令和5(行ケ)10146 審決取消請求事件

裁判年月日・裁判所
令和6年7月25日 知的財産高等裁判所 1部 判決 請求棄却
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判決文本文15,813 文字)

- 1 -令和6年7月25日判決言渡令和5年(行ケ)第10146号審決取消請求事件口頭弁論終結日令和6年5月23日判決 原告株式会社ナベル 同訴訟代理人弁理士田平 誠 被告特許庁長官 同指定代理人稲葉大紀西堀宏之金丸治之天野貴子冨澤武志 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 特許庁が不服2022-13808号事件について令和5年11月21日にした審決を取り消す。 第2 事案の概要本件は、特許拒絶査定不服審判請求を不成立とした審決の取消訴訟である。争点は、進歩性についての判断の誤りの有無である。 1 特許庁における手続の経緯等 - 2 -原告は、平成30年5月21日(以下「本件出願日」という。)、発明の名称を「ラベル投入装置」とする発明について特許出願をした(特願2018-96892。 以下「本願」という。)。本願の出願時の願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面は、特開2019-202785号公報のとおりである(甲3。以下、同明細書、特許請求の範囲及び図面を併せて「本願明細書」という。)。 原告は、令和4年3月21日、本願につき、特許請求の範囲の補正を伴う手続補正をしたが(甲4)、同年6月1日付けで拒絶査定を受けたので、同年9月3日付けで同拒絶査定に対する不服審判請求をした(不服2022-13808)。 特許庁は、令和5年11月21日、「本 を伴う手続補正をしたが(甲4)、同年6月1日付けで拒絶査定を受けたので、同年9月3日付けで同拒絶査定に対する不服審判請求をした(不服2022-13808)。 特許庁は、令和5年11月21日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をし、その謄本は同年12月1日に原告に送達された。 原告は、令和5年12月28日、本件訴訟を提起した。 2 特許請求の範囲の記載令和4年3月21日提出の手続補正書(甲4)により補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。 「卵パックの2列に並んだ卵の間に形成されたラベル配置領域に沿って搬送され る卵パックに長方形状のラベルを一枚ずつ投入するラベル投入装置であって、立たせたラベルの下縁の長辺を前記ラベル配置領域に沿わせ、前記ラベルを長辺に沿った方向へ放出する放出機構を備えたラベル投入装置。」 3 本件審決(1) 本件審決の理由の要旨は、次のとおりである。 本願発明は、甲1(実願昭51-130681号(実開昭53-50766号)のマイクロフィルム)に記載された発明(以下「引用発明」という。)及び甲2(特開2004-10102号公報)に記載された技術的事項に基づいて、当事者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 (2) 本件審決が認定した引用発明の内容、本願発明と引用発明の一致点及び相違 - 3 -点並びに甲2に記載された技術的事項は、別紙記載のとおりである。 (3) 本件審決による相違点等の検討の結果は、要旨次のとおりである。 ア相違点1について引用発明の「ラベル挿入装置」は、「ラベルを一枚ずつ投入するラベル投入装 項は、別紙記載のとおりである。 (3) 本件審決による相違点等の検討の結果は、要旨次のとおりである。 ア相違点1について引用発明の「ラベル挿入装置」は、「ラベルを一枚ずつ投入するラベル投入装置」であるともいえる。甲2に記載された技術的事項のうち、「パックP」は本願発明の 「卵パック」に相当し、「パックPの卵収容部の…長手方向に沿って搬送される」ことは、本願発明の「ラベル配置領域に沿って搬送される」ことと同じ方向である。甲1と甲2は、ラベルを配置する装置という共通の技術分野に属し、卵パックの2列に並んだ卵の間に形成されたラベル配置領域に長方形のラベルを長辺を下縁にして配置するという共通の作用機能を有している。 そうすると、引用発明において、パックの搬送方向を甲2に記載された技術的事項のようにラベル配置領域に沿った方向に搬送されるようにして、相違点1に係る構成を備えるようにすることは、当業者であれば容易になし得たことである。 イ相違点2について引用発明のラベル挿入装置の構成によると、ラベルLは、上ベルト3と下ベルト 4で搬送された後、保持を解除された後も、上ベルト3と接してベルトの駆動方向に押し出されるようになるから、その移動方向は、ラベルLの搬送速度の慣性によるラベル輸送用ベルト3、4に沿った方向、すなわち、ラベルの長辺に沿った方向であることは当業者に自明である。 そうすると、引用発明においてラベル輸送用ベルト3、4の挟持から離脱する際 のラベルの移動方向には「長辺に沿った方向」の速度成分を備えるものであり、「長辺に沿った方向へ放出する」ことを意味するから、相違点2は実質的な相違点ではない。 ウ効果について本願発明の効果は、引用発明及び甲2に記載された技術的事項に基づいて当業者 が予測 「長辺に沿った方向へ放出する」ことを意味するから、相違点2は実質的な相違点ではない。 ウ効果について本願発明の効果は、引用発明及び甲2に記載された技術的事項に基づいて当業者 が予測し得たものにすぎず、格別顕著なものではない。 - 4 -第3 原告主張の取消事由(進歩性判断の誤り)本件審決は、次に述べるとおり、相違点及び効果の検討に誤りがあり、これらは審決の結論に影響を及ぼすものであるから、本件審決は取り消されるべきである。 1 相違点1についての検討の誤り(1) 甲1には、パックの搬送方向を、ラベル配置領域に直交する方向からラベル 配置領域に沿った方向に変更することができるとは記載されていないし、その示唆もない。 (2) 引用発明のラベル挿入装置は、ラベルを傾斜させて、傾斜の下方延長方向へ滑空させながら落下させるから、空気抵抗の影響を受けて挙動が不安定になり、ラベルの落下位置がずれやすい。他方、甲2に記載された発明(以下「甲2発明」とい う。)では、ラベルを鉛直に立たせて落下させるから、空気抵抗の影響をほとんど受けず、ラベルは瞬時に落下する。引用発明には甲2発明が備える上記の前提がないので、甲2発明の構成(ラベル配置領域に沿った方向)を採用することはできない。 仮にこのような構成を採用すると、ラベルの落下位置がずれた場合には、ラベル配置領域にラベルを投入する機能を果たし得なくなる。 また、引用発明は、ラベルが落下していく傾斜の下方延長方向と、コンベアによる卵パックの搬送方向とを交わるようにすることで、「ラベルを斜めにした状態で落下させると、ラベルはその傾斜の下方延長方向に確実に落下する」という原理により発明の目的を達しているところ、引用発明における卵パックの搬送方向を変えることは、上 ことで、「ラベルを斜めにした状態で落下させると、ラベルはその傾斜の下方延長方向に確実に落下する」という原理により発明の目的を達しているところ、引用発明における卵パックの搬送方向を変えることは、上記目的にも反する。 そうすると、引用発明に甲2発明の構成を適用して相違点1に係る本願発明の構成とすることには阻害要因があるといえる。 (3) 以上によると、引用発明のうち、パックの搬送方向を甲2のようにラベル配置領域に沿った方向にして、相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たことではないから、本件審決は誤りである。 2 相違点2についての検討の誤り - 5 -(1) 本願発明の「ラベルを長辺に沿った方向に放出する」とは、「放出」の語義(「はなちだすこと」、「ふきだすこと」等。乙1)からして、「ラベルを長辺に沿った方向に向けて、勢いを持たせて送り出す」ことを意味すると解すべきである。しかし、甲1には、ラベルをその長辺に沿った方向に向けて勢いを持たせて放出することは記載されていないし、その示唆もない。 (2) 本件審決は、引用発明において、「ラベルLは、保持を解除された後も、上ベルト3と接してベルトの駆動方向に押し出されるようになる」とするが、甲1において、ラベルLは、上下ベルト3、4の挟持が解除された後、再び上ベルト3に接することはないから、本件審決の上記認定は誤りである。 また、本件審決は、「ラベルLの移動方向は、ラベル輸送用ベルト3、4がラベル Lを搬送していたときの速度の慣性によるラベル輸送用ベルト3、4に沿った方向である」とする。しかし、ラベルを卵パックに投入する際の投入ミスを軽減するため、卵パックに投入する直前にラベルを一旦保持する構成を採用することは技術常識である(甲6)。 送用ベルト3、4に沿った方向である」とする。しかし、ラベルを卵パックに投入する際の投入ミスを軽減するため、卵パックに投入する直前にラベルを一旦保持する構成を採用することは技術常識である(甲6)。そうすると、引用発明においては、ラベルLの後端部がプーリ7、10の位置に到達した際、上下ベルト3、4は駆動を止めてラベルLを一旦保持し、 その後、上下ベルト3、4が駆動を再開することで保持が解除され、これらの挟持から離脱するラベルLが、傾斜の下方延長方向(ラベルの短辺に沿った方向)に落下するといえる。したがって、本件審決の上記認定は誤りである。 (3) 以上によると、相違点2を実質的な相違点でないとした本件審決は誤りである。 3 効果についての検討の誤り本件審決は、本願発明の効果が格別顕著なものといえないとする。 しかし、本願発明に係るラベル投入装置は、立たせたラベルの下縁の長辺をラベル配置領域に沿わせ、ラベルを長辺に沿った方向に放出することにより、ラベルを安定的にラベル配置領域に投入することができ、また、ラベル配置領域においてラ ベルがバウンドした場合でも、ラベルを正しい位置に安定して配置させることがで - 6 -きるという格別顕著な効果を有している。 したがって、本願発明に格別顕著な効果がないとした本件審決は誤りである。 第4 被告の反論 1 相違点1について(1) 甲1及び甲2に記載された各発明は、いずれも共通の技術分野に属し、共通 の作用機能を有している。また、輸送ベルトやコンベアを備えた装置においてレイアウトを最適化することは、このような装置に内在する課題である上、甲2には、卵パックを短手方向又は長手方向に搬送するようにレイアウト変更できる旨が明示的に記載されている。これらのことからして、 レイアウトを最適化することは、このような装置に内在する課題である上、甲2には、卵パックを短手方向又は長手方向に搬送するようにレイアウト変更できる旨が明示的に記載されている。これらのことからして、引用発明に甲2に記載された技術的事項を組み合わせる動機付けがあるとした本件審決に誤りはない。 (2) 原告は、空気抵抗の影響を受けて挙動が不安定になり、ラベルの落下位置がずれやすい引用発明は、このような影響を受けない甲2発明とは前提が異なるからその構成を採用することはできず、採用した場合にはラベル配置領域にラベルを投入する機能が果たし得なくなると主張する。しかし、甲1には原告が主張するような趣旨の記載はなく、原告の上記主張は、甲1の記載に基づかない主張である。引 用発明は、ラベルを斜めにした状態で落下させ、ラベルに「ベルトの移動方向への速度を付与」することにより、所定箇所に確実に供給できるようにしたものであるから、原告が主張の前提とする、引用発明のラベル挿入装置が「空気抵抗の影響を受けて挙動が不安定になり、インパックラベルの落下位置がずれやすい」ということはなく、この前提は、甲1の記載と整合するものではない。 原告は、引用発明は、ラベルが落下していく傾斜の下方延長方向と、コンベアによる卵パックの搬送方向とが交わるようにすることで、「ラベルを斜めにした状態で落下させると、ラベルはその傾斜の下方延長方向に確実に落下する」という原理により発明の目的を達しており、卵パックの搬送方向をラベル配置領域に直行する方向からラベル配置領域に沿った方向に換えようとすることは、インパックラベルを 卵パックに投入するという機能を果たし得なくなり、また、その目的に反するとい - 7 -う阻害要因があると主張する。しかし、そもそもラ 方向に換えようとすることは、インパックラベルを 卵パックに投入するという機能を果たし得なくなり、また、その目的に反するとい - 7 -う阻害要因があると主張する。しかし、そもそもラベルの落下方向が「傾斜の下方延長方向」であるという前提が誤っている上、パックが輸送されるタイミングに合わせてラベルを投入することは、当該技術分野における技術常識であるから、パックの搬送方向を変更させた上で、タイミングに合わせてラベルを投入できるようにすることは、技術の具体化の際に当業者が通常採用し得る創作能力の発揮にすぎな い。 したがって、甲2記載の構成を適用することに阻害要因があるとする原告の主張には理由がない。 2 相違点2について(1) 甲1の記載によると、引用発明では、ラベルLが上下ベルト3、4の挟持か ら離脱する直前において、ラベルLにはベルトから「ベルトの移動方向」に対して速度が付与され、ラベルLの後端部分がプーリ7、10の位置を過ぎる際に、同速度で押し出されるようになる。したがって、相違点2を実質的な相違点でないとした本件審決に誤りはない。 (2) 原告は、本件審決が、引用発明につき、「ラベルLは、保持を解除された後も、 上ベルト3と接してベルトの駆動方向に押し出されるようになる」とした点について、ラベルLは、上下ベルト3、4の挟持が解除された後、再び上ベルト3に接することはないから誤りであると主張する。しかし、本件審決の上記認定は、ラベルLの後端部分がプーリ7、10の位置を過ぎる際(ラベルLの後端部分が上下ベルト3、4に挟持されると同時に、ラベルLの後端部分より先の部分は保持(挟持)が解 除されているが、上ベルト3に接する状態が存在する時点)に、ラベルLがベルトの駆動方向に搬送されていたときの速 ト3、4に挟持されると同時に、ラベルLの後端部分より先の部分は保持(挟持)が解 除されているが、上ベルト3に接する状態が存在する時点)に、ラベルLがベルトの駆動方向に搬送されていたときの速度で押し出されることを説明したにすぎず、ラベルLが再び上ベルト3に接するという趣旨を述べてはいない。 したがって、原告の主張には理由がない。 3 効果について 原告は、本願発明の効果を格別顕著なものと主張するが、甲1、甲2及び本願明 - 8 -細書の記載からすると、当業者が通常予測できる範囲のものにすぎない。 第5 当裁判所の判断 1 本願発明の概要本願明細書(甲3)及び手続補正書(甲4)の記載によると、本願発明の概要は、次のとおりと認められる(【】は本願明細書の段落番号を示す。)。 (1) 本願発明は、卵パックにラベルを投入するラベル投入装置に関する。(【0001】)(2) 従来のラベル投入装置では、卵パックの2列に並んだ卵の間に形成されたラベル配置領域に向けて、ガイド板により形成された通路を介してラベルを落として投入する。しかし、投入されるラベルが比較的薄くて小さい紙であることから、ガ イド板の状態やガイド板付近の環境の影響を大きく受け、所望の位置に所望の姿勢でラベルを投入できない問題が生じることがあった。この問題は、特に卵パックが長手方向に搬送される場合に多く生じる。(【0002】~【0005】)本願発明は、このような問題に着目し、請求項1(前記第2の2)に記載の構成を採用した。本願発明によると、卵パックのラベル配置領域に確実にラベルを投入可 能なラベル投入装置を提供できる。(【0006】~【0008】)(3) 本願発明の一実施形態として、卵パックPEの2列に並んだ卵Eの間に形成された クのラベル配置領域に確実にラベルを投入可 能なラベル投入装置を提供できる。(【0006】~【0008】)(3) 本願発明の一実施形態として、卵パックPEの2列に並んだ卵Eの間に形成されたラベル配置領域Rに向けてラベルLを一枚ずつ投入するものであって、搬送機構1、保持機構2、放出機構3及び複数のローラ5を備えたラベル投入装置10を説明する。保持機構2は、ラベルLaの基端部L4を挟んで、卵パックPEに投 入する直前のラベルLaをラベル配置領域Rに沿って立たせて保持する。放出機構3は、ラベル配置領域Rに沿って搬送される卵パックPEと同じ方向に、保持機構2で保持されたラベルLを放出する(ローラ5のうち、搬送路6の端部に位置するローラ5aは、搬送機構1、保持機構2の役割に加えて、ラベルLを解き放って卵パックPEへラベルLを渡す放出機構3としての役割を果たす。ローラ5aによっ て放出口7から放出されたラベルLaには、重力の他に、ラベル配置領域Rに沿っ - 9 -た方向への慣性力がはたらく。)。このようなものであれば、卵パックPEのラベル配置領域Rに確実にラベルLを投入できる。(【0012】、【0015】、【0028】、【0029】、【図1】) 2 本願発明と引用発明の一致点、相違点について (1) 引用発明甲1には、別紙記載1の発明(引用発明)が記載されていることが認められる。 (2) 本願発明と引用発明との対比本願発明と引用発明(別紙記載1)とを対比すると、一致点は別紙記載2、相違点は別紙記載3のとおりと認められる。 3 相違点1について(1) 相違点1相違点1は、次のとおりである(別紙記載3(1))。 「「卵パックの2列に並んだ卵の間に形成されたラベル配置領域に長方形状のラベル 認められる。 3 相違点1について(1) 相違点1相違点1は、次のとおりである(別紙記載3(1))。 「「卵パックの2列に並んだ卵の間に形成されたラベル配置領域に長方形状のラベルを一枚ずつ配置する装置」に関し、本願発明は、「卵パックの2列に並んだ卵の 間に形成されたラベル配置領域に沿って搬送される卵パックに長方形状のラベルを一枚ずつ投入するラベル投入装置」であるのに対し、引用発明は「コンベア11上のパック5は、パック5の卵収容部の短手方向に沿って搬送され」、「ラベルL」を - 10 -「ラベル輸送用ベルト3、4の挟持から離脱してコンベア11に対し斜め前方に落下し、パック5の2列に並んだ卵の間の領域に確実に供給」する「ラベル挿入装置」である点。」(2) 検討ア本件出願日前に日本国内で頒布された刊行物である甲2には、次の技術的事 項が記載されていることが認められる。 「ラベル投入装置は、ラベル収容部Aと、ラベル供給部Bと、ラベル投入部Cとを有し、ラベル投入部Cは、取り出しローラ39により取り出された1枚のラベルLを一時的に収容しておく空間及びラベルをパックPに投入する投入通路が形成されており、立たせたラベルの下縁の長辺をパックPの鶏卵Eと鶏卵Eの間の空間に 沿わせ、パックPの鶏卵Eと鶏卵Eの間の空間に長方形状のラベルを一枚ずつ立たせて下方向へ投入し、パックPは、パックPの卵収容部の短手方向、あるいは、長手方向に沿って搬送される、ラベル投入装置。」また、甲2には、パックPの搬送方向に関し、「図8は、ラベル投入装置の配置構成例を示す図である。図6の例では、パックPは図の右から左へと搬送されている が、図8の例では、図6の紙面に直交する方向に対応する方向に搬送されている。」(段落【0 は、ラベル投入装置の配置構成例を示す図である。図6の例では、パックPは図の右から左へと搬送されている が、図8の例では、図6の紙面に直交する方向に対応する方向に搬送されている。」(段落【0039】)、「ラベル投入装置に対して包装容器が搬送されてくる方向については、特定の方向に限定されるものではない。」(段落【0042】)との記載がある。 イ引用発明は、コンベアによりパックを搬送し、これに順次ラベルを投入して いく装置に係る発明であるところ、このような装置において、コンベアや関連する装置の配置を最適化することは、当業者において自明の課題といえる。そして、引用発明が記載されている甲1と、甲2は、いずれも、ラベルを配置する装置という共通の技術分野に属し、搬送される卵パックの2列に並んだ卵の間に形成された領域に長方形のラベルを長辺を下縁にして配置するという共通の作用機能を有する。 加えて、甲2には、上記アのとおり、パックの搬送方向について、卵収容部の短手方 - 11 -向に沿うものであっても長手方向に沿うものであっても良い旨が明記されている。 そうすると、引用発明及び甲2に接した当業者において、引用発明における卵パックの搬送方向(卵収容部の短手方向に沿った方向)につき、甲2に記載された構成を適用し、相違点1に係る本願発明の構成(ラベル配置領域に沿った方向)とすることには、動機付けがあったといえ、容易に想到し得たものと認められる。 ウ以上によると、当業者が相違点1に係る構成を備えるようにすることを容易になし得たとする本件審決に誤りはない。 (3) 原告の主張について原告は、甲1には卵パックの搬送方向を変更することにつき、記載も示唆もないと主張する。しかし、上記(2)イのとおり、引用発明に係る装置におい する本件審決に誤りはない。 (3) 原告の主張について原告は、甲1には卵パックの搬送方向を変更することにつき、記載も示唆もないと主張する。しかし、上記(2)イのとおり、引用発明に係る装置において、コンベア や関連する装置の配置を最適化することは、当業者において自明の課題といえるところ、同一の技術分野及び作用機能に係る甲2には、パックの搬送方向を変更できる旨が明記されているから、引用発明及び甲2に接した当業者が、引用発明における卵パックの搬送方向につき、甲2に記載された構成を適用する動機付けが認められる。原告の主張は採用することができない。 原告は、引用発明ではラベルが空気抵抗の影響を受けて挙動が不安定になり落下位置がずれやすいのに対し、甲2発明ではラベルが空気抵抗の影響をほとんど受けないとして、前提の異なる甲2記載の構成を引用発明に採用することはできないと主張する。しかし、甲1には、従来の装置の課題として「ラベルを水平方向にしたまま落下させるとラベルは空気抵抗でどこに落下するか予測できない」(明細書2頁1 3~15行目)ことを挙げ、引用発明は「ラベルを水平方向にしたまま落下させないで、ラベルを斜めにした状態で落下させると、ラベルはその傾斜の下方延長方向に確実に落下すると云う原理に基(づ)いている」(同3頁1~4行目)として課題を解決する旨が記載されている。甲1の記載を総合しても、このようにして課題を解決することとした引用発明において、それにもかかわらず、ラベルが空気抵抗の 影響を受けて挙動が不安定になり、ラベルの落下位置がずれやすいと認められるも - 12 -のではなく、少なくとも、引用発明における卵パックの搬送方向を変更することに阻害要因があるとは認められない。原告の主張は採用することができな 落下位置がずれやすいと認められるも - 12 -のではなく、少なくとも、引用発明における卵パックの搬送方向を変更することに阻害要因があるとは認められない。原告の主張は採用することができない。 原告は、引用発明では、ラベルが落下していく傾斜の下方延長方向と、コンベアによる卵パックの搬送方向とが交わるようにすることで、発明の目的を達成しているところ、卵パックの搬送方向を変更することはその目的に反することになり、阻 害要因があると主張する。しかし、甲1には、ラベルが落下していく方向と卵パックの搬送方向とが交わるようにすることにより発明の目的を達成している旨の記載はないし、甲1の記載を総合しても、卵パックの搬送方向が変更された場合に、引用発明の目的が達成されないと認めることはできない。また、パックが輸送されるタイミングに合わせてラベルを投入することは、当該技術分野における技術常識と いえ、パックの搬送方向を変更させた上で、タイミングに合わせてラベルを投入できるようにすることは、当業者が通常採用し得る事項といえる。引用発明における卵パックの搬送方向を変更することに阻害要因があるとはいえない。 原告の主張は採用することができない。 4 相違点2について (1) 相違点2相違点2は、次のとおりである(別紙記載3(2))。 「「立たせたラベルの下縁の長辺をラベル配置領域に沿わせ、ラベルを送り出す機構」に関し、本願発明は、「立たせたラベルの下縁の長辺を前記ラベル配置領域に沿わせ、前記ラベルを長辺に沿った方向へ放出する放出機構を備え」るものであるの に対し、引用発明は、「上ベルト3はプーリ6とプーリ8の間に張られ、プーリ6とプーリ8の間にプーリ7が配置され、下ベルト4はプーリ9とプーリ10の間に張られており、プー 備え」るものであるの に対し、引用発明は、「上ベルト3はプーリ6とプーリ8の間に張られ、プーリ6とプーリ8の間にプーリ7が配置され、下ベルト4はプーリ9とプーリ10の間に張られており、プーリ7とプーリ8との間のベルトの下方には、下ベルト4が存在せず、プーリ6、9の場所では上下のプーリは正しく垂直方向上下に配置されているが、プーリ7、10の場所ではプーリ10がプーリ9の位置に対する正規の位置に 比べてプーリ自身の幅よりやや大き目に右方向に、距離d1だけずれており、更に - 13 -やや上方に、距離d2だけ移動した位置にあり、このためベルト4はややねじれてプーリ6、9の位置では上下ベルトが正しく接していたのが、プーリ7、10の位置では下のベルト4が上のベルト3からずれて3よりやや上方に来るので、ラベルLはプーリ6、9の位置では水平に挟まれて移動させられるが、プーリ7、10の位置に近づくにつれて斜めに傾き、ラベル輸送用ベルト3、4の挟持から離脱して コンベア11に対し斜め前方に落下し、パック5の2列に並んだ卵の間の領域に確実に供給され、ラベルLの長辺が下となるように、コンベア11で搬送されるパック5に配置される」点。」(2) 検討ア引用発明の上記相違点2に係る構成のほか、甲1の「第2図」、「第4図」を含 めた記載によると、ラベルLは、上下ベルト3、4の運動によって、ラベルカードリッジ1からパック5の方向へ輸送されていく。そして、ラベルLは、当初(プーリ6、9付近)は、上下ベルト3、4に水平に挟まれているが、上下ベルト3、4の挟持を離脱してパック5に供給される直前(プーリ7、10付近)では、プーリ10が右方向にずれているために、ラベルLの長辺を下にするように斜めに傾くようにな る。この状態で、ラ 下ベルト3、4の挟持を離脱してパック5に供給される直前(プーリ7、10付近)では、プーリ10が右方向にずれているために、ラベルLの長辺を下にするように斜めに傾くようにな る。この状態で、ラベルLの全部が上下ベルト3、4の挟持から離脱すると、ラベルLは、上下ベルト3、4の運動速度で同運動方向に押し出されるとともに、ラベルLの重力により、その傾斜の下方延長方向に落下して、パック5内に充填された卵の間の領域に供給されることとなる。 - 14 - そうすると、引用発明において、ラベルLは、その重力により、ラベルLの短辺に沿った方向に落下するのみならず、上下ベルト3、4の運動を受けて、ラベルLの長辺に沿った方向に押し出されているものと認められる。 したがって、引用発明が備えるラベルを送り出す機構は、「立たせたラベルの下縁 の長辺を前記ラベル配置領域に沿わせ、前記ラベルを長辺に沿った方向へ放出する」ものといえるから、相違点2は、実質的な相違点ではない。 イ以上によると、相違点2は実質的な相違点ではないとする本件審決に誤りはない。 (3) 原告の主張について 原告は、本件審決が引用発明につき、「ラベルLは、保持を解除された後も、上ベルト3と接してベルトの駆動方向に押し出されるようになる」とした点につき、ラベルLは、上下ベルト3、4の挟持が解除された後、再び上ベルト3に接することはないから、本件審決の認定は誤りであると主張する。しかし、本件審決の上記認定部分は、ラベルLが上ベルト3との接触を離れた後に再び上ベルト3に接触する 旨をいうものとは解されない。引用発明において、ラベルLは、上下ベルト3、4の運動によって輸送されていくから、その前端部分から後端部分にかけて、徐々に上下ベルト3、4の挟持から離脱 接触する 旨をいうものとは解されない。引用発明において、ラベルLは、上下ベルト3、4の運動によって輸送されていくから、その前端部分から後端部分にかけて、徐々に上下ベルト3、4の挟持から離脱していくこととなるが、その間も、少なくとも後端部分は上ベルト3に接してその運動により駆動方向に押し出されていく。本件審決 - 15 -の上記認定部分は、これと同旨をいうものと理解できる。原告の主張は採用することができない。 原告は、卵パックにラベルを投入する直前にラベルを一旦保持する構成は技術常識であるから、引用発明においても、ラベルLの後端部がプーリ7、10の位置に到達した際、上下ベルト3、4は駆動を止めてラベルLを一旦保持し、その後、上下 ベルト3、4が駆動を再開することで保持が解除され、ラベルLは、傾斜の下方延長方向(ラベルの短辺に沿った方向)に落下すると主張する。しかし、仮に引用発明において上下ベルト3、4が駆動を止めてラベルLを保持し、その後駆動を再開してラベルLの保持を解除するとしても、上下ベルト3、4の駆動の再開により、ラベルLには上下ベルト3、4の駆動による同駆動方向への駆動力が働くのであるか ら、ラベルLがその長辺に沿った方向に押し出されることは否定できない。原告の主張は採用することができない。 5 効果について本願明細書の記載その他を考慮しても、本願発明の構成を採用することにより、当業者が予測し得ない顕著な効果を奏するということはできないから、同旨をいう 本件審決に誤りはない。 原告は、本願発明に係るラベル投入装置により、ラベルを安定的にラベル配置領域に投入することができること、ラベル配置領域においてラベルがバウンドした場合でも正しい位置に安定して配置させることができること等の効果を主張する るラベル投入装置により、ラベルを安定的にラベル配置領域に投入することができること、ラベル配置領域においてラベルがバウンドした場合でも正しい位置に安定して配置させることができること等の効果を主張する。しかし、これらの効果は、本願明細書に記載されたものではない上に、本願発明は、ラ ベルの落下方向と卵パックの搬送方向が同じである状況において、ラベル配置領域に沿った方向への慣性力を働かせる態様でラベルを送り出すというものであるところ、このような効果は、前記4(2)アのとおりの引用発明の構成(卵パックへラベルを配置する装置のラベルを送り出す機構において、ラベルは、その重力により、ラベルの短辺に沿った方向に落下するのみならず、上下ベルトの運動を受けて、ラベ ルの長辺に沿った方向に押し出され、卵パック内の配置領域に供給される。)に、前 - 16 -記3(2)アのとおりの甲2に記載された技術的事項(卵パックへラベルを配置する装置において、卵パックは、パックの卵収容部の短手方向又は長手方向のいずれに搬送されてもよい。)を適用することによって予測できる効果ということができ、いずれも当業者が予測し得ない顕著な効果とは認められない。原告の主張は採用することができない。 6 結論以上の次第であるから、本願発明は、本件出願日当時、当業者が引用発明に基づいて容易に発明することができたものであると認められる。したがって、拒絶査定不服審判請求を成り立たないとした本件審決に誤りはない。 よって、原告の請求を棄却することとして、主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第1部 裁判長裁判官本多知成 。 知的財産高等裁判所第1部 裁判長裁判官本多知成 裁判官遠山敦士 - 17 - 裁判官天野研司 - 18 -(別紙) 1 引用発明コンベア11上のパック5は、パック5の卵収容部の短手方向に沿って搬送され、上、下のラベル輸送用ベルト3、4は、水平に対して傾斜した状態で長方形状のラベルLを保持し、かつその状態でラベルLの保持を解除するものであり、ラベルLを挾むように互に接しており、上ベルト3はプーリ6とプーリ8の間に張られ、プーリ6とプーリ8の間にプーリ7が配置され、下ベルト4はプーリ9とプーリ10の間に張られており、プーリ7とプーリ8との間のベルトの下方には、下ベルト4が存在せず、プーリ6、9の場所では上下のプーリは正しく垂直方向上下に配置されているが、プーリ7、10の場所ではプーリ10がプーリ9の位置に対する正規の位置に比べてプーリ自身の幅よりやや大き目に右方向に、距離d1だけずれており、更にやや上方に、距離d2だけ移動した位置にあり、このためベルト4はややねじれてプーリ6、9の位置では上下ベルトが正しく接していたのが、プーリ7、10の位置では下のベルト4が上のベルト3からずれて3よりやや上方に来るので、ラベルLはプーリ6、9の位置では水平に挟まれて移動させられるが、プーリ7、10の位置に近づくにつれて斜めに傾き、ラベル輸送用ベルト3、4の挟持から離脱してコンベア11に対し斜め前方に落下 来るので、ラベルLはプーリ6、9の位置では水平に挟まれて移動させられるが、プーリ7、10の位置に近づくにつれて斜めに傾き、ラベル輸送用ベルト3、4の挟持から離脱してコンベア11に対し斜め前方に落下し、パック5の2列に並んだ卵の間の領域に確実に供給され、ラベルLの長辺が下となるように、コンベア11で搬送されるパック5に配置される、ラベル挿入装置。 2 本願発明と引用発明の一致点「卵パックの2列に並んだ卵の間に形成されたラベル配置領域に長方形状のラベルを一枚ずつ配置する装置であって、立たせたラベルの下縁の長辺をラベル配置領域に沿わせ、ラベルを送り出す機構を備えたラベルを一枚ずつ配置する装置」である点。 3 本願発明と引用発明の相違点(1) 相違点1「卵パックの2列に並んだ卵の間に形成されたラベル配置領域に長方形状のラベルを一枚ずつ配置する装置」に関し、本願発明は、「卵パックの2列に並んだ卵の間に形成されたラベル配置領域に沿って搬送される卵パックに長方形状のラベルを一枚ずつ投入するラベル投入装置」であるのに対し、引用発明は「コンベア11上のパック5は、パック5の卵収容部の短手方向に沿って搬送され」、「ラベルL」を「ラベル輸送用ベルト3、4の挟持から離脱してコンベア11に対し斜め前方に落下し、パック5の2列に並んだ卵の間の領域に確実に供給」する「ラベル挿入装置」である点。 (2) 相違点2「立たせたラベルの下縁の長辺をラベル配置領域に沿わせ、ラベルを送り出す機構」に関し、本願発明は、「立たせたラベルの下縁の長辺を前記ラベル配置領域に沿わせ、前記ラベルを長辺に沿った方向へ放出する放出機構を備え」る - 19 -ものであるのに対し、引用発明は、「上ベルト3はプーリ6とプーリ8の間に張られ、プーリ6とプーリ8 配置領域に沿わせ、前記ラベルを長辺に沿った方向へ放出する放出機構を備え」る - 19 -ものであるのに対し、引用発明は、「上ベルト3はプーリ6とプーリ8の間に張られ、プーリ6とプーリ8の間にプーリ7が配置され、下ベルト4はプーリ9とプーリ10の間に張られており、プーリ7とプーリ8との間のベルトの下方には、下ベルト4が存在せず、プーリ6、9の場所では上下のプーリは正しく垂直方向上下に配置されているが、プーリ7、10の場所ではプーリ10がプーリ9の位置に対する正規の位置に比べてプーリ自身の幅よりやや大き目に右方向に、距離d1だけずれており、更にやや上方に、距離d2だけ移動した位置にあり、このためベルト4はややねじれてプーリ6、9の位置では上下ベルトが正しく接していたのが、プーリ7、10の位置では下のベルト4が上のベルト3からずれて3よりやや上方に来るので、ラベルLはプーリ6、9の位置では水平に挟まれて移動させられるが、プーリ7、10の位置に近づくにつれて斜めに傾き、ラベル輸送用ベルト3、4の挟持から離脱してコンベア11に対し斜め前方に落下し、パック5の2列に並んだ卵の間の領域に確実に供給され、ラベルLの長辺が下となるように、コンベア11で搬送されるパック5に配置される」点。 4 引用文献2に記載された技術的事項ラベル投入装置は、ラベル収容部Aと、ラベル供給部Bと、ラベル投入部Cとを有し、ラベル投入部Cは、取り出しローラ39により取り出された1枚のラベルLを一時的に収容しておく空間及びラベルをパックPに投入する投入通路が形成されており、立たせたラベルの下縁の長辺をパックPの鶏卵Eと鶏卵Eの間の空間に沿わせ、パックPの鶏卵Eと鶏卵Eの間の空間に長方形状のラベルを一枚ずつ立たせて下方向へ投入し、パックPは、パックPの卵収容 れており、立たせたラベルの下縁の長辺をパックPの鶏卵Eと鶏卵Eの間の空間に沿わせ、パックPの鶏卵Eと鶏卵Eの間の空間に長方形状のラベルを一枚ずつ立たせて下方向へ投入し、パックPは、パックPの卵収容部の短手方向、あるいは、長手方向に沿って搬送される、ラベル投入装置。 以上

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