(原審・東京地方裁判所平成7年(行ウ)第141号固定資産評価審査決定取消請求事件(原審言渡日平成11年3月30日)) 主文 1 原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。 2 被控訴人の請求を棄却する。 3 訴訟費用は,第1,2審とも,被控訴人の負担とする。 事実 第1 当事者の求める裁判 1 控訴人主文と同旨 2 被控訴人本件控訴を棄却する。 第2 事案の概要(本判決における略語は,原判決9頁2行目の次に行を改めて「 なお,関係法令・条例・通達等は,いずれも本件当時のものである。」を,同10頁11行目の「「」の次に「「」をそれぞれ加えるほかは,原判決別紙「略語一覧」に記載のとおりである。)事案の概要は,次のとおり訂正し,又は付加するほかは,原判決の「第二事案の概要」に記載のとおりであるから,これをここに引用する。 1 原判決本文3頁10行目の「被告」を「都知事」と,同11行目の「として、」を「としてした審査の申出に対して被控訴人がした同審査申出を棄却する旨の」とそれぞれ改め,同5頁8行目の次に行を改めて次のとおり加える。 「(当審における主張) 1 控訴人(1) 「適正な時価」の算定基準日について法349条1項は,「登録価格」を基準年度に係る賦課期日における価格と規定しているのではなく,あくまで「課税標準」を基準年度に係る賦課期日における価格と規定しているにすぎない。そうすると,「登録価格」と「課税標準」とが乖離している現行法の下では,審理の対象は,あくまで,「課税標準」が賦課期日の価格として適正か否かに限定されるべきである。 また,同項は,課税標準を「基準年度に係る賦課期日における価格」と規定しているのではなく,「基準年度に係る賦課期日における価格で土地課税台帳に登録さ の価格として適正か否かに限定されるべきである。 また,同項は,課税標準を「基準年度に係る賦課期日における価格」と規定しているのではなく,「基準年度に係る賦課期日における価格で土地課税台帳に登録されたもの」と規定している。これは,法が各市町村長に土地課税台帳に価格を登録するに当たり種々の手続を履践するよう求めていることから,課税標準を単に賦課期日における価格ではなく,法の要求する種々の手続を履践した上で賦課期日に課税台帳に登録することができる価格とする趣旨と解される。そうすると,「適正な時価」を求めるに当たり,賦課期日を算定基準日とする必要はなく,種々の手続を履践して賦課期日に課税台帳に登録可能な時点を算定基準日とすることで足りることになる。 (2) 本件標準宅地ケの価格が適正であることについて本件鑑定評価書ケは,不動産鑑定士の鑑定評価であるから,明らかな誤りが認められない限り,その評価額及び価格変動率は専門家の判断として尊重されるべきである。また,基準値価格に基づく比準価格は規範性を有するとしても100パーセントの規範性があるとはいえないし,仮に100パーセントの規範性があるとしても,「適正な時価」とは,正常な条件の下における取引価格であるから,10パーセントから20パーセント程度の幅をもった価格であるというべきであり,本件標準宅地ケの価格は「適正な時価」の範囲内にある。 2 被控訴人(1) 「適正な時価」の算定基準日について法は,固定資産税の賦課期日は当該年度の初日の属する年の1月1日とすると定め(359条),また,土地に対する基準年度の固定資産税の課税標準は当該土地の基準年度に係る賦課期日における価格とすると定めている(349条1項)。したがって,平成6年度の固定資産税の賦課期日は同年 (359条),また,土地に対する基準年度の固定資産税の課税標準は当該土地の基準年度に係る賦課期日における価格とすると定めている(349条1項)。したがって,平成6年度の固定資産税の賦課期日は同年1月1日における価格(適正な時価)である。すなわち,平成6年度の固定資産税の課税標準たる価格は,同年1月1日現在における適正な時価でなければならない。 (2) 本件標準宅地ケの価格が適正でないことについて本件鑑定評価書ケは,不動産鑑定士という専門家の判断であるとしても,無条件でそれを是認することはできない。特に近隣の地価公示価格,基準地価格等と明らかな相違がある場合には,これを是認することはできない。 また,登録価格の設定により個別の具体的・確定的な固定資産税額が決定されるものであるから,登録価格の数値が10パーセントから20パーセント程度もの幅をもった価格でよいという主張は,全くの暴論である。」 2 原判決別紙「価格決定の経緯及び根拠」2頁6行目の「サ」及び同12行目の「ケ」の次に「(1平方メートル当たり。以下同じ)」をそれぞれ加え,同5頁3行目から同4行目にかけての「〇・八七」を「0・95」と改める。 3 原判決別紙「被告の主張(一)」20頁2行目の「22日」を「21日」と改める。 第3 証拠本件記録中の書証目録及び証人等目録に記載のとおりであるから,これをここに引用する。 理由 1 当裁判所は,被控訴人の本件請求は理由がないから棄却すべきものと判断する。その理由は,次のとおり訂正し,付加し,又は削除するほかは,原判決の「第三当裁判所の判断」に記載のとおりであるから,これをここに引用する。 (1) 原判決本文6頁2行目の「判断は」の次に「,次のとおり加えるほかは」を,同行目から同3行目にかけての「枠組み」の次に 第三当裁判所の判断」に記載のとおりであるから,これをここに引用する。 (1) 原判決本文6頁2行目の「判断は」の次に「,次のとおり加えるほかは」を,同行目から同3行目にかけての「枠組み」の次に「について」を,同行目の次に行を改めて「 なお,控訴人は,法349条1項は,登録価格を基準年度に係る賦課期日における価格と規定しているのではなく,あくまで課税標準を基準年度に係る賦課期日における価格と規定しているにすぎないから,登録価格と課税標準とが乖離している現行法の下では,審理の対象は,登録価格の正当性ではなく,課税標準が賦課期日の価格として適正か否かである旨主張する。しかしながら,同条項は,基準年度の土地又は家屋に対して課する基準年度の固定資産税の課税標準を,当該土地又は家屋の基準年度に係る賦課期日における価格で土地課税台帳等に登録されたものとすると定めており,登録価格を課税標準とする趣旨であることは明らかである。また,本件訴えは,都知事が決定した登録価格についての審査請求を棄却した本件審査決定の一部取消しを求めるものであるから,審理の対象が登録価格の正当性であることは当然である。控訴人の主張は,採用することができない。」をそれぞれ加え,同8行目から同7頁5行目までを次のとおり改める。 「 以上のとおり,本件標準宅地ケの路線価を1450万点,本件標準宅地サの路線価を2370万点とし,前記控訴人の算出方式に当てはめて本件土地の適正な時価を求めると,控訴人主張に係る本件価格となる。 四以上によれば,控訴人のした本件審査決定に違法はなく,被控訴人の本件請求は理由がない。」(2) 原判決別紙「適正な時価と登録価格の違法判断の枠組みについて」についてア 7頁8行目の「から」の次に「(388条1項,389条1項,403条1項) ,被控訴人の本件請求は理由がない。」(2) 原判決別紙「適正な時価と登録価格の違法判断の枠組みについて」についてア 7頁8行目の「から」の次に「(388条1項,389条1項,403条1項)」を加える。 イ 8頁1行目の「評価をする」を「算定する」と改める。 ウ 16頁9行目の「)」の次に「及び登録価格が賦課期日における客観的時価を上回っていないか否か」を加える。 (3) 原判決別紙「本件標準宅地ケの価格について」についてア 2頁2行目の「取引事例地」から3頁6行目末尾までを「取引事例法による比準価格を算出するに当たっては,全取引事例地につき事情補正を100分の100,取引事例地b及びdの平成2年12月並びに取引事例地eの同年7月の各取引時点と平成4年1月1日の価格時点との間の時点修正率をいずれも100分の93,事例地の個別的要因の標準化補正の率を取引事例地bにつき102分の100,取引事例地d及びeにつきいずれも100分の100,地域格差補正率を取引事例地bにつき86分の100,取引事例地dにつき65分の100,取引事例地eにつき93分の100とし,これらの率による補正等を加えた結果,取引事例地bから2730万円,取引事例地dから2700万円,取引事例地eから2720万円との試算価格を得,これら取引事例地はいずれも近隣地域又は類似地域内にあることから,これらの試算価格を相加平均した額とほぼ同額である2720万円をもって本件標準宅地ケの取引事例法による比準価格としたこと,収益還元法による収益価格については,支払賃料等を資料とし,還元利回りを3.5パーセントとして算出し,その結果2030万円という数値を得たこと,基準地の価格から求められる比準価格を算出するに当たっては,基準地を基準地番号中央Bの土地とし,その平成3年基準値 還元利回りを3.5パーセントとして算出し,その結果2030万円という数値を得たこと,基準地の価格から求められる比準価格を算出するに当たっては,基準地を基準地番号中央Bの土地とし,その平成3年基準値価格(平成3年7月1日時点における評価額)である2270万円を基礎とし,これに時点修正率を100分の94,個別的要因の標準化補正率を100分の100,地域格差補正率を87分の100とし,これらの率による補正等を加えた結果2450万円の比準価格を得たこと,これらの比準価格等から,取引事例法による比準価格は多数の信頼度の高い取引事例から導かれた実勢を反映した価格である点,収益価格は理論的な価格であり,近年における地価上昇が顕著であるが,賃料の上昇が地価の上昇より遅れがちなため収益価格は低額になる傾向がある点及び基準地の価格から求められた比準価格との均衡にも十分留意しながら,結論として,取引事例法による比準価格を重視した上,収益価格を酌量して鑑定評価額を2450万円と査定したことが認められる。 二本件鑑定評価書ケの信用性について」と改める。 イ 9頁2行目から11頁11行目までを次のとおり改める。 「5 前記1記載④の点につき検討するに,本件鑑定評価書ケは,平成4年3月25日を鑑定評価時点として本件標準宅地ケの同年1月1日時点の価格を鑑定評価したものであるから,同年7月1日時点の基準地価格を参考とすることは時間的に不可能であり,この点を根拠として鑑定の不当をいうことはできない。また,前記一のとおり,本件標準宅地ケの鑑定評価額は,取引事例法による比準価格,収益還元法による収益価格及び基準地の価格から求められる比準価格を勘案して査定されたものであって,基準地価格から求められた比準価格が直ちに鑑定評価額とされているものではないことが明らかである。し 格,収益還元法による収益価格及び基準地の価格から求められる比準価格を勘案して査定されたものであって,基準地価格から求められた比準価格が直ちに鑑定評価額とされているものではないことが明らかである。したがって,被控訴人の主張は,採用することができない。 6 前記1記載⑤の点に係る被控訴人の主張は,平成4年7月1日時点あるいは平成5年1月1日時点における価格決定についての不満をいうものにすぎず,本件鑑定評価書ケの正確性,信用性を疑わせるものとは認められない。」ウ 12頁10行目の「当該不動産鑑定士は、」の次に「C地区の地価がいわゆるバブル崩壊に伴い平成3年秋以降下落し始めたものの,平成4年1月にいわゆる土地融資の総量規制が解除され,金利の低下傾向がみられたこと及び」を加える。 エ 13頁5行目から同11行目までを次のとおり改める。 「2 被控訴人は,本件鑑定評価書ケが鑑定資料の一つとして用いている基準地番号中央Bの土地の公示価格が平成3年7月1日時点では2270万円,平成4年7月1日時点では2000万円であり,その間の下落率は11.89パーセントであるから,平成4年1月1日から同年7月1日までの間における下落率は,その2分の1の5.95パーセントとなるとし,これに比較して,前記4.1パーセントの時点修正率は過小にすぎる旨主張する。 しかしながら,一般的に地価下落率は土地の立地条件,形状等によって異なるものであるから,基準地番号中央Bの土地の下落率が直ちに本件標準宅地ケの下落率と同一であると認めることはできない。ちなみに,証拠(本件鑑定評価書ケ及び平成3年基準地価格)によれば,本件標準宅地ケ及び基準地番号中央Bの土地はいずれも中高層の店舗,事務所ビルが建ち並ぶ商業地域にあるが,本件標準宅地ケから地下鉄C駅までの距 証拠(本件鑑定評価書ケ及び平成3年基準地価格)によれば,本件標準宅地ケ及び基準地番号中央Bの土地はいずれも中高層の店舗,事務所ビルが建ち並ぶ商業地域にあるが,本件標準宅地ケから地下鉄C駅までの距離は50メートルであるのに対し,基準地番号中央Bの土地から同駅までの距離は80メートルであること等両土地間に立地条件に差異のあることが認められる。被控訴人の上記主張は,採用することができない。 3 以上によれば,本件標準宅地ケの平成4年7月1日時点の価格を2340万円としたことは相当であって,これが違法であるということはできない。」オ 17頁11行目の「別表A3」を「原判決別紙原告の主張(三)別表A3(以下「別表A3」という。なお,以下,同別紙添付の各別表は,同様に略記する。)」と改める。 カ 22頁2行目から同3行目にかけての「精確性」を「正確性」と改め,同9行目の「原告は」の次に「,別表A2記載のとおり」を加え,同10行目から同11行目にかけての「、別表A2記載の方法により」を削る。 キ 23頁9行目の「比較して、」を「比較し,平成5年1月1日から平成6年1月1日までの間の平均」と改める。 ク 25頁8行目の「修正」の次に「及び相続税路線価との調整」を加える。 ケ 26頁2行目から28頁8行目までを次のとおり改める。 「 以上によれば,都知事が本件標準宅地ケの平成4年7月1日における価格2340万円に同日から平成5年1月1日までの地価変動に応じた修正及び相続税路線価との調整を勘案してマイナス11.1パーセントの時点修正をし,さらに,その7割に相当する価格を下回る1450万円をもって本件標準宅地ケの平成6年1月1日(賦課期日)時点における価格とし,これに基づく路線価を1450万点としたことにはなお合理性が認められるとい さらに,その7割に相当する価格を下回る1450万円をもって本件標準宅地ケの平成6年1月1日(賦課期日)時点における価格とし,これに基づく路線価を1450万点としたことにはなお合理性が認められるというべきである。」(4) 原判決別紙「本件標準宅地サの価格について」についてア 2頁1行目から同2行目にかけての「取引事例地」から3頁5行目末尾までを「取引事例法による比準価格を算出するに当たっては,事情補正を取引事例地1及び3につきいずれも100分の100,取引事例地2につき130分の100,取引事例地1及び3の平成3年3月並びに取引事例地2の平成2年11月の各取引時点と平成4年1月1日の価格時点との間の時点修正率を取引事例地1及び2につきいずれも100分の96,取引事例地3につき100の93,事例地の個別的要因の標準化補正の率を取引事例地1及び3につきいずれも103分の100,取引事例地2につき100分の100,地域格差補正率を取引事例地1につき70分の100,取引事例地2につき60分の100,取引事例地3につき75分の100とし,これらの率による補正等を加えた結果,取引事例地1から4510万円,取引事例地2から4530万円,取引事例地3から4470万円との試算価格を得,これらの試算価格は近似しており相互に妥当性が検証されているとして,これらの試算価格のおおむね中庸値である4500万円をもって本件標準宅地サの取引事例法による比準価格としたこと,収益還元法による収益価格については,支払賃料等を資料とし,還元利回りを3.5パーセントとして算出し,その結果3390万円という数値を得たこと,基準地の価格から求められる比準価格を算出するに当たっては,基準地を基準地番号中央Dの土地とし,その平成3年基準値価格(平成3年7月1日時点における 算出し,その結果3390万円という数値を得たこと,基準地の価格から求められる比準価格を算出するに当たっては,基準地を基準地番号中央Dの土地とし,その平成3年基準値価格(平成3年7月1日時点における評価額)である3800万円を基礎とし,これに時点修正率を100分の96,個別的要因の標準化補正率を100分の100,地域格差補正率を88分の100とし,これらの率による補正等を加えた結果4150万円の比準価格を得たこと,そして,これらの比準価格等から,取引事例法による比準価格は市場の実態を反映した実証的価格である点や収益価格は元本である地価の上昇に比較して賃料の持つ遅行効により相対的に低位に求められることなどから,最近における地価動向を十分考慮の上,市場の実態を反映した取引事例法による比準価格を中心に,収益価格を考慮し,基準値価格から求められた比準価格との均衡に留意の上鑑定評価額を4150万円と査定したことが認められる。 二本件鑑定評価書サの信用性について」と改める。 イ 20頁3行目から同4行目にかけての「精確性」を「正確性」と改め,同10行目の「原告は」の次に「,別表A2記載のとおり」を加え,同11行目から21頁1行目にかけての「、別表A2記載の方法により」を削る。 ウ 21頁10行目の「比較して、」を「比較し,平成5年1月1日から平成6年1月1日までの間の平均」と改める。 エ 23頁9行目の「修正」の次に「及び相続税路線価との調整」を加える。 オ 24頁3行目の「五」を「六」と改める。 2 よって,当裁判所の上記判断と異なる原判決は一部不当であり,本件控訴は理由があるから,原判決中控訴人敗訴部分を取り消し,被控訴人の本件請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第20民事部裁判長裁判官 は一部不当であり,本件控訴は理由があるから,原判決中控訴人敗訴部分を取り消し,被控訴人の本件請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第20民事部裁判長裁判官石井健吾裁判官大橋弘裁判官植垣勝裕
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