平成23(ワ)3302 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
平成25年7月5日 福岡地方裁判所
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判決文本文12,443 文字)

- 1 - 主文 1 被告は,原告に対し,908万8785円及びこれに対する平成21年11月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は,これを10分し,その7を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。 4 この判決は,1項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求被告は,原告に対し,3124万5211円及びこれに対する平成21年11月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,原告が,被告に対し,被告の輸入販売に係る手すりのブラケットが破損して原告が転倒する事故が起きたとして,製造物責任法3条に基づき,損害金3124万5211円及びこれに対する事故日である平成21年11月14日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めたという事案である。 1 争いのない事実 当事者ア原告は,昭和13年4月3日生まれの一人暮らしの女性である。 Aは,原告の子である。 Bは,Aの夫である。 イ被告は,鉄鋼並びに非鉄金属及びその製品等の売買,輸出入及び仲立業並びに製造業等を営む株式会社である。  事故の発生ア Aは,平成21年夏ころ,原告が自宅寝室(以下,単に「寝室」という。)から物干し場として利用していた土間(以下,単に「土- 2 -間」という。)へ降りる際,履物を履くときにバランスを崩して転倒などしないように,念のため手すりを取り付けようと考え,福岡県宗像市所在のホームセンターNにて,「らくらく手摺」と称する手すりを購入した(以下,同購入に係る手すりを「本件手すり」 ンスを崩して転倒などしないように,念のため手すりを取り付けようと考え,福岡県宗像市所在のホームセンターNにて,「らくらく手摺」と称する手すりを購入した(以下,同購入に係る手すりを「本件手すり」という。)。 本件手すりのパッケージには,裏面に「この手摺は横付け専用です」との注意書きが記載されていた。 数日後,大工であるBが,寝室に本件手すりを垂直方向に取り付けた。 イ平成21年11月14日,原告は,寝室から土間に降りる際,本件手すりをつかんだところ,本件手すりのブラケット(以下「本件ブラケット」という。)2個の付け根部分が2つとも一気にちぎれて破損し,原告は転倒した(以下,これを「本件事故」という。)。  原告の負傷原告は,本件事故により,第12胸椎圧迫骨折の傷害を負い,平成21年11月16日から同年12月5日までM病院に入院し,同月6日から平成23年1月25日まで同病院に通院した。  責任原因被告は,「らくらく手摺」と称する手すりの輸入販売元であり,製造物たる同手すりを業として輸入した者である。 被告は,同手すりをNに出荷するなどして流通に置いた。 2 争点 本件手すりの欠陥(原告の主張)ア通常の用法との関係本件手すりがホームセンター等で販売される一般消費者向けの商品であること,設置方向については小さな文字で「横付け専用です」という表示があるものの,横付け以外の場合に何らかの危- 3 -険があることを読み取りうる記載はないこと,一般に設置の向きが縦方向か横方向かによって強度に大きな差違があるとは認識されていないこと等を考慮すれば,本件手すりを縦付けして使用することも合理的に予見される使用形態であるから,通常の用法に含まれる。 本件事故は,原告が本件手 よって強度に大きな差違があるとは認識されていないこと等を考慮すれば,本件手すりを縦付けして使用することも合理的に予見される使用形態であるから,通常の用法に含まれる。 本件事故は,原告が本件手すりを通常の用法に従って使用したにもかかわらず,本件ブラケットが破損したのであるから,欠陥の原因や科学的機序が不明であっても,欠陥の存在は肯定される。 もっとも,念のため,推測しうる欠陥原因を挙げると以下のとおりである。 イ設計上の欠陥本件ブラケットは,破損箇所の厚みが最も薄い箇所でわずか約0.9ミリメートルしかなく,他社類似品や本件事故後に被告が製造するようになった改良品と比較しても突出して薄く,十分な耐荷重性能を有するように設計されておらず,使用中に破損する危険性があり,手すりを固定する部品として通常有すべき安全性を欠く設計上の欠陥がある。 ウ製造上の欠陥本件ブラケットには,十分な耐荷重性能を有する厚みがなく,不純物を多く含み,使用中に破損する危険性があり,手すりを固定する部品として通常有すべき安全性を欠く製造上の欠陥がある。 本件ブラケットは亜鉛合金ダイカストによる金属鋳造品である。亜鉛合金ダイカストは,不純物(鉛,すず,カドミウム等)がJISH5301の化学成分規格を超えると,致命的な粒間腐食を生ずる。亜鉛合金の粒間腐食による変形・崩壊は製造から数か月から数年後に生ずることが通常である。本件ブラケットの化学組成は,不純物である鉛,すずがJISH5301の基準を大きく超えており,他方,粒間腐食を抑制する目的で添加されるマ- 4 -グネシウムは同基準を大きく下回っている。したがって,本件ブラケットは,通常有すべき品質を欠いており,粒間腐食による破損を起こしやすい状態にあったことは明らかである。 また, れるマ- 4 -グネシウムは同基準を大きく下回っている。したがって,本件ブラケットは,通常有すべき品質を欠いており,粒間腐食による破損を起こしやすい状態にあったことは明らかである。 また,被告の提出する強度試験によっても,取付方向如何により,手すりの強度に著明な相違はなく,動作補助手すり(縦付けされ,動作時に握ることにより身体がよろけるのを防ぐ手すり)の要求強度は,歩行補助手すり(横付けされ,歩行時に体重を預けながらの移動を可能にする手すり)の要求強度よりも低く設定されているから,本件手すりが横付け手すりとして十分な強度を有していたとすると,それほどの強度を要しない縦付け方向で取り付けたことによって破断が誘発されるはずはない。 エ指示・警告上の欠陥仮に本件手すりを垂直方向に取り付けて使用すると,本件ブラケットが破損し負傷する危険性を有しているというのであれば,被告は,消費者に対し,そのような危険性があることを指示・警告する義務がある。 被告は,横付け専用である旨の表示をしてはいるが,縦付けした場合に強度が小さくなるとか通常の荷重に耐えられず破損する危険があるといった警告は一切していない。 横付け専用である旨の表示は,安全性に関わる表示ではなく,ブラケットが受け型になっていることに伴う単なる利便性に関する表示にすぎない。 (被告の主張)ア通常の用法との関係本件手すりは,横付け専用の手すりであり,床面と平行に取り付けられて初めて通常の用法に従って使用したものといいうる。 イ設計上の欠陥本件ブラケットは,正しい取付方法(横付け)でしっかりと取り付けられている限り80キログラムまでの荷重(持続力)に耐- 5 -えられるように設計されているから,設計上の欠陥はない。 本件手すりは,本来 ケットは,正しい取付方法(横付け)でしっかりと取り付けられている限り80キログラムまでの荷重(持続力)に耐- 5 -えられるように設計されているから,設計上の欠陥はない。 本件手すりは,本来想定されていない荷重方向からの負荷がかかる状態で数か月にわたって使用された結果,もともと負荷が予定されていないために他の部位よりも薄く設計されていた本件ブラケットの側面部に金属疲労が生じ,破断したものである。 現在まで,用法どおりに取り付けられた本件手すりにつき破損が生じたという報告は,本件以外に一例も被告に寄せられていないが,これは破損の原因が粒間腐食によるものでないことを物語るものである。 ウ製造上の欠陥本件ブラケットは,正しい取付方法(横付け)でしっかりと取り付けられている限り,80キログラムまでの荷重(持続力)に耐えられるように製造されているから,製造上の欠陥はない。 亜鉛ダイカストの本件ブラケットに不純物が混入し,あるいは巣が生じたとしても,被告において事後に実施した「らくらく手摺」の荷重試験試験において耐荷重性能は十分であることが確認されているから,本件手すりは通常有すべき性能を十分に備えていたものである。 粒間腐食が生ずるのは,湿った大気中に置かれることが大前提であるところ,本件ブラケットは湿った大気中に置かれることはなかった。 エ指示・警告上の欠陥本件手すりのパッケージの裏面には,「この手摺は横付け専用です。」と明記され,「取り付けがしっかり行われている場合の本製品に対する制限荷重は80kg」,「必ず正しい取り付け方法で作業を行ってください。」と注意喚起されている。 通常の一般人において,垂直方向の取付けが横付けの範囲に含まれないことは明らかであるから,指示・警告上の欠陥はない。  しい取り付け方法で作業を行ってください。」と注意喚起されている。 通常の一般人において,垂直方向の取付けが横付けの範囲に含まれないことは明らかであるから,指示・警告上の欠陥はない。  過失相殺- 6 -(被告の主張)本件手すりは横付け専用品であるから,手すり本体と平行(縦付けされた場合の鉛直方向)に掛けられる荷重は想定されていない。 ところが,Aは,本件手すりは横付け専用品であることを認識して購入した。また,Bは,当時長年のキャリアを有する大工であったから,横付け専用品である本件手すりを垂直方向に取り付けてはならないことは容易に理解できたはずである。 本件手すりは,本来想定されていない荷重方向からの負荷がかかる状態で数か月にわたって使用された結果,もともと負荷が予定されていないために他の部位よりも薄く設計・製造されていた本件ブラケットの側面部に金属疲労が生じ,破断したものである。 したがって,本件においては,A及びBという原告の親族に過失があるから,少なくとも5割の過失相殺をすべきである。 (原告の主張)争う。 本件手すりを縦付けすることは落ち度ではない。また,縦付けにしたことと損害の発生・拡大との間には因果関係はない。  原告の損害(原告の主張)原告は,本件事故により,第12胸椎圧迫骨折の傷害を負い,平成23年1月25日,脊柱に運動障害を残して症状固定し,以下の損害を被った。 ア治療費 18万1907円イ入院付添費 13万0000円ウ入院雑費 3万0000円エ通院交通費 16万0370円オ通院付添費 13万0000円ウ入院雑費 3万0000円エ通院交通費 16万0370円オ通院付添費 53万1300円カ自宅改造費 199万2064円キ休業損害 475万9869円- 7 -ク逸失利益 1042万9701円基礎収入年額326万0800円(平成21年度賃金センサス産業計・企業規模計・学歴計女子労働者(70歳以上)労働能力喪失率 45パーセント(後遺障害等級8級2号)労働能力喪失期間 9年間(ライプニッツ係数7.1078)(計算式) 3,260,800×0.45×7.1078=10,429,701(1円未満切捨て)ケ傷害慰謝料 189万0000円コ後遺障害慰謝料 830万0000円サ弁護士費用 284万0000円(被告の主張)不知ないし争う。 原告の症状は,平成22年2月3日,遅くとも同年4月8日には固定していた。 原告の胸椎部の可動域制限は,後遺障害として評価されるまでの運動障害ではないから,原告に残存する後遺障害は,11級7号(脊柱に変形を残すもの)にとどまる。仮に原告の脊柱に運動障害が残存しているとしても,変形性腰椎症,第3腰椎変性すべり症といった加齢による変性が大いに寄与しているから,後遺障害部分につき,相応の素因減額がされるべきである。 原告はもともと寝室から土間への移動時に履物を履く際にバランスを崩して転倒することが懸念される状態だったのであり,また,現在,原告の胸椎部の可動域が狭くなってい 応の素因減額がされるべきである。 原告はもともと寝室から土間への移動時に履物を履く際にバランスを崩して転倒することが懸念される状態だったのであり,また,現在,原告の胸椎部の可動域が狭くなっている理由は加齢による退行性変化によるものであるから,自宅改造費は本件事故によって必要となったものではない。 第3 当裁判所の判断 1 前提事実- 8 -争いのない事実,証拠(甲7,19,甲25の1,甲29,30,乙3,原告本人)及び弁論の全趣旨を総合すれば,次の事実が認められる。 本件手すりの設置前,原告(昭和13年4月3日生)の寝室は,物干し場として利用していた土間と隣接しており,寝室と土間との間の移動時に利用するため,ブロックを3段に積み上げた階段(以下,単に「階段」という。)が設置され,ブロックの最上段には,サンダルが置かれていた。原告は洗濯物を土間の物干し場で干す際には,土間に接する寝室の掃き出し窓の木枠に手を添え,階段上のサンダルを履き,階段を降りて土間に移動していた。その様子を見ていたAは,平成21年夏ころ,木枠付近に何か掴む物があった方が便利であろうと考え,本件手すりを購入し,Bが,上記木枠に本件手すりを垂直方向に取り付けた。 本件手すりが取り付けられた後,原告は,寝室から土間に降りるためサンダルを履く際には,右手で本件手すりを掴んで体を支える補助としていた。 平成21年11月14日夕刻,原告は,夕食の準備に取りかかり,魚を煮ている間に洗濯物を干そうと考え,同日午後5時ころ,寝室から土間に降りようとして,いつもどおりにサンダルを履く際に,右手で本件手すりを掴んで体を支えようとしたところ,本件手すりが外れる感じがしてブロックから土間の方へ落ちる感覚を覚え,次に気がついた時には自身の体の左 うとして,いつもどおりにサンダルを履く際に,右手で本件手すりを掴んで体を支えようとしたところ,本件手すりが外れる感じがしてブロックから土間の方へ落ちる感覚を覚え,次に気がついた時には自身の体の左側を下にした格好で土間に倒れていた。 原告は,Aに連れられ,平成21年11月14日,M病院を受診し,腰椎症,第12胸椎圧迫骨折の傷病名が付され,内服にて経過観察とされたが,疼痛が軽減せず,同月16日に安静目的で入院した。入院中,保存的加療を受けながら,車椅子を利用した移動ができるようになり,さらにT字杖を使用して身の回りのことが自立して行うことができるようになるという経過を辿り,同年12月5日に退院となった。 退院後も疼痛に関連した歩行障害の問題が残されたため,入浴時はシ- 9 -ャワーチェアー,手すりを使用すること,屋外歩行は足元に注意して転倒しないように気をつけることといった指導を受け,同月6日から平成23年6月28日まで通院によって運動器を使用したリハビリを中心とする治療を受けた。途中,平成22年12月24日計測に係る胸椎部の可動域は,前屈30度,後屈20度,右屈40度,左屈40度,右旋回40度,左旋回45度とされた。 M病院のC医師は,第12胸椎圧迫骨折の傷病名で,平成23年6月20日を診断日とする後遺障害診断書を作成した。同診断書には,症状固定日の記載はなく,自覚症状として,靴下が履きにくい等の訴えがあるとされ,他覚症状及び検査結果としては,X-P所見上,第12胸椎は楔状変形となっており,同日計測に係る胸椎部の可動域は,前屈40度,後屈10度,右屈15度,左屈15度,右旋回10度,左旋回15度であるとされた。 その後,C医師は,症状固定日については,平成22年10月20日から同年11月13日にかけて症状が軽快していると ,後屈10度,右屈15度,左屈15度,右旋回10度,左旋回15度であるとされた。 その後,C医師は,症状固定日については,平成22年10月20日から同年11月13日にかけて症状が軽快しているとして,受傷から1年余りを経過した同年12月末ころを症状固定日とするのが妥当である旨の意見を述べ,胸椎部の可動域に関する平成22年12月24日と平成23年6月20日の各検査結果の相違については,可動域は,傷病の軽快に伴い広くなるのが通常であるが,第12胸椎を圧迫骨折したことにより退行性変化を促進したものと考えられる旨の意見を述べた。 以上のとおり認められる。 これに対し,被告は,原告が本件手すりに荷重を掛けたり体重を預けたりはしていなかったはずであるとして,本件事故は,本件手すりが破損したために原告が転落したというものではなく,原告が転落した際,右手で本件手すりを握ったため,あるいは握ったままであったため,本件手すりが破損したものであると主張する。しかしながら,被告の上記主張は,これを裏付ける的確な証拠はない上,原告は一貫して手すりが外れて転んだという趣旨の供述をしていること(甲2- 10 -9,原告本人),仮に原告が土間に降りようとする際,本件手すりに大きな荷重をかけていなかったとしても,一定方向に傾きかけた身体のバランスを補助するためのものとして本件手すりを使用することが想定されていた以上,身体のバランスが一定方向に傾いた瞬間,予期に反して本件ブラケットが破損すれば,そのままバランスを回復することなく転倒することは十分に考えうることであることに照らすと,被告の上記主張を採用することはできない。 2 争点(本件手すりの欠陥)について争いのない事実,証拠(甲1の1及び2,甲22の1及び2,乙5の2及び4,証人D)及び弁 あることに照らすと,被告の上記主張を採用することはできない。 2 争点(本件手すりの欠陥)について争いのない事実,証拠(甲1の1及び2,甲22の1及び2,乙5の2及び4,証人D)及び弁論の全趣旨を総合すれば,本件手すりのパッケージには,裏面に警告との標題の下に「この手摺は横付け専用です。」と太ゴシック体で他の記載と同じ大きさのフォントを使用した注意書きが記載され,さらにその下には,通常のゴシック体で「取り付けがしっかり行われている場合の本製品に対する制限荷重は80kg。」,「必ず正しい取り付け方法で作業を行ってください。」,「柱,補強用木板等に確実に固定してください。」との注意書きが続き,さらにその下には取り付け上の注意及び取り付け方の詳細が記されていたが,本件手すりを縦付けした場合には通常の荷重に耐えられず破損する危険があるといった警告はされていなかったこと,同パッケージ表面には,使用例として階段に沿って斜めに取り付けられた写真も掲載されていたこと,斜めに取り付けられた場合に手すりに掛かる荷重には手すりと平行の方向のものもあること,階段で転倒しかけて手すりを握る場合には体重のかなりの部分が手すりと平行の方向にかかる事態も容易に想定しうること,本件手すりを横付けした場合と縦付けした場合とでブラケットの耐荷重に有意な差異はないことが認められる。 以上によれば,本件手すりにつき,被告の想定していた使用形態は横付けであるものの,少なくとも本件手すりのパッケージを読んだ使用者等は,横付け専用というのは,破損の危険性を排する観点からの- 11 -警告・指示ではなく,縦付けの場合にはブラケット部分が邪魔になるなどして使用しにくい面があり,これよりも縦付け使用に便宜な形状の手すりは別にあるという観点からの警告・指示であって, の- 11 -警告・指示ではなく,縦付けの場合にはブラケット部分が邪魔になるなどして使用しにくい面があり,これよりも縦付け使用に便宜な形状の手すりは別にあるという観点からの警告・指示であって,使用者において使用しにくさを受忍すれば,縦付けでの使用に特段の支障はないと理解する余地が多分に存すると認められる。したがって,縦付けでの使用も,合理的に予見できる範囲の使用形態に含まれ,通常予見される使用形態の範疇に属すると認めることができる。 そうすると,原告が,通常予見される使用形態に則って本件手すりを使用していたところ,本件ブラケットが破損したというのであるから,他に特段の事情のない限り,本件手すりには欠陥があったと推認すべきである。 これに対し,被告は,粒間腐食が生ずるのは,湿った大気中に置かれることが大前提であるところ,本件ブラケットは湿った大気中に置かれることはない上,現在まで,用法どおりに取り付けられた本件手すりにつき破損が生じたという報告は,本件以外に一例も被告に寄せられていないなどとして,欠陥の存在を否定する。しかしながら,本件ブラケットは亜鉛合金ダイカストによる金属鋳造品であるところ,亜鉛合金ダイカストは,不純物(鉛,すず,カドミウム等)がJISH5301の化学成分規格を超えると,致命的な粒間腐食を生じ,亜鉛合金の粒間腐食による変形・崩壊は製造から数か月から数年後に生ずることが通常であること,O研究所が分析した結果,本件ブラケットの化学組成は,不純物である鉛,すずがJISH5301の基準を大きく超えており,他方,粒間腐食を抑制する目的で添加されるマグネシウムは同基準を大きく下回っていること,本件ブラケットは鋳造から3年以上経過していること(甲28,乙4の1,弁論の全趣旨)からすると,本件ブラケットは,粒間腐食 食を抑制する目的で添加されるマグネシウムは同基準を大きく下回っていること,本件ブラケットは鋳造から3年以上経過していること(甲28,乙4の1,弁論の全趣旨)からすると,本件ブラケットは,粒間腐食による破損を起こしやすい状態にあった可能性は相当程度存したというべきである。そして,本件ブラケットが製造後販売店に並ぶまでいかなる大気条件の所に置かれていたか,設置箇所における大気の湿度の状態はどのようなもの- 12 -であったかは明らかではない上,平成20年から平成23年まで被告が販売した手すりにつき,本件を含め5件のクレームがあったところ,そのすべてがブラケットの破損を内容とするものであること(乙10,弁論の全趣旨),クレームとして顕在化した以外に暗数も存在しうることに照らすと,被告の指摘する事情は粒間腐食の発生に係る疑問を払拭するに十分なものがあるとはいえない。また,被告は,本件手すりについては,横付け専用と注意喚起されており,通常の一般人において,垂直方向の取付けが横付けの範囲に含まれないことは明らかであるから,指示・警告上の欠陥はないと主張するが,既に述べたとおり,縦付けでの使用も合理的に予見できる範囲の使用形態に含まれるから,被告の上記主張は採用できない。その他,前記特段の事情を認めうる証拠はない。 したがって,本件手すりには,欠陥が存したと認められる。 3 争点(過失相殺)について被告は,原告の親族であるA及びBに過失があるから,これらを被害者側の過失として斟酌して過失相殺をすべきであると主張する。しかしながら,原告とA及びBとの間に親族関係があるという外に,原告とA及びBが同居していわゆる財布が一つの関係にあったなど身分上・生活関係上の一体性があることを基礎づける事実の主張はなく,上記主張は主張自体失当で とA及びBとの間に親族関係があるという外に,原告とA及びBが同居していわゆる財布が一つの関係にあったなど身分上・生活関係上の一体性があることを基礎づける事実の主張はなく,上記主張は主張自体失当である(なお,本件手すりを横付け(斜め付けを含む)ではなく縦付けにしたがゆえに本件ブラケットが破損したという機序を認めるに足りる証拠もないから,被告が主張する過失内容と本件事故の発生との間に因果関係があると認めることもできない。)。 4 争点(原告の損害)について 後遺障害前記1認定事実によれば,原告の症状は,平成22年12月31日に固定し,原告に残存した後遺障害は,自賠責保険に用いられる後遺障害等級表を用いた場合,11級7号(脊柱に変形を残すもの)- 13 -に該当すると認められる。 これに対し,原告は,8級2号(脊柱に運動障害を残すもの)に該当する旨主張する。しかしながら,胸椎部の可動域に関する平成22年12月24日と平成23年6月20日の各検査結果に照らすと,原告の上記主張は採用できない。  原告の損害ア治療費 17万9927円原告は,本件事故により,症状固定までに標記治療費を要したと認められる(甲8ないし16)。 イ入院付添費認められない。 原告の入院期間につき,M病院の介護以外に近親者の介護を要したことを認めるに足りる証拠はないから,入院付添費を認めることはできない。 ウ入院雑費 3万0000円原告は、本件事故による傷病の治療のため、20日間入院したから、1日あたり1500円として標記入院雑費を要したと認められる。 エ通院交通費 5万1594円原告は, 告は、本件事故による傷病の治療のため、20日間入院したから、1日あたり1500円として標記入院雑費を要したと認められる。 エ通院交通費 5万1594円原告は,本件事故により,症状固定までの標記通院交通費を要したと認められる(弁論の全趣旨)。 オ通院付添費 47万5200円原告は,本件事故により,症状固定までの標記通院付添費を要したと認められる(弁論の全趣旨)。 カ自宅改造費 160万2064円証拠(甲29,乙3,原告本人)によれば,原告は,週3回程度,温水プールに通うなどした外,旅行も楽しんでいたところ,本件事故に遭遇してからは,退院後も疼痛に関連した歩行障害の問題が残り,作業療法及び理学療法において歩行訓練や筋力強化等を図ることが目的とされ,入浴時はシャワーチェアー,手すり- 14 -を使用し,屋外歩行は足元に注意して転倒しないように気をつけるようにとの指導を受けた。Bは,原告の要望も聞きながら,原告の安全な日常生活を図るため,別紙工事内容のとおり,工事を行い,160万2064円の支出をしたと認められる(甲18,29)。原告は,現在も基本的に杖を手放せなくなった外,前屈みの姿勢をとることが困難である。 以上によれば,原告は,標記自宅改造費による損害を被ったと認められる。 これに対し,原告は,上記の外,Bが26日分の大工工事作業をしたとして大工工賃39万円を請求するが,原告とBは1親等の姻族関係にあること,Bは請負現場の工事が終わった後,夜間を利用して上記工事を行ったこと(甲29)に照らすと,上記工事は原告がBに対して大工工賃を支払う前提のものであったものとは考えにくく,大工工賃を自宅改造費に計上することはできない。 わった後,夜間を利用して上記工事を行ったこと(甲29)に照らすと,上記工事は原告がBに対して大工工賃を支払う前提のものであったものとは考えにくく,大工工賃を自宅改造費に計上することはできない。 他方,被告は,第12胸椎圧迫骨折によって足の上げ下げや歩行に支障を来すとは考えがたいとする外,原告の症状には,本件事故前の加齢性の変性が大いに寄与しているから,原告主張の自宅改造費全額が本件事故によるものとはいえないという主張をする。しかしながら,退院時においても疼痛に関連した歩行障害の問題が残され,歩行訓練や筋力強化等を図ることが目的とされていたことの外,原告が高齢であること,入院中T字杖を使用して歩行するようになったのは平成21年11月下旬であること(乙3)にかんがみると,第12胸椎圧迫骨折によって歩行等に支障を来すとは考えがたい旨の主張を採用することはできない。 また,加齢性の変性を考慮すべきであるという主張については,なるほど,本件事故前,原告には,変形性腰椎症,第3腰椎変性すべり症といった加齢による変性があったものであるが(甲7,19,乙3),その程度如何,原告と同様の年齢に相当する平均- 15 -人との差異如何は明らかではないから,これら変性を本損害額算定の際に考慮するのは相当ではない。 キ休業損害認められない。 原告は,本件事故当時,一人暮らしで無職であったから(原告本人),他人のために家事労働等の労働に従事していたとはいえず,休業損害を認めることはできない。 なお,原告は,Aが原告の日常生活の世話をしており,これが家事代替労働と評価しうると主張する。しかし,仮に原告がAから一定の助力を受けているとしても,原告がAに対して謝礼等を支払う関係にあるとは考えにくいから,代替労働分の 常生活の世話をしており,これが家事代替労働と評価しうると主張する。しかし,仮に原告がAから一定の助力を受けているとしても,原告がAに対して謝礼等を支払う関係にあるとは考えにくいから,代替労働分の損害が原告に生じたと認めることはできない。 ク逸失利益認められない。 休業損害に述べたのと同様の理由に加え,原告の年齢にかんがみると,本件事故後に就業する現実的可能性を肯定することもできないから,逸失利益を認めることはできない。 ケ傷害慰謝料 175万0000円原告の被った傷害の程度,治療状況等の事情を考慮すると,傷害慰謝料は標記金額が相当である。 コ後遺障害慰謝料 420万0000円原告に残存した後遺障害の内容(変形障害及び運動障害),程度,変形障害と運動障害は同じく胸椎部に係るものであること,胸椎部の可動域に関する平成22年12月24日と平成23年6月20日の各検査結果及びその推移状況を考慮すると,後遺障害慰謝料は標記金額が相当である。 サ弁護士費用 80万0000円本件事故の態様,本件の審理経過,認容額等に照らし,弁護士費用は標記金額をもって相当と認める。 シ合計以上によれば,損害合計は908万8785円となる。 - 16 - 5 結論よって,主文のとおり判決する。 福岡地方裁判所第5民事部 裁判官山口浩司 - 17 -(別紙添付省略) 申し訳ありませんが、提供されたテキストには整形すべき内容が含まれていないため、整形を行うことができません。別のテキストを提供していただければ、整形を行います。

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