主文 1 原告の被告国立市長に対する訴えをいずれも却下する。 2 被告国立市は、原告に対し、4億円及びうち3億5000万円に対する平成12年2月1日から、うち5000万円に対する平成13年3月6日から、いずれも支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 原告の被告国立市に対するその余の請求のうち、金員請求に関する部分を棄却し、その余の請求に係る訴えをいずれも却下する。 4 訴訟費用は、原告に生じた費用のうち、補助参加に対する異議申出によって生じた費用は原告の負担とし、その余は被告らの負担とし、被告ら及び補助参加人らに生じた費用は、それぞれ各自の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 甲事件(1) (主位的請求)被告国立市が平成12年1月24日付けで告示した「中三丁目地区地区計画」及び同年2月1日付けで公布施行した「国立市地区計画の区域内における建築物の制限に関する条例の一部を改正する条例」(平成12年国立市条例第1号)のうち、建築物の高さの最高限度を20メートルとする部分はいずれも無効であることを確認する(以下「請求1」という。)。 (2) (予備的請求)被告国立市が平成12年1月24日付けで告示した「中三丁目地区地区計画」及び同年2月1日付けで公布施行した「国立市地区計画の区域内における建築物の制限に関する条例の一部を改正する条例」(平成12年国立市条例第1号)のうち、建築物の高さの最高限度を20メートルとする部分をいずれも取り消す(以下「請求2」という。)。 2 乙事件(1) (主位的請求)被告国立市長が平成12年1月24日付けで告示した「中三丁目地区地区計画」及び同年2月1日付けで公布した「国立市地区計画の区域内における建築物の制限に関する条例の一部を改正する条例」(平成12年国立市条例第1号 が平成12年1月24日付けで告示した「中三丁目地区地区計画」及び同年2月1日付けで公布した「国立市地区計画の区域内における建築物の制限に関する条例の一部を改正する条例」(平成12年国立市条例第1号)のうち、建築物の高さの最高限度を20メートルとする部分はいずれも無効であることを確認する(以下「請求3」という。)。 (2) (予備的請求)被告国立市長が平成12年1月24日付けで告示した「中三丁目地区地区計画」及び同年2月1日付けで公布した「国立市地区計画の区域内における建築物の制限に関する条例の一部を改正する条例」(平成12年国立市条例第1号)のうち、建築物の高さの最高限度を20メートルとする部分をいずれも取り消す(以下「請求4」という。)。 3 丙事件(1) 被告国立市は、原告に対し、4億円及びこれに対する平成12年2月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え(以下「請求5」という。)。 (2) 被告国立市長が平成12年2月1日付けでした「国立市地区計画の区域内における建築物の制限に関する条例の一部を改正する条例」(平成12年国立市条例第1号)の公布行為が無効であることを確認する(以下「請求6」という。)。 (3) 被告国立市長が平成12年2月1日付けでした「国立市地区計画の区域内における建築物の制限に関する条例の一部を改正する条例」(平成12年国立市条例第1号)の公布行為を取り消す(以下「請求7」という。)。 第2 事案の概要被告国立市が都市計画法20条に基づき平成12年1月24日付けで告示した「中三丁目地区地区計画」(以下「本件地区計画」という。)及び被告国立市長が建築基準法68条の2に基づく建築物の制限に関する条例として同年2月1日付けで公布した「国立市地区計画の区域内における建築物の制限に関する条例の一部を改正 本件地区計画」という。)及び被告国立市長が建築基準法68条の2に基づく建築物の制限に関する条例として同年2月1日付けで公布した「国立市地区計画の区域内における建築物の制限に関する条例の一部を改正する条例」(以下「本件条例」という。)のうち、建築物の高さの最高限度を20メートルとする部分が、原告のマンション建築計画を妨害する意図でされた点等において違法なものであるとして、甲事件において被告国立市に対し、乙事件において被告国立市長に対し、それぞれ抗告訴訟として本件地区計画及び本件条例の無効確認(主位的)又は取消し(予備的)を求めるとともに、予備的に当事者訴訟(行政事件訴訟法4条)又は無名抗告訴訟としての無効確認を求め、丙事件において、被告国立市に対しては、本件地区計画の決定及び本件条例の制定により原告は損害を被ったとして、原告所有不動産の価値下落分少なくとも4億円のうち3億5000万円及び信用毀損(被告らが議会での発言やマスコミ報道により原告のマンションが違法建築となった旨宣伝したことにより原告の信用が毀損されたとするもの)による損害1億円のうち5000万円の合計4億円の損害賠償金及びこれに対する平成12年2月1日から民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を請求し、さらに被告国立市長に対して、本件条例の公布行為の無効確認(主位的)又は取消し(予備的)を求める事案である。 1 法令の定め(1) 都市計画法(昭和43年法律第100号、ただし、平成11年法律第87号による改正前のもの、以下同じ。)の定めア都市計画法12条の4第1項1号は、都市計画区域については都市計画に必要な地区計画を定めるものとしているところ、地区計画は、市町村が決定する都市計画において、当該都市計画区域内の一体として整備及び保全を図るべき区域につき、その区域の 市計画区域については都市計画に必要な地区計画を定めるものとしているところ、地区計画は、市町村が決定する都市計画において、当該都市計画区域内の一体として整備及び保全を図るべき区域につき、その区域の範囲を特定して(同第2項)、道路、公園等の地区施設、建築物等の整備並びに土地利用に関する計画(地区整備計画)を定めるもので(同法12条の5第1項及び2項)、地区整備計画においては、地区計画の目的を達成するため必要な地区施設の配置及び規模、建築物の用途・敷地、建築物等の高さの最高限度等に関する制限が定められる(同法12条の5第3項ないし8項)。 イ市町村の定める地区計画についての都市計画は、その旨を告示することにより、その効力を生じる(同法20条1項、3項)。なお、市町村が地区計画を定める場合には、都市計画法施行令(昭和44年政令第158号、ただし、平成11年政令第352号による改正前のもの、以下同じ。)14条の2所定の事項について都道府県知事の承認を受けなければならないとされてるが、そのような事項を含まない地区計画についてはその承認を経ずに定めることができる(同法19条1項、2項)(2) 建築基準法の定めア市町村は、都市計画法12条の4及び5の規定に基づく地区計画が定められており、かつ地区整備計画も定められている区域について、当該区域内の建築物の敷地、構造、建築設備又は用途に関する事項で地区計画で定められたものにつき、条例の定めによって制限を加えることができる(建築基準法68条の2)。 イ建築基準法及び同法に基づく条例等の規定の施行又は適用の際現に存する建築物又は現に建築の工事中の建築物が、これらの規定に適合せず又は適合しない部分を有する場合においては、当該建築物又はその部分に対しては、当該規定は、適用されない(建築基準法3条2項)。 に存する建築物又は現に建築の工事中の建築物が、これらの規定に適合せず又は適合しない部分を有する場合においては、当該建築物又はその部分に対しては、当該規定は、適用されない(建築基準法3条2項)。 2 前提事実(次の事実は、括弧内に認定根拠を掲げた事実のほかは、当事者間に争いのない事実である。)(1) 原告は、不動産の売買、仲介、賃貸、管理及び鑑定に関する業務等を目的として設立された株式会社であって、東京都国立市内に別紙物件目録1記載の各土地(以下「本件土地」という。)を所有し、同土地上に同目録2記載の建築物(以下「本件建物」という。)の建築を計画していたものである。 (2) 被告国立市は、本件土地をその区域内に含む地方公共団体であり、被告国立市長は、被告国立市の市長である。 (3) 原告は、平成12年1月5日、本件建物の建築につき建築確認を受け、同日、本件土地を掘削する根切り工事を開始した(甲35、弁論の全趣旨)。 (4) 被告国立市は、平成12年1月24日、都市計画法19条に基づき、東京都国立市中三丁目地内(以下「本件地区」という。)について、その名称を中三丁目地区地区計画とする本件地区計画を決定し、同日、同法20条2項に基づき、本件地区計画を告示した。 本件地区計画は、その目標として、都市基盤が整備された地区において、低中層住宅地区及び学園地区の環境を維持保全し、大学通り沿道の都市景観に配慮した街づくりを形成することを目的とすることを定めている(甲1)。 大学通りとは、JR中央本線国立駅からJR南武線谷保駅へと南に直線的に延びる都道146号線「国立停車場・谷保線」の通称であり、高さ約20メートルのイチョウ及び桜が植樹されている幅約44メートルの並木道である(甲20)。 本件地区計画においては、地区整備計画が定められており、同整備計画 線「国立停車場・谷保線」の通称であり、高さ約20メートルのイチョウ及び桜が植樹されている幅約44メートルの並木道である(甲20)。 本件地区計画においては、地区整備計画が定められており、同整備計画において、本件地区は、低層住宅地区1、同2、中層住宅地区、学園地区に区分され、建築物等の高さの最高限度が、それぞれ、低層住宅地区2については10メートル以下、中層住宅地区及び学園地区のうち、第一種低層住居専用地域(都市計画法8条1項1号)を除く地区について、20メートルとされている。第一種低層住居専用地域においては、建築物等の高さの最高限度がもともと10メートル又は12メートルとされており(建築基準法55条)、低層住宅地区1については、その全部が第一種低層住居専用地域に指定されている(甲1)。 (5) 国立市においては、建築基準法68条の2に基づく条例として、国立市地区計画の区域内における建築物の制限に関する条例(平成11年国立市条例第30号。平成11年12月24日公布、平成12年1月1日施行。以下「本件建築条例」という。)が定められていたが(甲3)、被告国立市長は、国立市議会に対し、平成12年1月31日、本件条例案を議案として提出し、同市議会は、同月31日、本件条例案を可決し、被告国立市長は、同年2月1日、本件建築条例を改正する本件条例を公布し、本件条例は同日施行された。本件条例は、本件地区計画に定められたとおり、本件地区の建築物の地盤面からの高さが、低層住宅地区2においては10メートル以下、中層住宅地区及び学園地区(第一種低層住居専用地域を除く。)においては20メートル以下に制限している(7条、甲2)。 3 争点(1) 請求1ないし4、6及び7に係る訴えの適法性(争点1)(2) (請求1ないし4、6及び7につき)本件地区計画並びに本件条 。)においては20メートル以下に制限している(7条、甲2)。 3 争点(1) 請求1ないし4、6及び7に係る訴えの適法性(争点1)(2) (請求1ないし4、6及び7につき)本件地区計画並びに本件条例及びその公布行為の適法性・有効性(争点2)(3) (請求5につき)被告国立市の責任原因(争点3)(4) (請求5につき)原告の損害(争点4) 4 争点に対する各当事者の主張(1) 争点1(請求1ないし4、6及び7に係る訴えの適法性)について(原告の主張)ア抗告訴訟としての適法性(主位的主張)(ア) 本件条例及び本件地区計画は、法令ないし一般処分(以下「法令等」という。)であるが、法令等自体が抽象的な内容でなく具体的な特定の内容をもっている場合、又は法令等の内容自体は抽象的であるが、その直接の効果として個人の具体的権利義務に影響を与える場合には、これを対象とする争訟を法律上の争訟ということができ、それによって直接国民の権利や重大な生活上の利益が害され、しかも他に適切な救済手段がないようなときには、国民の権利利益の救済を図る見地から法令等に対する司法的統制の手段を保障することが必要である。 (イ) 本件条例は、法令の形式を採っているものの、対象地域が約13.5ヘクタールと小さく、最大の地権者である学校法人桐朋学園(以下「桐朋学園」という。)及び原告の建築物以外の建築物は約50棟にすぎず、その敷地は対象区域全体の約10パーセントにすぎない。本件条例は、施行されることによって、この特定少数の者に対し、その施行の時点以降絶対高さ20メートルを超える建築物の新築・増築等を禁止するという具体的権利義務に直接影響を与える効果を生じる。 これは、本件地区計画についても同じで、その対象建築物は約50棟で、具体的な権利義務関係に直接影響を受ける権利者は実質 の新築・増築等を禁止するという具体的権利義務に直接影響を与える効果を生じる。 これは、本件地区計画についても同じで、その対象建築物は約50棟で、具体的な権利義務関係に直接影響を受ける権利者は実質的に原告だけであり、本件地区計画による権利制限が不特定多数者に対する一般的抽象的な制限であるとは到底いうことができず、少数特定の者に対する具体的な制限である。 しかも、上記の者らのうち、戸建住宅及びその敷地の所有者らは、その敷地の面積からいって絶対高さ20メートルを越える建築物を将来とも建築する可能性も必要性もなく、本件建築条例によって、桐朋学園については被告国立市長が建築物の高さ制限を撤廃することができるようになっており、結局本件条例によって直接強い建築制限を受けることになるのは原告のみである。このことから、本件地区計画及び本件条例は、原告の本件建物の建築を妨害し、不可能にする目的で、狙い撃ち的に決定又は制定されたものであることが明らかである。 また、原告の場合は、本件条例施行以前に本件建物について建築確認処分を受けて本件建物の建築に着工しており、今後建築確認の拒否処分がされる余地がないから、建築確認拒否処分の取消訴訟の前提問題とするなどして本件地区計画及び本件条例の効力を争うことができず、直接本件地区計画及び本件条例自体の無効・取消しを求める訴訟以外にこれを争うべき適切な救済手段を有しない。 (ウ) 原告は、本件条例の施行前に絶対高さ20メートル以上の本件建物について東京都建築主事の建築確認を受け、かつ、その建築を着工したのであるから、本件建物を適法に建築し完成することができる。しかし、建築基準法3条3項3号により、本件建物について将来新築、増築、改築、大規模な修繕又は大規模な模様替えの工事を行う場合には、改めて本件条例の定める建築制限が 適法に建築し完成することができる。しかし、建築基準法3条3項3号により、本件建物について将来新築、増築、改築、大規模な修繕又は大規模な模様替えの工事を行う場合には、改めて本件条例の定める建築制限が適用され、その機会に、本件建物の所有者は、本件建物の絶対高さを従来の44メートルから20メートルまで下げなければならない義務を負う。すなわち、本件建物は、本件条例の施行後はその建築制限に不適格な建築物(既存不適格建築物)となるから、今後の本件建物の増改築や建替えを行う場合には、その機会に高さを大幅に低めて6階の建築物としなければならない。よって、原告は、本件地区計画及び本件条例によって、直接かつ重大な具体的権利利益の侵害を被る。 以上により、本件地区計画及び本件条例は、抗告訴訟の対象たる処分と解すべきである。 イ請求1及び3の当事者訴訟としての適法性(予備的主張)(ア) 本件地区計画及び本件条例は、それぞれ一般処分及び法令の形式を採っているが、前記のとおり、これらは対象地域内の建築物の高さ制限を具体的に規定し、原告個人の権利義務に直接変動を及ぼす内容のものであるから、その無効確認の請求は具体的な法的紛争として法律上の争訟に当たる。 (イ) 原告は、被告らが主張する建築物の高さ制限への服従を拒否しているのであるから、自らの法律上の地位の不安定を解消するために、被告らに対する請求を現在の法律関係に関する訴えの一種である当事者訴訟として本件地区計画及び本件条例の無効確認の訴えを提起することができる。本件においては、過去の法的行為たる本件地区計画及び本件条例の無効を判決で確認することが紛争の包括的・抜本的解決をもたらすことになるからである。 (ウ) 原告は、本件地区計画及び本件条例の無効確認判決を受けることによって、原告の法的地位について生ずる危 条例の無効を判決で確認することが紛争の包括的・抜本的解決をもたらすことになるからである。 (ウ) 原告は、本件地区計画及び本件条例の無効確認判決を受けることによって、原告の法的地位について生ずる危険ないし不安を除去することができるところ、現に被告らは、本件地区計画及び本件条例を原告に適用し、本件建物の高さを20メートル以下にするよう強く求めているのであるから、原告にとって本件地区計画及び本件条例の無効の即時確定の現実的必要が存する。 (エ) よって、請求1及び3は、仮に抗告訴訟として不適法であるとしても、当事者訴訟としての無効確認訴訟として適法である。 ウ請求1及び3の無名抗告訴訟としての適法性(予備的主張)(ア) 本件建物は、前記のとおり、既存不適格建築物として扱われるに至ったが、既存不適格建築物はあくまでも適法建築物であるから、特定行政庁が是正措置命令を発することはあり得ず、したがって、原告が同命令に対し事後的に訴訟を提起してその前提問題として本件地区計画及び本件条例の効力を争うことによって、違法無効な本件地区計画及び本件条例から救済される途はない。さりとて、この事態を放置すれば、本件建物が完成しても、社会的に既存不適格建築物扱いをされるために、分譲がすこぶる困難になるばかりでなく、分譲価格を相当程度下げざるを得ないことになる。また、原告は、社会的信用を著しく毀損され、他の事業においても重大な悪影響を受ける。この結果、原告は、企業としての存立に関わる重大な損害を被るおそれがある等無名抗告訴訟の適法要件としての特別の事情があるといわなければならない。 (イ) 無名抗告訴訟の適法要件として「他に適切な救済手段が存しないこと」が必要となると解したとしても、現在の法律関係に関する訴えである当事者訴訟の提起によっては原告の法的地位は救済され ならない。 (イ) 無名抗告訴訟の適法要件として「他に適切な救済手段が存しないこと」が必要となると解したとしても、現在の法律関係に関する訴えである当事者訴訟の提起によっては原告の法的地位は救済されない。一般に条例は対世効を有するところ、原告と被告国立市(ないし被告国立市長)との間の当事者訴訟の判決は第三者を拘束せず、顧客との関係における原告の損害を防止し又は回復せしめる効果をもたらさないからである。 (ウ) よって、請求1及び3は無名抗告訴訟としての無効確認訴訟として適法である。 (被告らの主張)ア本件条例及び本件地区計画の処分性の欠如(ア) 条例は、地方自治体の議会の議決により成立するが、地方公共団体の議会は住民により公選された議員によって構成される議決体であり、立法作用を行う機関であって、行政作用を行う行政庁ではない。したがって、行政主体でない地方自治体の議会の制定した条例は、抗告訴訟の対象とならない。 地方自治体の議会を行政庁ということは、条例の制定方式とも合致しない。行政庁とは、「国又は公共団体の意思を決定表示する権限を有するもの」をさすところ、条例は、地方自治体の議会の議決により成立するが、条例を外部に通知するのは地方自治体の長であり、条例について、行政庁に当たる存在はない。 (イ) 本件建築条例は、その制定を認めている建築基準法上行政処分としては位置づけられておらず、また、実際の内容も行政処分としての性格を有していないので、抗告訴訟の対象にならない。 本件建築条例は、12条で同条例の各規制に違反した場合の刑罰を定めており、これは建築基準法102条に従って行政罰の構成要件を定めているものであるところ、刑罰法規については、罪刑法定主義により、いかなる行為についていかなる刑罰が定められるかは、あらかじめ一般抽象的規範である法 は建築基準法102条に従って行政罰の構成要件を定めているものであるところ、刑罰法規については、罪刑法定主義により、いかなる行為についていかなる刑罰が定められるかは、あらかじめ一般抽象的規範である法規で定められなければならず、個別具体的に権利義務を規律する行政処分として定めることは許されない。 したがって、本件建築条例及びこれを改正する本件条例の各規定は法規であって、行政処分ではない。 (ウ) 本件建築条例及び本件条例により、適正かつ合理的な土地利用を図り、良好な都市環境を確保することを目的として、地区整備計画区域内における建築物が一部制限されることになるが、これは、まさに一般的、抽象的な制限であり、およそ特定個人の具体的な権利義務や法的地位に直接影響を及ぼすものではないし、特定の個人に向けられた法の執行行為にも当たらない。現実に本件条例の対象区域内の建築物が制限されることになるのは原告だけでないことは明らかであり、本件条例が特定個人に向けられたものでないことも明らかである。 しかも、仮に本件条例に違法性があるとしても、対象者は建築確認処分を拒否された機会に同確認拒否処分の取消訴訟を提起し、その前提問題として本件条例の違法を主張すれば足りるのであって、本件条例自体の無効確認又は取消しを求める必要性はない。原告は、本件建物の建築につき、本件条例施行前に建築確認処分を受けているが、本件条例の施行前に建築工事に着工していないのであるから、建築確認申請をやり直す必要があると被告らは考えており、したがって、原告が本件条例の違法を主張するのであれば、その際に申請に対する処分を争えば足りる。原告は本件条例施行前に建築工事に着手していると主張しているが、仮に原告の主張どおりとすると、原告は本件建物を建築しても本件条例に違反するということにはならないので に申請に対する処分を争えば足りる。原告は本件条例施行前に建築工事に着手していると主張しているが、仮に原告の主張どおりとすると、原告は本件建物を建築しても本件条例に違反するということにはならないのであるから、原告の主張自体から本件条例自体の無効確認又は取消しを求める訴えの利益がないことが明らかである。 (エ) 本件地区計画は、対象面積が約13.5ヘクタールであり、その中に広大な敷地を有している桐朋学園が存在するので、地権者数は面積の割には多くはないが、地権者数が一般の地区計画の規模に比べ著しく範囲が狭いということはできないし、面積的にも国立市の他の地区計画と比べて平均的な大きさであって、他の都市の地区計画と対比しても、本件地区計画が数値的に小さすぎるというような状況にはなく、ことさら特定の土地だけをターゲットにしたという原告の主張は事実に反している。 本件地区計画の対象地域内には、潜在的に現在の地域性に反した高層建築が計画される可能性が一般的に存在しており、これをコントロールするための地区計画の規制は決して原告だけに適用されるものでないことは明らかである。 (オ) 被告らは、前記のとおり、本件建物の建築については本件条例による新しい規制が適用されるべきであると考えるが、この点に関する建築基準法上の判断権限は東京都にあって、被告らには判断権限がなく、現時点では東京都は建築行為に対する中止命令等の対応をすることなく、原告は建築工事を進めているので、本件建物の建築についてされた建築確認が有効であるとの原告の主張を前提にすると、原告は、本件地区計画の内容と無関係に確認済みの本件建物の建築が行政法規上可能ということになり、法律上何ら救済すべき利益はない。 本件建物が原告の主張するように本件条例施行前に着工しているのであれば、通常の法改正による既 容と無関係に確認済みの本件建物の建築が行政法規上可能ということになり、法律上何ら救済すべき利益はない。 本件建物が原告の主張するように本件条例施行前に着工しているのであれば、通常の法改正による既存不適格建築物ということになり、その置かれる状況は、一般的な用途地域の変更や建築基準法の内容変更に伴い、事後的にその時点の法規には適合しなくなったケースと何ら変わるところがない。 原告の主張する今後の増改築又は新築の際の地区計画の制限による権利侵害は、漠然とした可能性にすぎず、その不利益については、特定の建築計画が出てきて建設可能な具体的計画が定まらない限りは判断不可能であり、このような不確定な将来の不利益を理由として、抽象的な地区計画について処分性を認めることはできない。 原告は、現時点で本件地区計画の効力について争いたいのであれば、建築確認の申請を出し直して、その中で違法性を争うことが可能であり、自ら既に取得した建築確認を有効と主張して建築行為を進めている原告には、何ら法廷において争う場が与えられなくとも特段の不利益は生じない。 イ本件条例の公布行為の処分性の欠如(被告国立市長の主張)法令の公布は、既に一定の内容をもって成立している法令を周知させるためこれを外部に表示する行為であり、法令の制定行為に対する付随的なものにすぎないから、法令の公布行為のみをとらえてこれを独立に抗告訴訟の対象とすることはできない。 したがって、原告の被告国立市長に対する請求6及び7は不適法であって却下されるべきである。 ウ当事者訴訟としての対象性の欠如(ア) 本件条例の無効確認を求めることは、当事者訴訟の対象にもならない。最高裁判所昭和27年10月8日大法廷判決(民集6巻9号783頁)がいうように「我が国裁判所は具体的な争訟事件が提起されないのに将来 本件条例の無効確認を求めることは、当事者訴訟の対象にもならない。最高裁判所昭和27年10月8日大法廷判決(民集6巻9号783頁)がいうように「我が国裁判所は具体的な争訟事件が提起されないのに将来を予想して憲法及びその他の法律命令等の解釈に対し存在する疑義論争に関し抽象的な判断を下すごとき権限を行い得るものではない」のであるから、法令の一つである条例について、抽象的な法令の当否を論ずる目的で条例の無効確認を求めて当事者訴訟を提起することはできない。 (イ) 本件地区計画は、前記ア(エ)のとおり、個人の権利に対し具体的に変動を与える効果を持たないのであるから、その無効を確認することを目的とした当事者訴訟を提起することはできない。 エ被告適格抗告訴訟としての無効確認又は取消請求について被告適格があるのは、行政庁たる被告国立市長であって、被告国立市に被告適格はなく、当事者訴訟としての無効確認請求について被告適格があるのは、権利主体たる地方公共団体としての被告国立市であって、被告国立市長には被告適格はない。よって、抗告訴訟としての請求1及び2、当事者訴訟としての請求3はいずれも不適法である。 (2) 争点2(本件地区計画並びに本件条例及びその公布行為の適法性・有効性)について(原告の主張)ア本件地区計画は、次の(ア)ないし(エ)の点で裁量権の濫用に基づく行為であって、明らかに違法無効であり、また、本件条例は、本件地区計画に基づいてその建築制限を条例化したものであって、本件地区計画が違法無効である以上、本件条例も実体法上違法無効であるから、本件地区計画の決定及びこれに基づく本件条例の制定はいずれも違法無効である。 (ア) 根拠法の目的違反都市計画法は、「都市の健全な発展と秩序ある整備とを図り・・・公共の福祉の増進に寄与することを目 件地区計画の決定及びこれに基づく本件条例の制定はいずれも違法無効である。 (ア) 根拠法の目的違反都市計画法は、「都市の健全な発展と秩序ある整備とを図り・・・公共の福祉の増進に寄与することを目的」としている(同法1条)。しかるに、本件地区計画の決定は、住みよい街づくりによる公共の福祉の増進を目的とするものではなく、原告の本件建物建設予定敷地である本件土地についてことさらに絶対高さ20メートルの規制を新設することによって原告の建築計画を阻害する目的で行われたものであり、根拠法たる都市計画法の目的に違反する。 (イ) 公正手続違反行政手続法の施行により、行政機関に対する事前裁量統制について明文の規定が置かれるに至ったが、これらの規定は行政計画の立案過程にも類推適用されるべきである。にもかかわらず、本件地区計画の案については、これによって私有財産権の侵害を最も大きく受ける者であって最大の利害関係人である原告の意向を全く聴かぬままに被告が策定したもので、公正手続の原則に違反し、裁量権の濫用に当たる。 被告国立市当局の説明によれば、本件地区計画の検討は、平成11年11月15日に住民からの要望書が提出されたことにより関係住民の発意に基づいて開始されたとのことであるが、本件地区計画は、被告らが原告の本件建物の建築計画を妨げる目的で発起し、主導的に住民に働きかけた結果住民から要望書が提出されるに至ったことが明らかで、被告国立市当局の説明は事実に反しており、手続の公正を疑わせるものである。 また、本件地区計画案は、ごく一部の住民の意見を聴いたのみで極めて短時日のうちに決定されていて、被告らがこれまでに決定した3つの地区計画が慎重な手続を踏んで決定されたのと異なり、異例の速さで決定されている。本件地区計画案は、20メートルの高さ制限という極めて て短時日のうちに決定されていて、被告らがこれまでに決定した3つの地区計画が慎重な手続を踏んで決定されたのと異なり、異例の速さで決定されている。本件地区計画案は、20メートルの高さ制限という極めて厳しい規制をかけるにもかかわらず、被告らが極めて短時間に決定しようと急いだことは、地域地区を定める都市計画の先例における手続の進め方と比較しても著しくバランスを欠いており、都市計画法18条の2の規定する基本方針を策定してない段階で、にわかに、ごく限られた面積の特定区域のみを対象として本件地区計画を決定したことは、公正な手続を履践したとはいえず、裁量権の濫用の疑いがある。 (ウ) 他事考慮、動機の不正本件地区計画の内容は、前記(1)(原告の主張)ア(イ)で主張したとおり、もっぱら原告が取得した本件土地を対象とし、原告の本件建物の建築計画の実現を妨害する意図の下に策定されたものであることが明らかである。被告国立市が告示した地区計画区域内で新たな建築計画を被告らに提示したのは原告のみである。原告の建築計画は現行法上完全に適法なものであって、被告らは、法律的には直ちにこれを阻止することができないために、ことさらに本件地区計画を決定することによって、本件土地において絶対高さ20メートルを超える建物の建築を規制しようとしているのである。 国立市内には、駅周辺のみならず、駅西側約1200メートルの位置に10階、12階建ての都営住宅があり、駅西方向約1600メートルの位置には14階建て約600戸の大規模マンションも存在する。このような状況からみて、本件建物は市内既存の建物の規模を超えるものではない。それにもかかわらず、被告国立市が本件地区計画を策定したことは、専ら原告が計画している適法な建物の建築を不可能にし、原告に対して重大な損害を与えることを目的とす 既存の建物の規模を超えるものではない。それにもかかわらず、被告国立市が本件地区計画を策定したことは、専ら原告が計画している適法な建物の建築を不可能にし、原告に対して重大な損害を与えることを目的とするものであって、他事考慮に基づく措置といわざるを得ない。 (エ) 比例原則違反市民の権利利益を侵害する公権力の行使は、必要最小限度でのみ許される(憲法13条参照)。 本件土地を含む一画は、従来の都市計画上、大学通りの周辺地域と区別され、これと異なった第二種中高層住居専用地域とされていたもので、これは平成8年6月に東京都が行った都市計画決定によるものであり、同決定に至る手続の中で住民説明会や公聴会を経ていて、国立市民の総意に基づくものである。大学通りの最南端に位置する本件土地が、大学通りに面する他の土地(第一種低層住居専用地域、第一種中高層住居専用地域)とは異なった形態で利用される土地であることは、被告らにおいてもあらかじめ承認していることである。したがって、本件地区計画が大学通り沿道地区の都市景観に配慮した街づくりを目的とするという被告らの説明はその前提を誤っている。 大学通り沿道の都市景観を守るため、大学通りの沿道にとどまらず奥行き約150メートルを超える区域にまでわたって20メートルの高さ制限をするのは、その目的に照らし過剰な規制であり、他に代わる方法がない場合におけるやむを得ない必要最小限度の規制とはいえない。本件地区計画による20メートルの高さ制限の妥当性についての被告国立市長による説明は、国立市景観審議会の審議経過及び結論を無視した根拠のないものであり、その説明責任を果たしておらず、通常の都市計画においては絶対高さ制限が全く課されていない本件土地について、突如絶対高さ20メートルという根拠不明の厳しい制限を導入することは、必要 拠のないものであり、その説明責任を果たしておらず、通常の都市計画においては絶対高さ制限が全く課されていない本件土地について、突如絶対高さ20メートルという根拠不明の厳しい制限を導入することは、必要最小限度をはるかに越えて原告の財産権を侵害するものであるから、明らかに比例原則に違反する。 イ本件条例の制定手続には次に述べるとおり重大かつ明白な瑕疵がある。 (ア) 議決の無効被告国立市長は、平成12年1月24日に告示された本件地区計画に基づく本件条例を可及的速やかに制定することを目論み、同月28日、国立市議会の臨時会(以下「本件臨時会」という。)を同月31日に招集する旨を告示した。しかし、議長は「性急すぎる」として同日の開会を認めなかったし、副議長も同様であった。すると、与党議員13名は議場に集まり、野党議員11名全員欠席、議会事務局も全員不在の中で、仮議長を選挙し、仮議長が本件条例案を評決にかけ、可決した。 地方自治法101条2項及び同項ただし書によれば、議会の招集は、急施を要する場合を除き、開会の日前7日までに告示されなければならない。したがって、本件の場合、議会を開会することができるのは原則として同年2月4日以降であり、本件地区計画に基づく本件条例の議決は、その性質上急施を要する場合には当たらないから、市議会は開会できなかったのであり、平成12年1月31日には正当な合議体としての議会は不成立であり、そこで議員が行った行為を議会の行為と見ることはできないのであって、本件条例案の議決は無効である。 仮に本件の招集が適法であるとしても、本件の場合議長は開会宣言をしておらず、地方自治法106条2項によれば議会が仮議長を選挙することができるのは「議長及び副議長にともに事故があるとき」に限られ、本件では議長及び副議長はともに職務を執り得 の場合議長は開会宣言をしておらず、地方自治法106条2項によれば議会が仮議長を選挙することができるのは「議長及び副議長にともに事故があるとき」に限られ、本件では議長及び副議長はともに職務を執り得る状況にあったから、本件における仮議長の選挙は同項に違反して無効であり、さらに、同議決については、議事録が存在せず、重大かつ明白な手続上の瑕疵があるから、本件条例案の議決も無効である。 (イ) 公布の無効地方自治法17条1項及び2項によれば、長は議長から条例制定改廃議決の送付を受けてから20日以内にこれを公布することとされているが、本件の場合、議長は市長に対し本件条例の議決を送付した事実はないから、本件条例の公布は無効である。 (被告らの主張)ア本件地区計画の実体的適法性(ア) 本件地区計画の対象地域指定の合理性本件地区は、国立分譲地として昭和2年ごろに箱根土地株式会社により計画的に分譲された地域に含まれており、通称江戸街道(国立市道富士見台第5号線)によって区分された本件土地の南側からJR谷保駅までの地区とは、都市形成の歴史的経緯においても、町並みの形成においても独立した地域を形成してきている。 また、被告国立市の平成9年度「国立市都市景観形成基本計画」において、都市景観形成上重要な地域における基本方針として、大学通り地域と青柳崖線地域を明示し、都市景観上の重要性を指摘しているところ、同計画の中でも、いわゆる大学通りの沿道のうち本件地区計画地域を含む江戸街道以北の部分が大学通り地域とされている。 このように、本件地区は、歴史的にも一体的に形成されてきた地域のうち、従前の都市計画規制が他の国立分譲地と比較して不十分であった地域を対象として不十分な規制を補う目的で計画されたものであって、恣意的に地域を設定したものでないことは明らか に形成されてきた地域のうち、従前の都市計画規制が他の国立分譲地と比較して不十分であった地域を対象として不十分な規制を補う目的で計画されたものであって、恣意的に地域を設定したものでないことは明らかであり、本件地区計画の対象地域指定には合理性がある。 (イ) 20メートルの高さ規制の合理性昭和48年に容積率制度が導入される以前は、本件土地につき絶対高さの制限は20メートルとされていたこと、平成9年度「国立市都市景観形成基本計画」で大学通り地域に関して並木街路全体との調和の重要性が指摘され、同年度国立市都市景観形成審議会においても同旨の答申があったこと、本件地区を含む周辺地域は、特に地域的に一体とされる江戸街道以北でほとんどの建物が2階建てないし3階建てで、高層の建築物は存在せず、その地域性は低層住居地域であること、本件地区計画決定に際して地域住民から平成11年11月15日に提出された要望書の中で地域住民が求めていた高さ制限は20メートルであったことといった事情を総合的に判断すると、本件地区において20メートルの絶対高さ制限を定めた本件地区計画の内容には合理性がある。 (ウ) 国立市都市景観形成条例に従った地区計画決定国立市においては、国立市都市景観形成基本計画を実行あらしめるため、平成10年3月30日に国立市都市景観形成条例(平成10年国立市条例第1号。以下「景観条例」という。)が制定されたところ、同条例3条は、被告国立市長の責務として「市長は、この条例の目的を達成するために、都市景観に関する総合的な施策の実施に努めなければならない。」と定め、同条3項において、「市長は、都市景観の形成を図るため、都市計画法第12条の5、建築基準法第4章及び国立市建築協定に関する条例に基づく制度その他都市景観の形成に資する諸制度を活用するように努めな 、同条3項において、「市長は、都市景観の形成を図るため、都市計画法第12条の5、建築基準法第4章及び国立市建築協定に関する条例に基づく制度その他都市景観の形成に資する諸制度を活用するように努めなければならない。」と定めている。 したがって、上記基本計画及び景観条例の趣旨を受けた被告国立市長は、大学通り地区の景観を阻害するような開発計画に対して、様々な制度を活用して対処する義務を有しており、本件地区計画の決定もその一環として条例に基づき被告国立市長に求められた行動というべきである。 (エ) 規制の適用範囲本件における被告らの一連の行為は、原告を特に目標としたものではない。上記(ア)のような合理性のある地域に限って、上記(イ)のような合理性のある規制を、従前の経緯を踏まえて制定したものである。もっとも、現実的に原告の本件建物の建築計画が出て、それが地域の実情に適合しないということがきっかけとなって、被告らの本件における対応が引き起こされたものであり、そこにおいて採用された施策が原告に対して強力な規制要因となったことは否定しない。しかし、これは、原告を狙い撃ちにしたというよりは、地域性を無視した建築計画を計画したのが原告だけであったために、実際に規制を受ける規制対象が結果的に原告だけになったというにすぎない。本件地区計画及び本件条例による建築規制は、原告だけを対象としたものではなく、他の地権者も一定の制約を受ける内容であり、原告を目的とした規制であるとの原告の主張は妥当ではない。 また、原告は、桐朋学園については公共施設として高さ規制の適用除外を受ける途があると主張するが、国立市地区計画の区域内における建築物の制限に関する条例施行規則3条2項は、本件条例10条による特例許可を受ける場合につき、敷地境界から12メートルの範囲にあるすべて を受ける途があると主張するが、国立市地区計画の区域内における建築物の制限に関する条例施行規則3条2項は、本件条例10条による特例許可を受ける場合につき、敷地境界から12メートルの範囲にあるすべての土地所有者、利害関係人の同意を得ることを要件としており、少なくとも地域性を考慮しないような建築物に関しては同意が得られないことは明らかであり、実質的に市長の特例許可で規制を緩和される可能性は少ない。 (オ) 手続期間の合理性本件地区計画の決定に要した期間については、公告縦覧の期間や都市計画審議会の期間などについては、特に本件地区計画と従前の地区計画の場合で日数が大きく異なることはなく、従前の地区計画は東京都知事による承認を要したために本件地区計画よりも長期間を要しているのであって、本件地区計画には東京都知事の承認が必要でなかったことからすると、日程的にみて、本件地区計画が他の地区計画に比べて問題とされるようなことはなく、本件地区計画は通常の手続期間を経て決定されているものであり、何ら不合理ではない。 イ本件条例の制定手続の適法性(ア) 地方自治法101条2項ただし書違反の主張について地方自治法101条2項ただし書の「急施を要する場合」とは、日数をおく余裕ができない程度に緊急に地方議会を招集する必要がある場合を指すのであって、その急施を要するか否かの認定は、それが地方議会の運営上著しく妥当を欠くと認められない限り、招集権者すなわち都道府県知事又は市町村長の裁量に任されているものと解すべきである。 本件臨時会の目的は、本件条例の成立であるが、本件条例は、都市計画法19条2項に基づく地区計画について、そのうちの建築制限に関する内容を建築基準法68条の2第1項に基づいて規制しようとするものであるところ、本件地区計画が平成12年1月24日に 件条例は、都市計画法19条2項に基づく地区計画について、そのうちの建築制限に関する内容を建築基準法68条の2第1項に基づいて規制しようとするものであるところ、本件地区計画が平成12年1月24日に決定・告示されたため、これを受けて本件条例を成立させる必要があった。そして、臨時会を開いて本件地区計画を早期条例化することを求める7万人の署名による要望が同日被告国立市長に対して提出されたという事情があり、一方、国立市議会の定例会を待って本件地区計画の内容を条例化する本件条例の審議を行うとすると、定例会が2月から始まるものの、定例会では通常条例案の可決は会期末である3月の本会議で行われるため、約2か月間条例化ができないという状況にあった。このため、被告国立市長は、本件条例を早期に成立させる必要を認めたため、平成12年1月24日に、国立市議会議長に対し、同月28日に臨時会を開催するよう協議し、また、同月27日には、国立市議会会派代表者会議で、本件条例案に賛成する議員が同月中の臨時会開催を主張した。 以上のように、本件臨時会の開催は、告示から3日後の同月31日をもって開催することと告示されたものであるが、これは7日を待つことができないやむを得ない事情があると被告国立市長において判断したものであり、従前の国立市議会における先例などに照らしても、急施を要する場合との判断はその裁量の範囲内である。 (イ) 地方自治法106条2項違反等の主張について市議会の議事手続は、市議会の自律権の範囲内であり、大幅な裁量権が市議会に認められるものであって、司法審査は市議会の自律的規律を尊重すべく、謙抑的にしか行い得ないものである。 本件においては、上記のとおり本件臨時会の招集手続に違法はないから、会議規則8条において会議時間が午前10時から午後5時と規定されて 会の自律的規律を尊重すべく、謙抑的にしか行い得ないものである。 本件においては、上記のとおり本件臨時会の招集手続に違法はないから、会議規則8条において会議時間が午前10時から午後5時と規定されていることからして、変更手続がされない限り、開議定刻は午前10時であり、国立市議会議長は、平成12年1月31日午前10時をもって開議を宣告する義務があったが、当日の会議開催に党派的理由により反対していた議長は、当日の午後1時を越えても開議を宣告しようとしなかった。このため、国立市議会議員定数24名の過半数となる13名の議員は、署名捺印した「臨時議会の開催を求める請求書」をもって、同日午後1時過ぎに議会内で議長及び副議長に対して開議を請求した。議長及び副議長は同請求を拒絶したため、開議定足数を充足する13名の議員は、議場において、仮議長として市議会議員のAを選出し、同人をして議長の職務を行わせることとし、本件条例案を議決した。 所定の開議時刻に至り定足数の議員が参集すれば、議長は開議すべき義務があるのに、議長が開議の宣告をせず、また、副議長も開議の請求に対して開議の宣告をしないことは、ともにその職務を執らないものであり、地方自治法106条2項の「議長及び副議長にともに事故があるとき」に当たる。よって、本件においては、適法に仮議長が選挙され、適法に仮議長によって開議が宣告され、条例案の審議及び議決がされたもので、これらの手続は適法であり、原告の主張には理由がない。 また、本件条例については、上記のとおり適法に権限を有する仮議長が、被告国立市長に対して、平成12年1月31日に本件条例の議決を送付しており、原告による本件条例の公布無効の主張も理由がない。 (ウ) 条例の改正手続による瑕疵の治癒仮に、本件条例制定手続において何らかの瑕疵が存在したと 成12年1月31日に本件条例の議決を送付しており、原告による本件条例の公布無効の主張も理由がない。 (ウ) 条例の改正手続による瑕疵の治癒仮に、本件条例制定手続において何らかの瑕疵が存在したとしても、本件条例は、平成12年2月28日開催の国立市議会第1回定例会において、本件条例の内容を踏まえ、さらに改正する内容の改正手続が議事となり、これに関して議会で改正条例が可決成立している。したがって、少なくとも手続的な瑕疵に関しては、後日の議会における改正案の議決により瑕疵が治癒したというべきである。 (3) 争点3(被告国立市の責任原因)について(原告の主張)ア前記(2)(原告の主張)のとおり、本件地区計画及び本件条例は、原告が現行法上適法にできる本件建物の建築を阻止、禁止することを直接の動機、主たる目的としてされたものであることが明らかである。このような動機・目的をもってされた本件地区計画の決定及び本件条例の制定は、法の下の平等の理念に反するばかりでなく、憲法の保障する営業の自由ないしは私有財産権を侵害するものであって、行政権の著しい濫用として評価しなければならず、本件地区計画及び本件条例は、原告の本件建物の建築に対する関係においては違憲かつ違法なものである。 イ被告らは、被告国立市長の議会での発言の機会やマスコミ報道を可能な限り利用して原告の適法な本件建物が本件地区計画の決定及び本件条例の制定によって違法建築物になったかのような虚偽の主張を繰り返し広く社会に宣伝した。また、被告国立市として、東京都当局に対して、本件建物の建築につき是正措置命令を発するよう再三要求した。被告らのこうした悪宣伝により、原告の社会的信用は著しく侵害された。 ウ被告らによる本件地区計画の決定及び本件条例の制定は、上記のような直接の動機、主たる目的の下でさ 令を発するよう再三要求した。被告らのこうした悪宣伝により、原告の社会的信用は著しく侵害された。 ウ被告らによる本件地区計画の決定及び本件条例の制定は、上記のような直接の動機、主たる目的の下でされたものであり、故意又は少なくとも重大な過失に基づく行為である。被告国立市関係者は、本件地区計画の決定及び本件条例の制定の目的が、はじめから原告の本件建物の絶対高さを20メートル以下にすることにあった事実を公然と認めていて、被告国立市長は、本件地区計画の決定及び本件条例の制定は、原告の本件建物の建築計画を阻止するための手段であることを公然と認めており、被告国立市による本件地区計画の決定、国立市議会の議決及び被告国立市長による本件条例の公布からなる被告国立市による本件条例の制定並びに被告国立市長の議会での発言及び被告国立市としての東京都に対する是正措置命令の要求による信用毀損行為は、いずれも故意に基づく行為であることは明らかである。 (被告国立市の主張)前記(2)(被告らの主張)のとおり、本件地区計画の決定及び本件条例の制定には、実体法上も手続法上も適法である。 (4) 争点4(原告の損害)について(原告の主張)ア本件建物の既存不適格化による損害本件建物の着工後に施行された本件条例が仮に有効であるとすれば、本件建物は、本件条例の絶対高さ制限規定の適用は除外されるものの、いわゆる既存不適格建築物となる。その結果、将来本件建物について建築等の工事を行おうとする場合には、その時点で同絶対高さ制限規定の適用を受け、高さ20メートル以下の建築物としなければならないことにより大きな損害を被る。 本件建物及びその敷地は分譲用の商品であるから、売主である原告は、買主からの指摘の有無にかかわらず、既存不適格を前提としていない販売価格から減価額を差し引 ればならないことにより大きな損害を被る。 本件建物及びその敷地は分譲用の商品であるから、売主である原告は、買主からの指摘の有無にかかわらず、既存不適格を前提としていない販売価格から減価額を差し引かなければならない。本件建物及び再建築可能な建物が同じ分譲マンションとして建築中であり、同じ時期に販売開始されるものとしてその販売可能価格をそれぞれ求め、両者の価額の差額を本件建物の耐用年数に基づき複利現価計算をして減価額を算出すると、平成12年3月20日時点では、本件建物及びその敷地の価格が212億6300万4000円であるのに対し、再建築可能建物及びその敷地の価格は163億4067万5000円で、その差額は49億2232万9000円となり、本件建物の耐用年数を50年として50年後に同額に相当する不利益が現実化するものと考え、年利5パーセントの複利計算で現在価格に引き直すと、減価額は4億2922万7000円となるから、本件地区計画の決定及び本件条例の制定による本件建物の既存不適格化により、原告は少なくとも4億円の損害を被った。 イ信用毀損による損害被告らによる上記(3)(原告の主張)イの悪宣伝により、原告の社会的信用は著しく侵害され、本件建物の建設事業のみならず、将来計画される事業についても大きな悪影響を受けるに至った。これによる原告の損害額は1億円を下らない。 (被告国立市の主張)ア原告は、本件建物の既存不適格化による損害を被った旨主張するが、具体的な土地にどのような形態の建築が許容されるかは、都市計画法、建築基準法の範囲内だけであっても様々な要因で変動するものであり、容積率の対象範囲、用途地域の内容や制限形態がどのように変化するかは今の時点では明確にはできず、原告の計画した建築が増改築や建替えの際、実際にどの程度の制約を受けるの 様々な要因で変動するものであり、容積率の対象範囲、用途地域の内容や制限形態がどのように変化するかは今の時点では明確にはできず、原告の計画した建築が増改築や建替えの際、実際にどの程度の制約を受けるのかは今の時点で判断することは不可能である。したがって、この点についての原告の主張する損害は事実上の不利益にすぎず、原告に対する権利侵害があったとは到底いえない。 イまた、原告の主張する信用毀損の点については、被告国立市において本件建物が「違法建築物になったかのような虚偽の事実を繰り返し広く社会に宣伝した」などということはない。また、被告国立市は、東京都に対し、本件地区計画及び本件条例に基づいて、本件建築に関し是正措置命令を発するよう求めたが、本件建築を違法建築と認定した東京高裁決定が出ているのであるから、その事実認定を尊重して対応することは被告国立市として当然の行為であり、東京都が是正措置命令を発したわけでもないのであるから、原告の信用が毀損されるなどということもあり得ない。 第3 争点に対する判断 1 争点1(請求1ないし4、6及び7に係る訴えの適法性)について(1) 本件地区計画の無効確認又は取消しを求める部分についてア抗告訴訟の対象となる行政処分とは、公権力の主体たる国又は公共団体が行う行為のうち、その行為によって、直接国民の権利義務を形成し、又はその範囲を確定することが法律上認められているものをいう(最高裁判所昭和30年2月24日第一小法廷判決・民集9巻2号217頁参照)。 これを地区計画についてみるに、市町村の定める地区計画についての都市計画のうち、その内容が都市計画法施行令14条の2所定の事項を含まないものについては、その旨を告示することにより、その効力を生じるものであるが(法19条1項・2項、20条1項、3項)、地区計画は、 計画のうち、その内容が都市計画法施行令14条の2所定の事項を含まないものについては、その旨を告示することにより、その効力を生じるものであるが(法19条1項・2項、20条1項、3項)、地区計画は、市町村が決定する都市計画において、当該都市計画区域内の一体として整備及び保全を図るべき区域について、道路、公園等の地区施設、建築物等の整備並びに土地利用に関する計画(地区整備計画)を定めるもので、地区整備計画には地区計画の目的を達成するため必要な地区施設の配置及び規模、建築物の用途・敷地等に関する制限が定められる(法12条の5、15条)。 しかし、地区計画が定められたのみでは対象地の土地所有者等に行為規制が課せられるものではなく、地区整備計画が定められた場合においても、その規制内容は、土地の区画形質の変更、建築物の建築等について市町村長への届出とそれに対する市町村長の勧告(法58条の2)、開発行為の設計が地区整備計画に定められた内容に則しているかの審査(法33条1項5号)、建築物の敷地、構造等に関する事項について、地区計画の内容として定められたものを必要に応じ市町村の条例でこれらに関する制限として定めることができる(建築基準法68条の2)等にすぎず、直接当該区域内の個人の権利義務を形成し、又はその範囲を確定する法律上の効果を伴うものではないのであって、地区計画が当該区域内の個人に対する具体的権利侵害を伴う行政処分であるということはできない(最高裁判所平成6年4月22日第二小法廷判決・判例時報1499号63頁参照)。 地区計画の決定が告示されれば、当該地区内の土地の価額が変動し、同地区内の土地の権利者に経済上の不利益を及ぼすことが起こり得るとしても、それは事実上の不利益にとどまるから、このことをもって地区計画の決定の処分性を理由づけること 当該地区内の土地の価額が変動し、同地区内の土地の権利者に経済上の不利益を及ぼすことが起こり得るとしても、それは事実上の不利益にとどまるから、このことをもって地区計画の決定の処分性を理由づけることはできない。 建築基準法68条の2に基づき上記条例が定められた場合は、同条例に基づく処分等により当該区域内の個人に対する具体的な権利義務の変動が生じた場合に同処分等を問題とすれば足り、地区計画自体を行政処分として抗告訴訟の対象とする必要はない。この点において、地区計画決定の段階では未だ訴訟事件として取り上げるに足りるだけの事件の成熟性を欠くものともいうことができる。 本件においても、原告の主張する建築物の高さの制限は、本件地区計画自体により直接生じたものではなく、本件条例により生じたものであるから、原告が直接本件地区計画によって具体的な権利侵害を受けたものとは認められない。 イまた、都市計画法は、市町村が都市計画の案を作成しようとする場合において必要があると認めるときは、公聴会の開催等住民の意見を反映させるために必要な措置を講ずべきものとし(16条1項)、計画案の公告後の縦覧期間満了の日までに、関係市町村の住民及び利害関係人は、都市計画の案について市町村に意見書を提出することができるものとしているが(17条2項)、告示された都市計画についての異議申立てやこれについての決定に対する取消しの訴えを認めるなど、告示により効力が生じた地区計画自体が抗告訴訟の対象となり得ることを当然の前提とするような規定は全く設けていない。このことも、地区計画が抗告訴訟の対象としての処分性を有しないことを裏付けるものということができる。 仮に、地区計画自体に処分性を認めてこれを行政処分とした場合には、その効力を問題とする場合には、法定の出訴期間内にその取消しを求める 象としての処分性を有しないことを裏付けるものということができる。 仮に、地区計画自体に処分性を認めてこれを行政処分とした場合には、その効力を問題とする場合には、法定の出訴期間内にその取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者から抗告訴訟を提起してその効力を争っておかなければ、仮にそれが違法であっても、その違法が重大かつ明白なものでない限り、有効な処分として一般に通用することとなるのに対し、その行政処分性が否定されるならば、それが違法なものである以上、原則としていつでもその違法を主張できるのであるから、特に、地区計画の決定後相当期間経過後にその地区内に不動産を取得した者の立場を考慮すれば、むしろ、地区計画自体に処分性を認めない方が地区計画の効力を争う者の利益となるものということができ、この点でも、地区計画自体に処分性を認めないことは何ら不合理なことではない。 ウよって、本件地区計画については、抗告訴訟の対象となる処分性を有する行為とは認められないから、請求1ないし4に係る訴えのうち本件地区計画の無効確認又は取消しを求める部分は、その被告適格を検討するまでもなく、いずれも不適法な訴えである。 (2) 本件条例の無効確認又は取消しを求める部分についてア原告は、請求1ないし4のうち本件条例の無効確認又は取消しを求める部分は法定の抗告訴訟である旨を主張し、さらに、無効確認を求める部分については予備的に公法上の当事者訴訟又は無名抗告訴訟である旨を主張している。 しかし、いかなる訴訟類型によるにしても、これらの請求が、請求の趣旨のとおり、全く一般的に本件条例が無効であることの確認を求めるものであるとするならば、同各請求に係る訴えは、いずれも具体的争訟性を欠き、不適法なものである。 すなわち、裁判所法3条1項にいう「法律上の争訟」として裁判所の審判 件条例が無効であることの確認を求めるものであるとするならば、同各請求に係る訴えは、いずれも具体的争訟性を欠き、不適法なものである。 すなわち、裁判所法3条1項にいう「法律上の争訟」として裁判所の審判の対象となるのは、当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争に限られ、このような具体的な紛争を離れて、裁判所に対して抽象的に法令の有効・無効の判断を求めることはできないのであるから(最高裁判所昭和27年10月8日大法廷判決・民集6巻9号783頁、最高裁判所平成元年9月8日第2小法廷判決・民集43巻8号889頁、最高裁判所平成3年4月19日第2小法廷判決・民集45巻4号518頁参照。)、具体的争訟性を欠く訴えは不適法といわざるを得ないのである。 イまた、本訴の趣旨とするところを実質的に考察すれば、本件建物が本件条例に違反することとなることに伴う何らかの不利益処分が行われるのを防止するために、その前提である本件条例が無効であることをあらかじめ確定しておくことにあるものと解せられる。 ところで、前記のとおり具体的・現実的な争訟の解決を目的とする現行訴訟制度の下においては、その訴訟形態が法定の抗告訴訟又はいわゆる無名抗告訴訟であるか公法上の当事者訴訟であるかを問わず、法令違反の結果として将来なんらかの不利益処分を受けるおそれがあるというだけで、その処分権限の発動を差し止めるため事前にその前提となる法令の効力の有無の確定を求めることが当然に許されるわけではなく、当該法令によって侵害を受ける権利の性質及びその侵害の程度、違反に対する制裁としての不利益処分の確実性及びその内容又は性質等に照らし、同処分を受けてからこれに関する訴訟の中で事後的に当該法令の効力を争ったのでは回復し難い重大な損害を被るおそれがある等、事前の救済を認めないことを の不利益処分の確実性及びその内容又は性質等に照らし、同処分を受けてからこれに関する訴訟の中で事後的に当該法令の効力を争ったのでは回復し難い重大な損害を被るおそれがある等、事前の救済を認めないことを著しく不相当とする特段の事情がある場合は格別、そうでない限り、あらかじめ当該法令の効力の有無の確定を求める法律上の利益を認めることはできないものと解すべきである(最高裁判所昭和47年11月30日第一小法廷判決・民集26巻9号1746頁、最高裁判所平成元年7月4日第三小法廷判決・集民157号361頁参照)。 ウこれを本件についてみるに、本件建物の建築に対して本件条例が適用され、本件建物がいわゆる違法建築となる場合には、これに対して建築基準法9条1項に基づく是正命令権限が行使された際に、同権限の発動としてされた処分の効力を争う中で本件条例の効力を問題とすれば足り、また、本件建物については既存建物として直接には本件条例の適用がない場合であっても、将来における本件建物の建替え等の際に、建築確認申請等に対する拒否処分がされれば、その効力を争う中で本件条例の効力を問題とすれば足りる。しかも、本件においては、証拠(甲30、31)及び弁論の全趣旨によれば、上記是正命令権限の行使の主体である東京都の特定行政庁は、本件建物の建築工事については、建築基準法3条2項が適用され、その結果、本件建物は建築基準法令に適合した適法なものであり、本件建物の建築が本件条例に違反しているものとは考えていないことが認められる(大学通りの周辺住民らが東京都多摩西部建築指導事務所長及び東京都建築主事を被告として本件建物につき建築基準法9条1項に基づく建築禁止命令及び除去命令をしない不作為が違法であることの確認等を求めた訴訟(東京地裁平成13年(行ウ)第120号建築物除却命令等請求事 都建築主事を被告として本件建物につき建築基準法9条1項に基づく建築禁止命令及び除去命令をしない不作為が違法であることの確認等を求めた訴訟(東京地裁平成13年(行ウ)第120号建築物除却命令等請求事件。以下「別件訴訟」という。)については、平成13年12月4日に第1審判決が言い渡されているところ、同事件の被告らが同事件において上記のとおりの主張をしていることは当裁判所に顕著な事実である。)。したがって、現段階において上記のような是正命令権限の行使がされることが確実であるとは認められず、その他、原告が本件条例の制定によって受けた経済的不利益によって既に倒産の危機に直面しているなど、上記のような不利益処分を待って本件条例の効力を争ったのでは回復し難い重大な損害を被るおそれがある等の特段の事情の存在は、いまだこれを見出すことができない。 むしろ、原告が被告国立市に対して併合提起している損害賠償請求によって、その経済的不利益は補填されるものと考えることができるのであるから、あえて現時点において本件条例の無効を確定させる必要はないというべきである。 エしたがって、請求1ないし4のうち本件条例の無効確認又は取消しを求める部分に係る訴えについては、その訴訟形態を問わず、訴えの利益を欠くものというほかない。 (3) 請求6及び7についてア請求6及び7が、本件条例の制定行為とは別個に本件条例の公布行為そのものを独立の行政処分と捉え、当該公布行為のみの取消しを求める趣旨であるとすれば、同各請求に係る訴えは不適法なものといわざるを得ない。すなわち、条例は、議会の議決によって成立するものであり、その成立した条例の内容を住民に知らせるための表示行為が条例の公布であって、これにより条例は住民に対し現実にその拘束力を発動させることとなるが、条例の公布行為自体は の議決によって成立するものであり、その成立した条例の内容を住民に知らせるための表示行為が条例の公布であって、これにより条例は住民に対し現実にその拘束力を発動させることとなるが、条例の公布行為自体は、既に一定の内容をもって成立している条例を周知させるために外部に表示する行為であって、条例の制定行為に対する付随的なものにすぎないから、条例の公布行為のみを捉えて、これを抗告訴訟の対象とすることはできない。 イまた、請求6及び7が、条例はそれが適法に公布されて初めて住民に対して効力を発することになるという意味において、公布処分を条例の制定行為として捉えた上で、本件条例そのものの効力を争う目的で本件条例の制定行為としての公布処分の無効確認又は取消しを求める趣旨であると解するにしても、本件条例そのものの無効確認又は取消しを求める訴えは、その訴訟形態及び被告適格の有無を問うまでもなく、訴えの利益を欠く不適法なものであることは前記1(2)に判示のとおりである。 ウしたがって、本件条例の公布行為の無効確認又は取消しを求める請求6及び7に係る訴えは、いずれにしても不適法である。 (4)よって、請求1ないし4、6及び7に係る訴えはいずれも不適法なものであって、却下を免れず、したがって、争点2については判断の要をみない。 争点 3(被告国立市の責任原因)について(1) 当事者間に争いのない事実、次の判文中に掲記の各証拠及び弁論の全趣旨によれば、次の各事実を認めることができる。 ア国立駅南側の大学通り及び一橋大学を中心とする一帯は、昭和2年ころ、箱根土地株式会社により国立分譲地として計画的に分譲された地域であるところ(乙5、6)、国立市においては、その後一貫して、学園都市の実現、すなわち、一橋大学等の教育施設を中心とした閑静な住宅地を目指して、大学通りを街 より国立分譲地として計画的に分譲された地域であるところ(乙5、6)、国立市においては、その後一貫して、学園都市の実現、すなわち、一橋大学等の教育施設を中心とした閑静な住宅地を目指して、大学通りを街づくりの中心とし、景観の保護に重点を置いた街づくりが進められてきた。 国立市は、平成8年4月1日、市内における開発行為等によって無秩序な市街化が行われることを規制することなどを目的として国立市開発行為等指導要綱(以下「指導要綱」という。)を制定した。 国立市都市計画審議会は、被告国立市長に対し、平成9年12月19日、国立市都市景観形成条例・規則案の策定及び国立市都市景観形成基本計画改定案について答申を行い、その中で、国立市の最も重要な景観資源の一つである国立駅周辺及び大学通りの美しい景観が、既存建物の高さをはるかに超えた高層マンションの林立によって損なわれつつあり、とりわけ平成元年に行われた都市計画変更(高度地区の廃止、用途の変更、容積率の増加など)以降に、従来の高さを超える高層建築物が出現するようになったことを指摘した上で、すぐれた景観を守り、さらに育てるためには、景観資源となる建物や並木と調和した町並みが形成されるよう、都市計画を適切に行い、さらに景観条例による重点地区景観形成計画を定めて実行していくことが是非とも必要であって、その際、国立駅周辺や大学通り沿道の建物の高さは、およそ20メートル程度の高さで並ぶ大学通りの並木と調和し、用途は周辺の町並みと調和したものとなるように特に留意すべきであるとの指摘がされた。 そして、平成10年3月30日、「国立市の都市景観の形成に関する基本事項を定めることにより、「文教都市くにたち」にふさわしく美しい都市景観を守り、育て、つくること」を目的として景観条例が制定され、同条例の施行に関して国立市都 、「国立市の都市景観の形成に関する基本事項を定めることにより、「文教都市くにたち」にふさわしく美しい都市景観を守り、育て、つくること」を目的として景観条例が制定され、同条例の施行に関して国立市都市景観形成条例施行規則(平成10年国立市規則第10号。以下「景観条例施行規則」という。)が定められ、また、同条例25条の規定に基づいて大規模行為景観形成基準(平成10年3月国立市長告示第1号)が定められた。 指導要綱においては、高さが10メートル以上の中高層建築物の建設事業を実施する者は、法令に定める手続を行う前に被告国立市長に申し出て、事前計画事前協議書(以下「事前協議書」という。)を被告国立市長に提出し、当該事業に係る建築物の建築及び管理に関する事項等について協議しなければならないものとされていた。 また、景観条例施行規則11条、大規模行為景観形成基準によれば、高さ10メートルを超える建物の新築工事をしょうとする建築主は、高さについて、街なみとしての連続性、共通性を持たせ、周囲の建築物等との調和を図ることを配慮すべきことが定められ、上記の建築主は、当該建築物の建築に必要とされる法定の手続をとる前に、被告国立市長に対して、その建築工事の内容を届け出なければならず(景観条例26条1項)、被告国立市長は、届け出られた建築工事が周囲の景観と調和していないなどと認めるときは、届出をした者に対し、建築工事に関して必要な措置を講ずるよう、助言又は指導をすることができ、届出をした者が指導に従わないときは建築主に対して勧告をすることができることとなっている(同条例28条)。そして、景観条例29条により、被告国立市長は、届出をした者が勧告に従わないときは、審議会の意見を聴取した上、その旨を公表することができることとされている(甲8、35、48、乙5ないし1 条)。そして、景観条例29条により、被告国立市長は、届出をした者が勧告に従わないときは、審議会の意見を聴取した上、その旨を公表することができることとされている(甲8、35、48、乙5ないし13、15の1及び2)。 イ本件土地は、その一部が国立分譲地の南側に属していたが、昭和7年ころからは住宅地としてではなく塗料工場の敷地となっていたところ(弁論の全趣旨)、昭和27年に国立分譲地一帯が文教地区の指定を受けた際にも、本件地区のうち、低層住宅地区1及び学園地区がこれに含まれたにもかかわらず、本件土地を含むその余の地区は指定を受けなかった(乙8)。 その後、本件土地は、東京海上火災保険株式会社が所有し、高さ16メートル程度の事務センターの敷地として利用されていたが、昭和45年法律第109号による建築基準法改正の結果、住居地域内20メートルとの建物の高さ制限が撤廃されたのちも、建物の高さの制限のある第1種住居専用地域には指定されず、建物の高さ制限がなく容積率の規制も緩やかな住居地域に指定されるにとどまり、以後、本件地区計画の決定に至るまで建物の高さ制限に関する規制がされたことはなかった。 ウ東京都は、平成8年6月に本件土地を含む区域につき都市計画決定により用途地域を指定しており、本件土地は第二種中高層住居専用地域に、本件土地の北側に接する桐朋学園のある区域は第一種中高層住居専用地域に、その東側で本件土地の北側に当たる大学通り沿いの区域は第一種低層住居専用地域に、本件土地の西側は第二種中高層住居専用地域に、東側は第一種低層住居専用地域、第一種中高層住居専用地域及び第二種中高層住居専用地域に指定されており、大学通り沿いの土地のうち本件土地だけが文教地区に指定されておらず、本件土地は、第一種高度地区、容積率200パーセントに指定されている(争い 居専用地域及び第二種中高層住居専用地域に指定されており、大学通り沿いの土地のうち本件土地だけが文教地区に指定されておらず、本件土地は、第一種高度地区、容積率200パーセントに指定されている(争いがない)。これらの指定のうち、建物の高さが制限されるのは、第一種低層住居専用地域のみであって、その余の指定にはそのような効果はなく、むしろ本件土地が指定された第二種中高層住居専用地域は「主として中高層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため定める地域」(都市計画法9条4項)とされていた。また、この都市計画を定めるに当たっては関係市町村の意見を聴くことが義務付けられているが(同法18条1項)、被告国立市が本件土地についての上記指定に反対の意見を述べたことをうかがわせる証拠は見当たらない。 エ原告は、平成11年5月ころから、本件土地を取得して分譲マンションを建設するべく、被告国立市の市役所や東京都建築指導事務所の関係部局を訪れて、必要な手続等についての相談を始めた(甲35)。 原告は、平成11年7月中旬ころから、被告国立市の関係各課に対し、指導要綱に係る細部の点につき事前相談を始めるとともに、同月22日、東京海上火災保険株式会社から、本件土地を代金90億2000万円で購入し(甲13)、同年8月18日には、被告国立市に対し、本件建物の建築計画に関して、指導要綱に基づく事前協議書を提出し、受理された。 同年9月1日改正前の指導要綱においては、建築主が事前協議の申出をしたときは、建設事業を行おうとする場所に事業計画の概要を明示した標識を設置しなければならないこととされていたが、このことは、事前協議書を提出すれば、直ちに指導要綱に基づく上記標識を設置することができることを意味していた。そして、東京都中高層建築物の建築に係る紛争の予防と調整に関する条 ないこととされていたが、このことは、事前協議書を提出すれば、直ちに指導要綱に基づく上記標識を設置することができることを意味していた。そして、東京都中高層建築物の建築に係る紛争の予防と調整に関する条例(昭和53年東京都条例第64号。以下「紛争予防条例」という。)においては、建築主が中高層建築物を建築しようとするときは、標識の設置や近隣関係住民に対する説明などを行わなければならないとされていたが(紛争予防条例5条、6条)、同標識は、建築基準法6条1項に規定する建築確認申請を行う日の少なくとも30日前までに設置しなければならないものとされていたことから、同標識を設置してから30日を経過すれば、建築確認申請を行うことができることとなっており、かつ、指導要綱に基づく上記標識においては、その標識に紛争予防条例に基づく標識文言を併記することにより同条例に基づく標識を兼ねるものとされていたから、建築主は、指導要綱に基づく事前協議書を提出してこれが受理されると、直ちに指導要綱及び紛争予防条例の定める標識を設置することができ、その日から30日を経過すれば建築確認申請をすることができることとなっていた(争いがない)。 オ指導要綱は、当初平成11年10月に改正されることが予定されていたが、被告国立市長は、同改正の施行を同年9月1日に繰り上げることとした。改正後の指導要綱においては、建築主は、事前協議を申し出る2週間前までに指導要綱の定める標識を事業地に設置しなければならないこととされ、同標識に紛争予防条例に定められた事項の記載を併記しなければならないとの規定は削除されることとなっていた。そこで、被告国立市長は、原告に対し、同年8月19日、「9月1日改正予定の新指導要綱に基づく事前協議を行う」との文書を発し、①原告は新指導要綱に基づいて事前協議書を出し直すこ れることとなっていた。そこで、被告国立市長は、原告に対し、同年8月19日、「9月1日改正予定の新指導要綱に基づく事前協議を行う」との文書を発し、①原告は新指導要綱に基づいて事前協議書を出し直すこと、②その提出日時期は標識設置の2週間後とすること及び③標識は紛争予防条例の標識文言の併記をせず、指導要綱のための単独標識にすることを文書で要請した。 これに対し、原告は、同年8月24日、被告国立市長に対し、旧指導要綱に基づく事前協議書を提出したのであるから、未だ施行されていない新指導要綱に基づいて事前協議書を提出し直す必要はないとして、上記要請文書を返還した(争いがない)。 しかし、被告国立市長は、原告に対し、同月26日、再度、新指導要綱を遵守するようにとの要請文を交付し、同月27日、原告は、同要請に従い、本件土地に紛争予防条例の標識文言を併記しない標識を設置した。また、原告は、被告国立市長に対し、同日、景観条例に基づく大規模行為の届出をした(争いがない)。 カ原告は、同年8月下旬から同年9月上旬にかけて、近隣住民を戸別訪問して本件土地上に建築予定の建物の建築計画の概要を説明した。原告は、このころ、本件土地上に、地上18階建ての建物を建築する予定であった(甲35)。 これに対し、本件土地の近隣住民の一部は、国立市議会に対し、本件土地上の建物の建築計画を周辺の環境と調和を持った計画に変更するよう原告に働きかけることを求める約5万人の陳情書を提出し、国立市議会は、同年9月22日、この陳情を採択した。 キ被告国立市においては、同年10月5日、原告による本件土地上の建物の建設計画への対応につき、部長会を開いて検討し、その中で、都市計画法上の地区計画の決定をする案も検討された。 原告は、被告国立市長からの要請により、同月7日、景観条例に基づく よる本件土地上の建物の建設計画への対応につき、部長会を開いて検討し、その中で、都市計画法上の地区計画の決定をする案も検討された。 原告は、被告国立市長からの要請により、同月7日、景観条例に基づく大規模行為届出につき打ち合わせを行い、その際、初めて平成9年12月19日付けの前記景観形成審議会答申文を見せられた。被告国立市長は、同月8日、原告に対し、景観条例に基づき、本件土地上に建築予定の建物の建築計画を見直し、大学通り沿道の高さ約20メートルの並木に調和するよう建物の高さを低くし、大学通り側の壁面を後退させるよう指導した(争いがない)。 ク原告は、同月19日、紛争予防条例に基づき、本件土地上に建築予定の建物の建築計画を記載した標識を設置した(甲35、49)。この結果、原告は、新指導要綱によったとしても、同日から30日を経過すれば建築確認申請を行うことができることとなった。これに対し、被告国立市長は、原告に対し、同月20日、この標識を撤去するよう求めた(争いがない)。 被告国立市長は、上記標識設置につき、同年12月の国立市議会第4回定例会において、「この看板設置が実現いたしますと、手続上30日を過ぎますと、東京都に確認申請を出せるという状況に当たりますので、このことでかなり緊急的に対応を迫られる状況ができたわけなんです。」と上記対応を説明した(甲38)。 ケ原告は、被告国立市長に対し、同年10月20日に、同月8日の指導に対する質問書を提出し、本件土地上の建物の高さの限度及び壁面後退距離を具体的に明示して欲しいと求めた。これに対し、被告国立市長は、原告に対して、同月22日に回答書を送付し、本件土地上の建物の規模・高さ等は大学通りの景観と調和するよう原告において検討するようにとの回答及び建物の位置(壁面後退の程度等)については、既存の 長は、原告に対して、同月22日に回答書を送付し、本件土地上の建物の規模・高さ等は大学通りの景観と調和するよう原告において検討するようにとの回答及び建物の位置(壁面後退の程度等)については、既存の植栽帯の状態の保全を検討するようにとの回答をした(争いがない)。 原告は、上記回答では不明確であると考え、被告国立市長に対し、上記回答書を返還する旨申し入れた(申49)。これに対し、被告国立市長は、同月28日に同回答書の返還を受け、同月29日に、原告に対し、景観条例8条によれば、「事業者は積極的に都市景観の形成に寄与するように努めなければならない」ところ、本件土地は景観条例に基づく景観形成重点地区の候補地内であり、また、周辺は中低層住宅地であることにかんがみ、大学通りの景観に調和するよう計画を見直すように指導したものであり、大規模行為景観形成基準は、具体的な数値で規制するものではなく、事業者が景観条例に基づき、周辺の建築物等との調和を図り、都市景観の形成に寄与することを明らかにするための目安である旨を回答した。 原告は、被告国立市長の上記回答を踏まえ、被告国立市長に対し、同年11月1日に回答書を送付し、本件土地に建築する建物の規模は景観条例に適合していると考えるので同年8月27日付けの届出のとおり計画したい旨、及び同建物の位置について大学通り側の壁面後退はできないが極力現状の保全維持を考えており大学通り側全体としての植栽面積を確保するよう努力する旨回答した。 コ原告は、同年11月6日、本件土地の近隣住民及び国立市長からの再三の要求に応じ、近隣住民に対する本件建物の建築計画についての第1回説明会を開催し、その後も、同月20日に第2回説明会を、同月27日第3回説明会を開催し、その後も説明会を開催した。なお、原告は、第2回説明会の際、本件建物を高 対する本件建物の建築計画についての第1回説明会を開催し、その後も、同月20日に第2回説明会を、同月27日第3回説明会を開催し、その後も説明会を開催した。なお、原告は、第2回説明会の際、本件建物を高さ43. 65メートル、地上14階、地下1階の規模に変更することを発表した(甲49)。 同高さの変更について、原告は、同月11日、被告国立市の助役及び東京都建築指導事務所に対し、口頭で14階建てに設計を変更した旨を報告し、さらに、同月12日、被告国立市の都市計画課に対し、当初の18階建ての案から14階建ての案に設計を変更したことを図面を用いて説明し、同月22日に、被告国立市長に対し、事前協議図の変更及び大規模行為変更届出書を提出した(争いがない)。 サ被告国立市においては、原告による本件建物の建築計画への対応を部長会を開いて協議し、その中で、本件地区計画の決定を行う案について検討がされ、さらに、本件地区計画の決定及び本件条例の制定をした場合に原告から被告国立市が訴訟等において損害賠償請求をされる可能性についても協議をした(甲39)。 その上で、被告国立市長は、同月24日、本件地区計画の案を作成し、これを公告、縦覧に供した。また、同日、本件建築条例が公布され、平成12年1月1日から施行された(争いがない)。 被告国立市長は、同月27日、テレビ朝日の報道番組の中で、インタビユーに答え、本件建物を「建てさせない手段を、市が持っているもの使っていく。」「例えば下水管をつながないとか。」との発言をした(甲40)。 シ原告は、平成11年12月3日、東京都建築主事に対し、本件建物に係る建築確認申請書を提出した(争いがない)。 被告国立市長は、原告に対し、同月13日、景観条例及び指導要綱に基づく手続が完了していないことを理由として、本件建物に係る建築確認 事に対し、本件建物に係る建築確認申請書を提出した(争いがない)。 被告国立市長は、原告に対し、同月13日、景観条例及び指導要綱に基づく手続が完了していないことを理由として、本件建物に係る建築確認申請を取り下げて欲しい旨要請した(争いがない)。 これに対し、原告は、同月20日、同建築確認申請を取り下げる考えはない旨を被告国立市長に回答した(争いがない)。 ス原告は、平成12年1月5日、東京都建築主事から、本件建物に係る建築確認通知を受け、同日、本件土地の根切り工事を始めた(甲35)。 被告国立市長は、原告に対し、同月7日、工事中止を要請した(争いがない)。 セ被告国立市は、同月24日、本件地区計画を決定し、告示した。これにより、本件地区計画は、都市計画法上の地区計画として、本件土地を含む本件地区に対し、効力を生じた(争いがない)。同日、国立市議会の臨時会を開いて本件地区計画を早期に条例化することを求める約7万人の署名による要望が、被告国立市長に対して提出された(甲37、弁論の全趣旨)。 ソ本件土地の周辺住民らは、同日、東京地方裁判所八王子支部に対し、原告と本件建物の施工業者を相手取り、本件建物の建築工事禁止の仮処分を求める申立てをした(平成12年(ヨ)第28号・第107号建築禁止仮処分申立事件。甲8、16、35)。 タ原告は、同月26日、本件土地について、根切り工事によって掘った土地の周辺地盤の崩落を防ぐための山留工事を開始した(甲16、17、弁論の全趣旨)。 チ被告国立市長は、上記のとおり、本件条例の早期制定を求める要望が被告国立市長に寄せられている一方で、国立市議会の定例会により本件条例を制定することとした場合、通常条例案の可決が会期末にされることが多いことからして、本件条例の可決は同年2月から開始される定例会の会期の終わ 長に寄せられている一方で、国立市議会の定例会により本件条例を制定することとした場合、通常条例案の可決が会期末にされることが多いことからして、本件条例の可決は同年2月から開始される定例会の会期の終わりである3月末ころとなると予想されたため、本件条例案の可決については、地方自治法101条2項ただし書の「急施を要する場合」に当たると判断し、同月28日、同月31日に本件臨時会を招集することを決定してその旨を告示した。これにより、同日に本件臨時会が開かれるべきこととなり、開議時刻については、会議時間が午前10時からと定められていることから、同日午前10時をもって本件臨時会の開議が宣告されるはずであったが、国立市議会議長はこれをせず、同日午後1時過ぎに至って議員の過半数を超える13名が開議を請求しても、議長も副議長も本件臨時会の開議を拒絶した。そこで、出席議員は、仮議長を選任し、仮議長の開会の宣告により議事を進行して本件条例案を可決し、仮議長がこれを同日被告国立市長に送付した(甲4の1ないし3、弁論の全趣旨)。 これを受けて、同年2月1日、本件建築条例を改正する本件条例が公布、施行され、これによって、本件土地を含む本件地区内の中層住宅地区(第一種低層住居専用地域を除く。)は、この条例改正により、高さ20メートルを超える建築物を建築してはならないという建築基準法上の制限を受けることとなった(争いがない)。 ツ原告は、本件条例の施行後も、本件建物の建築計画を変更することなく、建築工事を続行した(弁論の全趣旨)。 テ東京地方裁判所八王子支部は、同年6月6日、前記仮処分申立てに対し、本件建物は本件条例施行時に既に建築工事中であったから建築基準法に違反するものではなく(同法3条2項)、かつ申立人らには受忍限度を超える被害が生じていないとして、これを却 、前記仮処分申立てに対し、本件建物は本件条例施行時に既に建築工事中であったから建築基準法に違反するものではなく(同法3条2項)、かつ申立人らには受忍限度を超える被害が生じていないとして、これを却下する旨の決定をし(甲8、16)、申立人らがこれに抗告したところ、東京高等裁判所は、同年12月22日、抗告を却下する旨の決定(平成12年(ラ)第1328号建築禁止仮処分申立却下決定に対する抗告事件、以下「東京高裁決定」という。)をした。東京高裁決定は、本件建物は本件条例の施行時に「現に建築の工事中」であったと認めることはできないから、建築基準法に適合しない建物に当たるが、抗告人らに受忍限度を超える被害が生じているとは認められないとして原決定の結論を維持したものである(甲17)。 ト被告国立市長は、東京都多摩西部建築指導事務所長に対し、平成12年12月22日、東京高裁決定を引用の上、原告に対し、裁判所の判断を尊重した指導をするよう求めた(甲21)。 また、被告国立市長は、平成13年3月6日の平成13年国立市議会第1回定例会における一般質問に対する答弁として、東京高裁決定を根拠として、本件建物が本件条例に反する違法建築であるとの認識を述べ、同月29日の同定例会においても同旨の答弁をした。 さらに、被告国立市長は、東京都知事に対し、同年7月10日付けの文書で、東京高裁決定を引用の上、本件建物のうち高さ20メートルを超える部分について、電気及びガス供給の申込みに対する承諾を保留するように電気事業者及びガス事業者に要請するよう申し入れるとともに、被告国立市が受託している水道の供給についても同様に給水申込みに対する承諾の保留をすることを承認して欲しい旨申し入れた(甲23、24)。 本件建物の建築に対する被告らの対応については、逐一新聞等で報道され、上 受託している水道の供給についても同様に給水申込みに対する承諾の保留をすることを承認して欲しい旨申し入れた(甲23、24)。 本件建物の建築に対する被告らの対応については、逐一新聞等で報道され、上記申入れの事実についても、同月11日付けの新聞報道で取り上げられ(甲34の1ないし4)、本件建物の分譲申込みを検討している顧客から、原告に対し、水道給水が確実にされるか否かについて問い合わせが寄せられた(甲35)。 ナこれに対し、東京都多摩西部建築指導事務所長は、同月18日付けの文書により、本件建物の建築工事には現在のところ何ら違法性は認められず、建築基準関係規定に基づき適法に進められていると考えており、同建築工事につき供給留保の要請等を行う予定はない旨回答し(甲30)、東京都水道局多摩水道対策本部長も、同年8月2日付けの文書により、本件建物の建築工事について、現時点では建築基準法上特定行政庁により違法との判断がされていないため、承諾の意思表示を留保するだけの理由はないと判断する旨回答した(甲31)。 (2) 本件地区計画の決定及び本件条例の制定についての被告国立市の責任ア上記(1)に認定した事実に基づいて、本件地区計画の決定及び本件条例の制定についての被告国立市の責任の有無を検討する。 先に説示したように、本件地区計画や本件条例自体の無効確認や取消しを求める請求1ないし4はいずれも不適法であって、その前提問題となるべきこれらの行為が行政行為や立法行為として違法又は無効であるか否かについては判断する必要はないから、ここでは、もっぱらこれらの決定又は制定行為が国家賠償法上違法か否かという観点から検討することとする。原告のこの点に関する主張も、このような観点から本件地区計画の決定及び本件条例の制定が違法であるというものと理解できる。 イそ は制定行為が国家賠償法上違法か否かという観点から検討することとする。原告のこの点に関する主張も、このような観点から本件地区計画の決定及び本件条例の制定が違法であるというものと理解できる。 イそこで、本件地区計画及び本件条例について、国家賠償法上の違法性を検討する。 本件地区計画及び本件条例については、被告らも、その主張において、原告の本件建物の建築計画がきっかけとなって本件地区計画の決定及び本件条例の制定という被告らの対応がされたものであることは否定していない上、前記(1)に認定した事実における被告国立市長の原告に対する行政指導等の経緯・内容、就中、原告による本件建物の建築計画への対応を協議した際に、本件地区計画の決定及び本件条例の制定をしたことにより原告から被告国立市が訴訟等において損害賠償請求をされる可能性についても協議をしたことや、さらには、原告に対する対応について後に国立市議会における答弁の内容及びテレビの報道番組でインタビューに答えて本件建物の建築計画への対応を説明した内容からすれば、本件地区計画の決定及び本件条例の制定は本件建物の建築計画を阻止するためにされたものであることは明らかである。 被告国立市長がこのような挙に出たのは、大学通り周辺の景観を維持することを目的とするものであり、このことのみに着目すると、多くの国立市民の共感に支えられた行動とみることができる。また、良好な景観をできる限り保持することが望ましいことについては一般的かつ抽象的には多くの国民が共通して認めるところであると思われる上、前記(1) アで認定したとおり、平成9年12月19日の国立市都市景観形成審議会の被告国立市長に対する答申においては、平成元年に行われた高度地区の廃止、用途の変更、容積率の増加などの都市計画変更以降、従来の高さを超える高層建 り、平成9年12月19日の国立市都市景観形成審議会の被告国立市長に対する答申においては、平成元年に行われた高度地区の廃止、用途の変更、容積率の増加などの都市計画変更以降、従来の高さを超える高層建築物が出現するようになっていて、すぐれた景観を守り、さらに育てるためには、景観資源となる建物や並木と調和した町並みが形成されるよう、都市計画を適切に行うことが是非とも必要であるとの指摘がされたことからすれば、被告国立市長の前記行動は、このような一般的理解及び上記答申に沿うべく努力したものとの評価もできないではない。 しかしながら、保持することが望ましい良好な景観が具体的にどのようなものを意味するかについては、いまだ国民の間に共通の理解が存するとはいい難いし、まして、具体的な法令上の規制がない場合にまで、景観の保持の観点から私有財産権の行使が制約されるとの考え方は一般的なものとはいい難い。したがって、景観保持の観点から新たな法的規制をする際には、その規制内容が適正なものか否かに加えて、その規制が既存の権利者にいかなる影響を及ぼすものかを慎重に検討することが必要である。このことは、行政の一貫性の観点からあらゆる行政上の法規制に妥当することであり、建築基準法68条の2に基づく条例を制定するに当たっては、同条2項が当該区域内における土地利用の状況を考慮要素の一つとしていることからも導けることであるが、取り分け景観保持を目的とする規制については、それが上記のような法的保護の対象として成熟していないことから、このことが強く要請されるものと考えられるのである。このような観点からすると、本件地区計画の決定及び本件条例の制定は、本件土地についての既存の権利者である原告が高層マンション建築のために多額の投資をしている点を無視しているばかりか、その行動を積極的に ような観点からすると、本件地区計画の決定及び本件条例の制定は、本件土地についての既存の権利者である原告が高層マンション建築のために多額の投資をしている点を無視しているばかりか、その行動を積極的に妨げようとしている点において、景観の保持の必要性を過大視するあまり、既存の権利者の利益を違法に侵害したものというほかない。 ウまた、行政の一貫性という観点から検討するに、前記(1)に認定した事実によれば、本件土地を含む一画は、昭和45年の建築基準法改正により建築物の高さ制限が撤廃され高層の建物が建築される可能性が生じたにもかかわらず、建築物の高さに関する規制が定められないまま放置され、特に、平成8年6月に東京都が行った都市計画決定により、その北側に隣接する大学通り沿いの土地が第一種低層住居専用地域として建築物の高さに関する厳しい規制が課されたにもかかわらず、これとは区別され、大学通り沿道では本件土地だけが文教地区に指定されていなかった上、第二種中高層住居専用地域として、建築物の高さ自体が規制されないばかりか容積率の範囲内で高層マンションを建築することがむしろ推奨されるべき地域とされていたのである。 このような状況に照らすと、本件土地は、行政上の規制の観点からすると、その北側までの大学通り沿いの土地とは正反対に、中高層マンション(中高層という語が何階程度までの建物を意味するかについては、法律上の定義は見当たらないが、常識的にみて、4ないし5階から14ないし15階程度をいうものと理解できる。 日本建築学会編「建築学用語辞典」(第2版)227、473頁参照。)の適地とされ、建物の高さ制限もされていなかったのであるから、原告が容積率の許す限りの高さの分譲用マンションの用地としてこれを取得することは、不動産売買業を営む者として無理からぬものであり、既に )の適地とされ、建物の高さ制限もされていなかったのであるから、原告が容積率の許す限りの高さの分譲用マンションの用地としてこれを取得することは、不動産売買業を営む者として無理からぬものであり、既に用地取得などに多額の支出をしている以上、所期の目的に沿った建物を建築することもまた法的に保護されるべき行為というべきである。 他方、被告国立市長は、本件土地における建築物の高さの制限につき法的拘束力を有する規制をすることなくこれを放置していたばかりか、むしろ高さの制限とは相容れない都市計画が定められていたにもかかわらず、原告の本件建物の建築計画を知るや、にわかに、行政指導においてこれを阻止しようとし、指導要綱を改正してまで原告に対する指導を重ね、しかも、その行政指導の過程においては、原告が被告らが許容する建築物の具体的な高さの明示を求めたにもかかわらず、当時既に本件地区計画の決定も対応案として検討されていたのに、大学通りの景観に調和するよう計画を見直すようにといった程度の応答に終始し、妥当と考える建物の高さを具体的には示さず、また、地区計画や条例による制限があり得ることをも示唆しなかった上、そうした行政指導が功を奏しないとなるや、原告が既に高さ20メートルを超えるマンションを建築する目的で巨額の費用を投じて本件土地を取得し、具体的に建築計画を進め、本件建物の建築のための工事を始めていることを熟知していながら、本件地区計画の決定をし、さらには本件条例を制定したものと認められる。 以上のような被告らの一連の行動は、それ以前における自らの不作為はもとより、東京都の定めた都市計画の内容とも相容れない点において、行政の一貫性を欠くとともに、原告のそれまでの行政規制への信頼を裏切っている点で、自らの行政庁又は地方公共団体としての責務の懈怠により生じ り、東京都の定めた都市計画の内容とも相容れない点において、行政の一貫性を欠くとともに、原告のそれまでの行政規制への信頼を裏切っている点で、自らの行政庁又は地方公共団体としての責務の懈怠により生じた事態の責任を、何ら違法な行為をしていない原告に転嫁するに等しい行為をしたものということができるし、原告が既に多額の投資をして本件建物の建築に着手しようとしていることを無視し、かつその行動を妨げようとした点において、建築基準法68条の2第2項が定める考慮要素を考慮しなかった違法があるというべきであり、これらの行為により原告の権利を侵害した(具体的には、後記のとおり、原告の本件土地所有権を侵害したものである。)ことにつき、不法行為の責めを免れることはできないものといわざるを得ない。 (3) 信用毀損行為前記(1)ヌに認定した事実によれば、被告国立市長は、東京都多摩西部建築指導事務所長に対して、東京高裁決定の判断を尊重した指導をするよう要請しているが、この点は、本件建物が違法建築か否かについての被告ら自身の認識を直接に伝えたものではなく、東京高裁決定における裁判所の判断を尊重するように求めたものであり、しかも、その相手方である東京都多摩西部建築指導事務所長は、後記のとおり東京高裁決定とは異なる認識を有していて、被告国立市長の上記要請には応じていないのであるから、被告国立市長の上記要請の事実をもって原告の社会的信用が毀損されたものとは認められない。 しかしながら、被告国立市長は、国立市議会での一般質問に対する答弁において、被告国立市長の認識として原告の建設している本件建物が違法建築である旨を発言し、さらに、東京都知事等に対して、本件建物のうち高さが20メートルを超える部分について電気・ガス・水道の供給の承諾が留保されるように働きかけ、これが報道 設している本件建物が違法建築である旨を発言し、さらに、東京都知事等に対して、本件建物のうち高さが20メートルを超える部分について電気・ガス・水道の供給の承諾が留保されるように働きかけ、これが報道されたことにより、原告が違法建築をしたとの認識を広く第三者に知らしめたのであるから、これらの発言等により、原告の社会的評価が低下し、その社会的信用が毀損されたことは明らかである。 被告国立市長は、東京高裁決定を引用するなどしてこれを根拠として前記発言をしているが、その引用に係る部分は単なる理由中の判断であって何ら法的拘束力を有するものではない。したがって、この段階では原告の行為が違法建築に当たるとの公権的な判断がされたわけではないのであるから、公的地位にある者が、あたかもそれがされたかのような言動を行うことは、広く第三者に誤った認識を与える点において違法な行為といわざるを得ない。しかも、東京高裁決定に係る事件は、仮処分申請事件における判断である上、本件建物の建築が違反建築であるか否かにつき判断権限を有する東京都多摩西部建築指導事務所長を当事者とする事件についてのものではないから、当事者による適切な主張立証活動を経たものか否かも不確実といわざるを得ないし、東京高裁決定においては、抗告人らに受忍限度を超える損害が生じているとは認められないことを理由として仮処分申請を認めなかったのであるから、同被告の引用に係る部分は、同事件において判断を下す上で必ずしも必要のなかった点について一応の判断を示した、いわゆる傍論にすぎない。また、東京都の特定行政庁はもとより、行政実務は一般に建築基準法3条2項の「現に建築工事中の建築物」には根切り工事が始まった段階を含むとの解釈をとっており、建築基準法3条2項が本件建物に適用される結果、本件建物は建築基準法令に適合し 行政実務は一般に建築基準法3条2項の「現に建築工事中の建築物」には根切り工事が始まった段階を含むとの解釈をとっており、建築基準法3条2項が本件建物に適用される結果、本件建物は建築基準法令に適合した適法なものであると解し、別件訴訟においてもその旨の主張をしており、同事件においてこれと異なる判断を含む判決が言い渡されたことを不服として控訴の上これを争っていること(当裁判所に顕著である。)からすれば、東京高裁決定において上記判断が示されたからといって、公的地位にある者としては、これを無条件で引用することを差し控え、いまだ法的拘束力がないものであることや、これまでの行政実例とは異なる判断であることなどを指摘するなどした上で引用すべきであって、これに全面的に依拠した言動を行うことは著しく慎重さを欠くものであり、上記の言動を正当化することはできない。 そして、被告国立市長の国立市議会での前記発言は、これが公開の審議においてされた発言であることから、同発言が不特定多数の者の知り得るものであること認識していたということができる。また、東京都知事等に対する前記電気・ガス・水道の供給の承諾留保の要請については、当時本件建物の建築に関する被告らの言動が逐一報道されていたのであるから、同要請についても、これが報道され、広く不特定多数の者の知るところとなることは認識していたか又は容易に認識し得たものということができるから、被告国立市長は、これらの言動により原告の社会的信用を毀損することにつき、少なくとも過失があったものと認められる。 (4) 前記(1)に認定した事実及び前記(2)イ及びウに判示したところによれば、本件地区計画の決定及び本件条例の制定につき、被告国立市長及び国立市議会において本件条例の可決をした議員が、原告の権利を侵害することを認識しかつ認容 及び前記(2)イ及びウに判示したところによれば、本件地区計画の決定及び本件条例の制定につき、被告国立市長及び国立市議会において本件条例の可決をした議員が、原告の権利を侵害することを認識しかつ認容していたことは明らかであり、被告国立市長らには、同各行為により原告の権利を侵害することの故意があったものということができ、また、前記(3)に判示したところによれば、被告国立市長による前記信用毀損行為につき、被告国立市長には少なくとも過失があったことは明らかであるから、被告国立市は、原告に対し、国家賠償法1条1項に基づき、これらの行為により原告が被った損害の賠償をすべき義務があるというほかない。 3 争点4(原告の損害)について(1) 本件地区計画の決定及び本件条例の制定による損害についてア原告は、本件地区計画及び本件条例がなければ、原告の所有する本件土地について20メートル以上の高さの建物を建築することにより最有効活用をすることが可能であったのに、本件地区計画の決定及び本件条例の制定により、仮にそれらが有効であるとすると、本件土地上に建物を新築する際には同建物の絶対高さの制限を受けることとなって、これにより本件土地の最有効活用が法律上制限され、その意味において本件土地の所有権を侵害されたものと認められる。しかして、本件建物が存続する限りにおいては、本件土地は上記の制限を受けずに活用されていると考えられるから、上記の制限は本件建物の耐用年数の経過した時点で初めて顕在化するものではあるが、土地の評価は将来的な利用可能性の範囲の広狭により大きく左右されるものであるから、こうした将来の最有効活用が妨げられることとなったことによって、現時点における本件土地の評価が低下していることは明らかであり、原告には現実にこうした損害が発生しているものということが ものであるから、こうした将来の最有効活用が妨げられることとなったことによって、現時点における本件土地の評価が低下していることは明らかであり、原告には現実にこうした損害が発生しているものということができる。 イ本件においては、本件地区計画の決定及び本件条例の制定により原告が被った損害の評価について、不動産鑑定士の鑑定に係る甲第19号証及び甲第20号証が提出されているところ、これらはいずれも、本件における原告の損害を上記アのとおりの性質を有するものと認めて、その評価を行い、原告が現時点(各鑑定における価格時点はいずれも平成12年3月20日である。)で被っている損害の評価をしたものであり、原告の損害額を前者は4億2922万7000円とし、後者は3億0900万円としている。 しかしながら、後者は、本件建物が再築に至るまでの年数を45年としているのに対し、前者はこれを50年としており、後者は、本件建物が集合住宅であって、本件のように再築をする場合には高さ制限により建物の高さを低くし7階建て程度の建物とならざるを得ないことから、建物の戸数等が大きく減少することとなり、そのため本件建物を取り壊して再築することに対する居住者の承諾が極めて得られにくく、その点も上記期間の判断において考慮すべき要素であることを指摘しながら、その点の考慮は前者に比べ必ずしも十分でないものということができ、この点で、不確実性を有する損害の控えめな算定の見地から、再築に至るまでの期間をより長期にみた前者の方が妥当性を有するものといえる。 また、後者の鑑定は、本件土地の最有効使用が集合住宅であり、実際にも本件土地は本件建物の敷地であって、再築する際にもやはり集合住宅の敷地として使用されることを前提とすべきことを認めながら、本件建物の既存不適格建築物化による損害の算定において 合住宅であり、実際にも本件土地は本件建物の敷地であって、再築する際にもやはり集合住宅の敷地として使用されることを前提とすべきことを認めながら、本件建物の既存不適格建築物化による損害の算定においては、建物と本件土地の損害を完全に分離し、生ずべき損害を本件土地の分として割り当てたもののみを損害として算出している。しかしながら、この点については、本件建物のような区分所有建物とその敷地の場合、区分所有建物とその敷地に対する共有持分権等の権利は一体として取引きされるものであり、一体として経済的価値を有するものであることは明らかであるにもかかわらず、本件建物の既存不適格化による損害の算定に当たって本件土地分のみを機械的に区分して抽出した点でその合理性に疑問があるといわざるを得ない。 以上の点に加え、後者の鑑定においては、再築されるべき建物の評価を算出するに当たって、同建物の評価を全く計算上の処理により想定して算出しているのに対し、前者の鑑定においては、計算上の処理による想定に加え、本件土地の近隣において実際に存在する、本件土地に再築可能な建物と同規模の建物を抽出して、これとの比較をも行った上で、再築される建物の想定を行っている点で、前者の鑑定により合理性が認められ、その他の点においても前者の鑑定には特に不合理な点は認められないことをもあわせ考慮すれば、後者の鑑定によるよりも前者の鑑定による損害額の方が結果的には高額の損害を認めるものではあるけれども、前者の鑑定の方がより合理的なものということができ、被告らにおいて、これらの鑑定に対して何らの反証もしていないことをも踏まえると、本件地区計画の決定及び本件条例の制定により本件建物が既存不適格となることによって本件土地の評価が低下して原告が被る損害の額の算定は、前者の鑑定によるべきである。そして、同 いないことをも踏まえると、本件地区計画の決定及び本件条例の制定により本件建物が既存不適格となることによって本件土地の評価が低下して原告が被る損害の額の算定は、前者の鑑定によるべきである。そして、同鑑定によると、本件土地に再建築可能な建物は、本件建物に対し占有床面積で20パーセント少なく、販売単価では9パーセント下回り、平成12年3月20日時点では、本件建物及びその敷地の価格が212億6300万4000円であるのに対し、再建築可能建物及びその敷地の価格は163億4067万5000円で、その差額は49億2232万9000円となり、本件建物の耐用年数を前記のとおり50年として50年後に同額に相当する不利益が現実化するものとし、年利5パーセントの複利計算で現在価格に引き直すと、減価額は4億2922万7000円となるから、本件建物が既存不適格建築物となったことによって原告が被った損害の額は4億円を下らないものと認めるのが相当である。 ウなお、本件において、被告らは、本件建物の建築は本件条例の施行前に着工したものであって本件条例の適用によって違法建築となるものではない旨の原告の主張を積極的には争っておらず、上記損害の算定は同主張を前提としたものであるが、この点については、東京高裁決定が、前記(1)ニのとおり、本件建物は、本件条例の施行の際において建築基準法3条2項にいう「現に建築の工事中」であったと認めることはできず、本件マンションは、その高さの点において本件建築制限条例に違反していて、建築基準法に適合しない建物に当たると判断しており、さらに、別件訴訟における第1審判決も同様の判断を理由中において示していること(当裁判所に顕著である。)からすれば、本件建物の建築については、本件条例が適用されて同建築自体が違法となり得るものであり、その場合には、 における第1審判決も同様の判断を理由中において示していること(当裁判所に顕著である。)からすれば、本件建物の建築については、本件条例が適用されて同建築自体が違法となり得るものであり、その場合には、原告の被る損害は、本件建物を将来建て替える時点で高さの制限を受けることによるものではなく、現時点において本件建物の建築が違法となって現在進行している本件建物の建築を続行できず、さらには既に建設された部分についても違法なものとして撤去命令の対象となることとなって、高さが20メートル以下の建物しか建築できなくなることによる損害であり、証拠(甲11ないし15[枝番号を含む。])においては、その額は約53億円に上るものとされていることからすれば、同損害は、本件建物がその耐用年数を全うするまで適法に使用できることを前提とする前記既存不適格化による損害の額を大きく上回ることは明らかであり、また、本件建物が違法建築物となるとしても、被告らの行為が正当化されるものでもなく、被告国立市は原告に対してその損害を賠償すべきものであることには変わりがないから、本件建物の建築が本件条例に違反するものであっても、少なくとも上記損害額を原告が被告に対して請求できることは明らかである。 エまた、本件地区計画及び本件条例がいずれも違法無効なものであると、客観的には本件土地の利用は何ら制約を受けないものとなるが、これらの定めが取り消されることなく現に存在している以上は、市場においてはこれらが有効な場合もあることを前提とした評価がされることも避けられず、結局、本件土地の現在の市場価格は、これらの定めが有効な場合と異ならないものと考えられる。したがって、原告は、これらの定めが客観的にみて違法無効な場合にも上記損害額を請求できるというべきである。 (2) 信用毀損による損害について 、これらの定めが有効な場合と異ならないものと考えられる。したがって、原告は、これらの定めが客観的にみて違法無効な場合にも上記損害額を請求できるというべきである。 (2) 信用毀損による損害について原告は、被告らの前記信用毀損行為によりその社会的信用を低下させられた上、本件建物の各戸の販売活動においても、事実関係の説明を余儀なくされ、これにより、顧客が不安感や不利益を感じたことは容易に推認されるところであり、これに加えて、信用毀損行為の主体が被告国立市長を中心とする公人により行われたこと、本件建物が大規模な集合住宅であり、本来はその品質も上級のものとして計画され、かつそのとおり評価されるべきものでありながら、販売計画に大幅な遅れを生じ、これにより少なからぬ損害が発生していて、その額は、証拠(甲11)によると約8000万円に上るものとされていることなどの諸事情を考慮すれば、被告らによる信用毀損行為により原告が被った無形損害の金銭的評価は5000万円を下らないものと認められる。 (3) よって、原告は、被告国立市に対し、①本件地区計画の決定及び本件条例の制定により、本件建物が既存不適格建築物となったことによる損害として少なくとも4億円、②被告らによる信用毀損行為により被った損害として少なくとも5000万円の損害賠償を請求する権利があるというべきであり、①の損害のうち3億5000万円及び②の損害として5000万円の合計金4億円の損害賠償金及び①の3億5000万円に対する不法行為の日以後である平成12年2月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払の請求はいずれも理由があるというべきである。しかしながら、②の損害については、原告の信用が毀損されたのは平成13年3月6日の国立市議会での被告国立市長の答弁において原告が本件 による遅延損害金の支払の請求はいずれも理由があるというべきである。しかしながら、②の損害については、原告の信用が毀損されたのは平成13年3月6日の国立市議会での被告国立市長の答弁において原告が本件建物を違法に建築している旨の被告国立市長自身の認識を述べたことによるもので、その後も、被告国立市長は同答弁で述べたのと同様の認識を数次にわたって表しているが、被告国立市長による同認識の表明による原告の損害は既に平成13年3月6日の時点で発生したものということができる。したがって、上記②の損害賠償額5000万円に対する遅延損害金は同日から発生しているものとするのが相当である。よって、②の損害賠償額5000万円に対する遅延損害金の請求のうち、平成12年2月1日から平成13年3月5日までの分の遅延損害金の支払を求める部分には理由がないが、同月6日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の請求には理由があるものと認められる。 第4 結論よって、被告国立市長に対するすべての訴え(請求3、4、6、7に係る訴え)及び被告国立市に対する請求1、2に係る訴えはいずれも不適法であるからこれを却下することとし、請求5については、被告国立市に対し4億円及びうち3億5000万円に対する平成12年2月1日から、うち5000万円に対する平成13年3月6日から、いずれも支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し、その余の被告国立市に対する金員請求には理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき、行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条、62条(被告国立市長は全部勝訴ではあるが、被告国立市の損害賠償債務の発生は被告国立市長の行為に起因することにかんがみ同条の趣旨を類推する。)、64条ただし書、65条1項本文、66条を適用 法61条、62条(被告国立市長は全部勝訴ではあるが、被告国立市の損害賠償債務の発生は被告国立市長の行為に起因することにかんがみ同条の趣旨を類推する。)、64条ただし書、65条1項本文、66条を適用して、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第3部裁判長裁判官藤山雅行裁判官村田斉志裁判官廣澤諭
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