審」という。)や同環境部会において審議がなされた。 環境部会は,本件事業に関する環境調査,環境保全対策等について審議した上,ダム審に報告を行い,これを受けてダム審は,平成9年2月,今後の環境調査,環境保全対策等の実施に当たっては,環境部会の提言を尊重するとともに,ダム事業者において設置している徳山ダム環境調査会及び徳山ダムワシタカ類研究会を中心とする専門家の指導・助言を得て,環境の保全,特に貴重生物種等の保全に最大限配慮して事業を進めること,完成後についても,モニタリングを適切に実施し,関係者が連携し,良好な環境が確保されるようなシステムを構築していくことが必要であること等の委員会意見を取りまとめた。 公団は,これらを踏まえ,徳山ダム流域の環境を保全する上で重要な生育・生息環境を把握するための「生育・生息環境調査」を,平成9年度から平成10年度にかけて徳山ダム環境調査会の指導・助言を得ながら実施した。さらに,行動圏の内部構造の把握を行う大型猛禽類調査が終了した平成10年11月には,徳山ダム希少猛禽類保全対策の基本的な考え方について,徳山ダムワシタカ類研究会及び環境調査会の審議を経て,本件事業に関係する各つがいにつき繁殖条件の確保,生息条件の確保,種同士の孤立回避等,保全対策の基本的な考え方を決定した。 ウ環境調査の内容(ア) 生物相調査について徳山ダムにおける生物相調査は,陸生生物については,徳山ダムの工事実施関連区域とその周辺区域を含む区域を,また,水生生物 (ア) 生物相調査について徳山ダムにおける生物相調査は,陸生生物については,徳山ダムの工事実施関連区域とその周辺区域を含む区域を,また,水生生物については,根尾川合流点までの揖斐川本川及び主要な支川と谷を含む河川区域をそれぞれその調査対象区域とし,各項目ごとに季節的な変動も考慮しながら,生育・生息している生物相が把握できるように現地調査を実施した。 また,植生については,群落組成調査や空中写真なども併用し,現存植生図の作成を行った。 (イ) 水質調査についてダム審環境部会の資料によれば,本件事業完成後の下流河川の水質予測について,取水地点上流のα3地点におけるBODは,流域からの汚濁負荷量が増加しないとすれば現状より良くなるとされている。また,ダム放流水の冷水・濁水現象のシミュレーションは,貯水池内の水温変化等が発生すると考えられるが,放流水温はその影響を小さくするように貯水池表層部から取水が可能な選択取水設備を運用することにより,年間を通じて流入水温程度に維持することが可能であり,濁水については,濁水の長期化現象が発生する可能性は低いと予測している。 さらに,貯水池内の富栄養化現象については,ボーレンバイダーモデルによる予測の結果,徳山ダムは,富栄養化現象の発生する可能性は低く,ダム集水域内に住家等がないことから人為的汚染源は少なく,将来,富栄養化現象の発生する可能性は低いと予測している。 (ウ) 大型猛禽類調査について公団は,次のとおり,イヌワシ,クマタカなどの大型猛禽類につき,繁殖つがいを中心とした詳細な調査を行った。 A 大型猛禽類調査の経緯 いて公団は,次のとおり,イヌワシ,クマタカなどの大型猛禽類につき,繁殖つがいを中心とした詳細な調査を行った。 A 大型猛禽類調査の経緯平成8年5月,公団は,大型猛禽類の調査を同月から実施することとし,その旨公表した。また,同年8月には,大型猛禽類調査の調査内容,調査手法,調査結果の取りまとめ及び保全対策の検討を行うため,鳥類の専門家からなる徳山ダムワシタカ類研究会を設置し,専門家から指導・助言を受けることとした。 さらに,同年12月には,それまでの大型猛禽類の調査結果から,徳山ダム貯水池周辺におけるワシタカ類の生息状況について,つがい数やその行動分布がおおむね明らかとなり,一部につき営巣地の概定も可能になったことを公表するとともに,引き続き徳山ダムワシタカ類研究会の指導・助言に基づき,それぞれのつがいの行動圏とその内部構造を把握するための調査を継続して行うこととした。また,保全対策については,「ワシタカ類保全対策の基本的な考え方(案)」として,ダム貯水池周辺区域の保全,採餌環境の維持・創出,工事実施上の配慮等からなる保全対策の基本的考え方を示した。 これらの調査結果や「ワシタカ類保全対策の基本的な考え方(案)」については,ダム審や同環境部会の委員会資料として審議に付されている。 本件事業における大型猛禽類調査は,上記経緯を経て,徳山ダム周辺の大型猛禽類の生息状況と行動圏の内部構造を把握するため,徳山ダムワシタカ類研究会の指導・助言の下,平成8年5月から平成10年9月までの間実施された。 B 大型猛禽類調査の内容公団が実施し を把握するため,徳山ダムワシタカ類研究会の指導・助言の下,平成8年5月から平成10年9月までの間実施された。 B 大型猛禽類調査の内容公団が実施した大型猛禽類調査の手法は,調査範囲に配置された各調査定点からの目視による同時観察を基本とし,イヌワシ,クマタカが確認された場合は,その位置を図面に記録するとともに,種類,個体数,行動,観察時間,雌雄の別,成鳥・幼鳥の別などを記録している。また,個体の特徴の確認等により,個体識別を行っている。 調査時期は,特に大型猛禽類の繁殖活動時期に着目し,晩秋から初夏にかけての造巣期から巣立ちまでの期間を重点的な調査対象期間として,平成8年5月から平成10年9月までの計22回にわたり各回5日間を基本として行われた。 調査範囲は,まず徳山ダムの集水区域と隣接する下流域をほぼ包括する広い範囲を対象とした調査定点の配置とし,大型猛禽類の生息つがい数及びその生息分布を把握した。その結果,イヌワシについては4つがい,クマタカについては14つがいの生息と,その生息分布が確認されている。 その後,徳山ダムワシタカ類研究会の指導・助言に基づき,優先的にその保全を考慮すべき大型猛禽類のつがいとして,つがいの生息分布が貯水池予定区域の事業実施区域等の事業区域と重なるなど事業に関連すると考えられるイヌワシ1つがい,クマタカ8つがいを重点的な調査対象とし,それぞれのつがいが通常の生活を行うための行動圏と,その行動圏内における利用区域を区分した内部構造を把握することとした。行動圏の内部構造は,調査の結果得られた ,それぞれのつがいが通常の生活を行うための行動圏と,その行動圏内における利用区域を区分した内部構造を把握することとした。行動圏の内部構造は,調査の結果得られた繁殖活動に密接に関連するディスプレー,防衛行動,交尾,巣材採取,巣材運び,餌運び,抱卵・抱雛,幼鳥確認等の指標行動や飛翔の位置を基にエリアとして推定している。 C 本件事業のイヌワシ,クマタカへの影響の程度公団は,徳山ダムの集水区域と隣接する下流域をほぼ包含する範囲内において大型猛禽類調査を行い,イヌワシ,クマタカを中心とする大型猛禽類の行動圏,行動圏の内部構造,営巣地等の把握に努めた。平成9年11月の徳山ダムワシタカ類研究会では,調査の中間結果と今後の方向性の審議において,つがい毎の調査結果が整理され,今後の調査方針がまとめられた。 上記結果から,確認されているイヌワシ4つがい,クマタカ14つがいについて,いずれのつがいも湛水区域に営巣地及び営巣中心域はなく,事業による直接的な影響はほとんどないことが確認され,また,上記研究会の指導を得て行動圏の内部構造を把握し,適切な保全対策を実施する対象のつがいが,イヌワシ1つがい,クマタカ8つがいとされた。 エ環境保全対策(ア) 各種指導,助言を踏まえた保全対策本件事業における環境保全対策は,公団が作成した環境部会資料において,それまでの調査結果を基に,自然環境の保全に対する基本理念や水質,植物,動物に対する保全のための方策及びその他工事中,供用開始後の方策等が提示されている。その後も,ダム審や同環境部会での審議を経て提出された意見「徳山ダム建設事業について(意見)」や環境部会による助言を 動物に対する保全のための方策及びその他工事中,供用開始後の方策等が提示されている。その後も,ダム審や同環境部会での審議を経て提出された意見「徳山ダム建設事業について(意見)」や環境部会による助言を踏まえ,徳山ダム環境調査会,徳山ダムワシタカ類研究会,徳山ダム流域管理協議会,徳山ダム景観委員会等関係機関,専門家の指導・助言を得て,環境保全に向けた取組みがなされている。 (イ) 専門家による指導,巡視公団では,学識経験者や環境の専門家を通じて現地の状況に即した環境の保全のため,環境エキスパートによる環境巡視,環境パトロール,環境学習会等の専門家による指導及び巡視を実施している。 (ウ) 工事における対応等公団は,本件事業の施工に当たり,環境に与える影響をできる限り軽減することを主眼として,橋梁・トンネルの積極的な採用,法面試験植生の実施,表土等を利用した法面植生試験,工事期間の調整等,騒音測定及び騒音シミュレーションの実施,傾斜型側溝の設置,立木の段階的伐採,環境ハンドブックの作成等の対策を講じている。 (エ) 保全対策の実施公団は,動植物の保全対策,貯水池及び放流設備の供用に伴う水質変化についての保全対策,大型猛禽類の保全対策等を今後も適切に実施していく予定である。 オ小括以上のとおり,本件事業による環境への影響は小さいものと評価される上,公団が提示している環境保全対策が適切に行われてきており,また,今後も,公団は,専門家の指導等を得て適切に行うことが見込まれるので,本件事業による環境への影響は,最小限にとどめられるというべきである。 (2) 水源地対策等ア住民移転 今後も,公団は,専門家の指導等を得て適切に行うことが見込まれるので,本件事業による環境への影響は,最小限にとどめられるというべきである。 (2) 水源地対策等ア住民移転平成元年3月までに,本件起業地内に居住していた432世帯との間での移転補償契約はすべて完了している。上記432世帯を含め移転対象となった旧徳山村の全466世帯の移転先については,徳山ダム建設事業に伴う世帯移転先一覧表(乙13)のとおりである。 イ生活再建公団は,岐阜県を始め旧徳山村や関係機関の協力を得て,生活相談所の設置,集団移転地の造成,生活再建の手引書の配布等を行い,また,岐阜県,木曽三川水源地域対策基金において,不動産取得税の減免措置,代替不動産取得に係る利子補給事業等が行われた。 ウ徳山村の廃村旧徳山村は,本件事業により,旧徳山村の全員(8地区466世帯)が本件起業地外へ移転することになり,昭和61年6月2日に藤橋村・徳山村合併協議会で合併協定書の内容を決定し,同月20日の徳山村議会,同月25日の藤橋村議会はそれぞれ合併関係議案を可決した。同年7月30日に徳山村と藤橋村は,岐阜県知事の立会いの下で合併協定を締結した。 昭和62年3月27日には閉村式が挙行され,同月31日をもって徳山村を廃し,その区域を藤橋村に編入する廃置分合について自治省(当時)告示がされた。 (3) 埋蔵文化財等公団及び電源開発株式会社は,本件事業認定申請に当たり,本件起業地に存する周知の埋蔵文化財包蔵地について,文化庁長官に対して法18条2項5号に基づく意見照会をしているが,同長官は,上記埋蔵文化財包蔵地を本件起業地に含めることについて異議を述べなかった に存する周知の埋蔵文化財包蔵地について,文化庁長官に対して法18条2項5号に基づく意見照会をしているが,同長官は,上記埋蔵文化財包蔵地を本件起業地に含めることについて異議を述べなかった 。 本件起業地内の周知の埋蔵文化財包蔵地では,岐阜県教育委員会の指導の下,昭和61年度から岐阜県に委託して計画的に発掘調査を行っており,平成10年度までに16遺跡の現地での発掘調査が完了し,試験湛水までにすべての遺跡について調査が完了する予定である。発掘調査された遺跡については,調査報告書の作成により記録保存の措置がとられ,遺跡からの出土遺物については財団法人岐阜県文化財保護センターがその保管管理に当たり,同センターにより岐阜県博物館等で公開されている。 4 法20条3号要件該当性(2と3の比較衡量)(1) 得られる公共の利益前記2のとおり,本件起業地が本件事業の用に供されることによって得られる公共の利益は,都市用水の確保,流水の正常な機能の維持,洪水調節,発電である。 (2) 失われる利益前記3のとおり,本件起業地が本件事業の用に供されることにより失われる利益は,自然環境への影響,本件起業地内に居住していた住民の移転,埋蔵文化財等である。 (3) 得られる公共の利益と失われる利益の比較衡量まず,得られる公共の利益については,揖斐川流域の住民を洪水被害から保護し,流水の正常な機能を維持し,また,都市用水の確保や発電により用水需要や地域経済の発展に資することから,本件事業によって得られる公共の利益は極めて大きいというべきである。 次に,失われる利益について,自然環境への影響については,本件事業で実施された環境影響評価において,総合的に とから,本件事業によって得られる公共の利益は極めて大きいというべきである。 次に,失われる利益について,自然環境への影響については,本件事業で実施された環境影響評価において,総合的に判断して環境に与える影響は小さいと評価とされ,その後,さらに各分野の調査範囲を拡充して追加的調査が継続的に実施され,専門家の指導を得ながら環境保全対策等を実施していること,本件事業により移転することとなった旧徳山村の住民の生活再建のための措置が十分に講じられてきたこと,埋蔵文化財等については,発掘調査等による適切な保護がされるものであること等から,これらの利益が失われることによる影響は小さいというべきである。 したがって,本件起業地が本件事業の用に供されることによって得られる公共の利益は,本件起業地が本件事業の用に供されることによって失われる利益に優越しているというべきであるから,本件事業は法20条3号の要件に適合する。 【原告らの主張】 1 比較衡量法20条3号要件の該当性については,その土地がその事業の用に供されることによって得られるべき公共の利益と,その土地がその事業の用に供されることによって失われる利益とを比較衡量した結果,前者が後者に優越すると認められる場合にその該当性が認められると解すべきである。ただし,この場合の失われる利益とは,単に土地等を失う権利者の不利益ではなく,地元住民,さらには地域,国,地球,未来世代への不利益を考慮しなければならない。事業によって得られる利益と事業によってもたらされる不利益とを比較した結果得られる純の利益がその事業による真の利益だからである。 そして,建設大臣が判断するに当たり,本来最も重視すべき諸要素,諸価値を不当,安易に軽視し,その結果,当然尽くすべき考慮を尽く た結果得られる純の利益がその事業による真の利益だからである。 そして,建設大臣が判断するに当たり,本来最も重視すべき諸要素,諸価値を不当,安易に軽視し,その結果,当然尽くすべき考慮を尽くさず,又は本来考慮に容れるべきでない事項を考慮に容れ,若しくは本来過大に評価すべきでない事項を過大に評価し,これらのことにより建設大臣の判断が左右されたものと認められる場合には,当該建設大臣の判断は,裁量判断の方法ないしその過程に誤りがあるものとして違法となると解すべきである。 2 法20条3号該当性は新規利水を前提とすることダム建設の根拠となる法律は,一般に,公団法,河川法,特定多目的ダム法があるが,徳山ダムは,公団法18条1項1号イに基づき公団により建設される水資源開発施設である。そのため,徳山ダム事業は収用法20条1号,同法3条34号の2に形式的に該当することから,本件土地を法に基づく収用対象として手続を進めている。 もとより,公団は,促進法の規定による水資源開発基本計画に基づく水資源の開発又は利用のための事業を実施することを目的として設立された法人で(公団法1条),水資源開発計画は水資源の開発,利用を実現するために策定される計画である。 上記促進法,公団法の構造からして,本件事業は新規利水目的があるゆえに公団の事業となり,法の利用が可能になる関係にあるから,新規利水目的がなければ,法3条34号の2に該当しないというべきである。新規利水目的は,それがなければ本件事業の法的根拠を失うほどの重要な目的であり,他の目的で補うことができるような性格のものではないからである。なお,被告らは,新規利水に加えて,流水の正常な機能の維持,洪水調節,発電も徳山ダム建設目的に含まれると主張するが,これらは事後的に付加された目 補うことができるような性格のものではないからである。なお,被告らは,新規利水に加えて,流水の正常な機能の維持,洪水調節,発電も徳山ダム建設目的に含まれると主張するが,これらは事後的に付加された目的に過ぎないのである。 しかるところ,後記3のとおり,本件需要予測は,根拠のない数字を重ねて途方もない過大な予測をするもので,実態から乖離しており新規利水の必要性は全く認められない。新規利水の必要性が認められない以上,本件事業認定は,この時点で既に法20条3号の要件に適合しないというべきである。 3 都市用水の確保について(1) フルプランの不合理性公団法18条1項1号イの水資源開発施設の建設は,水資源開発基本計画に基づいて行われる(公団法18条1項1号)。すなわち,その建設の必要性は,フルプラン決定過程において検討されているもので,徳山ダムの新規利水の必要性はフルプランに根拠を置くものに他ならない。 ところで,水資源開発基本計画は,当該水系での水道用水,工業用水等の水の用途別の需要を予測してその見通しを立て,また,需要に対処するための供給の目標,供給の目標を達成するために必要な水資源開発施設の建設事業を定めるが(促進法5条),その後の事業実施方針,事業実施計画においては,事業の必要性,根拠の検討がなされない。 したがって,徳山ダムの3号要件該当性の検討は,事業の必要性,根拠を検討し計画しているフルプランについて行われなければならないところ,後記ア,イのとおり,フルプランには合理性がなく,したがって,これに根拠を置く本件事業も必要性がないことになる。 ア考慮すべき事項を考慮しなかった不合理性フルプランは,木曽川水系を1単位として策定されているから,木曽川水系のある地域で水が余ってい 拠を置く本件事業も必要性がないことになる。 ア考慮すべき事項を考慮しなかった不合理性フルプランは,木曽川水系を1単位として策定されているから,木曽川水系のある地域で水が余っていれば,これを他の地域で用いて相互調整を図らなければならない。また,ある用途に供する水が余っていれば,これを同地域の他の用途に供する水に用いて相互調整を図らなければならない(甲37)。新フルプランにおいても,実際に,ある地域のある用途に利用するとされている開発水が,他の地域の他の用途に移譲されている実態があり(甲22の2),開発水の相互調整は可能である。そして,木曽川水系においては,岩屋ダム,長良川河口堰によって開発された水の多くが未利用のままであり(甲22の1),水余りの状態にある。 しかるに,水余りの実態や相互調整を考慮せずに,新規利水開発が必要と判断したことは,本来,当然考慮すべき事項を考慮せずに判断したもので不合理である。 イフルプランの予測自体の不合理性(ア) 旧フルプランの予測A 水道用水における予測と実績の乖離旧フルプランの水道用水の予測は高度成長時代における大幅な増加傾向をそのまま延長したもので,予測と実績の乖離は年々大きくなっていった。目標年次である昭和60年の実績値254万‰/日に対して,旧フルプランの予測値はその1.7倍の433万‰/日であり,両者の差は約180万‰/日にもなった(甲20,甲24-図2)。 B 工業用水における予測と実績の乖離旧フルプランは,高度成長時代の実績を大幅に上回る増加率を想定して昭和60年値を予測した。昭和42年~同47年の実績の年平均増加量は約16万‰/日であったが,旧フルプランの予測の年平均増加量 旧フルプランは,高度成長時代の実績を大幅に上回る増加率を想定して昭和60年値を予測した。昭和42年~同47年の実績の年平均増加量は約16万‰/日であったが,旧フルプランの予測の年平均増加量は33万‰/日であり,高度成長時代の急速な増加をさらに2倍にするという理解し難い予測である。 その結果,昭和60年の予測値864万‰/日は,実績のピーク409万‰/日の2.1倍という異常に大きな値となった。 しかも,実績は漸減の傾向に変わったため,予測と実績の乖離が年々広がり,目標年次昭和60年における前記予測値864万‰/日と実績値314万‰/日との差は約550万‰/日にもなった。 (イ) 新フルプランの予測A 水道用水における予測と実績の乖離新フルプランの水道用水の予測も,高度成長時代の増加傾向を基本的に踏襲するものであった。この予測の年平均増加量は10万‰/日であり,昭和42年~同47年の高度成長時代の増加率を多少下方修正したに過ぎないものであった。一方,実績は,平成2年の前後5年間を除いて横ばいに近い傾向であったから,予測は実績と大きく乖離するものになっている。平成10年までの傾向を延長すると,平成12年の実績は300万‰/日以下と予測されるから,同年の予測値403万‰/日は,実績値の1.3倍以上になる見通しである(甲20-3頁,甲24-図5)。 B 工業用水における予測と実績の乖離新フルプランの予測における年平均増加量は12万‰/日で,これは高度成長時代の実績を少し下方修正しただけであり,工業用水の動向が再び高度成長時代に戻るという予測であった。他方,実績の方は,横ばいまたは漸減の傾向になっているのであるから,新フルプランの予測と は高度成長時代の実績を少し下方修正しただけであり,工業用水の動向が再び高度成長時代に戻るという予測であった。他方,実績の方は,横ばいまたは漸減の傾向になっているのであるから,新フルプランの予測と実績の差は年々拡大していった。新フルプランが策定された平成5年にはすでに平成2年頃までの実績データが揃っていて,予測と実績の大きな乖離が明らかであったにもかかわらず,実績無視の予測が行われた。 平成10年までの動向から見て,平成12年の実績は290万‰/日程度になると予測される。これに対して,新フルプランの同年の予測値は490万‰/日であるから,実績値の1.7倍にもなる見通しである(甲20-3頁,甲24-図4)。 (ウ) まとめ以上のとおり,徳山ダムの必要性を根拠づける新,旧フルプランの将来水需要予測は不合理である。 (2) 本件水需要予測の不合理性本件水需要予測は,次のとおり,水道用水,工業用水のいずれについても不合理である。 ア本件水需要予測の不合理性(水道用水)(ア) 給水人口将来人口の推計は,国や地方公共団体が適切な社会基盤整備をするために不可欠のもので,その推計結果によって基盤整備事業実施の有無,規模,時期が左右される重要な項目である。したがって,その推計方法については科学的,専門的研究が重ねられ,現在,国や地方公共団体の多くが,専門の研究機関である国立社会保障・人口問題研究所の将来人口推計の結果を用いている。上記研究所の推計では,既に本件事業認定時には,平成19年に人口が減少に転じると予測していた(乙115-218頁,甲5)。岐阜県についてみると,平成17年と平成22年を比べると人口は増加しておらず,平成22年と平成27年 既に本件事業認定時には,平成19年に人口が減少に転じると予測していた(乙115-218頁,甲5)。岐阜県についてみると,平成17年と平成22年を比べると人口は増加しておらず,平成22年と平成27年とを比べると減少に転じている。愛知県についても,平成22年と平成27年を比べると減少に転じている。 また,平成10年版厚生白書では,「人口減少社会の到来と少子化への対応」というテーマで特集が組まれる(甲27)など,「少子化傾向」が広く周知され,本件事業認定当時,将来人口が減少することは公知の事実であった。 したがって,将来人口が直線的に増加し続けるという推計が過大であり,不合理な予測であることは明らかである。 (イ) 日平均給水量原単位本件水需要予測が過去の実績と乖離していることは,乙115をみるだけで明らかである。 A 大垣地域乙158の1によると,1人1日平均給水量の実績は,平成2年度以降ほぼ横ばいである。1人1日有効水量の実績についても,平成2年度以降横ばいないし微増傾向である。平成2年度から平成8年度の平均増加量は1.833L/年であり,公団予測である4.9L/年をはるかに下回る。 B 名古屋・尾張地域愛知県の水道年報により,名古屋市の1人1日最大給水量原単位を見ると,昭和60年が531L,平成7年が528Lで,増加していないどころかむしろ減少している(乙115-63頁)。同様に,尾張地域の1人1日最大給水量は,昭和60年が422L,平成7年が438Lで,10年で16Lしか増えておらず,年平均にすると年1.6Lの増加にすぎない。 そうすると,1人1日平均給水量 人1日最大給水量は,昭和60年が422L,平成7年が438Lで,10年で16Lしか増えておらず,年平均にすると年1.6Lの増加にすぎない。 そうすると,1人1日平均給水量についても,右上がりに直線的に増加し続けるとするのは無理があり,1人1日平均給水量が毎年5.4Lずつ増加するという本件水需要予測は実績と乖離している。 (ウ) 本件水需要予測の問題点A 東海地方全体の数値を基にした点水需要予測は,過去の実績を基になされるべきところ,最も精確な実績は当該供給地域における実績である。したがって,名古屋市の将来予測をするのに,東海地方全体の数値を基に予測することが許されるのは,名古屋市と東海地方全体の過去の実績の傾向が同一または類似であることが資料により裏付けられる場合に限られる。しかるに,本件水需要予測は,合理的な根拠もなく,東海地方全体の数値を用いて推計を行っており,不合理である。 B 右肩上がりの直線回帰をした点本件水需要予測は,20年間の数値のうち12年分を渇水による取水制限があったことを理由に異常値として捨象し,残りの8年分の数値だけを最小二乗法で直線回帰している。しかし,異常値として捨象するには,それが異常値であることの合理的理由が必要であるところ,東海地方のうち一部の地域の,しかも20日間程度の5%や10%の取水制限が,東海地方全体の生活用水の使用量を制約するというのは飛躍がある。また,本件事業認定時において平成8年度までの統計が利用できたはずなのに,平成7年,8年の数値は挙げられていないが,平成4年以降の推移を見ると,1人1日給水量は,明らかに減少または横ばい傾向を示している(甲67,乙160)。 利用できたはずなのに,平成7年,8年の数値は挙げられていないが,平成4年以降の推移を見ると,1人1日給水量は,明らかに減少または横ばい傾向を示している(甲67,乙160)。 このように,本件水需要予測は,20年間のうち12年間分及び本件事業認定時に資料が存在した直近2年分の数値を捨象した結果,右上がりの直線化しやすい数値だけを残してなされたもので,不合理である。 (エ) 負荷率本件水需要予測は,負荷率として名古屋,尾張地域,大垣地域全てについて,名古屋市上水道事業の過去10年間における実績の範囲を基に,気象等の影響を考慮し,計画上の余裕を見て70%を用いて推計している。 負荷率は,名古屋市(昭和50年度以降),尾張地域(昭和53年度以降),大垣地域(平成2年度以降)の過去の実績上,最小でも70%になったことはない上(甲67-9頁),全国平均値(81%)とも,東海地方の平均値(79%)とも大きくかけ離れており(甲6),明らかに過小な設定である。 しかも,負荷率を74%から計画上の余裕を考慮して4%小さく設定した理由は,気象等の影響という極めて曖昧なもので,科学的根拠を欠くものである。 イ合理的な水需要予測(水道用水)(ア) 要因別の分析合理的な将来水需要予測をするには,①給水人口,②1人当たり使用水量原単位,③無収水量の各要因について検討する必要があるところ,これらを検討すると後記AからCまでのとおりとなる。 A 将来給水人口の頭打ち前記国立社会保障・人口問題研究所の推計から,将来の人口については少なくとも頭打ちであることが明らかである。 B 1人1日平均給水量原単 A 将来給水人口の頭打ち前記国立社会保障・人口問題研究所の推計から,将来の人口については少なくとも頭打ちであることが明らかである。 B 1人1日平均給水量原単位増加の限界1人1日平均給水量は,日平均給水量を給水区域内の居住人口で除したものである。日平均給水量には,居住者である一般家庭が日常生活で使用する家庭用給水量の他に,業務用給水量,無効水量も含まれるが,1人1日平均給水量の傾向は,業務用給水量には大きく連動してはいない。給水人口と直接結びつき給水量に直結するのは,家庭用給水量であるので,その増加要因について分析する必要がある。 家庭での水使用量で多いのは,水洗便所,風呂,洗濯である。そのうち,洗濯については,洗濯機が普及し,洗濯機自体も節水化が進んだため,増加要因とはならない。他方,水洗便所と風呂については,普及途上にあるから,これらが家庭用給水量の増加要因である。しかし,便所の水洗化,家庭風呂の普及が100%になれば,家庭用給水量は基本となる増加要因がなくなり,その増加は頭打ちになると考えるのが合理的である。 ところで,乙151の1~3,乙152を見ると,名古屋市では,世帯当たり人数が昭和40年から平成12年まで継続的に減少しているにもかかわらず,名古屋市の1人1日家庭用給水量は昭和62年からの数年間は上昇したもののほぼ横ばいであり,最近でも平成3年以降ほぼ横ばいである(乙151)。このことから,世帯細分化に応じて家庭用給水量も増加するという関係になっていないことが分かる。 また,乙154を見ると,名古屋市では,消費支出の動向が一貫して上昇している時期であっても,1人1日有効水量は昭和50年から350~38 という関係になっていないことが分かる。 また,乙154を見ると,名古屋市では,消費支出の動向が一貫して上昇している時期であっても,1人1日有効水量は昭和50年から350~380Lで横ばいで推移しており,このことから水道水の使用量と消費支出動向とは関係がないことが分かる。 したがって,世帯の細分化は水需要の大きな増加要因とはならず,また,消費支出動向も水需要とは関連性がなく,水洗便所と家庭風呂の普及率が家庭用給水量の増加率に連動する大きな要因であるというべきである。 C 有効率の向上-1人1日平均給水量の減少要因1人1日平均給水量には,家庭用給水量や業務用給水量の他に,無効水量,つまり給水されたが漏水等により有効な使用にならない水量も含まれている。したがって,漏水対策により無効水量を減らし,有効率を高めれば,給水量を減少させることができる。 実際,名古屋市は,漏水対策により有効率を高めた結果,平均給水量を減少させており(甲68-8頁),有効率を向上させる余地のある地域については,それによって給水量が減少したり,増加を抑制できることを検討する必要がある。 (イ) 名古屋市水道用水需要の合理的将来予測まず,名古屋市の1人1日平均家庭用給水量の実績は,平成3年度以降,220L台でほぼ横ばいであり,前記(ア)Bのとおり,世帯細分化は増加要因とならないから,今後も220L台で横ばい傾向が続くと考えるのが合理的である。 次に,名古屋市の1人1日業務用給水量の実績は,平成3年ころの160Lが最大で,その後は130L程度で横ばいであり,今後も最大160L程度で横ばいの傾向が続くと考えるのが合理的である。1人1日業務用給 に,名古屋市の1人1日業務用給水量の実績は,平成3年ころの160Lが最大で,その後は130L程度で横ばいであり,今後も最大160L程度で横ばいの傾向が続くと考えるのが合理的である。1人1日業務用給水量が本件水需要予測のように,年増加量4.9Lで23年間増加し続けるというのは明らかに不合理である。 以上の点から,名古屋市の1人1日平均給水量は実績の390L程度,多くても410L程度以下で横ばい傾向が続くと考えられる。前記のとおり,給水人口も頭打ちが確実であるから,日最大給水量も大幅な増加はあり得ない。実績の推移からは,日最大給水量が供給能力を超えるに至るような予測は困難であり,実績最大値である昭和50年度の123万5140‰/日が上限であると予測するのが合理的である。 (ウ) 尾張地域水道用水需要の合理的将来予測まず,1人1日家庭用給水量は,250Lから300L程度が限界で頭打ちとなると考えられる(甲67)。前記(ア)Bのとおり,世帯の細分化は増加要因とはならないから,尾張地域の1人1日家庭用給水量は,今後も横ばい傾向が続くと考えるのが合理的である。 次に,1人1日業務用給水量は,実績からは平成2年以降70L程度で横ばいであり,今後もこの傾向が続くと考えるのが合理的である。1人1日業務用給水量が本件水需要予測のように年増加量4.9Lで23年間増加し続けるというのは不合理である。 以上の点から,日最大給水量(平成8年で63.8万‰/日)が供給能力(86.1万‰/日)を超えるに至るような予測は困難であり,供給能力を超えることはないと予測される。 (エ) 大垣地域水道用水需要の合理的将来予測大垣地域も,名古屋市,尾張地域同様,増加要因が えるに至るような予測は困難であり,供給能力を超えることはないと予測される。 (エ) 大垣地域水道用水需要の合理的将来予測大垣地域も,名古屋市,尾張地域同様,増加要因が限界になれば,頭打ちになることが予測される。実績を見ても,平成9年度と平成10年度の数値をみれば,ほとんど増加がなく,頭打ち傾向がすでに現れ始めているといえる(乙158)。 1人1日有効水量から1人1日有収水量(家庭用)を差し引いた最広義の1人1日業務用給水量で検討すると,過去20年間では,平成3年度の90Lをピークにして,横ばいないし減少傾向にある。この実績から見て,1人1日業務用給水量は,最広義のそれで最大90L程度で今後も横ばい傾向が続くと考えるのが合理的である。1人1日業務用給水量が本件水需要予測のように年増加量4.9Lで23年間増加し続けるというのは不合理である。 大垣地域の特徴は,無効水量が大きいことである。漏水対策をとって無効水量を減らし,有効率を高めれば,給水量を減少させるか,増加させないことができる。実際,大垣地域でも,平成2年度と平成8年度を比べると有効率は3%程度上昇しており,その間,家庭用給水量は増加し,有効水量は横ばいないし微増傾向であるが,平均給水量はほぼ横ばいである。 以上の点から,日最大給水量(平成8年で15万‰/日)が供給可能水量(21.5万‰/日)を超えるに至るような予測は困難であり,供給能力を超えるようにはならないと予測される。 (オ) まとめ名古屋市,尾張地域,大垣地域のいずれについても,本件水需要予測は,実績と大きく乖離した過大な予測であることが明らかである。 ウ本件水需要予測の不合理性(工業用水)(ア) 名古屋市,尾張地域,大垣地域のいずれについても,本件水需要予測は,実績と大きく乖離した過大な予測であることが明らかである。 ウ本件水需要予測の不合理性(工業用水)(ア) 予測方法自体の不合理性本件水需要予測の推計過程は,次の式を用いて求められたものである(乙115-52~54頁)。 将来工業用水需要量(将来淡水補給量)=将来の工業出荷額×将来の補給水原単位=将来の工業出荷額×{(将来の工業出荷額当たり淡水使用水量原単位×(1-回収率)}そして,本件水需要予測は,名古屋地域,大垣地域の工業用水の需要予測について,次の3つの考え方を基本に推計されている(乙115-52,54頁)。 ① 淡水使用水量原単位は将来変化しない。 ② 回収率は将来変化しない。 ③ 工業出荷額は今後も継続して伸びていく。 上記①~③を前提にして推計式に当てはめれば,工業出荷額の伸びとともに補給水量も増大する。この方法を用いると,時が経てば経つほど補給水量は伸びていくことになる。その結果,工業用水需要量(淡水補給水量)は,大垣地域では平成7年度の37.1万‰/日が平成30年度には64万‰/日,名古屋市では平成7年度の7.6万‰/日が平成30年度には16万‰/日と2倍近くになると予測されている。 しかし,このような予測は明らかに過去の実績の推移から乖離している。別表Ⅰ(甲20-図19)には岐阜県大垣工業地区の工業用水に関する公団の予測と過去の実績等が,別表Ⅱ(同号証-図20)には名古屋市工業用水道に関する公団の予測と過去の実績等が示されているところ,いずれも工業用水の実績は平 )には岐阜県大垣工業地区の工業用水に関する公団の予測と過去の実績等が,別表Ⅱ(同号証-図20)には名古屋市工業用水道に関する公団の予測と過去の実績等が示されているところ,いずれも工業用水の実績は平成3年から減少傾向にあり,過去の実績に比較して本件水需要予測が不合理であることは一見して明らかである。 本件水需要予測は,前記のとおり,工業用水需要量(淡水補給水量)は使用水量原単位も回収率も一定という前提に立つが,実績を見ると(乙115-78,79頁),工業出荷額が伸びていても補給水量は横ばいないし減少傾向にあり,工業出荷額に変動があってもそれと同じ傾向で補給水量は変動しておらず,本件水需要予測の手法自体不合理である。 (イ) 工業用水の合理的将来予測A 過去の実績大垣地域工業用水(別表Ⅰ)及び名古屋市工業用水(別表Ⅱ,甲67-13~15頁)の各実績によれば,これらの地域の工業用水需要は,徳山ダム以外の既存供給施設等による確保量(乙115-59頁)で対応できると判断される。 B 名古屋市工業用水需要の合理的将来予測名古屋市工業用水道の給水能力と供給実績との比較が甲67-15頁の図に示されているが,これによれば,市補給量及び名古屋市工業用水道平均配水量の過去の実績は,8万‰/日から6万‰/日で横ばいないし漸減傾向にある。この過去の実績からすれば,名古屋市工業用水道の水需要はその給水能力15万‰/日を上回ることはないと予測される。 C 大垣地域工業用水需要の合理的将来予測大垣地域では工業用水道事業は存在せず,計画すら決定されていない(乙115-58頁)。工業用水の水源はほとんどが地下水であるため,確保量を確定することは困難 需要の合理的将来予測大垣地域では工業用水道事業は存在せず,計画すら決定されていない(乙115-58頁)。工業用水の水源はほとんどが地下水であるため,確保量を確定することは困難であるが,本件水需要予測は昭和60年~平成7年で最大となった平成2年の淡水補給水量をもって「現在の確保量」としている(乙115-57,79頁)。被告らは,大垣地域では,平成7年以降の新たな需要増に対してはすべて徳山ダム開発に依存することになると主張するが,大垣地域では全量地下水に依存しているから,被告らの上記主張は,新たな工業用水需要全量に対して地下水使用禁止の規制が行われることが前提になる。 ところが,後記のとおり,大垣地域では,新規地下水揚水の禁止はもちろん,その他の本格的な地下水揚水規制は今日でさえ行われていないし,今後本格的規制を実施する予定もない。 大垣地域の工業用水の使用水量の推移,補給水量の推移(甲67-11頁)によれば,大垣地域の工業用水の実績は減少傾向にあるから,現在の確保量(地下水揚水量)で十分対応できると判断される。 (ウ) 使用水量原単位について大垣地域の使用水量原単位の推移を見ると(乙115-79頁),昭和60年から平成7年にかけての実績は年毎に著しく変化しており,一定していない。大垣地域の使用水量と工業出荷額を散布図にしたものを見ると(甲34,甲67),点は図全体に散らばっており,傾向は読みとれない。また,名古屋地域の使用水量原単位の推移を見ると(甲67-14頁),昭和60年から平成7年にかけて減少の一途をたどっている。名古屋地域の使用水量と工業出荷額を散布図にしたものを見ても(甲54-2頁),点は図全体に散らばっており,傾向は読みとれない。 ,昭和60年から平成7年にかけて減少の一途をたどっている。名古屋地域の使用水量と工業出荷額を散布図にしたものを見ても(甲54-2頁),点は図全体に散らばっており,傾向は読みとれない。 本件水需要予測は,大垣地域,名古屋地域の工業用水について,使用水量原単位は平成7年度の値から将来にわたって変化のないものとしているが,このように過去の実績からすれば,使用水量原単位が変化せず一定であるという事実はない。 (エ) 回収率について本件水需要予測は,大垣地域では回収率は34.2%が継続するものと仮定しているが,名古屋地域では回収率は80%台で推移するなど,この回収率は全国的に見ても著しく低い数値である。大垣地域の回収率が著しく低いのは,同地域ではほとんどが工業用水に地下水を利用していて,節水の動機付けに乏しいうえ,行政も地下水揚水規制条例のような回収率を向上させるための積極的な施策をしていないためである。 技術基準案の解説(乙126)は,工業用水は使用目的によって良質の淡水を必要とせず,他の代替手段(回収率の向上,下水処理水の再利用,海水の利用)が可能であるので,総需要量の予測はこれらの水量を考慮して検討することが必要であるとしている。また,工業統計表では,工業用水の用途を,ボイラー用水,原料用水,製品処理用水,洗浄用水,冷却用水,温調用水に分類しているところ,冷却用水,温調用水は使用後の排水の水質がよいため,回収利用による再使用が容易で,実際に回収して再使用される水は冷却・温調用水が大部分である。 大垣地域の場合,用途別合計水量(=水源別合計水量)に対する冷却・温調用水の占める割合は72.3%であるところ,回収率は33.9%であるので,50%以上の冷却・温調用水が回収されてい 大垣地域の場合,用途別合計水量(=水源別合計水量)に対する冷却・温調用水の占める割合は72.3%であるところ,回収率は33.9%であるので,50%以上の冷却・温調用水が回収されていないことになる(甲68-27頁)。このような大垣地域の状況を考えれば,今後の回収率の向上の余地は大きく,厳格な地下水揚水規制が実施されれば,節水に向けてのインセンティブが働き,回収率はすぐに向上すると考えるのが合理的である。 (オ) 工業出荷額についてA 経済構造の変化本件水需要予測は,経済構造の変化を考慮せずに,工業出荷額の上昇が伸びて止まらないものとしているが,バブルの崩壊,製造業の海外進出等によって,マイナス成長ないし低成長となる大きな構造変化が認められることは公知の事実である。「新しい全国総合水資源開発」(以下「ウォータープラン21」という。)は,日本経済の成長率は1995年から2010年までの期間に2.3%,2010年から2015年までの期間に1.2%と低下することをフレームとしている。このようなバブル経済以降の我が国の経済構造の変化により,工業における用水部門の減少がある一方で,非用水型工業の生産増があり,これらの変化は歴史的な流れであって,今後,鉄鋼業や化学工業などの用水型工業の生産が再び増加傾向に変わることはなく,これからの生産増は非用水型工業,非用水型部門によると考えるのが合理的である。 B 工業出荷額の実績乙115-78,79頁により,昭和60年から平成7年の名古屋地域,大垣地域の工業出荷額を見ると,昭和60年から上昇しているものの,平成3年をピークに減少傾向となっている。 本件水需要予測は,昭和60年と平成7年の二つの年を 年の名古屋地域,大垣地域の工業出荷額を見ると,昭和60年から上昇しているものの,平成3年をピークに減少傾向となっている。 本件水需要予測は,昭和60年と平成7年の二つの年を比較して,1年当たりの平均伸び率を大垣地域1.024,名古屋地域1.027として,将来にわたって同じ割合で工業出荷額が伸びる前提で推計しているが,昭和60年と平成7年との間の10年間の平均伸び率が将来を予測するのに適するかについては合理的な理由を示していない。むしろ,前記Aのバブル経済崩壊後の産業構造の変化に鑑みれば,バブル経済崩壊以降の実績のみを考慮すべきである。 (カ) 地盤沈下と地下水揚水の関係A 地下水位の状況に関する資料の欠如地下水揚水を原因とする地盤沈下の解明につき特に重要なことは,地下水揚水による地下水位の低下であり,地下水揚水と地下水位の状況について,時間,地域,帯水層毎に解明することである。 しかるに,本件事業認定の根拠となった資料の地盤沈下関係部分(乙115-116~122,177~185頁)には,地下水採取量全体の推移の図があるだけで,地下水位に関する資料がない。 B 地盤沈下観測地点の特徴最近10年間の累積沈下量が5~10㎝程度あり,毎年1㎝前後の継続的な沈下が観測されている地点は,河川堤防沿いで堤防が道路として使用されているところか,道路,鉄道沿いである(甲35,甲36,甲52)。河川沿いは地層形成が若く,粘性土層の自然圧密による収縮も収縮過程にあり,砂質土層でも堆積が新しいため,粒子の結合も緩く間隙部分が多いので,振動等によって粒子結合が密に変化し,間隙部分が少なくなって地盤沈下を引き起こすことがある。これらの地点は,多くが濃 縮過程にあり,砂質土層でも堆積が新しいため,粒子の結合も緩く間隙部分が多いので,振動等によって粒子結合が密に変化し,間隙部分が少なくなって地盤沈下を引き起こすことがある。これらの地点は,多くが濃尾平野西部,特に揖斐川沿いであり,同沿川は最も沈降している地域で,現在も沈降を続けているが(甲89),地下水位の低下はなく(甲52),地下水揚水量は減少してきている(甲39)。他方,1960年代に地盤沈下が激しかった沈下対策要綱の規制地域では,地下水位の回復によって,沈下量が小さくなって地盤沈下が沈静化している(甲52)。 これらの点からすると,近年地盤沈下が観測されている岐阜県の観測地点においては,地下水揚水による地下水位低下以外の沈下原因を考えるべきである。 C 岐阜県における地盤沈下対策の現状岐阜県は,沈下対策要綱の観測地域であって,規制地域ではない。 沈下対策要綱では,規制地域にあっては,地下水採取に係る目標量を設定し,その遵守のための規制,代替水源の確保,代替水の供給及び地盤沈下による災害の防止等の措置を講ずるものとされているが,観測地域にあっては,地盤沈下,地下水位の状況の観測,調査等の措置を講ずるだけで,代替水源の確保と代替水の供給は講ずべき措置とされていない(甲35)。すなわち,観測地域である岐阜県,特に大垣地域では,徳山ダムによる代替水源の確保とそれによる代替水の供給は措置すべきものとされていないのである。 岐阜県の地下水揚水規制は,条例による規制はもちろん,要綱による規制もなく,自主規制のみで,それも大垣地域だけである。愛知県,名古屋市及び三重県は,昭和49年から,条例によって,既設について全地域で揚水量の20%を削減するだけでなく,新設について被圧地下水の深井戸揚 なく,自主規制のみで,それも大垣地域だけである。愛知県,名古屋市及び三重県は,昭和49年から,条例によって,既設について全地域で揚水量の20%を削減するだけでなく,新設について被圧地下水の深井戸揚水を認めないで,1日揚水量も350‰以下という厳しい規制を行っている(甲35)。 岐阜県は,地下水揚水の規制として,愛知県,名古屋市のような厳しい揚水規制を行うことが必要である。大垣地域を始めとする沈下対策要綱の観測地域でも,条例による規制が行われれば,地下水揚水量を40%程度削減することが可能である。具体的には,平成8年の工業用地下水揚水量は,岐阜県の観測地域(岐阜地域,大垣地域)で60万6000‰/日(甲35)であり,そのうち大垣地域で34万6000‰/日であるから,これを40%程度削減して,岐阜県の観測地域36万4000‰/日,大垣地域20万8000‰/日以下に削減することが可能である。 条例による規制からさらに進んで地下水揚水を規制するには,工業用水法によって,工業用水道により代替工業用水を供給して規制を行うことになる。沈下対策要綱の観測地域である大垣地域を始めとする岐阜県で,工業用水道による代替用水を伴う地下水揚水の規制を真剣に考えるならば,全く使用されずにいる岩屋ダムの工業用水4.15‰/S,給水能力33万3000‰/日を水源とする工業用水道事業によって工業用水を供給すれば十分である。岐阜地域と大垣地域とを合わせた平成8年の工業用地下水揚水量は60万6000‰/日であり,未使用の岩屋ダムの工業用水4.15‰/S,給水能力33万3000‰/日はその55%に相当し,これだけの地下水代替用水の供給が可能であるからである。 以上のとおり,条例や要綱によって地下水揚水を規制し,さらに岩屋ダムの工業 S,給水能力33万3000‰/日はその55%に相当し,これだけの地下水代替用水の供給が可能であるからである。 以上のとおり,条例や要綱によって地下水揚水を規制し,さらに岩屋ダムの工業用水の未使用開発水4.15‰/Sを使用した工業用水道の供給地域を大垣地域まで含めることで,岐阜県の地下水揚水規制の段階的規制として十分であり,徳山ダムの開発水がなくても,大垣地域での厳しい地下水揚水規制ないし地下水揚水削減が可能となる。 4 被告ら主張の本件事業により得られる公共の利益について前記2のとおり,本件事業認定の法20条3号該当性を判断する際に,新規利水以外の目的を検討する必要はないのであるが,被告らが主張する他の目的について検討してみても,後記(1)から(3)までのとおり,いずれも合理性がないことは明らかである。 (1) 流水の正常な機能の維持について被告らは,徳山ダムの目的として,流水の正常な機能の維持を挙げているところ,その内容は不特定補給及び渇水対策である。しかし,後記アのとおり,不特定補給については,現状において農業被害や環境影響は認められない上,揖斐川の河川維持流量を検討しても,徳山ダム建設は,投下費用に比して得られる利益は僅少であるから,同ダムを建設して対処する必要はない。また,渇水対策についても,後記イのとおり,木曽川水系における「渇水」発生のメカニズムを検討すると,木曽川における渇水調整によって解決が可能であり,徳山ダムからの水の補給は不要である。 ア不特定容量について(ア) 水利権流量(農業用水)A 取水制限被告らは,平成6年渇水において,7月18日から9月19日までの64日間,農業用水の取水制限率が40~70%に達し (ア) 水利権流量(農業用水)A 取水制限被告らは,平成6年渇水において,7月18日から9月19日までの64日間,農業用水の取水制限率が40~70%に達したことから,徳山ダムが必要であると主張する。 しかし,この取水制限を受けたのは,横山ダムの農業用水(乙115-26頁),具体的にはα3取水口で取水する西濃用水であって,α2地点の下流の農業用水における取水制限率を示すものではない。 ところで,揖斐川においては,α3取水口で西濃用水(右岸)14‰/S,西濃用水(左岸)9‰/Sが取水される。このため,α3~α2間は表流水が少なく,これがα2地点流量零という事態に影響している。しかし,西濃用水で取水された表流水はα2地点下流で揖斐川に戻り,揖斐川の表流水は復活しているし,α2地点下流では牧田川,津屋川などからの合流もあり,福束用水,長良川用水等には取水制限の影響はなかった。 B 農業被害の有無農業用水の取水制限で問題となるのは,農業被害の発生の有無であり,取水制限が行われても農業被害が発生しなかったのであれば,取水制限だけを取り上げて問題視しても意味がない。被告らは,取水制限率を問題にしているが,農業被害の具体的損害額等には触れておらず,「里芋,キュウリ,ナスなどの野菜に枯死などの被害(大垣市)」という説明があるのみで,定量的データは示されていない。 (イ) 河川維持流量α2地点下流の河川維持流量は9.4‰/Sであるので,α3地点より下流は約10‰/Sが揖斐川における河川維持流量と考えられる。 乙115-16頁の「揖斐川・α2流量について」は,昭和17年から昭和42年 は9.4‰/Sであるので,α3地点より下流は約10‰/Sが揖斐川における河川維持流量と考えられる。 乙115-16頁の「揖斐川・α2流量について」は,昭和17年から昭和42年までの26年間における揖斐川のα2地点における流量を示すものであるが,これによれば,低水流量では10‰/Sを下回った年はなく,1年のうち275日以上は10‰/S以上が流れていたことになる。渇水流量,最小流量では10‰/Sを下回る年がでてくるが,その期間は10日以下(渇水流量),1日だけ(最小流量)にすぎない。このデータはダムのない時代のものであって,河川の自然な状態を表したものである。揖斐川では常に10‰/Sを超える流量があるわけではなく,河川の流量は時季によって大きく変動していて,かかる変動によって河川生態系に与える影響はほとんどないのである。 したがって,河川維持流量への対処を巨額の費用を投じて行うことは不合理である。 イ渇水対策容量について(ア) 「渇水」の意味乙115-20頁の木曽川水系の取水制限の状況によると,同取水制限の内容は,木曽川水系のダム依存水利権の取水制限であるので,被告らのいう「渇水」とは,ダム依存水利権の取水量(最大取水量)の制限を指していると思われる。 しかし,「渇水」とは,節水をしないで水使用を続けてダムの貯水量がゼロになった状態であり,取水制限とか節水をしているというような状況まで含めるのは誤りである。すなわち,取水制限は最大取水量(乙104)に対するものであるところ,実際には,最大取水量と日平均給水量との間にかなりの開きがある上,工業用水道や上水道は施設として配水池,調整池を有していて,最大取水量で取水できるとき貯水し,取水制限が直 に対するものであるところ,実際には,最大取水量と日平均給水量との間にかなりの開きがある上,工業用水道や上水道は施設として配水池,調整池を有していて,最大取水量で取水できるとき貯水し,取水制限が直ちに水使用に影響を与えないような工夫もなされている。したがって,取水制限が行われても水使用に不都合を生ずるようなことはない。給水制限に直結しない単なる取水制限は「渇水」ではなく,渇水対策の「渇水」は厳密な意味での渇水でなければならない。 水利権には,河川の自流がある限り取水できる自流水利権と,河川が基準流量を下回ると自流取水ができずダム放流をして取水しなければならないダム依存水利権の二つがあるところ,前者は河川の自流がなくならない限り取水できるが,後者は河川の水が基準流量を下回っていれば取水できなくなる。ところで,ダム湖の貯水量の減少は,降水という自然現象に左右されるダム貯水,ダム依存水利権にとり不可避なもので,これに対応するための取水制限は,ダム操作,ダム依存水利権上予定されていることであるから,渇水ではなく,予定された取水制限なのである。 (イ) 利水基準年に基づく計画新規利水のための水資源開発は,およそ10年に1回程度の頻度の少降水量に対応することを計画規模としているが(利水基準年),最近の20年間は,昭和40年代以前に比べ降水量の少ない年が多くなっており,計画対象とした年の降水量が10年に1回の頻度でなくなっている。ところが,ダムの計画対象年は計画から変わっていない。利水安全度10分の1とは,どの年代でも10年に1回ではなく,過去の一定年間の降雨や流量のデータを基に,概ね10年に1回程度発生すると想定される規模の渇水の年(利水基準年)においても必要水量を安定的に供給できることをいうのであ 年代でも10年に1回ではなく,過去の一定年間の降雨や流量のデータを基に,概ね10年に1回程度発生すると想定される規模の渇水の年(利水基準年)においても必要水量を安定的に供給できることをいうのである。 (ウ) 基準流量の設定,その内容ダム依存水利権は新規の水利権で,既存水利権の自流使用に影響を与えない範囲でしか自流取水ができないため,各河川の各地点ごとに「基準流量」が設定され,これを下回る時は,ダムから補給水を放流して取水しなければならない。基準流量は,既存水利権の水量確保のための「水利権流量」と河川や河口域の環境維持を目的とする「河川維持流量」を含めたものである(河川法施行令10条2号)。 木曽川水系で設定されている基準流量のうち本件に関係するのは,①α5地点100‰/S,②α6地点50‰/S(以上木曽川),③α7地点200‰/S(5月1日~10月3日,木曽川本流)である。 上記のダム貯留制限流量(α5地点基準流量),自流取水制限流量(α6,α7地点基準流量)をいずれも満たしていなければ,新規水利権者はダムの貯水ができない。 上記基準流量の内容を分析すると,次のようになる。 A 水利権流量木曽川での基準流量(特にα5地点100‰/S)を構成する水利権流量の自流水利権は,そのほとんどは農業用水で,愛知県側では犬山頭首工・濃尾用水44.54‰/S,α6頭首工・木曽川用水(濃尾第二地区)20.44‰/Sの合計64.94‰/S,岐阜県側(α6頭首工)6.52‰/S,三重県側(α6頭首工)5.19‰/Sの合計76.25‰/Sである。その他に,名古屋市水道用水の7.56‰/Sがあり,総合計で83.81‰/Sである(甲71) 岐阜県側(α6頭首工)6.52‰/S,三重県側(α6頭首工)5.19‰/Sの合計76.25‰/Sである。その他に,名古屋市水道用水の7.56‰/Sがあり,総合計で83.81‰/Sである(甲71)。 このように,農業用水,とりわけ愛知県側の農業用水の水量が非常に多い。ところが,減反と宅地等への転用で,合口取水のための頭首工が計画された昭和30年代に比べて,水田面積が大幅に減少しており,農業用水の実際の必要量は,前記自流水利権量(最大取水量)より大幅に減少しているのが現実である。 しかし,実際は使用されない水利量であっても,権利上の水利権量が基準流量になっているため,この流量を維持しなければならず,そのためにダムに貯水ができないダム操作規程になっている。その結果,ダム貯水量が減少していくことになる。 B 過大な河川維持流量α6地点50‰/Sは,基準流量のうちの河川維持流量である。この河川維持流量は,木曽川の下流部の水質確保のためとされている。しかし,水量は常時50‰/S以上であることを要しないものと考えられる上,木曽川と同程度の規模の他の河川と比べて過大な流量となっている。 上記α6地点の基準流量50‰/Sは,その上流の全ての新規水利権の自流取水を制約しており,この流量を下回るときは,新規水利権者は自流取水ができず,必要量はダム放流水で補給しなければならない。このため,上流ダムはダム貯水量が減少していくことになる。α6地点の過大な河川維持流量のため,上流ダムの貯水量が減少していくことになる。 C 人為的に起こる渇水以上のように,木曽川の牧尾・味噌川・阿木川ダム(愛知用水)や岩屋ダム(木曽川総合用水)の貯水量が減少していき,貯 減少していくことになる。 C 人為的に起こる渇水以上のように,木曽川の牧尾・味噌川・阿木川ダム(愛知用水)や岩屋ダム(木曽川総合用水)の貯水量が減少していき,貯水率が零になるのは,降水量という自然条件を前提とするが,具体的には基準流量によるダムの貯水の制約による。基準流量という人為的なものが渇水の要因の一つなのである。 (エ) 自流による渇水調整降水量が前記(イ)の計画対象年の降水規模を下回るときは,計画規模を超えていることになり,当該ダムの対応限界を超えた計画対象外で,このような場合には,渇水調整で対応すべきである。すなわち,計画対象年の降水を下回る場合,自流水利権や河川維持流量との渇水調整(河川法53条,53条の2等)が必要に応じて行われる。木曽川は,余剰のある豊富な①農業団体の自流水利権,②河川維持流量があるので,これらとダム依存水利権者とが渇水調整を行うことによって,ダム依存水利権者の水利利用が可能となる。具体的には,農業用水から都市用水への一時的転用,河川維持流量の一時的切下げである。また,完成した味噌川ダム,阿木川ダムと牧尾ダム,岩屋ダムとの総合的運用も有効である。ダム建設よりも,このような渇水調整の方が容易かつ低廉であることは明らかである。 今後の渇水対策は上記の方法をとるべきで,あらゆる異常渇水(例えば平成6年渇水)に対して,木曽川の基準流量を前提として,新規利水者にはダム補給水で対応しようとするのは,環境破壊を招く上,費用対効果の点でも見合わない。しかして,上記の方法をとれば,徳山ダムの渇水対策容量は必要がないことになる。 (オ) 揖斐川からの取水,導水は計画がない既設都市用水供給事業は,一部を除い 見合わない。しかして,上記の方法をとれば,徳山ダムの渇水対策容量は必要がないことになる。 (オ) 揖斐川からの取水,導水は計画がない既設都市用水供給事業は,一部を除いてα7,犬山,尾西,α8(α6)など木曽川から取水しているところ,徳山ダムは揖斐川にある。したがって,徳山ダムの渇水対策容量の開発水をこれらの都市用水供給事業が使用するためには,揖斐川への取水堰等の取水施設と,そこから長良川を越えて木曽川の取水施設に至るまでの導水施設の各建設が必要である。ところが,これらの取水施設,導水施設は,建設されていないのはもちろんその計画すらないから,徳山ダムが建設されても,徳山ダム渇水対策容量の開発水は利用できないという問題もある。 (2) 洪水調節について揖斐川の治水は工事実施計画に基づくもので,その洪水防御計画の内容は下記のとおりであるが,その内容は不合理である。 記基準点岐阜県大垣市α2地点(約40.6㎞地点)基本高水ピーク流量,計画高水位  6300‰/S,7.09m(零点高標高5.0m)計画堤防高計画高水位+余裕高2.0m河道流量 3900‰/Sダム削減流量 2400‰/S基本高水ピーク流量の決定  2日間計画降雨量395mm(1/100規模)を過去の洪水の雨量において引き伸し,ピーク流量が最大となった昭和34年9月洪水を対象とする。 ア工事実施計画における揖斐川の洪水防御計画の不合理性後記(ア)から(ウ)までのとおり,洪水防御の対象となる基本高水ピーク流量において,6300‰/Sの年超過確率は防御対 工事実施計画における揖斐川の洪水防御計画の不合理性後記(ア)から(ウ)までのとおり,洪水防御の対象となる基本高水ピーク流量において,6300‰/Sの年超過確率は防御対象となっている計画規模の年超過確率1/100ではなく,それを上回るものになっている。 また,河川の洪水防御計画で防御対象として求めたいのは洪水のピーク流量であるから,過去の洪水での最大流量を年超過確率で評価して,防御対象とする基本高水のピーク流量にするなどの方法の方が合理的である。 (ア) 数類型の資料の使用工事実施計画における揖斐川計画降雨からの基本高水,ピーク流量の求め方は,計画規模を年超過確率1/100,計画降雨の期間を2日間として,過去の2日間の雨量記録から年超過確率1/100に対応する計画降雨量を求め,その2日間計画降雨量と過去の代表的洪水(昭和28年9月,昭和34年8月,同年9月,昭和35年8月,昭和40年9月)での実績2日間降雨量の比で,実績の時間降雨量と地域降雨量を引き伸ばし,これを流出解析して河川流量に転換して,各洪水型毎の洪水流量ハイドログラフとそのピーク流量を求めた上,その中から防御の対象とする基本高水とそのピークを選択するというものである。 そうすると,検討し選択した降雨と洪水は,計画降雨での年超過確率1/100をさらに細分化したものとなり,5類型の資料を用いているから年超過確率1/500となり,年超過確率1/100を超える過大なものとなる。 (イ) 2日間雨量の使用基本高水ピーク流量は,比較されている降雨の期間は2日間雨量を用いて算出されているところ,2日間雨量が比較的少なくても短時間の雨量が多いと洪水のピーク流量は多く (イ) 2日間雨量の使用基本高水ピーク流量は,比較されている降雨の期間は2日間雨量を用いて算出されているところ,2日間雨量が比較的少なくても短時間の雨量が多いと洪水のピーク流量は多くなりやすく,過大な流量になることがある。昭和34年9月の洪水は,まさにこのような2日間雨量は多くないが短時間に降雨が集中して(12時間程度),その間の雨量が多かったため流量が多くなった場合であるから,同洪水の時間雨量を2日間雨量の比で引き伸ばして求めた流量は,計画規模を超えた過大な流量であるおそれがある。 (ウ) カバー率基本高水決定においては,各洪水類型の解析で得られたピーク流量を,カバー率によって比較検討し,過大な基本高水のピーク流量が選択されないようにしなければならない。カバー率は,ある年超過確率の計画降雨量から求めた洪水ハイドログラフ群におけるピーク流量の充足率のことで,カバー率50%は理論的に最も起こりやすい場合であって当該年超過確率(例えば1/100)の流量に相当するところ,例えば,技術基準案では,カバー率50%以上となっており(乙34の1-16頁),過大な基本高水のピーク流量が選択されないようになっている。 しかるに,揖斐川において検討対象とした各代表洪水5類型でのピーク流量(乙11の3-26頁)のうち,使用された6300‰/Sは,検討対象とした洪水ハイドログラフ群の中の最大値で,資料の中ではカバー率100%となっており,50%を大きく上回る過大なものである。 イ徳山ダムの洪水調節効果の限界徳山ダムによる洪水調節効果は,ピーク低減量の推計によれば(乙11の4-73頁),昭和34年9月洪水では1600‰/S,他の4洪水では300~800‰/Sで 徳山ダムの洪水調節効果の限界徳山ダムによる洪水調節効果は,ピーク低減量の推計によれば(乙11の4-73頁),昭和34年9月洪水では1600‰/S,他の4洪水では300~800‰/Sである。降雨の地域分布を見ると,昭和34年9月洪水は徳山ダム集水域に多く雨が降ったが,昭和35年8月洪水は根尾川上流に多く雨が降った(甲41-144,145頁)。揖斐川は本流の外に,大きな支流として根尾川があり,他の支流として坂内川,粕川,牧田・杭瀬川もある。これを流域面積に関する資料(乙11の4-65,66頁)によって検討すると,流域面積では,徳山ダム集水域は254.5k‰でα2地点より上流流域の21%に過ぎない。このように,徳山ダムは,α2地点より上流の揖斐川全集水域の約20%に降った雨の水しか貯めることはできず,残りの約80%の流域に降った雨による流量は削減できない。昭和35年8月洪水(計算ピーク流量5300‰/S)で,低減量300‰/S,低減率0.06であるのはそのためである。 平成14年7月9日,10日に台風6号の影響を受けて,揖斐川流域では大雨があり,揖斐川は洪水となり,特に,α2地点はこれまでの最高水位の7. 38m(TP12.38m)を記録した。この洪水において,α2地点の水位は急激に上昇し,最高水位が計画高水位を約30㎝超えた最大の原因は,根尾川流域に降った雨であった。そして,揖斐川本流の雨は横山ダムで流量が調節,削減され,α2地点の上記水位の上昇にさほど寄与していない。すなわち,徳山ダム集水域に降った雨は,α2地点の水位上昇に大きな影響を与えておらず,徳山ダムは,平成14年7月洪水の場合,α2地点の水位を低減させる量は少なく,洪水流量を削減する洪水調節ダムとしてさほど意味がないのである。 ウ河道の流下能力 大きな影響を与えておらず,徳山ダムは,平成14年7月洪水の場合,α2地点の水位を低減させる量は少なく,洪水流量を削減する洪水調節ダムとしてさほど意味がないのである。 ウ河道の流下能力工事実施計画で計画対象となっている洪水は,昭和34年~同38年であり,昭和50年以前であるところ,これは水位に対して流量が一番高くなっている時期である(甲42-2頁)。基本高水のピーク流量を6300‰/Sにしたのは昭和43年で,河道はその前の時期の測量結果である。したがって,昭和50年以降の河道では,3500‰/S以上の流量が流れる水位(例えば,基本高水ピーク流量6300‰/Sが流れる水位)は,昭和50年より前の河道での水位よりも高くなる。 過去の洪水の水位・流量をみると,昭和40年8月洪水の11.12m・4200‰/S(実測10.07m・4,230‰/S)に対して,昭和50年8月洪水は12.37m・4200‰/S(実測12.37m・4414‰/S)である。同じ流量4200‰/Sでも,昭和50年洪水の方が水位が1.2m高い。この違いの原因は,計測流量が精確とすれば,河道の状態にある。 河川の流量は,流水の断面積,勾配,潤辺によって決まるが,この計算に用いられる式としてマニングの平均流速公式がある(甲42)。これらの関係は次のとおりである。 流量:Q=AVQ=f(A,S,I) ……………(1)マニングの公式:1V = R2/3 I1/2 ……………(2) V = R2/3 I1/2 ……………(2)nQ =AV  A=Bh ゆえ 1 1Q = Bh h2/3 I1/2 = Bh5/3 I1/2 ……………(3)n nQ:流量  V:平均流速  A:流水断面積S:潤辺(流水の側底辺長) R:径深(A/S),河川ではR≒水深hI:水面勾配(≒河床勾配i) n:粗度係数(流れにくさの係数)B:水面幅(河床幅b+2h・堤防勾配mであるが,長方形としてB=bとする)(2)式がマニングの平均流速公式である。一断面でnは1つである。 河道横断面の形状は均一ではなく,低水路,高水敷き,その他河床の起伏のある複数の断面であるのが通常である。(2)式を基本式として,断面を同じ形状毎に細分割して流速を求め,それを合わせて全断面における流速を求める(分割断面毎にnを与える。nが断面数ある。)。 河川の水位計算は,河川縦断方向に一次元的な流れとして不等流計算が行われる。河川縦断方向に断面を設定して,下流から縦断断面毎に水位と流速を求めて,それを上流縦断断面へと逐次繰り返して計算される。断面毎の水位や流速を決める要素は,上記(1)式における断面積要素A,勾配要素I,潤辺要素S(径深R 定して,下流から縦断断面毎に水位と流速を求めて,それを上流縦断断面へと逐次繰り返して計算される。断面毎の水位や流速を決める要素は,上記(1)式における断面積要素A,勾配要素I,潤辺要素S(径深Rと粗度n)である。基本的要素はマニングの公式と同じである。マニングの公式の(3)式では,(1)式での断面積要素はA=Bh,勾配要素はi,潤辺要素(径深,粗度)はhとnである。 これらの流速を決める要素に違いがあれば,流量Qは変わる。したがって,河川の同じ地点で流量Qに違いがあれば,その原因は,当該地点の断面積A,勾配i,潤辺(水深hと粗度係数n)に違いがあるためである。また,同じ流量のとき河川の異なった地点で水位が違うのは,地点毎に断面積A,勾配i,潤辺(水深hと粗度係数n)に違いがあるためである。 エ河道改修による現況河道の流下能力拡大の検討(ア) 河道改修による粗度の低下現況河道は,計画河道に比べて流れにくい粗度係数である。現況河道は,粗度係数nの大きいこと,すなわち流れにくさが計画高水位で流しうる計算流量を少なくしているし,計画高水流量での計算水位を高くしている。 マニングの公式等平均流速の公式では,例えば前記(3)式のように,流量は1/nに比例する。粗度係数nが大きいと流れにくく,同じ水位でも流量は小さい。また,同じ流量では,水位は高くなる。 したがって,現況河道から計画河道に改修されれば,河道の流しうる流量は1.23倍増大する。 昭和50年8月洪水のα2地点実測流量4400‰/S(水位TP12.37m,計画高水位はTP12.09m)の1.23倍は5400‰/Sである。これに対して,計画高水流量配分図(乙115-7頁)では,基本高 0年8月洪水のα2地点実測流量4400‰/S(水位TP12.37m,計画高水位はTP12.09m)の1.23倍は5400‰/Sである。これに対して,計画高水流量配分図(乙115-7頁)では,基本高水流量6300‰/Sから横山ダムカット分1080‰/Sを引くと,河道流量は5220‰/Sとなる。計画河道に改修されると,計画高水位程度の洪水であれば,横山ダムのみで河道流量を流せる流下能力になる。 (イ) 計画河床とするための河床浚渫等A 河床の浚渫計画河床にするための浚渫により河積が増加するので,河道の流下能力は増大する。計画河床への浚渫は,(3)式のマニングの公式等平均流速公式では,断面積Aと水深hの増加の原因となる。 平成10年の測量結果で,現況平均河床高(低水路での平均)は計画河床高よりも高い(甲42)。200m毎でみると,数区間を除けば,1~3m,現況河床は計画河床よりも高い。35㎞地点~41㎞地点では,37㎞地点の1km程(0.7~0.8m高い)を除けば,現況河床は1.3~2.3m計画河床より高い。α240.6㎞地点では,現況河床はTP4.26mで計画河床はTP2.95mと2.31m現況河床が高い。河床と計画高水位との差(水深)は,計画は9.13m(TP12.08m-TP2.59m)で現況は6.82mである。計画河床高への浚渫により,計画高水位以下で流下させうる流量は,マニングの公式ではQはR(5/3)に比例するので,約1.29倍になる。 実測流量4400‰/Sを記録した昭和50年8月洪水でも,資料のある27㎞地点より上流全てにおいて,同年現況平均河床高は計画河床高よりも高い。計画河床高への浚渫により,計画高水位以下での流下させう 400‰/Sを記録した昭和50年8月洪水でも,資料のある27㎞地点より上流全てにおいて,同年現況平均河床高は計画河床高よりも高い。計画河床高への浚渫により,計画高水位以下での流下させうる流量は,マニングの公式では約1.18倍になる。 B 河積の拡大揖斐川の河積は,現況河積が計画河積よりも小さい。現況河道は,計画河道に比べて河積不足で,浚渫等により河積拡大される。 34㎞地点~39㎞地点,特に35㎞地点,39㎞地点は,上下流よりも,現況も計画も河積自体が小さい。河積自体が上下流に比べて小さい以上,同じ流量の洪水が流れたとき,この区間で水位が高くなるのは当然である。計画河積も小さいのであるから,計画河道になっても,この区間の水位は,上下流に比べて高くなる。 22㎞地点,23㎞地点,27㎞地点は,現況河積が計画河積よりも大きい。実際の河川工事において,計画河積以上に河積を拡大している。牧田川が28㎞地点付近で,津屋川が22㎞地点付近で揖斐川に合流しており,この区間の河積増大は,合流による揖斐川の水位上昇に対する対策と思われる。河川の場所毎の実際に応じて計画河積にとらわれずに,部分的な河積拡大の対応をしている。 このように,計画にとらわれずに実際の河川工事で計画河積以上に部分的に河積を拡大していることは重要である。計画河積を前提としても,河川の実情に応じて必要があれば河積を拡大することができるのである。また,計画河床も年代によって変更されている(甲42-8頁)。 C 余裕高計画高水位に余裕高を加えて計画堤防高にするが,工事実施計画での揖斐川の余裕高は2.0mとなっている。 る(甲42-8頁)。 C 余裕高計画高水位に余裕高を加えて計画堤防高にするが,工事実施計画での揖斐川の余裕高は2.0mとなっている。 しかし,揖斐川の基本高水のピーク流量は6300‰/Sであり,河川管理施設構造令20条(乙79-108頁)に基づく計画高水流量6300‰/Sの規模に必要な余裕高は1.5mである。 したがって,揖斐川の計画堤防高はそのままにして,余裕高を2. 0mから,基本高水流量の6300‰/Sに応じた構造令基準の1.5mにすると,その高さが計画高水位である。これによって,余裕高2mより計画高水位が0.5m上昇するので,計画高水位での流下能力は増大する。 オ小括河川の洪水防御対象となる基本高水のピーク流量からみると,揖斐川の基本高水のピーク流量6300‰/Sは,その年超過確率は防御対象となっている計画規模の年超過確率1/100ではなく,それを大きく上回るものである。 また,徳山ダムは,α2地点より上流の揖斐川全集水域の20%の地域に降った雨の水しか貯めることができないので,徳山ダムの洪水調節による揖斐川の洪水防御効果は限られている。 さらに,洪水が流れる河道での対策は,河道でどの程度の防御が可能か十分に検討する必要があり,そのうえで,河道の洪水防御の負荷を低減するため,流域での河道への流入低減や河道からの流出を検討すべきである。揖斐川の場合,現況河道から計画河道に改修されると,粗度が改善され,水深が増大し,河積が増大する。これらによって,計画高水位以下で流下させうる流量は増大する。また,計画堤防高を変えずに余裕高を河川管理施設構造令での揖斐川の基本高水のピーク流量に ,粗度が改善され,水深が増大し,河積が増大する。これらによって,計画高水位以下で流下させうる流量は増大する。また,計画堤防高を変えずに余裕高を河川管理施設構造令での揖斐川の基本高水のピーク流量にあった基準にすれば,計画高水位が上昇するので計画高水位以下の流下能力は増大する。ところが,本件事業認定に際し,このような検討がされていない。 結局,洪水調節のために,徳山ダム建設は必要がないのである。 (3) 発電について徳山ダムの水力発電計画は混合型揚水発電所が中心である。揚水発電は,原子力発電所が出力調整ができないため夜間に余る電力を利用し,揚水して水力発電し,貯蔵できない電力を再使用するというものである。 この発電は,電力の需要が少なく発電した電力が余る夜間に下部の調整池から上部の調整池に水を汲み上げ,需要が多い昼間に水を落として発電するところ,発電される電力量が汲上げに要する電力量より少ないので効率が悪く,また,1日数時間しか稼働しないため設備利用率も低い。 電力需要の低下に伴い,それに伴う需要がないため,中部電力株式会社その他の電力会社でも揚水式発電所建設計画を延期,中止しているのが発電計画の流れであり,徳山ダムに係る発電についても,その電力需要の見込みはない。このように,徳山ダムは発電の点でも不要な施設である。 5 本件起業地が本件事業の用に供されることにより失われる利益(1) 自然環境の破壊,特に大型猛禽類への悪影響本件起業地における自然環境の問題点の中で,とりわけイヌワシ,クマタカなどの大型猛禽類の保護は特別な考慮が払われる必要がある。すなわち,イヌワシ,クマタカなど大型猛禽類は生態系の頂点に立つ生物であり,その存在は,捕食する生物等様々な生物の存在を前提と ワシ,クマタカなどの大型猛禽類の保護は特別な考慮が払われる必要がある。すなわち,イヌワシ,クマタカなど大型猛禽類は生態系の頂点に立つ生物であり,その存在は,捕食する生物等様々な生物の存在を前提とするため,絶滅への圧力に非常に弱い種である。そのため,それらの種の存在は当該地域の自然度を示す重要な指標となるが,本件事業の環境影響調査には重大な問題があり,しかも十分な保全策はとられていない。本件事業は,絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(以下「種の保存法」という。)及び文化財保護法に違反するものである。 ア公団の調査の問題点(ア) 自然保護協会の公開資料財団法人日本自然保護協会(略称NACS-J。以下「自然保護協会」という。)は,平成11年12月7日,「公開資料」(丙12の1)及び「公開資料添付文書」(甲17,丙12の2)を発表したが,上記「公開資料添付文書」において,以下のとおり,公団の行った猛禽類の調査報告には大型猛禽類調査の本質に関わる問題点が複数あると指摘した。 A イヌワシに関する問題点イヌワシに関する問題点は,別表Ⅲ(甲17,丙12の2)記載のとおりであるが,最も大きな問題点は,調査すべきペアのすべてを対象としていない点,対象ペアについても生息環境利用の解析を繁殖期データのみを取り出して行うなど必要十分なデータに基づいて行われていない点,個体識別ができなかった場合のデータを利用しなかった点にある。調査対象ペアの選択の問題点についての参考データは同表のイヌワシ付表①,調査体制,データ量の問題についての参考データは同表のイヌワシ付表②記載のとおりである。 イヌワシは周年にわたってペア関係を維持し,ペアハンティングも行う猛 表のイヌワシ付表①,調査体制,データ量の問題についての参考データは同表のイヌワシ付表②記載のとおりである。 イヌワシは周年にわたってペア関係を維持し,ペアハンティングも行う猛禽類である。したがって,生息状況の把握にあたっては,ペアが周年にわたって生息するエリアを調査対象として観察を続けることが必要である。その上で,その地域において周年生息することを可能とする行動圏内のハンティングエリアを保全することによって繁殖活動が可能となる。 イヌワシは,行動圏内に散在するハンティングエリアを飛行しながら探餌することが多く,ハンティングエリア間の移動も尾根上又は高空を飛行することが多い。そのため,クマタカに比べて目視しやすいので,これを連続的に追跡すれば個体識別は可能となり,そのような観察結果が得られるよう調査シフトを敷くことが重要である。 繁殖活動を維持・成功させるためには,まず営巣場所と繁殖期のハンティングエリアを特定する必要がある。イヌワシは岩崖に営巣することが多く,ペアが代わってもほとんどの場合同一場所が永続的に利用されるため,営巣場所を厳密に保護しなければならない。また,繁殖期においては,巣から近いところに安定した良好なハンティングエリアが存在することが繁殖成功にとって必要である。 かかる高頻度利用域の特定の他,その外側に存在する潜在的,代替的ハンティングエリアの推定が必要で,これらを含めて繁殖環境を保全するという考え方に立たなければ,イヌワシの生息環境は守れない。 調査期間については,気象や植生の変化等によりハンティング場所が変わるところもあることから,原則として繁殖成功年を含む最低3年間の調査が必要である。 B クマタカに関する問題点 調査期間については,気象や植生の変化等によりハンティング場所が変わるところもあることから,原則として繁殖成功年を含む最低3年間の調査が必要である。 B クマタカに関する問題点クマタカに関する問題点は,別表Ⅳ(甲17,丙12の2)記載のとおりであるが,最も大きな問題点は,このような多数の個体が出現する場所における影響評価,保全対策に結びつける根拠となるデータ収集が十分できておらず,限られたデータにいくつもの推定を重ねることで,わからないことまで解明できたと表現されていることにある。 調査対象ペアの選択の問題点についての参考データは同表のクマタカ付表①,調査体制とデータ量の問題についての参考データは同表のクマタカ付表②,クマタカのペア毎に線引きされた行動圏内部構造の境界線と実際のデータの整合性に関する疑問点の参考データは同表のクマタカ付表③記載のとおりである。 クマタカは,繁殖期以外は基本的には単独生活を行っており,生息状況の把握に際しては,通年にわたってクマタカの社会を構成するすべての個体の生息環境利用を把握していく必要がある。 地域個体群におけるクマタカ繁殖ペアの行動圏は連続して存在し,相互にオーバーラップしているため,調査はペアごとのハンティングエリアやコアエリアを特定することに絞るよりも,地域個体群を構成するすべての個体のハンティングエリアを特定する方が,クマタカと人為的な環境改変の影響予測や保全対策の基礎データとするための調査としては現実的である。このようなデータに基づく保全対策がなされれば,その地域には繁殖ペアが安定して確保されることとなり,地域個体群の保護が可能となる。クマタカのハンティングの大半は,木に止まって獲物の現れ 実的である。このようなデータに基づく保全対策がなされれば,その地域には繁殖ペアが安定して確保されることとなり,地域個体群の保護が可能となる。クマタカのハンティングの大半は,木に止まって獲物の現れるのを待つタイプであり,止まり場所の多くはハンティングエリアを示すものとして評価され得るから,調査に当たり,このことを前提に調査計画を立ててデータ解析する必要がある。 その上で,繁殖ペアが繁殖を成功させるための営巣場所を含む繁殖テリトリーの特定が不可欠となる。営巣場所は,巣を架けるに十分な大木が,標高,隣接ペアの巣との距離,斜度,周囲の林等の要素を満たして存在しなければならず,かなり限定されている。このような基本的な生態の理解の上,調査計画を立てる必要がある。 (イ) 自然保護協会の指摘自然保護協会総務部長は,同協会機関紙「自然保護」(甲18)において,公団の調査報告の基本的問題点を次のように指摘している。 ① 調査開始の段階で影響の有無を判断し,調査対象を限定したところ,対象外としたものが予想に反して開発地域を利用していることが途中で確認されたのに,調査対象に入れていない。これはイヌワシに関して顕著で,調査対象外とされたペアの影響評価ができていない。 ② 個体識別を基本とする最新の調査方法を,その方法を知った時点から採用したが,その方法に見合った調査体制を敷かなかった。同時に観察する範囲をあまりに広くとったことなどから,個体識別までできた観察記録はわずかしか集められなかった。ところが,それでもマニュアルどおりに結論を導こうとしたため,観察記録を積み上げて重要な範囲を浮き彫りにするのではなく,推測に頼らざるを得なくなった。 ③ 資料は,個体識別でき った。ところが,それでもマニュアルどおりに結論を導こうとしたため,観察記録を積み上げて重要な範囲を浮き彫りにするのではなく,推測に頼らざるを得なくなった。 ③ 資料は,個体識別できなかった記録が非常に多いのが特徴(クマタカでは9割)だった。その上,個体識別に拘った結果,このデータを解析に用いず事実上捨象したが,同データも,その種がその場所を利用したという確かな観察記録ではあるので,活用すれば猛禽類の生息状態はもう少しよくわかったはずである。 ④ 調査中に予備工事や環境改変が進められ,繁殖活動が行われている際の生息環境利用状況等,ありのままの生息実態がつかめていなかった。公団は,保全対策の目標を「繁殖活動の維持」に置くとしながら,繁殖活動を継続観察できる環境を維持しなかったのは自己矛盾である。 (ウ) 小括徳山ダム建設計画地域となっている揖斐川上流地域は,他の地域では見られないほど複数の個体が存在しており,本来の意味での地域個体群の保護を考えるべきフィールドである。この流域に生息するイヌワシとクマタカの生息環境利用について解析を行えば,今回の公団の調査結果のようにペア毎に見ることでは十分データが入手できない場合でも,2種についての一定の考察は可能である。当該種の生息環境利用を把握し,その上でペアも含めた各個体に対するその環境の機能を明らかにしていく調査解析方法をとるべきなのである。 しかるに,公団は,そのような方法をとっていない上,野生動物の生息実態,特にその地域における猛禽類の生息状況やその特性を正確に把握するためには調査期間内に予備工事を行うべきでなかったのにこれを行った。さらに,この調査資料は事業主体の自主的な調査結果のまとめであり,観察した日付順の生 おける猛禽類の生息状況やその特性を正確に把握するためには調査期間内に予備工事を行うべきでなかったのにこれを行った。さらに,この調査資料は事業主体の自主的な調査結果のまとめであり,観察した日付順の生データと事業者としての解析結果を羅列しただけのものであり,結果を導いた道筋を説明する文章が付けられていないという資料自体の問題点もある。調査,解析対象とされた猛禽類がイヌワシとクマタカのみで,これら2種と制度的に同じ位置付けがされているオオタカ等の猛禽類が解析,評価対象とされていない点も問題である。 イ公団の見解及びこれに対する自然保護協会の批判(ア) 公団の見解公団は,自然保護協会の「公開資料添付文書」に対して,平成11年12月10日,「(財)日本自然保護協会『添付文書』に対する水資源開発公団としての見解」(丙13)を発表し,実務者としての公団の立場に立てば,すべての意見を受け入れることは極めて困難であり,徳山ダムは治水,利水のため必要不可欠な施設で完成工期の遅延は許されないとの立場を表明し,平成12年2月29日,「徳山ダム周辺の希少猛禽類とその保全」(丙14)を発表し,本体工事に着手しようとした。 (イ) 自然保護協会からの批判これに対し,自然保護協会は,平成12年3月14日,「徳山ダム建設予定地周辺の猛禽類の保全に関する意見書」を発表し,この中で次のような問題点を指摘した。 ① 徳山ダムにおける猛禽類調査は,地域の生息状況を把握したスクリーニング調査ができた段階であるのが現状であると考えられ,解析に十分な調査がなされたとはいえない状況にある。一度すべての計画及びそのスケジュールを見直し,自然保護と開発活動に関わる自然環境調査のあり方を議論すると共に,猛禽類の地域個体群 あると考えられ,解析に十分な調査がなされたとはいえない状況にある。一度すべての計画及びそのスケジュールを見直し,自然保護と開発活動に関わる自然環境調査のあり方を議論すると共に,猛禽類の地域個体群としての環境保全に必要な措置とその根拠とは何かを議論すべきといえる。しかし,公団が発表した「徳山ダム周辺の希少猛禽類とその保全」は,調査段階を飛び越え,影響評価,保全対策の段階にまで一気に突き進もうとするものであり,公団が掲げる「治水・利水と環境保全の両立」という基本姿勢に反する。 ② 公団の影響評価,保全対策について,これを妥当と判断した専門家の氏名が記載されていない。公団が委嘱していた徳山ダムワシタカ類研究会委員は4名のうち3名が辞任し空中分解状態にあり,また今後委嘱予定の徳山ダム環境保全検討委員会は発足前であるため,この影響評価,保全対策は公団が事業者の立場で自ら判断し記述したものと考えられる。このような猛禽類の専門家のチェックを経ていない影響評価,保全対策を発表することは,希少猛禽類の生息環境の保全が極めて重要であることに着目して,その専門家の知見の吸収に努め,効果的な保全対策の立案に努めてきたという公団の希少猛禽類保護への取り組みの努力を無にするものである。 ウ本件事業認定の適法性への影響被告らは,自然保護協会の上記イ(イ)の意見書等は本件事業認定後の事実であり,同事業認定の適法性の判断に影響を及ぼさないと主張する。 しかし,公団の猛禽類調査が行われたのは平成8年5月から平成10年9月までであり,本件事業認定時にはその観察記録の取りまとめは既に行われていたものである。このような事業認定時に存在していた事実に対して適正に評価ができているかどうかは,まさに本件事業認定の適法性の判断に他ならないか 件事業認定時にはその観察記録の取りまとめは既に行われていたものである。このような事業認定時に存在していた事実に対して適正に評価ができているかどうかは,まさに本件事業認定の適法性の判断に他ならないから,自然保護協会の意見書等は本件事業認定に影響を及ぼす事実であるというべきである。 (2) 地方公共団体の財政破綻ア独立採算制岐阜県,愛知県,名古屋市において,徳山ダム建設事業費負担金等の支払は,水道事業や工業用水道事業の地方公営企業として特別会計を設け,経常収入による独立採算で支弁しなければならない(地方財政法6条)。そうすると,水道用水や工業用水に需要がないと,料金収入が得られないので,建設費償還金や費用負担金の支払ができないことになる。実際,岩屋ダムや長良川河口堰では,一般会計からの繰入れ,すなわち税金の投入が行われている。 イ名古屋市における徳山ダム建設費の負担甲38-図12に,名古屋市上下水道局が試算した木曽川水系の水資源開発への水道の事業参加にともなう名古屋市の水源開発費の償還額が示されている。このうち味噌川ダム,長良川河口堰については,水需要が低迷しているために取水用の専用施設を拡張していないが,償還が始まっている。これによれば,需要の伸び悩みによる料金収入の低迷と合わせて,償還額が水道事業の会計の負担を招いているといえる。徳山ダムについては,3‰/S分の開発水量を返上したものの,そのペナルティ支払と,なおも残っている2‰/S分の負担が生じる。水源開発費以上に,今後は取水,導水などの専用施設費,水源施設と専用施設の維持管理費等の負担が生じ,水道事業会計はさらにひっ迫すると予測される。 ウ岐阜県における徳山ダム建設費(工業用水分)の負担甲38-図13 の専用施設費,水源施設と専用施設の維持管理費等の負担が生じ,水道事業会計はさらにひっ迫すると予測される。 ウ岐阜県における徳山ダム建設費(工業用水分)の負担甲38-図13に,徳山ダムの開発水量のうち,岐阜県の工業用水の費用負担が示されている。 上記費用負担割合により,岐阜県の工業用水分は1000分の111であり,昭和60年単価で282億円とされている。その30%は国の補助金で賄われるが,岐阜県は建設期間中に21%を負担し,これについては県債を発行して支払っており,その元金と利子を現在償還中である。また,残り49%について建設期間中の利息を合わせた額を,公団に対して,完成後から23年間で元利均等償還することになっている。 徳山ダムは事業開始後の期間が長く,移転補償費支出等について高金利時代の部分を抱えているために,本来の事業費以上に金利部分の負担が増大している状態にある。 エ自治体財政の破綻平成13年7月,総務省は「水資源に関する行政評価・監視結果に基づく勧告」を行った(甲80)。この勧告は,現在の水資源開発について,水需要の予測と実績が大きく乖離していることを的確に指摘している。このような勧告を行った理由は,このまま水資源開発を進めていくと,やがて財政破綻を招くからにほかならず,無駄なダム開発に警鐘を鳴らすものである。 実際,岩屋ダムの岐阜県,愛知県及び三重県の工業用水,長良川河口堰の愛知県,三重県の工業用水及び名古屋市の水道用水について,使用されるあてのない水のために一般会計からの繰入れ,すなわち税金の投入が行われている。特に,岩屋ダムの岐阜県工業用水については,すでに建設費の支払が終了したにもかかわらず,稼動率は数%でしかなく, 用されるあてのない水のために一般会計からの繰入れ,すなわち税金の投入が行われている。特に,岩屋ダムの岐阜県工業用水については,すでに建設費の支払が終了したにもかかわらず,稼動率は数%でしかなく,ほとんど全てが一般会計の負担となっている。不要なダム建設を止めることは,自治体財政にとって緊急の課題である。 6 法20条3号要件該当性(1) 新規利水の有無の重要性前記2のとおり,徳山ダムについて,新規利水開発の必要性が根拠付けられないならば,本件事業は,その必要性がなく,法20条3号の事業認定要件に適合しない。したがって,この点において既に,本件事業認定は違法であり取消しを免れないというべきである。 (2) 3及び4と5の比較衡量被告らは,徳山ダムの目的として,都市用水の確保の他に,流水の正常な機能の維持,揖斐川の洪水調節,発電を挙げた上,環境保全対策の十分な実施等を考慮すると,本件事業は法20条3号要件に適合すると主張する。前記(1)のとおり,被告らが挙げる徳山ダムの他の目的は新規利水に付加されたものにすぎず,新規利水目的の欠如だけで既に本件事業認定は法20条3号の事業認定要件を欠くのであるが,被告人らが主張する目的等も検討する。 ア流水の正常な機能の維持について流水の正常な機能の維持の目的の一つは,揖斐川の確保流量のための不特定補給である。しかし,揖斐川では,既得水利権(農業用水)の利用や農業被害の問題は生じていないし,また,河川維持流量として問題になることも生じていない。確保流量を確保することによって得られる効果に比べて,費やされる費用があまりにも高く,費用対効果の点でも不合理である。 また,上記目的の一つは渇水対策で,木曽川水系における異常渇水時に緊急水を補給するとされてい によって得られる効果に比べて,費やされる費用があまりにも高く,費用対効果の点でも不合理である。 また,上記目的の一つは渇水対策で,木曽川水系における異常渇水時に緊急水を補給するとされている。しかし,木曽川水系においては,「渇水」はダム依存水利権についてのもので,それは,気象を前提としつつも,基準流量の設定という人為的な要因によって発生している。また,木曽川水系のダム開発水は大幅に余剰で水余り状態である。そして,基準流量は豊富な余剰のある既得農業水利権流量や河川維持流量の確保のために設定されているので,これらとの調整によって,ダム依存水利権の「渇水」や実際の水使用への影響は回避可能である。これらの点から,徳山ダムの渇水対策用水は渇水対策の意味がなく,費用対効果の点でも不合理である。 イ洪水調節について揖斐川の洪水防御計画として,徳山ダムによる洪水調節が最適な洪水防御計画であることは明らかでない。 河川が全体として防御対象とする基本高水のピーク流量からみると,揖斐川の基本高水のピーク流量6300‰/Sは,その年超過確率が防御対象の計画規模である年超過確率1/100を上回る過大な流量である。また,基本高水のピーク流量が防御対象の計画規模である年超過確率1/100程度の5300‰/Sであれば,徳山ダムによる流量削減に安易に依存する必要性は乏しくなる。さらに,徳山ダムは,揖斐川全集水域に降った雨水の20%しか貯めることができないので,徳山ダムの洪水調節による揖斐川の洪水防御効果は限られている。むしろ,揖斐川の洪水防御計画としては,洪水が流れる河道での対策が重要であり,そのうえで,河道の洪水防御の負荷を低減するため,流域での河道への流入低減や河道からの流出を検討すべきである。現況河道から計画河道に改修される 防御計画としては,洪水が流れる河道での対策が重要であり,そのうえで,河道の洪水防御の負荷を低減するため,流域での河道への流入低減や河道からの流出を検討すべきである。現況河道から計画河道に改修されると,粗度が改善され,水深が増大し,河積が増大するのであるから,計画河道になると,洪水の際,水位はどのようになるのかを明らかにすべきであり,その上で,部分的に水位が高くなる区間では,何が原因で水位が高くなるかを検討し,河道での解決方法を検討することが必要である。また,計画堤防高を変えなくとも,余裕高を河川管理施設構造令での揖斐川の基本高水のピーク流量にあった基準にすれば,計画高水位が上昇するので計画高水位以下の流下能力は増大する。 以上のように,計画河道や河道の状態を変化させた精確な流下能力を検討し,それに基づいて各種の河道改修を検討することが必要であるのに,これがなされていないから,徳山ダムによる洪水調節が最適な計画案であるとはいえない。 ウ発電について現在の電力需給事情からみて,揚水発電は中部電力株式会社を始め各電力会社が中止しており,徳山ダムの発電目的は必要がない。 エ環境への影響等について本件事業は,自然環境,特に,徳山村の生態系の頂点に立っているイヌワシ,クマタカという猛禽類の生存に打撃を与える。自然保護協会が公団の資料等を検討して,数回にわたりその旨指摘し警告している。 徳山ダム建設による自然環境への打撃を回避するには,ダムの建設による自然改変を中止する以外にない。 オ結論被告らが主張する流水の正常な機能の維持,揖斐川の洪水調節,発電はいずれも必要性がなく,土地の適正かつ合理的な利用に寄与するものとはいえない。他方,徳山ダム建設は希少な大型猛禽類等の 結論 被告らが主張する流水の正常な機能の維持,揖斐川の洪水調節,発電はいずれも必要性がなく,土地の適正かつ合理的な利用に寄与するものとはいえない。他方,徳山ダム建設は希少な大型猛禽類等の環境に与える悪影響が極めて大きく,環境保全対策の実施は不備が指摘されており,十分な保全策もとられていない。 したがって,本件事業は,法20条3号の要件に適合しない。 第4 争点1(4)(法20条4号要件該当性)について【被告らの主張】 1 本件事業は,本件事業認定申請の時点で,既に約1300億円の巨費が投ぜられ(乙20-21頁),本件起業地の約97%が既に公団により買収されるとともに,旧徳山村に居住していた世帯はすべて下流に移住して集落も存在しなかった。また,公団は,土地所有者等と交渉を重ね用地取得を進めてきたところ,本件起業地の約3%は,本件事業認定申請の時点において,売買契約による任意買収が困難であった上,本件事業認定申請後に本件起業地の一部が原告らによるトラスト運動の対象となり,任意買収が極めて困難となった(乙123の1~3)。 仮に,原告らの本件土地共有持分(面積に換算すると本件起業地約1400ha中の単に0.000004%にすぎない約56㎡。乙20-5頁,乙22)を取得できないがために,本件事業が完成できない場合には,本件事業による都市用水の確保,流水の正常な機能の維持,洪水調節及び発電といった種々の効果が実現できないことになる。また,揖斐川流域の県市町村や旧徳山村住民らからは,本件事業の早期完成を求める要望や決議がなされている(乙11の3-324~330頁,乙59の1~5)。 2 これらの点からすれば,本件事業において,本件起業地のうち任意買収に至っていない部分を取得するために「収用」ないし「使用」という手続 れている(乙11の3-324~330頁,乙59の1~5)。 2 これらの点からすれば,本件事業において,本件起業地のうち任意買収に至っていない部分を取得するために「収用」ないし「使用」という手続をとる必要性があり,その必要性は公益目的に合致するから,本件事業は法20条4号の要件に適合する。 【原告らの主張】法20条4号の要件の充足を判断する際には,収用という手段をとる必要性について,開発水の利用計画が具体化しておらず,計画が実現される目途が立っていないことを考慮する必要がある。 前記のとおり,徳山ダムの開発水は大垣地域と名古屋市の工業用水,愛知県と名古屋市の水道用水に利用されることになっているところ,大垣地域の工業用水道事業は計画がなく,名古屋市の工業用水道事業と愛知県や名古屋市の水道事業は,取水,導水施設の計画もない。さらに,前記のとおり,そもそも新規水需要はない。このような実施される可能性がない給水事業の水源開発のために,収用という強制的手段をとることの必要性が認められないのは明らかである。 したがって,本件事業は,法20条4号の要件に適合しない。 第5 争点(2)(本件裁決の適法性)について【乙事件被告の主張】 1 収用委員会は,事業認定がされたことを前提として裁決の申請があったときには,法47条の規定に従い,裁決の申請が同条1号又は2号に該当するときその他同法の規定に違反するときは,当該申請を却下しなければならないが,そうでない限り,収用裁決をしなければならない(法47条の2)。 しかし,本件では,法47条1号,2号に該当する事由はない。 2 次に,「その他同法の規定に違反するとき」とは,裁決手続に違法がある場合を指し,先行行為である事業認定に関する違法事由は含まれないのであって,法は は,法47条1号,2号に該当する事由はない。 2 次に,「その他同法の規定に違反するとき」とは,裁決手続に違法がある場合を指し,先行行為である事業認定に関する違法事由は含まれないのであって,法は,収用裁決を行う収用委員会に対して上記の限度で審査を行うべき権限及び義務を付与した反面,それ以上に事業認定に関する審査権限を与えていないというべきである。 これを本件についてみると,本件裁決の申請に係る事業が事業認定の上告示された事業と同一であること及び申請に係る事業計画が事業認定書に添付された事業計画書に記載された計画と著しく異なるものでないことは明らかである。また,本件土地が事業認定のあった起業地内で手続開始の告示がされた区域内にあり,したがって,本件土地が事業に必要な土地であると認められることも明らかである。 さらに,法48条は権利取得裁決の裁決事項,法49条は明渡裁決の裁決事項をそれぞれ規定しているところ,本件裁決が上記事項を具備していることも明らかである。 したがって,本件裁決手続にも違法はない。 3 乙事件原告らは,本件事業認定の違法性が本件裁決に承継される旨主張するが,本件事業認定が取り消され本件裁決の前提を欠くに至ったという事情があれば格別,そのような事情がない以上,本件裁決は適法というべきである。 【乙事件原告らの主張】前記第1から第4までのとおり,本件事業認定は法20条1号から4号までに違反する違法な行政処分であるところ,本件裁決は同事業認定の違法性を承継するから違法である。 第4章当裁判所の判断第1 適法性判断の基準時およそ取消訴訟において,問題となる行政処分の適法性を判断するに際して,行政庁の第一次的判断権を前提とし,行政処分に対する事後審査を行うという取消訴訟の本質にかん 第1 適法性判断の基準時およそ取消訴訟において,問題となる行政処分の適法性を判断するに際して,行政庁の第一次的判断権を前提とし,行政処分に対する事後審査を行うという取消訴訟の本質にかんがみ,行政処分の適法性の判断は,当該処分がなされた当時を基準とするのが相当である(最高裁昭和27年1月25日第二小法廷判決・民集6巻1号22頁参照,最高裁昭和28年10月30日第二小法廷判決・行裁集4巻10号2316頁参照,最高裁昭和34年7月15日第二小法廷判決・民集13巻7号1062頁参照)。したがって,本件事業認定の取消訴訟における事業認定の適法性判断の基準時は,法20条1号から4号まで各該当性判断のいずれについても,建設大臣がした本件事業認定時であり,本件事業認定の適否を判断するに当たっては,同認定時に存在していた事実等を基礎とし,事業認定後の事実は,その処分当時の事情を推認する間接事実等として役立つ限りにおいて斟酌することになる。 なお,原告らは,事業認定時に客観的事実が存在していた以上,これに基づく資料ないし統計が存在していなくても,当時存在していた事実は事業認定の適法性に影響を及ぼすと主張する。しかし,そのような事実に基づく資料又は統計がないにもかかわらず,事業認定庁が事業認定に当たりこれらを判断の基礎とすることは事実上不可能であるから,原告らの前記主張は採用できない。 第2 争点1(1)(法20条1号要件該当性)について 1 法20条1号要件法20条1号「事業が第三条各号の一に掲げるものに関するものであること」の要件は,申請事業が法3条各号に列挙されている事業のいずれかに該当しなければならないとするものである。同号の趣旨は,私権保護の観点から,収用対象事業の範囲を明確に定め,申請事業がこの収用対象事業のい 要件は,申請事業が法3条各号に列挙されている事業のいずれかに該当しなければならないとするものである。同号の趣旨は,私権保護の観点から,収用対象事業の範囲を明確に定め,申請事業がこの収用対象事業のいずれかに該当しなければ,収用手続の第一段階である事業認定を受けることはできないとしたものである。 2 本件事業の法20条1号要件該当性証拠(乙10の5〔事業実施計画〕,乙15-1,2頁)によれば,本件事業は,下記(1)から(4)までのとおりの新規利水,流水の正常な機能の維持,洪水調節及び発電を目的とする多目的ダムを公団及び電源開発株式会社が起業者として建設するものと認められるから,法3条17号の2,34号の2及び35号に該当する事業であることが明らかである。 したがって,本件事業は法20条1号の要件に適合している。 (1) 新規利水徳山ダムによって,岐阜県内の水道用水として最大1.5‰/S,愛知県内(名古屋市を除く。)の水道用水として最大4.0‰/S,名古屋市の水道用水として最大2.0‰/S,岐阜県内の工業用水として最大3.5‰/S及び名古屋市の工業用水として最大1.0‰/Sの取水を可能にするものとする。 (2) 流水の正常な機能の維持徳山ダムによって,揖斐川の既得用水の補給等流水の正常な機能の維持と増進を図るものとする。 別途,木曽川水系の異常渇水時の緊急水の補給を行うものとする。 (3) 洪水調節徳山ダムによって,当該ダムの建設される地点における計画高水流量1920‰/Sのうち,1720‰/Sの洪水調節を行い,下流の高水流量を低減させるものとする。 (4) 発電電源開発株式会社及び中部電力株式会社において,徳山発電所及び杉原 流量1920‰/Sのうち,1720‰/Sの洪水調節を行い,下流の高水流量を低減させるものとする。 (4) 発電電源開発株式会社及び中部電力株式会社において,徳山発電所及び杉原発電所を新設し,最大出力40万kW及び最大出力2万4000kWの発電を行うこととされているので,徳山ダムのうち当該発電に係る部分の事業を電源開発株式会社及び中部電力株式会社から公団が委託を受けて実施するものとする。 3 原告らの主張について(1) 原告らは,促進法及び公団法の構造から,本件事業の実施は新規利水目的の存在ゆえに公団の事業となり,法が適用されるのであるから,新規利水目的は他の目的と質的に異なるのであって,この目的を欠くと,法20条1号要件(収用事業適格性)に該当しないことになると主張する。 しかし,新規利水目的が他の目的すべての前提となると解すべき文理上の根拠はない。前記第2章第2の3のとおり,本件事業のうち,洪水調節,流水の正常な機能の維持及び新規利水を目的とする部分は,内閣総理大臣が決定したフルプランに基づく事業で,事業主体は公団とされており,公団は,主務大臣である建設大臣から事業実施方針の指示を受け,事業実施計画を作成し,これについて建設大臣の認可を受けている。それゆえ,徳山ダムが法3条34号の2所定の公団法18条1項1号の施設に該当することは明らかである。そして,法20条1号要件の審査について,建設大臣は,当該施設が法3条各号所定の施設として,それぞれの根拠法に基づいて手続を履践し,各号所定の施設として位置付けられているかどうかについて判定すれば足りるものと解される。したがって,徳山ダムが上記各手続を履践して公団法18条1項1号の施設であると位置付けられている以上,徳山ダムをフルプランから削除したり, られているかどうかについて判定すれば足りるものと解される。したがって,徳山ダムが上記各手続を履践して公団法18条1項1号の施設であると位置付けられている以上,徳山ダムをフルプランから削除したり,事業実施方針を廃止したりするなどの手続が講じられた場合は別として,そのような事情がない限り,徳山ダムが公団法18条1項1号の施設としての位置付けを失うことはないのである。 なお,原告らの前記主張は,水需要がないから利水を目的とすることは不合理であり,これにより法20条1号要件を欠くことになるとの主張とも解されるが,そのような主張は,まさに新規利水の必要性を争うものにほかならないから,法20条3号要件該当性の問題として検討されるべきものである。 したがって,いずれにしても原告らの前記主張は失当である。 (2) また,原告らは,徳山ダムは特定多目的ダム法ではなく,公団法に基づき公団が建設するダムであるから,新規利水以外の目的は事後的に付加されたものに過ぎないと主張する。 しかしながら,本件事業は,昭和48年3月28日に官報告示された旧フルプランにおいて,既に「このダムは,洪水調節及び不特定かんがい等の用に供する機能を有するものであるが,この事業により岐阜県及び愛知県等の水道用水及び工業用水を確保するものとする。なお,このダムは発電の用にも併せ供するものとする。」とされている(乙8の1)上,公団法自体が流水の正常な機能の維持や発電を目的とするダム建設を想定しているのであって(公団法18条3項2号〔発電〕,24条〔洪水調節〕,25条〔流水の正常な機能の維持〕),徳山ダムの新規利水以外の目的が事後的に付加されたものであるということはできない。結局,原告らの前記主張は独自の見解であって,採用することはできない。 第3 争点1 5条〔流水の正常な機能の維持〕),徳山ダムの新規利水以外の目的が事後的に付加されたものであるということはできない。結局,原告らの前記主張は独自の見解であって,採用することはできない。 第3 争点1(2)(法20条2号要件該当性)について 1 法20条2号要件法20条2号の「起業者が当該事業を遂行する十分な意思と能力を有する者であること」の要件は,申請事業者は事業遂行能力を要するとするものであり,ここでの事業遂行能力には,予算上・事実上の能力のほか,法令上の能力等も含まれると解される。国,地方公共団体,公団等であれば,国会,議会での予算化の見通しがあれば,予算上の能力はあると考えられることになるが,公団や電力会社の場合,法令上,行政計画への位置付けや認可等の手続を経なければ事業に着手できないものもあり,このような公団等であれば,それらの法令上の要件の充足も必要となり,申請事業に必要な各種法令等に基づく許認可等についても,申請者がそれらを得ているか,又は事業着手までには得ることが確実に見込まれることが必要であると解するのが相当である。 2 本件事業認定の法20条2号要件該当性前記第2章第2の当事者間に争いのない事実に証拠(乙10の1~5,乙11の2,乙20)及び弁論の全趣旨によって認められる事実を総合すると,本件事業のうち,新規利水,流水の正常な機能の維持,洪水調節を目的とする部分については,公団が,公団法19条1項により,建設大臣から内閣総理大臣を経て事業実施方針の指示を受け,公団法20条1項により建設大臣から事業実施計画の認可を受け,昭和51年10月1日,公団法20条の2により建設大臣から承継し実施するものであり,また,発電を目的とする部分については,電源開発株式会社が,昭和57年12月8日の第90回の電源開 画の認可を受け,昭和51年10月1日,公団法20条の2により建設大臣から承継し実施するものであり,また,発電を目的とする部分については,電源開発株式会社が,昭和57年12月8日の第90回の電源開発調整審議会の議を経て,電源開発促進法3条1項に規定する電源開発基本計画において決定された新規着手電源開発として実施するものであること,本件事業の実施に当たり必要な許認可について,公団及び電源開発株式会社は,すべて取得済みであることが認められる。 これらの点からすると,公団及び電源開発株式会社の両起業者は,いずれも本件事業を遂行する十分な意思と能力を有していると認めるのが相当である。したがって,本件事業は法20条2号の要件に適合する。 3 原告らの主張について原告らは,徳山ダム建設費用の一部は,徳山ダムにより開発される水を水道用水及び工業用水の用に供する者(利水者)が負担するところ(公団法29条),開発水に見合う水需要はないから,地方公営企業会計制度(地方公営企業法)の仕組み上,利水者は料金収入で回収できない建設負担金を支出することができず,徳山ダムの建設費用中建設負担金分の欠損が生じることになり,公団は本件事業を行う財政的基盤を失うことが確実なので本件事業を実施する能力はないと主張する。 しかし,本件事業のうち新規利水,流水の正常な機能の維持,洪水調節を目的とする部分は,フルプランにより,公団が事業主体とされているところ,公団は公団法に基づいて設立され,その資本金は全額政府の出資によるものである(公団法3条の2第1項)。そして,公団は,本件事業について,建設大臣からの事業実施方針の指示に基づき,事業実施計画を作成し,同大臣の認可を受け,本件事業を遂行しているのみならず,事業遂行に必要な財源措置も公団法(第4章等)により 公団は,本件事業について,建設大臣からの事業実施方針の指示に基づき,事業実施計画を作成し,同大臣の認可を受け,本件事業を遂行しているのみならず,事業遂行に必要な財源措置も公団法(第4章等)により手当され,公団は,各費用負担者(岐阜県,愛知県,名古屋市)の同意も得ていることが認められる(乙214の1~3,乙215の1~3)から,公団は本件事業を遂行する財産的な能力を有するものと認められる。したがって,原告らの前記主張は採用することができない。 第4 争点1(3)(法20条3号要件該当性)について 1 法20条3号要件の判断方法(比較衡量)法20条3号の「事業計画が土地の適正かつ合理的な利用に寄与するものであること」の要件は,法1条の「公共の利益の増進と私有財産との調整を図り,もって国土の適正かつ合理的な利用に寄与する」という法の目的及び20条3号の文言自体に照らすと,当該事業計画が国土全体の土地利用の観点からみて適正かつ合理的であることを要する旨を規定したものであり,事業計画全体の合理性に関する要件を定めたものと解される。したがって,当該土地がその事業の用に供されることによって得られる公共の利益と,当該土地がその事業の用に供されることによって失われる利益とを比較衡量した結果,前者が後者に優越すると認められる場合に,この要件に適合すると解するのが相当である(東京高裁昭和48年7月13日判決・行裁例集24巻6・7号533頁参照,東京地裁昭和59年7月6日判決・判例時報1125号25頁参照)。 そして,事業計画全体の合理性の有無は,当該事業計画の内容,当該事業計画が達成されることによって得られる公共の利益,事業計画において収用の対象とされている土地の状況,その有する私的ないし公共的価値等を総合的に考慮して,当該事業計画 は,当該事業計画の内容,当該事業計画が達成されることによって得られる公共の利益,事業計画において収用の対象とされている土地の状況,その有する私的ないし公共的価値等を総合的に考慮して,当該事業計画が国土全体の土地利用の観点からみて適正かつ合理的であるか否かにより判断される。この判断は,事柄の性質上極めて政策的,専門技術的なものであって,洪水調節,利水,発電等の社会公共の利益を増進する見地からの判断が要求されるから,法20条3号所定の「事業計画が土地の適正かつ合理的な利用に寄与するものであること」の判断においては,事業認定権者(本件については建設大臣)の裁量を尊重して判断すべきものと解するのが相当である。 したがって,事業認定の適否の審査においても,事業認定権者の判断に社会通念上著しく不相当な点があり,その裁量の範囲の逸脱又は裁量権の濫用があった場合(例えば,事業認定権者が判断をするに当たり,本来最も重視すべき諸要素,諸価値を不当,安易に軽視し,その結果当然尽くすべき考慮を尽くさず,又は本来考慮に入れ若しくは過大に評価すべきでない事項を過大に評価し,このため判断が左右されたと認められる場合)には,事業認定は法20条3号要件に適合せず違法となると解するのが相当である。 上記比較衡量は,事業計画の達成によって得られる公共の利益,事業計画の実施により失われる利益ないし価値,事業により失われる利益に対してなされた配慮等を総合して行われるべきであるので,以下これらの事実関係について順次検討する。 なお,事実の認定に関し,前記第2章第2の当事者間に争いのない事実に証拠及び弁論の全趣旨を総合して認定した各事実には関係証拠等を掲記し,既に認定した事実については繰り返し証拠を掲記しないこととする。 2 本件起業地が本件事業の用 章第2の当事者間に争いのない事実に証拠及び弁論の全趣旨を総合して認定した各事実には関係証拠等を掲記し,既に認定した事実については繰り返し証拠を掲記しないこととする。 2 本件起業地が本件事業の用に供されることによって得られる公共の利益(1) 都市用水の確保ア関係県知事の意見等(ア) 事実の認定以下に摘示した証拠によれば,次の事実が認められる。 A 本件事業のうち,新規利水については,徳山ダムによって,岐阜県内の水道用水として最大1.5‰/S,愛知県内(名古屋市を除く。)の水道用水として最大4.0‰/S,名古屋市の水道用水として最大2.0‰/S,岐阜県内の工業用水として最大3.5‰/S,名古屋市の工業用水として最大1.0‰/Sの確保を目的としている。 B 本件事業は,昭和48年3月28日,旧フルプランに初めて位置付けられ,平成9年12月19日,新フルプランの一部変更により,新規利水については,平成13年度以降発生する水需要に対処する施設とされ,新規利水容量は約1億6600万‰と定められた。フルプランの決定及び変更は,内閣総理大臣が,関係行政機関の長と協議し,かつ,関係県知事及び水資源開発審議会の意見を聴き,いずれも異議ない旨等の回答を得た(乙205の1・2,乙206の1~4,乙207の1~4,乙208の1~8,乙209の1~8)。 C 建設大臣が平成9年12月に定めた事業実施方針の中の供給予定地域別,水道用水,工業用水別の開発水量については,促進法4条1項,2項,5項により,関係行政機関の長との協議,関係県知事からの意見聴取等を踏まえて定められている(乙210の1~6,乙211の1~6,乙212の1~3,乙213の1~3) ついては,促進法4条1項,2項,5項により,関係行政機関の長との協議,関係県知事からの意見聴取等を踏まえて定められている(乙210の1~6,乙211の1~6,乙212の1~3,乙213の1~3)。 D 公団は,事業実施方針に基づいて事業実施計画を作成し,主務大臣である建設大臣の認可を受けたが,その作成に当たっては,関係県知事に協議し利水者の意見を聴くとともに,本件ダム新築に要する費用負担につき費用負担者の同意をいずれも得ている(乙88の1~6,乙89の1~6,乙214の1~3,乙215の1~3)。 E 建設省は,平成7年7月に,ダム事業等の進め方に関し,一層の透明性・客観性を図る観点から,事業の目的・内容等について,経済社会の変化に即した総合的な評価を行う方策として,学識経験者や地域を代表する知事,市町村長及び議会関係者からなるダム等事業審議委員会を設置して,事業に関する地域の意見を的確に聴取するという事業評価方策を試行することを決定した。これに基づき,全国で当時既に実施中であった建設省直轄事業及び水資源開発公団事業について,個々の事業毎にダム等事業審議委員会が設置され,本件事業についても,平成7年12月13日にダム審が設置された(乙11の1)。ダム審は,審議を重ねた上,徳山ダムを早期に完成させるべきであるとの意見を建設省中部地方建設局長及び公団宛に提出したが,そのなかで,新規利水については恒久的な水資源の確保は将来の地域の発展にとって不可欠であり,水資源開発は長期的展望に立って進めることが重要であると指摘し,その審議過程で,利水者である各自治体の意向が示され,これらの意向を尊重し,徳山ダムにおいて12‰/Sの都市用水を確保することが適当であるとした(乙11の1)。 ことが重要であると指摘し,その審議過程で,利水者である各自治体の意向が示され,これらの意向を尊重し,徳山ダムにおいて12‰/Sの都市用水を確保することが適当であるとした(乙11の1)。 F 本件事業に関する地域からの要望については,流域の岐阜県,愛知県,三重県,名古屋市,揖斐川流域の25市町村で構成する揖斐川流域住民の生命と生活を守る市町村連合から,一日も早い完成を求める要望がなされている(乙59の2・5)。 (イ) 小括以上のとおり,関係県知事,ダム審,各供給予定地域の市町村等は,本件事業による都市用水の開発が必要であると認識していることが認められる。 イ本件水需要予測の合理性の検討(ア) 事実の認定以下に摘示する証拠によれば,次の事実が認められる。 A 本件事業における供給予定地域は,下記のとおりである(乙11の2)。下記供給予定地域に関して,公団は,建設大臣からの指示に基づき,本件事業認定申請前に本件水需要予測を作成して(乙121,証人P1),同大臣に提出した。本件水需要予測は,本件事業完成後10年を経過した時点(平成30年度)における都市用水に関する需要予測で,これにおける水道用水及び工業用水の各推計は,別紙「本件水需要予測」のとおりである(乙115,証人P1,弁論の全趣旨)。 記大垣地域(岐阜県) 大垣市,養老町,神戸町,安八町,垂井町,関ヶ原町,平田町,輪之内町,揖斐川町,海津町,墨俣町,大野町,南濃町,池田町尾張地域(愛知県) 一宮市,春日井市,津島市,稲沢市,尾西市,小牧市,犬山市,江南市,岩倉市,木曽川町,七宝町,美和町,蟹江町,弥富町,佐屋町,佐織町,大口町,扶桑町,祖父江町,平 町尾張地域(愛知県) 一宮市,春日井市,津島市,稲沢市,尾西市,小牧市,犬山市,江南市,岩倉市,木曽川町,七宝町,美和町,蟹江町,弥富町,佐屋町,佐織町,大口町,扶桑町,祖父江町,平和町,豊山町,師勝町,西春町,春日町,清洲町,十四山村,飛島村,立田村,八開村名古屋地域名古屋市,大治町,甚目寺町,西枇杷島町,新川町B 建設大臣は,本件事業による都市用水の確保の必要性を判断する上で,本件水需要予測を検討し,さらに,①木曽川水系では,近年降水量が減少傾向にあり毎年のように渇水による被害が頻発していること(乙15-20~23頁),②木曽川水系では,最近の降水実績を基に利水安全度を計算すると,既存ダムすべてを活用しても,その開発水量の全量に水利権が設定されていないにもかかわらず,利水安全度は3分の1にとどまっていること(乙11の2-361頁,乙15-23頁),③木曽川水系で利用されてきた地下水は主に被圧地下水であり,被圧地下水を過剰揚水したことにより帯水層内の地下水位が急激に低下し,被圧地下水の圧力が低下し,それを補うために粘土層の土中に含まれる水が絞り出され,粘土層内の土粒子間が収縮し,その結果として地盤沈下が発生するところ,このような地盤沈下を防止するために,地下水採取抑制の必要があること等の事情も考慮した上で,新規の都市用水の確保が必要と判断した(乙114,証人P1,弁論の全趣旨)。 (イ) 本件水需要予測の合理性の有無水資源開発施設の計画に当たっては,計画から完成に至るまで長期間を要するという特徴があり,このような施設の整備は,一時的な経済の変動や水需要の状況に左右されることなく,長期的,先行的な観点に立って立案されることが必要である。例えば,需 から完成に至るまで長期間を要するという特徴があり,このような施設の整備は,一時的な経済の変動や水需要の状況に左右されることなく,長期的,先行的な観点に立って立案されることが必要である。例えば,需給がひっ迫してから整備を行った場合には,水資源施設が完成するまでの間は都市用水等の安定的な供給が阻害されるから,将来の経済,社会の発展にも対応することができるよう,先行的に開発を進めることが必要である。したがって,この点を考慮して,本件水需要予測が合理的であるか否かを検討する必要がある。 A 水道用水の需要予測将来の給水人口に1人1日当たり給水量を乗じて推計する方法は,一般的な方法である(弁論の全趣旨,乙63参照)。 また,名古屋地域と尾張地域は水道事業の供給区分は異なるものの,同県内の隣接する地域というにとどまらず,社会・経済的に密接な関係を有する地域ということができるから(公知の事実,弁論の全趣旨),将来需要量推計に当たり両地域を合わせて推計した上,将来需要量を平成7年度までの両地域の最大給水量ベースの実績値で按分して,それぞれの地域の需要量としたことが不合理であると断定することはできない。 a 給水人口の将来推計について本件水需要予測は,将来給水人口を推計する際,過去の実績を用いて将来給水人口を一次関数で推計する時系列分析手法を採用しているが,同手法は一般的な方法として幅広く使用されているものと認められる(乙107,乙135)。 原告らは,本件水需要予測において,過去の実績を用いて将来給水人口を一次関数で推計する時系列的分析の手法は妥当でなく,国立社会保障・人口問題研究所が 107,乙135)。 原告らは,本件水需要予測において,過去の実績を用いて将来給水人口を一次関数で推計する時系列的分析の手法は妥当でなく,国立社会保障・人口問題研究所が用いているコーホート要因法(要因別分析の一手法,甲5)によるべきであるとし,また,推計結果についても,本件事業認定当時既に少子化傾向は公知の事実となっていたことからすれば,明らかに予測は過大であると主張する(なお,甲20-9,10頁,原告本人P2第16回口頭弁論尋問調書21~23頁)。 しかしながら,「水道施設設計指針・解説」(厚生省監修。乙107)によれば,将来人口の推計手法としては,主として時系列傾向分析,要因別分析によるものがあるところ,いずれも決定的な方法とまでいえないとしながらも,時系列傾向分析による将来人口推計は,人口の時系列の傾向を分析し,単一方程式からなる傾向曲線に当てはめ,将来の人口を予測する手法で,時間を説明変数にしており,比較的簡単な予測手法として幅広く使用されている旨記載されていることが認められる。そして,原告らが採用すべきであったと主張する国立社会保障・人口問題研究所の推計は,統計が,市町村別のものはなくて,都道府県別のものしかなく(甲5),かつ,女子年齢別出生率等について仮定の上で推計されたものである(甲5)ことが認められる。 これらの点を総合すると,国立社会保障・人口問題研究所の推計によらずに,「水道施設設計指針・解説」に基づき,本件事業による供給予定地域内の各地域での過去の給水人口の動向を踏まえて将来の給水人口を推計した公団の推計方法が不合理であると断定することはできず,また,その推計結果も不合理であると断定することはできない。 の過去の給水人口の動向を踏まえて将来の給水人口を推計した公団の推計方法が不合理であると断定することはできず,また,その推計結果も不合理であると断定することはできない。 b 1人1日当たり平均給水量の将来推計① 1人1日当たり平均給水量について,公団は,昭和50年から平成6年までの東海地域における水道用水の1人1日当たり使用量(有効水量)に渇水のあった年の影響度等を書き加えた統計に基づき,渇水の影響を受けたと思われるデータを除いて使用データとし,最小二乗法により年増加量を推定する方法により推計したものであるところ,原告らは,上記推計方法は対象となる20年間のうちの12年間分及び本件事業認定時に資料が存在したはずの平成7年,8年の直近2年分の数値を捨象したものであるから不合理であると主張する。 しかし,12年間分の数値を捨象したとの点については,結論を操作するために故意に捨象したというものではなく,渇水等の影響を受けたと思われる年についてその旨の記載をしているものであり,このような手法は統計処理の際に通常行われるものと認められ,それ自体不合理なものとはいえない。 また,平成7年,8年の数値を捨象した点については,統計の作成には資料の収集,整理等に相応の時間がかかるものであり,このことを考慮すると,平成7年,8年の統計資料はこの時点で作成されておらず,使用することができなかったものと推認される。したがって,この点も不合理であるとはいえない。 ② また,原告らは,水道用水の需要予測は本件事業の供給予定地域の実績値を基礎にすべきであり,本件水需要予測が東海地域の実績値を基にしたのは不合理 この点も不合理であるとはいえない。 ② また,原告らは,水道用水の需要予測は本件事業の供給予定地域の実績値を基礎にすべきであり,本件水需要予測が東海地域の実績値を基にしたのは不合理であると主張する。 確かに,本件事業の供給予定地域の実績値を基礎にして水道用水の需要量を予測するのも一つの推計方法である。 しかし,水道用水原単位の伸び率に影響を与える要因には,気象等の自然的要因,世帯の細分化等の社会的要因,消費支出の動向等のマクロ経済的要因等多様なものが考えられるところ,その範囲,各要因の相対的寄与度についての解明は困難であり,平成30年度という遠い将来の予測をするためには,データの母集団を合理的な範囲で広く収集し,かつ,過去の実績データも多く収集して,その回帰計算から将来の伸び率を推定する方法も推計方法の一つとして考えられるところである。 したがって,徳山ダムの供給予定地域を包摂する東海地域の過去の水道用水原単位の実績に基づいてした公団の上記推計手法が不合理なものと断定することはできないというべきである。 ③ また,原告らは,大垣市の水道用水の有効率が0.8と低いことを指摘して,本件水需要予測では有効率の向上が考慮されていないとも主張する(なお,甲20-7頁)。 しかし,水需要予測の増加量については,大垣地域においても有効率0.9が使用されているので,原告らの上記主張は理由がない。 また,大垣地域の平成7年度の日平均給水量原単位の実績値を388L/人/日としたことについては,大垣地域の有効率が将来確実に向上すると断定することはできないから,これも不合理とはいえないというべきである。 平成7年度の日平均給水量原単位の実績値を388L/人/日としたことについては,大垣地域の有効率が将来確実に向上すると断定することはできないから,これも不合理とはいえないというべきである。 ④ また,原告らは,大垣地域の一人一日有効水量の実績は平成2年度以降横ばいないし微増であり,名古屋市の一人一日最大給水量原単位は昭和60年を最高にして微減しているし,尾張地域のそれは昭和60年以降微増であるから,公団の推計は不合理であると主張する。 しかし,本件水需要予測は平成30年を推計目標年次とするものであるから,昭和60年以降の水需要傾向が平成30年まで継続するとの確実な根拠がない限り,公団の前記水需要予測が不合理であると断定することはできないというべきである。 c 将来需要量の推計① 原告らは,公団が本件水需要予測において負荷率を0.7と設定したのが過小であると主張する。 しかし,そもそも負荷率は,日平均給水量を日最大給水量に換算するための推計上の係数であり,長期的に安定した水資源を確保する観点から,余裕を考えて将来の負荷率を設定すること自体不合理ではないこと,名古屋地域の負荷率の昭和60年から平成7年までの10年間における最低値は74%であること,大垣地域の昭和54年の負荷率は70.1%であること(乙161,乙162)を考慮すると,本件水需要予測において設定された負荷率70%が不合理な数値であると断定することはできない。 ② また,原告らは,家庭用給水量は水洗便所,風呂,洗濯機の普及により増加要因がなくなって頭打ちになると主張する。 しかし,原告らが上記主張の根拠とする近年の水需要の ② また,原告らは,家庭用給水量は水洗便所,風呂,洗濯機の普及により増加要因がなくなって頭打ちになると主張する。 しかし,原告らが上記主張の根拠とする近年の水需要の横ばいないし微増傾向については,バブル崩壊後の不景気による節水の可能性も否定できないこと,東海地域の水道用水原単位の動向は昭和50年代前半は落ち着いていたが,その後は再び増加傾向に転じていること(乙64-55頁,乙67)を考慮すると,原告らの上記主張は直ちに採用できないというべきである。 そして,長期的な水需要予測をする場合には,過去の実績を踏まえたマクロ的推計の手法を採ることも不合理とはいえないことは前記説示のとおりである。 ③ また,原告らは,漏水対策により無効水量を減らして有効率を高めれば,給水量を減少させることができるのに,このことを考慮していない本件水需要予測は不合理であるとも主張する。 しかし,将来確実に有効率が向上すると断定することはできないから,公団がこれを考慮しなかったとしても,そのことをもって本件水需要予測が不合理であるということはできない。 d 小括以上のとおり,公団の水道用水の需要予測は不合理であると断定することはできないものというべきである。 B 工業用水の需要予測公団は,将来淡水補給量の推計方法として,将来の工業出荷額に将来の工業出荷額当たりの水需要量(補給水原単位)を乗じる手法(ただし,回収率を考慮)を採用している。 原告らは,名古屋地域と大垣地域の工業出荷額と淡水使用量の過去の実績を見ると,両者の間に明確な相関関係は認められず,むしろ,一定の補給水 ,回収率を考慮)を採用している。 原告らは,名古屋地域と大垣地域の工業出荷額と淡水使用量の過去の実績を見ると,両者の間に明確な相関関係は認められず,むしろ,一定の補給水量の範囲内で生産が行われていると見るべきで,工業出荷額を説明変数とする本件水需要予測の推計手法には問題があると主張する(なお,甲19,甲20,甲68,証人P3)。 しかし,別表Ⅵ(乙115-238頁)のとおり,我が国(全国の統計値)の工業出荷額と淡水使用量の間には,相関係数0.9726という極めて強い相関関係があることが認められる。また,工業用水の需要予測の求め方については,建設省河川局監修の技術基準案解説計画編(乙115-238頁,乙126-37,38頁)に,計画目標年次における製造業出荷額,工業用水原単位を基に必要水量を算定する旨の記載があり,この推計方法は一般的なものと認められる。 そうすると,大垣地域,名古屋地域についても上記の推計方法をとったことが不合理であるとはいえない。 a 工業出荷額の将来推計本件水需要予測で使用された昭和60年度から平成7年度までの期間は,いわゆるバブル景気以前,バブル景気の絶頂期,バブル景気崩壊後の低成長期のすべてを含んでおり,長期的な水需要予測に用いるものであることを考慮すると,過去の工業出荷額の動向を判断するために合理的な期間であるということができる。また,結果としての2.4%,2.7%という数値自体も経済成長率として過大なものとまではいえない。 原告らは,ウォータープラン21が日本経済の成長率は1995年から2010年までの期間に2.3%,2010年から2015年までの期間に1.2%と低下することをフレームとして 原告らは,ウォータープラン21が日本経済の成長率は1995年から2010年までの期間に2.3%,2010年から2015年までの期間に1.2%と低下することをフレームとしていることを指摘し,2007年以降と予想されている人口減少や資源・環境問題の制約から日本経済の将来成長率が低下することは常識であるとし,本件水需要予測の将来工業出荷額の推計は現実の経済状況に合致していないと主張する。 確かに,将来の経済成長率を精確に予測することは困難であり,また,バブル崩壊後長期にわたる不況が継続していることも事実である。しかし,我が国の三大都市圏の1つである中部圏は,第五次全国総合開発計画において「先端的産業技術の世界的中枢としての役割を果たし,全世界を対象に多様な交流が活発に行われる地域」として位置付けられ(乙42-113頁),同地域では東海環状自動車道が事業化されるとともに,第二東名,第二名神高速道路の施工命令も出されている(弁論の全趣旨)。また,同地域においては,中部新国際空港の着工等の大規模基盤整備の動きもある(弁論の全趣旨)。そして,工業出荷額には地域格差があり得ることを考えると,名古屋地域と大垣地域において,今後,工業出荷額の伸びが見込まれないと断定することはできない。 したがって,原告らの前記主張は採用することができない。 b 工業出荷額当たり需要量の将来推計① 使用水原単位使用水原単位は,生産活動の合理化により一定の値に集束していくものと考えられるところ,大垣地域の平成3年から平成7年までの使用水原単位の実績値は55.380‰/日/億円(平成7年度)から60.443‰/日/億円(平成6年度)の範囲内 り一定の値に集束していくものと考えられるところ,大垣地域の平成3年から平成7年までの使用水原単位の実績値は55.380‰/日/億円(平成7年度)から60.443‰/日/億円(平成6年度)の範囲内でほぼ一定であることが認められる(乙115-79頁)。また,名古屋地域の平成3年から平成7年までの使用水原単位の実績値は30.87‰/日/億円(平成6年度)から33.05‰/日/億円(平成5年度)の範囲内でほぼ一定であることが認められる(乙115-78頁)。そうすると,大垣地域,名古屋地域のいずれも平成7年度の使用水原単位の実績値が平成30年度までほぼ横ばいに推移するものと予測したことは合理的なものということができる。 原告らは,本件水需要予測において,工業出荷額については昭和60年度から平成7年度までの過去10年間のトレンドに基づいて伸び率を推計しているのに,使用水原単位については平成3年度から平成7年度までの過去5年間のトレンドに基づいて将来にわたり平成7年度の水準のまま横ばいであるとしているのは不合理かつ恣意的であると主張する。 しかし,いずれの推計についても過去の実績から合理的に将来の変動を予測したものであるから,原告らの上記主張は採用することができない。 ② 回収率について原告らは,大垣地域の回収率が低いのは同地域で工業用水の水源を地下水に依存しているためであるからとし,地下水揚水を規制することにより,また,回収再利用が容易な冷却・温調用水の回収再利用を進めることにより,同地域の回収率を平成7年度の値から大幅に向上させることが可能であるとか,名古屋地域の回収率についても,価格によるインセンティブ等によりなお数ポイント向上の余地 用水の回収再利用を進めることにより,同地域の回収率を平成7年度の値から大幅に向上させることが可能であるとか,名古屋地域の回収率についても,価格によるインセンティブ等によりなお数ポイント向上の余地があると主張する。 しかし,大垣地域の平成7年度の回収率(34.2%)は,10年前である昭和60年度の回収率(33.8%)と比較してほぼ同レベルであり,その間も大きな変動がないことからすると,大垣地域の回収率は既に頭打ちの状態にあると認められる(乙74-H欄)。また,名古屋地域の回収率も,過去10年間にわたって約80%を上限として大きな変動がなく,平成2年以降はむしろ若干の減少傾向すら認められる(乙75-H欄)。そして,原告らが主張する回収率向上は可能性があるというにすぎず,確実な根拠を有するものではないことを考慮すると,それぞれの地域の昭和60年から平成7年までの期間の実績値に基づき,大垣地域については平成7年度の実績値をもって平成30年度の将来値とし,名古屋地域については昭和60年以降,おおむね80%近辺で推移している頭打ちの状態が今後も維持されるものとし,80%をもって平成30年度の将来値としたことが不合理であると断定することはできない。 c 将来需要量の推計原告らは,工業用水需要の将来推計においては,推計に用いた説明変数である工業出荷額,使用水原単位,回収率について,産業構造の変化その他による増加要因,減少要因を個別に分析した上で推計を行うべきとし,本件水需要推計において,個別要因を全く検討していないこと自体が,推計手法として誤りであると主張する。 しかし,本件水需要推計は,平成30年度を目標年次とする長期的な将来予測を行うものであるとこ 個別要因を全く検討していないこと自体が,推計手法として誤りであると主張する。 しかし,本件水需要推計は,平成30年度を目標年次とする長期的な将来予測を行うものであるところ,一般的に長期予測の場合には,予測される結果とそれを説明する要因との間に質的な変化が起こりやすく,しかもこの質的変化等を予測手法の中に織り込むことが困難と考えられ,比較的単純な予測手法の方が有効であるとされている(乙229-76頁)から,公団の採用した推計方法が不合理であると断定することはできない。 C 開発水の転用を考慮していない点等について本件水需要予測は,岩屋ダムその他の水源施設の開発水の転用を考慮していないものである(乙115,証人P1,弁論の全趣旨)。この点に関し,原告らは,フルプランに位置付けられた木曽川水系内の他の水資源開発施設で余っている水を足りないところに融通すれば,新たに徳山ダムを建設して水資源開発をする必要性はないと主張する(なお,甲19,甲64,甲77,原告本人P2第13回口頭弁論尋問調書16頁)。 確かに,昭和63年度地方財政の運営について(昭和63年5月30日付け各都道府県知事宛自治事務官通達)には,工業用水道事業について,既着手の水資源開発施設で将来の水需要が見込めないものにあっては他用途への転換を図るとともに,専用施設計画が熟してない段階での新規の水源開発については慎重を期されたい旨記載され(甲37),公団が本件事業認定申請に当たり建設大臣に提出した資料中にも開発水の転用についての過去の事例等が記載されている(乙115-9,130頁)ほか,現に木曽川水系においても,後記三重県工業用水からの転用(甲22の2)等の開発水の委譲が実施されているところである。 過去の事例等が記載されている(乙115-9,130頁)ほか,現に木曽川水系においても,後記三重県工業用水からの転用(甲22の2)等の開発水の委譲が実施されているところである。 しかし,水資源開発施設の建設には長期間を要する場合が多く,既に完成した水資源開発施設による開発水量が未利用であるから水資源開発を行う必要がないと断定することはできない。水資源開発施設の建設は,その長期的視野を失うことなく計画的かつ着実に実行されるべきであり,ある時点において,一時的に水の需要量と供給量に差があることは不自然ではない。建設大臣は,徳山ダムの供給予定地域における新規利水の必要性を判断するものであり,木曽川水系において,フルプラン等で個別ダムごとに設定されている開発水量について,同水系全体の水需給バランスからみて転用を行うべきかどうかという問題については判断する権限を有するものではなく,まして開発水量の転用を強制的に行わせる権限はないことが認められる(証人P1,弁論の全趣旨)。また,ダム等の水源施設を開発する場合,そこで開発される新規利水の利水者は,その開発費用を用途に応じた負担割合で負担しているため,仮に各利水者が保有する開発水量を他の利水者に転用する場合には,費用負担の問題を含めて調整し,合意が得られなければ実現しないと認められる(証人P1第14回口頭弁論尋問調書24頁)。さらに,一般に,河川水の利用については,上下流間の地域バランス,多数の水利用者相互の調整を考慮せざるを得ず,流域全体で数字上水量が確保されていればよいという単純な問題ではないところ,特に木曽川水系では,水利権の転用等水資源の有効活用への努力がされているものの,古くから複雑な水利用が行われ,多数の水利用関係者から成る水利用秩序が形成されてきた歴史的経緯がある 題ではないところ,特に木曽川水系では,水利権の転用等水資源の有効活用への努力がされているものの,古くから複雑な水利用が行われ,多数の水利用関係者から成る水利用秩序が形成されてきた歴史的経緯があるため,原告ら主張のような転用を実現するためには,多数の水利用関係者の調整と複雑な水利用秩序の再編成が必要となり,他の地域に当該水源を譲渡することについては困難が予想されるところである。したがって,建設大臣が現在使用されていない木曽川水系の開発水の転用を考慮しなかったことが不合理であるとはいえない。 ウフルプランの検討の必要性について原告らは,徳山ダムがフルプランに基づく事業である以上,徳山ダムの必要性,合理性,公益性は,フルプラン上の水需要予測に即して判断されなければならないと主張する。 しかし,建設大臣は,事業認定庁として,本件事業に係る事業認定申請に対して,本件事業が法20条各号の要件のすべてに該当するかどうかを判断すれば足りるのであり,フルプラン全体についてこれが合理的か否かを判断する必要性はない。 原告らは,前記主張の理由として,フルプランは行政処分でなく,行政機関内部又は行政機関相互の行為に過ぎないため,フルプランに対する争訟手段はないから,建設大臣は,司法審査の機会のないフルプランについて本件事業認定の際に審査検討の対象とするのは当然であると主張する。 しかし,建設大臣にはフルプラン全体の合理性を判断する権限はないし(証人P1,同P4),フルプランに対する争訟手段のないことから本件事業認定の際にこれを審査検討の対象とするのが当然であるともいえないから,原告らの上記主張は採用できない。 また,原告らは,徳山ダムがフルプランで2000年までの計画に組み 本件事業認定の際にこれを審査検討の対象とするのが当然であるともいえないから,原告らの上記主張は採用できない。 また,原告らは,徳山ダムがフルプランで2000年までの計画に組み込まれていないこと自体で既に本件事業は合理性の根拠を失っていると主張する。 しかし,フルプラン(乙8の6)は,まず,昭和61年度から平成12年度までを目途とする水の用途別の需要の見通し及びより長期的な見通し並びにこれらを踏まえた供給の目標を定めるとした上で,水需要の見通しについて,平成13年度以降においても,更に必要水量が発生する見込みであるとし,供給の目標について平成12年度の供給目標と合わせて平成13年度以降の需要の発生に対処するため計画的な水資源開発を推進するものとするとし,さらに,供給の目標を達成するため必要な施設のうち,取りあえず,平成12年度における新規利水量毎秒約34‰の確保及び平成13年度以降発生する需要への計画的な対処を目途として,次の施設の建設を行うとし,本件事業も完成予定年度が平成19年度のものとしてその中に記載されている。上記フルプランの記載から明らかなように,フルプランは平成12年度までと限定された計画ではなく,平成13年度以降発生する需要への計画的な対処をも視野に入れたものであり,その中に本件事業が位置付けられているのであるから,原告らの前記主張は採用することができない。 エ地盤沈下対策の必要性について(ア) 事実の認定以下に摘示する証拠によれば,次の事実が認められる。 A 我が国最大の海抜ゼロメートル地帯を抱える濃尾平野において,名古屋を中核にした産業の飛躍的発展に伴い大量の地下水が利用されたため,自噴水が次第に姿を消し,次いで地下水位が低下して地盤沈 A 我が国最大の海抜ゼロメートル地帯を抱える濃尾平野において,名古屋を中核にした産業の飛躍的発展に伴い大量の地下水が利用されたため,自噴水が次第に姿を消し,次いで地下水位が低下して地盤沈下が発生した(乙116,証人P4)。 B 木曽川水系で利用されてきた地下水は主に被圧地下水であり,被圧地下水を過剰揚水したことにより帯水層内の地下水位が急激に低下し,被圧地下水の圧力が低下し,それを補うために粘土層の土中に含まれる水が絞り出され,粘土層内の土粒子間が収縮し,その結果として地盤沈下が発生するところ,このような地盤沈下は,洪水・内水氾濫等の災害,塩水の遡上等を引き起こし,建物や道路・橋梁等の交通施設,ガス・水道等の地下埋設施設等の構造物に被害をもたらす(乙116,証人P4)。 そこで,地盤沈下抑制のため,国においては,総合的な地盤沈下防止対策を推進するため,昭和60年4月26日の関係閣僚会議決定において濃尾平野地域の沈下対策要綱(乙41)が策定され,これに基づき地下水採取の抑制が講じられてきた(乙116,証人P4)。 C 平成6年渇水時には,河川水の取水制限を補うため大量の地下水が汲み上げられ,本件事業の都市用水供給予定地域である大垣地域の観測点では,平成6年度に4.6㎝の沈下,愛知県尾張地域や名古屋市においても約2㎝の沈下が生じており,2㎝以上の沈下発生面積は約77k㎡に及んでいる。また,地盤沈下は,濃尾平野全域に拡大している(乙11の4-82頁,乙112)。そして,それ以降も,大垣地域においては平成11年まで地盤沈下が続いている(乙139,乙193)。平成5年以降平成9年までの地盤沈下の実績は,大垣市,愛知県小牧市,名古屋市天白区でそれぞれ,昭和末から平成5年までの も,大垣地域においては平成11年まで地盤沈下が続いている(乙139,乙193)。平成5年以降平成9年までの地盤沈下の実績は,大垣市,愛知県小牧市,名古屋市天白区でそれぞれ,昭和末から平成5年までの期間よりも早いペースで沈下が進んでいる(甲35-7,8頁,乙116,証人P4)。 D 沈下対策要綱では,地下水採取目標量を設定し,目標量以内に抑制するための諸施策を推進することとしており,これらの施策の一つとして,水源の表流水への転換を掲げ,代替水源の確保に係る事業として本件事業が明記されている(乙41,乙116,証人P4)。 (イ) 原告らの主張の検討原告らは,大垣地域の地盤沈下動向は沈静化しており,水道用地下水の揚水を現状よりも増やすことができるとか,今後も大垣地域の工業用水は地下水により十分確保することができると主張する(なお,甲20-11頁,原告本人P2第13回口頭弁論尋問調書64頁,証人P3第22回口頭弁論尋問調書32頁)。 しかし,徳山ダムの供給予定地域における最近の地盤沈下の状況を見ると,前記(ア)C認定のとおり,平成6年の渇水時には大垣地域(海津町)での観測点では4.6㎝の沈下が発生したほか,地盤沈下が濃尾平野全域に拡大しており,最近5年間の累積沈下量の大きい点の多くは濃尾平野の西部に分布しており,我が国最大のゼロメートル地帯を抱える同地域は,人口・資産が集積し,これまでの累積沈下量を考えると高潮・津波・洪水・内水氾濫及び地震災害等の潜在的な危険性が高い地域とされている。したがって,大垣地域を含む徳山ダムの供給予定地域においては,依然として地盤沈下対策が重要な課題であるというべきであり,代替水源として本件事業の必要性を肯定することができる。 ている。したがって,大垣地域を含む徳山ダムの供給予定地域においては,依然として地盤沈下対策が重要な課題であるというべきであり,代替水源として本件事業の必要性を肯定することができる。 また,原告らは,地下水揚水が地盤沈下の主要な要因ではなく,平成6年に広範囲かつ高度な地盤沈下が発生したのは,その年に降水量が少なかったことが原因であると主張する(なお,甲75-8頁,原告本人P2第13回口頭弁論尋問調書64頁)。 しかし,地下水の過剰な採取により地下水位が低下し,粘土層が収縮するために地盤沈下が生ずること(乙116,乙168)と平成6年の降水量が少なかったこととは矛盾せず,被告らの主張を否定することにはならない。大垣地域にあっては,比較的内陸部の大垣市においても,市街地の標高が5mと低平な地形となっており,従来から洪水期の内水被害に苦しんでいたところである。こうした地形のもとで更に地盤沈下が進行した場合,洪水への脆弱性が顕在化し,深刻な影響が生ずることは明らかである。本件事業による安定的な水源が確保されない場合には,渇水の度に地下水の過剰採取による地盤沈下が生じ,それが将来にわたって累積するおそれがある。 これらの事実からすれば,大垣地域において地下水依存の継続を前提とする原告らの前記主張は採用することができないというべきである。 (ウ) まとめ前記(ア)認定事実からすれば,地盤沈下対策の観点からも,代替水源としての徳山ダムの必要性を肯定することができるというべきである。 オ取水,導水施設について原告らは,平成19年完成予定の徳山ダムの取水,導水施設が,本件事業認定時に計画されていない点は不合理であると主張する。 しかし,本件事業認 る。 オ取水,導水施設について原告らは,平成19年完成予定の徳山ダムの取水,導水施設が,本件事業認定時に計画されていない点は不合理であると主張する。 しかし,本件事業認定の対象は本件事業であって,取水,導水事業ではないから,これらが本件事業認定時に計画されていないとしても,本件事業の法20条3号要件該当性の有無には関係がない。また,徳山ダムの完成(予定)自体が平成19年なのであるから,事業認定の時点で取水,導水事業が具体化していないことは何ら不自然ではないところ,導水施設については現に計画ないし検討の段階であって(証人P4第15回口頭弁論尋問調書49頁),今後建設することが見込まれているものである。 したがって,原告らの前記主張は採用することができない。 カ小括前記のとおり,水資源開発施設の計画を進めるに当たっては,長期的,先行的な観点から整備する必要があるとともに,自然を対象とすることから予測を超える事態が生ずることも想定して,予測と実際が異なったときにも支障を生じないだけの余裕を見込む必要がある。すなわち,水不足の事態を生ずるよりは,余剰の水がある事態の方が政策として安全かつ妥当である。 そうした観点に加え,当該地域においては地盤沈下対策の必要もあることを考慮すると,本件水需要予測を是認した建設大臣の判断が著しく不合理であると断定することはできないというべきである。したがって,建設大臣の判断に裁量の範囲の逸脱及び裁量権の濫用はない。 なお,付言するに,当裁判所は,公団の本件水需要予測について建設大臣が平成10年12月にこれを是認した判断が,当時においては建設大臣の裁量の範囲を逸脱するものではないと判断するにすぎないものであり,現時点において に,当裁判所は,公団の本件水需要予測について建設大臣が平成10年12月にこれを是認した判断が,当時においては建設大臣の裁量の範囲を逸脱するものではないと判断するにすぎないものであり,現時点においてはウォータープラン21の水需要予測の方がより合理的であると推認される。したがって,独立行政法人水資源機構としては,早急に水需要予測を見直し,最終的な費用負担者である国民及び県民の立場に立って,水余りや費用負担拡大等の問題点の解決に真摯に対処することが望まれる。 (2) 流水の正常な機能の維持ア事実の認定以下に摘示する証拠によれば,次の事実が認められる。 A 我が国は,梅雨期や台風期に降雨が集中し,河川の勾配が急で流路延長が短いなど安定的な水資源の確保を図る上で気象的・地理的に不利な国土条件にあるところ,近年の少雨化傾向という自然的要因,ひっ迫する水需要に急激に対応してきたという社会的要因によって,渇水が頻発している(乙116,弁論の全趣旨)。 B 木曽川水系においても,近年降水量が減少傾向にあり毎年のように渇水が頻発しており,しばしば長期にわたる取水制限を余儀なくされ,市民生活,経済活動に著しい影響を与えているほか,魚類始め河川環境にも大きな影響を与えている(乙15-20~23頁,25頁)。 C 平成6年渇水では,木曽川の河川流量は平年値を大きく下回り,維持流量を大きく下回ることとなった。6月から8月の降水量は牧尾ダム地点において292㎜(平年値826㎜の35%),岩屋ダム地点では500㎜(平年値1066㎜の47%)と平年値に比べて極端に少ない状況となった。このため同年8月5日には当時の木曽川の水源である牧尾ダム,岩屋ダム,阿木川ダムの3ダムが枯渇する事態となり,これらの木曽川水系の既存ダ 6㎜の47%)と平年値に比べて極端に少ない状況となった。このため同年8月5日には当時の木曽川の水源である牧尾ダム,岩屋ダム,阿木川ダムの3ダムが枯渇する事態となり,これらの木曽川水系の既存ダムを水源とする水道用水は最大35%の取水制限により,愛知県の11市10町において初めて時間給水に陥る深刻な事態となり,特に知多半島地域では1日に19時間も断水を余儀なくされるなど,木曽川水系に水源を依存する地域の約590万人の住民が節水を強いられた。また,工業用水では65%の取水制限のため過去最悪の状態となり,工場での一部操業停止や工業用水の海外からの輸入などにより約300の事業所で合計約300億円の損害が発生した。さらに,農業用水に関しても65%の取水制限となり,農作物の育成不良等の農業被害が発生した(乙15-21,22頁,乙37の2の1~7)。 揖斐川においても,平成6年7月中旬から9月中旬にかけてα2地点の観測流量が0‰/Sとなる日があり,揖斐川本川で水が涸れるという事態となった(乙11の2-250,251頁)。 D 現在も,渇水時には地下水位の低下がみられ,地盤沈下の進行がみられる。平成6年渇水時には,大垣地域(海津町)の観測点で一年間で4.6㎝の地盤沈下が生じるとともに,愛知県尾張地域や名古屋市においても約2㎝の沈下が生じ,2㎝以上の沈下が発生した面積は約77k㎡に(乙116),また1㎝以上の沈下が発生した面積は656k㎡にも及んだ(乙11の4-82頁,乙112)。 なお,渇水時においては,河川水の利用に制限がかかるために,再び地下水の利用が復活することなどにより,著しい地盤沈下が発生するものと考えられている(証人P4)。仮に,この当時に徳山ダムの渇水対策容量が確保されていた場合,木曽川及び揖斐川の がかかるために,再び地下水の利用が復活することなどにより,著しい地盤沈下が発生するものと考えられている(証人P4)。仮に,この当時に徳山ダムの渇水対策容量が確保されていた場合,木曽川及び揖斐川の維持流量の改善に向けた緊急水の補給が可能となる。この維持流量の改善のための補給水については,木曽川の緊急水利調整協議会において地域全体の合意が得られた場合には,既存ダムを水源とする都市用水等に振替利用することもあり得るところ,そのような措置が採られたとすれば,木曽川の最大65%の取水制限が20%以内にまで改善されると試算されている(乙11の3-483~486頁)。 イ判断(ア) 不特定容量による効果について徳山ダムは,揖斐川の流水の正常な機能を維持するため,不特定容量として,洪水期においては約5800万‰,非洪水期にあっては約1億0700万‰の容量が確保される。この容量により,10年に1回程度発生する規模の渇水時においても,α2地点で17‰/S,α3地点で10‰/Sの流量が確保できるように計画されている(乙15-24頁)。 この不特定容量による効果は,別表Ⅶ(乙15-24頁)のとおりであるところ,最小流量の棒グラフをみると,徳山ダム完成後では昭和23年と昭和37年を除けば17‰/Sを概ね満足しており,昭和17年から昭和42年までの26年間のうち3番目に少ない渇水のときにも概ね17‰/Sを確保することができることが認められるところ,17‰/Sというのは26年間のうち3番目の流量であるから,概ね10分の1の安全度が確保されることを表している。これによって,西濃用水などの揖斐川における既得用水が安定的に取水可能となるとともに,河川環境の維持に寄与するものといえる 3番目の流量であるから,概ね10分の1の安全度が確保されることを表している。これによって,西濃用水などの揖斐川における既得用水が安定的に取水可能となるとともに,河川環境の維持に寄与するものといえる(乙15-18頁)。 原告らは,既得水利権(農業用水)確保のための不特定補給は,取水制約による水稲減収が損失となるところ,かかる損失額は徳山ダムの建設費,維持管理費の額と比べてあまりにも小さく,財政投資として意味がないと主張する。 しかし,流水の正常な機能の維持として行われるいわゆる不特定補給は,舟運・漁業・景観・塩害の防止・河口閉塞の防止・河川管理施設の保護・地下水位の維持・動植物の保護・流水の清潔の保持等の流水の機能を平常時の河川においても正常に維持するという観点から,維持流量と水利流量を確保するもので,これにより揖斐川では,西濃用水等の既得用水が安定的に取水可能となるだけでなく,河川環境の維持(景観の保全,動植物の保護,流水の清潔の保持等)にも寄与するものであり,農業用水利だけのために行われるものではない。したがって,原告らの前記主張は,その前提において誤りがあり,採用することができない。 (イ) 渇水対策容量による効果について徳山ダムは,揖斐川だけではなく木曽川,長良川を含めた木曽三川において近年頻発する渇水状況に対処するため,10年に1回程度発生する渇水の規模を超える異常渇水時に木曽川水系の流水の正常な機能を維持するため,渇水対策容量として,洪水期,非洪水期にかかわらず,約5300万‰の容量を確保するよう計画されている(乙15-25頁)。 徳山ダムは,昭和51年4月27日付けで建設大臣から公団に指示があった事業実施方 約5300万‰の容量を確保するよう計画されている(乙15-25頁)。 徳山ダムは,昭和51年4月27日付けで建設大臣から公団に指示があった事業実施方針において,洪水期で約1億8200万‰,非洪水期で約2億1900万‰を利水容量としたが,その後,ダム審が示した「徳山ダム建設事業の今後の進め方について」において,「渇水に強い木曽川水系とするため,徳山ダムの渇水対策容量について,徳山ダムによる新規開発水量のうち名古屋市の水道用水を3‰/S減量する分に相当する容量を充当する」とされたことから,平成9年12月26日に事業実施方針の変更の指示がなされ,この3‰/Sに相当する利水容量5300万‰を渇水対策容量とした (乙116-26,27頁)。異常渇水時において,この容量を機動的に運用することによって,有効な渇水対策が可能となることが認められる。 前記認定のとおり,近年木曽川水系においては,降水量が減少傾向にあり渇水が頻発しており,しばしば長期にわたる取水制限を余儀なくされ,市民生活,経済活動に著しい影響を与えているほか,魚類を始めとする河川環境にも大きな影響を与えているところ,特に平成6年渇水では,木曽川の河川流量は平年値を大きく下回って,維持流量を大きく下回り,木曽川に依存するこの地域の市民生活,経済活動に与えた影響は計り知れないものがあり,揖斐川においても,平成6年7月中旬から9月中旬にかけてα2地点の観測流量が0‰/Sとなる日があり,揖斐川本川で水が涸れるという異常事態となったのである。仮に,この当時に徳山ダムの渇水対策容量が確保されていた場合,木曽川及び揖斐川の維持流量の改善に向けた緊急水の補給が可能となったと考えられ,徳山ダムによ 川で水が涸れるという異常事態となったのである。仮に,この当時に徳山ダムの渇水対策容量が確保されていた場合,木曽川及び揖斐川の維持流量の改善に向けた緊急水の補給が可能となったと考えられ,徳山ダムによる渇水対策容量の確保は必要であると認められる。 原告らは,ダム依存水利権にとって,ダム湖の貯水率が零になることが本当の渇水であり,単なる取水制限は渇水ではなく,ダム操作上予定された取水制限であると主張する。 しかし,木曽川水系における実際の取水制限は,各利水者ごとに,前月の取水実績量を基に各月ごとの月別変化率を考慮して節水対象取水量を算定し,当該節水対象取水量に対して(1-取水制限率)を乗じた量を取水量の上限とするという方法で行われているのであって(乙169),各利水者は,取水制限が開始されると,現に需要があると見込まれる量を取水することができなくなる。渇水は,このような当初の計画どおりに取水をすれば利水容量が底を尽くため,取水制限を余儀なくされている状態を指すのであって,このような取水制限が開始されれば,水道用水では,バルブを締める,ポンプ圧を下げるなどの操作により,出水不良,一時断水,赤水発生等の被害が発生し(乙170-39頁),工業用水では,生産ラインの縮小,回収水の再利用,生産調整等の被害が発生する(乙170-40,41頁)のである(乙240-350~353頁)。したがって,原告らの前記主張は採用できない。 また,原告らは,ダム依存水利権には,既存水利権の水量確保と河川環境の維持のため,その流量を下回る時には自流取水又はダムの貯水ができなくなる基準流量が設定されているが,木曽川の基準流量(α5地点100‰/S,α6地点50‰/S)を構成する既得用水量と河川維持流量は,同程 のため,その流量を下回る時には自流取水又はダムの貯水ができなくなる基準流量が設定されているが,木曽川の基準流量(α5地点100‰/S,α6地点50‰/S)を構成する既得用水量と河川維持流量は,同程度の規模の利根川の河口堰下流のそれと比較しても過大であり,この基準流量を切り下げることが渇水対策として重要であると主張する。 しかし,利根川の下流部は利根川本川と江戸川に分かれており(乙173-22頁),利根川の河口堰下流の河川維持流量は利根川本川のみの流量であるから,単純に木曽川α6地点の河川維持流量と比較することはできない。また,そもそも河川維持流量は,地域ごとに歴史的な経緯の中で関係河川使用者の調整を経て地域全体の合意として設定されたものであり,河川の規模により機械的に決まるものではなく,渇水時であってもそれを切り下げることは容易でないと推認される。したがって,原告らの前記主張は採用できない。 さらに,原告らは,自流が豊富な木曽川において,必要以上の農業用水と過大な河川維持流量があるので,これらを調整利用することによって渇水を容易に回避することができ,ダム建設より低廉であるとか,近年の少雨化傾向による渇水の頻発は,計画規模を超えたものであるので,ダムによる補給計画の対象外であり,そのような場合には河川法が機能して,農業用水,河川維持流量との渇水調整がされることによりその対応が可能であり,徳山ダムの渇水対策容量は不要であると主張する。 確かに,木曽川は自流が枯渇するような小河川ではないが,自流が先行の既得水利に利用されており,また,前記認定のとおり,木曽川は,利水安全度が低く,このため渇水回避が困難である上,原告らの主張は,水利使用の実態と渇水調整の可能性についての具体的な実 が,自流が先行の既得水利に利用されており,また,前記認定のとおり,木曽川は,利水安全度が低く,このため渇水回避が困難である上,原告らの主張は,水利使用の実態と渇水調整の可能性についての具体的な実証を欠くものである。また,計画規模を超える異常渇水時には河川の自流も減少していると考えられ,農業用水等との調整の余裕があるとは限らないし,渇水調整は特定の利水者が指導できるようなものではない上,異常渇水の場合には調整不足という事態もあり得る。したがって,建設大臣が原告ら主張の事情を考慮しなかったとしても不合理であると断定することはできず,裁量の範囲の逸脱又は裁量権の濫用はないというべきである。 (3) 洪水調節ア事実の認定以下に摘示する証拠によれば,次の事実が認められる。 (ア) 揖斐川と木曽三川一級河川木曽川水系の木曽川,長良川,揖斐川の三川は,長野,岐阜,滋賀,愛知,三重の5県に流域を持ち,四国の面積の半分以上に当たる約9100k㎡の流域面積を有する我が国有数の大河川である。これら三川は,水源は遠く離れているものの,それぞれ濃尾平野に流れ込み,広大な平野を貫流して,ほとんど同一地点に集まって伊勢湾に注いでいることから,木曽三川と総称される。揖斐川は,木曽三川の中で最西端に位置し,その源を岐阜県と福井県の県境の冠山(標高1257m)に発し,山間渓谷を流れ,坂内川を合わせて岐阜県揖斐郡揖斐川町に至り,濃尾平野に出て,粕川,根尾川を合わせて南流し,長良川と並流しつつ,牧田川,津屋川,大江川,多度川,肱江川を加え,三重県桑名市で長良川と合流し,伊勢湾に注ぐ幹線流路延長約121㎞,流域面積約1840k㎡の河川である(乙15)。 (イ) 揖斐川における洪水の特性木曽三 江川を加え,三重県桑名市で長良川と合流し,伊勢湾に注ぐ幹線流路延長約121㎞,流域面積約1840k㎡の河川である(乙15)。 (イ) 揖斐川における洪水の特性木曽三川流域の降水量の地域分布特性を見ると,特に揖斐川流域の年平均降水量は木曽三川の中で最も多く,上流域は年平均降水量が3000㎜以上にもなり,日本の年平均降水量1714㎜(乙38)を大きく上回っている。また,木曽三川の出水原因の多くが南西から北東に通過する低気圧及び台風であるため,降雨は西に位置する揖斐川流域から降り始めることが多く,揖斐川は,木曽三川の中で最も流路延長が短いこと及び河床の縦断勾配が急なことから,最も早く洪水が発生する傾向にある。そして,揖斐川は,濃尾平野を流下する中下流域では洪水時の河川水位が周辺の地盤高よりかなり高いため,洪水時に万一堤防が決壊すると,洪水流は地盤高の低い市街地や耕作地等に氾濫し,大きな浸水被害を及ぼすおそれがある(乙15,乙116-6頁)。 揖斐川における代表的な洪水被害としては,昭和34年8月の集中豪雨及び同年9月の伊勢湾台風と2度にわたり,揖斐川支川の牧田川合流地点付近のα12地先において右岸堤防が決壊し,大きな被害が発生したほか,昭和35年8月,36年9月,40年9月,47年9月,50年8月,51年9月,平成元年9月,2年9月と,計画高水位を上回るか又はこれに匹敵する程度の大きな洪水が発生しており,懸命な水防活動によって本川の破堤氾濫こそ免れたものの,支川の氾濫や内水氾濫により,大垣市を始めとする各地で甚大な浸水被害があった(公知の事実,乙221-4頁)。 現在,揖斐川が氾濫した場合に 支川の氾濫や内水氾濫により,大垣市を始めとする各地で甚大な浸水被害があった(公知の事実,乙221-4頁)。 現在,揖斐川が氾濫した場合に被害を受けるおそれのある区域のうち,本川の氾濫にかかわる区域の人口は約47万人,資産は約3兆円(平成2年時点)に達しており,地盤沈下の進行と相まって,万一破堤したときの被害は甚大である(乙15-6,17頁)。 (ウ) 工事実施計画における治水上の計画目標揖斐川の治水計画は,工事実施計画によるものであるが,同計画は,昭和43年に基本的な改訂が行われ,その後必要に応じて部分改訂が行われており,現在のものは,平成6年6月8日に部分改訂について河川審議会の意見を聴いて決定されたものである(乙231-19頁)。平成9年に河川法が改正され,従来の工事実施計画に代わって河川整備基本方針(河川法16条)及び河川整備計画(河川法16条の2)を策定することとされたが,木曽川水系ではまだ河川整備基本方針等が策定されておらず,改正に伴う経過措置(河川法の一部を改正する法律〔平成9年法律第69号〕附則2条1項)として,従来の工事実施計画の一部が河川整備基本方針等とみなされる(河川法附則)。 揖斐川の治水上の計画目標は,100年に1回の確率(年超過確率1/100)で発生する可能性のある洪水に対応することができることである(乙11の1-18頁)。全国的に見て主要な一級河川の中には1/150,1/200と,150年,200年に1回程度の洪水に対応することができるという安全度の高い計画目標を設定しているものが多いことからすると(乙15-6頁),揖斐川の1/100という計画目標は,全国の主要河川との比較上,低い水準であ 年に1回程度の洪水に対応することができるという安全度の高い計画目標を設定しているものが多いことからすると(乙15-6頁),揖斐川の1/100という計画目標は,全国の主要河川との比較上,低い水準である。 (エ) 工事実施計画における計画降雨量の設定揖斐川流域において,雨量データが存在している明治26年から昭和40年までの73年間における各年の流域平均2日雨量の最大値から統計学的手法を用いて年超過確率100分の1,すなわち本流域で平均して100年に1回の確率で発生する可能性がある2日雨量395㎜(計画降雨量)を算出している(乙11の4-62,63頁,乙116-16頁)。 (オ) 工事実施計画における計画降雨群の設定降雨の時間分布及び地域分布が異なる5つの降雨パターン(昭和28年9月,昭和34年8月,同年9月,昭和35年8月,昭和40年9月)を代表的なものとして選定し, その際の実際の降雨量を計画降雨量395㎜となるように引き伸ばして計画降雨群を設定している(乙116-16頁)。 (カ) 工事実施計画における基本高水の設定計画降雨群を,全国的に見ても利用例が多い降雨量と流量の関係を表す流出解析モデルを適用して,計画降雨群によるα2地点の洪水流量の時間的変化を示すハイドログラフ群を作成している(乙116-16頁)。このハイドログラフ群のうち,α2地点のピーク流量が最大となるのは昭和34年9月洪水を基にしたハイドログラフであり,そのピーク流量が6300‰/Sとなる。したがって,揖斐川のα2地点の基本高水には,この昭和34年9月洪水型のハイドログラフが採用され,基本高水のピーク流量が6300‰/Sとされた(乙116 であり,そのピーク流量が6300‰/Sとなる。したがって,揖斐川のα2地点の基本高水には,この昭和34年9月洪水型のハイドログラフが採用され,基本高水のピーク流量が6300‰/Sとされた(乙116-16頁)。 (キ) 工事実施計画における計画高水流量の設定計画高水流量とは,基本高水をダム等の洪水調節施設により調節した後の河道の最大流量をいい,これを安全に流下させることが治水計画の基本となる。 揖斐川の治水計画において,計画高水流量は,原則として昭和38年時点の計画に定められた各基準地点の流量を大きく変えないで,α2地点でも3900‰/Sと定められた。また,川幅はほぼ現状のままとして,浚渫,築堤等を行うとともに,基本高水のピーク流量6300‰/Sと計画高水流量3900‰/Sとの差である2400‰/Sについて,既設の横山ダム及び建設中の徳山ダムを含む上流ダム群で洪水調節を行うことにより洪水を軽減させることにしている(乙116-17頁)。この結果,揖斐川の計画高水流量は別紙図面Ⅰ(乙15-6頁)「揖斐川計画高水流量配分図」のとおりとなっている。 (ク) 工事実施計画における河道計画の設定計画河道は,計画高水流量を安全に流すために必要な断面と平面形状を有するとともに安定的に維持されるよう設定される。具体的には,計画高水流量を計画高水位以下の水位で流すことができるか,堤防の法線,縦横断形状が適切に設定されて 安全に流すために必要な断面と平面形状を有するとともに安定的に維持されるよう設定される。具体的には,計画高水流量を計画高水位以下の水位で流すことができるか,堤防の法線,縦横断形状が適切に設定されているかなどについて検討し,逐次修正を行いながら河道計画を決定している(乙232・1-14頁)。 (ケ) 徳山ダム建設による治水上の効果揖斐川の治水計画においては,浚渫,築堤等の河道改修とともに,基本高水のピーク流量と計画高水流量との差を徳山ダム及び横山ダム等の上流ダム群により調節することとしており,徳山ダムは,この上流ダム群の中の主要な施設として位置付けられている(乙231-3頁)。具体的には,ダム建設地点における計画高水流量1920‰/Sのうち1720‰/Sを調節し,200‰/Sだけを下流に放流し,下流での洪水被害を防ぐこととし,このための洪水調節容量として約1億‰を確保するよう計画されている(乙15-8頁)。 徳山ダム建設による揖斐川の治水上の効果としては,次のとおり,揖斐川の治水安全度の向上,下流等における洪水時の水位上昇の抑制という2つの効果がある。 A 治水安全度とは,現実の河川の状況,既存のダム等の現状等からみて,確率論的に何年に1回程度の洪水に対応できるかということであるところ,揖斐川の治水安全度は,現況河道を前提として,既設の横山ダムによる洪水調節機能を考慮すると,年超過確率で約15分の1で,15年に1回程度の洪水に対応できるが,徳山ダムが完成し,その洪水調節機能が加わると,年超過確率で約30分の1となり,30年に1回程度の洪水に対応できるようになることが認められる(乙15-9頁)。 B 徳山ダムによる洪水調節機能により,別表Ⅷ( 節機能が加わると,年超過確率で約30分の1となり,30年に1回程度の洪水に対応できるようになることが認められる(乙15-9頁)。 B 徳山ダムによる洪水調節機能により,別表Ⅷ(乙15-10頁)「ダムによる水位低下効果図」に示されるようにダム下流のほぼ全川にわたり洪水時の水位が低下する。また,別紙図面Ⅱ(乙15-10頁)「ダムによる水位低下効果(α2地点横断図)」にみられるように,昭和34年9月洪水と同様の型の計画規模の洪水を想定した試算によれば,基準地点であるα2地点で,約1.4mの水位低下がある。同試算によれば,徳山ダムがない場合又は横山ダムのみがある場合には,堤防の高さ上限直近まで水位が上昇することとなって破堤に至る危険性が高いが,徳山ダムが完成すればこのような水位上昇を抑え,また,揖斐川本川の水位が低下することにより本川に流入する支川の水位の低下をもたらし,ポンプ等による内水の排水効果を高めることができ,治水上有益であることが認められる。 イ判断(ア) 揖斐川の現況流下能力現況流下能力とは,現況の河道において,堤防の強度等の条件を考慮せず,計画高水位以下の河積で流下させることができる最大の流量のことであり,河道形状は現状のままとし,ある仮定した洪水流量を流下させた場合の水位を不等流計算で計算し,ある区間で計画高水位を超える場合には仮定した洪水流量を小さくして再び同じ計算を行い,これを繰り返して現況の河道において計画高水位以下で流せる最大の流量を算出するものである。 揖斐川の現況流下能力は,α2地点の少し下流の河口から35㎞から40㎞で3400‰/Sである。この計算は,出発水位を2.5mとし,平成4年,平成5年の実測に基づく現況河床を与件として, 揖斐川の現況流下能力は,α2地点の少し下流の河口から35㎞から40㎞で3400‰/Sである。この計算は,出発水位を2.5mとし,平成4年,平成5年の実測に基づく現況河床を与件として,洪水の実績の粗度係数により不等流計算により算出されたものであるが,海から順に不等流計算により水位計算をしていくと,α2地点のやや下流で流量3400‰/Sの流量のときに計画高水位に触れる計算結果になっている(乙15-8頁「3400‰/S流下時の水位縦断図(平成4~5年測量河道)」)。 実績の粗度係数は,ある幅を有するとともに植生の変化等により値が変化するものであるから,現在の河道の流下能力を求める場合に用いる現況の粗度係数としては,現在の河道の状態を可能な限り反映できるものとして,計画高水位近くまで実際に水位が上昇した最近の大規模な洪水発生時の記録から推定された粗度係数を基本として設定する必要があるとされている(乙232・1-29頁)。 さらに,このような実績粗度係数が複数存在する場合には,安全を考えてどのタイプの洪水も一応流下が可能となる値をとるべきであり,最大の値を用いることが適当であるとされている(乙232・1-16頁)。揖斐川の現況河道の流下能力算定に当たっては,計画高水位を超えた大きな規模で最も近年に発生した(乙221-4頁表「揖斐川の主な洪水」)洪水の実績の粗度係数を全川にわたり検討し,現況の粗度係数として用いられている(乙11の4-286頁下表)。 このように,α2地点で3400‰/Sを超える流量となるときには,堤防や護岸の整備の基準となる計画高水位を超える危険な状態となり,洪水を安全に流下させることのできない状況となることが予想される。 (イ) 徳山ダム建設による治水上の効果 るときには,堤防や護岸の整備の基準となる計画高水位を超える危険な状態となり,洪水を安全に流下させることのできない状況となることが予想される。 (イ) 徳山ダム建設による治水上の効果徳山ダム建設による揖斐川の治水上の効果は,前記ア(ケ)のとおりであり,これらは治水対策として極めて有益なものと認められる。 原告らは,2日間計画降雨量と洪水時の2日間降雨量の比から対象洪水時の時間降雨量の引き伸ばしをし,それから対象洪水についての洪水流量を求める方法には問題があると主張する。 しかし,揖斐川の治水計画においては,当該流域での降雨の地域的分布及び時間的分布を代表すると考えられる幾つかの降雨状況を選定し,それぞれの降雨量を計画降雨量に引き伸ばして計画降雨群を設定しているところ,この方法は,技術基準案計画編(乙34の1)で示されている一般的な方法であり,また,引き伸ばし率についても最大で1.313であり(乙11の4-64頁「表3-8」),2倍程度以内に収まっており問題がない(乙11の1-19頁,証人P4)と解される。 原告らは,河川管理施設等構造令の基準によれば,揖斐川の計画高水流量はα2地点で3900‰/Sであるため,余裕高は1.5mで十分であるにもかかわらず,計画上は2mで設定されており,堤防の余裕高を河川管理施設等構造令の基準に準拠させれば,計画堤防高を変えずにさらに0.5m計画高水位を上昇させることができると主張する。 しかし,堤防の高さは,計画高水流量に応じ,計画高水位に一定の余裕高を加えた値以上に設定するものとされ(河川管理施設等構造令20条1項),余裕高は,洪水時の風浪,うねり,跳水等による一時的な水 しかし,堤防の高さは,計画高水流量に応じ,計画高水位に一定の余裕高を加えた値以上に設定するものとされ(河川管理施設等構造令20条1項),余裕高は,洪水時の風浪,うねり,跳水等による一時的な水位上昇に対し,洪水を越流させず,また,洪水時の巡視や水防を実施する場合の安全の確保,流木等流下物への対応等のために必要とされるものであるところ(乙79-108頁),河川管理施設等構造令の基準値は最低値を定めた基準であり,それぞれの河川の特徴を総合的に勘案し,必要に応じてプラスして工事実施基本計画で定められる(乙79-111頁)ものであり,計画高水位の設定には,沿川の地盤高との差異が重要であり,計画高水位と堤防としての施設の構造上の必要な余裕高とは別に定められるものであって,余裕高があるからこれを減じて計画高水位を上昇させればよいとする主張は失当である。そして,木曽三川の中で比較すると,揖斐川が最も河床勾配がきつく,いわゆる荒れ川であることなどを総合的に勘案して,木曽三川一律に余裕高2mと設定され,平成6年改訂の工事実施計画にて定められたものであることが認められる(証人P4,乙231-8頁)。余裕高を小さくし,その分河道の流下能力を大きくすることは,既往最高水位程度に設定されている計画高水位を大幅に高くし,さらには,現在でも洪水時の水位が沿川の地盤高よりかなり高い状態にあるのに更に上昇させることを意味するのであって,堤防等に未知の力が加わり,万一破堤したときの被害が甚大となり,支川合流や内水排除が困難となるなどの重大な問題を生じさせるおそれがあるから,原告らの前記主張は採用することができない。 さらに,原告らは,計画粗度係数の改善や計画河床高への浚渫により,流水が流れやすくなったり水深が増大することから,マニングの公式に当ては 原告らの前記主張は採用することができない。 さらに,原告らは,計画粗度係数の改善や計画河床高への浚渫により,流水が流れやすくなったり水深が増大することから,マニングの公式に当てはめて流下能力が増大すると主張する。 しかし,河川の場合には,河道断面及び勾配が一定であることを前提とする等流計算の考え方をそのまま適用することはできないから,原告らの上記主張は失当である。 (ウ) 代替案との比較揖斐川の治水対策の代替案については,徳山ダムを造らずに,その分河道の計画高水流量を増大させる案として,別表Ⅸ(乙15-12頁,13頁)のとおり,引堤案(堤防を堤内地側に引いて川幅を広げる方法),堤防嵩上げ案(堤防を高くする方法),河床掘削増大案(河床を掘り下げる方法)の三つの案が考えられるので,上記各代替案の合理性について検討する。 引堤案は,大量の家屋移転と用地買収がほぼ全川にわたって必要で今後長期間を要することとなるし,堤防嵩上げ案は,現在よりも水位が高くなり堤防等に未知の力が加わるほか,内水排除が困難となり,多数の橋梁の架け替えが必要となる等の問題があり,河床掘削増大案は,既に相当程度河床を掘削するとされている現在の治水計画よりも,更に大規模な掘削となるほか,河床の安定性等について十分な検証が必要であり,橋脚の根入れが不足し多数の橋梁の架け替えを要する等の問題があるなど,3案いずれも揖斐川の流域の現状からすると,社会経済的に影響が大きく,現実性がないことから採用が困難であると考えられる。 このように,徳山ダム建設と河道改修による現在の揖斐川の治水計画は,他の考え得る代替案と比較しても最も合理的なものと認められる。 いことから採用が困難であると考えられる。 このように,徳山ダム建設と河道改修による現在の揖斐川の治水計画は,他の考え得る代替案と比較しても最も合理的なものと認められる。 原告らは,近年揖斐川の本川においては越流破堤は発生していないから「河道の整備を含めた堤防強化」が重要で,費用的にもダム建設よりも経済的で,早期に洪水防御の目的達成が可能であると主張する。 しかし,原告らの主張する「河道の整備を含めた堤防強化」の内容自体や,このような堤防強化は費用的にもダム建設よりも経済的なはずであるとする費用面のいずれにおいても,その具体的な内容は不明である。 したがって,原告らの上記主張は具体的な裏付けを欠くものであり採用することができない。 (4) 発電ア事実の認定以下に摘示する証拠によれば,次の事実が認められる。 (ア) 本件事業認定申請時において,東海地方を中心とする中部電力株式会社管内の最大需要電力は,年平均伸び率で約2.1%と予想されていた(乙43-3頁)。この最大需要電力の今後の増加傾向に対応し,電力の安定供給を確保するため,供給予備率が約8%から10%となるよう,電源開発を着実に進める必要があった(乙115-373頁)。 (イ) 徳山発電所(最大出力40万kW)は,これら電源開発の一環として位置付けられ,電源開発株式会社が建設するもので,電源開発促進法3条1項に基づき,電源開発基本計画の新規着手開発電源として,昭和57年12月8日開催の第90回電源開発調整審議会の議を経て決定されたものである(乙115-377~383頁)。徳山発電所で発電される電力は,電源開発株式会社から中部電力株式会社に 電源として,昭和57年12月8日開催の第90回電源開発調整審議会の議を経て決定されたものである(乙115-377~383頁)。徳山発電所で発電される電力は,電源開発株式会社から中部電力株式会社に供給され,同社により管内へ供給される。徳山発電所の運転開始により,中部電力株式会社管内の平成20年度の電力需給バランスは,事業認定申請時の想定によると,供給力が3460万kWから3500万kWに,供給予備率が7.7%から8.9%となり,電力の安定供給のための供給力確保に寄与すると考えられた(乙115-364頁)。 (ウ) 徳山発電所は,徳山ダムの貯水池を上部調整池とし,下流に中部電力株式会社が別の事業として建設する杉原ダムの貯水池を下部調整池として,上部調整池からの河川流入水及び下部調整池からの上部調整池への揚水分を発電に利用し,その後下流へ放流する混合揚水式発電所であり(乙15-26頁),水力発電の特性である起動・停止が頻繁かつ短時間で行えること,出力の変化速度が速いこと等の優れた負荷追従特性を有している(証人P1)。 イ判断前記ア認定のとおり,徳山ダムは,出力調整能力に優れる水力発電所の特長を活かして,電力需要の変動時の調整力,電力需要ピーク時の供給力として電力の安定供給に重要な役割を担うとともに,河川流水の水力エネルギーを有効利用するものであって,電力の安定供給の観点から有用なものと認められる。 原告らは,中部電力株式会社では,電力需要の低下に伴い,揚水式発電所建設計画を延期,中止しているから,徳山ダムは発電の点でも不要な施設であると主張する。 しかし,中部電力株式会社が揚水式発電所建設計画を延期,中止したのは本件事業認定後の事実であるから,本件事業認定時において るから,徳山ダムは発電の点でも不要な施設であると主張する。 しかし,中部電力株式会社が揚水式発電所建設計画を延期,中止したのは本件事業認定後の事実であるから,本件事業認定時において徳山ダムが発電の点で不要な施設であるということはできず,原告らの前記主張は採用することができない。 3 本件起業地が本件事業の用に供されることにより失われる利益(1) 環境への影響と保全対策ア事実の認定以下に摘示する証拠によれば,次の事実が認められる。 (ア) 建設大臣が検討の基礎とした資料建設大臣は,本件事業の事業認定の審査に当たり,本件事業による環境への影響を考慮するため,環境調査や保全対策等の取組みについて,公団から提出された資料等を基に確認した(乙115-260頁以下,証人P1,弁論の全趣旨)。 (イ) 本件事業における環境調査等の経緯A 環境調査の経緯本件事業に係る環境調査については,昭和51年度から同53年度にかけて,動植物関係の専門家による生物相調査が行われ,その結果は,「岐阜県揖斐川上流域生物相調査報告書」(乙11の2-412頁)として取りまとめられた。 一方,徳山発電所,杉原発電所については,「発電所の立地に関する環境影響調査及び環境審査の強化について」(昭和52年7月4日付け通商産業省議決定,乙45)に基づく環境影響評価の手続がされ,前記生物相調査と電源開発株式会社及び中部電力株式会社が行った調査結果を基に,「徳山発電所・杉原発電所環境影響調査書」(乙11の2-415頁)が作成されて一般に縦覧されるとともに,関係地方公共団体への提出,地元説明会による意見の把握等を経た後,昭 社が行った調査結果を基に,「徳山発電所・杉原発電所環境影響調査書」(乙11の2-415頁)が作成されて一般に縦覧されるとともに,関係地方公共団体への提出,地元説明会による意見の把握等を経た後,昭和58年1月の「総合評価」において,総合的に判断して,環境に与える影響は小さいものと評価され(乙46-177頁),環境影響評価手続が完了した。 公団は,前記生物相調査実施から年月が経過したこと等から,平成2年度から環境に関する文献調査等を実施するとともに(乙90-1~6頁),平成3年度以降,環境調査の実施と環境保全対策に対する指導・助言を得ることを目的として,当地域の環境に精通した専門家で構成する徳山ダム生物調査会(平成8年1月に徳山ダム環境調査会に改組)を設置し(乙47の1・2),当調査会の指導・助言のもと,生物相に関する現地調査を進めるとともに,具体的な環境保全対策の実施についての検討を進めた。また,ダムサイト地点の水質についても,昭和54年から継続して調査が実施されている。 本件起業地を含む周辺地域の大型猛禽類の調査については,平成8年8月に設置された「徳山ダムワシタカ類研究会」(乙49)の指導・助言の下,徳山ダム周辺のワシタカ類の生息状況と繁殖期行動圏の内部構造(高頻度利用域,採餌場,営巣地等)を把握するための調査が,平成8年5月から平成10年9月まで計22回にわたり実施された。 B ダム審における環境に関する審議このような環境調査結果や環境保全対策等について,本件事業の目的・内容等について審議し,建設省中部地方建設局長,公団中部支社長に対して意見を述べることを目的として設置されたダム審や,ダム審の求めに応じて専門家から助言を得ることを目的として設置 ,本件事業の目的・内容等について審議し,建設省中部地方建設局長,公団中部支社長に対して意見を述べることを目的として設置されたダム審や,ダム審の求めに応じて専門家から助言を得ることを目的として設置されたダム審環境部会において審議が行われた(乙11の5)。 ダム審環境部会は,本件事業に関する環境調査,環境保全対策等について詳細に審議した上,ダム審に報告を行い(乙11の3),これを受けてダム審は,平成9年2月,今後の環境調査,環境保全対策等の実施に当たっては,環境部会の提言を尊重するとともに,ダム事業者において設置している徳山ダム環境調査会及び徳山ダムワシタカ類研究会を中心とする専門家の指導・助言を得て,環境の保全,特に貴重生物種等の保全に最大限配慮して事業を進めること,完成後についても,モニタリングを適切に実施するのはもちろんのこと,関係者が連携し,良好な環境が確保されるようなシステムを構築していくことが必要であること等の委員会意見を取りまとめた(乙11の3-577~582頁)。 公団は,これらを踏まえ,既往の環境調査に加えて,環境影響評価法にも導入されている調査項目に準拠して,徳山ダム流域の環境を保全する上で重要な生育・生息環境を把握するための「生育・生息環境調査」を,平成9年度から平成10年度にかけて徳山ダム環境調査会の指導・助言を得ながら実施した(丙2-28頁)。さらに,行動圏の内部構造の把握を行う大型猛禽類調査が終了した平成10年11月24日,25日には,徳山ダム希少猛禽類保全対策の基本的な考え方について,徳山ダムワシタカ類研究会及び環境調査会の審議を経て,本件事業に関係する各つがいにつき繁殖条件の確保,生息条件の確保,種どうしの孤立回避等,保全対策の基本的な考え方を決定した(乙50 え方について,徳山ダムワシタカ類研究会及び環境調査会の審議を経て,本件事業に関係する各つがいにつき繁殖条件の確保,生息条件の確保,種どうしの孤立回避等,保全対策の基本的な考え方を決定した(乙50)。 C 環境調査a 生物相調査について徳山ダムにおける生物相調査は,陸生生物については,徳山ダムの工事実施関連区域とその周辺区域を含む区域を,また,水生生物については,根尾川合流点までの揖斐川本川及び主要な支川と谷を含む河川区域をそれぞれその調査対象区域とし,各項目ごとに季節的な変動も考慮しながら,生育・生息している生物相が把握できるように現地調査を実施した(乙11の5-76~79頁)。 また,植生については,群落組成調査や空中写真なども併用し,現存植生図の作成を行った。この結果によると,貯水池の出現によって失われる植物群落は,クマシデ-ケヤキ群落,水田跡地,コナラ-クリ群集,スギ-ヒノキ植林(人工林)の順に面積が多く,これらが消失する植生面積全体の約9割を占める(乙11の5-95~102頁)。 b 水質調査について(乙11の5-83~94頁)徳山ダムが位置する揖斐川上流域は,α3橋より上流が環境基準の河川AA類型に,同下流が河川A類型にそれぞれ指定されている(乙11の5-83頁)。 ダム審の環境部会資料によれば,本件事業完成後の下流河川の水質予測について,取水地点上流のα3地点におけるBOD(生物化学的酸素要求量)は,ダム建設後の低水流量が増加するので,流域からの汚濁負荷量が増加しないと 部会資料によれば,本件事業完成後の下流河川の水質予測について,取水地点上流のα3地点におけるBOD(生物化学的酸素要求量)は,ダム建設後の低水流量が増加するので,流域からの汚濁負荷量が増加しないとすれば,現状より良くなるとされている(乙11の5-85頁)。また,ダム放流水の冷水・濁水現象のシミュレーション(乙11の5-150頁)は,貯水池内の水温変化等が発生すると考えられるが,放流水温はその影響を小さくするように貯水池表層部から取水が可能な選択取水設備を運用することにより,年間を通じて流入水温程度に維持することが可能であり,濁水については,徳山ダムは総貯水容量が大きく,平均貯水池回転率も小さいことから,安定して水温躍層が形成され,中小規模の出水では貯水池内での流入土砂の沈降や希釈により,放流濁度は流入濁度より大幅に低下する傾向となり,濁水の長期化現象が発生する可能性は低いものと予測している(乙11の5-85~93頁)。さらに,貯水池内の富栄養化現象については,一般にダム貯水池の予測に用いられるボーレンバイダーモデルによる予測の結果,徳山ダムは,富栄養化現象の発生する可能性は低く,ダム集水域内に住家,養畜産業,田畑等がないことから人為的汚染源は少なく,将来,富栄養化現象の発生する可能性は低いと予測している(乙11の5-94頁)。 c 大型猛禽類調査について公団は,次のとおり,イヌワシ,クマタカなどの大型猛禽類を,特に重点的に取り組むべき保全対象ととらえ,繁殖つがいを中心とした詳細な調査を行った。 (a) 大型猛禽類調査の経緯平成8年5月,公団は,大型猛禽類の生息分布や生態に配慮した保全対策を念頭においた大型猛禽類の調査を平成8年5月20日から実施 (a) 大型猛禽類調査の経緯平成8年5月,公団は,大型猛禽類の生息分布や生態に配慮した保全対策を念頭においた大型猛禽類の調査を平成8年5月20日から実施することとし,その旨公表した(乙11の1-427~432頁)。また,同年8月には,大型猛禽類調査の調査内容,調査手法,調査結果の取りまとめ及び保全対策の検討を行うため,鳥類の専門家からなる徳山ダムワシタカ類研究会を設置し,専門家から指導・助言を受けることとした(乙49)。さらに,同年12月には,それまでの大型猛禽類の調査結果から,徳山ダム貯水池周辺におけるワシタカ類の生息状況について,つがい数やその行動分布がおおむね明らかとなり,一部につき営巣地の概定も可能になったことを公表するとともに,引き続き徳山ダムワシタカ類研究会の指導・助言に基づき,それぞれのつがいの行動圏とその内部構造を把握するための調査を継続して行うこととした。また,保全対策については,「ワシタカ類保全対策の基本的な考え方(案)」として,ダム貯水池周辺区域の保全,採餌環境の維持・創出,工事実施上の配慮及びフォローアップからなる保全対策の基本的考え方を示した(乙11の1-471~481頁)。なお,これらの調査結果や「ワシタカ類保全対策の基本的考え方(案)」については,ダム審や同環境部会の委員会資料として審議に付されている(乙11の3-472~481頁,乙11の5-415~418頁)。 本件事業における大型猛禽類調査は,上記経緯を経て,徳山ダムワシタカ類研究会の指導・助言の下,平成8年5月から平成10年9月までの間実施された。 (b) 大型猛禽類調査の内容(乙11の1-427~43 類調査は,上記経緯を経て,徳山ダムワシタカ類研究会の指導・助言の下,平成8年5月から平成10年9月までの間実施された。 (b) 大型猛禽類調査の内容(乙11の1-427~432頁,471~483頁,乙48-18~70頁,乙115-261~310頁)公団が実施した大型猛禽類調査の手法は,調査範囲に配置された各調査定点からの専門調査員による双眼鏡等を用いた目視による同時観察を基本とし,イヌワシ,クマタカが確認された場合は,その位置を図面に記録するとともに,種類,個体数,行動,観察時間,雌雄の別,成鳥・幼鳥の別などを記録している。また,個体の特徴の確認等により,個体識別を行っている。 調査時期は,特に大型猛禽類の繁殖活動時期に着目し,晩秋から初夏にかけての造巣期から巣立ちまでの期間を重点的な調査対象期間として,平成8年5月から平成10年9月までの計22回にわたり各回5日間を基本として行われた。 調査範囲は,まず徳山ダムの集水区域と隣接する下流域をほぼ包括する広い範囲を対象とした。その結果,イヌワシについては4つがい,クマタカについては14つがいの生息とその生息分布が確認された。 その後,徳山ダムワシタカ類研究会の指導・助言に基づき,優先的にその保全を考慮すべき大型猛禽類のつがいとして,つがいの生息分布が貯水池予定区域の事業実施区域等の事業区域と重なるなど事業に関連すると考えられるイヌワシ1つがい,クマタカ8つがいを重点的な調査対象とし,それぞれのつがいが通常の生活を行うための行動圏とその行動圏内における利用区域を区分 がい,クマタカ8つがいを重点的な調査対象とし,それぞれのつがいが通常の生活を行うための行動圏とその行動圏内における利用区域を区分した内部構造を把握することとした。行動圏の内部構造は,調査の結果得られた繁殖活動に密接に関連するディスプレー,防衛行動,交尾,巣材採取,巣材運び,餌運び,抱卵・抱雛,幼鳥確認等の指標行動や飛翔の位置を基にエリアとして推定した。 これらの調査の内容は,徳山ダムワシタカ類研究会の指導,助言を得て実施され,その調査手法は「猛禽類保護の進め方(特にイヌワシ,クマタカ,オオタカについて)」(環境庁〔当時。以下同じ。〕自然保護局野生生物課編,乙48)を踏まえ,本件事業認定後公団が作成した「ダム事業における希少猛禽類保全対策指針」(丙9参照)に沿った内容となっている。 (c) 本件事業のイヌワシ,クマタカへの影響の程度平成9年11月の徳山ダムワシタカ類研究会では,調査の中間結果と今後の方向性の審議において,つがい毎の調査結果が整理され,今後の調査方針がまとめられた。 上記結果から,確認されているイヌワシ4つがい,クマタカ14つがいについて,いずれのつがいも湛水区域に営巣地及び営巣中心域はなく,事業による直接的な影響はほとんどないことが確認され,また,上記研究会の指導を得て行動圏の内部構造を把握し,適切な保全対策を実施する対象のつがいが,イヌワシ1つがい,クマタカ8つがいとされた(乙115-265頁,300~310頁)。 D 環境保全対策a 各種指導,助言を踏まえた保全対策 実施する対象のつがいが,イヌワシ1つがい,クマタカ8つがいとされた(乙115-265頁,300~310頁)。 D 環境保全対策a 各種指導,助言を踏まえた保全対策本件事業における環境保全対策は,公団が作成した環境部会資料において,それまでの調査結果を基に,自然環境の保全に対する基本理念や水質,植物,動物に対する保全のための方策及びその他工事中,供用開始後の方策等が提示されている(乙11の5-155~164頁)。その後も,ダム審や同環境部会での審議を経て提出された意見「徳山ダム建設事業について(意見)」(乙11の1-5~12頁)や環境部会による助言(乙11の1-52~62頁,乙11の3-624~633頁)を踏まえ,徳山ダム環境調査会,徳山ダムワシタカ類研究会,徳山ダム流域管理協議会,徳山ダム景観委員会等関係機関,専門家の指導・助言を得て,環境保全対策が行われている(乙115-320頁)。 b 専門家による指導,巡視公団では,学識経験者や環境の専門家を通じて現地の状況に即した環境の保全のため,環境エキスパートによる環境巡視,環境パトロール,環境学習会等の専門家による指導及び巡視を実施している(乙115-321頁)。 c 工事における対応等公団は,本件事業の施工に当たり,環境に与える影響をできる限り軽減することを主眼として,橋梁・トンネルの積極的な採用,法面試験植生の実施,表土等を利用した法面植生試験,工事期間の調整等,騒音測定及び騒音シミュレーションの実施,傾斜型側溝の設置,立木の段階的伐採,環境ハンドブックの作成等の対策を講じている(乙115-321,322頁)。 d 保全対策 間の調整等,騒音測定及び騒音シミュレーションの実施,傾斜型側溝の設置,立木の段階的伐採,環境ハンドブックの作成等の対策を講じている(乙115-321,322頁)。 d 保全対策の実施公団は,次のような保全対策を実施している。 (a) 植物についての保全対策は,陸上植物については,地形改変の抑制,緑化による植生の復元及び移植等を行うことなどにより保全が図られる。また,水生植物については,ダム湖周辺や事業実施区域内の流入河川において,その保護に努めるとともに,必要に応じて植栽対策を講じることなどにより保全が図られる。さらに,藻類等については,貯水池内の藻類の種類構成や現存量の動向を把握するなど継続的なモニタリング調査を行うとともに,必要に応じて適切な水質保全対策を行うことにより水質の保全が図られる。 (b) 動物についての保全対策は,哺乳類,両生類,爬虫類,陸上昆虫類,陸生貝類については,地形改変の抑制,移動路の確保,生息環境の確保を行うことなどにより保全が図られる(乙11の5-160~161頁)。また,鳥類については,湛水区域を除く事業実施区域内での森林の保全や巣箱等の営巣場所の提供など,営巣地や生息環境の確保を行うことなどにより保全が図られる(乙11の5-162頁)。魚類,水生昆虫類については,湛水区域を除く事業実施区域内の渓流域の維持並びに産卵場及び稚魚が生息できる河川環境を確保することにより保全が図られる(乙11の5-163頁)。 (c) 貯水池及び放流設備の供用に伴う水質変化につき,放流水温については,貯水池表層部から取水が可能な選択取水設備を運用することにより,年間を通じて流入水温程度に維持することが可能になる。また (c) 貯水池及び放流設備の供用に伴う水質変化につき,放流水温については,貯水池表層部から取水が可能な選択取水設備を運用することにより,年間を通じて流入水温程度に維持することが可能になる。また,濁水については,長期化現象が発生する可能性は低いと予測している(乙11の5-85~93頁)。 さらに,富栄養化現象の予測では,ボーレンバイダーモデルによる予測によると富栄養化現象の発生する可能性は低いとされ,将来とも富栄養化現象の発生する可能性は低いと考えられる(乙11の5-94頁)。 (d) 大型猛禽類の保全対策としては,繁殖ペアでの対応では,営巣地の保全,主要な狩り場の保全,繁殖期のストレス回避等により保全が図られる。 また,繁殖ペア以外の対応では主要な生息域の保全,生息を阻害するストレス回避等により保全が図られる(乙50)。 (e) 工事に伴う騒音,振動,濁水等については,環境基本法,騒音規制法,振動規制法及び岐阜県公害防止条例等の法規制が遵守されるとともに,以下の保全対策が行われる。すなわち,工事中の騒音,振動については,積極的に低騒音,低振動型建設機械を導入するなど発生源対策を行うとともに,周辺環境の騒音・振動の監視を行うことなどにより影響の最小化が図られる。工事中の濁水等については,沈殿池,濁水処理プラント等の設置,循環使用による排出量の抑制,排出水の水質管理を行うことなどにより影響の最小化が図られる(乙11の5-164頁3~11行目)。 (f) その他,環境の専門家によって工事前,工事中の環境保全状況や周辺の動植物の生息状況を定期的に監視したり,流域に生息する貴重な動植物のリストを記載した手帳等を作成・配布することなどにより,工事区域周辺の環境の現状把握や工事関 て工事前,工事中の環境保全状況や周辺の動植物の生息状況を定期的に監視したり,流域に生息する貴重な動植物のリストを記載した手帳等を作成・配布することなどにより,工事区域周辺の環境の現状把握や工事関係者等の環境保全に対する意識の向上が図られる(乙11の5-164頁12~15行目)。 また,ダム湛水後の環境への影響については,モニタリング調査を行い,その結果について公表するとともに,専門家等からなるフォローアップ委員会を設置し,必要に応じて適切な保全対策を講じることとされている(乙11の5-164頁)。 (ウ) 本件事業認定後の自然環境対策A 環境調査a 動植物等の調査公団は,前記のとおり,既往の環境調査に加えて,環境影響評価法に導入されている調査項目に準拠して,徳山ダム流域の環境を保全する上で重要な生育・生息環境を把握するための「生育・生息環境調査」を,平成9年度から平成10年度にかけて徳山ダム環境調査会の指導・助言を得ながら実施したが,その調査結果については,平成11年9月に,「徳山ダム周辺の自然環境」(丙2)として公表した(丙7)。 これまでの調査により,植物約1300種,動物約2600種の生育・生息を確認し,このうち文化財保護法等で指定されたものや環境庁のレッドリスト等に記載されているもの,さらに,専門家の指摘による重要な種として54種4群落を確認している(乙221-28~29頁,丙2-131頁,資-1~資-52)。 b ワシタカ類の調査平成8年5月より徳山ダムワシタカ類研究会の指導・助言を得ながら実施したワシタカ類の調査により,本件事業の影響を受ける可能性があるものと b ワシタカ類の調査平成8年5月より徳山ダムワシタカ類研究会の指導・助言を得ながら実施したワシタカ類の調査により,本件事業の影響を受ける可能性があるものとして繁殖期の行動圏の内部構造を把握した9つがい(イヌワシ1つがい,クマタカ8つがい)に対し,引き続き平成10年12月からモニタリングを実施するとともに,平成12年12月からは後記Bの徳山ダム環境保全対策委員会,特にそのワシタカプロジェクトの指導・助言を得ながら,幾つかのクマタカの巣に小型カメラを設置し,繁殖状況を観察している(乙198の2)。 なお,公団は,これらの調査結果については,平成11年12月には「徳山ダムワシタカ類に関する資料(詳細版)」(丙12の1),平成12年2月には「徳山ダム周辺の希少猛禽類とその保全」(丙14)として公表した。また,公団は,平成12年9月及び平成13年9月に,その後のモニタリング結果を公表した(乙199の1・2,乙200の1・2)。 B 徳山ダム環境保全対策委員会公団は,平成12年度より堤体及び洪水吐きの建設工事が本格的に開始されること等を考慮し,平成12年4月,徳山ダム環境調査会及び徳山ダムワシタカ類研究会の成果を一層発展させ,集積された揖斐川上流域の環境調査結果等を踏まえ,環境保全対策について専門家による指導・助言を受けることを目的として,新たに「徳山ダム環境保全対策委員会」(丙15の2)を設置(丙15の1)し,既に5回,委員会を開催した(乙198の1~5)。 徳山ダム環境保全対策委員会においては,より専門的な環境保全対策を検討するため,ワシタカ,河川環境,植物,生育・生息環境の4つのプロジェクトチームを設けている(乙201-1,2,4 徳山ダム環境保全対策委員会においては,より専門的な環境保全対策を検討するため,ワシタカ,河川環境,植物,生育・生息環境の4つのプロジェクトチームを設けている(乙201-1,2,4,5頁)。 C 環境保全対策(乙179-15~16頁,乙191・資料-5・25~27頁,乙201,乙221-32~35頁,丙2-165~177頁,丙14-90~118頁)a 地形改変の回避公団は,ダム堤体に用いられるフィルタ材やコンクリート用骨材の材料採取地をダム地点上流約3㎞から5㎞にある揖斐川左支川白谷からダム地点下流約8㎞の国土交通省が管理する横山ダム貯水池上流端の堆砂部に変更することとし,平成10年10月より,材料採取を行っている。これにより,クマタカ行動圏内における環境改変を回避すること等が見込まれる(乙191・資料-5・25頁,乙221-35頁,丙2-171頁,丙14-90~93頁)。 また,公団は,一般国道417号及び県道藤橋・根尾線の付替道路計画については,クマタカの行動圏など環境への影響に配慮して,従来の道路計画をトンネルや橋梁の採用などにより,地形改変と伐採区間の最小化を図ることができるようルートを見直した。その結果,平成13年3月6日に開催した第3回徳山ダム環境保全対策委員会において「地形改変が少なく,環境に最大限配慮されており,ほかの生物種への配慮にもつながる」との評価を得た(乙191・資料-5・26頁,乙198の3,乙201,丙2-160頁,162頁,丙14-92頁)。 b 動植物の保全植物については,重要な種などの生育場所が工事実施に伴う地形改変や水没などで影響を受けることから,これらの影響軽減対策として,エビ 頁)。 b 動植物の保全植物については,重要な種などの生育場所が工事実施に伴う地形改変や水没などで影響を受けることから,これらの影響軽減対策として,エビネやイワザクラなどを生育可能な場所へ平成8年10月から移植を行っている。また,オオムラサキの生息域を保全するため,オオムラサキの幼虫の食樹であるエゾエノキなどの樹木を,生息域の連続性を確保するため付替道路沿いに平成11年3月から移植している(乙179-16頁,乙191・資料-5・27頁,乙201,乙221-34頁,丙2-165~166頁,169頁)。 動物については,工事実施に伴い樹木などの大規模な伐採を行う場合には,動物の避難時間を確保するため,段階的に実施するなどの配慮を平成8年8月からの原石山伐採などで行っている。また,生育・生息場所が工事実施に伴う地形改変などで影響を受ける場合には,石積み,木材積み及び地質調査のための横坑などにより生息場や隠れ場を確保するとともに,ナラ類などの実のなる木を植樹して動物類の餌場を確保することとしており,平成13年11月から実施している(乙201,丙2170頁,丙14-98頁6~19行目)。 爬虫類については,従前生息していた水田跡地などが水没するなどの影響を受けることから,平成12年12月から湿性地を創出し生育・生息場所を確保している(丙2-159頁14~16行目,丙14-104頁7行目~105頁)。 小動物については,付替道路の整備に伴い,車に轢かれたり道路の側溝に落下するなどの影響を受けるため,影響軽減対策として平成10年8月から環境側溝を設置している(乙179-15,16頁,乙221-34頁,丙2-174頁)。 魚類につ 道路の側溝に落下するなどの影響を受けるため,影響軽減対策として平成10年8月から環境側溝を設置している(乙179-15,16頁,乙221-34頁,丙2-174頁)。 魚類については,貯水池での生息が難しいアジメドジョウやアカザなどの重要種について,平成13年8月から産卵場を確保するなどの対策を行うとともに,イワナやアマゴなどの移動性魚類について,貯水池末端と本川との連続性を確保するため,平成14年3月から環境保全河川を設定して生育・生息環境を保全している(乙201-4頁)。 また,コア山や原石山においては,コア材やロック材の採取後,事前に近傍の山に仮置きしていた表土を戻して植生の回復を図るとともに,ダム地点法面などの工事跡地には郷土種を尊重した植生回復を図る予定とされている(乙201)。 c 施工上の配慮(a) 表土の活用及び根株のチップ化在来植生の早期復元のため,工事に伴う掘削により発生した表土(工事による発生残土)を盛土等に活用したり,工事に伴う伐採により発生した木根等をチップ化し,法面などの緑化基盤材として平成9年11月からリサイクルしている(乙179-16頁,乙191・資料-5・27頁,乙221-34,35頁,丙2-172頁,丙14-95頁11行目~97頁11行目)。 (b) 騒音・振動対策騒音・振動対策として,仮締切堤体材料などを製造する簡易混合設備により発生する騒音を抑制するための設備周辺での防音壁設置,低振動・低騒音型建設機械の使用,大型建設機械の使用による発破作業制限及び深夜作業時間の制限などを平成11年9月から行っている(乙191・資料-5・27頁,乙221-35頁,丙14-97 音壁設置,低振動・低騒音型建設機械の使用,大型建設機械の使用による発破作業制限及び深夜作業時間の制限などを平成11年9月から行っている(乙191・資料-5・27頁,乙221-35頁,丙14-97頁24行目~98頁5行目)。 (c) 濁水対策ダムサイト,原石山,コア山及びトンネルなどの工事実施箇所においては,工事により発生する濁水が直接河川へ流入しないよう,濁水処理施設や沈砂地などを平成13年4月から設置するとともに,工事用道路の山側には側溝,谷側には土手を設けて降雨時などに発生する濁水が直接河川へ流入しないよう平成12年6月から配慮している(丙2-173頁)。 (d) 粉塵対策ダムサイト,原石山,コア山及びトンネルなどの工事実施箇所における建設機械の走行時や施工時及び工事用道路におけるダンプなどの工事車両走行時に発生する粉塵を防止するため,平成12年6月から大型散水車を運行している。 (e) 彩色への配慮周囲の景観や野生生物への影響に配慮して,従来の黄色系から90トンダンプなどの建設重機には淡い水色,シート類には若草色,作業員の安全確保のためのヘルメットには緑色を平成12年5月から採用している(乙191・資料-5・27頁)。 (f) 夜間照明の時間帯と範囲を最小化野生生物への影響に配慮して,工事はできる限り夜間早朝は避け日中に集中施工しているが,やむを得ず夜間施工となる場合には,平成12年9月から,夜間照明の時間帯と範囲を最小限となるよう配慮するとともに,平成13年8月から,馴致期間を設けて段階的に時間をずらして施工している(乙191・資料-5・27頁)。 ,平成12年9月から,夜間照明の時間帯と範囲を最小限となるよう配慮するとともに,平成13年8月から,馴致期間を設けて段階的に時間をずらして施工している(乙191・資料-5・27頁)。 d 環境を守るための活動(a) 環境巡視,環境パトロール工事予定箇所においては,工事着手前に専門家とともに環境巡視を行い,自然環境や重要な種などの生息状況を観察記録し,環境保全対策の基礎資料を収集する活動を平成8年8月から行っている(乙179-16頁,乙191・資料-5・27頁,乙201,乙221-35頁,丙2-177頁,丙14-97頁13~17行目)。 また,湛水区域及びその周辺を巡回し,山林の伐採状況調査及び貴重種の不法採取等の監視を行うための「環境パトロール」を平成9年4月から毎日実施している(乙179-16頁,乙191・資料-5・27頁,乙221-35頁,丙2-175頁,丙14-101頁13~20行目)。 さらに,公団徳山ダム建設所においては,平成12年11月に「徳山ダム建設所環境保全管理協議会」(乙202)を設置して,工事請負者と一緒に現場パトロールを月1回実施している。なお,工事請負者においては,環境保全管理担当者を工事現場に置き,常日頃より環境保全対策に努めている(丙14-101頁21~末行目)。 (b) 環境学習会公団職員や工事関係者及び一般住民を対象として,環境に対する意識や基礎知識を向上させることを目的として,様々な環境分野における専門家を招いて(乙115-321,334頁)「環境学習会」を平成8年5月から設け,これまでに15回の学習を重ねている(乙179-16 識や基礎知識を向上させることを目的として,様々な環境分野における専門家を招いて(乙115-321,334頁)「環境学習会」を平成8年5月から設け,これまでに15回の学習を重ねている(乙179-16頁,乙191・資料-5・27頁,乙203の1~8,乙221-35頁,丙2-176頁,丙14-102頁1~4行目)。 e エコマップ2002徳山ダムの建設に際しては,流域全体として調和のとれた自然環境を保全するため,徳山ダム環境保全対策委員会の指導・助言を得ながら,「郷土種の尊重」という観点を重視しつつ「自然と共生したダムづくり」を進めている。これまでに述べた環境保全対策のメニューと実施箇所について,「エコマップ2002」として取りまとめ,平成14年3月7日に開催した第5回徳山ダム環境保全対策委員会で公表した(乙201)。 イ判断以上の認定事実を総合すると,本件事業による環境への影響は総合的にみて小さいものと評価され,公団が本件事業認定時点で提示していた環境保全対策は適切な内容のものであり,本件事業認定後,現に適切に環境保全対策が実施されてきているものと認められる。 ウ原告らの主張の検討(ア) 種の保存法及び文化財保護法違反について原告らは,本件事業の実施に伴いイヌワシ,クマタカなどの絶滅危惧種,天然記念物の生息に甚大な影響が生じるため,本件事業は種の保存法及び文化財保護法に違反すると主張するが,それぞれ次の理由により,いずれも採用することはできない。 A 種の保存法との関係種の保存法3条は「この法律の適用に当たっては,関係者の所有権その他の財産権を尊重し,住民の生活の安定及び福祉の維持向上に配慮し,並びに A 種の保存法との関係種の保存法3条は「この法律の適用に当たっては,関係者の所有権その他の財産権を尊重し,住民の生活の安定及び福祉の維持向上に配慮し,並びに国土の保全その他の公益との調整に留意しなければならない。」と規定し,同法34条は「土地の所有者又は占有者は,その土地の利用に当たっては,国内希少野生動植物種の保存に留意しなければならない。」と土地所有者等の努力義務を規定し,同法35条は「環境庁長官は,国内希少動植物種の保存のため必要があると認めるときは,土地の所有者又は占有者に対し,その土地の利用の方法その他の事項に関し必要な助言又は指導をすることができる。」と規定している。 ところで,本件事業の実施に対しては,同法35条に基づく環境庁長官の助言又は指導がされたことはなく,本件事業区域周辺は,同法36条に基づく「生息地等保護区」及び同法37条に基づく「管理地区」に指定されていない。 しかして,公団は,前記認定のとおり,環境の保全に配慮し,国内希少野生動植物種の保存に留意しながら事業を進めており,公団が種の保存法に違反している事実は認められない。 B 文化財保護法との関係イヌワシは,文化財保護法(中央省庁等改革関係施行法による改正前のもの。以下同じ。)69条1項の規定に基づき文部大臣(当時。以下同じ。)より指定された天然記念物である。文化財保護法70条の2は「文部大臣又は都道府県の教育委員会は,69条1項若しくは2項の規定による指定又は前条1項の規定による仮指定を行うに当っては,特に,関係者の所有権,鉱業権その他の財産権を尊重するとともに,国土の開発その他の公益との調整に留意しなければならない。」と所有権等の尊重及びほか 定又は前条1項の規定による仮指定を行うに当っては,特に,関係者の所有権,鉱業権その他の財産権を尊重するとともに,国土の開発その他の公益との調整に留意しなければならない。」と所有権等の尊重及びほかの公益との調整に留意することを規定し,同法81条は「文化庁長官は,史跡名勝天然記念物の保存のため必要があると認めるときは,地域を定めて一定の行為を制限し,若しくは禁止し,又は必要な施設をすることを命ずることができる。」と規定しているほか,同法76条,77条は,天然記念物等の管理及び保存に関する文化庁長官の勧告権を規定している。 ところで,本件事業の実施に当たり,公団に対して上記規定に基づく勧告,指導等がされたことはない。 しかして,公団は,前記認定のとおり,環境の保全に配慮して事業を進めることとし, 専門家の指導・助言を得ながら必要な対策を講じているほか,天然記念物の保存に留意しており,文化財保護法に違反する事実は認められない。 (イ) 徳山ダム湛水による環境の悪化について原告らは,徳山ダム湛水による餌場の消失及び水没周辺地域の環境の悪化によって,生物の多様性が失われ,その結果,猛禽類の餌場を確保する上で重大な支障が発生する危険性が大きいと主張する。 確かに,原告らが主張する環境の悪化は避けられないところであるが,前記認定のとおり,公団は種々の環境保全対策を講じていることを考慮すると,原告らが懸念するような支障が生じる危険性はそれほど大きくないものと推認するのが相当である。 (ウ) 自然保護協会「添付文書」について原告らは,自然保護協 ほど大きくないものと推認するのが相当である。 (ウ) 自然保護協会「添付文書」について原告らは,自然保護協会が平成11年12月7日に公表した「添付文書」(丙12の2)を引用するとともに,同協会の意見書及び同協会の機関誌(「自然保護」2000年3月号)への同協会職員の投稿文(甲18)を引用し,公団が行った大型猛禽類調査には問題があると主張する。 ところで,上記各引用文書(以下「原告ら引用文書」という。)は,本件事業認定時には存在しなかった資料であるから,本件事業認定時までに公団が行った大型猛禽類調査の方法が適切であったか否かを判断するための参考資料としての価値を有するにすぎないものである。 公団は,前記認定のとおり,大型猛禽類調査においては,「猛禽類保護の進め方」に示された考え方を踏まえ調査内容を検討するとともに,具体的な調査内容及び調査対象とすべき大型猛禽類の選定や保全対策の検討に当たっては,「徳山ダムワシタカ類研究会」を中心とする専門家の指導・助言を得ながら調査及び検討を実施したものであるところ,自然保護協会が公表した「添付文書」に示された考え方や調査結果の解析手法は,「猛禽類保護の進め方」や「徳山ダムワシタカ類研究会」の指導に含まれていない内容のものがあり,調査終了後になって示された新たな観点に基づく指摘がみられる。例えば,「添付文書」では,イヌワシの調査期間については繁殖成功年を含む最低3年間の調査が必要であると指摘しているが,「猛禽類保護の進め方」によれば,「2営巣期を含む1.5年 基づく指摘がみられる。例えば,「添付文書」では,イヌワシの調査期間については繁殖成功年を含む最低3年間の調査が必要であると指摘しているが,「猛禽類保護の進め方」によれば,「2営巣期を含む1.5年以上の調査期間とする。なお,この期間に繁殖しなかった場合,あるいは繁殖を途中で放棄した場合には,飛行軌跡等のデータ量と具体的な内容をもとに,専門家の意見を聞いてその後の対応を検討すべきである」と記載されているのである(乙48-57頁,66頁)。 すなわち,公団は,大型猛禽類調査を実施するに当たり,その時点において確立されている知見に基づいて必要な内容の調査を行ったものであり,原告ら引用文書の指摘の中には,「猛禽類保護の進め方」にも記載されず,また,徳山ダムワシタカ類研究会からも指摘がなかった内容のもの(こうしたものは,専門家としての新たな指摘事項として位置付けられるものであって,一般的に確立された知見とまではいい難いものである。)が複数存在し,原告らはこれらの指摘に基づいて公団の調査方法を批判しているものと認められる。 そうすると,本件事業認定時までに公団が行った調査において,原告らの前記主張に沿った調査が行われていないとしても,公団が行った調査がその時点において不適切であったということはできない。 (2) 水源地対策等ア事実の認定以下に摘示する証拠によれば,次の事実が認められる。 (ア) 住民の移転平成元年3月までに,本件起業地内に居住していた432世帯との間での移転補償契約はすべて完了した(乙13,乙184の1・2)。 (イ) 生活の再建生活再建対策として,公団は,岐阜県を始め旧徳山村や関係機関の協力を 帯との間での移転補償契約はすべて完了した(乙13,乙184の1・2)。 (イ) 生活の再建生活再建対策として,公団は,岐阜県を始め旧徳山村や関係機関の協力を得て,生活相談所の設置,集団移転地の造成,生活再建の手引書の配布等を行い,さらに,岐阜県や木曽三川水源地域対策基金において,不動産取得税の減免措置,代替不動産取得に係る利子補給事業等が行われた(乙3,乙13,乙181,乙184の2)。 (ウ) 徳山村の廃村旧徳山村は,本件事業により,旧徳山村の全員(8地区466世帯)が本件起業地外へ移転することになり,昭和61年6月2日に藤橋村・徳山村合併協議会で合併協定書の内容を決定し,同年6月20日の徳山村議会は合併関係議案を可決,同月25日の藤橋村議会もこれを可決した。同年7月30日に徳山村と藤橋村は,岐阜県知事の立会いのもとで合併協定を締結した。そして,昭和62年3月27日には閉村式が挙行され,同年3月31日をもって徳山村を廃し,その区域を藤橋村に編入する廃置分合について自治省(当時)告示がされた(乙14)。 イ判断前記認定のとおり,旧徳山村の住民移転は完了し,同住民らの生活再建対策等が適切になされたものと評価できる。 (3) 埋蔵文化財についての対策等ア事実の認定以下に摘示する証拠によれば,次の事実が認められる。 (ア) 文化庁長官の意見公団及び電源開発株式会社は,本件事業認定申請を行うに当たり,本件起業地に存する周知の埋蔵文化財包蔵地について,文化庁長官に対して法18条2項5号に基づく意見照会をしているが,同長官は,これらの埋蔵文化財包蔵地を本件起業地に含めることについて 行うに当たり,本件起業地に存する周知の埋蔵文化財包蔵地について,文化庁長官に対して法18条2項5号に基づく意見照会をしているが,同長官は,これらの埋蔵文化財包蔵地を本件起業地に含めることについて異議を述べなかった(乙20別添第5号)。 (イ) 岐阜県による発掘調査本件起業地内の周知の埋蔵文化財包蔵地では,岐阜県教育委員会の指導のもと,昭和61年度から岐阜県に委託して計画的に発掘調査を行っており,平成10年度までに16遺跡の現地での発掘調査が完了し,試験湛水までにすべての遺跡について調査が完了する予定である。発掘調査された遺跡については,調査報告書の作成により記録保存の措置がとられ遺跡からの出土遺物については財団法人岐阜県文化財保護センターがその保管管理に当たり(乙52の1~17),同センターにより岐阜県博物館等でその公開が行われている(乙53の2)。 (ウ) 生活道具等の記録,保管旧徳山村民が昔から使用してきた生活道具や生産用具は,文化財保護法27条1項による国の重要有形民俗文化財として指定され(乙54-7頁),古文書類は藤橋村の文化財の保護に関する条例(藤橋村昭和58年条例第3号,乙55)3条により村の有形文化財として指定され,藤橋村にて保管されている。また,文化財保護法98条2項及び岐阜県文化財保護条例(岐阜県昭和29年条例第37号,乙56)3条による岐阜県重要文化財鍔口2個(乙57-989頁)は,岐阜県本巣郡本巣町に再建された徳山神社において保管されているほか,記録書,写真集等によって旧徳山村の生活,歴史,文化等も記録されている(乙3,乙58)。 イ判断前記認定のとおり,埋蔵文化財等については,発掘調 において保管されているほか,記録書,写真集等によって旧徳山村の生活,歴史,文化等も記録されている(乙3,乙58)。 イ判断前記認定のとおり,埋蔵文化財等については,発掘調査,公開の手続がとられるなど,その保存措置等が適切になされてきたものと評価できる。 (4) 原告らの主張する地方公共団体の財政破綻について原告らは,岐阜県,愛知県,名古屋市は,徳山ダム建設事業費負担金の支払義務があるところ,徳山ダムの開発水は水需要がないため料金収入が得られないから,地方公共団体の財政破綻をもたらす結果となるが,かかる財政破綻は法20条3号の適法性を判断する際,「事業により失われる利益」として判断要素になると主張する。 しかし,上記地方公共団体の財政が破綻するとの主張は,結局,本件事業認定に際してなされた本件水需要予測が不合理であるというに帰するものであるところ,前記第4の2(1)イ認定のとおり,本件水需要予測が不合理なものであると断定することはできないから,原告らの上記主張は採用できない。 4 本件事業認定の法20条3号要件該当性(1) 得られる公共の利益前記2のとおり,本件起業地が本件事業の用に供されることによって得られる公共の利益は,都市用水の確保,流水の正常な機能の維持,洪水調節,発電である。 (2) 失われる利益前記3のとおり,本件起業地が本件事業の用に供されることにより失われる利益は,自然環境への影響,本件起業地内に居住していた住民の移転,埋蔵文化財等である。 (3) 得られる公共の利益と失われる利益の比較衡量本件事業により得られる公共の利益については,揖斐川流域の住民やその資産を洪水被害から保護し,流水の正常な機能を維持し, る。 (3) 得られる公共の利益と失われる利益の比較衡量本件事業により得られる公共の利益については,揖斐川流域の住民やその資産を洪水被害から保護し,流水の正常な機能を維持し,都市用水の確保や発電により地域経済の発展に資することから,本件事業によって得られる公共の利益は多大なものと認められる。 これに対し,本件事業により失われる利益のうち,自然環境への影響は,総合的に判断して小さいものと評価されること,本件事業により移転することになった旧徳山村の住民に対しては生活再建のための措置が講じられていること,埋蔵文化財等については発掘調査等による適切な保護がされていることからすると,これらの利益が失われることによる影響は小さいということができる。 したがって,本件起業地が本件事業の用に供されることによって得られる公共の利益は,本件起業地が本件事業の用に供されることによって失われる利益に優越しているとして,本件事業が法20条3号の要件を満たすとした建設大臣の判断に裁量の範囲の逸脱及び裁量権の濫用はないというべきである。 第5 争点1(4)(法20条4号要件該当性)について 1 法20条4号要件法20条4号の「土地を収用し,又は使用する公益上の必要があるものであること」は,広く収用・使用の必要性,緊急性を要するという趣旨である。 法20条4号要件の審査に当たり考慮される事情には,例えば地権者等が土地の売買契約に応じず収用・使用の必要性があることに加え,事業の推進について各自治体の意見,知事,議会の意見も含まれるし,また,法20条4号要件の判断については建設大臣の裁量が認められると解される。 2 事実の認定前記第2章第2の当事者間に争いのない事実に証拠(乙11の3,乙20, 議会の意見も含まれるし,また,法20条4号要件の判断については建設大臣の裁量が認められると解される。 2 事実の認定前記第2章第2の当事者間に争いのない事実に証拠(乙11の3,乙20,乙22,乙59の1~5,乙123の1~3)及び弁論の全趣旨を総合すると,次の事実が認められる。 (1) 本件事業においては,本件事業認定申請の時点で既に約1300億円が投ぜられ,本件起業地の約97%が既に公団により買収されるとともに,旧徳山村に居住していた世帯は下流に移住し,既に集落も存せず,田畑のほとんどは原野となっていた。 (2) 公団は,土地所有者等と交渉を重ね用地取得を進めてきたが,本件起業地の約3%は,本件事業認定申請の時点において,交渉の難航などにより売買契約による任意買収が困難な状況にあった。さらに,本件事業認定申請後に本件起業地の一部が原告らによるいわゆるトラスト運動の対象となり,任意買収が極めて困難となった。 (3) 原告らの本件土地についての共有持分(約1400ha中の約56㎡)を取得することができないために,本件事業が完成できない場合には,本件事業による洪水調節,流水の正常な機能の維持,都市用水の確保及び発電といった種々の効果が実現できない状況になる。 (4) 揖斐川流域の県市町村や旧徳山住民らから,本件事業の早期完成を求める要望や決議がなされている。 3 本件事業の法20条4号要件該当性上記2の各事実を総合すると,本件事業において,本件起業地のうち任意買収に至っていない部分を取得するために「収用」ないし「使用」という手続をとる必要性があり,その必要性は公益目的に合致するものというべきであるから,本件事業が法20条4号にいう「土地を収用し使用する公益上の必要があるものであること めに「収用」ないし「使用」という手続をとる必要性があり,その必要性は公益目的に合致するものというべきであるから,本件事業が法20条4号にいう「土地を収用し使用する公益上の必要があるものであること」の要件に該当すると認めるのが相当である。 原告らは,徳山ダムの開発水について,大垣地域の工業用水道事業は計画も立っていないし,名古屋市の工業用水道事業及び愛知県並びに名古屋市の水道事業は取水,導水施設建設の計画もないから,このような事業のために収用という手段をとる必要性はなく,法20条4号要件に該当しないと主張する。 しかし,前記のとおり,本件事業は平成19年度に完成予定とされているのであるから,本件事業認定時に工業用水道事業や取水導水事業の計画が具体化している必要はない。建設大臣は,導水事業が推進され必要な取水,導水設備が完成することを前提として本件事業認定をしたものと推認されるから,原告らの上記主張は採用することができない。 第6 争点2(本件裁決の適法性)について 1 事実の認定前記第2章第2の当事者間に争いのない事実に証拠(乙事件乙1の1・2,乙事件乙2)及び弁論の全趣旨を総合すると,次の事実が認められる。 (1) 公団及び電源開発株式会社は,平成11年11月17日,法39条1項及び47条の2第3項に基づき,本件工事に係る裁決申請(乙事件乙1の1)及び明渡裁決の申立て(乙事件乙1の2)を行った。その概要は次のとおりである。 ア上記裁決申請の内容(ア) 収用又は使用しようとする土地本件土地(イ) 本件土地の所有者等別紙1のとおり,乙事件原告ら74名を含む117名(ウ) 権利を取得し,又は消滅させる時期権利取得裁決があった日から起算し 土地(イ) 本件土地の所有者等別紙1のとおり,乙事件原告ら74名を含む117名(ウ) 権利を取得し,又は消滅させる時期権利取得裁決があった日から起算して90日以内イ上記明渡裁決申立ての内容(ア) 土地の所在,地番及び地目並びにその土地にある物件の種類及び数量並びに土地所有者及び関係人の氏名及び住所別紙2のとおりであり,土地の所在,地番及び地目並びに土地所有者及び関係人の氏名及び住所については,上記裁決申請と同様である。 (イ) 土地もしくは物件の引渡し又は物件の移転期限明渡裁決のあった日から起算して90日以内(2) そして,裁決申請書及び明渡裁決申立書並びに各々の添付書類は,法42条2項及び法47条の4第2項において準用される法42条2項により,藤橋村役場において,平成11年11月22日から同年12月6日まで縦覧に供された。 (3) 上記縦覧期間を経過した後の平成11年12月16日,乙事件被告は,法45条の2により裁決手続の開始決定を行い,法46条に基づき審理手続を開始した。 (4) 乙事件被告は,平成12年2月28日の第1回審理以降,審理及び現地調査を行った上,平成13年2月22日の第6回審理をもって審理を終結した。 そして,乙事件被告は,同年5月23日,法48条,49条に従い,本件裁決を行った(乙事件乙2)。その内容は,概要下記アないしオのとおりである。 ア収用し,明け渡すべき土地の区域本件土地イ土地所有者兼関係人の氏名及び住所別紙3のとおりウ収用する物件の種類及び数量別紙4のとおり 域本件土地イ土地所有者兼関係人の氏名及び住所別紙3のとおりウ収用する物件の種類及び数量別紙4のとおりエ損失の補償に関する事項別紙5のとおりオ権利取得の時期及び明渡しの期限いずれも平成13年8月20日 2 本件裁決の手続収用委員会は,事業認定がされたことを前提として裁決の申請があったときには,法47条の規定に従い,裁決の申請が同条1号又は2号に該当するときその他同法の規定に違反するときは,当該申請を却下しなければならないが,そうでない限り,収用裁決をしなければならない(法47条の2)。 まず,本件では,法47条1号,2号に該当する事由が存在しないことは明らかである。 次に,「その他同法の規定に違反するとき」とは,裁決手続に違法がある場合を指し,先行行為である事業認定に関する違法事由は含まれないのであって,法は,収用裁決を行う収用委員会に対して上記の限度で審査を行うべき権限及び義務を付与した反面,それ以上に事業認定に関する審査権限を与えていないというべきである。 これを本件についてみると,本件裁決の申請に係る事業が事業認定の上告示された事業と同一であること及び申請に係る事業計画が事業認定書に添付された事業計画書に記載された計画と著しく異なるものでないことは明らかである。また,本件土地が事業認定のあった起業地内で手続開始の告示がされた区域内にあり,したがって,本件土地が事業に必要な土地であると認められることも明らかである。 さらに,法48条は権利取得裁決の裁決事項,法49条は明渡裁決の裁決事項をそれぞれ規定しているところ,本件裁決が上記事項を たがって,本件土地が事業に必要な土地であると認められることも明らかである。 さらに,法48条は権利取得裁決の裁決事項,法49条は明渡裁決の裁決事項をそれぞれ規定しているところ,本件裁決が上記事項を具備していることも明らかである。 3 違法性の承継に関する乙事件原告らの主張について法に基づく事業認定と収用裁決は,両行政処分の主体,法律要件及び法律効果は異なるものの,両処分が相結合して,当該事業において必要とされる土地を取得するという法律効果を発生させる一連の行政行為となっているものであり,このような場合には先行処分たる事業認定が適法になされることが,後行処分たる収用裁決の要件となり,先行処分に違法があった場合には,その違法は当然に後行処分に承継されると解するのが相当である。 しかして,乙事件原告らは,本件事業認定の違法性が本件裁決に承継されるから本件裁決は取消しを免れない旨主張するが,本件事業認定は前示のとおり適法であるから,乙事件原告らの上記主張は採用できない。 そして,乙事件原告らは,他に本件裁決固有の違法について何ら主張をしていない。 4 小括上記のとおりであって,本件裁決は適法である。 第5章結論以上の次第で,甲事件原告ら及び乙事件原告らの請求はいずれも理由がないから,これを棄却することとし,訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条,65条1項本文を適用して,主文のとおり判決する。 岐阜地方裁判所民事第2部裁判長裁判官林道春 裁判官古閑裕二 裁判官古閑裕二 裁判官今井輝幸

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