昭和45(う)1182 競売入札妨害、贈賄被告事件

裁判年月日・裁判所
昭和46年11月15日 東京高等裁判所
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【DRY-RUN】主 文 原判決中被告人A、同E、同Fに関する部分を破棄する。 被告人E、同Fを各懲役一年二月に、被告人Aを懲役一年にそれぞれ処する。  原審における未決勾留日数中被告人Eに対して

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主 文原判決中被告人A、同E、同Fに関する部分を破棄する。 被告人E、同Fを各懲役一年二月に、被告人Aを懲役一年にそれぞれ処する。  原審における未決勾留日数中被告人Eに対して三五日、被告人F、同Aに対して各三〇日を右刑に算入する。 ただし、この裁判確定の日から、被告人E、同Fに対しては五年間、被告人Aに対しては四年間それぞれ刑の執行を猶予する。 被告人B、同C、同Dの本件各控訴を棄却する。 原審における訴訟費用中証人I(第一、二回)に支給した分は、被告人A、同E、同Fに、相被告人B、同C、同Dと連帯して負担させ、証人M(第一、二回)同S(第一、二回)、同L(第一、二回)、同O(第一回)、同N(第一回)、同V(第一回)、同W(第一回)、同Y、同U(第二回)、同Z(第二回)、同A1、同B1に各支給した分は、被告人A、同E、同Fに、相被告人B、同C、同D、原審相被告人Jと連帯して負担させ、証人G1に支給した分は、被告人Aに、相被告人B、同C、同D、原審相被告人Jと連帯して負担させ、証人X、同V(第二回)、同G、同O(第二回)、同N(第二回)、同L(第三回)、同C1、同D1、同P、同E1、同F1、同W(第二回)に各支給した分は被告人Aに相被告人B、同C、同Dと連帯して負担させ、証人S(第三回)に支給した分は被告人A、同Fに連帯して負担させ、当審における訴訟費用は、被告人A、同B、同C、同Dの連帯負担とする。 理由本件各控訴の趣意は、被告人A、同B、同C、同Dの弁護人山本雅彦、同熊本典道連名の控訴趣意書、被告人Eの弁護人伊達秋雄、司波実連名の控訴趣意書、被告人Fの弁護人貝塚次郎の控訴趣意書に、それぞれ記載されたとおりであるから、これらを引用する。 弁護人山本雅彦、熊本典道および同伊達 控訴趣意書、被告人Eの弁護人伊達秋雄、司波実連名の控訴趣意書、被告人Fの弁護人貝塚次郎の控訴趣意書に、それぞれ記載されたとおりであるから、これらを引用する。 弁護人山本雅彦、熊本典道および同伊達秋雄、司波実の各控訴趣意第一点事実誤認、法令適用に誤りがあるとの主張について。 各論旨は要するに(一)本件差押は(イ)物品を個々に確認することなく、棚卸帳の記載により現実に存在しなかつたものをも含めて行なわれたこと、(ロ)裁判所の許可を受けることなしに夜間まで差押を続行したこと、差押物につき封印其他の方法を以て差押を明白にすることなくして債務者側の保管に任じたことにより無効である(二)差押手続の適法であることを前提とする競売続行命令は当然無効である(三)本件競売手続は(イ)債権者らの申請により差押物の点検を行なうべき義務に違反し執行吏はこれをしていないこと、(ロ)差押物中現実に存在しない物があるのに一括競売に付したこと、(ハ)競売開始の宣言を職務権限のない執行吏Gが行なつたこと、(ニ)競売物件を個々に指示することなく競売手続を進行させたこと、(ホ)関係執行吏は本件競売手続進行中クーラー以外のもののせりが談合によるものであることを知りながら落札者を決定したこと、(ヘ)右物件につき被告人Fの申し出た金額より高額の申出があつたのに不当にこれを却下したこと等幾多の瑕疵があり無効である。従つて競売手続が適法であることを前提とする談合罪は成立する余地がないのにかかわらず、談合罪の成立を認めた原判決は事実を誤認し、法令の解釈適用を誤つたものであるというのである。 しかし、原判示事実は本件競売が談合罪の成立を否定しなければならないほど違法なものではないという点を含めて、挙示の証拠により優に肯認することができ、記録を調査し、当審における事実取調の結果をあわせ しかし、原判示事実は本件競売が談合罪の成立を否定しなければならないほど違法なものではないという点を含めて、挙示の証拠により優に肯認することができ、記録を調査し、当審における事実取調の結果をあわせて検討しても、この判断を左右することはできない。 <要旨第一>まず談合罪が成立するためにはその対象となつた競売が同罪による保護に価する程度に有効なものでなけれ</要旨第一>ばならないので、競売自体が不存在であつたり、民事訴訟法上何らの効力も発生しないものであるときは談合罪もまた成立しないものであることは所論のとおりであり、原判決もこれと同旨に出たものと解される。本件の競売は民事訴訟法の規定をすべて遵守して行なわれたものではない杜撰なものではあるが、未だ所論のように本件競売が不存在ないしは当然無効であるとはなし難い。 本件競売手続の有効無効を判断するに先だつて、本件差押債権の成立、差押手続が行なわれるに至つた事情、その後の経過等を考察することとし、記録を調査するに次のことが認められる。即ち、百貨店株式会社HはIの個人経営に等しいものであつたが、Iは経営資金に窮したので原審相被告人J、被告人B、同Dらに融資を頼み、同人らは好意的にこれに応じ、Jは昭和四一年四月までに合計金二〇四二万円、Bは同年三、四月頃合計金七〇〇万円、Dは同年五月中旬頃合計金四七〇万円を貸与したところ、Iはその後これが返済について誠意ある措置をとらなかつた。 そこでJ、Dは他の債権者の債権と共に同年四月一八日金額四〇五二万円につき金銭消費貸借の公正証書を作成したが、情勢の悪化に伴い自己の債権保全について危虞し強制執行によつて回収する外はないとし、被告人Aを代理人として同年五月二六日ついに、H百貨店の商品など一切の有体動産九一三七点を差し押えた。ところで、この差押は競売の売得金 の債権保全について危虞し強制執行によつて回収する外はないとし、被告人Aを代理人として同年五月二六日ついに、H百貨店の商品など一切の有体動産九一三七点を差し押えた。ところで、この差押は競売の売得金によつて弁済を受けることと、全商品を差し押えることによりIが進んで全債務弁済に努めるに至ることを期待することの為に敢行されたものであつたが、Iはこの強制執行に反撥し同月二八日会社更生法による更生手続開始申立をなした為にI対Jらとの関係は熱いものとなり、Bも加わつて虚虚実々の争いをなすこととなつた。即ち同年五月三〇日債権者J代理人Aは差押物件を債務者において持ち出しているとして点検申請をなし、H代理人Kは会社更生法により更生手続開始の申立をなしたことを理由に強制執行中止の申請をなし、同月三〇日静岡地方裁判所沼津支部はその中止決定をなしたが、同裁判所は更らに債権者の申請により六月九日差押物の一部を除き会社更生法に基づく競売続行命令をなした。而して右点検申請による点検手続は同年六月六日A立会の下に実施したこととし異常ない旨の点検調書を作成して終了し、競売期日である同月一七日右Aは前同旨で更に点検の申請をなした為競売期日は同月二四日に延期されたが、右点検申請は同月一八日取り下げられ、同月二四日競売を実施し、売得金九九二万一〇〇〇円でこれを終了したのである。しかるところ六月一七日にAが点検申請をなしたのは債権者側では競買代金として一六〇〇万円位を用意したが、債務者側、その問屋筋ではそれ以上の金員を用意しているとの情報を得て競売手続において、せり勝つ自信がなかつた為に延引策としてなしたものであり、その後債権者側にはBも参加し買受代金として現金合計二七〇〇万円、小切手一五〇〇万円位を用意し、債務者側も現金合計三七〇〇万円位を用意して同月二四日の競売に臨んだ た為に延引策としてなしたものであり、その後債権者側にはBも参加し買受代金として現金合計二七〇〇万円、小切手一五〇〇万円位を用意し、債務者側も現金合計三七〇〇万円位を用意して同月二四日の競売に臨んだこと並びに競売期日においては右のような経緯により双方は対決的姿勢で臨み競売物件の特定や代金額はそれ程に関心事ではなく、Hの死命を制するかどうかに注目されて極めて緊迫し、当事者以外の者は介入し難くただ傍観するのみという情況下に競売手続は進行し、執行吏すらその雰囲気に巻き込まれて競売手続の終了を急ぐ状態であつたことが認められる。 よつて進んで論旨について検討するにまず本件差押が差押物を個々に確認することなく行なわれたことは、原審第八回公判における証人Lの供述等により明らかである。そして差押が債務者の占有を解いてこれを執行吏の占有に移すものであるから、差押物の特定を必要とすることは極めて明らかである。しかしながらこの「特定」は差押物に応じて種々の態様があり、本件のように百貨店内に広く陳列されている商品の場合には、執行吏が短時間にこれを一々確認することは望めないことであつて、帳簿上の商品と対照してこれを特定し、債務者の保管にまかせることもまたやむを得ないことであつて、本件差押が債権者代理人Aの承諾の下に信ずべき棚卸帳によつてなされたことを以て差押物を特定していないと非難することはできない。また本件差押が差押物多量のため夜半に及んだこと、このように延引したことにつき裁判所の許可を得ていないことも前記Lの証言で認められるが、昼間に実質的執行を終り、夥だしい物品名を記載するために夜間に及んだ本件の場合を直ちに違法とはなし難い。差押物の表示の点については個々の商品に一々差押の表示がされていないで、同商品がHの二、三階と地下に集められ保管されていたことは原審 名を記載するために夜間に及んだ本件の場合を直ちに違法とはなし難い。差押物の表示の点については個々の商品に一々差押の表示がされていないで、同商品がHの二、三階と地下に集められ保管されていたことは原審第五回公判における証人Iの供述するところであるが、これを債務者側の責任者Mの保管に任せるに当つては債権者代理人Aの同意を得て公示書により差押をなしたことを明示したのであるが、その公示がなされたか否かは、原審の最終段階に至つてにわかに争われるに至つたもので、原審証人Lは弁論再開後の第三三回公判において、公示書は自分が作成し、H四階の事務室入口を入つて右側に吊るしたか吊るさせたかして公示した旨述べており、証人Mも原審第三四回公判において、検察官の取調に対して公示書がほぼ同所にあつたと述ベたと供述し、証人Iも原審第三三回公判において社長室のベニヤ板壁に、かなり部厚い書類が下がつていたと供述していて、執行吏が深夜までかかつて作成した公示書を公示せずに引き揚げるというのは背理であるので、この公示がなされたとの前提に立つ原審認定が誤りであるとはいえない。従つて本件競売の前提となる差押が違法無効であり、これを前提とする競売続行命令が違法無効である旨の所論はすべて採用することができない。 次に昭和四一年五月三〇日付申請による差押物の点検は、実質上これを行なわなかつたことが証人Lの原審第八回、第三三回公判の供述で認められるが、その申請の動機、点検調書に立会人Aが異議なく署名していることにより、形式的点検で債務者を掣肘する目的は達せられ点検申請は債権者の満足裡に終了したと認められる。尚被告人Aから申し立てられた六月一七日付点検の申請は同月一八日取り下げられているが、これは多額の費用と日数を要することからその申請動機との関係上取り下げられたものであることは被告人 と認められる。尚被告人Aから申し立てられた六月一七日付点検の申請は同月一八日取り下げられているが、これは多額の費用と日数を要することからその申請動機との関係上取り下げられたものであることは被告人Aの検察官に対する昭和四一年一二月一〇日付供述調書により認められるところである。又競売実施の準備として執行吏は差押物の点検をなすべきであるのにこれを怠つたことは証拠上認められるが、このことの故に本件競売の無効まで招来するものではない。既に判示したとおり差押そのものが不完全なものであつたから、差押目録と現存する差押物との間に若干差異のあつたことは推認できることであり、被告人Aは原審第一六回公判において本件競売の当日債務者側から、あらたに点検の申立があつたが、G執行吏は多少のちがいは承知してくれといつてこれを却下し、競売に移つた旨、証人Mは原審第六回公判において多少の差異は差支えないとして納得づくでやつた旨、それぞれ供述していて、本件のように関係人に特段の異議もなく競売が開始されたのであつてみれば、この瑕疵もまた競売手続を無効ならしめるものとはいえない。また本件競売開始の宣言がこの競売実施の委任を受けた執行吏Lによりなされず、同人の援助依頼により同席した執行吏Gにより行なわれたことは、右Gの原審第九回公判における証言により認められる。昭和四一年に施行された執行官法はその第一九条に援助の請求および手数料について規定しているが、本件競売当時の執達吏規則にはこの種の規定を欠いていたところ、右は手数料の過大に流れることを防止する趣旨においてこの種の規定を設けなかつたものと解せられる。しかしながら経済規模の拡大に伴い多額の競売も行なわれ、また債権者、債務者の利害の対立、いわゆる競売屋の介入等の現実に対応するためには執行吏が共同してその職務を行なう必要がある つたものと解せられる。しかしながら経済規模の拡大に伴い多額の競売も行なわれ、また債権者、債務者の利害の対立、いわゆる競売屋の介入等の現実に対応するためには執行吏が共同してその職務を行なう必要がある場合もないわけではなく、このような場合執行吏規則が、受任執行吏が他の執行吏の援助を求め、援助した執行吏が受任執行吏の受ける手数料から配分を受けることまで否定しているとは解されない。 前記のような特殊事情のある本件において委任を受けた執行吏Lが、他の執行吏G、N、Oの援助を求め、これら三名が右Lと共同して競売を実施したことは何ら違法ではなく、この場合補助に当る執行吏が受任執行吏の黙示の同意の下に手続を進めることもまた違法ではない。次に競売物件の個々につき指示を欠いたことは認められるが、本件においてHの二、三階及び地下に集めてある商品という程度に指示されており、前記の事情の下で関係人より特段の異議がなく、手続が進行したのであるから個々の指示を欠いたことを以つて違法無効とはいえない。また本件競売に当つて談合が行なわれているのではないかとの推測が、執行吏に存しなかつたといえないことは、原審証人Lの第八回公判における供述にもあり、またクーラーの競売に長時間をかけ、一旦体憩後一気呵成に競売を終わつたことから、他の執行吏も推測したと解せられないではないが、前記証人Gが商品の競売に移る際「今度は一発で決めよう」といつたのは、それまでのクーラーのせりがあまりにダラダラと続いたので早くするよう注意したものであるという以上、執行吏が談合に加担していたとまではなし難い。執行吏が談合に加担したような場合は別として、執行吏が右の程度の疑いをもつたからといつて、これを以て本件競売が違法無効であるとはいえない。またクーラー以外の物品につき被告人Fの七百万円の申出後、突如と 行吏が談合に加担したような場合は別として、執行吏が右の程度の疑いをもつたからといつて、これを以て本件競売が違法無効であるとはいえない。またクーラー以外の物品につき被告人Fの七百万円の申出後、突如としてPが七百五十万円で競買する旨の申出をしたことは右Pの原審第二六回公判の証言により明らかである。しかし、右Pは所定の現金ないし有価証券の準備がなかつたためこの申出を拒否されたのであつてみれば、たとえ申出人がその準備のため暫時の猶予を乞うたにせよ、これに応ずるか否かは執行吏の裁量であつて、これを拒否したことについて債権者、債務者から何らの異議がなかつたのであつて、この処置を直ちに違法とはなし難い。このように本件差押ないし競売手続には幾多の瑕疵があり、また杜撰なものであつたけれども、競売手続を理解しているAらから現場において異議申立はなく、その後もこの点が争われたことはないのであつて、未だ所論のように本件競売手続が不存在ないし当然無効であるとは解し難く、これについてなされた談合が可罰的違法性のないものとは解することができない。論旨は理由がない。 弁護人貝塚次郎の控訴趣意中被告人Fは本件談合について幇助であり、これを共同正犯としたのは事実を誤認し、法令の適用を誤つたものであるとの主張について。 しかし、原判示事実はその挙示する証拠で優に肯認するに足り、記録に徴しても右認定を左右することはできず、法令の適用に誤りがあるともいえない。 即ち被告人Fの原審第一四回公判における供述によれば、同人はQの代理人として競売に参加してせりをなし、クーラーのせりの途中で席を立つたとき、IやRからAと談合することをもちかけられ、自分はせりの途中であるから被告人Eに頼むよう指示して席に戻り、談合をこれらの者に委せてクーラーのせりを続けているうち、右Eから話がつき で席を立つたとき、IやRからAと談合することをもちかけられ、自分はせりの途中であるから被告人Eに頼むよう指示して席に戻り、談合をこれらの者に委せてクーラーのせりを続けているうち、右Eから話がつきそうだからあまり高くせるなといわれて、被告人Aとも暗に意思を通じて小幅なせりを行なつてこれを買受け、休憩後その余の商品の競売に当つては右Eらから七百万円の指値を指示されてその申出をなしてこれを買受け、競売終了後談合により競買したことの謝礼金として三百万円を受領しEらと分配したというのであるから、談合についての共同正犯というに足り、単に幇助に止まるものではない。論旨は理由がない。 弁護人山本雅彦、熊本典道の控訴趣意第二点被告人Aの贈賄に関し法令の適用に誤りがあるとの主張について。 論旨は執行吏N、同Oは本件競売について職務権限がなく、また執行吏Lに対するものはSが同人にまで贈賄するとは思わなかつたから故意を欠き、いずれも贈賄罪は成立しないというのである。 <要旨第二>しかし、既に説示したように右N、O両執行吏は、本件競売の実施を委任された執行吏Lから、</要旨第二>執行吏Gと共に同人を援助して共同して本件執行に当ることを適法に依頼され、これを承諾して現場に臨んだこと、その職務執行の報酬としてSを通じてそれぞれ現金三万円を受け取つたことは、Lの原審第八回公判における証言、Nの検察官に対する昭和四二年一月二四日付供述調書(謄本)、Oの検察官に対する同月二六日付供述調書(謄本)、被告人Fの原審第一四回公判における供述、証人Sの原審第七回公判における供述等により明らかに認められ、また被告人Aに執行吏Lに対する贈賄の意思があつたことは、被告人Aの司法警察員に対する昭和四一年一二月二日付供述調書、証人Sの前記公判供述等により認めることができる。この点の より明らかに認められ、また被告人Aに執行吏Lに対する贈賄の意思があつたことは、被告人Aの司法警察員に対する昭和四一年一二月二日付供述調書、証人Sの前記公判供述等により認めることができる。この点の論旨は理由がない。 弁護人山本雅彦、熊本典道の被告人A、弁護人伊達秋雄、司波実の同E、弁護人貝塚次郎の同Fに関する各量刑不当の主張について。 記録により認められる本件各犯行が競売手続により公正な価格が決定されるのを妨げたものであり、被告人A事よびFは、この競売について関係執行吏にSを通じて賄賂を供与しているのであつて、裁判所により執行される債権の実現を妨げ、執行吏の職務の公正を疑わせる等極めて遺憾なことであつたといわなければならない。原判決が本件談合に当り債権者側の主役を演じた被告人Aを懲役の実刑にし、また債務者側に立つて談合に主要な役割りを演じた被告人E、同Fをその者らの前科の点を勘案して懲役の実刑に処したことも一応首肯できるものがある。しかしながら飜えつて考えると、本件はあまりに誠意を欠くH社長Iを追求するために企てられ、Aは債権者らの委嘱に答えたものと認められるところ、客観的には却つて右Iに利用された観があること、前説示のように差押および競売が全く杜撰なもので幾多の瑕疵を含むものであつたこと、本件談合の債務者側の立役者とされたE、Fの黒幕とも認められるI、競売屋R、Tにまで捜査の手が及ばなかつた(証人Uの原審第二八回公判供述による。)こと、贈賄については収賄者の科刑との均衡を考えると、何れも刑の執行を猶予する余地がある。この点の各論旨は理由がある。 よつて、刑事訴訟法第三九七条、第三八一条により原判決中被告人A、同E、同Fに関する部分を破棄し、同法第四〇〇条但書により、被告事件につき更に判決する。 原判決の認定した事実および適用した る。 よつて、刑事訴訟法第三九七条、第三八一条により原判決中被告人A、同E、同Fに関する部分を破棄し、同法第四〇〇条但書により、被告事件につき更に判決する。 原判決の認定した事実および適用した法令に従い、各懲役刑を選択した処断刑期範囲内において、被告人E、同Fを各懲役一年二月に、被告人Aを懲役一年にそれぞれ処し、刑法第二一条により原審における未決勾留日数中被告人Eに対し三五日、同F、同Aに対し各三〇日を各刑に算入することとし、情状刑の執行を猶予するのが相当であるので、被告人E、同Aに対しては刑法第二五条第一項第一号、被告人Fに対しては同条第一項第二号を適用して、この裁判確定の日から被告人E、同Fに対しては各五年間、被告人Aに対しては四年間それぞれ刑の執行を猶予することとし、刑事訴訟法第三九六条により被告人B、同C、同Dの各控訴を棄却し、訴訟費用については同法第一八一条第一項本文第一八二条により主文のとおり負担させる。 よつて、主文のとおり判決する。 (裁判長判事津田正良判事青柳文雄判事菅間英男)

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