平成12(ワ)2407 配当金支払請求事件

裁判年月日・裁判所
平成15年3月20日 神戸地方裁判所
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判決文本文15,839 文字)

主文 1 被告は,原告に対し,4億6892万9344円及びうち4億5596万9410円に対する平成15年1月31日から支払済みに至るまで年6%の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用はこれを3分し,その1を被告の負担とし,その余を原告の負担とする。 4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は,原告に対し,以下の金員を支払え。 (1) 13億5401万0512円(2) うち4993万4680円に対する平成8年5月14日から支払済みに至るまで年6%の割合による金員(3) うち7931万5974円に対する平成9年3月28日から支払済みに至るまで年6%の割合による金員(4) うち1億6636万2963円に対する平成10年3月31日から支払済みに至るまで年6%の割合による金員(5) うち1億0636万2952円に対する平成10年9月29日から支払済みに至るまで年6%の割合による金員(6) うち3億7812万6935円に対する平成11年3月27日から支払済みに至るまで年6%の割合による金員(7) うち2億5208万4623円に対する平成11年9月28日から支払済みに至るまで年6%の割合による金員(8) うち2億5615万0903円に対する平成12年3月30日から支払済みに至るまで年6%の割合による金員(9) うち6567万1482円に対する平成12年9月29日から支払済みに至るまで年6%の割合による金員 2 訴訟費用は被告の負担とする。 3 仮執行宣言第2 事案の概要 1 事案の骨子本件は,原告から特別 対する平成12年9月29日から支払済みに至るまで年6%の割合による金員 2 訴訟費用は被告の負担とする。 3 仮執行宣言第2 事案の概要 1 事案の骨子本件は,原告から特別清算協定に基づく配当金の支払額が不足しているとして,当該不足額と各配当期日の各不足額に対する当該配当期日の翌日からの商事法定利率年6%の割合による遅延損害金の請求があったのに対し,被告が,為替差益が原告に生じているし配当原資とすべき金員を原告が独自に回収しているとして,その返還請求権と相殺すれば配当不足金はないと主張している事案であり,本件の争点は被告の主張する相殺の成否である。 2 争いのない事実(1) 当事者ア 原告は,平成11年4月1日,株式会社Aが株式会社B銀行を吸収合併して成立した金融機関である。 イ 原告は,金融機能の再生のための緊急措置に関する法律並びに特定住宅金融専門会社の債権債務の処理の促進等に関する特別措置法に基づき,日本の金融機能の早期健全化を目的とし,破綻金融機関から譲り受けた債権の回収等を主たる業務としている。 ウ 原告は,上記業務目的に基づき,破綻金融機関である訴外株式会社C銀行(以下,「C銀行」という。)から,同銀行が被告に対して有する特別清算配当金支払請求権(以下,「本件配当金債権」という。)を譲り受けた。 エ 被告は,昭和44年11月18日設立された株式会社である。 (2) 本件配当金債権発生の根拠となる特別清算協定・変更協定の内容ア 被告は,平成7年10月3日,特別清算開始決定を得た。 イ 特別清算開始時において,C銀行は被告に対し,合計135億9400万6753円の債権を有していた。 ウ 平成8年3月18日,被告について以下の内容 日,特別清算開始決定を得た。 イ 特別清算開始時において,C銀行は被告に対し,合計135億9400万6753円の債権を有していた。 ウ 平成8年3月18日,被告について以下の内容の特別清算協定(以下,「本件協定」という。)が認可された。 (ア) 第1回配当本件協定の認可決定確定後速やかに,配当基準債権額の5%を支払う。 (イ) 第2回ないし第5回配当平成9年から同12年まで毎年3月末日に,それぞれ次のとおり支払う。 第2回配当基準債権額の6%第3回配当基準債権額の6%第4回配当基準債権額の6%第5回配当基準債権額の9.6%なお,上記配当期日までに,上記各支払額の全部又は一部を中間配当として支払うことができる。 また,上記各配当期日に配当原資が上記各支払予定額以上に蓄積できた場合には,次回以降の配当期日の支払予定額の全部又は一部を繰り上げて支払うことができるものとし,配当原資が上記各支払予定額に満たない場合には,次回以降の配当期日に,その不足額を加算して支払う。 (ウ) 第6回配当平成13年4月2日に,各債権放棄後の債権額のうち,配当未了の残余債権額を一括して支払う。 エ 平成11年8月16日,C銀行は,本件協定に基づき発生した本件配当金債権を原告に譲渡し,被告にその旨を通知した。 オ 本件協定につき,平成12年12月21日,以下の内容の変更協定(以下,「本件変更協定」という。)が可決され,同変更協定は,同月27日に認可された。 (ア) 第6回ないし第8回配当本件協 平成12年12月21日,以下の内容の変更協定(以下,「本件変更協定」という。)が可決され,同変更協定は,同月27日に認可された。 (ア) 第6回ないし第8回配当本件協定第2条2項の債権譲渡担保契約付債権につき,平成14年から同16年まで毎年3月末日にそれぞれ次のとおり配当として支払う。但し,第8回は平成16年2月末日に支払う。 第6回債権譲渡担保契約付債権額の1.7%第7回債権譲渡担保契約付債権額の1.2%第8回債権譲渡担保契約付債権額の1.1%なお,上記配当期日までに,上記各支払額の全部又は一部を中間配当として支払うことができる。 また,上記各配当期日に配当原資が上記各支払予定額以上に蓄積できた場合には,次回以降の配当期日の支払予定額の全部又は一部を繰り上げて支払うことができるものとし,配当原資が上記各支払予定額に満たない場合には,次回以降の配当期日に,その不足額を加算して支払う。 (イ) 第9回配当平成16年3月1日に,各債権放棄後の債権額のうち,配当未了の残余債権額を一括して支払う。 (3) スワップ契約ア 被告は,エア・カナダ国際割賦案件にかかる国際割賦代金の受渡ヘッジのため,昭和63年7月29日,C銀行との間に通貨間の相互支払(通貨スワップ)契約(以下,「本件スワップ契約」という。)を締結した。 イ 同日,上記契約に基づき,被告がC銀行に対し13億4000万円を支払い,C銀行は被告に対し1000万ドルを支払った。 ウ 平成7年9月22日,C銀行は,被告が特別清算の申立てを行ったことを理由として,本件スワップ契約の期限前解除条項に基づき同 0万円を支払い,C銀行は被告に対し1000万ドルを支払った。 ウ 平成7年9月22日,C銀行は,被告が特別清算の申立てを行ったことを理由として,本件スワップ契約の期限前解除条項に基づき同契約を解除した。 エ 本件スワップ契約において,未返還部分である残債権をプライシング(将来の時点で生じる債権の価値が,現在の価値としてどのくらいのものであるのか引き直すための計算)した結果,上記解除により被告に5億4178万3917円の為替差損が生じ,C銀行には同額の為替差益が生じたことが判明した。 オ 被告は,C銀行に対し,上記 エの差額につき不当利得返還請求権を有しているとして,同差益金及び遅延損害金と,C銀行の被告に対する本件配当金債権とを対当額で相殺する旨の意思表示をした。 カ 原告も,もし被告が不当利得返還請求権を有すると認定されるのであれば,それと本件協定前の原債権とを対当額で相殺するとの意思表示を,平成13年6月12日の第2回弁論準備期日でした。 (4) 国際割賦案件ア 国際割賦債権者団への加入(ア) 被告は,昭和61年1月14日付マスターセール・アグリーメントに基づくBT・アジア・セキュリティーズ・リミティッド(旧名-BT・アジア・リミティッド)向け国際割賦案件の割賦債権者団に加わった。 (イ) 被告は,昭和60年4月15日付パーチャス・アンド・インストルメント・セール・アグリーメントに基づくインドネシア共和国向け国際割賦案件の割賦債権者団に加わった。 (ウ) 被告は,昭和61年2月4日付パーチャス・アンド・インストルメント・セール・アグリーメントに基づくインドネシア共和国向け国際割賦案件の割賦債権者団に加わった。 イ 被告は,上記 アの参加費用 告は,昭和61年2月4日付パーチャス・アンド・インストルメント・セール・アグリーメントに基づくインドネシア共和国向け国際割賦案件の割賦債権者団に加わった。 イ 被告は,上記 アの参加費用につきC銀行から融資を受けた際,被告の有する各割賦債務者に対する貸付債権をC銀行に譲渡し,担保権を設定した(債権譲渡担保)。 ウ 各国際割賦債務者は,平成11年8月16日まではC銀行に対し,それ以降は原告に対して,別紙1「株式会社整理回収機構(旧株式会社日本長期信用銀行)分見做し配当金明細」の表に記載のとおりの日付に,同表記載のとおりの金額を支払った。(※「別紙1」は添付省略)エ 被告は,C銀行及び原告に対し,国際割賦案件は別除権ではなく協定内で行使すべき債権であるから上記 ウの支払は被告に対してなされるべきものであると主張し,同金額の返還請求権を自働債権として,本件配当金債権と対当額で相殺する旨の意思表示をした。 (5) 配当金額被告は,第4回中間配当まではC銀行に対し,それ以降は原告に対し,別紙2の配当関係計算書4欄記載のとおり合計27億9174万5527円を配当金として支払った。 3 争点本件の争点は,スワップに関する相殺の抗弁については不当利得返還請求権の存否(後記争点(1))と,それがあるとした場合にどの時点のC銀行の債権と相殺できるか(後記争点(2))であり,国際割賦案件に関する相殺の抗弁については,自働債権の存否(後記争点(3))である(すなわち,国際割賦案件に関する相殺の抗弁では,C銀行及び原告が支払を受けた時点で相殺適状となるので相殺できる時期は問題とならない)。 (1) 争点(1)スワップ契約を中途解約した者が非有責当事者であった場合,その解約によって C銀行及び原告が支払を受けた時点で相殺適状となるので相殺できる時期は問題とならない)。 (1) 争点(1)スワップ契約を中途解約した者が非有責当事者であった場合,その解約によって生じた利益を,不当利得として有責当事者である相手方に返還しなければならないか(返還しなくても良いならば,被告の不当利得返還請求権は成立せず,スワップ契約に関し,被告による相殺の自働債権がそもそも存在しないこととなる。)。 (2) 争点(2)争点(1)で,被告にスワップ解約益の不当利得返還請求権があると解される場合において,ア 相殺の対象は本件協定前の原債権か,本件協定後の配当金債権か。 イ 被告による配当金債権に対する相殺の主張は信義則に反しないか。 (3) 争点(3)国際割賦案件に関するC銀行の債権譲渡担保権(以下,「本件債権譲渡担保権」という。)は,本件協定後においていかなる地位を有するか。 ア 本件債権譲渡担保権は本件協定外で行使できる別除権か,本件協定上でのみ行使できる別除権か。 イ 協定上でのみ行使できる別除権であるとすると,その被担保債権は,本件協定上の,(ア)「別除権付債権」(協定2条1項,3条1ないし3項)か,(イ)「債権譲渡担保契約付債権」(協定2条2項,4条)か,(ウ)「別除権の存否について争いのある債権」(協定3条5項)か。 4 争点に対する当事者の主張(1) スワップ解約益の返還について(争点(1))(原告の主張)ア スワップ契約が中途解約される場合に,それが合意解約であれば,その合意内容によっては原状回復まで行われることもあり得るが,法令や契約に基づく一方的解約の場合には,スワップ契約も継続的契約の一種であるから,既履行部分は 約される場合に,それが合意解約であれば,その合意内容によっては原状回復まで行われることもあり得るが,法令や契約に基づく一方的解約の場合には,スワップ契約も継続的契約の一種であるから,既履行部分はそのままで,未履行部分については交換を行わないことになる。よって,元本の原状回復は行われない。 イ 為替変動によりC銀行が得た利益は,C銀行がスワップ契約を解除した時点では,その契約時よりも円高であったという偶然の結果生じたものであり,C銀行が恣意的に動かしたものではないのであるから,法律上の原因がない利得とはいえない。 ウ 解除の時点では,たまたま円高であったが,そのまま契約が継続していれば,為替変動によりどちらに利得が生じていたか分からないものである。 エ 本件スワップ契約はC銀行の損害が生じた場合に被告がそれを賠償すべきとする条項しかない。 スワップ契約は,当事者の自由意思で様々な内容を設定できる契約なのであるから,直接に契約不履行によって発生したわけでない損益についての清算条項がない以上は,その清算を行わない趣旨と考えるのが自然である。 オ 本件スワップ契約は,被告が融資を受けるに際してのリスクヘッジのために締結されたものであり,これにより被告はリスクを最低限にできたのであるから,それにより契約の目的はある意味達成されている。とすれば,その後に一方に利得が生じたからといって,これを清算する意思は何らなかったというべきである。 (被告の主張)ア 本件スワップ契約締結の過程において,中途解約時の処理方法についてはほとんど触れられることがなく,この点に関する約定は本件スワップ契約の契約書に,被告は解除によってC銀行に生じる損害を直ちに賠償しなければならない旨の規定(スワップ契約 途解約時の処理方法についてはほとんど触れられることがなく,この点に関する約定は本件スワップ契約の契約書に,被告は解除によってC銀行に生じる損害を直ちに賠償しなければならない旨の規定(スワップ契約上の損害賠償条項)があるのみである。 そして,この規定は,中途解約に伴う損益清算を念頭に置いた規定ではなく,本件スワップ契約解約に伴って,従前のスワップ契約に替わる新たな契約を締結するのに必要な経費等の賠償を想定した規定であると解するのが合理的である。 中途解約に伴う損益清算をすべきことは当然のこととして広く認識されており,そのような趣旨を確認するためにわざわざ規定したとは解し難いからである。 イ 仮に,上記規定が中途解約に伴う損益清算についても定めたものであるとしても,本来そのような損益清算をすべき要請は契約によって生じるものではなく,一般的な不当利得法の理念(又はスワップ契約の一般的商慣習)に基づくものであるから,上記規定を単純に反対解釈して,被告が損害賠償を求めることができないと解することには無理がある。 また,本件スワップ契約においては,「ONEWAYPAYMENT」方式(一方当事者の債務不履行を原因とする契約の終了の際には,債務不履行が発生しなかった当事者に利得が発生し,債務不履行当事者に損失が発生した場合でも,債務不履行当事者への金銭支払は不要であるという方式)か,「TWOWAYPAYMENT」方式(解除原因がどちらに発生したかを問わず,利益のある側が損失のある側へと支払をする方式)か,「LIMITEDTWOWAYPAYMENT」方式(解除原因が発生しなかった側に利益が出た場合には,その利益を折半する方式)かは何ら明示されておらず,単純に上記規定の文言のみからいずれであるかを決定するこ DTWOWAYPAYMENT」方式(解除原因が発生しなかった側に利益が出た場合には,その利益を折半する方式)かは何ら明示されておらず,単純に上記規定の文言のみからいずれであるかを決定することはできない。 ウ さらに,仮に上記規定が中途解約に伴う損益清算を,被告の帰責事由に基づく解除の場合に限定して定めているとすれば,それは信義則又は公序良俗に反し,無効である。契約の一方当事者にそのような一方的な不利益を課することについては,公平の原則に照らし,特段の合理的理由がなければならず,かつこれにより不利益を受ける当事者がその合理性を十分に認識してこれに合意していることが必要というべきである。 しかるに本件では,そのような事情はなく,加えて,上記規定は,これにより利益を受けるC銀行が一方的に作成した極めて曖昧な規定であって,この規定により不利益を受ける被告が,それにより生じる不利益を理解して合意したものとはいえない。 (2) スワップ解約益についての相殺の対象及び相殺の可否について(争点(2))(原告の主張)ア 仮に被告に不当利得返還請求権が認められるとしても,それはC銀行による解除と同時に発生し,かつ弁済期が到来していたのであるから(期限の定めのない債務),協定前の段階でC銀行債権と相殺適状にあった。 したがって,被告による相殺の対象(受働債権)は,協定前の原債権であり,相殺により,具体的には,本件協定において前提とされたC銀行債権の額(配当基準債権額)が,スワップ解約益相当分だけ減少することになる。 なお,争いのない事実(3)カのとおり,原告は,予備的に,協定前の原債権と被告の不当利得返還請求権とを対当額で相殺する旨の意思表示をしているので,相殺の対象は協定前の原債権 とになる。 なお,争いのない事実(3)カのとおり,原告は,予備的に,協定前の原債権と被告の不当利得返還請求権とを対当額で相殺する旨の意思表示をしているので,相殺の対象は協定前の原債権である。 イ スワップ解約益についての不当利得返還請求権が仮に発生するとしても,同請求権は解除と同時に発生していたのであるから,特別清算協定案可決前に相殺の主張等が可能であったはずである。 にもかかわらず,被告が特別清算協定の可決・認可後になって本件配当金債権に対する相殺の主張をすることは信義則に反し許されない。 (被告の主張)ア 相殺の意思表示前に特別清算協定が可決・認可された場合には,特別清算協定による配当金債権が受働債権となるべきである(協定前の原債権は受働債権とならない。)。よって,被告による相殺の受働債権は,本件協定後の配当金債権である。 イ 本件スワップ契約の解除によるC銀行の利得及びこれに対応する被告の損失については,本件スワップ契約にかかる国際割賦案件の処理をする中で次第に明らかになってきたものであり,かつC銀行の利得額(被告の損失額)が明らかになったのは,本件特別清算における債権確定手続よりも後のことであった。 よって,原告の信義則違反の主張は理由がなく,相殺をすることができる。 (3) 債権譲渡担保権について(争点(3))(原告の主張)本件債権譲渡担保権は協定外で行使可能な別除権である。仮にそうでなくとも,その被担保債権は本件協定上の「別除権付債権」である。 ア C銀行は本件協定案に同意した際,債権譲渡担保権付債権の取扱いについては留保したうえで協定に参加している。そして,本件債権譲渡担保権については,行使時期の制限や一部免除等に関する る。 ア C銀行は本件協定案に同意した際,債権譲渡担保権付債権の取扱いについては留保したうえで協定に参加している。そして,本件債権譲渡担保権については,行使時期の制限や一部免除等に関する協定外の合意はできていない。 よって,本件債権譲渡担保権には通常どおり別除権の地位が認められ,C銀行は上記担保権の限度では特別清算手続外での回収が認められる。 イ 仮に協定外での行使ができないとしても,その被担保債権は本件協定上の「別除権付債権」である。 確かに,本件協定の定義上は,本件債権譲渡担保権の被担保債権も「債権譲渡担保契約付債権」(協定2条2項)に該当する。 しかしながら,協定3条5項にあるとおり,「別除権の存否について争いのある債権については,当該争いが会社と債権者との間で解決するまでの間,その全額を債権譲渡担保契約付債権又は一般債権として,その例により暫定的に弁済し,当該争いが解決した後,弁済額の清算を行う」こととされているのであり,本件協定が認可されたからといって,被告が主張するように問題が解決済みといえる状況にはない。 また,本件債権譲渡担保権は,一般に被告が貸し付けていた債権に設定された譲渡担保権とは異なる。すなわち,本件債権譲渡担保権の被担保債権は,C銀行が被告に対して使途を指定して行った融資に関する債権であるところ,C銀行がその債権の担保として譲渡担保に取ったのは,被告が上記指定に基づいて行った融資の相手方に対する債権である(いわゆる「ひもつき」)。 このように,本件債権譲渡担保権は,他の債権譲渡担保権と著しく趣を異にしているのであって,C銀行はそのことを根拠として協定の可決・認可前から本件債権譲渡担保権の被担保債権を別除権付債権として取り扱うこと ように,本件債権譲渡担保権は,他の債権譲渡担保権と著しく趣を異にしているのであって,C銀行はそのことを根拠として協定の可決・認可前から本件債権譲渡担保権の被担保債権を別除権付債権として取り扱うことを主張してきた。 (被告の主張)本件債権譲渡担保権は通常の別除権と異なり,協定に取り込まれた別除権であり,かつ,協定3条5項の「別除権の存否について争いのある債権」である。 ア 債権譲渡担保権が一般論として別除権に当たることは原告主張のとおりであるが,本件協定では,債権譲渡担保契約付債権についても定義規定等を設けて,これを協定に取り込んだ上,その取扱いを明示している(配当率の点でプレミアムを付けたことを除いて一般債権と同様の扱い)。 よって,特別清算手続に参加した以上,C銀行は協定外で行使可能な別除権を放棄したに等しい地位にあり,本件協定に従って権利を行使すべきである。 イ 種々の問題があったために,被告としては,債権譲渡担保権付債権について,その形式の濃淡(被担保債権と担保目的債権との結びつきの強さ),対抗要件具備の有無等に関わりなく一律に「債権譲渡担保契約付債権」として取り扱うことにした。 ウ しかしながら,C銀行は,債権譲渡担保権付債権を他の一般債権と異なる扱いとすることを主張し(この点は本件協定に反映されている。),さらに,債権譲渡担保権付債権の中でも本件債権譲渡担保権の被担保債権については,第三者対抗要件を具備していることを根拠に他の債権譲渡担保契約付債権と区別して別除権として扱うべきであると主張していた。 エ C銀行は本件協定案可決の直前においても,本件債権譲渡担保権について別除権扱いすることを主張していたため,被告としては,とりあえず第三者対抗要件具備が債権譲渡 きであると主張していた。 エ C銀行は本件協定案可決の直前においても,本件債権譲渡担保権について別除権扱いすることを主張していたため,被告としては,とりあえず第三者対抗要件具備が債権譲渡担保権付債権の中での差を設ける根拠となるかどうかの解決を先延ばしにし,協定そのものの可決を得ることにした。 オ C銀行は第三者対抗要件具備をもって,本件債権譲渡担保権の被担保債権を他の債権譲渡担保権付債権と異なる扱いをすべき根拠とするが,特別清算手続に入ったとしても,依然,会社又はその清算人と債権者との関係は単なる当事者間の関係に過ぎないのであるから(この点,破産管財人との関係でも対抗要件具備が要求される破産手続と異なる),第三者対抗要件具備それ自体は特別清算会社又はその清算人との関係で,なんら法的地位に差が生じる根拠となり得ない。 カ 以上の次第であって,本件債権譲渡担保権の取扱いは後日の解釈に委ねられていたところ,上記のとおり,別除権ではなく,協定内で行使すべき債権として取り扱うべきである。 第3 争点に対する当裁判所の判断 1 争点(1)について(1) 本件スワップ契約上の損害賠償条項は,C銀行側に損害が生じたときに被告からC銀行に損害を賠償するよう規定しているだけであり,逆に,被告に損害が生じた場合については規定していない(甲22,甲23)。 この点につき,原告は,この条項をいわゆるONEWAYPAYMENTの規定であるとし,契約不履行によって直接に発生したわけでない損益については,清算条項がない以上,その清算を行わない趣旨と考えるのが自然であると主張する。 しかし,本件スワップ契約上の損害賠償条項は,C銀行に損害賠償請求を認める旨を規定したに過ぎないのであり,清算条項がないことをもっ の清算を行わない趣旨と考えるのが自然であると主張する。 しかし,本件スワップ契約上の損害賠償条項は,C銀行に損害賠償請求を認める旨を規定したに過ぎないのであり,清算条項がないことをもって,いかなる場合でも被告側からは請求をなし得ないとするのは,解除原因を発生させた当事者に対する制裁という意味を斟酌しても,被告にとって酷に過ぎる反対解釈といえる。 ところで,取引関係にある当事者が特別に取決めをしていない部分については,取引法上の一般原則(すなわち,第1次的には慣習法,第2次的には法令)に従うとするのが当事者の合理的意思であるといえよう。そして,契約不履行以外の理由によって一方当事者が損失を負うこととなり,同様の理由によって他方当事者が利得を得ることとなった場合には,不当利得法理の適用があるというのが取引法上の一般原則である。 (2) 本件においては,為替の変動によってC銀行が利益を得,逆にそれによって被告に損失が生じていることが認められるのであるから,不当利得法理の適用が認められるというべきである。 これに対し,原告は,不当利得法理が適用されるとしても,為替変動によりC銀行が得た利益は偶然の結果生じたものであり,C銀行が恣意的に動かしたものではないので,法律上の原因がないとはいえず,結局不当利得返還請求権は発生しないと主張する。しかし,法律上の原因とは,受益者がその利益を保持するにつき正当な権限を有することをいうのであるから,当該為替差益が偶然に生じたものであるかは,法律上の原因の有無の判断に直接関係するものではない。 また,原告は,本件では解除時にC銀行に利益が生じていたが,為替変動の状況によってどちらに利益が生じるかが変わってくるのであり,逆に被告側に利得が生じた可能性もあるのだから, ではない。 また,原告は,本件では解除時にC銀行に利益が生じていたが,為替変動の状況によってどちらに利益が生じるかが変わってくるのであり,逆に被告側に利得が生じた可能性もあるのだから,C銀行の利得は不当利得とはいえないとも主張する。確かに,仮に円安が進んだ状態で解除がなされた場合には被告側に利益が生じる可能性があるが,この場合には逆に原告に不当利得返還請求や本件スワップ契約上の損害賠償請求権が発生すると考えられるのであり,原告の上記主張は被告の不当利得返還請求を否定する理由とはなり得ない。 さらに,原告は,本件スワップ契約はリスクヘッジのために締結されたものであって,これにより被告はリスクを最低限にできたのであるから,契約の目的はある意味達成されており,その後に一方に利得が生じたからといって,これを清算する意思は何らなかったと主張する。 しかしながら,本件においては,プライシングの結果判明した,争いのない事実(3)エのとおりの為替差損(益)を清算すべきか否かが問題となっているのであって,解除時までの状況はかかる清算義務の有無についての判断を左右するものではないというべきである。 (なお,今回問題となっているのは,契約開始時と打ち切り時の為替レートの変動により片方に利得が生じ,他方に損失が生じた場合,それをどのように処理すべきかという点にある。この点,スワップ契約が当初予定されていた最終時点まで実施されず,途中で打ち切られ,その結果,債務不履行のない側が損害を受けることになれば,不公平であるといわなければならない。 しかしながら,途中で打ち切られたときに,最終時点まで実施された場合と同じ経済状態を実現するため,本件でも最終時点での金銭的価値に一定のレートを適用して引き直し計算することが行われており(プ い。 しかしながら,途中で打ち切られたときに,最終時点まで実施された場合と同じ経済状態を実現するため,本件でも最終時点での金銭的価値に一定のレートを適用して引き直し計算することが行われており(プライシング),C銀行は約6%のスワップレートでこれを計算しているもので,本件で問題とされているスワップ解約益の金額の算出にあたってはプライシングの結果も反映されていることからすれば(乙12,弁論の全趣旨),不当利得を理由としてスワップ解約益の清算を求める被告の主張が不当なものとはいえない。)(3) したがって,被告にはスワップ解約益の不当利得返還請求権が認められる。 2 争点(2)について本件スワップ契約は,平成7年9月22日に解除されているところ,相殺は相殺適状の時点で対立する債権を対当額で消滅させるという効果(遡及効)を生じさせるのであるから,本来は,不当利得返還債権は同債権が発生した解除時の対立債権,すなわち協定前の原債権と相殺適状にあったというべきである。 しかしながら,本件においては,平成8年3月18日に本件協定の認可がなされており,その時点で配当金額を超える協定前の原債権は消滅しているところ,弁論の全趣旨によれば被告からの相殺の意思表示がなされたのは協定認可後であると認められるから,既に存在しない原債権との相殺はなし得ないこととなる。そうすると,配当金債権との相殺を許すことになるが,それでは協定認可前に相殺がなされた場合に比べ余りに結果の違いが大き過ぎることとなる。 他方,原告も予備的に相殺権の主張をしているところ,原告からの相殺権の行使は,商法450条による協定の効力を受けないと解されるから,両債権が協定成立前に相殺適状にあった場合には,清算会社の債務者は,認可決定確定後においても,なお自己の清 るところ,原告からの相殺権の行使は,商法450条による協定の効力を受けないと解されるから,両債権が協定成立前に相殺適状にあった場合には,清算会社の債務者は,認可決定確定後においても,なお自己の清算会社に対する債権全額をもって相殺し得ることとなり,このことは,原告からの相殺権の行使に先立ち清算会社の側から相殺の意思表示がなされた場合においても同様と解するのが相当である。 そして,相殺権は,認可後の相殺により債権者が損害を被ることを防止するための特別な規定であることなど,本件にあらわれた諸般の事情を考慮すれば,被告の有する不当利得返還債権と,協定前の原債権との相殺を認めるのが相当である。 したがって,具体的には,本件協定の配当額ではなく,配当基準債権額がスワップ解約益相当分だけ減額されることとなる。 3 争点(3)について(1) 協定案(甲1),確認書(甲4),報告書(甲5),ファクシミリ送信書(乙13),C銀行からの要請書(乙14)及び前記争いのない事実を総合すると,以下の事実が認められる。 ア 特別清算の協定手続において,本件債権譲渡担保権の取扱いにつき,C銀行は,第三者対抗要件の具備の有無及び貸付の際にその用途が決められていたか否か(被担保債権と担保目的債権との結びつきの強さ)によって差を設け,本件債権譲渡担保権の被担保債権については協定外で行使可能な別除権とすることを主張した。 これに対し,被告は,全ての債権譲渡担保権付債権に差を設けることをせず,本件債権譲渡担保権の被担保債権についても,協定内でのみ行使可能な債権(協定3条2項の「債権譲渡担保契約付債権」)として扱うことを主張していた。 イ  アの主張の対立を解決するため,C銀行と被告は協議をしたが,折り合いがつかず, ,協定内でのみ行使可能な債権(協定3条2項の「債権譲渡担保契約付債権」)として扱うことを主張していた。 イ  アの主張の対立を解決するため,C銀行と被告は協議をしたが,折り合いがつかず,解決には至らなかった。 ウ 被告は,とりあえずC銀行に協定案を同意してもらって,特別清算手続を進めようとして,協定案に3条5項「別除権の存否について争いのある債権」という規定を付加した上で,本件債権譲渡担保権の被担保債権がこの規定に含まれるとし,協定外でC銀行と協議をすることで速やかに解決を図ることとした。 エ  ウの前提のもと,C銀行は協定案に同意し,その後,本件協定は可決・認可された。 オ 現在に至るまで,C銀行ないしは原告と被告との間で,本件債権譲渡担保権をどのように取り扱うべきかについての解決はなされていない。 (2) 以上の事実からすれば,協定手続において協定案に同意した段階では,C銀行と被告の認識は,両者とも,本件債権譲渡担保権の被担保債権は「別除権の存否に争いのある債権」に当たるとの認識であったと認められる。 もっとも,上記事実経過に照らすと,C銀行と被告は,本件債権譲渡担保権の取扱いについて紛争があったために一時的に当該債権を「別除権の存否に争いがある債権」という分類にしたに過ぎず,当該債権の法的性質は未だ決定していないのであるから,最終的に被告が原告に対して支払うべき配当金の額を決定するためにも,当該債権の取扱い方を確定する必要がある。 そして,原告・被告間において,協定外の協議により紛争を解決することが期待できない状況であることからすれば,その確定については,協定の内容・性質,C銀行及び被告の行動その他諸般の事情を総合的に考慮して裁判所が判断すべきものであるといえる。 紛争を解決することが期待できない状況であることからすれば,その確定については,協定の内容・性質,C銀行及び被告の行動その他諸般の事情を総合的に考慮して裁判所が判断すべきものであるといえる。 (3) そこで判断するに,C銀行は,本件協定の可決に際し,本件債権譲渡担保権の被担保債権を除いた分の債権者として議決権を行使することも可能であったにもかかわらず,これをすることなく本件協定に同意している(甲30)のだから,C銀行はもはや本件債権譲渡担保権を協定外での別除権として行使することはできないと認めるのが相当である。すなわち,別除権は協定外での行使が可能であり,協定の内容には影響を受けない。そのため,別除権には議決権が与えられていないのであるから,議決権が行使された本件においては,C銀行は実質的に別除権を放棄(破産法96条但書参照)したと認めるのが相当である。 したがって,本件債権譲渡担保権は,本件協定に拘束され,本件協定の枠内でのみ行使されるべき債権であり,本件協定の文言からすれば,2条2項の「債権譲渡担保契約付債権」に当たるというべきである。 これに対し,原告は,本件債権譲渡担保権の被担保債権はいわゆる「ひもつき」の債権であり,他の債権譲渡担保権付債権と著しく趣を異にしているのであるから,特別清算においても他の債権譲渡担保権付債権と区別して扱うべきであると主張するが,かかる事情を考慮すべきとする規定は本件協定にはない。のみならず,ひもつきか否かという不明確な基準を協定内容の判断に取り入れることは,協定に参加した他の債権者に予測し得ない不利益を及ぼすおそれがある。 以上により,本件債権譲渡担保権の被担保債権は,協定2条2項にいう「債権譲渡担保契約付債権」であり,原告としては,本件協定に記された割合に応じて に予測し得ない不利益を及ぼすおそれがある。 以上により,本件債権譲渡担保権の被担保債権は,協定2条2項にいう「債権譲渡担保契約付債権」であり,原告としては,本件協定に記された割合に応じて配当金を受けることとなる。 そして,本件債権譲渡担保権が本件協定に拘束されるのは,本件協定が認可されたためであるから,本件協定認可以前の段階においては,その拘束力も未だ生じておらず,原則どおり協定外で行使可能な別除権として,その権利行使が可能であると解される。 (4) したがって,国際割賦案件に関する別紙1の「割賦料入金額」のうち,平成8年3月18日以後にC銀行が支払を受けていた部分について,本件配当金債権との相殺の主張が認められる。 4 結論上記当裁判所の判断1ないし3の結果に争いのない事実及び弁論の全趣旨を総合すれば,本件協定における配当基準額は,135億9400万6753円からスワップ解約益相殺分5億4178万3917円を差し引いた130億5222万2836円,本件変更協定での配当基準額である譲渡担保契約付債権の額は,103億4427万7302円から5億4178万3917円を差し引いた98億0249万3385円であると認められる。 以上を基に配当すべき金額及び配当不足額を計算すると,別紙2の配当関係計算書③欄及び⑤欄記載のとおりであり,当該配当不足額と国際割賦案件のC銀行・原告受領分とを相殺した結果は別紙3の残配当不足額計算書E欄記載のとおりとなる。 したがって,原告は被告に対し,口頭弁論終結時である平成15年1月30日現在,本件配当金債権4億5596万9410円及び確定遅延損害金債権1295万9934円を有していることとなる。 第4 総括以上より,原告の請求は,本件協定 時である平成15年1月30日現在,本件配当金債権4億5596万9410円及び確定遅延損害金債権1295万9934円を有していることとなる。 第4 総括以上より,原告の請求は,本件協定に基づく本件配当金債権の履行として,4億5596万9410円並びに口頭弁論終結時までの確定遅延損害金1295万9934円及び口頭弁論終結の日の翌日から支払済みまで商事法定利率年6%の割合による金員の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し,その余の部分は理由がないからこれを棄却することとし,訴訟費用の負担について民訴法67条1項,64条本文,61条を,仮執行宣言につき同法259条1項を適用して主文のとおり判決する。 神戸地方裁判所第1民事部 裁判長裁判官古川行男 裁判官西村欣也 裁判官井上直樹

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