平成16(ワ)9616 名称使用禁止等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成18年9月11日 大阪地方裁判所
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判決文本文35,485 文字)

- 1 -主文 被告は,空手の教授,普及及びその他これに関連する事業活動において,Z創設にかかる国際空手道連盟極真会館の代表者の地位を表す「極真会館館長」の名称を使用してはならない。 被告は,別紙原告目録記載2,4,6,7,11,13ないし16,19の各原告に対し,各30万円及びこれに対する平成16年9月11日から支払済みまで年5分の割合による金員をそれぞれ支払え。 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用はこれを11分し,その1を別紙原告目録記載4の原告の,その3を同目録記載35ないし81の各原告の,その3を被告の,その余を同目録記載1,3,5,8ないし10,12,17,18,20ないし34の各原告の各負担とする。 この判決の主文第2項は仮に執行することができる。 事実 及び理由第1請求 被告は,空手の教授,普及及びその他一切の事業活動において,Z創設にかかる国際空手道連盟極真会館の代表者の地位を表す「極真会館館長」の名称を使用してはならない。 被告は,別紙原告目録記載1ないし34の各原告に対し,各30万円及びこれに対する平成16年9月11日から支払済みまで年5分の割合による金員をそれぞれ支払え。 被告は,別紙原告目録記載35ないし81の各原告に対し,各10万円及びこれに対する平成16年9月11日から支払済みまで年5分の割合による金員をそれぞれ支払え。 第2事実関係Ⅰ事案の概要- 2 -,(「」。 本件は別紙原告目録記載の原告番号19の原告以下原告19という他の原告も同様である)及び原告4が,被告が「極真会館館長」の名称を使。 用したことにより人格権を侵害されたとして,人格権に基づき,被告が国際空手道連盟極真会館(以下「極真会館」という)の代表者の地位を示す も同様である)及び原告4が,被告が「極真会館館長」の名称を使。 用したことにより人格権を侵害されたとして,人格権に基づき,被告が国際空手道連盟極真会館(以下「極真会館」という)の代表者の地位を示す「極真。 会館館長」の名称を使用することの差止めを求めるとともに,人格権を侵害されたことにより精神的苦痛を被ったとして,不法行為を理由とする損害賠償請求権に基づき,別紙原告目録記載1ないし34の各原告につきそれぞれ30万円の,別紙原告目録記載35ないし81の各原告につきそれぞれ10万円の各慰謝料及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成16年9月11日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払をそれぞれ求めたものである。 Ⅱ前提となる事実(後掲各証拠により認められる事実及び争いのない事実) 当事者( )原告らは,Zの創設した空手の流派である極真会館に入門し,Zの生 存中に,極真会館の支部長に任命されるなど,極真会館の道場責任者の地位にあったものを含む者らである。 ( )被告は,昭和51年に極真会館に入門し,その後,Zから極真会館浅 草道場の責任者に任命された者である。 極真会館の創設( )Zは,空手の修練を積み,日本国内のほか,欧米その他の外国で格闘 家と対決するなどして名声を高め,直接打撃制の武道空手を特徴とする極真空手と呼ばれる空手の流派を創始し,国内外に弟子を育てた。そして,昭和39年,Zは,極真空手を推進し普及させることを目的として国際空手道連盟極真会館を創設し,その代表者として,極真会館館長の地位に就,。 ,,「」任するとともに国際空手道連盟総裁を兼任した以後ZはZ館長又は「Z総裁」と称されるようになった。その後も,Zは極真空手の普及- 3 -に努め,日本国内外において,弟子の育 ,,「」任するとともに国際空手道連盟総裁を兼任した以後ZはZ館長又は「Z総裁」と称されるようになった。その後も,Zは極真空手の普及- 3 -に努め,日本国内外において,弟子の育成にあたるとともに,海外の王室や大使の招きを受けて空手の演武や空手の指導を行うなどの活動を続けた(甲1)。 ( )昭和33年以降,Zが空手武道家として執筆又は監修した空手の指導 書のほか,その半生や活躍を描いた著作が日本国内のみならず海外においても多数出版されたほか,Zをモデルにした劇画が大衆コミック誌に連載されたり,極真会館が主催した世界選手権大会の模様を描いた記録映画の上映や,テレビでの極真空手とZの特集番組の放送がされるなど,メディアにおいても大きく取り上げられ,さらには,極真会館の構成員らの活動によって,Z及びZが創設しその館長を務める極真会館の存在とそれらの活動は,世間一般に広く認知されるようになった(甲1)。 ( )極真会館は,平成6年時点において,日本国内に総本部,関西本部の ほか,55支部,550道場,50万人の会員を有し,世界130か国に1200万人を超える勢力を有していた。 ( )Zの下での極真会館の組織の基本的枠組みは,おおむね,以下のとお りであった。すなわち,極真会館は,総本部及び関西本部の下に全国各地に支部が設けられ,Zが認可した支部長は,認可された支部で道場を開設し,極真空手の教授等を行った。支部は原則として都道府県ごとに設けられたが,東京都,大阪府,神奈川県等の一部の都府県については,さらに。 。 細分化された区域ごとに設けられた各支部には一人の支部長が置かれた Zの死亡と極真会館の内部における紛争( )Zは,平成6年3月17日,進行性肺癌のため,聖路加国際病院に入 院した。同月30日に 化された区域ごとに設けられた各支部には一人の支部長が置かれた Zの死亡と極真会館の内部における紛争( )Zは,平成6年3月17日,進行性肺癌のため,聖路加国際病院に入 院した。同月30日にZは,いったん同病院を退院したが,同年4月15日,再び容態が悪化し,同病院に再度入院した。 ( )Zは,同年4月26日,呼吸不全のため,死亡した。その相続人は, ,(「」。),(「」。),配偶者であるA長女以下Bという次女以下Cという- 4 -三女(以下「D」という)であった。 。 ( )Zの遺言書(以下「本件遺言書」といい,その遺言を「本件遺言」と いう)は,死亡危急時方式により,同月19日付けで作成された。本件。 遺言書は,2通に分かれており,いずれも,弁護士であるE(以下「E弁護士」という)のほか,F,G,H,I(E弁護士の子)を証人とする。 ものであった。そのうち1通は,①極真会館,国際空手道連盟におけるZの後継者を被告と定め,世界各国,日本国内の本部直轄道場責任者,各支部長,各分支部長は,これに賛同し,協力するよう求めることのほか,②財団法人極真奨学会による吸収合併の方法を含め,極真会館及び国際空手道連盟を一体として財団法人化することを求めること,③被告に対し,極真会館の新会館建設事業を推進することを求めるとともに,日本国内の支,,,分組織の責任者に対して被告に協力することを求めること④Fに対し財団法人極真奨学会及び株式会社グレート・マウンテンの代表者として,,,被告を補佐し極真空手道関連事業全般を監督するように求めるとともに上記5人の証人のうちのFを除く4人と顧問弁護士に対し,Fに協力するように求めること,⑤東京都豊島区aにある極真会館の土地建物,新会館建設用地,同会館建設のた 事業全般を監督するように求めるとともに上記5人の証人のうちのFを除く4人と顧問弁護士に対し,Fに協力するように求めること,⑤東京都豊島区aにある極真会館の土地建物,新会館建設用地,同会館建設のための出資金を極真会館,国際空手道連盟,財団法人極真奨学会及び株式会社グレート・マウンテンに贈与すること,⑥極真会館及び国際空手道連盟に対し,A,B,C,Dに各毎月100万円あて支払うことを求めること,⑦Aに東京都練馬区bにある土地及び預金・,,,,,現金を贈与しCに神奈川県cの土地建物を贈与すること⑧ABCDに対し,極真空手道に一切関係しないように求めること,⑨遺言執行者をE弁護士とすることを内容とするものであり,もう1通は,追加分として,①極真会館及び国際空手道連盟に対し,J外3名に各1500万円あて,Kに1000万円あて支払うように求めること,②遺言執行者をE弁護士とすることを内容とするものであり,いずれもZ本人の署名はされて- 5 -いなかった(甲2)。 ,,,,( )Zの告別式は同月27日に行われたが同告別式の出棺の際Fが Zが遺言によりZの後継館長に被告が指名されたことを発表し,被告も同日行われた全国支部長会議において後継館長に就任する意思を明らかにした。 ( )極真会館各支部長らは,同年5月10日の全国支部長会議において, 出席者の全員一致で被告の館長就任を承認した。 ( )E弁護士は,同月9日,東京家庭裁判所に対して,本件遺言の確認を 求める審判申立てをした。しかし,同裁判所は,平成7年3月31日,同申立てを却下した。そして,東京高等裁判所は,平成8年10月16日,,,,。 抗告を棄却し最高裁判所も平成9年3月17日特別抗告を棄却した( )Aは,平成6年5月26日,本 31日,同申立てを却下した。そして,東京高等裁判所は,平成8年10月16日,,,,。 抗告を棄却し最高裁判所も平成9年3月17日特別抗告を棄却した( )Aは,平成6年5月26日,本件遺言を理由とする被告の極真会館館 長への就任は,被告とその一派による極真会館の乗っ取り工作であるとして,全国の極真会館支部長に対し,本件危急時遺言がZにより作成された,,ものではないこと今後はAが極真会館を管理する考えである旨を通知しこの通知に5人の支部長が呼応し,同人らは,同年10月,極真会館遺族派と呼ばれる団体を組織した。Aは,平成7年2月15日,被告が極真会館館長であることを否定し,極真会館館長に就任することを宣言した。 ( )同年4月5日,極真会館の支部長らにより開催された会議において, 被告の極真会館館長解任の動議が提出され,35名が賛成票を,3名が反対票を投じ,10名は票を投じなかった。これを受け,賛成票を投じた支部長らは,支部長会議において,被告の極真会館館長解任が決議され,被告は同館長から解任されたと主張した。被告の館長解任に賛成した支部長らにより運営される道場の関係者らで構成される団体は,極真会館支部長協議会派と称されるようになり,30支部長がこれに所属した。 ( )被告は,上記解任決議に同意せず,同月6日の記者会見で,極真会館 - 6 -の館長を引き続き名乗ることを宣言した。被告に従う支部長は被告を含めて12支部長であり,被告を代表者として運営される団体は,極真会館α派と称されるようになった。 ()上記3派ないしそれに属する者は,いずれも自派が極真空手を正当に 承継するものであることを前提に極真会館及び極真空手の名前で道場を運営し,それぞれが,Zの生前に行われていた各種選手権大会と同様の名称の大会 しそれに属する者は,いずれも自派が極真空手を正当に 承継するものであることを前提に極真会館及び極真空手の名前で道場を運営し,それぞれが,Zの生前に行われていた各種選手権大会と同様の名称の大会を開催した。 被告による名称使用( )被告は,平成6年5月18日「極真会館」という文字の結合や極真 ,会館を表すロゴマーク等につき被告の個人名で商標登録の出願をしたところ,その一部について特許庁の審査で商標法4条1項7号に該当することを理由に拒絶理由通知を受けたが,平成9年に同出願にかかる商標登録を受けた。 ( )原告1,原告19ら3名は,平成12年8月,被告が商標権を行使す ることにより,極真会館や極真空手の名称を原告1らにおいて使用することを禁止するのは権利の濫用であるなどとして,大阪地方裁判所に妨害禁止の仮処分を申し立てたところ,同裁判所は,同年12月28日,原告らの申立てを認容する仮処分決定をした。この決定に対して,被告は保全異議の申立てをしたが,同裁判所は,平成13年4月4日,上記仮処分決定を認可する旨の決定をした。被告は,上記保全異議についての決定に対し保全抗告をしたが,大阪高等裁判所は,同年10月2日,同抗告を棄却する旨の決定をした。 ( )原告1,原告19ら10名は,平成14年2月,大阪地方裁判所に対 し,被告を相手方とする商標権に基づく差止請求権不存在確認等を請求す。 ,,る訴えを提起したこの訴訟のうち5名の原告が訴えたものについては被告の申立てにより,東京地方裁判所に移送された。東京地方裁判所は平- 7 -成15年9月29日,大阪地方裁判所は同月30日,被告の原告らに対する商標権に基づく差止請求権の不存在を確認する旨の判決を各言い渡した。 ( )被告は,α派の道場の開設・運営や各種大会の開催など 成15年9月29日,大阪地方裁判所は同月30日,被告の原告らに対する商標権に基づく差止請求権の不存在を確認する旨の判決を各言い渡した。 ( )被告は,α派の道場の開設・運営や各種大会の開催などの活動,道場 や各種大会に関する宣伝活動,テレビ番組への出演などの活動において,極真会館館長という名称を現在も使用している。 Ⅲ争点及びこれに関する当事者の主張 被告の極真会館館長という名称の使用により,原告らは,どのような人格。 ,,,,権の侵害を受けたのかまたそれを理由とし原告19原告4において被告が極真会館館長という名称を使用することに対して差止めを請求することができるか。 (原告らの主張),,。 ( )以下の事情によれば被告は極真会館館長と名乗ることはできない ア極真会館館長という名称が示す意味極真会館は,昭和39年に創設された後,平成6年4月26日の時点までに日本国内に総本部,関西本部の外,55支部,550道場,会員数50万人を有し,世界130か国において,会員数1200万人を擁し,Zは,その活動とカリスマ性によって,極真会館館長として,世間一般に広く認知される存在になった。このように,極真会館館長という名称は,Zの名と結びついて,Zの創設した極真会館という団体の代表を表すものとして,広く世間に認知されていた。 イ被告が館長に就任した経緯について(ア)原告らを含む多くの極真会館支部長及び分支部長は,被告が後継,,館長に就任することについては疑問を有していたがZの遺言によりZが極真会館及び国際空手道連盟の代表者の後継者として被告を指名したということであったので,カリスマ的存在であるZの遺言がある- 8 -となれば絶対であるため,平成6年5月10日に開催された全国支部長会議において,全 手道連盟の代表者の後継者として被告を指名したということであったので,カリスマ的存在であるZの遺言がある- 8 -となれば絶対であるため,平成6年5月10日に開催された全国支部長会議において,全会一致で被告を極真会館館長とすることを承認したものである。 (イ)本件遺言の確認を求める審判申立ては却下されたのであって,Zが被告を後継者にしたという遺言はその効力を否定されたものである。 (ウ)また,全国の支部長の多くは,いったんは被告を極真会館館長にすることを承認したが,被告の極真会館の私物化,独断専行,経理処理の不透明さ等に不信の念を強めていき,平成7年4月5日に開催された支部長会議において,被告の館長解任が決議された。被告の館長解任動議に賛成した支部長らは,支部長協議会議長を正当な代表者として極真会館を運営することとし,極真会館支部長協議会派と称されるようになった。 (エ)被告は,上記解任決議に同意せず,被告に従う支部長らは被告を代表者として,極真会館α派と称されるようになった。 (オ)この時点で,極真会館は,遺族派,支部長会議派,α派の3派に分裂したものである。 ( )原告1,原告19ら3名が,平成12年8月に大阪地方裁判所に申し 立てた妨害禁止の仮処分を認容する仮処分決定,この決定を不服とする被告の保全異議の申立てについての決定,この保全異議についての決定を不服とする保全抗告についての決定のいずれにおいても,その理由中で,本件遺言の確認の審判申立てが裁判所において却下され,Zの遺言としての効力を有しないことが確定した以上,被告は,Zの後継「館長」であるこ,,とを主張しうる根拠を失ったものというべきである旨が判示され原告1原告19,原告4らが平成14年2月に提起した,被告を相手方とする商標権に基づく差止請求権不存在 は,Zの後継「館長」であるこ,,とを主張しうる根拠を失ったものというべきである旨が判示され原告1原告19,原告4らが平成14年2月に提起した,被告を相手方とする商標権に基づく差止請求権不存在確認等を請求する訴えに関する各判決にお- 9 -いても,原告らの主張が認められたものである。被告は,上記各事実を無視し,自己がZの唯一の正当な後継者であるとして,α派が原告らの活動地域への道場開設などその他,道場の運営にあたり,あらゆる広告媒体に極真会館館長・Yと表示し,各種大会やマスコミ等への露出時において,極真会館館長という名称を現在も使用している。 ( )被告が名称を使用し続けることにより,以下のような原告らの人格権 が侵害されているというべきである。 ア原告らは,Zの下で,極真会館の構成員としての自負をもち,極真会館の支部長等として,一定の地域において,極真空手の教授,普及に努,。 め極真会館の指導者としての一定の社会的評価を得てきたものであるところが,Zの死後,極真会館は3会派に分裂し,それぞれの会派がその正統性を主張している状況であるにもかかわらず,その1会派に過ぎないα派の代表者たる被告が極真会館の代表者として,従前Zが就任していた地位を表す名称である極真会館館長との名称を使用しているのである。このような被告の名称使用によって,被告がZの正統な後継者であってα派が極真会館の正統な後継団体であるとの誤解を空手愛好者を始めとする世間一般に与え,結果としてα派に所属しない原告らが極真会館の指導者でないかのような誤解を生じさせて,又は原告らが被告の弟子であるかのような誤解を生じさせ,後述ウのようなα派や被告の各活動とも相まって,著しく原告らの社会的評価を低下させた。 イ原告らは,極真会館の支部長等として,極真会館の道場を開設 原告らが被告の弟子であるかのような誤解を生じさせ,後述ウのようなα派や被告の各活動とも相まって,著しく原告らの社会的評価を低下させた。 イ原告らは,極真会館の支部長等として,極真会館の道場を開設して,,。 空手の教授各種選手権大会の開催等を業として営んできたものであるところで,α派は,原告らの道場近辺に,α派の道場を開設するなどして,自己の流派における活動をしているが,その際に被告が極真会館館長という名称を使用することにより,被告がZの正統な後継者であってα派の道場が正統な極真会館であり,原告らの道場が極真会館ではない- 10 -かのような誤解を生じさせ,又は原告らが極真会館に属する旨の原告らの宣伝活動等を妨害して,原告らの道場における空手の教授,各種選手権大会の開催等の営業に支障を生じさせた。 ウ原告らは,極真会館の支部長等として,礼節を重んじ,自己に厳しく他人に優しいという極真空手の精神を道場生に対して指導していた。α派は「K-1」という名称で親しまれている格闘技のプロ興業の大会,に,選手を出場させたり,被告が解説者として出演するなどの活動を行っているが,その際に被告が極真会館館長という名称を使用することによって,原告らの道場が普及に努める極真空手の精神が上記大会に選手を出場させるような商業主義的なものであるとの誤解を与えた。また,被告は,週刊誌の取材において,刑事被告人として保釈中に逃亡して話題となったLと,その逃亡中に頻繁に面会していた事実を述べたり,指定暴力団山口組最高幹部であったGをα派の開催する全日本空手道選手権大会の顧問に就任させるなどの行為を行っているが,それらの際に,極真会館館長との名称を使用することによって,原告らの道場が普及に努める極真空手の精神と被告のそれとを混同させ,原告らの道場が普及に努め 会の顧問に就任させるなどの行為を行っているが,それらの際に,極真会館館長との名称を使用することによって,原告らの道場が普及に努める極真空手の精神と被告のそれとを混同させ,原告らの道場が普及に努める極真空手の精神に対しても悪印象を与えた。このようにして,被告は,原告らの道場生らに対して混乱を与え,原告らが極真空手の精神を道場生らに指導するのに支障を生じさせた。 ( )原告19は,昭和42年,極真会館に入門し,昭和44年に極真会館 が開催した第1回全日本空手道選手権大会に出場して第3位に入賞し,昭和45年に開催された第2回上記選手権大会において優勝した。原告19は,極真会館総本部道場の指導員を経験した後,昭和46年1月,極真会館徳島県支部長に任命され,昭和52年10月,同愛知県支部長に任命された。 原告4は,昭和44年,極真会館に入門し,昭和46年に極真会館が開- 11 -催した第3回全日本空手道選手権大会において第3位に入賞し,昭和50年に極真会館が開催した第1回全世界空手道選手権大会において,第4位に入賞した。原告4は,昭和47年から昭和51年3月まで,Zの内弟子として生活しながら,極真会館総本部道場の指導員を経験した後,昭和51年4月,山梨県支部長に,昭和52年の春ころ,静岡県支部長に任命された。 このように,原告19及び原告4は,いずれも古参の支部長として,Zの下で,極真空手の指導の先頭に立ち,また,自らも精進を続けていたのであるし,現在も後述の極真連合会において主要な地位に就いているのであって,被告による人格権侵害は,原告4及び原告19との関係において特に顕著なものとして現れ,現に重大な被害を生じさせているものであるから,原告4及び原告19は,被告に対し,極真会館館長という名称の使用の差止めを請求することができるという 原告19との関係において特に顕著なものとして現れ,現に重大な被害を生じさせているものであるから,原告4及び原告19は,被告に対し,極真会館館長という名称の使用の差止めを請求することができるというべきである。 (被告の主張)( )被告は,以下のとおり,Zの正統な後継者として極真会館館長の地位 に就任しているのであるから,極真会館館長という名称を使用することは当然である。 ア被告は,Zの生前,各種選手権大会において活躍し,全日本空手道選手権に3連覇し(昭和60年から昭和62年にかけて,全世界空手道)選手権においても昭和62年に優勝するなど,その卓越した格闘技術により,極真会館を代表する選手として,第一線で活躍した。Zも被告のことを「天才的に巧い「歴代の全日本王者の中で一番強い」と評す。」。 るなど,被告は,極真会館の歴史上,最も偉大な選手の一人である。 イZは生前,極真会館の後継者について「強い奴が後継者になるべきなんだ。全日本大会を3連覇する,世界チャンピオンになる,百人組手をやる,この3つを達成した奴が本当に強い奴なんだよ「超一流の素。」- 12 -質なくば,断じて我が子可愛さから,私の極真会館の組織を譲り,館長に育てはしないでしょう。門弟の中から優秀な者を選りすぐる,現時の方針と何ら変わるものはありません「極真会館を継ぐ人間は若くな。」くてはいけない。そして,最強を追い求めてきた極真空手である以上,圧倒的に強い人間でないといけない。敢えていえば,世界チャンピオンになった人間である。百人組手を達成した人間であればいうことはない」などと発言していた。そして,被告は,Zの存命中,全日本選手。 権に3連覇し,全世界空手道選手権でも優勝し,荒行である百人組手を達成していた唯一の者である。 ウ被告は,Zから「将来, ことはない」などと発言していた。そして,被告は,Zの存命中,全日本選手。 権に3連覇し,全世界空手道選手権でも優勝し,荒行である百人組手を達成していた唯一の者である。 ウ被告は,Zから「将来,日本,韓国,アメリカを中心として,自分の代理として仕事をしていって欲しい」などと言われていた。被告は,。 昭和63年,いったん極真会館の指導員の立場を離れたが,Zに請われて極真会館の指導の現場に戻ることとなった。その際,Zから「君は本部でも指導にあたらなければならない」といわれ,本部直轄道場であ。 る浅草道場の支部長の認可を受けた。これは,Zが被告を極真会館の後,。 継者とするために自らの傍らにおいて育てるという意思の表れであるエ被告は,極真会館が主催する各種大会において,審判員,模範演技や大会運営委員会の支部長代行委員など,極真会館の組織活動の中で重要な職務を幾度となく務め,さらに世界20か国余りの道場に指導員として訪問してきた。また,被告は,Zの名代としてネパール王室に空手の演武を献上した。 オZは,生前,極真会館の活動拠点となる新しい建物(以下「新会館」という)の建設に力を入れていた。被告は,Zから,Z及び極真会館。 にとって重要な意義を持つ新会館建設の建設委員会第2次建設委員長に任命された。 カZは,その生前,極真会館総本部において,初段以上の道場生に対し- 13 -て直接指導を行う黒帯研究会を定期的に開催していたが,被告は,Zから黒帯研究会の指導を直接任されていた。 キMは,Zの生前,極真会館事務局の一員として,Zから直接に任命されてZの身の回りの世話をし,Zの入院中も常に同人の側に居続けた者である。Mは,Zの入院中,Zから直接,被告を2代目極真会館館長とする旨の発言を2度にわたり,聞いている。また,Mが所持している極 されてZの身の回りの世話をし,Zの入院中も常に同人の側に居続けた者である。Mは,Zの入院中,Zから直接,被告を2代目極真会館館長とする旨の発言を2度にわたり,聞いている。また,Mが所持している極真空手手帳の平成6年4月20日の欄には「Y2代目総裁協力するよ,うに」との記載があるが,これは,同日,MがZの後継者を被告にするという発言を聞いた際,Zからその発言をメモに取るように指示されたため,上記のとおりメモを残したものである。N,O,PなどZと師弟関係にある者の複数も,被告を後継者にするという旨をZから直接聞いている。さらに,新会館建設第1次建設委員長であったFは,ZがOに「被告を中心にするから後は頼むよ」と述べたのを聞いており,本件。 遺言書の作成に立ち会ったE弁護士,H,Gも,それぞれZがはっきりと被告を二代目にすると発言したのを聞いている。 ク以上からすると,Zが被告に極真会館の館長を承継させる遺志を有していたことは明らかである。 ケ被告は,Zの遺志に基づき,極真会館館長に就任し,原告らもZの死後,いったんは,被告を極真会館館長として承認しておきながら,その後,他の多数の支部長とともに被告を解任するという形式を取って,支部長会議派を結成したのであるから,原告らは,Zの創設した極真会館を脱退したものに他ならないのであって,被告がZの正統な後継者として極真会館館長の名称を使用することは当然である。 コ本件遺言は,形式的な要件に不備があったため有効性が確認されなか,,ったに過ぎず本件遺言書の作成時にZが被告を後継者に指名したことさらにはその背景にあるZの被告を後継者にするという意思の存在に何- 14 -ら影響を与えるものではない。 また,原告らは,平成7年4月5日の支部長会議において,被告が極真会館館長の地位を解任され さらにはその背景にあるZの被告を後継者にするという意思の存在に何- 14 -ら影響を与えるものではない。 また,原告らは,平成7年4月5日の支部長会議において,被告が極真会館館長の地位を解任された旨主張する。しかし,原告らの主張する上記会議は,支部長会議ではなく,支部長協議会に過ぎない。なお,支部長会議は全国各都道府県の全支部長が集まるものであるが,支部長協議会は各地区ブロックの代表者のみが定期的に集まる会合に過ぎず,両者は全く別個のものである。また,仮に上記会議が支部長会議であったとしても,極真会館の規約上も慣習上も支部長会議に館長を解任する権限はないのであって,原告らの主張は失当である。 サ各種大会の規模から考えても,Zの生前に極真会館として行った各種,,,,大会と比べてα派が行っている各種大会は参加選手数観客動員数会場の収容能力,開催時期などの点で同一性を保っているが,原告らが,,,行っている各種大会は参加選手数会場の収容能力もはるかに少なく開催時期,開催場所もまちまちであって,Zの生前に極真会館が行った各種大会と同一性を欠くものである。 ( )仮に,Zの死後,原告らが極真会館から脱退したのではなく,極真会 館が分裂したのだとしても,以下のとおり,被告が極真会館館長という名称を使用することは,何ら原告らの人格権を侵害するものではない。 アα派が極真会館という名称を使用して活動すること自体は,違法となるものでないところ,被告はその組織を代表する地位にあるのであり,極真会館館長という名称は,その地位を表すという意味があるだけであ,,。 ,って原告の主張するようにZの人格と関連づける意味はない仮に被告がZの正統な後継者であると認識されたとすれば,それは,被告の空手選手としての実績,α派の組織や 味があるだけであ,,。 ,って原告の主張するようにZの人格と関連づける意味はない仮に被告がZの正統な後継者であると認識されたとすれば,それは,被告の空手選手としての実績,α派の組織やその主催する大会の規模などが原因である。 イ極真会館館長という名称の使用について何らかの人格権を有するの- 15 -は,Zの正統な後継者として極真会館館長の地位にある者のみである。 そして,原告らはいずれも極真会館館長たる地位にないのであるから,原告らは,極真会館館長という名称の使用について,何ら異議を述べる権利はない。 ウ仮に被告がZの正統な後継者でないのに極真会館館長という名称を正当な理由もなく使用しているとしても,原告らの主張する不利益は,敵対する関係にある被告が極真会館館長と名乗り,社会的に認知されてしまっているので気にくわないという類のものであって,原告らに法律の保護に値する重大な不利益は生じていないが,一方で,被告は10年以上極真会館館長という名称を継続的に使用し,社会的にも認知されており,いったん被告の極真会館館長という名称が差し止められれば,その不利益は極めて大きい。したがって,被告がZの正統な後継者でないのに極真会館館長という名称を正当な理由もなく使用しているとしても,違法な無断使用であるとまではいえない。 被告の極真会館館長という名称の使用により,原告らはどのような損害を受けたか。 (原告らの主張)( )原告1ないし34は,いずれも極真会館に入門し,Zの死亡した平成 6年4月26日当時,日本及び世界各地において,極真会館支部長又は道場責任者として,極真空手の教授,普及をする道場を開設してこれを運営し,各種空手選手権大会を開催していた。これらの原告は,極真会館の構,,,成員としての自負をもち極真会館の支 会館支部長又は道場責任者として,極真空手の教授,普及をする道場を開設してこれを運営し,各種空手選手権大会を開催していた。これらの原告は,極真会館の構,,,成員としての自負をもち極真会館の支部長として一定の地域において極真空手の教授,普及に努めているものであるところ,被告が極真会館館長という名称を使用することで,上記争点1における原告らの主張( )ア ないしウのとおり,著しく原告らの社会的評価を低下させ,原告らの道場における空手の教授,各種選手権大会の開催等の営業に支障を生じさせ,- 16 -原告らが極真空手の精神を道場生らに指導するのに支障を生じさせたものである。さらに上記各事情により,これらの原告の名誉感情が著しく傷つけられた。 ( )原告35ないし81は,いずれもZの存命中に極真会館に入門し,極 真会館の道場指導員等の経験を積み,現在は日本各地において,極真会館支部長又は道場責任者として極真空手の教授及び普及に従事している。これらの原告は,Zの生前に極真会館の指導者たる地位になかったという点で,原告1ないし34と程度の差はあるが,上記と同様の人格権侵害を受けたものである。 ( )原告らは,いずれも上記各人格権侵害により,著しい精神的苦痛を被 っており,それを慰謝するに相当な金額としては,原告1ないし34については各30万円を,原告35ないし81については各10万円を下らない。 (被告の主張)( )原告らのうち,分支部長は,一部の支部において,その所属している 支部の支部長によって任命され,分支部において道場生の指導にあたる者であるが,Zの生前は,極真会館において組織上正式に認められた地位ではなかった。原告のうち,原告23ないし34については実在するか否かも疑わしい。 ( )上記争点1における被告の主張 導にあたる者であるが,Zの生前は,極真会館において組織上正式に認められた地位ではなかった。原告のうち,原告23ないし34については実在するか否かも疑わしい。 ( )上記争点1における被告の主張のとおり,被告がZの正統な後継者と して極真会館館長の地位に就任している以上,極真会館館長という名称を使用することは当然であり,仮に,Zの死後,原告らが極真会館から脱退したのではなく,極真会館が分裂したのだとしても,被告が極真会館館長という名称を使用することによって何ら原告の人格権の侵害にはならない。 ( )仮に,原告らの請求の中に被告に対する損害賠償請求権が認められる - 17 -事実があったにしても,訴え提起の段階で,行為時から3年が経過したものについては時効消滅しているものであり,被告は同時効を援用する。 第3当裁判所の判断Ⅰ争点1について判断する。 前提となる事実のほか,甲1ないし9,甲16ないし19,甲25ないし30,甲33ないし35,甲42の7,8,10,甲48,乙2の1ないし5,乙3ないし6,乙7,乙12ないし25,乙28ないし37,乙79,,。 原告4本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば以下の事実が認められる( )当事者 ア原告19は,昭和42年,極真会館に入門し,昭和44年に極真会館が開催した第1回全日本空手道選手権大会に出場して第3位に入賞し,昭和45年に開催された第2回上記選手権大会において優勝した。原告19は,極真会館総本部道場の指導員を経験した後,Zにより,昭和46年1月,極真会館徳島県支部長に任命され,昭和52年10月,同愛知県支部長に任命された。 原告4は,昭和44年,極真会館に入門し,昭和46年に極真会館が開催した第3回全日本空手道選手権大会において第3位に入賞し,昭和50年に極真 命され,昭和52年10月,同愛知県支部長に任命された。 原告4は,昭和44年,極真会館に入門し,昭和46年に極真会館が開催した第3回全日本空手道選手権大会において第3位に入賞し,昭和50年に極真会館が開催した第1回全世界空手道選手権大会において,第4位に入賞した。原告4は,昭和47年から昭和51年3月まで,Zの内弟子として生活しながら,極真会館総本部道場の指導員を経験した,,,,,後Zにより昭和51年4月山梨県支部長に昭和52年の春ころ静岡県支部長に任命された。 イ被告は,昭和51年に極真会館に入門し,昭和60年,昭和61年の各全日本空手道選手権大会において,いずれも優勝し,昭和61年には荒行である百人組手を完遂し,昭和62年の世界空手道選手権大会においても優勝した。その後,被告は,Zにより,極真会館浅草道場の責任- 18 -者に任命された。 被告は,極真会館が主催する各種大会において,審判員,模範演技や大会運営委員会の支部長代行委員などの職務を務め,さらに世界20か国余りの道場に指導員として訪問してきた。被告は,Zから新会館建設の建設委員会第2次建設委員長に任命され,また,黒帯研究会の指導を直接任されていたほか,Zの名代としてネパール王室に空手の演武を献上した。 ( )極真会館の組織 ,。 極真会館は総本部及び関西本部の下に全国各地に支部が設けらていた極真会館の総本部は,館長を頂点として,会長,理事長,顧問等の役員がおかれ,委員会,理事会等の決議による組織の運営がされていた。各支部においてはZが認可した支部長がおり,認可された支部で道場を開設し,極真空手の教授等を行った。支部は原則として都道府県ごとに設けられたが,東京都,大阪府,神奈川県等の一部の都府県については,さらに細分化された区域ごとに支部が がおり,認可された支部で道場を開設し,極真空手の教授等を行った。支部は原則として都道府県ごとに設けられたが,東京都,大阪府,神奈川県等の一部の都府県については,さらに細分化された区域ごとに支部が設けられた。また,支部長は,分支部を設けることが認められており,支部長は事前にその設置を本部に対して申請する必要はあったものの,分支部長の任免,分支部長の権限の範囲,経営方法,。 ,等については支部長の判断に委ねられた分支部が設置された場合にはその責任者として分支部長等が置かれ,当該分支部における空手の教授等は,その責任においてされており,これらの点については,Zも了承して。 ,,,いたZは支部長に対する意思疎通を図る場合全国の各支部長を集め全国支部長会議と呼ばれる会合を開催した。 極真会館の内部は,上記のように組織運営のための制度が整備されていったものの,極真会館自体は,代表者たる館長の選任方法も定められていないなど,社団としての実体を有しないものであり,国内支部規約は作成されていたものの,極真会館総本部の組織,運営に関する規約は定められ- 19 -ていなかった。ただ,極真会館とは別に,財団法人極真奨学会という法人,,,が設立されており同法人において定められた極真会館道則は実質的に極真会館の組織,運営に関する規約に相当するものであったが,その内容は,規約として必ずしも十分なものではなかった。極真会館は,Zが一代で築き上げてきた組織であったこともあり,上記のとおり十分な規約等も作成されていなかったため,組織の運営にあたって,最終的には,Zの意思決定に係る部分が大きかった。また,極真会館の運営に関する事務面の仕事は,Zの配偶者であるAが主に取り仕切っていた。 ( )Zの死亡と死後の極真会館の分裂 アZは,聖路加国 終的には,Zの意思決定に係る部分が大きかった。また,極真会館の運営に関する事務面の仕事は,Zの配偶者であるAが主に取り仕切っていた。 ( )Zの死亡と死後の極真会館の分裂 アZは,聖路加国際病院に再入院した後の平成6年4月17日及び19日,新会館建設問題等の懸案事項をE弁護士ら5名と話し合い,その場で,本件遺言書が作成された。上記の両日とも,Zの容態は,肺機能が低下し,酸素吸入の必要な状態にあったが,血圧,体温とも正常範囲内にあり,意識は清明であった。本件遺言書の作成のため,同月17日には5時間程度,同月19日には4時間程度を要したが,その間,E弁護士らは,Zに付き添っていたAらZの親族を退出させ,医師をも立ち会わせることがなかった。また,上記のとおり,当時,Zの意識は清明であったが,E弁護士は,本件遺言書に署名することをZに求めず,そのため,本件遺言書にZの署名はされなかった。 イAらZの親族は,本件遺言書が作成された後もZに付き添ったが,Zは,Zの親族らに対し,本件遺言を行ったことやその内容について,一切話題にしなかった。また,Bの配偶者であり,昭和50年に極真会館に入門し,平成6年当時,極真会館関西本部長であったRと原告1は,同月25日,午前10時から午前12時ころまで,Zの下を訪れ,同年6月17日から開催予定であった第11回全日本ウエイト制空手道選手権大会の準備状況を報告するとともに,試合の取組表作成について相談- 20 -をした。しかし,この間,Zは,Rと原告1に対し,Zの後継者を被告にすることに決めたということについて,そのようなことを一切話題にもしなかった。 ウZの告別式は,同年4月27日に行われたが,同告別式の出棺の際,Fが,Zが遺言でZの後継館長に被告を指名したことを発表し,被告も同日行われた全国支 て,そのようなことを一切話題にもしなかった。 ウZの告別式は,同年4月27日に行われたが,同告別式の出棺の際,Fが,Zが遺言でZの後継館長に被告を指名したことを発表し,被告も同日行われた全国支部長会議において後継館長に就任する意思を明らかにした。なお,この時点では,本件遺言書は公開されず,また,それが死亡危急時遺言であることやそのため遺言の日から20日以内に家庭裁判所に確認を求める審判申立てを行わなければならないことなどは一切説明されなかった。 エ極真会館各支部長らは,Zの存在は絶対であり,Zの遺言があるとなればその内容には従うとの考えから,同年5月10日の全国支部長会議において,出席者の全員一致で被告の館長就任を承認した。 オ被告は,同月18日,被告個人名義で「極真会館」という文字の結合や極真会館を表すロゴマーク等について商標登録出願した。被告は,これらの出願をしたことを支部長協議会や支部長会議において,支部長らに説明しなかった。上記出願については,その一部が特許庁の審査で商標法4条1項7号に該当することを理由に拒絶理由通知を受けたが,平成9年に同出願にかかる商標登録を受けた。なお,Zは,その生前,上記のような商標登録の出願は行わなかった。 カE弁護士は,平成6年5月9日,東京家庭裁判所に対して,本件遺言の確認を求める審判申立てをした。しかし,同裁判所は,平成7年3月31日,本件遺言書は,証人となった5人が当時病状の進行によって体力,気力ともに衰えた遺言者を取り囲む中で,2日間にわたり9時間という長時間を要して作成されたものであり,その間,証人らと利害の対立する立場にあるZの家族を排除していたものであって,遺言者が遺言- 21 -事項につき,自由な判断の下に内容を決定したものか否かという点で強く疑問が残り,遺言者の真意 ,その間,証人らと利害の対立する立場にあるZの家族を排除していたものであって,遺言者が遺言- 21 -事項につき,自由な判断の下に内容を決定したものか否かという点で強く疑問が残り,遺言者の真意に出たものと確認することが困難であることを主たる理由として,同申立てを却下した。そして,東京高等裁判所,,,は平成8年10月16日上記とほぼ同様の理由により抗告を棄却し最高裁判所も,平成9年3月17日,特別抗告を棄却した。 キAは,本件遺言の内容がAらにとって重大な利害関係のある事項を含むものであるのに,本件遺言をしたとされる日以後も,ZがAらに対し一切その話をしなかったこと,本件遺言書にZの署名がないことなどを理由に本件遺言の有効性に疑義を抱いている旨を従前から表明していたが,平成6年5月26日,本件遺言を理由とする被告の極真会館館長へ,,の就任は被告とその一派による極真会館の乗っ取り工作であるとして全国の極真会館支部長に対し,本件遺言がZの意思により作成されたも,,のではないこと今後はAが極真会館を管理する考えである旨を通知しこの通知に5人の支部長が呼応し,同人らは,同年10月,極真会館遺族派と呼ばれる組織を結成した。Aは,平成7年2月15日,被告が極真会館館長であることを否定し,極真会館館長に就任することを宣言した。 ク平成6年5月10日の全国支部長会議においていったんは被告を極真会館館長にすることを承認した支部長の中にも,その後,被告の上記商標登録出願やその他の言動等に反発する者が複数現れ,それらの者は,相互に連絡を取りながら,被告の極真会館館長としての態度等に関する批判を行うようになった。そして,平成7年4月5日には全国の各ブロック地区ごとの代表者の集会である支部長協議会の開催が予定されていたが,同協議会は途中 がら,被告の極真会館館長としての態度等に関する批判を行うようになった。そして,平成7年4月5日には全国の各ブロック地区ごとの代表者の集会である支部長協議会の開催が予定されていたが,同協議会は途中から支部長会議に変更された上,被告の館長解任動議が提出され,賛成35名,反対3名,欠席10名により,被告の館長解任が決議された。被告の館長解任動議に賛成した支部長らは,支部- 22 -長協議会議長を正当な代表者として極真会館を運営することとした。そして,これらの支部長らにより運営される道場の関係者らで構成される団体は,極真会館支部長協議会派と称されるようになり,30支部長がこれに所属した。 ケ被告は,上記解任決議に同意せず,同月6日の記者会見で,極真会館の館長を引き続き名乗ることを宣言した。被告に従う支部長は被告を含めて12支部長であり,被告を代表者として運営される団体は,極真会館α派と称されるようになった。このようにして,極真会館は,事実上3つの派に分裂した状態となった。なお,支部長の中には,上記3つの派閥のどれにも属さずに,道場の運営を行った者ら(以下「無所属の支部長ら」という)もあった。 。 コZの在任中極真会館は毎年全日本空手道選手権大会及び全,,,「」「日本ウェイト制空手道選手権大会」を,4年に1度「全世界空手道選,手権大会」を各開催していたが,平成7年4月以降,α派と支部長協議会派は,それぞれが独自に,自派が極真空手を正当に承継するものであることを前提として,極真会館の名前で上記各大会を開催するようになった。 サその後,支部長協議会派(後に「緑派」と称するようになった)の。 支部長の一部が,α派に移ったり,離脱するなどの移動があり,さらに,(「」。)平成13年12月には遺族派後に松島派と サその後,支部長協議会派(後に「緑派」と称するようになった)の。 支部長の一部が,α派に移ったり,離脱するなどの移動があり,さらに,(「」。)平成13年12月には遺族派後に松島派と称するようになったの一部,支部長協議会派の一部,無所属の支部長らが,極真会館・全日(「」。)。 本極真連合会以下極真連合会というと称する団体を組織したさらに,平成15年11月,Qを中心とする一部支部長らが,α派から脱退し,新たに極真館と称する組織を発足させるなど,極真会館の各団体は現在まで離合集散を繰り返している。なお,原告19は,極真連合会において理事長として,その代表者の地位にある。 - 23 - 被告がZの後継者としての地位にあるかということについて検討する。 ( )上記認定事実によれば,極真会館は,極真空手の創設者であるZが一 代で築いた組織であって,Zの生前には,法人化もされず,代表者の選任手続きの定めもなかったものであるから,その後継者が誰になるかについては,Zの指名により決定され,Zの指名がない場合には,構成員の総意により決定されるとみるのが相当である。そこで,以下,この観点から,被告がZの後継者となったかということについて検討する。 ( )前記のとおり,本件遺言の内容は,極真会館の運営からAらZの親族 ,,の関与を排除し極真会館関連事業に関する監督権を証人であるFに与えG,Hらがこれに協力すること,Zの後継者として被告を極真会館館長にすることなどを内容にするものである。ところで,前記のとおり,Aは,Zの生前,極真会館の運営において,その事務面を取り仕切っていたのであるし,また,Zの生前は,極真会館は法人化されておらず,極真会館に,,,関する財産の一部はZ個人がその権利主体となるのであってそれ 前,極真会館の運営において,その事務面を取り仕切っていたのであるし,また,Zの生前は,極真会館は法人化されておらず,極真会館に,,,関する財産の一部はZ個人がその権利主体となるのであってそれらはZの死後,Zの相続人であるAらに相続されるのが本来であったというべきであることにも鑑みれば,本件遺言の内容は,AらZの親族にとって著しく不利益な内容であり,かつFら証人にとって有利な内容であるというべきである。そして,①かかる内容の遺言書がZの親族の立会いや医師の立会いを排除した状態で,2日間にわたり合計9時間に及ぶ面会の中で作成されたものであること,②Zは,平成6年4月19日当時,肺機能が低下し,酸素吸入の必要な状態にこそあったが,血圧,体温とも正常範囲内にあり,意識は清明であったにもかかわらず,危急時遺言の方式を採用して,本件遺言書にZの署名をさせていないこと,特に,本件遺言の作成にあたって証人の一人となったE弁護士は,弁護士という職務上の立場からみても,本件遺言書がZの意思に基づくものであることを,AらZの親族はもちろんそれ以外の第三者に対しても説得的に説明するためには,Zに- 24 -署名をさせることが望ましいことは当然に認識していたはずであるのに,上記のとおり,本件遺言書にZの署名をさせていないこと,③ZがAらZの親族の相続にかかる権利関係や,Aを極真会館から排除することなどに関して,確定的な遺言をするという意思で本件遺言をしたのであれば,少なくとも配偶者であるAに対しては,なぜAに不利益にみえる本件遺言をしたのかということにつき,Zの真意を説明するはずであるのに,そのような説明をしたという事実も認められないこと,④Zの生前,Zは極真会館の名称などについて商標登録の出願をしていないことからすると,極真会館の外部の者との関 ,Zの真意を説明するはずであるのに,そのような説明をしたという事実も認められないこと,④Zの生前,Zは極真会館の名称などについて商標登録の出願をしていないことからすると,極真会館の外部の者との関係で,緊急に商標登録をする必要があったとは認め,,,られないところ上記のようにZが門下生にとって絶対的な存在でありZが被告を後継者に指名したのであれば誰もそれに異議を唱えるとは考えられないのであるから,被告としては,本当に自分がZから後継者に指名されたのであれば,被告個人名義で極真会館の商標登録を出願する理由は,,何ら存在しないはずであると考えられるのにZの死後3週間程度の間に他の支部長らに内密で,極真会館の名称などについて,商標登録の出願をしていること,⑤Zが遺言という方式によりその確定的な意思として自己の後継者を指名したのであれば,Zとしては,少なくとも極真会館の組織上有力な者に対しては,このことを告げて,その後継者を中心とした運営体制に対する協力を求めることが自然であると考えられるのに,Zは,Rらに対し,何ら後継者についての話題もしていないことなどに鑑みれば,Zはその生前,自己後継者について,真意に基づいて特定の者を指名する明確な意思表示はしておらず,Zの遺産の相続,Aの極真会館への関与等につき,E弁護士ら5名と話し合うことはあったとしても,確定的な意思を本件遺言として表示したという認識は有していなかったと認めるのが相当である。 ( )被告をZの後継者とすることにつき,構成員の総意による決定があっ - 25 -たのかについてみるに,この点については,前記のとおり,平成6年5月10日の全国支部長会議で,被告が極真会館館長に就任することが承認されたことが認められる。しかし,これは,Zの遺言が危急時遺言の方式によるものであ るに,この点については,前記のとおり,平成6年5月10日の全国支部長会議で,被告が極真会館館長に就任することが承認されたことが認められる。しかし,これは,Zの遺言が危急時遺言の方式によるものであって本件遺言書にはZの署名がないことなどの説明がなく,かつ,本件遺言の確認が却下される前にされたものであり,支部長らは,Zの遺言により被告がその後継者と指名されたという誤った認識のもとで,被告が極真会館館長に就任することを承認したものであるから,そのような承認は錯誤によるものであって,無効というべきものであり,平成7年4月5日の同会議において,被告を極真会館館長から解任することが決議されていることにも鑑みれば,構成員の総意によっても被告がZの後継者として認められたものではないというべきである。 ( )被告は,Zが生前,極真会館の後継者について「強い奴が後継者にな るべきなんだ。全日本大会を3連覇する,世界チャンピオンになる,百人組手をやる,この3つを達成した奴が本当に強い奴なんだよ」などと発。 言しており,被告がZの存命中,全日本選手権に3連覇し,全世界空手道選手権でも優勝し,荒行である百人組手を達成していた唯一の者であることをもって,Zが被告を後継者にする意思があったものと主張し,乙42の雑誌には,Zの上記発言をしたことを窺わせる記事もある。しかしながら,乙42は,本件遺言書に係る遺言の効力が争われた後である平成7年に,α派の支援を受けて発行された雑誌であって,その記事も,Zが生前に上記発言をしているのを聞いたというFのインタビューを掲載したものであって,それ以外に,上記発言を裏付ける証拠はないのであるから,これのみをもって,Zが上記発言をしたとまで認めることはできない。 被告は,Zから,将来は,日本,韓国,アメリカを中心として,自分の のであって,それ以外に,上記発言を裏付ける証拠はないのであるから,これのみをもって,Zが上記発言をしたとまで認めることはできない。 被告は,Zから,将来は,日本,韓国,アメリカを中心として,自分の代理として仕事をしていって欲しいなどと言われていたこと,昭和63年にいったん極真会館の指導員の立場を離れたが,Zに請われて極真会館の- 26 -指導の現場に戻ったこと,本部直轄道場である浅草道場の支部長の認可を受けたこと,極真会館が主催する各種大会において,審判員,模範演技や大会運営委員会の支部長代行委員などを務めたこと,世界20か国余りの道場に指導員として訪問し,ネパール王室に空手の演武を献上したこと,新会館の建設委員会第2次建設委員長に任命されたこと,黒帯研究会の指導を任されていたことなどを根拠として,被告がZの後継者となることがZの真意であったと主張する。しかしながら,被告がその実力等の故にZから信頼を得ていたことはそのとおりであるとしても,それは,Zが被告の実力と将来性を評価していたということを示すものであるにすぎず,そのことから直ちに,Zが被告をその後継者にする確定的な意思を有していたと推認させるものとまではいえないのであって,被告の主張する上記の各事情は,Zが被告をその後継者と指名したことはないという前記認定に影響を及ぼすものではないというべきである。 被告は,Zの入院中,MがZから直接,被告を2代目極真会館館長とする旨の発言を2度にわたって聞いており,Mの所持する極真空手手帳の平成6年4月20日の欄には「Y2代目総裁協力するように」との記載が,あるのは,Zからその発言をメモに取るように指示されたためであると主張し,乙53にはそれに沿う記載もある。しかし,前述のような後継者を指名することの意義の大きさに鑑みれば,Zが同日, との記載が,あるのは,Zからその発言をメモに取るように指示されたためであると主張し,乙53にはそれに沿う記載もある。しかし,前述のような後継者を指名することの意義の大きさに鑑みれば,Zが同日,被告をZの後継者に指名したのであれば,Mの手帳にメモを取らせる以外にZの意思を客観的,()な形で残すための何らかの指示をするはずであって乙52Mの陳述書,,によってもかかる指示があったことを示す事情は窺えないのであるからこの点は,上記認定に影響を与えないというべきである。 また,被告は,N,O,PなどZと師弟関係にある者の複数が,被告を後継者にするという旨をZから直接聞いていると主張するが,乙54(Pの陳述書)によっても,Pが被告を極真会館館長にするとのZの発言を直- 27 -接聞いたというものではないのであるし,乙43(Nの陳述書)によっても,Nが聞いたZの発言は,ネパール王室に対する演武の献上につき,Zの名代として被告を指名することを内容とするものに過ぎないし,乙50(Oの陳述書)によっても,Oが聞いたZの発言は,新会館建設第2次建設委員長に被告を指名する内容のものに過ぎないというべきであって,これらの発言があったとしても,上記事実認定に何ら影響を及ぼすものではない。 被告は,本件遺言は,形式的な要件に不備があったため有効性が確認されなかったに過ぎず,本件遺言書の作成時にZが被告を後継者に指名したこと,さらにはその背景にあるZの被告を後継者にするという意思に何ら影響を与えるものではないと主張する。しかしながら,そもそも,本件遺言は,形式的な要件は満たしているのであり,上記のとおり,本件遺言書は,Zの親族らをも排除した状況で,E弁護士ら5名の証人が2日間合計9時間にわたってZを取り囲む中で作成されたものであって,Zの真意に基 形式的な要件は満たしているのであり,上記のとおり,本件遺言書は,Zの親族らをも排除した状況で,E弁護士ら5名の証人が2日間合計9時間にわたってZを取り囲む中で作成されたものであって,Zの真意に基づくものと認めることが困難であることを理由に有効性が認められなかったのであり,形式的な要件に不備があったために有効性を確認されなかったものではないのであるし,前記のとおり,本件遺言書の作成時におい,,。 ,てZは特定の後継者を指名していないと認められるのであるそして本件全証拠によっても,Zが他の機会において後継者を確定的に指名したとは認められないことからすると,Zは特定の後継者を指名しないまま死亡したというべきである。そうであるとすれば,Zの後継者を誰にするかは,Zが誰を後継者にするつもりであったかという内心の意思によってではなく,構成員の総意によって決めるべきであり,Zの意思はその際の考慮要素にすれば足りるというべきであるから,この点に関する被告の主張は採用できない。 被告は,各種大会の規模から考えても,Zの生前に極真会館として行っ- 28 -た各種大会と比べて,α派が行っている各種大会は,参加選手数,観客動員数,会場の収容能力,開催時期などの点で同一性を保っているが,原告らが行っている各種大会は,参加選手数,会場の収容能力もはるかに少なく,開催時期,開催場所もまちまちであって,Zの生前に極真会館が行った各種大会と同一性を欠くものであると主張する。しかし,大会への参加選手数については,どのような基準で参加資格を与えるかによっても変わるのであるし,観客動員数,会場の収容能力,開催時期などは,各団体の事務局の能力などによるところが大きいのであり,何よりも,被告は,Zからその後継者と指名された事実がないにもかかわらず,Zの意思に基 るのであるし,観客動員数,会場の収容能力,開催時期などは,各団体の事務局の能力などによるところが大きいのであり,何よりも,被告は,Zからその後継者と指名された事実がないにもかかわらず,Zの意思に基づくものではない本件遺言を主たる根拠として,自己がZの正統な後継者であると主張し,これにより,真の事情を知らない第三者をして,被告がZの正統な後継者であると誤解させた結果,Zの生前に行われていた各種大会に近い規模の大会を開催できるという結果になっていると考えられるのであるから,被告の主張する上記の事情が,どの団体が正統な後継者たる団体であるかに影響を与えるものではないというべきである。 原告19,原告4の差止請求が認められるかについて検討する。 ( )原告19らは,被告の極真会館館長という名称の使用により,原告1 9らの名誉権,営業権,教育を行う権利が害されたとして,人格権に基づき,上記名称使用の差止めを求める。 そこで,この点についてみるに,ある団体が社会的に広く認知されており,当該団体の代表者の立場にあることに対して高い社会的評価が与えられている場合において,その代表者が死亡した後にその代表者の正統な後継者が定められないまま当該団体が分裂したときは,特別の事情がない限り,分裂後の各団体は,それぞれが当初の団体の一分派として,正当な後継者の率いる団体ではないものの,異端者の率いる団体でもないという社会的評価がされるべきものであり,したがって,その団体の代表者の地位- 29 -にある者は,そのような異端者ではないという社会的評価を受けるべき地位にあるということができる。それにもかかわらず,そのような場合に,分裂後の一団体の代表者の立場にある者が,その一団体としての,又は,その代表者としての諸活動の場面において,正当な理由もなく,自ら 位にあるということができる。それにもかかわらず,そのような場合に,分裂後の一団体の代表者の立場にある者が,その一団体としての,又は,その代表者としての諸活動の場面において,正当な理由もなく,自らの率いる団体が当初の団体の正統な後継団体であり,自らが正統な後継者であるという表示をすれば,その表示に触れた一般人の認識においては,他の団体は異端的な存在であると評価するのが通常であって,結果的に,その代表者としての立場にある者も異端者であるとされて,その社会的評価を著しく低下させることになるというべきである。そして,このような社会的評価の低下は,その者の名誉を侵害するものであるところ,一般に,名誉は,生命,身体とともに,極めて重要な保護法益であると解されていることに鑑みると,このような場合,その団体の代表者としての地位にある者は,その人格権としての名誉権に基づき,加害者に対し,現に行われている侵害行為を排除するため,そのような表示をすることの差止めを請求できるものと解するのが相当である。 ( )そこで,これを前提に,被告が極真会館館長の名称を使用することに ついて,原告19,原告4の差止請求が認められるかを検討する。 ア前記のとおり,極真会館は,Zの名声とともに,広く一般世間に認知されており,平成6年時点において,日本国内に総本部,関西本部以外に,55支部,550道場,50万人の会員を有し,世界130か国に1200万人を超える勢力を有していたのであり,Zは,極真会館の代表者として,上記の武道団体の指導的立場にあるものということで,高い社会的評価を受けていたものである。そして,極真会館は,Zが後継者を指名することなく死亡し,以後,複数の団体に分裂し,現時点においても,どの団体が極真会館の正統な後継者たる団体であり,だれがZの正統な後 評価を受けていたものである。そして,極真会館は,Zが後継者を指名することなく死亡し,以後,複数の団体に分裂し,現時点においても,どの団体が極真会館の正統な後継者たる団体であり,だれがZの正統な後継者かということについては,決着がつかないままとなって- 30 -いるものである。そして,原告19は,その中の一団体である極真連合会における代表者に就任しているものであって,被告が正当な理由もなく,極真会館館長との名称を使用していることにより,その社会的評価が著しく低下しているものというべきであるから,同人の人格権としての名誉権に基づき,被告が極真会館館長という名称を使用することの差止めを認めるのが相当である。これに対し,原告4は,極真連合会の代表者ではないのであるから,原告4が被告の上記名称使用につき,これを差し止める権利を有するということはできない。 イこの点につき,被告は,極真会館館長という名称の使用について何らかの人格権を有するのは,Zの正統な後継者として極真会館館長の地位にある者のみであって,原告19は極真会館館長たる地位にないのであるから,極真会館館長という名称の使用について,何ら異議を述べる権利はないと主張する。しかしながら,極真会館館長の地位にある者が,その地位にない者の違法な名称使用につき差止請求権を有することは当然のことであるが,自らは極真会館館長の地位にない者であっても,極真会館から分裂した一分派として,異端ではない団体の代表者に対してされる社会的評価は,異端である団体の代表者に対してされる社会的評価と大きく異なるのであるから,上記のとおり,そのような場合にも,その団体の代表者としての立場にある者は,被告に対し,極真会館館長の名称の使用差止めを求めることができるというべきである。 ウまた,被告は,α派が極真会館と から,上記のとおり,そのような場合にも,その団体の代表者としての立場にある者は,被告に対し,極真会館館長の名称の使用差止めを求めることができるというべきである。 ウまた,被告は,α派が極真会館という名称を使用して活動すること自体は,違法となるものでないところ,被告はその組織を代表する地位にあり,極真会館館長という名称は,その地位を表すという意味があるだけであって,Zの人格と関連づける意味はないと主張する。しかし,前記事実からすると,極真会館は,Zの生前においては,Zを抜きにしてその評価をすることはできず,Zの名声が極真会館に対する高い社会的- 31 -,,評価に大きく貢献していたことは否定できないところであるししかも前記のとおり,被告は,Zの死後3週間程度の間に,他の支部長らに内密で,緊急に行わなければならない必要性も認められないのに,極真会館の名称などについて,商標登録の出願をしていることに鑑みれば,被告を正統な後継者とすることがZの遺志として確定していたわけではないことについては,被告においてこれを認識していたと考えられるのであって,それにもかかわらず,被告が,Zの正統な後継者として極真会館館長の名称の使用を始めたことからすると,被告自身,Zの遺志に基づきZの正統な後継者であることを強調するために,極真会館館長の名称を使用したと考えられるのであるから,極真会館館長という名称は,単に極真会館の代表者という意味にとどまるものではなく,Zの正統な後継者としての意味があるものというべきである。したがって,Zの正統な後継者でない被告が,Zの正統な後継者であることを示すために,極真会館館長という名称を使用していると認められるのであるから,そのことからしても,被告が極真会館館長という名称を使用することについては,原告19にこれを差 Zの正統な後継者であることを示すために,極真会館館長という名称を使用していると認められるのであるから,そのことからしても,被告が極真会館館長という名称を使用することについては,原告19にこれを差し止める権利があるというべきである。 エ被告は,被告がZの正統な後継者であると認識されたとすれば,それは,被告の空手選手としての実績,α派の組織やその主催する大会の規模などが原因であるとも主張する。しかし,被告の空手選手としての実績やα派の組織やその主催する大会の規模などによって,被告をZの正統な後継者であると認識するためには,他のすべての空手選手の実績が被告に及ばないこと,α派以外の組織やその主催する大会の規模が,α派のそれに及ばないことを認識して初めて可能であるというべきところ,社会一般にとって,極真会館についてそこまでの知識は有していな,。 いと考えられるのであってこの点に関する被告の主張も採用できないオ被告は,被告が極真会館館長という名称を使用することによる不利益- 32 -は原告19において甘受すべきものであるのに対して,上記の名称使用が差し止められることによる被告の不利益は極めて大きいのであって,被告が極真会館館長という名称を使用することは違法な無断使用とまではいえないと主張する。しかし,前記のとおり,被告が極真会館館長という名称を使用することにより原告19が受ける不利益は,決して小さなものとはいえないのであり,これに対し,上記の名称使用が差し止められることによる被告の不利益は極めて大きいことはそのとおりであるとしても,被告は,Zの確定的な遺志に基づくものでないことを知りながら,極真会館館長という名称を使用していたというべきであるから,そのような名称の使用ができなくなることによる不利益は,被告において甘受すべきものであ Zの確定的な遺志に基づくものでないことを知りながら,極真会館館長という名称を使用していたというべきであるから,そのような名称の使用ができなくなることによる不利益は,被告において甘受すべきものである。 カ被告は,将来生ずべき侵害に対して差止め請求が認められるのは,予めその請求をすることが必要である場合に限られるが,本件では,原告らがその点について何らの主張,立証も行っていないと主張する。しかし,現在生じていない侵害に対して差止め請求が認められるのは,予め,,その請求をすることが必要である場合に限られるとしても原告19は被告が極真会館館長という名称を使用することによって,現在,その名誉権を侵害されているのであるから,被告が指摘する点の主張,立証を,。 するまでもなく原告19の差止め請求は認められるというべきであるⅡ争点2について判断する。 甲35,甲41の1ないし3,甲5ないし18,甲20ないし22によれば,以下の事実が認められる。 ( )原告1は,昭和54年,極真会館に入門し,昭和55年,極真会館関 西総本部相談役に就任し,昭和62年,極真会館みどり橋道場の師範に就任した。 ( )原告2は,昭和48年,極真会館に入門し,昭和52年,極真会館福 - 33 -島支部師範代に就任し,昭和56年,Zから極真会館福島県南支部長に認可された。 ( )原告3は,昭和48年,極真会館に入門し,昭和56年,極真会館北 海道支部師範代に就任した。 ( )原告5は,昭和56年,極真会館に入門し,平成5年4月,極真会館 岐阜支部恵那道場指導員に就任した。 ( )原告6は,昭和54年,極真会館に入門し,昭和56年,Zから極真 会館岩手県支部長に認可された。 ( )原告7は,昭和57年,極真会館に入門し,昭和63年,Zから極真 指導員に就任した。 原告6は,昭和54年,極真会館に入門し,昭和56年,Zから極真会館岩手県支部長に認可された。 原告7は,昭和57年,極真会館に入門し,昭和63年,Zから極真会館香川県支部長に認可された。 原告8は,昭和59年,極真会館に入門し,昭和62年,京都支部本部道場師範代に就任し,平成元年,極真会館富山支部本部道場指導員に就任し,平成6年,富山支部砺波支部分支部長に就任した。 原告9は,昭和38年,極真会館に入門し,昭和55年10月,極真会館秋田県支部真壁道場師範代に就任した。 原告10は,昭和54年,極真会館に入門し,平成5年4月,極真会館東京城南支部分支部長に就任した。 原告11は,昭和55年,極真会館に入門し,昭和63年4月,Zから極真会館沖縄支部長に認可された。 原告12は,昭和59年,極真会館に入門し,平成2年9月,京都支部指導員に就任した。 原告13は,昭和46年,極真会館に入門し,昭和50年,Zから極真会館支部長に認可され,昭和63年に極真会館神奈川県北支部長に各認可された。 原告14は,昭和44年,極真会館に入門し,昭和49年,Zから極真会館福井県支部長に認可された。 原告15は,昭和54年,極真会館に入門し,昭和60年,Zから極真会館山形県支部長に認可された。 原告16は,昭和47年,極真会館に入門し,昭和49年,Zから極真会館千葉県北支部長に認可された。 原告17は,昭和53年,極真会館に入門し,平成3年12月,岡山県支部事務局責任者兼師範代に就任した。 原告18は,昭和52年,極真会館に入門し,平成14年6月に極真会館関西総本部管轄三重支部に就任した。 和53年,極真会館に入門し,平成3年12月,岡山 県支部事務局責任者兼師範代に就任した。 ()原告18は,昭和52年,極真会館に入門し,平成14年6月に極真 会館関西総本部管轄三重支部長に就任した。 ()原告20は,昭和53年,極真会館に入門し,昭和61年,極真会館 東京下城西支部分支部長に就任した。 ()原告21は,昭和48年,極真会館に入門し,昭和51年,極真会館 広島支部直轄倉敷道場分支部長に就任した。 ()原告22は,昭和50年,極真会館に入門し,昭和59年,東京都下 城西支部分支部長に就任した。 ()原告35ないし81は,いずれも昭和49年から平成5年にかけて, 極真会館に入門し,Zの死後に各支部の支部長,分支部長等に任命され,現在,道場責任者,支部長,分支部長,師範代,指導員,道場長等の肩書きで,空手の指導にあたっている者らである。 原告らの損害賠償請求が認められるかについて判断する。 ( )名誉権侵害の点について検討する。 ア原告らは,被告が極真会館館長との名称を使用することで,原告らが異端の団体の指導者であるかのように誤解され,原告らの社会的評価を低下させられたと主張する。 (ア)そこで検討するに,上記のとおり,原告2,4,6,7,11,13ないし16,19については,Zの生前,Zの認可により極真会館の支部長の地位にあったもので,極真空手の指導者として極真会館に属するという地位にあったが,現在はいずれもα派に属さないもの- 35 -と認められる。そして,前記のとおりの極真会館についての社会的認識に照らせば,上記各原告は,いずれも極真空手の指導者として,一定の社会的評価を得ていたものというべきである。そして,被告が正当な理由なく,極真会館館長という名称を使用しているこ についての社会的認識に照らせば,上記各原告は,いずれも極真空手の指導者として,一定の社会的評価を得ていたものというべきである。そして,被告が正当な理由なく,極真会館館長という名称を使用していることにより,上記各原告らの属する団体が極真会館の正統な後継者たる団体ではない,すなわち異端の団体であって,上記各原告らは,異端の団体の指導者であるかのように受け止められ,その社会的評価を低下させており,上記各原告らは,これにより,精神的苦痛を被ったと認めるのが相当である。そして,これを慰謝するに足りる金額としては,一人あたり30万円をもって相当と認める。 (イ)原告1,3,5,8ないし10,12,17,20ないし22については,Zの生前に分支部長,師範,師範代,指導員の地位にあった者らである。ところで,分支部長については,上記のとおり,支部長の任免にかかるものであって,Zから直接に任命されたものではなく,また,支部の道場において道場を開設する権限も与えられていな,,,,いものであるし師範師範代指導員の地位にある者らについては極真会館の中においていかなる地位にあるのかについて具体的な主張はなく,これらの者が道場の開設等の権限が与えられていたと認めるに足りる証拠もないことに照らせば,分支部長,師範,師範代,指導員の地位にあることをもって,極真空手の教授及び普及に努めた極真空手の指導者としての社会的評価を得ていたとまで認めることはできない。したがって,これらの者については,被告が正当な理由なく,極真会館館長という名称を使用していることにより,社会的評価を著しく低下させたとまでは認めることができず,これらの原告らに関する主張は採用できない。 (ウ)原告18,35ないし81については,Zの死後に,それぞれが- 36 -所属する団 り,社会的評価を著しく低下させたとまでは認めることができず,これらの原告らに関する主張は採用できない。 (ウ)原告18,35ないし81については,Zの死後に,それぞれが- 36 -所属する団体において,支部長,分支部長,師範などの肩書きで空手の指導者についたものと認められる。そして,原告らは,程度の差こそあれ,原告番号1ないし22の原告らと同様の損害を被ったものと主張する。しかしながら,原告番号18,35ないし81の各原告に,,,ついてはZの死後それぞれが所属する団体の指導者の教授を経てその指導者の教授する空手の指導者になったものであり,被告が極真会館館長の名称を使用し始めた後に上記の地位に就いたのであるから,上記原告らの社会的評価が,被告による極真会館館長の名称使用により,その名称使用がされる前と比較して低下したというわけでは。 ,,ないしたがって被告が極真会館館長という名称を使用することで上記原告らの社会的評価が低下したと認めることはできず,これらの原告らに関する主張は採用できない。 (エ)原告23ないし34については,そもそも実在を示すものが,メールのみであり,本人が送信したものであるかも不明であるし,たとえ,実在したとしても,各原告の本国において,極真空手がどのように認識され,それに基づき,上記各原告らがどのように認識され,評価されているのかなどに関する具体的な主張も立証もない。したがって,被告が極真会館館長という名称を使用することで,直ちに,上記各原告らの社会的評価が低下するものとは認めることはできない。よって,これらの点に関する原告らの主張は採用できない。 イ原告らは,原告らが異端の団体の指導者であると誤解されたことで,原告らの名誉感情を侵害されたと主張する。名誉感情を侵害された場合の慰謝料請求につ ,これらの点に関する原告らの主張は採用できない。 イ原告らは,原告らが異端の団体の指導者であると誤解されたことで,原告らの名誉感情を侵害されたと主張する。名誉感情を侵害された場合の慰謝料請求については,社会的評価の低下が生じた場合と異なり,その請求が認められるためには,その名誉感情の侵害が金銭による慰謝を必要とするものと認められる特段の事情が必要であると解するのが相当である。これを原告らについてみるに,原告2,4,6,7,11,1- 37 -3ないし16,19の名誉感情の侵害については,上記のとおり,同原告らの社会的評価の低下という点についての損害賠償請求において評価され尽くしているというべきである。また,原告1,3,5,8ないし10,12,17,18,20ないし22,35ないし81の名誉感情については,各原告らが極真会館の一員として誇りをもって道場において極真空手の指導にあたっていたとしても,同原告らはZ自身によってその地位に任命されたわけではないのであり,上記のとおり,被告が極真会館館長の名称を使用することによってその社会的評価が著しく低下させられたとまでは認められないのであるし,名誉感情侵害の態様も,被告が極真会館館長という名称を使用した結果,反射的に異端の団体の一員であると誤解されるに至ったというものであって,これらの諸事情によると,その名誉感情の侵害につき金銭による慰謝を必要とする特段の事情があるとまで認めることはできない。 ,「」,ウ原告らはα派がいわゆるK-1に選手を出場させていることで極真会館が商業主義的な団体であるとの誤解を招き,また,被告とLとの間に交流があること,指定暴力団山口組最高幹部であったGをα派の開催する全日本空手道選手権大会の顧問に就任させたことで,極真会館に悪印象を与えて,原告 な団体であるとの誤解を招き,また,被告とLとの間に交流があること,指定暴力団山口組最高幹部であったGをα派の開催する全日本空手道選手権大会の顧問に就任させたことで,極真会館に悪印象を与えて,原告らの社会的評価を低下させ,また,名誉感情を侵害したと主張する。しかし,本件全証拠によっても,いわゆる「K-1」が商業主義的なものであって,それに選手を出場させる団体が商業主義的なものであると社会的に評価されていると認めるに足りる証拠はない。また,被告とLとの交流については,甲21,甲22にその交流があったことを示す記載があるが,これらはいずれも雑誌の記事に過ぎず,被告とLが実際にどのような交流を行っていたのかは明らかでないのであり,Gについても,Gが元指定暴力団山口組系の組織の幹部であったことを認めるに足りる的確な証拠はなく,しかも,それらの事実を- 38 -世間一般の者がどのような過程で知るに至ったのか,それによって,極真会館がどのような団体であると評価されるに至ったのかについて,何ら具体的な主張も立証もないのであるから,被告とLとの交流やGをα派が開催した選手権大会の顧問に就任させたことで極真会館の社会的評価に悪印象を与えたとも認めることができない。したがって,α派及び被告の上記各活動によって極真会館の社会的評価が低下したとは認めることはできないというべきである。そして,そうであるならば,α派及び被告の上記各活動によって原告らの名誉感情が侵害されたとする主張もその前提を欠くというべきである。よって,これらの点に関する原告らの主張は採用できない。 ( )営業権侵害の点について検討する。 原告らは,α派が原告らの道場近辺にα派の道場を開設するなどして自己の流派における活動をしているところ,その際に被告が極真会館館長という名称を使用 い。 ( )営業権侵害の点について検討する。 原告らは,α派が原告らの道場近辺にα派の道場を開設するなどして自己の流派における活動をしているところ,その際に被告が極真会館館長という名称を使用することで,被告がZの正統な後継者であってα派の道場が正統な極真会館であり,原告らの道場が極真会館ではないかのような誤解を生じさせ,又は原告らが極真会館に属する旨の原告らの宣伝活動等を妨害して,原告らの道場生を減少させ,もって,原告らにおける空手の教授,各種選手権大会の開催等の営業に支障を生じさせたと主張する。ところで,原告らと団体を異にするα派が各地に道場を開設すること自体は直ちに違法ではないというべきところ,α派が道場を原告らの道場の付近に開設した場合,立地条件や月謝の多寡など多くの要素によって原告らの道場生が減少する可能性があることは否定できないのであり,原告らの道場生の減少と被告が極真会館館長と名乗ることがどの程度の関連性を有していたかということにつき,これを認定するに足りる的確な証拠はない。したがって,α派が原告らの道場の近辺に道場を開設した結果として,原告らの道場の道場生が減少したとしても,そのことと被告が極真会館館長の- 39 -名称をすることとの間の因果関係を認めることはできないというほかなく,この点に関する原告らの主張は採用できない。 ( )教育を行う権利の侵害という点について検討する。 原告らは,α派がいわゆる「K-1」に選手を出場させていることで,極真会館が商業主義的な団体であるとの誤解を与え,また,被告とLとの間に交流があること,指定暴力団山口組最高幹部であったGをα派の開催する全日本空手道選手権大会の顧問に就任させたことで,極真会館に悪印象を与え,これによって,原告らの道場生らに混乱を与え,原告らが極真空手 があること,指定暴力団山口組最高幹部であったGをα派の開催する全日本空手道選手権大会の顧問に就任させたことで,極真会館に悪印象を与え,これによって,原告らの道場生らに混乱を与え,原告らが極真空手の精神を道場生らに指導するのに支障を生じさせたと主張する。しかしながら,上記のとおり,被告及びα派の上記各活動によって極真会館の社会的評価を低下させたと認めることはできないのであるし,極真会館の評価が低下したとする原告らの主張を前提にしても,原告らは,その道場生に対し,上記のような極真会館の分裂の経緯や,α派と原告らがその理念を異にすること及び原告らの考える極真会館の精神を伝える機会は十分にあるというべきであって,原告らの教育を行う権利が侵害されたと認めることはできない。したがって,これらの点に関する原告の主張は採用できない。 ( )被告は,原告らの慰謝料請求権が時効によって消滅していると主張す るが,前記のとおり,原告らの名誉権侵害による慰謝料請求が認められる部分については,原告らに現在も名誉権侵害が生じているのであるから,これらの損害が生じていることを理由とする慰謝料請求権が時効により消滅したということができないことは明らかである。 Ⅲ以上のとおりであり,原告らの被告に対する請求は,原告19において被告が極真会館館長という名称を使用することの差止めを求め,原告2,4,6,7,11,13ないし16,19が各30万円及びこれに対する平成16年9月11日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度- 40 -で理由があるので,その限度でこれを認容することとし,その余は理由がないのでいずれも棄却することとし,訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条,64条,65条を,仮執行の宣言につき同法259条を各適用して,主文のとおり その限度でこれを認容することとし,その余は理由がないのでいずれも棄却することとし,訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条,64条,65条を,仮執行の宣言につき同法259条を各適用して,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第18民事部裁判長裁判官佐賀義史裁判官石村智裁判官玉田雅義

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