平成21(行ケ)10329 審決取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成22年7月28日 知的財産高等裁判所 2部 判決 審決取消
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- 1 -平成22年7月28日判決言渡平成21年(行ケ)第10329号審決取消請求事件(特許)口頭弁論終結日平成22年7月21日判決原告株式会社シンキー訴訟代理人弁護士永島孝明同安國忠彦同浅村昌弘訴訟代理人弁理士中尾俊輔同伊藤高英同磯田志郎同石川元被告株式会社写真化学訴訟代理人弁理士藤本 昇同薬丸誠一同北田 明同鶴亀史泰主文 特許庁が無効2008-800174号事件について平成21年9月10日にした審決を取り消す。 訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第1請求主文同旨第2事案の概要 本件は,株式会社アイ・ケイ・エス(被告への譲渡人)が特許権者で発明の名- 2 -称を「溶剤等の攪拌・脱泡方法とその装置」とする特許第3627220号(請求項の数3)の請求項1~3について,原告が無効審判請求をしたところ,被請求人(株式会社アイ・ケイ・エス)が請求項2の削除と請求項3の変更(新請求項2)等を内容とする訂正請求をして対抗したが,特許庁が上記特許権の譲受人たる被告と原告に対し訂正後の新請求項1及び2について請求不成立の審決をしたことから,原告がその取消しを求めた事案である。 争点は,①訂正後の(新)請求項2が明確か(特許法36条6項2号),②訂正後の請求項1及び2が下記引用例との関係で進歩性を有するか(同法29条2項),である。 記・ 取消しを求めた事案である。 争点は,①訂正後の(新)請求項2が明確か(特許法36条6項2号),②訂正後の請求項1及び2が下記引用例との関係で進歩性を有するか(同法29条2項),である。 記・特開2000-61207号公報(発明の名称「真空式混煉脱㨯装置」,出願人株式会社イーエムイー,公開日平成12年2月29日,甲1。以下「引用例1」といい,そこに記載された発明を「引用発明1」という。)・特開平5-150548号公報(発明の名称「トナー原材料の混合方法」,出願人三田工業株式会社,公開日平成5年6月18日,甲2。以下「引用例2」といい,そこに記載された発明を「引用発明2」という。)第3当事者の主張 請求の原因(1)特許庁における手続の経緯ア株式会社アイ・ケイ・エスは,平成15年10月29日,発明の名称を「溶剤等の攪拌・脱泡方法とその装置」とする発明について特許出願(特願2003-406507請求項の数3,甲10)をし,平成16年12月17日にその設定登録を受けた(特許第3627220号,以下「本件特許」という。)ところ,原告は,平成20年9月9日,本件特許の請求項1~3について無効審判請求をし,株式会社アイ・ケイ・エスは,平成20年12月26日付けで請求項2を削除し請求項3を2に繰り上げて内容を変更- 3 -する等の訂正請求(甲17)を行った。なお,株式会社アイ・ケイ・エスは本件特許権を被告に譲渡し,その旨の移転登録は平成21年2月3日になされたところ,被告は平成21年6月16日付けで上記訂正請求の補正書(甲18)を提出した。 イ特許庁は,上記無効審判請求を無効2008-800174号事件として審理をした上,平成21年9月10日,「訂正を認める。本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄本は同年 提出した。 イ特許庁は,上記無効審判請求を無効2008-800174号事件として審理をした上,平成21年9月10日,「訂正を認める。本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄本は同年9月25日原告に送達された。 (2)発明の内容本件訂正後の請求項1及び2の内容は,以下のとおりである(以下,各請求項に係る発明を「本件訂正発明1」等という。下線は訂正部分)。 ・【請求項1】溶剤等を収納する容器を回転し,該容器を支持するアーム体を回転することで容器に収納された溶剤等を攪拌・脱泡する溶剤等の攪拌・脱泡方法であって,容器の公転数,又は容器の公転数及び自転数を制御しながら,容器内の真空状態を制御すると共に,少なくとも容器内を真空にした状態で,容器に収納された溶剤等の温度を検知し,温度が一定の温度まで上昇すると,容器の公転数及び自転数を独立して制御しながら,容器の公転数及び自転数の減少,増加を順次繰り返すことを特徴とする溶剤等の攪拌・脱泡方法。 ・【請求項2】溶剤等を収納する容器と,該容器の上端部が公転中心側に向かって傾くようにして該容器を端側にて支持するアーム体と,伝達手段を介して容器及びアーム体を回転するための駆動源とを備えた溶剤等の攪拌・脱泡装置において,装置本体には,少なくとも容器内を真空状態にするための真空手段と,容器に収納された溶剤等の温度を検知すべく,容器の上端部の近傍に設けられる検知手段とが設けられていることを特徴とする溶剤等の撹拌・脱泡装置。 - 4 -(3)審決の内容ア審決の内容は,別添審決写しのとおりである。その理由の要点は,①本件訂正発明2が不明確であるとはいえない,②本件訂正発明1及び2が上記引用例1及び2並びに周知技術に基づいて容易に発明をなし得たものとはいえない,というものである。 イ審決の の理由の要点は,①本件訂正発明2が不明確であるとはいえない,②本件訂正発明1及び2が上記引用例1及び2並びに周知技術に基づいて容易に発明をなし得たものとはいえない,というものである。 イ審決の認定した本件訂正発明1と引用発明1との一致点及び相違点は,以下のとおりである。 <一致点>両者は,「溶剤等を収納する容器を回転し,該容器を支持するアーム体を回転することで容器に収納された溶剤等を攪拌・脱泡する溶剤等の攪拌・脱泡方法であって,容器が公転と自転をしながら,容器内を真空状態にする溶剤等の攪拌・脱泡方法」である点で一致する。 <相違点1>容器が公転と自転をしながら,容器内を真空状態にする」ことについて,本件訂正発明1は,「容器の公転数,又は容器の公転数及び自転数を制御しながら,容器内の真空状態を制御すると共に,少なくとも容器内を真空にした状態で,容器に収納された溶剤等の温度を検知し,温度が一定の温度まで上昇すると,容器の公転数及び自転数を独立して制御しながら,容器の公転数及び自転数の減少,増加を順次繰り返す」のに対して,引用発明1は,「運転の条件は,被混煉材の種類や温度上昇の制限に合わせて予め設定し,真空を掛けるタイミング,時間や真空度は最適条件に合わせ,運転は容器が公転と自転をし,必要なタイミングに真空が掛かる」ものである点。 ウ審決の認定した本件訂正発明2と引用発明1との一致点及び相違点は,以下のとおりである。 <一致点>- 5 -両者は,「溶剤等を収納する容器と,該容器の上端部が公転中心側に向かって傾くようにして該容器を端側にて支持するアーム体と,伝達手段を介して容器及びアーム体を回転するための駆動源とを備えた溶剤等の攪拌・脱泡装置において,装置本体には,少なくとも容器内を真空状態にするための真空手段が設けられている溶 支持するアーム体と,伝達手段を介して容器及びアーム体を回転するための駆動源とを備えた溶剤等の攪拌・脱泡装置において,装置本体には,少なくとも容器内を真空状態にするための真空手段が設けられている溶剤等の撹拌・脱泡装置」である点で一致する。 <相違点2>本件訂正発明2は,「容器に収納された溶剤等の温度を検知すべく,容器の上端部の近傍に設けられる検知手段」が設けられているのに対し,引用発明1には,溶剤等の温度の検知手段がない点。 (4)審決の取消事由しかしながら,審決には以下のとおりの誤りがあるから,違法として取り消されるべきである。 ア取消事由1(本件訂正発明2の明確性についての判断の誤り)(ア)審決は,本件訂正発明2の「容器の上端部の近傍」とは,「容器の上端部」の近くのうち,「検知手段」が「容器に収納された溶剤等の温度」を検知できる範囲の距離までを指すと解釈し,「近傍」の範囲が数値等により具体的に定められていないからといって,直ちに不明確であるとまではいえないと判断した(17頁20行~18頁5行)。 しかし,審決の上記解釈は,「近傍」という表現を「近く」と言い換えただけであり,「近傍」が容器の上端部からどの程度の距離までを意味するのかは当業者にとって依然として不明であるから,審決の上記認定判断は誤りである。 すなわち,本件訂正によって訂正された明細書(甲17及び18。以下「本件訂正明細書」という。)には,温度検知手段の設置について,「前記真空チャンバー6内で容器5の近傍には,容器5内に収納された溶剤- 6 -の温度を検知する温度検知手段として,例えば電子温度センサー20が,前記溶剤に非接地の状態で設けられている。尚,電子温度センサー20は容器5内に接地することも可能である。」(段落【0029】)という記 温度を検知する温度検知手段として,例えば電子温度センサー20が,前記溶剤に非接地の状態で設けられている。尚,電子温度センサー20は容器5内に接地することも可能である。」(段落【0029】)という記載しか存在せず,「容器の上端部の近傍」の定義は存在しない。例えば,容器の上端部から100mmの位置が「近く」に該当するのか,1000mmの位置が「近く」に該当するのかは,当業者の主観的な判断となり,客観的に「近く」と「それ以外」との境界を特定することはできないのである。 また,図1には,真空チャンバー6内において,容器5の上方に電子温度センサー20が配置された構成が示されているだけであり,「容器の上端部の近傍」が,かかる構成に限定されることは明記されていない。 すなわち,図1については単なる例示と解される以上,図1の構成に基づいて,「近傍」の範囲を特定することもできない。 よって,本件訂正発明2の「容器の上端部の近傍」との記載は,容器の上端部からどの程度の距離までを意味するか不明であり,当業者にとって「近傍」の範囲は自明なものでもないので,明らかに不明確である。 (イ)しかも,本件訂正発明2は,「検知手段」を限定していないため,検知手段として任意のものを選択することができ,その検知範囲はかなりの広がりがある。本件訂正明細書には,検知手段として非接触式の温度センサーを使用することが開示されている(段落【0029】)ところ,非接触式の温度センサーは,固体,液体からの放射(主に赤外線)を測定するものであり,遠く離れた位置からも温度を検知することができる。 昭和57年9月30日に発行された書籍である「温度計測」(甲19)の表4.5(201頁)には,主な放射温度計の性能一覧が示されており,各放射温度計の測定距離の範囲の上限として「∞」(無限大)又は「 昭和57年9月30日に発行された書籍である「温度計測」(甲19)の表4.5(201頁)には,主な放射温度計の性能一覧が示されており,各放射温度計の測定距離の範囲の上限として「∞」(無限大)又は「10m」と記載されているし,当時,実際に製造販売されていた放射温度計- 7 -の測定距離の上限も「∞」(無限大)であったと示されている。 したがって,審決の上記解釈によれば,容器の上端部から遠く離れた位置も「近傍」に含まれるという非常識な結論となる。 イ取消事由2(本件訂正発明1の容易想到性についての判断の誤り)(ア)特定事項Bの技術的意義についての認定誤り審決は,本件訂正発明1と引用発明1との間の実質的な相違点として,「少なくとも容器内を真空にした状態で,容器に収納された溶剤等の温度を検知し,温度が一定の温度まで上昇すると,容器の公転数及び自転数を独立して制御しながら,容器の公転数及び自転数の減少,増加を順次繰り返す」という相違点1の「特定事項B」を認定し(22頁7行~10行),かかる特定事項Bの技術的意義について,「本件訂正発明1の「温度が一定の温度まで上昇すると,容器の公転数及び自転数を独立して制御しながら,容器の公転数及び自転数の減少,増加を順次繰り返す」ことにより,溶剤等の容器よりの噴出等を適切に制御することができ,最適な状態で溶剤を攪拌し,さらに微調整可能な精度の高い脱泡を簡易な作業工程で行うことが可能であるとの技術的意義を有するものといえる。」(23頁13行~18行)と認定した。 しかし,本件訂正明細書によれば,相違点1の特定事項Bには,温度が一定の温度まで上昇した場合に,温度の上昇を抑えるという技術的意義があるだけであり,「溶剤等の容器よりの噴出等を適切に制御することができ,最適な状態で溶剤を攪拌し,さらに微調整可能 Bには,温度が一定の温度まで上昇した場合に,温度の上昇を抑えるという技術的意義があるだけであり,「溶剤等の容器よりの噴出等を適切に制御することができ,最適な状態で溶剤を攪拌し,さらに微調整可能な精度の高い脱泡を簡易な作業工程で行う」という効果は,異なる構成に基づくものであると記載されているのであるから,審決の上記認定は誤りである。 すなわち,本件訂正明細書の段落【0043】の記載によれば,公転数及び自転数の制御方法として,温度の上昇を抑えるため,「自転数のみ減少,公転数のみ減少,自転数と公転数を減少,自転数のみ減少し公転- 8 -数を増加,自転数のみ減少増加を繰り返す,又は自転数と公転数とを連動しながら減少増加する」という複数の動作が羅列されており,いずれの動作も,温度の上昇を抑えることを目的としていることは明らかである。一方,本件訂正明細書の上記段落【0043】の「要は,溶剤の種類,状態に応じて,最適な制御(容器5の自転数,又は,/及び容器5の公転数を種々に変更(増減)する等微調整しながらの制御,又は独立して制御)を行う」という記載からすれば,溶剤の脱泡精度の向上は,「溶剤の種類,状態に応じた最適な制御」を行ったことによる効果である。しかし,本件訂正明細書には,具体的な回転数の減少量,増加量,繰り返し回数等について一切開示しておらず,効果を裏付ける実施例の記載もない。よって,溶剤の脱泡精度を向上するという効果について,当業者が反復実施して効果を挙げることができる程度にまで具体的,客観的なものとして記載されていない。 また,審決も認めるとおり,「公転数及び自転数により攪拌・脱泡に対する作用が異なることは明らかであるところ,容器の公転と自転をする攪拌・脱泡方法において,被混煉材の種類等に応じて公転数,自転数を所定の値とすること るとおり,「公転数及び自転数により攪拌・脱泡に対する作用が異なることは明らかであるところ,容器の公転と自転をする攪拌・脱泡方法において,被混煉材の種類等に応じて公転数,自転数を所定の値とすることが周知技術である…」(21頁6行~9行)から,従来から,容器の自転数及び公転数は独立して制御されていた。したがって,本件訂正明細書に記載された「溶剤の脱泡作用の精度をさらに高め,従来にない精度の高い脱泡作用を簡易な作業工程で行うことが可能となった。」という効果は,本件訂正発明1に基づく効果ではないし,従来技術において実現されていた効果にすぎない。 以上からすれば,本件訂正発明1は,溶剤等の温度が一定の温度まで上昇した場合に,容器の公転数及び自転数を独立して制御して溶剤等の温度上昇を抑え,一定の温度を越えないようにした点に技術的意義があるといえる。 - 9 -(イ)引用発明1の動機付けに関する評価の誤り審決は,引用発明1では,「運転の条件は,被混煉材の種類や温度上昇の制限に合わせて予め設定」されているため,「溶剤等の温度上昇」は運転の条件の設定により制限されて問題とされるものではなく,引用発明1において,他の手法により,「溶剤等の温度上昇」を更に制御しようとする動機付けは見い出せないと認定した(23頁19行~36行)。しかし,かかる動機付けが存在しないという審決の認定は,当業者による通常の創作能力を誤解し,これを極めて低く評価したものであって誤りである。 すなわち,引用発明1には,温度の上限を装置の運転条件を設定するための要件の一つとすること(甲1,段落【0012】)及び攪拌による被混煉材Aの温度上昇という課題(甲1,段落【0015】及び【0017】)が開示されている。確かに,引用発明1では,「運転の条件は,被混煉材Aの種類や要求される 1,段落【0012】)及び攪拌による被混煉材Aの温度上昇という課題(甲1,段落【0015】及び【0017】)が開示されている。確かに,引用発明1では,「運転の条件は,被混煉材Aの種類や要求される条件(例温度上昇の制限)に合わせて予め設定する。」(甲1,段落【0012】)ものであるから,運転条件の設定時において,溶剤等の温度上昇も考慮して条件を決定していると予測されるが,被混煉材Aの温度は,混煉によって上昇するので,引用発明1によって温度上昇の課題自体が消滅したわけではない。したがって,温度上昇の課題に対する別の解決手段を引用発明1に適用する動機付けは存在し,引用発明1に対し別の解決手段を採用することについて何らの阻害事由も存在しないのである。 現に,引用発明1においては,他の実施の作用形態として,段落【0017】において,予め運転条件を設定しただけではなく,別途の手段を採用して温度上昇を制限している。 また,引用発明1の制御方法は,予め設定した運転条件のとおり動作するものであり,一般的に開ループ制御とよばれる自動制御方法である- 10 -ところ,昭和44年4月1日発行の書籍「大学講座電子工学第20巻自動制御工学」(甲22)及び1990年11月20日発行の書籍「電気・電子・情報基礎シリーズ3自動制御」(甲23)によれば,自動制御方法として,一定の定められた操作を自動的に順次実行していく開ループ制御と,制御したい量を常時計測して,目標値となるように操作を施す閉ループ制御(フィードバック制御)の二つの方式が慣用的に使用されており,これらの二つの方式は,異なった利点・欠点を有しているが,同じ制御対象について使用することができ,互いに適宜置換可能な技術であったといえる。 そして,開ループ制御では,制御の対象自体の特性や装置の置かれた周 つの方式は,異なった利点・欠点を有しているが,同じ制御対象について使用することができ,互いに適宜置換可能な技術であったといえる。 そして,開ループ制御では,制御の対象自体の特性や装置の置かれた周囲の環境条件が時間的に変化する場合は,制御目的が十分達せられなくなる上に,外乱(disturbance)の影響を受けやすいといった欠点を持ち合わせているのに対し,閉ループ制御では,これらの欠点を解消できることも周知であった。 したがって,被混煉材Aの種類や要求される条件(例温度上昇の制限)に合わせて運転条件を予め設定した開ループ制御を採用する引用発明1は,制御の対象自体の特性や環境条件の変化や外乱の影響を受けやすいといった欠点を有しているのであり,かかる欠点を解消するために閉ループ制御を採用する動機付けが存在するのである。 一方,引用発明2は,攪拌物であるトナー原材料の攪拌による温度上昇という課題に対し,ホッパー上面部に配置した温度センサーによって攪拌物の温度を検知し,温度が所定の上限値に達したことを検出すると,温度上昇を抑えるため,攪拌物に対する攪拌を弱め,その後,温度が所定の下限値に達したことを検出すると,攪拌物に対する攪拌を強めるものであるから,自動制御の方式としては,閉ループ制御に該当する。 さらに,出願当時の周知技術を示す周知例である公開実用新案公報(甲- 11 -12。実開平5-72942号。以下「本件周知例」という。)に記載されているように,攪拌混合の分野において,閉ループ制御を使用して,攪拌によって攪拌熱が発生し,内容物の温度が上昇するため,攪拌による温度上昇を抑えるために,攪拌を抑制することは周知であった。 以上のとおり,引用発明1において,温度上昇の課題は消滅したわけではなく,温度上昇の課題に対する別の解決手段を引用発明1 るため,攪拌による温度上昇を抑えるために,攪拌を抑制することは周知であった。 以上のとおり,引用発明1において,温度上昇の課題は消滅したわけではなく,温度上昇の課題に対する別の解決手段を引用発明1に適用することに何らの阻害事由も存在しない。また,開ループ制御における制御の対象自体の特性や環境条件の変化や外乱の影響を受けやすいといった欠点を,閉ループ制御で解消できることも周知であった。したがって,開ループ制御を採用した引用発明1において,引用発明2又は周知技術に開示された閉ループ制御を採用し,温度センサーによって被混煉材Aの温度を検知し,温度が所定の上限値に達したことを検出すると,温度上昇を抑えるため,攪拌物に対する攪拌を弱め,その後,温度が所定の下限値に達したことを検出すると,攪拌物に対する攪拌を強めることは,当業者にとって容易に想到できる事項である。 ウ取消事由3(本件訂正発明2の容易想到性についての判断の誤り)(ア)相違点2の技術的意義についての認定誤り審決は,前記第3,1(3)ウに記載した本件訂正発明2と引用発明1との間の相違点2の技術的意義について,「<相違点2>に係る「検知手段」は,「真空状態で容器を自転及び公転」することによる「溶剤等の温度上昇」を検知するものであって,この検知に基づいて制御を行うと,溶剤等の容器よりの噴出等を適切に制御し,最適な状態で溶剤を攪拌し,さらに微調整可能な精度の高い脱泡を簡易な作業工程で行うことができるとの技術的意義を有するものといえる。」(30頁23行~28行)と認定した。 しかし,相違点2に係る「検知手段」は,本件訂正発明2の構成要件- 12 -に従えば,「真空状態で容器を自転及び公転」することによる「溶剤等の温度上昇」を検知するとの技術的意義を有するだけであり,審決の上記 認定 に係る「検知手段」は,本件訂正発明2の構成要件- 12 -に従えば,「真空状態で容器を自転及び公転」することによる「溶剤等の温度上昇」を検知するとの技術的意義を有するだけであり,審決の上記認定は,請求項の記載に基づくものではない。すなわち,特許請求の範囲の記載によれば,本件訂正発明2の攪拌・脱泡装置は,最低限,容器と,アーム体と,伝達手段と,駆動源と,真空手段と,検知手段とが設けられていれば足り,「検知に基づいて制御を行う手段」が設けられている必要はないし,「溶剤等の容器よりの噴出等を適切に制御し,最適な状態で溶剤を攪拌する手段」が設けられている必要もない。単に容器の上端部の近傍に検知手段を設け,検知手段によって容器に収納された溶剤等の温度を検知するだけの攪拌・脱泡装置も本件訂正発明2に含まれるのである。 また,本件訂正明細書の段落【0029】の記載によれば,本件訂正発明2では,単に測定対象の近くに温度検知手段を配置しただけであり,温度検知手段の採用に関して何らの創意工夫も認められない。 よって,審決の相違点2に係る「検知手段」の技術的意義についての認定は,請求項2の記載に基づいて正しくなされたものではなく,審決は,誤った「検知手段」の技術的意義に基づいて,相違点2に係る構成の容易想到性を判断したのであるから,その前提において誤っており,結論に影響を及ぼす重要な認定判断の誤謬が存在する。 (イ)引用発明1の動機付けに関する評価の誤り審決は,第一に,引用発明1について,「装置を運転する際の「温度上昇の制限」についての認識はあったにしても,そもそも,「溶剤等の温度を検知」するという技術思想がないものといえる」(31頁1行~3行)と認定し,第二に,引用発明1において,「「溶剤等の温度を検知」して,さらに「溶剤等の温度上昇」を制御しよ そもそも,「溶剤等の温度を検知」するという技術思想がないものといえる」(31頁1行~3行)と認定し,第二に,引用発明1において,「「溶剤等の温度を検知」して,さらに「溶剤等の温度上昇」を制御しようとする動機づけは見いだせない」(同頁12行~13行)と認定した。これらの認定はいずれも誤りで- 13 -あるが,特に,第二の認定については,前記(ア)のとおり,審決が,本件訂正発明2の「検知手段」の技術的意義の解釈を誤った結果,相違点2に係る構成の容易想到性を評価する要素として採用されたものであるから,前提において誤りである以上,そもそも相違点2に係る構成の容易想到性の評価要素となり得ないのである。 そして,引用発明1に,温度の上限を装置の運転条件を設定するための要件の一つとすること及び攪拌による被混煉材Aの温度上昇という課題が開示されていることは,前記イ(イ)で述べたとおりであり,被混煉材Aの温度の上限に合わせて運転条件を設定するためには,当然,運転条件を決定するための実験(いわゆる「条件出し実験」)において,様々な運転条件(自転数,公転数,時間等)で被混煉材Aを混煉脱泡した場合における被混煉材Aの温度を測定する必要又は動機付けが存在することは自明である。 したがって,引用発明1において,被混煉材Aの温度を検知する動機付けが存在することは明らかであり,容器の開口部が上端部であることから,容器内の被混煉材Aの温度を検知するために温度検知手段を容器の上端部の近傍に設けることも,当業者が自然に選択する配置である。 よって,本件訂正発明2は,引用発明1と技術常識又は周知技術とに基づいて,当業者が容易に想到できたものである。 さらに,引用例2(甲2)に,攪拌物であるトナー原材料の攪拌による温度上昇という課題に対し,ホッパー上面部に配置した温度セン と技術常識又は周知技術とに基づいて,当業者が容易に想到できたものである。 さらに,引用例2(甲2)に,攪拌物であるトナー原材料の攪拌による温度上昇という課題に対し,ホッパー上面部に配置した温度センサーによって攪拌物の温度を検知し,温度が所定の上限値に達したことを検出すると,温度上昇を抑えるため,攪拌物に対する攪拌を弱め,その後,温度が所定の下限値に達したことを検出すると,攪拌物に対する攪拌を強めることが開示されていることも,前記イ(イ)で述べたとおりである。 そして,引用発明1には,攪拌による被混煉材Aの温度上昇という課- 14 -題が開示されているので,この点において引用発明1と引用発明2の課題は共通しており,両発明の攪拌の手法は異なるものの,いずれも攪拌物を攪拌により混合する方法であり,この点において引用発明1と引用発明2の技術分野は共通している。また,周知例である特開平11-290668号公報(甲4)及び特開平7-289873号公報(甲11)の記載からすれば,攪拌の手法が異なる技術であっても,その技術を参酌することは当業者にとって困難なものではない。 これらの点からすれば,引用発明1及び引用発明2に開示された攪拌による被混煉材Aの温度上昇という共通の課題に基づいて,又は/及び引用発明1に開示された温度の上限を,装置の運転条件を設定するための要件の一つとすることについての明確な示唆に基づいて,攪拌による混合という共通する技術分野の引用発明2を参酌して,引用発明1の真空中における混煉・脱泡装置において,攪拌物の温度を検知するため,容器の上端部の近傍に温度センサーを設けることは,当業者が容易に想到できる事項にすぎない。 請求原因に対する認否請求原因(1)ないし(3)の各事実は認めるが,(4)は争う。 被告の反論(1) 上端部の近傍に温度センサーを設けることは,当業者が容易に想到できる事項にすぎない。 請求原因に対する認否請求原因(1)ないし(3)の各事実は認めるが,(4)は争う。 被告の反論(1)取消事由1に対し原告は,本件訂正発明2の「容器の上端部の近傍」との記載が容器の上端部からどの程度の距離までを意味するのかが不明である旨主張するが,そもそも,「近傍」との用語は,特許実務上,技術分野を問わず,特許請求の範囲において発明を特定する要件として広く一般的に用いられる用語であり,実際,「近傍」との用語を用いて特許されているものも多数存在する(乙5の1及び2)。「特許・実用新案審査基準」においても,「近傍」との用語は,「範囲をあいまいにする表現がある結果,発明の範囲が不明確な場合」の具体的- 15 -なケースとして列挙されていない。 本件訂正発明2において,「近傍」は,「容器の上端部の近傍」と特定されるものであることからわかるように,その範囲は,数値等により具体的に定められていなくても,容器の形状,大きさ等がわかれば,それとの関係でおのずと理解できるものである。容器の形状,大きさ等との関係を踏まえることなく,単に,容器の上端部と「検出手段」との離間距離が100mmとか1000mmといった数値のみで議論する原告の主張は根本的に誤りである。 まして,本件訂正発明2は,有体物たる「溶剤等の攪拌・脱泡装置」であるから,当業者が「検知手段」を無限大の位置に配置することなど物理的にあり得ない。すなわち,「検出手段」も装置の一構成要素である以上,装置の一部として配置されることは自明の理であるにもかかわらず,原告は,これを無視して,「検出手段」だけが独立した位置に配置され得るかのような主張を行うが,このような主張が当業者の技術常識でないことは明らか 部として配置されることは自明の理であるにもかかわらず,原告は,これを無視して,「検出手段」だけが独立した位置に配置され得るかのような主張を行うが,このような主張が当業者の技術常識でないことは明らかである。 (2)取消事由2及び3に対しア引用発明2は,「ホッパー内に投入される複数種類のトナー原材料を,該ホッパー内に配設された撹拌部材を駆動させることにより撹拌して混合する」ものであり,引用発明1の「混煉容器を公転させながら自転させて,被混煉材を混煉し脱泡させる」ものとは,構成が全く異なるし,技術分野も異なる。 すなわち,引用発明2は,ホッパーは回転せず,その中にある撹拌部材が回転するのみであり,このように容器内で撹拌部材を回転させる装置は,脱泡装置ではない。一方,引用発明1は,容器が公転し,自転するものであり,両者は,撹拌構造・撹拌原理が全く異なる。 また,引用発明1のような脱泡型撹拌装置は,遅くとも平成12年には,容器内でペラ(羽根)等を回転させる装置(容器内で撹拌部材を回転させ- 16 -る装置)の技術分野とは一線を画した別の技術分野として成立し,認知されていた。したがって,脱泡型撹拌装置の技術分野における当業者が,本件特許の出願時(平成15年10月29日)において,敢えて異なる技術分野の文献(引用例2)に触れる契機があるとは考えられない。 以上のとおり,引用例2に記載される技術思想を引用発明1に適用することの動機付けがない以上に,同引用例に記載される技術思想を引用発明1に適用することの阻害要因があるともいえる。 イ原告は,引用例1の「温度上昇の制限」を過大に評価するが,正確には,「運転の条件は,被混煉材Aの種類や要求される条件(例温度上昇の制限)に合わせて予め設定する。」と記載されていることからもわかるとおり,引用例1に の「温度上昇の制限」を過大に評価するが,正確には,「運転の条件は,被混煉材Aの種類や要求される条件(例温度上昇の制限)に合わせて予め設定する。」と記載されていることからもわかるとおり,引用例1において,「温度上昇の制限」は単なる一例示にすぎない。このように,「例温度上昇の制限」といった単なる一例示の記載から原告がいうところの「撹拌による被混煉材Aの温度上昇という課題」に持って行くのはかなり無理な発想の飛躍がある。 また,引用発明1には,温度上昇の課題は存しないため,開ループ制御を採用する引用発明1に対し閉ループ制御を採用する引用発明2の技術思想を適用する動機付けがあるとの原告の主張は,そもそも前提を欠くものであって,成り立たない。 ウ本件訂正発明1及び2は,脱泡作用を高めるために容器内を真空にした上で,内容物の温度が上昇してしまうという問題に対し,「容器の公転数と自転数を独立して制御」できる装置を用い,①公転数を減少させることによって,内容物の温度は下げられるし,②自転数を減少させることによっても,内容物の温度は下げられる。ただし,③公転数を減少させると,脱泡作用が減少するし,④自転数を減少させると,攪拌作用が減少するという4点を総合的に勘案しつつ,容器の公転数と自転数を独立して制御することを特徴とするものである。 - 17 -このような技術思想は,いずれの証拠にも全く開示がないし,示唆すらないから,本件訂正発明1及び2は,当業者が容易に発明することができるものではない。 第4当裁判所の判断 請求原因(1)(特許庁における手続の経緯),(2)(発明の内容),(3)(審決の内容)の各事実は,当事者間に争いがない。 本件訂正発明の意義(1)本件訂正後の特許請求の範囲請求項1及び2の記載は,前記第3,1(2)のとおりである ),(2)(発明の内容),(3)(審決の内容)の各事実は,当事者間に争いがない。 本件訂正発明の意義(1)本件訂正後の特許請求の範囲請求項1及び2の記載は,前記第3,1(2)のとおりである。また,本件訂正明細書(甲17,18)の【発明の詳細な説明】及び本件特許公報(甲10)の図面には,以下の記載がある。 ・【産業上の利用分野】「本発明は,溶剤等の攪拌作業と,脱泡作業とに用いる溶剤等の攪拌・脱泡方法とその装置に関し,特に真空状態で溶剤の種類等に応じて最適な攪拌,脱泡作業を行うための溶剤等の攪拌・脱泡方法とその装置に関するものである。」(甲17,段落【0001】)・【背景技術】「従来より使用目的により気泡を嫌う溶剤として,医薬用,電子部品関連材料及び半導体用等の溶剤が知られている。一般にこれら溶剤を製造する場合は,溶剤を収納し,且つ自転する容器と,該容器が設けられ,且つ回転駆動するアームとから構成された装置を用いて,先ず所定量の溶剤を容器に収納し,その後該容器の設けられたアーム体を回転(容器を公転)しながら,容器を自転する,又はアーム体の回転(容器を公転)のみを行う等することで,溶剤を攪拌するとともに,容器に働く遠心力により溶剤を容器の外方向に押圧し,該溶剤に内在する気泡を放出(脱泡)していた。」(甲17,段落【0002】)・「この方法は,通常攪拌,脱泡作業を,大気圧下で行うために,使用目的- 18 -(例えば,半導体用等)によって数十ミクロン以下の精度の脱泡を必要とする場合に十分にその精度に対応することができなかった。」(甲17,段落【0003】)・「そこで,容器を真空にした状態で,容器を自転,又は公転駆動することで溶剤に内在する気泡を放出し易く(気泡が膨張し破裂することで放出され易くなる)して上記のような,精度の高い 段落【0003】)・「そこで,容器を真空にした状態で,容器を自転,又は公転駆動することで溶剤に内在する気泡を放出し易く(気泡が膨張し破裂することで放出され易くなる)して上記のような,精度の高い脱泡を行うことが考えられた。」(甲17,段落【0004】)・「真空状態にして溶剤を攪拌,及び脱泡する装置としては,すでに特願平9-303248号や特開2000-61207号に記載の装置がある。」(甲17,段落【0005】)・「特願平9-303248号の装置は,真空チャンバ内に溶剤を収納する容器と,該容器の設けられたアーム体と,容器を伝達手段を介して自転,及びアーム体を伝達手段を介して回転(容器を公転)するための駆動源とからなる溶剤等の攪拌・脱泡装置が設置された構成であり,特開2000-61207号の装置は,溶剤を収納する容器と,該容器の設けられたアーム体と,容器を伝達手段を介して自転,及びアーム体を伝達手段を介して回転(容器を公転)するための駆動源とからなり,前記容器内のみを真空にするための配管が設けられている構成であります。」(甲17,段落【0006】)・「これらの装置は,容器に溶剤を収納した後,容器を公転しながら自転することにより,容器内の溶剤を攪拌し,その後,所定のタイミングで所定時間容器を真空の状態にしてさらに容器を公転しながら自転することにより,容器内の溶剤を脱泡することで精度の高い脱泡を可能とするものであります。」(甲17,段落【0007】)・【発明が解決しようとする課題】「しかしながら,上記各装置は,溶剤の収納された容器を真空にするタ- 19 -イミング,真空の状態の時間に関しては制御が可能でありますが,真空の状態で容器を自転,及び公転すると,容器内に収納された溶剤の温度の上昇,又は溶剤に内在する気泡の膨張等により, するタ- 19 -イミング,真空の状態の時間に関しては制御が可能でありますが,真空の状態で容器を自転,及び公転すると,容器内に収納された溶剤の温度の上昇,又は溶剤に内在する気泡の膨張等により,溶剤が容器より噴出したり,溢れ出したりするために,あらかじめ真空下での溶剤の状態を試験し事前のデータを収集して容器を真空にするタイミング,真空の状態の時間を設定するか,又は真空状態での容器の自転,公転を目視による観察して真空にするタイミング,真空の状態の時間を設定する等,その作業性に多大な問題点があった。」(甲17,段落【0008】)・「また,上記問題点よりすべての溶剤を効率よく真空の状態で精度の良く脱泡することが困難であるという欠点が発生した。」(甲17,段落【0009】)・「また,真空度を一定状態,又は減圧状態等制御する場合,溶剤の適切な脱泡に必要な秒単位での詳細なる制御ができない。」(甲17,段落【0010】)・「さらに,重要な点は,真空状態で溶剤を攪拌,脱泡する作業は,溶剤の温度上昇が著しいために,真空度を制御するだけでは十分に対応することができない。」(甲17,段落【0011】)・「そこで,本発明は,真空の状態で容器の自転,公転を制御することであらゆる種類の溶剤等を最適な状態に攪拌,脱泡することのできる溶剤等の攪拌・脱泡方法とその装置を提供することを課題とする。」(甲17,段落【0012】)・【発明の作用,及び効果】「次に,本発明の攪拌・脱泡の装置の作用を記載する。先ずアーム体に設けられた容器に所望の溶剤を所定量収納し,駆動源の回転駆動を伝動手段より容器の設けられたアーム体に伝達して,アーム体を回転(容器を公転)するとともに,他の伝動手段により容器を自- 20 -転する。この際,アーム体の回転数(容器の公転数),及び容 転駆動を伝動手段より容器の設けられたアーム体に伝達して,アーム体を回転(容器を公転)するとともに,他の伝動手段により容器を自- 20 -転する。この際,アーム体の回転数(容器の公転数),及び容器の自転数は,駆動源の回転数等に応じて直接,又は間接的に自在に調整することができるので,溶剤の種類に応じて最適な溶剤の攪拌,及び脱泡を行うことができる。」(甲17,段落【0017】)・「その後,少なくとも容器内を真空にした状態にし,容器内の溶剤等の温度を検知手段を介して検知することで,溶剤等の温度の上昇に応じて容器の自転数を独立して制御,又は容器の公転数,自転数をそれぞれ独立して制御する。これにより,容器内の溶剤が真空による温度の上昇,及び溶剤に内在する気泡の膨張による容器よりの噴出等を適切に制御することができ,最適な状態で溶剤を攪拌し,さらに精度の高い脱泡を行うことが可能となる。」(甲17,段落【0018】)・「そして,容器内の真空を解除し,容器を取り出すことで溶剤を得ることができることとなる。」(甲17,段落【0019】)・「このように,本発明の攪拌・脱泡装置は,真空状態で容器の自転数,公転数をそれぞれ独立に制御することができるので,真空状態での溶剤の温度上昇等を防ぎ,従来のような真空圧のみを制御する場合に比し溶剤のミクロン単位での脱泡を行うことができるという顕著な効果を得ることができた。」(甲17,段落【0020】)・「また,容器の自転数,又は,/及び容器の公転数の制御なので,従来のような真空圧を制御する場合に比し,その操作が容易であるとともに,作業工程の簡易化を図ることが可能となった。」(甲17,段落【0021】)・「また,制御盤等を使用することにより,自転数,公転数,真空度等を予め設定しておくことで,常に安定した状態の品質 ともに,作業工程の簡易化を図ることが可能となった。」(甲17,段落【0021】)・「また,制御盤等を使用することにより,自転数,公転数,真空度等を予め設定しておくことで,常に安定した状態の品質を得ることができる。」(甲17,段落【0022】)【好ましい実施の態様】- 21 -「以下,本発明の好ましい一実施の態様を,図面に従って説明する。図1は,本発明の一実施例である攪拌・脱泡装置を示す概略説明図である。」(甲17,段落【0023】)・「本発明の攪拌・脱泡装置1は,公転用の駆動モーター2と,公転用伝動手段を介して回転駆動する逆アーチ状のアーム体4と,該アーム体4の両端側近傍に自転伝動手段を介して回転駆動する一対の容器5,5と,容器5,5の自転を制御するための自転制御装置7とからなる装置本体8と,アーム体4,及び容器5,5部分のみを収納するように設けられた箱状の真空チャンバー6と,該真空チャンバー6内を真空にするための真空装置9とから構成されている。」(甲17,段落【0024】)・「前記真空チャンバー6内で容器5の近傍には,容器5内に収納された溶剤の温度を検知する温度検知手段として,例えば電子温度センサー20が,前記溶剤に非接地の状態で設けられている。尚,電子温度センサー20は容器5内に接地することも可能である。」(甲17,段落【0029】)・「準備として,攪拌・脱泡する溶剤の種類等に応じて大気圧中での容器5の公転数,自転数を制御盤に入力し,真空圧下での溶剤の種類等に応じて,該溶剤が一定の温度に上昇した場合の自転数,及び公転数を予め制御盤に設定する。この際の,自転数,及び公転数の設定は,公転数を一定状態にする場合,公転数を段階的に減少する場合,又は自転数を停止する場合,自転数を段階的に減少する場合,及びこれらを組み合わせる 制御盤に設定する。この際の,自転数,及び公転数の設定は,公転数を一定状態にする場合,公転数を段階的に減少する場合,又は自転数を停止する場合,自転数を段階的に減少する場合,及びこれらを組み合わせる場合等種々の対応が可能となる。」(甲17,段落【0035】)・「真空チャンバー6内の真空は,容器5が一定状態で回転し所定の時間経過後,又は容器5が一定の自転数,又は公転数に達すると同時に,真空ポンプ23に配管22を介して連結した真空制御バルブ22が作動(開閉)し真空センサー26で検知しながら,真空チャンバー6内を設定さ- 22 -れた真空度とし,且つその真空度で一定時間設定されることとなる。尚,真空度等は溶剤の種類(粘度等)により,また溶剤の使用目的に応じて自在に設定可能である。」(甲17,段落【0042】)・「そして,真空状態で容器5を自転,公転しながら,容器5内の溶剤の温度が一定の温度までの上昇するのを,真空チャンバー6内に非接地の状態で設けられている電子温度センサー20で検知し,温度が一定の温度までの上昇すると,容器5の自転数のみ,又は容器5の公転数のみ,又は容器5の自転数と容器5の公転数を現状の回転数より減少すること(又は,容器5の自転数のみ減少し,容器5の公転数を増加する,又は容器5の自転数のみ減少,増加を繰り返す,又は容器5の自転数と容器5の公転数とを連動しながら減少,増加する等の各種の制御をすること),温度の上昇を抑えることができる。この際,容器5の自転数,又は,/及び容器5の公転数は,現状の回転数より減少,増加等を順次繰り返えす等,複雑な制御をすることでさらなる,溶剤の脱泡の精度を上げることも可能である。要は,溶剤の種類,状態に応じて,最適な制御(容器5の自転数,又は,/及び容器5の公転数を種々に変更(増減)する等微 す等,複雑な制御をすることでさらなる,溶剤の脱泡の精度を上げることも可能である。要は,溶剤の種類,状態に応じて,最適な制御(容器5の自転数,又は,/及び容器5の公転数を種々に変更(増減)する等微調整しながらの制御,又は独立して制御)を行うことができる。この際,同時に真空度,真空状態での時間も制御(真空度を下げる,又は上げる,時間の短縮等)することでさらに,脱泡の精度等を微調整することができることとなる。」(甲17,段落【0043】)・「その後,真空破壊バルブ25を開き,真空チャンバー6内の真空を解除し,容器5を真空チャンバー6内より取り出すことで精度の高い脱泡の行われた溶剤を製造することができることとなる。」(甲17,段落【0044】)・【図1】(甲10)- 23 - (2)上記(1)の記載によれば,従来,使用目的により気泡を嫌う溶剤を製造する場合,溶剤を収容した容器を自転・公転させながら溶剤を攪拌,脱泡していたところ,これらの作業を大気圧下で行っていたために数十ミクロン以下の精度の脱泡に十分に対応できなかったことから,容器を真空にした状態で容器を自転・公転駆動する装置が考えられたが,これらの装置では,真空の状態で容器を自転・公転すると,溶剤の温度の上昇,溶剤に内在する気泡の膨張等により,溶剤が容器より噴出したり,溢れ出したりするため,予め真空下での溶剤の状態を試験し事前のデータを収集して容器を真空にするタイミングや真空の状態の時間を設定するか,又は真空状態での容器の自転・公転を目視により観察して真空にするタイミングや真空の状態の時間を設定する等,その作業性に問題点を有していたと認められる。 そこで,上記問題点を解決することを課題として,本件訂正発明1は,容器の公転数及び自転数を制 観察して真空にするタイミングや真空の状態の時間を設定する等,その作業性に問題点を有していたと認められる。 そこで,上記問題点を解決することを課題として,本件訂正発明1は,容器の公転数及び自転数を制御しながら,容器内の真空状態を制御するとともに,少なくとも容器内を真空にした状態で,容器に収納された溶剤等の温度を検知し,温度が一定の温度まで上昇すると,容器の公転数及び自- 24 -転数を独立して制御しながら,容器の公転数及び自転数の減少・増加を順次繰り返す方法を,課題解決手段とした。また,本件訂正発明2は,装置本体に,少なくとも容器内を真空状態にするための真空手段と,容器に収納された溶剤等の温度を検知するために容器の上端部の近傍に検知手段とを設けることを,課題解決手段としたものである。 このように本件訂正発明1及び2では,容器内を真空にした状態にし,容器内の溶剤等の温度を検知手段を介して検知することで,溶剤等の温度の上昇に応じて容器の公転数及び自転数をそれぞれ独立して制御するので,真空による温度の上昇及び内在する気泡の膨張により,容器から溶剤が噴出等することを適切に制御することができ,最適な状態で溶剤を攪拌し,更に精度の高い脱泡を行うことが可能となったものである。ただし,本件訂正発明1及び2は,最適な状態で溶剤を攪拌し,更に精度の高い脱泡を行うために,容器の公転数及び自転数をどのように制御すればよいかを具体的に規定するものではない。 なお,本件請求項2には,温度検知手段の役割について特段の規定はないが,本件訂正発明1及び2が,真空状態における攪拌・脱泡時に温度が上昇しすぎることによる溶剤の噴出を防ぐものであるから,温度が上昇しすぎることを防止するためのものと解するのが相当である。 引用発明1の意義(1)一方,引用発明1が審決認定 拌・脱泡時に温度が上昇しすぎることによる溶剤の噴出を防ぐものであるから,温度が上昇しすぎることを防止するためのものと解するのが相当である。 引用発明1の意義(1)一方,引用発明1が審決認定(18頁下2行~19頁5行)のとおりのものであることは,当事者間に争いがなく,引用例1(甲1)には,以下の記載がある。 ・【発明の属する技術分野】「本発明は,混煉容器を公転させながら自転させて,被混煉材を混煉し脱泡させるための装置に関するものである。」(甲1,段落【0001】)・【従来の技術】- 25 -「従来技術として,特願平9-303248“混煉脱泡方法とその装置”を第1図に示す。[特許請求の範囲]【請求項1】で特許請求している事項は“被混煉材Aを入れた混煉容器7aを公転させながら自転させる混煉工程の中の少なくとも一部分の工程で,該混煉容器7a内に真空圧をかけることを特徴とする混煉脱泡方法”で,既に混煉容器7a内に真空圧をかけることそれ自体は請求している。 その方法は図示のように本体容器1と本体容器蓋2で全体の真空容器を構成し,真空ポンプ10aで真空ポンプ以外の混煉脱泡装置全体を真空に引いていた。本案は実際に真空に引く部分を限定した特願平9-303248“混煉脱泡方法とその装置”の改善に関する混煉脱泡装置である。」(甲1,段落【0002】)・【課題を解決するための手段】「本発明は,混煉脱泡装置全体を真空容器内に収納せず,混煉容器を収納する“容器ホルダー”のみを真空に引くものである。」(甲1,段落【0005】)・【発明の実施の形態】「以下,本発明の実施の形態について,具体的に説明する。(1)実施の形態の構成第2図は,本発明の実施形態の構成を示す断面図である。 同図において本体容器1は上部が開口した容器であり開閉可能な本体容器蓋 下,本発明の実施の形態について,具体的に説明する。(1)実施の形態の構成第2図は,本発明の実施形態の構成を示す断面図である。 同図において本体容器1は上部が開口した容器であり開閉可能な本体容器蓋2を備えている。」(甲1,段落【0006】)・「本体容器1の内部には,バネやゴム等で出来た振動吸収体4を介して支持板3を取り付ける。該支持板3には駆動モーター9を取り付け,該駆動モーター9の公転軸5aには公転体5bを取り付ける。該公転体5bの遠心側に,混煉容器蓋7b付きの混煉容器7aを保持する容器ホルダー6aを,該公転軸5aに対し傾斜した軸線の周りに自転出来るように取り付ける。」(甲1,段落【0007】)- 26 -・「該駆動モーター9が起動し公転軸5aが回転すると,公転体5bが回転し振動が発生する。その振動は駆動モーター9を支持している支持板3から本体容器1に直接伝わらないようにするため,振動吸収体4を介して支持板3と本体容器1が連結してある。」(甲1,段落【0008】)・「容器ホルダー6aは,駆動モーター9か又は図示しない他の駆動機から,図示しない歯車やベルト等の伝動装置により駆動力を得て,自転軸受け8で支持されながら自転する。容器ホルダー6aは,該容器ホルダー6aに保持される混煉容器7a内の被混煉材Aを混煉し易くするため,該容器ホルダー6aの軸線を,前記の公転軸5aに対し傾斜したり,図示しない揺動機構等により傾斜角を変化させて自転する。」(甲1,段落【0009】)・「本混煉脱泡装置を用いて被混煉材を混煉脱泡する方法は,混煉容器7a内に被混煉材Aを入れて混煉容器蓋7bを閉め,本体容器蓋2を開けて該混煉容器7aを容器ホルダー6aに装着しする。容器ホルダー蓋6bを閉め本体容器蓋2を閉め真空ポンプ10aを運転する。容器ホルダー6a内の 混煉材Aを入れて混煉容器蓋7bを閉め,本体容器蓋2を開けて該混煉容器7aを容器ホルダー6aに装着しする。容器ホルダー蓋6bを閉め本体容器蓋2を閉め真空ポンプ10aを運転する。容器ホルダー6a内の空気は回転接手1の12a2,12a1{固定した配管から回転するシャフトへ空気(正圧・負圧共)を導入するジョイント},配管10c,公転軸5a,回転接手2の12b2,12b1配管10c,真空ポンプ10aの経路を通じて真空に引かれる。運転の条件は,被混煉材Aの種類や要求される条件(例温度上昇の制限)に合わせて予め設定する。従つて真空を掛けるタイミング,時間や真空度は最適条件に合わせる。運転は混煉容器7aが公転と自転をし,必要なタイミングに真空が掛かる。運転が終了したら容器ホルダー6a内に空気を入れて真空を解除し本体容器蓋2を開き,混煉容器7aを取り出して混煉容器蓋7bを開けて処理の済んだ内部の被被混煉材Aを取り出す。」(甲1,段落【0012】)- 27 -・「他の実施の作用形態第3図に混煉脱泡装置でしばしば問題となる,混煉脱泡作業中の被混煉材Aの撹拌による温度上昇を押さえる方法を示す。 容器ホルダー6aは自転しているのでこの自転軸に冷却用ファン13を設ける。自転の回転が冷却用ファン13を回転させ,冷却の風流14が容器ホルダー6aと容器ホルダー蓋6bに吹き付け,その結果混煉脱泡作業中の被混煉材Aが冷却される。」(甲1,段落【0017】)・【第2図】(本発明の部分を真空引きする混煉脱㨯装置の断面図) (2)上記(1)の記載によれば,引用発明1は,真空状態にした混煉容器を,駆動モーターで公転させるとともに,駆動モーターか又はこれとは異なる他の駆動機により自転させて,被混煉材を混煉し脱泡させるための装置であり,そ 記載によれば,引用発明1は,真空状態にした混煉容器を,駆動モーターで公転させるとともに,駆動モーターか又はこれとは異なる他の駆動機により自転させて,被混煉材を混煉し脱泡させるための装置であり,その混煉のための運転条件は,被混煉材の種類や要求される温度上昇の制限などの条件に合わせて予め設定されているものと認められる。 また,引用例1には,混練脱泡装置において,しばしば混練脱泡作業中の- 28 -被混練材の攪拌により温度上昇が生じて問題となることが明示されており,その温度上昇を押さえるために,混煉容器のみを真空にすることだけでなく,冷却用ファンを設ける方法についても開示されている。したがって,引用発明1は,真空状態にある混煉容器を自転・公転させて被混煉材を混煉脱泡する際に,当該容器の温度上昇を制限する必要があるという技術課題を開示しているものと認められる。 引用発明2の意義(1)また,引用発明2について,引用例2(甲2)には,以下の記載がある。 ・【特許請求の範囲】「【請求項1】ホッパー内に投入される複数種類のトナー原材料を,該ホッパー内に配設された撹拌部材を駆動させることにより撹拌して混合する方法であって,該ホッパー内の温度を測定して,該ホッパー内の温度が所定の上限値以下となるように,該撹拌部材の駆動を制御することを特徴とするトナー原材料の混合方法。」(甲2,2頁1欄)・【産業上の利用分野】「本発明は,例えば画像形成装置に使用されるトナー製造に際して,複数のトナー原材料を混合する方法に関する。」(甲2,段落【0001】)・【従来の技術】「各トナー原材料の混合は,各トナー原材料を所定量ずつ混合機内に投入して,該混合機内に設けられた撹拌部材の回転により,各トナー原材料を混合している。このような混合時には,トナー原材料が撹 来の技術】「各トナー原材料の混合は,各トナー原材料を所定量ずつ混合機内に投入して,該混合機内に設けられた撹拌部材の回転により,各トナー原材料を混合している。このような混合時には,トナー原材料が撹拌による摩擦熱によって温度が上昇するが,所定温度以上になると,製造されるトナーの特性に悪影響を及ぼすために,混合機内の温度が作業員により監視されている。そして,混合機内の温度が上限温度になると,作業員が撹拌部材の回転を一旦停止して,混合機内の温度を低下させた後に,作業員により撹拌部材が回転操作されて,撹拌を再開するようになっている。」(甲2,段落【0003】)- 29 -・【発明が解決しようとする課題】「このような混合作業では,特に夏期において,周囲の温度が高温になるために,混合機内の温度も上限温度に達しやすく,作業員の操作による混合機内の温度監視を怠ることができず,しかも,撹拌部材の操作を頻繁に行う必要がある。」(甲2,段落【0004】)・【実施例】「本発明の実施例について以下に説明する。画像形成装置用のトナーは,通常,粉体状のカーボンと粗粒子状の樹脂と粉体状のワックス・染料混合物とを混合して,混練した後に,その混練物を粉砕することにより製造される。 本発明のトナー原材料の混合方法は,各トナー原材料であるカーボン,樹脂,およびワックス・染料混合物を混合する際に,例えば図1に示す混合機を使用して実施される。図1に示す混合機は,下部駆動型垂直軸撹拌式の高速流動型の撹拌機であり,1本の投入管を通してトナー原材料が投入されるホッパー10 と,該ホッパー10 内に設けられた撹拌部材20 および30 とを有している。各撹拌部材20 および30 は,鉛直上に配置された1本の駆動軸42 に上下方向に適当な間隔をあけて取り付けられており,該駆動軸42 ー10 内に設けられた撹拌部材20 および30 とを有している。各撹拌部材20 および30 は,鉛直上に配置された1本の駆動軸42 に上下方向に適当な間隔をあけて取り付けられており,該駆動軸42 がモーター22 により回転駆動されることにより,各撹拌部材20 および30 が回転される。そして,各撹拌部材20 および30 の回転により,ホッパー20 内に投入されたトナー原材料に強力な衝撃およびせん断力が与えられて,該トナー原材料が流動されることにより混合される。」(甲2,段落【0008】)・「ホッパー10 の上面部には,該ホッパー内の温度を測定する温度センサー41が設けられており,該温度センサー41 の測定結果が制御部40 に入力されている。該制御部40 は,温度センサー41 の測定結果に基づいて,撹拌部材20および30 が取り付けられた駆動軸42 を駆動するモーター22 が制御される。」(甲2,段落【0009】)・「撹拌部材20 および30 による各トナー原材料の撹拌により,各トナー原材- 30 -料が混合されるが,その混合時の各トナー原材料の摩擦熱によりホッパー10内の温度が上昇する。温度センサー41 は,ホッパー10 内の温度を測定しており,該温度センサー41 が,ホッパー10 内の温度が所定の上限値に達したことを検出すると(ステップS2),制御部40 は,モーター22 の回転速度を低速に切り替えるとともに,混合時間を計時するタイマーを,一旦,中断する(ステップS3)。そして,ホッパー10 内の温度が,制御部40 に設定された下限値に達するまで,モーター22 の駆動停止およびタイマーの計時の中断が継続される。制御部40 に設定される温度の上限値は,製造されるトナーの特性に影響がでる温度にされており,また,下限値は,その上限温 達するまで,モーター22 の駆動停止およびタイマーの計時の中断が継続される。制御部40 に設定される温度の上限値は,製造されるトナーの特性に影響がでる温度にされており,また,下限値は,その上限温度に対して適当な温度差となるようにされている。」(甲2,段落【0011】)・「温度センサー41 が,ホッパー10 内の温度が下限設定値に達すると(S4),制御部40 は,モーター22 を高速回転に切り替えるとともに,タイマーによる混合時間の計時を再開する(S5)。これにより,撹拌部材20 および30が高速で回転されて,ホッパー10 内のトナー原材料が撹拌されつつ混合される。そして,タイマーによって計時された撹拌部材20 および30 の高速駆動による混合時間の合計が,予め設定された所定時間に達すると(S6),モーター22 の回転が停止されて,ホッパー10 内での各トナー原材料の混合が終了する(S7)。」(甲2,段落【0012】)・【発明の効果】「本発明のトナー原材料の混合方法では,このように,ホッパー内に投入された各トナー原材料が,所定の温度範囲に維持された状態で,撹拌部材により撹拌および混合されるために,所定の性能を有するトナーが確実に製造される。しかも,混合作業が自動的に行われるために,省力化できる。」(甲2,段落【0014】)(2)上記(1)の記載によれば,引用発明2は,複数のトナー原材料を混合する方法に関するものであって,混合時にトナー原材料が攪拌による摩擦熱によっ- 31 -て温度が上昇するのに対応するために,ホッパー内に投入されたトナー原材料を,モーターの回転駆動により攪拌部材を回転させて混合する際,ホッパーの上面に設けた温度センサーによりホッパー内の温度を測定する旨の構成を採用し,モーターを高速回転させて攪拌部材により各ト ー原材料を,モーターの回転駆動により攪拌部材を回転させて混合する際,ホッパーの上面に設けた温度センサーによりホッパー内の温度を測定する旨の構成を採用し,モーターを高速回転させて攪拌部材により各トナー原材料を混合させる場合,混合時の各トナー材料の摩擦熱によりホッパー内の温度が上昇し所定の上限値に達したことを検知すると,モーターの回転速度を低速に切り替え,その後温度が低下して下限設定値の達すると,再び高速回転に切り替えて混合を行うように制御しており,これによりトナー原材料が所定の温度範囲に維持された状態で攪拌混合できるようにしたものと認められる。 したがって,引用発明2は,攪拌混合する対象物の温度上昇を押さえることを技術課題とし,ホッパーの上面に設けた温度センサーにより対象物の温度を検知し,温度が一定の温度まで上昇すると,攪拌する部材の回転数の減少させて温度を低下させ,以後,回転数の減少と増加を順次繰返すものと認められる。 周知技術の内容(1) 原告は,攪拌混合の分野において,攪拌によって攪拌熱が発生し,内容物の温度が上昇するため,攪拌による温度上昇を抑えるために攪拌を抑制することは,本件周知例(甲12。実開平5-72942)に記載されているように周知であると主張するところ,本件周知例には以下の記載がある。 ・【実用新案登録請求の範囲】「【請求項1】テレフタル酸とエチレングリコールとを混合槽でスラリー化してエステル化反応器に供給するようにしたエステル化反応装置において,混合槽内に回転数変更可能な攪拌翼を設けるとともに,内容物の温度変化に応じて攪拌翼の回転数を制御する制御器を設けたことを特徴とするエステル化反応装置。」(甲12,2頁1欄)・【産業上の利用分野】- 32 -「本考案は,テレフタル酸とエチレングリコールとをエステル化 じて攪拌翼の回転数を制御する制御器を設けたことを特徴とするエステル化反応装置。」(甲12,2頁1欄)・【産業上の利用分野】- 32 -「本考案は,テレフタル酸とエチレングリコールとをエステル化反応させるエステル化反応装置に関するものである。」(甲12,段落【0001】)・【課題を解決するための手段】「この装置において,混合槽1ヘのテレフタル酸及びエチレングリコールの供給と混合槽1からの内容物の抜き出しを停止した場合,攪拌熱により混合槽1の内容物の温度が上昇し始める。温度上昇は,温度検出端9で検出されて温度調節計10 に伝えられる。そうすると温度調節計10 は内容物の温度を所定の値に抑えるように,回転数調節計8に出力し,回転数調節計8は,インバーター6に出力して電源の周波数を下げる。これによりモータ5の回転数が低下し,攪拌翼4の回転数が低下し,攪拌熱の発生が減少して内容物の温度は上昇しなくなる。」(甲12,段落【0008】)(2)上記(1)の記載によれば,本件周知例は,テレフタル酸とエチレングリコールとをエステル化反応させるエステル化反応装置に関するものであり,両材料を混合槽内で攪拌翼の回転により攪拌混合する際,攪拌熱による混合槽内の温度上昇を温度検出端で検出し,内容物の温度を所定の値に抑えるように,攪拌翼の回転数を低下させるなどして,内容物の温度変化に応じて攪拌翼の回転数を制御していることが開示されているものと認められる。 したがって,攪拌混合する対象物は異なるが,引用発明2と同様の技術事項が開示されており,攪拌によって熱が生じ,その影響を抑えるために温度を検知して攪拌する速度を制御することが,本件訂正発明1及び2の出願時(平成15年10月29日)の周知技術であったということができる。 原告主張の取消事由に対する判断(1 影響を抑えるために温度を検知して攪拌する速度を制御することが,本件訂正発明1及び2の出願時(平成15年10月29日)の周知技術であったということができる。 原告主張の取消事由に対する判断(1)取消事由1(本件訂正発明2の明確性についての判断の誤り)について原告は,審決が,本件訂正発明2の「容器の上端部の近傍」について,「容器の上端部」の近くのうち「検知手段」が「容器に収納された溶剤等の温度」を検知できる範囲の距離までを指すと解釈し,「近傍」の範囲が数値等により- 33 -具体的に定められていないからといって直ちに不明確であるとまではいえないと判断した(17頁20行~18頁5行)ことが,「近傍」という表現を「近く」と言い換えただけであり,「近傍」が容器の上端部からどの程度の距離までを意味するのかは当業者にとって不明であるから,上記認定判断は誤りである旨主張する。 しかし,本件訂正発明1及び2は,前記2(2)で述べたとおり,真空状態における溶剤等の攪拌・脱泡作業によって,溶剤の温度の上昇,溶剤に内在する気泡の膨張等が生じ,溶剤が容器より噴出したり溢れ出したりすることを防ぐことを技術課題とするものであるところ,本件訂正発明2における温度の検知手段は,この課題を解決する観点から,容器の温度を測定するために設けられた手段であり,容器内の溶剤等の温度を測定できる位置に設置すれば,その役割を果たすことができるものと認められる。そして,本件訂正発明2では,その設置位置として「容器の上端部の近傍」と特定されているところ,近傍という言葉自体は,「近所,近辺」(岩波書店刊,広辞苑第6 版)と一般に理解されており,また,多数の特許請求の範囲の記載で使用されている技術的用語であること(乙5の1 及び2)を考慮すると,「近傍」の範囲を更に数値により限 近辺」(岩波書店刊,広辞苑第6 版)と一般に理解されており,また,多数の特許請求の範囲の記載で使用されている技術的用語であること(乙5の1 及び2)を考慮すると,「近傍」の範囲を更に数値により限定して具体的に特定しなければ,本件訂正発明2発明が有する上記技術的意義との関係において,課題を達成するための構成が不明瞭となるものではない。 したがって,本件訂正発明2における「容器の上端部の近傍」について,当業者(その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者)は,「容器の上端部」の「近辺」と認識し,かつ,「検知手段」が「容器に収納された溶剤等の温度」を検知できる範囲を指示するものと理解することができるから,これと同旨の審決の上記判断に誤りはなく,原告の上記主張を採用することはできない。 (2)取消事由2(本件訂正発明1の容易想到性についての判断の誤り)につい- 34 -てア原告は,審決が,引用発明1では,「運転の条件は,被混煉材の種類や温度上昇の制限に合わせて予め設定」されているため,「溶剤等の温度上昇」は運転の条件の設定により制限されて問題とされるものではなく,引用発明1において,他の手法により,「溶剤等の温度上昇」をさらに制御しようとする動機付けは見い出せないと認定した(23頁19行~36行)ことについて,このような動機付けが存在しないという審決の認定は,当業者による通常の創作能力を誤解したものであって誤りであると主張する。 そこで,検討するに,引用発明1は,前記3(2)認定のとおり,真空状態にある混煉容器を自転・公転させて被混煉材を混煉脱泡する際に,当該容器の温度上昇を制限する必要があるという技術課題を明示しており,これを解決するために,容器の自転数,公転数を含む運転条件を予め設定したものと認められる。また,引用 被混煉材を混煉脱泡する際に,当該容器の温度上昇を制限する必要があるという技術課題を明示しており,これを解決するために,容器の自転数,公転数を含む運転条件を予め設定したものと認められる。また,引用発明2も,前記4(2)認定のとおり,同様に,攪拌混合する対象物の温度上昇を押さえるという技術課題を有しており,これを解決するために,ホッパーの上面に設けた温度センサーにより対象物の温度を検知し,温度が一定の温度まで上昇すると,攪拌する部材の回転数を減少させて温度を低下させ,以後,検知した温度に応じて回転数を制御し,攪拌する部材の回転数の減少,増加を順次繰返すものであると認められる。 さらに,本件周知例にも,攪拌により一定以上に温度が上昇するのを防ぐという技術課題と,これを解決するために,検出された温度に応じて攪拌翼の回転数を制御するという技術事項が開示されている。 そうすると,引用発明1及び2と本件周知例は,いずれも攪拌により生じる温度上昇を一定温度に止めるという共通の技術課題を有し,それぞれその課題を解決する手段を提供するものであると認められる。 したがって,引用発明1において,上記技術課題を解決するために採用- 35 -した,混煉のための自転数,公転数を含む運転条件を温度上昇の制限などの条件に合わせて予め設定しておくという構成に代えて,共通する技術課題を有する引用発明2に開示された,温度センサーにより対象物の温度を検知して温度が一定の温度まで上昇すると,攪拌する部材の回転数を制御するという技術思想を採用し,対象物の温度を検知して検知した温度に応じて容器の自転数,公転数を含む運転条件を制御するという構成(審決認定の[特定事項B]の構成)に至ることは,攪拌により一定以上に温度が上昇するのを防ぐという技術課題自体が本件周知例にも示される周 応じて容器の自転数,公転数を含む運転条件を制御するという構成(審決認定の[特定事項B]の構成)に至ることは,攪拌により一定以上に温度が上昇するのを防ぐという技術課題自体が本件周知例にも示される周知の技術課題であることも考慮すると,当業者にとって,容易に想到することができたものといわなければならない。審決認定のとおり引用例1に「温度の検知」の記載がないとしても,攪拌により生じる温度上昇を一定温度に止めるという技術課題が引用例1自体に開示されており,これが周知の技術課題でもある以上,当該課題解決の観点から,温度を検知してそれに応じて運転条件を制御するという構成を採用することに,格別の困難性はないものということができる。 イ被告は,引用発明2は,「ホッパー内に投入される複数種類のトナー原材料を,該ホッパー内に配設された撹拌部材を駆動させることにより撹拌して混合する」ものであり,引用発明1の「混煉容器を公転させながら自転させて,被混煉材を混煉し脱泡させる」ものとは,構成が全く異なるし,技術分野も異なると主張する。 確かに,引用発明2は,混煉容器自体は回転せず,その中にある撹拌部材が回転するものであるのに対し,引用発明1は,混煉容器が公転し,自転するものであるが,両者は,混煉すべき材料を攪拌混合するという共通の技術分野に属するのみならず,材料を攪拌して混合する際に生じる材料間の摩擦熱による温度上昇に対応するという技術課題と,当該課題を解決するため温度に応じた回転数の制御を行うという解決手段でも共通するも- 36 -のであり,その制御が事前に設定されたものか検知した温度に即応したものかと,回転制御の対象が混煉容器自体であるか攪拌翼(ペラ,羽根)であるかが相違するにすぎない。したがって,引用発明1と引用発明2との構成及び技術分野が異な 設定されたものか検知した温度に即応したものかと,回転制御の対象が混煉容器自体であるか攪拌翼(ペラ,羽根)であるかが相違するにすぎない。したがって,引用発明1と引用発明2との構成及び技術分野が異なるとして,前者に後者の構成を適用することに阻害要因があるとする被告の主張は理由がない。 また,被告は,引用例1において,「温度上昇の制限」は単なる一例示にすぎず,このような一例示の記載から「撹拌による被混煉材Aの温度上昇という課題」を導くのは無理な発想の飛躍である旨主張する。 しかし,引用例1には,混練脱泡作業中の被混練材の攪拌により温度上昇が生じて問題となることが明示されており,その温度上昇を押さえるために,混煉容器のみを真空にすることだけでなく,冷却用ファンを設ける方法についても開示されていることは,前記3(2)認定のとおりである。したがって,被告の上記主張は採用することができない。 さらに,被告は,本件訂正発明1及び2は,脱泡作用を高めるために容器内を真空にした上で,内容物の温度が上昇してしまうという問題に対し,「容器の公転数と自転数を独立して制御」できる装置を用い,①公転数を減少させることによって,内容物の温度は下げられるし,②自転数を減少させることによっても,内容物の温度は下げられる。ただし,③公転数を減少させると,脱泡作用が減少するし,④自転数を減少させると,攪拌作用が減少するという4点を総合的に勘案しつつ,容器の公転数と自転数を独立して制御することを特徴とするものであって,この点において本件訂正発明1及び2が進歩性を有する旨を主張する。 しかし,前記3(2)認定のとおり,本件訂正発明1及び2において,最適な状態で溶剤を攪拌し精度の高い脱泡を行うために,容器の公転数及び自転数をどのように制御すればよいかは,具体的に全く規定されて 。 しかし,前記3(2)認定のとおり,本件訂正発明1及び2において,最適な状態で溶剤を攪拌し精度の高い脱泡を行うために,容器の公転数及び自転数をどのように制御すればよいかは,具体的に全く規定されていない。 また,特許請求の範囲の請求項においても,「容器の公転数及び自転数を独- 37 -立して制御しながら,容器の公転数及び自転数の減少,増加を順次繰り返す」と記載されているだけであって,特別な制御手法が特定されているわけではない。そして,引用発明1に引用発明2に開示された技術思想を採用し,検知した対象物の温度に応じて容器の自転数,公転数を含む運転条件を制御するという構成に至ることが,当業者にとって容易に想到することができたことは,前記アのとおりであるから,この点において本件訂正発明1及び2が進歩性を有するものではない。したがって,被告の上記主張は採用することができない。 ウ以上のとおり,引用発明1において,特定事項Bに関して引用例2に記載される技術思想を適用する動機付けは,周知技術を加味しても見い出せないとした審決の判断(26頁18行~20行)は誤りであり,この点に関する原告主張の取消事由2には理由がある。 (3)取消事由3(本件訂正発明2の容易想到性についての判断の誤り)について原告は,審決が,第一に,引用発明1について,「装置を運転する際の「温度上昇の制限」についての認識はあったにしても,そもそも,「溶剤等の温度を検知」するという技術思想がないものといえる」(31頁1行~3行)と認定し,第二に,引用発明1において,「「溶剤等の温度を検知」して,さらに「溶剤等の温度上昇」を制御しようとする動機づけは見いだせない」(同頁12行~13行)と認定しことが,いずれも誤りであると主張する。 確かに,引用発明1において,混煉容器を自転・公転 」して,さらに「溶剤等の温度上昇」を制御しようとする動機づけは見いだせない」(同頁12行~13行)と認定しことが,いずれも誤りであると主張する。 確かに,引用発明1において,混煉容器を自転・公転させて被混煉材を混煉脱泡する際に,当該容器の温度上昇を制限する必要があるという技術課題が開示されていることは,前記3(2)認定のとおりである。また,引用例1に「温度の検知」の記載がないとしても,攪拌により生じる温度上昇を一定温度に止めるという技術課題が引用例1自体に開示されており,周知の技術課題でもある以上,当該課題解決の観点から,他の解決手段を採用することに- 38 -格別の困難性がないことも,前記(2)認定のとおりである。 そうすると,引用発明1において,同発明と同様の技術課題を有する引用発明2に開示された,ホッパーの上面に設けた温度センサーにより対象物の温度を検知し,温度が一定の温度まで上昇すると攪拌する部材の回転数を制御するという技術思想を採用することは,当業者にとって,容易に想到することができたものといわなければならない。 したがって,引用発明1において,引用例2に記載される技術思想を適用する動機付けは,周知技術を加味しても見い出せないとした審決の判断(32頁24行~25行)は誤りであり,この点に関する原告主張の取消事由3には理由がある。 結論 以上によれば,原告主張の取消事由1は理由がないが,取消事由2及び3はいずれも理由があるから,本件訂正発明1及び2が引用発明1 及び2並びに周知技術に基づいて当業者が容易に発明をなし得たものではないとした審決の判断は誤りである。 よって,原告の請求を認容することとして,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第2部裁判長裁判官中野哲弘裁判官清水節 ではないとした審決の判断は誤りである。 よって,原告の請求を認容することとして,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第2部裁判長裁判官中野哲弘裁判官清水節裁判官古谷健二郎

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