- 1 - 主文 被告人を拘禁刑1年6月に処する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は、令和7年8月21日午後4時9分頃、中型貨物自動車を運転し、山口県岩国市a町b山陽自動車道上りcキロポスト先の2車線道路の第1車両通行帯をdインターチェンジ(福岡県)方面からeインターチェンジ(広島県)方面に向かい進行するに当たり、前方左右を注視し、進路の安全を確認しながら進行すべき自動車運転上の注意義務があるのにこれを怠り、前方左右を注視せず、進路の安全確認不十分のまま漫然時速約85キロメートルで進行した過失により、折から進路前方で渋滞停止中のA(当時20歳)運転の普通乗用自動車に気付かず、同車後部に自車前部を衝突させて同人運転車両を前方に押し出し、同車前部をその前方で停止して発進しようとしていた普通貨物自動車後部に衝突させ、同車と自車の間に前記A運転車両を挟んで押し潰した上、同車を炎上させ、よって、その頃、同所において、同人及び同人運転車両同乗者B(当時21歳)をそれぞれ焼死させた。 (証拠の標目) 省略(法令の適用) 1 構成要件及び法定刑を示す規定被告人の判示所為は、被害者ごとに、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律5条本文に該当する。 2 科刑上の一罪の処理1個の行為が2個の罪名に触れる場合であるから、刑法54条1項前段、10条により1罪として過失運転致死罪(犯情が被害者ごとに異ならないのでその1つを選ぶことをしない。)の刑で処断する。 3 刑種の選択拘禁刑を選択する。 - 2 - 4 宣告刑の決定所定刑期の範囲内で被告人を拘禁刑1年6月に処する。 5 訴訟費用の不負担訴訟費用は、刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させな 。 - 2 - 4 宣告刑の決定所定刑期の範囲内で被告人を拘禁刑1年6月に処する。 5 訴訟費用の不負担訴訟費用は、刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させない。 (量刑の理由) 1 本件は、被告人が中型貨物自動車を運転して高速道路を走行中、前方を注視せず漫然と自車を走行させて渋滞停止中の被害者車両に自車を衝突させ、車両4台が絡む多重衝突事故を起こし、2名を死亡させたという過失運転致死の事案である。 被告人は、当時、中型貨物自動車の職業運転手で、高速道路上において、相当重量のある中型貨物自動車を時速約85キロメートルの高速度で運転していた。そのような状況で事故が起きれば、重大な結果が生じる可能性があったのであるから、被告人は、特に注意して運転することが求められていたといえる。また、事故現場の手前には、渋滞を知らせる電光掲示板が設置されており、被告人は、当該電光掲示板を確認した上、渋滞情報も聞いた上で運転していたというのであるから、間もなく渋滞が始まり、前の車両が停止することは十分に予想できたといえる。それにもかかわらず、被告人は、前方左右を注視し、進路の安全を確認して進行するという自動車運転手にとって最も基本的かつ重要な注意義務に違反して事故を起こした。 被告人車両の速度が時速約85キロメートルであり、被告人車両と被害者車両との車間距離が約300メートルであったことからすると、被告人は少なくとも10秒以上もの間、前方注視を怠っていたことになり、被告人の過失は重大である。もっとも、被告人の運転は、無免許、酒気帯び、速度超過といったいわゆる交通三悪や、携帯電話へのわき見等のような違反行為を伴うようなものであったとは認められない。そうすると、被告人の過失は重大ではあるが、特に悪質なものとまではいえない 気帯び、速度超過といったいわゆる交通三悪や、携帯電話へのわき見等のような違反行為を伴うようなものであったとは認められない。そうすると、被告人の過失は重大ではあるが、特に悪質なものとまではいえない。 2 また、何よりも、2人の尊い命が奪われたという結果は、極めて重大である。 - 3 -被害者はそれぞれ当時20歳、21歳の大学生であり、それぞれの将来の夢に向けて努力していた。何らの落ち度もないのに、突如として、大切な家族や友人らを残してその未来を奪われた2人の無念は計り知れない。また、このような形で、突然大切な家族を失った遺族らの悲しみ、絶望感は察するに余りある。遺族らが、被告人に対してできる限りの厳罰を望んでいるのも当然である。 このような過失及び結果の重大性からすれば、被告人の刑事責任は重いといわざるを得ない。 3 続いて一般情状について検討すると、遺族らに対しては、当時の被告人の勤務先が加入していた保険により、相応の損害賠償がされる見込みであること、被告人が事実を認め、もう二度と自動車は運転せず、被害者ら及びその遺族らに対して一生かけて償っていくと述べるなど、反省の態度を示していること、当然のことではあるが、本件により勤務先の退職を余儀なくされ、一定の社会的制裁を受けていること、被告人の妻が、被告人を監督する旨約束していること等の被告人に有利な事情が認められる。検察官は実刑求刑まではしていないが、これらの被告人に有利な事情を十分に考慮しても、上記犯情の悪さ、とりわけ結果の重大性に照らせば、本件は実刑が相当である。そこで、過失の内容が特に悪質とまではいえないことのほか、上記の被告人に有利な事情は刑期の点で考慮することとし、同種事案の量刑傾向も踏まえた上、主文のとおりの刑を科すのが相当であると判断した。 (検察官竹島真一郎、 が特に悪質とまではいえないことのほか、上記の被告人に有利な事情は刑期の点で考慮することとし、同種事案の量刑傾向も踏まえた上、主文のとおりの刑を科すのが相当であると判断した。 (検察官竹島真一郎、国選弁護人濱田忠司各出席)(求刑:拘禁刑2年6月)令和7年12月24日山口地方裁判所第3部 裁判官嶋本有里子
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