判決平成15年2月19日神戸地方裁判所平成14年(行ウ)第6号労災保険不支給処分取消請求事件 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 原告の請求 1 被告が原告に対して平成11年2月17日付でなした労働者災害補償保険の遺族補償給付及び葬祭料の支給をしないとする処分を取り消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 第2 事案の概要本件は,グループ企業の形態をなす関連数社(以下,「B企業グループ」という。)において,各社いずれかの運送業務に継続的かつ専従的に従事していた運転手が,骨材の運搬を業とする訴外関連会社の運搬業務に従事してトラックを運転していたところ,くも膜下出血を発症して意識を失い,雑木林に突っ込んで停止するという交通事故を起こして死亡したので(以下,「本件交通事故」という。),運転手の妻である原告が被告に対し,平成10年3月4日,労働者災害補償保険法に基づく遺族補償給付,葬祭料支給の請求をしたところ,被告が平成11年2月17日,上記各給付の対象たる労動者に上記運転手が当たらないとの理由でそれぞれ不支給処分としたため(以下,「本件処分」という。),原告がその取消しを求めたものである。 1 前提事実以下の事実は,当事者間に争いがないか,各項末尾記載の証拠により容易に認定できる事実である。 (1) 訴外A(以下,「亡A」という。)は,昭和19年4月に生まれ,昭和48年ころから訴外B(以下,「B」という。)の経営する訴外B建材において運搬業務に従事し,Bが,昭和62年2月ころ,訴外B建材を法人化し,骨材やアスファルト合材の販売を業とする訴外株式会社東武急運(以下,「東武急運」とい 下,「B」という。)の経営する訴外B建材において運搬業務に従事し,Bが,昭和62年2月ころ,訴外B建材を法人化し,骨材やアスファルト合材の販売を業とする訴外株式会社東武急運(以下,「東武急運」という。)を設立すると,東武急運やその関連会社における自動車運送業部門において,引き続き運搬業務に従事するようになった(争いがない)。 (2) 亡きAの具体的な業務内容は,Bが代表取締役を務める訴外錦長建門株式会社(以下,「錦長建門」という。)やBの妻である訴外C(以下,「C」という。)が代表者を務める訴外康幹舗道株式会社(以下,「康幹舗道」という。)から発注される骨材及びアスファルト合材の運搬と訴外関電化工株式会社赤穂事業所(以下,「関電化工」という。)から発注される石こうの運搬であり,亡Aは,平成9年3月24日以降は,訴外有限会社ミチビキ建材(以下,「ミチビキ建材」という。)が錦長建門の下請けとして骨材の販売を行うことになったため,ミチビキ建材においても,骨材(コンクリート原料など)の運搬や水切り業務(荷揚げした採石などを土置き場に輸送する業務)に従事するなどしていた(甲3,乙9,11)。 (3) 平成9年11月11日午前6時15分ころ,亡Aは,「甲1963」の10トントラック(以下,「1963車」という。)を運転して赤穂市ab所在の関電化工の東側路上を北から南へ走行中,くも膜下出血を発症して意識を失い,同所付近に備え付けの金網フェンスを突き破り,そのまま雑木林に突っ込んで停車するという交通事故を起こし(本件交通事故),同月16日午後0時58分ころ,搬送先である赤穂市民病院で,くも膜下出血により死亡した(争いがない)。 (4) 1963車は,亡Aが神戸いすゞ自動車株式会社(以下,「神戸いすゞ」という。)から,平成8年1月9日に割 8分ころ,搬送先である赤穂市民病院で,くも膜下出血により死亡した(争いがない)。 (4) 1963車は,亡Aが神戸いすゞ自動車株式会社(以下,「神戸いすゞ」という。)から,平成8年1月9日に割賦払いで購入したものであり,名義上の所有者は神戸いすゞであるが,亡Aから神戸いすゞに対し,毎月23万円が支払われていた(乙6,7)。 (5) ミチビキ建材は,平成9年3月6日に設立された有限会社で,その取締役は訴外D(以下,「D」という。)であり,その事務所は,康幹舗道の所有地にあった(争いがない)。 (6) 本件交通事故当時,亡Aの妻であった原告は,厚生年金保険法に基づく遺族補償年金の支給を請求し,平成10年3月12日,請求を認める裁定を姫路社会保険事務所長から受け,遺族補償年金を受給した(争いがない)。 (7) これに先立ち,原告は,被告に対し,平成10年3月4日,亡Aの死亡は業務上の事由によるものであるとして,所属事業所を東武急運とした上,労災保健法に基づき,遺族補償給付及び葬祭料を請求(以下,「本件労災請求」という。)した(争いがない)。 (8) 被告は,平成11年2月17日付けで,上記請求に対して,いずれも不支給とする旨の処分(本件処分)を行い,その旨原告に通知した(争いがない)。 (9) 原告は,同年3月12日,本件処分に不服があるとして,兵庫労働者災害補償保険審査官に対し,労働保険審査請求を行ったが,同審査官は,同年8月24日付けで,これを棄却した(争いがない)。 (10) 原告は,同年11月15日,労働保険審査会に対して,労働保険再審査請求をしたが,同審査会は,平成13年11月28日付けで,同再審査請求を棄却する旨の裁決をした(争いがない)。 2 争点原告は,本件交通事故当時,亡Aが東 保険審査会に対して,労働保険再審査請求をしたが,同審査会は,平成13年11月28日付けで,同再審査請求を棄却する旨の裁決をした(争いがない)。 2 争点原告は,本件交通事故当時,亡Aが東武急運又はB企業グループの業務に従事していたと主張して亡Aに労働者性があると主張し,被告は,従事していた事業がミチビキ建材のものであるとした上で,亡Aに労働者性が認められないと主張した。 3 争点に対する当事者の主張(1) 適用事業ア原告の主張(ア) 東武急運の事業であること亡Aが本件交通事故の当時従事していた運搬業務は,形式的にはミチビキ建材が指示していたものであるとしても,ミチビキ建材は仕事の振り分けを行っていただけであって,実質的には東武急運の事業であり,賃金台帳に亡Aの名前を載せて給与を支払い,源泉徴収票,健康保険証まで発行していた東武急運との関係で労働者性を判断すべきである。 (イ) B企業グループの事業であること仮に,東武急運の事業でなくとも,亡AはB建材の業務に従事し,BがB企業グループを立ち上げた後も,専属的にB企業グループの業務にのみ従事して他社の業務には一切従事しておらず,他方で,東武急運の本社の所在地は錦長建門本社の所在地でもあり,康幹舗道の支店の一つの所在地でもあり,東武急運の龍野営業所の所在地は錦長建門及び康幹舗道の1つの所在地であると同時にそれらの会社の営業地でもあって,上記3社の本社は東武急運及び錦長建門の各本社にある等相互に区別することが難しく,東武急運の従業員の中には所属意識がない者がいる等,B企業グループ各社は渾然一体となっていたのであるから,亡Aは,総体であるB企業グループの事業に従事していたといえるのであり,B企業グループとの関係で労働者性を 員の中には所属意識がない者がいる等,B企業グループ各社は渾然一体となっていたのであるから,亡Aは,総体であるB企業グループの事業に従事していたといえるのであり,B企業グループとの関係で労働者性を判断すべきである。 本件処分に対して労働保険審査会のなした裁決は,東武急運,錦長建門,康幹舗道について,実質的にこれらを同一のものと判断し,B企業グループと亡Aとの間の使用従属関係の有無を検討しているのであって,敢えて,使用者を一企業に限定する必要はなく,適用事業を一企業に限定すべきとの主張は,禁反言の原則に反する。 イ被告の主張(ア) 東武急運の事業ではなく,ミチビキ建材の事業である。 平成9年4月以降,亡Aが従事していた事業内容は,東武急運に関しては,関電化工から高砂市に所在する多木化学株式会社(以下,「多木化学」という。)に石こうを運搬する作業であるところ,亡Aが本件事故当日に従事していた作業は骨材の水切り作業であって,東武急運の事業には該当せず,むしろ,ミチビキ建材の業務であったといえるのであり,亡Aと東武急運との関係で亡Aの労働者性を検討する必要はなく,ミチビキ建材との関係で労働者性を判断すべきである。 また,亡Aに骨材の水切り作業を指示していたミチビキ建材は,東武急運や錦長建門や康幹舗道とは本店や支店の所在地も異なる上,これらの取締役である訴外E,BやCら(以下,「Eら」という。)もミチビキ建材の取締役とはなっておらず,ミチビキ建材の唯一の取締役であるDも東武急運等の役員になっていないほか,Eらと特別な関係を有しておらず,運搬業務も錦長建門との間で正式に契約書を交わして下請け会社として行っていたものであるから,単にミチビキ建材が東武急運の仕事の振り分けをしていただけで ていないほか,Eらと特別な関係を有しておらず,運搬業務も錦長建門との間で正式に契約書を交わして下請け会社として行っていたものであるから,単にミチビキ建材が東武急運の仕事の振り分けをしていただけであるという事実はない。 (イ) グループの総体としての事業を判断してはならない。 労災保険法3条は適用事業を単位としているところ,事業とは,一定の場所において,組織のもとに相関連して行われる作業の一体を言うものと解され,経営上一体をなす支店,工場等を総合した全事業を意味するものではない上,労働保険の保険料の徴収に関する法律3条によれば,労災保険法3条1項の適用事業の事業主については,その事業が開始された日に,その事業につき労災保険に係る労働保険関係が成立する旨規定していることからすれば,そもそも,原告が主張するような法人格を異にするグループ企業を総体として適用事業とすることはおよそ許されない。したがって,B企業グループの労働者であるか否かの判断はできない。 本件に対する兵庫労働者災害補償保険審査官及び労働保険審査会等の判断は,いずれも,B企業グループと亡Aの使用従属性について判断したものでないし,そもそも禁反言の原則の適用はない。 (2) 労働者性ア原告の主張(ア) 以下の(イ)から(ケ)の事情を考慮すると,東武急運またはB企業グループとの間で,亡Aの労働者性が認められる。 (イ) 代表者の認識B企業グループの実質的代表者であるBは,平成7年8月ころ,東武急運の営業ナンバーを取っていたダンプカーを,当時亡Aが使用していた訴外F(以下,「F」という。)が使用していることを知って,亡Aに対し「お前が乗らんかい」と注意したことが ,平成7年8月ころ,東武急運の営業ナンバーを取っていたダンプカーを,当時亡Aが使用していた訴外F(以下,「F」という。)が使用していることを知って,亡Aに対し「お前が乗らんかい」と注意したことがあり,また,Fが平成元年から東武急運の社会保険に加入していたことをBが知るや否や,BはFの社会保険を切り,他方で,亡Aの社会保険は切らずにいたものであり,このことを,「当社の従業員でもないのでその時点で社会保険も切った。」と述べていたことなどから,Bは,亡Aを従業員と考えてきた。事後的にも,Bは,遺族補償年金支払請求書,葬祭料請求書において,東武急運に所属する被災者が平成9年11月11日に業務に従事中に事故死した旨を証明する東武急運の会社印と代表者印を押印し,原告の労災請求に協力した。 (ウ) 業務従事の指示B企業グループは,亡Aに対して,朝から夜までかけなければこなせない仕事を任せており,実際に,B企業グループの取締役の一人である訴外G(以下,「G」という。)は,亡Aに対して,深夜や早朝の電話により,急な仕事を指示していたことがあり,他社の仕事を禁止するまでもなく,亡Aが他社の仕事に従事することなどおよそ不可能であるのが常態であった。 (エ) 指揮監督,時間的場所的拘束錦長建門の仕事については,亡Aは,午前8時ころでないと運行することは許可されないなど,最低限の時間的拘束を受けていた一方,休憩時間や運行経路,勤務経路については何ら具体的な指揮命令を受けていなかったが,これは,B企業グループにおける亡Aの職務が運搬業務であり,B企業グループにとっては,指定した納入時刻までに指定した納入品が納入場所に届けばよく,それ以外の具体的な拘束をする必要がなかったことによるもの ,B企業グループにおける亡Aの職務が運搬業務であり,B企業グループにとっては,指定した納入時刻までに指定した納入品が納入場所に届けばよく,それ以外の具体的な拘束をする必要がなかったことによるものである。 (オ) 代替性の有無東武急運の仕事につき,亡AがFを使用することを禁止されていなかったことについては,Fが,東武急運のダンプに乗車し,また,東武急運のヘルメットを着用して業務に従事したり,そのダンプにかかる費用を全額東武急運が負担したり,東武急運から給与を受けるなど,そもそもB企業グループの従業員であったという事情があったからであり,代替性があったことを認める事情にはならない。 (カ) 使用車両1963車の購入資金の原資及び毎月のガソリン代等は,ミチビキ建材名義で毎月支払われる金員の中から支払われていたのであり,また,東武急運は,ガソリン代,修理代を直接負担する旨の申出を行っていたこともある他,Cは,亡Aが使用していた車両について東武急運で償却中と認識しているなど,1963車は亡Aの所有ではなく,事業者性があるとの一応の推認をすることも許されない。 (キ) 源泉徴収の有無東武急運は,亡Aに対し,毎月定額の30万5000円から亡Aの所得税と社会保険料を差し引いて支払ってきた。 (ク) 財団法人日本中小企業福祉事業財団への加入について被告は,亡Aが,経営者に類する者しか加入できない財団法人日本中小企業福祉事業財団(以下,「日本フルハップ」という。)に加入していた旨主張するが,この加入は,原告の昔ながらの知人である訴外協栄生命の外交員に原告が勧誘されるままに,会社勤務のトラック運転手 本中小企業福祉事業財団(以下,「日本フルハップ」という。)に加入していた旨主張するが,この加入は,原告の昔ながらの知人である訴外協栄生命の外交員に原告が勧誘されるままに,会社勤務のトラック運転手には加入資格がないことなどとは知らずに亡Aに相談することなく加入したものであり,亡A自身は,日本フルハップへの加入を知らなかったという事情がある。 (ケ) 労務提供の形式昭和62年2月に東武急運が設立された際,「株式会社東武急運に従業員として勤務する上においては本就業規則を遵守致しますことを誓約致します」旨が記載された誓約書名簿に亡Aが署名押印した他,亡Aが業務に使用していた車両は,いわゆる青ナンバー登録で,自賠責保険及び登録名義は東武急運になっており,車体にも同社名が大きく書かれていた。 イ被告の主張(ア) 以下(イ)から(サ)に指摘した事情からすると,ミチビキ建材との関係で亡Aの労働者性は認められず,また,仮に適用事業が東武急運や錦長建門,康幹舗道の事業であったとしても,亡Aと東武急運との間に労働者性は認められない。 (イ) 代表者の認識ミチビキ建材の取締役Dは,ミチビキ建材の従業員がショベルの運転手1名のみで,亡Aとは請負契約であって,亡Aはミチビキ建材の労働者ではなかった旨供述している。東武急運,錦長建門,康幹舗道の実質的代表者であるBや同社の取締役であるCは,いずれも,亡Aが東武急運や錦長建門などの従業員ではなく,亡Aとの契約は請負契約である旨供述している。遺族補償年金支給請求書と葬祭料請求書への協力については,原告からの強い言動が影響しており,代表者の当時の認識とは評価できない。 (ウ) 業務従事の指示等亡Aは 族補償年金支給請求書と葬祭料請求書への協力については,原告からの強い言動が影響しており,代表者の当時の認識とは評価できない。 (ウ) 業務従事の指示等亡Aは,ミチビキ建材の作業に従事するに当たり,他の東武急運や錦長建門の作業に従事することを禁じられておらず,また,Dは,亡Aに対し,直接運送先を指示していたものの,運送という業務の性質上当然に必要とされる指示以外の指示をしていなかった。亡Aは,東武急運からの仕事を受注していたものであって,いずれの会社からも,他社での仕事を禁じられていなかった。また,東武急運や錦長建門,ミチビキ建材から,運搬先等の指示を受けていたものの,その他特段の指揮監督を受けていない。 (エ) 時間的場所的拘束亡Aがミチビキ建材から始業時刻や終業時刻を指定されていたことはなく,亡Aに対しては,ミチビキ建材の事務所に立ち寄ることなく,直接現場に行くいわゆる直行型を取ることが許されていた。東武急運や錦長建門においては,従業員の勤務時間を午前8時から午後5時までと定められていたものの,亡Aには始業時刻や終業時刻の指定等が一切無かった。 (オ) 代替性の有無東武急運の仕事として行った関電化工の石こう運搬業務につき,亡AはFを自己の労働者として雇用し従事させていたことがあったところ,東武急運において,亡AがFを使用することを禁止した形跡がない。原告は,Fが東武急運の従業員であった旨主張して反論するが,Fの仕事に対する支払いは東武急運等から亡Aに対してなされており,Fも亡Aが使用者であったことを認めている。Fが東武急運所有の車を使用したり,ヘルメットの着用をしていたとしても,これは関電化工の敷地に入るために必要であったから行っていた Aに対してなされており,Fも亡Aが使用者であったことを認めている。Fが東武急運所有の車を使用したり,ヘルメットの着用をしていたとしても,これは関電化工の敷地に入るために必要であったから行っていたことであり,Fが東武急運の従業員であったことにはならない。 (カ) 使用車両亡Aがミチビキ建材から受注した運搬作業で使用していた1963車は,平成8年1月9日に亡Aが神戸いすゞから割賦払いで購入したものであり,名義上は神戸いすゞであるが,亡Aが神戸いすゞに対して購入代金として毎月23万円を支払う等,実質上の所有者及び使用者は亡Aであった。原告は,上記原告の主張(カ)のように主張するが,亡Aはミチビキ建材の作業を行うようになった平成9年4月よりも以前から1963車を使用していたこと,1963車は自家用貨物車であり東武急運等の所有物とみるべき事情が存しないこと等から失当である。 また,Fが主に使用していた「乙8931」のダンプカー(以下,「8931車」という。)については,東武急運名義の車両ではあるが,亡Aが,東武急運から亡Aに支払われる運賃から車輌購入代金を毎月控除する方式で東武急運から購入して代金の支払いを継続していた途中であったものであり,実質的所有者は亡Aである。 (キ) 源泉徴収の有無等ミチビキ建材においては,亡Aへの支払いにおいて,所得税の源泉徴収や社会保険料の控除等を行っていない上,亡Aに対する支払を外注費として処理していた。 原告の主張(キ)にある東武急運の会計処理は,同社が昭和62年2月に陸運局から営業許可を取る際に,7台分の運転手をそろえる必要があり,持ち込み運転手として請負契約していた者についても,あたかも同社の労働者であるが )にある東武急運の会計処理は,同社が昭和62年2月に陸運局から営業許可を取る際に,7台分の運転手をそろえる必要があり,持ち込み運転手として請負契約していた者についても,あたかも同社の労働者であるが如く装った上で陸運局に申請したことを発端とするものであって,実際に,東武急運が,従業員から所得税を源泉徴収した場合に提出義務を負う給与支払報告書を亡Aの住所地である赤穂市に提出しない等,源泉徴収をしていた事実がないことは明らかであって,東武急運でなされていた会計処理は何ら実態を表していない。 (ク) 日本フルハップへの加入亡Aは,事業主やその家族従業者並びに出先機関の責任者及び経営幹部,言い換えれば,労災保険では労働者と扱えない者しか加入できない日本フルハップに,平成元年9月7日付けで原告及び亡Aの子Hを加入させ,平成7年2月8日付けで,「N」という個人事業の事業主として自らも加入し,死亡するまで毎月会費を支払っていた。 (ケ) 報酬について亡Aに対するミチビキ建材からの支払いは,積込日報と運転日報により照合して支払われれ,運賃の計算方法は1日,10トンダンプで1回の運搬場所によっていくらと定められ,その支払方法は本人に手渡しでなされ,領収書をとって,帳簿上は外注費で計算されるなど出来高払いであり,1963車の購入代金はもとより,諸経費,ガソリン代等も亡Aが負担していた上,亡Aの毎月の受取金額は100万円から180万円前後と相当高額にわたっている。また,亡Aは,支払いを受けた場合,「建設業A」の名前でミチビキ建材に対し,その都度領収証を発行している上,「N」という屋号を使用していた。 東武急運の従業員の場合は20日締めの翌月25日支払であり,賞与等も 合,「建設業A」の名前でミチビキ建材に対し,その都度領収証を発行している上,「N」という屋号を使用していた。 東武急運の従業員の場合は20日締めの翌月25日支払であり,賞与等も支給されていたが,亡Aに対する支払いは,出来高払いで,月末締めの翌月25日払いで支払われており,諸費用,ガソリン代等も亡Aが負担し,賞与等の支払もなかった上,亡Aに対しては,錦長建門と東武急運の仕事の出来高から,8931車の代金を控除した額が支払われていた。 (コ) 亡Aの申告内容亡Aは自己の所得を営業所得として申告していた。 (サ) 福利厚生等東武急運,錦長建門,康幹舗道の従業員には,制服やヘルメットが支給されているが,亡Aには支給されていなかった。 (3) 亡Aの労働者性を否定できないと主張するその他の事情ア原告の主張(ア) 特別加入制度の活用を指導しなかったこと亡Aは,約28年という長期に渡って東武急運の労災保険加入者とされ,その加入形態が誤っているとの指摘が被告側からなかった以上,亡Aにおいて特別加入制度の利用を期待することができなかったという特殊な事情を考慮すると,労働者性を否定した被告の判断(本件処分)には信義則違反の,あるいは禁反言の法理に反する違法がある。 (イ) 遺族厚生年金が給付されたこと実際に,原告は亡Aの死亡後,厚生年金保険法58条1項1号に基づく遺族厚生年金の支給を受けており,厚生年金との関係では政府が労働者と認める判断を一度下しているところ,死亡した労働者の損害の填補という点では,労災保険法に基づく遺族補償年金も厚生年金保険法に基づく遺族厚生年金も目的が基本的に共通していることから では政府が労働者と認める判断を一度下しているところ,死亡した労働者の損害の填補という点では,労災保険法に基づく遺族補償年金も厚生年金保険法に基づく遺族厚生年金も目的が基本的に共通していることから,国家機関の一翼を担う被告が,本件で亡Aの労働者性を否定する主張をすることは,亡Aを労働者であるとして政府が一度認定したことに実質的に矛盾し許されない。 イ被告の主張(ア) 特別加入制度の活用を指導しなかったこと亡Aは,いわゆる「一人親方等」(独立の事業者)であったのであるから,本来,通常の労災保険に加入することはできず,特別加入制度を利用すべきものであるところ(労災保険法第4章の2),亡Aは,東武急運の労災保険に不実の申請に基づき加入していたものであり,亡A自身も十分知悉した上でその不実の申請に協力していたので,自ら労災保険に加入したかのような虚偽の外形を作出しながら,特別加入制度を活用するよう指導すべきである旨の主張をすることは許されない。 (イ) 遺族厚生年金が給付されたこと厚生年金保険法に基づくものである遺族厚生年金の給付は,労災保険法とは行政目的を異にするのであり,遺族厚生年金の支給の事実は,亡Aの労働者性の判断に影響を与えない。 第3 理由 1 適用事業について(1) 我が国の労災補償制度は,労働災害による被災者の損害を填補するべき現実の必要性がある一方,労働災害が企業の営利活動に伴う現象であることをふまえて,企業活動によって利益を得ている使用者に当然に損害の補償を行わせることで労動者を保護する趣旨で立法化され,現在機能しているものであり,労災保険法3条が労働者を使用する事業を適用事業とする旨明確に規定するように,労災補償がなされるか否かは,被災時に 補償を行わせることで労動者を保護する趣旨で立法化され,現在機能しているものであり,労災保険法3条が労働者を使用する事業を適用事業とする旨明確に規定するように,労災補償がなされるか否かは,被災時に実際に労働者が従事していた業務の事業者との関係で労働者性を判断すべきものであることは明らかである。 加えて,労災保険の保険給付が認められるためには「業務上の事由による労働者の負傷,疾病,障害又は死亡」が必要となる(労災保険法1条,7条1項1号)ところ,かかる「業務」とは,上記のとおり,労災保険法の適用を受ける事業の運営に係る業務で,当該労働者が従事するものをいうことから,複数の事業に従事する労働者に労働災害が発生した場合には,いかなる適用事業の運営に係る業務であるかを厳密かつ慎重に判断する必要があることも明らかである。 そうであれば,これを本件において見ると,亡Aが労災保険法3条の労働者に該当するか否かの判断をする基準となる労働者性は,本件交通事故の当時,亡Aが従事していた業務(適用事業)の事業者と亡Aとの間で判断するべきこととなり,亡Aが本件交通事故の当時に従事していた業務についての判断が不可欠である。 (2) そこで,まず,この点についてみると,上記争いない事実に加え,以下の証拠(甲2ないし7,9の1ないし6,10,14,16ないし18,乙1の1,2,乙2,3,5,8ないし10,12,16ないし18)からすると,次のような事実が認められ,他に当該認定を左右するに足りる証拠はない。 ア亡Aは,昭和19年4月に生まれ,昭和48年ころからBの経営する訴外B建材において運搬業務に従事し,Bが,昭和62年2月ころ,訴外B建材を法人化し,骨材やアスファルト合材の販売を業とする東武急運を設立すると,東武急運 月に生まれ,昭和48年ころからBの経営する訴外B建材において運搬業務に従事し,Bが,昭和62年2月ころ,訴外B建材を法人化し,骨材やアスファルト合材の販売を業とする東武急運を設立すると,東武急運に設置された自動車運送業務部門において,引き続き運搬業務に従事するようになった。Bは,錦長建門の代表取締役をも務めており,また,その妻Cは康幹舗道の代表取締役を務めており,亡Aは,錦長建門や康幹舗道から発注される運搬業務に従事することもあった。亡Aは,東武急運において,骨材(海砂,真砂土,砕石,バラス等)の運搬を行っていたが,平成9年3月24日以降は,ミチビキ建材が錦長建門の下請けとして骨材の販売を行うことになり,亡Aは,骨材の運搬業務については,ミチビキ建材から直接仕事を受け,同社において運搬業務に従事していた。 イ平成9年4月以降に亡Aが従事していた各運搬業務の具体的内容は,①東武急運に関するものとして,訴外関西電力株式会社赤穂発電所の下請けである関電化工から高砂市に所在する多木化学に石こうを運搬する業務であり,②錦長建門のプラントのアスファルト合材や砕石等の運搬及び水切り作業であり,③ミチビキ建材に関するものとして,指定された港に船が入港した際に船に積載されている骨材(海砂,真砂土,砕石,バラス等)を岸壁まで運ぶ横持ち作業及びその後の土置き場まで骨材を運ぶ水切り作業並びに建築現場や現場(生コン屋)への運搬作業である。 ウミチビキ建材は,錦長建門のBの提案により,Dが,平成9年3月ころに設立した有限会社で,主に錦長建門が販売する骨材を仕入れる仕事を行っており,亡Aは,Bと古くから付き合いのある者で,「仕事に関しては段取りから任せることのできる人材」としてミチビキ建材の設立と同時に仕事を行い,同社から,毎月100 販売する骨材を仕入れる仕事を行っており,亡Aは,Bと古くから付き合いのある者で,「仕事に関しては段取りから任せることのできる人材」としてミチビキ建材の設立と同時に仕事を行い,同社から,毎月100万円以上の支払い(平成9年10月25日支払い分は,156万9900円)を受けていた。 エ亡Aは,本件交通事故当日の午前6時15分ころ,1963車を運転して赤穂市ab所在の関電化工の東側路上を北から南へ走行中,くも膜下出血を発症して意識を失い,同所付近に備え付けた金網フェンスを突き破り,そのまま雑木林に突っ込んで停車する交通事故を起こし(本件交通事故),同月16日午後0時58分ころ,搬送先である赤穂市民病院で,くも膜下出血により死亡したが,本件交通事故を起こした現場は,東武急運赤穂営業所等の事業場から直線道路で約500メートルの距離であり,また,赤穂港の船着き場から直線道路で約300メートルの距離でもあり,船着き場付近の荷積場所と思われる場所には康幹舗道のネーム入りのショベルカーが1台置かれていた。本件交通事故の当時,関電化工の仕事で関電化工の敷地に入る者は午前8時50分からとされている一方,ミチビキ建材からの骨材水切り業務については,赤穂千鳥港区運営協議会での合意上,午前7時からとされていた。ミチビキ建材のDは,本件交通事故の前日に赤穂港に日東丸が入港したと述べており,本件交通事故の当日(平成9年11月11日)までに,赤穂港に骨材を積載している日東丸が入ったことを知り,同船から降ろされた土砂などの骨材を約500メートルほど離れた土置き場へ運搬する業務につくために,港へ向かっていた途中であったであろうと認識している。前日にFは,日東丸の水切り作業に従事していたが,当日は,亡Aから自宅で待機するように指示されていた。 (3) 以上 運搬する業務につくために,港へ向かっていた途中であったであろうと認識している。前日にFは,日東丸の水切り作業に従事していたが,当日は,亡Aから自宅で待機するように指示されていた。 (3) 以上の認定事実によれば,亡Aが本件交通事故の当時従事していた業務がどの事業者の指示によるものか直接認定できる証拠はないが,本件交通事故の時刻と積み込み開始時刻の関係,前日にFがミチビキ建材の日東丸の骨材(粗砂)の水切り業務に従事している一方,当日は亡Aから待機を命じられていること等の事情からすると,亡Aが当時従事していた業務はミチビキ建材の骨材の運搬業務であることと推認するのが相当である。 (4) なお,これに反して原告は,実質的に骨材の運搬が東武急運の仕事でありミチビキ建材による運搬業務の指示は仕事の振り分けを東武急運から任されていたにすぎない旨や東武急運における賃金台帳の記載,源泉徴収,健康保険証の発行などを主張して,東武急運との関係で亡Aの労働者性を判断すべき旨主張するが,東武急運の仕事は関電化工の仕事のみを基準に計算されていたこと,骨材の運搬業務に対する支払いは,ミチビキ建材の計算でなされていたこと等からすると,かえって,実質的にも骨材の運搬業務はミチビキ建材での仕事であることが認められるから,東武急運における源泉徴収や賃金台帳の記載如何によって上記判断が覆ることはないというべきである。 (5) そして,原告はさらに,B企業グループが渾然一体となったグループ企業である旨主張し,予備的に,B企業グループとの関係で亡Aの労働者性を判断すべき旨主張するので,この点について検討すると,労災保険法3条は,労働者を使用する事業を適用事業とする旨明確に規定しているところ,そこにいう「事業」とは,一定の場所において,ある組織のもとに相関連して行 旨主張するので,この点について検討すると,労災保険法3条は,労働者を使用する事業を適用事業とする旨明確に規定しているところ,そこにいう「事業」とは,一定の場所において,ある組織のもとに相関連して行われる作業の一体をいうものと解され,経営上一体をなす支店,工場等を総合した全事業を意味するものではないこと,また,労働保険の保険料の徴収等に関する法律(以下,「労働保険徴収法」という。)3条及び4条の2によれば,労災保険法3条1項の適用事業の事業主については,その事業が開始された日に,その事業につき労災保険に係る労働保険関係が成立し,保険関係が成立した事業の事業主は,その成立した日から10日以内に,その成立した日,事業主の氏名又は名称及び住所,事業の種類,事業の行われる場所その他厚生労働省令で定める事項を政府に届け出なければならない旨規定していることからすると,労災保険にかかる法律関係もそれぞれの事業との関係で成立するものとして規定されていることが明らかであるから,法人格が別個である複数の企業が相互に関連して事業を行っていたとしても,グループ企業の行う事業全体を総体として一つの適用事業とすることはできないものと解される。 (6) また,原告は,労働保険審査会のなした裁決がB企業グループを渾然一体のものであると判断した上でB企業グループと亡Aの間の使用従属関係の有無を検討している旨主張し,適用企業を一企業のものに限定することは禁反言の原則に反して許されない旨主張するが,原告の上記主張を前提としても,労働保険審査会の裁決における前示判断が本件においても被告の判断を拘束し,禁反言の法理が適用される結果となると解することはできないから,原告の上記主張には理由がない。 (7) したがって,本件労災請求における適用事業がミチビキ建材の事業であ ても被告の判断を拘束し,禁反言の法理が適用される結果となると解することはできないから,原告の上記主張には理由がない。 (7) したがって,本件労災請求における適用事業がミチビキ建材の事業であることが認められ,東武急運やB企業グループの事業である旨の原告の主張はいずれも理由がない。 2 亡Aの労働者性(1) 労働者性の判断基準労災保険法は,その適用を受ける労働者についての定義規定を置いていないが,同法が労働基準法第8章「災害補償」に定める各規定の使用者にあたる個別事業者に課せられた災害補償責任を保険するための責任保険として制定されたという事情に鑑みると,労災保険法上の「労働者」も労働基準法の「労働者」と同一に解するのが相当である。そして,労働基準法9条は,同法上の「労働者」とは,職業の種類を問わず,同法8条所定の「事業又は事務所に使用される者で,賃金を支払われる者」をいうと規定しているが,これは要するに使用者との使用従属関係の下に労務を提供し,その対価として使用者から賃金の支払いを受ける者をいうものであり,その使用従属関係の有無は,雇用,請負といった形式の如何にかかわらず,使用者とされる者と労働者とされる者との間における業務遂行上の指揮監督関係の存否・内容,時間的及び場所的拘束性の有無・程度,労務提供の代替性の有無,業務用器材の負担関係,使用者の服務規律の適用の有無,報酬の性格,公租などの公的負担関係,その他諸般の事情を総合的に考慮して,その実態が使用従属関係の下における労務の提供と評価するにふさわしいものであるか否かによって判断されるべきものである。 (2) そこで,ミチビキ建材と亡Aとの間においてこれを見るに,前記本件で争いのない事実に加え,証拠(甲2,3,10,14,16ないし18,23,乙 か否かによって判断されるべきものである。 (2) そこで,ミチビキ建材と亡Aとの間においてこれを見るに,前記本件で争いのない事実に加え,証拠(甲2,3,10,14,16ないし18,23,乙4ないし7,10,12,13,16,18,19,20の1ないし20の5)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実が認められる。 ア代表者Dの認識ミチビキ建材の代表者であるDは,同社の従業員はシャベルの運転手1名だけであると認識しており,亡Aを従業員とは認識していなかった。 イ業務上の指示亡Aについては,後記のように,亡Aの裁量においてFと分担して仕事を処理するべきものとして,複数人でするべき分量の仕事を一括してミチビキ建材から指示されており,亡AはFに運搬業務を指示する一方,自らも,ほぼ毎日朝早くから夜遅くまで運搬業務にあたっていたが,他社で業務をすることを禁じられてはいなかった。 ウ時間的場所的拘束亡Aは,ミチビキ建材の事務所に立ち寄ることなく,指示された運搬業務をこなすために,積みおろし現場に直接向かう方式で就労する方式(いわゆる直行型)で従事していた。 エ仕事の代替性Fは,平成2年ころから亡Aにアルバイトとして雇われ,東武急運からの仕事である関電化工での石こうの運搬業務のほか,ミチビキ建材の仕事で骨材を生コン製造所に運搬しており,亡Aからの指示は,前日までに指示内容が分かるときは,亡AがFに対し運搬先を具体的に特定した連絡をなし,Fがダンプカーを家に持ち帰って,現場に直行するものとし,前日までに分からなければ,当日の朝,亡Aから電話があるので,自家用車で亡Aの自宅まで出勤し,ダンプカーに乗り換えるとするものであった。 ダンプカーを家に持ち帰って,現場に直行するものとし,前日までに分からなければ,当日の朝,亡Aから電話があるので,自家用車で亡Aの自宅まで出勤し,ダンプカーに乗り換えるとするものであった。 ミチビキ建材は,亡Aに対して段取りを全て任せており,亡Aはミチビキ建材からF分を含めて亡Aに対し仕事の振り分け及び配車が行われており,亡AはFに対して仕事の伝達を全て行い,亡AからFに対する支払いについては,「N」名が活字体で表示され,F殿とかかれた封筒により亡Aから給与を受けていた(亡A死亡後の平成9年12月分は,亡Aの妻である原告から支払いを受けた。)。Fに対しては,東武急運において源泉徴収票や給料明細書が作成されていた一方,Cらは,この処理が偽装であることを認める供述をしており,F自身,亡Aに雇われていたことを認める旨の供述をしている。 オ使用車両(業務用機材)の負担関係ミチビキ建材はダンプを1台所有していたが,亡Aが所有するダンプも運搬業務に使用され,さらに,錦長建門が足りないダンプを手配することがあり,配車が優先的に亡Aに回されることがあった。本件交通事故当時,亡Aが使用していた車両は,平成8年1月9日に亡Aが神戸いすゞから約1380万円で購入したダンプカー(車両番号甲1963,1963車)であり,本件交通事故当時,同車には,東武急運や錦長建材などの社名の表記はなかった。本件審査請求の際,原告は,審査請求代理人を通じ,「10トンダンプカーの購入は,東武急運から言われたことをやりやすくするために,被災者の裁量の下に行ったものと思う」と述べた。 ミチビキ建材の仕事である骨材の運搬業務にどの車両が使用されていたか不明であるが,亡Aは,東武急運の3台のダンプカーの払い下げを受け 災者の裁量の下に行ったものと思う」と述べた。 ミチビキ建材の仕事である骨材の運搬業務にどの車両が使用されていたか不明であるが,亡Aは,東武急運の3台のダンプカーの払い下げを受けて仕事に使用しており,払い下げを受け車両代金は亡Aの運賃から毎月10万円くらいずつ差し引かれていた。 カ源泉徴収の有無ミチビキ建材は,亡Aに対する支払いにおいて,源泉徴収や社会保険料を控除していない。 キ日本フルハップへの加入日本フルハップは,中小企業の健全な発展と福祉の増進に寄与することを目的として昭和63年に設立された労働大臣(現・厚生労働大臣)許可の公益法人であり,中小企業経営者等を対象に災害補償共済事業,災害防止事業,福利厚生事業,高齢者福祉事業等を実施する団体であり,加入資格につき,個人事業所関係者については,事業主,事業主の家族従事者,出先機関の責任者および経営幹部とされているところ,亡Aは,平成元年9月7日,原告及び亡Aの子Hを日本フルハップに加入させ,平成7年2月8日付けで,「N」名で個人事業の事業主として加入した。その後,亡Aは,会費の支払いを継続したが,平成7年7月31日に上記裕樹を脱退する手続きを行い,亡Aの死亡後,原告は,日本フルハップに対し,事業主Nの代表者を亡Aから原告自身に変更する手続きを行った。 ク報酬の性格亡Aに対する支払いは,ダンプカーの運賃として,積込日報と運転日報を照合して,1日,10トンダンプカーで1回の運転場所によっていくらと定められており,毎月末締めの翌月25日払いで計算し,支払い方法は,本人に現金で渡し,領収書を受け取るという方式をとり,帳簿上は外注費として計上されていた。 亡Aに対しては,毎月約100 っていくらと定められており,毎月末締めの翌月25日払いで計算し,支払い方法は,本人に現金で渡し,領収書を受け取るという方式をとり,帳簿上は外注費として計上されていた。 亡Aに対しては,毎月約100万円が支払われていたが,ダンプカーにかかる諸費用,ガソリン代などは,亡Aが自ら負担しており,また,実際に,ダンプカーの保険,税金,減価償却分,燃料費を含んだものとして運賃は手渡されおり,亡Aの受ける支払いは,赤字,すなわち,諸費用にかかる支出が収入を上回る状態になることがあった。亡Aは,生前,「以前よりも状態が厳しく,Nの方は赤字気味で,自分の給料で補填している,B建材の社員でもあり,Nのオーナーも大変だ。」と話したことがあるが,ミチビキ建材からの支払いは,「建材業A」宛てに支払われていた。 ケ亡Aの申告内容亡Aは,その住所地である赤穂市に対する平成7年度と平成8年度の所得申告において,営業所得として145万6126円(平成7年度),186万8586円(平成8年度)の申告を行った。 (3) 評価以上認定の事実によれば,亡Aは,外形上は,東武急運の従業員として賃金台帳に載せられ,毎月一定額の支払いを受けていたように処理されているものの,その実質は,いわゆる持ち込み運転手として,東武急運を中心とする関係企業が発注する運搬業務を請け負ってきた者であることが認められる。このことは,①亡Aが受け取っていた支払いは出来高に応じたものであること,②その運搬に係る費用として,ガソリン代,保険料,車の購入費用は亡A本人の負担とされていたこと,③亡Aは,運送物品,運送先,納入時刻等運搬業務に不可欠である指示を除けば,他に特段の指示を誰からも受けていないこと,④勤務時刻の拘束はなく,また,特定の会社で勤務す A本人の負担とされていたこと,③亡Aは,運送物品,運送先,納入時刻等運搬業務に不可欠である指示を除けば,他に特段の指示を誰からも受けていないこと,④勤務時刻の拘束はなく,また,特定の会社で勤務することもなかったこと,⑤東武急運及び関係企業の代表者は亡Aと請負契約をしていたとの認識を有していたことなどから裏付けられる。加えて,亡AがNなる屋号で報酬を受取り,Fを使用監督して同人に仕事を振り分けるなどして運搬業務をこなし,その収益を営業利益として申告すると同時に,日本フルハップに加入して事故の危険を引き受けてきたこと等の亡A本人の行動をも併せ考えると,亡Aがミチビキ建材の指揮監督のもとに労務を提供してきたとの事実は認め難い。 他に亡Aがミチビキ建材の労働者であることをうかがわせる証拠はない。 3 労働者性を否定できないと主張する事情の存否(1) 原告は,亡Aが東武急運等で長期にわたって労災保険加入者とされ,被告からその加入形態が誤っているとの指摘を受けなかったため,仮に亡Aが「一人親方等」に該当する独立の事業者であったとしても,亡Aには特別加入制度の利用を期待することができなかったこと及び原告に対して遺族厚生年金が給付されたことをそれぞれ主張して,本件処分は信義則違反及び禁反言の法理に反すると主張する。 (2) よって,検討するに,争いのない事実及びこれまでに認定した事実に加え,証拠(甲3,7,9の2,10ないし18,21ないし24,乙8,9,12,13,16なしい18)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア Bは,昭和62年2月,東武急運の法人設立のために陸運局から営業許可を取得する必要から7台分の運転手の頭数をそろえるため,亡Aを東武急運の従業員扱いにした形で給料月給の会 られる。 ア Bは,昭和62年2月,東武急運の法人設立のために陸運局から営業許可を取得する必要から7台分の運転手の頭数をそろえるため,亡Aを東武急運の従業員扱いにした形で給料月給の会計処理を行い,社会保険に加入させる手続きを行った。東武急運は,訴外I,訴外J,訴外K,訴外L,訴外M,Fの6名に亡Aを加えて,7台分の運転手をそろえた形にすることで陸運局から営業許可を取得した。 イ東武急運に形式上従業員として従事することから,亡Aは,東武急運の就業規則を遵守する旨の誓約書に署名,押印し,提出した。 ウ昭和58年ころにB興業に社員として入社し,東武急運の従業員として,東武急運龍野営業所で勤務している訴外Iは,就労時間午前8時から午後5時半まで,休憩時間は,午前10時からの30~40分間と午後3時から30~40分間あり,昼休みは,午後12時から1時間あり,休日出勤はほとんどなく,制服やヘルメットを東武急運から支給されていたのに対し,亡Aは,運搬業務に際しては現場に直行することがほとんどであり,龍野営業所に立ち寄ることは少なく,休憩時間などについての指示を受けていなかった。東武急運の従業員に対する賃金は,毎月20日締めの翌月25日支払いであったが,亡Aに対しては,1回運搬していくらという基準で,月締めの翌月25日払いの形式で支払われていた。 エ亡Aに対する支払いは,東武急運から,給料支払い明細書によってなされ,基本給を基準に時間外賃金,交通費などを加え,支給額の合計が毎月定額である30万5000円になるように計算され,亡Aは東武急運の賃金台帳に記載され,源泉徴収票に従って差し引かれて支払われていた旨の記載が東武急運の会計上なされていた。 オ平成9年3月以前は,亡Aに対する実際の支払いは,錦長建門 ,亡Aは東武急運の賃金台帳に記載され,源泉徴収票に従って差し引かれて支払われていた旨の記載が東武急運の会計上なされていた。 オ平成9年3月以前は,亡Aに対する実際の支払いは,錦長建門の運搬業務にかかる運賃と東武急運分の運搬業務にかかる運賃(後に認定するように,亡Aが,当時使用していたFに指示することにより,Fに従事させていたものも含む。)の合計額を錦長建門から外注費として支払う形とされており,亡Aは,錦長建門あてに毎月25日付けで領収書を提出していたが,その領収証には亡Aの住所,電話番号及び「建材業A」の文字が活字体で表示されており,「H」の印影が押捺されていた。平成9年4月以降,錦長建門の下請けとしてミチビキ建材が設立されてからは,領収証は,ミチビキ建材と錦長建門あてに分けて提出されている他は,それまで錦長建門に提出されていた領収証とほぼ同じ表示がなされていた。 カ亡Aに支払われていた錦長建門の運搬業務にかかる運賃は,関電化工の仕事であり,これは亡Aが車両番号8931車でFに行わせていたものであったところ,平成9年1月25日分として亡Aに対し錦長建門から支払われた金額の内訳は,①錦長建門の運搬業務にかかる運賃から錦長建門の亡Aに対する貸付分を控除した額,②8931車による運賃のうち,東武急運以外の額,③8931車による運賃のうち,東武急運の運搬業務による金額から社会・労働保険料・所得税控除額を差し引き,これに現物給与を加えた額となっていた。 キ Cは,東武急運の賃金台帳に亡Aの分として記載されている賃金が帳簿上操作されたものであり実際には支払われていないこと,東武急運の運搬業務として亡Aに支払われていた運賃は,労働の対価たる実質のない単なる「名義料」として毎月亡Aに支払われていた30万5000円 帳簿上操作されたものであり実際には支払われていないこと,東武急運の運搬業務として亡Aに支払われていた運賃は,労働の対価たる実質のない単なる「名義料」として毎月亡Aに支払われていた30万5000円と,実際に運搬した場合にはその運賃とを合計したものであったことをそれぞれ認めている。 ク平成9年11月17日に,亡Aの通夜の席で,Bは,亡Aの親族に対し,「心配することはない,労災の手続きをするから」と述べ,親族らを慰めた。 ケ社会保険庁長官は,平成10年3月12日,厚生年金保険法に基づく遺族厚生年金を原告に対して支給する旨決定し,姫路社会保険事務所長は,同日,支給開始年月を平成9年12月,年金額105万6000円(基本となる年金額を46万6900円,加給年金額又は加算額を58万9100円)の支給を原告に対して行う裁定を原告に通知した。 コ亡Aは,生前,親しい友人に対し,「以前よりも状態が厳しく,Nの方は赤字気味で,自分の給料で補填している,B建材の社員でもあり,Nのオーナーも大変だ。」と話していた。 (3) 被告が特別加入制度への加入を指導しなかったこと以上によれば,亡Aが実際に受け取っていた支払い額は,亡Aが自ら運送していた業務,あるいは,第三者を使用して運搬させていた業務の対価として計算された運賃額の合計であることが明らかであり,これは,直接には,錦長建材(平成9年5月分以降は錦長建材及びミチビキ建材)から亡Aに対して支払われており,その内訳から認められる社会保険料等の控除額(上記(2)カの③)については,あたかも,東武急運分の基本給についてなされていたように計算されているものの,その対価である労働の実質は認められず,東武急運の運転手として亡Aを登録しておく必要上,社会保険料の カの③)については,あたかも,東武急運分の基本給についてなされていたように計算されているものの,その対価である労働の実質は認められず,東武急運の運転手として亡Aを登録しておく必要上,社会保険料の支払い等の計算を東武急運がしなければならないために行われていたものに過ぎないのであって,労務提供の実態はなく,亡Aが東武急運の従業員でなかったと認められる。 他方,労働の対価たる実質のない定額を毎月東武急運から受けていた亡Aとしても,当然,上記のような東武急運の実情を認識していながら,本件交通事故に至るまで,自らが東武急運の従業員であるかのように仮装することに協力してきたことは,以上認定の事実から容易に推認できる。 そうだとすれば,被告側につき禁反言法理に反する事由は認められず,むしろ亡Aが東武急運の従業員であるかのように仮装し,虚偽の外観作出に関与しているものであるから,信義則違反あるいは禁反言の法理に基づき本件処分が違法である旨の原告の主張には理由がない。 (4) 遺族厚生年金の支払い以上の認定事実によると,確かに,社会保険庁長官が,本件交通事故について,原告に対し遺族厚生年金を支払う旨の裁定を行ったことが認められる。そして,厚生年金保険の適用も,事業所を単位として適用事業所を認定することによって行われ,被保険者の資格は,臨時的な使用の者を除き,使用関係がある者は全て有するとされ,使用関係の生じた日にその資格を取得し,使用関係が消滅した日の翌日にその資格を喪失するものとされるなど,厚生年金保険法の目的も,労災保険法と同様,補償金給付等により被保険者やその家族の生活と福祉の向上に寄与するものとされていることは法の規定から明らかである。 しかし,労災保険法と厚生年金法は,管掌 の目的も,労災保険法と同様,補償金給付等により被保険者やその家族の生活と福祉の向上に寄与するものとされていることは法の規定から明らかである。 しかし,労災保険法と厚生年金法は,管掌者が政府である点で同一であるものの個別の制度であるから,それぞれの行政目的に照らし,別個独自の観点から労働者とその家族の生活の向上を図ろうとするものであり,例えば,その事務も,厚生年金保険法では,社会保険庁長官あるいは政令によりその委任を受けた地方社会保険事務局長,社会保険事務所長の所管とされている一方,労災保険法では,労働基準法上の災害補償と一体的に運営する必要があることから,事業所の所在地を所轄する都道府県労働基準局あるいは事業所の所在地を管轄する労働基準監督署の担当とされているなど,それぞれの行政目的に応じた事務担当が定められているのであって,当然のことながら,相互に異なる判断がなされることが制度上予測されるところであり,特に,労災保険法では,適用事業とされる事業の種類によって,保険料の料率が異なるなど,保険の適用に特に慎重を期する必要があることなどからすると,全く同一の事案に対して,社会保険庁長官と都道府県労働基準局とで異なる判断がなされる場合のあることは当然考えられ,何ら異とするに足りないものというべきである。 したがって,原告に対して遺族厚生年金給付の支給決定がなされた事実をもって,政府が労災保険法の適用上,亡Aが労働者に該当すると確定的に認めたとか,被告がその判断に拘束される旨の原告の主張には理由がない。 (5) 以上によると,原告の主張する,信義則違反あるいは禁反言の法理に反する旨の主張には,いずれも理由がない。 第4 結論よって,亡Aが労働者でないことを理由に各給付を支給しないこととした本件処分 以上によると,原告の主張する,信義則違反あるいは禁反言の法理に反する旨の主張には,いずれも理由がない。 第4 結論よって,亡Aが労働者でないことを理由に各給付を支給しないこととした本件処分は適法であり,その取消しを求める原告の請求は理由がないからこれを棄却し,訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 神戸地方裁判所第六民事部裁判長裁判官松村雅司 裁判官水野有子裁判官三宅知三郎
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