平成12(行ウ)39 広島県職員タクシーチケット違法使用金返還等請求

裁判年月日・裁判所
平成14年12月18日 広島地方裁判所
ファイル
hanrei-pdf-7961.txt

判決文本文32,979 文字)

主文 1 本件訴えのうち,第1,第2事件被告らに対する別紙タクシー券使用一覧表Ⅰ記載1ないし10,11の(1)・(5)ないし(10)・(14)・(15)・(19)・(21)ないし(24),12,13の(3),14の(1)ないし(4),15,同一覧表Ⅱの1,2,3の(1)ないし(8)・(18)ないし(21)・(29)ないし(37),4,5,6の(1)・(2)の各タクシー券の使用並びに別紙タクシー券購入一覧表記載①及び②の各タクシー券の購入を対象とする部分を却下する。 2 被告Bは,広島県に対し,金7万0750円及びこれに対する平成13年1月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 原告の被告A,同B,同C,同D,同E,同Fに対するその余の請求及び被告G,同H,同I,同J,同K,同Lに対する請求をいずれも棄却する。 4 訴訟費用は,第1ないし第3事件を通じて原告及び被告Bに生じた費用の各30分の1を同被告の負担とし,その余を原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 第1事件(1) 被告A(以下「被告A」という。)は,広島県に対し,ア別紙タクシー券使用一覧表(以下「使用一覧表」という。)Ⅰ記載1ないし10の各タクシー券種類欄の金額に数量欄の数量を乗じた金員及びこれに対する平成12年12月29日から支払済みまで年5分の割合による金員イ金110万円に対する平成10年1月31日から,金45万円に対する平成11年1月22日から,いずれも支払済みまで年5分の割合による金員を各支払え。 (2) 被告B(以下「被告B」という。)は,広島県に対し,ア別紙使用一覧表Ⅰ記載11ないし15の各タクシー券種類欄の金額に数量欄の数量を乗じた金員及びこれ よる金員を各支払え。 (2) 被告B(以下「被告B」という。)は,広島県に対し,ア別紙使用一覧表Ⅰ記載11ないし15の各タクシー券種類欄の金額に数量欄の数量を乗じた金員及びこれに対する平成13年1月5日から支払済みまで年5分の割合による金員イ金6万円に対する平成11年12月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を各支払え。 2 第2事件(1) 被告Mは,広島県に対し,別紙使用一覧表Ⅱの1の(1)ないし(7),2の(22)ないし(54)に記載の各金員及びこれに対する平成13年3月10日から支払済みまで年5分の割合による金員(2) 被告Nは,広島県に対し,別紙使用一覧表Ⅱの1の(8)ないし(37),2の(55)ないし(75)に記載の各金員及びこれに対する平成13年3月10日から支払済みまで年5分の割合による金員(3) 被告Cは,広島県に対し,別紙使用一覧表Ⅱの1の(38)ないし(50),2の(1)ないし(21),3の(1)ないし(17),5の(3),6の(14)ないし(18)に記載の各金員及びこれに対する平成13年3月10日から支払済みまで年5分の割合による金員(4) 被告D(以下「被告D」という。)は,広島県に対し,別紙使用一覧表Ⅱの3の(18)ないし(28)に記載の各金員及びこれに対する平成13年3月13日から支払済みまで年5分の割合による金員(5) 被告Eは,広島県に対し,別紙使用一覧表Ⅱの3の(29)ないし(46)に記載の各金員及びこれに対する平成13年3月13日から支払済みまで年5分の割合による金員(6) 被告Oは,広島県に対し,別紙使用一覧表Ⅱの4の(1)ないし(9)に記載の各金員及びこれに対する平成13年3月10日から支払済みまで年5分の割合による金 済みまで年5分の割合による金員(6) 被告Oは,広島県に対し,別紙使用一覧表Ⅱの4の(1)ないし(9)に記載の各金員及びこれに対する平成13年3月10日から支払済みまで年5分の割合による金員(7) 被告P(以下「被告P」という。)は,広島県に対し,別紙使用一覧表Ⅱの4の(10)ないし(27),5の(4)ないし(14)に記載の各金員及びこれに対する平成13年3月10日から支払済みまで年5分の割合による金員(8) 被告Fは,広島県に対し,別紙使用一覧表Ⅱの5の(1)・(2),6の(1)ないし(13)に記載の各金員及びこれに対する平成13年3月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を各支払え。 3 第3事件(1) 被告Bは,広島県に対し,別紙使用一覧表Ⅲの1の(1)に記載の各金員及びこれに対する平成13年2月27日から支払済みまで年5分の割合による金員(2) 被告Gは,広島県に対し,別紙使用一覧表Ⅲの1の(2)に記載の金員及びこれに対する平成13年2月27日から支払済みまで年5分の割合による金員(3) 被告Dは,広島県に対し,別紙使用一覧表Ⅲの2に記載の各金員及びこれに対する平成13年2月27日から支払済みまで年5分の割合による金員(4) 被告Hは,広島県に対し,別紙使用一覧表Ⅲの3の(1)に記載の金員及びこれに対する平成13年2月25日から支払済みまで年5分の割合による金員(5) 被告Iは,広島県に対し,別紙使用一覧表Ⅲの3の(2)・(3)に記載の各金員及びこれに対する平成13年2月25日から支払済みまで年5分の割合による金員(6) 被告Jは,広島県に対し,別紙使用一覧表Ⅲの3の(4)に記載の金員及びこれに対する平成13年2月27日から支払済みまで年5分の割合による金員(7) 済みまで年5分の割合による金員(6) 被告Jは,広島県に対し,別紙使用一覧表Ⅲの3の(4)に記載の金員及びこれに対する平成13年2月27日から支払済みまで年5分の割合による金員(7) 被告Kは,広島県に対し,別紙使用一覧表Ⅲの3の(5)に記載の金員及びこれに対する平成13年2月27日から支払済みまで年5分の割合による金員(8) 被告Lは,広島県に対し,別紙使用一覧表Ⅲの3の(6)に記載の金員及びこれに対する平成13年2月26日から支払済みまで年5分の割合による金員(9) 被告Aは,広島県に対し,別紙使用一覧表Ⅲの3の(7)に記載の金員及びこれに対する平成13年2月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を各支払え。 第2 事案の概要本件は,原告が,広島県の職員である被告らが広島県東京事務所(以下「東京事務所」という。)で保管していたタクシー券の交付を受けたりタクシー券の払出しを決裁したことにつき,タクシー券使用伺い(以下「使用伺い」という。)及びタクシー券使用整理簿(以下「使用整理簿」という。)等のタクシー券の受払の適正さを担保すべき帳簿類の記載が杜撰でタクシー券を使用する必要性が認められず,タクシー券の価格相当額を不当に利得し,あるいは違法な公金の支出により広島県に損害を被らせたと主張し,また,東京事務所のタクシー券受払簿(以下「受払簿」という。)上は十分な在庫があるにもかかわらず大量のタクシー券の購入を決裁し,現実にタクシー券の購入が必要となるまでの間の利息相当の損害を広島県に被らせたと主張して,被告らに対し,広島県に不当利得の返還ないし不法行為に基づく損害賠償をするよう請求している住民訴訟である。 1 争いのない事実等(1) 当事者ア原告原告は,広島県内に事務所を置き 対し,広島県に不当利得の返還ないし不法行為に基づく損害賠償をするよう請求している住民訴訟である。 1 争いのない事実等(1) 当事者ア原告原告は,広島県内に事務所を置き,広島県民を会員とする市民オンブズマン団体である。 イ被告ら(ア) 第1事件被告らは,東京事務所所長の職にあった当時,別紙使用一覧表Ⅰ記載の各タクシー券の使用及び別紙タクシー券購入一覧表(以下「購入一覧表」という。)記載の各タクシー券の購入を決裁した者である。 (イ) 第2事件被告らは,東京事務所の職員であった当時,別紙使用一覧表Ⅱ記載のとおり,各タクシー券を使用した者である。 (ウ) 第3事件被告らは,東京事務所の職員であった当時,別紙使用一覧表Ⅲの1及び2記載のとおりタクシー券を配布・使用した者,あるいは,広島県庁本庁からの東京出張に際し,同一覧表Ⅲの3記載のとおり東京事務所からタクシー券を受領した者である。 (2) 原告の監査請求時期ア原告は,平成12年9月11日,別紙購入一覧表記載のタクシー券の購入及びタクシー券の保管に関し監査請求をしたが,広島県監査委員は,同年11月16日,同請求を棄却した(第1事件甲2の1(以下,事件の表示のない書証は全て第1事件のものである。))。 イ原告は,同年9月25日,別紙使用一覧表Ⅰ記載の各タクシー券の使用に関し監査請求をしたが(その対象につき争いがある(争点(1)ア)。),広島県監査委員は,同年11月16日,同請求の一部を監査対象から除外するとともに同請求を棄却した(甲2の2)。 ウ原告は,同年10月10日,別紙使用一覧表Ⅱの1ないし6記載の各タクシー券の使用に関し監査請求をしたが,広島県監査委員は,同年12月11日,同請求の一部を監査対象から 却した(甲2の2)。 ウ原告は,同年10月10日,別紙使用一覧表Ⅱの1ないし6記載の各タクシー券の使用に関し監査請求をしたが,広島県監査委員は,同年12月11日,同請求の一部を監査対象から除外するとともにその請求を棄却した(第2事件甲2の1・2)。 エ原告は,同年11月13日,別紙使用一覧表Ⅲの1ないし3記載の各タクシー券の使用に関し監査請求をしたが,広島県監査委員は,平成13年1月12日,同請求を棄却した(第3事件甲2の1ないし3)。 (3) 随時監査の実施とその結果広島県監査委員は,平成12年9月19日,東京事務所における平成9年4月1日から同12年9月18日までのタクシー券に係る購入及び使用管理について,随時監査を開始した。 広島県監査委員は,同年10月27日,「東京事務所の財務に関する監査(随時監査)の結果」を発表し,上記期間における東京事務所のタクシー券の使用について多数の不備,不十分な処理・管理があったと指摘したが,改善意見を述べるにとどまり,返還命令はなされなかった(甲3の1・2)。 2 争点(1) 本案前の争点ア監査請求の有無(第1事件)(被告らの主張)原告は,平成12年9月25日になした監査請求の監査請求書において,4通の資料を添付し,違法な使用とする各行為を具体的・個別的に摘示して監査の対象を列挙しているが,別紙使用一覧表Ⅰ記載5の(1)ないし(7),9の(20),10の(1)ないし(8)及び15の(1)ないし(5)の各タクシー券の使用については監査請求書及び添付資料に記載がない。また,被告A及び同Bのタクシー券使用分については,監査請求書の添付資料の欄外に記載され,明らかに監査請求の対象外として摘示されている。 したがって,上記各タク 書及び添付資料に記載がない。また,被告A及び同Bのタクシー券使用分については,監査請求書の添付資料の欄外に記載され,明らかに監査請求の対象外として摘示されている。 したがって,上記各タクシー券の決裁については住民監査請求そのものが行われていないので,同部分に関する本件訴訟は,監査請求前置主義に反し不適法というべきである。 (原告の主張)原告は,平成12年9月25日,平成9年度ないし同11年度の東京事務所のタクシー券の使用に関し,「使用者,使用目的が不明なもの」「受領印のないもの」「用務先不明なもの」「至急と明示しないもの」「代理人が受領し,使用者の受領印のないもの」「一度の機会に多額のタクシー券を受領しているもの」は違法な支出であるとして,監査請求をした。 よって,被告ら指摘のタクシー券の使用はこれらのいずれかに該当し,監査請求を経ているのであるから,被告らの主張は理由がない。 イ監査請求の対象の人的同一性について(第1事件)(被告らの主張)原告が行った監査請求は,各起案者,使用者等の職員に対する返還請求であり,別紙使用一覧表Ⅰ記載の各タクシー券について決裁者である被告A及び同Bは,同タクシー券の使用については住民監査請求において返還請求を受けていない。 住民訴訟において,請求者が代位行使するところの,地方公共団体がその長及び職員に対して有する損害賠償請求権は,各人ごとにその地位,職務権限,関与の方法・程度を異にし,結論に影響を及ぼすべき差異が存するのが通常であるから,損害賠償を求める相手ごとにそれぞれ監査を前置すべきである(広島高等裁判所昭和58年10月11日判決・行集34巻10号1757頁参照)。したがって,被告A及び同Bに対する別紙使用一覧表Ⅰ記載の各タク 損害賠償を求める相手ごとにそれぞれ監査を前置すべきである(広島高等裁判所昭和58年10月11日判決・行集34巻10号1757頁参照)。したがって,被告A及び同Bに対する別紙使用一覧表Ⅰ記載の各タクシー券の使用を対象とする本件訴えは,住民監査請求前置主義に反し不適法である。 (原告の主張)監査請求の対象と住民訴訟の対象の同一性は,住民訴訟の対象とする当該行為あるいは怠る事実が監査請求の対象行為として監査請求書に摘示されているか否かによって判断されるのであり,その当該行為を行う権限を有する長や職員は,その氏名が監査請求書に明示されているか否かで判断されるものではない。その氏名などが監査請求書に明示されていなくても,住民訴訟の対象とする当該行為あるいは怠る事実が監査請求の対象とされている以上,対象行為の主体あるいは相手方を住民訴訟の対象とすることができるというべきである。 よって,被告A及び同Bに対する請求は,監査請求を経ており適法である。 ウ監査請求期間についての「正当な理由」の有無(第1,2事件)(被告らの主張)別紙使用一覧表Ⅰ記載のタクシー券の使用のうち平成11年9月24日以前の使用分及び同一覧表Ⅱの1ないし6記載のタクシー券の使用のうち同年10月9日以前の使用分については,地方自治法(以下「地自法」という。)242条2項の監査請求期間を経過しているため,住民監査請求の対象たり得ない。また,同年9月10日以前に行われたタクシー券の購入についても,監査請求期間経過後に監査請求がなされたため,適法な監査請求を経ていない。 地自法242条2項が監査請求につき期間制限を設けたのは,地方公共団体の機関や職員の行為をいつまでも争いうる状態にしておくことは法的安定性の観点から相当でない 適法な監査請求を経ていない。 地自法242条2項が監査請求につき期間制限を設けたのは,地方公共団体の機関や職員の行為をいつまでも争いうる状態にしておくことは法的安定性の観点から相当でないので,早期に確定させようという理由によるものである。一方,同項但し書の「正当な理由」の有無は,監査請求人の主観的事情ではなく,客観的に請求期間内に住民監査請求することが不可能又は困難であったか否かにより判断されるものであり,当該行為が秘密裏になされた場合や天変地異による交通機関の途絶など物理的困難のあった場合に認められるもので,情報公開制度によって広く住民に知る機会が与えられている場合には,住民はいつでも当該行為を知ることができ,客観的に知ることが不可能又は困難な状況にあるとはいえない。 広島県の場合,広島県公文書公開条例が平成2年10月1日に施行されているのであって,タクシー券の使用・管理に関する事務は秘密事務ではないから,住民が相応の関心と注意力をもって調査すれば1年が経過する以前から知ることができたものである。 (原告の主張)公文書公開条例があることと違法・不当な公務員の行為を知りうることとは別の問題である。情報公開制度によって広く住民に知る機会が与えられていることは事実でも,住民がいつでも当該行為を客観的に知ることができる状態であったとはいえない。 地自法242条2項但し書の「正当な理由」は,住民が相当の注意力をもって調査したときに客観的に見て当該行為を知ることができたかによって判断されるべきものであるところ,東京事務所が総額1000万円を超える在庫がありながらタクシー券を購入していたことや,使用者・使用目的・用務先が不明なままタクシー券が交付されているとか,受領印がないのに交付されているとか,一度 ろ,東京事務所が総額1000万円を超える在庫がありながらタクシー券を購入していたことや,使用者・使用目的・用務先が不明なままタクシー券が交付されているとか,受領印がないのに交付されているとか,一度に多額のタクシー券が交付されているなど,使用基準に明確に反するタクシー券の使用が日常的になされているといったタクシー券の購入・使用状況に関する情報を被告らが明らかにしたことはなく,住民に隠れて秘密裏に違法・不当な公金支出を漫然と続けていたものである。 したがって,本件の各監査請求には「正当な理由」があるというべきである。 (2) 本案の争点アタクシー券購入決裁の違法性の有無(原告の主張)被告Aは,東京事務所には平成9年12月19日現在で915万3900円のタクシー券の在庫があるにもかかわらず,平成10年1月30日の110万円分のタクシー券の購入につき経費支出伺いを決裁し,平成11年1月7日現在で713万8550円のタクシー券の在庫があるにもかかわらず,同月21日の45万円分のタクシー券の購入につき経費支出伺いを決裁し,被告Bは,平成11年12月14日に同月15日の6万円分のタクシー券の購入につき経費支出伺いを決裁して,それぞれ多額のタクシー券の在庫があるのに,別紙購入一覧表記載のとおり多額のタクシー券を新規に購入することを決定した。 タクシー券の使用実績は,平成8年度が299万3550円,平成9年度が305万2350円,平成10年度が264万4250円であるが,受払簿によれば,平成9年4月1日現在で東京事務所に保管されていたタクシー券は,3150円券が1146冊,5250円券が1548冊の合計1173万6900円もの多額に上り,これは使用実績の約4年分に相当するものであるから,購入の必要性 東京事務所に保管されていたタクシー券は,3150円券が1146冊,5250円券が1548冊の合計1173万6900円もの多額に上り,これは使用実績の約4年分に相当するものであるから,購入の必要性は全くなかった。また,被告Aによる平成9年12月19日の決裁によって購入された3000円券のタクシー券が最初に使用されたのは,購入から12か月後の平成11年2月1日であり,5000円券に至っては17か月後の同年7月である。したがって,被告らによるタクシー券の購入の必要性に関する主張やタクシー券の組合せによる有効活用の主張は理由がない。 よって,上記各タクシー券の購入の決裁は,不適正な予算経理の根絶のため行政経費の原価意識,節減意識などの事業経営的感覚の涵養に務めるべきとする行政体質改善対策に悖ることはもちろん,購入時期と額の正当性を合理的に説明しえず,地自法2条14項にも反する違法なものである。また,被告らの説明が真実であるとしても,購入すべきでない時期に購入代金を支払ったのは不当な支出であり,被告らはその支払金に対する年5分の利息相当損害金を支払うべきである。 (被告らの主張)(ア) 地方公共団体の長の財産購入契約の締結は,対価を含めて,その裁量に委ねられた行為であると解され,購入の必要性と取得価格が適正価格であるかどうかにおいて,裁量権の逸脱ないし濫用が認められるかを基準にその違法性を判断すべきである。 本件におけるタクシー券の購入は,購入時の在庫量を目安としながらも今後の需要や過去の使用実績等の諸般の事情を総合的に勘案して購入するのが通常の取扱いであり,まさに東京事務所所長の裁量権に属する事項というべきであり,取得価格も適正価格であるし,以下のとおり購入の必要性も認められることから,裁量権の逸脱ないし 的に勘案して購入するのが通常の取扱いであり,まさに東京事務所所長の裁量権に属する事項というべきであり,取得価格も適正価格であるし,以下のとおり購入の必要性も認められることから,裁量権の逸脱ないし濫用は認められない。 (イ)a 平成9年度の購入(110万円分)平成8年度の文書が破棄されているため正確な説明は不可能であるが,理論上は,平成9年度の使用見込みを勘案して計算した場合,1年以内に3000円券の不足が生じることが見込まれたため補充しようとしたものである。5000円券を購入したのは,従来販売されていた3150円券及び5250円券と併せて使用者に交付可能な額面の組合せを増やす利点があると考えたためである。 また,事務の繁雑さを避けるためにある程度の在庫の幅を見込んで購入する行為は,裁量の範囲を超えているとまではいえない。 b 平成10年度の購入(45万円分)当時のタクシー券保有状況は,3150円券の在庫がほぼ尽きており,3000円券が200冊あったものの,同年4月から12月までの使用実績が400冊以上に上ったことから,1年以内に3000円券の不足が見込まれたためである。 c 平成11年度の購入(6万円分)東京事務所の通常のタクシー券の購入とは異なり,広島県庁本庁のR部S課が公共事業要望活動の移動用という特定の目的に使用するために,予算令達と購入依頼を東京事務所に行ったことから3000円券を20冊購入する決裁をし,R部S課へ払い出されたものであり,必要な購入であって違法性はない。 (ウ) タクシー券の管理は,物品出納職員である総務課長が管理し,受払の記録管理を行っており,杜撰な管理で残高と在庫が一致しないという事実はない。 イタクシー券使 あって違法性はない。 (ウ) タクシー券の管理は,物品出納職員である総務課長が管理し,受払の記録管理を行っており,杜撰な管理で残高と在庫が一致しないという事実はない。 イタクシー券使用・決裁の違法性の有無(原告の主張)(ア)a 本件各タクシー券の使用についての違法性の判断基準は,「タクシー券の使用基準」(以下「本件使用基準」という。)である。これは,昭和55年2月に行政体質改善対策として広島県により策定されたものであるところ,これ以外にはタクシー券の使用基準は存せず,被告らが主張する使用基準は根拠が全くない。よって,本件使用基準を基礎として違法性を判断すべきであり,被告らが主張する本件使用基準の解釈又は運用の幅は,まさに恣意的な使用を自白するに等しく,本件使用基準に反するものである。このことは,広島県監査委員が随時監査で示した使用基準についても同様であり,被告らを擁護すべく定立した独断的基準というべきである。 そして,本件使用基準は,基本原則として,「公務上必要がある場合には,タクシーを利用することができるが,原則として勤務時間外及び勤務時間内であっても公用車が使用できないか,又は使用が困難な場合に限る」としたうえ,(a) 深夜に及ぶ勤務のため,通常の交通機関がなく,帰宅できない場合(b) 災害その他緊急の呼び出しを受け,通常の交通機関を利用できないか,又は利用が著しく困難な場合(c) 部局長が,日曜・休日等において,緊急用務のため登庁する必要がある場合にはタクシーを使用できると定めているのである。 b 使用一覧表ⅠないしⅢ記載の各タクシー券の使用についての使用伺いや使用整理簿等は,下記(イ)のとおり,必要な記載がされていないと にはタクシーを使用できると定めているのである。 b 使用一覧表ⅠないしⅢ記載の各タクシー券の使用についての使用伺いや使用整理簿等は,下記(イ)のとおり,必要な記載がされていないとか虚偽の記載がされているなど杜撰なものであり,本件使用基準に該当しない使用について記載された内容であるにもかかわらず,被告らは,自ら作成したり職員から提出された使用伺いを漫然と決裁して本件使用基準に反するタクシー券の使用を容認し,あるいは,タクシー券の交付を受けて本件使用基準に反してタクシー券を使用するなどした。これら本件使用基準に反した理由のない公金支出や決裁文書の不備による公金の支出等の行為は違法であり,その結果,広島県に対して交付・使用されたタクシー券の金額相当の損害を与えたのであるから,これらは不法行為であり,かつ,不当利得である。 c 日額旅費との重複支給について広島県は,職員の旅費の支給に関する規程(甲31)6条において,東京事務所等の職員にあっては一定額の日額旅費を定めて毎月一定額を支給することになっており,被告らのうち東京事務所の職員である被告らはこの日額旅費の支給を受けていた。 よって,東京事務所の職員は,東京都内の移動に伴う旅費を日額旅費で負担すべきであり,タクシー券を使用することは原則として許されないのであって,タクシー券の使用は旅費の重複支給であり違法である。 仮に,重複支給でないとしても,この東京事務所特有の事情を無視したタクシー券の使用は違法であり,タクシー券の使用の違法性の判断要素の1つとなる。 (イ)a 東京事務所所長の使用について被告A及び同Bは,東京事務所所長であったが,自らの使用するタクシー券の使用伺いにおいて,使用目的を業務連絡と の判断要素の1つとなる。 (イ)a 東京事務所所長の使用について被告A及び同Bは,東京事務所所長であったが,自らの使用するタクシー券の使用伺いにおいて,使用目的を業務連絡と記載するのみで複数冊のタクシー券を数度にわたり受領しており,また,使用整理簿が作成されていないので用務内容,行き先及び使用金額等の記録が一切なく,正当に使用されたという証拠が何ら存在しないから,公務上の使用とは認めがたく,かかる支出が許されるべきではない。 b 副知事の使用について副知事の上京に伴う旅行命令簿には,東京滞在中の全区間で公用車を使用した旨の記載がある。これによれば,副知事は,上京中にタクシーを使用することはなく専ら公用車を使用したのであり,大量のタクシー券を交付する理由は全くない。副知事が上京中に公務によってタクシー券を使用したことを裏付ける証拠は一切ない。 c 来客用の使用について来客用を目的とするタクシー券の使用伺いには,来客名の記載がなく用務内容も一切記載されていないから,公務上の必要性があって来客にタクシー券を交付したことを裏付ける証拠はない。東京事務所への来客者全てにタクシー券を交付したとは考えられず,何を基準にタクシー券を交付したのか全く不明である。 また,タクシー券の使用基準には,来客用にタクシー券を交付する定めはなく,他方で広島県庁用自動車管理規程(甲9)12条には「来客の用に供する場合において,特に必要があるとき」に公用車の使用を認めており,仮に交付が認められるとしても,公務上必要であり公用車が使用できないか使用困難な場合に限定されることは当然である。 被告Aは,決裁を求められた時点で来客名,用務内容等を口頭で確認し公務上の必要性を判 られるとしても,公務上必要であり公用車が使用できないか使用困難な場合に限定されることは当然である。 被告Aは,決裁を求められた時点で来客名,用務内容等を口頭で確認し公務上の必要性を判断したとするが,使用伺いに交付の必要性を記載しない理由はなく,来客名及びその用務内容とタクシー券の支給理由を明らかにしないでタクシー券を交付することはタクシー券の使用基準に違反するというべきである。 d 代理人受領について使用伺いの記載を見ると,受領者欄にタクシー券の交付を受けるべき者ではなく代理人が受領したとされるものが多数あるが,中には使用者が東京事務所に立ち寄ったとされるものがあり,容易に使用者本人から受領印を受けることができたといえるから,代理人が受領する理由はない。 e 「荷物」の使用について本件使用基準は,勤務時間内にタクシーを使用できるのは公用車が使用できない場合に限定している。東京事務所の公用車の管理は杜撰で,運転記録は空車のまま相当長距離を走行した内容となっているが,この記録を前提とすれば,公用車が2台とも使用できない日はなく,公用車が使用できるにもかかわらず荷物運搬としてタクシーを使用している。 これは,本件使用基準に反するほか,地自法2条14項にも反するものである。 f 「深夜勤務」,「交通機関なし」又は「至急」の使用について東京事務所の時間外勤務,休日勤務,夜間勤務及び宿日直勤務命令簿(乙5の1ないし3,以下「時間外勤務等命令簿」という。)には,深夜勤務をしたという記載が全くないから,深夜勤務をしたことを裏付ける証拠は何もなく,公共交通機関が運行を終了する時刻までサービス残業をしていたという根拠もない。よって,公共交通機関の運行終了を理 深夜勤務をしたという記載が全くないから,深夜勤務をしたことを裏付ける証拠は何もなく,公共交通機関が運行を終了する時刻までサービス残業をしていたという根拠もない。よって,公共交通機関の運行終了を理由としてタクシーを使用しなければならない理由はなく,その使用は本件使用基準に違反する違法なものである。 また,「至急」とされているもののうち,行き先をT町とする使用は,T町の公舎に帰宅するために使用したものと推測され,これを「至急」とする理由はなく,違法というべきである。 g 旅行命令簿の用務先と異なる使用について広島県庁本庁から東京への出張に際しては,旅行命令簿に用務先を複数箇所記載できるようになっており,旅行者は帰庁後速やかに復命書を提出して旅行完了の事実の確認を受けるものとされている。 被告らの旅行命令簿には,タクシー使用区間に関する用務先は記載されておらず,旅行命令簿に記載のないタクシー券の使用は違法である。 広島県庁本庁からの東京出張者に対する東京事務所のタクシー券の支給・使用は杜撰きわまりなく,用務先とは無関係に使用伺いが作成され,出張が2日から1日に短縮となってもタクシー券を返還しないといった公金の支給が平然となされている。 (被告らの主張)(ア)a 広島県のタクシー使用については,昭和55年2月策定の行政体質改善対策の中で本件使用基準に定められ,「1 基本原則」に規定しているとおり,公務上必要がある場合はタクシーを使用することができるのであり,どのような場合に公務上の必要があるかは業務内容等をふまえて個別に判断する必要があるため,各所属部署の判断とされている。 東京事務所における公務上の必要とは,東京事務所の使命が熾烈を極める地域間競争 に公務上の必要があるかは業務内容等をふまえて個別に判断する必要があるため,各所属部署の判断とされている。 東京事務所における公務上の必要とは,東京事務所の使命が熾烈を極める地域間競争において広島県の発展のために不可欠な早期的確な情報の収集及び首都圏における広島県の地域情報の発信の最前線基地として最大限の役割を果たすことにあり,これに従事する職員の業務の特殊性及び東京事務所の公用車配備状況等を総合的に勘案し,(a) 通常の交通機関利用では対応ができない緊急性がある場合(b) 通常の交通機関利用では運搬が困難な荷物がある場合(c) 通常の交通機関利用との比較において,時間短縮効果が大きく,業務が効率的に処理できる場合(d) 広島県庁本庁の幹部職員等が旅行命令に附随した用務を限られた時間内に遂行する必要がある場合(e) 県行政を推進するために必要な来客等の案内(f) 深夜に及ぶ勤務のため通常の交通機関がなく帰宅できない場合(g) その他業務遂行上必要と認められる場合としている。 b 原告は,公用車を使用することが原則である旨主張するが,東京事務所の公用車2台は,重要人物との接触や全国規模の会合への出席が多い東京事務所の業務の特殊性に配慮して,専ら知事,副知事,県議会議長等の特別職の送迎等のために運行し,社会通念上,儀礼的かつ格式あるとみなされている車種が割り当てられ,東京事務所職員の日常的な用務では使用しないという運用であり,かかる東京事務所の公用車の特殊性及び配備理由を考慮すると,公用車が運行されていないからといって直ちに職員が公用車を使用できる状況であったとはいえず,原告の主張は理由がない。 c 原告は, かる東京事務所の公用車の特殊性及び配備理由を考慮すると,公用車が運行されていないからといって直ちに職員が公用車を使用できる状況であったとはいえず,原告の主張は理由がない。 c 原告は,東京事務所職員には日額旅費が支給されており,タクシー券を使用することは認められないと主張するが,東京事務所職員の日額旅費については,職員の旅費に関する条例22条1項に規定する日額旅費として,職員の旅費の支給に関する規程6条に基づき定額方式となっており,タクシー券の使用や公用車等,無料の交通機関を使用して旅行した場合に,日額旅費の支給を認めないとする規定はない。 したがって,日額旅費とタクシー券の使用は,経費の二重支給にあたらず,原告の主張は失当である(東京地方裁判所昭和63年10月25日判決・行集39巻10号1300頁参照)。 (イ) 原告は,使用伺いや使用整理簿等の記載の不備等を指摘し,タクシー券の使用の必要性を認めることができず違法であると主張する。 しかし,広島県物品管理規則でタクシー券につき必要とされる備付帳簿は,郵便切手類出納簿たる受払簿であり,この帳簿への記載は適正になされていた。他方,使用伺い及び使用整理簿は,あくまで内部事務を整理する目的で使用されていた東京事務所独自の補助簿にすぎず,タクシー券の管理責任者たる総務課長及び同課職員がタクシー券の出納事務を円滑に遂行するための助けにしていたものである。 総務課の事務が煩雑なため,内容をよく承知している件については口頭で説明をして決裁を受けていたことがあり,結果として,事務処理上これら補助簿の記載に若干の不備があるが,口頭での説明により必要性の判断は適切になされていたのであり,いずれも上記使用基準に沿ったものといえるし,補助簿の不備は内部 とがあり,結果として,事務処理上これら補助簿の記載に若干の不備があるが,口頭での説明により必要性の判断は適切になされていたのであり,いずれも上記使用基準に沿ったものといえるし,補助簿の不備は内部規律に関する些細な違反にすぎず,これをもってタクシー券の使用が違法な支出とまではいえないものである。 a 東京事務所所長の使用について使用整理簿の性格は,所長へタクシー券の使用を記録し報告するものであり,所長から所長への報告は自己矛盾であるから,所長使用分についての記録は残す必要がないとの理解と運用が定着していた。よって,使用整理簿を作成していないため使用状況を確認できないが,被告Aは,全て公務の必要からタクシー券を使用したものであり,私的使用等の不正使用は全くない。 被告Bについては,監査請求期間を徒過していないものとして,使用一覧表Ⅰ記載15の(4)及び(5)の2件があるが,これらはいずれも来客用として使用したものである。 b 副知事の使用について副知事の用務は県政全般に及び,高度に政治的・政策的なものであって,そのためにタクシーを使用することがある。日中の用務については公用車を使用して移動することが可能であるが,公用車の運行時間外に行動する場合等にはタクシーを使用する必要がある。 副知事のタクシー券の使用を東京事務所の管理下におくことは事実上不可能であり,使用明細を記録することは実情にそぐわず,使用を決裁した東京事務所所長の行為に瑕疵はない。 c 来客用の使用について東京事務所の上記使命を果たすためには,県政の推進に大きく貢献した来客者へタクシー券を交付することが必要な場合もあった。来客者の主な内訳は,自治省表彰の受賞者,県職員を派遣してい いて東京事務所の上記使命を果たすためには,県政の推進に大きく貢献した来客者へタクシー券を交付することが必要な場合もあった。来客者の主な内訳は,自治省表彰の受賞者,県職員を派遣していた東京所在の大手企業の部長,大手企業の中国支社長,U協議会一行の随行職員,広島県の農業政策立案に係る情報提供者等であり,県政の推進に特に協力したこれらの者に対し,帰途や次の用務先への移動に配慮し礼を尽くすことは当然であり,公務上の必要性を逸脱した交付の例はない。原告の主張は,東京事務所の実情にそぐわないものである。 また,その際に受領印やサインを来客者に求め,交付した証拠を残すことは儀礼上行わないものであり,それが欠けたからといって直ちに違法な使用になるわけではない。 なお,原告は,県議会関係者へは県議会からタクシー券を交付すべきであり,東京事務所が交付することは違法である旨主張するが,県の行政活動に従事する県議会関係者に県が費用を負担することは公務上の必要に基づきなされるものであるし,来客と同様に取り扱ってタクシー券を交付する方が便宜的かつ効率的であるから,違法なものとはいえず,原告の主張は失当である。 d 代理人受領について出張職員は印鑑を携帯しないことが多く,慌ただしく訪問先へ出掛けていく場合などに直接受領印を受けることが困難な場合が多かった上,タクシー券を適正に管理するため金庫から出したタクシー券の数量を速やかに整理する必要があったため,代理人受領として処理する例があったが,本人の受領の証明がないことをもって直ちに違法な使用であるとすることはできない。 e 「荷物」の使用について東京事務所の職務の効率的な遂行のためには,重量・嵩などから公共交通機関での搬送が無理 いことをもって直ちに違法な使用であるとすることはできない。 e 「荷物」の使用について東京事務所の職務の効率的な遂行のためには,重量・嵩などから公共交通機関での搬送が無理であったり,緊急の運搬を行う必要があるとか,他の方法では物品が毀損するおそれがある場合にタクシーを使用していた事実があり,また,東京事務所(霞ヶ関)とは異なる場所にある東京情報センター(JR新宿駅南口前)には公用車の配置がなかったことから公用車を使用できなかった事情がある。 荷物運搬は事実であり,公務上の必要に基づくタクシー券の使用であって,使用基準に反するものではない。 f 「深夜勤務」,「交通機関なし」又は「至急」の使用について東京事務所の時間外勤務等命令簿では勤務が深夜にまで及んだことの確認はとれないが,実態は深夜まで公務を行い,公共交通機関がないか使用が困難であってタクシーを使って帰宅せざるをえない状況にあった。時間外勤務等命令簿と整合しないのは,時間外勤務手当の予算上の制約があり,やむなく時間外勤務を申告しないことがあったためである。 帰宅に使用したものにつき「至急」を理由としたことは,若干記載に正確性を欠いたものであるが,前述のとおり内部規律に関する些細な違反にすぎない。 g 旅行命令簿の用務先と異なる使用について旅行命令簿に記載するのはあくまで代表的な用務先であり,東京事務所の担当職員が広島県庁本庁の幹事課の秘書等から細かな出張日程や出張目的を事前に取材した上で使用伺いに記載した用務先の表示とは異なることの方が一般的である。この場合,旅行命令簿に基づき支給される旅費以上の移動経費を要することになる。 よって,これを補うためにタクシー券を交付す 用伺いに記載した用務先の表示とは異なることの方が一般的である。この場合,旅行命令簿に基づき支給される旅費以上の移動経費を要することになる。 よって,これを補うためにタクシー券を交付することは,経費の二重支給にもあたらず本件使用基準に反する点もない。 第3 争点に対する判断 1 本案前の争点(1) 争点(1)アについてア地自法242条1項は,普通地方公共団体の住民は,当該地方公共団体の執行機関又は職員の財務会計上の行為に違法・不当又は懈怠が認められるときは,監査委員に対して必要な措置を講ずべきことを請求できる旨規定しているところ,同法が住民による直接請求の1つとして認めている事務の執行に関する監査請求(同法75条)の規定と対比しても,上記規定は,住民に対して一定の具体的な財務会計上の行為又は怠る事実に限って監査請求することができる権限を認めたもので,それ以上に包括的に監査を求める権限までを認めたものではないと解するのが相当である。 したがって,監査請求人は,監査請求にあたって,対象とする財務会計上の行為又は怠る事実を監査委員が行うべき監査の端緒を与える程度に特定すれば足りるというものではなく,当該行為等を他の事項から区別して特定認識できるようにすることを要し,また,当該行為等が複数である場合には,その性質・目的等に照らしこれらを一体と見てその違法又は不当性を判断するのを相当とする場合を除き,各行為等を他の行為等と区別して特定認識できるように個別的・具体的に摘示することを要し,監査請求書及びこれに添付された事実を証する書面の各記載,監査請求人が提出したその他の資料等を総合しても,監査請求の対象が上記の程度に具体的に摘示されていないと認められるときは,当該監査請求は,請求の特定を欠くものとして不適法と 実を証する書面の各記載,監査請求人が提出したその他の資料等を総合しても,監査請求の対象が上記の程度に具体的に摘示されていないと認められるときは,当該監査請求は,請求の特定を欠くものとして不適法というべきである(最高裁判所平成2年6月5日第三小法廷判決・民集44巻4号719頁参照)。 イこれを本件についてみると,証拠(甲2の2,25,証人Q(以下「Q」という。))及び弁論の全趣旨によれば,原告は,匿名による信書から東京事務所におけるタクシー券の使用実態について違法があるのではないかとの疑念を抱き,平成12年5月25日以降,東京事務所のタクシー券の使用状況に関する帳簿類の公文書公開請求を行ったこと,原告は,同請求により入手した使用伺い及び使用整理簿の記載が不十分で,使用基準に適合しない違法な使用があるとして,同年9月11日以降4回にわたり広島県監査委員に監査請求をしたこと,その際,請求の趣旨として,平成9年度ないし同11年度の東京事務所のタクシー券の使用に関し,「①使用者,使用目的が不明なもの」「②受領印のないもの」「③用務先不明なもの」「④至急と明示しないもの」「⑤代理人が受領し使用者の受領印がないもの」「⑥一度の機会に多額タクシークーポン券を受領しているもの」は一般的に違法な使用であるとし,添付資料において,公開された公文書から監査対象となる個別のタクシー券の使用を摘示したこと,別紙使用一覧表Ⅰ記載5の(1)ないし(7),9の(20),10の(1)ないし(8)及び15の(1)ないし(5)の各タクシー券の使用については,住民監査請求において監査対象として具体的に摘示されていなかったが,本件において住民訴訟の対象となるタクシー券の使用一覧表に摘示されたことが認められる。 ところで,タクシー券の使用は,その回数が多数回に及 いて監査対象として具体的に摘示されていなかったが,本件において住民訴訟の対象となるタクシー券の使用一覧表に摘示されたことが認められる。 ところで,タクシー券の使用は,その回数が多数回に及び,各個に使用目的や使用者等が異なることから,その性質・目的等に照らして個別・具体的に違法性や不当性を判断するのが相当というべきであり,タクシー券の使用についての監査請求においては,各タクシー券の使用という公金の支出を他の支出から区別して特定認識できるように個別的・具体的に摘示することを要するものというべきである。そして,上記認定事実によれば,原告は,監査請求にあたって,本件訴訟の対象とするタクシー券の使用の一部について摘示せず,上記のような一般的な記載をもって類型化したにとどまることが認められ,これらはタクシー券の使用が決裁された日時,使用金額,使用目的等を個別に明らかにしないものであるため,他のタクシー券の使用と区別して特定認識できるとは認められない。よって,本件の監査請求においては,監査請求書の添付資料において個別に摘示されていなかったタクシー券の使用は,各公金の支出が他の支出と区別して特定認識できる程度に個別的・具体的に摘示されたものと認めることはできない。 ウしたがって,本訴請求にかかる各タクシー券の使用のうち,別紙使用一覧表Ⅰ記載5の(1)ないし(7),9の(20),10の(1)ないし(8)及び15の(1)ないし(5)についての監査請求は,特定を欠くものとして不適法というべきである。 よって,これらタクシー券の使用については,監査請求前置の要件を充たさず,本件訴えのうち上記各タクシー券の使用を対象とする部分は不適法である。 (2) 争点(1)イについてア地自法242条の2第1項は,住民訴訟について監査請 ,監査請求前置の要件を充たさず,本件訴えのうち上記各タクシー券の使用を対象とする部分は不適法である。 (2) 争点(1)イについてア地自法242条の2第1項は,住民訴訟について監査請求の前置を要することを定めているが,同項には,住民が,監査請求において求めた具体的措置の相手方と同一の者を相手方として同一の請求内容による住民訴訟を提起しなければならないとする規定は存在せず,また,住民は,監査請求をする際,監査の対象である財務会計上の行為又は怠る事実を特定して,必要な措置を講ずべきことを請求すれば足り,措置の内容及び相手方を具体的に明示することは必須ではなく,執るべき措置内容等が具体的に明示されている場合でも,監査委員は,監査請求に理由があると認めるときは,監査請求書に明示された措置内容に拘束されずに必要な措置を講ずることができると解されるから,監査請求前置の要件を判断するために監査請求書に記載された具体的な措置の内容及び相手方を吟味する必要はないというべきである。 したがって,住民訴訟においては,その対象とする財務会計上の行為又は怠る事実について監査請求を経ていると認められる限り,監査請求において求められた具体的措置の相手方とは異なる者を相手方として措置の内容と異なる請求をすることも許されると解すべきである(最高裁判所平成10年7月3日第二小法廷判決・集民189号1頁参照)。 イこれを本件についてみるに,証拠(甲2の2)及び弁論の全趣旨によれば,原告が平成12年9月25日付けで行った監査請求においては,別紙使用一覧表Ⅰ記載のタクシー券の使用のうち争点(1)アで指摘した部分を除いたものについて,使用伺いの決裁者である被告A及び同Bを返還請求の相手方としていないが,同タクシー券の使用が財務会計上の行為として各 表Ⅰ記載のタクシー券の使用のうち争点(1)アで指摘した部分を除いたものについて,使用伺いの決裁者である被告A及び同Bを返還請求の相手方としていないが,同タクシー券の使用が財務会計上の行為として各起案者,使用者等の職員を相手方とする監査請求の対象として明示されていることが認められるから,当該タクシー券の使用は監査請求を経ているものというべきである。 よって,被告A及び同Bに対する上記各タクシー券の決裁については監査請求前置の要件に欠けるということができず,本件訴えのうち上記各タクシー券の決裁を対象とする部分は適法というべきである。 (3) 争点(1)ウについてア地自法242条2項本文は,普通地方公共団体の財務会計上の行為の法的安定性の観点から監査請求につき期間を定めたが,同項但し書は,例外として,当該行為が住民に隠れて秘密裏になされた場合等,「正当な理由」があるときには,1年を経過した後であっても監査請求をすることができる旨定めている。そして,同項但し書にいう「正当な理由」の有無は,特段の事情のない限り,普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査したときに客観的にみて当該行為を知ることができたかどうか,また,当該行為を知ることができたと解されるときから相当な期間内に監査請求をしたかどうかによって判断すべきものといわなければならない(最高裁判所昭和63年4月22日第二小法廷判決・集民154号57頁参照)。 イこれを本件についてみるに,上記争いのない事実等及び証拠(甲25,証人Q)並びに弁論の全趣旨によれば,本件における監査請求は,別紙購入一覧表記載の各タクシー券の購入について平成12年9月11日に,別紙使用一覧表Ⅰ記載の各タクシー券の使用について同月25日に,別紙使用一覧表Ⅱの1ないし6記載の各タクシ における監査請求は,別紙購入一覧表記載の各タクシー券の購入について平成12年9月11日に,別紙使用一覧表Ⅰ記載の各タクシー券の使用について同月25日に,別紙使用一覧表Ⅱの1ないし6記載の各タクシー券の使用について同年10月10日になされていること,本訴請求の対象となっているタクシー券の購入・使用は,いずれも受払簿,使用伺い及び使用整理簿等に記載がなされており,これらの帳簿類は,広島県公文書公開条例によって当該行為から1年経過以前に閲覧・謄写することのできるものであったこと,原告は公文書公開手続によって公開された上記各帳簿から,本件各タクシー券の使用の違法性を認識したと主張していることが認められる。 とすれば,仮にタクシー券の使用の違法性が隠蔽されるなどしていたとしても,原告がその主張の理由としているタクシー券の在庫額,帳簿類の記載内容は客観的にみて知ることができたと認めるのが相当であり,相当の注意力をもって調査すれば監査請求期間内に当該行為を知ることができたというべきである。 ウよって,本件監査請求が当該行為のあった日から1年を経過した後にされたことについて,同項但し書にいう「正当な理由」があるということはできず,監査請求から1年以上前になされたタクシー券の購入・使用に関する監査請求は,監査請求期間を徒過したもので不適法というべきであり,本件訴えのうち,これらのタクシー券の購入・使用に関する部分は適法な監査請求を経ていないから不適法というべきである。 (4) 小括以上より,本件訴えのうち,別紙使用一覧表Ⅰ記載1ないし10,11の(1)・(5)ないし(10)・(14)及び(15)・(19)・(21)ないし(24),12,13の(3),14の(1)ないし(4),15,同一覧表Ⅱの1及び2,3の(1)ないし(8) し10,11の(1)・(5)ないし(10)・(14)及び(15)・(19)・(21)ないし(24),12,13の(3),14の(1)ないし(4),15,同一覧表Ⅱの1及び2,3の(1)ないし(8)・(18)ないし(21)・(29)ないし(37),4及び5,6の(1)及び(2)の各タクシー券の使用並びに別紙購入一覧表記載①及び②の各タクシー券の購入を対象とする部分は,不適法であり却下すべきである。 2 本案の争点について(1) 争点(2)ア(購入の違法性の有無)についてア上記1で認定説示のとおり,タクシー券の購入行為のうち,本案の判断の対象となるのは別紙購入一覧表記載③の1件のみである。 イ(ア)証拠(乙1の3,4の3の1・2)及び弁論の全趣旨によれば,別紙購入一覧表記載③のタクシー券の購入は,平成11年12月14日に経費の支出伺いが起案され,同日被告Bの決裁を受けて同月15日に3000円券を20冊購入したものであること,同タクシー券は,広島県庁本庁のR部S課が公共事業要望活動の移動用という特定の目的に使用するために購入したものであり,購入した同日のうちに全てR部S課へ払い出されたものであること,同月14日現在における東京事務所のタクシー券保有残高は,5250円券が817冊,3000円券が170冊,5000円券が70冊の合計514万9250円であったこと,タクシー券の使用実績が平成8年度が299万3550円,同9年度が305万2350円,同10年度が264万4250円であったことが認められる。 以上からすると,上記タクシー券の購入が決裁された当時,東京事務所には多額のタクシー券の在庫があったのであり,6万円分のタクシー券(3000円券20冊)を追加購入しなくても広島県庁本庁からの出張者の上記活動のための移 タクシー券の購入が決裁された当時,東京事務所には多額のタクシー券の在庫があったのであり,6万円分のタクシー券(3000円券20冊)を追加購入しなくても広島県庁本庁からの出張者の上記活動のための移動用タクシー券を払い出すことができたのであるから,その限りでは,当該タクシー券の購入のための公金の支出が必ずしも必要ではなかったということができる。 (イ)しかしながら,上記認定事実によれば,当該タクシー券は,東京事務所が通常の業務に使用するために購入されたものではなく,広島県庁本庁からの出張者が使用するという明確かつ特定の目的のために購入したのであり,現にその目的に直ちに使用されたものであることが認められるから,広島県庁本庁の要請に基づいてタクシー券を購入する場合には,東京事務所のタクシー券の在庫に影響を与えないよう,これとは別個に購入すべきものと考えて購入を決裁したとしても,直ちにそれが不必要な公金の支出にあたるとまでは認められない。 また,上記で認定した購入決裁当時の東京事務所のタクシー券在庫額,購入されたタクシー券の価額及び東京事務所における年間のタクシー券使用額を総合考慮すれば,在庫や使用見込みに対して著しく多額なタクシー券を県の財政的負担を顧慮せずに購入する旨を決裁したとまではいえない。 (ウ)したがって,被告Bによる当該タクシー券の購入については,その判断の相当性が問題となるにとどまり,直ちに当該判断が裁量を逸脱した違法なものであったとまでは認めることができない。 ウ以上より,別紙購入一覧表記載③のタクシー券の購入を決裁した被告Bの行為に違法性はない。 (2) 争点(2)イ(使用の違法性)についてア上記1で認定説示のとおり,タクシー券の使用行為のうち,本案の判断の対象となるのは,別紙使 券の購入を決裁した被告Bの行為に違法性はない。 (2) 争点(2)イ(使用の違法性)についてア上記1で認定説示のとおり,タクシー券の使用行為のうち,本案の判断の対象となるのは,別紙使用一覧表Ⅰ記載11の(2)ないし(4)・(11)ないし(13)・(16)ないし(18)・(20)・(25)ないし(27),13の(1)・(2)・(4)ないし(6),14の(5)ないし(7),同一覧表Ⅱの3の(9)ないし(17)・(22)ないし(28)・(38)ないし(46),6の(3)ないし(18),同一覧表Ⅲの1ないし3のみである。 イタクシー券の使用基準について(ア) 証拠(甲1,8,被告A)及び弁論の全趣旨によれば,広島県は,県職員のタクシー券の使用に関し,昭和55年2月策定の行政体質改善対策において,職員の意識改革のうち「公私の別の明確化」のためとして本件使用基準を定めたことが認められる。かかる事実によれば,本件使用基準は,県職員による職務執行の改善のための指針として策定された内部規律であり法的拘束力を有するものではないから,県職員によるタクシー券の使用が本件使用基準に反するからといって直ちに当該タクシー券の使用が違法なものであったと認めることはできないというべきである。しかしながら,タクシー券の使用の適正化という本件使用基準の策定の目的に鑑みれば,本件使用基準は,県職員によるタクシー券の使用の違法性を判断する場合の判断要素の1つとして重視されるべきものということができる。 (イ)a 上記各証拠によれば,本件使用基準は,1項で基本原則として,勤務時間外において公務上の必要がある場合にはタクシーを使用でき,勤務時間内でも公務上の必要があり,かつ,公用車が使用できないか使用が困難な場合にはタクシーを使用できると定めた 項で基本原則として,勤務時間外において公務上の必要がある場合にはタクシーを使用でき,勤務時間内でも公務上の必要があり,かつ,公用車が使用できないか使用が困難な場合にはタクシーを使用できると定めた上,2項でタクシー券の使用基準として,「(1)深夜に及ぶ勤務のため,通常の交通機関がなく,帰宅できない場合」「(2)災害その他緊急の呼び出しを受け,通常の交通機関を利用できないか,又は,利用が著しく困難な場合」「(3)部局長が,日曜・休日等において,緊急用務のため登庁する必要がある場合」にはタクシーを使用することができるとしていることが認められる。 これらの事実からすれば,本件使用基準の2項でタクシーの使用が認められているのは,いずれも本来の勤務時間外において公務上の必要がある場合であり,本件使用基準の1項で定める勤務時間外でタクシー券を使用できる場合に該当するものを例示していると解するのが相当であるから,県職員がタクシーを使用できる場合を2項で示された場合のみに限定する趣旨ではなく,また,証拠(乙9ないし14,被告A,同P)及び弁論の全趣旨によれば,東京事務所の職務は多岐にわたり,迅速性・機動性を要する事務が突発的に発生することも多いことが認められ,かかる事実も併せ考えれば,県職員がタクシーを使用できる場合を一律に限定して列挙することは不可能というべきであり,勤務時間内におけるタクシーの使用が認められる公務上の必要については,個別的・具体的に検討・判断する必要があるというべきである。 b また,上記認定事実のとおり,本件使用基準の1項では,基本原則として,県職員は公用車が使用できないか使用が困難な場合に限ってタクシーを使用することができる旨を定めているが,証拠(乙9ないし14,20,被告A)及び弁論の全趣旨によれば,東 の1項では,基本原則として,県職員は公用車が使用できないか使用が困難な場合に限ってタクシーを使用することができる旨を定めているが,証拠(乙9ないし14,20,被告A)及び弁論の全趣旨によれば,東京都千代田区霞が関所在の東京事務所には2台の公用車が配備されていたものの,新宿駅南口にある東京情報センターには公用車が配備されていなかったことが認められ,東京情報センターを起点として移動をする際に公用車を呼び寄せて使用することは非常に困難というべきであるから,東京情報センターについては必ずしも公用車の使用を優先すべきとはいえない。 他方,東京事務所からの移動については,使用していない公用車があればこれを優先的に使用するのが効率的であり必要以上のタクシー券の使用による支出を防止することができるのであるから,本件使用基準のとおり,公用車を優先的に使用すべきであって,公用車が使用できる状態にありながらタクシーを使用することは,不必要な支出を避け効率的な行政執行を行うべきとの見地からは不相当であったというべきである。しかし,上記認定事実のとおり,東京事務所の職務内容には迅速性を要求される突発的なものもあり,上級職員や来客が急を要する重要な会合等に出席する場合に使用することも考えられ,これをさしおいて日常的・一般的な用務に公用車を使用することがはばかられるのも理解できるところである。したがって,これらの事情を総合考慮すれば,公務上の必要性が認められるタクシーの使用であれば,使用していない公用車がある場合にこれを優先して使用せずにタクシーを使用したからといって,直ちに当該タクシー券の使用が違法であったとまでは認めることはできず,当不当の問題にとどまると解するのが相当である。 (ウ) もっとも,安易に割高なタクシーの使用を認めることにな らといって,直ちに当該タクシー券の使用が違法であったとまでは認めることはできず,当不当の問題にとどまると解するのが相当である。 (ウ) もっとも,安易に割高なタクシーの使用を認めることになれば,広島県の財政に過大な負担をかける結果となり不相当というべきであるし,必要性がないのにタクシー券を交付した場合には違法な公金の支出にあたるというべきであるから,タクシーを使用する公務上の必要の有無を判断するにあたっては,用務先,用務内容,金額等からみて,鉄道やバス等の交通機関と比較して割高なタクシーの使用を認めることが一般的・社会的に見て相当といえるか否かによって決すべきであり,タクシーの使用が相当でないと認められる場合には,違法な公金の支出に該当し,タクシー券の交付を決裁したりタクシー券を使用した被告らは,損害賠償義務ないし不当利得返還義務を免れないというべきである。 (エ) なお,原告は,日額旅費の支給を受けている東京事務所職員がタクシー券を使用することは,旅費の重複支給に該当すると主張する。 しかしながら,証拠(甲31)によれば,東京事務所職員等日額旅費は,東京事務所職員が都内出張を頻繁に行う実態に鑑みて,煩雑な旅費及び日当の計算を省略するために導入された定額方式の旅費支給方法であることが認められ,日によって過分や不足分が生じてもこれを平準化して一律旅費等の精算を行わないこととされているというべきところ,タクシーを使用した都内出張のみが行われた場合には,日額旅費のうち交通費相当部分については重複支給となる可能性が否定できないが,タクシー券を使用した日にタクシー以外の交通機関によっても他の場所への都内出張をした場合や片道のみタクシーを使用した場合等には,なお日額旅費の支給が必要となるというべきであり,支給される日額旅 いが,タクシー券を使用した日にタクシー以外の交通機関によっても他の場所への都内出張をした場合や片道のみタクシーを使用した場合等には,なお日額旅費の支給が必要となるというべきであり,支給される日額旅費には交通費のみならず日当等も含まれることに鑑みれば,タクシーを使用したことのみをもって日額旅費の支給が不要であったと認めることはできず,また,日額旅費の支給を受けていたことのみをもってタクシーを使用する必要性がなくタクシー券の使用が違法であったと認められるものではない。 なお,本件で問題となっているのは,タクシー券の使用の違法性についてであり,タクシーを使用する必要性が認められる場合にタクシー券の使用が適法であることは論を待たず,仮にタクシー券を使用したことと日額旅費の支給を受けたことが旅費の二重取りであったとしても,あとは日額旅費のうち交通費該当部分の精算の問題が残るだけであって,本件の判断を左右しないというべきである。 ウ(ア)所長及び副知事の使用について本案の判断の対象となるタクシー券の使用には,東京事務所所長及び副知事による使用例はない。 (イ) 代理人受領について証拠(乙2の3,3の3)によれば,別紙使用一覧表Ⅰ記載11の(17)・(18)・(20),13の(4),14の(5)ないし(7)の各タクシー券は,広島県庁本庁からの出張者や東京事務所の活動等の参加者のタクシー券の使用につき,使用伺い起案者等の使用者でない者が使用伺いに受領印を押してタクシー券を受領していることが認められる。 かかる代理受領の方法を認めることは,払い出されたタクシー券が実際に使用者に交付されていることを確認する手段がなく,必要のない使用伺いが起案され決裁を受ければ,容易にタクシー券の不正使用が可能とな かかる代理受領の方法を認めることは,払い出されたタクシー券が実際に使用者に交付されていることを確認する手段がなく,必要のない使用伺いが起案され決裁を受ければ,容易にタクシー券の不正使用が可能となるおそれがあるというべきであるから,手続上由々しい問題があるというべきである。 しかしながら,タクシー券の使用が認められるか否かは,それが公務上必要か否か等の事情を基に判断すべきであり,使用者名が明らかであって,一応タクシー券使用の必要性が認められる場合には,単にその受領手続において本人以外の者が代理で受領したという事実が認められたのみでは,手続の当否が問題となることはあっても直ちにタクシー券の違法な使用であることを推認することはできないというべきである(なお,来客用とされるタクシー券に関する代理受領については,後記エで詳述する。)。 そして,他に代理人が受領した上記各タクシー券の使用が公務上の必要のない違法なものであったことを認めるに足りる証拠はない。 (ウ)「荷物」の使用について証拠(乙2の3・4,3の3・4)によれば,別紙使用一覧表Ⅱの3の(9)ないし(13)・(15)・(22)ないし(28)・(38)ないし(46),同一覧表Ⅲの2の各タクシー券は,荷物の運搬のために使用されたことが認められる。 この点,原告は,荷物の運搬に公用車を使用せずに安易にタクシーを使用したことは,本件使用基準の1項の基本原則に反し違法であると主張する。 しかしながら,上記イ(イ)bで認定説示のとおり,東京情報センターを起点とする荷物の運搬を目的とするタクシー券の使用においては,公用車優先の原則はそもそも適用できないから,公用車を使用しなかったことのみをもって使用の違法性を基礎付けることはできず,また センターを起点とする荷物の運搬を目的とするタクシー券の使用においては,公用車優先の原則はそもそも適用できないから,公用車を使用しなかったことのみをもって使用の違法性を基礎付けることはできず,また,東京事務所からの荷物の運搬にタクシー券を使用した場合については,公用車を優先的に使用すべきであって,公用車が使用できるのにタクシーを利用したことは相当とはいえないものの,同認定説示に照らすと,それのみをもって直ちにタクシー券の使用の違法性を認めることはできない。 その他,現実には荷物を運搬していなかったとか,タクシーを使用するほどの荷物ではなかったことなど,荷物の運搬にタクシー券を使用することが違法であることを認めるに足りる証拠はない。 (エ) 「深夜勤務」,「交通機関なし」又は「至急」の使用について証拠(乙2の3,3の3)によれば,別紙使用一覧表Ⅱの6の(3)ないし(18)の各タクシー券の使用は,いずれも行き先がT町周辺となっており,その中にはT町所在の公舎への帰宅にタクシー券を使用したが,使用整理簿の備考欄に「至急」や「交通機関なし」と記載されているものと記載がないものがあること,東京事務所の最寄りの駅が地下鉄の虎ノ門駅であり,同駅からT町への最終電車が午前0時ころであること,東京事務所職員が午前0時過ぎまで時間外勤務をした記録がないことが認められる。また,上記イ(イ)の認定説示及び証拠(乙14,20,21,被告A,同P)並びに弁論の全趣旨によれば,東京事務所の職務が繁忙なため,職員が勤務時間内に事務を処理しきれないことがしばしばあり,職員が超過勤務手当の予算枠を考慮して時間外勤務をしてもそれを申告せず,サービス残業をしていた実態があったことが認められ,これに上記認定事実を併せ考えれば,サービス残業をした いことがしばしばあり,職員が超過勤務手当の予算枠を考慮して時間外勤務をしてもそれを申告せず,サービス残業をしていた実態があったことが認められ,これに上記認定事実を併せ考えれば,サービス残業をしたことを書面上残さないために,使用整理簿には「深夜勤務」との記載を避けて実態と異なる「至急」や「交通機関なし」と記載したと推認することができる。 以上の認定事実を総合すると,サービス残業は,その当否は別として現実として行われていたというべきであり,終電がなくなるまでサービス残業をした場合に,これも勤務にあたるとして帰宅のためにタクシーを使用できると判断したとしても,それが違法・不当であったということはできない。自己のタクシー券の使用が公務上の必要に基づくものであることを明確に記録しておくことは,その適法性を担保するためにも不可欠というべきであるから,時間外勤務等命令簿に終電がなくなるまで深夜勤務を行った旨の記録がない上,上記のように使用整理簿に実態と異なる記載がなされたことは不適切であり相当でないというべきであるが,そのことから直ちに深夜勤務がないのにタクシー券を使用したものであって公務上の必要に基づかない違法なタクシー券の使用であったとまで推認することはできない。 その他,T町へのタクシー券の使用の中に公務上の必要のない違法なタクシー券の使用があったことを認めるに足りる証拠はない。 (オ) 旅行命令簿の用務先と異なる使用について証拠(乙2の3,6の1の1ないし3,同2の1ないし6,同3ないし5の各1ないし3,同6の1・2,被告A,同P)及び弁論の全趣旨によれば,別紙使用一覧表Ⅲの3の(1)ないし(7)のとおり,広島県庁本庁から東京への出張者について,旅行命令(依頼)簿に記載された用務先と使用伺いに記載 同6の1・2,被告A,同P)及び弁論の全趣旨によれば,別紙使用一覧表Ⅲの3の(1)ないし(7)のとおり,広島県庁本庁から東京への出張者について,旅行命令(依頼)簿に記載された用務先と使用伺いに記載された用務先・使用区間等が必ずしも一致していないこと,旅行命令(依頼)簿に記載された用務先は,出張の主目的たる用務先を記載したものであること,使用伺いは,出張者の行動予定を東京事務所の職員が出張者本人や広島県庁本庁の担当職員から聴取し,それを基に記載しているものであり,旅行命令(依頼)簿に記載のある用務先のみならず,その時点で予定されている様々な訪問先の情報からタクシー券の使用区間を記載していること,出張者からタクシー券に余りが生じたとして返納されたことがないことが認められる。 これらの認定事実からは,東京事務所職員が予め出張者の旅行予定を聴取して使用伺いを起案し,その結果,出張者にはタクシー券が冊単位で交付されて返納もなく渡したきりになっていることが認められ,これらの事実からすると,いずれの使用伺いもタクシー券を冊単位で交付することを目的として複数の用務先が記載されたものである疑いが否定できない。 しかし,上記認定事実を総合すれば,上記各タクシー券を受領した被告らは,広島県庁本庁における相応の地位にある者であり,出張の機会を利用して複数か所を訪問し公務を行うこともありうることであり,またそうすることが効率的かつ有効であるから,使用伺いのタクシー利用区間及び用務先に複数か所が記載されていることのみをもって直ちに旅行命令(依頼)簿に記載されていない場所への移動が公務上の必要に基づかないものであると推認することはできず,旅行命令(依頼)簿と使用伺いの用務先が異なっていることのみをもって直ちにそのタクシー券の使用が違法なもの に記載されていない場所への移動が公務上の必要に基づかないものであると推認することはできず,旅行命令(依頼)簿と使用伺いの用務先が異なっていることのみをもって直ちにそのタクシー券の使用が違法なものであったと認めることはできない。 また,現に各出張者がどの範囲で行動したのか,タクシー券を1冊分使い切る必要があったのか否か,使用しなかったため返納の必要があるタクシー券の金額がいくらかなどを認めるに足りる証拠はなく,結局,必要以上にタクシー券を交付して剰余分を返還していないような事実を認めることはできない。 その他,東京出張者によるタクシー券の使用が違法であったことを認めるに足りる証拠はない。 エ来客の使用について(ア) 証拠(乙2の3・4,3の3・4)によれば,別紙使用一覧表Ⅰ記載11の(2)ないし(4)・(11)ないし(13)・(16)・(25)ないし(27),同一覧表Ⅲの1の各タクシー券については,来客用としてタクシー券を使用した旨が使用伺い又は使用整理簿に記載されていることが認められる。ところで,広島県庁用自動車管理規程(甲9)が庁用自動車を使用できる場合として「来客の用に供する場合において,特に必要があるとき。」(同規程12条2号)と定めていることに鑑みれば,本件使用基準にいう「公務上必要がある場合」とは,県職員がタクシー券を使用することのできる場合のみに限定されるものではなく,職員以外の来客者がタクシーを使用する場合に県の所有するタクシー券を提供しても,それが公務上の必要に基づくものであれば許されるものと解するのが相当である。そして,本件使用基準の1項で定められているタクシー使用の基本原則や,上記広島県庁用自動車管理規程の定めを総合すれば,来客にタクシー券を交付するにあたっては,公用車を使用す のと解するのが相当である。そして,本件使用基準の1項で定められているタクシー使用の基本原則や,上記広島県庁用自動車管理規程の定めを総合すれば,来客にタクシー券を交付するにあたっては,公用車を使用する場合と同様に公務上「特に必要があるとき」で,かつ,公用車が使用できないか使用が困難な場合に限られると解するのが相当であって,ここにいう「特に必要があるとき」とは,単に東京事務所に立ち寄ったにすぎない来客ではなく,当該来客が東京事務所に立ち寄った目的・理由やその後赴くべき行き先等に鑑みて,当該来客が東京事務所の公務の遂行と密接な関係にあり,当該来客の便宜を図ることが東京事務所の事務遂行上必要であると認められる場合をいうものと解すべきである。 (イ) これを本件についてみると,上記各証拠によれば,別紙使用一覧表Ⅰ記載11の(3),同一覧表Ⅲの1の各タクシー券の使用については,使用伺いや使用整理簿に記載された交付の相手方が墨書されたり,交付の相手方を知る手掛かりとなる使用目的等が記載されていることが認められ,この場合,単に公文書公開手続によって公開されたこれらの文書から来客名を確知できないからといって直ちに来客自体がなかったことや来客が単に立ち寄っただけで東京事務所の事務と関係ないことなどを推認することはできず,また,同一覧表Ⅰ記載11の(16)については,使用整理簿に使用区間「東京事務所→丸の内」,「至急来客者対応」と具体的に記載されていることから,来客名が不明であってもタクシー券を使用する必要性がなかったことを推認するには至らない。 しかしながら,上記各証拠によれば,同一覧表Ⅰ記載11の(2)・(4)・(11)ないし(13)・(25)ないし(27)の各タクシー券の使用については,いずれも使用伺いや使用整理簿に「来客用」と記 しかしながら,上記各証拠によれば,同一覧表Ⅰ記載11の(2)・(4)・(11)ないし(13)・(25)ないし(27)の各タクシー券の使用については,いずれも使用伺いや使用整理簿に「来客用」と記載されているのみであって具体的な来客名の記載がないばかりか,タクシーを使用した区間も不明であり,タクシー券を使用伺い起案者自身が代理して受領している上に,タクシー券が冊ごとに交付されて余り分の返納が全くなされていないことなどが認められ,来客が現に存在したことを探知する手掛かりが全くないというほかなく,現実に来客があったことを窺わせる具体的事情が見あたらない。仮に来客自体はあったとしても,当該来客が東京事務所を来訪した目的・理由ないしタクシー券交付の必要性を示す記載が全くないことに照らすと,そのような記載をなす前提事実を欠いていたこと,すなわち,当該来客が東京事務所の公務と密接な関係にあり,その便宜を図ることが東京事務所の事務遂行上必要であるような事情を欠いていたものと推認するのが相当である。 (ウ) 被告らは,来客の来訪目的やタクシー利用の必要性について,使用伺いの決裁を受ける際に口頭で報告を行ったものであること,来客に非礼にあたるので使用伺いに氏名を記載せず受領印も求めなかったことを主張し,被告A及び同Pは被告本人尋問においてこれに沿う供述をするが,来客名等を使用伺いや使用整理簿に記載することは容易であるのにその労を惜しんで記載をせず,一方でわざわざ口頭でそれらの点につき報告を行って決裁を受けたというのは極めて不自然であるし,また,公金の支出行為であるタクシー券の交付を無制限に認めることはできず一定の手続を要することは来客も当然のこととして了解するはずであるから,来客名を使用伺いに記載してこれに来客の受領印等を求めても格別不都合がな 出行為であるタクシー券の交付を無制限に認めることはできず一定の手続を要することは来客も当然のこととして了解するはずであるから,来客名を使用伺いに記載してこれに来客の受領印等を求めても格別不都合がないというべきであって,これらの事情に鑑みれば,同人らの上記供述はにわかに信用できない。そして,他にも上記の推認を妨げる事情は本件証拠上認められない。 (エ) 以上を総合考慮すると,単に使用目的を「来客用」とのみ記載し,使用区間の記載もなく,タクシー券の受領者も使用伺いの起案者等になっている別紙使用一覧表Ⅰ記載11の(2)・(4)・(11)ないし(13)・(25)ないし(27)の各タクシー券の使用については,もはや単なる手続の不備にとどまらず,実体的に公務上の必要性を欠くものであったと認めるのが相当であり,かかるタクシー券の使用を決裁した被告Bの行為は違法なものであったというべきである。 オ上記各証拠によれば,使用伺いや使用整理簿等の帳簿類の記載は,上記判示の点以外にも,正確性を欠いたり必要な記載が漏れているなど,切手類と類似の物品を管理するための受払簿の補助簿とはいえ,取扱いに不十分な点が数多いことが認められ,かかる杜撰な運用を放置することは公金不正使用等の不祥事を生む温床となりうるのであって,これら帳簿の不備が存在することは極めて遺憾であるが,かかる記載の不備のみをもって直ちにタクシー券が違法に使用されたことを推認することはできないし,被告らが用務内容として主張している事実が虚偽であるかタクシーを使用する必要のないものであったことを認めるに足りる証拠もない。 3 結論以上の次第で,本件訴えのうち,第1,第2事件被告らに対する別紙使用一覧表Ⅰ記載1ないし10,11の(1)・(5)ないし(10)・(14)及び(15)・(19 るに足りる証拠もない。 3 結論以上の次第で,本件訴えのうち,第1,第2事件被告らに対する別紙使用一覧表Ⅰ記載1ないし10,11の(1)・(5)ないし(10)・(14)及び(15)・(19)・(21)ないし(24),12,13の(3),14の(1)ないし(4),15,同一覧表Ⅱの1及び2,3の(1)ないし(8)・(18)ないし(21)・(29)ないし(37),4及び5,6の(1)及び(2)の各タクシー券の使用並びに別紙購入一覧表記載①及び②の各タクシー券の購入を対象とする部分は不適法であるからこれを却下し,原告のその余の請求は,別紙使用一覧表Ⅰ記載11の(2)・(4)・(11)ないし(13)・(25)ないし(27)のタクシー券の使用を決裁した違法性に基づいて,被告Bに損害賠償金7万0750円及びこれに対する第1事件訴状送達の日の翌日であることが本件記録上明らかな平成13年1月5日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を広島県に対して支払うよう請求する限度で理由があるからこれを認容し,その余はいずれも失当であるからこれを棄却することとし,訴訟費用の負担につき民事訴訟法64条本文,61条を適用して,主文のとおり判決する。 広島地方裁判所民事第一部裁判長裁判官田中澄夫裁判官次田和明裁判官小崎賢司「別紙タクシー券使用一覧表ⅠないしⅢ,同タクシー券購入一覧表は,掲載省略」

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る