【DRY-RUN】主 文 原判決中窃盗に関する部分を破棄する。 被告人を懲役八月に処する。 原審における未決勾留日数中二〇日を右刑に算入する。 ただし、本裁判確定の日から三
主文 原判決中窃盗に関する部分を破棄する。 被告人を懲役八月に処する。 原審における未決勾留日数中二〇日を右刑に算入する。 ただし、本裁判確定の日から三年間、右刑の執行を猶予する。 理由 本件控訴の趣意は、弁護人丸尾芳郎作成の控訴趣意書記載のとおりであるから、これを引用する。 控訴趣意について論旨は、要するに、被告人は原判示第一の自動車を同判示Aの承諾をえて借りうけたのであるから、窃盗罪が成立するいわれはなく、従つて、原判決が被告人に対して窃盗罪を認定したのは事実を誤認したものである、というのである。 よつて案ずるに、当審における事実取調の結果次のことが認められる。すなわち、被告人は、当審公判廷で、原判示第一の日時同判示自動車の所有者であるAにズボンをとりにゆくといつたところ、同人から右自動車に乗つてゆけといわれ、車のキーを渡してもらつたと供述し、右Aも、当審証人として、右日時被告人から「aまでズボンを取りに行つて来たいから、ちよつと車を借してくれんか」といわれたので、当時畑仕事で忙しく被告人にできるだけ早く帰つてもらいたい気持から(原審証拠によると、被告人は当時A方に宿泊し畑仕事を手伝つていた)、「おー」と答えてそのまま自分は畑仕事に出た、昼までには帰つてくるやろと思つたので貸した、と証言し、当審証人B、同Cも、Aから被告人の行方探索を依頼された際(そのときはまだ警察沙汰になつていなかつた)、同人から被告人の右供述にそう事実を聞いた旨証言しているのであり、これらの証拠によると、被告人は、原判示第一の日時本件自動車に乗つて同判示のA方を出るときには、Aの承諾によつて同自動車を借り受け、正当にこれを占有するに至つたことが明らかである。 してみると、窃盗罪の成立する よると、被告人は、原判示第一の日時本件自動車に乗つて同判示のA方を出るときには、Aの承諾によつて同自動車を借り受け、正当にこれを占有するに至つたことが明らかである。 してみると、窃盗罪の成立するいわれはなく、被告人に右占有がなかつたとの事実判断のもとに窃盗罪を認定した原判決は事実を誤認したものといわざるをえない。もつとも、原審で取調べた関係証拠はすべて当裁判所の前記判断にそわず、むしろ原判決の事実認定に符合するのである。すなわち、「1」被害者A作成の被害届には「被害当日朝エンジンキーをつけたまま乗用車を自宅裏広場に駐車し、畑仕事に出たのですが、お昼頃帰宅すると、乗用車が盗まれていた」旨の記載があり、「2」Aの司法警察員に対する供述調書にも右と同趣旨の供述記載があり、「3」被害者の妻Dの司法巡査に対する供述調書には、その日の朝同女は被告人が本件自動車を運転して表道路の方を出て行くのをみたので、あとで畑仕事に出た際、夫Aに「自動車をあの人に貸してあげたのか」とたずねたところ、夫は「貸したおぼえはない。黙つて乗つて行きよつたなあ。夕方には帰るだろう」と答えた旨の供述記載があり、さらに「4」被告人は捜査機関の面前および原審公判廷を通じ終始原認定にそう窃取事実を自白しているのである。しかしながら、当審で取調べた証拠によると、右「1」、「2」については、被害者において被告人の行方が一向に判らず車を取り戻せないところから、警察に届け出て探してもらおうと考えたものの、被告人が運転免許を持つていないことを知つていたので、車を貸したというと自分も罪(無免許運転教唆)に問われることをおそれ、前記Cからの入知恵もあつて、貸与の事実を秘して「1」の被害届を出し、「2」の供述をしたことが認められ(C、Aの各当審証言)、「3」については、被害者はこれまでにもしば 教唆)に問われることをおそれ、前記Cからの入知恵もあつて、貸与の事実を秘して「1」の被害届を出し、「2」の供述をしたことが認められ(C、Aの各当審証言)、「3」については、被害者はこれまでにもしばしば他人に車を貸し、そのため妻ら家人に文句をいわれたことがあつたので、本件の際にも、貸したというと文句をいわれると思い、妻に対して、「貸したおぼえはない」と嘘をいつたことが認められ(Aの当審証言)、「4」については、被告人は、被害者の承諾の限度をこえてそのまま八日間にわたり本件自動車を乗り廻わしたすえ警察官に逮捕されたところから、いずれにしても罪を免れないとの気持もあつて、「1」、「2」の資料に基づく警察官の誘導的な取調べに対し結局迎合的な供述をし、警察官の面前および原審公判廷でもあえてその供述をひるがえさなかつたのではないかとの疑いが充分にある(被告人の当審供述)。従つて、右「1」ないし「4」の各証拠によつて自動車窃取の事実を認定するのは相当でない。 以上の次第で原判決には事実の誤認があり、それが判決に影響を及ぼすことは明らかであるから、刑事訴訟法三九七条一項、三八二条により原判決中窃盗に関する部分を破棄し、同法四〇〇条但書に則り、検察官が当審において追加した予備的訴因に基づき、さらに次のとおり判決する。 (罪となるべき事実)<要旨>被告人は昭和四六年五月九日午前九時頃、滋賀県草津市b町c番地A方において、同人より</要旨>同人所有の普通乗用自動車一台(時価約九〇万円相当)を、当日大津市aヘズボンを受取りのため乗用することの許諾をえて貸与を受けて保管中、同日昼頃右ズボン受取り後A方に戻らず、そのまま反対方向の同市坂本方面に向い、それから同月一七日警察官に逮捕されるまでの間、ほしいままに滋賀県内および福井県内等において自己のドライブ遊び て保管中、同日昼頃右ズボン受取り後A方に戻らず、そのまま反対方向の同市坂本方面に向い、それから同月一七日警察官に逮捕されるまでの間、ほしいままに滋賀県内および福井県内等において自己のドライブ遊びに右自動車を乗り廻し、これを横領したものである。 (証拠の標目)(省略)(法令の適用)被告人の判示所為は刑法二五二条一項に該当するところ、その所定刑期範囲内で懲役八月に処し、同法二一条を適用して原審未決勾留日数中二〇日を右刑に算入し、同法二五条一項により三年間右刑の執行を猶予し、原審および当審における訴訟費用は刑事訴訟法一八一条一項但書により被告人に負担させないこととする。 よつて主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官河村澄夫裁判官瀧川春雄裁判官岡次郎)
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