平成10(オ)513 建物収去土地明渡

裁判年月日・裁判所
平成11年2月25日 最高裁判所第一小法廷 判決 破棄差戻 大阪高等裁判所 平成8(ネ)3735
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判決文本文2,299 文字)

主    文      原判決を破棄する。      本件を大阪高等裁判所に差し戻す。          理    由  上告代理人喜治榮一郎の上告理由1について  一 本件は、株式会社である上告人が、被上告人に対し、第一審判決別紙物件目 録一記載の土地(以下「本件土地」という。)の所有権に基づいて、本件土地上に ある同目録二記載の被上告人所有の建物(以下「本件建物」という。)を収去して 本件土地を明け渡すこと及び賃料相当損害金の支払を求めるものである。  原審の確定した事実関係の概要は、次のとおりである。  1 昭和三三年一二月ころ、上告人の代表取締役はDであり、Dの長男のE及び 二男の被上告人は、いずれも上告人の取締役であった。  2 Dは、同月ころ、本件土地上に木造瓦葺き二階建ての本件建物を建築して被 上告人に取得させるとともに、本件土地を本件建物の敷地として被上告人に無償で 使用させた。ここに上告人と被上告人の間に本件建物所有を目的とする使用貸借契 約が黙示に締結された(以下「本件使用貸借」という。)。  その後、D夫婦と被上告人は、本件建物で同居していたが、Dは、昭和四七年二 月二六日に死亡した。  3 Dの死後、上告人の経営をめぐってEと被上告人の利害が対立し、被上告人 から株主総会決議不存在確認訴訟が提起され、仮処分により代表取締役職務代行者 が選任された。右訴訟は被上告人の勝訴で確定したが、上告人の営業実務は右職務 代行者選任中からEが担当してきた。  4 被上告人は、平成四年一月二三日以降、上告人の取締役の地位を喪失してい る。 - 1 -  5 本件建物は、いまだ朽廃には至っていない。  6 Eは、上告人の所有地のうち本件土地に隣接する部分に自宅及びマンション を建築しているが、被上告人には、本件建物以外に居住すべきところがない。  7 上告人には、本件 いまだ朽廃には至っていない。  6 Eは、上告人の所有地のうち本件土地に隣接する部分に自宅及びマンション を建築しているが、被上告人には、本件建物以外に居住すべきところがない。  7 上告人には、本件土地の使用を必要とする特別の事情が生じてはいない。  二 原審は、右5から7までの事情を理由に、本件使用貸借は、いまだ民法五九 七条二項ただし書所定の使用収益をするのに足りるべき期間を経過したものとはい えないと判断した。  三 しかしながら、原審の右判断は是認することができない。その理由は、次の とおりである。  土地の使用貸借において、民法五九七条二項ただし書所定の使用収益をするのに 足りるべき期間が経過したかどうかは、経過した年月、土地が無償で貸借されるに 至った特殊な事情、その後の当事者間の人的つながり、土地使用の目的、方法、程 度、貸主の土地使用を必要とする緊要度など双方の諸事情を比較衡量して判断すべ きものである(最高裁昭和四四年(オ)第三七五号同四五年一〇月一六日第二小法 廷判決・裁判集民事一〇一号七七頁参照)。  本件使用貸借の目的は本件建物の所有にあるが、被上告人が昭和三三年一二月こ ろ本件使用貸借に基づいて本件土地の使用を始めてから原審口頭論終結の日である 平成九年九月一二日までに約三八年八箇月の長年月を経過し、この間に、本件建物 で被上告人と同居していたDは死亡し、その後、上告人の経営をめぐってEと被上 告人の利害が対立し、被上告人は、上告人の取締役の地位を失い、本件使用貸借成 立と比べて貸主である上告人と借主である被上告人の間の人的つながりの状況は著 しく変化しており、これらは、使用収益をするのに足りるべき期間の経過を肯定す るのに役立つ事情というべきである。他方、原判決が挙げる事情のうち、本件建物 がいまだ朽廃していないことは考慮すべき事情であるとはい 化しており、これらは、使用収益をするのに足りるべき期間の経過を肯定す るのに役立つ事情というべきである。他方、原判決が挙げる事情のうち、本件建物 がいまだ朽廃していないことは考慮すべき事情であるとはいえない。そして、前記 - 2 - 長年月の経過等の事情が認められる本件においては、被上告人には本件建物以外に 居住するところがなく、また、上告人には本件土地を使用する必要特別の事情が生 じていないというだけでは使用収益をするのに足りるべき期間の経過を否定する事 情としては不十分であるといわざるを得ない。  そうすると、その他の事情を認定することなく、本件使用貸借において使用収益 をするのに足りるべき期間の経過を否定した原審の判断は、民法五九七条二項ただ し書の解釈適用を誤ったものというべきであり、その違法は原判決の結論に影響を 及ぼすことが明らかである。  したがって、論旨は理由があり、原判決は、その余の点について判断するまでも なく、破棄を免れない。そして、前記その他の事情の有無等について更に審理判断 させるため、本件を原審に差し戻すこととする。  よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。      最高裁判所第一小法廷          裁判長裁判官    大   出   峻   郎             裁判官    小   野   幹   雄             裁判官    遠   藤   光   男             裁判官    井   嶋   一   友             裁判官    藤   井   正   雄 - 3 -

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