平成18(わ)1261 殺人被告事件

裁判年月日・裁判所
平成18年8月15日 大阪地方裁判所
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判決文本文17,396 文字)

主文 被告人を懲役6年6月に処する。 未決勾留日数中90日をその刑に算入する。 押収してあるネクタイ1本(平成18年押第257号の1)を没収する。 理由 (犯行に至る経緯等)被告人は,妻子がありながら,かねてから19歳年下のAと交際し,不倫関係にあったものであるが,同女から関係の解消を求められて自暴自棄になり,同女に対して自殺をほのめかすなどしていた。被告人とAは,これを最後にする約束で,平成18年2月17日から19日までホテル等で一緒に過ごしたが同日の夕刻一,,,「緒になれなかったねなどと別れ話をしているうち両名は心中しようと考えるに。」,至った。そこで,睡眠薬等を購入して,大阪府池田市内のBホテル312号室に入室し,被告人とAは,ともども睡眠薬等を服用して,カミソリで手首を切ったり,ネクタイやベルトで首を吊ろうとしたが,いずれも死ぬことはできなかった。 (罪となるべき事実)被告人は,同月20日午前1時ころ,上記Bホテル312号室において,上記A(当時22歳)の承諾を得て,殺意をもって,同女の頸部にネクタイ(平成18年),,,,押第257号の1を巻き付けて強く絞め付けよってそのころ同所において同女を窒息死させ,もって,同女の承諾を得て同女を殺害した。 (証拠の標目)(省略)(事実認定の補足説明)第1本件における争点弁護人は,①被告人は被害者の同意のもとに同人を殺害したのであるから,同意殺人罪が成立するにとどまる,②被告人には自首が成立する旨主張し,他方,検察官は,①被害者が殺害されることを承諾したことはなく,公訴事実の とおり,殺人罪が成立する,②被告人は,殺人罪を犯しながら,同意殺人罪を犯した旨の虚偽の申告をしており,自首は成立しない旨主張する。 そこで,本件においては,被告人が被害者 ことはなく,公訴事実の とおり,殺人罪が成立する,②被告人は,殺人罪を犯しながら,同意殺人罪を犯した旨の虚偽の申告をしており,自首は成立しない旨主張する。 そこで,本件においては,被告人が被害者の同意のもとに被害者を殺害したのかどうかが中心的な争点である。 そして,検察官は,被害者は死ぬことに同意していない理由として,①被害者は,被告人に対する愛情がなく,被害者には自殺する理由がないこと②被害者は,殺害に抵抗していたこと③被告人には,被害者を殺害する強い動機があったこと④被告人の供述には不自然な点があることなどを主張する。 これに対し,弁護人は,被害者が死ぬことに同意していた理由として,①被害者は,殺害について抵抗を示していないこと②被告人と被害者が心中を図ったとみられる客観的な事実があること③本件における被告人と被害者の関係や被害者の性格に照らすと,被害者が死ぬことに同意するのは不自然でないこと④被告人には,被害者を殺害する強い動機があるものではないことなどを主張する。 そこで,以下においては,本件で取り調べた証拠によって認定できる事実,被害者の同意の有無に関する被告人の供述内容を検討した上で,争点についての当裁判所の見解を示すこととする。 第2証拠上認められる事実関係各証拠によれば,以下の事実が明らかに認められる。 被告人及び被害者の身上等(1)被告人は高校卒業後昭和58年3月に陸上自衛隊に入隊し平成15,,,年3月からC駐屯地(兵庫県小野市) 平成17年8月からD駐屯地(神奈川県,横須賀市)にぞれぞれ勤務していた。 被告人は,平成18年1月1日付けで,一等陸曹から,陸曹長に昇任したが,本件で逮捕後の同年3月7日に懲戒免職処分となった。 被告人の妻(本件後に離婚)と子2人は兵庫県加西市 ぞれぞれ勤務していた。 被告人は,平成18年1月1日付けで,一等陸曹から,陸曹長に昇任したが,本件で逮捕後の同年3月7日に懲戒免職処分となった。 被告人の妻(本件後に離婚)と子2人は兵庫県加西市の住居地で居住し,被告人は,本件犯行時,横須賀市に単身赴任していた。 (2)被害者A(以下「被害者」ともいう)は,高校卒業後,平成14年3月。 に陸上自衛隊に入隊し,同年6月からC駐屯地に勤務していた。本件当時,陸士長で,22歳であった。 被害者は,小学生の時に両親が離婚し,母親に育てられた。被害者は,母親思いで,母親の面倒を見なければならないと考えていた。被害者は,優しく,人のいいなりになりやすい性格であった。 被告人と被害者との交際状況等,,(1)被告人と被害者はC駐屯地の同じ中隊で上司と部下の関係にあったが平成16年11月ころから,いわゆる不倫関係にあった。 (2)しかし平成17年1月ころこれが隊内に発覚し上司から別れるよう,,,に言われるなどしたが,別れることができなかった。同年5月,被害者との交際が職場で問題となったことなどに悩んだ被告人が,自殺を図り未遂に終わった。しかし,これにより,上記不倫関係は,被告人の家族にも知られるところとなった。 (3)被告人は同年8月1日付けで上記交際が原因で神奈川県内のD駐屯地,,通信学校に異動となり,被害者と離れた。被告人は,上司から,被害者と会わないよう指導を受けていたが,その後も,休日を利用し,被告人が関西に出かけたり,被害者が関東に出かけたりして,密かに被害者との交際を継続していた。 (4)被告人は被害者に対し自衛隊を除隊し被告人についてくることを希,,,望したが,被害者は,平成18年3月末に自衛隊を任期満了退職で除隊する予定であるから,それま を継続していた。 (4)被告人は被害者に対し自衛隊を除隊し被告人についてくることを希,,,望したが,被害者は,平成18年3月末に自衛隊を任期満了退職で除隊する予定であるから,それまで待ってほしいなどと話していた。被告人は,被害 者が除隊後は,被告人の勤務地に近い横須賀市周辺で就職することを求めていた。 (5)他方被害者は平成17年9月ころ同僚の女性自衛官Eから同じ駐屯,,,地の自衛官F(当時24歳)を紹介され,Fに交際を申し込み,メールのやり取りやドライブをするなどして交際を始めた。 Fは,その後,警察官採用試験に合格し,翌年に自衛隊を退職し,関東地方で警察官として働く予定であった。 (6)しかしその後も被害者は同年11月ころまではEに対して被告,,,,,人についていくと述べるなど,横須賀市周辺に居住して,被告人との交際を続けようとの意思も表明していた。被害者は,実母のGに,自分も被告人のもとに行こうと思う旨述べていたが,これに対し,Gは,妻子ある被告人との交際に反対した。 (7)被害者は同年12月22日から23日にかけて被告人と会ったが同,,,月23日,被害者は,被告人に対して「横須賀には行けない「彼氏がで,。」,きたら別れてくれるなどと言って暗に交際の解消を持ち掛けた被告人。」,。 はこれを拒絶したが,被害者の実母Gも加わった話合いの結果,以後は単なる友人として交際するに止めることに同意させられた。 (8)しかし被告人はその後も被害者の携帯電話にしばしばメールを送,,,,りまた電話をするなどしたその際被告人は被害者に対しAが言,,。 ,,,「う落ちるところまで落ちたろうか?別れないと言えばすむ話「どんな形で」, ばメールを送,,,,りまた電話をするなどしたその際被告人は被害者に対しAが言,,。 ,,,「う落ちるところまで落ちたろうか?別れないと言えばすむ話「どんな形で」,もいいから付き合ってそれだけ」などと交際の継続ないし復縁を求めたが,被害者から意に添う回答は得られなかった。 (9)被告人と被害者は同月23日以降メールや電話のやり取りのみで平,,,成18年2月17日まで,直接会っていなかった。 (10)被害者は,自衛隊除隊後の再就職の準備として,同年1月から兵庫県小野市内の自動車教習所に通い始めた。 (11)被告人は,同月中旬ころ,被害者が交際していると聞いたFに対し電話をかけ,被害者と別れなければ就職できないようにするなどという旨の脅迫めいた電話をした。 (12)被告人は同月29日被害者に対しどんな手を使ってでも必ず帰っ,,,「て来させてみせる「17日から19日は守ってや予定入れたらあかん教習」,も」というメールを送り,被害者は「17~に関しては努力するわ」と返信,,。 し同年2月17日から19日までの日程で被告人と会うことを約束した(13)被告人は,被害者が電話に出なかったりメールに返信しないことがあるようになったため,同女に対し「マナーけ返事来るまでならすから(1月,」29日留守電にもならなくした! 2月4日などというメールを送信),「」()するなど,たびたび電話したりメールを送ったりした。 ,,「,,,(14)被害者は実母のGに対し被告人がメールなどで死にたいとか食事がのどを通らない,仕事が手につかない,眠れない,などというので,かわいそうになり別れるつもりだが同情して別れられないメールなど,。」,「,,。」。 がメールなどで死にたいとか食事がのどを通らない,仕事が手につかない,眠れない,などというので,かわいそうになり別れるつもりだが同情して別れられないメールなど,。」,「,,。」。 をしつこく送ってくるので怖くはないが困っているなどと述べていた(15)被害者は,Fと,平成18年1月ころ,初めてキスをし,同年2月4日ころ,肉体関係を持った(肉体関係を持ったのはこの1回のみである。 。)(16)その一方で,被害者は,同月5日,被告人のためにネクタイを購入し,被害者の手帳の2月5日欄にはきのうの晩におかあさんとHさん被告,「,()。 。 人の名からTELがいっぱいあった無言電話が家にかかってきたらしいうたがうなって,あれだけおどしてたら,そう思われてもしかたないやん。 ジャスコでもけんかしてるし。で結局論点がずれていって,あの人のいいなりになる。全然冷静じゃないし。そんなんなのにかわいいネクタイみつけて買ってしまった」との記載をしている。 。 被害者は,同月14日の数日前にもFとデートし,その際,同人にバレ(17)ンタインデーのチョコレートを贈った。 (18)Fは,被害者が自分以外の男性と交際している様子で,脅迫めいた電話もかかってきたので,被害者を自分に紹介したEにその旨相談し,Eは,被害者に,どちらが本命なのかを尋ねた。 被害者は同月10日Eに対し付き合ってます本命はFさんでH一,,,「,()」。 曹被告人の姓とは分かれようと苦闘中ですなどというメールを送った(19)被害者は,同月12日,実母Gと同年3月16日から同月18日までの日程で,北海道旅行をする約束をした。 (20)被害者は,同年2月13日「被告人とは会っていない「母には明ら,。」,かにしていないが,同月17 2日,実母Gと同年3月16日から同月18日までの日程で,北海道旅行をする約束をした。 (20)被害者は,同年2月13日「被告人とは会っていない「母には明ら,。」,かにしていないが,同月17日に被告人と会って,被告人に対して,はっきりと別れ話をしようと思うなどとEに話したまた被害者は同月2。」,。 ,,5日の教習所での教習終了後にEと会う約束をした(Eは「同月13日以。 ,前には,被告人と別れたという話は聞いていない。また,同月10日にFが本命である旨告げられた際,私としては遊びのつもりで紹介したので,意外に思った」旨供述している。 。 。)(21)被告人は,被害者との関係に行き詰まりを感じており,同月13日ころ,。 ,,から自殺したいとの思いを有していたそして被害者とホテルに泊まり同人が眠っている間に首を吊って自殺しようなどと考えていた。 (22)被告人は,被害者から,しつこくするとストーカーと同じではないかと,,,「」言われたがこれに対し同月14日ストーカーでも何でも呼べば良いなどというメールを送った。 (23)被告人は,同月17日に会ったときは,被害者と交際を解消することになるという気持ちを持っており被害者に対し寝れない日曜日別れるまで,,「恋人を演じてもらえないですか? 2月14日最後の我が儘はミニデ」(),「(ニム)姿が観たいです(2月17日午前5時16分)などというメールを。」送信した。 2月17日に被告人と被害者が出会ってから同月19日本件ホテルに入るま での状況(1)被告人は同月17日金曜日夜京都市内のJR京都駅で被害者と落,(),ち合い,以後,本件までの間,被害者と行動を共にした。被告人は,被害者と落ち合ってから,そのま での状況(1)被告人は同月17日金曜日夜京都市内のJR京都駅で被害者と落,(),ち合い,以後,本件までの間,被害者と行動を共にした。被告人は,被害者と落ち合ってから,そのまま京都市内のラブホテルに泊まった。このころ,被告人は、被害者からネクタイを贈られた。 ,,,(2)被告人は同日午後10時から11時ころ同ホテル内で被害者が入浴中被害者の携帯電話を使って,Fに対し,前と同様の電話をかけ,自分が被害者と交際しているなどと述べたりした。Fは,被害者が自分と被告人のどちらと交際するかは被害者が決めることであると考えており,被告人の電話後も,被害者に連絡を取らなかった。 (3)被告人と被害者は翌18日土曜日は新大阪駅まで行き駅レンタ,()、,カーでレンタカーを借りて,兵庫県小野市内の自動車教習所へ行き,被害者は受講し,その後,2人で,姫路市内のレストランや飲食店に行くなどして過ごし,同日もラブホテルに宿泊した。更に翌19日(日曜日)は、小野市の自動車教習所へ一緒に行き,被害者は午前9時10分から12時まで教習を受けるなどしていた。なお,被害者は,同年3月26日には卒業予定であった。 ,,,,(4)同年2月19日昼ころ被害者はGに電話したがその際には被害者はGとの北海道旅行の話をするなどしており,自殺を示唆するような言動はなかった。 (5)被告人と被害者は,その後,新大阪駅近くのラブホテルIに入った。 ,,。 (6)被害者は同日午後11時までにC駐屯地に戻らなければならなかった同ホテルから同駐屯地まで,JRの駅に出て,電車で姫路駅まで行き(新快速で新大阪から約1時間そこからバスで約1時間かかる最終バスは姫路),(駅発午後8時30分)ため,従前会ったときは,午後6時ころに から同駐屯地まで,JRの駅に出て,電車で姫路駅まで行き(新快速で新大阪から約1時間そこからバスで約1時間かかる最終バスは姫路),(駅発午後8時30分)ため,従前会ったときは,午後6時ころに新大阪駅で被告人と別れて駐屯地に戻っていた。 (7)同日午後5時30分過ぎころIホテルを出た後被告人と被害者は一,,,緒にレンタカーで兵庫県伊丹市内のドラッグストアーへ行った。同日午後6時30分ころ,被害者は,Jドラッグストアにおいて,1人でレジへ行き,睡眠薬であるウット(12錠入り)を購入した。また,同日午後6時42分ころ,被告人と被害者は,Kドラッグストアにおいて,連れだって品物を選,,()。 ,びレジに行って鎮静薬であるレスティ72錠入りを買ったその際被害者がレスティを手にとって,レジで購入した。 (なお,レスティは,睡眠薬ではなく,過剰摂取しても身体に害はないが,睡眠薬と勘違いしている客が多いものであった。ウットは,100錠以上が致死量で,24錠で昏睡,6錠ならば多少眠気がする程度の効力があるが,市販薬では,2番目に強い睡眠剤であった)。 (8)被告人と被害者は同日午後6時54分ころ大阪府池田市内のBホテル,,312号室に入室した。 本件犯行及び犯行後の状況等(1)被告人は同月20日午前1時ころ上記ホテル312号室において殺,,,意をもって,被害者の頸部にネクタイを巻き付け,被害者の首を絞め,その結果,同女は窒息死した。 (2)同日午前7時55分ころ被告人はホテルの内線電話で従業員に対して,,人を殺したことを告げ,警察に通報するよう依頼した。同従業員の通報により駆け付けた警察官により,被告人は逮捕された。その際,被告人は,警察官に対し,心中しようとしたが死にきれず, 員に対して,,人を殺したことを告げ,警察に通報するよう依頼した。同従業員の通報により駆け付けた警察官により,被告人は逮捕された。その際,被告人は,警察官に対し,心中しようとしたが死にきれず,被害者に頼まれて同女を殺害した旨述べた。 被害者の遺体の状況(1)右頸部の表皮剥脱被害者の頸部には,全体で半周を超える,索条物によると思われる幅2ないし4cmの帯状の圧痕があり,右頸部の同圧痕内には,2.3cm×0. 4cmの範囲に,0.3cm×0.4cm以下の,5個の横状に並ぶ表皮剥脱,その前方には,1.2cm×0.6cmの大きさの表皮剥脱,その前下方に,5個のものより少し小さい4個の表皮剥脱が,認められた。 上記5個及び4個の表皮剥脱は,頭部から肩にかけて垂直方向に同じ高さで一直線上に並んでいた。5個の表皮剥脱は,索条痕の上縁(頭側の縁)に沿ってできていた。4個の表皮剥脱は,索条痕の内側にできていた。 索条痕の右頸部の部分は,皮膚がケバだった状態になっていた。 (2)左手首の創傷左前腕手関節部(左手首)には,3条の切創が認められた。橈側には,2条の切創が交差しており,横向き(血管と垂直方向)に1.5cm×0.3cmの大きさの切創,これと斜め方向に0.4cm×0.1cmの切れ込みに続く1.0cm×0.3cmの大きさの切創が認められた。正中やや内側には,尺側へ横向きに0.5cm×0.1cmの切れ込みに続く1.2cm×0.2cmの大きさの切創が認められた。創の深さはいずれも皮下で出血を伴っており,左手首の切創は,横向きのものは左側から右側へ,斜めのものは左上から右下へできたと推測された。また,切創には生活反応があり,心停止までに生じたものと認められた。 (3)被害者のオトガイ部分に,筋肉内出血があった。 ,。 (4)被害者の血中 斜めのものは左上から右下へできたと推測された。また,切創には生活反応があり,心停止までに生じたものと認められた。 (3)被害者のオトガイ部分に,筋肉内出血があった。 ,。 (4)被害者の血中からは三環系抗うつ剤について疑陽性反応が検出された胃の内容物には,粉末が認められた(被害者の死体を解剖したL医師は,胃の内容物に少量の薬があったことを肯定している。 。) 被告人の負傷状況,。 ,(1)逮捕後被告人の左前腕手関節部に3条の切創が認められたしかし死の危険はなかった。 (2)被告人の右頸部には,赤みを帯びた跡が見られた。 本件現場客室の状況等 本件当日に行われた実況見分によると,本件現場客室の状況は次のとおりであった。 (1)洗面台上に壊れたT字型安全カミソリや浴槽の縁に果物ナイフ及びカミソリの刃が置かれており,浴槽内に葡萄酒色の水がほぼ満水の状態で入っており,浴槽の縁や浴室出入口扉等にも血痕が付着していた。また,被害者の着用していたジーンズの裾が濡れていた。 (2)浴室内に設置されたサウナ室出入口扉にはちょうつがいがあり浴室出,,入口扉内側の衝撃防止ストッパーが下部方向に曲がり,同ストッパーと取り(),付け部分の裏側同扉表面の扉枠接合部分にひび割れが入っているなどの破損があった。 (3)ベッド上敷き布団には,大きく乱れた痕跡はなかった。 (4)客室内にはウット空き箱と空シートレスティ空き瓶は存在したが中,,,身は全くなくなっていた。 第3被告人の供述内容被告人は,犯行当時,被害者は死ぬことを同意していたとして,捜査段階及び当公判廷において,大要以下のとおり供述する。 ,,, 私は平成18年2月13日ころから被害者との関係に行き詰まりを感じ自殺しようという考えを持ってお ぬことを同意していたとして,捜査段階及び当公判廷において,大要以下のとおり供述する。 ,,, 私は平成18年2月13日ころから被害者との関係に行き詰まりを感じ自殺しようという考えを持っており,ホテルで被害者が寝ている間に首を吊って自殺しようなどと思っていた。 同月17日に,JR京都駅で被害者に会った際,被害者は,私に対し,腕を組んできたり甘えてきたりし,また,ネクタイをプレゼントするなどした。 このように,被害者が私のことを拒絶しているとは思えないような態度を取ることから,私は,自殺しようという気持ちが萎えてしまった。 私は,同月19日,午後6時にはレンタカーを返して,新大阪駅から姫路方向に帰る被害者と別れ,私は品川に向けて午後7時台の新幹線に乗るとの計画をしていた。これは,ふだんどおりであった。 私は,同日,被害者とラブホテルIに入って肉体関係を持った後,午後5時ころに,被害者に対し,今後の交際をどうするかについて尋ねた。すると,被害者は,母や姉のことを言って,退職後私のもとに来ることを暗に拒絶した。 その後,私が「死ぬ,死ぬと言ってたけど,結局,何もできなかった」と言,。 うと被告人は従前から口癖のように死にたいなどと被害者に言って(,,「。」いた被害者は一緒になられへんかったねと述べ続けて一緒にだ。),,「。」,,「ったら死んであげることができるよ」と言った。また「睡眠薬を飲んでリス。 ,トカットしたら血が抜けて気を失って死ねるやろう」とも言った。 。 私が驚いて何でなんと尋ねると被害者は私いつもこんなんや,,「。」,,「,。」。 ,,,,からと答えた私はこれまでの交際から被害者が衝動的な性格だからという意味でそのように答えたと思った と尋ねると被害者は私いつもこんなんや,,「。」,,「,。」。 ,,,,からと答えた私はこれまでの交際から被害者が衝動的な性格だからという意味でそのように答えたと思った。被害者が,それまで,死を口にしたことはなかった。 私は,ありがたいという気持ちで,被害者と心中することを決意した。 私と被害者は,同ホテルを出て,車で伊丹市内の薬局に赴き,睡眠薬を買った。 最初の店では,被害者が1人で店に入って睡眠薬を探し,途中から私も店に入ったが,被害者が1人でレジへ行き,12錠入りの薬を買った。これだけでは足らないと思ったので,2軒目の店へ行き,2人で店に入り,被害者が睡眠薬を探して2人でレジへ行き,72錠入りの薬を買った。 その後,私と被害者は,Bホテルの客室に入り,買ってきた睡眠薬を半分ずつ飲んだ後,カミソリで手首を切ったり,首を吊ろうとしたが,死にきれなかった。その後,私は,眠くなり,ベッド上で寝た。 同月20日午前零時ころ「この時間を過ぎると宿泊料金になる」旨のホテ,。 ルのフロントからの電話で目覚めた。そして,被害者と話したところ,被害者は「6時間経っても死なれへん」と言った。その後,30分くらい,私と被,。 害者は,風呂場の中で,首を吊ろうとした(被害者は,出入口ドアの上辺の当 。),。 たり止めにベルトを掛けて首を入れてぶら下がるなどしてが死ねなかったすると,被害者は,風呂場から出て行った。私は,被害者からプレゼントされたネクタイで首を吊ろうとしていたが,これを首に巻き付けたまま,被害者を追って,風呂場を出た。 被害者は,ベッドの上に仰向けに横たわり,胸の上で両手を組んで,私に対しそのネクタイで首絞めてと言った私が被害者に対し本当にええ,「。」。 ,,「んか」と確 て,風呂場を出た。 被害者は,ベッドの上に仰向けに横たわり,胸の上で両手を組んで,私に対しそのネクタイで首絞めてと言った私が被害者に対し本当にええ,「。」。 ,,「んか」と確認すると,被害者は「いいよ」と答えた。 。 ,。 そこで,私は,首に巻いていたネクタイを解いて,被害者の首に巻き付け,横からその身体の上に覆い被さるような格好で,被害者の首に巻き付けたネクタイの両端を力一杯引っ張って被害者の首を絞め,殺害した。 その間,被害者は,頭や身体をよじらせたりすることなく,何の抵抗もしなかった。 その後,私は,被害者の後を追って死のうと,ネクタイで首を吊ろうとしたり,カミソリで手首を切ったりしたが,死にきれず,朝になった。私は,ホテルのフロントに電話して,警察に通報するように依頼した。 第4被害者の同意についての判断以下において,①被告人と被害者が心中を図ったことをうかがわせる事実があったか否か②被害者が殺害について抵抗を示したと見られるか否か③被害者が,被告人に対する愛情を失っており,死ぬことに同意する事情がなかったか否か④被告人に被害者殺害の動機があるか否かなどの各争点について,検討する。 被告人と被害者が心中を図ったことをうかがわせる事実があったか否かについて(1)被害者は2月19日午後11時ころまでにC駐屯地に戻らなければなら, ず,そのためには,午後6時から7時ころまでには,新大阪駅からJRに乗車する必要があったのに,午後2時ころに入った新大阪駅近くのラブホテルIを午後5時30分過ぎに出て,午後6時30分ころから6時42分ころまでの間,伊丹市内のドラッグストアーで被告人とともに睡眠薬を購入し,当日被害者がC駐屯地に戻ることが事実上不可能となる午後6時54分ころに,池田市 過ぎに出て,午後6時30分ころから6時42分ころまでの間,伊丹市内のドラッグストアーで被告人とともに睡眠薬を購入し,当日被害者がC駐屯地に戻ることが事実上不可能となる午後6時54分ころに,池田市内のラブホテルBに入っている。 このように,3時間以上滞在していたラブホテルIを出て,睡眠薬等を2店舗で相当量購入し,帰営が不可能となる時間にもかかわらず,別のラブホテルBに再び入るという被告人及び被害者の行動は,被告人の前記供述(Iホテルにおいて,睡眠薬を飲んでリストカットして意識がないうちに失血死して心中するという話が出たことを前提にして了解できる行動であるな。)(お,ドラッグストアーの防犯カメラの画像からは,被告人が被害者を脅して同行させているような事情はうかがわれない。 。)検察官は,被告人は,本件以前から,被害者に対して物思いで眠れないないなどということをしばしば訴えていたのであり,被害者が2人の心中などとは全く無関係に,被告人のために鎮静剤を購入する必要性はあった旨主張する。 ,,,しかしこれから帰営しなければならない時間帯にレンタカーを返してそれぞれの帰営地に戻る起点となるJR新大阪駅とは反対方向のドラッグストアー2店舗に睡眠薬や鎮静剤を購入に行く必要は見出しがたい。 また,検察官は,被害者が,被告人をなだめるため睡眠薬を購入し,服用して見せた可能性を主張するが,関係各証拠に照らせば,被害者は1人でレジに行くなどしていることが認められ,また,被告人に圧迫を受けていれば助けを求めることも可能であったから,前記主張は憶測の域を出るものではない。 (2)本件当日の実況見分時にホテル客室内からはウットの空箱とレスティ,, の空瓶が発見されたものの,中身はなくなっていたこと,被害者の血中からは三環系抗うつ剤につい るものではない。 (2)本件当日の実況見分時にホテル客室内からはウットの空箱とレスティ,, の空瓶が発見されたものの,中身はなくなっていたこと,被害者の血中からは三環系抗うつ剤について疑陽性反応があり,遺体の胃中の内容物に粉末が認められたことなどは,Bホテルにチェックインした後,被告人と被害者は一緒に購入した睡眠薬等を服用したとの被告人の供述に符合する。 (3)被害者の左手首に生活反応のある3条の切創がありまたオトガイ部分,,に筋肉内出血があること,浴室出入口扉内側の衝撃防止ストッパーが下部方向に曲がり,同ストッパーと取り付け部分の裏側(同扉表面)の扉枠接合部分にひび割れが入り破損していることなどは,被害者が,同所で首吊り自殺を試みたとの被告人の供述と符合する。 (4)被害者の左手首に生活反応心臓が動いている状態での反応のある3条()の切創があり,これは,被害者が自らカミソリで手首を切ったとの被告人の供述と符合する。 なお,検察官は,被害者の左手首の切創は,手首に対して平行に(手首の血管に対して垂直に交差して)走っておらず,一般的に自殺を試みて手首を切ったことによりできる切創とは形状を異にしており,被害者が自ら手首を切ったのではない可能性がある旨主張する。 しかしながら,検察官の主張によれば,本件は被告人が心中を偽装したことになるが,前記のとおり,睡眠薬等の購入や被害者のオトガイ部分の筋肉内出血など他の事情を考慮すると,被告人がこれら全てを矛盾なく作話したとは考え難い。また,傷の方向についても,数時間経ってもなかなか死ねなかった被害者が出血を促すため,横向きの切創に加えて斜め方向にも手首を切った可能性もあり得るところである。よって,検察官の同主張は採用できない。 (5)被告人も自らの手首を切るなど自殺を か死ねなかった被害者が出血を促すため,横向きの切創に加えて斜め方向にも手首を切った可能性もあり得るところである。よって,検察官の同主張は採用できない。 (5)被告人も自らの手首を切るなど自殺を試みていることは被害者と心中,,しようとしたとの被告人の供述に符合する。 (6)以上(1)から(5)は被告人と被害者が心中を図ったことを前提として理解, し得るとともに,心中を図った旨の被告人供述に符合するものである。 被害者が殺害について抵抗したとみられるか否かについて(1)検察官は前記の表皮剥脱は被害者がネクタイを解こうとして抵抗して,,手指の爪により生じたことを推認させる旨主張する。 (2)この点についてL医師は検視時の遺体の写真を見て表皮剥脱は被,,,,害者が抵抗した可能性が高いとの見解を証言している。 しかしながら,右頸部の表皮剥脱はいずれも索条痕の内側にあるところ,最も範囲が広い5個の表皮剥脱でも,2.3cm×0.4cmの範囲内に,5個が並んでおり,被害者が小柄な女性であることを考慮しても,人の手の大きさからみて,これらが手指の爪によって生じたとは考えられない。 手指の先を寄せたり,数回にわたり爪を動かしたりすれば,数個の表皮剥脱が前記範囲に生じうるとしても,傷が同じ高さで一直線上に並んでいる点と矛盾する。 したがって,被害者の手指の爪によって前記表皮剥脱が生じたとみることは困難である。 (3)以上に加えて被害者が抵抗したとすれば頸部の索条物をほどくため両,,手を使うなどして,前頸部や手指等にも表皮剥脱等があることが多いとみられるところ,被害者の前記表皮剥脱は右頸部に限局されており,この点はM医師が供述するように,右利きの被告人が被害者の前方から,同人の後頸部でネクタイを交差させ締め も表皮剥脱等があることが多いとみられるところ,被害者の前記表皮剥脱は右頸部に限局されており,この点はM医師が供述するように,右利きの被告人が被害者の前方から,同人の後頸部でネクタイを交差させ締め付けた際,右頸部に最も力が加わって,同部に擦過等による表皮剥脱が生じた可能性は否定できない(なお,M医師は,表皮剥脱は,ネクタイの上縁がよれて生じた可能性がある旨供述している。 。)また,抵抗したためベッドが乱れた跡が残るなどの,他の抵抗したことを認めるに足りる証拠は存しない。 結局,被害者が抵抗した事実は認めることができない(もっとも,被害者が殺されることに同意したとしても,首を絞められた際に苦しさのあまり反 ,,射的に抵抗することもあり得るから若干の抵抗の可能性があったとしても直ちに同意を否定させるものではない。 。) 被害者が,被告人に対する愛情を失っており,死ぬことに同意する事情がなかったか否かについて(1)検察官は被害者は既に被告人に対する愛情を失っていた上被害者は2,,種々の予定を立てていたこと,被害者は今回被告人月20日以降についてもと会うのを最後に被告人と別れるつもりであったこと,Fとの交際も順調であったこと,被害者は2月19日夕方まで自殺を言い出したことはなかったからすれば,被害者には自ら積極的に死を決意する理由はなかったことなど旨主張する。そして,被害者から心中を持ち掛けたとの被告人の供述は,不自然で信用できない旨主張する。 (2)この点確かに前記認定事実及び関係証拠を精査しても本件以前に被,,,害者側には死を望むような事情は全く認められない上,前記のとおり,被害者は,Fと交際し,同人への愛情を深める一方,被告人とは,平成17年12月23日以降は,交際解消を求めており,平成18年2 ,,害者側には死を望むような事情は全く認められない上,前記のとおり,被害者は,Fと交際し,同人への愛情を深める一方,被告人とは,平成17年12月23日以降は,交際解消を求めており,平成18年2月17日の段階では,被害者,被告人ともども,今回の逢瀬が最後になるとの予想のもとに会ったものであると認められるなお被告人は最後との点について京(,,「」,「都で会うのは最後という意味である」などと供述するが,明らかに不合理であって採り得ないから被害者の被告人に対する愛情は相当程度冷めて。),,いたことも明らかである。 したがって,被害者が,帰り支度をしている最中に,唐突に心中を提案してきたとする被告人の供述は不自然さが否めず,そこに至る経過や被告人の被害者への働きかけについて,被告人が全てを明らかにしているかは疑問がある。 しかしながら,(3)①被害者は,被告人と,平成18年2月17日から本件に至るまで丸2日 間以上ほぼ行動をともにし,その間,ラブホテルに宿泊していること②被害者は,同月5日,被告人のために,ネクタイを購入しているが,同日手帳に被告人に対する不満をつづりつつそんなんなのにかわいい,,,「ネクタイ見つけて買ってしまった」と記載しており,被告人に対する苛立ちや不満を感じる一方で,なお被告人に対する愛情も捨てきれないでいたことがうかがえること③Fとの交際も,E供述によれば,被害者もFも未だ互いに交際が本気か否か直接に確認できない状態であり,また,上記①の期間中相互に全く連絡を取り合っていないなど,Fへの被害者の気持ちに淡泊さがうかがえること等にかんがみると,被害者に,被告人に対する愛情が若干残っていたことは否定しがたい(なお,検察官は,ネクタイは,実母への無言電話をかける っていないなど,Fへの被害者の気持ちに淡泊さがうかがえること等にかんがみると,被害者に,被告人に対する愛情が若干残っていたことは否定しがたい(なお,検察官は,ネクタイは,実母への無言電話をかけるなどの行為をしてくる被告人をなだめようとして購入し,被告人に贈ったものである旨主張するが,前記手帳の記載からは,愛情を捨てきれず葛藤する被害者の心情がうかがえるのであって,同主張をそのまま採用することはできない。 。)(4)そしてこのように被害者は被告人に対する愛情が全くなくなっていた,,とまではいえない上,以前にも自殺未遂をしたことがある被告人が「死ぬ死ぬなどと被害者の同情を誘う言動をしかつ今回の逢瀬が最後であると。」,,いう気持ちのなかで,2日間にわたって行動をともにし,別離の時間が迫っている状況のもとで,心優しく人の言うことや思うことに合わせようとしてしまう行動傾向がある被害者が,別離後の自殺をほのめかしていた被告人に同情して一緒にだったら死んでもいいという消極的な形で心中に同意,「」,したことも全く考えられないわけではない。 被告人に被害者の同意がなくても被害者を殺害する動機があるか否かについて 検察官は,被告人は,①1人D駐屯地に異動させられたこと,②別居している妻との仲は事実上破綻していたこと,③交際のために借金もしていたこと,④一方的に別れを告げられ納得いかなかったこと,⑤被害者1人幸せになるのは許せないこと,⑥周囲を見返してやりたいことなどから,被害者を殺して自分も死のうとの思いで,被害者の同意なく,被害者を殺害する動機があった旨主張する。 そして,関係各証拠及び前記認定事実によれば,上記①ないし④の事実が認められ,また,被告人が⑤,⑥のような気持ちを抱いていたということも想定でき 同意なく,被害者を殺害する動機があった旨主張する。 そして,関係各証拠及び前記認定事実によれば,上記①ないし④の事実が認められ,また,被告人が⑤,⑥のような気持ちを抱いていたということも想定できないわけではない。 小括以上によれば,被害者の同意がなくとも,被告人が被害者を殺して自己も死ぬという無理心中を図ろうとすることは,可能性としては想定できないものではない。 しかし,前記のとおり,①被告人と被害者は,合意の上で心中を図ったことをうかがわせる客観的事実が認められること,②被害者が本件殺害の際に抵抗したとは認められないこと,③被害者が本件当時死ぬことに同意する可能性は全くなかったとはみられないことが認められ,これらの諸点に照らすと,検察,。 官の主張する事実は被害者の同意の存在を否定せしめるものとはみられない,,,以上を総合すると被告人の供述は心中を決めるに至った経緯等について全面的に信用できない部分はあるものの,被害者が被告人と一緒に自殺しようとして自己の死についても承諾したこと,及び,その延長として本件犯行が行われたという供述の主要部分については,その信用性を否定することはできない。 第5 結論 よって,被告人の前記供述やこれを裏付ける客観証拠を併せ考慮すれば,被害者が殺害されることを承諾していなかったと認定するには,合理的な疑いが 残る。 そして,被害者は,被告人とともに,睡眠薬等を購入し,これを服用していること,カミソリで手首を切っていることなどに照らすと,被害者が被告人からネクタイで頸部を絞められる際の承諾が真意でなかったものとみることはできない。 また,前記のとおり,被告人は,被害者と会うについて,ある程度圧力をかけたものとみられるものの,威迫や欺罔によって被害者に死を承諾させたものとまでは見られない。 なかったものとみることはできない。 また,前記のとおり,被告人は,被害者と会うについて,ある程度圧力をかけたものとみられるものの,威迫や欺罔によって被害者に死を承諾させたものとまでは見られない。 したがって,本件では,被告人は,被害者の承諾を得て同女を殺害したと認定できるから,殺人罪は成立せず,同意殺人罪(刑法202条後段)が成立する。 第6自首の成否について既に述べたとおり,被告人は同意殺人の罪を犯したのであるから,普通殺人の罪を犯しながら,同意殺人の罪しか犯していない旨警察官に虚偽に申告をしたという検察官の主張は前提を欠き,採り得ない。 したがって,被告人には,自首が成立する。 (法令の適用)罰条刑法202条後段刑種の選択懲役刑未決勾留日数の算入刑法21条没収刑法19条1項2号,2項本文訴訟費用の不負担刑事訴訟法181条1項ただし書(量刑の理由)本件は,被告人が,不倫関係にあった被害者の承諾を得て,同女を絞殺したという同意殺人の事案である。 被告人は,不倫関係にあった被害者から交際解消を求められていながら,執拗に ,,,電話やメールを送っていわば圧力をかけて被害者とようやく会える状況を作りさらに「死にたい」などと繰り返していたところ,最後の逢瀬で,被害者が被告,。 人と一緒に死ぬことを承諾するや,被害者より20歳近く年長であり人生経験を経,,てきた者でありながらほとんどためらうこともなく同女を殺害したものであってその動機に同情の余地はない。被害者自身には,死ぬべき理由は全くなかったとみられるところ,被害者は,心優しく人の言うこと(思うこと)に合わせようとしてしまう行動傾向があり,自分を離したくないとの強い思いを抱いている被告人が,自分と別れることになった最後の別れの時に,被告人に対す ところ,被害者は,心優しく人の言うこと(思うこと)に合わせようとしてしまう行動傾向があり,自分を離したくないとの強い思いを抱いている被告人が,自分と別れることになった最後の別れの時に,被告人に対する同情や憐れみの気持ちから,被告人のために消極的に死を受容したものとみられ,被害者自身が積極的に死を望んでいた場合と異なり,同意殺人の事案としては,本件の犯情は特に重いというべきである。被害者は,22歳と若く,健康状態も良好で,翌月には実母と北海道旅行をすることを楽しみにしていた上,自衛隊退職後の生活設計も立て,今後長い人生を歩んでいくはずであったのに,その生命を失ったのであって,被告人の犯行の結果は,取り返しのつかない重大なものである。実母をはじめ,遺族や関係者に与えた悲しみや衝撃は言葉に言い表し難く,遺族が被告人に対する厳しい処罰を求めるのも当然である。 以上の諸事情にかんがみれば,被告人の刑事責任は同意殺人罪の中では最も重い範ちゅうのものといえる。 してみると,本件において自首が成立していること(ただし,本件の経緯に照らすと,被告人の自首はその刑責を大きく減少せしめるものとはみられない,被告。)人は前科前歴がなく,これまで長年自衛官として勤務してきていること,被告人が被害者の生命を奪ったことについて反省の態度を示していること,懲戒免職となるなど社会的制裁を受けていること,元妻が,子らと共に被告人の帰りを待ち,社会復帰後の更生に協力する旨述べていることなど,被告人のために酌むべき事情を考慮しても,被告人を主文の刑に処するのが相当であると判断した。 (求刑懲役15年,主文同旨の没収) 平成18年8月15日大阪地方裁判所第8刑事部裁判長裁判官横田信之裁判官内田貴文裁判官大伴慎吾 主文 (求刑懲役15年、主文同旨の没収) 理由 平成18年8月15日大阪地方裁判所第8刑事部裁判長裁判官横田信之裁判官内田貴文裁判官大伴慎吾

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