平成20(行コ)364 都税還付加算金還付請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成17年(行ウ)第43号)

裁判年月日・裁判所
平成21年7月15日 東京高等裁判所 租税
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判決文本文13,559 文字)

主文 原判決中主文第1項を次のとおり変更する。 控訴人は,被控訴人に対し,4億8229万2400円及びこれに対する平成17年3月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 被控訴人のその余の請求を棄却する。 訴訟の総費用(ただし上告により確定した部分を除く)は,これを20分し,その1を被控訴人の,その余を控訴人の各負担とする。 この判決は,2項に限り仮に執行することができる。 事実及び理由 第1当事者の求めた裁判 控訴の趣旨(1)原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。 (2)被控訴人の請求を棄却する。 (3)訴訟の総費用は被控訴人の負担とする。 控訴の趣旨に対する答弁(1)本件控訴を棄却する。 (2)控訴費用は控訴人の負担とする。 第2事案の概要 本件は,再保険業を営むドイツ連邦共和国(以下「ドイツ」という)法人。 である被控訴人が,控訴人に対し,税務官署がした事業税及び都民税法人税割(法人税割とは法人に対して法人税額を課税標準として課せられる住民税)の減額更正により生じた過納金の還付に際し,その際に支払われた還付加算金は起算日を誤って算定されており,正当な金額の一部しか支払われていないと主張して,還付加算金の残額等の支払を求めた事案である。 なお,以下に説示する地方税法(以下「法」という)の各条項は,それぞ。 れ別表1記載のものをいう。 被控訴人は,平成10年6月,麹町税務署長から,千代田区内にある東京連絡事務所が「所得に対する租税及びある種の他の租税に関する二重価税の会費のための日本国とドイツ連邦共和国との間の協定」の定める恒久的施設に該当するものとして,平成4年7月1日から平成7年6月30日までの3事業年度分について,法人税の決定及び無申告加算税の賦課決定を受け,平成10年7 ドイツ連邦共和国との間の協定」の定める恒久的施設に該当するものとして,平成4年7月1日から平成7年6月30日までの3事業年度分について,法人税の決定及び無申告加算税の賦課決定を受け,平成10年7月22日,千代田都税事務所長(以下「処分庁」という)に対し,上記3事。 業年度分の事業税及び都民税法人税割の確定申告書を提出したところ,事業税に係る不申告加算金額が決定され,これを受けて事業税及び都民税法人税割の各本税及び延滞金を納付し,続いて,平成8年7月1日から平成10年12月31日までの3事業年度分についても,処分庁から上記と同様の処分等を受けたため,平成13年7月及び9月,事業税及び都民税法人税割の各本税及び延滞金を納付した。これに先立つ平成10年8月24日付けで,被控訴人がドイツの権限ある当局(ミュンヘン税務署)に日独租税条約に基づく相互協議の申立てを行っていたところ,平成15年7月ころ,被控訴人の東京連絡事務所に帰属すべき所得について再計算が行われ,麹町税務署長が同年9月16日付けで上記相互協議の結果に従い被控訴人の法人税について減額更正を行い,これを受けて,処分庁は,平成16年1月26日,被控訴人に課すべき事業税額及び都民税法人税割額につき減額更正を行い,同年3月16日,被控訴人に対し,減額更正により生じた過納金(過納に係る徴収金であり,本件では上記減額更正により生じた減少税額及び延滞金。過納金に延滞金を含むことは以下も同様である)を支払うとともに,還付加算金については,法17条の4第1。 項4号,法施行令6条の15第1項1号を適用して,事業税及び都民税法人税割に係る過納金とも減額更正のあった日の翌日から1月を経過する日の翌日を還付加算金算定の起算日として金額を計算してこれを支払った。これに対し,被控訴人は,還付加算金の計算に ,事業税及び都民税法人税割に係る過納金とも減額更正のあった日の翌日から1月を経過する日の翌日を還付加算金算定の起算日として金額を計算してこれを支払った。これに対し,被控訴人は,還付加算金の計算における起算日は,事業税及び都民税法人税割とも納付の日の翌日であり,還付加算金額が誤っているとして審査請求をした が,これを棄却する旨の裁決を受けた。 そこで,被控訴人は,控訴人に対し,別表2の「請求額」欄記載のとおり,起算日を納付の日の翌日であるとして,同日から都知事が支出を決定した日までの期間に応じて計算された還付加算金5億0825万1400円及びこれに対する民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めて,本件訴えを提起した。 関係法令の定め,前提事実及び当事者の主張は,原判決の「事実及び理由」の「第2事案の概要」の1ないし3(原審判決2ページ6行目から同13ページ22行目まで)に記載のとおりであるからこれを引用する。 本件訴訟の経緯(1)本件の争点は,事業税及び都民税法人税割に係る過納金についての還付加算金を算定する際の起算日であり,被控訴人は,法17条の4第1項1号又は同4号,法施行令6条の15第1項2号に基づき,いずれも納付の日の翌日であると主張し,控訴人は,法17条の4第1項4号,法施行令6条の15第1項1号に基づき,いずれも減額更正のあった日の翌日から起算して1月を経過する日の翌日であると主張した。 (2)原審は,事業税に係る過納金に対する還付加算金については減額更正のあった日の翌日から起算して1月を経過する日の翌日が起算日であるが,都民税法人税割に係る過納金に対する還付加算金については納付の日の翌日が起算日であるとして,被控訴人の各請求のうち,別表2の「認容額」欄記載のとおり,都民税法人税割に係る過納金につ 起算日であるが,都民税法人税割に係る過納金に対する還付加算金については納付の日の翌日が起算日であるとして,被控訴人の各請求のうち,別表2の「認容額」欄記載のとおり,都民税法人税割に係る過納金についての還付加算金4億8229万5900円及びこれに対する支払催告した日の翌日である平成16年3月27日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める限度で認容し,その余(事業税に係る過納金についての還付加算金)の請求を棄却した。 (3)そこで,控訴人は,原審判決中,控訴人敗訴に係る部分(都民税法人税 割に係る過納金についての還付加算金の請求を認容した部分)の取消しを求めて控訴を申し立て,他方,被控訴人も,被控訴人敗訴に係る部分(事業税に係る過納金についての還付加算金の請求を棄却した部分)の取消しを求めて附帯控訴を申し立てた。差戻し前の控訴審は,事業税及び都民税法人税割に係る過納金についての還付加算金は,いずれも法17条の4第1項1号に定める場合には該当せず,1号ないし3号に掲げる過納金以外の過納金であるから同4号の定める場合に該当し,法53条1項又は321条の8第10項の定める義務修正申告の場合にも当たらないとして,その還付加算金の起算日は減額更正があった日の翌日から起算して1月を経過する日の翌日であると判断し,原判決中控訴人敗訴に係る部分を取り消して被控訴人の請求を棄却するとともに,被控訴人の附帯控訴を棄却した。 (4)そこで,被控訴人が上告及び上告受理の申立てをしたところ,上告審は,事業税に係る過納金についての還付加算金の請求に関する部分を排除した上,都民税法人税割に係る過納金についての還付加算金の請求に関する部分についてのみ受理決定をし,法17条の4第1項1号の趣旨に照らして,同号の場合と同様に,還付加算金納付の日の翌日か 部分を排除した上,都民税法人税割に係る過納金についての還付加算金の請求に関する部分についてのみ受理決定をし,法17条の4第1項1号の趣旨に照らして,同号の場合と同様に,還付加算金納付の日の翌日から還付加算金を加算すべきものと解するのが相当であると判断して,同部分につき破棄した上,還付加算金の額の算定等の審理を尽くすため,原審に差し戻すとともに,排除された事業税に係る過納金についての還付加算金の請求に関する部分について上告を棄却した。 差戻し後の当審における新たな争点及び当事者の主張当審における新たな争点は,上告審から差し戻された都民税法人税割に係る過納金についての還付加算金の附帯請求について,①還付加算金に対する遅延損害金請求を争う旨の控訴人の主張が,時機に後れた攻撃防御方法として却下されるべきか否か,②都民税法人税割に係る過納金についての還付加算金に民法419条が適用され,還付加算金に対する遅延損害金が発生するか否か (被控訴人の主位的請求,③上記還付加算金に民法405条が適用される)か否か,本件において,被控訴人が同条に基づく組入権を行使したか否か(被控訴人の予備的請求)と,④還付加算金額の具体的計算であり,この点に関する当事者の主張は次のとおりである。 (1)時機に後れた攻撃防御方法であるとの主張について(被控訴人)控訴人は,差戻し前の控訴審において,還付加算金に対する遅延損害金請求について,遅くともその口頭弁論終結前に還付加算金には民法419条の適用がない旨の主張を提出すべきであったのに,控訴人がその主張をしたのは差戻し前の控訴審口頭弁論終結日(平成19年2月14日)から約2か月後に提出された未陳述の平成19年4月18日付準備書面(2)においてであり,しかも,差戻し後の当審において,その主張内容を変更す は差戻し前の控訴審口頭弁論終結日(平成19年2月14日)から約2か月後に提出された未陳述の平成19年4月18日付準備書面(2)においてであり,しかも,差戻し後の当審において,その主張内容を変更するに至っている。したがって,控訴人の上記主張は,時機に後れた攻撃防御方法であり,かつ控訴人には故意又は重大な過失があり,これにより訴訟の完結を遅延させることになるから却下されるべきである。 (控訴人)争う。 (2)還付加算金と民法419条の適用(類推適用)について(被控訴人)還付加算金の不履行について,民法419条が適用(類推適用)されるから,控訴人は,被控訴人に対し,還付加算金に対する支払催告の日の翌日である平成16年3月27日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を支払うべき義務がある。 ア法には,民法419条の適用を排除する特段の規定はない。還付加算金制度は,課税主体が過誤納金を保持した期間に生じた不公平の調整を定めたものであり,地方団体がこの支払債務の履行をしない場合に生じる不公 平までをも含めた終局的な調整を図るものではない。しかも,遅滞なき過誤納金の還付(法17条)及び還付加算金の支払が本旨とされていることからすれば,法が民法419条の規定の適用を排除しているとは解されない。 イ民法上,利息については民法419条が適用されないと解されているが,還付加算金は利息ではなく,地方団体の支払義務があるものとして法によって定められた公法上の特殊な支払金である。支払決定日後は還付加算金は発生しないとの点でも,民法上の利息とは異なる。しかも,民法419条の適用を否定することは,還付加算金が長期間支払われていない状況下ではきわめて妥当性を欠く結果となる。 (控訴人)還付加算金の不履行について,民法419条の適用(類推 は異なる。しかも,民法419条の適用を否定することは,還付加算金が長期間支払われていない状況下ではきわめて妥当性を欠く結果となる。 (控訴人)還付加算金の不履行について,民法419条の適用(類推適用)は認められない。 ア還付加算金は,過誤納金の利息としての性格を有するが,民法においても,利息については民法419条は適用されないと解されている。 イ延滞金については,租税法律主義の観点から民法419条の適用はないと解されている。そして,延滞金と還付加算金とは,徴収と還付という裏返しの関係にあり,利息の性質を有するという点でも共通性を有するから,両者は調和をもって解釈されるべきである。そうすると,法上,延滞金の場合と同様,還付加算金の支払が遅滞したとしても,還付加算金を支払えば足り,そのほかに民法419条に基づく責任を負うことは予定されていない。 (3)還付加算金と民法405条の適用について(被控訴人の予備的請求)(被控訴人)ア仮に民法419条の適用(類推適用)がなく,民法405条が適用(類推適用)されるとしても,被控訴人は,平成16年3月26日,東京都知 事に対する審査請求において,控訴人に対し,民法405条に基づく還付加算金の支払催告をしているから,同催告の日から1年後である平成17年3月26日を経過したことにより,民法405条に基づく組入権が発生した。 イ被控訴人は,平成17年2月ころ控訴人に送達された本件訴状により還付加算金4億8229万5900円を元本に組み入れる旨の意思表示をし,民法405条に基づく組入権を行使した。 ウしたがって,控訴人は,被控訴人に対し,民法405条に基づき,還付加算金に対する平成17年3月27日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による利息金を支払うべき義務がある。 (控訴人)ア法に したがって,控訴人は,被控訴人に対し,民法405条に基づき,還付加算金に対する平成17年3月27日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による利息金を支払うべき義務がある。 (控訴人)ア法においては,還付加算金について,民法405条に基づく元本組入権の行使は予定されていない。 (ア)還付加算金は利息の性格を有するとしても利息そのものではなく,民法405条に基づく利息の元本組入れは,私人間の債権債務関係において,債権者保護の見地から認められているものである。したがって,還付加算金が利息の性質を有するというだけで,民法405条に基づく組入権の行使が認められることにはならない。 (イ)還付加算金と同様に利息としての性質を有し,かつ還付加算金と裏返しの関係にある延滞金については,民法405条に基づく組入権の行使は予定されていない。 (ウ)還付加算金の元本組入れを認めることは,租税債務が法定債務であることに加え,納税者間の公平の見地からも妥当でない。 イ仮に還付加算金に民法405条の適用があるとしても,これを支払わないことにつき合理的理由がある期間内は遅滞とはならない。本件訴訟の経過に照らして,現時点ではまだ合理的理由のある期間内にあり,還付加算 金の支払が遅滞しているとはいえないから,民法405条に基づく組入権を行使することはできない。 ウ被控訴人は,還付加算金について民法405条に基づく組入権の行使をしていない。本件訴状において被控訴人が請求していたのは民法419条に基づく遅延損害金の請求であり,民法405条に基づく組入権の行使による利息の請求ではない。 (4)還付加算金額の具体的計算について(争点4)(被控訴人の主張)控訴人が還付すべき還付加算金額は,別表2の「認容額」欄記載のとおり,合計4億8229万5900円である る利息の請求ではない。 (4)還付加算金額の具体的計算について(争点4)(被控訴人の主張)控訴人が還付すべき還付加算金額は,別表2の「認容額」欄記載のとおり,合計4億8229万5900円である。 (控訴人の認否及び反論)ア被控訴人主張の還付加算金額については,次項イからエまでを除いて認める。 イ平成10年12月期都民税法人税割(延滞金を除く)に係る過納金についての還付加算金平成10年12月期都民税法人割について,平成10年12月期都民税法人税割に係る過納金3億0299万5800円が発生した平成16年1月26日の減額更正日において,平成11年2月期都民税延滞金(43万1100円)と事業税延滞金(61万4000円)が未納であったため,東京都知事は,法17条1項に基づき,上記過納金を上記延滞金に充当した。そこで,還付加算金の起算日である納付日の翌日(平成13年7月28日)から充当適状日(平成16年1月26日)までの期間については,過納金の千円未満を切り捨てた3億0299万5000円を基に計算し,充当適状日の翌日(平成16年1月27日)から支出決定日(平成16年3月16日)までの期間については,過納金3億0299万5800円から充当金額を差引いて千円未満を切り捨てた3億0195万円を基に計算 すると,平成10年12月期都民税法人税割(延滞得税を含む)に係る。 過納金についての還付加算金は,別表3の所定欄のとおり,3329万1205円となる。 ウ平成10年12月期都民税法人税割及び延滞税に係る過納金についての還付加算金還付加算金の確定金額に100円未満の端数があるときは,その全額を切り捨てるところ(法20条の4の2第7,5項,都における端数処理)の方法(本税とそれに係る延滞金を合算した後に,100円未満を切り捨てて計算する 金額に100円未満の端数があるときは,その全額を切り捨てるところ(法20条の4の2第7,5項,都における端数処理)の方法(本税とそれに係る延滞金を合算した後に,100円未満を切り捨てて計算する)に従って計算すると,別表3の所定欄記載のとおり,3。 670万7700円となる。 エ平成6年6月期都民税法人税割及び延滞金に係る過納金についての還付加算金都における端数処理の方法に従って,本税とそれに係る延滞金を合算した後に100円未満を切り捨てて計算すると,平成6年6月期に係る都民税法人税割及び延滞金に係る過納金についての還付加算金は,別表3の所定欄記載のとおり,1億0157万8600円となる。 オ還付加算金の合計額上記に基づくと,還付加算金の合計額は,別表3の所定欄記載のとおり,4億8229万2400円となる。 (控訴人の主張に対する被控訴人の認否及び反論)ア平成11年2月期都民税延滞金(43万1100円)と事業税延滞金(61万4000円)が未納であったこと,平成10年12月期都民税法人税割の過納金が上記未納延滞金に平成16年1月26日を充当適状日として充当されたことは知らない。控訴人主張の充当が認められるときには,還付加算金が被控訴人主張額から3600円が減額され,還付加算金が4億8229万2300円となることは認める。 イ他の計算方法は争わない。 第3当裁判所の判断 時機に後れた攻撃防御方法の主張について被控訴人は,控訴人が還付加算金に民法419条の適用がない旨を初めて主張したのは,差戻し前の控訴審の口頭弁論期日終了後に提出された準備書面においてであり,控訴人の上記主張は時機に後れた攻撃防御方法であると主張する。 確かに,控訴人が主張する上記経緯は認められるが,控訴人は,上記準備書面において,還付加算金は過納金 提出された準備書面においてであり,控訴人の上記主張は時機に後れた攻撃防御方法であると主張する。 確かに,控訴人が主張する上記経緯は認められるが,控訴人は,上記準備書面において,還付加算金は過納金に生じる利息であり,これに利息を生ずるとすることは民法405条の重利に当たり,本件においては同条の規定に基づく元本組入れの意思表示がされていないから,遅延利息に係る請求は理由がない旨の具体的な主張をしていたこと,ところが,差戻し前の控訴審は,控訴人に上記主張を尽くさせることなく,都民税法人税割に係る過納金についての還付加算金の請求を認容した部分を取り消して同部分に係る被控訴人の請求を棄却するとともに,被控訴人敗訴部分である事業税に係る過納金についての還付加算金の請求についての附帯控訴を棄却し,控訴人の全面勝訴となる判決をしたこと,控訴人は,上告審の答弁書にも,上記と同様の主張をしていたこと,上告審は,都民税法人税割に係る過納金についての還付加算金に関する請求部分を破棄しつつ,その還付加算金の額の算定等の審理を更に尽くさせるため,本件を原審に差し戻し,当審における当事者双方の主張は,これを受けてのものであることなど,本件訴訟の経緯に照らせば,控訴人の上記主張が後れたことにつき重過失があるとは認められないし,これにより訴訟の完結を遅延させることになるとみるのも相当とはいえないから,当審における控訴人の主張が却下すべき攻撃防御方法であるとまで認めることはできない。 したがって,控訴人の上記主張を時機に後れた攻撃防御方法であるとして却下を求める被控訴人の前記主張は,採用することができない。 還付加算金と民法419条の適用(類推適用)について(1)国家と納税義務者との間の租税をめぐる債権債務関係については,国家と国民との間の公法上の関係であ 主張は,採用することができない。 還付加算金と民法419条の適用(類推適用)について(1)国家と納税義務者との間の租税をめぐる債権債務関係については,国家と国民との間の公法上の関係であること,租税債務は租税法に定められた法定債務であって,私法上の債務のように当事者の合意によってその内容が定まるものではないこと,その確定と徴収は公平,確実かつ迅速に行われなければならないことなど,私法上の債権債務関係とは異なる特質があり,これを反映して,租税の徴収を確保し,かつ納税者相互間の公平を維持するため,私法上の債権者にはみられない種々の特権が留保されている。しかし,租税法律関係は,これらの留保されている特権を除いてみれば,私法上の債権債務関係と何ら異なるところは見いだせないのであり,私法規定が適用されるか否かについては,租税法律関係の上記特質を踏まえ,当該法律関係において公法上の規定のほかに私法規定を適用すべき合理的理由があるか否かをそれぞれの規定の内容及び趣旨を具体的に検討することにより決すべきものと解するのが相当である。 (2)過誤納金は,申告あるいは更正処分が過大であったため,減額更正あるいは減額再更正の処分がされた場合などに生じ,租税実体法上,納付又は徴収のときから地方団体がこれを保有する正当な理由のない利得であって,これが生じたときには遅滞なく還付されなければならず(法17条,その場)合には,法所定の起算日から支出を決定した日の翌日までの期間の日数に応じ,その金額に所定の年率(本則7.3パーセント。なお法附則3条の2第1項,第3項)を乗じて計算した還付加算金をその還付すべき金額に加算しなければならないものとされている(法17条の4第1項,1条2項。そ)して,還付加算金の算定の起算日については,地方団体と納税者との公平 3項)を乗じて計算した還付加算金をその還付すべき金額に加算しなければならないものとされている(法17条の4第1項,1条2項。そ)して,還付加算金の算定の起算日については,地方団体と納税者との公平を勘案して,過誤納金の区分により異なる取扱いをしており(地方税法17条の4第1項,法施行令6条の15第1項参照,この点,民法上の不当利得)(民法704条)において,損失者と受益者の公平を図るため,受益者が悪 意の場合には利息を付して利得を返還する義務を負っているのと,同一の趣旨にでたものとみることができる。 そうすると,還付加算金の法律的性質は,過誤納金の支払遅滞によって生じた元本使用の対価たる損害賠償金(遅延損害金)であり,還付加算金制度は,地方団体の徴収金に関する不当利得の返還に伴う民法上の利息の特則であると解される。 (3)法には,都知事が支出をする決定日までの期間の日数に応じ,本税及び延滞金に法定の割合を乗じて計算した還付加算金をその還付すべき金額に加算しなければならないとのみ規定され,過誤納金の還付が遅滞した場合や必要な還付加算金が加算されていなかった場合の地方団体の責任に関する規定は定められていない。 そこで,還付加算金に民法419条が適用されるか否かを検討すると,還付加算金は過納金の支払遅滞によって生じた損害賠償金(遅延損害金)としての性質を有するものであることは前記のとおりであり,他方,民法419条は元本たる金銭債務の不履行があった場合の遅延利息を定めたものであり,遅延利息については民法419条は適用はなく,遅延利息の支払を遅滞しても当然には遅延利息を生じないと解されているから,遅延損害金としての法律的性質を有する還付加算金には民法419条の適用の余地はないものと解するのが相当である。 被控訴人は,還付加算金に民法4 滞しても当然には遅延利息を生じないと解されているから,遅延損害金としての法律的性質を有する還付加算金には民法419条の適用の余地はないものと解するのが相当である。 被控訴人は,還付加算金に民法419条の適用がされないと,納税者が一般私法上の債権者より不利益な扱いを受けることになると主張するが,還付加算金に民法419条の適用を認めることは,かえって納税者をして一般私法上の債権者よりも有利な取扱いをすることになり,還付加算金についてこのような取扱いをする法的根拠も合理的理由も見いだし難いから,被控訴人の上記主張は理由がない。 また,被控訴人は,還付加算金は利息ではなく,地方団体の支払義務があ るものとして法によって定められた公法上の特殊な支払金であり,その支払決定日後は,還付加算金は発生しないとの点でも民法上の利息とは異なると主張するが,その理由がないことは,前記判断したところから明らかである。 (4)以上によれば,民法419条に基づき遅延損害金の支払を求める被控訴人の請求は理由がないものというべきである。 還付加算金に民法405条の適用(類推適用)があるか。 (1)過納金の還付は,前記のとおり,地方団体と納税者との公平を勘案し,民法上の不当利得の法理を踏まえたものであって,還付加算金は民法上の不当利得における利息に相当し,その法律関係は私法上の債権債務関係と何ら異なるものではないと解されるから,還付加算金についても民法405条が適用され,これを元本に組み入れることができるものと解するのが相当である。 控訴人は,還付加算金と裏返しの関係にある延滞金については,民法405条に基づく元本組入れは予定されていないと主張するが,租税の徴収を確保し,かつ納税者相互間の公平を維持するため,私法上の債権者にみられない種々の特権が留保されて 係にある延滞金については,民法405条に基づく元本組入れは予定されていないと主張するが,租税の徴収を確保し,かつ納税者相互間の公平を維持するため,私法上の債権者にみられない種々の特権が留保されている租税徴収の場面における延滞金と,地方団体と納税者との公平を勘案し,民法上の不当利得の法理を踏まえての過納金還付の場面における還付加算金とを,同一に論じるのは相当ではなく,延滞金について民法405条が適用されないからといって,還付加算金に民法405条の適用を否定する理由にはならない。 また,控訴人は,還付加算金に民法405条の適用があるとしても,本件訴訟の経過に照らせば,還付加算金の支払をしないことには合理的理由があり,還付加算金の支払は遅滞していないと主張する。しかしながら,公平の理念に基礎づけられる還付加算金制度の趣旨に照らしても,還付加算金額に争いがあるというだけではその支払をしないことを正当化できないし,還付 加算金の支払が遅滞していないということもできないから,控訴人の上記主張は理由がない。 (2)民法405条の組入権行使の要件は,①利息の支払が1年分以上延滞し,債権者が催告をしても,債務者がその利息を支払わないこと,②これを元本に組み入れる旨の意思表示をすることであり,また,元本が弁済されて利息のみが存在する場合においても,元本と利息が存在する場合との均衡上,民法405条に基づき当該利息を元本に組み入れることができるものと解するのが相当である。 これを本件についてみると,被控訴人は,平成16年3月26日,東京都知事に対する審査請求書を提出したことにより,控訴人に対し,還付金加算金の支払を催告をしたとみることができるから,同催告の日から1年後である平成17年3月26日を経過した時点において,元本組入権が発生したものとい 請求書を提出したことにより,控訴人に対し,還付金加算金の支払を催告をしたとみることができるから,同催告の日から1年後である平成17年3月26日を経過した時点において,元本組入権が発生したものということができる。 また,延滞した利息に対する遅延損害金の支払を求めることは,とりもなおさず延滞利息を元本に組み入れて,延滞利息に対する利息の支払を求める旨の意思表示であると解されるところ,本件訴状の請求の趣旨によれば、利息(遅延損害金)に相当する還付加算金に対する遅延損害金を請求していることが明らかというべきであるから、被控訴人は控訴人に対し,本件訴状により,履行遅滞となっている還付加算金を元本に組み入れる旨の意思表示をしたものと認められ,また,本件訴状が平成17年3月4日に控訴人に送達されていることは,当裁判所に顕著な事実である。なお,元本組入れの意思表示の時点で利息が1年分以上延滞していなくとも,1年分以上延滞した時点(支払催告から1年経過した時点)で元本組入れの効果は生じるものと解するのが上記法制度の趣旨に適い,相当であるというべきである。 そうすると,民法405条の組入権行使の前記要件は,還付加算金の支払を催告した1年後である平成17年3月26日の経過により具備されたこと になるから,控訴人は,被控訴人に対し,還付加算金に対する平成17年3月27日から支払済みまで利息金を支払うべき義務がある。 還付加算金額の具体的計算について(争点3)(1)各期における法人割及び延滞税に対する還付加算金額について,被控訴人の主張額は,別表3のとおりであり,控訴人の主張額は,別表2のとおりであるところ,平成10年12月期及び平成6年6月期の還付加算金額を除いて,いずれも当事者間に争いがない。 (2)平成10年12月期都民税法人税割について証 あり,控訴人の主張額は,別表2のとおりであるところ,平成10年12月期及び平成6年6月期の還付加算金額を除いて,いずれも当事者間に争いがない。 (2)平成10年12月期都民税法人税割について証拠(甲6)及び弁論の全趣旨によれば,平成10年12月期都民税法人税割について,平成16年1月26日,減額更正されて過納金3億0299万5800円が発生し,同日,平成11年2月期都民税延滞金(43万1100円)と事業税延滞金(61万4000円)が未納であったため,法17条の2第1項,第4項に基づき,上記過納金から同日を充当適状日として上記各延滞金に充当されたことが認められる(乙6。 )そうすると,充当適状日である平成16年1月26日の前後における平成10年12月期都民税法人税割の法人税割額の還付金に係る還付加算金を計算すると(法施行令6条の14,別紙3の所定欄のとおり,充当前が31)59万5322円,充当後が169万5883円となり,これを合計すると,3329万1205円となる。 (3)同年12月期の還付加算金について法20条の4の2第7項,第5項(還付加算金の確定金額に100円未満の端数があるとき,その全額を切り捨てる)及び控訴人における端数処理。 の方法(本税とそれに係る延滞金を合算した後に,100円未満を切り捨てて計算する)に基づき平成10年12月期の還付加算金を計算すると,別。 表3の所定欄記載のとおり,3743万7300円となり,これから既還付額72万9600円を差し引くと,控訴人主張額の3670万7700円と なる(被控訴人主張額より3600円の減額。 )(4)平成6年6月期に係る都民税法人税割及び延滞金に係る還付加算金控訴人における上記端数処理の方法に従って平成6年6月期に係る都民税法人税割及び延滞金に係る還付加算金 より3600円の減額。 )(4)平成6年6月期に係る都民税法人税割及び延滞金に係る還付加算金控訴人における上記端数処理の方法に従って平成6年6月期に係る都民税法人税割及び延滞金に係る還付加算金を計算すると,別表3の所定欄記載のとおり,1億0157万8600円となる(被控訴人主張額より100円の減額。 )(5)以上によれば,控訴人が被控訴人に対して還付すべき還付加算金は,別表3の所定欄記載のとおり,4億8229万2400円となる。 よって,被控訴人の請求は,還付加算金4億8229万2400円及びこれに対する平成17年3月27日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める限度で理由があり,これと一部結論を異にする原判決はその限度で不当であるから,これを変更することとし,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第15民事部裁判長裁判官藤村啓裁判官坂本宗一裁判官大浜寿美

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