令和5(う)62 殺人被告事件

裁判年月日・裁判所
令和5年11月30日 広島高等裁判所 棄却 広島地方裁判所 令和4(わ)161
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判決文本文9,014 文字)

令和5年11月30日宣告広島高等裁判所令和5年第62号殺人被告事件原審広島地方裁判所令和4年(わ)第161号 主文 本件控訴を棄却する。 当審における未決勾留日数中110日を原判決の刑に算入する。 理由 本件控訴の趣意は、弁護人大田耕司(主任)及び同西岡哲也共同作成の控訴趣意書及び控訴趣意補充書に各記載のとおりであるからこれらを引用するが、論旨は、⑴被告人に殺意を認め正当防衛等の成立を否定した原判決には、判決に影響を及ぼすことが明らかな事実の誤認がある、⑵被告人を懲役8年に処した原判決の量刑は重過ぎて不当である、というものである。 そこで、記録を調査し、当審における事実取調べの結果を併せて検討する(以下、略称については原判決のそれと同様である。)。 第1 事実誤認をいう論旨について 1 原判決が認定した罪となるべき事実の要旨は、被告人が、交際相手方において、同人に対し、殺意をもって、その背部を包丁で2回突き刺し、同人を失血死させて殺害した、というものである。 原判決は、概要、本件犯行状況等について、被害者が本件洋室のこたつの西側に座り、被告人がこたつの北側の台所側に座っていたが、口論となって被告人が被害者から顔面を殴られたことから、被告人は、立ち上がって本件包丁を台所に取りに行き、本件洋室に戻って被害者の背中に本件包丁を突き刺したという事実経過が認められるところ、警察官が現場に臨場した際、被害者は本件洋室で腰から下がこたつに入っている状態で仰向けに倒れており、被害者の頭部左側の床には血だまりができていたが、現場 には被害者を引きずったような痕跡は見当たらなかったこと、致命傷となった本件刺切創は刃が背中に向かって左側を向いた状態で、背部から右前下方に向かって深さ約 だまりができていたが、現場 には被害者を引きずったような痕跡は見当たらなかったこと、致命傷となった本件刺切創は刃が背中に向かって左側を向いた状態で、背部から右前下方に向かって深さ約15.2センチメートル刺さったものであり、被告人は本件包丁を右手で刃を下向きにした状態で逆手に持って振り下ろしたと述べていること、本件洋室壁面の血痕は最も高いもので床面から約110センチメートルの位置にあることなどから、被告人は、こたつに座った状態の被害者から殴られた後、台所へ本件包丁を取りに行き、こたつ西側に着座又は中腰の状態にあった被害者に近付いて、その左側から右手で逆手に持った本件包丁を被害者に突き刺したと認められるとの判断を示した上で、被告人は、わざわざ台所に本件包丁を取りに行き、着座又は中腰の被害者に近付き、逆手に持った本件包丁を、着衣3枚を貫き刃体部分がほとんど刺さる程度の相当強い力で、被害者の上半身めがけて振り下ろしたことからすると、被告人が軽度知的障害であることを考えても、被害者を刺すことによって被害者が死ぬかもしれないという程度のことは分かっていたと認められるから、殺意があったと認められるとの判断を示し、さらに、原判決は、被告人が本件包丁を台所に取りに行った後は、被害者が被告人を殴ったり、被害者ともみ合いになったりする状況はなかったこと、本件包丁を取りに行くときには被害者は座っており、被害者が被告人を追いかけてきたこともないこと、被告人は、着座に近い状態の被害者にわざわざ近付いていることから、被告人が本件洋室に戻った時点では、被害者からの攻撃は終了していたといえるから、正当防衛も過剰防衛も成立しないとし、被害者の暴行が継続すると被告人に勘違いさせるような具体的な被害者の言動があったことをうかがわせる事情もないから、誤想防 害者からの攻撃は終了していたといえるから、正当防衛も過剰防衛も成立しないとし、被害者の暴行が継続すると被告人に勘違いさせるような具体的な被害者の言動があったことをうかがわせる事情もないから、誤想防衛も成立しないとの判断を示して、原判示事実を認定したものである。 以上の原判決の認定判断に、論理則・経験則等に照らし、特段不合理なところは認められない。 以下、所論に鑑み補足する。 2⑴ 所論は、被害者は刺された時座っていたか中腰の姿勢であったとする原判決の認定について、①警察官が臨場した際の現場の状況をみると、被害者の着衣の状態は同人が昏倒した後に引きずられた痕跡と考えられ、また、こたつも本件前に知人が訪れた際の位置からずれており、こたつ布団も被害者に向けて引っ張られた状態になっていたことからすれば、被告人が、昏倒した被害者の身体を下方向に引きずって移動させた上、こたつを動かし被害者の身体にこたつ布団をかぶせるなどした可能性が考えられる、②本件刺切創は、被告人と被害者が共に立ち上がっていて、被告人が被害者の左側から本件包丁を高く振り上げて刺した場合にも生じ得るのであるから、本件刺切創の部位や方向等のみから被告人と被害者の姿勢を推認することはできない、③本件洋室壁面には飛散の方向が異なる4種類の飛沫血痕が付着していることから、被告人は、被害者に致命傷を負わせた後に、少なくとも4回本件包丁を振ったという事実が認められ、このような飛沫血痕は被告人が被害者ともみ合いになったからこそ残ったものと考えられ、そのような状況もないのに着座あるいは中腰の被害者に致命傷を負わせた後に被告人が4回も本件包丁を振り回したというのは非現実的であり、また、壁面の血痕の高さが床面から概ね110センチメートル以下であることは、着座する被 のに着座あるいは中腰の被害者に致命傷を負わせた後に被告人が4回も本件包丁を振り回したというのは非現実的であり、また、壁面の血痕の高さが床面から概ね110センチメートル以下であることは、着座する被害者をかがんで刺した場合より、立った状態の被害者を刺したことと整合的であり、さらに、本件洋室壁面の高さ110センチメートルに位置する付着血痕(以下「本件付着血痕」という。)は、他の飛沫血痕とは様相を異にしており、被害者が本件刺切創を負った後、被告人ともつれ合う体勢で西側壁面に向かって倒れ込み、被害者の血液の付着した被告人の身体の一部あるいは本件包丁の柄尻等が壁面に接触した際に生じたものと説明することが合理的であり、その他ソファーの血痕の状況なども 含め、これらの客観証拠は、被告人が被害者を刺した際、互いに立ってもみ合いになっていたという被告人の供述と整合し、少なくとも被害者が立っていた可能性は否定できないなどというのである。 しかしながら、上記所論①についてみるに、警察官臨場時の被害者の着衣の状態や客観的な位置関係は所論が指摘するとおりであるが、そもそも被告人がわざわざ被害者の身体を移動させてこたつに入れる首肯し得る合理的な理由は考え難い上、被害者は、下半身をこたつに入れ、その頭部が壁の2面に挟まれた部屋の隅に位置する状態で横臥しており、そのような体勢等からすれば、被告人が被害者の身体をこたつの方向にひきずった後の状態とみるのは状況や位置関係としても不自然といわざるを得ない。そして、被害者の着衣の状況のほか、こたつの位置やこたつ布団の状態を含め所論の指摘する状況は、着座あるいは中腰の被害者が被告人から刺されて仰向けに昏倒したという状況と明らかに矛盾するものとはいえないのであって、所論の指摘する事情は原判決の認定判断 たつ布団の状態を含め所論の指摘する状況は、着座あるいは中腰の被害者が被告人から刺されて仰向けに昏倒したという状況と明らかに矛盾するものとはいえないのであって、所論の指摘する事情は原判決の認定判断に合理的な疑いを生じさせるような事情とはいえない。また、上記所論②についてみても、包丁の刃を下向きに逆手に持って振り下ろしたという被告人が述べる刺突態様は、座っている被害者あるいは中腰になっている被害者の左背後から刺したと考えると本件刺切創の部位や方向等によく符合するものといえるのであり、他方において、所論が指摘するように、本件刺切創は、被告人と被害者が共に立ち上がっていて、被告人が被害者の左側から本件包丁を高く振り上げて刺した場合にも生じ得るといえなくもないが、双方が同程度の身長であることや包丁を逆手に持って刺突したとする状況に照らせば、所論が可能性として指摘する刺突行為の態様はやはり不自然の感は否めないというべきである。もっとも、原判決は、本件刺切創の部位や方向等のみから被害者が立った状態ではなかったことを推認したものではなく、上記の事実に加 え、警察官臨場時の被害者の状況や血痕の付着状況等を総合して、刺突時の被告人と被害者の体勢を推認し、被害者が立った状態で刺されたとは考え難いと判断しているものと解されるのであるから、所論は原判決を的確に論難するものとはいえない。そして、上記所論③については、飛沫血痕がどのようにして本件洋室壁面に付着したのかについて証拠上確定的な状況は明らかではないが、その血痕の付着状況やその位置からすれば、被告人が、着座あるいは中腰であった被害者に致命傷を負わせた後に、混乱した状況の中で本件包丁を持った手を動かしたことにより本件洋室壁面に血痕が付着したという状況が全くあり得ないなどとはいえないので 被告人が、着座あるいは中腰であった被害者に致命傷を負わせた後に、混乱した状況の中で本件包丁を持った手を動かしたことにより本件洋室壁面に血痕が付着したという状況が全くあり得ないなどとはいえないのであるから、このような飛沫血痕の存在やその状態が、被害者ともみ合いになったことや被害者が立ち上がった体勢にあったことを他の状況を想定できないほど的確に裏付けるような事実ないし事情とはいえない。また、本件付着血痕についても、いつどのようにして付着したのか証拠上明らかではないが、本件洋室がさほど広い部屋でもなく犯行場所が壁面から離れた位置にあったわけではないことからすれば、被告人が、被害者を刺して致命傷を負わせた後、理由や状況は明らかではないものの壁面に触れたことにより付着したことも十分に考えられるのであるから、本件付着血痕の存在も所論のいうような状況でなければ説明がつかないというものではなく、むしろ、所論のいうように被害者ともみ合い、もつれ合った後に倒れ込んだ際に付着したものであるとすれば、その血痕の付着状況は本件付着血痕の程度や様相にとどまっていないとも考えられるのである。その他ソファーの血痕等所論の指摘する血痕等の客観的状況はいずれも原判決の認定判断を覆すに足る事実ないし事情であるとはいえない。 ⑵ また、所論は、本件包丁を持って本件洋室に戻った直後、立ち上がった被害者から殴られてもみ合いになったという被告人供述の信用性に ついて、①原判決は、もみ合いがあったにしては本件洋室内が荒れていないし、もみ合いの中で被害者の左側から本件包丁を振り下ろすことができるようなスペースもないと指摘するが、もみ合いが激しいものではなく、同一の場所で短時間にとどまったものであれば室内が荒れるとは限らないし、知人の作成した図面によれば、こたつと を振り下ろすことができるようなスペースもないと指摘するが、もみ合いが激しいものではなく、同一の場所で短時間にとどまったものであれば室内が荒れるとは限らないし、知人の作成した図面によれば、こたつと北側壁面の間には十分なスペースがあり、被害者がソファーの前に立っていたとすれば、その左側には本件包丁を振り下ろすことができる程度のスペースがあったと考えられる、②原判決は、被害者が包丁を持った被告人に素手で殴り掛かるとは考えにくいと指摘するが、当時被害者が飲酒により相当に酩酊した状態にあったことや、被害者がボクシング経験者であり体格も被告人と比較して優位にあったことなどを考えれば、被害者が素手で対抗しようとしたことは不自然ではなく、また、原判決は、被告人が本件包丁を持った状態で殴ったりもみ合ったりしたのであれば、被告人にも被害者にもそれに見合った傷が生じてもおかしくないのにそのような傷は見当たらないとも指摘するが、被害者の左手掌には本件包丁によって生じたと考えられる切創が認められるのであり、その切創には生活反応が認められないから致命傷となる本件刺切創の後に生じた創であるとの医師の証言は、被害者の出血の量を実際に観察したものではないし、左手掌の創傷の色調等についても関係証拠と矛盾するなど信用できないのであって、被害者の左手掌の切創は本件刺突行為の前に生じた可能性は否定できないのであり、その切創は被害者が左手で本件包丁を避けながら右手で被告人を殴打するなどしたことの裏付けとなる、③原判決は、被告人は被害者から暴行を受けたことを本件犯行に及ぶ前の暴行と混同している可能性があるというが、被告人が本件包丁を手にして本件洋室に戻ったときに被害者が座っていたか立っていたかということは、記憶の混同が生じるような事実ではないなどと縷々指摘して、原判 と混同している可能性があるというが、被告人が本件包丁を手にして本件洋室に戻ったときに被害者が座っていたか立っていたかということは、記憶の混同が生じるような事実ではないなどと縷々指摘して、原判 決の判断を論難する。 しかしながら、上記所論①についてみると、本件洋室は6畳間でそれほど広い部屋ではなく、こたつや座椅子様のソファー、テレビなどの家具やごみ箱等の雑多な物があり、こたつの上には鍋や食器、灰皿、飲みかけの缶飲料等が置かれていたのであるから、所論のいうように、立ち上がった被害者と包丁を持った被告人が対峙し、被害者が包丁を避けながら被告人の顔面を殴打するなどし、被告人が被害者の左側に位置する体勢となって被害者の背部に包丁を振り下ろし、もつれあって西側壁面方向に倒れ込んだなどというのであれば、物が散乱するなど相当に混乱した状況に立ち至ると考えられるのであって、そのような状況が現に生じていないのは、所論がいう状況を前提にすると、やはり不自然というほかはなく、室内がそれほど荒れていないことなども根拠の一つとして被告人供述の信用性を否定した原判決の判断がおよそ不合理であるなどとはいえない。また、知人が作成した図面は単純なものであり、スペースの広さまで意識して記載したものとはみられないのであるから、所論の主張を基礎付けるものとまではいえず、また、所論が指摘する新聞紙に湿りがあったことも、周囲の缶等が倒れていないことからすれば、もみ合い等があったことの証左とはいえない。所論の指摘は原判決の判断を何ら左右するものではない。また、上記所論②についてみても、所論が指摘するように、被害者が包丁を手にした被告人に素手で対抗しようとしたことが不自然ではないとしても、そのような状況で殴ったりもみ合ったりしたのであれば、被告人や被害者にそれに についてみても、所論が指摘するように、被害者が包丁を手にした被告人に素手で対抗しようとしたことが不自然ではないとしても、そのような状況で殴ったりもみ合ったりしたのであれば、被告人や被害者にそれに見合った創傷が生じると思われるのに、被告人にも被害者にもそのような傷が見当たらないのは不可思議であるというのは原判決が指摘するとおりである。また、被害者の左手掌の切創について、所論の主張及び当審において取り調べた弁号証等を踏まえてみても、創傷の色調等を論拠とするだけでは、医 師の医学的な知見に基づく証言に明らかな誤りがあって不合理であるとまでは断じ得ないのであり、仮に被害者の左手掌の切創が本件刺突行為の前に生じたものであったとしても、そのような創傷が、被害者が着座あるいは中腰の体勢にあって本件刺突行為の間際に生じた可能性も否定できないのであって、所論が主張するように双方が対峙してもみ合うなどという状況でなければ生じ得ないと断定することはできないのであるから、被害者の左手掌に切創が生じていたという事実が直ちに被告人の弁解の裏付けとなるものではなく、この点に関する原判決の判断にも誤りがあるとはいえない。また、上記所論③についてみても、被害者に殴られたことから咄嗟の行動に及んだという状況に照らせば、その前後関係や被害者の体勢についても、混乱した気持ちの中で記憶の混同や変容があり得ないとは言い切れないのであるから、被告人の供述状況等も踏まえながら原判決が可能性として指摘したことに誤りがあるとはいえない。 ⑶ 原判決は、興奮状態にあった被告人が肩であれば死なないと冷静に考えて肩を狙ったというのは不自然であるとして被告人の供述を排斥し、漠然と上半身を目掛けて刺したと考えるのが合理的であるとして被告人に殺意があったと認定しているところ 人が肩であれば死なないと冷静に考えて肩を狙ったというのは不自然であるとして被告人の供述を排斥し、漠然と上半身を目掛けて刺したと考えるのが合理的であるとして被告人に殺意があったと認定しているところ、所論は、いかに興奮状態にあったにしても身体のどの部位を攻撃したら危険かという漠然とした認識は失われないから、被告人も、漠然と肩であれば死なないという認識のもと、無意識に肩を狙った可能性も否定できないのであるから、被告人の供述を不自然と評価して信用性を否定した原判決の判断には誤りがあるなどというのである。 しかしながら、原判決が説示するとおり、被告人の供述は全体として曖昧であるといわざるを得ないのであり、被告人は肩を狙って刺したとは明確に述べているわけではない上、実際には背部に刺さっていること について、肩を狙ったのになぜそのような位置に刺さったのかについても述べていないのであるから、客観的な情況証拠から未必的な殺意を推認する過程において、被告人は被害者を刺すことによって被害者が死ぬかもしれないという程度のことは分かっていたとして、上記のような被告人の供述は殺意があったとの認定を左右しないとした原判決の判断に誤りはない。 ⑷ さらに、所論は、被告人は、被害者から顔面が血まみれになるほどのけがを負わされ、その暴行を止めさせるために本件包丁を被害者に示したところ、さらに顔面を殴打されもみ合いとなったために、本件包丁を振るって被害者に本件刺切創を負わせたのであるから、そのような状況においては正当防衛の成立を認めるべきであるのに、これを否定した原判決の認定判断は誤りであるなどともいうのである。 しかしながら、既に述べたとおり、被告人が台所に本件包丁を取りに行った後に、被害者が被告人を殴ったり、双方もみ合いになった 、これを否定した原判決の認定判断は誤りであるなどともいうのである。 しかしながら、既に述べたとおり、被告人が台所に本件包丁を取りに行った後に、被害者が被告人を殴ったり、双方もみ合いになったりしたという状況は認められず、被害者は、被告人が本件包丁を取りに台所に行こうとしても、被告人を追うこともなくこたつに入って座ったままであり、他方、被告人は、包丁を手にしてそのような状態の被害者にわざわざ近付き、座っているか中腰の状態の被害者に対し、本件包丁でその背部を刺突したという行動経過や行動状況が認められるのであるから、そのような認定事実の下防衛行為等を否定した原判決の判断に誤りはなく、所論は、可能性を指摘するにとどまる異なる事実関係を前提として、正当防衛が成立する旨主張するものであって、およそ採用の限りではない。 3 以上の次第であって、所論を踏まえて検討してみても、被告人が、こたつに入ったまま座り、あるいは中腰の状態にあった被害者に対し、その左側から逆手に持った本件包丁でもって同人の背部を突き刺したという事 実経過や行動状況等を認定した上、そのような行為態様等から、被告人に殺意があったと認定し、正当防衛又は過剰防衛、誤想防衛も成立する状況ではなかったとした原判決の判断に誤りがあるとは認められない。 事実誤認をいう論旨は理由がない。 第2 量刑不当をいう論旨について原判決の量刑事情の認定及び評価等その量刑判断は、量刑の理由の項において説示するところを含め、相当として是認することができる。 所論は、事実誤認がないとしても、原判決は被告人の知的障害が本件行為に及ぼした影響等を正当に評価しているとはいい難く、被告人を懲役8年に処した原判決の量刑は重きに失するなどというのである。 しかしながら、原判決は、被告人が刺す 、原判決は被告人の知的障害が本件行為に及ぼした影響等を正当に評価しているとはいい難く、被告人を懲役8年に処した原判決の量刑は重きに失するなどというのである。 しかしながら、原判決は、被告人が刺す以外の選択肢を考えなかったことについては、被告人の軽度知的障害の特徴も影響していると端的に指摘し、そのような事情をも踏まえて量刑判断をしていることは明らかであり、なお、被害者とのこれまでの関係等その背景事情を考えると、被告人が本件犯行に至った経緯や動機に斟酌し得るところもないわけではないが、被告人が軽度知的障害であることを踏まえつつも、短絡的な犯行であり強い非難に値すると評価した原判決の判断に誤りがあるとはいえない。 本件犯情に照らすと、自首をしていることなど原判決も指摘する被告人のために斟酌し得る事情をなお十分に考慮してみても、原判決の量刑判断はやむを得ないものというべきであって、被告人を懲役8年に処した原判決の量刑が重きに過ぎて不当であるとは認められない。 量刑不当をいう論旨も理由がない。 よって、刑訴法396条により本件控訴を棄却することとし、当審における未決勾留日数の算入について刑法21条を適用して、主文のとおり判決する。 令和5年11月30日広島高等裁判所第1部 裁判長裁判官森浩史 裁判官富張真紀 裁判官家入美香

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