昭和59(う)272 食品衛生法違反被告事件

裁判年月日・裁判所
昭和60年10月22日 名古屋高等裁判所
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【DRY-RUN】主    文      本件各控訴をいずれも棄却する。      当審における訴訟費用中証人aに支給した分は被告人ら全員の、同bに 支給した分は被告人c株式会社、同dのそれぞれ連帯負担とする。    

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判決文本文6,053 文字)

主文 本件各控訴をいずれも棄却する。 当審における訴訟費用中証人aに支給した分は被告人ら全員の、同bに支給した分は被告人c株式会社、同dのそれぞれ連帯負担とする。 理由 本件控訴の趣意は、被告人e、同fにつき弁護人入澤洋一名義の控訴趣意書中各当該被告人関係部分に、被告人c株式会社、同dにつき弁護人長屋誠名義の控訴趣意書及び控訴趣意補充書中各当該被告人関係部分に(但し、右各控訴趣意書については当審第一回公判期日における右各弁護人の釈明参照)、これに対する答弁は検察官鈴木芳一名義の答弁書に、それぞれ記載されているとおりであるから、ここにこれらを引用する。 第一被告人e、同f両名関係(一) 弁護人入澤洋一の控訴趣意第一点(訴訟手続の法令違反の論旨)について所論は要するに、原判決書がその(証拠の標目)の項に挙示したg、h、被告人e、同fの検察官に対する各供述調書は、取調担当の司法警察職員が右の者らに対し長期間拘禁することをほのめかせたり、認めれば軽い処分で済ませてやると申向けたりして強制し、これを誘導して原判示事実に沿う供述をなさしめてこれを記載した供述調書を作成し、取調担当検察官は、右司法警察職員に対する供述調書を基礎にしてこれと同旨の内容の供述をなさしめ、特に被告人e、同fの場合にあつては検察官の取調に際し、その前の段階で同被告人らを強制して取調をした警察官が同行し、同被告人らを後方から監視していたのであるから、警察段階での強制状態が引き継がれた状態で取調がなされたことは明らかで、いずれにしても右四名の検察官に対する各供述調書は任意性を欠いていて証拠能力がなく、また仮に任意性はあると認めるとしてもその証明力が極度に低いため同様証拠能力が否定さるべきであるのにこれらを原判示事実 れにしても右四名の検察官に対する各供述調書は任意性を欠いていて証拠能力がなく、また仮に任意性はあると認めるとしてもその証明力が極度に低いため同様証拠能力が否定さるべきであるのにこれらを原判示事実認定の証拠とした原審の訴訟手続は法令に違反したもので、右訴訟手続の法令違反が判決に影響を及ぼすことが明らかである、というのである。 所論にかんがみ、記録を調査して検討するに、証人h、被告人e、同fの原審公判廷における各供述によれば、右の者らが原判示事実を被疑事実として警察で取調を受けた初期の段階ではいずれも被照射物件は飼料と認識していたかのような弁解をしたけれども、捜査官らは右弁解を容れて直ちに捜査を打ち切ることなく、その供述の矛盾点を種々追及し、結局右gら四名はいずれも警察段階で、右被照射物件が食品であることの認識を有していたことを認めるに至つたという本件捜査の経緯事実は認めることができるけれども、前示飼料であつた旨の弁解はいずれも本件事案の経過からして客観的状況と合致せず、合理性に乏しいものであると思料できるから取調担当警察官らが右四名の右弁解により直ちに捜査を打ち切ることなくその矛盾点を種々追及するのもまことにやむを得ないところで、本件全記録に徴するも、右警察段階における右自白が特段に強制、脅迫によるものであることは認められず、特に検察官において、右h、被告人e、同fに対しなんらかの不当な圧力を加えたと認められるような証拠はなく、検察官に対する供述は全く任意になされたものであることは明らかであり、また証人gの原審公判廷における供述記載を仔細に検討してみても同人の所論検察官に対する供述調書の記載の任意性に疑を挟ませるような事情は全く見出し得ない。従つて所論の前記四名の検察官に対する各供述調書の記載の任意性に疑を挟む余地はないことに帰する 検討してみても同人の所論検察官に対する供述調書の記載の任意性に疑を挟ませるような事情は全く見出し得ない。従つて所論の前記四名の検察官に対する各供述調書の記載の任意性に疑を挟む余地はないことに帰する。 また、前掲の各検察官に対する各供述調書の記載内容をつぶさに調べても所論のように、その証明力があまりにも低いとは認められない(この点に関しては、本理由中後記第一の(二)の項の説示参照)。よつて、これらの検察官に対する各供述調書を原判示事実認定の証拠とした原審の訴訟手続には所論のような法令違反があるとは認められない。論旨は理由がない。 (二) 弁護人入澤洋一の控訴趣意第二点(事実誤認の論旨)について所論は要するに、被告人e、同fが、本件被照射物件が食品であつたとの認識を有していた事実に関しては合理的疑を挟む余地が多分にあつて、原判示事実は到底認定するに由ないのに、右認識を有していた事実を認定のうえ被告人e、同fの所為を食品衛生法違反罪に間擬した原判決は事実を誤認したもので、右事実誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかである、というのである。 所論にかんがみ、記録を調査して検討するに、原判決挙示の証拠を総合すれば、所論にもかかわらず本件被照射物件が食品であつたことに関し被告人e、同fが十分な認識を有していた事実は優に認定することができる。 すなわち原判示罪となるべき事実は所論の認識の点をも含め被告人e、同fが捜査段階の途中から本件公訴の提起に至るまで一貫して自白していたところであつて、右自白は原判決挙示のその他の関係各証拠ともよく合致、符合して、全く不自然、不合理の点がない。原判決挙示の各証拠を総合すれば、被告人e、同fは、昭和四九年六月ころ原審相被告人iの訪問を受け、その際同人から、j株式会社において放射線照射による殺菌を依頼され、被照射 不自然、不合理の点がない。原判決挙示の各証拠を総合すれば、被告人e、同fは、昭和四九年六月ころ原審相被告人iの訪問を受け、その際同人から、j株式会社において放射線照射による殺菌を依頼され、被照射体は乾燥野菜であることを打ち明けられ、乾燥野菜は食品であることは勿論認識したが、食品に対する放射線の照射は食品衛生法により禁止されているので、これを表向き飼料として取り扱おうと相談した事実及び、その後昭和五一年一月ころ被告人e、同fは被告人c株式会社k工場を挨拶のため訪問し、前記iから放射線照射による殺菌を依頼された相手が被告人c株式会社であつてその業務内容は食品の製造であることを実見、確認してきた事実が明らかに認められるのであつて、前記証拠中原審相被告人iが、j株式会社側の業務担当者に紹介されることを望んでl協会のmらを訪ねた際自分のことを養魚の業務に従事している旨申し述べたことがある(もつとも証人mの原審公判廷供述に徴すると右事実自体がしかく確実なものであるかどうかも疑問である。)とか、本件被照射食品の取引が被告人c株式会社とは法形式上のみは別の株式会社n名義でなされたことも多いとか、被告人c株式会社の側で一方的に被照射物件の表向の品名をポリ袋に変更したとかいうやや所論に添うと思われる事情も認められないではないが、これらやや所論に添うと思われる諸事情を逐一検討してみても、結局原判示事実、特に被告人e、同fの本件被照射物件が食品であることを認識していたという前記認定事実に対し合理的疑を挟ませるような意味を有するものであるとは到底解せられない。被告人e、同fの、本件被照射物件を飼料と思つていた旨の原審公判廷における各供述記載は前記認定事実に比較して、単なる弁疏と認めざるを得ない。従つて原判決には所論のような事実誤認は認められない。論旨は理由 e、同fの、本件被照射物件を飼料と思つていた旨の原審公判廷における各供述記載は前記認定事実に比較して、単なる弁疏と認めざるを得ない。従つて原判決には所論のような事実誤認は認められない。論旨は理由がない。 第二被告人四名関係弁護人入澤洋一の控訴趣意第三点(可罰的違法性の主張に関する事実誤認の論旨)及び弁護人長屋誠の控訴趣意中本件所為の食品衛生法三〇条の二、七条該当性を争い、その実質的違法性の欠如、ひいて原判決の食品衛生法の右条項の解釈の誤、食品に対する放射線照射の安全性に関する事実誤認を主張する論旨について右各所論を総合要約すると要するに、一〇キログレイ以下の総平均線量による放射線の照射は、いかなる食品に対してしても全く安全であつて、このことはIAEA・FAO・WHOの一九八〇年合同専門家会議の報告によつて確認されており、右基準以下でした本件被照射物件に対するガンマー線照射殺菌は、安全性の面でなんらの問題もないから、被告人らの所為は可罰的違法性ないし実質的違法性を欠き、従つてこれを処罰すべきものではなく、また被告人らの所為は食品衛生法三〇条の二、七条二項に該当しないのに原判決が本件事実認定の前提である右照射の安全性についての判断を誤り、ひいて被告人らの所為が前記各法条に該当するとしたのはこの点に関する事実を誤認し法令解釈を誤つたものであつて右事実誤認及び法令の解釈適用の誤りが判決に影響を及ぼすことが明らかである、というのである。 <要旨>所論にかんがみ、記録を調査し、当審における事実取調の結果をも参酌して検討するに、所論一九八〇年</要旨>合同専門家会議の報告が国連あるいはWHO等国連機関加盟国を法的に拘束するものでないことはいうまでもないところ、前記報告等を総合すると、一〇キログレイ以下の総平均照射量で食品を照射しても、毒 要旨>合同専門家会議の報告が国連あるいはWHO等国連機関加盟国を法的に拘束するものでないことはいうまでもないところ、前記報告等を総合すると、一〇キログレイ以下の総平均照射量で食品を照射しても、毒物学的栄養学的および微生物学的にも問題がない旨の報告がなされており、また一部の国において、一定の厳格な条件の下に、一定の食品について放射線照射による殺菌を許していることは認められるが、ひるがえつて我が国の現状によれば、前記報告の結果にも一抹の疑問なしとせず、また世論の動向もあり結局のところ粉末野菜食品等原判示食品に対する放射線照射の安全性は未だもつて確認されていない段階にあると認めざるを得ない。しかも食品に対する放射線の照射の許容はその前提として各個別食品の品目ごとに、照射線量の許容限度、再照射されていないことの確認、照射の設備場所方法等の検査、確認、取締体制に対する十分な配慮がなされねばならないことは、いうまでもないところであるが、我が国の関係官庁において、食品に対する放射線照射の許可に関し、未だ、右のような立法準備行為についての討議などもなされていない現状であることは当審における事実取調の結果によつて認められる。 右のように考察すれば、結局原判決がその(弁護人らの主張に対する判断)の項中で所論に関し説示するところはすべて肯認することができ、被告人e、同fの所為には可罰的違法性がないとか被告人c株式会社の業務に関してなした被告人dの所為には実質的違法性がなく右所為は食品衛生法三〇条の二、七条二項に該当しないとか、原判決は同条項の解釈を誤り、また食品に対する放射線照射の安全性に関する事実を誤認したもので、右法令解釈の誤、事実誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかであるとかの所論は到底採用するに由ない。論旨は理由がない。 第三被告人c株式会社 に対する放射線照射の安全性に関する事実を誤認したもので、右法令解釈の誤、事実誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかであるとかの所論は到底採用するに由ない。論旨は理由がない。 第三被告人c株式会社、被告人d関係(一) 弁護人長屋誠の控訴趣意中期待可能性の不存在の論旨について所論は要するに、被告人dは、被告人c株式会社の得意先である株式会社oからの食品中の生菌数に関する規格が余りに厳格なものになつてきたので、その要求に応ずるため本件放射線照射による食品殺菌を実行するに至つたもので、右所為は一私企業の代表者として他の方途のない已むを得ないものであつたから、被告人dに対し右以外の行動に出ることは期待できず、従つて被告人dの行為を有責とすることはできず、ひいて被告人c株式会社を処罰することも許されないというのである。 所論にかんがみ、記録を調査して検討するに、取引先の要求する食品の衛生基準が厳格となり、そのため自分が代表者をしている企業の保有している食品製造技術によつては、右要求基準に合致する食品を製造することが採算上ほとんどてきなくなつたからといつて、右取引先の要求に応ずるため原判示趣旨で制定された法の禁止する食品殺菌手段をとつた被告人c株式会社の代表者である被告人dの所為を期待可能性を欠くものと評価することのできないことは多言を要しないところであるから所論は到底採用するに由ない。論旨は理由がない。 (二) 弁護人長屋誠の控訴趣意中食品衛生法三〇条の二、七条二項が憲法三一条に違反すると主張する論旨について所論は要するに、食品衛生法七条はその一項において厚生大臣に販売用食品につき一定の「基準」または「規格」を定める権限を与え、同二項において右「基準」に合わない食品の販売を禁止し、同法三〇条の二により同法七条二項に違反する所為を処罰 の一項において厚生大臣に販売用食品につき一定の「基準」または「規格」を定める権限を与え、同二項において右「基準」に合わない食品の販売を禁止し、同法三〇条の二により同法七条二項に違反する所為を処罰することを規定しているが、右食品衛生法の規定は刑罰法規の構成要件の内容を厚生大臣の定めるところに委ねるもので、罪刑法定主義の原則に反し、ひいては法律の定める手続によらなければ刑罰を科せられることのない権利を保障した憲法三一条の規定に反する、というのである。 しかしながら法律で刑だけを規定し、その構成要件の具体的内容を政令以下の命令等で定めることとしても、それが特定の事項に限定され、そうすることに合理的理由があり、かつその内容が所定の命令によつて明確になつていれば右刑罰法令の内容はなお法律によつて定められたものということを妨げられないから、原判示のとおりの趣旨、理由で制定された所論食品衛生法の規定が罪刑法定主義、ひいて憲法三一条に違反しているとする所論は採用するに由ない。論旨は理由がない。 よつて、本件各控訴は、いずれもその理由がないから、刑事訴訟法三九六条に則り、これを棄却することとし、なお、当審における訴訟費用については、刑事訴訟法一八一条一項本文、一八二条を適用し、証人aに支給した分を被告人ら四名に、同bに支給した分を被告人c株式会社、同dにそれぞれ連帯して負担させることとして、主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官杉田寛裁判官石川哲男裁判官川原誠)

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