平成15(ワ)14133 株主総会決議取消請求

裁判年月日・裁判所
平成16年5月13日 東京地方裁判所
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判決文本文44,473 文字)

H16.5.13東京地方裁判所平成15年(ワ)第14133号株主総会決議取消請求事件 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告の平成15年5月22日開催の第55回定時株主総会における別紙総会決議目録記載1ないし4の各決議をいずれも取り消す。 第2 事案の概要本件は,原告が,被告に対し,請求の趣旨記載の被告の株主総会(以下「本件株主総会」という。)においてなされた別紙総会決議目録記載の1ないし4の各決議(以下「本件各決議」という。)について,同株主総会においては,被告の取締役及び監査役には説明義務(商法237条の3)違反があったとして,上記各決議の方法についての法令違反の瑕疵を理由に,上記各決議の取消しを求めた事案である。 1 前提となる事実以下の事実は,当事者間に争いがないか,各証拠(後掲)及び弁論の全趣旨により,認められる。 (1) 当事者ア原告原告は,内外の有価証券等に関する投資顧問,情報提供サービス等を業とする株式会社であり,被告の株式1000株を保有する株主であるとともに,被告の筆頭株主であるエスエヌエフイーマックジャパンアクティブシェアホルダーファンドエルピー(被告株式899万1000株保有,議決権比率9.65パーセント)及び被告の第5位の株主であるMAC2000投資事業組合(被告株式387万7000株保有,議決権比率4.16パーセント)との間で締結した投資一任契約に基づく運用者でもある。(甲1号証,乙8号証,弁論の全趣旨)イ被告被告は,資本金267億3477万4430円,発行済株式総数1億0250万7668株,株主総数4637人の既製服製造販売等を業とする株式会社である。 被告における平成15年2月期の売上高は47 被告は,資本金267億3477万4430円,発行済株式総数1億0250万7668株,株主総数4637人の既製服製造販売等を業とする株式会社である。 被告における平成15年2月期の売上高は471億0300万円,同期の経常利益は37億1600万円,同期の当期利益は19億6200万円,同期の総資産は1567億2200万円,同期の純資産は1423億9500万円であり,同期の総資産の内,有価証券保有額は298億7400万円,投資有価証券保有額は381億2400万円であった。(甲1号証)(2) 本件株主総会の各決議被告は,平成15年5月22日,被告本店(東京都千代田区a町b丁目c番地d)において,本件株主総会を開催し,本件各決議をした。 すなわち,①A外7名を被告の取締役に選任(一部重任)する旨の議案(第4号議案),②Bを被告の監査役に選任する旨の議案(第5号議案),③退任取締役ら5名に対する退職慰労金を贈呈する旨の議案(第6号議案)及び④退任監査役に対する退職慰労金を贈呈する旨の議案(第7号議案)について,これを承認する内容の本件各決議が行われた。 なお,本件株主総会において,第1号議案(第55期利益処分案承認の件),第2号議案(被告が自社普通株式1000万株,取得価額の総額110億円を限度として取得することを内容とする自己株式取得の件)及び同議案の対案としてなされた原告を含む被告の株主ら提案による第8号議案(被告が自社普通株式2000万株,取得価額の総額300億円を限度として取得することを内容とする自己株式取得の件)並びに第3号議案(単元未満株式の買増制度等の変更,特別決議の定足数の緩和に伴う変更,取締役の員数に関する変更及び社外取締役との間の責任限定契約に伴う変更に係る定款一部変更の件)についても採決が行われ,第1号議案 (単元未満株式の買増制度等の変更,特別決議の定足数の緩和に伴う変更,取締役の員数に関する変更及び社外取締役との間の責任限定契約に伴う変更に係る定款一部変更の件)についても採決が行われ,第1号議案ないし第3号議案については承認する旨の各決議がなされ,他方,第8号議案は第2号議案の承認決議により否決された。(甲1号証,同2号証,同4号証,同5号証)(3) 総会検査役の選任原告は,本件株主総会に先だって,東京地方裁判所に対し,商法237条の2に基づき,総会検査役選任の申立てを行い,同裁判所は,平成15年4月21日,D弁護士を総会検査役に選任した。(甲3号証)(4) 原告による被告に対する事前質問状の送付原告は,被告に対し,平成15年5月19日付けで,事前質問状を送付した。その一部として,次のとおり原告からの質問が記載されていた。 まず,被告の有価証券投資について,①平成15年2月期における被告の総資産の内,有価証券保有割合が総資産の43パーセント(有価証券約299億円,投資有価証券約381億円)に達することを指摘した上での,その投資の理由,②同期における有価証券評価損(営業外30億円及びその他有価証券評価損約72億円)の計上と特別損失2億円の計上について指摘し,その損失に係る責任についての被告の考えや1銘柄当たり1億円以上の評価損を計上した有価証券の具体的特定,③被告における有価証券投資に係る全体のポートフォリオ(資産の組合せ)の内容やそれぞれについての取得及び売却判断の基準並びに投資判断を含む資産運用に係る社内規程等の有無,制定時期やその内容に加えて,改定の時期や内容等に関する質問がされていた。 次に,被告の経営体制について,①被告代表取締役社長Aの在任期間が24年間に亘ることや現在の被告取締役会の構成員ではA社長に対 期やその内容に加えて,改定の時期や内容等に関する質問がされていた。 次に,被告の経営体制について,①被告代表取締役社長Aの在任期間が24年間に亘ることや現在の被告取締役会の構成員ではA社長に対する意見をいえないと思われること等を指摘した上での取締役会による社長の職務執行の監視機能についての被告の考え,②A社長による事実上のワンマン体制をとっていることを指摘し,現状のような取締役会の構成となった理由,③A社長の後継体制についての前回の株主総会以降における被告取締役会の審議の内容及び現時点における決定事項等に関する質問がされていた。(乙4号証)(5) 本件株主総会における審議及び採決の状況ア本件株主総会の概要等本件株主総会は,平成15年5月22日に開催され,同日の開始時間は,午前10時5分であり,閉会時間は午後1時15分であった。 本件株主総会においては,議決権を有する被告株主の総数は3745名,議決権の総数は9万3159個であり,そのうち同総会における当日の出席株主は190名,委任状を含めた当日の議決権の総数は8万5813個であり,同総会成立のための定足数は充足されていた。 なお,原告は,他の株主から議決権行使の委任を受けており,このうち,被告が有効と判断した議決権の個数は1万7155個であった。(甲5号証,同6号証,乙1号証,同3号証,同16号証,弁論の全趣旨)イ被告専務取締役のCによる事前質問状に対する一括回答被告専務取締役のC(以下「被告の専務」という。)は,原告の事前質問状に対し,以下のとおり,一括して回答を行った。なお,被告の専務による全体の回答時間は,約13分であった。 その一括回答の中で,多大な有価証券投資を行っているとの指摘について,被告の有価証券投資は,将来の事業戦略及び設備投資などへの資 った。なお,被告の専務による全体の回答時間は,約13分であった。 その一括回答の中で,多大な有価証券投資を行っているとの指摘について,被告の有価証券投資は,将来の事業戦略及び設備投資などへの資金として,資産の一部を有価証券として保有していること,有価証券に係る損失については今後チェック体制を一層充実させるほか,会社の業績向上に注力することを回答し,さらに資金運用について,利回りと安全性とのバランスを基準として運用しており,社外に複数のアドバイザーを置き,社内の複数の担当者によるチェック体制の下での稟申するルールを採用し,一定金額を超える投資案件について取締役会の決議事項としたことを回答した。 また,被告の専務は,経営体制について,後継者に関して社外取締役も交えて意見交換を行い,その育成に努めていると回答した。(甲6号証,乙1号証,同3号証,同16号証)ウ第4号議案以前の審議及び採決に至るまでの経過(ア) 第1号議案の審議及び採決の経過本件株主総会の議長である被告代表取締役社長A(以下「被告の議長」ともいう。)は,被告の専務による一括回答の後,株主による質問を受け付ける旨述べて,5名の株主から質問が行われ,被告の議長がこれに対して説明を行った(所要時間約30分)。 なお,その際,被告の議長は,被告の保有する有価証券約800億円に係る損失の有無,額等を明らかにしてほしいとの株主の質問に対し,流動資産項目の有価証券(売買を目的として保有)の含み損が30億円であり,固定資産項目の投資有価証券の含み損が70億円に達することを説明し,また,含み損の30億円について,時価会計によるものであり,時間をかけてできるだけなくしていくとの説明をした。 これらの株主の質問の後,被告株主(1000株保有)で原告の監査役でもあるE弁 し,また,含み損の30億円について,時価会計によるものであり,時間をかけてできるだけなくしていくとの説明をした。 これらの株主の質問の後,被告株主(1000株保有)で原告の監査役でもあるE弁護士(以下「E株主」という。)が,被告の議長に対し,各議案についての審議について議案説明後に質問を受けるよう求めて,被告の議長はこれを了承した。 被告の議長が,第1号議案の採否を求めたところ,E株主は,書面投票による採決及び採決の結果についての議決の件数(賛成・反対・棄権の別)を明示することを求める動議を提出すると発言したが,被告の議長は,出席株主が納得する方式により行うこと等を述べて,議事を進行させ,第1号議案に関する採決に移り,同議案は賛成多数により承認可決された。 被告の議長は,第1号議案の承認可決後,質問を受けると述べ,これを受けて,被告株主(1000株保有)で原告の代表取締役社長でもあるF(以下「F株主」という。)は,被告の議長に対して,できる限り議案に関する賛成・反対の別を明らかにすること,第8号議案に係る提案を説明したいこと等を発言した。これに対し,被告の議長はできる限りわかりやすく行うと述べて,F株主は,進行がそのように行われる限り異議はないと述べ,発言を終えた。(甲5号証,同6号証,乙1号証,同3号証,同16号証,同20号証)(イ) 第2号議案及び第8号議案の審議及び採決の経過次いで,第2号議案及び第8号議案の審議及び採決に移行したが,F株主が第8号議案についての提案理由等を説明し,その後質疑応答が行われた。その際,3名の株主による質疑応答が行われ,その終了後に,被告の議長が採決に入る旨発言したが,E株主は,再度,前記同様の動議を提出し,被告の議長は,採決の方式について議長に任せるよう述べた。この後,E株主が当 の株主による質疑応答が行われ,その終了後に,被告の議長が採決に入る旨発言したが,E株主は,再度,前記同様の動議を提出し,被告の議長は,採決の方式について議長に任せるよう述べた。この後,E株主が当日の議決権総数の発表を求め,被告の事務局が当日の出席株主数や議決権総数を説明した。さらに,E株主は,動議の採決に入るよう求めたが,これに対し,被告の議長は採決を公平に行うと述べ,E株主はそれ以上動議の採決を求めなかった(所要時間約30分うち質疑応答の時間約8分)。 その後,採決に入ったが,被告の議長は,採決の方式について議案の反対者が起立する方式によると述べて,第2号議案の反対者に起立するよう求め,出席株主の反対者が起立し,集計が行われ,議場において,賛成5万6014票,反対2万9650票,棄権149票であることが発表され,賛成多数により同議案は承認可決され,これにより,第8号議案は否決された。なお,最終集計結果は,賛成5万4167票,反対2万9140票,棄権136票であった。(甲5号証,同6号証,乙1号証,同3号証,同16号証)(ウ) 第3号議案の審議及び採決の経過第3号議案の審議及び採決の状況については,被告の議長が,第3号議案に係る単元未満株式の買増制度等の変更に係る定款変更について採決を求め,賛成多数により承認可決された。その後,被告の議長は,特別決議の定足数の緩和に係る定款一部変更の件について順次採決を求めたが,その際,F株主から特別決議の定足数緩和について質問があり,被告の議長はその趣旨・理由を説明し(質疑応答時間約3分),その後採決に移行した。その際に,出席株主に反対者がいたため,被告の議長は反対者に起立するよう求め,集計の結果,議場において,賛成6万3689票,反対2万1948票,棄権176票と発表され,賛成が3分 後採決に移行した。その際に,出席株主に反対者がいたため,被告の議長は反対者に起立するよう求め,集計の結果,議場において,賛成6万3689票,反対2万1948票,棄権176票と発表され,賛成が3分の2を超え,承認可決された。集計後,F株主は,集計数が不正確であると指摘し,被告の議長は調査の上後日回答すると述べ,F株主はこれを了承した。なお,最終集計結果は,賛成6万0540票,反対2万2389票,棄権176票であった。 その後,取締役の員数変更に係る定款変更について審議・採決に入り,その際,被告の議長は,F株主の質問を受けてその理由等を説明し(質疑応答時間約1分),採決に移行し,賛成多数で承認された。また,社外取締役との間の責任限定契約に伴う定款変更についても,被告の議長は,まずF株主の質問を受けてその理由等を説明し(質疑応答時間約2分),その後採決がされ,賛成多数により承認可決された。(甲5号証,同6号証,乙1号証,同3号証,同16号証)エ第4号議案に関する審議及び採決に至るまでの経過(ア) Gによる質問とそれに対する被告の議長の回答被告の議長は,第4号議案(取締役8名選任の件)についての審議・採決に入り,その際,被告株主(1000株保有)で原告の副社長でもあるG(以下「G株主」という。)から質問が提出された。G株主は,被告の有価証券投資に関して,取締役の候補者が監視義務を履行していたか否かについて,①被告の有価証券投資に関して取締役会決議の要否の基準が投資額10億円を超えるか否か,②投資額の基準は取締役会規程に定められているか否か,③平成12年2月期に被告が投資したいわゆるマイカル関連債(取得額約40億円)及び野村日本株戦略ファンド(取得額約50億円),平成14年2月期に被告が投資した住友不動産の株式(取得額約4 るか否か,③平成12年2月期に被告が投資したいわゆるマイカル関連債(取得額約40億円)及び野村日本株戦略ファンド(取得額約50億円),平成14年2月期に被告が投資した住友不動産の株式(取得額約41億円)及び三和キャピタルファイナンス(取得額約100億円)並びに平成15年2月期に投資した東海ファイナンス(取得額約50億円)(以下これらを「本件投資」という。)に関して,各投資の当時取締役会決議の要否の基準が10億円であったか否か,④本件投資について,それぞれ取締役会決議を経ているか否かについて質問をした。 これに対し,被告の議長は,①については取締役会決議の要否の基準が10億円を超える場合であること,②については取締役会規程に定めがあること,この取締役会決議の要否の基準に係る規程が平成15年4月15日より施行されていること,③については当時投資案件に係る取締役会決議の要否の基準に関する規程が存在しなかったこと,④については,三和キャピタルファイナンスに対する投資案件を除き,取締役会決議を経ていないことを説明した(質疑応答の所要時間約5分)。(甲5号証,同6号証,乙1号証,同16号証)(イ) 被告議長によるHの質問の打切りと採決への移行その後,被告株主(1000株保有)で原告の従業員(投資担当者)でもあるH(以下「H株主」という。)が,マイカル関連債取得の目的及び取得時期について質問し,また,本件株主総会の前年度の株主総会において有価証券の格付けについて投資適格であるトリプルBよりも低い格付けの債券には投資しないと説明があったにもかかわらず,マイカル関連債やその他の劣後債を取得した理由について説明を求めた。 被告の議長は,投資時期とH株主の指摘する格付けの時期に異同があり,発行された時点での格付けはダブルAであること等を回 わらず,マイカル関連債やその他の劣後債を取得した理由について説明を求めた。 被告の議長は,投資時期とH株主の指摘する格付けの時期に異同があり,発行された時点での格付けはダブルAであること等を回答し,それに対してH株主や被告株主(1000株保有)で原告の従業員でもあるI(以下「I株主」という。)が異論を述べ,H株主がさらに詳細な説明を求めた。その際,他の株主が第4号議案とH株主の質問に関連性がないため議事を早く進めるよう発言し,それに対して出席株主から賛成と反対の発言があったが,被告の議長は,そのまま採決に移行し,第4号議案は賛成多数により承認可決された(質問打切りまでの質疑時間約2分)。なお,第4号議案に関しては,賛成・反対の集計は行われなかった。 その間,H株主は,議事進行に反対する旨表明し,再三にわたって,質問に回答するよう求めており,また,I株主も質問があると発言した。(甲5号証,同6号証,同24号証,乙1号証,同3号証,同16号証,同18号証)オ第5号議案の審議及び採決に至るまでの経過被告の議長は,引き続いて,第5号議案(監査役1名選任の件)の審議・採決に入ったが,F株主やE株主が質問を受けるよう発言した。 また,H株主は繰り返し質問がある旨発言し,さらに,I株主や被告株主(1000株保有)で原告の副社長でもあるJ(以下「J株主」という。)も質問があると発言していたが,被告の議長は,そのまま採決に入り,第5号議案は賛成多数により承認可決された。なお,第5号議案に関しては,賛成・反対の集計は行われなかった。(甲5号証,同6号証,乙1号証,同2号証,同15号証,同16号証)カ第6号議案の審議及び採決に至るまでの経過(ア) 第6号議案の提案被告の議長は,引き続いて,第6号議案(退任取締役に対する退 証,同6号証,乙1号証,同2号証,同15号証,同16号証)カ第6号議案の審議及び採決に至るまでの経過(ア) 第6号議案の提案被告の議長は,引き続いて,第6号議案(退任取締役に対する退職金贈呈の件)の審議・採決に入り,退任予定の取締役について,被告の内規に従って,相当額の範囲内で退職慰労金を贈呈すること,その具体的な金額,贈呈の時期及び方法等について取締役会に対して一任されるよう述べて,その採決に移行しようとした。 (イ) E株主による質問その際,E株主から質問が提出され,被告の議長は,同じことの繰り返しを避けるよう述べて,質問を受け付ける旨回答した。その上で,E株主は,①本件投資の案件について取締役会の「規則」が存在しなかったことから取締役会の決議を経なかったということでよいか,②100億円についてのみ決議した理由はなぜか,③改めて10億円という取締役会決議の要否の基準に関する規程を設けたのはなぜかといった点について質問し,さらに質問の趣旨が退任取締役の退職慰労金支給の前提として,本件投資に関して監視義務を履行していたか否かを確認するためのものであると述べた。 被告の議長は,①については決議はされなかったが意見交換及び検討はされたこと,②については多額であることから取締役会決議を経たこと,③については社外取締役の意見も踏まえ社内における検討の結果,10億円という金額を取締役会決議の要否の基準とすることについて,社内の賛成が得られたことを説明した(所要時間約3分)。 (ウ) 被告の議長によるI株主の質問の打切りと採決の移行その後,I株主は質問があると発言し,被告の議長は質問は一つか二つにするようにいったと述べて,そのまま質問を打ち切り,第6号議案の採決に入り,第6号議案は賛成多数により承認可決された。なお,第 その後,I株主は質問があると発言し,被告の議長は質問は一つか二つにするようにいったと述べて,そのまま質問を打ち切り,第6号議案の採決に入り,第6号議案は賛成多数により承認可決された。なお,第6号議案に関しては,賛成・反対の集計は行われなかった。 (以上について,甲5号証,同6号証,乙1号証ないし同3号証,同15号証,同16号証)キ第7号議案の審議及び採決に至るまでの経過(ア) 第7号議案の審議とJ株主の質問被告の議長は,引き続いて,第7号議案(退任監査役に対する退職慰労金贈呈の件)の審議・採決に入り,退任予定の監査役について,被告の内規に従って,相当額の範囲内で退職慰労金を贈呈すること,その具体的な金額,贈呈の時期及び方法等について監査役の協議に一任されるよう述べたところ,J株主は,被告の議長に対して,質問があると発言し,被告の議長は,質問を一つだけ受ける旨述べて,J株主を指名した。 J株主は,監査役に対して質問がある旨述べて,被告の監査役は,①いつの時点で本件投資の事実を認識したか,②本件投資を認識した後,どのような対応をとったか,③本件投資に係る損失の計上に関して監査役の責任をどのように考えているかについて,監査役に質問がある旨述べた。 これに対し,被告の議長は,監査役3名のうちから回答するよう促して,被告の監査役のK(以下「被告の監査役」という。)が,①についてはいつ説明があったかについては今明確に回答できないが,投資案件に関しては被告の議長(代表取締役)から日常の業務報告とともに説明があること,②については監査役として必要な調査をしたこと,③については監査役の職域の中で対処してきたと考えていることを回答した。 さらに,J株主は,被告の監査役の回答を受けて,監査役として単に投資案件を追認したのみで, 査役として必要な調査をしたこと,③については監査役の職域の中で対処してきたと考えていることを回答した。 さらに,J株主は,被告の監査役の回答を受けて,監査役として単に投資案件を追認したのみで,このような案件を未然に防止するルールを策定するといった対応をしていないということでよいか否かを質問し,被告の議長はそういうことではないと回答したが,J株主は監査役による回答を求め,被告の監査役は,再度質問の内容を確認し,J株主は,本件投資等の有価証券投資に関して業務監督が不十分ではないか,現在計上されている実現損及び評価損から考えて,数年前から取締役会において審議すべきではなかったかということを述べた。被告の監査役は,これに対し,その時点において被告のやり方が正しいと考えていたと回答した(所要時間約6分)。 (イ) 第7号議案の採決その後,被告の議長は,第7号議案の採決に入り,賛成多数により第7号議案は承認可決された。なお,第7号議案に関しては,賛成・反対の集計は行われなかった。 (以上について,甲5号証,同6号証,乙1号証ないし同3号証,同15号証,同16号証) 2 争点及びこれに対する当事者の主張(1) 本件各決議の方法が,商法237条の3第1項に定める取締役及び監査役の説明義務に違反するか(商法247条1項1号所定の取消事由の存否)。 ア別紙総会決議目録記載1の決議(以下「本件決議1」という。)の際に,説明義務違反があったか否か。 (ア) 原告a 被告は,本件株主総会において,決議事項について議案ごとに個別に上程し,その後当該議案に対する審議及び採決を行うという方式(個別審議方式)を採用した。 個別審議方式が採用されたのは,被告の議長が議案に関する質問は議案の説明の後に受け付けることを明確に確認したこと,順次議案ごとに審議 る審議及び採決を行うという方式(個別審議方式)を採用した。 個別審議方式が採用されたのは,被告の議長が議案に関する質問は議案の説明の後に受け付けることを明確に確認したこと,順次議案ごとに審議を行い,審議の後に採決という方法が採られた旨総会検査役報告書に記載されていること,本件株主総会は,報告事項について報告後にこれに対する審議を行い,その後決議事項について各議案ごとに,それぞれ議案の上程・議案の説明・審議及び採決という流れで議事を進行させており,典型的な個別上程・個別審議方式の議事進行シナリオであること,一括上程・一括審議方式を採る場合,株主に不利益を与えないように報告事項についての報告後,決議事項の各議案についての上程・説明を行い,さらに審議は報告事項のほか決議事項の各議案についても一括して行う旨の説明(通常使用される議事進行シナリオでは安全のため採決までとる。)を行うのが通例であるのに,本件株主総会ではそのような手続が一切とられていないこと,その結果,決議事項の各議案についての上程・説明は,報告事項についての審議の後に初めて行われており,それ以前の議事では,議長は,決議事項の各議案について何らの言及もしていないこと,そして,実際に各議案ごとに議案の上程・説明の後,当該議案についての質問を受け付けるという手順がとられていたことなどから明らかである。 なお,被告は,この点に関し,議長が議案の審議に入る際に全議案について審議を行う旨表明したと主張するが,そのような発言をした事実はなく,原告はその主張を争う。 したがって,個別審議方式が採用されていた以上,各議案が個別に上程され,その議案の説明の後に,被告の取締役及び監査役は,株主から,個別に質問を受けて,十分な説明をしなければならない。また,株主は,質疑の結果を踏まえて 方式が採用されていた以上,各議案が個別に上程され,その議案の説明の後に,被告の取締役及び監査役は,株主から,個別に質問を受けて,十分な説明をしなければならない。また,株主は,質疑の結果を踏まえて,新たな質問をしたり,質問内容を変更することができるのである。このような質疑応答が十分になされていない以上,被告には説明義務を怠った違法があるというべきである。 b 被告の取締役及び監査役は,本件決議1に係る議案(第4号議案)を審議する際,被告の株主に対し,取締役候補者の適格性や能力を判断するための必要な情報を提供する義務がある。 本件株主総会において,第4号議案が上程された後,被告の株主は,重任候補者である代表取締役(被告の議長)の本件投資に関する判断内容等の適正及び斯かる代表取締役(被告の議長)の業務執行に関する他の取締役の監視義務の履行状況に関して質問した。この点は,取締役の適格性を判断する上で,極めて重要な事項であり,原告は当初から質問することを予定していた。 特に,本件において,後述するとおり,取締役会の決議を経なかったことや投資不適格の有価証券に対する投資が行われたこと,本件投資に関して有価証券報告書に虚偽の記載があったことなど代表取締役(被告の議長)の業務執行に関する違法の疑いがあった。したがって,株主の質問により,この違法の疑いが明らかとなった以上,株主はこの点に関する質問を追加的に行い,他方,被告の取締役及び監査役は,被告の株主に対し,代表取締役(被告の議長)の判断内容及び斯かる代表取締役(被告の議長)の業務執行に関する他の取締役の監視義務履行の状況を説明する義務があった。 また,本件投資に関する案件以外の案件についても,代表取締役(被告の議長)のいわゆるワンマン経営が継続されていた状況の下において,取締役候補 取締役の監視義務履行の状況を説明する義務があった。 また,本件投資に関する案件以外の案件についても,代表取締役(被告の議長)のいわゆるワンマン経営が継続されていた状況の下において,取締役候補者の適格性や能力を判断する上で,代表取締役(被告の議長)の業務執行に関する従前の監視状況等を明らかにしなければならなかった。さらに各取締役候補者の取締役としての適格性を判断すべく,各候補者のこれまでの経歴や実績の詳細(最低限説明義務の認められる範囲まで),各人を取締役会において候補者として選任した理由,特にワンマン経営が長期にわたって継続し監視義務を履行しにくい状況に陥っている被告において,代表取締役(被告の議長)の業務執行を毅然とした態度で監視すべきことが要請されているところ,より監視義務を果たしにくいと一般的に考えられる元従業員の取締役候補者2名を候補者として選任した理由,当該2名が監視義務を果たせると判断した根拠などについて説明する必要があった。 しかるに,被告の議長は,合計約180億円の本件投資の大部分について取締役会の承認決議を経ていないこと及び投資不適格の格付けが付された債券(マイカル関連債)を購入したこと等を説明したのみで,その後に想定された投資判断の内容,代表取締役(被告の議長)の業務執行に関する他の取締役候補者の従前の監視状況等について説明せず,また,説明を求めていた株主の質問を途中で遮り,他の株主の質問等を一切受け付けないまま,第4号議案の採決を強行した。 なお,被告の議長及び被告の専務が行った説明は,取締役候補者による代表取締役(被告の議長)の職務執行の状況に関する監視義務の履行の状況や取締役としての適格性に関する回答とは到底いえないものであり,その回答が説明義務の履行に当たると認めることはできない。また,事 代表取締役(被告の議長)の職務執行の状況に関する監視義務の履行の状況や取締役としての適格性に関する回答とは到底いえないものであり,その回答が説明義務の履行に当たると認めることはできない。また,事前に質問状が提出されていたとしても,それ自体株主総会における質問に代替するものではないから,事前質問状の内容に回答すれば,説明義務を履行したということはできない。 c 本件株主総会において,原告は,取締役会の決議を経ていないこと,投資不適格の有価証券に対する投資の事実などの新たに判明した事情を踏まえて,被告の有価証券投資に関する基準の存否,内容,基準の遵守状況,基準違反の取引の内容さらには代表取締役(被告の議長)によるワンマン経営の実態,各取締役候補者のこれまでの経歴や実績の詳細(最低限説明義務の認められる範囲まで),被告取締役会において各人を候補者として選任した理由,元従業員の取締役候補者2名を候補者として選任した理由,当該2名が監視義務を果たせると判断した根拠などを質問して,取締役候補者の適格性を明らかにする予定であった。 しかし,前記bのとおり被告の議長は原告関係者からの質問を遮り,そのため,原告関係者は,説明を求めた事項について回答がされないため,質問を継続したにすぎず,円滑な議事進行を妨害した事実はない。 また,質疑の打切りが許されるのは,議案の合理的な判断のために必要な質問が出尽くすなどして,議案の合理的な判断のため必要な質問が出される可能性がないと客観的に認められる(説明義務が尽くされる)場合であって,本件株主総会においては,そのような状況になかった以上,質疑の打切りに合理性はない。 d なお,本件株主総会において,質問をした株主は全て,原告の取締役,監査役及び従業員等の原告関係者であるが,原告関係者は,原告以外の多数の ような状況になかった以上,質疑の打切りに合理性はない。 d なお,本件株主総会において,質問をした株主は全て,原告の取締役,監査役及び従業員等の原告関係者であるが,原告関係者は,原告以外の多数の被告の株主の委任を受けていたのであり,それぞれ独立の株主として行動をしており,原告関係者として一括りにするのは失当である。 また,株主総会において説明義務の履行があったか否かは,議案について合理的な判断のため必要な情報が審議の中で出席株主に対して提出されているか否かによって判断すべきであり,質問者の属性は説明義務違反の考慮要素とはならない。 e 本件株主総会の議事進行については,その所要時間の大半が採決手続やその集計,被告の議長と事務局の弁護士の相談,マイクの不調などの停滞・中断により費やされ,実質的な審議の時間は長いといえない。また,説明義務の履行があったか否かについては,その審議内容から判断すべきであり,その全体の時間に重要性はない。 f 被告は,本件株主総会において,原告の事前質問状に対し,包括的に回答を行っている。しかしながら,被告は,この包括的回答において,例えば有価証券投資について,「今後のチェック体制の一層の充実を図るほか,会社業績を向上させることについて全力を注いでまいります。」と回答するにとどまり,また,資金運用についても,「一定金額を超える投資案件につきましては,取締役会の決議事項となっております。」と答えるのみである。このように,被告は,原告の事前質問状に対する包括的回答においても,各取締役及び各監査役の監視義務の履行の有無及び態様について,何ら説明を行っていないのである。 したがって,原告の事前質問状及びこれに対する被告の包括的回答の存在が,被告の説明義務を尽くしたことの理由となり得ないことは明らかである。 及び態様について,何ら説明を行っていないのである。 したがって,原告の事前質問状及びこれに対する被告の包括的回答の存在が,被告の説明義務を尽くしたことの理由となり得ないことは明らかである。 g 以上により,本件決議1の方法は,株主総会における会議の目的たる事項の合理的判断のために必要となる情報を審議の中で,出席株主に対して提出すべきであるという商法237条の3第1項の定める説明義務に違反し,取り消されるべきである。 (イ) 被告a 被告は,本件株主総会において,個別審議方式を採用したわけではなく,決議事項に係る議案全体を一括して審議するのと同様の手法により審議をした。これは,被告の議長が議案の審議に入る際に全議案について審議を行う旨表明したこと,被告の議長が株主の質問に対してどの議案に関する質問であるかを明確に区別して質問するよう要求したわけではないことなどからも明らかである。 すなわち,議案と質問の関係は,議案上程前において報告事項及び全議案共通の質問を行い,議案上程後においてほぼ採決を行う議案順に対応する質問を行うという程度の関連があったにすぎない。 したがって,各議案の審議については,各議案の採決が行われる前に十分な説明が行われている限り説明義務は履行されているのであって,各議案上程後の個別審議は必ずしも必要がない。 b まず,第4号議案の審議に関しては,被告の専務は,原告が事前に提出した質問状に基づき,以下の説明を行った。 すなわち,被告の専務は,有価証券の投資一般について,保有目的として,被告全体の資産運用の観点からその一部を有価証券として保有していること,多額の損失を計上した点について,複数の社外専門家を置き,社内の複数の担当者によるチェック体制を充実させること,一定金額を超える投資案件について取締役会 らその一部を有価証券として保有していること,多額の損失を計上した点について,複数の社外専門家を置き,社内の複数の担当者によるチェック体制を充実させること,一定金額を超える投資案件について取締役会の決議事項としたこと,今後会社の業績を向上させるよう努力すること等を説明した。また,被告の専務は,経営体制に関して,後継者の育成,執行役員制度の導入等について説明した。 被告の議長は,本件投資の損失に関して,後記dの原告関係者や出席株主から質問を受けて,有価証券の保有状況や含み損額,会社の利益の状況及び今後の有価証券保有の在り方等について説明した。また,被告の議長は,原告の副社長の質問を受けて,本件投資の一部について取締役会の決議を経ていないことについても説明した。 なお,有価証券報告書に係る虚偽記載の点は,単なる誤記であり,被告は,誤記の発覚後,行政当局に対して訂正報告書を提出した。 以上の点から,被告の議長及び被告の専務は,本件投資に関して十分な説明を行った。 また,原告は事前に本件投資の一部について取締役会の決議を経ていないことを認識していた以上,原告がこの点に関して本件株主総会において初めて認識し,さらなる質問に対する説明義務が生じたと主張する点は説明義務違反の根拠とならない。 c 他方,被告の議長及び被告の専務は,前記bのとおり本件投資に関して十分な説明をしたにもかかわらず,原告関係者が不規則発言による質問を繰り返し,円滑な議事進行を妨げたため,被告の議長は,円滑な議事進行のため,やむなく質問を遮ったのであるから,被告の議長の議事進行は合理的であり,この点が説明義務に違反することはなかった。 また,原告が質問を予定していたとしても,それが,議案の合理的な判断のために必要な説明であれば格別,そうではない場合には,具体 議事進行は合理的であり,この点が説明義務に違反することはなかった。 また,原告が質問を予定していたとしても,それが,議案の合理的な判断のために必要な説明であれば格別,そうではない場合には,具体的質問が実際になされない以上,説明義務が生じないのは当然である。 加えて,原告関係者の質問は,個々の劣後債購入の経緯に関するものであるから,本件株主総会の当日にこのような個別取引に関する質問がなされても,取締役がこれについて詳細な回答をすることは困難であり,このような質問については,商法237条の3第1項ただし書の「説明ヲ為スニ付調査ヲ要スルトキ」に該当し,説明義務を生じない。この点に関して,原告から被告に対して行われた事前質問状についても,具体的な有価証券の取引を特定してその説明を求める質問は含まれていなかったことから,事前質問状の存在を根拠に本件株主総会において説明義務が生ずると考えることもできない。 d 株主総会においては,一定の合理的な時間内に終了させなければならない制約がある一方,できる限り多くの株主の質問の機会を与えるため,質問者をある程度制限することも許される。 本件株主総会において,質問をした株主は,全て原告の取締役,監査役,従業員などの原告の業務を執行監督すべき地位にあり,取締役会議事録等の開示から得られた情報を共有する原告関係者であり,実質的には同一の株主と評価し得るものであった。 したがって,多くの株主に対する質問の機会の保障という観点から,原告関係者に対する質問に関して一定の制約を設けざるを得なかった。 e 本件株主総会の議事進行は,当日午前10時07分の開会から午後1時15分の閉会まで,ほとんどの時間が実質的な報告,審議及び採決などの議事に費やされた。特に,審議の時間は1時間25分50秒であり,総時間の約 総会の議事進行は,当日午前10時07分の開会から午後1時15分の閉会まで,ほとんどの時間が実質的な報告,審議及び採決などの議事に費やされた。特に,審議の時間は1時間25分50秒であり,総時間の約半分に該当する。この点から,本件株主総会は,十分な審議が尽くされたとみることができる。 f 以上により,取締役に対して通常提案理由としてなすべき積極的説明義務に加えて,質問があるときに限り,その議案の合理的な判断のために必要な具体的情報提供を義務づけて(受動的説明義務),株主の総会参与権の実質化を図る商法237条の3の定める説明義務の履行はされているというべきであるから,本件決議1の方法に関する瑕疵はない。 イ別紙総会決議目録記載2の決議(以下「本件決議2」という。)の際に,説明義務違反があったか否か。 (ア) 原告a 前記ア(ア)a,fと同じb 被告は,本件決議2に係る議案(第5号議案)を審議する際,被告の株主に対し,監査役候補者の適格性や能力を判断するための必要な資料について説明を行う義務がある。この点に関して,原告は当初から本件株主総会において質問することを予定していた。 しかも,前記ア(ア)bのとおり,本件投資に関する状況が明らかとなり,監査役候補者がその間取締役を務めていたため,同候補者による代表取締役(被告の議長)の業務の監視状況等を明らかにすることが,監査役候補者が業務監査を行うべき監査役としての適格性を有するか否か判断する上で重要であり,被告の議長は,この従前の監視状況等について説明をしなければならなかった。 しかるに,被告取締役及び監査役は,これらの点について説明を全くしないで,株主からの質問に一切応じないまま,第5号議案について採決した。 また,個別審議方式が採用されていた以上,株主からの質問を一切受けない 取締役及び監査役は,これらの点について説明を全くしないで,株主からの質問に一切応じないまま,第5号議案について採決した。 また,個別審議方式が採用されていた以上,株主からの質問を一切受けないで採決に至った第5号議案については,明らかに説明義務に違反する。 なお,監査役の取締役に対する監視状況,監査役候補者の適格性や能力に関する事項については,第5号議案の審議時のみならず,本件株主総会全体を通じて一切説明がなされていないことから,仮に被告の主張のとおり一括審議方式が採られていたとしても,審議の全面拒否が説明義務違反を構成することは明らかである。 この点,被告は,被告の議長及び専務が,本件投資に関する原告の質問に対して十分な説明をしたと主張するが,第5号議案の審議において,原告は,本件投資について直接問題としているわけではなく,監査役候補者の監査役としての適格性及び能力を明らかにするために必要な事項に関心を持ち,それらの事項について質問をする予定であったのであるから,仮に「本件投資に関する原告の質問」に対して説明をしたからといって(その説明すら不十分であり),そもそも反論にすらなっていない。 c 被告の議長は,第5号議案について,株主の質問に一切応じないまま,審議を打ち切った以上,合理的な議事の進行であったということはできない。 d 以上により,本件決議2の方法は,商法237条の3第1項に違反し,取り消されるべきである。 (イ) 被告前記ア(イ)aないしcの被告の主張を援用する。被告の議長及び被告の専務は,本件投資に関する原告の質問に対して十分な説明をした。 なお,第5号議案の採決に関して,原告関係者が,円滑な議事進行を妨げる不規則発言による質問を繰り返し,また,採決の前に特に他の出席株主が質問を求めなかったため, の質問に対して十分な説明をした。 なお,第5号議案の採決に関して,原告関係者が,円滑な議事進行を妨げる不規則発言による質問を繰り返し,また,採決の前に特に他の出席株主が質問を求めなかったため,被告の議長は,議事の混乱を回避するため,不規則発言を打ち切らせて,採決を行ったのであり,この点について,説明義務違反はなかった。 さらに,第5号議案は役員改選案件であって,原告は,株主として,当該役員候補者のこれまでの職務執行状況について質問し得るとしても,個別具体的な業務執行状況について当然に質問を求め得るものではない。なぜなら,株主は,合理的かつ平均的な株主が議案に対する合理的な判断を行うために必要な職務状況について質問をし得るにすぎず,特段の事情がない限り,従来の職務執行状況が概括的に明らかにされればその判断を行うことが可能であり,個々の業務執行状況まで説明する必要はない。この点に関し,本件では,既に被告の専務が原告の事前質問状に回答する形で説明を行っており,被告の専務の説明は,合理的かつ平均的な株主が第5号議案について賛否の判断をするのに十分な内容であったから,それ以上に説明義務を生ずることはない。 加えて,個々の候補者の経歴・実績の詳細は,調査を要する事項に該当し(商法237条の3第1項ただし書),本来説明義務はない。また,原告の事前質問状には特定の候補者の個人的な経歴,実績に関する具体的な開示を求めるとは記載されていないから,事前質問状の存在を根拠に説明義務を認めることもできない。 したがって,商法237条の3第1項に違反せず,本件決議2の方法に関する瑕疵はない。 ウ別紙総会決議目録記載3の決議(以下「本件決議3」という。)の際に,説明義務違反があったか否か。 (ア) 原告a 前記ア(ア)aと同じb 本件決議3に ,本件決議2の方法に関する瑕疵はない。 ウ別紙総会決議目録記載3の決議(以下「本件決議3」という。)の際に,説明義務違反があったか否か。 (ア) 原告a 前記ア(ア)aと同じb 本件決議3に係る議案(第6号議案)の説明義務としては,株主総会において退職慰労金の個別額や総額を決定しない場合には,退任する取締役ごとの具体的金額又は支給基準に関して説明を求めることができるというべきである。 取締役は,支給基準の説明に当たり,株主に対し,確定された基準の存在,基準の周知性等及びその内容が支給額を一意的に定め得ることを説明しなければならない。 また,本件において,退職慰労金贈呈の決議を行う上で,退任予定の取締役の本件投資に関する責任の有無等について説明を求めることは,第6号議案の合理的な判断のため重要であった。 しかるに,被告の議長は,出席株主の質問を受けて,退職慰労金の内容が被告の内規により相当額の範囲内で退職慰労金を贈呈し,その具体的金額,贈呈時期及び方法等は取締役会に一任してほしいと説明したのみで,それ以外の株主からの質問を一切受け付けずに本件決議3に係る議案(第6号議案)の採決を強行した。 なお,被告の取締役及び監査役は,上記退任取締役の本件投資に関する責任の有無等について全く説明をしていない。 c 原告は,当初から,退任取締役の退職慰労金の総額,個別額及び支給基準等についての質問を予定していた。さらに,本件投資に関して,退任する取締役の責任の有無等にして質問をする予定であった。 しかし,前記bのとおり,被告の議長は,この点に関する質問を一切受け付けず,採決に移行しており,合理的な議事の進行を行ったということはできない。 d 以上により,本件決議3の方法は,商法237条の3第1項に違反し,取り消されるべきである。 点に関する質問を一切受け付けず,採決に移行しており,合理的な議事の進行を行ったということはできない。 d 以上により,本件決議3の方法は,商法237条の3第1項に違反し,取り消されるべきである。 (イ) 被告a 前記ア(イ)aと同じb 被告の議長は,本件投資の一部について取締役会の決議を経ていなかった点に関する退任取締役の監視義務の履行の状況及び退職慰労金の支給の当否という原告の監査役の質問に対し,取締役会の決議を経ていないが,取締役間の意見交換はあったこと,新たな取締役会決議の要否の基準などについて十分な説明をした。 他方,出席株主は,後述するとおり,被告の議長が第7号議案の際に特に審議を打ち切っていなかった段階において,退職慰労金の総額,個別額及び支給基準に関する質問を行わなかった。また,原告は,平成13年5月の定時株主総会において,退職慰労金に関する具体的支給基準について説明を求め,平成14年5月の定時総会において,退職慰労金規程の閲覧請求をしたが,本件株主総会においては,原告は,事前に質問等を行っていなかった。 以上の点から,原告が,退職慰労金の総額,個別額及び支給基準に関する質問を予定していなかったことは明らかである。したがって,この点に関する説明義務違反の事実はない。 c また,被告の議長は,第6号議案の採決の際に,原告関係者から,既に説明済みの本件投資に関して重複質問を受けて,やむなく前記bのとおり原告の監査役の質問に対する説明をした。その上で,被告の議長は採決に移行したが,さらに原告関係者が不規則発言を繰り返したため,採決を終えて,第6号議案の採決に移行したのであり,この点に関して説明義務違反の事実はない。 d 以上により,商法237条の3第1項に違反せず,本件決議3の方法に関する瑕疵はない。 エ別 ため,採決を終えて,第6号議案の採決に移行したのであり,この点に関して説明義務違反の事実はない。 d 以上により,商法237条の3第1項に違反せず,本件決議3の方法に関する瑕疵はない。 エ別紙総会決議目録記載4の決議(以下「本件決議4」という。)の際に,説明義務違反があったか否か。 (ア) 原告a 前記ア(ア)aと同じb 本件決議4に係る議案(第7号議案)の説明義務は,前記ウ(ア)bのとおりである。 また,本件において,退職慰労金贈呈の決議を行う上で,退任予定の監査役の本件投資に関する責任の有無等について説明を求めることは,議案の合理的な判断のため重要であった。 しかるに,被告の議長は,J株主の質問を受けて,退職慰労金の内容が被告の内規により相当額の範囲内で退職慰労金を贈呈し,その具体的金額,贈呈時期及び方法等は取締役会に一任してほしいと説明したのみで,それ以外の株主からの質問を一切受け付けずに第7号議案の採決を強行した。 なお,被告の取締役及び監査役は,上記退任監査役の本件投資に関する責任の有無等について全く説明をしていない。 c 原告の副社長による質問終了後,原告の従業員が挙手と発声により質問することを求めたが,被告の議長はこれを無視して採決を強行しており,その点についても説明義務違反があったといえる。 この点,原告の副社長が質問を終えたとしても,他の株主から質問がないということにならないこと,原告の従業員の発声及び挙手は被告の議長にとって十分認識可能であったこと,被告の議長は原告の副社長の質問終了後直ちに採決に移行しており,他の株主に質問をする余裕を与えていないこと,原告に質問すべき事項が複数存在したこと等から,被告の議長が採決を強行した点は合理的な議事進行といえない。 d 以上により,本件決議4は,商法2 しており,他の株主に質問をする余裕を与えていないこと,原告に質問すべき事項が複数存在したこと等から,被告の議長が採決を強行した点は合理的な議事進行といえない。 d 以上により,本件決議4は,商法237条の3第1項に違反し,取り消されるべきである。 (イ) 被告a 前記ア(イ)aと同じb 被告の監査役は,J株主から,①本件投資を認識した時期,②認識後の調査の有無及び③同投資に関する監査役の任務懈怠の有無等について質問を受けて,①被告の議長から通常の業務報告等とともに報告されていたこと,②監査役として必要な調査をしたこと及び③監査役の職務として適正に行っていたことを説明した。 また,被告の監査役は,もっと本件投資に関して取締役会としての審議を尽くすべきであったというJ株主の質問に対し,当時被告として適正な業務執行であったと説明し,J株主は質問は以上であると述べて質問を終えた。 したがって,被告の議長が質問の途中で第7号議案の審議を打ち切った事実はない。また,その後の質問が行われなかったことから,退職慰労金の総額,個別額及び支給基準に関する質問は,原告を含む被告の株主から出される予定はなかったのであり,この点に関する説明義務違反はない。 c なお,前記ウ(イ)cのとおり,被告の議長は,第7号議案の採決に移行したのであり,この点に関して説明義務違反の事実はない。 仮に原告従業員が質問を求めていたとしても,採決に移行した段階では被告の議長はこれを認識することはできない。また,原告の従業員はJ株主の質問終了後直ちに質問を継続することができたにもかかわらず,直ちに質問を継続せず採決時点において質問の発声等をした以上,被告の議長がこれを認識できなかったとしても,その不利益は質問者が甘受すべきである。被告の議長の議事進行に対して原告関係 にもかかわらず,直ちに質問を継続せず採決時点において質問の発声等をした以上,被告の議長がこれを認識できなかったとしても,その不利益は質問者が甘受すべきである。被告の議長の議事進行に対して原告関係者が異議を唱えなかったことも議長の議事進行が適正になされたことを裏付ける。 さらに,第7号議案についてJ株主による詳細な質問が終了しており,これに加えて原告従業員が全く異なる質問をしたとは考えられない。 したがって,被告の議長がことさらに株主の質問を無視して審議を打ち切ったということはできない。 (エ) 以上により,商法237条の3第1項に違反せず,本件決議4の方法に関する瑕疵はない。 (2) 本件各決議について,商法247条1項1号所定の取消事由がある場合において,同取消事由が重大ではなくかつ決議に影響を及ぼさないものとして,裁量棄却することができるか否か。 ア被告(ア) 被告の取締役及び監査役は,本件株主総会において,審議に十分な時間を費やして,原告関係者及びその他の株主に対する内容のある説明を実施した。また,他の株式会社と比較しても,審議に十分な時間が費やされた。 (イ) また,原告は,当初から,第4号議案ないし第7号議案に対して賛成するとの立場を表明し,実際にも本件株主総会において賛成する旨の決議を投じた。 さらに,仮に当日出席の株主及び原告宛委任状が,第4号議案ないし第7号議案について反対票を投じたとしても,いずれの議案も賛成票が過半数に達しており,採決の結果に影響はなかった。 (ウ) 以上により,本件請求は,仮に説明義務違反があったとしても,違反事実が重大ではなく,決議に影響を与えないものであり,棄却されるべきである。 イ原告(ア) 本件株主総会において審議時間が長時間であったとしても,瑕疵が重大ではないことを示す ったとしても,違反事実が重大ではなく,決議に影響を与えないものであり,棄却されるべきである。 イ原告(ア) 本件株主総会において審議時間が長時間であったとしても,瑕疵が重大ではないことを示す根拠とならない。また,実質の審議時間が長かったともいえない。 違反事実が重大ではないことは,取り上げるに値しない些細な瑕疵であり,それを問題とすることが権利濫用に当たる場合をいう。本件株主総会においては,重要な質問が多数予定されていたにもかかわらず,被告の議長は,全く質問を受け付けない,質問者を1名に絞る,正当な理由なく質問中の質問を遮るなど,各議案の合理的な判断のために必要な情報の提供を審議の中で受けるという株主の権利・利益を著しく侵害しており,その瑕疵は重大である。また,会社の実質所有者である株主が,自己の意思を表明する唯一の機会である株主総会において,質問を不当に遮られるという権利侵害は,取り上げるに値しない些細な瑕疵であり,権利濫用に当たるとはいえない。 (イ) 原告は事前には第4号議案ないし第7号議案に関して賛成の方針を表明していたが,これは当然審議の内容により変化するものであった。原告ホームページにおいて,各議案について賛成の意思を表明していたのは,あくまで本件株主総会前の原告の意向を表明していたにすぎない。また,委任状勧誘においても各株主を賛成へ誘導した事実もない。 さらに,被告が原告の質問に対してまともに答えようとしなかった本件株主総会当日において,原告は,全く賛成の意を表明していないのである。 なお,同ホームページによれば,次のとおり,原告の被告に対する要望事項が記載され,その要望がかなえられることを前提に賛成の意向を表明しているにすぎないことは明らかであるところ,本件株主総会において,これら要望事項は全くかなえ ,次のとおり,原告の被告に対する要望事項が記載され,その要望がかなえられることを前提に賛成の意向を表明しているにすぎないことは明らかであるところ,本件株主総会において,これら要望事項は全くかなえられていないのであるから,原告が同ホームページで本件株主総会前に各議案について賛成の意向を表明していることが,被告の説明義務違反の判断に影響を与えないのはもちろんのこと,裁量棄却の要件たる「決議に影響を及ぼさないものと認められること」の理由足り得ないこともまた当然である。 a 第4号議案については,ホームページでは「就任後初の総会出席となる社外取締役には,取締役会で自身がどのような発言を行い,その発言が有価証券投資ルールの明確化等,会社の業務執行にいかに反映されたか,今回の定時株主総会の場で発言し,報告を行うよう希望します。」と述べられているにもかかわらず,その希望はかなえられず,満足な回答も得られていない。 b 第5号議案については,ホームページでは「監査役候補者には,明確なルールに基づいて投資が行われているか等の観点を含め,東京スタイルの経営の透明性の高いものとなるよう尽力されることを期待し」と述べられているにもかかわらず,被告は,本件株主総会の当日,全く質問に答えていない。 c 第6号議案及び第7号議案のいずれの議案についても,ホームページでは「株主が判断できるよう退任取締役(監査役)の個別の功績,慰労金金額,該当する内規等を,株主に対して明示すべきであると考えます。」として,支給基準等の明示を求めているにもかかわらず,被告はこれらを全く明らかにしようとしていない。 また,第4号議案ないし第7号議案の採決に関して,被告の議長が質問や反対の発声等を無視して賛成票があったとしただけであり,反対又は棄権の意思表明をしなかったわけではない かにしようとしていない。 また,第4号議案ないし第7号議案の採決に関して,被告の議長が質問や反対の発声等を無視して賛成票があったとしただけであり,反対又は棄権の意思表明をしなかったわけではない。 さらに,原告は,議案の合理的判断のための必要な質問を遮られ,必要な情報を得るに至っておらず,議案に関する採決を行うのに熟していなかったことから,反対又は棄権の意思を表明する以前の段階である。 (ウ) 原告を含む出席株主及び原告宛の委任状全部が反対票を投じても,決議の結果に影響しなかったという点も,他の株主について委任状方式によっていた以上,審議の状況によっては結論が変わる可能性があった。 また,株主に対する説明義務つまり株主に質問権を認めた商法237条の3の趣旨からすると,質問権が侵害されてこれに基づく取消訴訟が提起された以上,仮にそれが決議の成立に影響しない場合であっても,取消請求を裁量棄却すべきではない。特に多数派の意思が予め確定し,手続的瑕疵が決議に影響を及ぼさない場合に全て裁量棄却を認めると,多数派による恣意的な総会運営を許す結果となり,妥当ではない。 第3 当裁判所の判断前記第2のとおり,本件訴訟では,被告の株主総会でなされた別紙総会決議目録記載の本件各決議に関し,被告の取締役及び監査役が商法237条の3で規定された説明義務を尽くしたといえるか否かが争点となっている。そこで,以下では,まず,同条で要求されている取締役及び監査役の株主総会における説明義務の範囲と程度(説明義務の限界)をどのように解するかの点と,取締役及び監査役が行った説明が,同条で要求されている説明義務を尽くしたといえるか否かの具体的な判断基準について検討する。そして,その上で,本件各決議について,共通する個別審議方式の採用の問題について検討し,その後個 った説明が,同条で要求されている説明義務を尽くしたといえるか否かの具体的な判断基準について検討する。そして,その上で,本件各決議について,共通する個別審議方式の採用の問題について検討し,その後個別の争点の検討を行うこととする。 1 商法237条の3で規定された説明義務の範囲と程度について商法237条の3第1項は,株主が総会において会議の目的たる事項に関して質問を求めた場合,取締役及び監査役は,その事項について説明すべき義務を負う旨規定する。これは,取締役及び監査役に対し,会議の目的たる事項,すなわち株主総会における報告事項及び決議事項について,株主が議決権行使の前提としての合理的な理解及び判断を行うため,必要な説明を受け得ることを保障したものである。そこで,取締役及び監査役が負うとされる説明義務の範囲と程度の問題について検討すると,同条項ただし書では,会議の目的たる事項に関しないときは株主の質問に対する説明を拒絶することができるとしてその範囲を画しているが,定時株主総会においては,会議の目的たる事項は,報告事項であると決議事項であると問わず,その範囲に含まれることからすると,同条項ただし書を形式的に適用した限りでは,取締役及び監査役が説明を拒み得る事項は,限定されざるを得ないことになる。しかし,取締役及び監査役がこのような説明を行うのは,株主が会議の目的たる事項を合理的に理解し,判断するためのものであることは明らかであるし,一方で,商法247条1項1号が,決議の方法が法令に違反したときには,決議の取消しを請求できると定めており,取締役及び監査役の説明義務の違背が決議の取消事由とされていることからすると,ここでいう説明義務の範囲と程度には自ずから限度があり,株主が会議の目的たる事項の合理的な理解及び判断をするために客観的に必要と び監査役の説明義務の違背が決議の取消事由とされていることからすると,ここでいう説明義務の範囲と程度には自ずから限度があり,株主が会議の目的たる事項の合理的な理解及び判断をするために客観的に必要と認められる事項(以下「実質的関連事項」という)に限定されると解すべきである。 2 説明義務を尽くしたといえるか否かの具体的判断基準等についてところで,実際の株主総会の場面において,議決権行使の前提としての合理的な理解及び判断を行い得る状況にあったかどうかを判断するに当たっては,会議の目的たる事項が決議事項である場合には,原則として,平均的な株主が基準とされるべきである。なぜなら,説明義務違反が「決議の方法が法令に違反」(商法247条1項1号)するとして決議取消事由とされ,裁判所の審査に服する以上,その判断基準には客観性が要求され,また株主総会が多数の株主により構成される機関であり,説明の相手方が多数人であることを考え併せると,当該質問株主や当該説明者の実際の判断を基礎とすることは妥当ではないからである。 そうであるとすれば,本件訴訟の争点である,本件各決議に関し,被告の取締役及び監査役が説明義務を尽くしたといえるか否かの問題は,本件株主総会における株主の質問に対して,取締役及び監査役が,本件各決議事項の実質的関連事項について,平均的な株主が決議事項について合理的な理解及び判断を行い得る程度の説明を本件株主総会で行ったと評価できるか否かに帰するというべきである。 そして,平均的な株主が決議事項について合理的な理解及び判断を行い得る程度の説明がなされたかどうかの判断に当たっては,質問事項が本件各決議事項の実質的関連事項に該当することを前提に,当該決議事項の内容,質問事項と当該決議事項との関連性の程度,質問がされるまでに行われた説明(事前 なされたかどうかの判断に当たっては,質問事項が本件各決議事項の実質的関連事項に該当することを前提に,当該決議事項の内容,質問事項と当該決議事項との関連性の程度,質問がされるまでに行われた説明(事前質問状が提出された場合における一括回答など)の内容及び質問事項に対する説明の内容に加えて,質問株主が既に保有する知識ないしは判断資料の有無,内容等をも総合的に考慮して,審議全体の経過に照らし,平均的な株主が議決権行使の前提としての合理的な理解及び判断を行い得る状態に達しているか否かが検討されるべきである。 なお,前記のとおり,その場合に当該質問株主が平均的な株主よりも多くの知識ないしは判断資料を有していると認められるときには,そのことを前提として,説明義務の内容を判断することも許されると解すべきである。なぜなら,株主が議決権行使の前提としての合理的な理解及び判断を行うために必要な説明を受け得ることを保障した説明義務の趣旨に照らし,既に質問株主が議決権行使の前提としての合理的な理解及び判断を行い得る状態に達していることが認められる場合には,それを前提に説明義務の内容を判断したとしても,前記説明義務を定めた法の趣旨に反することとはならないからである。 3 個別審議方式の採否との関係について原告は,本件各決議についての説明義務に関し,本件株主総会においては,各議案ごとに個別審議し,審議が熟したと認められる場合に採否を行うことができる個別審議方式が採用されていたから,株主は,個別議案ごとに適宜質問し,その説明内容を受けて,質問を追加したり,質問内容を変更することができたところ,そのような質疑応答が十分になされていない以上は,被告の取締役及び監査役に説明義務違反の違法があると主張するので検討する。 この点については,前記第2の1(5)ウ(ア 変更することができたところ,そのような質疑応答が十分になされていない以上は,被告の取締役及び監査役に説明義務違反の違法があると主張するので検討する。 この点については,前記第2の1(5)ウ(ア)で認定したとおり,本件株主総会においては,決議事項である各議案の審議に入る際に,原告の監査役で,弁護士でもあるE株主が被告の議長に対し,各議案の審議について,各議案の説明後に質問を受けるよう求め,被告の議長もこれを了承したことが認められる。そして,原告は,この議長の了承をもって被告が個別の審議方式を採用したものと主張するものである。 しかしながら,商法237条の3第1項が,株主の求めた事項についての説明を要求していることからも明らかなとおり,取締役及び監査役の説明義務は,株主から実際に具体的な質問がなされて初めて生ずるものであって,質問の意思表明がなされた時点で既に質問の内容が予測できたというような場合であれば格別,具体的な質問がなされない以上説明義務は生じないというべきであり,しかも,前記2で述べたとおり,質問に対する説明が説明義務違反を構成するか否かは,その決議に至るまでの株主総会全体での審議の経過等に照らし,平均的な株主が議決権行使の前提としての合理的な理解及び判断を行い得る状態に達しているかどうかの観点から決すべきものであり,株主総会の議事の運営について被告の議長が一定の方式を採用したか否か,あるいは株主が実際にどのような質問を予定していたか否かといった事情によって左右される問題とはいえないと解すべきである。 そうであるとすれば,この点に関する原告の主張は採用できない。 なお,本件株主総会の議事の進行方法は,被告の議長の合理的な裁量に委ねられていたと解されるところ(議長の議事整理権限につき商法237条の4第2項参照),前記 点に関する原告の主張は採用できない。 なお,本件株主総会の議事の進行方法は,被告の議長の合理的な裁量に委ねられていたと解されるところ(議長の議事整理権限につき商法237条の4第2項参照),前記認定の事実によれば,被告の議長はE株主の求めに応じて,各議案ごとに質問を受けることを了承したことは事実として認められる(もっとも,被告の議長は,陳述書(乙23号証)中では,一定の方式をとることを了承したものではない旨述べており,実際には,E株主の求めに対し「はい」と答えたにとどまるもので,被告の議長がその後の審議の過程でその点を意識していたかとの点では疑問が残るところである。)。しかし,被告の議長が,そのように了承したにもかかわらず,議長の議事整理権限の行使により質問を認めず,あるいは質問を制限したといった議事運営に関する問題は,商法247条1項1号でいう決議の方法が法令に違反するか否かの問題に直ちに結びつくものではないというべきであって,その方法が著しく不公正といえる場合に限って決議取消しの理由になるものというべきである。 4 争点1(本件決議1についての説明義務違反の有無)について(1) 第4号議案の実質的関連事項について第4号議案は,取締役の選任に関する決議事項であるから,同決議事項についての実質的関連事項は,再任取締役候補者あるいは新任取締役候補者の適格性の判断に必要な事項である。そして,具体的には,通常,商法施行規則13条1項1号所定の「候補者の氏名,生年月日,略歴,その有する会社の株式の数,他の会社の代表者であるときはその事実」等に関する事項であり,同事項に関する説明が行われなければならず(なお,これらの事項については,本件では,甲1号証の株主総会招集通知書中の「議決権行使についての参考書類および議決権の代理行使の勧誘に関する る事項であり,同事項に関する説明が行われなければならず(なお,これらの事項については,本件では,甲1号証の株主総会招集通知書中の「議決権行使についての参考書類および議決権の代理行使の勧誘に関する参考書類」によって,商法施行規則の定めるとおり,株主に明らかにされていたと認められる。),また,株主が再任取締役候補者あるいは新任取締役候補者の適格性について質問をした場合には,同規則所定の事項にふえんして,それらの者の業績,再任取締役候補者の従来の職務執行の状況など,平均的な株主が議決権行使の前提としての合理的な理解及び判断を行うために必要な事項を付加的に明らかにしなければならないと解すべきである。 (2) 第4号議案に関する実際の説明の内容とその評価について前記第2の1(5)エ(ア)によれば,G株主は,取締役選任候補者の監視義務の履行状況を確認するため,①有価証券投資に係る取締役会決議の要否の基準,②同基準に係る取締役会規程の存否,③本件投資時点における取締役会決議の要否の基準の存否及び④本件投資に関する取締役会決議の存否について質問しており,この点に関しては,実質的関連事項として代表取締役による投資判断の内容及びこれに対する各取締役による代表取締役の職務執行に対する監視状況を説明する必要があったというべきである。そして,この点については,G株主による質問がされる前に,被告の専務による一括回答として,前記第2の1(5)イのとおり,有価証券投資は総資産の一部であること,有価証券に係る損失について今後のチェック体制を一層充実させること,社外の専門家によるチェックに加えて,社内においても複数の担当者による稟申制度を採用したこと,さらに一定金額を超える投資案件について取締役会決議を要する旨定めたことを説明している。また,同第2の1(5)ウ( 家によるチェックに加えて,社内においても複数の担当者による稟申制度を採用したこと,さらに一定金額を超える投資案件について取締役会決議を要する旨定めたことを説明している。また,同第2の1(5)ウ(ア)のとおり,被告の議長は,第1号議案に入る前の一般質問の際には,被告の保有する有価証券800億円に係る損失の有無,額等を明らかにしてほしいとの質問に対し,流動資産項目の有価証券の含み損額が30億円であり,固定資産項目の投資有価証券の含み損が70億円に達することを説明し,また,含み損30億円については時間をかけてなくしていくことを説明している。さらに,前記第2の1(5)エ(ア)のとおり,被告の議長は,G株主の質問①については,10億円を超える投資案件について取締役会決議を要すること,同質問②については,現在取締役会規程が存在すること,同質問③については,当時投資案件に係る取締役会決議の要否の基準に関する取締役会規程が存在しなかったこと,同質問④については,本件投資の一部を除き取締役会の決議を経ていなかったことを説明している。 これらの事実によれば,取締役候補者の適格性の一部を構成すると考えられる本件投資に関する被告の議長を含めた取締役候補者の判断の是非や監視義務履行の状況等経営責任の有無を判断するために必要な事項の具体的な内容は明らかにされており,平均的な株主を前提とする限り,第4号議案の決議について合理的な理解及び判断をするために必要な事項の説明はされていたと評価することができるというべきである。 なお,被告の議長により質問要求が無視されたH株主については,後記5(2)ウで認定したとおり,当時原告が保有していた被告に関する情報を知りえたものと認められるから,後記8のとおり,この点に関する被告の議長の議事運営が不適切であったと認められ 株主については,後記5(2)ウで認定したとおり,当時原告が保有していた被告に関する情報を知りえたものと認められるから,後記8のとおり,この点に関する被告の議長の議事運営が不適切であったと認められるとはいえ,質問者との関係でも,被告の取締役及び監査役に説明義務違反はなかったと認めるべきである。 (3) H株主に対する質問打切りの点についてなお,原告は,H株主がマイカル関連債や他の劣後債の格付けや被告の投資基準等について質問した際には,他の株主が議題と関係がないと発言し,被告の議長が,H株主の質問を打ち切り,第4号議案に係る採決に移行した点について被告に説明義務違反が存すると主張する。 そこで検討すると,前記第2の1(5)エ(イ)で認定したところによれば,H株主が被告の議長に対し,マイカル関連債の取得の目的及び時期について質問し,また,前年度の株主総会において有価証券の格付けについて投資適格であるトリプルBよりも低い格付けの債券には投資しないとの説明があったにもかかわらず,マイカル関連債や他の劣後債を取得した理由について説明を求めたこと,これに対し,被告の議長は,取得された時期とH株主の指摘する格付けの時期が異なり,発行された時点での格付けはダブルAであったとの回答をしたこと,そこでH株主とI株主が異論を唱え,さらに詳細な説明を求めようとしたこと,ところが,被告の議長は,その場で他の出席株主から議事を早く進めるようにとの発言があったことをきっかけに,H株主の再三の質問要求を無視して採決を行ったことが認められる。 以上の事実によれば,被告の議長は,H株主から本件投資の適否の詳細についての質問を受けている途中で,これを一方的に打ち切ったものと認めざるを得ず,議長の議事整理権限の行使としても,必要な審議は終えたとの判断に至ったので 告の議長は,H株主から本件投資の適否の詳細についての質問を受けている途中で,これを一方的に打ち切ったものと認めざるを得ず,議長の議事整理権限の行使としても,必要な審議は終えたとの判断に至ったのであれば,他の出席株主から議事を早く進めるようにとの発言があったのであるから,これを審議打切りの動議ととらえ,まずは審議の打切りを総会の決議に諮り,その動議を可決したうえで審議を打ち切る等の措置をとるべきであったというべきである。そうであるとすれば,H株主の発言を途中で打ち切った被告の議長の議事進行が不適切であったことは否定できないというべきである。 しかしながら,前記(2)認定のとおり,審議の打切りの時点では,第4号議案の決議について平均的な株主が合理的な理解及び判断をするために必要な事項の説明は既になされていたというべきであるから,審議の打切りが被告の説明義務違反を構成するとの原告の主張は採用できない(なお,被告の議長の議事の進行の不適切ないし不公正さと本件各決議の取消しの問題については後に項を改めて検討する。)。 5 争点2(本件決議2についての説明義務違反の有無)について(1) 第5号議案に関する審議の問題について第5号議案の審議に当たっては,前記第2の1(5)オで認定したところによれば,第4号議案の採決後,F株主やE株主が被告の議長に質問を受けるように発言し,さらにH株主が質問を受けるよう繰り返し発言し,I株主やJ株主も質問があると発言していたにもかかわらず,被告の議長がこれを無視し,誰にも質問の機会を与えないまま,採決の手続をとったことが明らかである。このような被告の議長のとった措置は,前記認定のとおり,被告の議長が本件株主総会の議事の進行に関し,いったんは各議案の説明後に質問を受けることを了承していたといった事実も併せ考慮 とが明らかである。このような被告の議長のとった措置は,前記認定のとおり,被告の議長が本件株主総会の議事の進行に関し,いったんは各議案の説明後に質問を受けることを了承していたといった事実も併せ考慮すると,株主総会の議長の議事整理権限の行使という観点からみる限りは,不適切ないし不公正なものといわざるを得ない(なお,被告の議長の議事の進行の不適切さと本件各決議の取消しの問題については後に項を改めて検討する。)。 ところで,前記3で述べたとおり,被告の議長の議事整理権限の行使の問題と取締役及び監査役の説明義務の問題は同列に論ずることはできないというべきであり,第5号議案の採決の際に被告の議長がとった措置が不適切ないしは不公正であると認めることはできるものの,第5号議案については,具体的な質問が一切なされていないことからすると,そもそも説明義務の問題自体が生じるかどうかをまず検討する必要があるというべきである。この点については,既に述べたとおり,株主から実際に質問の意思表明がなされた時点で,取締役及び監査役が質問の内容を予測できたというような場合であれば説明義務の問題が生じ得ると解すべきことからすると,第5号議案の審議に当たっては,すでに多数の株主が質問の意思を表明していたことは明らかであり,それまでの審議の経過と議案の性質上,被告の取締役及び監査役においては当該質問の内容が一応は予測できたものと認めるのが相当といえる。しかしながら,以下に述べるとおり,そのことがただちに第5号議案に関する被告の取締役及び監査役の説明義務違反を構成するとまで認めることはできないというべきである。 (2) 第5号議案に関する実質的関連事項及び実際の説明内容とその評価についてア第5号議案に関する実質的関連事項についてまず,第5号議案は,監査役の選任に関 ことはできないというべきである。 (2) 第5号議案に関する実質的関連事項及び実際の説明内容とその評価についてア第5号議案に関する実質的関連事項についてまず,第5号議案は,監査役の選任に関する決議事項であり,商法施行規則13条1項1号によれば,監査役の「候補者の氏名,生年月日,略歴,その有する会社の株式の数,他の会社の代表者であるときはその事実」等に関する事項について説明が行われなければならず(なお,これらの事項についても,本件では,甲1号証の株主総会招集通知書中の「議決権行使についての参考書類および議決権の代理行使の勧誘に関する参考書類」によって,商法施行規則の定めるとおり,株主に明らかにされていたと認められる。),前記4(2)で認定したとおり,株主が,監査役候補者の適格性について質問をした場合,上記にふえんして,その者の業績,監査役候補者の従来の職務執行の状況など,合理的な理解及び判断を行うために必要な事項を付加的に明らかにしなければならないと解すべきである。 イ実際の説明内容とその評価についてこの点について,質問を求めていたH株主及びI株主は,証拠(甲23号証,同24号証)によれば,本件投資との関連において,監査役候補者が本件投資の当時被告の取締役であり,かつ,代表取締役(被告の議長)によるワンマン経営が継続されている被告の経営状況を考慮し監査役としての適格性に問題があり,その点を含めて質問する予定であったと述べていることが認められるが,前記4(2)で認定したとおり,少なくとも本件投資に関しては,被告の前取締役であった監査役候補者の監視義務の履行状況等を含む当時の取締役の職務執行状況等については,一応明らかにされていたと認められる。 ウ原告の関係者の知識ないしは判断資料の保有の状態について加えて,本件におい 査役候補者の監視義務の履行状況等を含む当時の取締役の職務執行状況等については,一応明らかにされていたと認められる。 ウ原告の関係者の知識ないしは判断資料の保有の状態について加えて,本件においては,質問を継続し,また質問を求めていた株主であるH株主(原告従業員),I株主(原告従業員)及びJ株主(原告取締役副社長)は,いずれも原告の役員や従業員であるところ,前記第2の1(1)アで認定したとおり,原告は内外の有価証券等に関する投資顧問等を業とする株式会社であり,原告の役員やその従業員は,いわば投資の専門家集団であることが認められる。また,証拠(乙7号証ないし同12号証,同21号証)によれば,原告は,従来から,被告の株主として,あるいは,他の被告の株主との投資一任契約に基づく運用者として,被告に対し,取締役会議事録の閲覧,保有有価証券の開示等を請求し,それに関する情報の開示を受け,遅くとも平成15年5月19日までには,被告保有の有価証券の取得価額,種類及び内容等に加えて,被告がマイカル関連債による40億円の損失計上を行ったこと,新たにUFJ銀行出資の特別目的会社の優先株式を100億円取得したこと等を認識し,また,マイカル関連債(取得額40億円),野村日本株戦略ファンド(取得額50億3000万円)及び住友不動産株式(取得額41億3000万円)の各取得に当たり,いずれも取締役決議を経ていないこと等の事実についても知悉していたものと認められる。 さらに,原告が本件株主総会の直前に,原告のホームページに掲載した文書によれば,原告は,第4号議案ないし第7号議案のいずれについても事前に賛成するとの立場を言明していたことが認められ(乙22号証,弁論の全趣旨),これらのことからすると,原告においては,平均的株主が,第4号議案ないし第7号議案の各決 第7号議案のいずれについても事前に賛成するとの立場を言明していたことが認められ(乙22号証,弁論の全趣旨),これらのことからすると,原告においては,平均的株主が,第4号議案ないし第7号議案の各決議事項に関する判断をするために必要な情報については,いずれもこれを把握していたものと認めるべきである。そして,このような原告が保有していた情報については,当然に原告の役員あるいは従業員もまたこれを認識していたと認めるのが相当であることからすると,これらの質問株主としては,本件投資に係る監査役候補者の適格性について平均的な株主が判断するのに十分な資料を有していたものと認めるのが相当である。 なお,原告は,被告の株主で,原告,原告の役員や従業員でもある者は,いずれも独立の立場で活動しており,これを原告の関係者として一括りにするのは不当であると主張するが,議決権行使の前提としての合理的な理解及び判断を行うために必要な情報の提供を受けるという観点からは,原告の役員や従業員は,いずれも相互に原告あるいは原告の役員や従業員が保有していた被告に関する情報に接することができる立場にある以上,その限度で,原告の役員あるいは従業員である質問株主について,情報の共有化がなされているとみることは,何ら支障がないというべきである。 エ小括以上認定したところによれば,第5号議案で選任の対象とされた監査役候補者の適格性を判断するために必要な具体的な事項の内容は決議の時点で既に明らかにされており,平均的な株主を前提とする限りは,第5号議案の決議について合理的な理解及び判断を行うために必要な事項の説明はなされていたものと評価することができるというべきである。 したがって,被告の議長の議事運営により,第5号議案についての個別的な審議が行われなかった事実は認められる を行うために必要な事項の説明はなされていたものと評価することができるというべきである。 したがって,被告の議長の議事運営により,第5号議案についての個別的な審議が行われなかった事実は認められるものの,そのことが被告の取締役及び監査役の説明義務違反を構成するとまでいうことはできない。 6 争点3(本件決議3についての説明義務違反の有無)について(1) 第6号議案の実質的関連事項について第6号議案は,退任取締役に対する退職慰労金の贈呈に関する決議事項であり,その実質的関連事項は「取締役の略歴」であるが(商法施行規則13条1項6号),一定の基準に従い退職慰労金の額を決定することを取締役,監査役その他第三者に一任する場合においては,確定された基準の存在,基準の周知性(閲覧可能なこと)及びその内容が支給額を一意的に定め得ることも実質的関連事項となると解すべきである。なぜなら,商法施行規則13条4項によれば,一定の基準に従い退職慰労金の額を決定することを取締役,監査役その他第三者に一任する場合,その基準の内容を参考書類に記載するか,その基準を記載した書面を本店に備え置いて株主の閲覧に供していなければならないと規定されているからである(なお,「取締役の略歴」については,本件では,甲1号証の株主総会招集通知書中の「議決権行使についての参考書類および議決権の代理行使の勧誘に関する参考書類」によって,商法施行規則の定めるとおり,株主に明らかにされていたと認められる。また,証拠(乙5号証)及び弁論の全趣旨によれば,被告において,退職慰労金の支給に関する内規が存在し,従前原告がその閲覧を求めて被告が閲覧に応じた事実が認められ,これによると,上記内規を本店に備え置いて株主の閲覧に供していたと推認できる。)。 そこで,株主が退任取締役ごとの具体的金額 が存在し,従前原告がその閲覧を求めて被告が閲覧に応じた事実が認められ,これによると,上記内規を本店に備え置いて株主の閲覧に供していたと推認できる。)。 そこで,株主が退任取締役ごとの具体的金額又は支給基準に関して質問をしたときは,取締役は,支給基準について,確定された基準の存在,基準の周知性(閲覧可能なこと)及びその内容が支給額を一意的に定め得ることを説明しなければならず,また,退職慰労金の算定に関して,退任取締役の業務執行の状況等について質問があった場合には,それが退職慰労金の算定に関わる事項である以上,「取締役の略歴」にふえんして,それらの者の業績,退任取締役の従来の職務執行の状況など,平均的な株主が議決権行使を行う前提としての合理的な理解及び判断を行うため必要な事項を付加的に明らかにしなければならないと解すべきである。 (2) 第6号議案に関する実際の説明内容とその評価について前記第2の1(5)カによれば,被告の議長が,退任取締役に対して内規に従い相当額の退職慰労金を贈呈し,その金額及び時期を取締役会に一任してほしいと説明したところ,E株主が,①本件投資についての取締役会決議の存在しないことの理由,②100億円の投資案件について取締役会決議を経た理由及び③取締役会決議の要否の基準を10億円を超える案件とした理由について質問をし,被告の議長は,①について取締役会決議を経ていないが,意見交換をしたこと,②について多額であるため取締役会決議を経たこと,③について社内外の意見を踏まえて決定したことを説明した。その後,E株主はそれ以上質問せずに,その後I株主が質問する旨発言したが,被告の議長は,I株主の発言を許可せず,そのまま第6号議案の採決に入った。 そこで,検討すると,本件投資に関する当時の取締役の職務執行(監視義務の履 せずに,その後I株主が質問する旨発言したが,被告の議長は,I株主の発言を許可せず,そのまま第6号議案の採決に入った。 そこで,検討すると,本件投資に関する当時の取締役の職務執行(監視義務の履行)の状況については,前記4(2)で認定したとおりの説明がなされており,さらにこの点について上記のとおり付加的な事項が説明されたのであるから,本件投資に関する取締役の監視義務の履行の状況に関して,平均的な株主が退職慰労金の決議事項について議決権行使の前提としての合理的な理解及び判断を行うため必要な範囲は説明されたというべきものである。 (3) I株主の質問を受け付けなかった点についてなお,原告は,退任取締役の退職慰労金の総額,個別額及び支給基準等,さらには本件投資に関する取締役の責任による減額の問題等についての質問が予定されていたと主張し,原告の従業員であるI株主の陳述書(甲23号証)によれば,同株主がおおむねそのような内容の質問を予定していた旨の記載があることは事実である。しかしながら,I株主は原告の従業員であり,前記5(2)ウで認定したとおり,当時原告が保有していた被告に関する情報を知り得たものと認められるところ,証拠(乙5号証)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,平成13年5月の定時株主総会において,退職慰労金に関する具体的基準について説明を求め,これについて被告の議長が具体的に答えており,さらに,平成14年5月の定時株主総会の際には,あらかじめ退職慰労金規程の閲覧請求をし,これに被告が応じており,一方で,本件株主総会においては,事前の閲覧請求を行っていなかったことが認められるし,さらに前記のとおり,原告が本件株主総会の直前にそのホームページで公表した文書によれば原告は第6号議案についてもこれに賛成するとの態度を表明していたことが認め を行っていなかったことが認められるし,さらに前記のとおり,原告が本件株主総会の直前にそのホームページで公表した文書によれば原告は第6号議案についてもこれに賛成するとの態度を表明していたことが認められる。これらの事実に照らすと,被告の取締役及び監査役において,I株主が,実際に退任取締役の退職慰労金の総額,個別額及び支給基準等についての具体的質問を行うことが予測できたとすることは無理があるといわざるを得ない。 以上のとおりであって,本件投資に関連した事項については既に説明が行われていたものであり,実際に退職慰労金の算定根拠等に関する具体的な質問がなかったことも明らかであるから,被告の議長がI株主の質問を受け付けないまま第6号議案の採決に移行したことが,説明義務違反を構成すると認める余地はない。 7 争点4(本件決議4についての説明義務違反の有無)について(1) 第7号議案に関する説明内容及び説明義務違反の有無について第7号議案について説明を要する事項は,前記6(1)のとおりであるところ,この点に関して,原告は,監査役の退職慰労金に関する支給基準等について説明がなかったことから,第7号議案の採決について説明義務違反があると主張する。 しかし,前記第2の1(5)キによれば,被告の議長が,J株主の質問に対して,質問を一つだけ受ける旨述べて,同株主は,監査役に対する質問として,本件投資に関する監査役の責任等について質問し,被告の監査役は,監査役の職域の中でその責任を果たし,また,被告の当時の措置が相当であると考えていた旨説明し,J株主は,監査役の説明を受けて,監査役としての責任が果たされていない旨述べて質問を終えているものであって,本件投資に関する監査役の監視義務の履行の状況に関して,平均的な株主が退職慰労金の決議事項について議決 査役の説明を受けて,監査役としての責任が果たされていない旨述べて質問を終えているものであって,本件投資に関する監査役の監視義務の履行の状況に関して,平均的な株主が退職慰労金の決議事項について議決権行使の前提としての合理的な理解及び判断を行うため必要な事項は説明されたということができる。 したがって,この点について説明義務違反があったということはできない。 (2) Lの質問を無視した点について原告は,原告の従業員が挙手と発声により質問することを求めたにもかかわらず,被告の議長がこれを無視して採決に入っており,質問をさせなかった点について説明義務違反があったと主張する。 この点に関しては,証拠(甲6号証,同18号証)及び弁論の全趣旨によれば,J株主の質問の後,被告の議長が第7号議案の採決に移ることを諮った際に,被告の株主で原告の従業員もであるL(以下「L株主」という。)が,「質問」と述べて挙手をしたこと,一方で議場内からは「異議なし」「了解」といった声があがり,被告の議長はL株主からの質問を受けることなく,第7号議案の採決に入ったことが認められる。 そこで検討すると,被告の議長の陳述書(乙23号証)によれば,L株主の発言は認識していなかったというのであり,その点に関する被告の議長の議事運営の適否の問題はともかくとしても,第7号議案の採決に先立って,L株主からの具体的な質問がなされなかったことは明らかであるし,質問の意思表明はあったとしてもその内容を被告の取締役及び監査役が予測できたとも認められないから,説明義務違反の問題は生じないというべきである。 8 被告の議長の議事整理権限の行使が著しく不公正といえるか。 以上,前記4ないし7で認定したところによれば,第4号議案ないし第7号議案の決議に関しては,被告の取締役及び監査役に いうべきである。 8 被告の議長の議事整理権限の行使が著しく不公正といえるか。 以上,前記4ないし7で認定したところによれば,第4号議案ないし第7号議案の決議に関しては,被告の取締役及び監査役について説明義務違反の事実は認められないというべきである。しかし,また一方では,前記認定のとおり,被告の議長による本件株主総会における議事運営については,第4号議案ないし第7号議案の決議に関して,いったんは個別に質問を受けることを了承しておきながら,特に第5号議案については,一切質問を受けないまま決議を行い,あるいは他の議案については質問がなされているにもかかわらずこれを一方的に打ち切るといった措置がとられていることが認められる。そして,それらの措置のなかには株主総会の議長の議事整理権限の行使としてみた場合,不適切あるいは不公正なものが含まれていることは既に述べたとおりである。 そこで,本件の中心的な争点である被告の取締役及び監査役の説明義務違反を理由とする本件各決議の取消しの問題については,これが認められないというべきであるが,株主総会の議長の議事整理権限の行使が著しく不公正な場合には,商法247条1項1号により決議の取消しを認めることができると解されるので,原告がその点を明確に主張するものではないが,前記第2の2(1)イ(ア)cや同(1)ウ(ア)c,同(1)エ(ア)cなどのとおり,議事進行の不合理性についても指摘し,決議方法の著しい不公正の点も主張しており,また,被告は,前記第2の2(1)イ(イ)cなどのとおり,議長が不規則発言による議事の混乱を回避したものであり,合理的な議事運営であったことを主張するので,念のため,以上のような被告に議長の議事運営が著しく不公正なものとまで認められるか否かについても判断することとする。 既に認定した 回避したものであり,合理的な議事運営であったことを主張するので,念のため,以上のような被告に議長の議事運営が著しく不公正なものとまで認められるか否かについても判断することとする。 既に認定した事実と証拠(甲4号証ないし同7号証,乙1号証ないし同9号証,乙16号証ないし同23号証)及び弁論の全趣旨を総合すると,本件株主総会における被告の議長の議事運営とこれに対する原告の対応に関して,次の事実が認められる。 ①原告は内外の有価証券等に関する投資顧問業務を行っている会社であり,原告の役員やその従業員はいわば投資の専門家集団で,しかも,原告は以前から被告の経営内容に強い関心を持っており,本件株主総会に臨むに当たっては,被告の会社の経営内容についての十分な知識を持っていたと認められること,また,原告の役員あるいは従業員は,平成12年以降それぞれが個人の立場で被告の株式を取得しており,平成15年2月末の時点では,その数は14人に達していること,②本件株主総会に当たっては,原告はその直前にインターネット上の自らのホームページで被告の株主総会での各議案について,第2号議案と第3号議案の定款変更の件の一部についてのみ反対し,それ以外の議案には一部意見は付したものの結論的には賛成する旨の態度をあらかじめ表明していたこと,③原告は本件株主総会に先立って被告に対し被告の有価証券投資及び経営体制に関する詳細な事前質問状を送付しており,本件株主総会では,冒頭の被告の専務による質問状についての一括回答(所要時間13分余り)のなかで,原告の事前質問状に対する被告側の一般的な回答がなされていること,④第1号議案の審議に入る前の総括審議の際には,5名の株主(うち2名が原告の従業員)からの質問があり,被告の議長との間で30分にわたって質疑応答が行われ,その後第1号 一般的な回答がなされていること,④第1号議案の審議に入る前の総括審議の際には,5名の株主(うち2名が原告の従業員)からの質問があり,被告の議長との間で30分にわたって質疑応答が行われ,その後第1号議案の審議・採決に入る際に原告の監査役でもあるE株主から,本件各議案ごとに質問を受け付けて欲しい旨の申入れがあり被告の議長がこれを了承したこと,⑤第1号議案の審議・採決の際には,採決の方法につきE株主から動議が出されたが,動議の採否につき明確な判断がなされないまま,採決が行われたこと,⑥その後,第2号議案と第8号議案の審議がなされ,ここでは,第8号議案の提案者であり,原告の代表者でもあるF株主の補足説明を初めとして,4名の株主(うち2名は原告の従業員)の発言があり(質疑応答時間約8分),さらにE株主から採決に関する動議が出されたが,動議の採否につき明確な判断がなされないまま,採決が行われ,この間に40分余りを要したこと,⑦第3号議案については,採決が終わるまでに全体で30分以上の時間を要したが,議案に対する質問はF株主のみで,ほかはE株主が1回,F株主が4回,いずれも採決の方法と結果に対する質問を行ったこと,⑧第4号議案については,原告の副社長でもあるG株主からの質問がなされ,これに被告の議長が答えた後,原告の従業員でもあるH株主からの質問がなされ,さらに同じく原告の従業員であるI株主も質問があると発言したにもかかわらず,被告の議長は,これらの質問を一方的に打ち切り,採決を行ったこと,⑨第5号議案については,F株主及びE株主が質問を受けるよう発言し,さらにI株主や同じく原告の副社長でもあるJ株主が質問があると発言したにもかかわらず,被告の議長は,原告の代表者であるF株主に対し,同じことの繰り返しを避けるよう求める趣旨の発言をするなどした上, さらにI株主や同じく原告の副社長でもあるJ株主が質問があると発言したにもかかわらず,被告の議長は,原告の代表者であるF株主に対し,同じことの繰り返しを避けるよう求める趣旨の発言をするなどした上,これらの質問を一切受けずに採決を行ったこと,⑩第6号議案については,E株主からの質問があり,被告の議長はこれに答えた後,I株主からの質問については,これを受けずに採決を行い,さらに第7号議案については,J株主からの質問があり,同株主からの求めに応じて被告の監査役がこれに回答し,その後,原告の従業員であるL株主の質問がなされたが,被告の議長はこれを受けずに(なお,被告の議長はL株主の質問には気づかなかったと述べている。),採決を行ったこと,⑪本件株主総会は,当日午前10時5分に始まり,事前質問状に対する一括回答とこれに対する質問を経て,午前11時10分ころから個別の議題の審議に入り,第1号ないし第3号議案の審議採決の後,午後12時46分ころから第4号議案の審議に入ったが,その後,第4号議案の審議採決には11分足らず,同じく第5号議案には1分余り,第6号議案には5分余り,第7号議案には9分余りの時間を要し,午後1時13分ころに閉会したこと,以上の事実が認められる。 以上認定した事実によれば,被告の議長は,いったんはE株主の求めに応じて個別の議案ごとに質問を受け付けることを了承したにもかかわらず,第4号議案ないし第6号議案の審議の際には,各質問者の質問を受け付けないまま,審議を一方的に打ち切っていることが認められ,特に第5号議案については,多数の株主からの質問要求がなされたにもかかわらず,これを一切無視して採決を行っていることが明らかである。この点に関しては,証拠(乙1号証,同2号証,同15号証ないし同18号証)及び弁論の全趣旨によれば,当時議場 の質問要求がなされたにもかかわらず,これを一切無視して採決を行っていることが明らかである。この点に関しては,証拠(乙1号証,同2号証,同15号証ないし同18号証)及び弁論の全趣旨によれば,当時議場内から,質問を求める発言とこれに反対して早期に採決をするよう求める複数の発言がなされ,議場内が一時的に騒然とした状況に陥っていたという事情は認められるものの,前記⑨で認定した第5号議案の審議の際に被告の議長によるF株主に対する発言からも窺えるとおり,被告の議長が原告の関係者の発言ということでこれらの質問を受け付けなかったものと推認できることからしても,被告の議長の議事の運営自体が不公正であったことは認めざるを得ないというべきである。 しかしながら,このような被告の議長の議事運営が,著しく不公正とまでいえるかとの観点からみると,前記①ないし③で認定したとおり,原告とその役員及び従業員は,いわば投資の専門家集団といえるところ,本件株主総会の以前から被告の経営状況について十分な知識を持っていたことが認められ,本件株主総会に臨むに当たっては,原告は,事前に,被告の有価証券投資及び経営体制に関する詳細な事前質問状を提出するとともに,一方で,本件株主総会の第4号議案ないし第7号議案については賛成する意向を表明していたものである。さらに,本件株主総会における質疑の状況をみると,前記の④ないし⑩で認定したとおり,第4号議案の審議に入る前までに,被告の議長に対し,議事の進行に関する意見も含め,延べ17回余りの株主からの質問ないし発言がなされているところ,5名による5回の質問を除き,その余の12回はすべて原告の役員あるいは従業員の株主の質問ないし発言であり,その後の第4号議案ないし第7号議案の審議に関してみても,もっぱら原告の役員あるいは従業員の株主が入れ代 回の質問を除き,その余の12回はすべて原告の役員あるいは従業員の株主の質問ないし発言であり,その後の第4号議案ないし第7号議案の審議に関してみても,もっぱら原告の役員あるいは従業員の株主が入れ代わり立ち代わり質問ないし発言を繰り返している状況にあったものである。また,被告の議長がE株主に個別の議案ごとに質問を受けることを了承したという点についても,当時の審議状況に照らす限り,被告の議長がその後の審議の際にそのことを明確に意識していたかどうかは多分に疑問が残るところである。 以上のような事情を総合して考慮すると,被告の経営状況について既に十分な知識,情報を得ており,第4号議案ないし第7号議案に関する決議についても十分な情報を持っていると認められ,しかも事前に賛成の意向まで表明している原告の関係者からの質問が繰り返しなされた結果,被告の議長としては,一時的な混乱状態のもとで,既に原告の関係者に対しては必要な説明はなされていると即断して,前記のように原告の関係者からなされた質問を打ち切りあるいは無視するといった措置をとるに至ったものと認めるのが相当である。そうであるとすれば,原告の事前質問状に対しては,被告の側から一応の回答がなされており,しかも,第4号ないし第7号議案についての実質的関連事項の説明はそれぞれの決議の際には既になされているものと認められることをも併せ考慮すると,被告の議長の議事運営方法が不公正であり適切さを欠いていたとの点は否定できないにしても,本件各決議に際しての被告の議長の議事運営方法が,決議の取消しを認めざるを得ないほどに著しく不公正なものであったとまで認定することはできないと考える。 第4 結論以上認定説示したところから明らかなとおり,本件訴訟は,内外の有価証券等に関する投資顧問等を業とする株式会社である原 に著しく不公正なものであったとまで認定することはできないと考える。 第4 結論以上認定説示したところから明らかなとおり,本件訴訟は,内外の有価証券等に関する投資顧問等を業とする株式会社である原告の役員あるいは従業員が,自ら株主として出席した被告の定時株主総会において,株主からの質問に対する被告の取締役及び監査役の説明義務が尽くされないまま本件各決議がなされたとして,被告に対して当該各決議の取消しを求めた事案である。 そして,原告は,本件株主総会における本件各決議に関しては,被告の議長が株主の質問を途中で打ち切りあるいはこれを無視して採決を行っており,被告の取締役及び監査役による説明義務が尽くされていないと主張するが,前記第3での検討の結果のとおり,当裁判所としては,本件株主総会に出席した時点で原告及びその役員あるいは従業員である株主が有していた被告会社に対する知識・情報の内容や本件株主総会における審議の内容をも考慮した上で,いずれの決議についても被告の取締役及び監査役として必要な説明義務は尽くされていたものと判断したものである。さらに,当裁判所としては,被告の議長の議事運営の適否の観点からの本件各決議の取消しの問題について検討し,被告の議長による本件株主総会の議事運営については,被告の議長が株主の質問を打ち切りあるいはこれを無視した点において不公正さを否定できないと認められるものの,これが本件各決議を取り消すことを認めるに足るほどの著しい程度にまでは達していないと判断したものである。 東京地方裁判所民事第8部裁判長裁判官西岡清一郎裁判官真鍋美穂子 裁判長裁判官西岡清一郎裁判官真鍋美穂子 裁判官名島亨卓別紙総会決議目録 1 取締役8名選任の件(第4号議案)A,C,M,N,O,P,Q及びRの8名を取締役に選任する旨の決議 2 監査役1名選任の件(第5号議案)Bを監査役に選任する旨の決議 3 退任した取締役に対し退職慰労金贈呈の件(第6号議案)平成15年2月28日をもって取締役を退任したB,Sの両氏に対し,また,第55回定時株主総会終結のときをもって取締役を退任し執行役員に就任予定のT,U及びVの3氏に対し,その在任中の労に報いるため,当社の内規に従って相当額の範囲内で退職慰労金を贈呈することとし,その具体的な金額,贈呈の時期及び方法等は,取締役会に一任する旨の決議 4 退任した監査役に対し退職慰労金贈呈の件(第7号議案)第55回定時株主総会終結のときをもって取締役を退任するK氏に対し,その在任中の労に報いるため,当社の内規に従って相当額の範囲内で退職慰労金を贈呈することとし,その具体的な金額,贈呈の時期及び方法等は,監査役の協議に一任する旨の決議

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