昭和52(行ウ)305 青色申告の承認の取消処分取消請求事件

裁判年月日・裁判所
昭和55年3月13日 東京地方裁判所 租税
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【DRY-RUN】○ 主文 原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 ○ 事実 第一 当事者の求めた判決 (原告) 一 被告が昭和五一年三月一日付けで原告に対してした昭和四七年分以後の所得税 の青色申告書提

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○ 主文原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 ○ 事実第一当事者の求めた判決(原告)一被告が昭和五一年三月一日付けで原告に対してした昭和四七年分以後の所得税の青色申告書提出承認取消処分を取り消す。 二訴訟費用は被告の負担とする。 (被告)主文と同旨第二当事者の主張(原告の請求原因)一原告は、肩書地において公衆浴場を営む者であり、被告から青色申告書提出承認(以下「青色承認」という。)を受けて昭和四七年分ないし昭和四九年分の所得税について青色申告書により確定申告をしたところ、被告は、昭和五一年三月一日付けで原告の昭和四七年分以後の青色承認を取り消す処分(以下「本件処分」という。)をした。その処分理由は、原告が青色申告者としてその業務につき備付け、記録及び保存をすべき帳簿書類(以下「帳簿書類」という。)につき、原告が被告所部の係官の提示要求に応じなかつたところ、そのことから原告の帳簿書類の備付け、記録又は保存が所得税法(以下「法」という。)一四八条一項に規定する大蔵省令で定めるところに従つて行われていないことになり、法一五〇条一項一号に該当する、というものである。 原告は、これを不服として、昭和五一年四月一日異議申立て、同年七月二八日審査請求をしたが、いずれも棄却された。 二しかし、本件処分は、左のとおり違法であり、取消されるべきである。 1 帳簿書類の不提示はない。 原告は、帳簿書類を備え付け、記録し、保存しており、被告所部の係官による税務調査に際しては、帳簿書類をいつでも提示できるように同係官の眼前に置き、係官が調査の個別的、具体的理由を開示してくれさえすればいつでも帳簿書類を提示する旨を述べたが、係官がその開示を拒否したため、帳簿書類を提示するに至らなかつた。 ところで、法二三四条所定の税務職員による が調査の個別的、具体的理由を開示してくれさえすればいつでも帳簿書類を提示する旨を述べたが、係官がその開示を拒否したため、帳簿書類を提示するに至らなかつた。 ところで、法二三四条所定の税務職員による質問検査権は、税務職員において必要と認めたときはいつでもできるというものではなく、当該納税者について特に調査をしなければならないだけの個別的、具体的必要性が客観的に存在する場合でなければこれをすることができず、しかも検査の実施に当たつては、事前に当該納税者に対し納得させるだけの調査理由を個別的、具体的に開示しなければならない。なぜなら、申告納税制度のもとでは、納付すべき税額は納税者の申告により確定するのが原則であり、税務官庁の課税処分はこれを補完する第二次的なものにすぎず、また、質問検査権の行使は罰則を伴なう権力的作用だからである。そして、青色承認を受けている者は、帳簿書類の備付け、記録又は保存が大蔵省令で定めるところに従つて行われていないこと等の法一四五条各号の欠格事由がない旨の税務署長の判断を受けているのであるから、これに対する調査の場合には、調査の個別的、具体的理由の存在とその開示がなお一層厳格に要請されるべきである。 そうすると、被告所部の係官による調査理由の個別的、具体的な開示がなかつた本件においては、いまだ帳簿書類を提示すべき段階に至らず、原告に帳簿書類の不提示はないというべきであり、少なくとも、帳簿書類の提示に至らなかつたことの責任を原告に追及することは許されない。 2 帳簿書類の不提示は、法一五〇条一項一号の取消事由に該当しない。 法一五〇条一項一号は、青色承認の取消事由として帳簿書類の「備付け」、「記録」又は「保存」の違反を挙げているが、「提示」の違反は規定しておらず、しかも帳簿書類の提示は、帳簿書類の備付け、記録又は保存とは全 〇条一項一号は、青色承認の取消事由として帳簿書類の「備付け」、「記録」又は「保存」の違反を挙げているが、「提示」の違反は規定しておらず、しかも帳簿書類の提示は、帳簿書類の備付け、記録又は保存とは全く性質を異にする別個の行為概念である。したがつて、帳簿書類を提示しなかつたからといつて、法一五〇条一項一号には該当しない。また、税務職員が調査理由を開示しないという特殊な場合以外に不提示という事態の発生は考えられないから、帳簿書類の不提示を青色承認の取消事由に追加して解釈しなければならないという実質上の必要性もない。 3 処分理由が不明確かつ不特定である。 被告は、本件弁論で「原告が帳簿書類を提示しなかつたことは、法一五〇条一項一号にいう帳簿書類の備付け、記録又は保存のいずれも欠けていると判断したものである。」と述べ、あるいは「青色申告者の帳簿書類の備付け等とは、単に帳簿書類が物理的に存在することのみを意味するものではなく、それを税務職員に提示することを当然の前提としているものとみるべきであるから、帳簿書類を提示しないということは、法律的な評価においてその備付け等が欠如していることを意味するにほかならないと解される。」と述べている。しかし、これでは帳簿書類の不提示自体が法一五〇条一項一号に該当する事由であるというのか、あるいは帳簿書類の不提示は同号該当事由の存在を推定させるものであるというのか明らかでなく、結局、本件処分の理由は不明確であるといわなければならない。また、本件処分は、それぞれ別個の概念である「備付け」、「記録」又は「保存」のいずれに違反するかを区別せず、漫然とこれら全部に違反するとしており、処分理由が不特定である。 (請求原因に対する被告の認否)請求原因一は認め、同二は争う。 (被告の主張)一本件処分の経緯 1 被告は、原告 るかを区別せず、漫然とこれら全部に違反するとしており、処分理由が不特定である。 (請求原因に対する被告の認否)請求原因一は認め、同二は争う。 (被告の主張)一本件処分の経緯 1 被告は、原告の昭和四七年分ないし昭和四九年分の青色申告書による所得税確定申告書及びこれに添付の決算書を検討したところ、原告に支払われた東京都の公衆浴場経費補助金の額と比較して、右決算書に記載された月別収入金額が過少と認められたことなどから、原告の右所得税につき調査を行う必要があると認め、被告所部の係官に右調査を実施させた。 2 昭和五〇年七月一八日、被告所部のA係官は、原告の所得税の調査のため原告方に臨場し、身分証明書を提示して「昭和四九年分の所得税の調査に来ました。必要があれば、昭和四八年及び昭和四七年分についても調査させていただきます。」と来意を告げたところ、原告は、「決算から申告までのすべてを杉並民主商工会(以下「民商」という。)に任せているるので分りません。」と応答した。そこでA係官は、帳簿書類の提示を求めたが、原告が「帳簿書類は民商の事務局に預けたままで、ここにはありません。今日は仕事があるので、もう帰つてください。」と申し立てたので、同係官は、帳簿書類を民商事務局から取り寄せておくように依頼し、同月二一日再度臨場する旨を告げて辞去した。その後、原告との電話連絡により、次回調査期日は同月二八日に延期された。 3 同月二八日、A係官が原告方に臨場したところ、原告が経営する公衆浴場の脱衣場に原告のほか民商の事務局員や会員と称する者六名がおり、同係官の退席要請にも応じなかつた。そこで、A係官は、事務局員らが同席する中で原告に対し「お願いしてあつた帳簿書類を提示してください。」と申し入れたが、原告は、「青色で正しく申告しているのだから信用してください。」 にも応じなかつた。そこで、A係官は、事務局員らが同席する中で原告に対し「お願いしてあつた帳簿書類を提示してください。」と申し入れたが、原告は、「青色で正しく申告しているのだから信用してください。」と述べ、事務局員らも口々に「調査理由を言え。帳簿に基づいて申告しているんだ。」等と発言し、調査は進展しなかつた。更に、同係官が、調査は法二三四条に規定する質問検査権に基づくものであり、青色申告者に法律上要求される帳簿書類の備付け、記録及び保存を確認する必要があるからこれを提示するように説得したが、原告は、これに応じようとせず、また事業の概況や東京都からの補助金収入の経理方法等についての質問にも答えなかつた。 4 同年一〇月二一日、A係官は、被告所部のB係官と共に原告方に臨場し、帳簿書類の提示を求めたが、原告は、民商に任せてあるという趣旨の発言を繰り返すだけであつた。また、事業の概況や記帳状況についての質問に対しても、原告は取引銀行が平和相互銀行及び浴場信用金庫であること、日々の収入及び必要経費の額等については月に二、三回まとめて電話により民商事務局に記帳依頼をしていることを答えただけで、それ以上の調査には応じなかつた。 5 同年一一月一九日、原告との事前の約束に従い、A係官が被告所部のC係官と共に原告方に臨場したところ、既に民商事務局員ら九名がテープレコーダーとマイクロホンを置いたテーブルを囲んで座つており、同人らは、同係官らの臨場が約束の時刻に若干遅れたことを非難して調査を妨げ、退席要請にも応じなかつた。A係官は、このような状況下で原告に対し帳簿書類の提示を求めたが、原告は、何も答えず調査に応じようとしなかつた。更に、A係官は、原告に対し、調査は帳簿書類の備付状況がどうか、記録が適切になされているか、東京都からの補助金による収入が計上されて の提示を求めたが、原告は、何も答えず調査に応じようとしなかつた。更に、A係官は、原告に対し、調査は帳簿書類の備付状況がどうか、記録が適切になされているか、東京都からの補助金による収入が計上されているか、現金出納帳において日々の現金の過不足がどのように処理されているか等を確認する必要があつて行うものである、帳簿書類の提示がない以上帳簿書類の記録及び保存がなされていないものと判断せざるを得なくなる旨を告げたが、原告は、「正しく申告しているから信用してもらいたい。」と繰り返すだけであつた。 6 同月二八日及び昭和五一年二月五日、被告所部のD係官が電話により原告に対し帳簿書類を提示して調査に応じるように説得したが、原告は、「税金のことはすべて民商に任せてある。」と言うだけでこれに応じなかつた。その後、原告の方からは何の連絡もなかつた。 7 そこで、被告は、これ以上原告方に臨場しても帳簿書類の提示は得られないものと判断し、本件処分を行つたものである。 二本件処分の適法性 1 申告納税制度は、納付すべき税額が納税者の申告によつて確定することを原則とするが、すべての納税者が税額を正確に把握し申告することを期待し得ないため、税務官庁に申告の基礎となつた帳簿、原始記録等の調査を行わせ、申告税額が税務官庁の調査したところと異る場合等に限つて、税務官庁の更正処分により税額を確定することとしている。この申告納税制度が円滑に機能するためには、納税者が正確な帳簿組織を備え付け、これを基礎として申告を行うことが必要である。青色申告制度は、法規で定められたところに従つて誠実かつ信頼性のある帳簿組織と記録の備付けを約束した納税者に対し種々の特典を付与することにより、納税者に正確な帳簿組織と記録の備付けを行う慣行を普及させ、もつて適正な申告納税制度を積極的に維持発展さ かつ信頼性のある帳簿組織と記録の備付けを約束した納税者に対し種々の特典を付与することにより、納税者に正確な帳簿組織と記録の備付けを行う慣行を普及させ、もつて適正な申告納税制度を積極的に維持発展させようとするものである。 そして、青色承認を受けた納税者は、法一四八条一項の規定により、大蔵省令で定めるところに従い、その業務につき帳簿書類を備え付けてこれに取引を記録し、かつ、当該帳簿書類を保存しなければならないが、次のような諸点に照らすと、右の「帳簿書類の備付け、記録及び保存」とは、誠実に記録された帳簿書類を税務職員が必要に応じていつでも閲覧し得る状態にしておくことを意味すると解さざるを得ない。 (一) 青色承認を取り消すには、青色申告者が備え付けている帳簿書類が大蔵省令の規定に準拠していないこと、帳簿書類の記載事項の全体についてその真実性を疑うに足りる相当の理由、があること等、帳簿書類に不備又は不正が認められることが必要である。 (二) そして、青色承認取消処分の通知書には、取消しの基因となつた事実を被処分者において具体的に知り得る程度に特定して摘示しなければならない。 (三) また、青色申告者の申告した課税標準等について更正する場合には、その帳簿書類を調査し、調査によつて課税標準等の計算に誤りがあると認められる場合に限り、更正をすることができる。 (四) 右更正処分の通知書には、更正の具体的根拠を帳簿書類の記載以上に信用性のある資料を摘示して明らかにしなければならない。 すなわち、右の各要請に応えるためには、税務職員において必要に応じ帳簿書類を閲覧し得ることが不可欠の前提条件であるから、青色申告者の帳簿書類の備付け等とは、単に帳簿書類を物理的に備え付け、記帳、保存することを意味するものではなく、それを税務職員に提示することを当然の前提として し得ることが不可欠の前提条件であるから、青色申告者の帳簿書類の備付け等とは、単に帳簿書類を物理的に備え付け、記帳、保存することを意味するものではなく、それを税務職員に提示することを当然の前提としているものとみるべきであり、帳簿書類を提示しないということは、法律的な評価においてその備付け等が欠如していることを意味するにほかならないと解される。そのように解さなければ、青色申告者の帳簿書類の備付け、記録及び保存が大蔵省令で定めるところに準拠しているかどうかを確認するための手段がないことになるばかりでなく、課税庁は青色申告者に対し適正手続による課税処分等をなし得なくなつてしまうのである。 2 本件においては、前記のとおり、原告に対し調査を行う合理的必要性が認められたため、調査に着手し、被告所部の係官が再三にわたり帳簿書類を提示するように要請したにもかかわらず、原告はあえてその帳簿書類を提示しなかつたのであるから、原告は帳簿書類の記録及び保存はもとより、その備付けすら欠いていたものと解すべきであり、たとえ物理的意味において備付け等がなされていたとしても、法的な評価においては、帳簿書類の備付け、記録及び保存がなかつたことと同視されるものである。 3 原告は、税務調査の理由が開示されなかつたから、帳簿書類を提示しなかつたと主張するが、そもそも所得税の調査において調査理由の開示は法律上の要件ではない。したがつて、調査理由の不開示が帳簿書類の不提示を正当化するものではなく、原告の主張は前提において失当である。しかも、前記のとおり、A係官らは、本件調査の際、原告に対して客観的に合理性のある調査理由を説明しているのであるから、原告の右主張は事実にも反しており、失当である。 4 以上のとおり、原告が被告の税務調査の際帳簿書類を提示しなかつた所為は法一四八条一項 対して客観的に合理性のある調査理由を説明しているのであるから、原告の右主張は事実にも反しており、失当である。 4 以上のとおり、原告が被告の税務調査の際帳簿書類を提示しなかつた所為は法一四八条一項に違反し、法一五〇条一項一号所定の取消事由に該当するものであるから、本件処分は適法である。 (被告の主張に対する原告の認否)一被告の主張一1の事実は知らない。 二同2のうち、A係官が身分証明書を提示して調査に来た旨を述べたこと、同係官が七月二一日再調査に来る旨を述べたこと、その後同係官と原告との電話連絡により次回調査日が同月二八日に延期されたことは認めるが、その余の事実は否認する。 A係官は、事前の連絡もなく、突然原告方の裏口から入つて来て「事後調査に来た。帳簿を見せてくれ。」と切り出した。原告は、民商に加入しているため民商関係者に相談してみる旨答えて帳簿の提示を断り、次回は民商関係者に来てもらつてよいかと質問したのに対し、同係官は、かまわない旨答えていたものであり、そのため次回は民商関係者の都合がつく日に調査することとなつたものである。 三同3のうち、A係官が七月二八日原告方に臨場したこと、同係官が居合わせた民商の関係者六名に対し退席を求めたこと、民商関係者が調査理由等の開示を求めたことは認め、その余の事実は否認する。 A係官は、それまで電話等で民商関係者の立会を許す旨述べていたのに、突然「引き取つてほしい。」と言い出した。これに対し、民商関係者は「原告に頼まれている。妨害するつもりはない。」と答えたので、同係官が原告に対し右立会に異議がないかを確認したところ、原告は異議がない旨答えた。そこで、民商関係者が同席したまま調査が始まつたのであり、帳簿書類の提示要求に対しては、帳簿書類があることを示しながら「確定申告をしているので、どこが分らな 確認したところ、原告は異議がない旨答えた。そこで、民商関係者が同席したまま調査が始まつたのであり、帳簿書類の提示要求に対しては、帳簿書類があることを示しながら「確定申告をしているので、どこが分らないかを示してくれれば、いつでもお見せします。」と答えたところ、同係官は、黙つてしまい、結局帰つてしまつたものである。 四同4のうち、A及びBの両係官が臨場したことは認め、その余の事実は否認する。 両係官が突然原告方に来て「帳簿を見せてくれ。」と要求したが、原告が民商関係者の立会を要求したため、二人はそのまま帰つたのである。 五同5のうち、A及びCの両係官が事前の約束時間に遅れて原告方に臨場したところ、既に民商事務局員ら九名がテープレコーダーとマイクロホンを置いたテーブルを囲んで座つていたことは認め、その余の事実は否認する。 両係官が一時間近くも遅刻して来たのに、そのことについて一言もないので、これに対し民商関係者の間に非難のつぶやきがあつたことは事実であるが、被告の主張は誇張である。また、両係官から民商関係者に対して退席要請はなかつた。そして、両係官の帳簿書類の提示要求に対しては、原告らは、机の上に置いてある帳簿書類を示して「いつでも見せる用意ができている。どういう点を調査したいのかを明らかにしてほしい。」と述べたが、両係官は調査理由を開示せず、そのために物別れとなつたものである。 六同6のうち、電話があつたことは認め、その余は否認する。 D係官は、電話で、「都の補助金はどのように処理しているか。」、「補助金が入つたにしては売上げが少ない。計上もれがあるのではないか。」と尋ねてきた。原告は、これに対し、「それをなぜ今まで言わなかつたのか。 そのような調査理由を皆の前で言つてくれれば、いつでも帳簿書類を見せて説明しますから。」と述べたが、D係官 あるのではないか。」と尋ねてきた。原告は、これに対し、「それをなぜ今まで言わなかつたのか。 そのような調査理由を皆の前で言つてくれれば、いつでも帳簿書類を見せて説明しますから。」と述べたが、D係官は弁解にならないことを述べるだけであつた。そして、それきり同係官らは帳簿書類を見に来ず、被告は約一か月して本件処分に及んだものである。 七同7は争う。 八被告の主張二は争う。 第三証拠関係(省略)○ 理由一請求原因一の事実は当事者間に争いがない。 二まず、本件処分の経緯について事実関係を検討する。 1 証人A(第一回)及び同Dの各証言によれば、被告所部の係官が原告の昭和四七年分ないし昭和四九年分の青色申告書による所得税確定申告書及び添付の決算書を検討したところ、原告に支払われた東京都からの公衆浴場経費補助金が右決算書に計上されているかどうかが不明確で、同補助金の額や被告において取得した資料等と比較すると、原告の申告した収入金額が過少であるとの疑いが生じた事実が認められ、これに反する証拠はない。 2 そして、次の事実については当事者間に争いがない。 (一) 昭和五〇年七月一八日、被告所部のA係官が原告方に臨場し、原告に対し身分証明書を提示して税務調査に来た旨を告げ、帳簿の提示を求めたのに対し、原告は民商に加入しているため民商関係者に相談してみる旨答えて提示を断つた。 (二) 同月二八日、A係官が原告と事前に打ち合せた上で原告方に臨場し、居合せた民商関係者六名に対し退席を求め、原告に対し帳簿書類の提示を求めたが、原告側は民商関係者の退席を断り、調査の理由を述べるよう求め、調査理由の説明がないといつて右提示を断つた。 (三) 同年一〇月二一日、A係官が被告所部のB係官と共に原告方に臨場し、原告に対し帳簿の提示を求めたが、原告はこれを断つた。 ( 理由を述べるよう求め、調査理由の説明がないといつて右提示を断つた。 (三) 同年一〇月二一日、A係官が被告所部のB係官と共に原告方に臨場し、原告に対し帳簿の提示を求めたが、原告はこれを断つた。 (四) 同年一一月一九日、A係官が被告所部のC係官と共に原告との事前の約束時間に遅れて原告方に臨場したところ、既に民商関係者九名がテープレコーダーとマイクロホンを置いたテーブルを囲んで座つており、A係官らが原告に対し帳簿書類の提示を求めたが、原告はこれに応じなかつた。 (五) 同月二八日及び昭和五一年二月五日、被告所部のD係官から原告に対する電話による照会があつたが、その後は原被告間の直接の交渉はなく、本件処分に至つた。 3 証人A(第一回)、同E、同F及び同Dの各証言並びに原告本人尋問の結果によれば、(一)昭和五〇年七月一八日A係官は原告に帳簿の提示を断られ、次回には昭和四七年分ないし昭和四九年分の帳簿書類を準備しておくよう依頼して原告方を退去したこと、(二)同月二八日A係官は原告に対し法二三四条の質問検査権に基づく調査を行つているものであり、青色申告者に義務付けられている帳簿の備付け、記録及び保存が正確に行われているかどうかを確認する必要があり、また、申告所得金額が正確であるかを確認する必要もあると説明して帳簿書類の提示を求めたが、原告らは原告が特に調査の対象に選ばれた理由は何かを説明し、帳簿のどこが見たいかを具体的に特定して説明すれば帳簿を見せる旨を述べ、帳簿書類の提示に至らなかつたこと、(三)同年一一月一九日A及びCの両係官は原告に対し、帳簿の管理記帳状況及び申告所得金額が正確であるかを確認する必要がある旨を説明するとともに、現金の管理状況、補助金の経理状況を尋ねて帳簿書類の提示を求め、帳簿書類があるとしても見せなければないと同じであり青 理記帳状況及び申告所得金額が正確であるかを確認する必要がある旨を説明するとともに、現金の管理状況、補助金の経理状況を尋ねて帳簿書類の提示を求め、帳簿書類があるとしても見せなければないと同じであり青色承認が取り消されることになる旨を述べ、これに対し原告は、申告のどの点に問題があるかを説明しない限り、帳簿書類の提示には応じないとの態度を堅持したこと、(四)更に同月二八日及び昭和五一年二月五日D係官が原告に対し電話により今からでも帳簿書類を提示して調査に応じてもらいたいと述べたが、原告は税金のことは民商に任せてあると答えるばかりで、調査に応じようとする意向はこの時にも示されなかつたこと、以上の各事実が認められ、この認定を覆すに足る証拠はない。 三以上の事実関係のもとにおいて、原告が被告からの帳簿書類の提示要求に応じなかつたことが法一五〇条一項一号の定める青色承認取消事由に該当するか否かを検討する。 1 所得税については、申告納税方式が採用され、納付すべき所得税の税額等は納税者の申告により確定するのを原則とし、その申告がない場合又はその申告に係る税額等の計算が法律の規定に従つていない場合その他当該税額等が税務署長の調査したところと異なる場合に限り、税務署長の処分により確定することとされている。この申告納税制度が適正に機能するためには、納税者がその業務につき帳簿書類を備え付け、これに取引を記録し、これを基礎として正確な所得を計算し申告することが必要である。そこで、帳簿書類を基礎とした自発的かつ正確な申告を奨励する意味で、法の定めるところに従い一定の帳簿書類を備え付け、日々の取引を正確に記録し、これに基づき税額等を計算し申告しようとする者に限つて、青色の申告書を用いて申告することを認め、この青色申告者に対しては、所得の計算につき特別の軽減を与え 書類を備え付け、日々の取引を正確に記録し、これに基づき税額等を計算し申告しようとする者に限つて、青色の申告書を用いて申告することを認め、この青色申告者に対しては、所得の計算につき特別の軽減を与え、あるいは更正手続の上でも特に有利な取扱いをすることにより、これを優遇している。このように、青色申告者は、税法上種々の特典を与えられている反面で、法一四八条一項において、大蔵省令で定めるところによりその業務につき帳簿書類を備え付けてこれに取引を記録し、かつ、当該帳簿書類を保存することを義務付けられ、この業務に違反したときは、法一五〇条一項一号の規定により青色承認を取り消されることとされている。 2 ところで、法は、青色申告者について次のことを定めている。 (一) 法一四八条二項は、税務署長は必要があると認めるときは青色申告者に対しその者の帳簿書類について必要な指示を与えることができるとし、法一五〇条一項二号は、青色申告者が右の指示に従わないときは青色承認を取り消すことができると規定している。 (二) 法一五〇条一項は、青色申告者の帳簿書類に不備不正がある場合には、税務署長は当該申告者に対する青色承認を取り消すことができると規定し、同条二項は、税務署長が青色承認取消しの処分をする場合には、青色申告者に対し書面によりそのことを通知し、その書面には、取消処分の基因となつた事実が同条一項各号のいずれに該当するかを附記しなければならないと規定している。そして、法一五〇条二項は、取消処分が同条一項各号のいずれによるかを附記するのみでなく、取消しの基因となつた事実をも処分の相手方において具体的に知り得る程度に特定して摘示すべきことを規定したものと解される(最高裁判所昭和四九年四月二五日第一小法廷判決、民集二八巻三号四〇五ページ参照)。 (三) 法一五五条一項本 処分の相手方において具体的に知り得る程度に特定して摘示すべきことを規定したものと解される(最高裁判所昭和四九年四月二五日第一小法廷判決、民集二八巻三号四〇五ページ参照)。 (三) 法一五五条一項本文は、税務署長が青色申告者の申告した課税標準等について更正する場合には、当該申告者の帳簿書類を調査し、その調査により課税標準等の計算に誤りがあると認められる場合に限り、更正をすることができると規定し、また、法一五六条は、青色申告者に対するいわゆる推計課税を禁止している。 (四) 法一五五条二項は、青色申告者に対する更正の通知書には更正の理由を附記すべきことを規定している。そして、同項は、単に更正に係る勘定科目とその金額を示すだけでなく、そのように更正した根拠を帳簿の記載以上に信憑力のある資料を摘示することによつて明示すべきことを規定したものと解される(最高裁判所昭和三八年五月三一日第二小法廷判決、民集一七巻四号六一七ページ参照)。 (五) 法二三四条一項は、税務署長等は所得税に関する調査について必要があるときは青色申告者を含む納税義務者の事業に関する帳簿書類を検査することができると規定している。この検査権は、税務署長が更正又は決定をするためばかりでなく、青色承認の申請の許否や青色承認の取消等の処分をする場合の調査のためにも行使し得るものであつて(最高裁判所昭和四八年七月一〇日第三小法廷決定、刑集二七巻七号一二〇五ページ参照)、その相手方は、それが適法な検査である限り、帳簿書類の閲覧その他の検査に応ずる義務がある。 3 右の各規定及び前記青色申告制度の趣旨に照らして考えると、法は、「帳簿書類の備付け、記録又は保存が一四八条一項に規定する大蔵省令で定めるところに従つて行われていないこと」を青色承認申請の却下事由とするとともに青色承認の取消事由ともして 照らして考えると、法は、「帳簿書類の備付け、記録又は保存が一四八条一項に規定する大蔵省令で定めるところに従つて行われていないこと」を青色承認申請の却下事由とするとともに青色承認の取消事由ともしているが(一四五条一号、一五〇条一項一号)、これは、当該納税者の帳簿書類について税務署長が法二三四条の規定に基づく調査をなし得ることを前提として、その調査により帳簿書類の備付け、記録及び保存が正しく行われていることを確認することができた場合にのみ青色承認による特典を与えるとの趣旨に出たものであり、青色申告者が右帳簿書類の調査にいわれなく応じないためその備付け、記録及び保存が正しく行われていることを税務署長において確認することができないときは、法一五〇条一項一号の定める青色承認取消事由に該当するものと解するのが相当である。青色申告制度は、申告の基礎となつた納税者の帳簿書類の正しさに対する税務官庁側の信頼が存在することを前提として成り立つものであるから、納税者の調査拒否により当該帳簿書類の不備不正の存否そのものを確認することができない場合にまで税務署長において青色承認による特典の享受を認めなければならないとすることは、制度の本旨に反するものであるし、また、前述のように、青色申告者については帳簿書類の調査に基づく場合に限つて更正をすることができ推計課税が禁止されていることからみても、青色申告者が帳簿書類の調査を拒否したときは、青色承認を取り消した上で白色申告者として推計により更正をなし得ることを法は当然に予定しているものというべきである(そうでなければ、青色申告者に対しては、その者が帳簿書類の調査を拒否する限り更正をすることができないことになり、適正な課税が妨げられる結果となる。)。 このように、青色申告者が帳簿書類の調査をいわれなく拒否した場合には法 申告者に対しては、その者が帳簿書類の調査を拒否する限り更正をすることができないことになり、適正な課税が妨げられる結果となる。)。 このように、青色申告者が帳簿書類の調査をいわれなく拒否した場合には法一五〇条一項一号に該当すると解すべきであるが、この解釈は、調査拒否自体を「備付け」「記録」又は「保存」の違反と並ぶ別個独立の取消事由とするものではなく、右調査拒否の結果として帳簿書類の「備付け」、「記録」又は「保存」が正しく行われていることを処分の時において確認し得ないこととなるので、これをもつて「備付け」、「記録」又は「保存」を欠くと評価するものであるから、法の規定していない取消事由を創設したことになるとの非難は当たらない。 4 本件において、原告は、前記二で述べたとおり、被告所部の係官が原告の申告に係る収入金額の正確性を調査するため帳簿書類の提示を再三要求したにもかかわらず、原告を調査対象に選んだ理由や原告の申告又は帳簿の問題点などについて調査理由を具体的に説明してもらえない限り要求には応じられないとして、右帳簿書類の提示をあくまでも拒否したものである。しかしながら、税務署長の質問検査権は、申告内容等の正確性を確認するために行使し得ることはもちろんであり、また、その行使に当たつて相手方に対し調査の理由ないし必要性を具体的、個別的に開示することも当然には法律上の要件とされるものではないのであつて、前述の事実関係に徴すれば、原告が調査理由の不開示を理由としてした本件の提示拒否が正当なものといえないことは明らかである。そして、右提示拒否により、被告としては原告の帳簿書類の備付け、記録及び保存が大蔵省令の定めるところに従つて正しく行われていることを確認することができなかつたのであるから、当該帳簿書類が当時客観的にどのような状態にあつたかにかかわり は原告の帳簿書類の備付け、記録及び保存が大蔵省令の定めるところに従つて正しく行われていることを確認することができなかつたのであるから、当該帳簿書類が当時客観的にどのような状態にあつたかにかかわりなく、法一五〇条一項一号の青色承認取消事由に該当するとされることを免れないものというべきである。 四原告は、被告の本訴における主張からみて、本件処分の理由が不明確、不特定であると主張する。 しかし、前記三2(二)で述べたとおり、青色承認取消処分については、処分の通知書に取消しの基因となつた事実と当該事実が法一五〇条一項各号のいずれに該当するかを附記すれば足りるものであつて、それ以上に当該事実がなにゆえに右各号に該当するものであるのかについて税務署長の判断根拠を示すことは要求されていない。したがつて、その判断根拠に関する被告の訴訟上の主張をとらえて処分理由の不明確をいうことは失当である。また、本件の提示拒否により同項一号の備付け、記録又は保存の全部が欠けることになると主張したからといつて、処分理由が不特定であるということはできない。 五以上のとおりであるから、本件処分に原告主張の違法はない。よつて、原告の請求を棄却することとし、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。 (裁判官佐藤繁泉徳治岡光民雄)

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