平成29(ワ)4178 特許権侵害差止等請求事件

裁判年月日・裁判所
令和5年1月31日 大阪地方裁判所
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令和5年1月31日判決言渡同日原本受領裁判所書記官平成29年(ワ)第4178号特許権侵害差止等請求事件口頭弁論終結日令和4年9月22日判決 原告ヤマウチ株式会社同代表者代表取締役同訴訟代理人弁護士重冨貴光同黒田佑輝同大和奈月 同石津真二同杉野文香同訴訟代理人弁理士伊藤英彦 被告イチカワ株式会社 同代表者代表取締役同訴訟代理人弁護士本多広和同訴訟復代理人弁護士田中一成同訴訟代理人弁理士古橋伸茂同黒川 恵 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 被告は、別紙「イ号製品目録」記載の製品(以下「イ号製品」という。) 及び同「ロ号製品目録」記載の製品(以下、「ロ号製品」といい、イ号製品と併せて「被告各製品」という。)を製造し、販売し、販売の申出をし、輸出してはならない。 2 被告は、被告各製品を廃棄せよ。 3 被告は、原告に対し、2億2000万円及びうち1億1000万円に対す る平成29年5月16日から、うち1億1000万円に対する令和2年3月26日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は、発明の名称 1億1000万円に対す る平成29年5月16日から、うち1億1000万円に対する令和2年3月26日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は、発明の名称を「シュープレス用ベルト」とする特許(以下「本件特許1」という。)及び「製紙用弾性ベルト」とする特許(以下、「本件特許2」と いい、本件特許1と併せて「本件各特許」という。)に係る特許権(以下「本件各特許権」という。)を有する原告が、被告が本件各特許の特許請求の範囲請求項1記載の各発明の技術的範囲に属するイ号製品を製造、販売し、本件特許1の特許請求の範囲請求項1記載の発明の技術的範囲に属するロ号製品を製造、販売することは本件各特許権の侵害に当たると主張して、被告に対し、特許法100 条1項及び2項に基づき、被告各製品の製造、販売等の差止め及び廃棄を求めるとともに、不法行為(民法709条)に基づく損害賠償15億6800万円のうち2億円に弁護士等費用を加えた2億2000万円及びうち1億1000万円に対する平成29年5月16日(訴状送達の日の翌日)から、うち1億1000万円に対する令和2年3月26日(同月23日付け訴えの追加的変更申立書送達の 日の翌日)から各支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 1 前提事実(証拠等を掲げていない事実は、争いのない事実又は弁論の全趣旨により容易に認められる事実。以下、枝番号があるものは、特に明示する場合を除き各枝番号を含む。) (1) 当事者 原告は、合成ゴム、合成樹脂製品、化成品等の製造販売等を目的とする株式会社である。 被告は、紙、パルプ、スレート用フェルト等の製造販売等を目的とする株式会社で (1) 当事者 原告は、合成ゴム、合成樹脂製品、化成品等の製造販売等を目的とする株式会社である。 被告は、紙、パルプ、スレート用フェルト等の製造販売等を目的とする株式会社である。 (2) 本件各特許 原告は、次の特許(本件各特許。以下、本件特許1に係る特許権を「本件特許権1」、本件特許2に係る特許権を「本件特許権2」という。)を有している。 本件特許権1及び2の特許請求の範囲、明細書及び図面(以下、明細書及び図面を順に「本件明細書1」及び「本件明細書2」という。)の記載は、それぞれ別紙「特許公報(甲第2号証)」及び同「特許公報(甲第4号証)」のとおりであ る。 ア本件特許1登録番号特許第3698984号出願日平成12年11月10日公開日平成14年5月22日 登録日平成17年7月15日発明の名称シュープレス用ベルトイ本件特許2登録番号特許第3946221号出願日平成16年11月30日 公開日平成18年6月15日登録日平成19年4月20日発明の名称製紙用弾性ベルト(3) 構成要件ア本件特許1の特許請求の範囲請求項1に係る発明(以下「本件発明1」と いう。)の構成要件は、次のとおり分説される。 1A 補強基材と熱硬化性ポリウレタンとが一体化してなり、前記補強基材が前記ポリウレタン中に埋設され、1B 外周面および内周面が前記ポリウレタンで構成されたシュープレス用ベルトにおいて、1C 外周面を構成するポリウレタンは、末端にイソシアネート基を有するウ レタンプレポリマーと、ジメチルチオトルエンジアミンを含有する硬化剤と、を含む組 されたシュープレス用ベルトにおいて、1C 外周面を構成するポリウレタンは、末端にイソシアネート基を有するウ レタンプレポリマーと、ジメチルチオトルエンジアミンを含有する硬化剤と、を含む組成物から形成されている、1D シュープレス用ベルト。 イ本件特許2の特許請求の範囲請求項1に係る発明(以下「本件発明2」といい、本件発明1と併せて「本件各発明」と総称する。)の構成要件は、次のと おり分説される。 2A 表面に排水溝を有する製紙用弾性ベルトにおいて、2B 前記排水溝の壁面の表面粗さが、算術平均粗さ(Ra)で、2.0μm以下であることを特徴とする、2C 製紙用弾性ベルト。 (4) 本件各発明の背景技術等(弁論の全趣旨)ア製紙工程の全体的な構造とシュープレス用ベルト(以下、製紙用弾性ベルトを含め、単に「ベルト」ということがある。)が用いられる工程本件各発明の対象であるベルトは製紙工程で用いられる。製紙工程の概要は、原料であるパルプを製造する工程と、パルプから紙を抄く抄紙工程に区別される。 抄紙工程で用いられる抄紙機は、連続した複数のパート、すなわち、水で薄めたパルプを網の上で抄いて紙を形づくるワイヤーパート、濡れた状態の紙から水分を絞り出すプレスパート、熱を加えて紙を乾かすドライヤーパート、送られてくる紙を芯棒に巻き取るリールパート等からなる。ベルトは、抄紙機のプレスパートで用いられる。 イプレスパートの概要と基本的構成 プレスパートで用いられるプレス機には、加圧シューを用いてプレスを行うシュープレス方式があり、このシュープレス方式のプレスパートにおいて、ベルトは、抄かれた紙を脱水するために用いられる。 プレスパートの構成の一例は、次の【図1】のとおりである ーを用いてプレスを行うシュープレス方式があり、このシュープレス方式のプレスパートにおいて、ベルトは、抄かれた紙を脱水するために用いられる。 プレスパートの構成の一例は、次の【図1】のとおりである。 プレスロール1と対向する位置に筒状のシュープレス用ベルト2を設ける。 シュープレス用ベルト2は、内側に設けられた凹状の加圧シュー5の上を滑りながら回転しつつ、加圧シュー5とプレスロール1によって加圧される。ここで、プレスロール1は駆動ロールであり、シュープレス用ベルト2は走行するフェルト3との摩擦によって連れ回りする。プレスロール1と、シュープレス用ベルト 2の間を、湿紙4とフェルト3が通過する際に、これらがプレスされることによって、湿紙の脱水が行われる。この際、湿紙から絞り出された水は、フェルト3に移行する。ベルトの中には、脱水効率を上げるため、ベルトのフェルト側に当接する面に溝(排水溝)が彫られることがある。シュープレス用ベルトの表面に排水溝が設けられている場合には、湿紙から絞り出された水はフェルトから溝内に 移行し、溝に沿って排水される。 ウ排水溝の形成工程ベルトを軸に掛け入れ、フェルトと接する側の表面に、一枚又は複数枚の円盤状の回転刃具が取り付けられた装置を当接させ、一定の速度で軸及びベルトを回 転させながら、前記装置を右から左、又は、左から右の一方向に移動させ、一般的には螺旋を描くように連続的に排水溝を形成する。 エベルトの加圧部及び非加圧部ベルトは、前記イ【図1】のとおり、プレス機にセットされて使用されることから、セットされるプレス機に合わせて製造されるが、一般に、セットされるプ レス機の加圧シューの幅よりも広い幅のベルト部分に排水溝を形成して納品することが多い。 ス機にセットされて使用されることから、セットされるプレス機に合わせて製造されるが、一般に、セットされるプ レス機の加圧シューの幅よりも広い幅のベルト部分に排水溝を形成して納品することが多い。そのため、ベルトを使用した場合であっても、形成された排水溝のうち、加圧される部分(以下「加圧部」という。)と加圧されない部分(以下「非加圧部」という。)が生じる。 (5) 被告各製品の構成等 ア被告各製品には次のものが含まれる。なお、被告の製品には、各製品ごとに固有の反番が付されている。 (ア) 被告製品1(イ号製品に含まれる)反番 67+1867製品名ベルトエースⅡ IX-A (イ) 被告製品2(イ号製品に含まれる)反番 67+1495製品名ベルトエースⅠ Ichiriki(ウ) 被告製品3(イ号製品に含まれる)反番 67+4127 製品名ベルトエースⅠ Ichiriki(エ) 被告製品4(ロ号製品に含まれる)反番 65+4484製品名ベルトエースⅠ IX-F(オ) 被告製品5 反番 68+1902 製品名ベルトエースⅠ Yawaraイベルトは、一例として、直径1500mm、全幅8740mm程度の大きさを有し、排水溝加工がなされたものの外周面には、幅が0.6~1.5mmの排水溝が全長数十kmに及んで形成されている(甲4、6)。 ウ被告製品1~3が本件発明1に係る構成要件1A、1B及び1Dを、本件 発明2に係る構成要件2A及び2Cをそれぞれ充足すること、被告製品4が本件発明1に係る各構成要件を充足すること、被告製品5が本件発明2に係る構成要件2A及び2Cを充足することは当事者間に争いがない。 (6) 被告の行為被告は、遅 ぞれ充足すること、被告製品4が本件発明1に係る各構成要件を充足すること、被告製品5が本件発明2に係る構成要件2A及び2Cを充足することは当事者間に争いがない。 (6) 被告の行為被告は、遅くとも平成27年7月頃から、被告各製品を製造し、販売し、販売 の申出をし、輸出をしている。 2 争点(1) 被告製品1~3の本件発明1の技術的範囲への属否(争点1)(2) 被告製品1~3、5等の本件発明2の技術的範囲への属否(争点2)(3) 本件発明1の無効理由の有無(争点3) ア公然実施発明(被告が平成11年11月にインドネシアの製紙会社向けに製造し輸出したベルト(反番51+8739。以下「ベルトA」という。)に係る発明。以下「公然実施発明A」という。)に基づく本件発明1の新規性欠如の有無(争点3-1)イ公然実施発明(被告が平成11年5月から平成12年4月までの間に、日 本製紙株式会社(以下「日本製紙」という。)向けに出荷したベルト4反(以下「ベルトB」という。)に係る発明(以下「公然実施発明B」という。)に基づく本件発明1の新規性欠如の有無(争点3-2)ウ公開特許公報(特開2000-303377号。平成12年10月31日公開。乙134。以下「乙134公報」という。)記載の発明(以下「乙D発明」 という。)に基づく本件発明1の進歩性欠如の有無(争点3-3) エ本件発明1のサポート要件違反の有無(争点3-4)(4) 被告の先使用による本件発明1に係る通常実施権の成否(争点4)(5) 本件発明2の無効理由の有無(争点5)ア登録実用新案第3104830号公報(乙41。以下「乙41公報」という。)に記載された発明(以下「乙C発明」という。)に基づく本件発明2 4)(5) 本件発明2の無効理由の有無(争点5)ア登録実用新案第3104830号公報(乙41。以下「乙41公報」という。)に記載された発明(以下「乙C発明」という。)に基づく本件発明2の進 歩性欠如①の有無(争点5-1)イ乙C発明に基づく本件発明2の進歩性欠如②の有無(争点5-2)ウ本件発明2の実施可能要件違反①の有無(争点5-3)エ本件発明2の実施可能要件違反②の有無(争点5-4)オ公然実施発明(王子製紙株式会社(以下「王子製紙」という。)苫小牧工 場に設置されたシュープレス機において平成16年11月17日から平成17年3月23日の間に使用されていたベルトの一部(サンプル。以下「ベルトE」という。)に係る発明(以下「公然実施発明E」という。)に基づく本件発明2の新規性欠如の有無(争点5-5)(6) 損害の発生及びその額(争点6) (7) 差止め及び廃棄の必要性の有無(争点7)第3 争点についての当事者の主張 1 被告製品1~3の本件発明1の技術的範囲への属否(争点1)(原告の主張)(1) 被告製品1~3の構成 被告製品1~3の構成を本件発明1の構成要件に即して分説すると、別紙「被告製品の構成(本件発明1)」の「被告製品1~3の構成」中の「原告の主張」欄記載のとおりである。 (2) 構成要件1C(「ジメチルチオトルエンジアミンを含有する硬化剤」)の充足性 構成要件1Cは「外周面を構成するポリウレタンは…ジメチルチオトルエンジ アミンを含有する硬化剤と、を含む組成物から形成されている」と規定しているのみで、ジメチルチオトルエンジアミン(以下「DMTDA」と表記することがある。)の含有量については何らの限定をしておらず、 アミンを含有する硬化剤と、を含む組成物から形成されている」と規定しているのみで、ジメチルチオトルエンジアミン(以下「DMTDA」と表記することがある。)の含有量については何らの限定をしておらず、本件明細書1をみても、DMTDAの含有量の限定を読み込むことはできないから、ベルトの外周面を構成するポリウレタンは、DMTDAが含有されており、それが硬化剤として、耐 クラック性を向上させていれば足りる。 そうであるところ、被告製品1~3の外周面を構成するポリウレタンにDMTDAが含有されていることは当事者間に争いがなく、被告製品1~3の構造等を再現した製品(以下「被告製品1~3の再現品」という。)に対する亀裂進展試験及び亀裂発生試験(甲41、59、60)の結果によれば、被告製品1~3の 外周面に含まれるDMTDAは、硬化剤として耐クラック性を向上させており、また、原告が実施した解析(甲66~69)によれば、被告製品4のみならず、被告製品1~3の再現品の外周面からもいわゆる両手変性物(硬化剤の二つのアミノ基中の活性水素が二つのプレポリマーのイソシアネート基とそれぞれウレア結合することによって生じ、プレポリマーが硬化剤により硬化したことを裏付け る変性物)と推定されるピークが検出された。 したがって、被告製品1~3は、構成要件1Cの構成を有する。 (3) 以上から、被告製品1~3は、本件発明1の技術的範囲に属する。 (被告の主張)(1) 被告製品1~3の構成 被告製品1~3の構成に関する認否は、別紙「被告製品の構成(本件発明1)」の「被告製品1~3の構成」中の「被告の主張」欄記載のとおりである。 (2) 構成要件1C(「ジメチルチオトルエンジアミンを含有する硬化剤」)の非充足性構成要件1Cは、 構成(本件発明1)」の「被告製品1~3の構成」中の「被告の主張」欄記載のとおりである。 (2) 構成要件1C(「ジメチルチオトルエンジアミンを含有する硬化剤」)の非充足性構成要件1Cは、外周面を構成するポリウレタンが「ジメチルチオトルエンジ アミンを含有する硬化剤」を含む組成物から形成されていることを規定している。 また、本件明細書1において、「外周面を含む外側のポリウレタン層…の硬化剤の主成分をジメチルチオトルエンジアミンとすることにより、前述のとおり、ベルトの外周面にクラックが発生するのを抑えることができる。」(本件明細書1【0061】)との記載があるほか、DMTDAのみが、その含有量が活性水素基の数の50%以上を占めることが好適である旨の記載(同【0043】)、当量比(イ ソシアネート基(NCO)に対するアミノ基等の活性水素(H)の割合)に関する記載(同【0045】)、実施例において具体的名称の記載(同【0080】等)があるのに対し、他の硬化剤については、その具体的名称の記載すらない。したがって、当業者は、少なくとも硬化剤の主成分はDMTDAであると理解するし、そのような構成以外の硬化剤を使用した場合について、効果を発揮するとは到底理 解できない。 被告製品1~3の外周面には、硬化剤としてDMTDAは使用されておらず、外周面に含まれるDMTDAは、近接する層にあったものが、ブリードアウト(高分子材料において、製造から時間が経過すると高分子材料と反応していない低分子の添加剤などが表面に浮き出る現象)、又は、製造工程において混入したもの であって、いずれも微量しか含まれていない。被告が、被告製品1~3の外周面に含まれる分量のDMTDAによってポリウレタンを硬化することができるかについ )、又は、製造工程において混入したもの であって、いずれも微量しか含まれていない。被告が、被告製品1~3の外周面に含まれる分量のDMTDAによってポリウレタンを硬化することができるかについて実験をしたところ(乙123。以下「乙123実験」という。)、当該分量のDMTDAではポリウレタンの硬化に寄与していなかった。また、外周面に使用するプレポリマーと硬化剤とが反応して硬化したというには、いわゆる両手 変性物がみられる必要があるところ、被告が実施した解析(乙67~69)の結果、被告製品1~3の外周面にDMTDAの変性物と推定される物質がみられたものの、これは、硬化剤の一つのアミノ基中の活性水素のみが一つのプレポリマーのイソシアネート基とウレア結合した状態であり、両手変性物ではないから、プレポリマーがDMTDAにより硬化したことを示すものではない。そうすると、 被告製品1~3の外周面から検出されたDMTDAは、外周面が硬化した後にブ リードアウトによって表面付近まで達したものと推定され、この点においても、被告製品1~3の外周面に含まれるDMTDAはポリウレタンの硬化に寄与していないといえる。 したがって、被告製品1~3は、構成要件1Cの構成を有さない。 (3) 以上から、被告製品1~3は、本件発明1の技術的範囲に属さない。 2 被告製品1~3、5等の本件発明2の技術的範囲への属否(争点2)(原告の主張)(1) 被告製品1~3及び5の構成被告製品1~3及び5の構成を本件発明2の構成要件に即して分説すると、別紙「被告製品の構成(本件発明2)」の各「原告の主張」欄記載のとおりである。 (2)ア被告製品1~3及び5の構成要件2B(「排水溝の壁面の表面粗さが、算術平均粗さ(Ra) 分説すると、別紙「被告製品の構成(本件発明2)」の各「原告の主張」欄記載のとおりである。 (2)ア被告製品1~3及び5の構成要件2B(「排水溝の壁面の表面粗さが、算術平均粗さ(Ra)で、2.0μm以下であること」)の充足性本件明細書2の記載内容(【0009】~【0012】【0016】)からすると、本件発明2は、製紙用弾性ベルトの排水溝における水の流れに対する抵抗を小さくし、紙かすの付着を大幅に減少し、良好な搾水機能を発揮するとの作用効果を奏する べく、ベルトの排水溝の壁面の表面粗さについて、日本工業規格(JISB601)にて定義される様々な表面性状のパラメータのうち、「算術平均粗さ(Ra)」に係るパラメータを採用して当該パラメータにて測定することを内容とするとともに、当該算術平均粗さ(Ra)について表面粗さ輪郭形状測定器を使用して測定した場合に2.0μm以下であることを特徴とするものである(本件明 細書2【0011】【0025】)。そして、排水溝の表面粗さの測定方法につき、当業者は、ベルトの溝加工を行うに際し、溝の仕様について、ベルト全体を通じて略均一となるように、設計・製造指示・製造・製造管理・検査を行っているから、製品全体の溝や、溝の全長にわたって表面粗さを全て測定する必要はない。また、本件発明2は、良好な搾水性能を発揮するために、排水溝の壁面の走行方向の表 面粗さを2.0μm以下にすることを特徴とするものであるから、「排水溝の壁 面の表面粗さ」は、排水溝壁面の走行方向(長さ方向)の表面粗さをいうものと解されるし、被告製品1~3及び5の加圧部と非加圧部の排水溝壁面の表面粗さに違いはないこと、被告が製造販売する製品は、未使用の製品と使用済みの製品とで、排水溝壁面の表面粗さの変化 面粗さをいうものと解されるし、被告製品1~3及び5の加圧部と非加圧部の排水溝壁面の表面粗さに違いはないこと、被告が製造販売する製品は、未使用の製品と使用済みの製品とで、排水溝壁面の表面粗さの変化はないことから、製品の使用によって排水溝壁面の表面粗さは変化せず、使用済みの被告製品1~3及び5を測定することに よって、これらの製造販売時(未使用)の排水溝壁面の表面粗さを立証することは可能である。そして、以上を踏まえた原告の測定結果(甲12、18、25、47)によれば、被告製品1~3及び5の排水溝の溝壁面の表面粗さは、算術平均粗さ(Ra)にて2.0μm以下である。 イその他の被告の製品の構成要件2Bの充足性 一般的に、同一シリーズに属する製品について同様の加工条件で加工することが通常であるとの経験則が認められること、被告は、被告製品1~3及び5が属するシリーズの実製品の非加圧部の排水溝壁面の表面粗さの算術平均粗さが2. 0μm以下とならないものがあることについて実質的な反証をしていないこと、ベルトエースⅠとⅡはその基布構造に相違があるのみで、排水溝壁面の表面粗さ に相違はないことを踏まえると、被告製品1~3及び5が属する次のシリーズの製品(以下「被告製品シリーズ」という。)は構成要件2Bの構成を有するといえる。 ベルトエースⅡ IX-A(被告製品1)ベルトエースⅠ Ichiriki(被告製品2及び3) ベルトエースⅡ IchirikiベルトエースIYawara(被告製品5)ベルトエースⅡ Yawaraウ原告は、令和4年9月22日第2回口頭弁論期日において、第38準備書面の「第2」の3、第39準備書面の「第2」(別紙を含む。)を陳述し、甲第 99号証~第104号証を提出したが、これらにつき 原告は、令和4年9月22日第2回口頭弁論期日において、第38準備書面の「第2」の3、第39準備書面の「第2」(別紙を含む。)を陳述し、甲第 99号証~第104号証を提出したが、これらにつき、被告は時機に後れた攻撃 防御方法として却下を求めている。前記各準備書面の部分における原告の主張の概要は以下のとおりである。 本件発明2は、製紙用弾性ベルトの排水溝の壁面全域に亘って例外なく表面粗さが算術平均粗さ(Ra)で2.0μm以下である壁面を設けることを必須の要素とすることを特徴とした発明ではなく、ベルトの搾水性能向上に関係する「表 面粗さが算術平均粗さ(Ra)で2.0μm以下である」という排水溝の壁面に係る新たな着想に基づく技術的要素を捉え、当該技術的要素を備えるベルトを対象としたものである。 そして発明の技術的範囲への属否判断は、請求項の記載、明細書の説明及び当業者の技術常識を踏まえて行われるところ、溝加工作業に関する当業者の技術常 識として、連続加工作業前に設定された加工条件に基づいて均一的に連続加工作業を行うこと、溝加工作業時における諸要因によって加工結果にばらつきが生じることが避けられないことが存在したから、これらを踏まえて判断すべきである。 具体的には、(ステップ①)対象製品に多数設けられた排水溝のうち、任意の排水溝の壁面において「表面粗さが算術平均粗さ(Ra)で2.0μm以下である」 という排水溝の壁面が溝加工の結果として得られているか否かを確認し、(ステップ②)ステップ①において、「表面粗さが算術平均粗さ(Ra)で2.0μm以下である」ことが確認された場合は、溝加工作業時に不可避的に生じるばらつきを考慮しても、均一的な連続加工作業によって「表面粗さが算術平均粗さ(Ra)で2.0μm以下で 平均粗さ(Ra)で2.0μm以下である」ことが確認された場合は、溝加工作業時に不可避的に生じるばらつきを考慮しても、均一的な連続加工作業によって「表面粗さが算術平均粗さ(Ra)で2.0μm以下である」という排水溝の壁面に係る技術的要素を特徴とするベ ルトが得られているか否かを確認する((ステップ②-1)当業者からみて、明らかに溝加工作業時に生じた異常(イレギュラー)であると判断できる溝加工結果のデータを除外せずに、測定結果に係る各排水溝壁面(溝底壁面、側壁面A、側壁面B)の表面粗さの平均値が算術平均粗さ(Ra)で2.0μm以下である結果が得られている場合には、前記技術的要素を特徴とするベルトが得られてい ると評価し、(ステップ②-2A)前記結果が得られていない場合は、異常(イ レギュラー)であると判断できる溝加工結果データを除外し、(ステップ②-2B)ステップ②-2Aにおいて異常(イレギュラー)と判断できる溝加工結果データを除外した後に、測定結果に係る各排水溝壁面(溝底壁面、側壁面A、側壁面B)の表面粗さの平均値が算術平均粗さ(Ra)で2.0μm以下である結果が得られているか否かを確認する。)方法が考えられる。 これを前提に原告及び被告が提出した測定結果について検討すると(ただし、キープサンプル(被告が保管する製品外部分のサンプル)については、被告が現実に市場において顧客に販売した実製品の排水溝壁面の表面粗さをおよそ示したものとはいえないことから、これを除外する。)、少なくとも、令和4年2月以降に得られた原告測定結果(甲93、101及び102)のうち、IKベルト1 ~12及び17~19に関するもの、従前の原告測定結果全て(甲12、25、47)並びに被告測定結果のうち、乙第156号証(67+70 告測定結果(甲93、101及び102)のうち、IKベルト1 ~12及び17~19に関するもの、従前の原告測定結果全て(甲12、25、47)並びに被告測定結果のうち、乙第156号証(67+7007(使用済み)、70+1077(使用済み))、第194号証、第199号証、第205号証、第207号証、第216号証~第225号証のものは、ステップ①及び②の各条件を満たし、被告製品1~3、5等は構成要件2Bの構成を有する。 (3) 以上から、被告製品1~3及び5並びに被告製品シリーズは、いずれも本件発明2の技術的範囲に属する。 (4) なお、本件では、裁判所から、侵害論につき、令和元年10月17日第14回弁論準備手続期日において、被告製品1~3及び5が本件発明2の技術的範囲に属するとの心証開示がなされ、これにより侵害論の審理は終了し、第15回 弁論準備手続期日から損害論の審理が開始されたにもかかわらず、被告は、被告製品1~3及び5と同じシリーズの製品等における排水溝壁面の表面粗さの測定に関する報告書や切削加工に関する報告書等(乙152~159)を新たに証拠提出し、令和2年2月10日付け準備書面(20)において、被告製品1~3及び5が「前記排水溝の壁面の表面粗さが、算術平均粗さ(Ra)で、2.0μm 以下である」との構成要件を充足しないなどとして、非侵害の主張を行っている。 かかる被告の訴訟行為は時機に後れたものとして却下されるべきである。 (被告の主張)(1) 被告製品1~3及び5の構成被告製品1~3及び5の構成に関する認否は、別紙「被告製品の構成(本件発明2)」の各「被告の主張」欄記載のとおりである。 (2) 被告製品1~3及び5の構成要件2B(「排水溝の壁面の表面粗さが、算術平均 及び5の構成に関する認否は、別紙「被告製品の構成(本件発明2)」の各「被告の主張」欄記載のとおりである。 (2) 被告製品1~3及び5の構成要件2B(「排水溝の壁面の表面粗さが、算術平均粗さ(Ra)で、2.0μm以下であること」)の非充足性ア構成要件2Bは、ベルトの特定の又は限定された部分において排水溝の壁面の表面粗さが算術平均粗さ(Ra)で2.0μm以下であることを規定していない。また、本件発明2は、排水溝壁面の表面粗さを特許請求の範囲記載の数値 以下にすることで、水の流れに対する抵抗を小さくすることができるとともに、紙かすの付着が大幅に減少し、良好な搾水性能を発揮するとの作用効果を奏するとの考えに基づく発明であり、溝の一部の算術平均粗さ(Ra)が2.0μmというだけではかかる作用効果を奏するとはいえない(本件明細書2【0009】【0012】)。 したがって、構成要件2Bを充足するというためには、排水溝の全長にわたって その壁面の表面粗さが算術平均粗さ(Ra)で2.0μm以下であることを要する。 また、排水溝壁面の表面粗さは、使用時のフェルトとの接触、流水、紙かす、湿紙に含まれる填料による摩耗等により変化し、新品か使用済みかやその使用状況によって異なる。ベルトを製造販売する者としては、自らの製品の排水溝壁面 の表面粗さを確認するのは、製造販売時以外にはあり得ず、本件発明2の数値範囲は、製造販売時における製品の排水溝壁面の表面粗さであると解さなければ、侵害を回避することは不可能である。したがって、製造販売時(未使用)のベルトにおける排水溝壁面の表面粗さが、算術平均粗さ(Ra)で2.0μm以下であることを要する。 さらに、本件明細書2においては、排水溝壁面の表面粗さは日本工業規格(J (未使用)のベルトにおける排水溝壁面の表面粗さが、算術平均粗さ(Ra)で2.0μm以下であることを要する。 さらに、本件明細書2においては、排水溝壁面の表面粗さは日本工業規格(J IS-B0601)で規定する算術平均粗さ(Ra)で、2.0μm以下であることを特徴とする、と記載するのみであるから、表面粗さは、JISに記載された規格に沿って測定するほかない。JISB 0601が引用するJISB0633によれば、算術平均粗さ(Ra)は、①特に注記がなければ「五つの連続した基準長さ」の粗さの値を平均すること、②「対象面上の測定数」が重要と なること、③基準長さを用いて算出したパラメータの測定値のうち要求値を超える数が16%以下であることを要し、各基準長さにおけるパラメータの一つでも要求値を超えれば、要求値を満たすことにならないこと、④排水溝壁面の「長さ方向」(走行方向)のみの表面粗さを測定することではきわめて不十分であり、「幅方向」及び「深さ方向」においても表面粗さを測定することを要する。 イ原告による被告製品1~3及び5の測定結果は、ベルトの一部を測定したものにすぎず、全長について測定したものではないことに加え、被告が被告製品1~3及び5の排水溝壁面の表面粗さを測定したところ、多数の箇所において算術平均粗さ(Ra)が2.0μmを上回っていた。また、被告製品5以外は使用品であるし、未使用品である被告製品5についても、丸めた状態の製品に測定器 を当てて測定し、かつ、底壁面のみを1か所測定したにすぎないから、正しく網羅的な測定であるとはいえない。さらに、原告による測定方法は、④溝の「長さ方向」(走行方向)のみを測定していること、②その測定全長は長いもので39. 6cmであり、全長数千メートルに いから、正しく網羅的な測定であるとはいえない。さらに、原告による測定方法は、④溝の「長さ方向」(走行方向)のみを測定していること、②その測定全長は長いもので39. 6cmであり、全長数千メートルに及ぶ排水溝のごく一部にすぎないこと、また、①被告製品1~3及び5は、そもそも幅方向及び深さ方向について五つの連続し た基準長さを測定することができないことから、JISB 0601が引用するJISB 0633によったものではない。 したがって、被告製品1~3及び5は、構成要件2Bの構成を有さない。 ウ被告製品シリーズの構成要件2Bの非充足性前記イのとおり、被告製品1~3及び5の排水溝壁面の算術平均粗さは、同じ 製品の中でもその測定箇所によって異なるのであるから、個々の製品によって当 然に異なり得る。したがって、仮に、被告製品1~3や5が本件発明2の技術的範囲に含まれるとしても、他の製品が技術的範囲に含まれることは当然には導かれない。被告は、被告製品1~3及び5並びにこれらと同じシリーズや、被告が製造販売するその他のシリーズのベルトについて、排水溝壁面の算術平均粗さを測定したところ、同じシリーズであっても、算術平均粗さの値が全く異なる結果 となった(乙152~155)。 (3) 以上から、被告製品1~3及び5は並びに被告製品シリーズは、いずれも本件発明2の技術的範囲に属さない。 (4) なお、本件においては、書面による準備手続中、当事者双方がベルトの排水溝壁面の表面粗さに関する測定結果の提出が終了したことを前提として、令和 4年5月17日、裁判所から、当該測定を踏まえた主張立証を準備するよう求められたにもかかわらず、原告は、①その後、ベルトの排水溝壁面の表面粗さの測定を新たに実施し、その結果 前提として、令和 4年5月17日、裁判所から、当該測定を踏まえた主張立証を準備するよう求められたにもかかわらず、原告は、①その後、ベルトの排水溝壁面の表面粗さの測定を新たに実施し、その結果を同年7月22日付け第38準備書面(「第2」の3)で主張して、甲第99号証~第103号証を提出し、また、②訴訟提起から5年以上が経過し、損害論に入ってから2年以上が経過したにもかかわらず、本 件発明2の技術的意義や技術的範囲の属否判断手法について、従前の原告の主張及び態度とは全く矛盾し、かつ、膨大な資料を伴うなどする独自の議論を同日付け第39準備書面(「第2」)で主張して、甲第104号証を提出している。しかし、これらはいずれも、原告が故意により時機に後れて提出した攻撃防御方法であって、これにより訴訟の完結を遅延させることは明らかであるから、時機に 後れた攻撃防御方法として却下されるべきである。 3 公然実施発明Aに基づく本件発明1の新規性欠如の有無(争点3-1)及び公然実施発明Bに基づく本件発明1の新規性欠如の有無(争点3-2)当事者の主張は、別紙「無効主張一覧表(本件発明1)①」の番号1(争点3-1)及び番号2(争点3-2)の各「被告の主張」及び「原告の主張」欄記載 のとおり。 4 乙D発明に基づく本件発明1の進歩性欠如の有無(争点3-3)及び本件発明1のサポート要件違反の有無(争点3-4)当事者の主張は、別紙「無効主張一覧表(本件発明1)②」の番号3(争点3-3)及び番号4(争点3-4)の各「被告の主張」及び「原告の主張」欄記載のとおり。 5 被告の先使用による本件発明1に係る通常実施権の成否(争点4)当事者の主張は、別紙「先使用の主張一覧表」の「被告の主張」及び「原告の主張」欄記載 」及び「原告の主張」欄記載のとおり。 5 被告の先使用による本件発明1に係る通常実施権の成否(争点4)当事者の主張は、別紙「先使用の主張一覧表」の「被告の主張」及び「原告の主張」欄記載のとおり。 6 乙C発明に基づく本件発明2の進歩性欠如①の有無(争点5-1)及び同進歩性欠如②の有無(争点5-2) 当事者の主張は、別紙「無効主張一覧表(本件発明2)①」の番号1(争点5-1)及び番号2(争点5-2)の各「被告の主張」及び「原告の主張」欄記載のとおり。 7 本件発明2の実施可能要件違反①の有無(争点5-3)、同実施可能要件違反②の有無(争点5-4)及び公然実施発明Eに基づく本件発明2の新規性欠 如の有無(争点5-5)当事者の主張は、別紙「無効主張一覧表(本件発明2)②」の番号3(争点5-3)、番号4(争点5-4)及び番号5(争点5-5)の各「被告の主張」及び「原告の主張」欄記載のとおり。 8 損害の発生及びその額(争点6) (原告の主張)被告による本件各特許権の侵害行為により原告が被った損害は、被告が被告各製品を販売することにより得た利益の額が損害額と推定される(特許法102条2項)。そうであるところ、被告は、国内の顧客に対して、被告各製品を少なくとも年間60反販売しており、また、被告各製品1反当たりの販売価格は概ね8 00万円と推測されることから、被告各製品の総売上高は、平成27年7月から 平成29年3月までが8億4000万円を下らず、同年4月から令和2年3月26日(同月23日付け訴えの追加的変更申立書送達の日の翌日)までが14億円を下らない。そして、利益率は70%を下らないと推察されることから、被告が被告各製品を製造販売することにより得た利益は少なくとも15億6800万 け訴えの追加的変更申立書送達の日の翌日)までが14億円を下らない。そして、利益率は70%を下らないと推察されることから、被告が被告各製品を製造販売することにより得た利益は少なくとも15億6800万円を下らない。 また、原告は、本件の訴訟対応を行うために弁護士及び弁理士に対し、2000万円を下らない費用を支払った。 よって、原告は損害賠償15億6800万円のうち2億円に弁護士等費用を加えた2億2000万円及びうち1億1000万円に対する平成29年5月16日(訴状送達の日の翌日)から、うち1億1000万円に対する令和2年3月26 日(同月23日付け訴えの追加的変更申立書送達の日の翌日)から各支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 (被告の主張)争う。 9 差止め及び廃棄の必要性の有無(争点7) (原告の主張)被告は本件各特許権を侵害しているから、原告は、被告による被告各製品の製造、販売、販売の申出及び輸出を差し止める権利を有する。被告各製品は、被告の売上の多くを占めており、被告各製品につき、今後も製造、販売、販売の申出及び輸出を継続するものと考えられるから、被告各製品を差し止める必要性が高 いことは明らかである。 また、被告は製造販売を開始して以降、被告各製品の販売のために在庫を保有していると考えられるから、被告各製品を廃棄することは、被告による本件各特許権の侵害の予防に必要な行為であることは明らかである。 (被告の主張) 争う。 第4 当裁判所の判断 1 本件明細書1及び2の記載(1) 本件明細書1には次の記載がある。 ア発明の属する技術分野「本発明は、シュープレス用ベルトに関する。さらに詳しくは、補強基材と熱 硬化性ポリウレタ 本件明細書1及び2の記載(1) 本件明細書1には次の記載がある。 ア発明の属する技術分野「本発明は、シュープレス用ベルトに関する。さらに詳しくは、補強基材と熱 硬化性ポリウレタンとが一体化してなるシュープレス用ベルトにおける、ポリウレタンの改良に関する。特に本発明は、製紙工業に使用されるシュープレス用ベルトに使用される。」(【0001】)イ従来の技術「近年、抄紙工程のプレスパートにおいて、湿紙の脱水効果を高めるために、 高速で走行するフェルトに載置された湿紙の一方の面をプレスロールで押さえ、他方の面をエンドレスベルトを介して加圧シューで加圧して湿紙の脱水を行なう、いわゆるシュープレスが普及している。シュープレスにおいては、補強基材と熱硬化性ポリウレタンとを一体化し、エンドレスに形成したベルトが従来から使用されている。また、近年、紙の表面を平滑化し、光沢を付与するカレンダー工程 でも、上述したような弾性ベルトを使用することが検討されている。さらには、特に高速で抄紙する場合、紙切れを防止し、安定して湿紙を搬送するためのシートトランスファー用としても、上述したような弾性ベルトを使用することが検討されている。…」(【0002】)「製紙用ベルトの弾性材料としては、ウレタンプレポリマーと硬化剤とを混合 し、硬化させてなる熱硬化性ポリウレタンが…一般的に使用されており、製紙用ベルトに使用されていた熱硬化性ポリウレタンは、いずれも硬化剤として、4 ,4'-メチレン-ビス-(2-クロロアニリン)(以下、「MOCA」という。)を用いたものであった。」(【0003】)「従来、シュープレスにおいては、プレスロールと加圧シューとの間でベルト に対して苛酷な屈曲および加圧が繰り返されるため、ベル OCA」という。)を用いたものであった。」(【0003】)「従来、シュープレスにおいては、プレスロールと加圧シューとの間でベルト に対して苛酷な屈曲および加圧が繰り返されるため、ベルトを構成するポリウレ タンにクラックが発生することが大きな問題となっていた。このクラックは、フェルトあるいは紙と接するベルトの外周面に主として発生する。また、プレスパートで使用される脱水プレス用ベルトにおいては、脱水効率を上げるために、一般にその外周面に排水溝が形成されるが、前記クラックは、特にこの排水溝の底部エッジおよび上部エッジから発生しやすかった。一端発生したクラックは、ベル トの使用とともに大きなクラックへと進展していく傾向がある。クラックが進展した場合にあっては、ベルトの内周面と加圧シューとの間の潤滑油が外部へ漏れて紙に悪影響を与えたり、ベルトの層間剥離を引き起こしたりする原因となる。 このように、クラックの発生および進展は、ベルトの寿命低下の原因となる。このため、シュープレスなどで使用される製紙用ベルトにおいては、クラックの発 生およびクラックの進展を抑えることが強く要望されていた。さらには、クラックの発生とは別に、基布とポリウレタンとの接着力の弱さが原因で層間剥離が起こる場合もあり、基布とポリウレタンとの層間剥離を防止することが切望されていた。」(【0004】)ウ発明が解決しようとする課題 「本発明は上述した問題を解決するものであり、補強基材と熱硬化性ポリウレタンとが一体化してなるシュープレス用ベルトにおいて、クラックの発生を防止できるシュープレス用ベルトを提供することにある。また、本発明の他の課題は、補強基材と熱硬化性ポリウレタンとが一体化してなるシュープレス用ベルトにおいて、クラック ルトにおいて、クラックの発生を防止できるシュープレス用ベルトを提供することにある。また、本発明の他の課題は、補強基材と熱硬化性ポリウレタンとが一体化してなるシュープレス用ベルトにおいて、クラックがシュープレス用ベルトにたとえ発生したとしても、発生したク ラックが進展することを抑制することができるシュープレス用ベルトを提供することにある。」(【0005】)エ課題を解決するための手段「本発明に係るシュープレス用ベルトは、請求項1に記載のように、補強基材と熱硬化性ポリウレタンとが一体化してなり、前記補強基材が前記ポリウレタン 中に埋設され、外周面および内周面が前記ポリウレタンで構成されたシュープレ ス用ベルトにおいて、外周面を構成するポリウレタンは、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと、ジメチルチオトルエンジアミンを含有する硬化剤と、を含む組成物から形成されている、シュープレス用ベルトである。」(【0006】)オ発明の実施の形態 「図1に、抄紙工程のプレスパートに使用されるシュープレス装置の一例を示す。図1において、プレスロール1の下方には、可撓性のある円筒状の脱水プレス用ベルト2が設けられている。ベルト2とプレスロール1との間には、フェルト3および湿紙4が通されている。ベルト2の外周面とフェルト3とは直接接触している。ベルト2の内周面には、プレスロール側に向けて加圧シュー5が押し 付けられている。加圧シュー5とベルト2との間には、ベルト2を滑らかに走行させるために潤滑油が供給されている。ベルト2は、フェルト3との摩擦によって加圧シュー5の上を滑りながら走行する。加圧シュー5の表面は、プレスロール1の表面に対応した凹状となっている。プレスロール1と加圧シュー5との が供給されている。ベルト2は、フェルト3との摩擦によって加圧シュー5の上を滑りながら走行する。加圧シュー5の表面は、プレスロール1の表面に対応した凹状となっている。プレスロール1と加圧シュー5との間には、広い幅の加圧脱水部Pが形成されている。この加圧脱水部で、湿紙4が脱 水される。」(【0022】)「図2~ 図9に示した各ベルトの外周面は、ポリウレタンで形成されている。 外周面を構成するポリウレタン層7、11、13、15、17、19、21は、末端にイソシアネート基(NCO)を有するウレタンプレポリマーと、末端に活性水素基(H)を有する硬化剤とを含む組成物から形成される。ウレタンプレポ リマーは、ポリオールとフェニレンイソシアネート誘導体とを反応させることによって得られる。」(【0035】)「外周面を構成するポリウレタン7、11、13、15、17、19、21の硬化剤としては、一般的にはポリオール系、芳香族ジオール系、芳香族ジアミン系などの硬化剤が使用される。ポリオール系の硬化剤としては、ポリテトラメチ レングリコール(PTMG)、ポリプロピレングリコール(PPG)などを使用 することが可能である。また、芳香族ジオール系の硬化剤としては、ヒドロキノンジ(ベーターヒドロキシエチル)エーテル(HQEE)などを使用することができる。また、芳香族ジアミン系の硬化剤としては、4,4'-メチレン-ビス-(2-クロロアニリン)(MOCA)、トリメチレン-ビス(4-アミノベンゾアート)(CUA-4)、ジエチルトルエンジアミン(DETDA)、ジメチ ルチオトルエンジアミン(DMTDA)などを使用することができる。中でも、本発明の一つの特徴として、芳香族ジアミン系硬化剤の一種であるジメチルチオトルエンジアミンを含有 (DETDA)、ジメチ ルチオトルエンジアミン(DMTDA)などを使用することができる。中でも、本発明の一つの特徴として、芳香族ジアミン系硬化剤の一種であるジメチルチオトルエンジアミンを含有する硬化剤を使用するのが好ましい。ジメチルチオトルエンジアミンは、式1で表される3,5-ジメチルチオ-2,4-トルエンジアミンを使用することができる。」(【0038】) 「また、ジメチルチオトルエンジアミンは、式2で表される3,5-ジメチルチオ-2,6-トルエンジアミンを使用することができる。」(【0040】)「また、3,5-ジメチルチオ-2,4-トルエンジアミンもしくは3,5-ジメチルチオ-2,6-トルエンジアミンは、それぞれ単独でまたは混合物として用いることができる。特に好ましい硬化材として、アルベマール社より「ET HACURE 300」として市販されている、3,5-ジメチルチオ-2,4-トルエンジアミンと3,5-ジメチルチオ-2,6-トルエンジアミンとの混合物が挙げられる。」(【0042】)「外周面を構成するポリウレタン7、11、13、15、17、19、21の硬化剤は、上記ジメチルチオトルエンジアミンを含有する場合、これにポリオー ル系、芳香族ジオール系、芳香族ジアミン系などの1種類または2種類以上の硬化剤を混合しても構わない。外周面を構成するポリウレタン7、11、13、15、17、19、21の硬化剤における、上記ジメチルチオトルエンジアミンの含有量は、硬化剤の活性水素基(H)の数の50%以上を占めることが好適である。外周面を構成するポリウレタン7、11、13、15、17、19、21の 硬化剤がジメチルチオトルエンジアミンを含有することにより、ベルトの外周面 を構成するポリウレタ 適である。外周面を構成するポリウレタン7、11、13、15、17、19、21の 硬化剤がジメチルチオトルエンジアミンを含有することにより、ベルトの外周面 を構成するポリウレタン7、11、13、15、17、19、21にクラックが発生するのを抑えることができる。」(【0043】)「また、別の観点から、外周面を構成するポリウレタン層7、11、13、15、17、19、21は、硬化剤の活性水素基(H)とウレタンプレポリマーのイソシアネート基(NCO)との当量比(H/NCO)の値が1<H/NCO< 1.15となる割合でウレタンプレポリマーと硬化剤とが混合される。このような構成とすることで、ベルトの外周面を構成するポリウレタン7、11、13、15、17、19、21に小さなクラックが発生したとしても、発生したクラックが大きなクラックに進展するのを抑えることができる。なお、外周面を構成するポリウレタン層7、11、13、15、17、19、21は、当量比(H/N CO)の値が1.01≦H/NCO≦1.14となる割合でウレタンプレポリマーと硬化剤とが混合されることも可能であり、係る場合においては、小さなクラックが発生したとしても、より的確に発生したクラックが大きなクラックに進展するのを抑えることができるのである。外周面を構成するポリウレタン7、11、13、15、17、19、21のH/NCOの値が1以下であると、クラックが 発生した場合に大きなクラックに進展しやすい。一方、外周面を構成するポリウレタン7、11、13、15、17、19、21のH/NCOの値が1.15以上であると、ポリウレタンが脆くなり、クラックが発生しやすくなる。」(【0044】)「外周面を構成するポリウレタン7、11、13、15、17、19、 17、19、21のH/NCOの値が1.15以上であると、ポリウレタンが脆くなり、クラックが発生しやすくなる。」(【0044】)「外周面を構成するポリウレタン7、11、13、15、17、19、21は、硬化剤としてジメチルチオトルエンジアミンを含有する硬化剤を用い、なおかつ 硬化剤の活性水素基(H)とウレタンプレポリマーのイソシアネート基(NCO)との当量比(H/NCO)の値が1<H/NCO<1.15となる割合でウレタンプレポリマーと硬化剤とを混合することにより、ベルトの外周面を構成するポリウレタン7、11、13、15、17、19、21にクラックが発生するのを抑えることができ、もし小さなクラックが発生したとしても、発生したクラック が大きなクラックに進展するのを抑えることができる。なお、硬化剤におけるジ メチルチオトルエンジアミンの含有量は、硬化剤の活性水素基(H)の数の50%以上を占めることが好適である。また、当量比(H/NCO)の値は、1.01≦H/NCO≦1.14となる割合でウレタンプレポリマーと硬化剤とが混合されることが好適である。」(【0045】)「図4~図9および図11に示したベルトは、いずれも、外側のポリウレタン 層11、13、15、17、19、21、25は、内側のポリウレタン層10、12、14、16、18、20、24の外周面に接着し、かつ製紙用ベルトの外周面を構成している。これらのベルトにおいて、外側のポリウレタン11、13、15、17、19、21、25は、前述のように末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと、ジメチルチオトルエンジアミンを主成分とする硬化 剤とを含む組成物から形成されていることが好ましい。外周面を含む外側のポリウレタン層11、13、15、1 ート基を有するウレタンプレポリマーと、ジメチルチオトルエンジアミンを主成分とする硬化 剤とを含む組成物から形成されていることが好ましい。外周面を含む外側のポリウレタン層11、13、15、17、19、21、25の硬化剤の主成分をジメチルチオトルエンジアミンとすることにより、前述のとおり、ベルトの外周面にクラックが発生するのを抑えることができる。」(【0061】)カ発明の効果 「本発明に係る製紙用ベルトは、外周面を構成するポリウレタンにおいて、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと、ジメチルチオトルエンジアミンを含有する硬化剤と、を含む組成物から形成されているから、クラックの発生を防止できた。また、本発明に係る製紙用ベルトは、外周面を構成するポリウレタンにおいて、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと、 末端に活性水素基を有する硬化剤と、を含む組成物から形成され、前記組成物は、前記硬化剤の活性水素基(H)と前記ウレタンプレポリマーのイソシアネート基(NCO)との当量比(H/NCO)の値が、1<H/NCO<1.15となる割合で前記ウレタンプレポリマーと前記硬化剤とが混合されたものであるから、クラックが製紙用ベルトにたとえ発生したとしても、発生したクラックが進展す ることを抑制することができた。また、本発明に係る製紙用ベルトは、内側のポ リウレタンを形成する組成物は、硬化剤の活性水素基(H)とウレタンプレポリマーのイソシアネート基(NCO)との当量比(H/NCO)が0.85≦H/NCO<1となる割合でウレタンプレポリマーと硬化剤とが混合されたものであり、かつ、外側のポリウレタンを形成する組成物は、当量比(H/NCO)の値が1<H/NCO<1.15となる割合でウ 5≦H/NCO<1となる割合でウレタンプレポリマーと硬化剤とが混合されたものであり、かつ、外側のポリウレタンを形成する組成物は、当量比(H/NCO)の値が1<H/NCO<1.15となる割合でウレタンプレポリマーと硬化剤とが混 合されたものであるから、補強基材とポリウレタンとの間における層間剥離の発生を抑制することができた。」(【0102】)(2) 本件明細書2には次の記載がある。 ア技術分野「この発明は、製紙工業等の分野において、湿紙を加圧脱水処理するために用 いられる製紙用弾性ベルトに関し、特に表面に排水溝を有する製紙用弾性ベルトに関するものである。」(【0001】)イ背景技術「シュープレス用ベルト等の製紙用弾性ベルトに対する一般的な要求特性として、強度、耐クラック性、耐摩耗性、可撓性および水、油、ガス等に対する非透 過性を挙げることができる。これらの諸特性を備えた材料として、ウレタンプレポリマーと硬化剤とを反応させて得られるポリウレタンが一般的に使用されている。」(【0002】)「製紙技術においては、プレスされる湿紙から搾り出した水を運び去るために、弾性ベルトの外表面に湿紙の走行方向に沿って多数の排水溝を設けることが知ら れている。…」(【0003】)「図4は、多数の排水溝2を備えた製紙用弾性ベルト1の断面図を示している。 従来から、製紙用弾性ベルト1の溝2については、湿紙に対して溝2の痕跡が付くのを避けるために、溝幅寸法を小さくしている。通常、溝幅寸法は、0.6~1.5mmである。」(【0004】) 「表面に排水溝2を有する製紙用弾性ベルト1に対する他の要求特性として、 湿紙から搾り出した水をベルト1の溝2内から瞬時に外部に放出する排水性を挙げ る。」(【0004】) 「表面に排水溝2を有する製紙用弾性ベルト1に対する他の要求特性として、 湿紙から搾り出した水をベルト1の溝2内から瞬時に外部に放出する排水性を挙げることができる。高速で回転するベルト1が1回転するまでの間に溝2内から排水しなければ、湿紙を再湿させることになってしまい、湿紙の搾水性能が低下する。」(【0005】)「排水性を悪化させる要因としては、ベルトの溝自体が持つ排水性の悪さ、紙 かすの付着による排水性の低下、使用に伴うベルトの摩耗や圧縮歪による溝の空隙量の低下等が考えられる。このような課題に着目した公知文献として、特開2002-220789号公報(特許文献2)がある。同公報には、湿紙側層の表面をフッ素樹脂、シリコン樹脂等により疎水性にしたシュープレス用ベルトが開示されている。」(【0006】) 「同公報に開示されている構成によれば、ベルトの表面に疎水性材料を用いることによって、ベルト自体の排水性能は向上する。しかしながら、紙かすの付着に対しては改善することができない。また、同公報に開示されているように、湿紙側層の表面に疎水性材料を用いた場合には、上記した一般要求特性、すなわち強度、耐クラック性、耐摩耗性、可撓性および非透過性の点でポリウレタンより 劣ったものとなってしまう可能性が大きく、実用化には多くの課題が残される。」(【0007】)ウ発明が解決しようとする課題「本願発明者は、製紙用弾性ベルトの搾水性能を向上させるための要素として、排水溝の壁面の表面粗さに注目した。今まで、当業者は、排水溝の表面粗さにつ いては特に注目していなかった。」(【0008】)「従来の弾性ベルトに対する溝加工では、溝幅が0.6~1.5mm程度と狭いために、冷 さに注目した。今まで、当業者は、排水溝の表面粗さにつ いては特に注目していなかった。」(【0008】)「従来の弾性ベルトに対する溝加工では、溝幅が0.6~1.5mm程度と狭いために、冷却水による加工部分の冷却が不安定となったり、切り屑の排出がスムーズにできなかった等の理由で、溝壁面の表面粗さは3~4μm程度が精一杯であった。本願発明者は、溝壁面の表面粗さが所定の値以上になると、水の流れ に対する抵抗が大きくなり、また紙かすが付着し易くなって、弾性ベルトの搾水 性能を低下させることを見出した。」(【0009】)「本発明の目的は、良好な搾水性能を発揮できる製紙用弾性ベルトを提供することである。」(【0010】)エ課題を解決するための手段「本発明は、表面に排水溝を有する製紙用弾性ベルトにおいて、排水溝の壁面 の表面粗さが、日本工業規格(JIS-B0601)で規定する算術平均粗さ(Ra)で、2.0μm以下であることを特徴とする。」(【0011】)「排水溝の壁面の表面粗さを2.0μm以下にすると、水の流れに対する抵抗を小さくすることができるとともに、紙かすの付着が大幅に減少し、良好な搾水性能を発揮することができる。」(【0012】) 「一つの実施形態では、排水溝は、下方に湾曲した溝底を有する。このような形状の排水溝であれば、溝の底部を起点とする弾性ベルトのクラックの発生を抑制できる。」(【0013】)「溝の幅寸法は、例えば、0.6~1.5mmである。」(【0014】)オ発明を実施するための最良の形態 「図1は、回転刃具50を用いて、弾性ベルト51に対して溝加工を行っている状態を示している。図示するように、溝加工時に、溝加工部分に位置する弾性ベルト51の部 を実施するための最良の形態 「図1は、回転刃具50を用いて、弾性ベルト51に対して溝加工を行っている状態を示している。図示するように、溝加工時に、溝加工部分に位置する弾性ベルト51の部分および回転刃具50の刃の部分に冷却剤供給管52を介して冷却剤を噴射する。このように加工部分を冷却しながら溝加工を行えば、摩擦熱に起因する弾性ベルト51の溶け出しを抑制できるので、最終的に得られる溝の形 状および寸法が安定し、なおかつ溝の表面粗さも向上する。」(【0015】)「溝の壁面の表面粗さを2.0μm以下にするための手法として、次のいずれかを用いることができるが、両方を併用することが特に有効である。」(【0018】)「(1)加工部分に噴射される冷却液の温度を低くする。冷却液の温度を低くすれば摩擦熱の発生をより効果的に抑制できるので、弾性ベルトの溶け出しを防 止できる。好ましい冷却液の温度は、10℃以下である。」(【0019】) 「(2)加工部分に噴射される冷却液の圧力を大きくする。大きな液圧で噴射すれば、切り屑を飛ばすことができるので、それらの溝壁面への付着を防止できる。好ましい冷却液の圧力は、10~50kg/cm²である。」(【0020】) 2 被告製品1~3の本件発明1の技術的範囲への属否(争点1)について(1) 被告製品1~3の構成 被告製品1~3が本件発明1に係る構成要件1A、1B及び1Dを充足すること、被告製品4が本件発明1に係る各構成要件を充足することは当事者間に争いがない。争いがある被告製品1~3の同構成要件1Cの充足性(「ジメチルチオトルエンジアミンを含有する硬化剤」であるかどうか)について検討する。 (2) 被告製品1~3の構成要件1Cの充足性 ア構成要 る被告製品1~3の同構成要件1Cの充足性(「ジメチルチオトルエンジアミンを含有する硬化剤」であるかどうか)について検討する。 (2) 被告製品1~3の構成要件1Cの充足性 ア構成要件1Cは「外周面を構成するポリウレタンは…ジメチルチオトルエンジアミンを含有する硬化剤と、を含む組成物から形成されている」と規定しているから、ベルトの外周面を構成するポリウレタンは、ジメチルチオトルエンジアミン(DMTDA)が含有されており、それが硬化剤として機能していることを要すると解される。その他、構成要件において、DMTDAの含有量や含有割 合等について特定する規定はない。 本件明細書1をみるに、DMTDAの含有量等に関しては、発明の実施の形態として、DMTDAを含有する硬化剤を使用することが好ましい旨(【0038】)、DMTDAの含有量は、硬化剤の活性水素基(H)の数の50%以上を占めることが好適である旨(【0045】)、さらに、DMTDAを主成分とする硬化剤を含 むことが好ましく、これにより、ベルトの外周面にクラックが発生するのを抑えることができる旨(【0061】)の記載がある。一方、硬化剤としてDMTDAを含有する場合、これにポリオール系、芳香族ジオール系、芳香族ジアミン系などの1種類又は2種類以上の硬化剤を混合しても構わない旨(【0043】)、発明の効果として、DMTDAを含有する硬化剤を含む組成物から形成されているから クラックの発生を防止できた旨や、末端にイソシアネート基を有するウレタンプ レポリマーと、DMTDAに限らず、末端に活性水素基を有する硬化剤との当量比が一定の割合であることによって所定の効果を奏した旨(【0102】)の記載がある。これらの本件明細書1の記載内容に照らすと、DMTD ーと、DMTDAに限らず、末端に活性水素基を有する硬化剤との当量比が一定の割合であることによって所定の効果を奏した旨(【0102】)の記載がある。これらの本件明細書1の記載内容に照らすと、DMTDAを硬化剤の主成分とすることが好ましいとはいえるものの、一方で、その含有量等が特定されることなく、単にDMTDAを含有する硬化剤であれば発明の効果を奏するのであ るから、本件明細書1における前記のDMTDAの含有量等に関する記載は、本件発明1の技術的範囲を限定するものではないと認められる。 以上から、「ジメチルチオトルエンジアミンを含有する硬化剤」とは、その字義どおり、ジメチルチオトルエンジアミン(DMTDA)を含有し、硬化剤として機能していれば足りるものと解される。 イ(ア) 被告製品1~3の外周面にDMTDAが含有されていることは当事者間に争いがないところ、外周面に存在していたDMTDAが、製造又は販売時までに硬化剤として機能していたかにつき検討する。 証拠(乙55~66)及び弁論の全趣旨によれば、被告製品1は、①DMTDAを含有する樹脂を積層して内周面(シュー側層)を形成し、②内周面の表面に ベース(基布又は補強糸)を配置し、③DMTDAを含有する樹脂により、凹凸がなくなるまでベースを覆って目止め層を形成し、④目止め層表面にジエチルトルエンジアミン(DETDA)を含有する樹脂を積層し、キュアー(加熱硬化)して、外周面(フェルト側層)を形成し、⑤外周面を研磨して、外周面表面に排水溝を形成して製造されること(下記図【被告製品1】参照。ただし、図中の「外 周層」及び「内周層」を「外周面」及び「内周面」と読み替える。)、被告製品2及び3は、①DMTDAを含有する樹脂により、凹凸がなくなるまでベース(基布又は補強糸 1】参照。ただし、図中の「外 周層」及び「内周層」を「外周面」及び「内周面」と読み替える。)、被告製品2及び3は、①DMTDAを含有する樹脂により、凹凸がなくなるまでベース(基布又は補強糸)のシュー側面を覆ってシュー側目止め層を形成し、②シュー側目止め層に樹脂を積層・キュアーし、内周面(シュー側層)を形成し、研磨する、③シュー側層表面が内側にくるように反転させ、DMTDAを含有する樹脂によ り、凹凸がなくなるまでベースのフェルト側面を覆ってフェルト側目止め層1を 形成し、④フェルト側目止め層1上に、DMTDAを含有する樹脂によりフェルト側目止め層2を形成し、⑤フェルト側目止め層2にDETDAを含有する樹脂を積層して、外周面(フェルト側層)を形成し、⑥フェルト側層にDMTDAを含有する樹脂を積層・キュアーしてカバー層を形成し、⑦研磨によってカバー層を完全除去し、さらに外周面(フェルト側層)を研磨し、⑧外周面表面に排水溝 を形成して製造されること(下記図【被告製品2及び3】参照。ただし、図中の「外周層」及び「内周層」を「外周面」及び「内周面」と読み替え、「フェルト側目止め層①」及び「フェルト側目止め層②」を「フェルト側目止め層1」及び「フェルト側目止め層2」と読み替える。)が認められる。 【被告製品1】 【被告製品2及び3】 また、証拠(甲31、59~61)及び弁論の全趣旨によれば、被告製品1~3と同様に、各層を積層する方法でベルトを製造した場合において、これら各層 を形成した時点では、各層はゲル状の流動体であり、各層の中には未反応のウレタンプレポリマーとDMTDA等の硬化剤が独立して存在しているところ、これらを混合すると化学反応を始め、キュアー工程(反応を促進する した時点では、各層はゲル状の流動体であり、各層の中には未反応のウレタンプレポリマーとDMTDA等の硬化剤が独立して存在しているところ、これらを混合すると化学反応を始め、キュアー工程(反応を促進するため、ベルト全体を加熱硬化する工程)によって加熱硬化するまでの間においては、ウレタンプレポリマーと硬化剤の反応が完了することはなく、分子量が小さく単分子である DMTDAは、その間、各層を跨いで移動する可能性があることが認められ、また、原告が前記被告製品1~3の製造工程を踏まえて作成した被告製品1~3の再現品を用いて定量分析を行ったところ、被告製品1~3の再現品全てについて、DMTDAを配合していない上塗り層(外周面)の表面に近い部分及び目止め層に近い部分において一定量のDMTDAが存在していたことが認められる。 前記被告製品1~3の製造工程及びウレタンプレポリマー等の性質によれば、被告製品1~3の製造工程のうち、キュアー工程を完了するまでの間は、内周面や目止め層等に含まれるDMTDAが層を跨って移動可能な状態にあるといえる。 これに加え、被告製品1~3の再現品を使用した実験結果を考慮すると、被告製品1~3の外周面にDMTDAが含有されていたのは、製造過程において、目止 め層等に含まれていたDMTDAが、キュアー工程が終了する前に、外周面まで移動したことによるものと認められる。 (イ) 次に、証拠(甲59~61)及び弁論の全趣旨によれば、被告製品1~3の再現品を対象として、亀裂進展試験及び亀裂発生試験を行ったところ、DMTDAを含有していないものと比較すると、被告製品1~3の再現品のいずれにお いても前記試験において優れた結果となり、また、被告製品1~3の再現品の目止め層及びカバー層に含まれるDMTDAの含有量の増 含有していないものと比較すると、被告製品1~3の再現品のいずれにお いても前記試験において優れた結果となり、また、被告製品1~3の再現品の目止め層及びカバー層に含まれるDMTDAの含有量の増加に応じて、耐クラック性が向上する傾向がみられたことが認められる。 したがって、前記(ア)に加え、これらの実験結果を考慮すると、製造又は販売時までの間において、被告製品1~3の外周面に存在していたDMTDAは硬化剤 として機能したものと認められる。 ウ被告の主張について被告は、構成要件1C及び本件明細書1をみた当業者は、硬化剤の主成分はDMTDAであると理解する旨を主張し、また、被告製品1~3の外周面に含まれるDMTDAは微量であるという乙123実験の結果や、被告製品1~3の外周面にDMTDAの変性物と推定される物質が含まれるとしても(乙67~69)、 硬化剤の一つのアミノ基中の活性水素のみが一つのプレポリマーのイソシアネート基とウレア結合した状態(両手変性物が存在しない状態)にすぎない旨を指摘して、外周面に含まれるDMTDAはポリウレタンの硬化に寄与していない旨を主張する。 しかし、前記アのとおり、構成要件1C及び本件明細書1の記載内容によれば、 「ジメチルチオトルエンジアミンを含有する硬化剤」とは、DMTDAを含有し、硬化剤として機能していれば足りるものと認められ、これらをみた当業者が、硬化剤の主成分がDMTDAであると理解するものとはいえない。 また、ウレタンプレポリマーが硬化剤によって硬化するのは、ウレタンプレポリマーの末端のイソシアネート基(NCO)と硬化剤に存在するアミノ基等の活 性水素(H)が反応して結合(ウレア結合、ウレタン結合)することによるものであるところ、NCOに対 は、ウレタンプレポリマーの末端のイソシアネート基(NCO)と硬化剤に存在するアミノ基等の活 性水素(H)が反応して結合(ウレア結合、ウレタン結合)することによるものであるところ、NCOに対するHの割合(当量比)が1を大きく下回ると、硬化剤と結合できないウレタンプレポリマーが大量に生ずるため、硬化しない結果となる(弁論の全趣旨)。証拠(乙122~124)及び弁論の全趣旨によれば、被告製品1~3の外周面のウレタン樹脂のうち、DMTDA(変性ジメチルチオ トルエンジアミンを含む)が含有されている割合は0.178~0.373質量%であるところ、乙123実験では、硬化剤として、①被告製品1~3の外周面に硬化剤として使用されているエタキュアー100(DETDA)及びVIBRACUREA250(成分はbutane-1,4-diol)のみ(当量比H/NCOは95%)、②①と0.5質量%のDMTDA(当量比H/NCOは98. 5%))、③0.5質量%、1.0質量%又は1.5質量%のDMTDAのみ(当 量比H/NCOは3.5~10.5%)を準備して、それぞれウレタンプレポリマーに加え、ポリウレタンが実際に硬化するかどうかを確認した結果、エタキュアー300のカタログ所定の硬化温度である100℃で加熱した場合、①及び②の条件では同じ硬度にて硬化したが、③の条件では硬化しないことが確認され、また、本件明細書1の実施例(【0084】)に記載された硬化温度120℃とした 場合、①及び②の結果はほぼ同様であり、③については、1.5質量%のDMTDAを使用した場合でもほとんど硬化しなかったことが確認されたことが認められる。一方、証拠(甲41)及び弁論の全趣旨によれば、乙123実験に記載された条件でDETDA及びbutane-1, のDMTDAを使用した場合でもほとんど硬化しなかったことが確認されたことが認められる。一方、証拠(甲41)及び弁論の全趣旨によれば、乙123実験に記載された条件でDETDA及びbutane-1,4-diolを混合して硬化剤を調製し、これを、乙123実験の③のDMTDAと同量の当量比(最大10.5%) でウレタンプレポリマーと反応させて硬化状態を確認すると、乙123実験の③の場合と同様に十分に硬化しなかったことが認められる。前記ウレタンプレポリマーが硬化剤によって硬化する機序や各実験結果に照らすと、乙123実験の③においてウレタンプレポリマーが硬化しなかったのは、硬化剤がDMTDAであったことが原因なのではなく、硬化するのに十分な量のDMTDAが存在しなかっ たことによるものと認められ、少量のDMTDAのみによってはウレタンプレポリマーが十分硬化しないとはいえても、被告製品1~3の外周面に存在していたDMTDAがポリウレタンの硬化に寄与していないとはいえない。 さらに、証拠(甲66~70、乙4、148~151)及び弁論の全趣旨によれば、被告製品1~3の外周面からDMTDAの両手変性物は未検出との解析結 果が出た(なお、原告は、甲第66号証~第68号証について、両手変性物と推定されるピークが検出された旨を主張するが、これらの証拠には、DMTDAの片手変性物と両手変性物のピークが重なっており、同定に必要な情報がない旨が記載されていることから、原告の前記主張は採用できない。)一方で、外周面に硬化剤としてDMTDAが使用されている被告製品4(外周面のウレタン樹脂の うち、DMTDAが含有されている割合は12.9質量%前後。乙122)の外 周面からは、両手変性物がわずかに検出されたにすぎないか、検出されな 被告製品4(外周面のウレタン樹脂の うち、DMTDAが含有されている割合は12.9質量%前後。乙122)の外 周面からは、両手変性物がわずかに検出されたにすぎないか、検出されなかったことが認められる。そうすると、外周面からDMTDAの両手変性物が検出されなかったとしても、そのことから直ちにDMTDAが硬化剤として機能していないことにはならない。 したがって、被告の前記主張はいずれも採用できない。 エ以上から、被告製品1~3は、構成要件1Cに係る構成を有し、本件発明1の技術的範囲に属するものと認められる。 3 被告製品1~3、5等の本件発明2の技術的範囲への属否(争点2)について(1) 被告製品1~3及び5の構成 被告製品1~3及び5が本件発明2に係る構成要件2A及び2Cを充足することは当事者間に争いがない。争いがある被告製品1~3及び5の同構成要件2Bの充足性(「排水溝の壁面の表面粗さが、算術平均粗さ(Ra)で、2.0μm以下である」かどうか)について検討する。 (2) 被告製品1~3及び5の構成要件2Bの充足性 ア構成要件2Bは「前記排水溝の壁面の表面粗さが、算術平均粗さ(Ra)で、2.0μm以下であることを特徴とする、」と規定しており、その他の構成要件をみても、表面粗さが2.0μm以下であるべき範囲や割合等について何ら限定を加えていない。 また、本件明細書2をみるに、表面粗さが2.0μm以下であるべき範囲や割 合等について限定を加える記載や表面粗さが2.0μmを超えた場合であっても表面粗さが2.0μm以下である場合と同様の作用効果を奏する条件等に関する記載は見当たらない。 そうすると、構成要件2Bの「排水溝の壁面の表面粗さが、算術平均粗さ(Ra)で 超えた場合であっても表面粗さが2.0μm以下である場合と同様の作用効果を奏する条件等に関する記載は見当たらない。 そうすると、構成要件2Bの「排水溝の壁面の表面粗さが、算術平均粗さ(Ra)で、2.0μm以下であること」とは、その字義どおり、排水溝の全長にわ たって、その壁面の表面粗さが、算術平均粗さ(Ra)で、2.0μm以下であ ることを要すると解するのが相当である。 イ次に、排水溝の表面粗さの測定方法等について検討するに、本件明細書2によれば、日本工業規格(JISB 0601)で規定する算術平均粗さ(Ra)で、2.0μm以下であることを特徴とするとの記載(【0011】)があるのみで、その他、前記測定方法等に関する記載はないことから、日本工業規格(J ISB 0601)で規定する算術平均粗さ(Ra)によるべきものと認められる。証拠(甲17、乙6)及び弁論の全趣旨によれば、JISB 0601が引用するJISB 0633には、別紙「JISB 0633」記載の各事項が記載されていることが認められ、これによれば、算術平均粗さ(Ra)は、1か所の評価長さにおける、五つの連続した基準長さ(測定器による1回の測定 を行う部位の長さ)を計測した表面粗さの平均値のことを指し、0.1μm<Ra≦2μmの場合の基準長さは0.8mm、評価長さは4mmである。したがって、本件における算術平均粗さ(Ra)は、対象となる表面を0.8mmの長さにわたって5回連続した長さ(合計4mm)で測定し、その表面粗さを平均した値を意味することになる。また、JISB 0633によれば、溝の「長さ方 向」(走行方向)、溝底面の幅方向及び溝側壁面の深さ方向において、最悪の値になると考えられる表面部分を測定する必要があるものの、 ることになる。また、JISB 0633によれば、溝の「長さ方 向」(走行方向)、溝底面の幅方向及び溝側壁面の深さ方向において、最悪の値になると考えられる表面部分を測定する必要があるものの、日本工業規格は、標準的な基準を一般的に定めたものであるから、具体的な適用の場面においては、個別事情に応じて可能な限度で適用すれば足りるものと解される。本件のベルトの排水溝のような幅が狭く浅い対象においては、幅方向及び深さ方向に4mmず つ測定することは困難であるから、これが可能な長さ方向(走行方向)のみを測定すれば足りる。 さらに、前記前提事実(4)イのとおり、ベルトは、抄紙機のプレスパートの内側に設けられた凹状の加圧シューの上を滑りながら回転しつつ、加圧シューとプレスロールによって加圧されることによって、湿紙の脱水を行うものであり、プレ スロールと加圧シューとの間でベルトに対して苛酷な屈曲及び加圧が繰り返され、 また、紙かすの付着や摩耗等の影響を受けることになる(本件明細書1【0004】、本件明細書2【0006】参照)。そうすると、加圧部は、回転や加圧による変形、紙かすの付着や水流による摩耗等の影響を受けることに加え、非加圧部は、直接的な加圧がないとしても、回転による変形等の使用による影響を受けるものと認められる。また、そもそも、使用済みのベルトについて、加圧部と非加圧部とを 明確に識別することが可能かどうかが明らかでない。これらの事情を総合すると、加圧部であるか非加圧部であるかにかかわらず、使用済みベルトの排水溝壁面の表面粗さを測定したとしても、直ちに同製品の製造販売時における壁面の表面粗さと同視することはできないものと認められるから、未使用のベルトを対象として排水溝の表面粗さの測定をすべきである(なお、 面の表面粗さを測定したとしても、直ちに同製品の製造販売時における壁面の表面粗さと同視することはできないものと認められるから、未使用のベルトを対象として排水溝の表面粗さの測定をすべきである(なお、原告は、平成29年8月24 日第1回弁論準備手続期日において、本件発明2における「排水溝の壁面の表面粗さ」は、未使用のものの数値を指すという前提で議論することに異議はない旨を述べている(記録から明らか)。)。 ウ関係各証拠(別紙「測定結果一覧」及び以下の概説参照)及び弁論の全趣旨によれば、原告及び被告は、被告の各製品の排水溝壁面の表面粗さを測定し、 別紙「測定結果一覧」記載の各測定結果を得たことが認められる。 甲第77号証は、被告製品1~3及び5と同じシリーズに属するとして原告が入手した被告の製品(いずれも使用済み品)を原告が測定した結果、甲第93号証は、原告が保管していた被告製品1~3、甲第77号証の測定対象とされたベルト及び甲第94号証に記載されたベルトから、公証人関与の下でサンプルを抽 出し、第三者機関に測定させた結果である。 一方、乙第152号証~第154号証は、被告製品1~3及び5並びにこれらと同じシリーズの被告の製品を被告において測定した結果、乙第155号証は、原告が甲第73号証の測定に用いたベルト及びこれと同じシリーズの被告の製品を被告において測定した結果である(いずれも未使用の検査用サンプルが使用さ れた。)。また、乙第156号証は、被告が未使用品と使用済み品の両方を測定 できた製品(うち3反は乙152の測定対象と同じ反番のもの)の測定結果である。さらに、乙第169号証~第179号証は、甲第77号証の測定対象とされたベルトに対応すると考えられる被告の製品を被告が選択し、公証人立会 ち3反は乙152の測定対象と同じ反番のもの)の測定結果である。さらに、乙第169号証~第179号証は、甲第77号証の測定対象とされたベルトに対応すると考えられる被告の製品を被告が選択し、公証人立会いの下で被告がサンプルを抽出し、それらの未使用のサンプル(製造販売したベルトのサンプルを被告が保管していたもの。キープサンプル)を第三者機関に測定させ た結果(乙168)、乙第181号証は、それらのベルトを被告が測定した結果である。乙第189号証~第211号証は、被告が保管していた製品(未使用品、使用済み品を含む。)から公証人関与の下でサンプルを抽出し、第三者機関に測定させた結果である(乙188)。 原告は、キープサンプルについては、被告が現実に市場において顧客に販売し た実製品の排水溝壁面の表面粗さをおよそ示したものとはいえず、被告の製品の損害論の審理範囲を画する対象として全く適切ではないことから、これらを測定対象から除外すべきである旨を主張する。しかし、証拠(乙168)及び弁論の全趣旨によれば、被告は、ベルトの排水溝加工を終えた後、ベルトを特定の寸法に裁断して製品化し、納品するが、裁断した際に生じる残余部分をキープサンプ ルとして保管していることが認められる。このようなキープサンプルの製造過程に照らすと、キープサンプルの排水溝壁面と実製品の製造販売時における同壁面の品質や性状等について特段大きな相違があるものとは認められない。したがって、前記原告の主張は採用できず、キープサンプルも測定対象とするのが相当である。 エ以上を前提として、検討する。 前記イの測定方法等の条件を満たすもの(別紙「測定結果一覧」の各「証拠番号」欄をオレンジ色で着色した。)のうち、排水溝の壁面の表面粗さが、算術平均粗さ(Ra)で、2.0 上を前提として、検討する。 前記イの測定方法等の条件を満たすもの(別紙「測定結果一覧」の各「証拠番号」欄をオレンジ色で着色した。)のうち、排水溝の壁面の表面粗さが、算術平均粗さ(Ra)で、2.0μmを超えるもの(なお、測定結果につき、測定誤差が生じることを考慮し、Ra>2.0に加え、Ra>2.2についても検討し、 これらに該当するものは、同「測定結果一覧」の各測定結果記載欄を青色で着色 した。例えば表中の「4/18」は、18箇所の算術平均粗さを測定した結果、4箇所について2.0μm又は2.2μmを超えたことを示している。)を抽出すると、別紙「測定結果一覧」記載のとおり、被告製品1~3及び5並びにこれらと同一シリーズの製品について、前記条件を満たす全ての反番のベルトにおいてRa>2.0のみならずRa>2.2の箇所があり、これに該当する箇所が存 在することは明らかである(甲第18号証の測定結果はRa>2.0となる箇所が示されていないが、溝底(走行方向)の1箇所を2回測定したのみであって、この結果から該当する箇所が存在しないと判断することは困難である。)から、これらの製品の他の箇所の排水溝壁面の表面粗さを測定した場合においても、同様にRa>2.2となる箇所が存在することが推認される。 前記アのとおり、構成要件2Bの「排水溝の壁面の表面粗さが、算術平均粗さ(Ra)で、2.0μm以下であること」とは、排水溝の全長にわたって、その壁面の表面粗さが、算術平均粗さ(Ra)で、2.0μm以下であることをいうと解されるところ、被告製品1~3及び5は、いずれも排水溝の全長にわたって、その壁面の表面粗さが、算術平均粗さ(Ra)で、2.0μm以下であるとは認 めるに足りず、構成要件2Bの構成を有するとは認められない。 告製品1~3及び5は、いずれも排水溝の全長にわたって、その壁面の表面粗さが、算術平均粗さ(Ra)で、2.0μm以下であるとは認 めるに足りず、構成要件2Bの構成を有するとは認められない。 オ時機に後れた攻撃防御方法の却下について(ア) 被告製品1~3及び5と同じシリーズの製品等に対する測定結果(乙152~159)について原告は、第15回弁論準備手続期日から損害論の審理が開始されたにもかかわ らず、被告は、被告製品1~3及び5と同じシリーズの製品等における排水溝壁面の表面粗さの測定結果(乙152~159)を新たに証拠提出するとともに、非侵害の主張を行ったことが時機に後れた攻撃防御方法に当たる旨を主張する。 しかし、被告が前記証拠等を提出したのは、原告が、訴状においてはイ号製品が本件発明2の技術的範囲に属する旨を主張しつつも、被告製品1~3及び5の 排水溝壁面の表面粗さに限定して立証活動をしていたが、裁判所が本件発明2に ついては損害論に入る旨の心証開示を行ったことを受けて、被告製品1~3及び5の各製品と同じシリーズの製品等についても本件発明2の技術的範囲に属する旨を改めて主張したことに対応するものであって、必ずしも時機に後れたものとは認められない。したがって、原告の前記主張は採用できない。 (イ) IKベルト17~19に対する測定結果等(甲99~104)について 原告は、IKベルト17~19に対する測定結果等として甲第99号証~第104号証を提出し、令和4年7月22日付け第38準備書面(「第2」の3)及び同日付け第39準備書面(「第2」(別紙を含む。))において、これらの証拠に基づく主張を行うが、当裁判所は、これらを時機に後れた攻撃防御方法に当たるものとして却下する。すなわち、同年5月1 3)及び同日付け第39準備書面(「第2」(別紙を含む。))において、これらの証拠に基づく主張を行うが、当裁判所は、これらを時機に後れた攻撃防御方法に当たるものとして却下する。すなわち、同年5月17日の書面による準備手続中の 協議において、当裁判所及び当事者双方は、ベルトの排水溝壁面の表面粗さに関する測定を全て完了したことを確認した上で、原告は、次回協議までの準備事項として、既に実施されていた原告の測定結果に基づく主張書面、被告の測定結果に対する反論書面、損害論の主張をまとめた書面等を提出することになった(当裁判所に顕著な事実)。そうであるにもかかわらず、原告は、その後、作製した ベルトのサンプルの排水溝壁面の表面粗さを新たに測定して、その結果等を甲第99号証~第104号証として提出し、これに関し、従前には全く主張されていなかった分析手法を新規に提唱した上、これに基づく分析結果によれば構成要件2Bの充足性が肯定されるとする主張書面(前記第38準備書面及び第39準備書面の部分)を提出した。したがって、原告によるこれらの攻撃防御方法の提出 は、時機に後れたものであって、そのことについて、原告には少なくとも重過失があり、また、これを許せば、被告も反論を展開したり、新たにベルトの排水溝壁面の表面粗さを測定する必要が生じるなど、本件訴訟の完結が著しく遅れることは明らかである。 なお、念のため、仮にこれらの攻撃防御方法を採用したとしても、原告の提唱 する測定結果の分析手法(本件発明2は、ベルトの排水溝の壁面全域に亘って例 外なく表面粗さが算術平均粗さ(Ra)で2.0μm以下である壁面を設けることを必須の要素とすることを特徴とした発明ではないなどとして、ステップ①、②により、溝加工作業時に生じた異常と判断でき 外なく表面粗さが算術平均粗さ(Ra)で2.0μm以下である壁面を設けることを必須の要素とすることを特徴とした発明ではないなどとして、ステップ①、②により、溝加工作業時に生じた異常と判断できる溝加工結果データを除外して測定結果の評価を行うというもの)は、本件発明2の各構成要件の文言及び本件明細書2の記載(前記ア及びイ)に基づかず、原告の独自の見解に基づくものと いわざるを得ないし、甲第101号証の測定に用いられたベルトはいずれも使用済みのものであるから(甲99、100)、結論が左右されることはない。 (3) 被告製品シリーズの構成要件2Bの充足性原告は、被告製品1~3及び5が本件発明2に係る各構成を有することを前提として、同一シリーズに属する製品は同様の加工条件で加工することが通常であ ることやベルトエースⅠ及びⅡはその基布構造に相違があるのみであること等を指摘して、被告製品シリーズも本件発明2の各構成要件を充足する旨を主張する。 しかし、前記(2)のとおり、被告製品1~3及び5は本件発明2の構成要件2Bに係る構成を有しているとは認められないから、原告の前記主張はその前提を欠く。また、別紙「測定結果一覧」記載のとおり、ベルトエースⅡ Ichiri ki(甲73、乙155)やその他の製品についても、本件発明1~3及び5と同様に全ての反番においてRa>2.2となった箇所が存在することから、これらの製品の他の箇所の排水溝壁面の表面粗さを測定した場合においても、同様にRa>2.2となる箇所が存在することが推認される。 したがって、被告製品シリーズは、いずれも排水溝の全長にわたって、その壁 面の表面粗さが算術平均粗さ(Ra)で、2.0μm以下であるとは認めるに足りず、構成要件2Bの構成を有するとは認められない。 って、被告製品シリーズは、いずれも排水溝の全長にわたって、その壁 面の表面粗さが算術平均粗さ(Ra)で、2.0μm以下であるとは認めるに足りず、構成要件2Bの構成を有するとは認められない。 (4) 以上から、被告製品1~3及び5並びに被告製品シリーズは、いずれも構成要件2Bを充足せず、本件発明2の技術的範囲に属さない。 4 公然実施発明Bに基づく本件発明1の新規性欠如の有無(争点3-2)に ついて 事案に鑑み、争点3-2から判断する。 被告は、平成11年5月から平成12年4月までの間に、日本製紙八代工場にベルト4反(ベルトB)を納品し、ベルトBが同工場において平成11年6月11日から平成12年5月9日までの間に使用開始されており、ベルトBの構成は本件発明1の構成要件と一致し、納品によってその構成が日本製紙に知り得る状 態となり、また、当業者はDMTDAの同定が可能であったとして、本件特許1の出願前にベルトBに係る発明が公然実施された旨主張するので、以下検討する。 (1)ア後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる(なお、原告は乙32が真に平成11年に作成されたのか不明である旨を主張するが、その体裁等に照らすと、作成日等に関する疑義は認められない。)。 (ア) 被告は、昭和63年からベルトを製造していたところ、平成8年4月に新工場を新設して、ベルトの製造を集約することとなった。それに伴い、被告では、品質を一定の水準以上に維持するために、製造工程の一連の流れ、各ステップの管理項目、品質特性(品質保証項目)及び管理方法を明確にしたルールを作成することとなり、平成11年2月26日、QC工程図が作成された。(以上につき、 乙32、83)QC工程図には、樹脂コーティン 、品質特性(品質保証項目)及び管理方法を明確にしたルールを作成することとなり、平成11年2月26日、QC工程図が作成された。(以上につき、 乙32、83)QC工程図には、樹脂コーティング工程に関し、①ビス(メチルチオ)-2,4-トルエンジアミン、ビス(メチルチオ)-2,6-トルエンジアミン及びメチルチオトルエンジアミンの混合物であるエタキュアー300(硬化剤)のほか、イソシアネート基を末端に有するプレポリマーである、タケネートL2390及 びタケネートL2395を受け入れ、⑩①の樹脂を調合し、⑪基布(ベース)のシュー側(内周面側)にコートしてキュアし、その後、⑮反転して、⑱①で受け入れた樹脂を調合し、⑲基布(ベース)のフェルト側(外周面側)にもコートしてキュアする旨の記載がある(乙32~36、130~132。なお、数字は工程番号を指す。)。 (イ) 被告は、QC工程図に従って、平成11年3月1日から同月4日の間に反 番51+01349のベルト、同年8月5日から同月10日の間に反番51+04750のベルト、同年10月1日から同月5日の間に反番51+06801のベルト及び平成12年2月15日から同月22日の間に反番52+00481のベルトの各樹脂コーティング工程作業を行い、その頃、基布面を完全に被覆する両面樹脂構造であり、かつ、排水溝を有するベルトBの製造を完了させ、日本製 紙に対し、平成11年5月14日、同年9月3日、同年10月21日及び平成12年4月27日、それぞれ納品した(乙25、27~31、83)。 イ前記ア(ア)及び(イ)によれば、ベルトBは、ポリウレタンにより基布が完全に被覆されており、内周面及び外周面のポリウレタンは、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーとDM 3)。 イ前記ア(ア)及び(イ)によれば、ベルトBは、ポリウレタンにより基布が完全に被覆されており、内周面及び外周面のポリウレタンは、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーとDMTDAを含有する硬化剤とを含んでおり、 熱硬化性であることが認められる。そうすると、公然実施発明Bは、基布を熱硬化性ポリウレタンが完全に被覆してなり、前記基布が前記ポリウレタン中に埋設され(構成B-a)、フェルト側およびシュー側が前記ポリウレタンで構成されたシュープレス用ベルトにおいて(構成B-b)、フェルト側を構成するポリウレタンは、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと、ビス(メ チルチオ)-2,4-トルエンジアミンおよびビス(メチルチオ)-2,6-トルエンジアミンを含有する硬化剤と、を含む組成物から形成されている(構成B-c)、シュープレス用ベルト(構成B-d)という構成を有していることが認められ、本件発明1の各構成要件を充足する。 (2) 特許法29条1項2号所定の「公然実施」とは、発明の内容を不特定多数 の者が知り得る状況でその発明が実施されることをいうところ、前記(1)ア(イ)のとおり、被告は、本件特許1出願前の平成11年5月14日から平成12年4月27日までの間、日本製紙に対し、ベルトBを納品し、その内容を不特定多数の者が知り得る状況で公然実施発明Bを実施したものと認められる。 (3) 原告の主張について 原告は、ベルトの現物自体からは当該ベルトが幾つの層によって構成されてい るか等を把握することは不可能であること、ベルトを構成するポリウレタンは様々な化学物質で構成されているから、外周面を構成するポリウレタンに含有される硬化剤に着目した分析が行われたとはいえないこと、当 るか等を把握することは不可能であること、ベルトを構成するポリウレタンは様々な化学物質で構成されているから、外周面を構成するポリウレタンに含有される硬化剤に着目した分析が行われたとはいえないこと、当時、硬化剤として考え得る候補物質は極めて多数存在していた上に、エタキュアー300を用いることでクラックの発生を抑制できることは当業者においてすら知られていなかったから、 硬化剤としてDMTDAに着目し、これをわざわざ入手してサンプルとして分析機関に送付し、分析を依頼したとは到底いえないことを指摘して、ベルトBを日本製紙に納品したとしても、ベルトBの外周面に硬化剤としてDMTDAが含有されていたことが特定できたとはいえない旨を主張する。 しかし、前記(1)アのとおり、ベルトBは、日本製紙に納品され、自由に解析等 をなされ得る状態におかれたものであり、解析等によりベルトの構造等を特定することは可能であるほか(甲25等参照)、本件特許1の出願日前において、外周層、内周層等の複数の層を積層してベルトを製造することやウレタンプレポリマーと硬化剤とを混合してポリウレタンとし、ベルトの弾性材料とすることは、技術常識に属する事項であった(甲2、乙26、27)。これに加え、証拠(乙 37、124、127~133)及び弁論の全趣旨によれば、①昭和62年に発行された書籍において、実用化されている硬化剤として、MOCAのほかにエタキュアー300が紹介されていたこと、②米国の会社が平成2年に発行したエタキュアー300のカタログにおいて、エタキュアー300は、新しいウレタン用硬化剤であり、TDI(トルエンジイソシアナート。主にポリウレタンの原料と して使用される化学物質)系プレポリマーに使用した場合、MBCA(MOCAと同義。乙140、141) 新しいウレタン用硬化剤であり、TDI(トルエンジイソシアナート。主にポリウレタンの原料と して使用される化学物質)系プレポリマーに使用した場合、MBCA(MOCAと同義。乙140、141)の代替品として、現在最も優れたものであると確信している旨が記載されていたこと、③米国の別の会社は、平成10年に日本向けのエタキュアー300のカタログを発行したこと、④平成11年に日本国内で発行された雑誌には、MOCAには発がん性があることが指摘されており、より安 全性の高い材料が求められていたが、1980年代後半には、既にMOCAに代 わる新しい硬化剤としてエタキュアー300が開発された旨の記事が掲載されていたこと、⑤被告は、平成3年頃からエタキュアー300の研究を開始し、遅くとも平成9年7月時点では、製紙用ポリウレタンベルトの硬化剤としてエタキュアー300を使用していたこと、⑥本件特許1の出願前に、エタキュアー300と同様にウレタン用に使用された主要な硬化剤は、10種類前後であったことが 認められる。これらの事実関係に照らすと、本件特許1の出願前に、エタキュアー300は、ウレタン用の硬化剤として注目され、実用化されていたものと認められ、分析機関のライブラリにDMTDAのマススペクトルが登録されていなかったとしても(平成29年時点において、ライブラリにDMTDAのマススペクトルを登録している分析機関と登録していない分析機関がある(甲11、24)。)、 エタキュアー300をサンプルとして分析機関に送付して分析を依頼した蓋然性があったといえ、当業者は、公然実施発明Bの内容を知り得たものと認められる。 証拠(甲39、40)及び弁論の全趣旨によれば、原告が、平成30年6月、分析機関に対し、組成を明らかにすることなく被告 があったといえ、当業者は、公然実施発明Bの内容を知り得たものと認められる。 証拠(甲39、40)及び弁論の全趣旨によれば、原告が、平成30年6月、分析機関に対し、組成を明らかにすることなく被告製品3及び4のサンプルを送付し、ポリウレタンの定性分析を依頼したところ、硬化剤について特定すること ができなかったことが認められる。しかし、同分析機関が硬化剤を特定することができなかったのは、同分析機関のライブラリにDMTDAのマススペクトルが登録されていなかったこと(甲24の3)によるものと認められるところ、前記のとおり、エタキュアー300をサンプルとして分析機関に送付して分析を依頼した蓋然性があったといえることに照らすと、前記結果(甲39、40)は、当 業者が公然実施発明Bの内容を知り得たという結論に影響を与えるものではない。 したがって、原告の前記主張は採用できない。 (4) 以上から、本件発明1は、本件特許1の出願前に日本国内において公然実施された発明であるから、新規性を欠き、無効審判により無効とされるべきものであって、原告は、被告に対し、本件特許権1を行使することができない(特許 法123条1項、104条の3第1項、29条1項2号)。 5 結論以上から、その余の争点について判断するまでもなく、原告の請求はいずれも理由がないから棄却することとして、主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第21民事部 裁判長裁判官武宮英子 裁判官 杉浦一輝 武宮英子 裁判官 杉浦一輝 裁判官峯健一郎 (別紙)イ号製品目録 以下の構成を備えるシュープレス用ベルト 1 本件発明1に関係するイ号製品の構造の説明 1a 基布又は補強糸1とポリウレタン樹脂2が一体化しており、基布又は補強糸1は、ポリウレタン樹脂2中に埋設されている。 1b イ号製品は、フェルトと当接する外周面3及び加圧シューと当接する内周面4ともに、ポリウレタン樹脂2にて構成されているシュープレス用ベルトである。 1c イ号製品におけるフェルトと当接する外周面3を構成するポリウレタン樹脂2は、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)とパラフェニレンジイソシアネート(PPDI)からなるウレタンプレポリマーと、硬化剤であるジメチルチオトルエンジアミン(DMTDA)を成分として含む組成物から形成されている。 1d シュープレス用ベルト。 2 本件発明2に関係するイ号製品の構造の説明2a ベルトの表面に排水溝5を有する製紙用弾性ベルトである。 2b 排水溝5の壁面の表面粗さは、算術平均粗さ(Ra)で、2.0μm以 下である。 2c 製紙用弾性ベルト。 3 イ号製品の断面図の例示例示① 補強基材が補強糸の配列によって形成されている一例 1:補強糸2:ポリウレタン樹脂3:外周面4:内周面5:排水溝 例示② 補強基材が基布により形成されてい 例示① 補強基材が補強糸の配列によって形成されている一例 1:補強糸2:ポリウレタン樹脂3:外周面4:内周面5:排水溝 例示② 補強基材が基布により形成されている一例 1:基布2:ポリウレタン樹脂3:外周面4:内周面5:排水溝 以上 (別紙)ロ号製品目録 以下の構成を備えるシュープレス用ベルト 1 ロ号製品の構造の説明 1a 基布又は補強糸1とポリウレタン樹脂2が一体化しており、基布又は補強糸1は、ポリウレタン樹脂2中に埋設されている。 1b ロ号製品は、フェルトと当接する外周面3及び加圧シューと当接する内周面4ともに、ポリウレタン樹脂2にて構成されているシュープレス用ベルトである。 1c´ロ号製品におけるフェルトと当接する外周面3を構成するポリウレタン樹脂2は、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)とトルエンジイソシアネート(TDI)からなるウレタンプレポリマーと、硬化剤であるジメチルチオトルエンジアミン(DMTDA)を成分として含む組成物から形成されている。 1d シュープレス用ベルト。 2 ロ号製品の断面図の例示 1:基布又は補強糸2:ポリウレタン樹脂3:外周面4:内周面 以上(別紙特許公報は省略)

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