平成26(ワ)1459 特許権侵害差止等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成27年11月26日 東京地方裁判所
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平成27年11月26日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成26年(ワ)第1459号特許権侵害差止等請求事件口頭弁論の終結の日平成27年9月29日判決東京都江戸川区<以下略>原告株式会社シラヤマ同訴訟代理人弁護士宗田親彦鈴木太一鈴木英之同補佐人弁理士宇野晴海広島県呉市<以下略>被告株式会社ダイクレ同訴訟代理人弁護士木下洋平同補佐人弁理士佐藤晃一亀卦川 巧 主文 1 被告は,別紙被告製品目録3記載の鋼製地覆を製造し,使用し,譲渡し,貸し渡し,若しくは輸出し,又は譲渡若しくは貸渡しの申出をしてはならない。 2 被告は,別紙被告製品目録3記載の鋼製地覆,その半製品及びそれらを製造するための金型を廃棄せよ。 3 被告は,原告に対し,794万7000円及びこれに対する平成26年3月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 原告のその余の請求を棄却する。 5 訴訟費用は,これを3分し,その1を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。 6 この判決は,第3項に限り,仮に執行することができる。 事実 及び理由第1 請求 1 主文第1項,第2項同旨 2 被告は,原告に対し,1720万6051円及びこれに対する平成26年1月31日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 1 請求 1 主文第1項,第2項同旨 2 被告は,原告に対し,1720万6051円及びこれに対する平成26年1月31日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要以下,中間判決(同判決書写しは別添のとおり)において用いられた略語は,本判決においてもそのまま用いる。 本件は,発明の名称を「道路橋道路幅員拡張用地覆ユニット及び道路橋道路幅員拡張用地覆ユニット設置方法」とする特許権,及び意匠に係る物品を「道路橋道路幅員拡張用張出し材」とする意匠権を有する原告が,被告による被告製品1ないし3の製造,譲渡等は原告の上記特許権及び意匠権を侵害すると主張して,被告に対し,特許法100条1項,2項ないし意匠法37条1項,2項に基づいて,被告製品3の譲渡等の差止め及び廃棄等を求めるとともに,不法行為に基づき,損害賠償金1720万6051円及びこれに対する訴状送達日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 なお,当裁判所は,平成27年7月30日,上記特許権侵害に基づく請求について,被告製品2及び3が本件発明の技術的範囲に属する(被告製品1は同技術的範囲に属さない)旨の中間判決を言い渡した。 1 前提事実(証拠等を掲げた事実以外は,当事者間に争いがない。)本件の前提事実は,中間判決の「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」の「1 前提事実」を引用する(なお,以下,特許第3377764号に係る原告の特許権を「本件特許権」という。)ほか,以下のとおりである。 (1) 原告の意匠権ア(ア) 原告は,次の意匠権を有している(以下,この意匠権を「本件意匠権1」といい,その登録意匠を「本件意匠1」という。)。なお,本件意匠1は,下記イの (1) 原告の意匠権ア(ア) 原告は,次の意匠権を有している(以下,この意匠権を「本件意匠権1」といい,その登録意匠を「本件意匠1」という。)。なお,本件意匠1は,下記イの登録意匠を本意匠とする関連意匠である。 登録番号意匠登録第1118381号出願日平成11年7月26日登録日平成13年6月22日意匠に係る物品道路橋道路幅員拡張用張出し材(イ) 本件意匠1は,本判決添付の意匠公報(意匠登録第1118381号)の【図面】記載のとおりである。 イ(ア) 原告は,次の意匠権(以下,この意匠権を「本件意匠権2」といい,その登録意匠を「本件意匠2」という。また,本件意匠権1及び同2を総称して「本件意匠権」といい,本件意匠1及び同2を総称して「本件意匠」という。)を有している。なお,本件意匠2は,本件意匠1を関連意匠とする本意匠である。(甲18)登録番号意匠登録第1117920号出願日平成11年7月26日登録日平成13年6月22日意匠に係る物品道路橋道路幅員拡張用張出し材(イ) 本件意匠2は,本判決添付の意匠公報(意匠登録第1117920号)の【図面】記載のとおりである。 (2) 本件意匠の構成ア本件意匠1(ア) 基本的構成態様正面視左右方向に長く,長手方向に中空の直方体(中空筒体)を有し,中空筒体の正面側の面(前面側)の外方に向けて底面側の面(底面側) が全面に亘って延伸して延伸部が形成され,底版部(底面側と延伸部からなる)の下面に,その左右方向の全面に亘って下方に延びる四角板状体(腹板)が形成され,中空筒体の背面側の面(背面側) 側) が全面に亘って延伸して延伸部が形成され,底版部(底面側と延伸部からなる)の下面に,その左右方向の全面に亘って下方に延びる四角板状体(腹板)が形成され,中空筒体の背面側の面(背面側)の下の底面側の下面から,腹板の最低位までを直線状に繋ぐ三角板状体(リブ)が左右方向に複数形成されている。 (イ) 具体的構成態様a 中空筒体,延伸部,腹板,及びリブは,それぞれ,薄板で形成され,中空筒体の前面側,平面側の面(上面側),及び背面側は,左右方向の両端部の全面に亘って2層構造で,内側の層が底面側よりも左右方向に延在して嵌込片が形成され,底面側と延伸部の前後方向寸法の比率は約7:5で,前面側と腹板の上下方向寸法の比率は約4:3である。 b 延伸部の上面には,前面側の外面から延伸部の端部まで直線状に延びる直方体(補強リブ)が左右方向両端から端に位置する補強リブまでの間隔と延伸部上の補強リブ同士の間隔が1:2になるように等間隔に6本設けられている。 c 前面側には,それぞれの延伸部上の補強リブの真上に位置する,上下に狭い間隔を空けて2つ並んだボルト(前面側ボルト)が,上側と下側のそれぞれにおいて,上下方向の位置が一致するように設けられている。 d 延伸部の,前面側より遠位で,且つ,左右及び中央の3箇所に想定される一対の補強リブの間の中央部には,左右方向に長い楕円形の孔(底版部固定用ボルト孔)が1個ずつ設けられている。 e 背面側の上下方向中間位置より僅かに下の位置には,ボルト(背面側ボルト)が,前面側ボルトと左右方向に同じ位置に1個ずつ,上下方向の位置が一致するように設けられている。 f 中空筒体の左右両端部の内側には,前面側,背面側,及び底面側と連続し,底面側上面から上面側下面までの高さの約8割の高さを有する ずつ,上下方向の位置が一致するように設けられている。 f 中空筒体の左右両端部の内側には,前面側,背面側,及び底面側と連続し,底面側上面から上面側下面までの高さの約8割の高さを有する仕切り板(底版部の補強リブ)が設けられている。 g 腹板は,延伸部と底面側の境に近い延伸部の下面に形成されている。 h リブは,左右及び中央の3箇所に想定される一対の背面側ボルトの間の中央部に位置するように1枚ずつ設けられている。 イ本件意匠2(ア) 基本的構成態様本件意匠1と同じ。 (イ) 具体的構成態様以下の点を除き,本件意匠1と同じである。 a 底面側と延伸部の前後方向寸法の比率は約1.1:0.3で,前面側と腹板の上下方向寸法の比率は約1.4:0.9である。 c 前面側には,それぞれの補強リブの真上に位置する,上下に広い間隔を空けて2つ並んだ前面側ボルトが,上側と下側のそれぞれにおいて,上下方向の位置が一致するように設けられている。 g 腹板は,底面側の前後方向の中央より僅かに前面側寄りの下面に形成されている。 (3) 被告の行為被告製品は,「スチールウイング」という製品名のプレキャスト鋼製張出し地覆であり,本件意匠に係る物品である道路橋道路幅員拡張用張出し材と同一又は類似である。被告製品の意匠は,別紙被告製品目録1ないし3記載のとおりである(以下,被告製品1の意匠を「被告意匠1」といい,被告製品2の意匠を「被告意匠2」といい,被告製品3の意匠を別紙被告製品目録3の「4 カタログ上の被告製品の記載」の符号に従って「被告意匠3(1)」ないし「被告意匠3(2)」といい,これらを総称して「被告意匠」とい う。)。 2 争点本件の争点は,中間判決の「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要 の符号に従って「被告意匠3(1)」ないし「被告意匠3(2)」といい,これらを総称して「被告意匠」とい う。)。 2 争点本件の争点は,中間判決の「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」の「2 争点」を引用するほか,以下のとおりである。 (1) 被告意匠の構成(争点1)(2) 被告製品の製造等は本件意匠権を侵害するか(争点2)(3) 本件特許権又は本件意匠権の侵害により原告が受けた損害の額(争点3) 3 争点に関する当事者の主張本件の争点に関する当事者の主張は,中間判決の「事実及び理由」欄の「第 2 事案の概要」の「3 争点に関する当事者の主張」を引用するほか,以下のとおりである。 (1) 争点1(被告意匠の構成)について被告意匠の構成に関する当事者の主張は,別紙被告意匠の構成1ないし3(2)記載のとおりであり,概ね中間判決の「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」の「3 争点に関する当事者の主張」の「(1) 争点(1)について」と同旨の理由により,原告は,被告製品は腹板及びリブに相当するブラケットを具えている旨主張し,被告は,被告製品における張出地覆とブラケットを一体として評価することはできない旨主張する。 (2) 争点2(被告製品の製造等は本件意匠権を侵害するか)についてア原告の主張(ア) 本件意匠の要部道路橋道路幅員拡張用張出し材の取引者・需要者は,道路橋を管理等する地方公共団体又は道路橋工事を受注したゼネコン業者(下請業者を含む。)である。取引者・需要者は,製品のカタログの右断面図等から,鋼製中空筒体,延伸部,腹板,補強リブ等の製品全体の基本的構成態様を認識するし,かかる基本的構成態様が道路橋の幅員を拡幅する技術に 照らして重要な物品の形状である。本件意匠の出願時にお ら,鋼製中空筒体,延伸部,腹板,補強リブ等の製品全体の基本的構成態様を認識するし,かかる基本的構成態様が道路橋の幅員を拡幅する技術に 照らして重要な物品の形状である。本件意匠の出願時において,道路橋の道路幅員を拡幅するための「張出地覆」という形状(基本的構成態様)の工業製品は存在しなかったことからも,基本的構成態様自体が要部であるといえる。 これに対して,補強リブの本数又は配置比率,前面側ボルトが設けられている位置及び個数,背面側ボルトが設けられている位置及び個数等は,橋梁内部の鉄筋探査の結果等に従って,その都度必要に応じて変更されるものにすぎず,もともと安全性等機能上の必要性に応じて変化するものであるから,これらは要部たり得ない。 したがって,本件意匠の要部は,基本的構成態様である。 (イ) 本件意匠と被告意匠の類否本件意匠と被告意匠は全て要部である基本的構成態様を共通にしている。本件意匠と被告意匠とには,①補強リブの本数又は配置比率,②前面側ボルトが設けられている位置及び個数,③背面側ボルトが設けられている位置及び個数等といった差異があるが,これらは,橋梁内部の鉄筋探査の結果等に従って,機能上必要に応じて定まるものにすぎない。 また,補強リブは舗装層によって隠れる部分であるし,この種の物品を背面から評価することはないため,上記①,③についてはこの点からも微細な差違にすぎない。そして,被告意匠と本件意匠の要部に係る構成の共通性は,要部以外の微細な差異を凌駕するものである。 したがって,本件意匠と被告意匠は,取引者・需要者に共通の美感を生じさせるから,被告意匠は本件意匠にいずれも類似する。 イ被告の主張(ア) 本件意匠の要部道路橋道路幅員拡張用張出し材は,取引者・需要者である道路橋を管 需要者に共通の美感を生じさせるから,被告意匠は本件意匠にいずれも類似する。 イ被告の主張(ア) 本件意匠の要部道路橋道路幅員拡張用張出し材は,取引者・需要者である道路橋を管理等する地方公共団体の注文を受けて,その道路橋に合った製品を設 計・製造し,その橋ごとに施工する完全な受注生産品である。したがって,取引者・需要者たる地方公共団体は,製品自体ではなく,カタログに載っている施工中又は施工後の道路橋等の写真,完成予想図あるいはその現場を見て判断するが,その際取引者・需要者が最も注意を惹かれる部分は,施工完了後も露出する前面側及び背面側,特に,施工後に橋の利用者にとって最も目に付く前面側の舗装層によって隠れない部分である。原告は,基本的構成態様自体が要部であると主張するが,道路橋道路幅員拡張用張出し材において,基本的構成態様自体が要部になり得るはずがない。意匠の要部は,意匠に係る物品の性質・用途等を考慮して,どの部分が視覚的に注意を惹きやすいかが問題となるのであって,本物品の技術のみに着目して要部を認定するのは誤りである。 本件意匠の要部において特徴的なのは,前面側ボルトが,それぞれの補強リブの真上に,上下2本ずつ並び,道路橋道路幅員拡張用張出し材が左右方向に連結された際,その補強リブ及び前面側・背面側ボルトが全て等間隔に並ぶよう配置されている点である。本件意匠1及び同2は本意匠と関連意匠の関係にあるから,両者の共通する部分である前面側及び背面側の前記特徴が要部に当たるものである。 (イ) 本件意匠と被告意匠の類否被告意匠はいずれも,腹板及びリブが形成されていないという点において本件意匠とは基本的構成態様が異なる上,具体的構成態様についても,前記(ア)のとおりの本件意匠の要部の 被告意匠の類否被告意匠はいずれも,腹板及びリブが形成されていないという点において本件意匠とは基本的構成態様が異なる上,具体的構成態様についても,前記(ア)のとおりの本件意匠の要部の特徴に比べて,補強リブの本数又は配置比率,前面側ボルト及び背面側ボルトが設けられている位置及び個数で相違するから,本件意匠の要部における特徴的な構成を有しない。 したがって,本件意匠と被告意匠とは類似しない。 (3) 争点3(本件特許権又は本件意匠権の侵害により原告が受けた損害の額) についてア原告の主張被告製品1の設置延長は,合計99.3メートルであり,被告製品2の設置延長は,131.923メートルである。被告製品の1メートル当たりの単価は,22万5555円であり,同業者の利益率は30パーセントであるから,被告が得た利益は,1564万6051円を下らず,特許法102条2項,意匠法39条2項により,原告は少なくとも同額の損害を被ったものと推定される。原告が本件訴訟に要した弁護士費用は,156万円を下らない。以上によれば,原告が受けた損害の額は1720万6051円である。 イ被告の主張否認ないし争う。被告製品2の販売による被告の売上高は,2409万円であり,同業者の利益率は30パーセントであるから,被告が得た利益は,722万7000円である。 第3 当裁判所の判断当裁判所の判断は,中間判決の「事実及び理由」欄の「第3 当裁判所の判断」を引用するほか,以下のとおりである。 1 争点1(被告意匠の構成)について中間判決の「事実及び理由」欄の「第3 当裁判所の判断」の「1 争点(1)について」記載のとおり,被告製品における張出地覆とブラケットは一体の製品として製造 争点1(被告意匠の構成)について中間判決の「事実及び理由」欄の「第3 当裁判所の判断」の「1 争点(1)について」記載のとおり,被告製品における張出地覆とブラケットは一体の製品として製造,販売されていると評価するのが相当であると認められるから,被告意匠の構成としてブラケットの構成も特定すべきであるといえるが,原告も自認するとおり,張出地覆とブラケットは,形式的には2つの部品に分かれているのであるから,被告意匠の基本的構成態様にはブラケットが独立した部品であることが特定される必要があるというべきである。 なお,被告意匠3(1)及び同(2)は,被告製品のカタログ(甲7,乙1)記載 の意匠であるところ,原告の主張するとおり,カタログからは細部が不明というほかない。 したがって,被告意匠の構成については,当事者間に争いのない事実及び弁論の全趣旨(原告の平成26年10月31日付「請求の趣旨変更の申立書」の別紙被告製品目録1及び2,被告の同年11月17日付「準備書面(5)」の15,16頁等)によれば,別紙被告意匠の構成1ないし3(2)の当裁判所の判断欄記載のとおり認定すべきである。 2 争点2(被告製品の製造等は本件意匠権を侵害するか)について(1) 本件意匠と被告意匠との対比ア本件意匠と被告意匠とは,いずれも,基本的構成態様において,正面視左右方向に長く,長手方向に中空の直方体(中空筒体)を有し,中空筒体の正面側の面(前面側)の外方に向けて底面側の面(底面側)が全面に亘って延伸して延伸部が形成されている点において共通するが,被告製品における,底版部(底面側と延伸部からなる)の下面にその左右方向の全面に亘って下方に延びる床版取付部は,別部品であるブラケットの一部であり,天板部を介して取り付けられている点,及び するが,被告製品における,底版部(底面側と延伸部からなる)の下面にその左右方向の全面に亘って下方に延びる床版取付部は,別部品であるブラケットの一部であり,天板部を介して取り付けられている点,及びブラケットのリブは水切り垂下部から床版取付部の下方までを直線状に繋いでいる点において相違する。 イ本件意匠と被告意匠1及び同2とは,いずれも,具体的構成態様において,構成イ(別紙被告意匠の構成1ないし3(2)の当裁判所の判断欄記載の構成符号。以下同じ。)の補強リブの本数又は配置比率,構成ウの前面側ボルトが設けられている位置及び個数,及び構成オの背面側ボルトが設けられている位置及び個数で相違する。また,その他の構成ア,エ,カ,キ,ク,ケについては,本件意匠2と被告意匠1及び同2の構成クが共通する点を除いては,それぞれ細部において相違する部分がある。 また,本件意匠と被告意匠3(1)及び同(2)とは,構成イ,ウ,エ,オ, ケについて被告意匠の構成の細部が認定できないため,共通するとはいえない。構成クについては,本件意匠1と被告意匠3(1)及び本件意匠2と被告意匠3(2)とが共通し,本件意匠1と被告意匠3(2)及び本件意匠2と被告意匠3(1)とは相違する。その他の構成ア,カ,キについては,それぞれ細部において相違する部分がある。 (2) 本件意匠の要部ア証拠(甲5,7,乙1)及び弁論の全趣旨を総合すれば,意匠に係る物品「道路橋道路幅員拡張用張出し材」は,完全な受注生産品であり,取引者・需要者たる道路橋を管理等する地方公共団体等は,原告や被告の発行する製品カタログ等の記載に基づき取引をすると考えられるところ,原告の販売する製品のカタログ(甲5)に掲載されている写真又は図はいずれも単体の意匠ではなく施工中又は施工後の道 等は,原告や被告の発行する製品カタログ等の記載に基づき取引をすると考えられるところ,原告の販売する製品のカタログ(甲5)に掲載されている写真又は図はいずれも単体の意匠ではなく施工中又は施工後の道路橋等のものであり,前面側斜視及び背面側斜視からの写真が多いこと,被告製品のカタログ(甲7,乙1)に掲載されている図面は右断面図(別紙被告製品目録3記載のもの)であり,写真は前面側及び前面側斜視からのものであること,施工完了後に露出する部分は主として本件意匠の前面側及び背面側であることが認められ,また,橋の施工後の使用態様に鑑みれば,橋の利用者等による視線にさらされやすいのは前面側の舗装層によって隠れない部分であることが認められる。そうすると,取引者・需要者としては,製品カタログ等の記載を見て施工後に露出する部分に特に注意して取引をすると考えられ,前面側の舗装層によって隠れない部分が要部であると認められる。なお,本件意匠1及び同2は本意匠と関連意匠の関係にあるから,要部は両者で共通する部分であると考えられるところ,前面側の特徴は前記第2の1「前提事実」(2)記載のとおり概ね共通するといえる。 イこの点,原告は,本件意匠の基本的構成態様自体が要部であると主張するところ,その趣旨は,右断面図等の側面視による本件意匠の構成を要部 として主張する趣旨であると解されるが,かかる側面視の構成は,橋の施工により左右方向に連結され隠れてしまう部分であるから,取引者・需要者が,「道路橋道路幅員拡張用張出し材」の取引に当たってかかる部分に特に注意して取引をするとは認めがたく,原告の上記主張は採用できない。 現に,前記ア記載のとおり,原告の販売する製品のカタログには,取引者・需要者が側面視による本件意匠の構成を認識し得るような右断面図等は掲載されて をするとは認めがたく,原告の上記主張は採用できない。 現に,前記ア記載のとおり,原告の販売する製品のカタログには,取引者・需要者が側面視による本件意匠の構成を認識し得るような右断面図等は掲載されていない。 原告は,さらに,本件意匠の基本的構成態様が道路橋の幅員を拡幅する技術に照らして重要な物品の形状であること,同種の基本的構成態様を備える公知意匠は存在しなかったこと,前面側ボルト等は機能的必要性に応じて変化するものであることなどを主張するが,いずれも,意匠に係る物品の性質・用途等を考慮して視覚的に取引者・需要者の注意を惹きやすい部分を認定する要部認定に当たって重視することはできず,前記要部の認定を左右するものではない(なお,現に,本件意匠と基本的構成態様が類似する意匠(乙26ないし30)が,本件意匠に係る意匠登録出願よりも後に意匠登録出願されて意匠登録されている。)。 (3) 本件意匠と被告意匠との類否ア本件意匠の要部(前面側の舗装層によって隠れない部分)において特徴的なのは,前面側ボルトが,上下に2つ並び,上側と下側のそれぞれにおいて,上下方向の位置が一致するように設けられており,左右方向両端から端に位置する前面側ボルトまでの間隔と前面側ボルト同士の間隔が,1:2になっていることであるといえる。 イ他方,被告意匠1及び2の前面側には,底面側に近い位置に,1列の前面側ボルトが設けられているが(具体的構成態様ウ),これは施工後に露出する部分ではない(甲7,11,13,乙1,21)ため,施工後の前面側はボルト等の突起物のない状態となる。 すなわち,別紙要部(前面側)の比較図(但し,「乃至4」とある部分を削除する。)記載のとおり,本件意匠においては,施工後においても,前面側ボルトが上下方向の位置が一致するよう る。 すなわち,別紙要部(前面側)の比較図(但し,「乃至4」とある部分を削除する。)記載のとおり,本件意匠においては,施工後においても,前面側ボルトが上下方向の位置が一致するように上下に2つずつ等間隔に整然と並んでいる点が特徴的で,本件意匠自体からも前面側ボルトが強い印象を受けるが,被告意匠においては,前面側ボルトが施工後は視認できない位置にあり,この印象の差違は大きい。 なお,被告意匠3(1)及び同(2)の前面側の構成については前記1記載のとおり細部が不明というほかないから,要部が共通するとはいえない上,被告意匠3(1)及び同(2)に基づいて実際に施工された被告意匠2の前面側の構成は上記のとおりであって,本件意匠とは要部に大きな差違があるのであるから,結局,被告意匠3(1)及び同(2)についても,被告意匠1及び同2と同様に,要部に大きな差違があるというべきである。 ウこの点,原告は,前面側ボルトの取り付け位置等は現場での機能的要請等で決定されるものであって,美観とは全く無関係の事情であると主張する。しかしながら,これは本件意匠に係る図面から離れて本件意匠の範囲を定めようとする主張であって失当と言わざるを得ない上,ボルトの位置が美観とは無関係の事情であるともいえないから,原告の上記主張には理由がない。 エそうすると,本件意匠と被告意匠は,要部において構成態様に大きな差違があり,両意匠を全体として観察した際に,看者に対し異なる美感を起こさせるものと認められる。 したがって,本件意匠と被告意匠はいずれも類似しているということはできない。 (4) 以上によれば,被告製品の製造等は,本件意匠権を侵害しない。 3 争点3(原告が受けた損害の額)について以上によれば,本件意匠権侵害に基づく原告 いるということはできない。 (4) 以上によれば,被告製品の製造等は,本件意匠権を侵害しない。 3 争点3(原告が受けた損害の額)について以上によれば,本件意匠権侵害に基づく原告の請求は理由がない一方,中間 判決が判断したとおり,被告製品2及び3は本件特許における本件発明の技術的範囲に属するが,そのうち既に設置済みであるのは被告製品2のみであるから,結局,争点3については,被告製品2に係る特許法102条2項に基づく損害額についてのみ判断すべきこととなる。 (1) 証拠(乙16ないし20,37ないし42。枝番を含む。)によれば,被告製品2の売上高は,2409万円であると認められる。また,被告の利益率を30パーセントとして計算すべきことについては当事者間に争いはない。したがって,被告製品2により被告が得た利益は722万7000円であると認められ,同額が原告が受けた損害の額であると推定される。 (2) 弁論の全趣旨に照らして,被告による本件特許権の侵害行為と相当因果関係のある弁護士費用は72万円とするのが相当である。 (3) したがって,原告が受けた損害の額は794万7000円と認められる。 4 結論以上によれば,本件特許権侵害に基づく原告の請求は,被告製品3の譲渡等の差止め及び廃棄等を求める部分,並びに損害賠償金合計794万7000円及びこれに対する不法行為の後であると証拠(乙37,38)上認められる平成26年3月10日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。また,本件意匠権侵害に基づく原告の請求は理由がない。 よって,上記の限度で原告の請求を認容し,その余は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第4 主文 また,本件意匠権侵害に基づく原告の請求は理由がない。よって,上記の限度で原告の請求を認容し,その余は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。 理由 東京地方裁判所民事第47部 裁判長裁判官沖中康人 裁判官廣瀬達人 裁判官宇野遥子 (別添意匠公報は省略) (別紙)被告製品目録 1【乙22号証等に基づく被告製品(祓川新橋)】 1 既設橋梁の改修に使用されるプレキャスト鋼製張出し地覆但し,祓川新橋(三重県松阪市稲木町)に設置されたもの 2 製品名 張出し地覆「スチールウイング」 3 製造会社名株式会社ダイクレ(被告) 4 被告製品の図面 5 図面における符号の説明 1 地覆1a 前面側1b 上面側1c 背面側 2 底版部2a 延伸部2b 底面側4a 前面側ボルト4b 背面側ボルト6a 床版取付部6d リブ 11 張出地覆 12 コンクリート床版以上 (別紙)被告製品目録 2【乙23,24号証等に基づく被告製品(境田橋)】 1 既設橋梁の改修に使用されるプレキャスト鋼製張出し地覆但し,境田橋(熊本県球磨郡相良村)に設置されたもの 2 製品名 張出し地覆「スチールウイング」 3 製造会社名株式会社ダイクレ(被告) 4 被告製品の図面 5 図面における符号の説明 1 地覆1a 前面側 出し地覆「スチールウイング」 製造会社名株式会社ダイクレ(被告) 被告製品の図面 図面における符号の説明 1 地覆1a 前面側1b 上面側1c 背面側 2 底版部2a 延伸部2b 底面側4a 前面側ボルト4b 背面側ボルト6a 床版取付部6d リブ 11 張出地覆 12 コンクリート床版以上 (別紙)被告製品目録 1 既設橋梁の改修に使用されるプレキャスト鋼製張出し地覆のうち,ブラケット部を具えるもの。但し,延伸部が地覆除去部に固定されるもの(中空筒体状の地覆の底面側の面(以下「底面側」という)の一部が床版に設置するとされているものについては,底面側と床版の設置幅が,既設地覆の地覆幅未満のもの)。 2 製品名 スチールウイング 3 製造会社名株式会社ダイクレ(被告) 4 カタログ上の被告製品の記載 (1)底面側が床版に設置するとされていないもの (2)底面側の一部が床版に設置するとされているもの 5 「既設地覆の地覆幅」と「底面側と床版の設置幅」の略図以上 (別紙)要部(前面側)の比較図

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