昭和22(れ)117 強盗殺人未遂

裁判年月日・裁判所
昭和22年11月22日 最高裁判所第二小法廷 判決 棄却 名古屋高等裁判所
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【DRY-RUN】主    文      本件上告を棄却する          理    由 弁護人石渡秀吉の上告趣意書  第一点は原審判決は理由不備の違法があると思料する。其理由に於て「被告人は 終戦後定職なく遊廓等

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判決文本文3,343 文字)

主文 本件上告を棄却する 理由 弁護人石渡秀吉の上告趣意書第一点は原審判決は理由不備の違法があると思料する。其理由に於て「被告人は終戦後定職なく遊廓等で遊興して其費用等に窮した結果、原審相被告人A、同Bと共に空巣窃盗か又は場合によつては強盗をしようと相謀り昭和二十一年十二月九日午後三時頃被告人の案内で同人が前に数回行つたことのある名古屋市a区b町c丁目d番地喫茶店CことD方に到り同家の様子を窺つたところ同人妻E(当時二十四才)が独り留守居をしていたので、同女に暴行を加へて金品を強取しようと相談した上、直に客を装つて同家内に入り、コーヒーや玉子井を注文しながら方法を案じ互に機会を窺つている中、結局三名共謀の上被告人が右Eと顔見知のため犯行の発覚を虞れ同家主人の帰宅前に右Eを絞殺して金品を強奪しようと企て、互に示し合せた上、同日午後四時頃Aが同家奥の間に居たEに対し勘定を求めて油断させ突如同女の背後から腕で其の頸部を締め付け、其のまゝ奥板の間に同女を上にして仰向に引倒し自己のネクタイ(証第二号)を外して同女の頸部を強く締め付けたところ、ネクタイが切れてしまつたので、更に所携のタオル(証第一号)を同女の頸部に巻き付けて、之を締め、其間被告人は手或は其の場にあつた座布団で同女の口を押へ、Bは同女の足を押へる等の暴行を加へ同女を人事不省に陥らしめ、之によつて被告人等は同女を殺害し得たものと誤信し、同家内から前記D所有の自転車一台背広服三ツ揃一着(証第二十八号)其他衣類靴等三十数点を強奪したのであるが間もなく右Eが蘇生したため、同女に対し右暴行によつて全治約一箇月を要する喉頭部並に眼結膜粘膜下出血等の傷害を負わせたに止り殺害の目的を遂げなかつたものである」との犯罪事実を判示した。そして其の証拠の部に於 右Eが蘇生したため、同女に対し右暴行によつて全治約一箇月を要する喉頭部並に眼結膜粘膜下出血等の傷害を負わせたに止り殺害の目的を遂げなかつたものである」との犯罪事実を判示した。そして其の証拠の部に於て被告人の供述其他六点の証拠- 1 -を採用し最後に「綜合して之を認定し得るから判示事実は証明十分である」と説明した。然れども一個の事実に対して数個の証拠を綜合して事実を認定することは其の性質上から可能であるとしても本件の如き数個の事実に対して数個の証拠を綜合して認定することは如何なる事実を如何なる証拠に基いて認定したものであるかは論理上其の明確を欠くを以て其の理由は不明である。従つて理由の不備であるのは当然である。此の点に於て原審判決は破毀せらるべきものと思料する。といふのであるが原判決の認定したところは本件犯行の動機から被害者の傷害の結果に至るまでいろいろの事柄にふれてはいるけれども結局これは被告人の強盗殺人未遂という一個の犯罪を形成し又はこれと密接する一連の事実関係を認定したに過ぎないのであつて原判決の挙示する証拠を綜合すれば優にこの事実関係を認めることができる。弁護人の主張するように右一連の事実関係のうちどの事実はどの証拠で認定すると一々各別に之を判示する必要はないのである。論旨は理由がない。 同第二点は、原審判決は虚無の証拠に依つて事実を判示した違法がある。判示事実中「同女を人事不省に陥らしめ之によつて被告人等は同女を殺害し得たものと誤信し(中略)間もなく右Eが蘇生したため同女に対し右暴行によつて(中略)傷害を負わせたに止り殺害の目的を遂げなかつたものである」との旨を判示して、被告人の殺人未遂の事実を判示している。依て殺人未遂の事実を認定するに採用してある各証拠に付て精査するに(一)検事聴取書中の被告人の自白と(二)第一審相被 を遂げなかつたものである」との旨を判示して、被告人の殺人未遂の事実を判示している。依て殺人未遂の事実を認定するに採用してある各証拠に付て精査するに(一)検事聴取書中の被告人の自白と(二)第一審相被告人Aに対する予審訊問調書中の自白との二点を証拠として之れに基いて事実を認定したものであるのは明らかである。証人Eの予審調書の証言中には暴行或は殺人未遂等に関する記載は第一審相被告人Aに対する記載のみで、本件被告人Fに関する記載は全く無いから殺人未遂の点は無関係である。其の余の証拠もすべて関係が全く無い。前記の如く自白のみである。依て本件被告人の自白は長き拘禁中のもの- 2 -であり憲法第三十八条第二項及第三項の規定に依つて、証拠の価値及能力の無いもの即ち証明力の無いものである。亦之れに関連する相被告人Aの自白は本件被告人の自白では無いけれども、其のAに対して証拠力の無いのも同一であるから共同被告人の自白は他の共犯関係の被告人に対しても其の証拠力無いものと解すべきである。然らざれば憲法第三十八条の規定は、単独行為の被告人の場合のみに制限せられて共犯関係には全く適用無き空文となるであろう。憲法第三十八条の規定する人格尊重平等の基本的人権保護の趣旨は其目的を達することが出来ないからである。 又原審外の他の審級に於て成立した自白の書類は書証として証拠力ありと曲解することは出来ない其の自白たる性質に於て同一なるは勿論のこと尚、刑事訴訟法上の直接審理の原則にも反するからである。右の如き次第で本件判示事実の殺人未遂の点は証拠となすべきで無い証拠力の無い自白に基いて認定したものであるから虚無の証拠に依つて事実を判示した違法があることの明白であると言はねばならぬものである。是に由つて原審判決は当然破毀せらるべきものであると確信する。といふのであるが。 被 て認定したものであるから虚無の証拠に依つて事実を判示した違法があることの明白であると言はねばならぬものである。是に由つて原審判決は当然破毀せらるべきものであると確信する。といふのであるが。 被告人が検事に対して本件の犯行を自白したのはその犯行(昭和二十一年十二月九日)後十九日目であり、被告人が勾留せられてから僅かに四日目であることは記録の上で明白であつて本件犯罪の性質其他諸般の事情から見てこの自白を以て論旨のいふように不当に長い拘禁の後の自白といふことはできない。また第一審の相被告人Aの予審に於ける供述についても弁護人は不当に長い拘禁の後の自白であるからこれはAに対する証拠とすることができないのみならず被告人に対する関係からいつても証拠とすることはできないといふけれども同人のこの供述も同人が被告人と共に本件犯罪をなした後一ケ月余(勾留後二十五日)になされたものであつてこれまた本件犯罪の性質其の他諸般の事情から見て必ずしも不当に長い拘禁とはいへないのみならず原審がこれを被告人の犯行に対する証拠として挙げたのはAの供述- 3 -中被告人の犯罪を証明する部分であつて―たとへば被告人に殺意があつたといふ事実として右供述中F(被告人)が私に「お前さきに女の頸をしめろあとから自分がやる」といつたので女の頸をしめて殺してから金をとることになつたのであるとの部分を挙げているやうに―Aが自分の犯行を自白している部分を証拠にしたものではないことは原判決の前後を照応してみれば極めて明らかである。であるからこのAの予審における供述を以て日本国憲法の施行に伴う刑事訴訟法の応急的措置に関する法律第十条第二項にいふ自白として被告人の犯罪の証拠とすることもできぬといふのは見当違ひの議論といはねばならぬ。よつて、この論旨もまた採用することはできない。 以上全裁 訴訟法の応急的措置に関する法律第十条第二項にいふ自白として被告人の犯罪の証拠とすることもできぬといふのは見当違ひの議論といはねばならぬ。よつて、この論旨もまた採用することはできない。 以上全裁判官一致の意見により刑事訴訟法第四百四十六条に従い主文の如く判決する。 検察官十蔵寺宗雄関与昭和二十二年十一月二十二日最高裁判所第二小法廷裁判官霜山精一裁判官栗山茂裁判官藤田八郎裁判長裁判官塚崎直義は欠勤し裁判官小谷勝重は出張中であるから、各署名捺印することが出来ない。 裁判官霜山精一- 4 -

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