令和1(ワ)35292 特許権侵害差止等請求事件

裁判年月日・裁判所
令和3年4月23日 東京地方裁判所
ファイル
hanrei-pdf-90308.txt

キーワード

判決文本文13,860 文字)

令和3年4月23日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 令和元年(ワ)第35292号特許権侵害差止等請求事件口頭弁論終結日令和3年1月15日判決 原告 インテンション株式会社 上記訴訟代理人弁護士 五十部紀英 同補佐人弁理士 伊藤信和 被告 株式会社日本イノベーション(以下「被告イノベーション」という。) 被告 株式会社CS(以下「被告CS60」という。) 上記両名訴訟代理人弁護士 宍戸充 上記両名訴訟代理人弁理士 堅田多恵子 上記両名補佐人弁理士 重信和男 同秋庭英樹 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告らは,それぞれ,別紙被告製品目録記載のマッサージ具を製造し,使用し,譲渡し,貸し渡し,若しくは輸出し,又は譲渡若しくは貸渡しの申出をしてはならない。 2 被告らは,それぞれ,別紙被告製品目録記載のマッサージ具を廃棄せよ。 3 被告らは,原告に対し,連帯して,1億0549万円及びこれに対する令和2年1月24日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。 第2 事案の概要等 1 事案の概要 本件は,発明の名称を「マッサージ具」とする特許権(特許第5851923号。以下,「本件特許権」といい,この特許を「本件特許」といい,その特 。 第2 事案の概要等 1 事案の概要 本件は,発明の名称を「マッサージ具」とする特許権(特許第5851923号。以下,「本件特許権」といい,この特許を「本件特許」といい,その特許出願の願書に添付された明細書及び図面を「本件明細書」という。)の特許権者である原告が,被告イノベーションが製造し,被告CS60が使用等する別紙被告製品目録記載の製品(以下「被告製品」という。)は本件特許の請求項1の技術的範囲 に属するものであると主張して,被告らに対し,特許法100条1項及び2項に基づき,被告製品の譲渡等の差止め及び廃棄を求めるとともに,民法709条に基づき,損害賠償金及び遅延損害金の支払を求める事案である。 2 前提事実(争いがない事実については証拠番号を付さない。以下同じ。) 原告は,健康器具,マッサージ具等の健康増進機械の製造及び輸出,輸入, 販売等を目的とする株式会社である。 被告イノベーションは,マッサージ具の製造等を目的とする株式会社であり,被告CS60は,マッサージ具の製造や,マッサージ業等を目的とする株式会社である。 原告は,以下の本件特許権を有している。 ア登録番号 特許第5851923号イ発明の名称マッサージ具ウ出願日平成24年4月18日 エ登録日平成27年12月11日 本件特許権の特許請求の範囲の請求項1の発明(以下「本件発明」という。)は,以下のとおりである。 「導電性の材料からなり,ブロック状の外体と,この外体の中央に,当該外 体の延出部の延出方向に直交する方向に形成された穴状の収納穴と,この収納穴に収納された導電性の材料からなる線 「導電性の材料からなり,ブロック状の外体と,この外体の中央に,当該外 体の延出部の延出方向に直交する方向に形成された穴状の収納穴と,この収納穴に収納された導電性の材料からなる線材が螺旋状に巻回された巻回体と,この巻回体の中心に配置された強磁性の材料からなる棒体と,上記巻回体及び棒体の下方の上記外体の表面付近に配置された下方磁石体と,上記下方磁石体の外面に配置され,当該下方磁石体を覆っている,導電性の材料からなる導電体 と,上記下方磁石体は,上記巻回体及び上記棒体の周囲下方の上記外体の表面付近に環状に配置され,この環状の複数の下方磁石体の内側で,上記収納穴の下方で,上記外体の下面に取り付けられ,強磁性体の材料からなる下方固定体と,を備えたことを特徴とするマッサージ具。」 本件発明を分説すると,以下のとおりである(以下,各構成について,その 符号に従って「構成要件A」などと表記する。)。 A 導電性の材料からなり,ブロック状の外体と,B この外体の中央に,当該外体の延出部の延出方向に直交する方向に形成された穴状の収納穴と,C この収納穴に収納された導電性の材料からなる線材が螺旋状に巻回され た巻回体と, D この巻回体の中心に配置された強磁性の材料からなる棒体と,E 上記巻回体及び棒体の下方の上記外体の表面付近に配置された下方磁石体と,F 上記下方磁石体の外面に配置され,当該下方磁石体を覆っている,導電性の材料からなる導電体と, G 上記下方磁石体は,上記巻回体及び上記棒体の周囲下方の上記外体の表面付近に環状に配置され,H この環状の複数の下方磁石体の内側で,上記収納穴の下方で,上記外体の下面に取り付けられ,強磁性体の材料からなる下方固定体と,I を備え 棒体の周囲下方の上記外体の表面付近に環状に配置され,H この環状の複数の下方磁石体の内側で,上記収納穴の下方で,上記外体の下面に取り付けられ,強磁性体の材料からなる下方固定体と,I を備えたことを特徴とするマッサージ具。 被告イノベーションは,業として被告製品を製造し,それを第三者にレンタルする等している。被告CS60は,被告製品を使用してマッサージ業を行っている。 被告製品は,以下の構成を有する(以下,各構成について,その符号に従って「構成a」などと表記する。)。 a 胴体1aと延出体2aは,それらの内側部分が導電性を有する材料と,外側部分が導電性を有しない絶縁体からなるコーティング材料とを備え,上記胴体1aと延出体2aとは別体で構成されているとともに,取り外し自在に螺合可能であり,b この胴体1a及び延出体2aの中央に,当該延出体2aの延出方向に直交 する方向に形成された貫通孔4a,4bと,c 上記胴体1aの貫通孔4aに収納され,導電性の材料からなる線材が螺旋状に巻回されたコイルばね9aと,d コイルばねの中心から径方向に外れた位置に配置され,天板21aの下側に一端が固定され,他端である自由端にはその先端に強磁性体を備えた折り 曲げ可能な柔軟な細長い電子部品7aと,円板状固定体10aの上面に一端 が固定され,他端である自由端にはその先端に強磁性体を備えた折り曲げ可能な柔軟な細長い電子部品7bと,e 上記コイルばね9a及び電子部品7a,7bの下方の上記延出体2aの表面付近に接して配置された6つの球状の磁石13aと,f 上記磁石13aの下面に配置され,上記磁石13aを覆うプラスチック製 の材料からなる下方円形プラスチッ bの下方の上記延出体2aの表面付近に接して配置された6つの球状の磁石13aと,f 上記磁石13aの下面に配置され,上記磁石13aを覆うプラスチック製 の材料からなる下方円形プラスチック23aと,その下方円形プラスチック23aの下側に配置され,導電性の材料からなる下方蓋体15aと,g 上記磁石13aは,上記コイルばね9a及び電子部品7a,7bよりも下の上記延出体2aの表面付近に環状に配置され,h この環状に配置された磁石13aの内側で,上記下方円形プラスチック2 3a及び上記下方蓋体15aの突出部の上面に取り付けられ,強磁性体の材料からなる円盤状固定体10aと,i を備えたマッサージ具。 被告製品は,構成要件Iを充足する。 3 争点 被告製品が本件発明の技術的範囲に属するか(争点1)ア 「導電性の材料からなり」(構成要件A)の充足性(争点1-1)イ 「ブロック状の外体」(構成要件A,E,G)の充足性(争点1-2)ウ 「穴状の収納穴」(構成要件B,C,H)の充足性(争点1-3)エ 「巻回体の中心に配置」(構成要件D)の充足性(争点1-4) オ 「強磁性の材料からなる」(構成要件D)の充足性(争点1-5)カ 「棒体」(構成要件D,E,G)の充足性(争点1-6)キ 「下方磁石体の外面に配置され,当該下方磁石体を覆っている,導電性の材料からなる導電体」(構成要件F)の充足性(争点1-7)ク 「収納穴の下方で,上記外体の下面に取り付けられ」(構成要件H)の充足 性(争点1-8) 原告の損害額(争点2) 4 争点に関する当事者の主張被告製品が本件発明の技術的範囲に属するか(争点1) 面に取り付けられ」(構成要件H)の充足 性(争点1-8) 原告の損害額(争点2) 4 争点に関する当事者の主張被告製品が本件発明の技術的範囲に属するか(争点1)ア 「導電性の材料からなり」(構成要件A)の充足性(争点1-1)(原告の主張) 構成要件Aは,「導電性の材料からなり」というものであり,外側部分のコーティング材料についての記載はない。被告らが指摘する本件明細書の【0015】は,本件特許権の請求項6の発明における「延出部の外縁に取り付けられた環状の導電体」すなわち環帯体を前提としたものであり,環帯体を備えない構成である本件発明とは関係がないものである。 被告製品において,構成要件Aの外体に相当する胴体1a,延出体2a(構成a)は,コーティング材料以外の部分について導電性を有する。 したがって,被告製品は,「導電性の材料からなり」(構成要件A)の文言を充足する。 (被告らの主張) 本件発明の「導電性の材料からなり」という構成は,マッサージ具の外体を手に把持して施術を行う際,外体の表面に人の手が接触し,「導電性の材料」であることにより電気伝導性が発揮されるというものである。本件明細書の【0015】に「アルミニウム製の外体1より銅製の環帯体3の方が,電気伝導性がよく/高く,環帯体3が人体に当接接触して,アルミニウム製 の外体1と銅製の環帯体3との間で接触電位差が生じ,銅製の環帯体3によって,コリ・痛みを改善でき,マッサージ効果が向上する。」とあることからも,マッサージを施すときに把持する外体の外側においても導電性の材料からなることが必須である。したがって,外体の外側に絶縁体からなるコーティング材料を備えるような場合には,導電性の材料からなる からも,マッサージを施すときに把持する外体の外側においても導電性の材料からなることが必須である。したがって,外体の外側に絶縁体からなるコーティング材料を備えるような場合には,導電性の材料からなるものとはいえな いというべきである。 被告製品における胴体1aと延出体2aは,外側部分が導電性を有しない絶縁体からなるコーティング材料を備えるものであるから,胴体1aと延出体2aの全てが導電性の材料からなるものとはいえない。 したがって,被告製品は,「導電性の材料からなり」(構成要件A)の文言を充足しない。 イ 「ブロック状の外体」(構成要件A,E,G)の充足性(争点1-2)(原告の主張)構成要件Aは,「ブロック状の外体」というものであり,外体が単一部品である旨の記載はない。一般的な意味における「ブロック」は,「かたまり。角塊。」を意味するものであり,単一物や一個の物という意味を持たない。本件 明細書では「外体1は,アルミニウム製のほか,すず,プラチナ,マンガン,ビスマス,亜鉛,鉛,カーボンナノチューブ,カーボン素材,これらの合金などの電気導電性が良く,しかも反磁性体,弱磁性体,常磁性体または非磁性体であれば何でもよいし,複数部品から構成されてもよい。」(【0058】)と記載されており,複数部品から構成されてもよいことが明示されている。 被告らが指摘する本件明細書の【0013】は外体の一実施例を説明したものにすぎない。また,本件明細書の【0008】,【0043】,【0065】及び【0081】の記載は,「一体成型物であるならば」という仮定をした記述であり,外体の一実施例を記載したにすぎない。 したがって,被告製品は,「ブロック状の外体」(構成要件A,E,G)の 文言を充足する。 「一体成型物であるならば」という仮定をした記述であり,外体の一実施例を記載したにすぎない。 したがって,被告製品は,「ブロック状の外体」(構成要件A,E,G)の 文言を充足する。 (被告らの主張)本件特許の特許請求の範囲の記載によれば「当該外体の延出部」(構成要件B)とされているとおり延出部は外体の一部であると解される。本件明細書の【0012】,【0013】の記載によれば,「外体」は単一の部材から構 成されていることが必要であるといえる。本件明細書の【0055】には「外 体1は,テーパー状,柱状のほか,球体,卵形,直方体,立方体,円錐,円錐台,角錐,角錐台,多面体,正多面体,筒状,ブロック状などでもよい。 棒体7は,円柱状,円筒状のほか,角柱状,球体,卵形,直方体,立方体,円錐,円錐台,角錐,角錐台,多面体,正多面体などでもよい。」との記載があるところ,本件発明では,その中のブロック状のみが積極的に限定されて おり,上記【0055】に例示された他の形状は権利範囲から除外されている。一般的な用語例においても「ブロック」とは,「かたまり。角塊。」とされており,「ブロック状」はかたまり状のものである。 また,本件明細書における「外体等が単一の部品からなる一体成型物であると」(【0008】),「外体1は,単一の部品からなる一体成型物であるた め」(【0043】),「外体等が単一の部品からなる一体成型物であると」(【0065】),「外体1が一体成型物であると」(【0081】)という記載からすれば,外体が一塊のブロック状であることによってマッサージ効果等が向上するものである。 これらによれば,「ブロック状の外体」は,複数の部品の組合せではなく単 一の部品から構成さ すれば,外体が一塊のブロック状であることによってマッサージ効果等が向上するものである。 これらによれば,「ブロック状の外体」は,複数の部品の組合せではなく単 一の部品から構成されると限定したものを本件発明の権利範囲としているといえる。 被告製品の構成aは,胴体1aと延出体2aと別体で構成されているとともに,取り外し自在に螺合可能に構成されている。 したがって,被告製品は,「ブロック状の外体」(構成要件A,E,G)の 文言を充足しない。 ウ 「穴状の収納穴」(構成要件B,C,H)の充足性(争点1-3)(原告の主張)上記イ(争点1-2)の原告の主張のとおり,構成要件Aの「ブロック状の外体」は,単一部品である必要はないから,構成要件B,C,Hの「穴状 の収納穴」についても,単一部品から構成される外体に付された穴である必 要はない。 したがって,被告製品における貫通孔4a,4b(構成b,c)は,「穴状の収納穴」(構成要件B,C,H)の文言を充足する。 (被告らの主張)被告製品では,胴体1aと延出体2aとが別体で構成され,取り外し自在 に螺合可能であり,分離されるものであるから,構成要件Aの「ブロック状の外体」を前提とした構成要件Bの「穴状の収納穴」という観念は存在しない。 また,被告製品では,延出体2aの貫通孔4bには螺旋状に巻回されたコイルばね9aが収納されていないから,貫通孔4bは「収納」のための「収 納穴」ではない。 したがって,被告製品は,「穴状の収納穴」(構成要件B,C,H)の文言を充足しない。 エ 「巻回体の中心に配置」(構成要件D)の充足性(争点1-4)(原告の主張) 被告製品において 品は,「穴状の収納穴」(構成要件B,C,H)の文言を充足しない。 エ 「巻回体の中心に配置」(構成要件D)の充足性(争点1-4)(原告の主張) 被告製品において,構成要件Dの棒体に相当する電子部品7aは天板21aに取り付けられ,電子部品7bは円盤状固定体10aに取り付けられている。天板21aの2つの穴は中心から等しい位置にあり,円盤状固定体10aの2つの穴も中心から等しい位置にある。したがって,電子部品7aの位置と電子部品7bの位置の中間は,巻回体の中心となるから,棒体に相当す る両部品が巻回体の中心にあることは明らかである。 したがって,被告製品は,「巻回体の中心に配置」(構成要件D)の文言を充足する。 (被告らの主張)被告製品の電子部品7a及び7bは,コイルばねの中心から径方向に外れ た位置に配置されており,コイルばねの中心に配置されていない。 したがって,被告製品は,「巻回体の中心に配置」(構成要件D)の文言を充足しない。 オ 「強磁性の材料からなる」(構成要件D)の充足性(争点1-5)(原告の主張)構成要件Dについて,本件明細書には「棒体7は,鉄,ニッケル,コバル ト,マンガン,ガドリウム,テルビウム,ステンレスなどの金属またはこれらの合金などの,強磁性体(フェリ磁性体を含む。以下同じ)の材料からなっており,磁力を透過させやすくなっている。」(【0018】),「強磁性体の棒体7及び上方磁石体11によって,磁気/磁力が透過する磁気回路が形成される。」(【0031】),「導電性かつ常磁性体の外体1内には,強磁性体の 棒体7に巻回された導電性の巻回体9と,この棒体7及び巻回体9の上方には上方磁石体11,下方には下方磁石体13…が配置され,こ (【0031】),「導電性かつ常磁性体の外体1内には,強磁性体の 棒体7に巻回された導電性の巻回体9と,この棒体7及び巻回体9の上方には上方磁石体11,下方には下方磁石体13…が配置され,この磁力によってマッサージされる。」(【0080】)との記載がある。これらによれば,本件発明における棒体は,磁力を透過させてマッサージ具のマッサージ効果を上げる役割を有しており,そのために棒体が「強磁性の材料からなる」とさ れるものである。 被告製品において,構成要件Dの棒体に相当する電子部品7a及び7bは,それらの一端から他端へ磁力を透過させる役割を有しており,いずれも実質的に強磁性の材料であるといえる。 したがって,被告製品は,「強磁性の材料からなる」(構成要件D)の文言 を充足する。 (被告らの主張)被告製品の電子部品7a,7bは,その先端に強磁性体の性質を持つ部材が一部埋め込まれてはいるが,固定部である一端まで磁性部は連続していないから,構成要件Dの「強磁性の材料からなる」棒体に該当しない。 したがって,被告製品は,「強磁性の材料からなる」(構成要件D)の文言 を充足しない。 カ 「棒体」(構成要件D,E,G)の充足性(争点1-6)(原告の主張)構成要件Dにおいて,棒体の要件として外体の直径に対しての太さや細さに関する内容は定義づけられていない。一般的な意味における「棒」とは, 「手に持てるほどの細い木・竹・金属などの称」である。 被告製品において,電子部品7aと7b(構成d)は,いずれも手に持てる細い金属であって,一般的な意味における「棒」であるといえる。 したがって,被告製品は,「棒体」(構成要件D,E,G)の文言を充足する。 (被告らの主張 d)は,いずれも手に持てる細い金属であって,一般的な意味における「棒」であるといえる。 したがって,被告製品は,「棒体」(構成要件D,E,G)の文言を充足する。 (被告らの主張)一般的な用語例では「棒(ぼう)は,細長い円柱など柱形の道具や部品の総称。手で持つなどして自由に動かせるものを呼ぶことが多い。」とされている。本件明細書の【0018】には「この棒体7は,鉄,ニッケル,コバルト,マンガン,ガドリウム,テルビウム,ステンレスなどの金属またはこ れらの合金などの,強磁性体(フェリ磁性体を含む。以下同じ)の材料からなっており,磁力を透過させやすくなっている。」という記載があり,本件明細書の【図2】,【図3】には棒体7が円柱であることが記載されている。これらによれば,構成要件Dの「棒体」は,金属などからなる円柱状のものと解すべきである。 被告製品の構成dの「天板21aの下側に一端が固定され,他端である自由端にはその先端に強磁性体を備えた折り曲げ可能な柔軟な細長い電子部品7a」と,「円板状固定体10aの上面に一端が固定され,他端である自由端にはその先端に強磁性体を備えた折り曲げ可能な柔軟な細長い電子部品7b」は,いずれも構成要件Dの「棒体」とはいえない。 したがって,被告製品は,「棒体」(構成要件D,E,G)の文言を充足し ない。 キ 「下方磁石体の外面に配置され,当該下方磁石体を覆っている,導電性の材料からなる導電体」(構成要件F)の充足性(争点1-7)(原告の主張)被告製品においては,下方円形プラスチック23aが介在していても(構 成f),導電性の下方蓋体15aが磁石13aの外面に配置されて,磁石13aを覆っているといえる。 したがって,被告 主張)被告製品においては,下方円形プラスチック23aが介在していても(構 成f),導電性の下方蓋体15aが磁石13aの外面に配置されて,磁石13aを覆っているといえる。 したがって,被告製品は,「下方磁石体の外面に配置され,当該下方磁石体を覆っている,導電性の材料からなる導電体」(構成要件F)の文言を充足する。 (被告らの主張)被告製品の下方蓋体15aは,6つの球状の磁石13aの外面ではなく,下方円形プラスチック23aの下側に配置されており,磁石13aと下方蓋体15aとの間に,プラスチック製の材料からなる下方円形プラスチック23aが介在している点(構成f)で構成要件Fとは異なる。 したがって,被告製品は,「下方磁石体の外面に配置され,当該下方磁石体を覆っている,導電性の材料からなる導電体」(構成要件F)の文言を充足しない。 ク 「収納穴の下方で,上記外体の下面に取り付けられ」(構成要件H)の充足性(争点1-8) (原告の主張)構成要件Hの「上記外体の下面」とは,本件明細書の【図2】における下方固定体10が配置されている位置を意味する。 被告製品において,構成要件Hの下方固定体に相当する円盤状固定体10aは,本件発明における下方固定体10と同様の位置に設置されており(構 成h),それが設置されている位置について,構成要件Hと構成hとで相違 はない。 したがって,被告製品は,「収納穴の下方で,上記外体の下面に取り付けられ」(構成要件H)の文言を充足する。 (被告らの主張)円盤状固定体10aは下方円形プラスチック23a及び下方蓋体15a の突出部の上面に取り付けられているのに対し,構成要件Hでは下方固定体が「上記収納穴の下方 する。 (被告らの主張)円盤状固定体10aは下方円形プラスチック23a及び下方蓋体15a の突出部の上面に取り付けられているのに対し,構成要件Hでは下方固定体が「上記収納穴の下方で,上記外体の下面」に取り付けられるとされているから,構成要件Hと構成hは異なる。 したがって,被告製品は,「収納穴の下方で,上記外体の下面に取り付けられ」(構成要件H)の文言を充足しない。 原告の損害額(争点2)(原告の主張)本件発明の重要性等に鑑みれば,本件発明の実施に係る実施料率は少なくとも10パーセントを下ることはない。 被告らは,被告製品1個につき,使用権や加盟金とレンタル料の合計として 最低でも137万円を得ているところ,被告らは,少なくとも被告製品700台をレンタルに供している。 以上によれば,原告の損害額は9590万円(137万円×700台×10パーセント)となる。本件訴訟追行のために相当な弁護士費用は959万円が相当である。 (被告らの主張)否認ないし争う。 第3 争点に対する判断 1 本件発明及びその意義本件明細書の発明の詳細な説明には,以下の記載がある。(甲5) ア技術分野 「本発明は,マッサージ具に関し,特に人体などの肩,腰,手足などの各部の血行を促進する,血流を改善するまたはリンパの流れを改善する等の器具に関する。」(【0001】)イ背景技術「近年,人体のコリや痛みを取るため,種々のマッサージ具が考えられて きている。このようなマッサージ具では,回転するローラ・ボールを人体の各部に当てたり,多数の突起を人体の各部に当てたりしていた。」(【0002】) を取るため,種々のマッサージ具が考えられて きている。このようなマッサージ具では,回転するローラ・ボールを人体の各部に当てたり,多数の突起を人体の各部に当てたりしていた。」(【0002】)ウ発明が解決しようとする課題「本件発明の課題は,従来にないマッサージ具を提供するもので,可動部 分が少なく,したがって故障しにくいまたは破損しにくいマッサージ具を提供することにある。」(【0004】)エ課題を解決するための手段「上記目的を達成するために,本発明のマッサージ具は,導電性の材料からなり,ブロック状の外体と,この外体の中央に,上記延出部の延出方向に 直交する方向に形成された穴状の収納穴と,この収納穴に収納された導電性の材料からなる線材が螺旋状に巻回された巻回体と,この巻回体の中心に配置された強磁性の材料からなる棒体と,上記巻回体及び棒体の下方または上方の上記外体の表面付近に配置された上方磁石体または下方磁石体とを備えた。」(【0005】) 「また,本発明のマッサージ具は,上記上方磁石体または下方磁石体の外面には導電性の材料からなる導電体が配置され,この導電体は上方磁石体または下方磁石体を覆っているようにした。」(【0006】)オ発明の効果「これにより,可動部分が少なく故障しにくいまたは破損しにくくなる。 また,本マッサージ具を人体などに当てると,下方磁石体の磁力が効率よく 人体に当たり,血行促進,血流改善またはリンパの流れの改善が実行される。」(【0007】)「また,外体等の中には棒体及び巻回体が存在するので,外体等が単一の部品からなる一体成型物であると,上記のコリ・痛みの改善,マッサージ効果が向上する。」(【0008 」(【0007】)「また,外体等の中には棒体及び巻回体が存在するので,外体等が単一の部品からなる一体成型物であると,上記のコリ・痛みの改善,マッサージ効果が向上する。」(【0008】) 「さらに,上方磁石体または下方磁石体と人体との間には,下方覆体,上方固定体または環帯体が介在して上方磁石体または下方磁石体を覆っているので,上方磁石体または下方磁石体の磁気/ 磁力による単なる血行促進/血流改善/リンパ改善効果だけでなく,コリ・痛みを改善でき,マッサージ効果が向上する。」(【0009】) 「上方固定体,下方覆体または環帯体によって,上方磁石体または下方磁石体による,磁気/磁力マッサージ効果が向上する。」(【0010】) 原告は,本件発明の課題について,「従来にないマッサージ具を提供するもので,可動部分が少なく,したがって故障しにくいまたは破損しにくいマッサージ具を提供することにある。」(【0004】)というものであり,本件発明の 効果について「これにより,可動部分が少なく故障しにくいまたは破損しにくくなる。また,本マッサージ具を人体などに当てると,下方磁石体の磁力が効率よく人体に当たり,血行促進,血流改善またはリンパの流れの改善が実行される。」(【0007】)というものであると主張する(原告準備書面(2),2~3頁)。 せば,本件明細書には,本件発明は, マッサージ具の発明であり,本件発明の構成をとることによって,可動部分が少なく,故障,破損しにくく,また,下方磁石体の磁力が効率よく人体に当たり,下方磁石体を覆う導電体(下方覆体)によりマッサージ効果が向上するという効果を有することが記載されていると認められる。 2 争点1-1(「導電性の材料からなり」(構成要件A))の たり,下方磁石体を覆う導電体(下方覆体)によりマッサージ効果が向上するという効果を有することが記載されていると認められる。 2 争点1-1(「導電性の材料からなり」(構成要件A))の充足性) 構成要件Aは「導電性の材料からなり,ブロック状の外体と」である。「・・・ からなる」という用語の通常の使用方法に照らせば,上記の「導電性の材料からなり」とは,外体の全体が「導電性の材料」から構成されることを意味すると解するのが自然である。 可動部分が少なく故障,破損しにくく,また,マッサージ具を人体などに当てると,下 方磁石体の磁力が効率よく人体に当たり,下方磁石体を覆う導電体(下方覆体)によりマッサージ効果が向上するというものである。特許請求の範囲には上記のとおり「導電性の材料からなる」と記載されているところ,本件発明の課題,効果との関係で,上記の自然な文言の解釈とは異なる解釈を採用する根拠は見当たらない。また,本件明細書において,外体が導電性の材料と異なる材料も含むこ とを示唆する記載は見当たらない。 被告製品は胴体1aと延出体2aの外側部分が導電性を有しない絶縁体からなるコーティング材料を備えるもの(構成a)であるから,「外体」の全体が「導電性の材料」から構成されるとはいえない。 したがって,被告製品は,「導電性の材料からなり」(構成要件A)の文言を充 足しない。 3 争点1-5(「強磁性の材料からなる」(構成要件D))の充足性について構成要件Dは,「この巻回体の中心に配置された強磁性の材料からなる棒体と」というものである。上記のうち「・・・からなる」という用語の通常の使用方法に照らせば,巻回体の中心に配置された「棒体」は,基本的にはその全 体が強磁性の材料から構成される 材料からなる棒体と」というものである。上記のうち「・・・からなる」という用語の通常の使用方法に照らせば,巻回体の中心に配置された「棒体」は,基本的にはその全 体が強磁性の材料から構成されるものであると解するのが自然である。 そして,本件明細書によれば,本件発明の効果は,とおり,可動部分が少なく故障,破損しにくく,また,マッサージ具を人体などに当てると,下方磁石体の磁力が効率よく人体に当たり,下方磁石体を覆う導電体(下方覆体)によりマッサージ効果が向上するというものである。このような本件発明 の効果との関係で,上記の巻回体の中心に配置された強磁性の材料からなる棒 体について,上記の自然な文言の解釈とは異なる解釈を採用する根拠は見当たらない。 本件明細書には,本件発明とは異なり上方磁石体を有する発明(請求項3に記載された発明等)の実施例についての記載があり,そこにおいて,「棒体7」は,「強磁性体(フェリ磁性体を含む。以下同じ)の材料からなっており,磁力 を透過させやすくなっている。」(【0018】)との記載や,上方磁石体,下方磁石体と棒体7等によって磁気/磁力が透過する磁気回路が形成されることなどの記載がある(【0028】,【0031】)。しかし,そこにおいても,「棒体7」の強磁性体がその一部のみでも足りることを示唆する記載はなく,その他,本件明細書において,構成要件Dの「棒体」の一部のみが強磁性の材料か ら構成される場合を含み得ることを示唆する記載は見当たらない。 以上によれば,「強磁性の材料からなる」とは,「棒体」の全体が強磁性の材料から構成されることを意味するというべきである。 被告製品は,先端に強磁性体を備えた折り曲げ可能な柔軟な細長い電子部品7a,7bから構成されている(構成d)ところ,こ ,「棒体」の全体が強磁性の材料から構成されることを意味するというべきである。 被告製品は,先端に強磁性体を備えた折り曲げ可能な柔軟な細長い電子部品7a,7bから構成されている(構成d)ところ,これらは,その電子部品の 一部(先端)のみが強磁性の材料から構成されるものであり,その全体が強磁性の材料から構成されるものではない。 したがって,被告製品は,「強磁性の材料からなる」(構成要件D)の文言を充足しない。 これに対し,原告は,被告製品の電子部品7a及び7bは,一端から他端へ 磁力を透過させるものであるから実質的に「強磁性の材料からなる」ものであると主張し,この主張を裏付けるものとして,本件明細書の【0018】,【0031】及び【0080】の記載を指摘する。しかし,本件明細書の上記各記載は,本件発明の「棒体」の一部が強磁性の材料から構成される場合に言及したり,それについて示唆をしたりするものでもなく,上記の認定を左右する ものではない。原告の主張は採用できない。 4 以上によれば,被告製品は,構成要件A,Dを充足しないから,他の構成要件の充足性を判断するまでもなく,本件発明の技術的範囲に属さない。 第4 結論よって,原告の請求は理由がないからいずれも棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第46部 裁判長裁判官柴田義明 裁判官佐伯良子 裁判官佐藤雅浩 (別紙)被告製品目録 以下の名称を有するマッサージ具 名称「CS60」(正式名称「CellSmooth 60trillion」) 浩 (別紙)被告製品目録 以下の名称を有するマッサージ具 名称「CS60」(正式名称「CellSmooth60trillion」)

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る