【DRY-RUN】○ 主文 本件控訴をいずれも棄却する。 控訴費用は控訴人らの負担とする。 ○ 事実 各控訴代理人は「原判決を取消す。本件を横浜地方裁判所に差戻す。」との判決を 求め、被控訴代理人は主文同旨の判決を求め
○ 主文本件控訴をいずれも棄却する。 控訴費用は控訴人らの負担とする。 ○ 事実各控訴代理人は「原判決を取消す。本件を横浜地方裁判所に差戻す。」との判決を求め、被控訴代理人は主文同旨の判決を求めた。 当事者双方の主張及び証拠の関係は、次のとおり付加するほかは原判決事実摘示(但し、原審原告Aに関する部分は除く。)のとおりであるから、ここにこれを引用する。 一控訴人B代理人は、次のとおり述べた。 第一種住居専用地域内における建築物の用途の制限を規定する建築基準法四八条一項は、単に都市計画上の観点から同地域にふさわしい建築物の配置を図ることを目的とするのみならず、低層住宅に係る良好な住居の環境を守ることにより住民の生命及び健康等の人格的利益を保護することもまたその目的とするところであり、右目的からすれば同条一項但し書に基く許可処分は「公益上やむを得ない」と認めて許可する場合を含め、右住民の人格的利益の保護をも考慮してなされるべき覊束裁量(法規裁量)行為であると解すべきである。従つて右許可処分により建築可能となる建築物によつて生ずる騒音等により低層住宅に係る良好な住居の環境を侵害される虞れがある付近匡民は、当然右許可処分の取消を求める原告適格を有するものと解すべきであり、受忍限度を超えた悪影響を蒙る虞れのある者についてのみ原告適格が認められるとする理由は全く存しない。 仮に、受忍限度を超えた悪影響を蒙る虞れのある者についてのみ原告適格が認められるものとしても、本件市民センター建築後の違法駐車の増加、騒音、水銀燈による照明、通風阻害等により控訴人Bの蒙る被害は、受忍限度を著しく超えているから、右控訴人の原告適格は当然に認められるべきである。 二控訴人株式会社松田商会ら代理人は、次のとおり述べた。 建築基準法四八条一項但し書は都市計画法、建築基準 る被害は、受忍限度を著しく超えているから、右控訴人の原告適格は当然に認められるべきである。 二控訴人株式会社松田商会ら代理人は、次のとおり述べた。 建築基準法四八条一項但し書は都市計画法、建築基準法の定める用途地域との関連において解釈されるべきものであるから、同法条に基く許可処分は覊束裁量(法規裁量)行為であつて、自由裁量行為ではないと解するべきであり、また右法条の解釈にあたつては同法一条の定める目的が当然に前提とされるべきであるから、右法条は建築物の周辺隣接地居住者の個別的具体的利益も保護しているものと解すべきであつて、右の場合当該建築物によつて蒙る被害が受忍限度を超えているか否かを問うべきではない。 従つて右控訴人らにも当然本件訴訟の原告適格が認められるべきである。 仮に、その蒙る被害が受忍限度を超えている者についてのみ原告適格が認められるものとしても、控訴人らは、本件市民センター利用者の車両での出入り、空調機器及び建物内における利用の際の騒音、右市民センター利用者目当てのスナツク等飲食店開店による環境の悪化、それらによる所有土地の価格の下落等の被害を蒙つており、右被害は受忍限度を超えるものであるから、右控訴人らの原告適格は当然に認められるべきである。 また控訴人株式会社松田商会は法人であるから性質に基く権利能力上の制限を受けることはあるが、人格権は享有することができ、付近環境保護の利益が法律上認められるべきである。 三各控訴代理人は、当審において新たに甲第五六号証、第五七号証の一ないし九、第五八号証、第五九号証を提出し、第五六号証は本件市民センターの南側を、第五七号証の一、二、第五八号証は同東側を、第五七号証の三ないし九は同センターホール外側を、いずれも昭和五六年一〇月二三日撮影した写真であると附陳し、被控訴代理人は、甲第五九号 民センターの南側を、第五七号証の一、二、第五八号証は同東側を、第五七号証の三ないし九は同センターホール外側を、いずれも昭和五六年一〇月二三日撮影した写真であると附陳し、被控訴代理人は、甲第五九号証の成立は認める、その余の右甲号各証が控訴人ら主張の場所を撮影した写真であることは認めると述べた。 ○ 理由一藤沢市が本件市民センターを建築するにあたり、同建築場所の一部が同市において昭和四八年一二月二五日付で指定した第一種住居専用地域に該るため被控訴人に対し、建築基準法四八条一項但書、別表第二(い)の九、建築基準法施行令一三〇条の四に基き建築許可申請をしたところ、被控訴人が昭和五一年一一月九日本件許可処分をしたこと、その後本件市民センターが建築完成したことは全当事者間に争いがない。 二控訴人らの本訴は、特定行政庁である被控訴人が、公益上やむを得ないと認めてなした建築基準法四八条一項の許可処分の取消を求めるものであるが、右の許可処分があつても直ちに許可に該る建築物の建築がなされるわけではなく、これが建築のためには更に同法六条による確認が必要であり、しかも右許可の要件と確認の要件とは異るものであることを考えると、右許可処分があつた段階で直ちに訴訟を以てその是非を争わせることが相当であるかどうか疑問があるうえに、右許可処分が直ちに右建築物の周辺隣地居住者の権利ないし利益に影響を及ぼすかどうかについても問題がないわけではない。 すなわち、本件許可の処分性或いはいわゆる争の成熟性については、なお検討の余地があるものというべきである。 しかし、右の許可処分は、建築基準法四八条九項及び一〇項から明らかなように、具体的な計画についてなされるものであるから、建築される建築物の規模・態様やそれが周辺隣地に及ぼす影響の範囲・程度等は、すでにこの段階において相当 、建築基準法四八条九項及び一〇項から明らかなように、具体的な計画についてなされるものであるから、建築される建築物の規模・態様やそれが周辺隣地に及ぼす影響の範囲・程度等は、すでにこの段階において相当の蓋然性を以て予測され得るものと認められるから、右許可に該る建築物の建築によつて、日照・騒音・採光・通風・衛生・防災等生活環境に影響を蒙ることとなる周辺隣地居住者は、前記確認をまたないで、確認があつた場合と同様に右許可処分の取消を求めることができるものと解しても必ずしも不当ではないというべきである。 三そこで、控訴人らが本件許可処分の取消を求めるにつき法律上の利益を有するかどうか、すなわち原告適格を有するかどうかについて検討する。 控訴人らの各居住地及び所有地、本件市民センターの概要、控訴人らが本件市民センターの存在により蒙る日照、採光、騒音等の被害の有無についての認定判断は、次のとおり訂正・付加するほかは原判決二五丁裏二行目から三五丁表七行目に説示するとおりであるから、ここにこれを引用する(但し原審原告Aに関する部分を除く。)。 1 原判決三二丁裏五行目「某かの」とあるを「なにがしかの」と改める。 2 同三三丁表末行から裏三行目までを「一階ホールでは講習或いは音楽の演奏会等が催されるため外部に音響が洩れることのないよう同ホールの東側には窓等を設けず、南側も窓と扉とが接続した出入口を二箇所設けたのみで開口部をできるだけ少くし、右窓も二重窓にするなどして極力音響の洩れないよう配慮してある。」と改める。 3 同三四丁表末行から裏一行目までを「建物の主要出入口は建物南側に造られ、西側道路及び南側道路から出入りできるようになつているが、西側道路からの出入りが主となるように造られている。」と改める。 4 同三四丁裏五行目から八行目までを削除する。 5 同三 は建物南側に造られ、西側道路及び南側道路から出入りできるようになつているが、西側道路からの出入りが主となるように造られている。」と改める。 4 同三四丁裏五行目から八行目までを削除する。 5 同三五丁表八行目のあとに、次の(一)、(二)及び(三)を加える。 (一) 控訴人らは、本件市民センターの空調機器の騒音が甚しい旨主張し、原審における控訴人B本人尋問の結果(第一回)中に右主張に副う供述部分が存在するが、原審証人Cの証言によると、同空調機器については騒音規制法による点検規制を受けていることが認められるので、右控訴人本人の供述はたやすく採用することができず、他に右主張事実を認めるべき証拠もない。 (二) また控訴人らは、本件市民センターが建築されたため附近一帯の車両の違法駐車が多くなるとともに、スナツク等の飲食店が増えるなどして環境が悪化した旨主張し、甲第四七号証の一、第四九号証及び原審における控訴人B本人尋問の結果(第一、二回)を援用する。右の各証拠によると、一応附近道路に違法駐車の車両が多く存在するとともにスナツク等の飲食店の増加した事実が認められるが、原審証人Cの証言(第一回)に照らすと、右違法駐車、スナツク等飲食店の増加が本件市民センターの建築の影響によるものか否かは疑わしく、他にこれを証する証拠もないので、右主張事実を認めることはできない。 (三) 更に控訴人らは、本件市民センターの建築完成により控訴人ら所有土地の価格が下落した旨主張する。しかしながら、控訴人D所有にかかる土地は本件市民センターの所在地から約九〇メートル隔つた場所に所在することは前記認定のとおりであるから、本件市民センターの建築によつて右控訴人所有土地の価格が下落したとはおよそ考えられない。また控訴人株式会社松田商会所有土地の価格下落を一応証する証拠として甲第三 ることは前記認定のとおりであるから、本件市民センターの建築によつて右控訴人所有土地の価格が下落したとはおよそ考えられない。また控訴人株式会社松田商会所有土地の価格下落を一応証する証拠として甲第三一号証、第四三号証及び原審における控訴人B本人尋問の結果(第一回)部分が存在するが、右甲第四三号証は取引事例比較法により求められた比準価格を標準として評価したというものの基礎とした取引事例の記載が全くなく、具体的根拠付けを欠いているうえ、前記認定にかかる本件市民センターの規模、構造等を併せ考えると、右甲号証の記載も直ちにこれを採用することができず、その余の甲第三一号証及び控訴人本人尋問の結果部分もそれのみをもつてしてはいまだ右主張事実を認めることはできない。その他控訴人らの前記主張を認めるに足る証拠は存在しない。 ところで、前二に述べたとおり、控訴人らが本件許可処分の取消を求めるには、控訴人らにおいて、本件市民センターの建築により日照・騒音その他生活環境上の被害を蒙る虞れがあることが必要であるところ、右に認定判断した事実関係からすると、控訴人D及び同松田商会については、現に右の被害を蒙り、或はこれを蒙る虞れがあるものとは到底認めることができず、他にこれに反する主張・立証はない。 つぎに、控訴人Bについては、右の事実関係によると、日照に関して被害を受ける虞れが全くないものとは言えないが、同控訴人方の現実の日照の状況が右認定のとおりであることを考えると、これを以て直ちに本件許可処分の取消を求める利益を肯認するに足る生活環境上の被害ということは困難であり、他にこれを左右すべき特段の主張・立証はない。なお、右に認定判断したところによれば、そのほかに同控訴人が被害を蒙る虞れがあるものとは認められない。従つて、控訴人らはいずれも本件許可処分の取消を求める利 これを左右すべき特段の主張・立証はない。なお、右に認定判断したところによれば、そのほかに同控訴人が被害を蒙る虞れがあるものとは認められない。従つて、控訴人らはいずれも本件許可処分の取消を求める利益ないし原告適格を有しないものというべきである。 四なお、本件市民センターの建築が完成したことは、前一のとおり当事者間に争いがない。 ところで、建築確認にかかる建築物の建築が完成したときには、当該確認処分の取消を求める訴の利益は失われるものと解するのが相当である。すなわち、建築基準法六条及び七条に定めるところからすると、建築確認は、工事着手前において建築計画が建築関係法令に適合するものであることを公権的に判断する行為であり、これにより申請にかかる建築物について建築をなし得る効果を伴うものと解される。 従つて、判決により建築確認処分が取消されると、当該建築物について建築工事をなし得るという確認の効果が排除され、工事をすることができなくなるから、工事の施行を停止させることによつて回復すべき法律上の利益を有する者は、確認の取消を求める訴を提起することがでさるものであるが、右建築物の建築が完成したときは、もはや停止すべき建築工事が完了しているのであるから、右述の訴の利益は消滅するというべきである(従つて、建築完了後においては、建築基準法九条一項の是正措置命令をまつか、損害賠償を求めるほか救済の途がないことになるが、右両者はいずれも建築確認処分の取消を前提とするものではない。)。 建築確認について右のように解すべきである以上、本件許可のようにそれに先立つてなされた建築基準法四八条の許可(いわゆる例外許可)処分の取消を求める訴の利益は、当該許可にかかる建築物の建築完成により失われるものと解するのが相当である。 してみると、仮りに控訴人らにおいて本件建築許可 た建築基準法四八条の許可(いわゆる例外許可)処分の取消を求める訴の利益は、当該許可にかかる建築物の建築完成により失われるものと解するのが相当である。 してみると、仮りに控訴人らにおいて本件建築許可処分の取消を求める訴の利益ないし原告適格を有していたものとしても、本件市民センターの建築完成により、控訴人らはこれを失つたものというほかない。 五以上のとおり、いずれにしても控訴人らの本訴は不適法として却下すべきであり、これと結論を同じくする原判決は結局相当であつて、本件控訴はいずれも理由がない。 よつて、本件控訴はいずれも棄却することとし、控訴費用の負担につき民事訴訟法九五条本文、九三条一項本文、八九条を適用し、主文のとおり判決する。 (裁判官川上泉小川昭二郎橘勝治)(原裁判等の表示)○ 主文原告らの訴を却下する。 訴訟費用は原告らの負担とする。 ○ 事実第一当事者の求める裁判一請求の趣旨 1 被告が、昭和五一年一一月九日付でなした、藤沢市の別紙物件目録記載建物の建築許可申請に対する建築基準法四八条一項但書に基づく許可処分を取消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 二本案前の申立 1 原告らの訴を却下する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 三請求の趣旨に対する答弁 1 原告らの請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 第二当事者の主張一請求原因 1 (処分の違法性)(一) 被告は、昭和五一年一一月九日、藤沢市がなした別紙物件目録記載の建築物(以下「本件市民センター」という。)の建築許可申請に対し、建築許可処分(以下「本件許可処分」という。)をした。 (二) 本件市民センターの建設場所は昭和四八年一二月二五日付を以て藤沢市が決定した第一種住居専用地域であり、建築基準法(以下「法」という。)四八条一項本文 (以下「本件許可処分」という。)をした。 (二) 本件市民センターの建設場所は昭和四八年一二月二五日付を以て藤沢市が決定した第一種住居専用地域であり、建築基準法(以下「法」という。)四八条一項本文、別表第二(い)の九、建築基準法施行令(以下「令」という。)一三〇条の四によれば、同地域には公益上必要な建築物であつても、郵便局で延べ面積五〇〇平方メートル以内のものか、又は、地方公共団体の支庁或いは、児童厚生施設、その他これに類するもので延べ面積が六〇〇平方メートル以内のものしか原則として建築を認められず、本件市民センターの如き延べ面積一四七五・一一平方メートルの建築物は明らかに前記条項に牴触するものであるため、藤沢市は法四八条一項但書の適用を求めて許可申請をなし、特定行政庁である被告は右許可申請が右但書に所謂「低層住宅に係る良好な住居の環境を害するおそれがない」と認め及び「公益上やむを得ない」と認め、本件許可処分をなしたものである。 (三) しかしながら、被告のなした本件許可処分は法四八条一項但書の適用を誤つてなされた違法な処分であり取消されるべきものである。 (1) 本件市民センターの建築は法四八条一項但書前段にいう「低層住宅に係る良好な住居の環境を害するおそれがない」とは認められない。(ア)本来第一種住居専用地域は最も環境の良い、且つ純度の高い住宅地として設定されているものであつて、住宅及び兼用住宅のほかは住宅地に当然付随し、且つ近隣生活に必要な社会、文化施設及び公益上どうしても必要な施設に限つて認められるべきものである。従つて、特定行政庁は法四八条一項但書の適用に当つては前記住宅地としての環境保全に留意して慎重且つ厳格にこれを判断しなければならない。 (イ) 本件市民セ冫ターは延べ面積にして一四七五・一一平方メートルという法四八条一項本 八条一項但書の適用に当つては前記住宅地としての環境保全に留意して慎重且つ厳格にこれを判断しなければならない。 (イ) 本件市民セ冫ターは延べ面積にして一四七五・一一平方メートルという法四八条一項本文及び令一三〇条の四の規定に基づくこの種の建物の制限面積である六〇〇平方メートルをはるかに超えること約二・四六倍であり、しかも鉄筋コンクリート二階建の市民センターであるから当然多数市民が出入することになり良好な住居の環境を害するおそれは極めて大であり明らかに前記但書前段の定める「おそれがない」とは認められないものである。 即ち、同センター設計図によれば一階部分にステージを備えた大ホールが作られ、ここでは各種催物が開催されることは必然であり、多数の人及び車の出入りにより住宅地としての平穏は乱され、まさに住宅地としての環境破壊につながる。 しかも、同センターにはサークル室が四室、市民アトリエ一室、実習室一室が設けられていることから前記催物のほかに、常時相当数の人及び車の出入りが考えられ恒常的に住宅地の平穏が害されることになる。 のみならず、同センターは一般市民の利用でさる十分な駐車場を有しておらず、当然予想される多くの自動車利用者は違法な路上駐車を強いられることになり、そのような事態が発生すれば住宅地としての環境破壊を一層助長することは明らかである。 (2) 本件市民センターの建設は、法四八条一項但書後段にいう「公益上やむを得ない」とは認められない。 (ア) 即ち、「公益上やむを得ない」ということは近隣住民(市民全体ではない)にとつて必要不可欠な公益上の施設、或いは公益上その場所を使用することがどうしても必要な場合に限定されるものであつて、本件市民センターはその何れの条件にも該当しないものである。 近隣住民にとつて、これほど大規模な施設は不要であり、且 或いは公益上その場所を使用することがどうしても必要な場合に限定されるものであつて、本件市民センターはその何れの条件にも該当しないものである。 近隣住民にとつて、これほど大規模な施設は不要であり、且つ市もわざわざ第一種住居専用地域内である本件建設場所を選んで本件市民センターを建設する必要性もない。 万一、本件建設場所に公益上支所の設置がやむを得ないとするならば、本件建設場所が第一種住居専用地域であるという事実に鑑み多数の市民が一時に参集する娯楽施設を伴なう市民センターの如きものは避け、法の許容する範囲内で公共事務の運営上最小限必要な公民館の設置に留めるべきである。 (イ) また、法が特に「やむを得ない」と規定していることは、単に建築物の使用目的に公益性があるだけではなく、その建築物の目的に公益上の見地からして緊急性と逼迫性がなければならない。従つて、法四八条九項の規定に基づき許可をする特定行政庁も又同意を与える建築審査会も当該建築物の公益性のみではなく、特に緊急性と逼迫性につき慎重に検討を加える義務がある。 そこで、本件建物につき検討してみるに、以下の点からして到底緊急性も逼迫性も存するとは考えられない。 (a) 市民センターなるものは本地区以上に必要性がある地区が藤沢市の他地区にあること。 即ち、市は行政目標として現在七地区に区分されている行政区域を一三地区とすることを計画しているが、右一三地区のうち現在地区内に市民センターを有しているのは御所見、長後、遠藤、六会、辻堂(明治地区所在。)、片瀬の六地区にすぎず、残りの七地区は市民センターがなく、その中でも藤沢、鵠沼両地区は人口において辻堂地区よりはるかに多い。また、現在の七地区についてみても本庁地区は藤沢、鵠沼、村岡ともに公民館を有するのみで市民センターは存在しない。 従つて、市としては先 の中でも藤沢、鵠沼両地区は人口において辻堂地区よりはるかに多い。また、現在の七地区についてみても本庁地区は藤沢、鵠沼、村岡ともに公民館を有するのみで市民センターは存在しない。 従つて、市としては先ず藤沢、鵠沼両地区においてこそ市民センター建設に踏み切るべきであつて、現在、地区のほぼ中央部に市民センターを既に有している辻堂地区をわざわざ二分して、しかも既存の市民センターに至近の距離の第一種住居専用地域内に本件市民センターを建設する必要など何ら緊急性がないといわざるを得ない。 しかも、既存の市民センターは何れも第一種住居専用地域外に建設されており、敷地の一部が同地域にかかつているものも、用途地域指定前に建設されたものであつて、第一種住居専用地域指定後に建設されたものはない。 (b) 前号記載の如く、辻堂地区は既設の市民センターがあるのにこの段階でその地区を二つに分ける必要もないこと。 (c) 市民センターの主目的が付近住民の集会等にある以上、法の期待している公益上の逼迫性を当初から有するものとは考えられないこと。 2 (原告適格)(一) 原告らはいずれも、本件市民センター建設場所の隣接地所有者であり、且つ隣接住民である。 (二) 本件市民センターは大規模な建造物であり、その完或により原告らは日照阻害、通風阻害、風害、視界阻害、採光阻害、騒音、振動、夜間における照明その他による環境破壊、地価の厖大な下落など著しい損害を蒙る。 更には、本件市民センターの規模、構造からみると行政の出先機関としての窓口事務その他の行政事務を執行する機能である所謂人的サービスよりも、不特定多数の人々に物的サービスとしての施設を提供し、その利用の便益を目的とする施設としての性格が強いものであるから、不特定多数の集団の出入による騒音、排気ガス等による保健衛生上不断の悪影響 りも、不特定多数の人々に物的サービスとしての施設を提供し、その利用の便益を目的とする施設としての性格が強いものであるから、不特定多数の集団の出入による騒音、排気ガス等による保健衛生上不断の悪影響を受け、或いは、火災、盗難等の危機に晒されるおそれが存する。 (三) ところで建築基準法は、これが近隣居住者の採光、通風、生活環境の保全、防火に寄与する限度において公共の利益と同時に近隣居住者の右個人的利益をも保障する趣旨と解すべきであり、適切な建築規制の運用によつて保護されるべき近隣居住者の生活上の利益は、単なる事実上の反射的利益というにとどまらず法によつて保護される利益と解すべきである。 従つて、違法な建築許可処分に基づき建設される建築物により生活環境上の悪影響を感ずる近隣居住者は、右許可処分の取消を求める法律上の利益を有するというべきであり、原告らは前記の如く本件建物の建設によりまさに自己の住居の平穏を著しく害される等その土地所有権、占有権ならびに人格権、環境権を著しく侵害されるので本件許可処分の取消を求めるにつき訴の利益を有する。 よつて、原告らは被告のなした本件許可処分の取消を求める。 二本案前の申立の理由 1 被告特定行政庁のなす法四八条一項但書に基づく本件許可処分は、申請者たる建築主の建築計画にかかわる本件市民センターが、その敷地と敷地につき定められた用途地域との関係で、右但書に定める「公益上やむを得ない」建築物と認められるか否かにつきなした判断にほかならず、これを受ける者以外の第三者の有する法律上の利益に直接具体的な法律上の効果を及ぼすものでないことは法の趣旨自体により明らかである。原告Bは右の敷地の隣接地を所有し同地上に住居を有して居住するにとどまり、同株式会社松田商会は右敷地の北側隣接地を所有するという関係があるに過ぎず、同 のでないことは法の趣旨自体により明らかである。原告Bは右の敷地の隣接地を所有し同地上に住居を有して居住するにとどまり、同株式会社松田商会は右敷地の北側隣接地を所有するという関係があるに過ぎず、同Aは建設用地から約二四三メートル南方向に隔つて居住し、同Dは同じく約九五メートル北東方向に隔つて所在する<地名略>ほか二筆の土地を所有し、<地名略>に居住している。仮りに原告らの主張するように「日常生活に重大な支障が生ずる」(後に述べるようにこうした事態の発生することはない。)としても、右に述べたところにより、原告らは本件許可処分の取消を求める法律上の利益を有しない。 2 また、本件許可処分は同条但書後段を適用して、本件建築物が市民センターであることから公益上やむを得ない建築物であるとして許可したものであるから、原告らが同条但書前段の「低層住宅に係る良好な住居の環境を害するおそれ」の点を違法事由として主張することは当を得ない(もつとも本件市民センターは後述のように設計上環境保全のための配慮をなしているのであるから原告ら主張のような環境を害するおそれはない。)。また、本件市民センターの規模、場所選定、建築時期の点については、訴外建築主藤沢市が本件許可申請に及ぶ以前において決定したいわば政策的事柄である。特定行政庁たる被告としては許可申請にかかる建築物が同条但書に基づきその建築物の種類・性質のうえから「公益上やむを得ない」建築物であるか否かを審査することになるのであつて、右の規模、場所選定、建築の時期といつた許可申請以前に建築主において決定した事項については、本件許可判断に際し審査すべき対象にはならないものである。従つて、原告らは本件許可処分につき具体的な違法事由を主張していないことになるから、本件訴は原告適格を欠く不適法な訴として却下さるべきで は、本件許可判断に際し審査すべき対象にはならないものである。従つて、原告らは本件許可処分につき具体的な違法事由を主張していないことになるから、本件訴は原告適格を欠く不適法な訴として却下さるべきである。 三請求原因に対する認否 1 (一)請求原因1項(一)の事実は認める。 (二) 同項(二)の事実のうち、本件市民センターの建設場所の一部(別紙図面(一)を参照。)が昭和四八年一二月二五日付をもつて第一種住居専用地域に定められた点、法四八条一項本文中別表第二(い)項九号の政令(建築基準法施行令)一三〇条の四に同条一号として「郵便局で延べ面積が五〇〇平方メートル以内のもの」また、同二号として「地方公共団体の支庁又は支所の用に供する建築物、老人福祉センター、児童厚生施設、精神薄弱児通園施設その他これらに類するもので延べ面積が六〇〇平方メートル以内のもの」と定められている点、本件建築物が市民センターであり、その建設場所、建物概要、延べ面積が原告ら主張のとおりである点、被告が、法上の特定行政庁として本件建築物の建築主たる訴外藤沢市による法四八条一項但書に基づく許可申請に対し昭和五一年一一月九日付で同申請につき、右市民センターが「公益上やむを得ない」建築物であると認めて許可した点をそれぞれ認めるが、その余は否認する。 (三) (1)同項(二)(1)のうち、(ア)の主張及び本件市民センターの延べ面積、建物概要が原告ら主張のとおりである点は認めるが、その余の主張は争う。 (2) 同項(三)(2)のうち、藤沢市においては本件市民センター建設当時原告ら主張のとおり六地区に市民センターが配置されていたことは認めるが、その余の主張は争う。 2 (一)請求原因2項(一)の事実のうち、原告Bが本件市民センターの敷地の東側隣接地を所有してこれに居注していること、同株式 地区に市民センターが配置されていたことは認めるが、その余の主張は争う。 2 (一)請求原因2項(一)の事実のうち、原告Bが本件市民センターの敷地の東側隣接地を所有してこれに居注していること、同株式会社松田商会が同敷地の北側隣接地を所有していることを認め、その余は否認する。 (二) 同項(二)の事実は否認する。 (三) 同項(三)のうち、建築基準法の趣旨が原告ら主張のとおりであることは認めるが、その余の主張は争う。 四被告の主張 1 本件市民センターの概要(一) 本件市民センターは、行政の出先機関としての窓口事務その他の行政事務を執行する支庁機能と、社会教育法による公民館機能を併合した複合多目的施設としての建築物である。藤沢市市民センター条例((昭和四三年六月藤沢市条例第八号)によれば、市民の福祉の増進及び地域住民の健全育成を図るために設置されるものとして、地域住民の社会福祉活動等福祉の向上及び行政サービスの万全を期するために必要な規模を備えた公の施設(地方自治法二四四条)である。 本件許可処分時に藤沢市における既設の市民センターは、六会、片瀬、長後、御所見、遠藤、辻堂の六施設となつている(昭和五四年一一月一日以降は八施設となつている。)。 (二) 鉄筋コンクリート造二階建地下一階の本件市民センターは、一階(八八三・〇二平方メートル)に事務室、図書室、サークル室、和室、大ホールその他を、二階(四一〇・三〇平方メートル)はサークル室、実習室、アトリエその他を、地下一階(一八一・七九平方メートル)には、倉庫、機械室その他をそれぞれ配して、右市民センターの機能を備えると同時に、付近環境との調和、日照、通風、騒音等にかかわる環境保全に十分な配慮をした設計となつている。 (三) 本件市民センターの建設用地は藤沢市<地名略>山林二八九二平万メートル外 ーの機能を備えると同時に、付近環境との調和、日照、通風、騒音等にかかわる環境保全に十分な配慮をした設計となつている。 (三) 本件市民センターの建設用地は藤沢市<地名略>山林二八九二平万メートル外三筆の土地面積三三七一・九二平方メートルで(別紙図面(一)参照。)、西側を県道辻堂停車場辻堂線、南側を市道辻堂五八六号線に接する矩形の区画で、その用途地域は、建設敷地面積中、県道辻堂停車場辻堂線の計画線から東側三〇メートルの部分一〇九九・八二平方メートル(全体の四四・四六パーセント。)が第二種住居専用地域、県道戸塚茅ケ崎線の計画線から南五〇メートルの部分にして、敷地の北側にかかる部分一六四・一八平方メートル(全体の六・六三パーセント。)が住居地域その余の部分一二〇九・四六平方メートル(全体の四八・八九パーセント。)が第一種住居専用地域と定められている。 2 本件許可処分の内容(一) 前記1(三)のとおり本件市民センター敷地は、三種類の用途地域が混在するところ、法九一条(建築物の敷地が区域、地域又は地区の内外にわたる場合の措置。)にいう「過半」にあたる地域は存在せず、法にはまたこのような混在敷地を予測した定めがないので、このような場合(イ)市民センターが法四八条本文により建築できる地域(第二種住居専用地域一〇九九・八二平方メートルと住居地域一六四・一八平方メートルの合計一二六四・〇〇平方メートル、全体の五一・〇九パーセント。)と建築できない地域(第一種住居専用地域一二〇九・四六平方メートル、全体の四八・八九パーセント。)との比較によつて法九一条の過半の地域と解釈する考え方と(ロ)建築敷地の三種類の用途地域のうち最も大きい割合を占める地域をもつて法九一条でいう過半の趣旨を解釈する考え方がある。 そして右(イ)の考え方によれば本件市民センターの場合に 域と解釈する考え方と(ロ)建築敷地の三種類の用途地域のうち最も大きい割合を占める地域をもつて法九一条でいう過半の趣旨を解釈する考え方がある。 そして右(イ)の考え方によれば本件市民センターの場合においては法四八条一項但書の許可を必要とせず建築できることとなり、また(ロ)の考え方をとれば許可を必要とする。 (二) 本件市民センターの建築主たる訴外藤沢市は、自らを律するにきびしいこととなる右(ロ)の考え方によつて法四八条一項但書の許可を特定行政庁たる被告に求めた。 (三) 本件許可処分にいたる経過は次のとおりである。 (1) 昭和五一年九月一四日法四八条一項但書の許可申請受理(2) 同年同月一七日消防長同意(法九三条一項)(3) 同年一〇月五日公開聴聞会開催の公告(法四八条一〇項)(4) 同年同月一二日公開聴聞会(於辻堂市民センター)開催(同条九項)(5) 同年同月二二日藤沢市建築審査会による現場審査、継続となる(同右)(6) 同年一一月二日第二回藤沢市建築審査会(於労働会館)において同意(同右)(7) 同年同月九日第四四号で本件申請を許可(四) 本件市民センターは本件許可処分を経て建築完成されたものであり、同センターは「辻堂市民センター」の名称のもとに昭和五三年一月二〇日より供用が開始された(これに伴ない従来の辻堂市民センターは「明治市民センター」と改称された。)。 3 本件許可処分の適法性(一) 本件市民センターは、法四八条一項但書にいう「公益上やむを得ない」建築物と認めて許可したものである。 右但書に「公益上やむを得ない」と定めるところは、当該申請にかかる建築物の種類・性質からみてこれを判断するのであるから、本件許可処分において、本件市民センターは前記1(一)の て許可したものである。 右但書に「公益上やむを得ない」と定めるところは、当該申請にかかる建築物の種類・性質からみてこれを判断するのであるから、本件許可処分において、本件市民センターは前記1(一)のとおり市の地域出先機関としての支所機能と社会教育法による公民館としての機能を兼ね備える地域中核施設であるからその公益性は極めて高度な建築物として「公益上やむを得ない」と認めたことに何らの違法はない。 しかも、本件市民センターにおいては、単なる支所・公民館の併立的機能ではなく、より住民サービスの合理性が考えられている。即ち、第一に、窓口事務の合理化を図り、第二に、市民の自主活動に対する援助強化によるサービスを提供し、第三に、簡易な事務の迅速な解決を実現し、第四に、市民の交流を円滑にすることにより地域市民の自治と連帯意識の強化に寄与し、第五に、職能配置において限られた人員を有効に活用するものである。 (二) 本件許可処分においては、(1)付近の住宅環境を阻害しないように管理運営については適切に行うこと。(2)騒音防止については設計で考慮すること。 という付帯条件が加えられ、低層住宅に係る良好な住居の環境を害することのないよう、環境保全上の配慮がなされている。 この結果、第一に、原告B、同株式会社松田商会所有の各隣地に、日照、採光、通風等の阻害の問題は生じない。第二に、本件市民センターへの出入等の利用による発生音が原告ら住居に到達することは考えられず、居住の平穏を害するようなことはない。第三に、建物についての騒音が外部に洩れることのないよう、極力その防止がなされている。 (三) (1)原告らは、本件許可処分の違法として、本件市民センターが(1)大規模に過ぎる(2)建築場所の選定が適当でない(3)建築に緊急性も逼迫性もないとする。 (2) しかしながら右の ている。 (三) (1)原告らは、本件許可処分の違法として、本件市民センターが(1)大規模に過ぎる(2)建築場所の選定が適当でない(3)建築に緊急性も逼迫性もないとする。 (2) しかしながら右の(1)建物規模(2)建築位置(3)建築時期の点は、建築主が特定行政庁に対する同項但書の許可申請に及ぶ前段階において建築主の側において決定した事柄に属し、特定行政庁としては、建築主がその規模、位置を特定して建築するとして許可を求めてきたときに、これに対し、当該申請にかかわる建築物についてそれが種類・性質上「公益上やむを得ない」ものであるか否かを判断することとなるのであつて、そもそも、建築主の決めた右(1)ないし(3)の点は特定行政庁が容喙して判断の対象に引き入れるべき問題でないことは法における特定行政庁の地位及び性格からして明らかなところである。されば、右の(1)ないし(3)の点を違法として主張するのは当を得ないものといえる。 4 従つて、被告のなした本件許可処分には何等の違法もない。 五本案前の申立の理由に対する原告らの認否及び反論 1 申立の理由1項のうち、原告Bが本件市民センター敷地の東側隣接地(藤沢市<地名略>、<地名略>、<地名略>、<地名略>、<地名略>)を所有し同地上(<地名略>、<地名略>)に建物を所有して居住すること、原告株式会社松田商会が右敷地の北側隣接地の所有者であること、原告Aが建設用地から約二〇〇メートル南方向に居住していること、原告Dが<地名略>ほか二筆の土地の所有者であることは認めるが、その余の主張は争う。 ちなみに、原告Dは<地名略>に居住しており、<地名略>には住民登録しているだけで居住していない。 2 (一)同2項の主張は争う。 (二) なお被告は本件市民センターが、法四八条一項但書にいう「公益上やむを得ない」 は<地名略>に居住しており、<地名略>には住民登録しているだけで居住していない。 2 (一)同2項の主張は争う。 (二) なお被告は本件市民センターが、法四八条一項但書にいう「公益上やむを得ない」建築物であるとともに「低層住宅に係る良好な住居の環境を害するおそれがない」と認めて許可したものである。 それは、本件許可処分の取消を求める原告らの審査請求に対する被告の弁明書及び口頭審査会において被告が一貫して主張しているところであり、藤沢市建築審査会の裁決書も右の点を前提として判断している。 (三) 被告の主張によれば法四八条一項但書の許可は、許可申請前の建築主において決定した事項、即ち建築物の規模、場所選定、建築の時期といつた事項は許可判断に際し審査すべき対象に入らないという。 しかしながら、右解釈は同条但書について誤れるものである。被告は公開聴聞時にも建築審査会の審査時にも同一の見解を表明し、その論旨は建築確認における建築主事の確認行為と法四八条一項但書の許可処分とを混同しているものである。建築主事の行う建築確認行為にも裁量性のあることは学説の認めるところであるが、特に法四八条一項但書の許可は基準法の下で特定行政庁が行う例外的許可の場合として「公益上やむを得ないと認められる」か否かについて建築主事の確認内容より裁量性は広いものであり、建物の種類性質のみから即公益上やむを得ないものと判断すべきではなく、建物の規模、場所選定の必然性、建築をする時期の逼迫性、公益性の序列等を当然検討して判断すべきものである。右検討がなされた上でなお必要やむを得ないと認められる場合にのみ、法四八条一項但書の許可がなされるべきである。 六被告の主張に対する原告らの認否及び反論 1 (一)(1)被告の主張1項(一)のうち、藤沢市民センター条例によれば市民センターが市 られる場合にのみ、法四八条一項但書の許可がなされるべきである。 六被告の主張に対する原告らの認否及び反論 1 (一)(1)被告の主張1項(一)のうち、藤沢市民センター条例によれば市民センターが市民の福祉の増進及び地域住民の健全育成を図るために設置されるものであること、また、市民センターが地方自治法二四四条の公の施設であること、本件許可処分時の藤沢市における既設市民センターは六会、片瀬、長後、御所見、遠藤、辻堂の六施設であることは認める。 本件市民センターが行政の出先機関としての窓口事務その他の行政事務を執行する支庁機能を有すること及び地域住民の社会福祉活動等福祉の向上及び行政サービスの万全を期するために必要な規模を備えたものであるかは不知、本件市民センターが社会教育法による公民館機能をもつとの主張は争う。 (2) なお、藤沢市公民館条例と同市市民センター条例を比較すれば、両施設の管理運営、使用条件は明らかに異つており公民館条例が市民センターに競合適用される余地はないのである。 また、地方自治法二四四条の二第一項は普通地方公共団体は法律又はこれに基づく政令に特別の定めがあるものを除くほか、公の施設の設置及びその管理に関する事項は条例でこれを定めなければならないとし、右規定は公の施設を設置しようとするときは個々の施設ごとに条例を設けるべき旨を定めたものと解釈されており、公の施設である公民館については、社会教育法二四条により個個の公民館ごとに条例で定めるべきものとされている。 従つて、公民館については公民館条例で、市民センターについては市民センター条例で、個々に具体的名称をあげてその設置を規定しなければならないのであり、公民館として規定されていない市民センターに公民館条例が適用される余地はないのである。 その結果、市民センターについては営利を 例で、個々に具体的名称をあげてその設置を規定しなければならないのであり、公民館として規定されていない市民センターに公民館条例が適用される余地はないのである。 その結果、市民センターについては営利を目的とする使用も許されるなど社会教育的側面は薄れており、公民館に比べればその公共性ははるかに低いものといわざるを得ない。 (二) 同項(二)のうち、本件市民センターが付近環境との調和、日照、通風、騒音等にかかわる環境保全に十分な配置をした設計であるとの主張は争い、その余の事実は認める。 (三) 同項(三)のうち、本件市民センターの建設用地が藤沢市<地名略>外三筆に跨がること、西側を県道辻堂停車場辻堂線、南側を市道辻堂五八六号線に接する矩形の区画であること、その用途地域が第一種住居専用地域、第二種住居専用地域、住居地域に跨がることは認めるが、その余の事実は不知。 2 被告の主張2項のうち、(イ)の考え方の正当性については争い、その余の事実及び主張は認める(但し、原告Bは、(三)の(1)ないし(3)及び(5)、(6)の事実は不知。)。 3 (一)被告の主張3項(一)の事実は否認し、主張は争う。 (二) 同項(二)のうち、本件許可処分に(1)、(2)の付帯条件が加えられたことは認め、その余の事実は否認し、主張は争う。 (三) 同項(三)のうち、(1)の事実は認め、(2)の主張は争う。 前記五2(三)のとおり、法四八条一項但書の許可処分は特定行政庁の裁量行為であり、公益上やむを得ないか否かについて建築主の建築計画全般にわたつて検討されるべき問題であつて、容喙などというものではない。 4 被告の主張4項の主張は争う。 第三証拠(省略)○ 理由一本案前の申立についてまず、原告適格について判断する。 1 請求原因1項(一)の事実及び被告が本件市民センターの建 うものではない。 4 被告の主張4項の主張は争う。 第三証拠(省略)○ 理由一本案前の申立についてまず、原告適格について判断する。 1 請求原因1項(一)の事実及び被告が本件市民センターの建築を「公益上やむを得ない」(法四八条一項但書)ものと認め(一)「付近の住宅環境を阻害しないように管理運営については適切に行うこと」(二)「騒音防止については設計で考慮すること」との付帯条件を付して本件許可処分をなしたこと及び本件許可処分を経て本件市民センターが建築完成されたことは当事者間に争いがない。 2 成立に争いのない甲第一ないし第一〇号証、甲第一二ないし第二八号証、甲第三二ないし第三五号証、甲第三七ないし第四〇号証、甲第五〇号証の一、二、乙第一、二号証、乙第一三、一四号証、乙第二二号証の一〇、一一、乙第二六号証、乙第三一号証、乙第三九号証及び乙第四一号証並びに本件市民センターの写真であることにつき争いのない乙第三七号証の一並びに原告B本人尋問(第二回)の結果により真正に成立したと認められる甲第四六号証の一並びに証人Cの証言及び弁論の全趣旨により真正に成立したと認められる乙第三号証、乙第四号証の一ないし五、乙第五号証の一ないし四、乙第六、第七号証、乙第二二号証の一、乙第三五号証の一ないし八、乙第三六号証の一、二、乙第三七号証の二及び乙第四〇号証並びに証人E、同F及び同C(第一、二回)の各証言並びに弁論の全趣旨を総合すれば以下の事実が認められ、右認定に反する原告B本人の供述(第一、二回)は以下に認定する事実に照らして信用することができない。他にこの認定を覆すに足りる証拠はない。 (一) 原告らの居住地等(1) 原告Bは、別紙図面(一)のとおり本件市民センター敷地の東側隣地(藤沢市<地名略>、<地名略>、<地名略>、<地名略>の四筆。)を所有 定を覆すに足りる証拠はない。 (一) 原告らの居住地等(1) 原告Bは、別紙図面(一)のとおり本件市民センター敷地の東側隣地(藤沢市<地名略>、<地名略>、<地名略>、<地名略>の四筆。)を所有し、同地上(<地名略>、<地名略>の両地上に跨つている。 )に建物を所有してこれに居住している。 (2) 原告松田商会は、法人であつて別紙図面(一)のとおり本件市民センター北側隣地(藤沢市<地名略>、<地名略>、<地名略>、<地名略>、<地名略>、<地名略>、<地名略>、<地名略>、<地名略>、<地名略>、<地名略>の一一筆。)を所有しているものである。 (3) 原告Aは、別紙図面(二)のとおり本件市民センター敷地より南方向へ約二六〇メートル隔つた肩書地に居住している。 (4) 原告Dは、別紙図面(一)のとおり本件市民センターより北東方向へ約九〇メートル隔つた藤沢市<地名略>ほか二筆の土地を所有しているが、自らは本件市民センターより北方向(国鉄辻堂駅方向)へ約八〇〇メートル以上隔つた藤沢市<地名略>の土地に居住している。 (5) 本件市民センター敷地周辺について用途地域は、別紙図面(一)のとおりに指定されている。 (二) 本件市民センターの概要等(1) 本件市民センターは、藤沢市<地名略>に藤沢市が建築した鉄筋コンクリート造二階建、地下一階、建築面積八九六・六四平方メートル、延べ面積一四七五・一一平方メートルの建築物であつて、「辻堂市民センター」(建築完成前は、「辻堂南市民センター」と仮称していた。)として、藤沢市市民センター条例(昭和四三年六月藤沢市条例第八号)に基づき、同市の行政の出先機関としての窓口事務その他の行政事務を執行する支庁機能を果すとともに社会教育法による公民館機能をも果す施設である。 (2) 本件市民センターは、一階(八八三・〇 例第八号)に基づき、同市の行政の出先機関としての窓口事務その他の行政事務を執行する支庁機能を果すとともに社会教育法による公民館機能をも果す施設である。 (2) 本件市民センターは、一階(八八三・〇二平方メートル)に事務室、図書室、サークル室、和室、大ホールその他を、二階(四一〇・三〇平方メートル)はサークル室、実習室、アトリエその他を、地下一階(一八一・七九平方メートル)には、倉庫、機械室その他をそれぞれ配している(以上の事実は当事者間に争いがない。)。 (3) 本件市民センターの建設用地は藤沢市<地名略>山林二八九二平方メートル(同地の実測地積は二四七三・四六平方メートルである。なお、公図上は藤沢市所有の<地名略>、<地名略>及び<地名略>の合計三筆の土地も本件市民センター建設敷地の一部として使用されている。)で、西側を県道辻堂停車場辻堂線、南側を市道辻堂五八六号線に接する矩形の区画で、その用途地域は、建築敷地面積中、県道辻堂停車場辻堂線の計画線から東側三〇メートルの部分一〇九九・八二平方メートル(実測地積全体の四四・四六パーセント。)が第二種住居専用地域、県道戸塚茅ケ崎線の計画線から南五〇メートルの部分にして、敷地の北側にかかる部分一六四・一八平方メートル(同じく全体の六・六三パーセント。)が住居地域、その余の部分一二〇九・四六平方メートル(同じく全体の四八・八九パーセント。)が第一種住居専用地域と指定されている(別紙図面(一)参照。)。 (三) 本件市民センターにおける日照、採光、通風等の阻害に対する配慮(1) 建物の東側関係本件市民センター敷地の東側は原告B所有地に隣接するが、境界東側の同人所有地は市民センター敷地よりも平均三メートル高くなつており、法(のり)は石積みとなつている。そのため、本件許可処分時において、本件市民セン ンター敷地の東側は原告B所有地に隣接するが、境界東側の同人所有地は市民センター敷地よりも平均三メートル高くなつており、法(のり)は石積みとなつている。そのため、本件許可処分時において、本件市民センターの建物により境界を超えて右原告敷地内に生ずる日影は、冬至日において午後二時頃から日没までの間右敷地の一部に発生するのみであり、境界線より地盤面で約五メートル以上の深さの日影を生ずるのは午後三時以降であると予想された。従つて、境界から約一八メートル離れた位置にある同原告所有の住居に日影による影響は勿論、採光、通風等の阻害は全く発生しないことが明らかであつた。 なお、同原告所有地に生ずる右程度の日影時間は、法五六条の二の規定に基づき本件許可処分後である昭和五三年三月一五日に制定され同年七月一日より施行された藤沢市中高層建築物の日影に関する条例(藤沢市条例第二八号)にも適合するものである。 (2) 建物の北側関係本件市民センターの北側は原告松田商会所有地に隣接するが、本件許可処分時において、同所有地に冬至日の午前九時頃から午後二時頃までの間、境界線から地盤面で約一〇メートル前後の深さの日影を生ずると予想された。しかしながら、本件市民センターは北側斜線制限を定めた法五六条一項三号による制限内の建物の高さになつていることが明らかである。 即ち、本件市民センターの敷地は、前示のとおり第一種住居専用地域が全体の四八・八九パーセント、第二種住居専用地域が全体の四四・四六パーセント、住居地域が全体の六・六三パーセントと三種の地域が混合して定められており、本件市民センターは右の三種の地域にそれぞれかかつて建築されている。そうすると、、敷地のうち第二種住居専用地域に定められた部分の高さについては、右の法によれば隣地境界線までの真北方向の水平距離に一・二五を乗じ ンターは右の三種の地域にそれぞれかかつて建築されている。そうすると、、敷地のうち第二種住居専用地域に定められた部分の高さについては、右の法によれば隣地境界線までの真北方向の水平距離に一・二五を乗じて得たものに一〇メートルを加えたもの以下と規制が緩和されておりそのうえ住居地域もかかつているのである。 こうしたなかで、本件市民センターの場合は、建築物敷地中第一種住居専用地域に定められた部分が四八・八九パーセントを占めて相対的に最も広い地域にあたるということで、他に規制の緩和された第二種住居専用地域や住居地域の混在にも拘らず、最もきびしい規制を受ける第一種住居専用地域における隣地境界線までの真北方向の水平距離に一・二五を乗じて得たものに五メートルを加えた斜線制限を建築物の各部分全体に適用してその制限内に建物の高さをおさえて(最高で八・二三メートルである。)北側原告松田商会所有隣地に対する配慮を遂げている。 なお、本件市民センターは全体としての高さが一〇メートルを超える建物ではないから、北側隣地(第二種住居専用地域ないし住居地域に属する。)に対する関係でも、前記藤沢市中高層建築物の日影に関する条例に適合するものである。 従つて、右事実関係のもとでは、原告松田商会所有地において採光、通風等の阻害は全く発生しないことが明らかである。 (3) 原告らの日影等の状況原告Bないし原告松田商会は、訴外安藤建設株式会社に依頼し、昭和五二年一二月五日、原告B所有地の西端に本件市民センターとの境界に沿つて同センター二階屋上部分とほぼ同じ高さに達するコンクリート塀を、原告松田商会社有地の南端に同センターとの境界に沿つて同センター一階屋上部分とほぼ同じ高さに達するコンクリート塀を各築造した。 右塀の築造の結果、これを超えて原告ら敷地内に生ずる日影は、原告B所有地で、 田商会社有地の南端に同センターとの境界に沿つて同センター一階屋上部分とほぼ同じ高さに達するコンクリート塀を各築造した。 右塀の築造の結果、これを超えて原告ら敷地内に生ずる日影は、原告B所有地で、冬至日の午後四時より敷地のごく一部に本件市民センター二階屋上に設置されたクーリングタワーによる日影のみが生ずることとなり、原告松田商会社有地で、冬至日の午前九時頃より正午頃までの間境界線から地盤面で約一〇メートル前後の日影が生ずることとなつた。 (四) 本件市民センターへの出入等利用による騒音等の発生本件市民センターは前記(二)(1)のとおりの両機能を有するものであり、主として近隣に居住する辻堂南地域の住民が、利用するものであるところ、利用者は徒歩又は自転車によつて出入するものと考えられる。しかして、その出入は、県道辻堂停車場辻堂線から直接本件市民センターへ通ずる西側出入口によつて行われるため、利用者の出入に際しての歩行による某かの音が発生するにしても、市民センター用地の東側背後に広範に拡がる第一種住居専用地域に対しては(右県道から事務室、図書室に達する出入口は第二種住居専用地域となつている。)勿論、この出入口から本件市民センターを隔て約五四メートルはなれ、かつ右県道路面から少くとも約四・五メートル高所に所在する原告Bの居住地に、右出入に際しての歩行その他の発生音が到達するとは考えられない。 本件市民センターに付設された利用者のための駐車場の収容車両台数は、三台であり、右利用者の車両の出入により発生する音は、原告B宅へ到達する程甚大な騒音とはなりえない。かえつて、本件市民センターは、その建物の存在により、西側の県道辻堂停車場辻堂線の自動車等の往来による交通騒音の一部を遮蔽防止する効果を果すことになる。 (五) 建物内の騒音等防止の配置(1) 。かえつて、本件市民センターは、その建物の存在により、西側の県道辻堂停車場辻堂線の自動車等の往来による交通騒音の一部を遮蔽防止する効果を果すことになる。 (五) 建物内の騒音等防止の配置(1) 一階ホールでは講習はじめ音楽の演奏等が行われるため、外部に音響が洩れることのないよう建物のこの部分には開口をできるだけ少なくし、最少限設けた窓も二重窓にするなどして極力その防止を配慮してある。それとともにホール内では例えばエレキギターなど音量の特に大きい楽器の使用を制限することなど管理規則を定めることによつて音響の外部に洩れることを防止するようにしてある。 (2) 建物の東側敷地は第一種住居専用地域に定められているので隣地境界から九・五ないし約一二メートル建物を離し、境界との空地には植栽をほどこしてある。 (3) 建物の東側は一階に和室、二階に調理室、アトリエ等室内で高音の生じない部屋を配置するとともに開口部を極力少なくしてある。 (4) 当初の設計にあつた二階アトリエの北側採光屋根は、これをなくして一・四七メートル低くし、他の二階の部屋の高さと同じ高さにするとともに、二階のほぼ全体を約八・三〇メートルの高さにおさえてある。 (5) 当初の設計ではクーリングタワーは北側境界付近に設けることとなつていた(地下一階の機械室との位置関係から当初の設計ではそのようになつていた。)が、あえてこれを県道側に変えて配置してある。 (6) 建物の主要出入口は第二種住居専用地域である西側県道側に設けた。 (7) 全館冷暖房を行い建物の気密性を高めるとともに、その熱源として重油を用いず都市ガスを使用して排気ガスの清浄化に努めてある。 (8) ホールは音響効果について特別の工夫をこらすとともに、東側に開口部を設けないで音の方向を西側に向けるようにして、音が外部に洩れないよう 用いず都市ガスを使用して排気ガスの清浄化に努めてある。 (8) ホールは音響効果について特別の工夫をこらすとともに、東側に開口部を設けないで音の方向を西側に向けるようにして、音が外部に洩れないよう配慮してある。 (9) 本件市民センターの照明施設は、県道辻堂停車場辻堂線側の前庭部分に七基の水銀燈が設置されているが、右水銀燈施設と本件市民センター東側隣地及び北側隣地との間には本件市民センターの建物自体が位置するので、これに遮られて右水銀燈の照明光が直接右各隣地に到達することはない(なお、現在右水銀燈は、周辺住民への配慮と省エネルギーのため、七基中三基のみが日没より午後一〇時三〇分までの間点燈されている。)。 以上の事実が認められる。 3 原告適格の判断(一) 取消訴訟は、行政庁の処分又は裁決によつて自己の権利、利益を侵害される者を救済することを目的とするものであるから、取消訴訟を提起できる者は、法律に格別に定めのないかぎり、当該処分又は裁決により自己の権利もしくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれがあり、その取消等によつてこれを回復すべき法律上の利益を有する者に限られるべきである。 そこで、行政事件訴訟法九条は、取消訴訟の原告適格の要件として、「取消を求めるにつき法律上の利益を有する者」に限ると規定し、ここにいう「法律上の利益」とは、行政法規が私人等権利主体の個人的利益を保護することを目的として行政権の行使に制約を課していることにより保障されている利益であつて、それは、行政法規が他の目的、特に公益の実現を目的として行政権の行使に制約を課している結果たまたま一定の者が受けることとなる反射的利益とは区別されるべきものである(最判昭和五三年三月一四日民集三二巻二号二一一頁参照。)。 (二) 原告らは、法四八条一項但書の規 行使に制約を課している結果たまたま一定の者が受けることとなる反射的利益とは区別されるべきものである(最判昭和五三年三月一四日民集三二巻二号二一一頁参照。)。 (二) 原告らは、法四八条一項但書の規定に基づき、第一種住居専用地域内において建築される建築物が「公益上やむを得ない」と認めた特定行政庁の許可処分の取消を求める(本件許可処分が、低層住宅に係る良好な住居の環境を害するおそれがないと認めてなされたことを認めるに足りる証拠はない。 )ものであるところ、右許可処分は当該建築物がその規模、性質、機能から判断して「公益上やむを得ない」ものといえるか否かの見地からなされる比較的広範な裁量行為というべきであつて、右許可処分が同時に右建築物の周辺隣地居住者の個別具体的利益をも保護してなされるべきものとは解し難いところである。 (三) しかしながら、建築基準法はその第一条において「国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もつて公共の福祉の増進に資することを目的とする」と規定し、直接的には健全な建築秩序を確保し一般的な火災等の危険の防止、生活環境の保全等という公共の利益の維持増進を図ることを目的としていることは明らかであるが、この場合における公共の利益は、具体的には建築主又は近隣居住者の日照、採光、通風、衛生、住居の静謐等という生活環境の保全又は火災等における安全の保護ということを離れては考えられず、近隣居住者の生命、健康を保護し、火災等の危険から近隣居住者を護ることが、とりもなおさず公共の利益に合致するものであることは疑いを容れないところである。従つて、建築基準法は、右近隣居住者の日照、採光、通風、衛生等の生活環境の保全及び防災に寄与する限度において、公共の利益とともに近隣居住者の右個人的利益をも保護するものと解すべきである。 そしてまた、都市計画法に基 法は、右近隣居住者の日照、採光、通風、衛生等の生活環境の保全及び防災に寄与する限度において、公共の利益とともに近隣居住者の右個人的利益をも保護するものと解すべきである。 そしてまた、都市計画法に基づいて定められた各用途地域内における建築物の建築制限、用途規制に関する建築基準法の諸規定は、「都市の健全な発展と秩序ある整備」(都市計画法一条)という都市計画の観点からの建築秩序の維持という公共の利益の保持を目的とするものであるが、これとともに、第一種及び第二種住居専用地域並びに住居地域について、無秩序な建築により各用途地域に相応し住居の安全にして快適な居住環境が破壊されることのないよう一定の建築物の建築を制限することが公共の利益のために必要であるとの考慮から、その建築により居住環境上受忍限度を超えた悪影響を受けるおそれのある付近住民を居住環境の破壊から守ろうとする意図をも併有し、付近住民の人格的利益をも保護するものであることは否定し得ないところである。 (四) 右建築基準法の趣旨及び各用途地域内における建築規制の目的に鑑みれば、法四八条一項但書の規定に基づく許可処分を受けることによつて建築することが可能となる建築物のために、日照、採光、通風、衛生、生活環境上受忍すべき限度を超えた悪影響を蒙るおそれのある近隣居住者は、右許可処分の取消を求めるにつき、法律上の利益を有するものと認めても誤りではないと解されよう。 (五) そこで、原告らが本件市民センターの建築完成によつて蒙ることになると主張する日照阻害、通風阻害、風害、視界阻害、採光阻害、騒音、振動、夜間における照明その他による環境破壊及び地価の厖大な下落並びに本件市民センター利用者により生ずる騒音、排気ガス、火災及び盗難等の悪影響について以下検討を加えることとする。 (1) 原告A及び同Dについ おける照明その他による環境破壊及び地価の厖大な下落並びに本件市民センター利用者により生ずる騒音、排気ガス、火災及び盗難等の悪影響について以下検討を加えることとする。 (1) 原告A及び同Dについては、右主張するところの損害及び悪影響を蒙るおそれを認めるに足りる証拠はなく、かえつて、前記認定のとおり、右原告ら各居住地と本件市民センターとが遥かに隔つた位置関係にあること、本件市民センターの構造、規模、用途及び利用形態には周辺住民の環境を保全するよう十分な配慮がなされていることからみれば、右原告らが主張するところの損害ないし悪影響を蒙るおそれがあるとは到底認めることができない(仮りに、原告Dが、その所有地である藤沢市<地名略>等の土地において居住するものであるとしても、右同様、前記損害ないし悪影響を蒙るおそれはない。けだし、前記認定事実に加えて、右土地ですら本件市民センターから約九〇メートルも隔つており、右土地は住居地域に属するところ(この点は当事者間に争いがない。)、右住居地域について法四八条三項が規定する建築物の建築制限、用途規制の内容程度により保護されていると判断される居住環境は、第一種住居専用地域等における良好な居住環境に比較して遥かに劣るものであるから、結局、原告Dが居住環境に関して受忍限度を超える損害ないし悪影響を蒙るおそれがあるものと認めることはできない。)。 (2) 原告松田商会は、前示のように本件市民センター敷地に隣接する第二種住居専用地域及び住居地域に土地を所有するに過ぎず、本件市民センターによる日照阻害も前示2(三)(2)、(3)程度のものである。また、甲第三一、第四三号証には本件市民センターの完成により右所有地価格が下落する旨の主張に沿う記載部分がないわけではないが、右各証拠は本件市民センターの建築による周辺隣地へ 3)程度のものである。また、甲第三一、第四三号証には本件市民センターの完成により右所有地価格が下落する旨の主張に沿う記載部分がないわけではないが、右各証拠は本件市民センターの建築による周辺隣地への影響が前記認定程度のものにすぎないことに照らせば、たやすく信用することができず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。その他前記主張の損害及び悪影響を認めるに足りる証拠はなく、かえつて、前記認定のとおり本件市民センターの構造、規模、用途及び利用形態には周辺住民の環境を保全するよう十分な配慮がなされていることからみて、原告松田商会において、受忍限度を超える右損害ないし悪影響を蒙るおそれがあるとは到底認めることができない。 更に、前示のとおり用途地域内における建築物の建築規制に関する建築基準法の規制が公共の利益とともに、近隣居住者の個別的具体的利益を保護するものであるとしても、自然人としてのその人格上の諸利益を保護する趣旨に過ぎないことに鑑みれば、法人である原告松田商会は、本件許可処分の取消を求めるについて法律上の利益を有する者と認めることはできない。 (3) 原告Bについては、前記認定の居住地と本件建物との位置関係からみて、前記主張の損害、殊に日照阻害を蒙る蓋然性を認める余地が全くないわけではない。 しかしながら、前示のとおり、本件許可処分の付帯条件((一)付近の住宅環境を阻害しないように管理運営については適切に行うこと(二)騒音防止については設計で考慮すること)に従つて、本件市民センターの構造、規模、用途及び利用形態については周辺住民の良好な生活環境を害することのないよう配慮がなされていること、現に原告B方住居敷地における日照阻害状況が前記2(三)程度のものであることに徴すれば、同原告に対する本件市民センターによる日照の影響が、生活環境上受忍す することのないよう配慮がなされていること、現に原告B方住居敷地における日照阻害状況が前記2(三)程度のものであることに徴すれば、同原告に対する本件市民センターによる日照の影響が、生活環境上受忍すべき限度を超えた損害であると認めることはできない。 その他前記主張の損害ないし悪影響を蒙るおそれについては、原告B本人の供述(第一、二回)を除いてこれを認めるに足りる証拠はなく、右供述は前記認定事実に照らして措信することができない。従つて、原告Bが受忍限度を超えた前記損害ないし悪影響を蒙るおそれがあると認めることはできない。 (六) よつて、原告らは、いずれも本件許可処分の取消を求めるにつき法律上の利益を有する者とは認められず、原告適格を欠くから、本訴は不適法として却下を免れない。 4 (一)なお、本件許可処分の適否について付言するに、成立に争いのない乙第一、第二号証、乙第一九号証の一ないし三、乙第二一号証の一、二及び乙第二三号証の一、二並びに弁論の全趣旨を総合すれば、本件許可処分は以下のとおり建築基準法所定の手続を経てなされたものであることが認められる。 被告は、昭和五一年九月一四日藤沢市による法四八条一項但書の許可申請を受理する。 同年同月二七日消防長の同意を得る(法九三条一項)。 同年一〇月五日公開聴聞会開催のため本件市民センターの建築の計画並びに聴聞の期日及び場所を公告する(法四八条一〇項)。 昭和五一年一〇月一二日辻堂市民センター(現在の明治市民センター。)において、利害関係を有する者の出頭を求めて公開による聴聞会を開催する(同条九項)。 同年同月二二日藤沢市建築審査会による本件市民センターの建築の審査が継続となる(同右)。 同年一一月二日第二回藤沢市建築審査会において同意を得る(同右)。 同年 (同条九項)。 同年同月二二日藤沢市建築審査会による本件市民センターの建築の審査が継続となる(同右)。 同年一一月二日第二回藤沢市建築審査会において同意を得る(同右)。 同年同月九日本件申請(受理番号第四四号。)を許可する。 (二) そして、法四八条一項但書の規定に基づく特定行政庁の許可は、文理上「低層住宅に係る良好な住居の環境を害するおそれがないと認め」る場合か、又は「公益上やむを得ないと認め」る場合かのいずれかに該当する場合に右許可をなしうるものと定められていることが明らかであり、被告が本件市民センターを「公益上やむを得ない」と認める場合に該当するとして本件許可処分をなしたことについて、違法なかどはない。 (三) 更に、本件許可処分は前示のとおり被告特定行政庁が比較的広範な裁量権を有する行政行為であるから、その権限を濫用ないし逸脱したと認められる場合にのみこれが違法となるものと解されるところ、前記認定のとおり、本件許可処分は建築基準法所定の手続を経由し被告により前記付帯条件を付け加えられてなされたものであり、しかも、本件許可処分によつて建築が可能となる本件市民センターは、藤沢市市民センター条例に基づき同市の行政の出先機関としての窓口事務その他の行政事務を執行する支庁機能と、社会教育法による公民館機能とを併有する施設として、多数の周辺住民の利用に供されるのであるから、十分な公益性を有するものと認められる。 その他、被告が本件市民センターの建築を「公益上やむを得ない」と認めたことにつき、権限の濫用ないし逸脱があると認めるに足りる証拠はない。右に反する原告B本人の供述(第一、二回)はたやすく措信することができない。 従つて、被告のなした本件許可処分には、何ら違法な点はなく、適法なものというべきである。 二よつて、 に足りる証拠はない。右に反する原告B本人の供述(第一、二回)はたやすく措信することができない。 従つて、被告のなした本件許可処分には、何ら違法な点はなく、適法なものというべきである。 二よつて、原告らの請求はいずれも不適法であるから本件訴は却下することとし、訴訟費用の負担につき、行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条、九三条一項本文を適用して、主文のとおり判決する。 物件目録及び図面(一)、(二)(省略)
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