平成14年刑(わ)1412号業務妨害事件 主文 被告人を懲役1年6月に処する。 この裁判確定の日から5年間その刑の執行を猶予し,その猶予の期間中被告人を保護観察に付する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,食料品の販売等を目的とする株式会社Aが経営する東京都千代田区ab丁目c番d号東日本旅客鉄道株式会社B駅構内所在の「C」の総括店長から注意を受けたことに立腹し,同店で販売する商品に縫い針を混入して同店の業務を妨害しようと企て,平成14年3月17日午後1時13分ころ,同店において,商品陳列棚に陳列してあったクロワッサン,おにぎり及びサンドイッチに縫い針各1本をそれぞれ刺し入れて混入し,同店従業員らをして,商品の安全点検業務を余儀なくさせるなどし,もって偽計を用いて同店の業務を妨害した。 (量刑理由)本件は,B駅構内の食料品等販売店の商品に秘かに縫い針を混入し,偽計を用いて同店の業務を妨害したという事案である。 自らレジで代金を支払わないまま商品を食べようとするなど,万引きと疑われる不審な行動をとりながら,そのことを店長に咎められ注意されたことを逆恨みし,多数の客が出入りする駅構内の店で販売用に陳列していたパン,おにぎり等3種類の食品に,携帯していた長さ約3.5センチメートルの縫い針を次々と,外見上はそれと判別できないほど深く刺し入れた本件は,手口が巧妙で卑劣な犯行である。 現に被告人が縫い針を混入させた商品は3点とも客に販売され,少なくとも2点は購入客がそれと気付かず口の中に入れており,いずれも違和感を感じたことから吐き出したため,その身体等に対する現実的被害は発生しなかったものの,極めて危険 商品は3点とも客に販売され,少なくとも2点は購入客がそれと気付かず口の中に入れており,いずれも違和感を感じたことから吐き出したため,その身体等に対する現実的被害は発生しなかったものの,極めて危険性も高く,犯行態様は極めて悪い。被害店は関連商品の廃棄,新たな防犯対策の設置等の現実的な出費のほか,顧客からの問合せ等に伴う信用への影響など,様々な面で被害を被っており,本件の結果は重大で,購入客らの処罰感情が厳しいのも当然のことである。 自己の怒りにまかせて短絡的にこのような危険な犯行に及んだ自己中心的な犯行動機にも酌量の余地は全くない。しかるに,被告人は,公判廷でも,本件犯行の経緯やその後の状況等につき,かなり身勝手で曖昧な供述を繰り返すなど,規範意識の鈍磨も認められ,その刑事責任はこの種事犯にあっては重く,検察官主張のように施設内処遇により改善更生を図らせることも十分考えられる。 しかしながら,本件逮捕以来,基本的には自己の責任を一貫して認め,公判廷で被害店舗や購入客,さらには当該店長に対しても謝罪の言葉を述べ,2度と人に迷惑をかけるようなことはしない旨誓約していること,前科前歴がない高齢者であること,前記のとおり,幸いにも商品購入客の生命,身体等に対する現実的被害は生じていないこと,被告人からの手紙による謝罪を受けて,被害店長の心情が適正な処罰を求める程度に緩和されていること,被告人の姉が今後の監督を申し出ていることなど,被告人のために斟酌することができる事情もあるので,これらを考慮し,今回は最大限長期の猶予期間を付した上で,自力更生の機会を与えることとしたが,その不安定な生活状況や高齢の姉による指導にも限界があることなどから,社会内更生の実現に当たっては専門の保護観察機関による指導援護が不可欠なものと判断した。 平成14年7 えることとしたが,その不安定な生活状況や高齢の姉による指導にも限界があることなどから,社会内更生の実現に当たっては専門の保護観察機関による指導援護が不可欠なものと判断した。 平成14年7月8日東京地方裁判所刑事第4部裁判官井上弘通
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