平成15(ワ)3 国家賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
平成18年2月27日 岐阜地方裁判所 その他
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判決文本文19,805 文字)

- 1 -H18.2.27 岐阜地方裁判所平成15年(ワ)第3号国家賠償請求事件事件番号:平成15年(ワ)第3号事件名:国家賠償請求事件裁判年月日:H18.2.27裁判所名:岐阜地方裁判所部:民事第2部登載年月日:判示事項の要旨原告が,捜索差押許可状の執行等について警察官に違法行為等があったとして,岐阜県に対し,国家賠償法1条にに基づいて損害賠償請求をしたところ,その一部が認容された事例平成18年2月27日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成15年(ワ)第3号国家賠償請求事件口頭弁論終結日・平成17年7月14日判決主文 被告は,原告に対し,金3万円及び内金2万5000円に対する平成10年4月16日から,内金5000円に対する平成10年4月21日から,それぞれ支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 原告のその余の請求を棄却する。 訴訟費用は,これを40分し,その1を被告の負担とし,その余を原告の負- 2 -担とする。 この判決は,原告勝訴部分に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1請求被告は,原告に対し,金120万円及びこれに対する平成10年3月31日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2当事者の主張 被告の本案前の主張本件訴訟は,原告・被告を同じくする岐阜地方裁判所平成11年(ワ)第160号損害賠償請求事件(その控訴審は名古屋高等裁判所平成12年(ネ)第912号,以下「別件訴訟」という。)と主要な争点が共通であり,民訴法142条の二重起訴の禁止に違反する不適法なものである。 すなわち,別件訴訟の争点は,原告を被告人とする岐阜地方裁判所平成10年(わ)第142号,同第176号恐喝未遂,覚せい剤取締法違反被告事件(以下,恐喝未遂被告事件を「 に違反する不適法なものである。 すなわち,別件訴訟の争点は,原告を被告人とする岐阜地方裁判所平成10年(わ)第142号,同第176号恐喝未遂,覚せい剤取締法違反被告事件(以下,恐喝未遂被告事件を「本件恐喝未遂事件」,覚せい剤取締法違反被告事件を「本件覚せい剤事件」という。)について,a警察署が行った捜査のうち,本件恐喝未遂事件が囮捜査であったか否か,本件覚せい剤事件に関して違法な強制処分があったか否かであり,訴訟物も同一の捜査に関する国家賠償であるなど,当事者間の実質的な紛争を基礎にして考えれば同一であることから,審理が重複し裁判の抵触を生じる恐れが存在するからである。 また,原告は,本件訴訟の請求原因の一つである写真撮影と同一機会に行われた写真撮影について別件訴訟を提起しているのであるから,被写体及び写真が違うことを理由にして同一行為を請求原因とすることは,二重起訴の禁止に該当する。 被告の本案前の主張に対する原告の反論- 3 -別件訴訟の請求原因は,「a警察署の捜査官が本件恐喝未遂事件の捜索差押許可状に基づいて原告の居室を捜索差押えした際,検証許可状がないまま住居内部の状況や所持品等を写真撮影したが,差し押さえるべき物に該当しない名刺を写真撮影されたのは受忍義務を超える。」というものであったから,二重起訴の禁止に該当しない。 仮に二重起訴の禁止に該当するとしても,別件訴訟において,原告が本件訴訟と同旨の請求原因による「訴えの変更申立書」を提出したところ,裁判官から撤回勧告を受けたため,原告が,「囮捜査について既判力が及ぶので維持したい。」旨述べると,被告代理人のb弁護士が,「既判力は及ばない。」旨答えたので,原告は上記「訴えの変更申立書」を撤回したという経緯があるから,被告が本件訴訟において二重起訴禁止の主張をすることは信義 い。」旨述べると,被告代理人のb弁護士が,「既判力は及ばない。」旨答えたので,原告は上記「訴えの変更申立書」を撤回したという経緯があるから,被告が本件訴訟において二重起訴禁止の主張をすることは信義則に違反する。 原告の主張(1)a警察署の捜査官(以下,単に「捜査官」という。)は,本件恐喝未遂事件及び本件覚せい剤事件の捜査に関し,以下のとおり,原告の権利を侵害する違法な捜査を行ったところ,当該不法行為は被告の公権力の行使の結果であるから,被告は,国家賠償法1条1項により,原告に対して損害賠償責任を負う。 (2)本件恐喝未遂事件の囮捜査ア平成10年3月31日(以下,同年中の日付は月日のみで表記する。),cは,原告から,「(原告と)交際しているdを強姦したのではないか。」と責任追求され,自己の責任を免れる趣旨で,a警察署に赴き,捜査官に対し,虚偽の申告をした。 イ4月2日,捜査官は,cに,「暴力団を名乗る原告から,脅迫を受けて金員を要求され,大変怖い思いをし,困っている。」旨の被害届を提出させ,同旨の供述調書を作成し,cを捜査協力者とする囮捜査を企画した。 そして,その際,捜査官は,cに対し,「自分の方からは金額を言わない- 4 -方がいい。」との注意を与えた。 ウ4月8日,捜査官は,cを呼び出して供述調書を作成した後,引当捜査を実施した。 エ4月10日,cは,原告から電話で面談を求められたが即答を避け,a警察署に出頭した。捜査官は,cから,上記電話の内容などについて聴取し,供述調書を作成したが,その際,cに対し,「今のところ,相手がどういうつもりかはっきりしないので,原告に会って話を聞いて,それからまたその内容を教えてくれ。」(以下,これを「A発言」という。)と述べた。 cは,捜査官の上記指示に基づいて原告に電話し,4月 がどういうつもりかはっきりしないので,原告に会って話を聞いて,それからまたその内容を教えてくれ。」(以下,これを「A発言」という。)と述べた。 cは,捜査官の上記指示に基づいて原告に電話し,4月12日にデニーズd店で会う約束をした。 オ4月12日,原告とcは,上記デニーズd店で面談したが,捜査官は,同店に待機し,原告とcとの会話を聴取していた。 cは,原告に対し,詐術を用い,あるいは哀願するなどして,積極的かつ執拗に,dに対する慰謝料の具体的金額を言わせようと働きかけた。そこで,原告は,例示として,金額の算定方法を述べたが,最終的には,cが「150万円を支払う。」と言った。原告は,この時点で初めて金員受領の意思が生じ,金員授受の日時場所について,4月13日午後4時30分,デニーズd店と約束した。 捜査官は,同日,上記面談内容についてcから事情聴取し,供述調書を作成した。 カ4月13日午後3時15分ころ,原告がcをデニーズd店の駐車場に呼び出したところ,原告は,捜査官により,本件恐喝未遂事件で逮捕された。 キ上記のとおり,捜査官は,cを本件恐喝未遂事件の捜査協力者として利用することを企図し,捜査官の指示を受けたcにおいて,原告に対し,具体的な金額を提示させるべく積極的かつ執拗に働きかけ,さらに自分から- 5 -150万円を提示した結果,原告において金員受領の意思が不確定的に生じたものであるから,上記捜査は,犯意誘発型の囮捜査であり,違法であることは明らかである。 原告は,上記違法な捜査により,身柄を拘束されるなどして甚大な精神的苦痛を被ったところ,その慰謝料は200万円が相当であるが,本件訴訟においては,そのうち20万円を請求する。 (3)有印虚偽公文書作成・同行使等による令状の詐取アf司法巡査(以下「f巡査」という。)作成 ったところ,その慰謝料は200万円が相当であるが,本件訴訟においては,そのうち20万円を請求する。 (3)有印虚偽公文書作成・同行使等による令状の詐取アf司法巡査(以下「f巡査」という。)作成にかかる上記4月2日,8日及び10日付け供述調書の全体的要旨は,「暴力団を名乗る原告から,私(c)が交際している女性(d)のことで,『俺の女に手を出した』と因縁をつけられ脅されて,金員を要求され,極度の恐怖を感じ,今後どうすればいいのか分からなくなってしまったので,警察で犯人を逮捕してほしい。」というものである。 イところが,4月10日,f巡査は,cに対し,「今のところ,相手がどういうつもりかはっきりしない・・・」との前記A発言をしたのであるが,上記アの供述調書の内容が真実であればA発言がなされるはずはないのであるから,上記アの供述調書の内容には虚偽が含まれており,f巡査はそれを認知しながら上記アの供述調書を作成したというほかない。 ウまた,4月12日付け供述調書は,f巡査において,cの供述内容が虚偽であることを熟知しながら録取したと認められる点が存在するほか,cの取調場所について,「g」と虚偽の記載がされている。 エ上記アからウのとおり,f巡査は,cの供述内容が虚偽を含むものであることを知りながら,これを事実であるかの如く装い,また,cの取調場所を偽った4通の供述調書を作成したが,これは有印虚偽公文書作成罪に該当する不法行為である。 オさらに,捜査官は,違法に作成されたcの上記各供述調書を資料として,- 6 -本件恐喝未遂事件について令状請求をし,事情を知らない裁判官を騙して,逮捕状及び捜索場所を原告方居室とする捜索差押許可状並びに捜索場所を原告使用車両とする捜索差押許可状を発付させ,これを執行した。 カ上記の有印虚偽公文書の作成 求をし,事情を知らない裁判官を騙して,逮捕状及び捜索場所を原告方居室とする捜索差押許可状並びに捜索場所を原告使用車両とする捜索差押許可状を発付させ,これを執行した。 カ上記の有印虚偽公文書の作成,同行使により詐取した令状の違法な執行により,原告は,身体的自由権,精神的自由権及びプライバシー権を不当に侵害されて精神的苦痛を被ったところ,その慰謝料は100万円が相当であるが,本件訴訟においては,そのうち10万円を請求する。 (4)本件恐喝未遂事件における違法な強制処分仮に,(3)オの各令状の発付が適法であるとしても,捜索場所を原告方居室とする捜索差押許可状(以下「本件捜索差押許可状」という。)に基づく強制処分については,以下の違法な行為が存在する。 ア捜査官は,4月16日午前9時35分ころから同日午後零時30分ころまでの間,本件捜索差押許可状に基づいて,原告方居室の捜索差押手続を行ったが,その際,本件捜索差押許可状に明示されている「差押さえるべき物」には該当しないフロッピーディスク合計20枚(以下「本件フロッピーディスク」という。),これを保管するためのプラスチック製の収納ケース(鍵付)1箱(以下「本件収納ケース」という。),カラーインクリボン4本(以下「本件カラーインクリボン」という。),ワープロ1台(以下「本件ワープロ」という。),インクリボン(黒)1本(以下「本件インクリボン(黒)」という。),手帳1冊(以下「本件手帳」という。),レンタルビデオ店の会員カード1枚(以下「本件会員カード」という。)を差し押さえたが,上記各物品のうち,少なくとも新品のフロッピーディスク3枚(発売メーカーによる包装が未開封の物)は,差押対象物件でないとして容易に選別可能であった。すなわち,捜査官は,上記各物品について,被疑事実との関連性を判断する なくとも新品のフロッピーディスク3枚(発売メーカーによる包装が未開封の物)は,差押対象物件でないとして容易に選別可能であった。すなわち,捜査官は,上記各物品について,被疑事実との関連性を判断するためにその内容を確認することなく,包括的な差押えをしたものであって,これは一般的,探索的捜- 7 -索差押えを禁じた令状主義の精神に反するものである。 イf巡査は,本件ワープロを使用して,本件フロッピーディスクに記録されていた電磁的情報の内容を確認したが,これは本件フロッピーディスクに対する新たな捜索であり,裁判官が発付する令状が必要であるのに,令状請求することなく行った。 ウf巡査は,上記イの捜索後,本件フロッピーディスクに記録されていた電磁的情報をプリントアウトして有体情報に転化させ,これを取得したが,捜査官は,電磁的記録媒体である本件フロッピーディスクを差し押さえたにすぎず,本件フロッピーディスクに記録されている電磁的情報自体を差し押さえたものではないから,f巡査の上記行為は新たな検証,差押えに該当し,検証許可状,捜索差押許可状が必要であるのに,令状請求することなくこれを行った。 エf巡査は,上記イ,ウの強制処分を行う際,本件ワープロ本体に記録されていた委任状と題する文書(以下「本件委任状」という。)を喪失させた。 オ原告は,上記アからエまでの不法行為により,プライバシー権を不当に侵害される等して甚大な精神的損害を被ったところ,その慰謝料は200万円が相当であるが,本件訴訟においては,そのうち20万円を請求する。 (5)捜査官による原告方居室への違法な侵入・捜索ア捜査官は,上記(4)アの捜索差押手続開始の15分前である4月16日午前9時20分ころ,領置していた原告方居室の鍵を使用して,原告が逮捕されていたため誰も居ない原告 告方居室への違法な侵入・捜索ア捜査官は,上記(4)アの捜索差押手続開始の15分前である4月16日午前9時20分ころ,領置していた原告方居室の鍵を使用して,原告が逮捕されていたため誰も居ない原告方居室に不法に侵入し,あらかじめ居室内部を捜索し,覚せい剤と認められる白色結晶性粉末2袋等を発見していた。 イ原告は,上記不法行為により,プライバシー権を不当に侵害され,また,居住の自由を脅かされ,精神的苦痛を被ったところ,その慰謝料は300- 8 -万円が相当であるが,本件訴訟においては,そのうち30万円を請求する。 (6)本件覚せい剤事件における違法な強制処分ア4月16日午前9時36分ころ(すなわち,本件捜索差押許可状に基づく捜索差押えが開始された1分後),h巡査は,原告の抗議にもかかわらず,白色結晶性粉末1袋,針付き注射筒1本等を,発見された場所から移動し,テーブルの上に並べて写真撮影した。 また,同日9時44分ころ,h巡査は,同様の状況下で,別の白色結晶性粉末1袋,針及び赤色キャップ無し注射筒1本等を,発見された場所から移動し,テーブルの上に並べて写真撮影した。 さらに,i捜査官も,上記白色結晶性粉末2袋等を,原告の同意を得ないで写真撮影しやすいように移動を繰り返し,テーブルの上に並べて写真撮影した。 しかも,上記各写真撮影の対象物の中には,その後においても差し押さえられていない物も含まれていた。 また,捜査官は,上記白色結晶性粉末2袋の寸法を測定して記録した。 上記h巡査及びi捜査官の各写真撮影行為並びに捜査官の寸法測定記録行為は,本件捜索差押許可状に明示されていない別の被疑事件の証拠物に対するものであり,令状に基づかない違法な強制処分(検証)である。 イ捜査官は,上記白色結晶性粉末2袋等を発見場所からテーブルの上に移動させた 捜索差押許可状に明示されていない別の被疑事件の証拠物に対するものであり,令状に基づかない違法な強制処分(検証)である。 イ捜査官は,上記白色結晶性粉末2袋等を発見場所からテーブルの上に移動させたが,その目的は写真撮影を容易にするためであるから,捜査官は,その時点において,上記白色結晶性粉末2袋等に対する原告の占有を排除し,強制的に占有を取得したものであり,これは令状に基づいて行わなければならない差押えに該当するところ,令状なしで行った。 ウ同日,j巡査は,h巡査が違法に撮影した白色結晶性粉末2袋等の上記写真を貼付し,その撮影時刻を「平成10年4月16日午前10時20分ころから午前10時45分ころまで」と虚偽の記載をした写真撮影報告書- 9 -(以下「本件写真撮影報告書」という。)を作成した。そして,捜査官は,本件写真撮影報告書を資料として,裁判官に対し,本件覚せい剤事件について差押許可状の発布を請求し,これ(以下「本件差押許可状」という。)を詐取した。これらの行為は,有印虚偽公文書作成罪及び同行使罪に該当する。 次いで,捜査官は,同日午後零時10分ころ,原告方居室内で原告に本件差押許可状を示して,上記白色結晶性粉末2袋,針付き注射筒1本等を差し押さえたが,上記差押えは,違法に詐取した令状に基づくものであるから,違法である。 エ捜査官は,本件差押許可状に基づく差押えの際,同令状に記載されている上記白色結晶性粉末2袋,針付き注射筒1本等のほか,同令状に記載されていない物件も写真撮影したが,これらはいずれも令状に基づかない強制処分(検証)である。 すなわち,①捜索差押手続の適法性を担保するため,その執行状況を写真に撮影したり,②差押物件の証拠価値を保存するため,発見された場所,発見された状態において,その物を写真撮影することは,捜索 ある。 すなわち,①捜索差押手続の適法性を担保するため,その執行状況を写真に撮影したり,②差押物件の証拠価値を保存するため,発見された場所,発見された状態において,その物を写真撮影することは,捜索差押に付随するため,捜索差押許可状により許容されると解されているが,上記の令状に記載されている白色結晶性粉末2袋,針付き注射筒1本等は,既に移動が繰り返されており,発見された場所,発見された状態のままではなかったのであるから,その写真撮影は上記①,②の証拠価値保存及び適法性確保の目的を失しており,捜索差押に付随して許容される場合には該当しないし,まして,上記の令状に記載されていない物件の写真撮影が,本件差押許可状の範囲を逸脱していることは明らかであるからである。 オ原告は,上記の各不法行為により,住居内におけるプライバシーに対する管理権を全面的に侵害排除され,著しい精神的損害を被ったところ,その慰謝料は150万円が相当であるが,本件訴訟においては,そのうち1- 10 -5万円を請求する。 (7)原告の名誉権侵害ア仮に,f巡査が作成した4月12日付けのcの供述調書の作成場所が,同調書に記載されているとおり,cの勤務先であるg内であれば,同所は,不特定多数の客などが出入りする高度の蓋然性がある場所であるから,原告に関する情報が不特定多数人に伝幡する蓋然性が生じ,原告の名誉が侵害される虞れのある状態が発生した。 イf巡査は,6月ころ及び7月ころ,dを喫茶店に呼び出して,同人から原告に関する情報を聞き出し,これを録取しようとしたが,同所も上記アと同様に不特定多数の客などが出入りする高度の蓋然性がある場所であるから,原告に関する情報が不特定多数人に伝幡する蓋然性が生じ,原告の名誉が侵害される虞れのある状態が発生した。 ウ原告は,上記の各不 同様に不特定多数の客などが出入りする高度の蓋然性がある場所であるから,原告に関する情報が不特定多数人に伝幡する蓋然性が生じ,原告の名誉が侵害される虞れのある状態が発生した。 ウ原告は,上記の各不法行為により,名誉権及びプライバシー権を不当に侵害されて精神的損害を被ったところ,その慰謝料は50万円が相当であるが,本件訴訟においては,そのうち25万円を請求する。 被告の主張(1)本件恐喝未遂事件が囮捜査である旨の主張について本件恐喝未遂事件は犯意誘発型の囮捜査ではない。このことは,岐阜地方裁判所平成10年(わ)第142号,同第176号恐喝未遂,覚せい剤取締法違反被告事件の判決及びその控訴審の判決並びに別件訴訟の判決でも認められている。 (2)有印虚偽公文書作成・同行使等による令状の詐取についてア本件恐喝未遂事件におけるcの供述内容は,警察官に対する当初の説明から公判廷における証言まで,ほぼ一貫しており,自己の体験した事実を記憶に従い比較的素直に述べていることが窺われ,内容に特に不自然,不合理なところもない上,関係証拠と対比しても,重要な部分に食い違いは- 11 -認められないことから,十分に信用することができるものであって,その内容に虚偽はない。 イところで,供述調書が有印虚偽公文書であるか否かは,取調対象者の供述内容とその供述調書の記載内容とが符合しているかどうかが問題であり,供述内容が真実と符合していなくても,供述内容どおり録取されていれば,当該供述調書は有印虚偽公文書には該当しないところ,cは,f巡査により供述調書を読み聞かせられて,自己の供述内容どおりであることを認めて署名しているのであるから,cの供述調書が有印虚偽公文書に該当しないことは明らかである。 (3)本件恐喝未遂事件における違法な強制処分についてア かせられて,自己の供述内容どおりであることを認めて署名しているのであるから,cの供述調書が有印虚偽公文書に該当しないことは明らかである。 (3)本件恐喝未遂事件における違法な強制処分についてア捜査官が差し押さえた本件フロッピーディスク,本件収納ケース,本件カラーインクリボン,本件ワープロ,本件インクリボン(黒),本件手帳は,いずれも本件捜索差押許可状に明示されている「差し押さえるべき物」に該当する。なお,本件フロッピーディスクの中には本件恐喝未遂事件に関する情報が保存されている蓋然性が認められ,かつ,そのような情報が実際に記録されているかどうかをその場で確認していたのでは記録された情報を損壊される危険があったから,本件フロッピーディスクについては,その場で内容を確認せずに差し押さえることも許されるものであった。また,本件収納ケースは,本件フロッピーディスクが収納されていた状況を明らかにするために,本件フロッピーディスクとともに押収したものである。 なお,捜査官は,本件会員カードを押収していない。捜査官は,原告の依頼により,逮捕時に原告が所持していた物や,原告使用車両内にあった物を預かり保管し,原告が拘置支所に移監されるときに送付したところ,これらについては押収物でないため書類が残っていないものの,本件会員カードもその一つであったと考えられる。 - 12 -イ刑事訴訟法222条1項で準用される同法111条は,押収物について,錠を外したり封を開けたり,その他必要な処分をすることができると規定しているところ,上記の必要な処分とは,押収の目的を達するため合理的に必要な範囲内の処分を指すものであって,これを本件フロッピーディスクについてみると,いかなる情報が記録されているのかを明らかにするためにプリントアウトする必要があり,そうする 的を達するため合理的に必要な範囲内の処分を指すものであって,これを本件フロッピーディスクについてみると,いかなる情報が記録されているのかを明らかにするためにプリントアウトする必要があり,そうすることによって証拠物としての効用が発揮されるものである。したがって,f巡査において,本件フロッピーディスクが本件恐喝未遂事件と関係のある証拠物であるかを確かめ,かつ,裁判所において直ちに証拠として使用しうる状態に置くために,本件フロッピーディスクの電磁的情報をプリントアウトしてその内容を明らかにする行為は,本件フロッピーディスクの性質上,上記の必要な処分といえるから,新たな捜索,検証,差押えには該当しない。 ウf巡査は,本件ワープロ本体に記憶されている情報は,新たな情報を単に本件ワープロ本体に呼び出しただけでは消去されず,新たな情報を「保存,終了」しなければ消去されないと認識して捜査しており,本件ワープロ本体に記憶されている情報を消去したことはない。 仮に,原告が主張する本件委任状を消去したとしても,同一文書が本件フロッピーディスク内に保存されていたから,容易に復元することが可能である。また,本件委任状は,犯罪の用に供された文書であって,これ自体保護される価値はないから,原告に損害は発生していない。 (4)捜査官による原告方居室への違法な侵入・捜索について捜査官が,本件捜索差押許可状に基づく原告方居室の捜索差押えの前に,原告方居室に侵入・捜索した事実はない。 (5)本件覚せい剤事件における違法な強制処分についてア捜査官は,本件恐喝未遂事件について,4月16日午前9時35分ころ,本件捜索差押許可状に基づいて,原告方居室の捜索を開始した。捜査官は,- 13 -間もなくして,透明ビニール袋入り白色結晶性粉末やプラスチック製注射筒を寝室で発見 ,4月16日午前9時35分ころ,本件捜索差押許可状に基づいて,原告方居室の捜索を開始した。捜査官は,- 13 -間もなくして,透明ビニール袋入り白色結晶性粉末やプラスチック製注射筒を寝室で発見し,捜索に立ち会っていた原告に対して任意提出を促したが,原告は,「自己所有であること」「覚せい剤であること」を否認し,興奮して,「恐喝は認めるから,シャブは目をつむれ」などと怒鳴りながら証拠品を掴み取り,「これで指紋が付いた。証拠能力はない。」などと言って任意提出を拒んだ。そこで,捜査官は,早期に差押許可状の発布を得て上記証拠物を押収する必要があると判断し,令状請求の資料とするため,上記証拠物の写真を数枚撮影した。しかし,原告は,上記のとおり興奮状態にあったので,一旦隣室に移動させ説得を行った。その後,捜査官は,落ちついた原告を寝室に戻し,上記証拠物の確認をさせたが,その時間が午前10時20分ころであり,この時点からさらに数枚の写真撮影を行い,これらの写真を資料として差押許可状の発付を申請した。 イ上記各写真撮影(以下「本件写真撮影1」という。)は,本件覚せい剤事件の証拠品押収と同じ効果を期待して撮影した場合とは異なり,その被写体は覚せい剤という所持が禁止されているものであり,現行犯逮捕こそしていないものの(本来は現行犯逮捕も可能であり,逮捕現場における捜索差押に付随する写真撮影として許される事案であったが,捜査官は,既に身体を拘束された状態にある原告を鑑定なしに逮捕することの妥当性について疑問があると判断し,現行犯逮捕をしなかったものである。),覚せい剤所持罪という重大な犯罪が現に行われている状況で,その時点では原告が所持を認めていなかったことから,少なくとも所有者は不明であるが,犯罪者の置き去った証拠品であって確実に押収されるべき状況 覚せい剤所持罪という重大な犯罪が現に行われている状況で,その時点では原告が所持を認めていなかったことから,少なくとも所有者は不明であるが,犯罪者の置き去った証拠品であって確実に押収されるべき状況にあった。しかも,原告が覚せい剤を握り潰すなどの証拠隠滅工作に出ていたことから,証拠価値を保全するとともに,これを直ちに差し押さえるべく差押許可状請求の資料とするために写真撮影したものであって,写真撮影自体もその存在場所,形状,数量等,令状請求に必要な最小限度の範囲内で- 14 -行われているところ,犯罪が行われている場合や犯罪が行われて間がない場合等に,必要により,その状況や個人の容貌等を写真撮影することは適法であるから,本件写真撮影1は違法な検証ではない。 仮に,本件写真撮影1が検証の性質を有し,手続上の瑕疵があったとしても,上記証拠物はその後直ちに発付された本件差押許可状により差し押さえられているのであるから,その瑕疵は補完されており,また,捜査官にも令状主義を潜脱する意思はないから,令状主義を没却するものではない。 写真撮影よりも侵害の程度が高い押収が適法になされており,禁制品の覚せい剤所持という行為自体が個人のプライバシーとして法的保護に値しないから,本件写真撮影1によって原告のプライバシーが侵害されたとはいえず,なんらの損害も生じていない。 ウh巡査らは,本件写真撮影1に際し,白色結晶性粉末等を若干移動させたが,これをもって原告の占有を排除したとはいえないから,差押えには当たらない。 エj巡査は,本件写真撮影1によって取得した写真を貼付した本件写真撮影報告書を作成したが,その撮影時刻については,二度目になされた写真撮影の時刻である午前10時20分ころから午前10時45分ころまでとした。j巡査が撮影時刻を上記のとおり記載した 貼付した本件写真撮影報告書を作成したが,その撮影時刻については,二度目になされた写真撮影の時刻である午前10時20分ころから午前10時45分ころまでとした。j巡査が撮影時刻を上記のとおり記載したのは,後日原告から「発見した状況を見ていない。」などの抗議を受け紛糾するのを避けるため,確実に原告が発見した物,状況を確認した時間を記載するのが最も妥当であると判断した結果であり,j巡査に虚偽の事実を記載する意図も,その必要性もないから,本件写真撮影報告書は有印虚偽公文書に該当しない。 したがって,捜査官が本件写真撮影報告書を資料として本件差押許可状の発付を得たことは,令状の詐取に該当しないし,また,本件差押許可状に基づく差押も適法である。 - 15 -(6)原告の名誉権侵害についてf巡査が,4月12日,cの勤務先であるg内において,同人から事情聴取し供述調書を作成したこと,また,6月ころ及び7月ころ,喫茶店内において,dから相談を受け,あるいは参考人として事情聴取したことは事実であるが,f巡査がこれらの場所を使用したのは,いずれもc及びdの要望によるものであり,しかも,会話の内容が周囲の者の耳目に届かないように,店内の場所,会話の音量等に十分な注意を払って事情聴取等をしているため,原告のプライバシー等は侵害されていない。 第3当裁判所の判断 被告の本案前の主張について乙第1によれば,別件訴訟の請求原因は,要旨,「a警察署の捜査官が本件恐喝未遂事件の捜索差押許可状に基づいて原告の居室を捜索差押えした際,検証許可状がないまま,住居内部の状況を写真撮影したり,差し押さえるべき物に該当しない名刺を写真撮影したことは違法である。」というものであったことが認められる。 そうすると,別件訴訟の訴訟物と本件訴訟の訴訟物とは異なるから,本件訴訟は 写真撮影したり,差し押さえるべき物に該当しない名刺を写真撮影したことは違法である。」というものであったことが認められる。 そうすると,別件訴訟の訴訟物と本件訴訟の訴訟物とは異なるから,本件訴訟は二重起訴の禁止には違反しない。 上記説示に反する被告の主張は採用できない。 本件恐喝未遂事件が囮捜査である旨の主張について甲第2の1ないし4,第3ないし第6,第7の1ないし4,第8の1ないし3及び弁論の全趣旨によれば,cが3月31日に本件恐喝未遂事件に関して捜査官に相談したのは,既に恐喝の犯意を有していた原告から,「金銭の問題だ。」などといわれて,金員の要求を受けた後のことであることが認められる。 そうすると,cからの上記相談に基づいて開始された本件恐喝未遂事件の捜査が,犯意誘発型の囮捜査に該当しないことは明らかである。 上記認定,説示に反する原告の主張は採用できない。 - 16 - 有印虚偽公文書作成・同行使等による令状の詐取について(1)甲第6及び弁論の全趣旨によれば,cの4月12日付け供述調書は,cの勤務先であるgにおいて作成されたことが認められる。したがって,上記供述調書の作成場所が虚偽であることを理由とする原告の主張は理由がない。 (2)原告は,f巡査が作成したcの4月2日,8日,10日及び12日付け各供述調書に録取されているcの供述内容は虚偽であり,当該供述内容を虚偽と知りながら録取したf巡査の行為は,有印虚偽公文書作成罪に該当する旨主張する。 しかし,甲第3ないし第6及び弁論の全趣旨によれば,cは,f巡査から上記各供述調書を読み聞かせられて,自己の供述内容どおりであることを認めて署名していることが認められるところ,被告主張のとおり,供述調書が有印虚偽公文書であるか否かは,取調対象者の供述内容とその供述調書の記載内容とが符合 せられて,自己の供述内容どおりであることを認めて署名していることが認められるところ,被告主張のとおり,供述調書が有印虚偽公文書であるか否かは,取調対象者の供述内容とその供述調書の記載内容とが符合しているかどうかが問題であり,仮に供述内容が真実と符合していなくても,供述内容どおり録取されていれば,当該供述調書は有印虚偽公文書には該当しないというべきであるから,cの上記各供述調書が有印虚偽公文書に該当しないことは明らかである。上記認定,説示に反する原告の主張は採用できない。 したがって,cの上記各供述調書が有印虚偽公文書であることを前提とする原告の主張はいずれも失当である。 本件恐喝未遂事件における違法な強制処分について(1)甲第9ないし第12,第13の1ないし5,第14,第15,第20ないし第24,第26,第27,第30,第31,乙第3及びk地方裁判所における検証の結果並びに弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア捜査官は,4月16日午前9時すぎころ,本件恐喝未遂事件で勾留中の原告を同行して原告方居室に赴き,原告に本件捜索差押許可状を呈示し,原告を立ち会わせて,原告方居室の捜索を開始した。 - 17 -なお,本件捜索差押許可状には,「差押さえるべき物」として,「1cとの関係を示す住所録・メモ紙等 dとの関係を示す住所録・メモ紙等 本件犯行の計画を記載したメモ紙等 携帯電話×××-×××-××××番のもの 携帯電話○○○-○○○-○○○○番のもの 被害者の車両ナンバー△△△△△△△△△号又は□□□□□□□□□号の車両ナンバーを記載したメモ紙等 登録事項等証明書□□□□□□□□□号のもの その他本件に関するメモ紙等」と記載されていた。 イ上記捜索開始後,間もなくして,捜査官は,寝室のテーブル □号の車両ナンバーを記載したメモ紙等 登録事項等証明書□□□□□□□□□号のもの その他本件に関するメモ紙等」と記載されていた。 イ上記捜索開始後,間もなくして,捜査官は,寝室のテーブルの上の紙袋の中に入っていた透明ビニール袋入りの覚せい剤と認められる白色結晶性粉末1袋及びその横にあったプラスチック製注射筒1本を,また,寝室のテーブルの下のティッシュペーパーの中にあった透明ビニール袋入りの覚せい剤と認められる白色結晶性粉末1袋及びその横にあったプラスチック製注射筒1本を発見した。そこで,捜査官が,原告に対し,上記証拠物について任意提出を促したところ,原告は,上記証拠物が覚せい剤であることや,自己の所有物であることを否認し,興奮して,「恐喝は認めるから,覚せい剤は握れ。」などと取引を持ちかけたが,捜査官がこれを拒否すると,上記白色結晶性粉末2袋を握り,故意に指紋を付着させて証拠隠滅しようとしたり,大声でわめいたりしたため,現場は騒然とした。そこで,捜査官は,早期に差押許可状の発付を得て上記証拠物を押収する必要があると判断し,差押許可状の発付を求めるための資料として,原告の同意を得ることなく,これらを若干移動してテーブルの上に並べ,ビニール袋の寸法を測定したり,上記白色結晶性粉末2袋及びプラスチック製注射筒2- 18 -本等を写真撮影した。ところで,原告は,上記のとおり興奮状態にあったので,捜査官は,原告を一旦隣室に移動させ説得を行った。その後,捜査官は,落ちついた原告を寝室に戻し,午前10時20分ころ,上記証拠物の確認をさせ,このとき上記証拠物についてさらに数枚の写真撮影を行った。 ウそして,捜査官は,上記の経過で撮影した写真を貼付し,その撮影時刻を「平成10年4月16日午前10時20分ころから午前10時45分ころま のとき上記証拠物についてさらに数枚の写真撮影を行った。 ウそして,捜査官は,上記の経過で撮影した写真を貼付し,その撮影時刻を「平成10年4月16日午前10時20分ころから午前10時45分ころまで」と記載した本件写真撮影報告書を作成し,裁判官に対し,同報告書等を資料として差押許可状の請求をし,その発付を得て,同日午後零時10分ころから20分ころの間に,原告方居室内において,原告に上記差押許可状を示して,上記白色結晶性粉末2袋及びプラスチック製注射筒2本等を差し押さえ,これらの写真撮影(以下「本件写真撮影2」という。)をした。 なお,上記差押許可状には,「差押さえるべき物」として,「(原告方居宅内の) 白色結晶性粉末マジックチャック付ビニール袋入り約8センチ×約5センチ1袋 紙袋前記1が在中のもの1個 プラスチック製注射筒1本 白色結晶性粉末マジックチャック付ビニール袋入り約8センチ×約5センチ1袋 プラスチック製注射筒1本 白色ティッシュペーパー前記5を包装してあるもの1包」と記載されていた。 エまた,捜査官は,本件捜索差押許可状に基づいて,本件フロッピーディスク(ただし,19枚は本件収納ケース入りで,その中には発売メーカー- 19 -による包装が未開封の新品が3枚含まれていた。そして,残り1枚は本件ワープロ内にあった。),本件収納ケース,本件カラーインクリボン,本件ワープロ,本件インクリボン(黒),本件手帳等を差し押さえた。 なお,捜査官が本件ワープロ及び本件フロッピーディスクを差し押さえたのは,原告が逮捕当時にワープロで作成したと思われる示談契約書2通を所持していたからであった。 また,捜査官は,本件フロッピーディスクの内容を確認しないで差押えしたが,これは,フロッピーディスク内に のは,原告が逮捕当時にワープロで作成したと思われる示談契約書2通を所持していたからであった。 また,捜査官は,本件フロッピーディスクの内容を確認しないで差押えしたが,これは,フロッピーディスク内にどのような文書名で情報が記録されているか分からなかったし,一つの文書が複数に分割して記録されている可能性もあったところ,騒然とする現場で確認,峻別操作をすれば,誤操作によって情報を破壊してしまう恐れや,原告がボタン操作一つで情報を瞬時に消去する恐れがあったためであった。 オf巡査は,4月21日,本件ワープロを使用して,本件ワープロ本体に記録されている情報及び本件フロッピーディスクに記録されている情報を確認し,本件恐喝未遂事件に関係すると思われる本件委任状,示談契約書及びcとdが知り合った経緯が記載されている文書を出力印字したが,その際,誤って本件ワープロ本体に記録されていた本件委任状を消去してしまった。なお,本件委任状は本件フロッピーディスクには記録されていなかった。 なお,原告は,特に必要のある文書はフロッピーディスクに保存することにしており,本件委任状は操作の手順上必然的に本件ワープロ本体に記録されていたものにすぎなかった(第16回口頭弁論調書中の原告の陳述)。 (2)ア原告は,捜査官は,本件フロッピーディスク,本件収納ケース,本件カラーインクリボン,本件ワープロ,本件インクリボン(黒),本件手帳,本件会員カードを,被疑事実との関連性を判断するためにその内容を確認- 20 -することなく差し押えしたが,これは一般的,探索的捜索差押えを禁じた令状主義の精神に反する旨主張するので,以下,検討する。 イ前記認定のとおり,原告が逮捕当時にワープロで作成したと思われる示談契約書2通を所持していたことからすると,本件ワープロ,本件フロッピー 令状主義の精神に反する旨主張するので,以下,検討する。 イ前記認定のとおり,原告が逮捕当時にワープロで作成したと思われる示談契約書2通を所持していたことからすると,本件ワープロ,本件フロッピーディスク,本件収納ケース,本件カラーインクリボン及び本件インクリボン(黒)は,本件捜索差押許可状の「差押さえるべき物」の「8その他本件に関するメモ紙等」に該当するといえる。そして,前記認定((1)エ)の捜索差押時の状況に照らすと,本件においては,個々のフロッピーディスクについて本件恐喝未遂事件との関連性を厳密に判断することなく,ある程度包括的に差し押さえることも止むを得ないというべきであるから,使用中であるフロッピーディスク17枚については,捜査官がその内容を確認することなく差し押えても適法である。 しかし,未使用のフロッピーディスク3枚については,本件恐喝未遂事件との関連性のないことが明らかであるから,その差押えは違法といわざるをえない。また,本件カラーインクリボンについても,甲第27によれば,箱入りのものが3個あり,これは新品と認められるから,同様の理由により,その差押えは違法といわざるをえない。 ウ本件手帳については,本件捜索差押許可状の「差押さえるべき物」の「8その他本件に関するメモ紙等」に該当するといえるから,その差押えは適法である。 エ本件会員カードについては,甲第27によれば,原告がk刑務所において検察官から還付を受けた物の一つであることが認められるが,甲第9の捜索差押調書の「押収品目録」には記載されていないこと,甲第27によれば,上記の原告が検察官から還付を受けた物の中には,銀行キャッシュカードお取引明細表1枚も含まれており,その全てが押収品とはいえないことなどを考慮すると,捜査官によって押収されたと認めるには足りない ば,上記の原告が検察官から還付を受けた物の中には,銀行キャッシュカードお取引明細表1枚も含まれており,その全てが押収品とはいえないことなどを考慮すると,捜査官によって押収されたと認めるには足りない- 21 -というべきである。 (3)原告は,本件フロッピーディスクに記録されていた電磁的情報の内容を確認したり,当該電磁的情報をプリントアウトする行為は,新たな捜索,検証,差押えに該当するところ,捜査官には,令状なしでこれを行った違法がある旨主張する。 しかし,原告の上記主張は採用できない。その理由は,被告の主張(3)イのとおりである。 (4)f巡査が,誤って本件ワープロ本体に記録されていた本件委任状を消去してしまったこと,本件委任状が本件フロッピーディスクに記録されていなかったことは,前記認定のとおりである。 被告は,本件委任状は,犯罪の用に供された文書であって,これ自体保護される価値はないから,原告に損害は発生していないと主張するが,本件委任状の書式は他に利用することも可能であるから,原告に全く損害がないとはいえない。 捜査官による原告方居室への違法な侵入・捜索について原告は,捜査官は,本件捜索差押許可状に基づく原告方居室の捜索差押えの15分前である4月16日午前9時20分ころ,領置していた原告方居室の鍵を使用して,原告が逮捕されていたため誰も居ない原告方居室に不法に侵入し,あらかじめ居室内部を捜索し,覚せい剤と認められる白色結晶性粉末2袋等を発見していた旨主張する。 しかし,捜査官が本件捜索差押許可状に基づいて原告方居室の捜索を行った状況は,前記4(1)で認定したとおりであり,甲第9の捜索差押調書に記載されている「午前9時35分から午後零時30分まで」との記載は誤記であると認められ,本件全証拠によるも,捜査官が本件捜索差押許 状況は,前記4(1)で認定したとおりであり,甲第9の捜索差押調書に記載されている「午前9時35分から午後零時30分まで」との記載は誤記であると認められ,本件全証拠によるも,捜査官が本件捜索差押許可状に基づく原告方居室の捜索差押えの前に,原告方居室に侵入・捜索した事実は認められない。 したがって,原告の上記主張は採用できない。 - 22 - 本件覚せい剤事件における違法な強制処分について(1)前記4(1)イで認定した捜査官の行為(白色結晶性粉末2袋及びプラスチック製注射筒2本等を若干移動してテーブルの上に並べ,ビニール袋の寸法を測定したり,写真撮影した行為)は,原則として検証許可状を必要とするものであり,違法といわざるを得ない。そして,本件写真撮影報告書(違法に入手した写真を貼付したもの)を資料として発付された本件差押許可状にも瑕疵があり,同許可状によってなされた差押え及びその際の本件写真撮影2も違法といわざるを得ない(ただし,これは民事上の違法であり,刑事手続における証拠能力とは必ずしも関連しない。)。 上記説示に反する被告の主張はいずれも採用できない。 (2)原告は,捜査官が白色結晶性粉末2袋等を発見場所からテーブルの上に移動させたことをもって,違法な差押えに当たると主張する。 しかし,上記事実からは,いまだ原告の占有が排除されたとは認められないから,違法な差押えには該当しない。 (3)原告は,本件写真撮影報告書には,本件写真撮影1の撮影時刻が「平成10年4月16日午前10時20分ころから午前10時45分ころまで」と虚偽の記載がされているから,本件写真撮影報告書は有印虚偽公文書である旨主張する。 しかし,前記4(1)イで認定した事実によれば,上記記載は正確性に欠ける面があるものの,虚偽記載とまでいうことはできない。 したがって いるから,本件写真撮影報告書は有印虚偽公文書である旨主張する。 しかし,前記4(1)イで認定した事実によれば,上記記載は正確性に欠ける面があるものの,虚偽記載とまでいうことはできない。 したがって,本件写真撮影報告書が有印虚偽公文書であることを前提とする原告の主張は採用できない。 原告の名誉権侵害について甲第6によれば,f巡査が,4月12日,cの勤務先であるg内において,同人から事情聴取し供述調書を作成したことが認められる。また,f巡査が,6月ころ及び7月ころ,喫茶店内において,dから相談を受け,あるいは参考- 23 -人として事情聴取したことは当事者間に争いがない。 しかし,cの勤務先の経営者の調査嘱託に対する回答書及び弁論の全趣旨によれば,cの上記事情聴取の際には,店は一時的に閉められていたこと,dの場合は,f巡査は,会話の内容が周囲の者の耳目に届かないように,店内の場所,会話の音量等に十分な注意を払っていたことが認められる。そして,f巡査の上記行為により,原告のプライバシーが具体的に侵害されたとの主張,立証はない。 そうすると,f巡査の上記行為により原告の名誉権が侵害されたとする原告の主張は理由がない。 まとめ上記4(2)イで説示したとおり,未使用のフロッピーディスク3枚及びカラーインクリボン3個の押収は違法である(①)。また,f巡査が誤って本件ワープロ本体に記録されていた本件委任状を消去してしまったことにより,原告に損害が生じたことは,上記4(4)で説示したとおりである(②)。さらに,上記6(1)で説示したとおり,捜査官が白色結晶性粉末2袋及びプラスチック製注射筒2本等を若干移動してテーブルの上に並べ,ビニール袋の寸法を測定したり,写真撮影した行為並びに本件差押許可状に基づいてなされた差押え及びその際の本件写真撮影 色結晶性粉末2袋及びプラスチック製注射筒2本等を若干移動してテーブルの上に並べ,ビニール袋の寸法を測定したり,写真撮影した行為並びに本件差押許可状に基づいてなされた差押え及びその際の本件写真撮影2も違法である(③)。 しかして,本件全証拠から窺われる諸般の事情を総合考慮すると,捜査官の上記違法行為①,③による原告の慰謝料は合計2万5000円と認めるのが相当であり,同②による原告の慰謝料は5000円と認めるのが相当である。 以上の次第で,原告の被告に対する本件請求は,金3万円及び内金2万5000円に対する不法行為の行われた日である平成10年4月16日から,内金5000円に対する不法行為の行われた日である平成10年4月21日から,それぞれ支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度で理由があるからこれを認容し,その余は理由がないからこれを棄却- 24 -することとし,主文のとおり判決する。 岐阜地方裁判所民事第2部裁判官林道春

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