令和6(う)1138 不同意性交等被告事件

裁判年月日・裁判所
令和6年10月15日 東京高等裁判所 棄却 東京地方裁判所 令和5合(わ)285
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判決文本文2,397 文字)

- 1 - 主文 本件控訴を棄却する。 当審における未決勾留日数中80日を原判決の刑に算入する。 理由 第1 控訴の趣意と事案の概要 1 本件控訴の趣意は、法令適用の誤り、量刑不当の主張である。 2 本件は、被告人が、被害者(当時13歳)が16歳未満の者であり、かつ、自らが被害者の生まれた日より5年以上前に生まれた者であることを知りながら、被害者と性交した事案である。 第2 法令適用の誤りについて 1 論旨は、刑法177条3項、1項(以下「本件規定」という。)は憲法13条及び14条1項に違反し、原判決には法令解釈適用の誤りがある、というのである。 2 原審においては、本件における法令の適用に関し原審当事者から特段の主張はなかったところ、所論は、①年少者の年齢や性的成熟度合いによっては性的行為につき有効に自由な意思決定をする前提となる能力が欠けているとまではいえない場合があり、そのような年少者が真摯な意思決定を行った場合には、年少者の性的自己決定は尊重されるべきで、本件規定は、性的自己決定の自由を保障した憲法13条に違反する、②16歳未満の者令和6年(う)第1138号不同意性交等被告事件令和6年10月15日東京高等裁判所第4刑事部判決【原審】令和5年合(わ)第285号令和6年5月29日東京地方裁判所判決【参照】憲法13条、憲法14条1項、刑法177条3項、1項高刑集第76巻1号- 2 - との性交等について、一律に禁じる本件規定は、国家によって年長者と年少者との間の性的自己決定の自由に関わる取扱いを別異にするもので、道徳に基づく刑罰範囲の拡張ないし厳罰化という意味で加重規定の様相を との性交等について、一律に禁じる本件規定は、国家によって年長者と年少者との間の性的自己決定の自由に関わる取扱いを別異にするもので、道徳に基づく刑罰範囲の拡張ないし厳罰化という意味で加重規定の様相を呈し、令和5年刑法改正前は不可罰であった13歳以上の者との合意の下での性行為まで、原則実刑の5年以上の有期拘禁刑に処されることになったもので、刑の加重の程度が極端であり、立法目的達成の手段として正当化できず、憲法14条1項に違反する、③原判決の法の適用は、当事者の合意の下での性行為についてまで懲役4年の実刑判決を下したもので、被告人、被害者の性的自己決定の自由(憲法13条)を侵害するものであり、違憲である、などと主張する。 3 そこで検討するに、本件規定は、16歳未満の年少者は性的行為につき有効に自由な意思決定をする前提となる能力が十分に備わっているとはいえないことを踏まえて、相手方との間に対等な関係がおよそありえず、上記のような能力に欠ける場合に限って処罰する観点から、行為者が5歳以上年長である場合に、年少者との性的行為について一律に処罰することとしたもので、所論がいうように、かかる罰則規定の適用により、年少者の性的行動に事実上の制約を及ぼす面があるとしても、上記のような能力が十分に備わっていない年少者を保護するために必要な罰則を定めたものといえ、憲法13条、14条1項に違反するものでないことはもとより、本件行為に適用することが憲法13条に違反するともいえない。 法令適用の誤りの論旨は理由がない。 なお、所論は、被告人と被害者が仲を深めた時期は令和5年の改正前の刑法が施行されていた時期であるから、この時点についての被告人の意思決定に対する責任非難を問うことは遡及処罰に当たり得るもので、訴訟手続の法令違反ないし憲法39条違反である 時期は令和5年の改正前の刑法が施行されていた時期であるから、この時点についての被告人の意思決定に対する責任非難を問うことは遡及処罰に当たり得るもので、訴訟手続の法令違反ないし憲法39条違反である、などとも主張するが、独自の見解であって到底採用の限りではない。 高刑集第76巻1号- 3 - 第3 量刑不当について 1 論旨は要するに、被告人を懲役4年に処した原判決の量刑は重過ぎて不当である、というのである。 2 そこで検討すると、所論は、①被告人と被害者が仲を深め始めたのは、13歳以上の者との性行為が処罰されていなかった時期で、性行為に及んだのは令和5年の改正刑法の施行から16日後であったという経緯がある、②被害者には交際相手が存在し、その発言内容からみても同年代の中では比較的性的に成熟している面があり、犯情として、性行為について被害者の同意があったことを考慮すべきである、③被害者には処罰感情がないことを考慮すべきである、などと主張する。 しかしながら、①については、特段量刑上考慮すべき事情とはいえない。 ②、③については、被害者は、性的行為につき有効に自由な意思決定をする前提となる能力が十分に備わっているとはいえず、被告人とは対等な関係にないもので、被害者の同意や処罰感情について、量刑上大きく酌むべき事情とは認め難いとした原判決の評価が誤りであるとはいえない。 原判決の量刑判断は、基礎とした事情及びその評価に不合理な点はなく、原判決後に、被告人が、弁護人を通じるなどして、被害者の親権者に対し、200万円の被害弁償等の申し入れをしたことや、更に反省を深めた旨述べていることを考慮しても、重過ぎて不当であるとはいえない。 量刑不当の論旨は理由がない。 第4 よって、刑訴法396条、刑法21条により、主文のとおり し入れをしたことや、更に反省を深めた旨述べていることを考慮しても、重過ぎて不当であるとはいえない。量刑不当の論旨は理由がない。 第4 よって、刑訴法396条、刑法21条により、主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官家令和典裁判官安藤祥一郎裁判官佐脇有紀) 高刑集第76巻1号

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