【DRY-RUN】主 文 本件上告を棄却する。 理 由 弁護人佐野正秋の上告趣意について。 論旨は、本件は過剰防衛行為であるに拘わらず原判決がこれを喧嘩斗争の加害行 為に他な
主 文 本件上告を棄却する。 理 由 弁護人佐野正秋の上告趣意について。 論旨は、本件は過剰防衛行為であるに拘わらず原判決がこれを喧嘩斗争の加害行 為に他ならず過剰防衛とはならない旨判示したことは大審院の判例に反し法の適用 を誤つたものであると主張する。 よつて按ずるに、第一審判決は、証拠を示して、罪となるべき事実として、被告 人は昭和二九年八月八日午前〇時三〇分頃堺市a通b丁目路上に於て平素から不仲 であつたAと喧嘩をなし所携の「きりだし」を以て同人を突刺し同人に対し約一ケ 月間入院安静加療を要する右前胸部等切刺創兼肋膜及肺損傷を負わせたものである 旨の事実を認定すると共に、判決挙示の証拠により、被告人の犯行が過剰防衛であ ることを認めることができないと判示した。これに対し原判決は第一審判決挙示の 証拠により、被告人は本件犯行の前夜九時頃Aと路上で行き会つた際同人から理由 もなく勝負を挑まれ股部の廻りを足蹴にされその場は逃れて一旦自宅に立ち帰つた が翌朝〇時三〇分頃右判示場所で同人と再び行き会いAから喧嘩を仕掛け被告人の 股部の辺りを蹴つて来たため被告人もこれに立ち向い双方の間に殴り合いをはじめ 被告人はついで所携の切出しナイフを持出したものであることが認められる旨判示 したことは記録上明瞭であり、そして第一審判決挙示の証拠によれば原判決が認定 した本件犯行の前夜九時頃以来の右状況を認めるに十分である。 被告人の本件傷害の所為が過剰防衛すなわち防衛の程度を超えたものであるか否 かを判断するには傷害の所為そのものと共に原判決が認定した右状況を一体不可分 のものとして観察しなければならないところ、右状況によれば被告人は本件犯行の 前夜九時頃Aから勝負を挑まれ一旦帰宅したが判示日時Aから喧嘩を仕掛けられ被 - 1 - 告人の股部の した右状況を一体不可分 のものとして観察しなければならないところ、右状況によれば被告人は本件犯行の 前夜九時頃Aから勝負を挑まれ一旦帰宅したが判示日時Aから喧嘩を仕掛けられ被 - 1 - 告人の股部の辺りを蹴つて来られたため被告人もAを相手として自己を危険に曝ら し同人に暴行を加えんがためにこれに立ち向い殴り合いの喧嘩闘争を始め、次で、 所携の切出しナイフを持出して判示傷害を加えた事実関係であつたこと、即ち、判 示傷害行為は防衛のため止むを得ざるに出でた所為たるの性質を備えていなかつた こと明らかである。されば、第一審判決認定の所為は正当防衛にもならず、従つて 又防衛の程度を超えた過剰防衛にもならないこというまでもない。 されば原判決が判示傷害の所為につき刑法三六条二項の適用を排除し単に同法二 〇四条を適用すべき趣旨を示したのは正当であり、そこに擬律錯誤又は判例違反は ない。(論旨挙示の判例中大正四年六月三日とあるは大正一四年六月三日、又、昭 和九年九月二七日とあるは昭和五年九月二七日の各誤記と認める。原判決は所論の これらの日の及び昭和五年二月二八日の各大審院判決に違反しない。)論旨は採用 するに足りない。 論旨中その余の点は単なる事実誤認の主張であつて刑訴法四〇五条の上告理由に 当らない。 記録を調べても同法四一一条を適用すべきものとは認められない。 よつて同法四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。 昭和三〇年一二月六日 最高裁判所第三小法廷 裁判長裁判官 垂 水 克 己 裁判官 河 村 又 介 裁判官 小 林 俊 三 裁判官 本 村 善 太 郎 - 2 - 裁判官 河 村 又 介 裁判官 小 林 俊 三 裁判官 本 村 善 太 郎 - 2 -
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