主文 1 本件訴えのうち,内務大臣が昭和13年3月5日付け内務省告示第74号をもってした都市計画決定の取消請求に係る部分を却下する。 2 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 申立て 1 原告(請求の趣旨)(1) 内務大臣が昭和13年3月5日付け内務省告示第74号をもってした都市計画決定を取り消す。 (2) 被告は,原告らに対し,それぞれ金500万円及びこれに対する平成11年7月4日から支払済みに至るまで年5分の割合による金員を支払え。 (3) 訴訟費用は被告の負担とする。 (4) (2)につき仮執行宣言 2 被告(1) 本案前の答弁主文第1項同旨(2) 請求の趣旨に対する答弁ア原告らの請求をいずれも棄却する。 イ訴訟費用は原告らの負担とする。 第2 事案の概要 1 本件は,昭和13年にされた都市計画決定に基づく都市計画道路の区域内に土地及び建物を所有している原告らが,同土地上への建築物の建築につき都市計画法上の制限を長年にわたって受けてきたが,これは被告が都市計画事業への着手も見直しもしないまま放置してきたことによるものであり,その都市計画決定とこれに基づく建築制限の維持は違法であるとして,同決定の取消し及び国家賠償法1条に基づく慰謝料(予備的には憲法29条3項による財産権補償)の支払を請求した事案である。 2 争いのない事実等(1)ア内務大臣は,都市計画法(大正8年法律第36号)3条に基づき,昭和13年3月5日付け内務省告示第74号をもって,以下のとおり,都市計画決定をした(以下「本件処分」 争いのない事実等(1)ア内務大臣は,都市計画法(大正8年法律第36号)3条に基づき,昭和13年3月5日付け内務省告示第74号をもって,以下のとおり,都市計画決定をした(以下「本件処分」という。)。 名称 Ⅱ等大路第2類第5号a前b線(以下「本件路線」という。)起点盛岡市a町終点同市b延長(記載なし)幅員 15メートル(ただし,Ⅱ等大路第3類第19号線(c駅d線より終点に至る区間は,11メートル)イ本件処分については,幅員等が順次変更され,また後記のとおり都市計画事業が一部施行された結果,現在の計画内容は以下のとおりとなっている。 盛岡市広域都市計画道路種別及び名称幹線道路3・4・43号a前b線起点盛岡市e通f丁目終点同市dg丁目延長約1520メートル幅員 16メートル(告示年月日) 平成3年3月1日岩手県告示第171号ウ旧都市計画法においては,主務大臣が都市計画の決定主体者とされており,戦後,内務省が廃止され,都市計画事務が建設省に移管されたことに伴い,主務大臣が建設大臣に変更された後,昭和43年の都市計画法の改正(昭和43年法律第100号)により,決定主体者が都道府県知事及び市町村に変更された。本件路線は,新法の規定により,岩手県知事が決定した都市計画道路とみなされ,これに関する権限が岩手県知事に承継された。さらに,平成10年,同法施行令の改正により,一般国道,都道府県道及び自動車専用道路以外の4車線未満の道路の都市計画決定について た都市計画道路とみなされ,これに関する権限が岩手県知事に承継された。さらに,平成10年,同法施行令の改正により,一般国道,都道府県道及び自動車専用道路以外の4車線未満の道路の都市計画決定については,市町村が決定主体者に変更されたことから,本件路線(2車線)の都市計画の決定主体者は盛岡市になった。 (2) 原告らは,それぞれ持分4分の1の割合で別紙物件目録記載の各土地及び建物(以下「本件各不動産」という。)を所有しているが,そのうち,別紙物件目録記載2の土地の一部が,概ね別紙図面(添付省略)のとおり,本件路線の区域内に位置している。 別紙物件目録記載の各土地,及びこれらと順次隣接する盛岡市d一丁目h番の1ないし3の各土地(以下これらを総称して「隣接各土地」という。)の合計6筆の土地(以下,これらを総称して「本件各土地」という。)は,昭和13年当時,C(原告Aの姉,原告Bの義姉)の所有に属しており,本件各土地には,D(原告Aの実父であり,原告Bの義父に当たる。なお,Dは,本件処分がされた当時,盛岡市の市長の職にあった。)やE(原告Aの養父)外1名所有の建物が3棟存在していた。Cは,昭和23年12月27日,別紙物件目録記載の各土地をF(原告Bの夫,原告Aの兄)に贈与した。本件各土地は,その後,第二次世界大戦終了後に米軍に接収され,昭和29年にC及びFが返還を受けた際には,上記建物は2棟になっていた。Fは,同年ころ,当時建物が建てられていなかった土地のうち,別紙物件目録記載1の土地をGに,同目録記載2の土地をHにそれぞれ賃貸し,各賃借人は,それぞれ建物を建築して居住し始めた。前記G所有の建物は,平成6年に滅失するまで存在し,前記Hは,平成7年ころまで,同土地に居住していた。 そして,別紙物件目録記載の各土地 各賃借人は,それぞれ建物を建築して居住し始めた。前記G所有の建物は,平成6年に滅失するまで存在し,前記Hは,平成7年ころまで,同土地に居住していた。 そして,別紙物件目録記載の各土地については,平成4年9月9日に,原告ら,C及びIが相続により所有権を取得し,それぞれ持分4分の1で共有するに至り,また隣接各土地については,平成11年9月,Cの死亡により,原告ら以外の相続人が所有権を取得する予定である。 (3) 本件路線は,昭和37年度から昭和41年度までの間に事業化する旨の決定がされたが,国庫補助事業にならなかったために実現せず,その後,昭和45年から昭和55年まで約10年間をかけてその一部が整備されたものの,現在においても,盛岡市e通f丁目所在のJバスセンター前交差点から,同市i町所在のK小学校前交差点までの約580メートルが整備されるにとどまっている。 3 争点(1) 本件処分が抗告訴訟の対象となるか(本案前の抗弁)ア被告都市計画道路の決定は,特定の地域を計画道路とする旨の一般的処分であり,直ちに私人に対して特定された具体的権利の侵害ないし制約を生じさせるものではないから,本件処分は抗告訴訟の対象とはならない。 また,法律による建築制限は,所有権に対して,直接的な具体的変動を及ぼすものではない上,公共の福祉の実現を目的とする行政上の規制により行われているところであり,所有権に内在する制約として受忍限度内のものである。さらに,原告は,将来現実に本件土地に建築物を建築しようとする場合は,岩手県知事の許可を求め,これに対する処分を取消しの対象として訴訟を提起することにより,権利救済が図られるのであるから,本件処分が抗告訴訟の対象とならなくても何ら不都合はな 建築しようとする場合は,岩手県知事の許可を求め,これに対する処分を取消しの対象として訴訟を提起することにより,権利救済が図られるのであるから,本件処分が抗告訴訟の対象とならなくても何ら不都合はない。 イ原告ら被告は,都市計画道路の決定は,一般的処分であり,直ちに私人に対して特定された具体的権利の侵害ないし制約を生じさせるものではないと主張する。 しかし都市計画法の建築制限は,一般的処分であるといっても,広く一般国民を対象とするものではなく,一定の地域を限ってその地域内の土地利用権を制限するものであって,その区域内の個人は,都市計画決定により,現実に権利行使の制限を受けているのであるから,被告の主張は当たらない。 都市計画は,総括図,計画図及び計画書によって表示するものであり,計画図及び計画書における都市計画設備の区域の表示は,土地に関し権利を有する者が自己の権利に係る土地がこれらの区域に含まれるかどうかを容易に判断することができるものでなければならない(都市計画法14条)ことから,都市計画が告示,縦覧(同法20条)された時点においては,図面によって道路敷地の位置と範囲が明らかになり,当該道路の開設が特定の個人の権利に直接影響を与えることが具体的に明らかになる。すると,本件処分は,本件路線に係る都市計画が縦覧に供された時点において,図面により都市計画道路の敷地の位置と範囲が明らかになり,特定の個人の権利に直接影響を与えることが具体的に明らかになったものとして,具体的処分性を有するに至ったものであるから,抗告訴訟の対象となり得る。 (2) 本件処分の違法性ア原告ら(ア) 都市計画の必要性,合理性本件処分にかかる都市計画は,昭和1 るから,抗告訴訟の対象となり得る。 (2) 本件処分の違法性ア原告ら(ア) 都市計画の必要性,合理性本件処分にかかる都市計画は,昭和13年に立案されたものであるが,戦後の経済復興,高度経済成長期を経て,その当時と比べて社会的状況は一変し,盛岡市は人口の増加に伴い,都市の規模も異なり,都市機能も全く異なるものが期待されるに至っている。都市計画法3条1項は,「国及び地方公共団体は,都市の整備開発その他都市計画の適切な遂行に努めなければならない。」と規定しており,都市計画事業が常識的な期間で遂行されることを当然の前提としているというべきであるから,都市計画決定は,実態に即し,先行きの見通しと十分な計画をもって,遅滞なく着手される限りにおいてのみ,正当化されるべきである。 本件において,昭和13年に43路線,総延長約87キロメートルの盛岡都市計画街路事業が決定された際,事業及び執行年度割が決定されていたのは一路線の一部区間のみであって,他の路線については完了時期の計画は立てられておらず,昭和44年までの間,上記の計画道路のうち,合計約9キロメートルしか整備がされなかった。本件路線は,昭和45年から昭和55年まで約10年間をかけてその一部が整備されたが,同整備によっても,バスセンター前交差点からK小学校前交差点までの580メートルが整備されたにとどまり,その余は放置された。その後,現在に至るまで,本件各不動産が所在する区間について,具体的な整備計画もなく,見直しもされていないばかりか,平成12年に発表された都市計画道路整備プログラムによれば,少なくとも今後10年間は,整備される可能性がない。 (イ) 原告らの受けた権利制限 ないばかりか,平成12年に発表された都市計画道路整備プログラムによれば,少なくとも今後10年間は,整備される可能性がない。 (イ) 原告らの受けた権利制限都市計画において定められた都市計画施設(道路を含む)の区域内において建築物の建築をしようとする者は,建設省令で定めるところにより,都道府県知事の許可(市町村の事務委任規則により,盛岡市長に事務委任されている。)を受けなければならない(都市計画法53条1項本文)が,その許可の要件は,①階数が2以下で,かつ,地階を有しないこと(同法54条1項1号),②主要構造部が木造,鉄骨造り,コンクリートブロック造りその他これらに類する構造であること(同条項2号)とされている(以下「本件建築制限」)という。)。 原告らは,昭和63年ころには,相続税対策のために別紙物件目録記載1ないし3の土地の有効活用しようとして,マンションの建設を計画したが,本件建築制限に従った階層では採算がとれないため,同計画を断念せざるを得なかった。 また,原告らは,本件処分以後60年間にわたって,権利制限を受け続け,また,いつ事業が施行し始めるか分からないという不安定な権利状態におかれただけでなく,平成7年ころ,病院建設を計画した際,本件各土地を一括して買い受けることないし賃借することを希望した者が複数いたが,都市計画道路が設置予定であるとして下水道が完備されていなかったため,これを断念せざるを得なかった。 (ウ) 都市計画は,その性質上,また,予算や人員の制約上,都市計画事業の完了までに相当期間を要することが本来予定されているところではある。しかしながら,都市計画法53条による建築制限は何らの補償な 都市計画は,その性質上,また,予算や人員の制約上,都市計画事業の完了までに相当期間を要することが本来予定されているところではある。しかしながら,都市計画法53条による建築制限は何らの補償なくして財産権の行使に重大な制約を加えるものであるから,国及び地方公共団体は,都市の整備,開発その他都市計画の適切な遂行に務めなければならないのであり(都市計画法3条1項),都市計画事業が常識的な期間で遂行されることを当然の前提としているというべきである。本件路線については,別紙物件目録記載2の土地を含むK小学校以北の都市計画道路は,全く事業に着手されることなく本件処分から60年以上も放置されたままになっている。このように都市計画決定から極めて長期間が経過したにもかかわらず,事業に着手されずに放置されている場合には,都市計画の必要性及び合理性は既に失われたものというべきである。被告が60年もの間これを放置し,建築制限を維持することは,都市計画法3条に違反することは明白である。 イ被告(ア) 都市計画事業は,長期的かつ総合的な展望に立って,道路網の整備,充実を図るという観点から,広範囲にわたる事業を施行しなければならないものである上,その施行に際しては,土地の収用及び既存の建築物の移転,除去及びそれに伴う権利関係の整理等,人員並びに予算等の制約も多いため,完了までに長期間を要するのはやむを得ないところである。盛岡市においても,都市全体としての優先度等を見定めながら整備を図ってきており,都市計画道路整備の事業規模の大きさ,道路交通の持つ公共性等を考慮すると,特定の路線の一部区間が長期間事業に着手されなくても,やむを得ないものである。 また,都市計画は都市における有機的一体としての道路網の整備を目 路交通の持つ公共性等を考慮すると,特定の路線の一部区間が長期間事業に着手されなくても,やむを得ないものである。 また,都市計画は都市における有機的一体としての道路網の整備を目的とするものであり,特定の街路又はその一部を切り離して,その整備の必要性,合理性を論ずることはできない。本件都市計画については,昭和54年から見直しに着手し,昭和59年から昭和61年にかけて「盛岡都市圏総合都市交通体系調査」を実施し,2環状6放射道路を基本とした将来道路網基本計画が策定され,以後,この計画を踏まえて見直しを進めているところであるが,本件路線は,都心環状線の一部を構成し,市街地環状線(国道g号線)へ連絡する補助的幹線道路として位置づけられており,今後とも必要な路線であるから,廃止することはできない。 以上のとおり,本件路線の必要性,合理性は失われていないから,本件処分は違法ではない。 (イ) 原告らが,本件各不動産を第三者へ処分することについては法的には何ら制限がないし,その利用についても,本件不動産約692平方メートルのうち,都市計画道路の区域に属しているのは全体の約25パーセントにすぎないのであるから,同区域外の範囲の土地上に法定建坪率(60パーセント)及び容積率(200パーセント)の限度で建築物を建築することは可能であるし,同区域内であっても,都市計画法54条に定める基準の範囲内で,許可を得て,建築物を建築することは可能である。 また,本件各土地は,昭和47年度以降下水道の利用が可能となり,同年7月17日,F及びIから下水道使用開始届が被告市長あてに提出されていたものであるし,マンション建築に関する階層制限も,都市計画法のほか,建築基準法の日照規制などの制限もあること が可能となり,同年7月17日,F及びIから下水道使用開始届が被告市長あてに提出されていたものであるし,マンション建築に関する階層制限も,都市計画法のほか,建築基準法の日照規制などの制限もあることから,原告らが主張する具体的な制約と本件路線に指定されたこととの間に因果関係があるとは限らない。 (3) 国家賠償法1条に基づく慰謝料請求ア原告ら原告らは,前記(2)のとおり,権利制限を受け,被告の不作為により,法律上受忍するいわれのない精神的苦痛を被ってきたものであるから,被告に対し,国家賠償法1条に基づき,慰謝料としてそれぞれ500万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成11年7月4日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 イ被告本件処分後,原告らが権利制限を受けてきたことが国家賠償法1条の違法性を有するとの主張は争う。 (4) 憲法29条3項に基づく財産権補償ア原告ら都市計画法における建築制限は土地所有権に対する内在的制約ではなく,特定地域内の特定個人に対する権利制限であるところ,前記のとおり原告らが60年を超えてその制限を受けている本件においては,被告は,本件各土地の利用権を収用しているに等しい。したがって,原告らは,被告に対し,予備的に憲法29条3項に基づき,それぞれ前記(3)アと同額の損失補償を求める。 イ被告原告らが受けている都市計画法53条の建築制限は,前記(1)のとおり,財産権に本来内在する制約であり,関係法令に基づいて財産権に対し一般的に加えられた内在的制約であって,特定の者の財産権の行使の自由に対する特別の制限ではないから,憲法29条3項 前記(1)のとおり,財産権に本来内在する制約であり,関係法令に基づいて財産権に対し一般的に加えられた内在的制約であって,特定の者の財産権の行使の自由に対する特別の制限ではないから,憲法29条3項に基づく補償を要しない。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)(本案前の抗弁)について(1) 原告らは,請求の趣旨において,本件処分の取消しを求めているが,被告はその具体的処分性を否定し,本件処分が抗告訴訟の対象とはならないと主張するので,この点について以下検討する。 (2) 行政庁の処分が,行政事件訴訟法3条2項に規定する処分の取消しの訴えの対象となるためには,当該処分が個人の権利ないし法律上の利益に直接の影響を及ぼす法的効果を有するものであることが必要であると解される。 ア都市施設としての道路についてされる都市計画は,①道路の種類,名称,位置,区域,道路の種別及び構造が定められ,計画図,計画書などによってこれが表示された(都市計画決定)後,②市町村が,施行を開始し,事業主体,手法等を確定して,都道府県知事の認可を受けて,これを告示し(都市計画事業の認可等),③区域内の土地,建物の先買い,買い取り請求及び収用等の個別的処置がされる(都市計画事業の施行),という順序で進行するものである。この都市計画の手続からすると,都市計画決定は,その後に続く道路計画事業の認可,施行に関する基本的指針を定めた一般的,抽象的な性質のものにすぎないのであり,それ自体が,個人の権利ないし法律上の利益に直接の影響を及ぼす性質のものではないというべきである。 イまた,都市計画決定に付随して生じる建築制限や譲渡制限(都市計画法53条ないし同56条)も,区域内の土地を所有する不特定多数の者に対し,法が付与した一般的,抽象的な効果として生じ 。 イまた,都市計画決定に付随して生じる建築制限や譲渡制限(都市計画法53条ないし同56条)も,区域内の土地を所有する不特定多数の者に対し,法が付与した一般的,抽象的な効果として生じるものであって,個人の権利ないし法律上の利益に直接の影響を及ぼす性質のものではないと解される。 ウそして,アの場合には,都市計画事業の施行に際して土地収用等がなされた際に,イの場合には,建築物の建築許可等が不許可となった際に,それぞれの具体的処分によって,当該個人の権利ないし法律上の利益に直接の影響が及ぼされるに至り,その個人は,当該処分を抗告訴訟の対象として訴えを提起することによって,権利救済の目的を達することができるものというべきである。 (3) 以上によれば,都市計画決定に当たる本件処分を抗告訴訟の対象とすることはできないと解すべきであるから,本件処分の取消しを求める原告らの訴えは,不適法なものとして却下を免れない。 2 争点(3)(国家賠償法1条に基づく慰謝料請求)について(1) 国家賠償法1条1項が適用されるための要件として,公務員の行為が違法であるというためには,公務員がその職務上の法的義務に違反することが必要であると解するのが相当であるが,その義務違反の有無は,当該公務員が職務上の権限を付与された趣旨・目的,その法令上の制度が保護しようとしている法益との関連において判断されるべきであり,これを前提として,原告らの慰謝料の請求の当否について検討する。 (2)ア都市計画事業は,長期的かつ総合的な展望に立って,道路網の整備,充実をも含めた広範囲にわたる事業を施行しなければならないのであり,一般的に長期間を要するものである上,その施行に際しては,土地の収用,既存の建築物の移転・除去及びそれに伴う権利 て,道路網の整備,充実をも含めた広範囲にわたる事業を施行しなければならないのであり,一般的に長期間を要するものである上,その施行に際しては,土地の収用,既存の建築物の移転・除去及びそれに伴う権利関係の整理等を実施しなければならないため,人員並びに予算等の制約も少なくない。また,都市計画は,都市における有機的一体としての道路網の整備をその重要な目的の一つとするものであるから,おのずと都市全体に対する当該道路の優先度を見定めながら整備を進めざるを得ないが,社会環境の進展により,いかなる形で道路網を整備していくべきかの判断についても,従前と異なった考え方を採るべき場合も生じてくるのである。そうすると,結果的に特定の路線の一部区間が長期間事業に着手されないとしても,そのことから直ちに都市計画決定権者がその有する法的義務に違反しているとはいえないのであり,それを超えて,正当な理由がないにもかかわらず,都市計画事業自体が長期間全く進行していないとか,当該特定路線の必要性が見直されるべきであるのに,これが長期間放置されているとかという特別の事情がない限り,都市計画決定権者である市町村の下した判断は,許された裁量権の範囲内のものとして,違反になることはないと解するのが相当である。 イ前記アを前提として本件につき検討するに,証拠(甲26,乙22の1ないし5及び23の1ないし4)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 (ア) 本件路線は,昭和37年度から昭和41年度までの間に事業化する旨の決定がされたが,国庫補助事業にならなかったために実現せず,昭和45年から昭和55年まで約10年間をかけて,盛岡市e通f丁目所在のJバスセンター前交差点から,同市i町所在のK小学校前交差点までの約580メートルが整備されるにとど らなかったために実現せず,昭和45年から昭和55年まで約10年間をかけて,盛岡市e通f丁目所在のJバスセンター前交差点から,同市i町所在のK小学校前交差点までの約580メートルが整備されるにとどまった。その後,本件路線について,都市計画事業は認可,施行されておらず,今後も具体的な予定は立っていない。 (イ) 被告は,県の策定した盛岡広域都市計画市街化区域及び市街化調整区域計画書を踏まえ,昭和48年3月に盛岡市市勢発展総合計画,昭和61年3月に盛岡市新総合計画,平成7年3月に第3次盛岡市総合計画を策定した。 (ウ) 被告における都市計画道路の整備状況は以下のとおりである。 昭和44年 19・4パーセント(東北主要都市平均上)同 50年 21・9パーセント同 55年 27・9パーセント同 59年 29・0パーセント同 60年 30・4パーセント平成 2年 41・2パーセント平成 5年 42・5パーセント平成12年 48 パーセント(エ) 被告は,都市計画について,昭和54年から見直しに着手し,昭和59年から昭和61年にかけて「盛岡都市圏総合都市交通体系調査」を実施して,2環状6放射道路を基本とした将来道路網基本計画を策定した。以後,被告は,同計画を踏まえて見直しを進めており,平成5年4月末現在において,見直し対象路線40路線のうち18路線が変更済みとなっている。しかし,本件路線は,都心環状線の一部を構成し,かつ,上記2環状線道路を連絡する補助的幹線道路として位置づけられていて,その重要性が高いことから 象路線40路線のうち18路線が変更済みとなっている。しかし,本件路線は,都心環状線の一部を構成し,かつ,上記2環状線道路を連絡する補助的幹線道路として位置づけられていて,その重要性が高いことから,見直しの対象とはされていない。 ウ以上のとおり,本件路線は,都市計画道路の一部として決定されてから既に60年以上が経過している上,今後直ちに事業化される見込みはないものの,被告は,都市計画道路全体について,見直しを漸次実施した結果,本件路線の重要性をも検討し,その必要性を確認した上で,変更を行わなかったこと,都市計画事業を全体としてみれば,被告は,漸次整備を進行させてきていることの各事実が認められる。 (2) 以上の諸事情を総合考慮すると,都市計画が60年以上の長期間にわたって事業化されるに至っていないことを考慮に入れても,その状態は未だ被告に認められる裁量権の範囲内に止まっているというべきであり,本件都市計画の実施又は変更について権限を有している公務員がその職務上の法的義務に違反したものと認めることはできない。 したがって,原告らの国家賠償法1条に基づく請求は理由がない。 3 争点(4)(財産権補償)について公共のためにする財産権の制限が,社会生活上一般に受忍すべきものとされる限度を超え,特定の個人に対し特別の財産上の犠牲を強いるものである場合には,その個人は,憲法29条3項を根拠としてその補償請求をすることができるものと解するのが相当である。 一般に都市計画法53条の建築制限は,都市内に位置する不動産の所有権を有する者が同然に負担すべき内在的制約の範疇に属するものと解すべきところ,原告らが別紙物件目録記載1ないし3の土地を第三者へ処分することは,法的に何ら制限がない上,都市計画道路の る不動産の所有権を有する者が同然に負担すべき内在的制約の範疇に属するものと解すべきところ,原告らが別紙物件目録記載1ないし3の土地を第三者へ処分することは,法的に何ら制限がない上,都市計画道路の区域に属している土地であっても,都市計画法54条に定める基準の範囲内で,都道府県知事の許可を得て,建築物を建築することは可能であることからすると,本件処分による権利制限の程度が収用等の場合と同視すべき程に強度なものであるということはできない。そうすると,本件各不動産に対する建築制限は,公共の福祉の実現のために社会生活上一般に受忍すべきものとされる限度を未だ超えるものではないというべきである。 よって,この点に関する原告らの主張も理由がない。 4 以上のとおりであるから,本件訴えのうち,本件処分の取消しを求める部分は不適法であるから,これを却下することとし,その余の請求については,いずれも理由がないので,これを棄却することとし,訴訟費用の負担について,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 盛岡地方裁判所第2民事部裁判長裁判官髙橋譲裁判官細島秀勝裁判官菊池浩也は,出張中につき署名・押印することができない。 裁判長裁判官髙橋譲・(別紙)物件目録 1 所在盛岡市df丁目地番 j番j地目宅地地積 198.34平方メートル 2 所在盛岡市d一丁目地番 j番k地目宅地 df丁目地番 j番j地目宅地地積 198.34平方メートル 2 所在盛岡市d一丁目地番 j番k地目宅地地積 265.45平方メートル 3 所在盛岡市d一丁目地番 j番l地目宅地地積 228.53平方メートル 4 所在盛岡市df丁目j番地のl家屋番号 j番l種類居宅構造木造瓦葺平家建床面積 77.68平方メートル以上
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