令和3(ワ)7624 不正競争行為差止等請求事件

裁判年月日・裁判所
令和5年3月23日 東京地方裁判所
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令和5 年3 月23 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官令和3 年(ワ)第7624 号不正競争行為差止等請求事件口頭弁論終結日令和5 年2 月2 日判決 当事者の表示別紙当事者目録記載のとおり 主文 1 被告は、原告会社が販売する主要取扱製品のほとんどは被告の製品を模倣した製品である旨及び原告会社によるこれらの製品の販売は被告の企業活動を妨害する違法行為である旨を、文書、口頭又は電子的手段を通じて、第三者に告知又は流布してはならない。 2 被告は、原告会社に対し、770 万円及びこれに対する令和4 年7 月1 日から支払済みまで年3%の割合による遅延損害金を支払え。 3 被告は、原告B に対し、55 万円及びこれに対する令和4 年7 月1 日から支払済みまで年3%の割合による遅延損害金を支払え。 4 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は、原告会社に生じた費用と被告に生じた費用の19 分の18 との合計の7 分の1 を被告の、その余を原告会社の各負担とし、原告B に生じた費用と被告に生じた費用の19 分の1 との合計の11 分の2 を被告の、その余を原告B の各負担とする。 6 この判決は、第2 項及び第3 項に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 主文第1 項と同旨 2 被告は、別紙謝罪広告目録記載の謝罪広告文を、同目録記載の方法で掲載せよ。 3 被告は、原告会社に対し、5380 万円及びこれに対する令和4 年7 月1 日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。 4 被告は、原告B に対し、300 万円及びこれに対する令和4 年7 月1 日から支払済みま で年3%の割合による金員を支払え。 から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。 4 被告は、原告B に対し、300 万円及びこれに対する令和4 年7 月1 日から支払済みま で年3%の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 事案の要旨本件は、被告が、取引先等に対し、原告B が設立した原告会社が被告の製品を模倣した製品を販売するという国内法に違反する行為を行っている旨記載した文書を電子メールに 添付して送信したことにつき、原告らが、被告と競争関係にある原告会社の営業上の信用を害する虚偽の事実を流布する不正競争(不正競争防止法(以下「不競法」という。)2 条 1 項21 号)に当たると共に、原告B の名誉を毀損する不法行為に当たると主張して、被告に対し、次の各請求をする事案である。 (1) 原告会社の請求 ア不正競争の差止請求(第1 の1。不競法3 条1 項)イ別紙謝罪広告目録記載の謝罪広告文の掲載請求(第1 の2。同法14 条)ウ令和4 年6 月30 日までに原告会社に発生した1 億4973 万3060 円の損害の一部である5000 万円及び弁護士費用等相当損害金380 万円(合計5380 万円)の損害賠償並びにこれに対する同年7 月1 日から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金請 求(第1 の3。同法4 条)(2) 原告B の請求令和4 年6 月30 日までに原告B に発生した250 万円の慰藉料及び弁護士費用等相当損害金50 万円並びにこれに対する同年7 月1 日から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金請求(第1 の4。民法710 条) 2 前提事実(証拠等の掲示のない事実は当事者間に争いがない。以下、枝番の表示のない証拠は枝番の全てを含む。)(1) 当事者等 の割合による遅延損害金請求(第1 の4。民法710 条) 2 前提事実(証拠等の掲示のない事実は当事者間に争いがない。以下、枝番の表示のない証拠は枝番の全てを含む。)(1) 当事者等ア原告会社は、硬度計等の工業用試験機の開発、販売等を目的とする株式会社であり、原告B により令和2 年9 月2 日に設立された。 イ原告B は、被告の取締役であり営業部本部長であったが、同年6 月15 日に被告取 締役を退任し、現在は原告会社の代表取締役を務める者である。 ウ被告は、硬度計等の精密機器の製造、販売、輸出入業務等を目的とする株式会社であり、硬度計等の販売に関して原告会社とは競争関係にある。 エ KINGYUFANGENTERPRISECO., LTD(鈺方企業有限公司。以下「KYF 社」という。)は、令和2 年3 月31 日まで被告から委託を受けて硬度計等を製造していた台湾所在 の企業である。 (2) 原告会社の設立等原告B は、令和2 年6 月15 日に被告取締役を退任後、同年9 月2 日に原告会社を設立して同社代表取締役に就任した。原告会社は、自社製品のラインナップの一部としてKYF社から同社製品の硬度計を輸入販売する手筈を整え、令和3 年1 月中旬頃には、自社ウェ ブサイトや製品カタログの準備を完了し、本格的に営業活動を開始しようとしていた。 (3) 被告は、代理人弁護士を通じて、原告B に対し、同年2 月3 日付け文書(甲4。以下「本件警告書」という。)を送付した。本件警告書には、以下の記載がある(「/」は改行部分を示す。以下同じ。)。 「当社は永年の間硬度計専門メーカーとして、国内はもとより海外35 カ国以上の販売代 理店を通じ、各種硬度計及び関連機器を製造・販売して の記載がある(「/」は改行部分を示す。以下同じ。)。 「当社は永年の間硬度計専門メーカーとして、国内はもとより海外35 カ国以上の販売代 理店を通じ、各種硬度計及び関連機器を製造・販売しており、当社の名前は硬度計業界において広く認識されております。…/しかるに、…貴殿は台湾のKingYeFang が違法にコピーした当社の硬度計と酷似の硬度計の輸入販売を目論み、需要者の間に広く認識されている当社の硬度計と誤認混同させる行為に出ようとしています。/貴殿のこの行為は明らかに不正競争防止法第2 条1 項1 号に違反しています。」 (4) 本件メールの送信被告は、同月4 日、少なくとも1000 社を下らない取引先の商社等に対し、「弊社前取締役営業本部長「B」に関しまして」と題する電子メール(甲3 の2。以下「本件メール」という。)を送信した。本件メールには、本文に「弊社前取締役営業本部長「B」に関して、添付の文書をご一読下さい。」などと記載すると共に、以下の内容の「弊社前国内営業部 責任者の営業行為について」と題する文書(甲3 の1。以下「本件文書」という。)が添付 されていた。 「弊社前国内営業部責任者「B 取締役営業本部長」の突然の退職につきましては、昨年 6 月お取引先の皆様にはお知らせ致しましたが、その後9 月に同人が「株式会社クラフテスト」と称する硬度計他を扱う販売会社を設立したとの情報を確認しておりました。この度、同社が自社のホームページを開設したとの情報を入手し内容を確認したところ、その 記載内容、特に主要取扱製品の殆どが、台湾のKYF 社製の「弊社模造製品」であることが判明し、既に同製品の販売活動を開始したことが確認されました。KYF 社は長年、弊社製品の機械加工部品を製作する外注工場の一 特に主要取扱製品の殆どが、台湾のKYF 社製の「弊社模造製品」であることが判明し、既に同製品の販売活動を開始したことが確認されました。KYF 社は長年、弊社製品の機械加工部品を製作する外注工場の一社であり、そこが弊社の同意無く数年前より、弊社硬度計のデッドコピーと思しき模倣製品を不法に製作していたことを把握しておりました。…事もあろうに、退職した元取締役営業本部長B が、この模倣製品を日本国内で積 極的に販売し、弊社の企業活動を妨害するということは看過しがたいことであり、明らかに国内法に違反する行為であり、それへの厳しい対処は考えておりますが、先ずは弊社製品を永年ご愛顧頂いております皆様には、恥を忍んで現在の事実関係をお知らせする次第です。/皆様におかれましては、上記の様な事情・経緯をご賢察の上、今後B より取引の依頼等ございましたら、何卒適切にご対応頂きますよう、切にお願いする次第です。」 第3 争点 1 原告会社の不競法に基づく請求(1) 本件文書の虚偽性(争点1-1)(2) 故意又は過失の有無(争点1-2)(3) 損害発生の有無及び損害額(争点1-3) (4) 原告会社の営業上の利益が侵害されるおそれの有無(争点1-4)(5) 謝罪広告の必要性の有無(争点1-5) 2 原告B の民法710 条に基づく請求(1) 違法性阻却事由の有無(争点2-1)(2) 故意又は過失の有無(争点2-2) (3) 損害発生の有無及び損害額(争点2-3) 第4 争点に関する当事者の主張 1 争点1-1(本件文書の虚偽性)【原告会社の主張】(1) 被告は、本件文書において、「弊社硬度計のデッドコピーと思しき模倣製品」、「明らかに国内法に違反する行為」などとしているが、その具体的な根拠は明 1(本件文書の虚偽性)【原告会社の主張】(1) 被告は、本件文書において、「弊社硬度計のデッドコピーと思しき模倣製品」、「明らかに国内法に違反する行為」などとしているが、その具体的な根拠は明らかでない。また、 本件警告書において、被告は、KYF 社が違法にコピーした被告の硬度計に酷似する硬度計を原告B が輸入販売する行為は不競法2 条1 項1 号に違反するとするが、本件警告書は、警告対象である原告会社の製品も模倣されたとする被告の製品も特定されておらず、その対比も示されておらず、商品形態の周知性についても一切言及がない杜撰なものである。 このように、原告らによる不正競争は一切存在しないことから、被告による本件文書の 流布行為は虚偽事実の流布の不正競争(同項21 号)である。 (2) 被告は、別紙被告製品情報目録記載の各情報(以下、同目録記載の番号順に「被告製品情報1」などといい、これらを併せて「被告製品情報」という。)は全て被告の営業秘密であり、被告がKYF 社に示した被告製品情報を無断で使用して製造されたKYF 社製の硬度計を原告会社が輸入する行為は不競法2 条1 項10 号の不正競争に当たるとして、本 件文書の摘示事実は虚偽ではないと主張する。しかし、以下のとおり、被告主張に係る不正競争は認められない。 ア営業秘密に該当しないこと被告製品情報は、以下のとおり、いずれも秘密管理性及び非公知性を欠き、「営業秘密」(不競法2 条6 項)に当たらない。 (ア) 秘密管理性a 被告製品情報1被告製品情報1 は、成文化されていない情報であるため、原則として秘密管理性を欠き、例外的に秘密管理性を認めるべき事情も存在しない。 また、後記被告規定は、被告がISO9001 の認定取得のために形式的に定めたもの は、成文化されていない情報であるため、原則として秘密管理性を欠き、例外的に秘密管理性を認めるべき事情も存在しない。 また、後記被告規定は、被告がISO9001 の認定取得のために形式的に定めたものにすぎ ず、実際には社内で周知されておらず、同規定に則った情報管理もされていない。 b 被告製品情報2~5被告製品情報2~4 が記載された設計図面は、CAD で管理されていたとしても、パソコンにパスワードを設定しているのと同様に、それのみでは秘密管理性の根拠にはならない。 また、これらの図面のコピーは誰でも自由に出入り可能な部品保管室に保管されており、設計開発部に依頼すれば誰でもそれらのPDF データ等を入手できた点でも、これらの図面 が秘密として管理されていたとはいえない。被告製品情報5 に係る許容範囲一覧表も同様である。 (イ) 公知性被告製品情報は、いずれも公知の情報である。 すなわち、被告は、硬度計の製造を委託したKYF 社に対しその製造に必要な情報を開示 したが、KYF 社はそれらの情報について秘密保持義務を負っていなかった。また、被告製品情報1 及び3 は、リバースエンジニアリングによって認識できる情報である。被告製品情報2 及び5 は、JIS 規格に由来するものである。被告製品情報4 は、硬度計の一般的な製造手法にすぎない。 (3) 被告製品情報の不使用 KYF 社は、自社の硬度計の製造に当たり、被告製品情報を使用していない。 (4) 原告会社の善意無重過失原告会社は、KYF 社製の硬度計が不正使用行為によって生じた物であることを知らず、知らないことにつき重大な過失はない。 【被告の主張】 (1) 以下のとおり、KYF 社製の硬度計は、被告がKYF 社に示した営業秘密である被 正使用行為によって生じた物であることを知らず、知らないことにつき重大な過失はない。 【被告の主張】 (1) 以下のとおり、KYF 社製の硬度計は、被告がKYF 社に示した営業秘密である被告製品情報を使用して製造された物であるから、不正の利益を得る目的等によりこれを使用したKYF 社による製造行為は不競法2 条1 項7 号の不正競争に当たり、原告会社がKYF社製の硬度計を輸入する行為は同項10 号の不正競争に当たる。本件文書はこの事実を摘示したものであり、虚偽の事実の流布には当たらない。 (2) 営業秘密該当性 被告製品情報は、次のとおり、いずれも被告の営業秘密に該当する。 ア秘密管理性(ア) 被告製品情報1被告は、社内文書に関する秘密区分規定(以下「被告規定」という。)において、技術的ノウハウを具体的に示したものは社長の許可なく社外に提示してはならない秘密に当たる と定めている。被告製品情報1 は、成文化こそされていないが、技術的ノウハウに相当する情報であるから、被告規定に照らし、被告製品情報1 が秘密として管理されていることは被告従業員にとって明らかであった。 また、被告において、被告製品情報1 の内容を他社に説明できる十分な知識を持っている者は取締役製造部長と製造部部長代理の2 名しかいないため、被告製品情報1 の内容が 外部に漏洩することはない。 (イ) 被告製品情報2~5被告製品情報2~4 は、いずれも設計図面に記載された情報であるところ、被告規定において、図面は社長の許可なく社外に提示してはならない秘密に当たると定めているから、同規定に照らし、被告製品情報2~4 が秘密として管理されていることは被告従業員にと って明らかであった。 また、これらの設計図面の原本はCA 提示してはならない秘密に当たると定めているから、同規定に照らし、被告製品情報2~4 が秘密として管理されていることは被告従業員にと って明らかであった。 また、これらの設計図面の原本はCAD で管理され、設計開発部以外の者はアクセスできないようになっており、設計図面のコピーは、部品保管室において専用のキャビネットに入れて他の書類と区分した状態で保管されている。部品保管室は、施錠こそされていないが、通常、製造と無関係の従業員が立ち入ることはない。設計開発部以外の従業員は、 設計開発部に依頼して図面のPDF データ等を入手できるが、その際には依頼の理由を問われ、厳重に取り扱うよう注意喚起されることになる。被告製品情報5 に係る許容範囲一覧表の管理状況もこれらの設計図面と同様である。 イ非公知性被告製品情報は、公表されておらず、その性質上リバースエンジニアリングでも知るこ とができない情報であるため、公然と知られていないものである。 (3) 被告製品情報の使用KYF 社は、自社製品を製作するに当たり、被告製品情報を使用した。 (4) 原告会社の悪意原告B は、被告在籍時に被告の経営全般に関する情報を得ることができる地位にあり、実際に被告取締役らと情報を共有していたこと等から、原告B 及び原告会社は、KYF 社の 不正競争を知っていた。 2 争点1-2(故意又は過失の有無)【原告会社の主張】被告は、原告会社の営業妨害等を目的として本件メールを送信したため、不正競争について故意がある。また、被告は、KYF 社の製品を調査したり、原告会社の行為の違法性に ついて十分検討したりすることなく本件メールを送信したため、少なくとも不正競争につき過失がある。 【被告の主張】否認する。 被告は YF 社の製品を調査したり、原告会社の行為の違法性に ついて十分検討したりすることなく本件メールを送信したため、少なくとも不正競争につき過失がある。 【被告の主張】否認する。 被告は、KYF 社の元従業員から、KYF 社が被告の図面等を利用して硬度計を製造し、こ れをアメリカの取引先に出荷したという情報提供を受けた。そこで、アメリカの取引先に確認したところ、その取引先はKYF 社製の硬度計を購入した事実を認めた。さらに、KYF社は、被告との契約延長交渉において、機密保持条項の削除を執拗に求めていた。被告は、これらの合理的な根拠に基づいて本件メールを送信したものである。 3 争点1-3(損害発生の有無及び損害額) 【原告会社の主張】本件文書が流布された令和3 年2 月4 日から令和4 年6 月30 日までの間の原告会社の売上は、合計4753 万4305 円である。 原告会社は、本件文書が流布されなければ、現状の10 倍程度の売上を確保できたはずであり、本来得られたであろう売上は4 億7534 万3050 円となることから、本件文書の影響 により得られなかった売上は4 億2780 万8745 円となる。 また、原告会社が販売する商品全体の利益率は、第1 期(令和2 年9 月2 日~令和3 年 6 月30 日)が40.9%、第2 期(令和3 年7 月1 日~令和4 年6 月30 日)が31.8%であるから、原告会社は、少なくとも上記売上の35%の利益を確保できたはずである。 したがって、原告会社の令和3 年2 月4 日から令和4 年6 月30 日までの売上に関する逸失利益は、1 億4973 万3060 円となる。 加えて、原告会社は、本件訴訟の追行を弁護士及び弁理士に委任せざるを得なかった。 2 月4 日から令和4 年6 月30 日までの売上に関する逸失利益は、1 億4973 万3060 円となる。 加えて、原告会社は、本件訴訟の追行を弁護士及び弁理士に委任せざるを得なかった。 その費用に係る損害額としては380 万円が相当である。 そこで、原告会社は、被告に対し、売上に関する逸失利益1 億4973 万3060 円のうち5000万円及び弁護士等費用380 万円の合計5380 万円の損害賠償を請求する。 仮に上記主張が認められない場合、被告の不正競争により営業上の利益の侵害が発生し たことが明らかではあるがその損害額の立証が困難であるとして、不競法9 条に基づく相当額の損害賠償を求める。 【被告の主張】争う。実際の10 倍程度の売上を確保できたと考えることは合理的根拠を欠く。 4 争点1-4(原告会社の営業上の利益が侵害されるおそれの有無) 【原告会社の主張】本件訴訟に至る被告の態度や主張内容に照らすと、被告が本件文書と同様の虚偽の事実を告知又は流布する不正競争を繰り返し、原告会社の営業上の利益が侵害されるおそれがある。 【被告の主張】 争う。 争点1-5(謝罪広告の必要性の有無)【原告会社の主張】原告会社は、被告の不正競争によって営業上の信用を著しく毀損されており、原告らが信用を取り戻そうとしても、周囲からは相手にされず、自力での信用回復は困難である。 このため、原告会社の信用を取り戻すには、不特定多数人が認知し得る被告による謝罪広 告が必要である。 【被告の主張】本件文書において、被告は、KYF 社の製品の問題を指摘したにすぎず、原告会社自体の問題を指摘してはいない。原告会社の損害は損害賠償によって十分にてん補されるため、謝罪広告の必要はない。 本件文書において、被告は、KYF 社の製品の問題を指摘したにすぎず、原告会社自体の問題を指摘してはいない。原告会社の損害は損害賠償によって十分にてん補されるため、謝罪広告の必要はない。 6 争点2-1(違法性阻却事由の有無)【被告の主張】被告は、原告会社の不正競争に対する差止請求の一環として本件メールを送信したのであるから、正当な権利行使として違法性が阻却される。 【原告B の主張】 原告会社がKYF 社製の硬度計を輸入して販売することは不正競争に当たらない。そもそも、本件メールの送信は原告会社の営業妨害を目的としたものであるから、正当な権利行使とはいえない。 7 争点2-2(故意又は過失の有無)原告B の主張は、争点1-2 における原告会社の主張と同様であり、被告の主張は、争点 1-2 における主張と同様である。 8 争点2-3(損害発生の有無及び損害額)【原告B の主張】原告B は、被告在職中から被告代表者から強いられた精神的ストレスにより精神科に通院していたが、本件の不正競争により増悪を余儀なくされ、より強い処方薬を必要とする 状態にまで悪化した。この被告の名誉毀損行為による令和4 年6 月末日までの精神的苦痛に対する慰謝料としては250 万円が相当である。 また、原告B は、本件訴訟の追行を弁護士及び弁理士に委任せざるを得なかった。その費用に係る損害額は50 万円が相当である。 したがって、原告B が被告の名誉毀損行為により被った損害額は、合計300 万円である。 【被告の主張】 原告B の状況は不知。損害額は争う。 第5 当裁判所の判断 1 争点1-1(本件文書の虚偽性)について(1) 本件文書の趣旨本件文書において、被告は、原告らによるKYF 】 原告B の状況は不知。損害額は争う。 第5 当裁判所の判断 1 争点1-1(本件文書の虚偽性)について(1) 本件文書の趣旨本件文書において、被告は、原告らによるKYF 社製品の販売につき「国内法に違反する 行為」と断ずるものの、具体的にいかなる国内法に違反するものであるかについては明示していない。もっとも、KYF 社製品につき「弊社模倣製品」、「弊社硬度計のデッドコピーと思しき模倣製品」としていることに鑑みると、KYF 社製品の輸入販売をもって形態模倣の不正行為(不競法2 条1 項3 号)と考えていたことがうかがわれる。また、同時期に被告が原告B に対して送付した本件警告書では、KYF 社製品につき被告製品の硬度計を違法 にコピーし、これと酷似した製品と断じ、KYF 社製品の輸入販売をもって周知の商品等表示の不正競争(同項1 号)と明記していることに鑑みると、本件文書も、周知の商品等表示の不正競争とする趣旨とも理解し得る。 もっとも、本件文書において「KYF 社は長年、弊社製品の機械加工部品を制作する外注工場の一社であり」と言及していることにも鑑みると、本件文書は、KYF 社が被告との取 引関係を通じて取得した被告の営業秘密を不正に利益を得る目的により使用して製品を製造し、原告会社がこれを輸入販売することをもって不正競争(同項7 号、10 号)とする趣旨と理解する余地もないではない。 本件において、被告は、本件文書について、営業秘密に係る不正競争の事実を摘示したものである旨主張することから、以下、この点について検討する。 (2) 秘密管理性ア 「秘密として管理されている」(不競法2 条6 項)といえるためには、当該情報にアクセスした者に当該情報が営業秘密であることが認識できるような 点について検討する。 (2) 秘密管理性ア 「秘密として管理されている」(不競法2 条6 項)といえるためには、当該情報にアクセスした者に当該情報が営業秘密であることが認識できるような措置が講じられ、当該情報にアクセスできる者が限定されているなど、当該情報に接した者が、これが秘密として管理されていることを認識し得る程度に秘密として管理されていることを要するという べきである。 イ被告製品情報1 について被告製品情報1 は、本件メールの送信時である令和3 年2 月4 日時点で、被告において成文化されていなかった情報である(争いのない事実)。 被告は、被告規定において、技術的ノウハウを具体的に示したものは社長の許可なく社外に提示してはならない秘密に当たると定めており、技術的ノウハウに相当する被告製品 情報1 が秘密として管理されている情報であることは被告従業員にとって明らかであったとするが、被告が被告規定を従業員に周知していたことを示す的確な証拠は見当たらない。 仮に被告が被告規定を従業員に周知していたとしても、証拠(乙14)によれば、被告規定の適用範囲が「当社で発行および受領する文書」に限られること(1 項)、社外秘扱いの対象となる情報は「技術的ノウハウを具体的に示したもの」であること(2 項2)が明記され ている。そうすると、成文化されていない調整方法である被告製品情報1 は、これに当たらないこととなる。そのため、被告製品情報1 については、これに接した被告従業員が被告規定に照らして秘密として管理されていると認識できたとはいえない。 さらに、被告は、被告製品情報1 について、他者に説明できる程度の知識を持っている人物は被告の取締役製造部長と製造部部長代理の2 名のみであり、外部に漏洩する可能性 ていると認識できたとはいえない。 さらに、被告は、被告製品情報1 について、他者に説明できる程度の知識を持っている人物は被告の取締役製造部長と製造部部長代理の2 名のみであり、外部に漏洩する可能性 はないともするが、これを認めるに足りる的確な証拠は見当たらない。むしろ、被告の主張を前提としても、他社に説明できる程度の知識を持つのが上記2 名のみというのであって、被告製品情報1 にアクセスできる者をこれらの者に限定していたわけではなく、被告製品情報1 を認識し、これに基づき硬度計の調整を行い得る被告従業員は他にも存在していたとみられる。これらの者との関係で、被告が被告製品情報1 につき秘密として管理し ていた事実をうかがわせる具体的な事情は見当たらない。 したがって、被告は、被告製品情報1 につき、これに接した者が秘密として管理されていることを認識し得る程度に秘密として管理していたとは認められず、被告製品情報1 は、「営業秘密」(不競法2 条6 項)に当たるとはいえない。この点に関する被告の主張は採用できない。 ウ被告製品情報2~5 について 被告は、被告製品情報2~4 が記載された設計図面を設計用コンピュータソフトであるCAD で管理しており、設計開発部以外の部署に所属する被告従業員は、これらの図面に直接アクセスすることはできなかったと認められる(争いのない事実)。 もっとも、設計開発部以外の部署に所属する従業員であっても、設計開発部に依頼すればこれらの図面を閲覧、印刷し、又はPDF データを取得することができたと認められる (争いのない事実)。また、そのような手続を経て提供された当該印刷物やPDF データの取扱いに関しては、被告規定によれば「社外秘A」として、社長の許可なく社外に提示することは きたと認められる (争いのない事実)。また、そのような手続を経て提供された当該印刷物やPDF データの取扱いに関しては、被告規定によれば「社外秘A」として、社長の許可なく社外に提示することは禁止されているものの(2 項2)、その保管・処分等社内における取扱いに関する具体的な定めがあったことを認めるに足りる証拠はない。被告規定につき被告従業員に周知されていたことを認めるに足りる証拠がないことは前記のとおりである。 さらに、被告は、これらの図面のコピーを無施錠の部品管理室で保管していたこと、当該部品管理室は他のテナントも入居する雑居ビルの1 室であり、同ビルには他のテナント利用者も出入りしていること、同ビルにおいては、用務先以外のスペースへの立入りは認められない旨の管理者による告知がされてはいるものの、被告によるそれ以上の営業秘密保護のための措置は取られていないことが認められる(争いのない事実)。 加えて、これらの図面のコピーについて、秘密として管理されていることを示す表示等の存在や、被告従業員によるコピーの閲覧や印刷の制限を定める具体的な定めがあったことを認めるに足りる証拠はない。 これらの事情を総合的に考慮すると、被告は、被告製品情報2~4 が記載された設計図面につき、これに接した者が秘密として管理されていることを認識し得る程度に秘密として 管理していたとは認められない。 被告製品情報5 に係る許容範囲一覧表については、その管理に関する具体的な状況は明らかでないが、被告の主張を前提にしても、被告製品情報2~4 に係る設計図面と同様の扱いをしていたというのであるから、同様に、被告は、これに接した者が秘密として管理されていることを認識し得る程度に秘密として管理していたとはいえない。 したがって、被告製品 設計図面と同様の扱いをしていたというのであるから、同様に、被告は、これに接した者が秘密として管理されていることを認識し得る程度に秘密として管理していたとはいえない。 したがって、被告製品情報2~5 は、いずれも「営業秘密」に当たるとはいえない。この 点に関する被告の主張は採用できない。 (3) 小括以上のとおり、被告製品情報は、いずれも「営業秘密」(不競法2 条6 項)に当たるとはいえないから、その余の点につき論ずるまでもなく、原告会社がKYF 社製の硬度計を輸入販売する行為をもって、原告会社による不正競争(同条1 項10 号)とはいえない。 そのため、本件文書の摘示事実に関する被告の主張を前提としても、そこに摘示された事実は虚偽と認められる。 本件文書の内容に鑑みれば、本件文書は、原告の営業上の信用を害する事実を内容とするものであるから、被告は、取引先等に対する本件文書の送付により、被告と競争関係にある原告会社が不正競争を行っている旨の原告会社の営業上の信用を害する虚偽の事実を 流布する不正競争(不競法2 条1 項21 号)を行ったといえる。 (4) 事案に鑑み念のため付言すると、次のとおり、原告会社が輸入販売しようとしたKYF 社の製品が被告製品情報を使用して製造された物であると認めるに足りる証拠はない。 ア被告は、KYF 社が製造しTaimecoInternationalTrade が販売する硬度計(型式を「TR- 3C」とする物。以下「Taimeco 社製品」という。)を分析し、Taimeco 社製品は被告製品情報を使用して製造された物である旨主張する。しかし、原告会社が自社製品のラインナップの一部として販売しようとしたKYF 社製の硬度計とTaimeco 社製品が同一の製品であ co 社製品は被告製品情報を使用して製造された物である旨主張する。しかし、原告会社が自社製品のラインナップの一部として販売しようとしたKYF 社製の硬度計とTaimeco 社製品が同一の製品であることを示す証拠はない。 イこの点を措くとしても、次のとおり、Taimeco 社製品が被告製品情報を使用して製 造された物であると認めるに足りる証拠はない。 (ア) 被告製品情報1 について被告製品情報1 は、金属材料等の硬さを測定するための試験法の1 つであるロックウェル硬さを測定するためのロックウェル硬さ試験機の製造過程における調整方法に関する情報であるところ、Taimeco 社製品の製造過程で被告製品情報1 の調整方法が採用されてい ることを認めるに足りる証拠はない。被告の製品とTaimeco 社製品は使用している部品等 が異なるため(甲21、乙8)、両製品がいずれも錘を用いて圧子に荷重を負荷する方式のロックウェル硬さ試験機に分類される硬度計であり(乙8、弁論の全趣旨)、使用されている部品の一部の寸法等が一致する(乙8)というだけでは、Taimeco 社製品の製造過程において被告製品情報1 の調整方法が採用されたと認めることはできない。また、Taimeco 社製品のエッジホルダに記載された「F」の文字をもって被告製品情報1 の調整を実施したこと を示すものであることを裏付けるに足りる証拠もない。 (イ) 被告製品情報2 について被告製品情報2 は、初荷重切替部、荷重軸部で使用するアウターリングの孔径及びインナーリングの外径に関する情報であるところ、Taimeco 社製品で使用されているアウターリングの孔径及びインナーリングの外径が被告製品のものと一致することを認めるに足り る証拠はない。弁理士作成に ングの外径に関する情報であるところ、Taimeco 社製品で使用されているアウターリングの孔径及びインナーリングの外径が被告製品のものと一致することを認めるに足り る証拠はない。弁理士作成に係る見解書(乙8)には、両者の寸法の一部が一致したと記載されており、同弁理士作成に係る「営業秘密説明資料」と題する書面(乙14)には、インナーリングとアウターリングは圧入されるため、インナーリングを取り出すことはできず、Taimeco 社製品については、アウターリングの孔径及びインナーリングの外径φ17.18 の値はφ17 まで測定し、同様のはめあい公差で仕上げていると推測したものであると記載され ているが、この推測を裏付けるに足りる証拠はない。 (ウ) 被告製品情報3 について被告製品情報3 は、初荷重切替部、荷重軸部のナットの加工方法に関する情報であるところ、Taimeco 社製品で使用されているナットが被告製品情報3 の方法により加工されていることを認めるに足りる証拠はない。 (エ) 被告製品情報4 について被告製品情報4 は、初荷重切替部、荷重軸部のナイフエッジの加工方法に関する情報であるところ、Taimeco 社製品で使用されているナイフエッジが被告製品情報4 の方法により加工されていることを認めるに足りる証拠はない。 (オ) 被告製品情報5 について 被告製品情報5 は、ダイヤモンド圧子の選定方法に関する情報であるところ、Taimeco 社 製品の製造過程で被告製品情報5 の選定方法が使用されたことを認めるに足りる証拠はない。 2 争点1-2(故意又は過失の有無)について前記1 のとおり、被告は、「営業秘密」(不競法2 条6 項)に当たらない被告製品情報につき営業秘密に当たるものとして、本 めるに足りる証拠はない。 2 争点1-2(故意又は過失の有無)について前記1 のとおり、被告は、「営業秘密」(不競法2 条6 項)に当たらない被告製品情報につき営業秘密に当たるものとして、本件文書の送付という原告会社の営業上の信用を害す る虚偽の事実を流布する不正競争(同条1 項21 号)を行った。本件文書では原告らの行為を違法とする具体的な根拠は示されていないこと、本件警告書では根拠として周知の商品等表示に係る不正競争に明示的に言及していることに加え、被告の営業秘密を使用したものとされるKYF 社の製品及びこれに対応する被告製品がいずれも特定されていないことなどに鑑みると、この時点で被告がKYF 社製品に関する十分な検討を済ませていたこと をうかがわせる事情はないというほかないから、被告は、少なくとも過失により上記不正競争を行ったと認められる。 これに対し、被告は、KYF 社の元社員から情報提供を受けたこと、アメリカの取引先がKYF 社の硬度計を購入した事実を認めたこと等を指摘して、不正競争につき故意も過失もないと主張する。 しかし、証拠(乙2~6)及び弁論の全趣旨によれば、被告がKYF 社の元社員から聞き取った情報は、KYF 社の製品(型式名CTM-12 及びCRM-12)が被告の製品をベースにして製造されたものであるという程度の抽象的なものにとどまる。また、これを受けて、本件文書の送付に先立ち、KYF 社における被告製品情報の使用の有無を実際に調査等したことなどをうかがわせる具体的な事情は見当たらない。他方、証拠(乙3 の2、3 の4、乙5) によれば、アメリカの取引先は、KYF 社の製品を購入した事実を認めたものの、当該製品が被告の営業秘密を使用して製造されたものであることまでを認めたものとは理解さ 乙3 の2、3 の4、乙5) によれば、アメリカの取引先は、KYF 社の製品を購入した事実を認めたものの、当該製品が被告の営業秘密を使用して製造されたものであることまでを認めたものとは理解されない。 その他被告が縷々指摘する事情を考慮しても、この点に関する被告の主張は採用できない。 3 争点1-3(損害発生の有無及び損害額)について (1) 損害発生の有無上記のとおり、本件文書は、原告会社の取扱製品につき虚偽の事実を摘示して原告会社の営業上の信用を害するものである。その上、被告は、同文書において、取引先等に対し、「上記の様な事情・経緯をご賢察の上、今後B より取引の依頼等ございましたら、何卒適切にご対処頂きますよう、切にお願いする次第です。」として、暗に原告会社と取引を行わ ないことを要請しているものと理解される。しかも、本件文書の送付先は1000 を下らないところ、原告会社と被告は硬度計等の販売に関して競争関係にあるため、これらの送付先は概ね原告の潜在的な取引先でもあるといえる。これらの事情を踏まえると、本件文書の内容を踏まえて実際に原告会社との取引を控えた者が一定数存在したことは合理的に推認できる。 したがって、被告の不正競争によって原告会社が営業上の利益を侵害されたことが認められる。これに反する被告の主張は採用できない。 (2) 損害額ア原告会社は、本件メールが送信された令和3 年2 月4 日から令和4 年6 月30 日までの原告会社の売上高が4753 万4305 円であるところ、本件文書が流布されていなければ その10 倍の4 億7534 万3050 円の売上を得られたなどと主張する。 証拠(甲24、25)及び弁論の全趣旨によれば、令和3 年2 月4 日から令和4 年6 書が流布されていなければ その10 倍の4 億7534 万3050 円の売上を得られたなどと主張する。 証拠(甲24、25)及び弁論の全趣旨によれば、令和3 年2 月4 日から令和4 年6 月30日までの原告会社の売上高が概ね原告会社主張のとおりであることは一応うかがわれる。 また、前記のとおり、本件文書の内容を踏まえて実際に原告会社との取引を控えた者が一定数存在したことは合理的に推認できる。 しかし、上記期間は原告会社の設立後5 か月から22 か月を経過したにすぎない時期であることもあって、原告B が被告の元取締役であり営業部本部長であったことを考慮しても、本件文書が原告会社の潜在的な取引相手に実際上どの程度の影響を及ぼしたのかは、具体的には不明というほかない。原告会社は、原告会社の取扱製品が有する被告の製品に対する優位性を指摘するところ、仮に性能面で原告会社主張のとおりであったとしても、 そのことから直ちに、実際の10 倍の売上高を確保できたと考えることに合理性を見出す ことはできない。 これらの事情に照らすと、本件では、原告会社に損害が生じたことは認められるものの、損害額を立証するために必要な事実、すなわち、本件文書が流布されていなければ実現したであろう原告会社の売上に係る事実を立証することは、当該事実の性質上極めて困難というべきである。 そこで、不競法9 条に基づき、相当な損害額を算定することとする。 イ前記のとおり、本件文書は、原告会社が被告の製品を模倣した製品を販売して被告の企業活動を違法に妨害しているという虚偽の事実を摘示するものであり、その内容自体から、原告会社の営業上の信用を害する程度は大きい。しかも、本件文書は、1000 を下らない原告会社の潜在的な取引先に対し、原告会社と取引 害しているという虚偽の事実を摘示するものであり、その内容自体から、原告会社の営業上の信用を害する程度は大きい。しかも、本件文書は、1000 を下らない原告会社の潜在的な取引先に対し、原告会社と取引を行わないことを要請するもので あり、本件文書の内容を踏まえて実際に原告会社との取引に応じなかった者が一定数存在したことは合理的に推認できる。また、本件文書で具体的に模倣が指摘されている製品は硬度計であるが、本件文書の内容に照らすと、硬度計以外の原告の取扱製品の売上にも一定の影響があったと合理的に推認できる。 さらに、証拠(甲24~27)及び弁論の全趣旨によれば、原告会社の硬度計以外の商品を 含む全商品に係る令和2 年9 月2 日(設立日)から令和3 年6 月30 日までの約10 か月間の月平均の粗利は60 万6051 円であり(端数切り捨て。以下同じ。)、令和3 年7 月1 日から令和4 年6 月30 日までの1 年間のそれが95 万3365 円である。 前者:(¥14,831,615-¥8,771,100)/10=¥606,051後者:(¥35,926,570-¥24,486,187)/12=¥953,365 これらの事情その他本件に現れた一切の事情を総合的に考慮すると、原告会社が被告の不正競争によって令和3 年2 月4 日から令和4 年6 月30 日までに受けた損害については、 700 万円と認めるのが相当である。 また、被告の不正競争と相当因果関係のある弁護士費用ないし弁理士費用に係る損害額は、70 万円と認めるのが相当である。 したがって、被告の不正競争によって原告会社が受けた損害は、合計770 万円と認めら れる。これに反する原告会社及び被告の主張はいずれも採用できない。 4 争点1-4(原告 る。 したがって、被告の不正競争によって原告会社が受けた損害は、合計770 万円と認めら れる。これに反する原告会社及び被告の主張はいずれも採用できない。 4 争点1-4(原告会社の営業上の利益が侵害されるおそれの有無)について本件文書の内容に鑑みれば、被告が本件文書と同旨の事実を再び告知又は流布した場合、原告会社の営業上の信用が害されることは容易にうかがわれる。また、被告は、原告会社による営業秘密に係る不正競争を主張し、本件文書記載の事実が虚偽であることを争って いる。 これらの事情を踏まえると、被告が本件文書と同旨の事実を再び告知又は流布する不正競争を行うことによって、原告会社の営業上の利益が侵害されるおそれがあるといえる。 これに反する被告の主張は採用できない。 争点1-5(謝罪広告の必要性の有無)について 前記のとおり、本件文書の内容に鑑みると、本件文書の送付を受けて実際に原告会社との取引を行わなかった者が一定数存在することは合理的に推認される。本件文書の送付先が1000 を下らないことを考えると、そのような取引先が相応の数に上ることもうかがわれるところではある。 もっとも、前記のとおり、本件文書が原告会社の潜在的な取引相手に実際にどの程度の 影響を及ぼしたのかは不明というほかない。また、原告会社は、本判決の内容を開示することを通じてその信用回復を図ることも可能であり、その実施が格別に困難又は非効率的であるとまでみることもできない。 したがって、本件においては、損害賠償と共に、原告会社の営業上の信用を回復する措置として被告の謝罪広告が必要であるとは認められない。この点に関する原告会社の主張 は採用できない。 6 争点2-1(違法性阻却事由の有無)について本件文書は、原告B 上の信用を回復する措置として被告の謝罪広告が必要であるとは認められない。この点に関する原告会社の主張 は採用できない。 6 争点2-1(違法性阻却事由の有無)について本件文書は、原告B が設立した原告会社が被告の販売する製品を模倣した製品を販売し、被告の企業活動を違法に妨害しているという虚偽の事実を摘示したものであること、「今後B より取引の依頼等ございましたら」などと原告B を名指ししていることに鑑みると、原 告B の名誉は、本件文書の流布によって毀損されたものと認められる。 これに対し、被告は、原告会社の不正競争に対する差止請求の一環として本件メールを送信したのであるから、正当な権利行使として違法性が阻却されると主張する。しかし、原告会社がKYF 社製の硬度計を輸入する行為が不競法2 条1 項10 号の不正競争に当たるとはいえないことは前記1 のとおりであり、また、前記2 のとおり、被告が本件メールの送信に当たり十分な調査や検討を尽くしたということもできない。したがって、この点に 関する被告の主張は採用できない。 7 争点2-2(故意又は過失の有無)について本件文書の送付による原告B の名誉毀損につき被告に過失があると認められることは、前記2 と同様である。これに反する被告の主張は採用できない。 8 争点2-3(損害発生の有無及び損害額)について 本件文書の内容、本件文書の送付先数その他本件に表れた一切の事情を考慮すると、原告B は、被告の名誉毀損行為により精神的損害を受けたものと認められる。これに対する慰謝料は、50 万円と認めるのが相当である。 また、被告の名誉毀損行為と相当因果関係のある弁護士費用ないし弁理士費用に係る損害額は、5 万円と認めるのが相当である。 したがっ れに対する慰謝料は、50 万円と認めるのが相当である。 また、被告の名誉毀損行為と相当因果関係のある弁護士費用ないし弁理士費用に係る損害額は、5 万円と認めるのが相当である。 したがって、被告の名誉棄損の不法行為によって原告B が受けた損害は、合計55 万円と認められる。これに反する原告B 及び被告の主張はいずれも採用できない。 9 まとめ以上より、原告会社は、被告に対し、不競法3 条に基づき、本件文書と同趣旨の内容を第三者に対して告知又は流布することの差止請求権を有すると共に、同法4 条に基づき、 770 万円の損害賠償請求権及びこれに対する令和4 年7 月1日から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金請求権を有する。 また、原告B は、名誉毀損の不法行為(民法710 条)に基づき、被告に対し、55 万円の損害賠償請求権及びこれに対する上記同日から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金請求権を有する。 第6 結論 よって、原告会社の請求は、主文掲記の内容の差止並びに770 万円の損害賠償及びこれに対する令和4 年7 月1 日から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、原告B の請求は、55 万円の損害賠償及びこれに対する上記同日から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから、その限度でこれらをそれぞれ認容し、その余は理由がないからいずれも 棄却することとし、主文のとおり判決する。なお、主文第1 項については、仮執行宣言を付するのは相当でないから、これを付さないこととする。 東京地方裁判所民事第47 部 裁判長裁判官 1項については、仮執行宣言を付するのは相当でないから、これを付さないこととする。 東京地方裁判所民事第47部 裁判長裁判官 杉浦正樹 裁判官 小口五大 裁判官 稲垣雄大 (別紙)当事者目録 原告株式会社クラフテスト (以下「原告会社」という。) 原告B (以下「原告B」という。) 上記2名訴訟代理人弁護士萩原達也 同訴訟復代理人弁護士折田忠仁 同補佐人弁理士児玉道一 同山岸敏郎 被告株式会社フューチュアテック 同訴訟代理人弁護士松田啓 (別紙)謝罪広告目録 1 謝罪広告文 (1) 見出し謝罪広告 (2) 本文(但し、日付けは広告記載の日とする) 弊社は、2021年2月4日付けの「弊社前国内営業部責任者の営業行為について」と題する文書(以下「本文書」といいます)において、概要、弊社前国内営業部責任者のB氏(以下「B氏」といいます)が設立した株式会社クラフテスト(以下「貴社」といいます)と称する硬度計等を扱う販売会社の主要取扱製品の殆どが弊社製品の模倣製品であり、貴社がかかる模倣製品を販売し、弊社の企業活動を妨害する違法行為を行っている旨の告知文書を作成した上、「国内販売商社及び校正会社各位」を宛先として広く流布しました。 しかしながら、貴社による硬度計の販売は 売し、弊社の企業活動を妨害する違法行為 を行っている旨の告知文書を作成した上、「国内販売商社及び校正会社各位」を宛先として広く流布しました。 しかしながら、貴社による硬度計の販売は違法行為であるとの認識は、全て弊社の著しい不注意、不見識が招いた全くの誤りであり、弊社は、本文書の送付先に対し虚偽の事実を告知流布しました。 弊社は、本謝罪広告をもって、貴社を不当に非難し、かつ、B 氏を著しく侮辱する虚偽の事実を告知流布したことを全て撤回の上謝罪致します。 今後、かかる行為を行わないことを誓約し、本文書の送付先、貴社及びB 氏に対し、心よりお詫び申し上げます。 令和年月日株式会社フューチュアテック代表取締役社長 C 2 広告掲載媒体 (1) 日刊工業新聞(2) 被告のホームページ(https://(以下省略)) 3 広告掲載条件(1) 日刊工業新聞についてア広告サイズ及び掲載位置記事下広告5 段1/2(188mm×167mm)イ活字の大きさ及び字体等 見出し及び本文を掲載し得る範囲で最大限の活字で、字体はゴシック体、色彩については見出しは赤、本文は黒とする。 ウ掲載期日及び回数判決確定後最も早く掲載可能な日において1 回。 (2) 被告のホームページについて ア広告サイズ及び掲載位置トップページを開いた際に閲覧媒体の画面中央に表示される容易に視認可能な位置であり、本目録に添付した被告のホームページの赤で囲った部分であって、他の画像に遷移しないように固定させた状態とする。 イ活字の大きさ及び字体等 見出し及び本文を掲載し得る 位置であり、本目録に添付した被告のホームページの赤で囲った部分であって、他の画像に遷移しないように固定させた状態とする。 イ活字の大きさ及び字体等 見出し及び本文を掲載し得る範囲で最大限の活字で、字体はゴシック体、色彩については文字の色は赤、背景は白とする。 ウ掲載期日及び期間判決確定の日から5営業日以内に掲載し、その日から3ヵ月が経過する日まで。 (別紙)被告製品情報目録 ●(省略)●

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