平成27年11月27日判決名古屋高等裁判所平成26年(ネ)第342号損害賠償請求,承継参加申出控訴事件(原審津地方裁判所平成21年(ワ)第893号,同平成25年(ワ)第174号) 主文 1 原判決のうち控訴人津市敗訴部分を取り消す。 2 上記部分につき,被控訴人らの請求をいずれも棄却する。 3 控訴人Aの控訴に基づき,原判決のうち控訴人Aに関する部分を次のとおり変更する。 (1) 控訴人Aは,被控訴人Bに対し,152万円及びこれに対する平成22年1月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2) 被控訴人Bのその余の請求(当審における選択的追加請求を含む。)を棄却する。 4 訴訟費用は,第1,2審を通じ,被控訴人らと控訴人津市との間においては,被控訴人らの負担とし,被控訴人Bと控訴人Aとの間においては,これを10分し,その9を被控訴人Bの負担とし,その余を控訴人Aの負担とする。 5 この判決3項(1)は,仮に執行することができる。 事実 及び理由第1 当事者の求めた裁判 1 控訴人津市(1) 原判決中,控訴人津市の敗訴部分を取り消す。 (2) 上記の部分につき,被控訴人らの請求をいずれも棄却する。 (3) 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人らの負担とする。 2 控訴人A(1) 原判決中,控訴人Aの敗訴部分を取り消す。 (2) 上記の部分につき,被控訴人Bの請求を棄却する。 (3) 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人Bの負担とする。 3 被控訴人B(1) 控訴人らの控訴をいずれも棄却する。 (2) 控訴人Aは,控訴人津市と連帯して,被控訴人Bに (3) 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人Bの負担とする。 3 被控訴人B(1) 控訴人らの控訴をいずれも棄却する。 (2) 控訴人Aは,控訴人津市と連帯して,被控訴人Bに対し,644万1780円及びこれに対する平成22年1月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え(被控訴人Bは,当審において,不法行為に基づく損害賠償請求を選択的に追加した。)。 (3) 控訴費用は,控訴人らの負担とする。 4 被控訴人C(1) 控訴人津市の控訴を棄却する。 (2) 控訴費用は,控訴人津市の負担とする。 第2 事案の概要(略語は,新たに定義するものを除き,原判決の例による。以下,本判決において同じ。) 1 本件は,被控訴人Bが所有していた原判決別紙物件目録記載1及び2の土地(B土地)並びにこれに隣接する道路(本件道路)において陥没事故(本件道路陥没事故)が発生し,被控訴人BがB土地上に所有する原判決別紙物件目録記載3の建物(本件建物)に居住できなくなったと主張して,(1) 被控訴人Bが,ア B土地を含む区域の宅地造成事業について開発許可を行い,かつ,本件道路を管理する控訴人津市に対し,国家賠償法1条1項又は同法2条1項に基づく損害賠償として,2745万6300円並びに5104万3201円に対する損害発生の日である平成18年7月9日から平成25年3月8日(債権譲渡の日)まで民法所定の年5分の割合による遅延損害金,及び2745万6300円に対する平成25年3月9日(債権譲渡の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めるとともに,イ B土地の宅地造成を行った上で被控訴人BにB土地を売却した控訴人A に対し,民法415条に基づく損害賠償として,5104 民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めるとともに,イ B土地の宅地造成を行った上で被控訴人BにB土地を売却した控訴人A に対し,民法415条に基づく損害賠償として,5104万3201円及びこれに対する損害発生の日である平成18年7月9日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案と,(2) 被控訴人Bから控訴人津市に対する国家賠償法1条1項又は同法2条1項に基づく損害賠償請求権のうち本件建物に関するものから2358万6901円を譲り受けた被控訴人Cが,控訴人津市に対し,上記2358万6901円及びこれに対する債権譲渡の日の翌日である平成25年3月9日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 2 原審は,被控訴人Bの請求について,控訴人津市に対する請求を国家賠償法2条1項に基づく損害賠償金4642万5601円から上記1(2)の債権譲渡金額を控除した2283万8700円及びこれに対する損害発生の日である平成18年7月9日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金並びに上記1(2)の債権譲渡金額2358万6901円に対する前同日から債権譲渡の日である平成25年3月8日までの民法所定の年5分の割合による遅延損害金の限度で,控訴人Aに対する請求を644万1780円及びこれに対する催告(訴状送達)の日の翌日である平成22年1月8日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の限度でそれぞれ認容し,被控訴人Cの控訴人津市に対する請求を全部認容した。 これに対し,控訴人らは,それぞれその敗訴部分について控訴を申し立てた。 また,被控訴人Bは,当審において,控訴人Aに対し,原審で主張していた債務不履行に基づく請求に加え 部認容した。 これに対し,控訴人らは,それぞれその敗訴部分について控訴を申し立てた。 また,被控訴人Bは,当審において,控訴人Aに対し,原審で主張していた債務不履行に基づく請求に加え,不法行為に基づく請求を原審認容額の限度で選択的に追加し,不法行為に基づく損害賠償金644万1780円及びこれに対する不法行為の後(訴状送達の日の翌日)である平成22年1月8日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求めた。 3 その余の事案の概要は,原判決8頁3行目の「一帯(後に本件道路陥没事故 の現場となる部分を含む。)に厚さ最大8mの」を「一帯に」に改め,11頁2行目の「原告が」から3行目末尾までを次のとおり改め,次項以下に当審における当事者の主張を加えるほか,原判決「事実及び理由」欄の第2の2ないし5記載のとおりであるから,これを引用する。 「 本件建物に関して生じた損害賠償請求権から2358万6901円を譲渡し,その頃,これを控訴人津市に通知した(丁7)。 (8) 控訴人Aへの訴状の送達被控訴人Bは,平成21年12月19日,控訴人Aに対し,本件道路陥没事故による損害の賠償を求めて本訴を提起した。本件の訴状は,平成22年1月7日に控訴人Aへ送達された。」 4 当審における控訴人津市の主張(1) 予見可能性についての追加的主張控訴人津市による道路の設置管理に関して問題になるのは,D開発区域のどこかで地面が「陥没」することの予見可能性ではなく,本件道路陥没地点が「陥没」することが現実的に予見可能であったかどうかである。 これについて,原判決は,平成16年のDとの32条協議の中でD開発区域付近の空洞調査の実施が必要である旨を指摘したことを予見可能性を基礎付ける事実として挙げて 可能であったかどうかである。 これについて,原判決は,平成16年のDとの32条協議の中でD開発区域付近の空洞調査の実施が必要である旨を指摘したことを予見可能性を基礎付ける事実として挙げている。 しかし,これは,D開発区域のどこかに磨き砂の廃坑が依然として存在していて陥没の危険性が残存しているかもしれないという抽象的な認識に基づきDに注意を喚起したものであって,本件道路陥没地点の空洞による陥没事故を予見していたためではない。 本件道路陥没地点は,もともとは標高22.8mの平坦な谷であったところ,平成4年頃に誰かがこれを埋め立てて標高30.1mまで盛土を行った。 その後,控訴人Aは,平成16年頃に山林整形を行い,本件道路陥没地点の西側の谷を埋め立てた。このように,本件道路陥没地点の盛土が行われたの は平成4年頃であるところ,当時,都市計画法29条の開発許可の権限を有していたのは三重県知事であり,控訴人津市は,この埋立ての事実を知らなかった。 また,本件道路を施工する際,道路部分を掘り下げても空洞は見当たらず,重量のある締固め用ロードローラーで転圧したりトラクターショベルで資材を運んだりしていても,重量のある建設機械が地中に転落するような空洞があることはうかがわれなかった(乙6の5枚目,39枚目)。したがって,本件道路が通常の衝撃に対して安全なもので,安全かつ円滑な交通を確保することができるものであったことは明らかである。 (2) 回避可能性についての追加的主張原判決は,控訴人津市が「D開発区域内の一定数のか所において深度20m程度のボーリング調査」を行うように行政指導していれば,「空洞が発見されていた可能性は十分あったということができ」,「空洞が確認されていれば,空洞による陥没 発区域内の一定数のか所において深度20m程度のボーリング調査」を行うように行政指導していれば,「空洞が発見されていた可能性は十分あったということができ」,「空洞が確認されていれば,空洞による陥没事故が発生する可能性が高い土地であることを認識することができ」たと判示する。 しかし,本件道路陥没地点は,Dが本件道路で空洞調査をした5か所の地点とは全く別の場所である。したがって,Dが空洞調査をした場所で6mよりも深い20mの深度でボーリング調査をして空洞が発見できたとしても,そして,その空洞に地盤改良措置をとったとしても,本件道路陥没地点の陥没という結果を回避できなかったことは明らかである。 (3) 行政の危険管理責任の補充性控訴人AがB土地の開発行為をし,被控訴人CがB土地の地盤に適した工法によらずに本件建物を建築したことによってこれら当事者が負う責任は,被控訴人Bに直接被害を与えたことによる危険責任である。これに対し,控訴人津市が負う責任は,行政の危険管理責任である。この場合,行政の責任は,もっぱら損害の直接原因である土地災害や犯罪など自然や社会における 危険を適正に管理し損害の発生を防止しなかったところにある。 したがって,本件における第一次的責任者は,控訴人Aや被控訴人Cであって,控訴人津市は第二次的責任者にすぎない。よって,控訴人津市が控訴人Aや被控訴人Cより重い責任を負うことはあり得ない。 (4) 被控訴人Bの代替地への転居損害についてア本件道路陥没事故と転居損害との因果関係について被控訴人Bが代替地へ転居するための費用相当額の損害(土地購入代金見込額や建物建築工事代金見込額など。以下「転居損害」という。)は,本件道路陥没事故と相当因果関係のある損害ではない いて被控訴人Bが代替地へ転居するための費用相当額の損害(土地購入代金見込額や建物建築工事代金見込額など。以下「転居損害」という。)は,本件道路陥没事故と相当因果関係のある損害ではない。 すなわち,この転居損害は,B土地の地中に存在する空洞によりB土地を建物の敷地とすることができないことによる損害であるが,B土地の空洞は,本件道路が建設される以前から存在していたもので,本件道路陥没事故により形成されたものではない。本件道路陥没事故は,B土地にある空洞という隠れた瑕疵を露呈する契機とはなったが,本件道路陥没事故とB土地の空洞の存在との間には,いわゆる原因の競合としての原因の共働も原因の重複も付加的原因の関係もない。 したがって,本件道路の陥没事故と転居損害との間には因果関係がない。 イ本件建物及びB土地の修復可能性について控訴人津市は,平成18年10月20日に本件道路陥没地点付近の復旧工事に着工し,平成19年2月28日にこれを完成させた。 この復旧工事の結果,現在までに,B土地が本件道路陥没地点の方向にずり下がる事態は再び発生することなく,目視の限りでは本件建物の傾斜が本件道路の陥没当時よりひどくなったこともない。これは,上記工事の効果が工事後9年経った現在でも有効に持続していることを示すものである。 これに対し,E意見書(丁19)は,「仮に,本件土地について前述の とおり工事を実施し,宅地としての状態を復旧したとしても,地下坑道がある限り,本件土地の前面道路等が陥没する危険は何ら解消されず,周辺土地を含めた宅地としての安全性は何ら対応できるものではない。」とする(丁19・8頁)。 しかし,地下坑道がある限りB土地の前面道路等が陥没する危険 等が陥没する危険は何ら解消されず,周辺土地を含めた宅地としての安全性は何ら対応できるものではない。」とする(丁19・8頁)。 しかし,地下坑道がある限りB土地の前面道路等が陥没する危険は何ら解消されないということと,道路管理の瑕疵とは別の次元の事柄である。 本件道路が再び陥没してB土地がずり下がり,再度本件建物が傾いたら,そのときに控訴人の国家賠償法上の責任が問題になるにすぎない。 また,B土地の地下の空洞は,深度13m~25mの間のN値34~50という非常に堅固な地盤に挟まれる形で存在し,この堅固な地盤によって支持されているから,B土地は安定している。そして,本件道路陥没事故後にA開発区域に3軒の建物が新築されていることからしても,本件道路陥没地点の周辺が宅地としての安全性に欠けるということはない。 さらに,本件建物についても,本件道路陥没事故後,本件建物の土間コンクリート部や布基礎に亀裂は一切見られず,玄関ドア枠にも窓枠にも引き戸の枠にもゆがみはなく,玄関ドアの開閉に何らの支障はない(乙16写真1)。他方,本件建物の沈下部分の地盤は,上記のとおり既に改良済みであって,当該箇所についてはアンダーピニング工法も不要である。 したがって,本件建物は,北西隅の沈下部分をジャッキアップして全体を水平に戻す方法で補修することができる。 (5) 補修費用上記(4)のとおり,本件建物は,北西隅の沈下部分をジャッキアップして全体を水平に戻す方法で補修ができるが,本件では,補修費用を見積もる時間に制約がある上,壁内等の不可視部分の詳細把握が困難であるため,控訴人津市においては上記方法による補修費用を直接算定することができない。 そこで,公共事業の施行に伴う損失補償(一般補償)の算定基 約がある上,壁内等の不可視部分の詳細把握が困難であるため,控訴人津市においては上記方法による補修費用を直接算定することができない。 そこで,公共事業の施行に伴う損失補償(一般補償)の算定基準(乙17) を準用する見積により,浮揚工法による建物移転(曳家)を想定して算定すると,その額は建物について986万8869円,外構について130万0342円になる(乙16)。 そして,本件建物の北西隅の沈下部分をジャッキアップして全体を水平に戻す方法による場合は,上記の浮揚工法よりも補修費用は低額になる。また,上記費用には,基礎工事費としてすべての基礎取り壊し費及び新設費を含んでいるが,実際には,現存する基礎はそのまま使うことができるので,費用はさらに低額になる。 5 控訴人A(1) 時機に後れた攻撃防御方法被控訴人Bによる不法行為に基づく訴えの追加的変更(6(10))は,当審の終結間際になって行われたもので,時機に後れており認められるべきではない。 (2) 違法性の不存在本件において,控訴人Aが被控訴人Bに売却したB土地には何の瑕疵もないから,控訴人Aに債務不履行はない。 また,売買目的地周辺がかつて磨き砂採掘跡地であったことの説明義務は,債務の本旨の中核をなすものではないから,説明義務違反は債務不履行の問題ではなく,不法行為責任の範疇に属するものである。 仮に,この説明義務を広い意味での債務ととらえるとしても,その内容は契約上の信義則である。したがって,仮に,宅建業法35条の説明義務違反があったとしても,それが民法上の債務不履行を構成するかどうかは,契約法の理念に則り,事案の特殊性を考慮して判断されるべきである。 本件において,控訴人Aは適切な空洞調査を 条の説明義務違反があったとしても,それが民法上の債務不履行を構成するかどうかは,契約法の理念に則り,事案の特殊性を考慮して判断されるべきである。 本件において,控訴人Aは適切な空洞調査を行ったが,危険を予測できる空洞は皆無であった。そして,陥没事故は,本件売買契約の時点まで多年にわたり生じていなかった。その上,B土地を含むF地区が磨き砂採掘跡地で あることは,津市在住の人であれば皆知っているにもかかわらず,人々はF地区の土地を購入して家屋を建設し,長年生活している。これらの実情からすれば,購入者に対し磨き砂採掘跡地であることを告げたとしても,購入者が売買契約を締結しない可能性が高いとはいえない。 さらに,控訴人Aは,B土地周辺全体の状況について把握している控訴人津市から開発の許可を得ており,B土地はもちろんのこと,周辺の土地についても崩落の危険がないものとして控訴人津市を信頼していた。控訴人Aは,こうした理由から,相当な理由をもってB土地には陥没は起こりえないと信じた。 これらの状況からすると,B土地周辺がかつて磨き砂採掘地であったことは,宅建業法に定める説明義務の範疇に属さない。また,仮に,同法の構成要件に該当するとしても,控訴人Aがこれを説明しなかったことは,信義則違反とまで評価されるものではなく,違法性がない。 (3) 因果関係の不存在本件において,磨き砂採掘跡地の規模や分布は不明であり,周辺に立派な家屋が林立して団地を形成し,過去長年磨き砂跡地が陥没したことはもちろん,その兆候さえなかった。こうした当時の客観的状況を踏まえると,被控訴人Bは,仮にB土地が磨き砂跡地であるという説明を受けたとしても,B土地を購入したと考えられる。したがって,仮に控訴人Aに説明義務違反に基づ えなかった。こうした当時の客観的状況を踏まえると,被控訴人Bは,仮にB土地が磨き砂跡地であるという説明を受けたとしても,B土地を購入したと考えられる。したがって,仮に控訴人Aに説明義務違反に基づく信義則違反が認められるとしても,B土地の購入との間に相当因果関係は認められない。 (4) 損害仮に,控訴人Aに債務不履行又は不法行為責任が認められるとしても,B土地の客観的価値は,控訴人Aが本件道路陥没事故後に周辺の土地を売却した価格よりも高い。控訴人Aが周辺の土地を廉価で販売したのは,控訴人Aが会社経営上の都合により,廉価であっても売却して資金を得る必要があ ったからである。 そして,土地の価格は,本件道路陥没事故のあった平成16年から控訴人Aが周辺土地を売却した平成23年までの間に,全国で下落しているから,価格を単純に比較すると一般の下落率に従った価格下落の影響を受けることになる。実際は,陥没したことのみに基づく下落率は9%である(丙20)。 そうすると,本件における被控訴人Bの損害は,陥没による価格低下分として,本件売買契約の代金の9%である136万8000円になる。 (5) 消滅時効仮に,控訴人Aに不法行為責任が認められるとしても,被控訴人Bは,本件道路陥没事故のあった平成18年7月9日には不法行為の事実を認識し得たはずであるから,それから3年を経過した平成21年7月9日の到来により消滅時効が完成している。控訴人Aは,平成26年10月30日陳述の準備書面をもってこの時効を援用する。 6 被控訴人B(1) 国家賠償法1条1項に基づく請求についての補充主張国家賠償法1条1項に基づく請求については,被控訴人Cの主張(7(1))を援用する。 (2) 予見可能性に 被控訴人B(1) 国家賠償法1条1項に基づく請求についての補充主張国家賠償法1条1項に基づく請求については,被控訴人Cの主張(7(1))を援用する。 (2) 予見可能性についての追加的主張国家賠償法2条1項で問題とされる予見可能性とは,特定の地点において災害や事故が発生することについて具体的に予見できることまでは必要でなく,一定の地域で,災害や事故が発生する蓋然性があることを予見できれば足りる。したがって,昭和52年の線引き見直しの際における控訴人津市の認識や,昭和52年調査報告書(甲12)で指摘された内容,控訴人AやDに対して宅地造成後においても安全が確保できるよう開発許可の条件を付けたこと(乙1,丁2),本件道路陥没事故が発生する約10か月前と3か月前の2度にわたって本件道路陥没地点に近いF公園で陥没事故が発生してい たことからして,控訴人津市が本件道路陥没地点の陥没の危険性を十分に予見していたことは明らかである。 また,控訴人津市は,本件道路陥没地点の盛土が平成4年頃に行われたと主張しているが,この主張は,証拠(甲15の2,丙5の1・9枚目及び10枚目,丙11・2枚目)に反する。本件道路陥没地点の盛土は,本件開発許可にかかる開発行為の際に行われたものである。それにもかかわらず,控訴人津市は,本件開発許可に当たって,盛土による影響を考慮しておらず,都市計画法に違反している。 このほか,被控訴人Bは,被控訴人Cの主張(7(2))を援用する。 (3) 回避可能性についての追加的主張本件道路陥没事故後,控訴人津市が空洞調査を行った本件道路陥没地点付近の7地点のうち4地点において,いずれも深度20mの範囲内で空洞が確認された(丙8~11)。また,控訴人津市は 加的主張本件道路陥没事故後,控訴人津市が空洞調査を行った本件道路陥没地点付近の7地点のうち4地点において,いずれも深度20mの範囲内で空洞が確認された(丙8~11)。また,控訴人津市は,本件道路陥没事故後,津市F地区における開発行為許可申請業者に対しては,磨き砂採掘跡の空洞の有無を確認するために調査深度20mのボーリング調査を実施するように行政指導を行うようになった(証人M35頁)。これらのことから,控訴人津市がDに対する開発許可手続において少なくとも20mのボーリング調査を行っていれば,本件道路陥没地点の空洞を確認することは十分に可能であった。 そして,確認された空洞については,G団地を開発したHが空洞処理をしたように,水締め転圧,埋め戻し処理,セメント安定処理等を行えば空洞による陥没の危険性を除去することができた(乙7)。 このほか,被控訴人Bは,被控訴人Cの主張(7(3))を援用する。 (4) 行政の危険管理責任の補充性について控訴人津市の主張する行政の危険管理責任の補充性は,被害者である被控訴人Bに対する責任を制限する根拠とはなり得ない。行政主体は,被害者との関係では,直接加害者と同様に不真正連帯債務者として被害額全額の損害 賠償責任を負う。 (5) 被控訴人Bの代替地への転居損害についてア本件道路陥没事故と転居損害との因果関係について被控訴人Bは,本件道路陥没事故と転居損害との因果関係について,被控訴人Cの主張(7(5)ア)を援用する。 イ B土地及び本件建物の修復可能性について控訴人津市は,本件道路陥没事故後に応急修繕工事を行ってはいるが,注入材の選択や注入率及び注入ピッチの設定が不適切で,注入範囲も不十分である上,崩壊土の体積収縮 建物の修復可能性について控訴人津市は,本件道路陥没事故後に応急修繕工事を行ってはいるが,注入材の選択や注入率及び注入ピッチの設定が不適切で,注入範囲も不十分である上,崩壊土の体積収縮に対する検討も欠いている。そのため,このままでは周囲の土砂が崩壊土の未改良範囲に流出し,隣接地域の地盤を弱体化させる可能性及び周辺地域の陥没を誘引する危険性が懸念される。 また,本件委員会は,「すでに施工されているグラウト工による緊急対策工は,道路付近での当初の地盤陥没の拡大に対してある程度の効果は見込めるものと思われるが,これは陥没地域全体をカバーできるものではなく,陥没の主因であると考えられる地下水の処理も行っていないため,今後の経過を注意深く観察する必要がある。」と警告し,集水井工を施工した上,復旧対策の効果が十分確認されるまでは,陥没箇所周辺の立ち入りを引き続き禁止する必要があるとしている。 なお,控訴人津市は,平成19年2月28日に応急修繕工事を実施してから現在まで当該工事部分が再陥没していないことをもって,上記工事実施により復旧工事が完了したと主張する。しかし,昭和52年報告書(甲12)においても,空洞による陥没の危険性は長期間のうちに徐々に拡大発展することが指摘されているから,短期間の経過観察をもって再陥没の危険性はないということはできない。 したがって,B土地は,控訴人津市が集水井工などの復旧対策工事を実施しない限り,被控訴人Bがいかなる復旧工事を行ったとしても,宅地と して安全性を満たさないことは明らかである。 また,仮に,B土地の復旧工事が可能であるとしても,その費用は,(6)で後述するとおり,転居損害を上回る。加えて,B土地の復旧工事に伴う曳家工事を行う場所を確保す いことは明らかである。 また,仮に,B土地の復旧工事が可能であるとしても,その費用は,(6)で後述するとおり,転居損害を上回る。加えて,B土地の復旧工事に伴う曳家工事を行う場所を確保することも困難であるから,B土地の復旧対策工事は現実的に不可能である。 さらに,本件建物は,本件道路陥没事故により,ゴルフボールやテープが勢いよく転がり下りるほど大きく傾き,多大なねじれ圧力が加わっていることは明らかである。 したがって,B土地及び本件建物が修復不可能であることは明白である。 このほか,被控訴人Bは,被控訴人Cの主張(7(5)イ)を援用する。 (6) 補修費用についての予備的主張仮に,復旧工事によって被控訴人Bの損害が回復するとしても,アンダーピニング工法を採用したグラウト工法の工事費用は,消費税を8%とすると4693万1400円を要する。 また,E意見書(丁19)によれば,B土地の復旧工事費用として,薬液注入工事による場合は9980万円,鋼管杭の挿入工事による場合は5032万円かかるとされ,見積書によれば,二重管複相注入工法による薬液注入工事の費用は8671万1000円(税別。丁27),上位工法(二重管ダブルパッカ工法)による薬液注入工事の費用は9496万4000円(税別。 丁30)かかるとされる。このことからしても,仮に本件土地についてのみ復旧工事を行ったとしても,被控訴人Bが主張する転居損害を上回る費用が発生することが裏付けられる。 このほか,被控訴人Bは,被控訴人Cの主張(7(6))を援用する。 (7) 控訴人Aの説明義務違反の違法性売買の対象となっている土地が磨き砂の採掘跡地であり陥没のおそれがあることから都市計画法上の開発許可の条件として空 主張(7(6))を援用する。 (7) 控訴人Aの説明義務違反の違法性売買の対象となっている土地が磨き砂の採掘跡地であり陥没のおそれがあることから都市計画法上の開発許可の条件として空洞調査を確実に履行する ことが条件として付されているとの事実は,当該土地の購入予定者にとっては,売買契約を締結する際の重要な判断要素となることが明らかであり,同事実の説明義務違反は,売買契約上の売主の付随的義務違反として債務不履行に当たる。 また,控訴人Aは,B土地が磨き砂の採掘跡地であることは,宅建業法に定める説明すべき事項の範疇外であると主張するが,都市計画法上の開発許可の条件として磨き砂の採掘跡の空洞調査を確実に履行することが条件として付されていたことは,宅建業法35条1項2号に基づく説明義務の範疇に含まれることは明らかである。 (8) 説明義務違反と損害との因果関係被控訴人Bは,もし,控訴人Aが宅建業法に基づく説明義務に基づき,上記の開発許可の条件について説明を行っていれば,B土地を購入することはなかった。 (9) 控訴人Aの賠償すべき損害B土地には空洞が存在し,これに対する処置をしない限り,将来のB土地及び周辺地盤の陥没について担保することはできない。したがって,B土地の宅地としての経済的価値は無に等しいから,控訴人Aは,少なくともB土地の売買金額相当額を賠償すべきである。 (10) 控訴人Aの不法行為責任(訴えの追加的変更)控訴人Aは,被控訴人Bの上記主張(原判決引用部分)のとおり,被控訴人Bに対してB土地が磨き砂の採掘跡地であるという説明をせず,本件開発許可に付されていた許可条件を示さなかった。この説明義務違反は,債務不履行だけでなく不法行為にも該当する。よ 分)のとおり,被控訴人Bに対してB土地が磨き砂の採掘跡地であるという説明をせず,本件開発許可に付されていた許可条件を示さなかった。この説明義務違反は,債務不履行だけでなく不法行為にも該当する。よって,被控訴人Bは,控訴人Aに対し,債務不履行に基づく損害賠償請求と選択的に,不法行為に基づく損害賠償請求として644万1780円及びこれに対する不法行為の後(訴状送達の日の翌日)である平成22年1月8日から支払済みまで年5分の割合に よる金員の支払を求める。 (11) 控訴人Aの不法行為責任の消滅時効について控訴人Aは,被控訴人Bに対し,磨き砂層の空洞調査を行うことが本件開発許可の条件として付されていることを説明しておらず,また,重要事項説明書にも開発許可の条件を示した書類を添付していなかった。そのため,被控訴人Bは,本件訴訟で平成24年2月9日に控訴人津市が開発行為許可書の控え(乙9の2)を提出するまで本件開発許可に上記条件が付されていることを知らなかった。 したがって,被控訴人Bが控訴人Aによる宅建業法に基づく説明義務違反を認識したのは平成24年2月9日であり,不法行為責任の時効期間は経過していない。 7 被控訴人C(1) 国家賠償法1条1項に基づく請求についての補充主張ア都市計画法33条に基づく開発許可審査手続との関係における津市長及び控訴人津市の公務員の職務上の義務違反について都市計画法33条1項7号の趣旨は,災害防止の観点から,開発行為を行政庁による「許可」にかからしめ,行政庁による開発許可を通して当該開発区域内外で生活する住民の生命,身体の安全等の保護を図ろうとすることにある(最高裁平成9年1月28日第三小法廷判決参照)。そして,被控訴人Cが原審で主張した事 ,行政庁による開発許可を通して当該開発区域内外で生活する住民の生命,身体の安全等の保護を図ろうとすることにある(最高裁平成9年1月28日第三小法廷判決参照)。そして,被控訴人Cが原審で主張した事実(原判決11頁18行目から13頁10行目まで)からすれば,控訴人津市には,定性的には,A開発区域内の土地又はこれに隣接する区域の土地の地中に存在する空洞を端緒とした地表陥没等の災害が発生し,これを引き金として,本件土地内の地盤が沈下又は流出するに至るなどの危険性を具体的な因果経過に即して十分に認識又は予見することが可能であったというべきである。また,本件道路陥没地点を含めA開発区域に隣接する区域一帯に施された最大8mの盛土は,A 開発区域における開発行為と一体のものと評価できる上,控訴人Aによる開発行為とDによる開発行為は実質的にみて一体の開発行為と評すべきである。 以上によれば,開発許可行政を担う控訴人津市の公務員及び津市長には,本件開発許可の審査に際し,自ら実施した昭和52年調査の結果及びそこに示された今後の調査方針等の内容等をも踏まえて,自ら又は控訴人Aをして,本件開発許可申請区域内のほか,これに隣接し本件開発許可申請区域内に影響を及ぼしうる本件道路陥没地点等の周辺地域を含めて必要かつ十分な「空洞の存否に関する調査」や「地質,地盤の状況等に係る調査」を実施させ,更に,空洞の充填工事や,適切な地下浸透水の排水措置を行うなどの安全性を確保するための施策を講じさせた上で,当該開発行為の内容を実質的・具体的に検討,審査して開発許可をなすべき注意義務が課せられていたというべきである。 それにもかかわらず,控訴人津市には,被控訴人Cが原審で主張した(原判決15頁24行目から16頁18行目まで)とおり,必要かつ十 許可をなすべき注意義務が課せられていたというべきである。 それにもかかわらず,控訴人津市には,被控訴人Cが原審で主張した(原判決15頁24行目から16頁18行目まで)とおり,必要かつ十分な調査や安全確保のための施策についての実質的な検討,審査すら行わないまま,漫然と許可をしたという義務違反がある。 イ都市計画法36条に基づく工事完了検査との関係における津市長及び控訴人津市の公務員の職務上の義務違反についてこれについても,原審で主張した(原判決16頁19行目から17頁19行目まで)とおりであるが,上記アで述べた事情からすれば,開発許可行政を担う控訴人津市の公務員及び津市長は,本件での工事完了検査に際し,本件開発許可申請区域内のほか,更に,これに隣接し本件開発許可申請区域内に影響を及ぼしうる本件道路陥没地点等の周辺地域を含めて必要かつ十分な「空洞の存否に関する調査」や「地質,地盤の状況等に係る調査」が実施されたものであるかどうか,また,適切な空洞の充填工事等が 実施され,安全上必要な措置が講じられているかどうかについて,実質的・具体的な検査を行う作為義務を負っていたと解すべきである。 それにもかかわらず,控訴人津市には,被控訴人Cが原審で主張した(原判決17頁10行目冒頭から19行目末尾まで)とおり,控訴人Aから提出された「AF地内開発工事に伴う空洞調査報告書」(甲5)の結果のみをうのみにして,漫然と本件開発行為の完了検査を終え,検査済証を交付した。 (2) 予見可能性についての追加的主張国家賠償法2条1項で問題とされる予見可能性とは,特定の地点において災害や事故が発生することについて具体的に予見できることまでは必要でなく,一定の地域で,災害や事故が発生する蓋然性が 主張国家賠償法2条1項で問題とされる予見可能性とは,特定の地点において災害や事故が発生することについて具体的に予見できることまでは必要でなく,一定の地域で,災害や事故が発生する蓋然性があることを予見できれば足りる。被控訴人Cの上記主張事実(原判決11頁18行目から13頁10行目まで及び24頁17行目から26頁1行目まで)及び控訴人津市がD開発区域の地盤や地質状況等に関して資料を有していたこと等からすると,控訴人津市は,本件道路を含めたD開発区域内の地中に空洞が存在する可能性が高く,盛土のため帯水するなどして陥没事故を惹起し得る水ミチが発生する可能性が高いこと等を具体的に認識することができた。 また,控訴人津市が,本件道路陥没地点の盛土が平成4年頃に行われたと主張していることについては,被控訴人Bの主張を援用し,控訴人津市の主張が証拠に反すること,控訴人津市は,本件開発許可において盛土による影響を考慮しておらず都市計画法に違反していることを主張する。 このほか,被控訴人Cは,控訴人津市の予見可能性についての被控訴人Bの主張(6(2))を援用する。 (3) 回避可能性についての追加的主張控訴人津市は,本件道路陥没地点はDが本件道路において空洞調査をした5か所の地点とは全く別の場所であるから,この5か所の地点で深度20m 程度のボーリング調査をして空洞が発見できたとしても,本件道路陥没事故という結果を回避できるものではなかったと主張する。 しかし,この5か所の地点で空洞が発見されていれば,必要に応じて更に詳細な空洞調査をするとともに,地下水の流入を防止する措置をとったり,グラウト工により地盤(中間層)を固化する地盤回廊措置をとったりするなどして,本件道路陥没地点を含めたD開発 ば,必要に応じて更に詳細な空洞調査をするとともに,地下水の流入を防止する措置をとったり,グラウト工により地盤(中間層)を固化する地盤回廊措置をとったりするなどして,本件道路陥没地点を含めたD開発区域内での陥没事故を未然に回避することも可能であったというべきである。 このほか,被控訴人Cは,控訴人津市の回避可能性について,被控訴人Bの主張(6(3))を援用する。 (4) 行政の危険管理責任の補充性について控訴人津市の主張する行政の危険管理責任の補充性については,被控訴人Bの主張(6(4))を援用する。 (5) 被控訴人Bの代替地への転居損害についてア本件道路陥没事故と転居損害との因果関係について本件道路陥没事故は大規模なものであり,本件道路のうち本件道路陥没地点以外の部分については具体的な調査や抜本的な陥没防止対策すら講じられていない。したがって,本件道路は依然として危険である。そして,これに隣接する本件建物等は,住居としての効用を満たさないほどの甚大な被害,マスコミ等による報道が繰り返され,いわゆる心理的瑕疵にも類似した大きな損害が生じ,財産的価値も著しく毀損されている。そうである以上,転居損害はB土地の地中に存する空洞を問題とするまでもなく本件道路陥没事故との相当因果関係を有する。 また,転居損害は,控訴人津市による国家賠償法1条1項違反によってB土地の空洞が放置されたことと,同法2条1項違反による本件道路陥没事故とが競合して生じた損害である。したがって,控訴人津市は,転居損害を賠償すべきである。 さらに,控訴人津市は,本件開発許可に関与した当時,B土地を含む本件開発許可申請区域内に空洞が存在することも予見又は認識し得たところ,本件道路の管理 害を賠償すべきである。 さらに,控訴人津市は,本件開発許可に関与した当時,B土地を含む本件開発許可申請区域内に空洞が存在することも予見又は認識し得たところ,本件道路の管理者となった後も,同様に,B土地の空洞について予見可能性があった。そうだとすれば,B土地の空洞の存在は予見可能な特別事情に当たるから,控訴人津市は,民法416条2項の類推適用により,被控訴人Bの転居損害についても賠償責任を免れない。 イ B土地及び本件建物の修復可能性人為的な構造物(磨き砂坑道等)に発生する陥没現象では,陥没箇所の周辺にも緩みが生じて陥没の拡大が懸念される(丁35の1頁図1)。そうしたところ,B土地の北側などでは,地盤の緩みによる地表変状が確認されている(丙11・30枚目「図-2.20 観測点移動変化図」及び41枚目「図-5.3 グラウト工平面図」で2本の波線で示された部分,丁19・5頁の赤線で囲まれた範囲)。これについて,I作成の意見書(丁35)は,「B邸の家屋は陥没部ではないが,『緩み領域』に入っており,今後の再陥没や変形・沈下の懸念がある。」などと指摘している(丁35・6頁)。 また,控訴人津市の応急修繕工事は,支持層の選択,薬液注入の深度,注入材,注入率,注入孔ピッチ等が不適切なため,効果に疑問が残る。 さらに,控訴人津市の応急修繕工事では,本件道路陥没地点及びその周辺区域における地下水流の遮断・排水にかかる措置を講じていない。 以上の諸事情に照らせば,地下水流の遮断・排水措置とこれを前提とする適切な地盤改良措置が講じられない限り,B土地は,物理的にも社会通念上も,もはや復旧不能である。 控訴人津市は,応急修繕工事の完成時期である平成19年2月28日 水措置とこれを前提とする適切な地盤改良措置が講じられない限り,B土地は,物理的にも社会通念上も,もはや復旧不能である。 控訴人津市は,応急修繕工事の完成時期である平成19年2月28日から現在まで当該工事部分が再陥没したことがないと主張するが,宅地に要求される性能は,宅地が家屋の基礎となる地盤として利用される期間にお いて,有害な沈下・陥没や滑りを引き起こさないことであるから,宅地は半永久的に安全でなければならない。したがって,変状が発生していなくても,地盤工学的見地から安全と評価できなければ,そこは危険な土地というべきである(丁35・9頁)。 その上,仮に,B土地の復旧が可能であるとしても,(6)で後述するとおり,転居損害を超える高額な補修費用を要する。また,B土地の復旧に伴う曳家工事をする場所もない上,鋼管杭挿入工事は周辺地盤への影響を与える危険もある。これらを考慮すると,現実の復旧工事は不可能であり,本件土地の復旧ができない以上,本件建物の復旧を試みること自体無意味である。 したがって,被控訴人Cが請求する建物の建替費用相当額は,本件道路陥没事故と相当因果関係を有する。 このほか,被控訴人Cは,被控訴人Bの主張(6(5)イ)を援用する。 (6) 補修費用仮に,百歩譲ってB土地の復旧が可能であるとしても,B土地を住居の敷地としての用に供するためには,根本的に緩んでしまった地盤を改良するための「薬液注入工事」又は「鋼管杭の挿入工事」等の地盤改良工事を行うことが不可欠である。 そこで,薬液注入工事をする場合,「二重管複相注入工法」を用いた薬液注入工事の費用が8671万1000円(丁27)になり,曳家工事費用1420万円(丁33)を加えると,合計1億00 ある。 そこで,薬液注入工事をする場合,「二重管複相注入工法」を用いた薬液注入工事の費用が8671万1000円(丁27)になり,曳家工事費用1420万円(丁33)を加えると,合計1億0091万1000円の費用を要することになる。この二重管複相注入工法よりさらに浸透効果の高い上位工法である「二重管ダブルパッカー工法」を用いて薬液注入工事をすると,薬液注入工事だけでも9496万4000円を要する(丁30)。 また,B土地の周辺事情等により,曳家工事を実施できない場合には,E意見書(丁19)の図5に記載の特殊工法を用いて建物下部に薬液を注入さ せることが必要になるが,この工法は業者も限られ,費用も約1億円程度かかる(丁19・7頁)。 また,鋼管杭の挿入工事をする場合には,約5032万円の工費を要する(丁33,34)上,実際に工事をする場合には,これに加えて労災保険料及び工事保険料並びに事後調査の結果を受けた追加工事等の「間接工事費」も加算されることになる。 このように,仮にB土地を復旧させる場合でも,原審で認容された4642万5601円の転居損害を超える高額な修補費用を要する。 第3 当裁判所の判断当裁判所は,被控訴人らの控訴人津市に対する請求は,いずれも理由がなく,被控訴人Bの控訴人Aに対する請求は,説明義務違反(不法行為)に基づく損害賠償金152万円及びこれに対する平成22年1月8日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるが,その余は理由がないと判断する。 その理由は,次のとおりである。 1 認定事実認定事実については,原判決52頁14行目の「2地点」を「4地点」に改め,53頁4行目の「本件」の後に「道路」を加えるほか,原判決 。 その理由は,次のとおりである。 1 認定事実認定事実については,原判決52頁14行目の「2地点」を「4地点」に改め,53頁4行目の「本件」の後に「道路」を加えるほか,原判決「事実及び理由」欄の第3の1(36頁11行目から57頁17行目まで)記載のとおりであるから,これを引用する。 2 津市長等の職務上の義務違反の有無(国家賠償法1条1項関係)について(1) 原判決の引用津市長等の職務上の義務違反の有無(国家賠償法1条1項関係)については,原判決57頁26行目の「被告Aによって行われた」及び58頁3行目の「加えて,」から8行目末尾までをそれぞれ削り,次の(2)に当審における当事者の主張に対する判断を示すほかは,原判決「事実及び理由」欄の第 3の2(57頁18行目から59頁24行目まで)記載のとおりであるから,これを引用する。 (2) 当審における当事者の主張に対する判断被控訴人らは,本件道路陥没地点を含めA開発区域に隣接する区域一帯に施された最大8mの盛土は,A開発区域における開発行為と一体のものと評価できる上,控訴人Aによる開発行為とDによる開発行為は実質的にみて一体の開発行為と評すべきであるから,津市長等は,本件開発許可の審査(都市計画法33条)及び工事完了検査(都市計画法36条)に際し,本件開発許可申請区域内だけでなく,これに隣接し影響を及ぼしうる本件道路陥没地点等の周辺地域を含め,自ら又は控訴人Aをして調査や安全対策を行わせ,十分な審査や検査を行う作為義務を負っていたと主張する。 しかし,証拠(乙10.11,丙5の2・5枚目)及び弁論の全趣旨によれば,本件道路陥没地点は,もともとは標高22.8mの平坦な谷であったところ,平成4年頃に何者かがこれを埋め立 主張する。 しかし,証拠(乙10.11,丙5の2・5枚目)及び弁論の全趣旨によれば,本件道路陥没地点は,もともとは標高22.8mの平坦な谷であったところ,平成4年頃に何者かがこれを埋め立てて標高30.1mまで盛土を行ったこと,当時,都市計画法29条の開発許可の権限を有していたのは三重県知事であり,控訴人津市は,この埋め立ての事実を知らなかったこと,その後,控訴人Aが平成16年頃に山林整形を行ったが,その時には本件道路陥没地点を埋め立てていないことが認められる(平成16年1月14日に作成された造成計画断面図(丙5の1・9枚目)においても,B土地(同図の(1)-(1)断面図の左端)には,擁壁の隙間部分に最大高さ1.6mの盛土がされているが,本件道路に盛土は見られない。)。 そうすると,本件道路陥没地点付近の最大8mの盛土は,本件開発許可の10年以上前に行われたもので,控訴人Aによる開発行為とは無関係ということになるから,この盛土をA開発区域における開発行為と一体のものと評価することはできない。 また,証拠(乙4,丙5の1,18,19)及び弁論の全趣旨(控訴人A 平成26年9月1日付け準備書面)によれば,A開発区域とD開発区域は隣接しているものの,控訴人Aが本件開発許可申請をした平成16年2月19日の時点では,Dが隣接地域で開発行為を行うことは明らかになっておらず,A開発区域内には生活に必要な道路が整備されていること,Dが開発行為について都市計画法32条に関する協議申出書を控訴人津市に提出したのは,控訴人Aが平成16年5月7日に本件検査済証の交付を受けた約2か月後の同年7月6日であったことが認められる。 このことからすると,控訴人Aによる開発行為とDによる開発行為が実質的にみて一体の開発行為 平成16年5月7日に本件検査済証の交付を受けた約2か月後の同年7月6日であったことが認められる。 このことからすると,控訴人Aによる開発行為とDによる開発行為が実質的にみて一体の開発行為であると評価することはできない。 以上によれば,津市長等が本件開発行為許可に係る手続を行うに際し,本件開発許可申請区域外にある本件道路陥没地点について調査や安全対策を講じる義務があるとは認められない。 したがって,その余の点を判断するまでもなく,被控訴人らの控訴人津市に対する国家賠償法1条1項に基づく請求は理由がない。 3 控訴人津市の本件道路の管理の瑕疵の有無(国家賠償法2条1項関係)について(1) 本件道路陥没事故発生の原因上記(原判決8頁22行目から9頁16行目まで)のとおり,本件道路は,D開発区域内にあり,Dによる開発行為の一環として築造され,開発許可権者である津市長がDによる開発行為について工事が完了した旨の公告を行ったことにより,公告の翌日である平成17年8月10日をもって控訴人津市がその管理者となり,それ以降,本件道路陥没事故の発生日である平成18年7月9日を含め,控訴人津市の管理下にあった(乙4,丙1,4の2,3)。 本件道路陥没事故は,本件委員会が考察した(原判決54頁22行目から55頁21行目まで)とおり,陥没地が元の谷地形最深部にあり,周辺の雨 水,浸透水が集中して流入する場所にあったところ,この部分に盛土が行われたため,盛土内に水が滞水するとともに,不均一な地下水の流れ(部分流)が生じ,この部分流が火山灰層(磨き砂層)の強度を低下させ,火山灰層(磨き砂層)内に存在する空洞の天端(天井)付近で陥没を発生させて空洞域を拡大し,これが地表まで影響を及ぼしたことによっ (部分流)が生じ,この部分流が火山灰層(磨き砂層)の強度を低下させ,火山灰層(磨き砂層)内に存在する空洞の天端(天井)付近で陥没を発生させて空洞域を拡大し,これが地表まで影響を及ぼしたことによって生じたと認められる。そして,本件道路陥没事故の発生には,本件道路が,①元の谷地形最深部にあり,周辺の雨水,浸透水が集中して流入しやすい場所にあったこと,②Dがされていたことから水ミチ上載圧の影響があったこと,③旧地山の空洞直上の土被りが浅いことの諸条件に加え,④大きな降雨により地中への水の供給が増えたことも影響していると認められる。 以上によれば,本件道路陥没事故は,本件道路が,磨き砂層内の空洞の上にあるだけでなく,その場所が浸透水が集中して流入する場所でもあった上,土被りが浅いところに盛土がされた上に築造されていたという,陥没事故が発生しやすい特徴を備えていたところへ,降雨によって水が供給され,時間の経過とともに空洞域の拡大が進行して生じたということができる。 (2) B土地及び本件道路が所在する津市F地区の開発の状況(ア) 津市F地区では,江戸時代から磨き砂の採掘が行われ,明治時代から昭和20年頃までが最盛期であったが,昭和52年当時においても2箇所で採掘が行われていた。なお,戦時中,採掘跡は機密的な工廠としても利用されていた(甲12,乙2)。 (イ) 昭和43年の都市計画法の改正により,都市計画区域を市街化区域(すでに市街地を形成している区域及びおおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域。都市計画法7条2項)と市街化調整区域(市街化を抑制すべき区域。同条3項)に区分する,いわゆる線引き制度が創設され,津市F地区については市街化区域に区分された(甲14の1, 2,乙4,証人M)。 (ウ) と市街化調整区域(市街化を抑制すべき区域。同条3項)に区分する,いわゆる線引き制度が創設され,津市F地区については市街化区域に区分された(甲14の1, 2,乙4,証人M)。 (ウ) 昭和52年に線引きが見直されることになったが,控訴人津市は,昭和52年の都市計画区域の線引きの見直しに合わせて,昭和52年調査を行い,津市長は,この調査結果を参考にして,津市F地区のうち,B土地を含む,J団地とK団地の間に挟まれた合計28haの土地(L地区)について,当時の土地利用計画策定権者であった三重県知事に対して,市街化の進展がなく,磨き砂の採掘により住宅立地が危険であるとの理由を挙げて,市街化調整区域に区分されるべきであるとの意見を述べた。これに対し,津市F地区の住民の一部から,当該地域では,市街化区域編入後,住宅地としての開発も進み,工事中や開発許可申請中の土地も多く,土地所有者は既に種々の計画を立てていることから,市街化区域のままにしてほしいとの陳情が三重県議会に提出された。また,三重県は,昭和52年8月5日に,津都市計画区域の変更案について,公聴会を開催し,津市F地区の住民からは,L地区を市街化調整区域に変更することに反対し,三重県に上記変更案の見直しを迫る意見が出された。そこで,三重県議会の土木常任委員会において更に審議し,現地調査するなどした結果,開発行為については現地調査を十分行って開発許可をしていくので,再度市街化区域に編入して,地域一帯を良好な市街地に整備するとの理由により,L地区について市街化区域のままとする案が作成され,昭和52年10月に開催された三重県都市計画地方審議会においてこれが承認された(甲14の1及び2,15の3,甲17の1ないし4,乙4,証人M)。 (エ) 昭和52年から本件開発許可がなされた平成 昭和52年10月に開催された三重県都市計画地方審議会においてこれが承認された(甲14の1及び2,15の3,甲17の1ないし4,乙4,証人M)。 (エ) 昭和52年から本件開発許可がなされた平成16年までの約30年間に,F地区28haのうち26haが既に宅地開発され,昭和52年報告書により,地下に「みがき砂の採掘跡の空洞」,「廃坑(立坑,一部斜坑)位置」,「陥没地形」,「崩壊地形」が表示されている部分も,既に建物の敷地や,「道路」や「公園」になっている(乙4,丙17の1,2,1 8,19)。 (3) 控訴人津市が本件道路陥没事故を予見し得た可能性についてア本件土地付近の地形について(ア) 昭和52年調査においては,調査地内にはかなりの密度で陥没地や崩壊地が存在しており,特に,J団地付近からほぼ南北方向でK団地方面に伸びる沢筋とSの北側を東西方向に伸びて連なる山地の周辺に多くみられると指摘されているところ(甲12の5,6頁),D開発区域は,昭和52年の地形からすれば,谷地形最深部にあり,上記J団地付近から伸びる沢筋に近いと認められる(甲12の15頁(地質平面図及び断面図),附図-1,乙3,丙4の1の2枚目)。その後,上記2(2)のとおり,本件道路陥没地点付近の谷(乙10,11によれば,平成3年当時の標高は22.8m)は,平成4年頃に何者かによって埋め立てられ,Dが開発行為許可申請をした平成16年には,標高30.1mの平坦な土地になった(控訴人津市平成26年8月25日付け準備書面)。 (イ) 昭和52年報告書には,磨き砂層自体は全体的によく締まった地層であって,昭和52年調査によれば,磨き砂層の上部にある神戸層のうち,泥層は非常に堅く,砂・シルト互層のうちのシルト層もよく締まっていること 52年報告書には,磨き砂層自体は全体的によく締まった地層であって,昭和52年調査によれば,磨き砂層の上部にある神戸層のうち,泥層は非常に堅く,砂・シルト互層のうちのシルト層もよく締まっていること等が記載されている(甲12・11,14頁)。 (ウ) 本件委員会報告書によれば,同委員会によるボーリング調査で磨き砂中に発見された空洞に関し,同調査における№6及び№7地点では,空洞直上は硬質で強度を保っており,現時点では安定した状態であると考えられる,とされている(丙11・4項(36枚目))。 また,本件委員会報告書によれば,磨き砂層の空洞直上が良好な地盤の場合には,地盤内で陥没が発生しても,陥没の影響は地表面にはほとんど及ばないとされている(丙11・3項(32枚目))。 本件委員会報告書は,陥没発生の原因として,陥没地は元の谷地形最 深部にあり,周辺の雨水,浸透水が集中して流入する場所にあり,そこに盛土を行ったため,盛土内に水が滞水するとともに,新たな水ミチ(雨水が浸透してできる地下水の通路)が形成されたことを指摘している(丙11・4項)。しかしながら,昭和52年報告書で陥没地や崩壊地が多いとされたJ団地付近からほぼ南北方向でK団地方面に伸びる沢筋とSの北側を東西方向に伸びて連なる山地の周辺には,多くの家が建ち並んでおり,その中には,昭和52年当時は谷地形の最深部であった地区もあるが,これらの場所を含め,約30年にわたって津市F地区の開発対象地では本件同様の陥没事故は発生しなかった(乙3,4,弁論の全趣旨)。 本件委員会報告書は,地盤の陥没,沈下といった問題の究明に当たっては,陥没原因が地下にあるとともに,地形・地質,地下水,気象等の要因が複雑に重なり合っているため,明確にその原因を特 の全趣旨)。 本件委員会報告書は,地盤の陥没,沈下といった問題の究明に当たっては,陥没原因が地下にあるとともに,地形・地質,地下水,気象等の要因が複雑に重なり合っているため,明確にその原因を特定することは,現時点の学問,技術レベルでは不可能であること,今回発生したような陥没は,全国各地でかなり発生しているにもかかわらずあまり顕在化しておらず,その結果を直接利用できない問題があること,このように,地盤の陥没・沈下は,地下の状況を明確にできない上,地域性が大きく,その予知が困難であるとともに突発的に発生する可能性があることを指摘した上で,住民の生活の安全・安心な環境を守るために,地下水位及び流向・流速等の観測,地表での沈下状況の確認,過去にさかのぼってのF地区全体の団地造成前後の状況の確認,多数地点でのボーリング調査の実施,ハザードマップの作成等を行うことを提言している(丙11・6項(42枚目))。 イ宅地開発業者による空洞調査及び安全確保策(ア) 証拠(乙4,7)及び弁論の全趣旨によれば,D開発区域に隣接するG団地を造成したHは,平成13年12月17日に津市に「G団地造 成工事空洞調査及び処理報告書」(乙7)を提出したこと,同報告書には,電気探査により異常が認められた全ての箇所を計画地盤から下10mまで試掘し,存在が確認できた縦穴の空洞(1か所のみ)については,水締め転圧を行い,埋め戻し処理を行ったこと,試掘の結果,空洞が確認されなかった宅地についても,さらに安全を期するため,宅地の地盤を1m掘り下げたところをバックホウセメントと土を混合かくはんして転圧して地盤を固化した浅層混合処理工法で厚さ1mのいわば人工の「地盤」を宅地の地下1m付近一面に造ったこと,平成12年10月のボーリングにより存在 ところをバックホウセメントと土を混合かくはんして転圧して地盤を固化した浅層混合処理工法で厚さ1mのいわば人工の「地盤」を宅地の地下1m付近一面に造ったこと,平成12年10月のボーリングにより存在が確認された計画地盤から約15m下の空洞については,空洞上の地下12~15mの地層の粘性が高く,既に50年以上の年月が経過し,安定していることなどから,地盤より5~6mの浅い部分でよほど大きな荷重をかけない限り崩落のおそれはないものと判断し,宅盤のセメントの安定処理をするにとどめたこと等が記載されていること,このようにして造成されたG団地では,現在までに,宅地等の陥没現象は発生していないことが認められる。 (イ) 控訴人津市は,控訴人AやDとの間で32条協議を行った際,「申請地周辺には,みがき砂採掘跡地が見うけられるので,申請地の空洞調査を実施し,宅地造成後においても安全が確保できるよう留意されたい。」という内容を32条同意の条件にした(乙1,4,丁1)。 (ウ) 控訴人Aは,平成16年3月に「空洞調査」(甲5)を控訴人津市に提出し,Dは,平成17年7月11日に空洞調査報告書(乙8)を控訴人津市に提出した。 控訴人Aから提出された報告書には,比抵抗二次元電気探査と試掘による空洞の有無の確認調査を実施したところ,空洞は確認されなかった旨,開発区域外周に坑道の進入が確認されていないことや地質的要因から,開発区域内の深度10m以内に空洞のある可能性はかなり低いと判 断される旨の記載があり,Dから提出された報告書には,調査地点全てにおいて空洞が確認されなかった旨の記載がある。 ウ本件道路の築造工事の状況等証拠(乙6の15,39,58,59頁,証人M14頁)によれば,本件道路の築造に当たっては,水道 てにおいて空洞が確認されなかった旨の記載がある。 ウ本件道路の築造工事の状況等証拠(乙6の15,39,58,59頁,証人M14頁)によれば,本件道路の築造に当たっては,水道管を布設するため,深さ2.5mまで掘削をし,舗装をするため重量のある締固め用ロードローラーで転圧し,トラクターショベルで資材を運ぶなどの作業が行われたが,空洞の存在をうかがわせる状況はなく,中間検査においても,道路の路盤支持力検査のための平板載荷試験や現場密度試験などの試験結果は所期の数値を満たしていたと認められる。 そして,本件道路では,平成17年8月5日に完了検査(丙4の3)を受けてから本件道路陥没事故が発生するまで約11か月の間,表面の亀裂などの予兆があった形跡はない。 エ F公園での陥没事故上記(原判決51頁11行目から19行目まで)のとおり,本件道路陥没事故(平成18年7月9日)に先立ち,平成17年9月9日及び平成18年4月18日頃に陥没が発生している。 しかし,F公園での陥没事故は,本件道路陥没地点から約65m離れているところ,F公園で1回目の陥没が発生した平成17年9月9日から本件道路陥没事故までの約10か月の間に,F公園の同じ場所で大きさ1m程度の小規模な陥没が起きたにすぎない。 そして,上記イ(ア)のとおり,磨き砂採掘跡地における地表面の陥没は,地形・地質,地下水,気象などの要因が複雑に重なり合って生じるものであるところ,本件道路陥没地点に隣接するB土地においては,深度15~17m及び19~21mの各場所に空洞は存在するものの,深度13~25mの間のN値34~50という非常に強固な地盤と洪積層と思われる凝 灰岩に挟まれる形で存在しており,陥没のおそれがあるとは 7m及び19~21mの各場所に空洞は存在するものの,深度13~25mの間のN値34~50という非常に強固な地盤と洪積層と思われる凝 灰岩に挟まれる形で存在しており,陥没のおそれがあるとは認められない(甲8,丁9の2)。 オ本件道路陥没事故の予見可能性本件委員会報告書は,地盤の陥没,沈下といった問題の究明に当たっては,陥没原因が地下にあるとともに,地形・地質,地下水,気象等の要因が複雑に重なり合っているため,明確にその原因を特定することは,現時点の学問,技術レベルでは不可能であること,地盤の陥没・沈下は,地下の状況を明確にできない上,地域性が大きく,その予知が困難であるとともに突発的に発生する可能性があることを指摘している。そして,昭和52年当時谷地形の最深部であった場所を含め,宅地開発が進められた津市F地区において本件道路陥没事故までに同様の規模の陥没事故が発生したことはなかったこと,平成16年に控訴人Aから,平成17年にDからそれぞれ控訴人津市に提出された報告書には,調査地点全てにおいて空洞が確認されなかった旨の記載があったこと,平成17年9月9日に本件道路陥没地点から約65m離れたF公園で陥没が発生したが,近接した土地であっても,地下の状況が全く異なることがあること,本件道路を築造する過程では,公園での築造では用いないような大きな重量のある締固め機械などが用いられていること等を考慮すれば,控訴人津市において,本件道路陥没事故発生前に,本件道路陥没地点付近において陥没事故が発生することを具体的に予見し得たとは認め難い。 (4) 本件道路陥没事故を回避し得た可能性についてア昭和52年報告書には,坑内掘りの跡地が47箇所で確認されたが,坑内への土砂流入,水没,酸欠など安全面に問題があるため,廃坑の い。 (4) 本件道路陥没事故を回避し得た可能性についてア昭和52年報告書には,坑内掘りの跡地が47箇所で確認されたが,坑内への土砂流入,水没,酸欠など安全面に問題があるため,廃坑の分布,坑内の状況など十分な探索はできなかった旨の記載があり(甲12・6頁),三重県歴史教育者協議会の編集に係る文献には,1989年から磨き砂採掘用に掘られたトンネルの調査に取り組んだが,約2000m余を 確認したものの,落盤や崩壊さらに浸水など危険な状況になり,それ以上の調査はできずに打ち切った,との記載がある(乙2・79頁)。 イ昭和52年報告書は,今後の調査方針として,まず調査地内を約150mのグリッドで区分し,グリッドの交点付近で平均深度30mのボーリング調査を実施するなどの広域的調査を行い,その結果を踏まえて個々の土地利用区域に限った調査を行うことを提言し,後者の調査に関しては,廃坑の詳細な分布状況を知るためには,坑道の幅が2~3m程度であることから,調査地点もかなりの密度で設ける必要があることを付言している(甲12の29,30頁)。また,本件委員会報告書中の住民の生活の安全・安心な環境を守るための方策の提言において,多数地点でのボーリング調査を実施することが盛り込まれていることは,上記のとおりである。 ウ一方,本件委員会報告書によれば,磨き砂層の空洞直上が良好な地盤の場合には,地盤内で陥没が発生しても,陥没の影響は地表面にはほとんど及ばないとされているところ,同委員会によるボーリング調査で空洞が確認された同調査における№6及び№7地点においても,空洞直上は硬質で強度を保っており,現時点では安定した状態であると考えられる,とされている(丙11・4項(36枚目))。そして,Hが造成したG団地においては,地 における№6及び№7地点においても,空洞直上は硬質で強度を保っており,現時点では安定した状態であると考えられる,とされている(丙11・4項(36枚目))。そして,Hが造成したG団地においては,地表面から約15m下に空洞が存在することが確認されたG団地において,現在まで宅地等の陥没現象が発生していないことは上記のとおりである。 エ控訴人津市は,地表から下方10mの位置までを調査深度として,F地区の約28ha(28万㎡)の長方形の土地について2m四方のグリッドで分割し,それぞれの交点で地表下方10mの位置までボーリング調査するとすれば,その費用は約70億円と試算されること,既に住宅が建っているところでは住宅を除去する必要があること等を指摘し,空洞が存在する位置を確認する義務を負うのは控訴人津市ではなく,宅地開発業者自身 であり,地方公共団体である控訴人津市には,宅地開発業者が私的経済活動として行う宅地開発事業のために,莫大な調査費用を費やして津市F地区全体の空洞調査を実施する法的義務はない旨主張している(原審における平成22年11月12日付け準備書面3)。 このような調査費用の試算や宅地開発事業における責任の所在に関する控訴人津市の主張の当否についての判断はひとまずおくとしても,控訴人津市が,昭和52年以降も宅地の開発が進み,住宅等が立ち並ぶようになったF地区において大規模な地下の調査を行うに当たっては,予算や住民の意向など様々な制約を伴うこと自体は否定し難い。 オまた,証拠(証人M)によれば,控訴人津市が,本件各陥没事故後,F地区で開発行為を行おうとする業者に対し,深度20mのボーリング調査を実施するよう指導する旨の内規を作成したことが認められるところ,Dは,開発行為に先立ち,本件道路にお 津市が,本件各陥没事故後,F地区で開発行為を行おうとする業者に対し,深度20mのボーリング調査を実施するよう指導する旨の内規を作成したことが認められるところ,Dは,開発行為に先立ち,本件道路において深さ4m程度までの鋼管の打ち込みによる空洞調査を行っているが,その場所は本件道路陥没地点(丙4の2・4枚目道路部分にある№6付近)と異なる場所にあるから(乙8),仮に4mの深さを20mまで延長して調査していたとしても,本件道路陥没事故の原因になった空洞を発見できていたか否かは明らかではない。 カ以上によれば,本件道路陥没事故が発生する以前において,本件道路陥没事故の発生を回避するために控訴人津市がどのような措置を講ずるべきであったかを特定することは困難であり,また,リスクを減少させるための何らかの措置を講じることによって本件道路陥没事故の発生を回避できた蓋然性が高いとも認め難いから,結局,控訴人津市において,本件道路陥没事故を回避し得る具体的な可能性があったとは認めるに足りないといわざるを得ない。 (5) まとめ以上によれば,控訴人津市には,本件道路陥没事故の予見可能性も結果回 避可能性もなかったというほかなく,本件道路の管理の瑕疵があったとは認められないから,その余の点を判断するまでもなく,被控訴人らの控訴人津市に対する国家賠償法2条1項に基づく請求は理由がない。 4 被控訴人Bの控訴人Aに対する請求について(1) 販売責任(調査義務違反)について被控訴人Bの控訴人Aに対する販売責任(調査義務違反)に基づく請求が認められないことは,原判決71頁8行目冒頭から23行目末尾までに記載のとおりであるからこれを引用する。 (2) 説明義務違反について本件において控訴人Aに説 査義務違反)に基づく請求が認められないことは,原判決71頁8行目冒頭から23行目末尾までに記載のとおりであるからこれを引用する。 (2) 説明義務違反について本件において控訴人Aに説明義務違反が認められることについては,次のとおり加えるほか,原判決71頁26行目冒頭から74頁10行目末尾までに記載のとおりであるからこれを引用する。 控訴人Aは,適切な空洞調査を行い危険を予測できる空洞は皆無であったこと,陥没事故は多年にわたり生じていなかったこと,B土地を含むF地区が磨き砂採掘跡地であることは周知の事実であるのに人々は土地を購入して長年生活していること,これらの実情からすれば,購入者に対し磨き砂採掘跡地であることを告げたとしても購入者が売買契約を締結しないとは思えない上,控訴人Aが控訴人津市から開発の許可を得ており,相当な理由をもってB土地及びや周辺の土地について崩落の危険はないと信じていたことからすれば,控訴人Aが磨き砂採掘跡地であるとの説明をしなかったことは,信義則違反とまで評価できず,違法性がないと主張する。 しかし,上記のとおり,開発許可の内容は宅建業法35条1項に定める重要事項である上,A開発区域が磨き砂採掘跡地であることは,B土地が崩壊する可能性があることを示す事実である。そして,控訴人Aの主張する上記事情によっても,B土地が崩壊する可能性を完全に否定することはできないのであるから,A開発区域が磨き砂採掘跡地であることは,買主の意思決定 に影響を及ぼす事実であることが明らかである。 したがって,控訴人Aの主張は採用できない。 (3) 控訴人Aの説明義務違反と相当因果関係のある損害の範囲について被控訴人Bは,B土地を購入する際,他の業者の所有する土地につい したがって,控訴人Aの主張は採用できない。 (3) 控訴人Aの説明義務違反と相当因果関係のある損害の範囲について被控訴人Bは,B土地を購入する際,他の業者の所有する土地についても並行して検討を進めており,B土地を含めた付近一帯が磨き砂の採掘跡地であることを知っていれば,間違いなく他の業者の土地を購入していたと述べる(甲13)。 しかし,証拠(乙1,9の2)によれば,本件開発許可の許可条件は,32条同意に付された「申請地周辺には,みがき砂採掘跡地が見うけられるので,申請池の空洞調査を実施し,宅地造成後においても安全が確保出来るよう留意されたい。」という条件を確実に履行するというものであるから,上記条件の説明には,空洞調査の有無及びその結果についての説明が伴うことになる。そうすると,控訴人Aは,上記のとおり空洞調査を行っていたのであるから,A開発区域内の深度10m以内に空洞が存在する可能性はかなり低いという上記空洞調査の結果を示すことになったと考えられる。そうであれば,仮に,被控訴人Bが,本件開発許可の許可条件について控訴人Aから説明を受け,B土地が磨き砂跡地であることを知ったとしても,空洞調査の結果が上記のとおりである以上,被控訴人BがB土地の購入を取りやめたとは考え難い。 証拠(甲1,6,13)によれば,被控訴人Bは,本件売買契約当時,他の不動産業者が所有する土地について購入を検討していたものの,できればそれまで暮らしていた生活圏内に自宅を新築したいというこだわりがあったことからB土地を紹介してもらった経緯があり,B土地は上記他の土地に比べて高台で見晴らしがよく,価格面でも納得ができると考えていたこと,被控訴人Bは,平成15年12月頃からハウスメーカーに自宅建築の相談をするとともに敷地を探 った経緯があり,B土地は上記他の土地に比べて高台で見晴らしがよく,価格面でも納得ができると考えていたこと,被控訴人Bは,平成15年12月頃からハウスメーカーに自宅建築の相談をするとともに敷地を探し始め,B土地を購入しようとした後,ハウスメーカー との交渉難航により平成16年5月頃にB土地の購入を取りやめたが,その後再びB土地の購入を希望し,被控訴人Cから,B土地に対する深度9.5mまでのスウェーデン式サウンディング試験等による地盤調査結果の報告を受け,同年8月26日に本件売買契約の締結に至ったことが認められる。 上記のような控訴人A及び被控訴人Cの地盤調査の結果,本件売買契約当時の周囲の状況や被控訴人BがB土地を購入した経緯などからすると,仮に,被控訴人Bが,本件開発許可の許可条件について控訴人Aから説明を受け,B土地が磨き砂跡地であることを知ったとしても,B土地の購入を取りやめたとは考え難い。 もっとも,証拠(丙16の1,2)によれば,控訴人Aは,平成23年1月30日,A開発区域内に所在するP土地を,代金1000万円(1㎡当たり約4万0106円)で,同年6月30日,A開発区域内に所在するQ土地を,代金870万円(1㎡当たり約4万1757円)で売却したが,これらの売買契約においては,当該物件を含め,周辺は磨き砂採掘跡地であり,そのことを踏まえ買主から値引きの申出があり,売買価格を決定した旨及び,売主は,売却後に磨き砂採掘を原因として買主がこうむった損害を補償する旨の,特約条項が付されていたことが認められる。これらの売買価格は,本件売買契約における土地の代金1520万円(1㎡当たり約7万1037円)を大幅に下回るものであるから,仮に,被控訴人Bが控訴人Aから,本件売買契約の際にB土地が磨き砂採掘跡地である の売買価格は,本件売買契約における土地の代金1520万円(1㎡当たり約7万1037円)を大幅に下回るものであるから,仮に,被控訴人Bが控訴人Aから,本件売買契約の際にB土地が磨き砂採掘跡地であるという説明を受けていれば,そのことを考慮して価格交渉がされ,B土地の売買価格はより低額になっていたと推認される。一方,R作成の調査報告書(丙20)によれば,本件売買契約が締結された平成16年から平成23年までの間に,津市全体では22%,F地区では9%土地価格が下落していることが認められるから,本件売買契約における土地の代金と上記2筆の土地の代金との差異が専ら対象物件が磨き砂採掘跡地であるという説明がされていたか否かによって生じたと 見ることはできない。 そこで,当裁判所は,上記調査報告書(丙20)によれば,A開発区域(OⅡ)の1㎡当たりの価格は,平成16年においては5万5000円でF地区全体の価格と同じであったのに対し,平成23年においては,4万5000円でF地区全体の5万円より10%低くなっていること(丙20・4頁),平成23年の路線価を見ても,A開発区域は,F地区に多くみられる路線価3万円よりも10%低い2万7000円であること(丙20・3,8頁)を考慮し,控訴人Aの説明義務違反によって被控訴人Bが被った損害の額を,本件売買契約の代金の10%である152万円とすることを相当と判断する。 (4) 控訴人Aの消滅時効の主張について控訴人Aは,被控訴人Bが本件道路陥没事故のあった平成18年7月9日には不法行為の事実を認識し得たとして,その3年後の平成21年7月9日の到来により不法行為責任の消滅時効が完成していると主張する。 しかし,上記(原判決47頁7行目から15行目まで)のとおり,本件売買契 実を認識し得たとして,その3年後の平成21年7月9日の到来により不法行為責任の消滅時効が完成していると主張する。 しかし,上記(原判決47頁7行目から15行目まで)のとおり,本件売買契約の重要事項説明書には,本件開発許可の許可条件が記載された別紙は添付されておらず,被控訴人Bが,本件道路陥没事故が発生した平成18年7月9日頃までに,控訴人Aが本件開発許可の許可条件を説明しなかったことに気付いていたとは認められない。 したがって,控訴人Aの消滅時効の主張は理由がない。 (5) まとめ以上検討した結果,被控訴人Bの控訴人Aに対する請求は,説明義務違反に基づく損害賠償金152万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成22年1月8日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるが,その余は理由がない。 なお,当審における選択的追加請求についても,損害賠償金152万円及 びこれに対する遅延損害金を超える部分は,上記説示に照らし理由がない。 第4 結論以上によれば,被控訴人らの控訴人津市に対する請求は,いずれも理由がないから棄却すべきであり,被控訴人Bの控訴人Aに対する請求は,152万円及びこれに対する平成22年1月8日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める限度で理由があるから認容し,その余は理由がないから棄却すべきである。 よって,これと一部異なる原判決は一部相当でなく,本件控訴は理由があるから,原判決のうち控訴人津市敗訴部分を取り消して同部分に対する被控訴人らの請求を棄却し,控訴人Aに関する部分を変更することとして,主文のとおり判決する。 名古屋高等裁判所民事第2部 裁判長裁判官孝橋 主文 して同部分に対する被控訴人らの請求を棄却し,控訴人Aに関する部分を変更することとして,主文のとおり判決する。 理由 名古屋高等裁判所民事第2部 裁判長裁判官孝橋宏 裁判官戸田久 裁判官森淳子(原判決別紙添付省略)
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