- 1 -平成24年6月20日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成23年(行ケ)第10319号審決取消請求事件口頭弁論終結日平成24年6月13日判決原告訴訟承継人ロックスタービーアイディーシーオー,エルピー同訴訟代理人弁理士伊東忠彦伊東忠重大貫進介脱退原告ノーテル・ネットワークス・リミテッド被告特許庁長官同指定代理人菅原道晴石井研一樋口信宏守屋友宏 主文 1 原告訴訟承継人の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告訴訟承継人の負担とする。 3 この判決に対する上告及び上告受理の申立てのための付加期間を30日と定める。 事実及び理由 第1 請求特許庁が不服2009-17065号事件について平成23年5月24日にした審決を取り消す。 第2 事案の概要- 2 -本件は,脱退原告が,下記1のとおりの手続において,特許請求の範囲の記載を下記2とする本件出願に対する拒絶査定不服審判の請求について,特許庁が,本 審決を取り消す。 第2 事案の概要- 2 -本件は,脱退原告が,下記1のとおりの手続において,特許請求の範囲の記載を下記2とする本件出願に対する拒絶査定不服審判の請求について,特許庁が,本件補正を却下した上,同請求は成り立たないとした別紙審決書(写し)の本件審決(その理由の要旨は下記3のとおり)には,下記4の取消事由があると主張して,その取消しを求め,原告訴訟承継人が,本件訴訟係属中に,脱退原告から特許を受ける権利を譲り受けて,本件訴訟を承継している事案である。 1 特許庁における手続の経緯(1) 脱退原告は,平成10年12月15日,発明の名称を「複数のメディア・オプションを用いた入力通信イベントを管理するシステムおよび方法」とする特許を出願した(特願平10-355631。パリ条約による優先権主張日:平成9年(1997年)12月22日(アメリカ合衆国)。請求項の数59)。 脱退原告は,平成21年4月13日付けで拒絶査定を受け(甲16),同年9月14日,これに対する不服の審判を請求し,同年9月14日,手続補正をした(甲18。以下「本件補正」という。請求項の数41)。本件補正は,平成19年10月17日付け手続補正書(甲11。請求項の数43)による補正後の請求項19に記載の発明を請求項18に記載の発明に補正することを含むものである。 (2) 特許庁は,これを不服2009-17065号事件として審理し,平成23年5月24日,本件補正を却下した上,「本件審判の請求は,成り立たない。」との本件審決をし,その審決謄本は,同年6月7日,脱退原告に送達された。 脱退原告は,平成23年10月5日,本件訴訟を提起し,その後,原告訴訟承継人に対して本件出願に係る特許を受ける権利を譲渡し,同年11月22日,その旨の出願人名義変更がされた(以 原告に送達された。 脱退原告は,平成23年10月5日,本件訴訟を提起し,その後,原告訴訟承継人に対して本件出願に係る特許を受ける権利を譲渡し,同年11月22日,その旨の出願人名義変更がされた(以下,脱退原告及び原告訴訟承継人を併せて,「原告ら」という。)。 2 本件補正前後の特許請求の範囲の記載(1) 本件補正前の特許請求の範囲の請求項19の記載は,以下のとおりである。 「/」は,原文における改行箇所を示す。以下,同請求項19に係る発明を「本願- 3 -発明」といい,同発明に係る明細書(甲5,8,11)を「本件明細書」という。 サーバ装置と通信リンク上で通信する送受信機において:/通信イベントの存在を示す情報信号を所定のメディア・フォーマットでサーバ装置から受信する手段と;/情報信号の受信時にユーザ入力に応じて,通信イベントのメディア・フォーマットが通信イベントの発信者により変更されるべきことを示すコマンド信号を,サーバ装置に送信する手段と;/通信イベントを,示されたメディア・フォーマットで送付する手段とを含むことを特徴とする送受信機(2) 本件補正後の特許請求の範囲の請求項18の記載は,以下のとおりである。 「/」は,原文における改行箇所を,下線部は補正箇所を示す。以下,同請求項18に係る発明を「本件補正発明」という。 サーバと通信リンク上で通信する送受信機において,/通信イベントの存在を示す情報信号を,複数のメディア・フォーマットの内の少なくとも1つによりトランシーバユーザが前記サーバから受信するための手段であって,前記サーバは,前記トランシーバユーザが或る関係を構築している他のユーザの属性を記憶する手段を含み,通信イベントの発呼者の少なくとも1つの属性は,前記情報信号で前記トランシーバユーザに示される,手段と,/前 は,前記トランシーバユーザが或る関係を構築している他のユーザの属性を記憶する手段を含み,通信イベントの発呼者の少なくとも1つの属性は,前記情報信号で前記トランシーバユーザに示される,手段と,/前記の情報信号を受信した後のトランシーバユーザの入力に応じて,前記サーバにコマンド信号を送信する手段であって,該コマンド信号は,前記通信イベントのメディア・フォーマットが,前記複数のメディア・フォーマットの内の別のものに変更されるべきことを示す,手段と,/通信イベントを,示されたメディア・フォーマットで前記トランシーバユーザに送付する手段と/を含む送受信機 3 本件審決の理由の要旨(1) 本件審決の理由は,要するに,①本件補正は,平成18年法律第55号による改正前の特許法(以下「法」という。)17条の2第4項各号のいずれを目的とするものに該当しないから,同項の規定に違反するもので,法159条1項において読み替えて準用する法53条1項の規定により却下すべきものである,②仮に,- 4 -本件補正が特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとしても,本件補正発明はいわゆる独立特許要件を充足するものではないから,本件補正は却下すべきものである,③本願発明は,下記アの引用例に記載された発明(以下「引用発明」という。)並びに下記イないしエの周知例1ないし3に記載された周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。 ア引用例:特開平9-294163号公報(甲1)イ周知例1:特開平1-295556号公報(甲2)ウ周知例2:特開平3-241955号公報(甲3)エ周知例3:特開平9-64983号公報(甲4)(2) なお,本件審決が認定し )イ周知例1:特開平1-295556号公報(甲2)ウ周知例2:特開平3-241955号公報(甲3)エ周知例3:特開平9-64983号公報(甲4)(2) なお,本件審決が認定した引用発明並びに本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は,次のとおりである。 ア引用発明:ユーザB(発信者)側の発信端末とユーザA(着信者)側の着信端末との間でインテリジェント構内交換機及びISDNやインタフェースを介して通信を行う,通信手段の選択が可能な通信システムにおいて,発信端末は,ユーザB(発信者)の氏名及び種別などの利用する通信端末に関する情報を付与し,ユーザA(着信者)への通信要求を出し,インテリジェント構内交換機は,この要求を受け,あらかじめ登録されたシナリオの指示に従いユーザB(発信者)からの通信要求があることをユーザA(着信者)の着信端末に通知し,着信端末は,前記通知を受け,例えば,送信者ユーザB,送信者電番:BBBB,要求通信手段:電話,要求受信者:ユーザAのような受信要求と,通信手段1:電話,端末種別:携帯電話♯1,受信者:ユーザA,通信手段2:電話,端末種別:ISDN端末♯2,受信者:秘書,通信手段3:電子メール,端末種別:電子メール,端末種別WS♯1,受信者:ユーザAのような受信可能通信手段を表示し,表示された通信手段の中からユーザA(着信者)が,好ましい通信手段,例えば,通信手段1と通信手段3を選択し,受信要求応答として,通信手段1,通信手段3,メッセージ:緊急でなけ- 5 -れば,通信手段3で連絡ください,との受信要求応答を行うと,インテリジェント構内交換機は,選択された通信手段を発信端末に通知し,発信端末は,ユーザA(着信者)により選択された通信手段を表示し,表示された通信手段の中からユーザB(発信者 信要求応答を行うと,インテリジェント構内交換機は,選択された通信手段を発信端末に通知し,発信端末は,ユーザA(着信者)により選択された通信手段を表示し,表示された通信手段の中からユーザB(発信者)が,例えば,通信手段3である電子メールを選択し,送付メッセージを入力すると,選択した通信手段が電子メールであることと送付メッセージをインテリジェント構内交換機に送信し,インテリジェント構内交換機は,着信者の電話番号を電子メールアドレスに変換し,そのアドレスでメッセージをユーザA(着信者)側に送信するようにした通信システムイ一致点:中継手段と通信リンク上で通信する送受信機において,通信イベントの存在を示す情報信号を,複数のメディア・フォーマットの内の少なくとも1つによりトランシーバユーザが前記中継手段から受信するための手段であって,通信イベントの発呼者の少なくとも1つの属性は,前記情報信号で前記トランシーバユーザに示される,手段と,前記の情報信号を受信した後のトランシーバユーザの入力に応じて,前記中継手段にコマンド信号を送信する手段であって,コマンド信号は,前記通信イベントのメディア・フォーマットが,前記複数のメディア・フォーマットの内の別のものに変更されるべきことを示す,手段と,通信イベントを,示されたメディア・フォーマットで前記トランシーバユーザに送付する手段とを含む送受信機ウ相違点:「中継手段」が,本件補正発明では「サーバ」であり,「サーバ」が「前記トランシーバユーザが或る関係を構築している他のユーザの属性を記憶する手段」を含むのに対し,引用発明では「インテリジェント構内交換機」であり,前記「記憶する手段」について明示しない点(3) また,本件審決は,本件補正発明は「サーバ装置に送信する手段」における「コマンド信号」に関す し,引用発明では「インテリジェント構内交換機」であり,前記「記憶する手段」について明示しない点(3) また,本件審決は,本件補正発明は「サーバ装置に送信する手段」における「コマンド信号」に関する「通信イベントの発信者により」の点を除き,本願発明に概略「複数のメディア・フォーマットの内の少なくとも1つにより」「前記サーバは,前記トランシーバユーザが或る関係を構築している他のユーザの属性を記憶- 6 -する手段を含み,通信イベントの発呼者の少なくとも1つの属性は,前記情報信号で前記トランシーバユーザに示される」「前記複数のメディア・フォーマットの内の別のものに」などの限定を付したものであるとした上で,本願発明も「通信イベントの発信者により」の点を除き,本件補正発明と同様の理由により,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるとする。 したがって,本件審決は,本願発明と引用発明との一致点及び相違点について,「通信イベントの発信者により」の点を除き,本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点と同様に解するものということができる。 4 取消事由(1) 本件補正を却下した判断の誤り(取消事由1)(2) 本願発明の進歩性に係る判断の誤り(取消事由2)第3 当事者の主張 1 取消事由1(本件補正を却下した判断の誤り)について〔原告らの主張〕(1) 本件補正が特許請求の範囲の減縮に該当しないとした判断の誤りについてア本件審決は,本件補正により,「コマンド信号」における「変更」の意味が,「発信者」の限定がない,例えば「サーバ装置」による変更を含む意味へと変わることとなるので,本件補正は,特許請求の範囲の減縮に該当しないとする。 しかしながら,本件補正発明は,「通信イベントの発呼者」と明 」の限定がない,例えば「サーバ装置」による変更を含む意味へと変わることとなるので,本件補正は,特許請求の範囲の減縮に該当しないとする。 しかしながら,本件補正発明は,「通信イベントの発呼者」と明記されているとおり,通信イベントを発信するのは発呼者であるから,通信イベントのメディア・フォーマットを変更する主体が発呼者であることは明らかである。 また,本件明細書【0044】には,「発呼者に,…通信イベントをオーディオまたはビジュアル・フォーマットで選択させる」と記載されており,サーバが選択する態様は記載されておらず,発呼者が変更する態様のみが記載されている。 したがって,本件補正発明の「変更」の主体は,「発呼者」というべきである。 イ被告が指摘する本件明細書【0051】【0052】の記載は,一般的,習- 7 -慣的に明細書に付加する記載であるし,【0007】の記載は,従来技術に係る説明であって,「通信イベントのメディア・フォーマットを変更する主体にサーバも含む」ことを意味するものではない。 また,本件補正発明は,コマンド信号を直接に発呼者に送信するのではなく,サーバを経由して発呼者宛てに送信するものであることは当業者には自明であって,同発明の「サーバにコマンド信号を送信する」との文言は,「通信イベントのメディア・フォーマットを変更する」主体にサーバが含まれることを意味しない。 ウ以上からすると,本件補正発明の「変更」の主体は「発呼者」であることは明らかであって,本件補正は特許請求の範囲の減縮に該当するものであるから,本件補正を却下した本件審決の判断は誤りである。 (2) 独立特許要件を欠くとした判断の誤りについて本件審決は,仮に,本件補正が特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとしても,本件補正発明は,引用発明及 た本件審決の判断は誤りである。 (2) 独立特許要件を欠くとした判断の誤りについて本件審決は,仮に,本件補正が特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとしても,本件補正発明は,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから,独立特許要件を欠くものであるとする。 しかしながら,本件審決の上記判断は,誤りである。 ア一致点及び相違点の認定の誤りについて(ア) 本件審決は,引用発明の「着信端末」に「受信要求」として表示される「要求通信手段:電話」の表示例は,「電話」で行われたことを意味することを前提として,「通信イベントの存在を示す情報信号を,複数のメディア・フォーマットの内の少なくとも1つによりトランシーバユーザが前記サーバから受信するための手段」についても一致点として認定した。 しかしながら,引用例には,電話により受信要求が通信されることは記載されていないから,引用発明において,受信要求が電話で行われるものではない。 したがって,上記構成についても一致点として認定した本件審決は誤りである。 (イ) 本件審決は,引用発明は,通信手段が「通信手段3:電子メール」へと変更されることとなるとするが,引用例にはメディア・フォーマットが「電話」から- 8 -「電子メール」に変更されることは記載されていないから,「コマンド信号は,前記通信イベントのメディア・フォーマットが,前記複数のメディア・フォーマットの内の別のものに変更されるべきことを示す,手段」についても一致点とした本件審決の認定は誤りである。 (ウ) 引用発明において,ISDN端末の端末表示は,最初の通信要求だけに用いられる専用端末表示であり,その後の通信イベントを送付する手段にはなり得ない。 本件補正発明においては,特許請求の範 (ウ) 引用発明において,ISDN端末の端末表示は,最初の通信要求だけに用いられる専用端末表示であり,その後の通信イベントを送付する手段にはなり得ない。 本件補正発明においては,特許請求の範囲に明記されているとおり,通信イベントを送付する手段として複数のメディア・フォーマットのうち,少なくとも1つを用いて「通信イベントの存在を示す情報信号」が送信されるところ,このような構成は引用例には開示も示唆もされていない。 したがって,「通信イベントの存在を示す情報信号を,複数のメディア・フォーマットの内の少なくとも1つによりトランシーバユーザが前記サーバから受信する手段」についても一致点とした本件審決の認定は誤りである。 (エ) 以上からすると,本件審決の一致点の認定は誤りであって,このような一致点を前提とした相違点の認定もまた,誤りであるというほかない。 イ相違点に係る判断の誤りについて(ア) 本件補正発明における「或る関係を構築している他のユーザの属性」とは,いずれも人間であるトランシーバユーザ及び他のユーザとの間の関係,すなわち人間的な関係を構築している他のユーザの属性を意味するものであり,本件明細書【0038】の記載のとおり,関係カテゴリは,ビジネス,ホーム,娯楽などの人間的関係のカテゴリであって,単なる発呼者の名前とは区別されている。 そして,サーバが人間的関係の属性を記憶しているからこそ,本件明細書【0048】の記載のとおり,受信者が「ビジネス・パートナー」のカテゴリのような,システムに登録されている者に通信イベントを転送することができるものであって,当該構成及び効果は,引用例及び周知例1ないし3には記載も示唆もされていない。 - 9 -(イ) 本件補正発明のサーバが記憶しているものは,発信者の属性ではなく 転送することができるものであって,当該構成及び効果は,引用例及び周知例1ないし3には記載も示唆もされていない。 - 9 -(イ) 本件補正発明のサーバが記憶しているものは,発信者の属性ではなく,「他のユーザ」の属性である。本件明細書及び特許請求の範囲に基づき本件補正発明の目的,構成及び効果を参酌すれば,本件補正発明の「或る関係を構築している他のユーザ」における「他のユーザ」とは,発信者及び受信者以外のユーザを意味することは明らかである。仮に,被告が主張するように,発信者をも含むとすると,発信者が発信者に転送するという奇妙な現象が生じることになる。 (ウ) したがって,サーバが「前記トランシーバユーザが或る関係を構築している他のユーザの属性を記憶する手段を含む」ものとすることは,当業者が容易になし得ることであるとした本件審決の判断は誤りである。 ウ小括以上からすると,本件補正発明は,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができるものということはできないから,仮に,本件補正が特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとしても,本件補正発明は独立特許要件を充足するものではないとした本件審決の判断は誤りである。 (3) 本件補正を却下した本件審決の判断の是非前記のとおり,本件補正は,特許請求の範囲の減縮に該当するものであり,本件補正発明は,独立特許要件を充足するものであるから,本件補正を却下した本件審決の判断は誤りである。 〔被告の主張〕(1) 本件補正が特許請求の範囲の減縮に該当しないとした判断の誤りについてア 「通信イベントを発信する」ことと,「通信イベントのメディア・フォーマットを変更する」こととは,機能や処理内容が異なるものであるから,両者の主体が同一である必要はない。 また,本件明細 いてア 「通信イベントを発信する」ことと,「通信イベントのメディア・フォーマットを変更する」こととは,機能や処理内容が異なるものであるから,両者の主体が同一である必要はない。 また,本件明細書【0051】【0052】には,特定の実施の形態等に限定されるべきではなく,特許請求の範囲内にある全ての実施の形態が含まれるなどと記載されているから,本件明細書【0044】に発呼者が変更する態様のみが記載さ- 10 -れているからといって,変更の主体の限定を外した本件補正発明を当該実施例に限定解釈することは相当ではない。 イ本件補正発明において,「前記通信イベントのメディア・フォーマットが,前記複数のメディア・フォーマットの内の別のものに変更されるべきことを示す」信号は「コマンド信号」であるところ,特許請求の範囲には,「サーバにコマンド信号を送信する」と記載され,「発呼者側(の送受信器)にコマンド信号を送信する」とは記載されていない。本件明細書【0007】には,「あるサード・パーティのサービス・プロバイダは,テキスト・ベースのまたは音声ベースの通信を,1つの「インボックス」に統合させて,その後,加入者に,それらの通信の存在を知らせている。通知はしばしばページャまたはセル電話機に対して行われる。後者の場合,メディア翻訳装置は,テキスト・ファイルを言語に再符号化する。」と記載されているから,通信イベントのメディア・フォーマットを変更する主体が発呼者ではなくサーバに相当するサービス・プロバイダとなり得ることは,明らかである。 ウ以上からすると,本件補正は特許請求の範囲の減縮に該当するものではないとした本件審決の判断に,誤りはない。 (2) 独立特許要件を欠くとした判断の誤りについてア一致点及び相違点の認定の誤りについて(ア) 件補正は特許請求の範囲の減縮に該当するものではないとした本件審決の判断に,誤りはない。 (2) 独立特許要件を欠くとした判断の誤りについてア一致点及び相違点の認定の誤りについて(ア) 引用発明でも,「通信要求」が何らかの「メディア・フォーマット」で通知されるから,引用発明の「着信端末」(送受信機)が「通信イベントの存在を示す情報信号を,複数のメディア・フォーマットの内の少なくとも1つによりトランシーバユーザが前記中継手段から受信するための手段」を含むことは明らかである。 (イ) 引用発明の通信要求は,ISDN端末(電話)の端末表示により通知されるものであり,引用発明の電子メールは,電話番号によりISDN端末に宛てられるものではなく,電子メールアドレスによりWS#1のメールサーバに送られるものであって,両者の伝達媒体及び形式は相違するから,メディア・フォーマットは「ISDN端末表示」から「電子メール」に変更されたといえる。 - 11 -また,引用発明では,FAX,アナログ電話,PHSなども選択可能である。 (ウ) 以上からすると,本件審決の一致点及び相違点の認定に誤りはない。 イ相違点に係る判断の誤りについて(ア) 本件補正発明の特許請求の範囲は,「前記トランシーバユーザが或る関係を構築している他のユーザの属性を記憶する手段」とされており,「前記トランシーバユーザが或る関係を構築している他のユーザの人間的関係の属性を記憶する手段」とされているわけではない。また,「或る関係」が人間的な関係であるからといって,記憶される「属性」の内容も人間的な関係であるということはできない。 (イ) 「属性」とは,「その物の有する特徴・性質」であると解すべきところ,本件明細書【0034】によると,「属性」には,名前,アドレス, 「属性」の内容も人間的な関係であるということはできない。 (イ) 「属性」とは,「その物の有する特徴・性質」であると解すべきところ,本件明細書【0034】によると,「属性」には,名前,アドレス,1以上の電話番号等が含まれるから,本件補正発明の「前記情報信号で前記トランシーバユーザに示される」「通信イベントの発呼者の少なくとも1つの属性」には,少なくとも名前が含まれることは明らかである。 また,ユーザの「属性」を,「ユーザのカテゴリ」「関係カテゴリ」に限定してクレームを狭く解釈する根拠はないし,本件補正発明の特許請求の範囲には,通信イベントを「第三者」に「転送」することの記載がないから,受信者が「ビジネス・パートナー」のカテゴリのような人に通信イベントを転送できるものでもない。 (ウ) したがって,相違点に係る本件審決の判断に誤りはない。 ウ小括以上からすると,本件補正発明は,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができるものというべきであるから,本件補正発明が独立特許要件を充足するものではないとした本件審決の判断に誤りはない。 (3) 本件補正を却下した本件審決の判断の是非前記のとおり,本件補正は,特許請求の範囲の減縮に該当するものではなく,仮に,減縮に該当するとしても,本件補正発明は,独立特許要件を欠くものであるから,本件補正を却下した本件審決の判断に,誤りはない。 - 12 - 2 取消事由2(本願発明の進歩性に係る判断の誤り)について〔原告らの主張〕(1) 一致点及び相違点の認定の誤りについて本件審決は,本願発明と引用発明との一致点及び相違点について,「通信イベントの発信者により」の点を除き,本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点と同様に解するようである。 引用例には, いて本件審決は,本願発明と引用発明との一致点及び相違点について,「通信イベントの発信者により」の点を除き,本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点と同様に解するようである。 引用例には,電話により受信要求が通信されること及びメディア・フォーマットが「電話」から「電子メール」に変更されることは記載されていないから,前記1〔原告らの主張〕(2)アと同様に,「情報信号の受信時にユーザ入力に応じて,通信イベントのメディア・フォーマットが通信イベントの発信者により変更されるべきことを示す」ことについても一致点とした本件認定の認定は誤りである。 以上からすると,本件審決の一致点の認定は誤りであって,このような一致点を前提とした相違点の認定もまた,誤りであるというほかない。 (2) 相違点に係る判断の誤りについて引用例【0018】の「インテリジェント制御機能は,着信者の電話番号を電子メールアドレスに変換し」との記載からすると,引用発明における通信イベントのメディア・フォーマットを変更する主体は,インテリジェント制御機能である。 引用例の【図1】によると,引用発明のインテリジェント制御機能は,本願発明のサーバ装置に対応するものであって,通信イベントの発信者に対応するものではないから,本願発明の一特徴である「通信イベントのメディア・フォーマットが通信イベントの発信者により変更されるべきことを示すコマンド信号」は,引用例には記載されていないものというべきである。 したがって,引用発明は,実質的に「ユーザB(発信者)」すなわち「通信イベントの発信者」により「通信イベントのメディア・フォーマット」が変更される点で本願発明と大差ないものであるとした本件審決の判断は,誤りである。 (3) 小括- 13 -以上からすると,本願発明は,引用発 者」により「通信イベントのメディア・フォーマット」が変更される点で本願発明と大差ないものであるとした本件審決の判断は,誤りである。 (3) 小括- 13 -以上からすると,本願発明は,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができるものということはできない。 〔被告の主張〕(1) 引用発明においても,メディア・フォーマットが別のメディア・フォーマットに変更されていることは,前記1〔被告の主張〕(2)アにおいて先に述べたとおりであって,本件審決の一致点及び相違点の認定に誤りはない。 (2) 引用発明において,メディア・フォーマットを変更する主体は実質的に発信者であり,インテリジェント制御機能(サーバ)は発信者がメディア・フォーマットを変更するための道具にすぎないから,相違点について,本願発明と引用発明との間に大差はないとした本件審決の判断に誤りはない。 (3) 以上からすると,本願発明は,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができるものというべきである。 第4 当裁判所の判断 1 取消事由1(本件補正を却下した判断の誤り)について(1) 本願発明において,前記第2の2(1)のとおり,「コマンド信号」は,通信イベントのメディア・フォーマットが通信イベントの「発信者」により変更されるべきことを示すものであり,メディア・フォーマットの変更の主体は,「発信者」に限定されていた。 これに対し,本件補正は,前記第2の2(2)のとおり,本願発明における「通信イベントのメディア・フォーマットが通信イベントの発信者により変更される」との発明特定事項を削除するものである。 本件補正発明には,「通信イベントの発呼者」と,「前記の情報信号を受信した後のトランシーバユーザの入力に応じて,前記サー 信イベントの発信者により変更される」との発明特定事項を削除するものである。 本件補正発明には,「通信イベントの発呼者」と,「前記の情報信号を受信した後のトランシーバユーザの入力に応じて,前記サーバにコマンド信号を送信する手段であって,該コマンド信号は,前記通信イベントのメディア・フォーマットが,前記複数のメディア・フォーマットの内の別のものに変更されるべきことを示す,手段」との関係を示す発明特定事項は存在しない。 - 14 -そこで,本件補正発明において,「コマンド信号」は,メディア・フォーマットの変更の主体について,「発信者」に限定されるもののみならず,発信者以外が変更の主体となる場合を含むことになる。 そうすると,本願発明において,「通信イベントのメディア・フォーマットが通信イベントの発信者により変更されるべきことを示す」ものであったところ,本件補正発明では,「コマンド信号」は,「前記通信イベントのメディア・フォーマットが,前記複数のメディア・フォーマットの内の別のものに変更されるべきことを示す」ものとなったことは,特許請求の範囲における文言から明らかであるから,本件補正により,「コマンド信号」における「通信イベントのメディア・フォーマット」の「変更」の主体は,「通信イベントの発信者」に限定されず,「サーバ」のように本願発明には記載されていないものも含まれるようになったものというほかない。そのため,本件補正により,通信イベントの受信者のサーバに対する指示であるコマンド信号において,メディア・フォーマットの選択の主体が発信者に限定されるコマンド信号のみならず,発信者に限定されないコマンド信号をも含むものとなるものである。 (2) したがって,本件補正は,本願発明における発明特定事項を削除する補正事項を含み,発明特定事項を れるコマンド信号のみならず,発信者に限定されないコマンド信号をも含むものとなるものである。 (2) したがって,本件補正は,本願発明における発明特定事項を削除する補正事項を含み,発明特定事項を限定するものではないから,特許請求の範囲の減縮を目的としたものとは認められないとした本件審決の判断に誤りはない。 (3) この点について,原告らは,本件補正発明は,「通信イベントの発呼者」と明記されているとおり,通信イベントを発信するのは発呼者であるし,本件明細書【0044】の記載からしても,本件補正発明の「変更」の主体は「発呼者」というべきであるなどと主張する。 しかしながら,本件補正発明の特許請求の範囲には,「通信イベントの発呼者」と,「前記の情報信号を受信した後のトランシーバユーザの入力に応じて,前記サーバにコマンド信号を送信する手段であって,該コマンド信号は,前記通信イベントのメディア・フォーマットが,前記複数のメディア・フォーマットの内の別のも- 15 -のに変更されるべきことを示す,手段」との関係を示す発明特定事項は存在しないことは,先に述べたとおりである。そして,「通信イベントを発信する」ことと,「通信イベントのメディア・フォーマットを変更する」こととは,機能や処理内容が異なるから,両者の主体が同一とは限らないことはむしろ当然である。 そうすると,原告らが指摘するとおり,本件明細書に「発呼者に,…通信イベントをオーディオまたはビジュアル・フォーマットで選択させる」との記載があるとしても,本件補正発明の特許請求の範囲の記載からすると,「通信イベントのメディア・フォーマット」の「変更」の主体が,本願発明と同様に,通信イベントを発信する者である「通信イベントの発呼者」に限定されているということはできない。 (4) 以上からすると 「通信イベントのメディア・フォーマット」の「変更」の主体が,本願発明と同様に,通信イベントを発信する者である「通信イベントの発呼者」に限定されているということはできない。 (4) 以上からすると,本件補正が特許請求の範囲の減縮に該当しないとして,本件補正を却下した本件審決の判断に誤りはない。 (5) なお,本件補正を却下した本件審決の判断に誤りがない以上,本件補正発明が独立特許要件を欠くとした判断の誤りに係る原告らの主張は,その前提自体を欠き,失当である。 2 取消事由2(本願発明の進歩性に係る判断の誤り)について(1) 本願発明について本願発明は,前記第2の2(1)に記載のとおりであるところ,本件明細書(甲5,8,11)にはおおむね次の記載がある。 ア本願発明は,通信管理に関し,複数のメディア・オプションを用いて,最初の通知シーケンス後,ユーザが入力通信イベントの受信を管理できるようにする複数感覚信号構造に関する発明である(【0001】)。 イ本願発明は,複数感覚信号構造により,種々の受信装置に適用でき,ユーザが入力通信イベントを管理できるようにすること,ユーザに実時間で呼び出される呼管理オプションを多数供給すること,入力通信イベントの通知を構成すること,実時間通知を通信管理オプションと結合させること,入力通信イベントを,受信装置又は受信者が選択した人に実時間で送ること,個人的な着用式の通信装置を用い- 16 -て,入力マルチメディア通知及びあらかじめ選択されたフォーマットの情報を受信できることを目的として,ユーザが,最初の通知シーケンスの後,複数メディア・オプションを用いて,入力通信イベントの受信を管理する構成を採用する(【0008】~【0013】【0016】)。 ウ本願発明の通信管理方法は以下のとおりである。 通知シーケンスの後,複数メディア・オプションを用いて,入力通信イベントの受信を管理する構成を採用する(【0008】~【0013】【0016】)。 ウ本願発明の通信管理方法は以下のとおりである。 情報を転送する前に,システムは,選択された受信相手に入力通信イベントを警告する。受信相手は,警告コンポーネントの間送られたオーディオ又はビジュアル情報に基づいて,警告信号に対して応答したり,無視したりすることを選択できる。 警告コンポーネントが終了すると,相手は,関連入力通信イベント送出用の装置を選択してもよい。 選択された装置によって,受信相手は,入力通信イベントに関する情報をより多く見聞できる。そのメディア・フォーマットに基づいて,入力通信イベントは,オーディオ・チャネル又は端末装置のビジュアルチャネルのいずれかで送られる。 後の情報に加えて,サーバは,受信相手に通信管理オプションを与える。サーバは,その後,受信相手を選択し,通信管理オプションを実行する。これらの通信管理オプションによって,受信相手は,通信イベントの受信を制御(どのように,いつ受信するか)する(【0037】~【0040】【0042】)。 通信管理オプションは,通信イベントの応答/要求を送信する各オプションを含む。通信イベントの送信に対する応答又は要求オプションは,「すぐに通信を要求」と,「通信メディア・フォーマットの変更を要求」と,「後で通信を要求」のサブオプションを含む。通信メディア・フォーマットの変更の要求サブオプションは,発呼者に,通信イベントをオーディオ又はビジュアル・フォーマットで選択させる(【0043】【0044】)。 (2) 引用発明について本件審決が認定した引用発明は,前記第2の3(2)アに記載のとおりであるところ,引用例(甲1)には,おおむね次 ・フォーマットで選択させる(【0043】【0044】)。 (2) 引用発明について本件審決が認定した引用発明は,前記第2の3(2)アに記載のとおりであるところ,引用例(甲1)には,おおむね次の記載がある。 - 17 -ア引用発明は,発信者名を事前に知った上で,通信手段を着信者が選択したいと考える場合に用いる通信方法及び通信システムに関する発明である。 従来技術では,発信者の氏名等の情報をあらかじめ通知した上で,着信者が発信者に対して許容する通信手段を選択することができないという問題があった。 引用発明の目的は,上記問題を解決するため,発信者名を事前に知った上で,着信者が通信手段を選択することが可能な通信方法及び通信システムを提供することにある(【0001】【0004】【0005】)。 イ引用発明は,通信手段の選択が可能な通信システムにおいて,通信手段を選択する手順を記憶するカスタマイズ制御手段と,手順に従って着信者が発信者名等の情報を参照しながら許容する通信手段を発信者に提示し,発信者に通信手段を承認又は選択させるインテリジェント制御手段とを備えること,カスタマイズ制御手段は,発信者又は発信者カテゴリ毎に通信手段を選択する手順を記憶すること,インテリジェント制御手段は,発信者からの通信要求時の通信手段と発信者が承認又は選択した通信手段とが異なる場合,通信要求時の通信手段のアドレスを,承認又は選択した通信手段のアドレスに変換することを特徴とする(【0007】)。 ウ引用発明において,高機能ISDN通信端末は,使用するユーザ氏名等の情報を登録し,その情報を通信接続確立要求時にインテリジェント構内交換機に通知することができるテキスト編集機能付きの高機能ISDN通信端末であり,通信システムの制御基地となる同交換機にIインタ 等の情報を登録し,その情報を通信接続確立要求時にインテリジェント構内交換機に通知することができるテキスト編集機能付きの高機能ISDN通信端末であり,通信システムの制御基地となる同交換機にIインタフェースで収容される。また,インテリジェント構内交換機は,メールサーバとなるコンピュータ(WS等)及びその他の通信端末(アナログ電話,PHS,FAX等)を収容するインタフェースを有する。インテリジェント構内交換機は,ISDNに接続され,主な機能としてカスタマイズ機能とインテリジェント制御機能とを有する。カスタマイズ機能は,本通信システムを利用するユーザがどのような手順で通信手段を選択するかのシナリオを発信者カテゴリ毎に登録しており,同制御機能からの問合せに対して発信者名を鍵に関連するシナリオを通知する。同制御機能は,シナリオどおりに通信接続を制御- 18 -する主体であり,インテリジェント構内交換機に収容する端末の使用状況の参照及び通信端末変更時のアドレス変換実行をも行う(【0010】【0011】)。 エユーザA(着信者)が,ユーザB(発信者)からの通信要求に対して通信接続を確立する前に着信端末である高機能ISDN通信端末に発信者名及びその時点で使用可能な通信手段を表示し,それらの情報に基づいて通信手段を選択するというシナリオをカスタマイズ機能にあらかじめ登録している場合,引用発明の通信処理時の実行動作例は以下のとおりである。 ユーザB(発信者)は,氏名及び種別などの利用する通信端末に関する情報を付与してユーザA(着信者)への通信要求を出す。インテリジェント制御機能は,この要求を受け,発信者名を鍵として通信接続のためのシナリオをカスタマイズ機能に問い合わせる。その際,インテリジェント制御機能は着信者が利用登録している通信端末の使用状況を テリジェント制御機能は,この要求を受け,発信者名を鍵として通信接続のためのシナリオをカスタマイズ機能に問い合わせる。その際,インテリジェント制御機能は着信者が利用登録している通信端末の使用状況をチェックし,使用可能な通信手段を着信端末に表示する。 着信者は,着信端末に表示した通信手段より好ましい手段を選択し,例えば,「緊急でなければ,電子メールで連絡してください」という内容の着信者メッセージを発信端末に通知する。インテリジェント制御機能は,着信端末から着信者が選択する通信手段の通知を受け,それを発信端末に通知する。 発信者は,発信端末の表示により,着信者が認める通信手段を知り,通信手段を選択する。発信端末からの入力を受け,インテリジェント制御機能は通信接続を行う。例えば,発信者が電子メールを選択し,選択した通信手段及び送付メッセージを入力し,インテリジェント制御機能に回答すると,同制御機能は,着信者の電話番号を電子メールアドレスに変換し,当該アドレスでメッセージを送信する。 なお,着信者が認める通信手段が一つである場合,発信者に通信手段の選択を求めることは,承認を求めることを意味する(【0012】~【0018】)。 (3) 一致点及び相違点の認定の誤りについてア原告らは,引用例には,電話により受信要求が通信されること及びメディア・フォーマットが「電話」から「電子メール」に変更されることは記載されていな- 19 -いから,「情報信号の受信時にユーザ入力に応じて,通信イベントのメディア・フォーマットが通信イベントの発信者により変更されるべきことを示す」ことについても本願発明と引用発明との一致点とした本件審決の認定は誤りであると主張する。 しかしながら,前記(2)イ及びウによれば,引用例には,発信者からの通信要求時の通信手段と べきことを示す」ことについても本願発明と引用発明との一致点とした本件審決の認定は誤りであると主張する。 しかしながら,前記(2)イ及びウによれば,引用例には,発信者からの通信要求時の通信手段と発信者が承認又は選択した通信手段とが異なる場合,「インテリジェント構内交換機」が,上記通信要求時の通信手段のアドレスを,承認又は選択した通信手段のアドレスに変換すること,すなわち,通信端末変更時のアドレス変換実行をすることが記載されているものということができる。 そして,前記(2)エによれば,引用例には,通信処理時において,ユーザB(発信者)は,氏名及び種別などの利用する通信端末に関する情報を付与し,ユーザA(着信者)への通信要求を出し,インテリジェント構内交換機は,この要求を受け,テキスト情報でユーザBから通信要求があることを着信端末に表示した上で,着信端末から着信者が選択する通信手段の通知を受け,当該手段を発信端末に通知すること,通信処理時において,同交換機から着信者が選択する通信手段の通知を受けた発信者が,選択の結果を同交換機に回答すると,同交換機は,着信者の電話番号を電子メールアドレスに変換し,当該アドレスでメッセージを送信することが記載されているものということができる。 そうすると,引用例には,通信処理時において,発信者からの通信要求時の通信手段と発信者が承認又は選択した通信手段とが異なる場合,インテリジェント構内交換機で通信端末変更時のアドレス変換実行をすることにより,着信者の電話番号が電子メールアドレスに変換されることが記載されているものということができるから,上記アドレス変換実行前の通信端末,すなわち発信者からの通信要求時の通信手段が電話であることは,明らかである。 したがって,引用発明において,メディア・フォーマット るものということができるから,上記アドレス変換実行前の通信端末,すなわち発信者からの通信要求時の通信手段が電話であることは,明らかである。 したがって,引用発明において,メディア・フォーマットが「電話」から「電子メール」に変更されることは,引用例の記載から明らかであるというほかない。 イまた,本願発明は,「情報信号の受信時にユーザ入力に応じて,通信イベン- 20 -トのメディア・フォーマットが通信イベントの発信者により変更されるべきことを示すコマンド信号を,サーバ装置に送信する手段」との構成を有するところ,前記(1)ウによると,本願発明は,上記構成の「コマンド信号」により,受信相手から通信メディア・フォーマットの変更を要求し,発呼者に変更後の通信イベントのメディア・フォーマットを選択させ,受信相手は,通信イベントをどのように受信するかを制御できるとの作用効果を奏するものである。 これに対し,前記アのとおり,引用発明において,発信者からの通信要求時の通信手段は電話であるということができるから,引用発明の「着信端末」に「受信要求」として表示される「要求通信手段:電話」の表示例は,「通信要求」「通知」(情報信号)が,複数の通信手段(複数のメディア・フォーマット)の1つである「電話」で行われたことを意味するものであって,「複数のメディア・フォーマットの内の少なくとも1つ」により受信されたといえるものである。 そうすると,引用発明の「受信要求応答」は,情報信号の受信時に,ユーザ入力に応じて,通信イベントのメディア・フォーマットが変更されるべきことを示すものということができるから,このような観点からすると,本願発明の「コマンド信号」と共通するものということができる。 もっとも,本件審決は,本願発明の「コマンド信号」において,通信イベント とを示すものということができるから,このような観点からすると,本願発明の「コマンド信号」と共通するものということができる。 もっとも,本件審決は,本願発明の「コマンド信号」において,通信イベントのメディア・フォーマットの変更が「通信イベントの発信者により」される点で,本願発明の「コマンド信号」と引用発明の「受信要求応答」とは相違することを前提として,当該相違点は,本願発明とは大差ないものであるとするものである。 したがって,本件審決は,「情報信号の受信時にユーザ入力に応じて,通信イベントのメディア・フォーマットが通信イベントの発信者により変更されるべきことを示す」ことを,本願発明と引用発明との一致点として認定しているものではない。 原告らの主張は採用できない。 ウ以上からすると,本件審決の本願発明と引用発明との一致点の認定に誤りはない。 - 21 -原告らは,一致点の認定に誤りがあることを前提として,相違点の認定についても誤りであると主張するが,一致点の認定に誤りがない以上,原告らの主張は失当である。 (4) 相違点に係る判断の誤りについて本件審決は,本願発明と引用発明との一致点及び相違点について,「通信イベントの発信者により」の点を除き,本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点と同様に認定するものであることは,前記のとおりである。 原告らは,引用発明における通信イベントのメディア・フォーマットを変更する主体は,インテリジェント制御機能である,引用発明のインテリジェント制御機能は,本願発明のサーバ装置に対応するものであって,通信イベントの発信者に対応するものではないから,本願発明の一特徴である「通信イベントのメディア・フォーマットが通信イベントの発信者により変更されるべきことを示すコマンド信号」は,引用例には記載 ,通信イベントの発信者に対応するものではないから,本願発明の一特徴である「通信イベントのメディア・フォーマットが通信イベントの発信者により変更されるべきことを示すコマンド信号」は,引用例には記載されていないものというべきであるなどと主張する。 しかしながら,前記(3)のとおり,引用例には,通信処理時において,インテリジェント構内交換機から着信者が選択する通信手段の通知を受けた発信者が,電子メールを選択したことを同交換機に回答し,同交換機は,着信者の電話番号を電子メールアドレスに変換し,当該アドレスでメッセージを送信することが記載されているから,引用発明において,メディア・フォーマットを変更する実質的な主体は,変更後のメディア・フォーマットを選択する発信者であって,同交換機は,発信者の選択に基づいてメディア・フォーマットを変更するための手段にすぎないことは明らかである。 そうすると,引用発明において,「ユーザB(発信者)」は,「ユーザA(着信者)」の選択により表示された通信手段の中から例えば電子メールを選択し,送付メッセージを入力することにより,「選択した通信手段が電子メールであることと送付メッセージをインテリジェント構内交換機に送信」するものであるから,引用発明は,実質的に,「ユーザB(発信者)」すなわち「通信イベントの発信者」に- 22 -より,「通信イベントのメディア・フォーマット」が変更されるものということができる。 したがって,引用発明は,本願発明と大差ないものであるとした本件審決の判断に誤りはない。 (5) 小括以上からすると,本願発明は,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができるものであるとした,本件審決の判断に誤りはない。 3 結論以上の次第であるから,原告訴訟承継人 以上からすると,本願発明は,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができるものであるとした,本件審決の判断に誤りはない。 3 結論以上の次第であるから,原告訴訟承継人の請求は棄却されるべきものである。 知的財産高等裁判所第4部 裁判長裁判官 滝澤孝臣 裁判官 井上泰人 裁判官 荒井章光
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