令和7(ネ)10043 損害賠償請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
令和7年10月20日 知的財産高等裁判所 1部 判決 原判決一部取消 東京地方裁判所 令和5(ワ)70079
ファイル
hanrei-pdf-94945.txt

キーワード

判決文本文13,752 文字)

令和7年10月20日判決言渡令和7年(ネ)第10043号損害賠償請求控訴事件(原審・東京地方裁判所令和5年(ワ)第70079号)口頭弁論終結日令和7年9月3日判決 控訴人中日本高速道路株式会社 同訴訟代理人弁護士前田泰志同補佐人弁理士宮部岳志 被控訴人有限会社PXZ 同訴訟代理人弁護士鷹見雅和同訴訟代理人弁理士森 哲也 同補佐人弁理士田中秀哲主文 1 原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。 2 上記の部分につき、被控訴人の請求を棄却する。 3 訴訟費用は第1、2審を通じて被控訴人の負担とす る。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨主文同旨第2 事案の概要等(略語は特記するもののほか原判決の例による。) 1 請求の要旨 本件は、発明の名称を「車両誘導システム」とする特許第6159845号の特許(本件特許)に係る特許権(本件特許権)の特許権者である被控訴人が、原判決別紙物件目録記載1~5の各システム(被告各システム)が本件特許の特許請求の範囲の請求項1及び2に係る各発明(本件各発明)の技術的範囲に属するから、控訴人による被告各システムの使用は本件特許権を侵害する行為であると主張して、控訴人に対 し、民法709条に基づき、特許法102条3項により算定された損害として、6億6860万5594円並びにうち3億4352万3659円(本件特許権の登録日である平成29年6月16日から平成29年法律第44号による改正後の民法の施行日の前日である令和2年3月31日までの被告各システムの使用により生じた損害)に対する令和2年3月31 本件特許権の登録日である平成29年6月16日から平成29年法律第44号による改正後の民法の施行日の前日である令和2年3月31日までの被告各システムの使用により生じた損害)に対する令和2年3月31日から支払済みまで改正前民法所定の年5%の割合による遅 延損害金及びうち3億2508万1935円(同改正後の民法の施行日である令和2年4月1日から本件請求に係る侵害期間の最終日である令和4年9月30日までの被告各システムの使用により生じた損害)に対する令和4年9月30日から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 原審は、2億6744万2241円及びこれに対する令和4年9月30日から支払 済みまで年3%の割合による遅延損害金の支払を求める限度で被控訴人の請求を認容した。 これに対し、控訴人が原判決を不服として控訴を提起した。 2 前提事実本件の前提事実は、原判決の「事実及び理由」第2の2(ただし、(7)及び(8)を除 く。2頁19行目~8頁16行目)に記載のとおりであるからこれを引用する。 3 争点(1) 原審からの争点ア被告各システムが本件発明1の技術的範囲に属するか(争点1)イ被告各システムが本件発明2の技術的範囲に属するか(争点2) ウ信義則違反又は権利濫用(争点3) エ損害の発生及び額(争点4)(2) 当審において追加された争点ア本件特許に無効理由が認められるか(争点5)イ先使用による通常実施権が認められるか(争点6) 4 争点に関する当事者の主張 (1) 争点1(被告各システムが本件発明1の技術的範囲に属するか)及び争点2(被告各システムが本件発明2の技術的範囲に属するか)について(被控訴人の主張)ア後記イ する当事者の主張 (1) 争点1(被告各システムが本件発明1の技術的範囲に属するか)及び争点2(被告各システムが本件発明2の技術的範囲に属するか)について(被控訴人の主張)ア後記イのとおり当審における補充主張(争点1のうち構成要件Fの充足性についての補充主張)を付加するほかは、原判決の「事実及び理由」第2の4(1)及び(2) の各(原告の主張)(14頁6行目~20頁23行目、27頁14行目~同頁18行目)に記載のとおりであるから、これらを引用する。 イ構成要件Fの充足性について(争点1の補充主張)(ア) 構成要件Fの「誘導手段」は、飽くまで、「ETCによる料金徴収が可能な車両」を「第1のレーン」へ、「ETCによる料金徴収が不可能な車両」を「第2のレ ーン」へそれぞれ誘導するものであり、「ETC車専用出入口手前」や「一般車用出入口」まで車両を誘導することは求められていない。そして、「第1のレーン」及び「第2のレーン」は、それぞれ「有料道路料金所、サービスエリア又はパーキングエリアに入る、または前記有料道路料金所、サービスエリア又はパーキングエリアから出るルートへ通じる」及び「再度前記ETC車専用出入口手前へ戻るルート又は一般 車用出入口に通じる」「レーン」であればよい。 また、構成要件Fの「一般車用出入口」は、必ずしも本件各発明に係る車両誘導システムが設置された設備に設置されているものに限られないと解すべきである。このことは、本件明細書の【0063】~【0065】及び【図11】に、一般車用出入口が図示されていないことからも裏付けられる。 (イ) 原判決別紙被告設備図目録に記載された被告各システムの模式図によると、被 告システム1-1、1-3、2-1、2-3、3-1、3-3、4-1 いないことからも裏付けられる。 (イ) 原判決別紙被告設備図目録に記載された被告各システムの模式図によると、被 告システム1-1、1-3、2-1、2-3、3-1、3-3、4-1、4-3、5-1及び5-3において、「ETCによる料金徴収が不可能な車両」は、「第2のレーン」に相当する「レーンd」に誘導され、これを通行して一般道路に合流するが、当該車両は、一般道路を走行して、再度ETC車専用入口手前へ戻ることができるし、一般道路を走行して隣接する他のインターチェンジの一般車用入口に行くこともでき るのであるから、構成要件Fを充足する。 また、被告システム1-2、1-4及び2-4において、「ETCによる料金徴収が不可能な車両」は、「第2のレーン」に相当する「レーンd」に誘導され、これを通行してサービスエリア又はパーキングエリアに戻るが、当該車両は、エリア内の標識・指示(矢印や「ETC出口」等の表示)に従い、再度ETC車専用出口手前に戻 ることができるし、有料道路本線を走行して隣接するインターチェンジの一般車用出口に行くこともできるのであるから、構成要件Fを充足する。 さらに、被告システム2-2、3-2、3-4、4-2、4-4、5-2及び5-4において、「ETCによる料金徴収が不可能な車両」は、「第2のレーン」に相当する「レーンd」に誘導され、これを通行してサービスエリア又はパーキングエリア に戻るが、当該車両は、有料自動車道を走行して隣接するインターチェンジの一般車用出口に行くこともできるのであるから、構成要件Fを充足する。 (控訴人の主張)ア構成要件Aの充足性(争点1関係)(ア) 構成要件Aの「ETC車専用出入口」について、本件特許の最初の原出願(特 願2004-300749。以下、単に「 充足する。 (控訴人の主張)ア構成要件Aの充足性(争点1関係)(ア) 構成要件Aの「ETC車専用出入口」について、本件特許の最初の原出願(特 願2004-300749。以下、単に「最初の原出願」という。その公開特許公報は乙8)には、一般道路と有料道路との出入りをするETC車載器搭載車を誘導するシステムしか開示されていないことや、本件明細書の【0063】~【0065】、【図11】の記載等によると、構成要件Aの「ETC車専用出入口から出入りをする車両」は、「ETC車専用入口から有料道路に入る車両」及び「ETC車専用出口か ら有料道路を出る車両」と解するほかない。 被告各システムは、一般道路とサービスエリア又はパーキングエリアとを出入りする車両を誘導するものであるから、構成要件Aを充足しない。 (イ) 構成要件Aの「誘導」とは、本件明細書の【0065】に「本発明の車両誘導システムによれば、一般車の進入を阻止し、ETC車のみを対象に出来る」とあるように、一般車のETCゲートへの進入を阻止することを指すものと解される。 被告各システムは、非ETC車である一般車がETCゲートに進入することも許しているから、「誘導」を行っておらず、構成要件Aを充足しない。 (ウ) 最初の原出願の明細書の段落【0043】に記載されているETCゲートをゲート前アンテナが設置された地点に設置する実施形態は、最初の原出願における特許請求の範囲の請求項4記載の発明(以下「当初発明4」という。)の発明特定事項で あり、出願人はその後、同請求項を特許請求の範囲から自発的に削除している。そして、当初発明4とは明確に区別された最初の原出願における特許請求の範囲の請求項1記載の発明は、「離脱しえる手段」に相当する第2のレーンがETCゲー 請求項を特許請求の範囲から自発的に削除している。そして、当初発明4とは明確に区別された最初の原出願における特許請求の範囲の請求項1記載の発明は、「離脱しえる手段」に相当する第2のレーンがETCゲートの前方(手前)に配置されることが発明特定事項である。このため、ETCゲートをゲート前アンテナが設置された地点に設置する構成のものは、本件各発明の技術的範囲に含 まれない。 被告各システムは、離脱し得る手段がETCゲートの前方に位置してはいないから、構成要件Aの車両を誘導するシステムには当たらない。 (エ) 本件各発明の車両誘導システムでは、車両を、ETCによる料金徴収が可能と判定される場合とETC処理が行えないと判定する場合とに分けるものである。 被告各システムは、料金徴収に必要な処理が完了した車両を正常ETC車と、料金徴収に必要な処理が完了しなかった車両を異常ETC車又は非ETC車としており、本件各発明のような場合分けは行っていないから、構成要件Aの車両を誘導するシステムには当たらない。 イ構成要件Bの充足性(争点1関係) 構成要件Bの「第1の検知手段」は、「有料道路料金所、サービスエリア又はパー キングエリアに出入りをする車両」を検知して、遮断機を制御するものである。 被告各システムは、前記ア(ア)のとおり、一般道路とサービスエリア又はパーキングエリアとを出入りする車両を誘導するものにすぎないから、「第1の検知手段」を有しない。また、被告各システムには、複数のセンサが設けられているところ、このような場合には、最も手前に配置されたセンサを第1の検知手段とするのが一般的な 解釈である。被告各システムにおいて最も手前に配置されたセンサは、いずれも発進制御機とは対応していない。したがって、被告各システ は、最も手前に配置されたセンサを第1の検知手段とするのが一般的な 解釈である。被告各システムにおいて最も手前に配置されたセンサは、いずれも発進制御機とは対応していない。したがって、被告各システムは、構成要件Bを充足しない。 ウ構成要件Cの充足性(争点1関係)構成要件Cの「第1の遮断機」は、本件明細書の【0008】等の記載によると、 ETC車専用レーンに設けられた「開閉バー」に起因する課題を解決するものであるから、「開閉バー」とは異なるものである。 被告各システムにおける路側無線装置の直後に設けられた発進制御機は、「開閉バー」に相当することが明らかであるから、構成要件Cの「第1の遮断機」には当たらない。 エ構成要件Dの充足性(争点1関係)構成要件Dの「通信手段」は、本件明細書の【0034】及び【0037】によると、「ゲート前アンテナ3」に備えられるものである。 被告各システムでは、「ゲート前アンテナ」に相当する要素を備えていないから、構成要件Dの「通信手段」を有しない。 なお、本件明細書の【0043】には、「ゲート前アンテナ」と「ETCゲート」とを一緒にしてもよい旨が記載されているが、これらを一緒に構成すると、一般車がETCゲートに進入することを許すことになるから、【0063】~【0065】及び【図11】に記載されているスマートインターチェンジの実施例に反することとなる。そうすると、「ゲート前アンテナ」と「ETCゲート」とを一緒にする構成は、 本件各発明の技術的範囲から除かれていると解すべきである。 オ構成要件Eの充足性(争点1関係)構成要件Eの「ETCによる料金徴収が可能か判定」とは、ETC車載器を搭載している全ての車両と通信が可能であることからすると、「ETC車載器を オ構成要件Eの充足性(争点1関係)構成要件Eの「ETCによる料金徴収が可能か判定」とは、ETC車載器を搭載している全ての車両と通信が可能であることからすると、「ETC車載器を搭載している車両かを判定」するものと解すべきである。 被告各システムでは、前記ア(エ)のとおり、料金徴収に必要な処理が完了したか否 かで車両を区別しているから、構成要件Eの「ETCによる料金徴収が可能か判定」をしていない。 カ構成要件Fの充足性(争点1関係)(ア) 構成要件Fの「ETCゲートを通って前記有料道路料金所、サービスエリア又はパーキングエリアに入る」において、有料道路料金所よりも手前に配置される「E TCゲート」がいかなるものかが不明であり、被告各システムは、「ETCゲート」を有しないというほかない。 (イ) 被告各システムにおいて、入口側設備では、有料道路に進入する車両の車種を判別し、車種情報と入口情報を当該車両に引き渡す処理が、出口側設備では、車種情報と入口情報を受け取る処理及び料金を算出する処理が実行されているが、「ETC による料金徴収が可能」かどうかを判定してはいない。 (ウ) 構成要件Fの「ルート」及び「第1のレーン」について、特許請求の範囲の記載及び本件明細書の実施例の記載によると、「ルート」と「第1のレーン」とは異なる構成であって、同義と解する余地はない。そうすると、構成要件Fの「第1のレーン」は、「ETCゲート」よりも進行方向手前に位置するものと解釈するほかはない。 被告各システムにおいては、車両が誘導されるレーンは路側無線装置より先にあるから、構成要件Fの「第1のレーン」に当たらない。 (エ) 構成要件Fの「第2のレーン」について、本件特許の出願人は、当初発明4が公知技術に属する 、車両が誘導されるレーンは路側無線装置より先にあるから、構成要件Fの「第1のレーン」に当たらない。 (エ) 構成要件Fの「第2のレーン」について、本件特許の出願人は、当初発明4が公知技術に属することを認め、特許発明から除外されることを自ら承服した。当初発明4の基本思想である、ETCゲートの後方に設けられたETC車用レーンから離脱 し得る手段と、本件各発明の「第2のレーン」とは全く技術的思想が異なるものであ る。 被告各システムが備えるレーンdは、上記のとおり「第2のレーン」とは異なるETC車用レーンから離脱し得る手段であるから、構成要件Fの「第2のレーン」に当たらない。 (オ) 構成要件Fの「誘導手段」について、運転者次第で所定の誘導先に「通じる」 のみでは「誘導手段」とはいい得ない。 被告各システムにおいては、「再度前記ETC車専用出入口手前に戻るルート」に誘導する誘導手段はないし、「一般車用出入口」に誘導する誘導手段も備えていないから、構成要件Fを充足しない。 キ構成要件G~Kの充足性(争点1及び2関係) 前記ア~カのとおり、被告各システムは構成要件A~C及びFを充足しないから、これらの構成要件を前提とする構成要件G~Kを充足するということもない。 (2) 争点3(信義則違反又は権利濫用)について(控訴人の主張)原判決の「事実及び理由」第2の4(3)(被告の主張)(27頁25行目~28頁 23行目)に記載のとおりであるからこれを引用する。 (被控訴人の主張)原判決の「事実及び理由」第2の4(3)(原告の主張)(28頁24行目~29頁8行目)に記載のとおりであるからこれを引用する。 (3) 争点4(損害の発生及び額)について (被控訴人の主張)原判決の「事実及び理由 の4(3)(原告の主張)(28頁24行目~29頁8行目)に記載のとおりであるからこれを引用する。 (3) 争点4(損害の発生及び額)について (被控訴人の主張)原判決の「事実及び理由」第2の4(4)(原告の主張)(29頁10行目~32頁23行目)に記載のとおりであるからこれを引用する。 (控訴人の主張)原判決の「事実及び理由」第2の4(4)(被告の主張)(32頁24行目~34頁 11行目)に記載のとおりであるからこれを引用する。 (4) 争点5(本件特許に無効理由が認められるか)について(控訴人の主張)仮に、本件各発明の誘導システムが対象とする「ETC車専用出入口から出入りをする車両」(構成要件A)が「ETC車専用入口から有料道路に入る車両」又は「ETC車専用出口から有料道路を出る車両」ではなく、誘導システムがサービスエリア 又はパーキングエリアに設置されている場合でも本件各発明の技術的範囲に含まれ得るとの解釈が採用されるとすると、最初の原出願における特許請求の範囲の請求項1に「一般道路と有料道路との間の料金所にETC車用レーンを有するインターチェンジに利用される車両誘導システム」と記載され、同明細書の段落【0012】、【0017】及び【0020】に同旨の記載があることからすると、出願人が、「サービ スエリア又はパーキングエリア」を追加する補正をしたことは、「願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面・・・に記載した事項の範囲」(特許法17条の2第3項)の規定に違反するものであるから、本件特許は、特許無効審判により無効とすべきものである。 したがって、被控訴人は、控訴人に対し、本件特許権を行使することができない。 (被控訴人の主張)控訴人の主張は争う。なお、控訴 、本件特許は、特許無効審判により無効とすべきものである。 したがって、被控訴人は、控訴人に対し、本件特許権を行使することができない。 (被控訴人の主張)控訴人の主張は争う。なお、控訴人が行った同理由による無効審判請求(無効2024-800108)が成り立たない旨の審決がされているところである(甲24)。 (5) 争点6(先使用による通常実施権が認められるか)について(控訴人の主張) 最初の原出願の出願日よりも前の日である平成16年6月29日、控訴人の前身である日本道路公団(中部支社)は、サービスエリア又はパーキングエリアに接続するスマートインターチェンジに関する社会実験を実施するための「上郷SAスマートIC社会実験協議会」のメンバーとして、上郷SAスマートインターチェンジの設計及び建設工事の実施計画の策定を完了させていた(乙19)。 したがって、控訴人は、少なくとも、本件各発明の内容を知らないでその発明をし た者から知得して、最初の原出願の出願日以前に、現に日本国内においてその事業の準備をしていた者といえるから、本件各発明について、先使用による通常実施権を有している(特許法79条)。 よって、被控訴人は、控訴人に対し、本件特許権を行使することができない。 (被控訴人の主張) 控訴人の主張は争う。乙19に開示されたスマートインターチェンジには、誤って進入した非ETC車を前進走行で退避させるための「第2のレーン」に相当する退避路が設けられておらず、少なくとも本件各発明の構成要件F~Iを備えていない。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所は、被告各システムは本件各発明の技術的範囲に属さないから、控訴 人が被告各システムを使用することは、被控訴人の特許権を侵害する行為には当たらず、 ない。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所は、被告各システムは本件各発明の技術的範囲に属さないから、控訴 人が被告各システムを使用することは、被控訴人の特許権を侵害する行為には当たらず、被控訴人の請求には理由がないから棄却すべきものと判断する。その理由は、次のとおりである。 2 本件発明の概要については、原判決の「事実及び理由」第3の1(34頁13行目~46頁3行目)に記載のとおりであるからこれを引用する。 3 事案に鑑み、争点1及び2(被告各システムが本件発明1又は2の技術的範囲に属するか)のうち、構成要件Fの「ETCによる料金徴収が不可能な車両を、再度前記ETC車専用出入口手前へ戻るルート又は一般車用出入口に通じる第2のレーンへ誘導する誘導手段」との発明特定事項について検討する。 (1) 被告各システムの構成 証拠(甲11、25)及び弁論の全趣旨によると、被告各システムの構成は、次のとおりと認められる(以下、各システムを構成する要素に付した符号は、原判決別紙被告設備図目録に各記載のものである。ただし、同別紙中「発信制御機」とあるのは、いずれも「発進制御機」と読み替える。)。 ア被告各システム共通の構成 ③路側無線装置によるETC通信ができない車両であって、係員による処理もでき なかった車両は、①発進制御機1、⑤発進制御機3及び⑧路側表示器によって、レーンdに誘導される。 イ入口側システムの構成被告システム1-1、1-3、2-1、2-3、4-1、4-3、5-1及び5-3において、レーンdは、一般道路に接続する。 被告システム3-1及び3-3において、レーンdは、それぞれ進入してきたETC車専用入口に向かう車線の反対車線に接続し、その後一般道路に接続する。 いずれのシ ーンdは、一般道路に接続する。 被告システム3-1及び3-3において、レーンdは、それぞれ進入してきたETC車専用入口に向かう車線の反対車線に接続し、その後一般道路に接続する。 いずれのシステムにおいても、レーンdから一般道路に戻された車両の運転者が、自らの意思と判断により、ETC車専用入口を発見して自車を走行させれば、再度、進入を試みたETC車専用入口に到達できる。しかし、レーンdから一般道路に接続 するまでの経路(ルート)上にも、レーンdと一般道路との接続地点にも、当該車両を再度ETC車専用入口へ誘導する標識等があるとは認められず、本件全証拠によってもこれを認められない。 ウ出口側システムの構成被告システム1-2、1-4、2-2、2-4、3-2、3-4、4-2、4-4、 5-2及び5-4において、レーンdは、それぞれサービスエリア(被告システム1-2、1-4、2-2及び2-4)又はパーキングエリア(被告システム3-2、3-4、4-2、4-4、5-2及び5-4)に接続する。 このうち、被告システム2-2、3-2、3-4、4-2、4-4、5-2及び5-4では、レーンdが接続するサービスエリア又はパーキングエリアから、当該車両 が進入を試みたETC車専用出口に再度戻る経路(ルート)はない。 被告システム1-2、1-4及び2-4においては、レーンdからサービスエリアに戻された車両の運転者が、自らの意思と判断により、ETC車専用出口を発見して自車を走行させれば、再度、進入を試みたETC車専用出口に到達できる。しかし、レーンdからサービスエリアに接続するまでの経路(ルート)上にも、レーンdとサ ービスエリアとの接続地点にも、当該車両を再度ETC車専用出口へ誘導する標識等 があるとは認められず レーンdからサービスエリアに接続するまでの経路(ルート)上にも、レーンdとサ ービスエリアとの接続地点にも、当該車両を再度ETC車専用出口へ誘導する標識等 があるとは認められず、本件全証拠によってもこれを認められない。 (2) 「ETCによる料金徴収が不可能な車両を、再度前記ETC車専用出入口手前へ戻るルート・・・に通じる第2のレーンに誘導する誘導手段」についてア前記(1)によると、被告システム2-2、3-2、3-4、4-2、4-4、5-2及び5-4においては、レーンdが接続するサービスエリア又はパーキングエ リアから、当該車両が進入を試みたETC車専用出口に再度戻る経路(ルート)はないのであるから、これらのシステムは、「ETCによる料金徴収が不可能な車両を、再度前記ETC車専用出入口手前へ戻るルート・・・に通じる第2のレーン」を備えていないというほかはない。 イ(ア) 次に、被告システム1-1~1-4、2-1、2-3、2-4、3-1、3 -3、4-1、4-3、5-1及び5-3においては、レーンdが接続する一般道路又はサービスエリアに戻された車両の運転者が、自らの意思と判断により、ETC車専用出入口を発見して自車を走行させれば、再度、進入を試みたETC車専用出入口手前に到達できる。 しかし、「誘導」とは、目的に向かっていざない導くことを意味するところ(広辞 苑第五版・平成10年)、レーンdから一般道路又はサービスエリアに接続されるまでの経路(ルート)上にも、接続地点にも、当該車両を再度ETC車専用出入口へ誘導する標識等があるとは認められないのであるから、当該車両は、上記に掲げた被告各システムによって、ETC車専用出入口手前にいざない導かれている、すなわち誘導されていると評価することは困難である へ誘導する標識等があるとは認められないのであるから、当該車両は、上記に掲げた被告各システムによって、ETC車専用出入口手前にいざない導かれている、すなわち誘導されていると評価することは困難である。 (イ) この点について、被控訴人は、構成要件Fの「誘導手段」は、飽くまで、「ETCによる料金徴収が可能な車両」を「第1のレーン」へ、「ETCによる料金徴収が不可能な車両」を「第2のレーン」へそれぞれ誘導するものであり、「ETC車専用出入口手前」や「一般車用出入口」まで車両を誘導することは求められておらず、「第1のレーン」及び「第2のレーン」は、それぞれ「有料道路料金所、サービスエ リア又はパーキングエリアに入る、または前記有料道路料金所、サービスエリア又は パーキングエリアから出るルートへ通じる」及び「再度前記ETC車専用出入口手前へ戻るルート又は一般車用出入口に通じる」「レーン」であればよいと主張する。 しかし、車両が、「第2のレーン」から出た地点から任意の経路を通じて「ETC車専用出入口手前」や「一般車用出入口」にたどり着き得ることをもって、「再度前記ETC車専用出入口手前へ戻るルート又は一般車用出入口に通じる第2のレーンへ 誘導する」に当たるとするのは、「第2のレーン」が接続する地点を任意の場所とできるというのと実質的に同義であって、「再度前記ETC車専用出入口手前へ戻るルート又は一般車用出入口に通じる」という発明特定事項を無視するものといわざるを得ない。 本件明細書の記載を見ても、「再度前記ETC車専用出入口手前へ戻るルート又は 一般車用出入口に通じる」という発明特定事項は、例えば「レーンEに進んで、・・・再度レーンA、B、Cのいずれかを選択する地点に戻る。」(【0035】)、「レーンEを通 口手前へ戻るルート又は 一般車用出入口に通じる」という発明特定事項は、例えば「レーンEに進んで、・・・再度レーンA、B、Cのいずれかを選択する地点に戻る。」(【0035】)、「レーンEを通って、レーンB又はCの通行券発券ボックス6より前の地点に合流するような構成にしてもよい。なお、レーンB、Cは一般車用レーンであり」(【0036】)等の記載に基づくものであり、そこでは、レーンを走行しさえすれ ば「ETC車専用出入口手前」や「一般車用出入口」に車両がたどり着くように導かれる、すなわち「誘導」されることが示されており、レーンを出た車両が任意の経路を通じてETC車専用出入口手前や一般車用出入口にたどり着き得ることをもって「誘導」とする旨は記載されていない。 したがって、被控訴人の主張は採用することができない。 (ウ) 以上のとおり、被告システム1-1~1-4、2-1、2-3、2-4、3-1、3-3、4-1、4-3、5-1及び5-3は、「ETCによる料金徴収が不可能な車両を、再度前記ETC車専用出入口手前へ戻るルート・・・に通じる第2のレーンへ誘導する誘導手段」を備えるものとはいえない。 (3) 「ETCによる料金徴収が不可能な車両を、・・・一般車用出入口に通じる第 2のレーンへ誘導する誘導手段」について ア前記(1)によると、被告各システムにおけるレーンdは、一般道路、サービスエリア又はパーキングエリアに接続しているところ、被告各システムには、「一般車用出入口」があるとは認められないから、被告各システムは、「一般車用出入口に通じる第2のレーン」を有しないというほかはない。 イこの点について、被控訴人は、構成要件Fの「一般車用出入口」は、必ずしも 本件各発明に係る車両誘導システムが設置され は、「一般車用出入口に通じる第2のレーン」を有しないというほかはない。 イこの点について、被控訴人は、構成要件Fの「一般車用出入口」は、必ずしも 本件各発明に係る車両誘導システムが設置された設備に設置されているものに限られないと解すべきであって、このことは、本件明細書の【0063】~【0065】及び【図11】に、一般車用出入口が図示されていないことからも裏付けられると主張する。 しかし、本件明細書の【図11】及びこれに対応する【0063】~【0065】 には、スマートインターチェンジにおける実施例として、ETCによる料金徴収が可能な車両が通行できるレーン(A→D)と、ETCによる料金徴収が不可能な車両が通行するレーン(A→E)が記載され、「一般車レーンB、Cが無いことを除き、入口料金所12のレーン(A→D)と(A→E)の役割、及び出口料金所13のレーン(A→D)と(A→E)の役割は、図3、4、6及び7のそれと同じである。」と記 載されているにとどまり、当該スマートインターチェンジに隣接する別のインターチェンジの一般車用出入口は記載されておらず、ましてや、ETCによる料金徴収が不可能な車両を、隣接する別のインターチェンジの一般車用出入口まで誘導する具体的手段も記載されていない。本件明細書の他の部分を見ても、車両誘導システムが設置されている施設に隣接する別のインターチェンジの一般車用出入口や、そこへの誘導 手段は記載されていない。なお、【図11】の実施例において、ETCによる料金徴収が不可能であったためにスマートインターチェンジを利用できなかった車両は、レーンEを通行した後、種々の経路を走行して、当該スマートインターチェンジの近隣にある別のインターチェンジの一般車用出入口を利用することがあり得る。しかし、それは チェンジを利用できなかった車両は、レーンEを通行した後、種々の経路を走行して、当該スマートインターチェンジの近隣にある別のインターチェンジの一般車用出入口を利用することがあり得る。しかし、それは、ETCによる料金徴収が可能な車両しか通行できないスマートインターチェ ンジの性質上、ETCによる料金徴収が不可能な車両は近隣の一般車用出入口を利用 せざるを得ないという当然のことであって、その車両の走行挙動を、【図11】の実施例に係る誘導手段による誘導の結果とみることは困難である。 そうすると、本件明細書の記載からは、ETCによる料金徴収が不可能であったためにスマートインターチェンジを利用できなかった車両が、隣接する別のインターチェンジの一般車用出入口を利用することが、本件各発明に係る誘導手段による誘導の 結果であることを読み取ることはできない。 したがって、構成要件Fの「一般車用出入口」に、本件各発明に係る車両誘導システムが設置されている有料道路料金所、サービスエリア又はパーキングエリアに隣接する別のインターチェンジの一般車用出入口が含まれると解することはできない。被控訴人の主張は採用することができない。 (4) 小括以上に検討したとおり、被告各システムは、いずれも、「ETCによる料金徴収が不可能な車両を、再度前記ETC車専用出入口手前へ戻るルート又は一般車用出入口に通じる第2のレーンへ誘導する誘導手段」を備えておらず、本件各発明の構成要件Fを充足しない。 4 結論以上によると、その余の争点について検討するまでもなく、被控訴人の請求は理由がないから全部棄却すべきところ、これを一部認容した原判決は失当であり、本件控訴は理由があるから、原判決中控訴人の敗訴部分を取り消した上、これを棄却すること 検討するまでもなく、被控訴人の請求は理由がないから全部棄却すべきところ、これを一部認容した原判決は失当であり、本件控訴は理由があるから、原判決中控訴人の敗訴部分を取り消した上、これを棄却することとして、主文のとおり判決する。 主文 知的財産高等裁判所第1部 裁判長裁判官 本多知成 裁判官 伊藤清隆 裁判官 天野研司

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る