平成30(行ウ)392 憲法53条違憲国家賠償等請求事件

裁判年月日・裁判所
令和3年3月24日 東京地方裁判所
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判決文本文47,051 文字)

- 1 -令和3年3月24日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成30年(行ウ)第392号憲法53条違憲国家賠償等請求事件口頭弁論終結日令和3年1月13日判決主文 1 本件訴えのうち別紙1「訴え却下部分目録」記載の各部分をいずれも却下する。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は,原告の負担とする。 事実 及び理由 第1 請求1(1) 主位的請求内閣は,原告が,次に,参議院の総議員の4分の1以上の1人として,連名をもって,議長を経由して内閣に対して臨時会の召集の決定を要求した場合に,20日以内に臨時会を召集することができるようにその召集を決定す る義務を負うことを確認する。 (2) 予備的請求原告が,次に,参議院の総議員の4分の1以上の1人として,連名をもって,議長を経由して内閣に対して臨時会の召集の決定を要求した場合に,20日以内に臨時会の召集を受けられる地位を有することを確認する。 2 被告は,原告に対し,1万円及びこれに対する平成29年7月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要衆議院及び参議院の各総議員の4分の1以上の議員が,平成29年6月22日,憲法53条後段及び国会法3条に基づき,連名で,各院の議長を経由して 内閣にそれぞれ要求書を提出することにより,臨時会の召集の決定を要求し(以 - 2 -下,総称して「本件召集要求」という。),安倍晋三前内閣総理大臣(以下「安倍前首相」という。)を首長とする内閣(以下「安倍内閣」という。)は,同日,上記の各要求書(以下,総称して「本件各要求書」という。)を受理したにもかかわらず う。),安倍晋三前内閣総理大臣(以下「安倍前首相」という。)を首長とする内閣(以下「安倍内閣」という。)は,同日,上記の各要求書(以下,総称して「本件各要求書」という。)を受理したにもかかわらず,安倍内閣が,臨時会の召集を決定したのは同年9月22日であり,現実に臨時会が召集されたのは同月28日であったが,衆議院は,同日, 憲法7条の規定に基づき,解散された(以下「本件解散」という。)。 本件は,本件召集要求をした参議院議員の1人である原告が,安倍内閣がした上記の臨時会の召集の決定又は安倍内閣が少なくとも92日間にわたって本件召集要求に対応する臨時会の召集を決定しなかったこと(以下,「本件不作為」といい,上記の臨時会の召集の決定と総称して「本件不作為等」という。) が憲法53条後段に違反するものであるとして,原告が,次に,参議院の総議員の4分の1以上の1人として,連名で,議長を経由して内閣に対して臨時会の召集の決定を要求した場合に,主位的には,内閣が,20日以内に臨時会を召集することができるようにその召集を決定する義務を負うことの,予備的には,原告が,20日以内に臨時会の召集を受けられる地位を有することの各確 認を求める(以下,本件訴えのうち上記の各確認を求める部分を「本件確認訴訟部分」という。)とともに,本件不作為等により,臨時会の召集の決定を要求する権能だけではなく参議院議員として有する諸権能も長期間にわたり行使することができなかったという損害を受け,それを償うに足りる金額は100万円を下らないとして,国家賠償法1条1項に基づき,上記の100万円の一 部である1万円及びこれに対する安倍内閣が本件各要求書を受理した日(平成29年6月22日)から20日を経過した後の日である同年7月13日から支払済みまで民法(平 基づき,上記の100万円の一 部である1万円及びこれに対する安倍内閣が本件各要求書を受理した日(平成29年6月22日)から20日を経過した後の日である同年7月13日から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める(以下,本件訴えのうち国家賠償法に基づく損害賠償を求める部分を「本件国賠請求部分」という。)事案である。 1 国会法の定め - 3 -別紙2「国会法の定め」のとおりである。 2 前提となる事実関係(当事者の間に争いがないか,又は当裁判所に顕著な事実。以下「前提事実」という。)(1) 当事者等ア原告は,平成22年7月11日に行われた第22回参議院議員通常選挙 及び平成28年7月10日に行われた第24回参議院議員通常選挙において,いずれも当選し,その後,現在に至るまで,参議院議員の地位にある者である。 イ安倍前首相は,平成24年12月26日に召集された第182回国会(特別会。以下,便宜,「第182回特別会」,「第193回常会」のように 記載することとする。)において,内閣総理大臣に指名する旨の議決を受け,同日,内閣総理大臣に就任した。その後,平成26年12月24日に召集された第188回特別会及び平成29年11月1日に召集された第195回特別会においても,それぞれ,内閣総理大臣に指名する旨の議決を受けて内閣総理大臣に就任したが,令和2年9月16日,内閣総理大臣を 辞任した。 ウ安倍内閣は,平成24年12月26日,平成26年12月24日及び平成29年11月1日,それぞれ,安倍前首相を首長として組織されたが,同日に組織された内閣は,令和2年9月16日,総辞職をした。 (2) 本件召集要求の経緯等 ア平成 年12月24日及び平成29年11月1日,それぞれ,安倍前首相を首長として組織されたが,同日に組織された内閣は,令和2年9月16日,総辞職をした。 (2) 本件召集要求の経緯等 ア平成29年1月20日に召集された第193回常会(会期末は,同年6月18日)において,いわゆる森友学園問題及び加計学園問題が大きく取り上げられ,連日のように,各議院の会議又は委員会において質疑の対象とされたほか,新聞,テレビ等においても逐次報道が続いていた。 イ第193回常会は,会期が延長されることなく,平成29年6月18 日,その会期が終了した。 - 4 -安住淳(民進党(当時。以下同じ。)代表代行に就任していた衆議院議員)ほか119名の衆議院議員は,同月22日,連名で,衆議院議長大島理森を経由して安倍内閣に対し,臨時会の召集の決定を要求する要求書を提出することにより,足立信也(民進党に所属していた参議院議員)及び原告ほか70名の参議院議員は,同日,連名で,参議院議長伊 達忠一(当時。以下同じ。)を経由して安倍内閣に対し,臨時会の召集の決定を要求する要求書を提出することにより,本件召集要求をした。 安倍内閣は,同日,本件各要求書をいずれも受理した。 ウ安倍内閣は,平成29年9月22日,閣議により,臨時会を同月28日に召集する旨を決定し,第194回臨時会は,同日,召集された。 (3) 本件解散とその後の経緯等ア衆議院は,平成29年9月28日,憲法7条の規定に基づき,解散され(本件解散),参議院も,同時に閉会となった。なお,本件解散は,第194回臨時会の冒頭でされたため,第194回臨時会においては,何らの審議もされることがなかった。 イ第48回衆議院議員総選挙は,平成29年10月22日に行われ,安倍前 ,本件解散は,第194回臨時会の冒頭でされたため,第194回臨時会においては,何らの審議もされることがなかった。 イ第48回衆議院議員総選挙は,平成29年10月22日に行われ,安倍前首相が総裁を務めていた政党である自由民主党が284議席を獲得するなどし,いわゆる政権与党が,衆議院において多数の議席を得た。 (4) 本件訴えの提起原告は,平成30年9月14日,東京地方裁判所に対し,本件訴えを提起 した。 3 争点(1) 本件確認訴訟部分の適法性(争点1。本件確認訴訟部分に係る争点)(2) 国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求の成否(争点2。本件国賠請求部分に係る争点) 4 争点に関する当事者の主張の要点 - 5 -(1) 争点1(本件確認訴訟部分の適法性)について(原告の主張の要点)ア本件確認訴訟部分は,次のとおり,原告が有する権利又は利益の侵害があることの確認を求めるものであって,法律上の争訟に該当する。 (ア) 原告は,内閣が,臨時会の召集の決定の要求に応じないことにより, 原告が国会議員として有する当該要求権(国会法3条の規定振り,国会における先例として定められている召集の決定の要求の手続に照らし,上記の要求権が議院の権能ではなく,個々の議員の権利であることは明らかである。)及び臨時会が召集されることによって行使し得る国会議員としての諸権能が将来において侵害されることがないように本件確認 訴訟部分を提起しているものである。国会議員である原告は,内閣に対して自律性及び独立性を保障されており,自らの憲法上及び国会法上の権利並びに国会議員としての諸権能の将来における侵害を問題とする本件確認訴訟部分は,いわゆる主観訴訟に該当し,法律上の争訟として司法権に服するもの 独立性を保障されており,自らの憲法上及び国会法上の権利並びに国会議員としての諸権能の将来における侵害を問題とする本件確認訴訟部分は,いわゆる主観訴訟に該当し,法律上の争訟として司法権に服するものであることが明らかである。 本件召集要求が,いずれかの議院の総議員の4分の1以上が臨時会の召集の決定を要求したという憲法53条後段が規定する要件を満たすものであったにもかかわらず,安倍内閣が臨時会の召集を決定せず又は当該決定をするのを遅延させた(本件不作為等)ために,国会が開会していれば行使することができたはずの国会議員個人としての権利又は権能 を行使し得なくなった点で,事実上,原告は,公務就任権をはく奪されたに等しい状態に陥ったものである。将来において,再び内閣が憲法を無視することを繰り返して国会議員がそのような事態に陥ることがないようにするのは,司法権の任務である。 (イ) 国会議員は,主権者の代表という憲法上の地位(公法上の地位)を有 し,その特殊性に鑑み,憲法上,特別の個人の権利を与えられており(憲 - 6 -法49条ないし51条),臨時会の召集の決定の要求権も,憲法53条後段により,国会議員の個人の権利として,国会議員一人一人に保障されている権利であると解される。また,国会法並びに衆議院規則及び参議院規則により,国会議員個人に対し,議案発議権,動議提出権,質問権,質疑権,討論権,表決権等が付与されている。 国会議員が有する上記の各権利は,国会議員個人が,内閣を含む他の国家機関から独立してその職権を行使し得るように付与されたものであり,議院内閣制の下において,国会が国民の間に存する多元的な意見及び諸々の利益を立法過程に公正に反映させ,その権能を有効適切に行使するためのものであるから,公益的及び公務 るように付与されたものであり,議院内閣制の下において,国会が国民の間に存する多元的な意見及び諸々の利益を立法過程に公正に反映させ,その権能を有効適切に行使するためのものであるから,公益的及び公務的な側面を有していること は否めない。しかし,そのことは,判例上,選挙権や弁護人が有する接見交通権が公務的性質を有することを前提としつつも個人の主観的な権利とされていることや,違法な措置により公務員の管理職選考試験を受験することができなかったことが個人の主観的な権利を侵害するものであることを前提とした判断がされたことと同様,これらの権利が国会議 員個人の主観的な権利であることを否定する理由とはならない。 (ウ) 個人の職業や地位によって保障された権限又は権能は,当該権限者又は権能者がその行使を妨げられないという側面に注目すれば,それは法的に保護された利益であってその権利性を認めるべきであり,また,議員の職責が公益性を有することと議員の個人的な利益である職業遂行の 権利とを排他的に捉えるべきものではなく,そのように解すべき法令上の根拠もない。このことは,①大学の教員が教授会に出席する資格を有することが当該教員の主観的な権利である旨を判示した裁判例,②法科大学院の教員が講義を行うことが当該教員の主観的な権利である旨を判示した裁判例,③弁護人の接見交通権が当該弁護人の主観的な権利であ ることを前提とした判示をした判例(最高裁昭和49年(オ)第108 - 7 -8号同53年7月10日第一小法廷判決・民集32巻5号820頁。以下「最高裁昭和53年判決」という。)及び④地方議会議員が議会等で発言することは議員としての最も基本的かつ中核的な権利である旨を判示した裁判例から裏付けられる。 その上で,国会議員又は地方議会議員 下「最高裁昭和53年判決」という。)及び④地方議会議員が議会等で発言することは議員としての最も基本的かつ中核的な権利である旨を判示した裁判例から裏付けられる。 その上で,国会議員又は地方議会議員は,国民又は住民の代表者とし て,国会又は地方議会において,議案を提案し,発言又は質問し,採決に参加する権限を有するところ,これらの権限を何らの妨害を受けることなく行使し得ることが保障されることによって初めて,議員は,その職務を行うことができ,かつ,当該職務の遂行は,当該議員の人格的な価値に基づくものであると考えられるから,議員は,自らの職務を果た すために,これらの権限の行使を妨害されずに行使することができる地位を有しているといえ,これは,各議員に保障されたものであって,議員にとっての権利というべきである。 そうすると,国会又は地方議会が召集又は招集されない限り,議員が上記のような諸権利を行使することができない以上,上記のような議員 の権利の1つに臨時会の召集の決定を要求する権利又は地方議会の招集の請求権が含まれることは明らかであり,これが妨害を受けて臨時会又は地方議会が事実上召集又は招集されない場合には,当該召集又は招集されない状態を排除すること又は賠償を受けることによる司法上の救済を受けるということも,当該議員の主観的な権利の行使であるというべ きである。 イ本件確認訴訟部分は,原告が,参議院議員として有する権利又は利益の侵害を問題として,内閣の義務又は自己の公法上の地位の確認を求めるものであって,行政事件訴訟法4条所定の実質的当事者訴訟としての公法上の法律関係に関する確認の訴えに該当する。 確認の訴えについては,確認の利益があることが必要であり,確認の利 - 8 -益の有無は,①紛争の成熟 条所定の実質的当事者訴訟としての公法上の法律関係に関する確認の訴えに該当する。 確認の訴えについては,確認の利益があることが必要であり,確認の利 - 8 -益の有無は,①紛争の成熟性,②確認の訴えを用いることの適切性,③確認対象の適切性の観点から判断されるところ,本件確認訴訟部分については,次のとおり,確認の利益を肯定することができる。 (ア) 本件は,内閣が,憲法53条後段の明文に反し,臨時会の召集を決定しなかった又はこれを怠ったという事案である。そして,①内閣法制局 長官が,臨時会で審議すべき事項等も勘案し,召集のために必要な合理的な期間を超えない期間内に召集を決定しなければならない旨を答弁していたにもかかわらず,安倍内閣が,臨時会の召集を決定せず又はこれを怠ったこと,②安倍内閣の国務大臣であった菅義偉内閣官房長官(当時。現在の内閣総理大臣)が,本件召集要求について,与党と相談して 決めていく旨を述べたり,本件と同様の争点に関する判断を含む判決についてその意義を理解しているとは思えない発言をしたりしたことからすると,原告が,次に,憲法53条後段及び国会法3条に基づいて臨時会の召集の決定を要求したとしても,合理的な期間を超えない期間内(後に記載するとおり,具体的には20日以内)に臨時会が召集されない危 険や不安が現実的なものとして存在し続けるといえる。そして,20日以内に臨時会が召集されなかった場合,原告は,国会議員として有する臨時会の召集の決定の要求権が直ちに侵害され,かつ,他の権利も侵害されることとなる。国会が国権の最高機関であり,原告が,主権者である国民からの厳粛な信託の下にある全国民の代表であることに鑑みると, 20日以内に臨時会が召集されなければ,極めて重大な損害が生ずるおそれが る。国会が国権の最高機関であり,原告が,主権者である国民からの厳粛な信託の下にある全国民の代表であることに鑑みると, 20日以内に臨時会が召集されなければ,極めて重大な損害が生ずるおそれがあり,当該損害は,事後的に義務の存否を争ったり,損害賠償を受けたりすることによっては回復し難い性質のものである。 したがって,本件においては,紛争の成熟性は満たされている。 (イ) 原告の主たる目的は,本件不作為等による償いを金銭で受けることで はなく,憲法秩序の回復にある。内閣が臨時会の召集の決定の要求に応 - 9 -じないこと又はこれを怠ったことにより侵害される権利は,国会議員である原告が,全国民の代表として国権の最高機関において行使することが予定されているもので,かつ,民主政の過程において極めて重要な権利であって事後的に金銭賠償を受けることによっては償うことができない性質のものであるから,今後,このような侵害がされないようにする ためには,内閣の義務又は原告の公法上の地位を確認することが直截的である。 また,内閣による臨時会の召集の決定を義務付ける訴訟については,当該決定が処分性を有するか否か不明であって,行政事件訴訟法上の義務付けの訴えを提起することは困難であり,実質的当事者訴訟としての 給付訴訟により,内閣に臨時会の召集の決定を義務付けることも容易ではない。 したがって,本件は,給付訴訟又は形成訴訟によるよりも,確認訴訟による方が紛争の解決にとって適切な事案である。 (ウ) 確認の対象が将来の事象であるとしても,それが有効適切な場合もあ るところ(最高裁平成13年(行ツ)第82号,第83号,同年(行ヒ)第76号,第77号同17年9月14日大法廷判決・民集59巻7号2087頁(以下「最高裁平成17年 それが有効適切な場合もあ るところ(最高裁平成13年(行ツ)第82号,第83号,同年(行ヒ)第76号,第77号同17年9月14日大法廷判決・民集59巻7号2087頁(以下「最高裁平成17年判決」という。)参照),本件においても,原告が,次に,憲法53条後段及び国会法3条に基づいて臨時会の召集の決定を要求した場合における内閣の義務又は原告の公法上の 地位を確認することが,紛争の解決にとって最も直截的であるから,確認の対象も適切である。 ウ本件確認訴訟部分は,次のとおり,行政事件訴訟法6条所定の機関訴訟には該当しない。 (ア) 機関とは,法人の意思決定をし,法人の行為を執行し,又はそれらを 補助する地位にある一定の自然人又は組織体をいうものとされていると - 10 -ころ,その核心は,当該機関の行為の法的効果が当該法的主体の行為によるものとみなされる点にある。 国会議員は,様々な権限と地位を有しており,国会ないし議院の構成員として個々の行為をその自由な判断によって行える立場にあるから,国会議員の行為は,国会ないし議院の機関としての行為ではなく,国会 を構成する個別の構成員としての行為であり,それが一定の要件を満たした場合に初めて,国家機関である国会の行為であり,かつ,国家の行為であるとみなされるという関係にあるにとどまる。 したがって,国会議員は,衆議院及び参議院を構成する者であるが,衆議院及び参議院の機関としての法的性格を有するものではなく,国会 ないし議院の機関とはいえない。 (イ)a 判例(最高裁昭和26年(オ)第34号同28年5月28日第一小法廷判決・民集7巻5号601頁。以下「最高裁昭和28年判決」という。)の事案は,飽くまでも,義務付け訴訟も公法上の当事者訴訟も法定されていなかった 昭和26年(オ)第34号同28年5月28日第一小法廷判決・民集7巻5号601頁。以下「最高裁昭和28年判決」という。)の事案は,飽くまでも,義務付け訴訟も公法上の当事者訴訟も法定されていなかった行政事件訴訟特例法の下において,町議会議 員が町長に対して町議会臨時会の招集を命ずる旨の判決を求めたものであり,本件のように,国会議員である原告が,議員として有する権利又は利益の侵害を問題として,内閣の義務又は自己の公法上の地位の確認を求めたものではない。また,最高裁昭和28年判決に対しては,行政法の研究者から,疑問の余地がある旨の指摘がされており, 公法上の当事者訴訟としての確認訴訟が明文化された平成16年の行政事件訴訟法の改正後においてもそれが妥当するかは疑わしい。 また,仮に,本件確認訴訟部分に係る請求を裁判所が認容したとしても,裁判所が自ら臨時会の召集を決定したり,臨時会の召集の決定について職務執行命令を発出したりするなど,内閣の権限を裁判所が 代わって行使するような事態にはならないから,最高裁昭和28年判 - 11 -決を前提としたとしても,本件確認訴訟部分が,その射程範囲の外にあることが明らかである。最高裁昭和28年判決は,義務付け訴訟等が認められていない時代における古典的な行政訴訟観(なお,行政裁判法においては,市町村長と市町村参事会との紛争は機関訴訟であると整理され,法律が特別に規定したものに限り,行政裁判所への出訴 が許されるものとされていた。)を前提とした判決であり,本件確認訴訟部分が機関訴訟であることの根拠となるものではない。 b 最高裁昭和28年判決の事案は,町議会議員が,町長に対して町議会臨時会の招集を求める請求をしたものであるところ,地方自治法が定める議員による議会の招集の請求と憲法 との根拠となるものではない。 b 最高裁昭和28年判決の事案は,町議会議員が,町長に対して町議会臨時会の招集を求める請求をしたものであるところ,地方自治法が定める議員による議会の招集の請求と憲法が定める国会議員による臨 時会の召集の決定の要求とは,外形上は類似した構造になっているものの,地方議会の議員と国会議員とでは,独立して職権を行使することを担保するための憲法上の特権の有無等の点で,法的地位が全く異なる(なお,最高裁昭和38年(あ)第1184号同42年5月24日大法廷判決・刑集21巻4号505頁も参照)上,法律によって規 律される地方自治体の内部の紛争について,機関相互間の争いであると整理することができたとしても,国会議員は,国会ないし議院の機関ではなく,構成員であって,地方自治体内部の紛争と同視することはできない。 (ウ) 機関訴訟(行政事件訴訟法6条)は,行政権内部又は議会内部の紛争 に係る訴えに限定され,憲法上の国家機関相互の紛争は,同条が規定する機関訴訟の概念には当たらないと解すべきである。そして,国会議員は,国会の機関ではなく,内閣との関係では,相互に独立な法主体であるから,その意味においても,本件訴えは,機関訴訟には該当しないというべきである。 エ安倍内閣は,本件不作為等に加え,平成27年にも,臨時会の召集の決 - 12 -定の要求に応じなかったことがあり,国会議員である原告は,これらのことによって当該要求権及び臨時会が召集されていれば行使し得たであろう国会議員としての諸権能を現実に侵害された。また,安倍前首相は,あたかも内閣の自由な裁量により,臨時会の召集の時期を決定することができるかのような認識を示す答弁をしている。さらに,衆議院議員131名が, 令和2年7月31日,新 された。また,安倍前首相は,あたかも内閣の自由な裁量により,臨時会の召集の時期を決定することができるかのような認識を示す答弁をしている。さらに,衆議院議員131名が, 令和2年7月31日,新型コロナウイルス感染症問題等の審議を求めて臨時会の召集の決定の要求をしたものの,実際に,臨時会が召集されたのは,上記の要求から47日後であり,かつ,当該臨時会の会期は,僅か3日間であり,内閣総理大臣を指名する国会の議決をすることのみが企図されたものであって,その余の審議等は,何もされなかった。 このような事情を前提とすると,今後も,内閣が臨時会の召集を決定すべき義務に違反する事態を繰り返し,原告がこれまでに受けた国会議員としての権利又は諸権能の侵害が繰り返されるおそれは顕著であるから,本件は,現時点において,当然に争訟性が肯定されるべき事案である。 少数派の国民の選挙権が保障されていたとしても,少数派の国民が支持 する少数派の国会議員による臨時会の召集の決定の要求が内閣によって無視され,臨時会が召集されない事態が生ずれば,少数派の国民が支持する国会議員に対して求める政策,行政監督等が国会において実現されず,結果において少数派の国民の選挙権が画餅に帰し,選挙権がはく奪されているのと実質的には変わらない事態となる。国会議員の当該要求権や臨時 会が召集された場合における国会議員の諸権能が,憲法が保障する国民の選挙権を実質化させるものであることからすると,内閣が,国会議員による当該要求権を無視している場合には,法律の規定が国民の選挙権の行使を不当に認めないものである場合と同様に,内閣の行為の違憲性を裁判所が判断しなければならず,それが,三権分立の制度における司法の使命で ある(最高裁平成17年判決参照)。 - 行使を不当に認めないものである場合と同様に,内閣の行為の違憲性を裁判所が判断しなければならず,それが,三権分立の制度における司法の使命で ある(最高裁平成17年判決参照)。 - 13 -(被告の主張の要点)ア本件確認訴訟部分は,公法上の法律関係に関する確認の訴え(行政事件訴訟法4条)の形式を取ってはいるものの,その実質は,原告が,内閣に対し,20日以内に臨時会を召集することができるよう召集を決定すべきことを求めるものであり,憲法53条後段に基づく臨時会の召集の決定の 要求に対する内閣の対応に関する紛争,すなわち,国の機関相互間における臨時会の召集の決定の要求という権限の存否又はその行使に関する紛争についての訴訟である機関訴訟(行政事件訴訟法6条)にほかならない。 機関訴訟は,法律に定める場合において,法律に定める者に限り,提起することができるものであるところ(同法42条),内閣がする当該決定 に関する事項につき,訴訟を提起することを許容した法律上の規定は存在しないから,本件確認訴訟部分は,不適法なものである。このことは,町議会議員が地方公共団体の長を被告として町議会を招集すべき旨を求めた事案に係る判例(最高裁昭和28年判決)が,当該事案に係る訴えを普通地方公共団体の機関相互間の争いであるとし,法律に特別の規定のない 限り,法律上の争訟として裁判所に訴訟を提起することが許されない旨を判示したことからも明らかである。 イ原告は,①本件確認訴訟部分について,内閣の義務又は自己の公法上の地位の確認を求めているのであり,臨時会の召集の決定を求めているわけではない,②国会議員が有する憲法上及び国会法上の権利並びに国会議員 としての諸権能の将来における侵害を問題としているのであって,主観訴訟に該当し のであり,臨時会の召集の決定を求めているわけではない,②国会議員が有する憲法上及び国会法上の権利並びに国会議員 としての諸権能の将来における侵害を問題としているのであって,主観訴訟に該当し,法律上の争訟として司法権に服することは明らかであるなどと主張する。 しかし,本件確認訴訟部分は,臨時会の召集の決定という内閣に付与された権限に関する紛争であり,国会ないしその構成員である国会議員と内 閣という国の機関相互間における権限の存否又はその行使に関する紛争 - 14 -についての訴訟にほかならないというべきである。また,原告が確認を求める地位とされるものも,国会を構成する両議院の構成員としての地位であって,一般私人の地位に基づくものではないから,個人的な権利利益の保護や救済を目的とするものではない。 したがって,本件確認訴訟部分が,機関訴訟に該当することは明らかで ある。 ウ(ア) 原告は,最高裁昭和28年判決の事案は,本件とは請求の趣旨が異なる上,平成16年に行政事件訴訟法が改正される前のものであるから,本件確認訴訟部分が機関訴訟であることの根拠とはならない旨主張する。 しかし,本件確認訴訟部分は,原告が国会議員として提起した国の機 関相互間における臨時会の召集の決定という権限の存否又はその行使に関する紛争であり,最高裁昭和28年判決の事案は,町議会議員として提起した普通地方公共団体の機関相互間における町議会の招集という権限の存否又はその行使に関する紛争であったから,本件確認訴訟部分に最高裁昭和28年判決の趣旨が当てはまることは明らかである。また, 最高裁昭和28年判決は,上告人が主観訴訟である旨の主張をしたのを機関訴訟であるとして排斥したものであるから,本件確認訴訟部分が主観訴訟である旨の原告の 当てはまることは明らかである。また, 最高裁昭和28年判決は,上告人が主観訴訟である旨の主張をしたのを機関訴訟であるとして排斥したものであるから,本件確認訴訟部分が主観訴訟である旨の原告の主張も,同様に失当である。 (イ) 原告は,①最高裁昭和28年判決の事案は,飽くまでも町議会議員が町長に対して町議会臨時会の招集を命ずる旨の判決を求めた事案であり, 本件確認訴訟部分のように公法上の法律関係に関する確認の訴えではない,②本件確認訴訟部分に係る請求を裁判所が認容したとしても,内閣の権限を裁判所が代わって行使するような事態にはならないなどとして,最高裁昭和28年判決の趣旨が本件確認訴訟部分には当てはまらない旨主張する。 しかし,最高裁昭和28年判決は,最高裁昭和28年判決の事案を普 - 15 -通地方公共団体の機関相互間の争いであると捉えた上で不適法なものと判断しているのであり,当該事案の原告の請求の趣旨のいかんにかかわらず,当該事案の実質をもって当該事案に係る訴えを機関相互間の争いであるとして不適法としたものと解されるのであり,その趣旨は,本件確認訴訟部分にも等しく当てはまるものである。 したがって,原告の主張は,最高裁昭和28年判決を正解したものではない。 (ウ) 原告は,最高裁昭和28年判決が,平成16年の行政事件訴訟法の改正がされる前の古典的な行政訴訟観を前提とした判決であり,本件確認訴訟部分にその趣旨が及ばない旨も主張するが,上記の行政事件訴訟法 の改正が,最高裁昭和28年判決の事案に係る紛争につき,いわゆる客観訴訟である機関訴訟ではなく主観訴訟である抗告訴訟として捉えられることの根拠にはなり得ないから,原告の主張は,失当である。 (2) 争点2(国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請 につき,いわゆる客観訴訟である機関訴訟ではなく主観訴訟である抗告訴訟として捉えられることの根拠にはなり得ないから,原告の主張は,失当である。 (2) 争点2(国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求の成否)について(原告の主張の要点) ア本件不作為等は,次のとおり,国家賠償法1条1項が定める「故意又は過失によって違法に」との要件を充足するものである。 (ア) 安住淳ほか119名の衆議院議員は,平成29年6月22日,連名で,衆議院議長大島理森を経由して安倍内閣に対し,臨時会の召集の決定を要求する要求書を提出することにより,足立信也及び原告ほか70名の 参議院議員は,同日,連名で,参議院議長伊達忠一を経由して安倍内閣に対し,臨時会の召集の決定を要求する要求書を提出することにより,本件召集要求をし,安倍内閣は,同日,本件各要求書をいずれも受理した。本件召集要求は,衆議院議員475名中120名,参議院議員242名中72名の連名によるものであり,いずれの議院においても,総議 員の4分の1を超える数の議員による有効な臨時会の召集の決定の要求 - 16 -であった。 安倍内閣は,平成29年9月22日,閣議により,臨時会を同月28日に召集する旨を決定し,第194回臨時会は,同日,召集されたが,その冒頭で衆議院が解散されたため,参議院も同時に閉会となった。 (イ) 審議の機会がない臨時会が平成29年9月28日に形式的に召集さ れたとしても,これを本件召集要求に応じた臨時会の召集であると評価することはできず,本件召集要求に応じた臨時会の召集はされなかったと評価せざるを得ない上,国会による行政監督権の行使を妨げ,責任政治の原則にも違反するものであるから,このような臨時会の召集の決定は,違憲かつ違法である。 じた臨時会の召集はされなかったと評価せざるを得ない上,国会による行政監督権の行使を妨げ,責任政治の原則にも違反するものであるから,このような臨時会の召集の決定は,違憲かつ違法である。 仮に,上記の臨時会の召集の決定が,本件召集要求に対応したものであると評価し得るとしても,合理的な期間内に臨時会の召集を決定しなかったという不作為(本件不作為)があった事実に変わりはなく,安倍内閣が,臨時会の召集を決定すべき義務を無視したことは,違憲かつ違法である。 (ウ) 安倍内閣は,実質的には本件召集要求に応じた臨時会の召集を決定せず,形式的にも約100日間臨時会の召集の決定を放置したところ,安倍前首相は,国会において,憲法53条後段に基づく臨時会の召集の決定の要求があった場合には,内閣が合理的な期間内に臨時会の召集を決定しなければならない旨の認識を有している旨の答弁をしていたから, 本件不作為等は,安倍内閣の故意によるものと認められる。仮に,本件不作為等が,安倍内閣の故意によるものであるとは認められないとしても,安倍内閣に本件不作為等をしたことに係る過失があることは明らかである。 イ次のとおり,憲法53条後段に基づく臨時会の召集の決定の要求権は, 個々の国会議員が有する主観的な権利又は利益であり,かつ,内閣は,個々 - 17 -の国会議員との関係で当該要求に応ずる法的義務を負うというべきである。 (ア) 憲法53条後段は,議院内閣制の下での行政監督権を有する国会(このことは,原告が内閣に対してした質問に対する内閣の答弁においても,内閣が明確に認めているところである。)を構成する個々の国会議員が,国会の自律権の表れとして,国会の召集の決定を要求することができる という三権分立の制度上当然の権能を定めたもの 弁においても,内閣が明確に認めているところである。)を構成する個々の国会議員が,国会の自律権の表れとして,国会の召集の決定を要求することができる という三権分立の制度上当然の権能を定めたものであり,各議院の総議員の4分の1という少数派に国会の召集の決定の要求権を与えることにより,少数意見を国会に反映させる趣旨のものでもある。このことは,大日本帝国憲法の改正に係る国会の審議の際の政府の答弁や日本国憲法の基となった連合国総司令部の草案の趣旨からも明らかである。 国会議員の権能が保護されることは,国民の信託を受けている個々の国会議員にとって,その十分な活動を保障されるために必要不可欠なものであるから,その前提として国会の召集の決定を要求する権利は,個々の国会議員の固有の利益であり,国家賠償法により救済及び保護される権利又は利益にも該当するというべきである(この点の詳細は,前記(1) (原告の主張の要点)アと同様であるほか,国会議員が,憲法50条が定める要件に反して逮捕された場合や憲法49条に反して歳費の支払を受けられなかった場合,それらの事態が国家賠償の対象となり得ることからも明らかである。)。そして,このように解することが,我が国において真の民主主義を実現するために必要不可欠である。 (イ) ①憲法53条後段は,少数意見の尊重を趣旨とする規定(このことは,国会の総議員の僅か8.6%を占めるにすぎない参議院議員61名が要求すれば,他の圧倒的多数の国会議員がこれに反対したとしても,当該国会議員に対して国会の召集の効果が及ぶこととなることからも明らかである。)であること,②憲法53条後段が規定する臨時会の召集の決 定の要求が,「総議員の4分の1以上」という具体的な数字によって規 - 18 -定されてい 及ぶこととなることからも明らかである。)であること,②憲法53条後段が規定する臨時会の召集の決 定の要求が,「総議員の4分の1以上」という具体的な数字によって規 - 18 -定されていること,③国家機関としての議院や国会が国会議員の要求を取りまとめる手続が法定されていないこと(国会法3条参照),④議院の多数派の意思をもって,個々の国会議員の臨時会の召集の決定の要求を否認する手続が存在しないことに鑑みると,憲法53条後段は,個々の国会議員が内閣に対して国会の召集の決定を要求する権利を有する旨 を規定したものと解すべきであるから(このことは,株主の株主総会開催請求権が個々の株主の権利であると解されることと同様である。),臨時会の召集の決定を要求する権利の主体は,機関としての議院や国会ではなく,個々の国会議員であり,内閣は,個々の国会議員に対し,国会の召集を決定する職務上の法的義務を負うと解すべきである。 (ウ) 被告は,①憲法53条後段が内閣が個々の国会議員との関係において臨時会の召集を決定する義務を負うとは規定していないこと,②憲法が召集の決定を要求した国会議員とそれをしなかった国会議員とを区別して取り扱う旨の規定を置いていないこと,③国会議員は,全国民の代表であり,召集の決定を要求した国会議員とそれをしなかった国会議員と でその役割に差異がないことを理由に,内閣が,個々の国会議員との関係で,臨時会の召集を決定する法的義務を負うものではない旨主張する。 しかし,臨時会の召集の決定の要求権は,個々の国会議員の権利である上,当該要求に係る要求書の作成者も,個々の国会議員であり,先例においても,内閣が臨時会の召集を決定したときは,内閣から当該臨時 会の召集の決定を要求した議員の代表者に対してその旨の通知 ある上,当該要求に係る要求書の作成者も,個々の国会議員であり,先例においても,内閣が臨時会の召集を決定したときは,内閣から当該臨時 会の召集の決定を要求した議員の代表者に対してその旨の通知をするものとされており,議員から召集の決定の要求を受けた衆議院又は参議院の議長が,国会又は各議院として,内閣総理大臣に対して臨時会の召集の決定を要求するのではない。また,憲法53条後段に基づく義務は,個々の国会議員がする臨時会の召集の決定の要求が,その数的要件を充 足したことによって生ずるものであり,個々の国会議員と内閣との関係 - 19 -において規定されている以上,内閣が臨時会の召集を決定すべき義務は,内閣と国会との関係においてだけではなく,少なくとも,臨時会の召集の決定を要求した個々の国会議員と内閣との関係においても生じていると解すべきである。そして,臨時会の召集の決定の効果は,臨時会の召集の決定を要求しなかった国会議員にも及ぶのであり,内閣は,それを 要求しなかった国会議員との関係でも,召集を決定すべき義務を負うことに変わりはない。さらに,召集を決定しないことに伴う不利益は,召集されていない国会に生ずるのではなく,臨時会の召集の決定を要求した個々の国会議員及び当該臨時会において権利を行使し得た国会議員に生ずるといえる。 そうすると,内閣の職務上の法的義務は,臨時会の召集の決定を要求した個々の国会議員及び当該召集の対象となった臨時会において権利を行使し得る個々の国会議員に対して生ずるものと解すべきである。このことは,伝統的な議会と政府との関係が,政府及び与党と野党との対抗関係へ機能的に変化している状況において,憲法53条後段が規定する 臨時会の召集の決定の要求が,多数党の活動に対する適切な抑制を実現し 伝統的な議会と政府との関係が,政府及び与党と野党との対抗関係へ機能的に変化している状況において,憲法53条後段が規定する 臨時会の召集の決定の要求が,多数党の活動に対する適切な抑制を実現し,議会制度を含む民主政の過程を維持するために極めて重要な意義及び機能を有することからも裏付けられる。 ウ次のとおり,内閣は,臨時会の召集の決定の要求があった場合には,召集のために必要な合理的な期間を超えない期間内(具体的には20日以内) に臨時会が召集されるよう臨時会の召集を決定すべき法的義務を負うと解すべきである。 (ア) 内閣法制局長官は,国会において,複数回にわたり,憲法53条後段の要件を満たす臨時会の召集の決定の要求があった場合には,内閣は,召集のために必要な合理的な期間を超えない期間内に臨時会の召集を決 定すべき憲法上の義務を負っていることを認める趣旨の答弁をし,安倍 - 20 -内閣も,内閣として同様の見解を有する旨を明らかにしている。また,大日本帝国憲法の改正に関与した憲法学者や日本国憲法施行後間もない時期の参議院法制局長も同旨の見解を明らかにしている。 そして,憲法には,憲法53条後段のほかにも,明文で期間の制限を設け得る規定があるにもかかわらず,期間の制限が明文では設けられて いないものが複数存在するが,これらの全てが,期間の決定を決定権者の裁量に委ねる趣旨のものではない。憲法53条後段についても,臨時会の召集の決定の要求があったとしても,内閣が,裁量により,臨時会の召集を決定することを先送りにし,常会及び特別会の召集のみを決定することが許されるのであれば,事実上,内閣が立法機関の立法機能や 行政監視機能を奪うことが可能となり,三権の均衡が崩れる。また,外遊していたり,へき地に滞在していたり 特別会の召集のみを決定することが許されるのであれば,事実上,内閣が立法機関の立法機能や 行政監視機能を奪うことが可能となり,三権の均衡が崩れる。また,外遊していたり,へき地に滞在していたりする国会議員が参加することが不可能なほど早期に臨時会が召集されることを防ぐため,憲法53条後段は,臨時会の召集までの具体的な期間を定めていないものと解される。 したがって,憲法53条後段は,具体的な召集の期間を明文で規定し ていないものの,その要件を充足した場合には,内閣に対し,合理的な期間内に臨時会を召集することができるよう臨時会の召集を決定すべき法的義務を負わせ,その諾否や召集の時期については何らの裁量も与えていないものと解すべきであり,このことは,①国務大臣が,大日本帝 要求に応じない事態を想定していない旨の答弁をしていること,②国務大臣の議院への出席に係る憲法63条前段が,国務大臣の議院への出席に関して議院に裁量を認めず,同条後段が,国務大臣に自身の議院への出席に関して裁量を認めていないという構造にあることと,憲法53条 の構造が同じであることからもうかがわれる。 - 21 -(イ) 前記(ア)の合理的な期間は,次の事実を前提とすると,20日以内と解すべきである。 a 憲法及び国会法は,①選挙により新たに国会議員が選出された直後の国会は,選挙の日又は任期の開始の日から30日以内に召集されるべき旨(憲法54条1項,国会法2条の3),②国会を召集する旨が 記載された召集詔書は,常会については召集の日の10日前に交付しなければならない旨(同法1条2項)をそれぞれ定め,臨時会及び特別会については,国会の先例により,召集詔書は,召集の日の7日前に交付されるのが通例とされている。このように,臨時会の召集よりも事 しなければならない旨(同法1条2項)をそれぞれ定め,臨時会及び特別会については,国会の先例により,召集詔書は,召集の日の7日前に交付されるのが通例とされている。このように,臨時会の召集よりも事務の負担が多いはずの上記①の国会の召集についても,30日以 内に召集すべき旨が法定されているから,臨時会の召集については,30日より短い期間で召集することができることは,明らかである。 b 憲法学者の学説には,①召集の決定の要求から召集の決定までの期間は,せいぜい二,三週間とするもの,②できるだけ速やかに召集すべきとするもの,③不当な引き延ばしは権利の濫用である旨のもの, ④政治的な理由で召集の決定を不当に延期することは,制度の趣旨に反する旨のものなどがある。 c 国会における先例は,別紙3のとおりである。これによれば,多くの内閣が,臨時会の召集の決定の要求を受けてから20日以内に臨時会を召集している。 d 自由民主党が作成した日本国憲法改正草案の53条後段においても,臨時会の召集の決定の要求を受けてから20日以内に臨時会が召集されなければならない旨が明記されている(甲A6)。長年政権を担当してきた自由民主党の経験を前提としても,実務的には,臨時会の召集の決定の要求を受けてから20日以内に臨時会が召集されることは 十分に可能であることを示しており,また,自由民主党としても,こ - 22 -の程度の期間で臨時会が召集されるべきである旨の見解を明らかにするものである。 e 憲法が制定された昭和21年当時,日本国内の交通網,情報通信網は,現代とは比較にならないほど貧弱であり,内閣が国会の召集の決定を公表したとしても,国会議員が,その情報を知り,かつ,国会に 赴くまでに相当の期間を要する事態が少なからず存在し 網,情報通信網は,現代とは比較にならないほど貧弱であり,内閣が国会の召集の決定を公表したとしても,国会議員が,その情報を知り,かつ,国会に 赴くまでに相当の期間を要する事態が少なからず存在していたものと推察される。他方,現在は,交通網及び情報通信網が発達し,内閣が国会の召集の決定を公表した日に,国会議員がこれを知ることができ,また,短時間で国会に赴くことができるから,憲法が施行された当時と比較して,より短期で国会の召集を決定することが可能である。 エ本件不作為等は,前記ア(イ)のとおり,安倍内閣が負っていた臨時会の召集を決定すべき法的義務を無視した違憲かつ違法なものであるところ,これは,昭和47年以降に臨時会の召集の決定の要求があった事案と比較しても,召集の決定の要求があった時から実際に臨時会が召集された日までの期間が長く,違法性の程度が高い。しかも,本件解散により,第194 回臨時会においては,何らの審議もされなかったのであり,その意味においても,国会議員の権利又は権能に対する侵害の程度が重いといえる。なお,内閣が,過去にも,合理的な期間を大きく超えて臨時会の召集を決定した事例が複数存在するが,違憲な先例が何度反復したとしてもそれが合憲なものになるわけではなく,内閣の裁量によって臨時会の召集を決定す る時期を決定してよいとの慣例も政治的な合意も存在していないから,過去の先例の存在をもって本件不作為が憲法に適合すると解することはできない。 また,安倍内閣は,召集の決定時期を先送りにすることにより,少数派の国会議員の国会の召集の決定の要求を事実上無意味にしたり,その効力 を減殺したりしたものであって,憲法が予定する議院内閣制,三権分立の - 23 -趣旨を大きく損なう結果を生じさせたのであり, 議員の国会の召集の決定の要求を事実上無意味にしたり,その効力 を減殺したりしたものであって,憲法が予定する議院内閣制,三権分立の - 23 -趣旨を大きく損なう結果を生じさせたのであり,これは,少数者の人権を保障した憲法の趣旨を大きく逸脱するものである。 このように,本件不作為等は,極めて異例なものであり,違法性が極めて高い。 オ(ア) 本件不作為等の結果,原告は,国会議員として有する国会の召集の決 定の要求権を直接侵害され,召集されるべき臨時会において,議案発議権,動議提出権,質問権,質疑権,討論権及び表決権を行使することができなかったという損害(上記のものがいずれも原告が有する主観的な権利又は利益であることの詳細については,前記イ(ア)のとおりである。)を被ったほか,有権者や支援者から批判を受けるに至った。 (イ) 前記(ア)の損害を金銭に換算すると,100万円は下らない。また,遅延損害金の起算日は,本件召集要求があった日から20日を経過した日である平成29年7月13日というべきである。 カ被告は,憲法53条後段に基づいて内閣がする臨時会の召集の決定は,いわゆる統治行為に該当するとして,当該決定の適否等には,裁判所の司 法審査が及ばない旨主張するが,次のとおり,誤りである。 (ア) 被告は,裁判所が内閣がする臨時会の召集の決定の適否又は当不当について司法審査を及ぼすことは,憲法が定める議院内閣制の下における内閣と国会との均衡,抑制関係ないし共働関係を損なうことになりかねない旨主張する。 しかし,そもそも,憲法53条後段は,議院内閣制の下における少数派の議員の意思を尊重する趣旨又は国会の自律権を保障する趣旨の規定であり,議院内閣制における国会と内閣との均衡,抑制関係に係るものではない し,そもそも,憲法53条後段は,議院内閣制の下における少数派の議員の意思を尊重する趣旨又は国会の自律権を保障する趣旨の規定であり,議院内閣制における国会と内閣との均衡,抑制関係に係るものではない。そして,憲法53条後段に基づいて内閣がする臨時会の召集の決定は,憲法が,国会の召集を天皇の国事行為としており,内閣の助 言と承認を必要とするため,内閣に国会の召集の手続を行わせているに - 24 -すぎず,臨時会の召集に必要となる単純な事務手続をさせているにとどまるから,当該規定をもって,被告の主張を正当化することは困難である。内閣が臨時会の召集を決定しない事態は,議院内閣制の下における国会と内閣との均衡,抑制関係ないし共働関係の基礎となる国会の活動の前提を成す行為をしないものであり,内閣が,国会の自律的権能を侵 害し,憲法の定める国会と内閣との均衡,抑制関係を損なわせている状況にあるといえる。 このように,内閣が,国会の自律的権能を侵害する場合には,司法権が国会の内閣に対するチェックシステムを回復させる責務を負う場面であるといえる。 (イ) 被告は,内閣がする臨時会の召集の決定が,国会の活動を行う前提となることは,内閣による当該決定の国法上ないし政治上の意義が重大であることを意味し,裁判所による審査が及ぶことを否定すべき事情であり,このことは,衆議院の解散は統治行為であって裁判所の審査権が及ばない旨を判示した判例(最高裁昭和30年(オ)第96号同35年6 月8日大法廷判決・民集14巻7号1206頁。以下「最高裁昭和35年判決」という。)の論理からも裏付けられる旨主張する。 しかし,憲法53条後段に基づく臨時会の召集の決定の要求そのものが政治性を有することは事実であるものの,同条後段は,内閣は,その召集を 年判決」という。)の論理からも裏付けられる旨主張する。 しかし,憲法53条後段に基づく臨時会の召集の決定の要求そのものが政治性を有することは事実であるものの,同条後段は,内閣は,その召集を決定しなければならないとして,内閣の法的義務を定めており, 臨時会の召集の決定について,召集するか否かについて内閣の政治的判断が入り込む余地はなく(内閣には実質的な決定権がなく),その召集の時期についても,憲法53条後段の趣旨である少数派の国会議員の権利の保障に鑑み,おのずから合理的な期間内と定まるのであり,物理的及び事務的な判断要素以外の政治的,党派的な判断要素が入り込む余地 はないはずであって,極めて制限された裁量しかないはずである。仮に, - 25 -何らかの政治的な判断要素が入り込むことがあるとしても,それは司法審査権の外に置く理由となるほどの高度の政治性は有しない。 そうすると,臨時会の召集の決定も衆議院の解散も,内閣が決定すべき事項であるという点で共通するとしても,その憲法上の機能,役割及び性質は全く異なるから,本件に最高裁昭和35年判決の論理は当ては まらないといえる上,内閣が,臨時会の召集を決定するか否かを権力の分立又は議院内閣制に基づく国会との均衡,抑制のための政治的手段として用いることはできず,その判断に政治的要素も含まれないから,統治行為を適用する前提も欠くことになる。 (ウ) 現代国家においては,議会と政府との対立関係は,議会内部における 多数派と少数派との対立関係に変ぼうしており,少数派の国会議員による臨時会の召集の決定の要求権は,政府及び多数派の活動に対する適切な抑制を実現するために,また,民主政の過程を維持するために極めて重要な機能を有するものである。憲法53条後段の臨時会の召集の決 による臨時会の召集の決定の要求権は,政府及び多数派の活動に対する適切な抑制を実現するために,また,民主政の過程を維持するために極めて重要な機能を有するものである。憲法53条後段の臨時会の召集の決定の要求権は,憲法が規定する少数派の国会議員の様々な権利を行使する 前提を成す基本的な権利であるといえる。 内閣が,憲法53条後段に基づく臨時会の召集の決定の要求に対応する臨時会の召集を決定しない事態は,国会という内閣がする臨時会の召集の決定の適否,当不当の評価について議論され,内閣の政治的責任が追及されるべき場(なお,国会外における議論は,法的に担保されてい るものではなく,質問権等が保障されている国会と同視することはできない。)が設定されず,国民が政治判断を行うための判断材料を得る場が設定されないという問題を生じさせるものであって,政治の場において議論し,国民の選挙を通じた政治判断に委ねる基礎を欠いているものである。そして,憲法53条後段の権利の性質上,その侵害は,各議院 の少数派の国会議員の権利及びその背後に存在する少数派の国民の権利 - 26 -の侵害に関わる事項であり,民主政の過程を阻害する事象であるから,選挙という多数派を問う方法で国民にその当否の判断を委ねることはできず,選挙に委ねるのは,正に背理であって,司法権が積極的に違憲審査を及ぼすべき事項に該当する。 統治行為又はそれに類似した理論は,形式的には,司法権の任務に属 する事項であっても,その事柄の性質上,司法審査を及ぼすことによって国政を混乱させて国民に害を与えかねない場合に,例外的に政治部門にその解決を委ねることが正当化されることを根拠とするものであり,憲法の定める民主政治の秩序を前提として政治部門の裁量に委ねるべき行為があることを認めて 民に害を与えかねない場合に,例外的に政治部門にその解決を委ねることが正当化されることを根拠とするものであり,憲法の定める民主政治の秩序を前提として政治部門の裁量に委ねるべき行為があることを認めているにすぎない。 (エ) 被告の主張を前提とすると,内閣が,①敵対的な立場をとる国会議員に対し,虚偽の事実に基づく質問をしたとして,これを謝罪するまでの間はその歳費を減額し,又はその支給を停止する旨の閣議決定をした上で,歳費の減額又は支給の停止をした場合,②常会を召集しない場合等の明らかな憲法違反となる行為をしたとしても,高度に政治性を有する 行為であることを理由として司法審査が及ばないという結論となるが,これは,憲法49条,51条,52条の存在意義を失わせ,死文化させるものであることは,明らかであり,失当であることも明らかである。 (オ) 最高裁昭和35年判決は,飽くまでも,直接国家統治の基本に関する高度の政治性のある国家行為について,それが統治行為である旨を述べ ているのであり,内閣と国会の抑制,均衡関係ないし共働の行為一般について述べているものではない。衆議院の解散という国法上及び政治上の意義が重大で影響の大きい行為と,少数派の議員からされた臨時会の召集の決定の要求に応じてされる臨時会の召集の決定という事務的な行為を同列に置くことはできない。しかも,上記の判例以外には,最高裁 が,統治行為である旨を述べたものはなく,上記の判例は,特異な存在 - 27 -であって,すでにその歴史的使命を終えたものである。 (カ) 諸外国においても,裁判所は,政治部門の行為に対して違憲審査権を行使することにちゅうちょせず,積極的な憲法判断をすることが国民から支持を受け,付随的違憲審査制と抽象的違憲審査制が近付きつつある傾 諸外国においても,裁判所は,政治部門の行為に対して違憲審査権を行使することにちゅうちょせず,積極的な憲法判断をすることが国民から支持を受け,付随的違憲審査制と抽象的違憲審査制が近付きつつある傾向にある。このことは,近年,英国において,議会の閉会に関する首 相の助言が違法であるか否かについても,司法審査の対象となる旨を連合王国最高裁が判示したことからもうかがわれる。 日本においても,仮に,国会と内閣との関係に関する事柄であるというだけで,裁判所が違憲審査権を行使せず,内閣が国会議員に対して一切法的な責任を負わないというのであれば,内閣が国会を無視し,違憲 な行為を繰り返しても,裁判所はこれを放置するほかなく,選挙で勝ちさえすればよいということになり,外見的には法の支配を標ぼうしつつも,その実態は立憲主義も議会制民主主義もない前近代的国家であるとのそしりを免れないこととなる。 裁判所は,内閣の判断を追認するために存在するのではなく,主権者 である国民が政治部門に委ねた憲法の枠組みに沿った国家の運営がされているか否かを厳格に監視するために存在するものであり,違憲性の判断を避けることにより,自らその存在意義を否定してはならない。 (キ) 近時,いわゆる部分社会の法理を理由として地方議会における出席停止処分について司法審査の対象とはならないとしてきた従前の判例を変 更する内容の最高裁判決(最高裁平成30年(行ヒ)第417号令和2年11月25日大法廷判決・裁判所時報1757号3頁)が言い渡されたところ,同判決の趣旨に照らすと,裁判所が,国権の最高機関である国会(臨時会)が内閣の不作為によって召集されない事態について,統治行為又はそれに類似した理論を用いて司法審査を放棄することは許さ れないというべきである。 ,裁判所が,国権の最高機関である国会(臨時会)が内閣の不作為によって召集されない事態について,統治行為又はそれに類似した理論を用いて司法審査を放棄することは許さ れないというべきである。 - 28 -キ被告は,仮に,内閣が,憲法53条後段に違反した行為をしたとしても,内閣は,憲法66条3項により,国会に対する政治的責任を負うにとどまるから,当該行為は,国会議員との関係においても,国家賠償法1条1項にいう「違法」な行為としての評価を受ける余地がない旨主張するが,次のとおり,誤りである。 (ア) 憲法66条3項を,内閣が行政権の行使について国会に対して連帯して政治的責任を負うにとどまり,個々の国民に対して職務上の法的義務を負うことがあり得ない趣旨のものと解するとすると,内閣は,国民に対する職務上の法的義務を負わないこととなって国家賠償法を死文化させ,憲法17条にも反することになるから,このような解釈は取り得な いのであって,被告の主張は,およそ理由がない。 (イ) 本件は,国会議員からの臨時会の召集の決定の要求(本件召集要求)に対する内閣の作為又は不作為(本件不作為等)という個別の行為の違法性を問題としているのであり,内閣が,個々の国会議員に対して負う職務上の法的義務が存在する以上,これに違背してされた行為について は,法的に違法なものとしての評価が与えられるべきである。そして,内閣が,上記のような法的義務に違反した場合には,個々の国会議員の権利を具体的に侵害することとなるから,法的な責任を負うこととなると解される。仮に,政治的責任しか負わないと解するとすると,国会が召集されないために政治的責任を負うこと自体が実現されず,内閣が何 ら実効的な責任を負わないこととなる結果を招き不当である。 ( 解される。仮に,政治的責任しか負わないと解するとすると,国会が召集されないために政治的責任を負うこと自体が実現されず,内閣が何 ら実効的な責任を負わないこととなる結果を招き不当である。 (ウ) 判例(最高裁昭和53年(オ)第1240号同60年11月21日第一小法廷判決・民集39巻7号1512頁(以下「最高裁昭和60年判決」という。),最高裁平成17年判決)はいずれも,原則としては,政治的責任を負うにとどまって個別の国民の権利に対応した関係での法 的義務を負うものではない場合であっても,例外的には国家賠償法1条 - 29 -1項の規定の適用上,違法の評価を受けることがあるとしているから,内閣が,憲法66条3項により,国会議員との関係において政治的責任を負うにとどまるとしても,このことから直ちに,臨時会の召集の決定が国家賠償法1条1項の適用上違法と評価される余地はないという結論が導かれるわけではない。 (エ) 憲法66条3項は,大日本帝国憲法において,国務大臣がその職務の行使について天皇に対して個別に責任を負うと解されていたのを,行政権の行使の全般につき,内閣が,国会に対し,連帯して政治上の責任を負うものとして,民主的責任政治の実現を図る趣旨のものであって,内閣が,個々の国会議員に対する法的義務に違反した際の責任につき,法 的責任を制限する趣旨のものではない。内閣が,国会に対して負う義務をもって,国会議員に対して負う義務と同視するのは,論理の飛躍があるというべきである。 (被告の主張の要点)ア臨時会の召集の決定は,次のとおり,統治行為に該当するから,裁判所 の司法審査権が及ばないものと解すべきであり,これと異なる原告の主張は,失当である。 (ア) 憲法が採用する三権分立の原理及び議院内閣制の 決定は,次のとおり,統治行為に該当するから,裁判所 の司法審査権が及ばないものと解すべきであり,これと異なる原告の主張は,失当である。 (ア) 憲法が採用する三権分立の原理及び議院内閣制の下では,政治部門である内閣と国会との関係に係る内閣又は国会の意思決定等の適否や当不当について裁判所が司法審査を行うことは,憲法が定めた内閣と国会と の均衡,抑制関係ないし共働関係を損なうことになりかねない上,その適否や当不当については,政治部門である内閣及び国会に委ねられており,最終的には国民の選挙を通じた政治判断に委ねられるべきものであるところ,衆議院の解散は,正に,議院内閣制の下における内閣と国会との均衡,抑制関係に係る内閣の意思決定であり,その国法上又は政治 上の意義も重大であるから,三権分立の原理に由来する司法権の憲法上 - 30 -の本質に内在する制約として,裁判所の司法審査権が及ばないものといえる。最高裁昭和35年判決からもそのことは裏付けられる。 憲法53条後段に基づいて内閣がする臨時会の召集の決定は,一定数以上の国会議員において国会が召集されるべき必要性があるとの政治的判断をした場合に,その判断に基づいてされるものであるから,その召 集の時期に係る判断を含め,その国法上又は政治上の意義も重大であり,おのずから高度に政治性を有する行為といえる上,議院内閣制の下における内閣と国会との均衡,抑制関係ないし共働関係の基礎となる国会の活動の前提となるものであるから,衆議院の解散と同様,その内閣の意思決定の適否や当不当について裁判所が司法審査権を及ぼすことは,憲 法が定めた内閣と国会との関係を損なうことになりかねず,その適否や当不当の評価については,国民に対して政治的責任を負う内閣及び国会に委ねられており, いて裁判所が司法審査権を及ぼすことは,憲 法が定めた内閣と国会との関係を損なうことになりかねず,その適否や当不当の評価については,国民に対して政治的責任を負う内閣及び国会に委ねられており,最終的には国民の政治的判断に委ねられるべきものである。 したがって,憲法53条後段に基づいて内閣がする臨時会の召集の決 定についても,憲法が採用する三権分立の原理に由来する司法権の憲法上の本質に内在する制約として,裁判所の司法審査権が及ばない。 (イ) 原告は,憲法53条後段に基づく臨時会の召集の決定の要求そのものが政治性を有することは事実であるものの,同条後段は,内閣は,その召集を決定しなければならないとして,内閣の法的義務を定めており, 臨時会の召集の決定について,召集するか否かについて内閣の政治的判断が入り込む余地はなく(内閣には実質的な決定権がなく),その召集の時期についても,憲法53条後段の趣旨である少数派の国会議員の権利の保障に鑑み,おのずから合理的な期間内と定まるのであり,物理的及び事務的な判断要素以外の政治的,党派的な判断要素が入り込む余地 はないはずであって,仮に,何らかの政治的な判断要素が入り込むこと - 31 -があるとしても,それは,司法審査権の外に置く理由となるほどの高度の政治性を有するものではない旨主張する。 しかし,前記(ア)のとおり,臨時会の召集の決定の要求は,それ自体が高度に政治性を有するものであるから,それを契機としてされる臨時会の召集の決定も,議院内閣制の下における内閣と議会との均衡,抑制関 係ないし共働関係の基礎である国会の活動の前提となっており,その国法上ないし政治上の意義が重大であることに照らして高度に政治性を有する行為であるといえる。また,憲法53条後段には,臨時 抑制関 係ないし共働関係の基礎である国会の活動の前提となっており,その国法上ないし政治上の意義が重大であることに照らして高度に政治性を有する行為であるといえる。また,憲法53条後段には,臨時会の召集の時期を含む召集の決定について何らの定めも置かれていないことを踏まえると,当該決定に係る判断は,臨時会の召集の決定を要求した国会議 員が審議を求める事項に限らず,当該臨時会で審議すべき事項等を勘案し,召集に当たって整理すべき諸課題等も踏まえてされるものであるといえるから,臨時会の召集の決定の要求により一義的に臨時会の召集を決定すべき期限が定まるとはいえない。そして,このような内閣の意思決定に対して裁判所の司法審査が及ぶとすれば,裁判所が,国会の活動 の前提となる内閣の意思決定を制約したり,国会の活動に影響を及ぼしたりすることになりかねず,国政調査権(憲法62条)や内閣不信任決議(憲法69条)等の権能の行使を通じて実現されるべき憲法が定めた内閣と国会との関係が損なわれるおそれも生ずる。 そうすると,憲法53条後段に基づいて内閣がする臨時会の召集の決 定の適否又は当不当の評価は,国民に対して政治的責任を負う内閣及び国会に委ねられ,最終的には国民の政治判断に委ねられるべきである。 したがって,原告の主張は,最高裁昭和35年判決を正解しないものである。 (ウ) 原告は,内閣が,臨時会の召集を決定しない事態は,議院内閣制の下 における国会と内閣との均衡,抑制関係ないし共働関係の基礎となる国 - 32 -会の活動の前提を成す行為をしないものであり,内閣が,国会の自律的権能を侵害し,憲法の定める国会と内閣との均衡,抑制関係を損なっている状況にあるから,司法権が国会の内閣に対するチェックシステムを回復させる責務を負 成す行為をしないものであり,内閣が,国会の自律的権能を侵害し,憲法の定める国会と内閣との均衡,抑制関係を損なっている状況にあるから,司法権が国会の内閣に対するチェックシステムを回復させる責務を負う場面であるといえる旨主張する。 しかし,前記(ア)のとおり,憲法53条後段に基づいて内閣がする臨時 会の召集の決定についても,最高裁昭和35年判決が判示した裁判所の司法審査権が及ばない実質的な根拠が妥当するところ,それが憲法の採用する三権分立の原理に由来する司法権の憲法上の本質に内在する制約である以上,憲法が三権分立の原理を採用していることを理由として,内閣がする臨時会の召集の決定について司法審査を及ぼすことを根拠づ けることはできない。 (エ) 原告は,内閣が,憲法53条後段に基づく臨時会の召集の決定の要求に対応する臨時会の召集を決定しない事態は,国会という内閣がする臨時会の召集の決定の適否,当不当の評価について議論されるべき場(なお,国会外における議論は,法的に担保されているものではなく,質問 権等が保障されている国会と同視することはできない。)が設定されず,国民が政治判断を行うための判断材料を得る場が設定されないという問題を生じさせるものであって,政治の場において議論し,国民の選挙を通じた政治判断に委ねる基礎を欠くところ,憲法53条後段の権利の性質上,その侵害は,各議院の少数派の国会議員の権利及びその背後に存 在する少数派の国民の権利の侵害に関わる事項であり,民主政の過程を阻害する事象であるから,選挙という多数派を問う方法で国民にその当否の判断を委ねることはできず,選挙に委ねるのは,正に背理であって,司法権が積極的に違憲審査を及ぼすべき事項に該当する旨主張する。 しかし,内閣がする臨時会の召集の決定の適否又 う方法で国民にその当否の判断を委ねることはできず,選挙に委ねるのは,正に背理であって,司法権が積極的に違憲審査を及ぼすべき事項に該当する旨主張する。 しかし,内閣がする臨時会の召集の決定の適否又は当不当は,当該臨 時会のみならず,その後の国会でも議論の対象となり得る上,最終的に - 33 -は,選挙を通じた国民による政治的判断に委ねられるべきものである。 イ仮に,臨時会の召集の決定につき,裁判所の司法審査権が及ぶと解したとしても,次のとおり,内閣は,国会又は国会議員との関係では,政治的責任を負うにとどまり,内閣が個々の国会議員との関係において法的責任を負う余地がある旨の原告の主張は,いずれも失当である。 (ア) 憲法66条3項は,内閣は,行政権の行使について,国会に対して連帯して責任を負う旨を規定しているが,これは,内閣に帰属する行政権の行使を国会による民主的な統制の下に置くという基本的な原理を明らかにすることにあり,その責任の原因が違法な行為に限られていないことからすれば,当該責任は,政治的責任を意味するものと解され,この ことは,内閣が一定の行為をすべき憲法上の義務(これは,国家賠償法1条1項の適用上問題となる職務上の法的義務とは異なるものである。)を負うと解される場合であっても同様である。 また,①憲法53条後段は,内閣が臨時会の召集の決定を要求した個々の国会議員との関係において臨時会の召集を決定する義務を負うとは規 定していないこと,②当該臨時会の召集の決定を要求した国会議員とそれを要求しなかった国会議員とを区別して取り扱うべき旨を定める規定が憲法に見当たらないこと,③内閣が臨時会の召集を決定しなかった場合の法的効果を定める規定が憲法に見当たらないことに鑑みると,憲法が,内閣に対し,臨時会 会議員とを区別して取り扱うべき旨を定める規定が憲法に見当たらないこと,③内閣が臨時会の召集を決定しなかった場合の法的効果を定める規定が憲法に見当たらないことに鑑みると,憲法が,内閣に対し,臨時会の召集の決定を要求した個々の国会議員との関 係において,その職務上の法的義務として,臨時会の召集を決定すべき義務を負わせたものとは解し難い。このことは,国会議員が,全国民の代表として,国民の間に存する多元的な意見及び諸々の利益を調整し,統一的な国家意思を形成するとの担うべき役割を有効,適切に果たすために,多様な国民の意向をくみつつ,国民全体の福祉の実現を目指して 行動するものであり,臨時会の召集の決定を要求したか否かによって国 - 34 -会議員の役割が左右されるものではないことからも裏付けられている。 そうすると,内閣は,国会又は国会議員との関係では,政治的責任を負うにとどまり,上記のような国家賠償法1条1項の適用上問題となる職務上の法的義務を負わないのであって,このことは,内閣が憲法53条後段に基づく召集の決定について法的義務を負う場合であっても同様 であるから,内閣がする臨時会の召集の決定が,国家賠償法1条1項にいう「違法」な行為と評価される余地はない。 (イ) 原告は,憲法66条3項を,内閣が行政権の行使について国会に対して連帯して政治的責任を負うにとどまり,個々の国民に対して職務上の法的義務を負うことがあり得ない趣旨のものと解するとすると,内閣は, 国民に対する職務上の法的義務を負わないこととなり,国家賠償法を死文化させるものであり,憲法17条にも反することになるから,このような解釈は取り得ない旨主張する。 しかし,憲法66条3項所定の内閣の国会に対する「責任」は,法的責任ではなく政治的責任を意味する 文化させるものであり,憲法17条にも反することになるから,このような解釈は取り得ない旨主張する。 しかし,憲法66条3項所定の内閣の国会に対する「責任」は,法的責任ではなく政治的責任を意味すると解され,内閣が,国会に対しても 政治的責任を負うにすぎない以上,個々の国会議員との関係でも法的責任を負うとは解されないというべきであるから,原告の主張は,被告の主張を正解しないものである。 (ウ) 原告は,判例(最高裁昭和60年判決,最高裁平成17年判決)は,原則として,政治的責任を負うにとどまり,個別の国民の権利に対応し た関係での法的義務を負うものではない場合であっても,例外的には国家賠償法1条1項の規定の適用上,違法の評価を受けることがあるとしているから,内閣が,憲法66条3項により,国会議員との関係において政治的責任を負うにとどまるとしても,このことから直ちに,臨時会の召集の決定が国家賠償法1条1項の適用上違法と評価される余地はな いという結論が導かれるわけではない旨主張する。 - 35 -しかし,最高裁昭和60年判決及び最高裁平成17年判決は,いずれも,飽くまで国民の権利(選挙権)行使の機会が憲法上保障されたものであることを前提として,国会議員による立法行為(又は立法不作為)が,国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けるか否かが問題となった事案であるのに対し,本件は,憲法53条後段に基づく臨時会の召 集の決定の要求が,個々の国会議員との関係で,国家賠償法1条1項に基づく損害賠償による救済の対象となり得るような権利ないし法的利益に当たるか否か自体が問題となるのであり,その前提となる事案及び争点が上記の判例の事案及び争点と異なっている。また,憲法53条後段に基づく臨時会の召集の決定の要求は,個々の国 うな権利ないし法的利益に当たるか否か自体が問題となるのであり,その前提となる事案及び争点が上記の判例の事案及び争点と異なっている。また,憲法53条後段に基づく臨時会の召集の決定の要求は,個々の国会議員との関係で,国 家賠償法1条1項に基づく損害賠償による救済の対象となり得るような権利ないし法的利益には該当しないのは,後記ウ(ア)のとおりである。 したがって,原告の主張は,その前提を誤るか,その法的根拠を欠くものである。 ウ仮に,内閣が,国会又は国会議員との関係で,法的責任を負う余地を観 念し得るとしても,次のとおり,憲法53条後段は,個々の国会議員との関係において,少なくとも国家賠償法1条1項に基づく損害賠償による救済の対象となり得るような権利ないし法的利益を保障する規定ではないと解すべきであり,これに反する原告の主張は,失当である。 (ア) 公権力の行使に当たる公務員の行為が,国家賠償法1条1項の適用上 違法と評価されるためには,個別の国民に対して負担する職務上の法的義務に違背して当該国民に損害を加えたことが必要である(最高裁昭和60年判決参照)。また,国家賠償制度は,個別の国民の法益侵害を救済することを前提としており,個別の国民の権利ないし法益の侵害が認められない場合には,同項の適用上違法と認める余地はないと解すべき である。 - 36 -憲法53条後段は,飽くまで内閣を名宛人として,臨時会の召集を決定する義務を負わせるにとどまり,臨時会の召集の決定を要求した個々の国会議員の具体的権利を何ら規定していない。これに加え,①同条が,議員を主語とせず,「いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求」と規定していること,②同条が,国民の権利及び義務について定めた憲 法第三章ではなく,国会という国 いない。これに加え,①同条が,議員を主語とせず,「いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求」と規定していること,②同条が,国民の権利及び義務について定めた憲 法第三章ではなく,国会という国の統治機構について定めた憲法第四章に置かれており,内閣と国会との関係を規定する内容のものであること,③内閣が臨時会の召集を決定しなかった場合の法的効果を定める規定が憲法に見当たらないことを併せ考慮すれば,憲法53条後段は,「いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求」があった場合に,内閣にお いて,臨時会の召集を決定する義務を負うことを定めるにとどまり,内閣が憲法に規定された上記の義務に違反した場合において,当該臨時会の召集の決定を要求した個々の国会議員に対し,国家賠償法1条1項に基づく損害賠償による救済を与えることを認めるものとは解されない。 したがって,内閣が,憲法53条後段に基づく義務に違反したことが 国家賠償法1条1項の適用上違法と評価される余地はない。 (イ) 原告に生じたとされる損害及び損害額については,いずれも否認する。 そもそも,原告が主張する権利又は利益とされるものは,前記(ア)のとおり,国家賠償法1条1項に基づく損害賠償による救済の対象となり得るような権利ないし法的利益に該当しない。 損害及び損害額に関する原告の法律上の主張は,全て争う。 (ウ)a 原告は,国会議員が有する権利が公益的及び公務的な側面を有していることは否めないが,そのことは,選挙権が公務的性質を有することを前提としつつも個人の主観的な権利とされていることと同様,これらの権利が国会議員個人の主観的な権利であることを否定せず,国 家賠償法により救済及び保護される権利又は利益にも該当する旨主張 - 37 -する。 しかし,国民 れていることと同様,これらの権利が国会議員個人の主観的な権利であることを否定せず,国 家賠償法により救済及び保護される権利又は利益にも該当する旨主張 - 37 -する。 しかし,国民の選挙権について規定した憲法15条1項は,「国民の権利及び義務」として位置付けられ,かつ,「公務員を選定し,及びこれを罷免することは,国民固有の権利である。」と規定して,憲法上,選挙権が個々の国民の具体的権利であることを明らかにしてい るから,憲法53条後段とは,憲法上の位置付けが異なることが明らかである。 b 原告は,国会議員は,主権者の代表という憲法上の地位(公法上の地位)を有し,その特殊性に鑑み,憲法上,特別の個人の権利を与えられており(憲法49条ないし51条),臨時会の召集の決定の要求 権も,憲法53条後段により,国会議員の個人の権利として,国会議員一人一人に保障されている権利であると解される旨主張する。 しかし,憲法49条ないし51条は,いずれの規定も「両議院の議員」を主語としており,個々の国会議員の具体的権利として規定するものであることが明らかであって,臨時会の召集の決定の要求に係る 憲法53条後段の文言や憲法上の位置付けとは全く異なっている。 エ内閣が臨時会の召集の決定について召集の決定を要求した個々の国会議員に対して国家賠償法所定の職務上の法的義務を負う旨の原告の主張は,次のとおり,いずれも失当である。 (ア) 原告は,①臨時会の召集の決定の要求権は,個々の国会議員の権利で ある上,当該要求に係る要求書の作成者も,個々の国会議員であり,先例においても,内閣が臨時会の召集を決定したときは,内閣から当該臨時会の召集の決定を要求した議員の代表者に対してその旨の通知をするものとされており,議員から召集の 作成者も,個々の国会議員であり,先例においても,内閣が臨時会の召集を決定したときは,内閣から当該臨時会の召集の決定を要求した議員の代表者に対してその旨の通知をするものとされており,議員から召集の決定の要求を受けた衆議院又は参議院の議長が,国会又は各議院として,内閣総理大臣に対して臨時会の召 集の決定を要求するのではないこと,②憲法53条後段の義務は,個々 - 38 -の国会議員がする召集の決定の要求が,その数的要件を充足したことによって生ずるものであり,個々の国会議員と内閣との関係において規定されている以上,内閣が臨時会の召集を決定すべき義務は,内閣と国会との関係においてだけではなく,少なくとも,召集の決定を要求した個々の国会議員と内閣との関係においても生じていると解すべきであること, ③臨時会の召集の決定の効果は,それを要求しなかった国会議員にも及び,内閣は,それを要求しなかった国会議員との関係でも,召集を決定すべき義務を負うことに変わりはないこと,④召集を決定しないことに伴う不利益は,召集されていない国会に生ずるのではなく,臨時会の召集の決定を要求した個々の国会議員及び当該臨時会において権利を行使 し得た国会議員に生ずることに鑑み,内閣の職務上の法的義務は,臨時会の召集の決定を要求した個々の国会議員及び当該召集の対象となった臨時会において権利を行使し得る個々の国会議員に対して生ずるものと解すべきである旨主張する。 しかし,憲法53条後段が定める義務は,国家賠償法1条1項の適用 において問題となる公務員の職務上の法的義務とは異なる概念であり,両義務が直ちに重なるわけではない。この点をひとまずおくとしても,前記イ(ア)のとおり,憲法53条後段が,内閣に対し,国会との関係のみならず,個々の国会議員との関 上の法的義務とは異なる概念であり,両義務が直ちに重なるわけではない。この点をひとまずおくとしても,前記イ(ア)のとおり,憲法53条後段が,内閣に対し,国会との関係のみならず,個々の国会議員との関係においても臨時会の召集を決定する職務上の法的義務を課しているとは解し難い。 また,臨時会の召集の決定を要求した者が誰であるかという問題と,内閣が臨時会の召集の決定について召集の決定を要求した国会議員に対して職務上の法的義務を負うか否かという問題は,別の問題であり,直接的に相関するものではない。 (イ) 原告は,憲法53条後段は,少数意見の尊重を趣旨とする規定(この ことは,国会の総議員の僅か8.6%を占めるにすぎない参議院議員6 - 39 -1名が要求すれば,他の圧倒的多数の国会議員がこれに反対したとしても,当該国会議員に対して国会の召集の効果が及ぶこととなることからも明らかである。)であって,株主の株主総会開催請求権が個々の株主の権利であると解されることと同様,個々の国会議員が内閣に対して国会の召集の決定を要求する権利を有する旨を規定したものと解すべきで あるから,内閣は,個々の国会議員に対し,国会の召集を決定する職務上の法的義務を負うことになるというべきである旨主張する。 しかし,株主の株主総会開催請求権を定める会社法297条1項は,「総株主の議決権の百分の三(中略)以上の議決権を六箇月前から引き続き有する株主は,(中略)株主総会の招集を請求することができる。」 として,株主総会開催請求権を株主の具体的な権利として明確に規定しており,憲法53条後段の文言や同条の憲法上の位置付けとは全く異なっているから,株主の株主総会開催請求権は,個々の国会議員がした臨時会の召集の決定の要求が国家賠償法1条1項に基づく損 て明確に規定しており,憲法53条後段の文言や同条の憲法上の位置付けとは全く異なっているから,株主の株主総会開催請求権は,個々の国会議員がした臨時会の召集の決定の要求が国家賠償法1条1項に基づく損害賠償による救済の対象となる根拠とはいえない。 第3 当裁判所の判断 1 争点1(本件確認訴訟部分の適法性)について(1) 本件確認訴訟部分の訴訟法上の性質ア行政事件を含む民事事件において裁判所がその固有の権限に基づいて審判することのできる対象は,裁判所法3条1項にいう「法律上の争訟」, すなわち当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であって,かつ,それが法令の適用により終局的に解決することができるものに限られる(最高裁昭和51年(オ)第749号同56年4月7日第三小法廷判決・民集35巻3号443頁参照)。 そうすると,個人が提起した訴訟であっても,当該個人が有する法律上 の権利又は利益の保護救済を求めるのではなく,当該個人が国又は地方公 - 40 -共団体の機関として有する権限の侵害を理由としてその保護救済を求めるような場合は,当該訴訟の実質は,法規の適用の適正ないし一般公益の保護を目的とするものであるか,又は機関相互間の権限の争いを内容とするものであるかのいずれかであって,自己の権利又は利益の保護救済を目的とするものということはできないから,法律上の争訟として当然に裁判 所の審判の対象となるものではなく,法律が内部的解決に委ねることを不適当とするなどの理由により特別の規定を設けた場合に限り,提起することが許されるものと解するのが相当である(最高裁平成10年(行ツ)第239号同14年7月9日第三小法廷判決・民集56巻6号1134頁,最高裁昭和26年(オ)第290号同28年6月12 り,提起することが許されるものと解するのが相当である(最高裁平成10年(行ツ)第239号同14年7月9日第三小法廷判決・民集56巻6号1134頁,最高裁昭和26年(オ)第290号同28年6月12日第二小法廷判決・ 民集7巻6号663頁各参照)。 イ国会は,国の唯一の立法機関であって(憲法41条),国民の間に存する多元的な意見及び諸々の利益を立法過程に公正に反映させ,議員の自由な討論を通してこれらを調整し,究極的には多数決原理により統一的な国家意思を形成すべき役割を担うものであり,国会を構成する国会議員も, 多様な国民の意向又は意見をくみ,これを立法過程に反映させることを通じて上記の統一的な国家意思を形成することに向けた職務上の権限(立法行為に係る権限)を有する立場(最高裁昭和60年判決参照)にある。 上記のような国会及び国会議員の役割及び立場を前提とした上で,国の立法機関である国会の召集の決定を要求するという臨時会の召集の決定 の要求の内容及び性質にも照らすと,臨時会の召集の決定を要求することは,国会議員という国の機関が,憲法及び国会法の規定に基づいて有する権限(なお,当該権限が,個々の国会議員に帰属する権限であるか否かについては,ここではひとまずおき,以下においては,原告の主張に沿って個々の国会議員に帰属する権限であるとの仮定に基づいて論ずるものと する。)を行使するものと解すべきである。 - 41 -そうすると,原告は,本件において,内閣という国の機関を主体とする本件不作為等により,原告が参議院議員という国の機関としての地位に基づいて有する臨時会の召集の決定を要求する権限を侵害されたとして,その保護救済を求める趣旨で,内閣が当該権限に基づく行為に対応して一定の期間内に臨時会を召集することがで いう国の機関としての地位に基づいて有する臨時会の召集の決定を要求する権限を侵害されたとして,その保護救済を求める趣旨で,内閣が当該権限に基づく行為に対応して一定の期間内に臨時会を召集することができるようにその召集を決定する義 務を負うこと又は原告が当該権限に基づいて内閣が上記の決定をすることを享受することができる地位にあることの確認を求める趣旨の訴え(本件確認訴訟部分)を提起したものと解するのが相当である。 したがって,国会議員としての地位を有する者が,その有する権限の侵害を理由として,内閣が国会議員に対して負う義務又は内閣が一定の意思 決定をすることを享受することができる地位を有することの確認を求める趣旨の訴え(本件確認訴訟部分)は,裁判所法3条1項にいう「法律上の争訟」には該当しないというべきである。 そして,本件確認訴訟部分は,その内容に照らすと,内閣と国会議員という国の機関相互間における権限の行使に関する紛争についての訴訟で あると解するのが相当であるから,行政事件訴訟法6条が規定する機関訴訟に該当するものと解すべきである。 (2) 原告の主張に対する判断原告の主張は,次のとおり,いずれも採用することができない。 ア(ア) 原告は,国会議員がした臨時会の召集の決定の要求は,国会議員個人 に帰属する主観的な権利を行使したものであり,このことは,国会議員が,憲法上,他にも特別の権利を与えられていること(憲法49条ないし51条)からも明らかである旨主張し,これに沿う証拠(甲A101,104,108,126,証人髙作正博)もある。 しかし,前記(1)イのとおり,臨時会の召集の決定の要求は,憲法53 条後段の文言に照らし,国会議員という国の機関が,内閣という国の機 - 42 -関に対し,臨時会 人髙作正博)もある。 しかし,前記(1)イのとおり,臨時会の召集の決定の要求は,憲法53 条後段の文言に照らし,国会議員という国の機関が,内閣という国の機 - 42 -関に対し,臨時会の召集の決定という内閣が有する権限の行使を求めるものと解され,原告が上記に挙げる他の国会議員の権利とされるものとは,その性質を異にすると解されるから,この点は,前記(1)イの判断を左右しない。 (イ) 原告は,国会法並びに衆議院規則及び参議院規則により,国会議員個 人に対し,議案発議権,動議提出権,質問権,質疑権,討論権,表決権等が付与されているところ,これらの国会議員が有する各権利は,国会議員個人が,内閣を含む他の国家機関から独立してその職権を行使し得るように付与されたものであり,臨時会の召集の決定の要求も同一の趣旨に基づくものであるから,臨時会の召集の決定の要求は,国会議員個 人に帰属する主観的な権利である旨主張し,これに沿う証拠(甲A101,104,126,証人髙作正博,証人志田陽子,証人石崎誠也)もある。 しかし,前記(1)イに判示した国会及び国会議員の役割及び立場を前提とすると,原告が上記に挙げる権利とされるものは,いずれも,その内 容に照らし,統一的な国家意思を形成するという公益を図る目的で行使されるものと解されるから,それらは,臨時会の召集の決定の要求も含め,いずれも,国会議員が上記のような国会議員としての職務の遂行に当たって行使し得るものとして付与された職務上の権限であると解するのが相当であり,この点も,前記(1)イの判断を左右しない。 なお,原告が上記に指摘する権限の一部には,個人が有する法律上の権利又は利益と密接な関係を有すると認める余地のあるものも含まれており,当該権限の侵害が,当該個人が )イの判断を左右しない。 なお,原告が上記に指摘する権限の一部には,個人が有する法律上の権利又は利益と密接な関係を有すると認める余地のあるものも含まれており,当該権限の侵害が,当該個人が有する法律上の権利又は利益の侵害を同時に構成する場合には,当該権利又は利益の侵害が司法上の救済の対象となること自体は否定し難いものの,そのことを超えて,当該権 限が当然に個人が有する法律上の権利又は利益に該当し,かつ,司法上 - 43 -の救済の対象となることを直ちに意味しないから,この点は,上記の判断を左右しない。 (ウ) 原告は,臨時会の召集の決定の要求は,公益的及び公務的な側面を有しているものの,判例上,選挙権や弁護人が有する接見交通権が公務的性質を有することを前提としつつも個人の主観的な権利とされているこ とや,違法な措置により公務員の管理職選考試験を受験することができなかったことが個人の主観的な権利を侵害するものであることを前提とした判断がされたことと同様,公益的及び公務的な側面を有していることによって国会議員個人の主観的な権利であることを否定されない旨主張し,これに沿う証拠(甲A126,証人髙作正博,証人石崎誠也)も ある。 しかし,選挙権及び接見交通権は,いずれも,国民の権利及び義務を定める憲法の規定(憲法第3章)に由来して保障されるものである(選挙権につき憲法15条等,接見交通権につき憲法34条等。最高裁昭和49年(行ツ)第75号同51年4月14日大法廷判決・民集30巻3 号223頁,最高裁昭和53年判決等も参照。)一方で,国会議員がする臨時会の召集の決定の要求は,国会に係る基本的な事項を定める憲法の規定(憲法第4章)の中におけるものであり(憲法53条後段),憲法自体が,国民の権利及び義務に由 決等も参照。)一方で,国会議員がする臨時会の召集の決定の要求は,国会に係る基本的な事項を定める憲法の規定(憲法第4章)の中におけるものであり(憲法53条後段),憲法自体が,国民の権利及び義務に由来するものとはその性質を異にするものであることを前提としていると解されるから,原告の主張は,その 前提を異にするものであって,前記(1)イの判断を左右しないというべきである。このことは,原告が指摘する地方公共団体が日本国民である職員に限って管理職に昇任することができることとする措置を執ることと憲法14条との適合性が問題となった事例(最高裁平成10年(行ツ)第93号同17年1月26日大法廷判決・民集59巻1号128頁)と の関係においても同様である。 - 44 -(エ) 原告は,個人の職業や地位によって保障された権限又は権能は,法的に保護される主観的利益として権利性を認めるべきであり,議員の職責が公益性を有することと議員の個人的な利益である職業遂行の権利とを排他的に捉えるべきではなく,そのように解すべき法令上の根拠もないところ,国会議員がその職務を行うには,国会法等により付与されてい る種々の権限を自由に行使し得るよう保障されていることが必要不可欠であり,かつ,当該職務の遂行は当該国会議員の人格的な価値に基づくものであるから,上記の各権限は,国会議員の権利というべきであるとした上で,国会が召集されない限り国会議員が上記の諸権利を行使することができない以上,臨時会の召集の決定を要求する権利も国会議員の 権利であることは明らかであって,これが妨害を受けて臨時会が事実上召集されない場合には,それを排除する又は賠償を受けることによる司法上の救済を受けることができる旨主張し,これに沿う証拠(甲A101,104,126,1 かであって,これが妨害を受けて臨時会が事実上召集されない場合には,それを排除する又は賠償を受けることによる司法上の救済を受けることができる旨主張し,これに沿う証拠(甲A101,104,126,130,証人志田陽子,証人石崎誠也)もある。 しかし,個人が機関として有する権限が,当然に当該個人が有する法 律上の権利又は利益に該当すると解すべき法令上の根拠は見当たらず,また,当該権限に基づく職務の遂行が当該個人の人格的な価値と関連があるとされることによって,当該権限自体の性質,目的等が直ちに変容するわけでもないから,原告の主張は,その前提を異にするものである。 そして,前記(イ)に判示したところと同様に,個人が機関として有するあ る権限が,当該個人が有する法律上の権利又は利益と密接な関係を有すると認める余地のある場合があることは否めず,その意味で,当該権限と当該権利又は利益が常に両立し得ないものであるとまではいえないものの,そのことは,前記(イ)に判示したとおり,当該権限が当該個人が有する法律上の権利又は利益に該当し,当然に司法上の救済の対象となる ことまでを直ちに意味するものではないから,やはり,原告の主張は, - 45 -その前提を異にするものである。 そして,臨時会の召集の決定の要求についても,それが,内閣という国の機関に対し,国会議員が国会法並びに衆議院規則及び参議院規則に基づいて有する権限(前記(イ)参照)を行使する場を形成することに向けた内閣が有する権限を行使すべきことを要求する趣旨のものであり,か つ,当該臨時会における国会議員の活動の内容には何らの影響を及ぼすものではないことも踏まえると,臨時会の召集の決定の要求とそれをした国会議員の職業上の人格的な価値とが関連しているとされること(原告本人) 該臨時会における国会議員の活動の内容には何らの影響を及ぼすものではないことも踏まえると,臨時会の召集の決定の要求とそれをした国会議員の職業上の人格的な価値とが関連しているとされること(原告本人)によっても直ちに,当該国会議員個人の法律上の権利又は利益に該当するものとは認め難い。 イ原告は,機関とは,法人の意思決定をし,法人の行為を執行し,又はそれらを補助する地位にある一定の自然人又は組織体をいうものとされており,その核心は,当該機関の行為の法的効果が当該法的主体の行為によるものとみなされる点にあるところ,国会議員は,様々な権限と地位を有しており,国会ないし議院の構成員として個々の行為をその自由な判断によ って行える立場にあるから,国会議員の行為は,国会ないし議院の機関としての行為ではなく,国会を構成する個別の構成員としての行為であり,それが一定の要件を満たした場合に初めて国家機関である国会の行為であり,かつ国家の行為であるとみなされるという関係にあるにとどまるのであって,国会議員は,国会ないし議院の機関とはいえず,内閣との関係で は,相互に独立な法主体である旨主張する。 しかし,国会は,前記(1)イに判示したとおり,究極的には多数決原理により統一的な国家意思を形成すべき役割を担うものであって,国会が形成すべき国家意思は,究極的には国会を構成する国会議員が示した意思表示(立法行為に係る権限の行使)の数の多寡によって決せられることとなる ところ,当該意思表示自体の法的性質は,上記の意思表示の数の多寡によ - 46 -って左右されるものではないから,当該意思表示のうち多数を占めるものが国家意思を形成して国家機関の行為としての性格を帯びる以上,当該意思表示自体も,その数の多寡にかかわらず,国の機関としての 6 -って左右されるものではないから,当該意思表示のうち多数を占めるものが国家意思を形成して国家機関の行為としての性格を帯びる以上,当該意思表示自体も,その数の多寡にかかわらず,国の機関としての行為であることになると解される。 そして,前記(1)イに判示したとおり,国会議員の国会における活動は, 上記の国家意思の形成という立法行為に向けられたその職務上の権限を行使する行為であり,国会議員がする臨時会の召集の決定の要求も,その内容に照らし,国会議員が当該立法行為に係る権限を行使することに向けられたものであるから,国会議員がする臨時会の召集の決定の要求は,国の機関がする権限の行使に該当するものと解すべきである。 ウ原告は,機関訴訟(行政事件訴訟法6条)は,行政権内部又は議会内部の紛争に係る訴えに限定され,憲法上の国家機関相互の紛争は,同条が規定する機関訴訟の概念には当たらないと解すべきである旨主張し,これに沿う証拠(甲A85)もあるが,機関訴訟について,原告が上記に主張するとおりにその範囲を限定して解すべき法令上の根拠は見当たらない。 (3) まとめ以上の検討に加え,機関訴訟は,法律に定める場合において,法律に定める者に限り,提起することができるところ(行政事件訴訟法42条),我が国の法制上,国会議員と内閣との間の権限の行使に関する紛争について,訴えの提起を許す法令の規定は見当たらない。 したがって,その余の点について判断するまでもなく,本件確認訴訟部分は,いずれも不適法なものである。 2 争点2(国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求の成否)について(1) 損害の有無についてア原告は,参議院議員として有する権限(国会の召集の決定の要求権のほ か,召集されるべき臨時会において行使する 償法1条1項に基づく損害賠償請求の成否)について(1) 損害の有無についてア原告は,参議院議員として有する権限(国会の召集の決定の要求権のほ か,召集されるべき臨時会において行使することが可能であった議案発議 - 47 -権,動議提出権,質問権,質疑権,討論権及び表決権)の行使を侵害された旨を主張するところ,前記1(1)イ及び(2)ア(イ)のとおり,上記の権限は,いずれも,国会議員という国の機関が,憲法,国会法並びに衆議院規則及び参議院規則の規定に基づき,国会議員としての職務の遂行に当たって行使し得るものとして付与されたものであり,国会議員が,多様な国民の意 向又は意見をくみ,これを立法過程に反映させることを通じて統一的な国家意思を形成することに向けた職務上の権限(立法行為に係る権限)を有する立場にあることに照らすと,当該権限自体は,直接的には,公益を図ることを目的とするものであり,国家賠償法1条1項の規定に基づく損害賠償請求権の存在を基礎付けるに足りる法律上保護された利益とは認めら れないというべきである。これに反する原告の主張は,前記1(1)イに判示したところに照らし,採用することができない。 イ(ア) なお,前記1(2)ア(エ)のとおり,臨時会の召集の決定の要求とそれをした国会議員の職業上の人格的な価値とが関連しているとされることを前提とした場合には,当該人格的な価値とされるものについて,国家賠 償法1条1項の規定に基づく損害賠償請求権の存在を基礎付けるに足りる法律上保護された利益であると解する余地があるかが問題となり得る。 この点,国又は公共団体の機関である個人が,機関であることに基づいて有する権限を行使する場合に,それが当該個人の人格的な価値とされるものと全く無関係に行使されるわけではな あるかが問題となり得る。 この点,国又は公共団体の機関である個人が,機関であることに基づいて有する権限を行使する場合に,それが当該個人の人格的な価値とされるものと全く無関係に行使されるわけではないと認める余地があるこ とは一概に否定し難いものの,当該個人が当該権限を行使することは,飽くまでも機関としての行為であり,直接的には,公益を図ることを目的として行使されるものであって,それが当該個人の人格的な価値とされるものと関連することによっても当該権限を行使すること自体の性質,目的等が変容するわけではないこと(前記1(2)ア(エ)参照)にも照らす と,当該権限の行使と当該権限を有する個人の人格的な価値とされるも - 48 -のとが関連しているという一事をもって直ちに,当該人格的な価値とされるもの自体が上記の意味における法律上保護された利益に該当するとは認められないと解すべきである。 (イ) その上で,原告が本件において供述する内容の要旨は,次のとおりであると認められる(原告本人)。 a 憲法13条の個人の尊厳の尊重を守り抜く,そしてそのために,その権利を守るための制度,三権分立の在り方を守り抜くのが国会議員の一番大切な任務,使命だと考えています。(国会議員の重要な任務はどのようなものと考えていますかとの旨の質問に対し)b 私の信念であると同時に,議院内閣制の下で国会が内閣に対する監 督機能を持つことが三権分立の本質であり,それを果たすのが国会議員の最大の責務と理解しています。もし,私がその責務を全力で果たすつもりがなければ,私が私でなくなるので,そのときには即刻議員を辞職すべきという覚悟で10年間務めています。 (国会議員として,行政監視が原告の職業的な信念,信条なのですかとの旨の質問に対し) りがなければ,私が私でなくなるので,そのときには即刻議員を辞職すべきという覚悟で10年間務めています。 (国会議員として,行政監視が原告の職業的な信念,信条なのですかとの旨の質問に対し) c 自分が信じるところの行政監督,行政監視という憲法上の命令役割を果たす,果たすに足る,果たせる国会議員であることは,私の人格的価値そのものです。(国会議員として行政監視をすることは,原告の人格価値にとって不可分ですかとの旨の質問に対し)d 国会が内閣に行政監督権を有する以上,それを解明するのは国会の 国民に対する使命であり,臨時国会の召集要求をしなければ我々が我々でなくなる,私も他の議員もそういう思いだったと思います。(どのような必要性があると判断して召集要求を出しましたか,職業人としての使命から要求したのですねとの旨の質問に対し)e 私は,国会が召集されれば,森友・加計事案で実際に質問等を行い たい具体的な事項がありました。国会という仕事の場が丸ごと奪われ - 49 -てできなくなったので,国会議員としての職業人の在り方,私の個人の人格を内閣から否定されたと思っています。(国会で仕事ができなかったことにどのような苦痛を感じていますかとの旨の質問に対し)f 真相を国会監督の下で明らかにして再発防止策を講じない限り,またこうしたことが起き,それによって国民が大きな被害を受け,又は 社会の大切な価値,普遍的な価値が失われるのを止めなければいけないという国会議員としての職業上の使命感に基づいていました。(責任追及をすることは,原告の全人格を懸けた仕事であり,それを望んでいたのですねとの旨の質問に対し)g 国会議員としての信念,職業に関する人格的な思いがなかったら国 会議員は務まらないです。国会議員が諦めた は,原告の全人格を懸けた仕事であり,それを望んでいたのですねとの旨の質問に対し)g 国会議員としての信念,職業に関する人格的な思いがなかったら国 会議員は務まらないです。国会議員が諦めた瞬間に国民の命や権利,憲法が定める統治機構を守る人がいなくなります。そういう信念で,会派や党を動かし,国会に立って,政府に質問を行うことが私の職業上の人格的な価値ですので,国会議員の議員活動に職業上の人格的な価値がないわけがないと考えています。(原告には個人的な損害は生 じていないという考えについてどう考えますかとの旨の質問に対し)(ウ) 前記(イ)によれば,原告が述べる国会議員の職業上の人格的な価値とされるものは,その内容に照らし,専ら,①三権分立,いわゆる行政監督等の公益それ自体及び②原告が有する権限が行使されることによって当該公益が保護されることに,一定の価値を見いだすことを意味するも のと認められる。 このことに加え,これまでに判示した国会議員の役割及び立場,臨時会の召集の決定の要求の内容,性質等も踏まえると,本件の事実関係の下においては,当該価値とされるものは,実質的には,参議院議員としての原告がその有する権限を行使する際に公益を図る目的を有している ことそのものであると解するのが相当である。 - 50 -そうすると,仮に,原告が参議院議員として有する臨時会の召集の決定の要求のほか国会において行使することが可能な種々の権限と,原告がこれらの権限を行使する際の職業上の人格的な価値とされるものとが関連していることを前提としたとしても,当該価値とされるものは,前記アのとおり,当該権限が国家賠償法1条1項の規定に基づく損害賠償 請求権の存在を基礎付けるに足りる法律上保護された利益であるとは認められないこ を前提としたとしても,当該価値とされるものは,前記アのとおり,当該権限が国家賠償法1条1項の規定に基づく損害賠償 請求権の存在を基礎付けるに足りる法律上保護された利益であるとは認められないことと同様に,上記の意味における法律上保護された利益とは認められないというべきである。 ウしたがって,原告が参議院議員として有する権限を行使することが妨げられたとされることの有無,適否等を論ずるまでもなく,本件の事実関係 の下においては,原告は,参議院議員として有する権限を行使することが妨げられたとされることを理由として,国家賠償法1条1項の規定に基づく損害賠償請求をすることはできない。 (2) まとめ以上のとおり,本件においては,その余の点について判断するまでもなく, 本件国賠請求部分は,理由がない。なお,原告は,本件解散により原告が参議院議員として有する権限を行使することが妨げられたとされることも損害として主張しているようにも解されるが,前記(1)イのとおり,本件の事実関係の下においては,原告が参議院議員として有する権限(原告の主張を前提とすると,当該権限及び当該権限を行使することと関連する国会議員の職業 上の人格的な価値とされるもの)は,国家賠償法1条1項の規定に基づく損害賠償請求権の存在を基礎付けるに足りる法律上保護された利益に該当しない以上,当該主張は,その前提を欠くものである。 3 結論以上の次第で,本件確認訴訟部分は,不適法であるからこれらをいずれも却 下し,本件国賠請求部分は,理由がないからこれを棄却することとして,主文 - 51 -のとおり,判決する。 東京地方裁判所民事第38部 裁判長裁判官鎌野真敬 することとして,主文 - 51 -のとおり,判決する。 東京地方裁判所民事第38部 裁判長裁判官鎌野真敬 裁判官福渡裕貴 裁判官佐藤秀海 - 52 -別紙1訴え却下部分目録 1 内閣が,原告が,次に,参議院の総議員の4分の1以上の1人として,連名をもって,議長を経由して内閣に対して臨時会の召集の決定を要求した場合に, 20日以内に臨時会を召集することができるようにその召集を決定する義務を負うことの確認を求める部分(「事実及び理由」中の第1の1(1)に係る部分) 2 原告が,次に,参議院の総議員の4分の1以上の1人として,連名をもって,議長を経由して内閣に対して臨時会の召集の決定を要求した場合に,20日以内に臨時会の召集を受けられる地位を有することの確認を求める部分(同第1 の1(2)に係る部分) 以上 - 53 -別紙2国会法の定め 1 国会法1条の定め(1) 国会法1条1項の定め 国会法1条1項は,国会の召集詔書は,集会の期日を定めて,これを公布する旨を定めている。 (2) 国会法1条2項の定め国会法1条2項は,常会の召集詔書は,少なくとも10日前にこれを公布しなければならない旨を定めている。 (3) 国会法1条3項の定め国会法1条3項は,臨時会及び特別会の召集詔書の公布は,同条2項によることを要しない旨を定めている。 2 国会法2条の3の定め(1) 国会法2条の3第1項の定め 国会法2条の3第1項は,衆議院議員の任期 臨時会及び特別会の召集詔書の公布は,同条2項によることを要しない旨を定めている。 2 国会法2条の3の定め(1) 国会法2条の3第1項の定め 国会法2条の3第1項は,衆議院議員の任期満了による総選挙が行われたときは,その任期が始まる日から30日以内に臨時会を召集しなければならない(本文)が,その期間内に常会が召集された場合又はその期間が参議院議員の通常選挙を行うべき期間にかかる場合は,この限りでない(ただし書)旨を定めている。 (2) 国会法2条の3第2項の定め国会法2条の3第2項は,参議院議員の通常選挙が行われたときは,その任期が始まる日から30日以内に臨時会を召集しなければならない(本文)が,その期間内に常会若しくは特別会が召集された場合又はその期間が衆議院議員の任期満了による総選挙を行うべき期間にかかる場合は,この限りでない(た だし書)旨を定めている。 - 54 - 3 国会法3条の定め国会法3条は,臨時会の召集の決定を要求するには,いずれかの議院の総議員の4分の1以上の議員が連名で,議長を経由して内閣に要求書を提出しなければならない旨を定めている。 以上 - 55 - - 56 - - 57 - 申し訳ありませんが、整形するためのテキストが提供されていません。整形したいテキストをお送りいただけますか?

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