平成20(行ヒ)348 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
平成23年1月14日 最高裁判所第二小法廷 判決 破棄自判 大阪高等裁判所 平成19(行コ)26
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判決文本文4,798 文字)

- 1 - 主文 原判決中上告人敗訴部分を破棄する。 前項の部分につき,被上告人の控訴を棄却する。 控訴費用及び上告費用は被上告人の負担とする。 理由 上告代理人川崎祥記の上告受理申立て理由(第6を除く。)について 本件は,斑鳩町(以下「町」という。)の特定の区域内に居住する住民を会員とする上告補助参加人A自治会(以下「参加人自治会」という。)が土地を取得して地域集会所を建設するに当たり,町が,その助成のため,上記区域内にマンションを建設した会社から寄附金を受けるとともに,土地開発公社に土地を先行取得させ,その土地の一部を上記寄附金と同額の代金で同公社から買い受けた上で,これにより公有地となった当該土地を参加人自治会に無償で譲渡し,さらに,参加人自治会が残余の土地を同公社から取得する等のために補助金を交付したことについて,町の住民である被上告人が,参加人自治会に対する上記公有地の無償譲渡及び補助金の交付は,補助金の限度額を定めた町の要綱に違反する違法な財務会計行為であるなどとして,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,上告人に対し,上記各行為をした当時の町長に対して損害賠償の請求をすることなどを求めている事案である。 原審の適法に確定した事実関係の概要は,次のとおりである。 (1)Bは,昭和60年11月から現在に至るまで,町長の職にある者である。 (2)参加人自治会は,かつては会員数の少ない自治会であったが,株式会社C(以下「C社」という。)がその区域内にマンションを建設したことから,会員数- 2 -が急増した。C社は,上記マンションの建設に際し,施設協力金として町に金員を寄附し,町はこれを公共施設等の整備のための基金に 」という。)がその区域内にマンションを建設したことから,会員数- 2 -が急増した。C社は,上記マンションの建設に際し,施設協力金として町に金員を寄附し,町はこれを公共施設等の整備のための基金に繰り入れていた。 (3)参加人自治会は,平成10年4月ころ,C社による4棟目のマンションの建設に際して,町に対し,C社からの施設協力金を使用して地域集会所の建設及びその用地の取得に協力してもらいたい旨の要望をした。町は,C社に対し,施設協力金の代わりに地域集会所のための土地を確保して町に提供するよう依頼したが,C社は,自ら土地を取得することが困難であったため,町が土地を購入して地元に還元することを前提に,町に対して施設協力金1440万円(以下「本件施設協力金」という。)の寄附をすることとした。これを受けて,町と参加人自治会は,協議の結果,地域集会所の用地のうち本件施設協力金の金額に相当する部分の土地は町が購入して参加人自治会に無償で譲渡し,残余の土地は参加人自治会が自ら購入することとした。さらに,町では,当時施行されていた補助金交付規程による補助金の額の制限を緩和するため,平成11年4月,斑鳩町地域集会所施設整備費補助金交付要綱(以下「本件要綱」という。)を新たに制定し,地域集会所用地の購入に係る補助金の額は購入価格の2分の1以内の額で1500万円を限度とすることなどを定めた。 (4)町では,C社から本件施設協力金の寄附を受け,平成11年度の一般会計予算において,これを都市計画費寄附金として歳入予算に,同額を公有財産購入費として歳出予算にそれぞれ計上し,平成11年6月2日の町議会でこれを可決した。町は,同月7日付けで,斑鳩町土地開発公社(以下「公社」という。)に対し,都市計画道路事業のための代替用地の取得と併せて地域集会所建設用地も取得す 上し,平成11年6月2日の町議会でこれを可決した。町は,同月7日付けで,斑鳩町土地開発公社(以下「公社」という。)に対し,都市計画道路事業のための代替用地の取得と併せて地域集会所建設用地も取得するよう依頼したが,公社への依頼書等の関係書類には,その依頼の目的に地域集- 3 -会所建設用地の取得も含まれる旨の記載はなかった。公社は,同年7月26日,第1審判決別紙物件目録記載の3筆の土地を含む1690㎡の土地を取得し,町は,平成12年3月28日,公社から,同目録記載2及び3の各土地(合計247.95㎡。以下「本件土地」という。)を代金1440万円で買い受けた。 (5)参加人自治会は,平成15年7月30日,上告人から地方自治法260条の2第1項の地縁による団体の認可を受け,同年8月26日,上告人に対し,町の普通財産である本件土地の譲与(無償譲渡)を申請した。上告人は,同申請に係る本件土地の無償譲渡につき,同法237条2項,96条1項6号所定の議会の議決を求めるため,町議会において上記申請に至る経緯について説明し,町議会は,同年9月25日,上記無償譲渡を承認する旨の議決をした。上告人は,同月26日,町を代表して,参加人自治会との間で,本件土地を参加人自治会に無償で譲渡する旨の契約を締結した(以下,この契約による本件土地の無償譲渡を「本件無償譲渡」という。)。 (6)参加人自治会は,平成15年9月26日,公社から,第1審判決別紙物件目録記載1の土地(107.59㎡)を代金782万6615円で買い受け,同年12月25日,町から,上記土地の購入に係る補助金として391万3000円の交付を受けた(以下,この補助金の交付を「本件補助金交付」という。)。 原審は,上記事実関係の下において,次のとおり判断し,本件無償譲渡及び本件補助金交付は違法であ 助金として391万3000円の交付を受けた(以下,この補助金の交付を「本件補助金交付」という。)。 原審は,上記事実関係の下において,次のとおり判断し,本件無償譲渡及び本件補助金交付は違法であるとして,被上告人の請求のうち,Bに対して損害賠償請求をするよう求める部分の一部を認容すべきものとした。 (1)普通地方公共団体がその所有する土地を他に無償譲渡することは,地方自治法232条の2にいう「寄附又は補助」に該当するところ,本件要綱は,同条に- 4 -いう「公益上必要がある場合」との要件に関する町長の裁量基準を定めたものであり,その規定は本件無償譲渡にも適用される。本件無償譲渡時の本件土地の価格に本件補助金交付に係る補助金の額を加えた金額は1831万3000円以上となり,これは本件要綱の定める補助金の限度額を超えるものであるから,本件無償譲渡及び本件補助金交付は,本件要綱に反して同条の要件に関する町長の裁量権の範囲を逸脱した違法な行為である。 (2)参加人自治会に地域集会所の建設用地を取得させるため,公社に土地を先行取得させ,町がその一部を買い受けて参加人自治会に無償譲渡したという一連の手続は,公有地の拡大の推進に関する法律(以下「公有地拡大法」という。)の趣旨に反し,また,町が上記土地の取得に関して公社との間で実体と相違する内容の書類を作成して手続を進めたことは,財務会計法規に反するから,本件無償譲渡及び本件補助金交付は,手続的にも違法である。 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。 (1)地方自治法232条の2にいう「寄附又は補助」には,普通地方公共団体の所有する普通財産の譲与(無償譲渡)も含まれると解されるところ,前記事実関係によれば,本件無償譲渡は,C社によるマンションの 1)地方自治法232条の2にいう「寄附又は補助」には,普通地方公共団体の所有する普通財産の譲与(無償譲渡)も含まれると解されるところ,前記事実関係によれば,本件無償譲渡は,C社によるマンションの建設に伴い会員数の急増した参加人自治会が地域住民等の共同の利用に供される地域集会所を建設することを助成するために行われたものであり,その目的には一定の公共性,公益性が認められる。また,本件施設協力金は,上記のとおりマンションの建設により参加人自治会の会員数の急増をもたらしたC社が,上記地域集会所の建設用地を町が購入して参加人自治会に提供するための資金として町に寄附したものといえるから,町が本- 5 -件施設協力金をこの趣旨に沿って上記用地の購入資金に充て,これにより取得した本件土地を参加人自治会に無償で譲渡することには合理性が認められ,このことによって参加人自治会を他の自治会等との関係で不当に優遇することになるものではない。さらに,上記の一連の経緯からすれば,本件土地は実質的にはC社から参加人自治会に対して寄附されたものとみることができるから,本件無償譲渡によって町の財産が実質的に減少したとはいえず,また,町が参加人自治会に対して実質的に本件要綱の定める限度額を超えて補助金を交付したものと評価することもできない。そして,町議会において,上記の一連の経緯及びその説明を踏まえて本件無償譲渡を承認する旨の議決がされているというのである。以上の諸事情に照らすと,本件無償譲渡につき地方自治法232条の2所定の公益上の必要があるとしたBの判断は,その裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用したものであるということはできないから,本件無償譲渡は,同条に違反して違法なものであるということはできない。 また,上記の諸事情に照らすと,本件補助金交付につき同条所定の 囲を逸脱し,又はこれを濫用したものであるということはできないから,本件無償譲渡は,同条に違反して違法なものであるということはできない。 また,上記の諸事情に照らすと,本件補助金交付につき同条所定の公益上の必要があるとして,本件要綱に従いその定める限度額の範囲内でこれを行うこととしたBの判断も,その裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用したものであるということはできないから,本件補助金交付も,同条に違反して違法なものであるということはできない。 (2)公有地拡大法17条1項1号ロは,道路,公園,緑地その他の公共施設又は公用施設の用に供する土地の取得,造成その他の管理及び処分を行うことを土地開発公社の業務と定めており,自治会の地域集会所は上記「公共施設」に当たると解されるから,土地開発公社がその用に供するための土地を取得して地方公共団体- 6 -や自治会に譲渡することは,公有地拡大法の規定及び趣旨に反するものではない。 また,前記事実関係のとおり,町議会において,本件の一連の経緯及びその説明を踏まえて本件無償譲渡を承認する旨の議決がされていることなどからすると,町の公社に対する土地取得の依頼目的についての書類上の不備は,土地取得の目的を殊更に秘匿するなどの意図に出たものとは断じ得ず,これをもって本件無償譲渡及び本件補助金交付が手続的に違法とされるほどの瑕疵であるということはできない。 以上と異なる原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり,原判決中上告人敗訴部分は破棄を免れない。そして,本件無償譲渡及び本件補助金交付に違法はないとした第1審の判断は正当として是認することができ,上記破棄部分に関する被上告人の請求は理由がないから,これを棄却した第1審判決は正当であり,同部分に関する被上告人の控訴を棄 件補助金交付に違法はないとした第1審の判断は正当として是認することができ,上記破棄部分に関する被上告人の請求は理由がないから,これを棄却した第1審判決は正当であり,同部分に関する被上告人の控訴を棄却すべきである。 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。 ( 裁判長裁判官竹内行夫裁判官古田佑紀裁判官須藤正彦裁判官千葉勝美)

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