平成20(ワ)460 温泉採取権確認

裁判年月日・裁判所
平成21年4月28日 大分地方裁判所
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判決文本文6,407 文字)

- 1 -主文 別紙温泉台帳記載の温泉の温泉採取権が原告にあることを確認する。 訴訟費用は被告らの負担とする。 事実及び理由 第1請求主文同旨第2事案の概要本件は,財団法人である原告が,その使用している温泉の採取権が原告にあることの確認を求めたのに対し,温泉台帳上温泉採取権者とされている被告らが,これを争った事案である。 争いのない事実等(特記しない限り当事者間に争いがない。)(1)原告は,昭和53年4月1日に設立された財団法人であり,肩書地で有料老人ホーム「Aホーム」を運営している。 (2)原告の初代理事長はBであった。 (3)Bは,別紙温泉台帳目録記載の温泉(以下「本件温泉」という。 また,本件温泉の採取権を「本件温泉権」という。)につき,昭和51年12月16日指令環管第888号により掘さくの許可を受け,昭和52年12月10日工事に着工し,昭和53年2月4日に工事が終了し,温泉が湧出するに至った。同工事は,C工業が135万円で請け負った。 (4)温泉の湧出した土地は,別府市大字(以下略)所在の山林(3769平方メートル。以下「本件土地」という。)であり,当時の所有者はBである。 (5)昭和56年9月7日,Bは死亡した。Bの相続人は,妻であるDと子供である被告ら両名である。 平成6年6月19日,Dは死亡した。Dの相続人は,被告ら両名で- 2 -ある。 (甲14の2,弁論の全趣旨) 争点 本件の争点は,本件温泉権を原告が取得したか否かである。 (1)原告の主張アBは,温泉を利用して,有料老人ホームを経営すること,その経営主体として財団法人を設立することを企図し,昭和52年5月29日から,計画を具体化するに至った。 その一環として本件温泉の掘さくが実施された。 イBは,財団法人として原告が設立許可さ こと,その経営主体として財団法人を設立することを企図し,昭和52年5月29日から,計画を具体化するに至った。 その一環として本件温泉の掘さくが実施された。 イBは,財団法人として原告が設立許可されると,本件土地を昭和53年6月8日に原告へ寄附し,合わせて本件温泉権を掘さく工事代金を原告が支払うことを条件に原告に譲渡した。 ウ昭和55年2月28日開催の原告の理事会において,B及び被告Eらも出席した上で,Bが理事を退任して会長に就任することが決められたが,その際,第4号議案「事業経過報告に関する件」が審議され,創業準備期間における上記温泉掘さく工事代金135万円の出捐が承認されている。 エよって,本件温泉権は原告に譲渡されたものである。 ( )被告らの主張 ア原告の主張アは否認する。 Bは,DがBの所有する本件土地やその周辺の土地及び同所に所在する建物を用いて経営していた旅館F荘の悲願として温泉を掘った。 原告の設立もBの資産の有効活用の一環として実行したものであり,旅館F荘の経営の一助となればとの考えであった。 イ原告の主張イのうち,本件土地が原告に寄附されていることは認め,本件温泉権が掘さく工事代金を原告が支払うことを条件に譲渡- 3 -されたことは否認する。 ウ原告の主張ウは認める。 エ被告らの反論135万円の支払は,本件温泉権の売買代金の支払ではなく,温泉利用権の権利金的なものに過ぎない。 原告は,被告らに対し,昭和55年から平成9年まで,旅館F荘の土地建物の賃借料として月20万円を支払っていた。原告は,旅館F荘の土地建物はほとんど使用していなかったから,その対価は主として本件温泉の利用の対価だった。 「温泉採取権者変更届」(甲4)にBの署名押印がないことは,原告主張の合意がないことを示している。 第3争点に 建物はほとんど使用していなかったから,その対価は主として本件温泉の利用の対価だった。 「温泉採取権者変更届」(甲4)にBの署名押印がないことは,原告主張の合意がないことを示している。 第3争点に対する判断 前記争いのない事実等に証拠(甲1ないし3,5ないし7,9ないし16,乙1,5,証人G,被告E本人。枝番がある場合は特記しない限りそれら全てを含む。以下同じ。)及び弁論の全趣旨を総合すると,本件に関し以下の事実が認められる。 ( )Bは,本件土地及びその周辺の土地と同所(具体的には本件土地 の隣地)に所在する建物を所有していた。 Dは,昭和39年ころ,これら土地建物を利用して旅館F荘(客室5部屋,定員12名)の営業を始めた。 旅館F荘の使用する温泉は,H株式会社から受湯していたものであった。 旅館F荘の営業は昭和51年ころまでには休業していた。 (甲3,9,14,乙5,証人G,被告E本人,弁論の全趣旨)( )昭和51年ころまでに,上記土地建物の利用方法として,老人ホ ームとクリニックを造り,リラクゼーション用としての旅館F荘と合- 4 -わせ活用する構想が持ち上がり,BとDは,Iサービスセンター(以下「センター」という。)のGと会って,同人が実務を行って前記構想を進めることとした。 (乙1,証人G,弁論の全趣旨)(3)Bは,本件土地につき,昭和51年12月16日指令環管第888号により,利用の目的公共浴用(旅館F荘)休業中として,温泉の掘さくの許可を受け,昭和52年12月10日工事に着工し,昭和53年2月4日に工事が終了し,本件温泉が湧出するに至った。同掘さく工事は,C工業が135万円で請け負った。同代金は,昭和52年12月及び昭和53年1月に,原告設立や本件温泉の掘さく等の実務に携わっていたセンターが支払った。 な 件温泉が湧出するに至った。同掘さく工事は,C工業が135万円で請け負った。同代金は,昭和52年12月及び昭和53年1月に,原告設立や本件温泉の掘さく等の実務に携わっていたセンターが支払った。 なお,本件温泉を掘さくすることは,Dが強く希望したものであった。 (甲2,7,乙1,証人G,被告E本人)(4)Bは,昭和53年4月1日に有料老人ホーム「Aホーム」の設置,運営管理をする財団法人として原告を設立し,初代理事長となった。 (甲1,弁論の全趣旨)(5)本件土地は,昭和53年6月8日,Bから原告に寄附された。この際には,特に契約書等が作成されることはなく,また,本件温泉権を本件土地と別個に取り扱う旨の合意や,本件温泉の所在地を鉱泉地として分筆するなどの手続はされていない。 (甲3,証人G)( )本件温泉につき,昭和54年3月2日付けの,九州大学温泉治療 学研究所作成の温泉分析書別表が存在するが,同表には,源泉名が原告と,温泉分析申請者が原告理事長Bと,それぞれ記載されている。 (甲5)( )昭和54年ころ,Gは,老人ホームの入居者募集に役立てるため, BとDに対し,本件温泉権の温泉採取権者変更届と温泉利用許可申請- 5 -書に,あらかじめGにおいて必要事項を記入の上,押印を求めたが,最終的に押印してもらうことはできなかった。 (甲4,5,証人G)( )昭和55年2月28日,B,被告E,Gら理事6名が出席して原 告の理事会にが開催され,創業期間昭和52年5月29日から昭和53年3月31日までの経費として創業費840万8026円,備品23万円,電話加入権8万3406円,建設仮勘定121万3130円とともに温泉権135万円が承認された。この理事会の内容を記した議事録には,B及び被告Eらが記名押印している。これら経費は,昭 ,備品23万円,電話加入権8万3406円,建設仮勘定121万3130円とともに温泉権135万円が承認された。この理事会の内容を記した議事録には,B及び被告Eらが記名押印している。これら経費は,昭和55年3月5日に,原告からセンターに支払われた。 なお,この理事会で,原告の理事長がBからJ銀行OBに替わり,多額の債務を負っていた原告は,J銀行とK組の支援を受けて建て直しを図ることとなった。 (甲6,乙1,証人G,被告E本人)( )原告の帳簿(創業期支出自昭和52年5月29日至昭和53 年3月31日)には,創業期間支出として,前記( )記載の経費が記 載されている。 (甲10)()原告の昭和55年5月28日付会計監査結果報告には,原告の監 事が,その他固定資産として温泉権135万円を計上する貸借対照表や,摘要所在地本件土地,金額135万円,備考C工業と記載されている温泉権内訳表を前提に,会計諸帳簿及び証拠書類が適正であると報告している。 (甲11)()原告の総勘定元帳の記載上,遅くとも昭和53年4月以降,旅館 F荘の家賃月20万円の支払が計上されており,当該家賃の支払いは平成8年12月までD(Dの死後は相続人である被告ら)に対し支払- 6 -われた。また,少なくとも,昭和53年6月から昭和55年7月までの間は,これとは別途にB宛にクリニックの地代月10万円の支払が計上されている。 (甲12,弁論の全趣旨)()Bは昭和56年9月7日死亡し,旅館F荘の土地建物等はDが相 続した。 平成6年6月19日,Dは死亡した。Dの相続人は,被告ら両名であった。 (甲14の2,弁論の全趣旨)(13)被告ら両名は,旅館F荘の土地建物(本件土地は含まない。)を平成9年1月に学校法人L学園に売却した。 そのころ, 死亡した。Dの相続人は,被告ら両名であった。 (甲14の2,弁論の全趣旨)(13)被告ら両名は,旅館F荘の土地建物(本件土地は含まない。)を平成9年1月に学校法人L学園に売却した。 そのころ,原告は,前記家賃の支払を止めた。 (甲13,14の1,弁論の全趣旨)(14)本件温泉は,原告が運営する有料法人ホームが建っている本件土地上にあり,原告が利用している。 本件温泉は,旅館F荘の土地建物からは離れた位置にあるが,旅館F荘も本件温泉から温泉を引いていた。ただし,旅館F荘が旅館として再開することはなく,BやDらが別荘として利用していた。 (甲15,16,証人G,被告E本人)(15)現在,本件温泉権にかかる温泉台帳には,別紙温泉台帳記載のとおりの記載があり,平成14年4月24日付でBから被告らへ温泉採取権者が変更されている。 (甲2)2(1)以上の認定事実を前提に検討するに,本件温泉は,掘さく許可を受けたのはBであるが,後に原告に寄附された本件土地上にあり,その本件土地では原告が有料老人ホームを運営し,本件温泉を利用していること,本件温泉は昭和52年末から昭和53年初めにかけて135万円で掘さくされたところ,原告は昭和53年に設立され,昭和55年2月28日のB,被告EやGも参加した原告理事会において,昭- 7 -和52年5月以降の創業期間の経費の一部として温泉権についての支出135万円が承認されて,これを立て替えていたセンターに対し後に支払われたこと,原告の会計諸帳簿上も,温泉権を評価135万円の固定資産として計上して取り扱っていること,本件温泉の温泉分析書別表に温泉分析申請者が原告理事長Bと,源泉名が原告とあり,原告名で温泉分析を依頼していること,現に本件温泉を原告が使用していることが認められる。してみると,本件温泉権は, と,本件温泉の温泉分析書別表に温泉分析申請者が原告理事長Bと,源泉名が原告とあり,原告名で温泉分析を依頼していること,現に本件温泉を原告が使用していることが認められる。してみると,本件温泉権は,遅くとも原告設立の段階においては,原告が所有し,その運営する有料老人ホームで使用するものとされたものであり,その後,初代理事長であったBや被告Eも出席した原告理事会で掘さく費用の支払を承認することで,原告として本件温泉権を取得することを手続上明確にしたものといえる。してみると,本件土地が原告に寄附された昭和53年6月8日ころ,原告とBの間で,本件温泉権を掘さく工事代金を原告が支払うことを条件に譲渡する旨の合意がされたというべきであり,かつ,工事代金支払という条件は後日履行されたといえるから,本件温泉権は原告が有しているものというべきである。 (2)この点,被告らは,そもそも本件温泉は,旅館F荘のために掘さくしたものであると主張し,Dが本件温泉の掘さくを強く望んだことは前記1(3)のとおりである。しかし,これは,本件温泉の掘さくについての当初の動機を示すに過ぎず,前記認定を左右するものではない。 また,被告らは,原告のいう温泉権とは,温泉の利用権であり,135万円は権利金的なものに過ぎないと主張する。しかし,135万円は,まさに本件温泉の掘さく代金に相当すること,本件温泉の位置関係や利用実態からしても,原告が保有する本件温泉に関する権利とは,まさに温泉の採取権であると考えるべきである。 - 8 -さらに,被告らは,原告は,昭和55年から平成9年まで,旅館F荘の土地建物の賃借料として月20万円を支払っていたが,旅館F荘の土地建物はほとんど使用していなかったから,これは主として本件温泉権の利用の対価だったと主張し,前記認定によれば,遅くとも で,旅館F荘の土地建物の賃借料として月20万円を支払っていたが,旅館F荘の土地建物はほとんど使用していなかったから,これは主として本件温泉権の利用の対価だったと主張し,前記認定によれば,遅くとも昭和53年4月以降,旅館F荘の家賃月20万円の支払が,また,少なくとも,昭和53年6月から昭和55年7月までの間は,これとは別途にB宛にクリニックの地代月10万円の支払がされていること,Bは昭和56年9月7日死亡し,旅館F荘の建物はDが相続し,さらにDの死後,被告ら両名が相続し,前記家賃は引き続き相続人に支払われていたこと,被告ら両名は,旅館F荘の土地建物を平成9年1月に学校法人L学園に売却し,そのころ,原告は,家賃の支払を止めたことが認められる。原告も,当該家賃等の支払については,Bの功労に報いるための賃料名下での支払であったなどと主張しており,本件証拠によっても,その支払の具体的根拠や金額の根拠は必ずしも明らかではないけれども,前記認定によれば,原告では,これらの金銭の支払を一貫して賃借料として処理しており,また,これが本件温泉権の利用の対価であることを認めるに足りる証拠はないから,前記認定を左右するものではない。 さらに,被告らは,「温泉採取権者変更届」にBの署名押印がないこと(甲4)を指摘し,同変更届はGにおいて必要事項を記入してBに押印を求めたがもらうことができなかったのは前記1(7)のとおりである。たしかに,本件温泉権の移転につき,前記のような合意が成立していたとすれば,この変更届は完成・提出されていたと考えられ,変更届がされていないことは前記合意を否定する方向にはたらく事情であるとはいえる。しかし,前記1(8)のとおり,この後に原告が掘さく費用を経費として認め支払ったこと(一方で,BやDが本件温泉- 9 -の掘さく費用 いことは前記合意を否定する方向にはたらく事情であるとはいえる。しかし,前記1(8)のとおり,この後に原告が掘さく費用を経費として認め支払ったこと(一方で,BやDが本件温泉- 9 -の掘さく費用を負担したことを証拠上認めることはできない。)など,前記1に現れた事実と比較検討した場合,この事実が前記認定を左右するものではない。 以上によれば,原告の請求は理由があるからこれを認容することとし,主文のとおり判決する。 大分地方裁判所民事第1部裁判官野村武範

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