- 1 -町主催の中学生の訪米派遣事業において,当時の町長及び教育長が韓国経由便のビジネスクラスを利用して生徒等と別行動をとったことに関し,当時の町長個人に別行動分の費用相当額の損害賠償を請求するよう求めた住民訴訟につき,ビジネスクラス利用に伴う航空運賃差額分を公費から支出したことには町長としての裁量逸脱があり違法であるとして,請求を一部認容した事例。 平成18年4月27日判決言渡平成16年(行ウ)第35号損害賠償請求住民訴訟事件口頭弁論終結日平成18年2月9日判決主文 被告は,Aに対し,金29万4000円及びこれに対する平成16年8月17日から支払済みまで年5分の割合による金員を請求せよ。 原告のその余の請求を棄却する。 訴訟費用は,これを5分し,その1を原告の,その余を被告の負担とする。 事実 及び理由第1当事者の求める裁判 請求の趣旨(1)被告は,Aに対し,32万4000円及びこれに対する平成16年8月17日から支払済みまで年5分の割合による金員を請求せよ。 (2)訴訟費用は被告の負担とする。 請求の趣旨に対する答弁(1)原告の請求を棄却する。 (2)訴訟費用は原告の負担とする。 第2事案の概要- 2 -本件は,合併前のC町住民で現在のB市住民である原告が,C町長の承継人であるB市長の被告に対し,平成16年度第6回C町国際理解教育海外派遣事業において,訪米親善使節団長であるC町長及び副団長であるC町教育長が韓国経由便のビジネスクラスを利用して生徒等とは別行動をとったことが,公務として不必要かつ不適当で,同事業に係る追加分2名の補助金交付の支出負担行為及び支出命令が違法な公金の支出であるとして,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,同支出負担行為及び支出命令をC町長として決裁 必要かつ不適当で,同事業に係る追加分2名の補助金交付の支出負担行為及び支出命令が違法な公金の支出であるとして,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,同支出負担行為及び支出命令をC町長として決裁したAに,町に対する不法行為の損害賠償責任があるとして,町の被った損害である別行動によって生じた差額分合計32万4000円及びこれに対する同補助金の支出後である平成16年8月17日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を請求するように求めた事案である。 前提となる事実当事者間に争いのない事実と甲1,2,6の①ないし⑥,8の①ないし<27>,乙1及び後記各証拠により,認めることができる。 (1)当事者等ア原告は,B市(合併前のC町に属する地域)の住民である。 イC町は,平成18年1月1日,B市外8市町と合併し,B市となった(以下,単に「C町」又は「町」という場合には,合併前のC町をさす。)。 ウ平成16年8月当時,C町長はAであり,C町教育長はDであったが,Dは同年11月8日教育長を退職した。一方,Aは,平成18年1月1日C町がB市に合併して消滅したため,C町長を失職し,同日,C町長の権利義務は,被告のB市長が承継した。 (2)C町では,平成16年8月17日から同月25日まで,平成16年度第6回C町国際理解教育海外派遣事業(以下「本件派遣事業」という。)として,中学生らの米国チュアラー校への訪問・ホームスティ等が実施された。 - 3 -本件派遣事業では,第6次訪米親善使節団(以下「訪米使節団」という。)が結成されて,Aが団長,Dが副団長となり,随行員3名,男子中学生2名,女子中学生8名が参加した(以下,随行員と中学生らをあわせて「生徒等」という。)。 (3)本件派遣事業における往復の行路及び経費ア生徒等は,ノ 長,Dが副団長となり,随行員3名,男子中学生2名,女子中学生8名が参加した(以下,随行員と中学生らをあわせて「生徒等」という。)。 (3)本件派遣事業における往復の行路及び経費ア生徒等は,ノースウェスト航空機エコノミークラスを利用して,往路は,平成16年8月17日12時40分に愛知県小牧市の名古屋空港を出発し,成田空港経由でサンフランシスコに向かい,復路は,同月24日13時25分にロサンゼルスを出発し,同月25日19時35分に成田空港経由で名古屋空港に到着した。 生徒等の往復の航空運賃は一人当たり14万8000円であった。これに対し,団員負担金として,教員らの随行員3名は各3万円,中学生10名は各13万円を負担した。 イA及びD(以下「Aら」ともいう。)は,生徒等とは別行動をし,大韓航空機ビジネスクラスを利用して,往路は平成16年8月17日9時30分に名古屋空港を出発し,ソウル経由(11時25分到着,18時25分出発)でサンフランシスコに向かい,復路は同月20日14時50分にサンフランシスコを出発し,同月21日19時10分にソウル市外の仁川(インチョン)空港に到着してソウル市内のリッツカールトンホテルに一泊し,翌22日18時50分ソウル発の便に搭乗して,同日20時20分ころ名古屋空港に到着した(甲3)。 Aらの往復の航空運賃は一人当たり29万5000円であり,韓国での宿泊費は一人当たり1万5000円であった。これに対し,Aらは,団員負担金として各5万円を負担した。 (4)本件派遣事業の予算ア本件派遣事業は,平成16年度当初予算(訪日団経費分を含む)では生- 4 -徒10名,引率5名として405万円を見込んでいたが,同年4月ころ,町長であるAらが団員に加わることになったため,Aら2名の航空運賃・ホテル宿泊代・空港税等の費 日団経費分を含む)では生- 4 -徒10名,引率5名として405万円を見込んでいたが,同年4月ころ,町長であるAらが団員に加わることになったため,Aら2名の航空運賃・ホテル宿泊代・空港税等の費用分として,補正予算で83万円の補助金を追加計上した(乙13,15,17,以下「本件追加補助金」という。)。 イ本件追加補助金が計上された平成16年度C町一般会計補正予算は,同年7月に開会されたC町議会臨時会(以下「本件議会」という。)において可決された(甲7)。 ウAは,C町長として,平成16年6月23日,C中学校訪米使節団に対し当初予算分405万円の補助金を交付することにつき,支出負担行為及び支出命令を決裁した(乙13,14)。 また,Aは,C町長として,同年7月13日,C中学校訪米使節団に対し補正予算分83万円の本件追加補助金を交付することにつき,支出負担行為及び支出命令を決裁した(乙15,16,以下「本件支出負担行為及び支出命令」という。)。 (5)監査請求の経緯ア原告は,平成16年10月18日,C町監査委員に対し,A及びDの上記(3)イの別行動により町が被った損害の賠償を求める住民監査請求を行った。 イC町監査委員は,本案審理の結果,平成16年11月29日,C町長であるA及び前教育長であるDに対し,上記(3)ア,イの差額分各自16万2000円を町に返還するよう請求した(甲4・2枚目)。 ウこれに対し,AC町長は,平成16年12月17日,監査委員に対し,生徒に同行してノースウエスト航空のビジネスクラスを利用した場合の航空運賃は32万円で,今回の別便で行動したことにより要した費用に宿泊代を加えた額を超えるから,返還を求める監査結果には承服し難いとして監査の再考を強く求める書面を監査委員に提出した(乙10)。 - 5 -エそ 円で,今回の別便で行動したことにより要した費用に宿泊代を加えた額を超えるから,返還を求める監査結果には承服し難いとして監査の再考を強く求める書面を監査委員に提出した(乙10)。 - 5 -エそこで,C町監査委員は,平成16年12月22日,C町長であるA及び前教育長であるDに対し,上記イ等の必要な措置を平成16年12月28日までに講じるよう勧告した(甲4・3ないし5枚目)。 オこれに対し,AC町長は,平成16年12月27日,監査委員に対し,上記勧告において,監査委員が損害金の請求を直接行っているのは手続的に不適正であるなどとして,再度適正な監査を実施するように求める書面を提出した。そして,Aらは,上記監査結果に従い,各自16万2000円を町に返還することを拒否する意思を公的に表明した(甲8の<26><27>)。 (6)そのため,原告は,平成16年12月28日に本件住民訴訟を提起した。 なお,本件住民訴訟において,原告が監査請求を前置していることは当事者間に争いがない。 争点,及び争点に関する当事者の主張(1)Aらの韓国経由便のビジネスクラスを利用した別行動は,公務として不必要かつ不適当な行為であるとして,本件支出負担行為及び支出命令が違法となり,AがC町に対し,不法行為の損害賠償責任を負うか。 (原告の主張)Aらの韓国経由便のビジネスクラスを利用した別行動は,次のとおり正当な理由のない観光目的の別行動であったといえるから,公務として不必要かつ不適当な行為であった。したがって,別行動のための費用分を含む本件支出負担行為及び支出命令は違法である。ところが,Aは,違法であることを知りながら,敢えて別行動をとり,C町長として本件支出負担行為及び支出命令を決裁して,C町の財産に後記損害を発生させたものだから,当該職員として町に対し民 法である。ところが,Aは,違法であることを知りながら,敢えて別行動をとり,C町長として本件支出負担行為及び支出命令を決裁して,C町の財産に後記損害を発生させたものだから,当該職員として町に対し民法709条の不法行為の損害賠償責任を負う。 アAらにおける引率・同行義務A及びDは,訪米使節団長及び副団長であり,引率者であったから,当- 6 -然に生徒等と同行して同一便のエコノミークラスに搭乗すべきであった。 訪米使節団は,平成16年8月13日,出発に当たっての決意を確認し団としての結束を固めることを目的として,結団式を行った。Aらも生徒等と同様,氏名・住所・電話番号及び勤務先に至るまで派遣団員名簿に記載されていたのであって,公式行事にのみ出席すれば団長及び副団長としての責務が果たされるものではなかった。 イ観光目的での別行動A及びDが韓国経由で訪米することは早い時期から計画されており,韓国国内における観光を目的としたものであった。 Aらが,韓国において,仁川空港内のホテルではなく,わざわざソウル市内の有名ホテル(グレードはSLクラス)を選択して宿泊していること1つをとっても,別行動が観光目的であったことを推認させるに十分である。加えて,Aは,平成13年に行われた第3回国際理解教育海外派遣事業に訪米使節団長として参加した際にも,生徒等と別行動をとって,ユナイテッド航空機のビジネスクラスを利用して米国内を観光していたと思われるし,平成12年5月及び平成16年6月にキャボット社訪問のために訪米した際にも,韓国経由で,当日の乗り継ぎ便があったにもかかわらず,往路でわざわざ宿泊してから渡米している。これらのAの過去の実例からして,本件も,観光目的の別行動であったことは明らかである。 ウ被告主張に対する反論(ア)合併議論との関係合併議論 かわらず,往路でわざわざ宿泊してから渡米している。これらのAの過去の実例からして,本件も,観光目的の別行動であったことは明らかである。 ウ被告主張に対する反論(ア)合併議論との関係合併議論が重要な時期を迎えたのは,参議院選挙が終わった平成16年7月5日すぎから同年8月いっぱいにかけてであり,その原因はE市の動向によるところが大きく,A及びDが団長及び副団長に就任することが決定した同年3月末から4月中旬ころには,同年7月から8月に合併議論が重要な時期になるとは全く予想できていなかった。また,Aは,- 7 -遅くとも同年6月15日までに,同年8月3日から11日まで実施の市町村長等海外調査研究視察への申し込みをし,実際に参加しているのであって,Aの合併協議会等への出席は場当たり的である。 したがって,合併議論が重要な時期であり,町長としての公務が多忙となる可能性があったとの主張は,後から付けた理由にすぎない。 (イ)Dの健康状況Dに健康上の不安があるなら,そもそも本件派遣事業に参加せずに他の者に副団長を委ねれば足りる。また,本当にDの健康に不安があったのなら,韓国での宿泊場所には,医療態勢が充実し日本から家族が駆け付けやすい空港内ホテルを選ぶはずである。 (ウ)経済的観点被告は大韓航空機が安価であったため韓国経由となったにすぎないと主張するが,経済的観点を重視するのであれば,国家公務員等の旅費に関する法律を準用すべき明文規定がない以上,地方財政法4条1項の「地方公共団体の経費は,その目的を達成するための必要且つ最少の限度をこえて,これを支出してはならない。」の趣旨からしてエコノミークラスを選択すべきである。ノースウェスト航空機と大韓航空機のビジネスクラス同士を比較し,大韓航空機の方が安価であったからといって,韓国経由を正当 れを支出してはならない。」の趣旨からしてエコノミークラスを選択すべきである。ノースウェスト航空機と大韓航空機のビジネスクラス同士を比較し,大韓航空機の方が安価であったからといって,韓国経由を正当化する理由とはならない。 (被告の主張)Aらの韓国経由便のビジネスクラスを利用した別行動には,次のとおり正当な理由があり,公務として不必要かつ不適当ということはない。したがって,本件支出負担行為及び支出命令は違法ではないから,Aが町に対し不法行為の損害賠償責任を負うことはない。 ア早期帰国の理由(ア)教育長であるDは,インシュリン注射が必要で健康に不安があり,- 8 -当初は本件派遣事業への参加を固辞していたものである。しかし,前年度米国から教育長に当たる人が来町していたことから,儀礼上,今回は教育長が訪米することが望ましいと判断され,教育長であるDが町長とともに訪米することとなった。 もっとも,Dは,長期滞在には健康上不安があったことから,公式行事が終了した後は,生徒等を残して一足先に帰国したものである。 (イ)また,C町は,B市ほかの市町村との合併を協議しており,C町としての国際理解教育海外派遣事業は今回で最後となる可能性があった。 そこで,町を代表する者が訪問して最後を締めくくるのが礼儀であると判断し,町長であるAが訪米することとなった。 もっとも,合併議論については,平成16年4月ころから合併の期日をめぐって各市町村の意見調整が難航しており,同年8月ころには,E市の動向次第で,同市を含め新しいB市として合併するか否かが不確定な状況にあった。合併議論が重要な時期には,町長は,他町村の首長や町議会との調整を臨機応変に行う必要がある。よって,公式行事が終了した後に,Aが生徒等より一足先に帰国することは合理的な判断であった。 (ウ) た。合併議論が重要な時期には,町長は,他町村の首長や町議会との調整を臨機応変に行う必要がある。よって,公式行事が終了した後に,Aが生徒等より一足先に帰国することは合理的な判断であった。 (ウ)団長及び副団長であるAらが最後まで生徒等と行動をともにしなくても,公式行事に出席した後は,随行員と添乗員,現地の協力者合計5名が待機して万一の事態に備えていた。このようにAらは,安全確保の体制を整えて帰国しており,早期帰国に何ら問題はなかった。 イビジネスクラスの利用(ア)C町職員の旅費に関する条例には外国旅行に関する航空運賃に関する明文規定はないが,国家公務員等の旅費に関する法律では,内閣総理大臣等指定職は最上級(ファーストクラス)の運賃を支給できるものとされ,11級(課長級)から9級(準課長・室長級)の職務にある者は,- 9 -最上級の直近の下位の級(ビジネスクラス)の運賃を支給できるとされている。F県の場合も,国家公務員等の旅費に関する法律を準用し,三役(知事・副知事・出納長)・県議会議員は最上級(ファーストクラス)の運賃を支給できるとし,11級(部長級)から9級(課長級)の職にある者はビジネスクラスの運賃を支給できるとされている。このことに照らせば,選挙で選ばれた地方公共団体の代表である町長や教育行政の長である教育長は少なくとも国家公務員やF県職員の11級から9級の職以上のクラスに属すると考えるが相当であって,Aらは本来的にビジネスクラスを利用できる。 (イ)なお,地方財政法4条1項は,地方公共団体の財政支出の基本的な考え方を示すものであるが,それは単に旅費を節減するという意味ではなく,必要な旅費を十分に支給することを否定するものではない。選挙で選ばれた地方公共団体の首長が公務出張する場合や教育行政の長たる地位にある者が首 のであるが,それは単に旅費を節減するという意味ではなく,必要な旅費を十分に支給することを否定するものではない。選挙で選ばれた地方公共団体の首長が公務出張する場合や教育行政の長たる地位にある者が首長に同行する場合に,旅費について,その地位に応じた相応の取扱いを受けることは同条項も許容していると解すべきであるし,国家公務員等の旅費に関する法律1条の趣旨にも沿うものである。 特に今回の訪米は町長や教育長が町を代表して米国を訪問するという国際的親善行事であり,町の代表者としての体面を保つ意味でもビジネスクラスの利用は妥当であった。 ウ韓国経由の理由韓国経由は,ノースウェスト航空機より旅費の安い大韓航空機を選択したことに必然的に伴ったことにすぎず,Aらには韓国で観光する意図はなかったし,実際に観光したという事実もない。 往路は当日の乗り継ぎ便があったので韓国で宿泊していないが,復路は当日の乗り継ぎ便がなかったので翌日の便まで待ったにすぎない。韓国での宿泊は,乗り継ぎ便の都合上やむを得ないことであった。 - 10 -韓国経由について観光目的や遊興目的であったとする原告の主張は,邪推にすぎない。 (2)本件支出負担行為及び支出命令は,議会の有効な議決を経た予算に基づかないものとして違法か。 (原告の主張)本件追加補助金83万円が計上された平成16年度C町一般会計補正予算案については,その議案説明概要において,Aらが往路・復路ともに韓国経由で生徒等と別便,別行動をとること,生徒等より先に帰国すること,生徒等はエコノミークラスで,A及びDはビジネスクラスであることなどの説明は一切なされなかった。これらの説明があれば,平成16年7月の本件議会では同補正予算案が可決されなかった可能性が極めて高い。したがって,本件議会における上記補正予算案への議決は であることなどの説明は一切なされなかった。これらの説明があれば,平成16年7月の本件議会では同補正予算案が可決されなかった可能性が極めて高い。したがって,本件議会における上記補正予算案への議決は法的には無効であり,存在しないから,本件支出負担行為及び支出命令は,議会の有効な議決を経た予算に基づかないものとして,違法である。 (被告の主張)町議会で議決に付すべき予算案は,その事業名と予算額で足りるのであり,議案説明概要では特に重要な事業についてのみ,その概要を説明するにとどめるのが通常である。また,今回のA及びDの別行動は合理的理由に基づくものであるから,仮に議会で説明していても補正予算の可決という結論を左右するものではない。したがって,本件支出負担行為及び支出命令は,議会の有効な議決を経た予算に基づくもので,適法である。 (3)C町の損害(原告の主張)A及びDは,訪米使節団長及び副団長であるのだから,搭乗すべき便は,生徒等と同一便のエコノミークラスとすべきであった。したがって,本件支出負担行為及び支出命令により,Aらの航空運賃,宿泊費と生徒等との航空- 11 -運賃との2名分の差額合計32万4000円の損害が町に生じている。 (被告の主張)上記(1)(被告の主張)イのとおり,町長や教育長であるAらは外国旅行の航空便については本来的にビジネスクラスに搭乗することができる以上,Aらが生徒等と同行するとしても,ノースウエスト航空機のビジネスクラスを利用することになる。そして,ノースウエスト航空機のビジネスクラスと大韓航空機のビジネスクラスの運賃を比較すると,前者は32万円かかるが後者は29万5000円で済み,仮に韓国での宿泊費1万5000円を含めても,大韓航空機のビジネスクラスを利用した方が安価である。したがって,Aらの別行動に の運賃を比較すると,前者は32万円かかるが後者は29万5000円で済み,仮に韓国での宿泊費1万5000円を含めても,大韓航空機のビジネスクラスを利用した方が安価である。したがって,Aらの別行動によって,C町に損害は生じていない。 第3当裁判所の判断 本件追加補助金からの旅費支出等を巡る紛争の経過前提となる事実と甲1ないし3,5,6の①ないし⑥,7,8の①ないし<27>,9の①ないし③,10,11,12の①ないし⑤,15の②,22,28,乙12,14,17ないし19,20(一部),22ないし23,24(一部),25ないし28,証人Aの証言(一部)及び弁論の全趣旨によると,次の事実を認めることができる。 (1)C町における国際理解教育海外派遣事業アA(昭和22年生)は,高校卒業後,家業の電気水道業を営んでいたが,C町では,従来,町長選挙が対立候補がなく行われなかったので,無投票防止を掲げて立候補し,平成8年10月C町長に初当選した。Aは,町長就任後,C町役場職員に対し,行政におけるコスト意識を持ち,コスト削減に努めるように指導してきた。そして,Aは,平成11年に町立C中学校の生徒らを米国にホームスティさせる第1回C町国際理解教育海外派遣事業を実施し,以後,毎年,同派遣事業を実施してきた。 Aは,平成12年10月に再選され,町長2期目を務め,本件旅費支出- 12 -を巡る紛争が発生していた平成16年10月には,C町長に3選され,平成18年1月1日C町がB市に合併したのに伴い,3期目の任期途中にC町長の職を失職した。 イ上記のとおり,C町国際理解教育海外派遣事業は,町立C中学校が米国カリフォルニア州のチュアラー校と提携し,相互に生徒を派遣するなどして国際理解を深める事業として,平成11年度から実施されていた。同派遣事業には,毎 町国際理解教育海外派遣事業は,町立C中学校が米国カリフォルニア州のチュアラー校と提携し,相互に生徒を派遣するなどして国際理解を深める事業として,平成11年度から実施されていた。同派遣事業には,毎年,C中学校の生徒が8ないし10名参加し,町長,C町助役,町議会議長,C中学校校長や教育委員等が訪米使節団長ないし副団長となって,C中学校教諭等とともに訪米していた(甲12の①ないし⑤,乙24)。同派遣事業に要する費用は,C町が毎年予算化して補助金として支出しており,費用の一部として,各参加者がそれぞれ団員負担金を支払っていたが,この負担金は,関係者の間で,主に往復の航空運賃の一部に充当されるものとして理解されていた。 (2)本件派遣事業の行程等ア本件派遣事業は,平成16年8月17日から同月25日までの日程で行われたが,同月13日に訪米使節団の結団式が行われた。結団式の出席者は,団員であるA,D,随行員及び生徒らのほか,町議会議長,文教民生委員長,教育委員等であったが,その際,Aは,合併協議の関係で早く帰らせていただきますとの挨拶をしたが,具体的な別行動の内容等は説明しなかった(甲9の②③)。 イ本件派遣事業の行程は,次のとおりであった(乙18)。 (ア)Aら及び生徒等は,次のとおり別々の便で,平成16年8月17日にC町を出発してサンフランシスコへ赴き,同地のホテルにて合流した(甲2,3)。 生徒等は,ノースウェスト航空機エコノミークラスを利用して,同日12時40分に名古屋空港を出発し,成田空港経由(13時55分到着,- 13 -15時30分出発)でサンフランシスコに赴いた。 一方,Aらは,大韓航空機ビジネスクラスを利用して,同日9時30分に名古屋空港を出発し,ソウル経由(11時25分到着,18時25分出発)でサンフランシスコに赴い 分出発)でサンフランシスコに赴いた。 一方,Aらは,大韓航空機ビジネスクラスを利用して,同日9時30分に名古屋空港を出発し,ソウル経由(11時25分到着,18時25分出発)でサンフランシスコに赴いた。 (イ)Aら及び生徒等は,同月18日は,一行でグレート・アメリカを見学の上,サリナス市へと移動した(甲2,3)。 そして,一行は,同月19日にチュアラー校において,公式歓迎会や授業等へ参加した。その後,生徒らは,ホームスティ先へと向かい,Aら及び随行員は,同日夜に開催されたチュアラー校職員や関係者との夕食会に出席した(乙18)。 (ウ)Aらは,同月20日に帰路につき,大韓航空機ビジネスクラスを利用して14時50分にサンフランシスコを出発し,同月21日19時10分にソウル市外の仁川国際空港に到着して,ソウル市新都心の江南区にある高級ホテルのリッツカールトンホテルに一泊した。翌22日は,ホテルで朝食後,午前10時ころホテルを出て,ソウル市中心部の繁華街である明洞(ミョンドン)に出かけて飲食等をし,同日午後,上記ホテルに戻って,18時50分ソウル発の便に搭乗して20時20分ころ名古屋空港に到着した(乙18ないし20)。 (エ)Aらが同月20日に米国を出国した後は,生徒らの引率は,随行員と添乗員,現地の協力者合計5名が行ない,生徒等は,同月21日及び22日のカマリロ市におけるホームスティを経て,同月23日にロサンゼルスに移動し,同月24日に帰路についた。生徒等は,ノースウェスト航空機エコノミークラスを利用して,同日13時25分にロサンゼルスを出発し,同月25日に成田空港経由(16時45分到着,18時20分出発)で名古屋空港に到着した。 (3)本件派遣事業の行程の決定経緯等- 14 -アC町教育委員会では,名古屋市千種区のGトラベル株式 ,同月25日に成田空港経由(16時45分到着,18時20分出発)で名古屋空港に到着した。 (3)本件派遣事業の行程の決定経緯等- 14 -アC町教育委員会では,名古屋市千種区のGトラベル株式会社(以下「旅行会社」という。)に本件派遣事業の旅行手配を依頼していた。 本件派遣事業に係る旅行費用は,平成16年3月11日時点では生徒8名,同行者4名の合計12名で見積もられていたが,そのころ参加生徒が10名となったため,同月16日には生徒10名,同行者4名の合計14名での見積りが作成された(甲6の①,乙25ないし27)。 イ団長,副団長の人選については,平成16年2月から3月ころ,学校関係者や町議会議員では調整がつかなかったことから,教育長であるDから,町長のAに訪米の依頼があった。Aは,平成15年には米国から教育長に当たる人物が来町していたことから,教育長であるDが訪米するのが良いのではないかとの意向を伝えたところ,Dは,糖尿病治療薬のインシュリン注射が必要なため,健康に不安があることを理由に一旦固辞した(乙12,24)。 その後,Aは,C町総務課職員のHから,合併のため本件派遣事業が最後となる可能性が高いことから,町長と教育長とが訪米し,最後を締めくくるのが礼儀ではないかとの助言を受け,同年4月には,教育長のDとともに本件派遣事業に参加する方向での検討を命じた。もっとも,Aは,そのころ企業誘致の関係で訪米の可能性もあったことから,これを本件派遣事業と同時期に設定することができないかとも考えており,また,Dも健康上の不安があるということであったため,Aとしては,当初から,チュアラー校での公式行事に参加した後は生徒等とは別行動をとる計画であった。そのため,生徒等13名分の旅行手配が先行的になされた(乙12,24)。 ウ旅行会社は,平 たため,Aとしては,当初から,チュアラー校での公式行事に参加した後は生徒等とは別行動をとる計画であった。そのため,生徒等13名分の旅行手配が先行的になされた(乙12,24)。 ウ旅行会社は,平成16年4月15日,Aが誘致先であるシカゴのキャボット社を訪問する場合としない場合につき,ノースウェスト航空,大韓航空,ユナイテッド航空のビジネスクラスの価格を比較した見積案を作成し- 15 -た(乙22)。しかし,Aによるキャボット社への訪問は,同年6月末となったことから,Aは,本件派遣事業とは別に訪米している。 上記見積案では,キャボット社を訪問しない場合につき,大韓航空機ビジネスクラスの航空運賃は29万5000円であるのに対し,ノースウェスト航空機ビジネスクラスの航空運賃は32万円であった。そして,大韓航空機ビジネスクラスを利用した場合には,復路に当日の乗り継ぎ便の設定がないため,韓国内での宿泊を伴うものであった(乙22,23)。 エAは,同年5月には,Dとともに本件派遣事業の訪米使節団長ないし副団長として参加することを正式に決定した。そのため,旅行会社は,同年5月31日に,生徒10名,同行者3名の合計13名分とAら2名分の別行動の内容の旅行見積案を作成した(甲6の②③)。 上記見積案では,韓国での宿泊先はソウル市中区のロッテホテルと予定されていたが,Aが,同ホテルが繁華街の近くにあるため,静かな場所がよいと希望したので,同年7月5日にソウル市江南区のリッツカールトンホテルに変更された(甲6の④)。 オなお,上記イ,ウの点に関し,原告は,乙22のファクシミリ送信の日付が平成16年12月17日となっていることからその内容は信用できず,本件派遣事業による訪米と同一の機会にキャボット社訪問を検討していた事実は虚偽であると主張しているが,同 2のファクシミリ送信の日付が平成16年12月17日となっていることからその内容は信用できず,本件派遣事業による訪米と同一の機会にキャボット社訪問を検討していた事実は虚偽であると主張しているが,同書面は右肩に「2004.APR. 15」との記載があり,平成16年4月15日に作成された資料を同年12月17日に被告が旅行会社からファクシミリで取り寄せたものと認められるから,原告の主張は採用できない。そして,他に同書面の信用性を否定する事情はない。 (4)補正予算の議決,執行及び決算アAが,平成16年5月に,Dとともに本件派遣事業の訪米使節団長ないし副団長として参加することを正式に決定したので,Aら2名の航空運賃- 16 -・ホテル宿泊代・空港税等の費用追加分として,本件追加補助金83万円が補正予算に計上された。 本件追加補助金が計上された平成16年度C町一般会計補正予算案は,平成16年7月開会の本件議会に議案として上程され,本件派遣事業の関係では「中学校費の学校管理費の負担金,補助及び交付金でございますが,83万円の追加でございまして海外派遣に伴います助成の追加でございます。」という説明がなされたが,具体的なAらの別行動の内容は説明されなかった。そのため,この点については,特に何の質問もなく,同補正予算案は本件議会において可決された(甲7)。 イAは,C町長として,平成16年6月23日,C中学校訪米使節団に対し当初予算分405万円の補助金を交付することにつき,支出負担行為及び支出命令を決裁していたが,上記補正予算案の可決を受けて,同年7月13日,同訪米使節団に対し補正予算分83万円の補助金を交付することにつき,支出負担行為及び支出命令を決裁した(本件支出負担行為及び支出命令)。その結果,当初予算分405万円の補助金は同年7月5日, 13日,同訪米使節団に対し補正予算分83万円の補助金を交付することにつき,支出負担行為及び支出命令を決裁した(本件支出負担行為及び支出命令)。その結果,当初予算分405万円の補助金は同年7月5日,補正予算分83万円の本件追加補助金は同月20日に,それぞれ支出され,同訪米使節団に交付された。 ウ本件派遣事業助成の支出を含むC町の平成16年度歳入歳出決算は,平成17年9月26日,C町議会の決算承認を経た(乙28)。 (5)平成16年当時の合併議論の状況等ア新しいB市へと向けたB地区合併協議会では,平成16年4月ころから,合併の期日をめぐって各市町村の意見調整が難航しており,同年8月2日,E市を除く各市町村は,平成17年4月1日を合併の期日とする案で了承した。しかし,E市は,平成16年8月12日の同市議会の市町村合併調査特別委員会まで確認を留保し,同委員会でも結論が出ずに継続審議となった(甲22)。 - 17 -イAは,平成16年8月3日から同月12日までの10日間,財団法人F県市町村振興協会が実施した市町村長等海外調査研究視察に参加し,訪欧した(甲28)。同視察の申し込みは同年6月15日を締めきりとするもので,Aは,そのころ参加の申し込みをしている(甲28)。 ウ上記アのE市の動向を受け,急遽平成16年8月19日及び同月23日に合併に関係する10市町村の首長会議が開かれた(甲22)。 Aは,同月19日に開催された会議には本件派遣事業に参加していたため欠席したが,同月23日に開催された市町村会議には既に帰国していたため参加している。 (6)第3回派遣事業における別行動の内容アAは,平成13年度の第3回派遣事業の際にも,訪米使節団長として訪米した。A及び副団長であった町議会議長は,チュアラー校を表敬訪問した後は生徒等と別行動を )第3回派遣事業における別行動の内容アAは,平成13年度の第3回派遣事業の際にも,訪米使節団長として訪米した。A及び副団長であった町議会議長は,チュアラー校を表敬訪問した後は生徒等と別行動をとって,C町への企業誘致の関係でシカゴ近郊にあるキャボット社を訪問している(甲12の③)。 イなお,原告は,甲14を提出し,キャボット社との契約は平成12年5月22日に既に完了しており,別行動の際に同社との交渉は一切なされていないと主張するが,平成16年にもキャボット社との契約交渉が行われているのであるから(甲24),平成13年当時も同社と関係があったとみるのが相当であり,原告の主張は採用できない。 (7)本件派遣事業から帰国後の状況ア原告が会長を務める「C町の町政を考える会」は,平成16年9月21日,本件派遣事業においてAらが別行動をしていたことには,町長及び教育長として問題があるとして,C町議会文教民生常任委員長に対し,A町長とD教育長の罷免を求める申入書を提出した(甲8の④⑥)。 イ町長のAは,原告の上記申入書を受けて平成16年9月24日開催されたC町議会文教民生常任委員会において,本件派遣事業において生徒らと- 18 -別行動をしていたことに反省を促されたが,弁解に終始し,責任を認めなかった。そのため,同月27日開会のC町議会において,要旨「町長らは,中学生と別便の航空機で訪米し,帰国も別便で韓国に一泊していることが明らかとなり,町民から町の最高責任者である町長らが生徒と行動をともにせず,別便で行くのはあまりにも無責任ではないかとの声が出され,9月24日の文教民生常任委員会では,多くの議員から同様の指摘を受け,猛省を促されたのに,団長としての責任は果たしているし,格安なので経済的などと,自らの責任を全く認めようとせず,謝罪の が出され,9月24日の文教民生常任委員会では,多くの議員から同様の指摘を受け,猛省を促されたのに,団長としての責任は果たしているし,格安なので経済的などと,自らの責任を全く認めようとせず,謝罪の言葉もなく,町民に町政への不信感を広げ,いささかも反省しない態度は極めて遺憾である。 よって,町長は,自らの行動について深く反省し,町民と町議会に謝罪するとともに,自らの処分を明らかにすることを強く求める」との議員全員賛成による問責決議がなされた。上記問責決議の内容等は,当時の日刊新聞で報道され,同年11月1日発行の「C町議会だより」(甲5)により,住民に知らされた。 一方,Aは,平成16年10月に,対立候補がなかったので無投票でC町長に3選されて,「道義的責任を感じ,けじめとして自らを処したい」として,同月1日から31日までの間,町長の給料月額100分の20に相当する16万6000円を給料から差し引く内容の条例案を町議会に提出したが,C町議会は,同月15日開会の臨時議会で,処分が軽すぎる,議会軽視として,同条例案を賛成少数で否決した。そして,Aは,原告の住民監査請求に基づくC町監査委員の,同年11月29日付及び同年12月22日付のAらに対し上記差額分各自16万2000円を町に返還するよう求める勧告には,町長として応じない旨の意思を同月27日までに表明した。 ウ教育長のDは,原告の上記申入書を受けて平成16年9月24日開催されたC町議会文教民生常任委員会において,本件派遣事業において生徒ら- 19 -と別行動をしていたことの責任を追及されて辞表を提出した。しかし,C町教育委員会は,辞表を受理せず,同年10月14日D教育長を要旨「9日間の使節団の副団長として随行する使命を受けながら,往路は生徒と別便で行き,セレモニーへの参加を済ませた後, 提出した。しかし,C町教育委員会は,辞表を受理せず,同年10月14日D教育長を要旨「9日間の使節団の副団長として随行する使命を受けながら,往路は生徒と別便で行き,セレモニーへの参加を済ませた後,生徒より早く帰国し,町民に多大の不信感を与え,このことは,当町における教育行政の最高責任者として与えられた職務を怠った行為であり,教育長職の信用を傷つけ,C町教育全体の不名誉な行為であり,その責任は免れ得ない」として文書訓告した。C町議会は,同月15日開会の臨時議会で,本件派遣事業について審査し,D教育長と教育委員長の不信任決議案を賛成多数で可決した。 これに対し,町教育委員会は,同月25日付の「町民の皆様へ」と題する文書で,教育委員会の審議の結果,「1教育長の辞職を認めない。2文書による訓告を行う。3旅費の一部の返還を求める。」との結論に達した旨を公表した(甲10,11)。 Dは,同年11月8日,教育長を任期満了で退職した。Dは,退職後の同年12月21日ころ,マスコミの取材に対し,「返還する意思はあるが,十分納得できない部分がある。町長と足並みを合わせたい」と話し,自発的な返還の意思があることを認めていたが,現在まで返還していない。 争点(1) (本件支出負担行為及び支出命令の違法性並びにAの不法行為責任の有無)について(1)原告は,Aらの韓国経由便のビジネスクラスを利用した別行動は,正当な理由のない観光目的の別行動であったといえるから,公務として不必要かつ不適当な行為であり,別行動のための費用分を含む本件支出負担行為及び支出命令は違法であると主張する。そこで,まず,Aらの別行動の目的について,前記認定事実を踏まえて検討する。 アAらの別行動は,前記認定のとおり,大韓航空機のビジネスクラスを利用して,平成16年8月17日に生徒等とは と主張する。そこで,まず,Aらの別行動の目的について,前記認定事実を踏まえて検討する。 アAらの別行動は,前記認定のとおり,大韓航空機のビジネスクラスを利用して,平成16年8月17日に生徒等とは別にソウル経由で米国に向か- 20 -い,同月20日に生徒等よりも早く帰路について同月21日ソウルで一泊し,翌22日には市中心部の繁華街である明洞に出かけ,同日18時50分にソウル発の航空便に乗り,同日20時20分ころ名古屋空港に到着したというものである。 イ前記認定のとおり,本件派遣事業の提携校であるチュアラー校における公式歓迎会や同校関係者等との夕食会は,いずれも平成16年8月19日に実施されており,その後生徒らはホームスティに入り,Aらが帰国した後は,随行員3名や添乗員等が生徒らを引率していた。そうすると,C町の首長ないし教育長といったA及びDの立場に鑑みると,両名が,他の公務などの関係から,上記の公式行事に参加した後に生徒等より早く帰国すること自体は特に不自然なことではない。 そして,同じクラスの座席であれば,大韓航空機の航空運賃はノースウェスト航空機の航空運賃よりも安価であり,大韓航空機を利用すると韓国経由の際に当日の乗り継ぎ便が設定されていないため,宿泊を伴うことになるといった事情も認められる。 こうした事情からすれば,大韓航空機を利用したこと自体については,経費削減を目的の1つとしていた可能性を否定できない。 ウしかしながら,Aらは,平成16年8月21日にソウル市内のホテルへ宿泊した後,翌22日午前には宿泊先のホテルから,ソウル市内の繁華街で観光地でもある明洞に出かけて飲食し,同日午後にホテルへ戻った後に,同日18時50分発の航空便で名古屋に帰国しているものである。生徒等は韓国での宿泊をしていないこと,名古屋への到着時間等 の繁華街で観光地でもある明洞に出かけて飲食し,同日午後にホテルへ戻った後に,同日18時50分発の航空便で名古屋に帰国しているものである。生徒等は韓国での宿泊をしていないこと,名古屋への到着時間等を考えると,ソウルにおける宿泊を伴う滞在は,C中学校訪米使節団の団員としての公的なものではなく,50代後半のAらや,健康に不安を抱えているDの個人的意向や都合を優先させた旅程としての意味合いをもつものとみることができる。そして,甲24によると,Dが平成16年6月27日に米国キャ- 21 -ボット社を韓国経由で訪問し,往路に韓国で宿泊した際には,飛行場のある仁川市内のホテルに宿泊して,翌28日12時40分発の航空機に搭乗している事実が認められ,これと対比しても,ソウルでの滞在は個人的な色彩のかなり強いものであったとの上記判断は裏付けられる。 また,第3の1(5)の合併議論の状況とそれに対するAの対応からすれば,当時Aが合併協議への対応を最優先して予定を立てていたとは考えられず,合併議論のために一刻も早く帰国したとは考え難い。Aは,第3回派遣事業の際も同一の機会にキャボット社への訪問を設定して生徒等とは別行動をとっているのであり,本件派遣事業へ参加するに当たってもキャボット社の訪問をあわせてできないか検討していることからしても,本件派遣事業については当初から公式行事までの参加を前提としていたものと考えられる。 以上の諸点からすると,Aらの別行動は,もっぱら観光目的で韓国を経由することにしたものとまではいえないが,純然たる公的な目的だけではなく,韓国経由で早期に帰国する機会を利用して,韓国での滞在を楽しむという個人的な観光目的をあわせもっていたものとみることができる。このことを否定するA及びDの陳述書の記載(乙20,24)及びAの証言は,客観 由で早期に帰国する機会を利用して,韓国での滞在を楽しむという個人的な観光目的をあわせもっていたものとみることができる。このことを否定するA及びDの陳述書の記載(乙20,24)及びAの証言は,客観的な裏付けを欠くもので採用できない。 (2)次に,上記(1)を前提に,別行動のための費用を含む本件支出負担行為及び支出命令が違法かについて検討する。 ア本件支出負担行為及び支出命令は,本件派遣事業におけるAらの旅費相当額を補助金(本件派遣事業の助成金)として交付したものである。補助金の交付は公益上の必要がある場合に認められ,町長にはその判断につき裁量権があるといえるが,裁量権の範囲を超え,その濫用があるなど,裁量権を逸脱する場合には当該補助金の交付は違法となる。 そして,本件支出負担行為及び支出命令は,交付金額がAらの旅費相当- 22 -額であることからすると,当該交付が裁量の範囲内といえるかについては,旅費の支給に関する定めを参考にすることが地方財政法4条1項の趣旨に照らして相当である。 イ航空運賃について(ア)Aらの別行動はビジネスクラスを利用してなされているが,乙6,7によれば,「C町長,助役及び収入役の給料及び旅費等に関する条例」及び「C町職員の旅費に関する条例」には,外国旅行に関する航空運賃についての明文規定はない。そうすると,旅費としてAらに支給する場合であれば,条例の定めがないまま最下級のエコノミークラスではなくビジネスクラスの航空運賃を支給することは,A及びDが町長ないし教育長であることを考慮しても,地方自治法204条3項及び204条の2に照らして,違法とされる可能性が高いと考えられる。 本件支出負担行為及び支出命令は補助金の交付であるため,上記が直接妥当するものではなく,町長が地方公共団体の首長として企業誘致のため 条の2に照らして,違法とされる可能性が高いと考えられる。 本件支出負担行為及び支出命令は補助金の交付であるため,上記が直接妥当するものではなく,町長が地方公共団体の首長として企業誘致のために渡航する場合など,公務の性質等に照らして合理的な範囲内であれば,ビジネスクラスの航空運賃相当額を補助金として交付し,公費でビジネスクラスを利用することが許される場合もあり得る。 しかしながら,旅費支給の場合との整合性や,エコノミークラスとビジネスクラスとでは航空運賃に相当の差額が生じることからして,補助金交付の形をとる場合についても,A及びDが町長ないし教育長であるからといって,当然に公費でビジネスクラスを利用できると解することはできない。海外旅行に関する航空運賃の公費負担の程度に関しては,旅行目的や,公的行事への関与の度合い,議会や住民の意向を十分に踏まえて,町長において,合理的に裁量権を行使することが要請されていると考えられる。 (イ)本件の場合は,上記(1)のとおり,Aらの別行動は,韓国経由で早- 23 -期に帰国する機会を利用して,韓国での滞在を楽しむという個人的な目的をあわせもっていたものと認められる。加えて,前記認定のとおり,Aらが生徒等と同行した期間は,本件派遣事業の期間9日のうち半分以下の4日で,そのうち公的行事等とみられるのは平成16年8月18日と19日の2日であり,他方,Aらの全旅行期間6日のうちソウルでの滞在期間が約2日である。そのため,Aは,往復とも公費でビジネスクラスを利用して本件派遣事業から帰国した後,C町議会において生徒らとの別行動を理由として議員全員賛成による問責決議を受けており,Dは,C町教育委員会に辞表を提出したが受理されず,同委員会から別行動を理由として文書による訓告を受けている。そして,Aは,C て生徒らとの別行動を理由として議員全員賛成による問責決議を受けており,Dは,C町教育委員会に辞表を提出したが受理されず,同委員会から別行動を理由として文書による訓告を受けている。そして,Aは,C町議会に対し16万6000円の給与減額の条例案を一旦提出したが,処分が軽すぎるとして,町議会で否決されている。 これらの事情からすると,Aらの公費でビジネスクラスを利用して訪米する途中に,上記個人的な目的もあわせもって韓国に宿泊する行為は,C町住民や町議会議員の理解を全く得られないものであった。Aも,中学生の訪米使節団の団長として公費で訪米するに当たり,生徒らとは往復とも別行動をとり,しかも,個人的な意向に従いソウルで宿泊する旅程を採用した以上,航空運賃の援助額につきエコノミークラスの限度ではなく,ビジネスクラスを公費で利用したことは極めて不適切で,町長としての合理的な裁量権の行使とは認められないため,町民らから強い批判を受けたことを,少なくとも一旦は自認したものであった。 (ウ)そして,第2の1(3)のとおり,本件派遣事業における生徒等の往復の航空運賃は一人当たり14万8000円であったが,これに対応すると考えられる団員負担金として,教員らの随行員3名は各3万円,中学生10名は各13万円を負担していて,生徒と全期間同行した教員らには各11万8000円が公金から補助されているものと理解できる。 - 24 -一方,Aらは,生徒等とは別行動をし,大韓航空機ビジネスクラスを利用して,その往復の航空運賃は一人当たり29万5000円であるが,Aらは,団員負担金として各5万円を負担しているので,後記宿泊代1万5000円を除くと各24万5000円が公金により補助されていると理解することができる。しかし,Aらが生徒等とは米国への往復ともに同行していない 担金として各5万円を負担しているので,後記宿泊代1万5000円を除くと各24万5000円が公金により補助されていると理解することができる。しかし,Aらが生徒等とは米国への往復ともに同行していないことや,ソウルでは私的な観光目的を持つと解される時間を有していたことからすると,上記ビジネスクラスを利用した旅費の全てを公金により補助することは,本件派遣事業当時のC町の町民や議会,教育委員会,監査委員の理解を得られず,町長の合理的な裁量権の範囲を逸脱し,濫用したものと認められる。これに対し,Aらが,ビジネスクラスと生徒達のエコノミークラスとの差額14万7000円を負担することにすると,町の航空運賃の援助額は9万8000円となり,上記宿泊代との合計は11万3000円になると解することができ,これは,上記教員らに対する援助額11万8000円と概ね一致し,町民や議会の大多数の理解を得ることができ,町長としての合理的な裁量権の範囲内にあると考えられる。 (エ)以上の次第で,本件においては,ビジネスクラス利用によって生じた航空運賃差額分を公費で負担することにつき,合理性を認めることはできない。A及びDが,訪米使節団の団長及び副団長として,私費を追加してビジネスクラスを利用することはもとより妨げないが,これを公費で負担させることについては,今回の訪米におけるAらの公的行事への関与の度合いからして,町長の合理的な裁量権を逸脱し,違法である。 なお,本件派遣事業当時,大韓航空のソウル発名古屋行きが毎日18時50分発の航空便しかなかったとしても,そのことにより上記判断は左右されない。また,被告は,上記(ア)の点に関し,国や県における旅費の定めを準用すべきであると主張するが,C町では外国旅行に関する- 25 -航空運賃について条例の定めがないのであるから 判断は左右されない。また,被告は,上記(ア)の点に関し,国や県における旅費の定めを準用すべきであると主張するが,C町では外国旅行に関する- 25 -航空運賃について条例の定めがないのであるから,「国家公務員等の旅費に関する法律」やF県における定めをそのまま準用するということにはならない。 ウ宿泊費について上記のとおり,Aらの別行動につき,もっぱら観光目的で韓国を経由することにしたものとまでは認められないこと,団員負担金がAらは各5万円で,教員ら随行員の各3万円より2万円多額であることからすれば,韓国経由に必然的に伴う宿泊費分一人当たり1万5000円については,これを公費において負担させても,A町長の裁量権を逸脱するものとまではいえない。 なお,ノースウェスト航空のエコノミークラスの航空運賃相当額14万8000円によって,大韓航空のエコノミークラスの航空運賃と韓国での宿泊費1万5000円が全て賄えるのであれば,14万8000円を補助金として交付すれば足りるとも考えられるが,大韓航空のエコノミークラスの航空運賃の具体的な額の立証はないから,この点からも,1万5000円につき,公費への過分な負担が生じているとは認められない。 (3)以上からすると,本件支出負担行為及び支出命令は,Aらのビジネスクラス利用に伴う航空運賃差額分を含んで補助金を交付するという点において,違法である。 そして,Aは,別行動の内容を知りながら,C町長として違法な本件支出負担行為及び支出命令を決裁したものであるから,民法709条に基づき,これによって町に生じた損害の賠償責任を負うものである。Aが,本件問題が発覚後の平成16年10月に無投票でC町長に3選された事実や,平成17年9月に,本件補助金の支出を含む平成16年度C町一般会計の決算が承認されたことにより, 償責任を負うものである。Aが,本件問題が発覚後の平成16年10月に無投票でC町長に3選された事実や,平成17年9月に,本件補助金の支出を含む平成16年度C町一般会計の決算が承認されたことにより,以上の判断は左右されない。 争点(3)(C町の損害)について- 26 -(1)上記2のとおり,本件支出負担行為及び支出命令は,Aらの別行動に関し,ビジネスクラス利用分について公費から支出することは,C町長であるAの合理的な裁量権の範囲を超え,濫用があるので違法だから,争点(2)について判断するまでもなく,Aは,C町に対し不法行為の損害賠償責任を負うものと認められる。 そして,Aの上記不法行為によりC町が被った損害額は,ビジネスクラス利用に伴う航空運賃差額分である。前記のとおり記録上大韓航空機のエコノミークラスの具体的な額は明らかではないが,生徒等の航空運賃であるノースウェスト航空機のエコノミークラスより廉価であると推認できるから,少なくとも生徒等の航空運賃とAらの航空運賃との差額合計29万4000円について,町に損害が生じている。 (2)この点,被告は,Aらがビジネスクラスを利用できるところ,Aらが生徒に同行してノースウェスト航空機のビジネスクラスを利用した場合の代金32万円の方が,大韓航空機のビジネスクラス利用分及び宿泊費の合計より高額であることを理由としてC町に損害が生じていないと主張する。しかしながら,本件において,Aらは,第3の2のとおり,訪問先米国との往復とも,生徒とは別行動をとり,ソウル宿泊については個人的観光目的もあわせもっていたと認められるから,Aらのビジネスクラス利用分を公費で負担させることは,利用航空会社の如何を問わず,合理性を欠き,C町長としての裁量権の範囲を超え,濫用があるので違法と評価される。したがって,被 いたと認められるから,Aらのビジネスクラス利用分を公費で負担させることは,利用航空会社の如何を問わず,合理性を欠き,C町長としての裁量権の範囲を超え,濫用があるので違法と評価される。したがって,被告の上記主張は前提を欠き採用できない。 結論 よって,原告の本件請求は,Aへの29万4000円及びこれに対する本件追加補助金の交付後である平成16年8月17日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の請求を求める限度で理由があるから認容し,これを超える部分については理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負- 27 -担について,行政事件訴訟法7条,民訴法64条を適用して,主文のとおり判決する。 津地方裁判所民事第1部裁判長裁判官水谷正俊裁判官薄井真由子裁判官本山賢太郎は転補のため署名押印することができない。 裁判長裁判官水谷正俊[ホームページ上では二桁の丸番号が表記できないため「<27>」などと表記しています。]
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