平成26(行ウ)465 公文書不開示処分取消等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成28年7月27日 東京地方裁判所
ファイル
hanrei-pdf-86548.txt

判決文本文32,474 文字)

平成28年7月27日判決言渡平成26年(行ウ)第465号公文書不開示処分取消等請求事件主文 1 本件訴えのうち,渋谷区長が別紙公文書目録記載1の公文書のうち同目録記載5の部分を公開する旨の決定をすべき旨を命ずることを求める部分を却下する。 2 渋谷区長が平成26年8月11日付けで原告に対してした別紙公文書目録記載1の公文書の全部を公開しない旨の決定(平成27年3月11日付けで同目録記載3の部分を公開する旨の決定がされた後のもの)のうち,同目録記載4の部分を公開しない旨の部分を取り消す。 3 渋谷区長は,原告に対し,別紙公文書目録記載1の公文書のうち同目録記載4の部分を公開する旨の決定をせよ。 4 本件訴えのうちその余の部分に係る原告の請求をいずれも棄却する。 5 訴訟費用は,これを10分し,その1を被告の負担とし,その余は原告の負担とする。 事実 及び理由 第1 請求 1 渋谷区長が平成26年8月11日付けで原告に対してした別紙公文書目録記載1の公文書の全部を公開しない旨の決定(平成27年3月11日付けで同目録記載3の部分を公開する旨の決定がされた後のもの)のうち,同目録記載2の部分を公開しない旨の部分を取り消す。 2 渋谷区長は,原告に対し,別紙公文書目録記載1の公文書のうち同目録記載2の部分を公開する旨の決定をせよ。 3 被告は,原告に対し,金120万円及びこれに対する平成26年8月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 渋谷区内に住所を有する者である原告は,渋谷区長に対し,渋谷区情報公開条例の規定に基づき公文書の公開を請求したところ,渋谷区長は,その全部を公開しない旨の決定(以下「本件決定」という 案の概要 渋谷区内に住所を有する者である原告は,渋谷区長に対し,渋谷区情報公開条例の規定に基づき公文書の公開を請求したところ,渋谷区長は,その全部を公開しない旨の決定(以下「本件決定」という。)をし,その後,その一部を公開する旨に変更する旨の決定(以下,「本件変更決定」といい,本件変更決定がされる前の本件決定を特に指示する場合には「本件従前決定」という。)をした。 本件は,原告が,本件変更決定がされた後の本件決定には違法がある旨の主張をして,そのうち,いまだ公開されていない部分に係る部分の取消しを求める(以下「本件取消請求」という。)とともに,渋谷区長がいまだ公開されていない部分を公開する旨の決定をすべき旨を命ずることを求め(以下「本件義務付け請求」という。),また,本件従前決定には違法があるところ,これにより原告は精神的損害を受けたなどの旨の主張をして,被告に対し,国家賠償法1条1項の規定に基づき,慰謝料及び弁護士費用の合計120万円並びにこれに対する本件従前決定の日からの民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める(以下「本件国家賠償請求」という。)事案である。 1 渋谷区情報公開条例(以下「本件条例」という。)の定め(1) 本件条例1条本件条例1条は,同条例は,公文書の公開を請求する区民の権利を明らかにするとともに,公文書の公開等に関し必要な事項を定めることにより,区民の知る権利を保障するとともに,区が区政に関し区民に説明する責務を全うするようにし,もって公正で開かれた区政の進展を図ることを目的とする旨を定める。 (2) 本件条例3条本件条例3条は,前段において,実施機関(区長等をいう(同条例2条1号)。)は,公文書の公開を求める権利が十分に尊重されるように同条例を解釈し,運用しなければならない旨を (2) 本件条例3条本件条例3条は,前段において,実施機関(区長等をいう(同条例2条1号)。)は,公文書の公開を求める権利が十分に尊重されるように同条例を解釈し,運用しなければならない旨を定め,後段において,この場合において, 個人に関する情報がみだりに公開されることがないように最大限の配慮をしなければならない旨を定める。 (3) 本件条例5条本件条例5条のいわゆる柱書きは,同条1号から5号までに掲げるものは,実施機関に公文書の公開を請求することができる旨を定め,同条1号は,「区内に住所を有する者」を掲げる。 (4) 本件条例6条ア本件条例6条の柱書きは,実施機関は,同条例5条の規定による公開の請求(以下「公開請求」という。)があったときは,公開請求に係る公文書に同条例6条各号のいずれかに該当する情報(以下「非公開情報」という。)が記載されている場合を除き,公開請求者に対し,当該公文書を公開しなければならない旨を定める。 イ本件条例6条2号は,本文において,「個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)で特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより,特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)又は特定の個人を識別することはできないが,公にすることにより,なお個人の権利利益を害するおそれがあるもの」を掲げ,ただし書において,同号アからウまでに掲げる情報を除く旨を定めるところ,同号アは「法令の規定により又は慣行として公にされ,又は公にすることが予定されている情報」を,同号ウは「人の生命,健康,生活又は財産を保護するため,公にすることが必要であると認められる情報」をそれぞれ掲げる。 ウ本件条例6条3号は,本文において,「法人その他の団体(国,独立行政法人等 同号ウは「人の生命,健康,生活又は財産を保護するため,公にすることが必要であると認められる情報」をそれぞれ掲げる。 ウ本件条例6条3号は,本文において,「法人その他の団体(国,独立行政法人等,地方公共団体及び地方独立行政法人を除く。以下「法人等」という。)に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって,次に掲げるもの」を掲げ,ただし書において,人の生命,健康,生活 又は財産を保護するため,公開することが必要であると認められる情報を除く旨を定めるところ,同号アは,「公にすることにより,当該法人等又は当該個人の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの」を掲げる。 エ本件条例6条4号は,「公にすることにより,人の生命,健康,生活若しくは財産を侵害し,又は犯罪の予防,捜査その他の公共の安全若しくは秩序の維持に支障を及ぼすおそれがある情報」を掲げる。 オ本件条例6条6号は,「実施機関,国,独立行政法人等,他の地方公共団体及び地方独立行政法人が行う事務又は事業に関する情報であって,公にすることにより,次に掲げるおそれその他当該事務又は事業の性質上,当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの」を掲げるところ,同号イは,「契約,交渉又は争訟に係る事務に関し,実施機関,国,独立行政法人等,他の地方公共団体又は地方独立行政法人の財産上の利益又は当事者としての地位を不当に害するおそれ」を掲げる。 (5) 本件条例7条本件条例7条は,実施機関は,公開請求に係る公文書の一部に非公開情報が記録されている場合において,非公開情報に係る部分を容易に区分して除くことができ,かつ,区分して除くことにより当該公開請求の趣旨が損なわれることがないと認められるときは,当該部分を除いた部分につき公開しなければ 場合において,非公開情報に係る部分を容易に区分して除くことができ,かつ,区分して除くことにより当該公開請求の趣旨が損なわれることがないと認められるときは,当該部分を除いた部分につき公開しなければならない旨を定める。 (6) 本件条例9条ア本件条例9条1項は,実施機関は,公開請求に係る公文書の全部又は一部を公開するときは,その旨の決定をし,公開請求者に対し,その旨並びに公開をする日時及び場所を書面により通知しなければならない旨を定める。 イ本件条例9条2項は,実施機関は,公開請求に係る公文書の全部を公開 しないときは,公開をしない旨の決定をし,公開請求者に対し,その旨を書面により通知しなければならない旨を定める。 2 前提事実(証拠等を掲記しない事実は争いがない。ただし,(4)及び(6)の事実は当裁判所に顕著である。)(1) 原告は,渋谷区内に住所を有する者であり,被告の議会の議員である。 (2) 原告は,平成26年7月28日,渋谷区長に対し,本件条例5条の規定により,「公文書を特定するために必要な事項」を「渋谷区α-×の防災公園予定地の不動産鑑定価格(土地,建物,借地権など_)鑑定書一式」とする公文書の公開請求(以下「本件公開請求」という。)をした。 (3) 渋谷区長は,平成26年8月11日付けで,原告に対し,本件公開請求の対象となる公文書を「α防災公園等整備予定地に係る不動産鑑定評価書」(別紙公文書目録記載1(1)及び(2)の公文書を指す。以下,同目録記載1(1)の公文書を「本件鑑定評価書①」,同目録記載1(2)の公文書を「本件鑑定評価書②」といい,これらをまとめて「本件公文書」という。)と特定した上で,本件公文書に本件条例6条6号イの非公開情報に該当する情報が記載されているとして,本件公文書の全部を公開しない旨 「本件鑑定評価書②」といい,これらをまとめて「本件公文書」という。)と特定した上で,本件公文書に本件条例6条6号イの非公開情報に該当する情報が記載されているとして,本件公文書の全部を公開しない旨の決定(本件決定)をした(以下,本件公文書における不動産鑑定の対象となった各土地を併せて「本件土地」という。)。 (4) 原告は,平成26年9月24日,本件訴えを提起した。 本件訴えの提起の当時の原告の請求は,本件決定の全部の取消しを求めるとともに,本件公文書の全部を公開する旨の決定をすべきことを命ずることを求め(以下,これらの請求をまとめて「従前請求」という。),また,本件国家賠償請求をするものであった。 (5) 渋谷区長は,平成27年3月11日付けで,原告に対し,本件決定につき,本件公文書のうち,別紙公文書目録記載3の部分を公開し,その余の部分(同目録記載2の部分)を公開しない旨に変更する旨の決定(本件変更決 定)をした。 (6) 原告は,平成27年7月31日,従前請求を本件取消請求及び本件義務付け請求のとおりに変更した。 (7) なお,原告は,①平成27年3月5日,渋谷区長に対し,本件条例5条の規定により,「公文書を特定するために必要な事項」を「α防災公園の購入契約のための全地権者契約書との支出命令書全て」とする公文書の公開請求をし,渋谷区長は,同月19日付けで,原告に対し,「公文書の件名」を「不動産売買契約書」,「支出命令書(渋谷区α土地取得)」とした上で,その一部を公開する旨の決定をし,②同月5日,渋谷区長に対し,同条の規定により,「公文書を特定するために必要な事項」を「α防災公園の不動産鑑定の業者と契約書と支出命令書全て」とする公文書の公開請求をし,渋谷区長は,同月19日付けで,原告に対し,「公文書の件名」を「土地鑑定評 ,「公文書を特定するために必要な事項」を「α防災公園の不動産鑑定の業者と契約書と支出命令書全て」とする公文書の公開請求をし,渋谷区長は,同月19日付けで,原告に対し,「公文書の件名」を「土地鑑定評価委託その1契約」等8件とした上で,その一部を公開する旨の決定をしたところ,甲第17号証から第47号証までは,上記①及び②の手続により公開された公文書の写しである(甲17~47,乙6の1・2,7の1・2,弁論の全趣旨)。 3 争点(1) 本件変更決定後の本件決定の適法性(本件取消請求及び本件義務付け請求関係)(2) 本件従前決定の違法性等(本件国家賠償請求関係) 4 争点に関する当事者の主張(1) 争点(1)(本件変更決定後の本件決定の適法性(本件取消請求及び本件義務付け請求関係))について(被告の主張の要点)ア非公開情報は本件条例に列挙されているものに限られることは当然であるが,その該当性の判断については,他の法令の場合と同様,同条例の目 的(1条)及び実施機関の責務(3条)を前提として,その規定の意味するところを合理的に解釈すべきである。 イ本件変更決定後の本件決定において公開されていない箇所は別表のとおりであるところ,以下に述べるとおり,これらは,本件条例の合理的な解釈に基づくと,非公開情報に該当する。 (ア) 不動産鑑定業者の「契印」,「社印」及び「代表取締役印」の各印影(別表記載1(1),(5)及び2(1))についてa 本件鑑定評価書①及び本件鑑定評価書②にある不動産鑑定業者の代表取締役印の印影は,法務局に登録された実印(いわゆる代表者印であり,印鑑登録証明書を添付することにより,当該文書の作成名義人との同一性が証明される。)を押印したものであり,社印等と合わせて,これらは,契約書等の「重要書類」に 録された実印(いわゆる代表者印であり,印鑑登録証明書を添付することにより,当該文書の作成名義人との同一性が証明される。)を押印したものであり,社印等と合わせて,これらは,契約書等の「重要書類」に使用されて,押印した書類に記載された内容が真正なものであることを示す認証的な機能を有する性質のものである。そして,これらの印影は,不特定多数の者に提示されることを予定していないのであって,その使用及び保管について厳重に管理されている「内部管理情報」として取り扱われるべきである。 本件鑑定評価書①に押印された不動産鑑定業者の契印,社印及び代表取締役印は,代表者が一式で厳重に管理しており,不動産鑑定評価書,意見書,調査報告書等の事業遂行上限られた重要書類に使用されている。また,本件鑑定評価書②に押印された不動産鑑定業者の代表取締役印は,法務局に登録された実印であり,限られた重要書類に使用されている。 したがって,上記の契印,社印及び代表取締役印の各印影は,法人の内部管理情報であって,当該法人において,その公開の可否及びその範囲を法人自ら決定することができる権利,それを自己の意思によ らないでみだりに他に公開,公表されない利益を有しているものというべきである。 b 今日の電子機器の技術の発達により,複製機器やプリンターなどの精度が上がっていて,精巧な印影の偽造のリスクが高まっているといっても過言ではない。特に,3Dプリンターの開発により,極めて精巧な複製の作成が危惧され,偽造が極めて容易に可能であることは明らかである。 したがって,不動産鑑定業者の印影等が広く公開されて公になると,今日の技術水準では,偽造によって,当該不動産鑑定業者の権利ないし正当な利益が害される危険が高まることは明らかである。 c 代表取締役印が押印された文書を受 業者の印影等が広く公開されて公になると,今日の技術水準では,偽造によって,当該不動産鑑定業者の権利ないし正当な利益が害される危険が高まることは明らかである。 c 代表取締役印が押印された文書を受領するのは,契約の相手方当事者等の限られた範囲の者である。そもそも,本件公文書はいずれも公にすることが予定されているものではなく,広く知れ渡ることを容認するという主観によって,情報の公開,非公開が左右されるものではない。仮に,本件公文書が公にすることが予定された情報が含まれる文書であっても,公にすることが予定された情報があることから,当該文書中の不動産鑑定業者の契印,社印及び代表取締役印を公開すべきことにはならない(本件条例7条参照)。 d 以上によれば,不動産鑑定業者の契印,社印及び代表取締役印の各印影は,本件条例6条3号アの「法人に関する情報であって,公にすることにより,当該法人の正当な利益を害するおそれがあるもの」に該当することは明らかである。 (イ) 不動産鑑定士(総括不動産鑑定士を含む。以下同じ。)の署名及び印影(別表記載1(2),(6)及び2(2))についてa 鑑定評価書には,その不動産の鑑定評価に関与した不動産鑑定士がその資格を表示して署名押印しなければならないとされていることか ら(不動産の鑑定評価に関する法律39条2項),不動産鑑定士の資格において,鑑定の依頼者に対して,当該鑑定評価に関与したことを証明するために押印するものである。押印された印鑑は不動産鑑定士の氏名入りの「専用印」であり,鑑定評価書の内容についての責任の所在を明確にするという重要な意味を有するものである。 したがって,鑑定評価書における不動産鑑定士の署名及び印影は,社会生活上の重要性を有するものとして内部管理情報として秘密にしておくことが是認さ 所在を明確にするという重要な意味を有するものである。 したがって,鑑定評価書における不動産鑑定士の署名及び印影は,社会生活上の重要性を有するものとして内部管理情報として秘密にしておくことが是認され,当該不動産鑑定士において,これらの内部管理情報につき,公開の可否及びその範囲を自ら決定することができる権利,それを自己の意思によらないでみだりに他に公開,公表されない利益を有しているものというべきである。 b 前記(ア)bのとおり,今日の技術水準では,正確な複写による筆跡の偽造,精巧な印鑑の偽造のリスクが高まっている。 そして,資格を証した押印が文書にされていれば,資格に対する信頼と相まって,上記文書の申請及び内容に対する信頼も高まることから,不動産鑑定士という資格を証した印鑑が偽造された場合は,印鑑を偽造された不動産鑑定士が作成した真正な文書にまで,偽造の疑いが生じかねない。 したがって,鑑定評価書における不動産鑑定士の署名及び印影が広く公開されると,これを用いて文書の偽造がされることなどにより,当該不動産鑑定士の鑑定の業務に支障が生じ,当該不動産鑑定士の社会生活,財産を侵害し,不利益を生じるおそれがあることは明らかである。 c また,不動産鑑定士の署名及び印影のある文書を受領するのは,当該鑑定の関係者等の限られた範囲の者である。そもそも,本件公文書は公にすることが予定されている情報ではなく,広く知れ渡ることを 容認するという主観によって,情報の公開,非公開が左右されるものではない。仮に,本件公文書が公にすることが予定された情報が含まれる文書であっても,公にすることが予定された情報があることから,当該文書中の不動産鑑定士の署名及び印影を公開すべきことにはならない(本件条例7条参照)。 d 不動産鑑定士の署名及び押印の内容 まれる文書であっても,公にすることが予定された情報があることから,当該文書中の不動産鑑定士の署名及び印影を公開すべきことにはならない(本件条例7条参照)。 d 不動産鑑定士の署名及び押印の内容を確認することが,鑑定評価書の有効性及び信用性を判断するために不可欠のものとはいえず,重要なことは,署名及び押印の存在である。 本件公文書においても,「不動産鑑定士」の記載は公開し,その右欄に署名及び押印がされて,署名及び印影が存在していることは,本件変更決定による一部の公開によっても明らかである。 e 以上によれば,不動産鑑定士の署名及び印影は,本件条例6条4号の「公にすることにより,人の生命,健康,生活若しくは財産を侵害」する「おそれがある情報」に該当することは明らかである。 (ウ) 本件土地の所有者個人の氏名(別表記載1(3)及び2(3))についてa 本件公文書は,鑑定の対象となる本件土地のその時点での鑑定額や,鑑定の対象となっている近隣の情報,過去の土地の状況など,登記簿に記録されていない情報が記載されている。 したがって,登記簿に記録されている情報(個人の氏名を含む。)を公開すれば,登記簿に記録されていない鑑定額などの他の個人情報が公開されることとなる。登記簿と照合することにより,登記簿以外の情報に係る個人を識別することができるのであるから,本件条例6条2号本文の「他の情報と照合することにより,特定の個人を識別することができることとなるもの」に該当することは明らかである。 b 前記aのとおり,本件公文書には登記簿に記録されていない情報が記載されているところ,登記簿に記録されている個人の氏名の情報を 公開すれば,登記簿に記録されていない鑑定額等を識別することができることから,当該情報は,編集加工による新しい情報であり,本 報が記載されているところ,登記簿に記録されている個人の氏名の情報を 公開すれば,登記簿に記録されていない鑑定額等を識別することができることから,当該情報は,編集加工による新しい情報であり,本件条例6条2号ただし書にいう同号アの「法令の規定により又は慣行として公にされ,又は公にすることが予定されている情報」には該当しないと解すべきである。 このように,登記簿と照合することにより,登記簿以外の情報に係る個人を識別することができるのであるから,同条が非公開情報を定めて個人情報の保護を図った趣旨にも合致するといえる。 c 以上のとおり,個人の氏名は,本件条例6条2号本文に該当し,同号ただし書に該当しない。 (エ) 土地に関する情報(本件鑑定評価書①の「土地価格資料-Ⅰ≪比準価格≫」における取引事例の所在地,地積,取引価格,取引時点及び交通接近条件のうち方角と距離並びに本件鑑定評価書②の「資料1.取引事例比較法の適用明細表」における所在地,面積,取引時点,取引価格の単価,方角と距離,「資料2.比準価格の算出表」における取引価格の単価,「資料3.要因別格差率一覧表」における交通接近条件のうち距離,画地条件のうち事例地の面積及び「位置図」(別表記載1(4)及び2(4)。以下,まとめて「本件取引事例事項」という。)についてa 取引事例の土地の所有者が個人の場合(a) 本件取引事例事項は,いずれも,本件公文書に記載され,公開された時点修正率,交通接近条件,環境条件,行政的条件などの他の情報や,不動産登記簿,路線価などの公の情報と照合することにより,当該土地の所有者,すなわち特定の個人を識別し得るから,本件条例6条2号本文に該当する。 原告は,本件取引事例事項のプライバシー性が希薄であるなどと主張するが,そもそもプライバシー性は希薄 より,当該土地の所有者,すなわち特定の個人を識別し得るから,本件条例6条2号本文に該当する。 原告は,本件取引事例事項のプライバシー性が希薄であるなどと主張するが,そもそもプライバシー性は希薄ではないし,プライバ シー性の濃淡によって非公開情報に該当するかどうかの判断が変わるものではない。 (b) 渋谷区から委託を受けた不動産鑑定業者が,買収予定地の価格を決定するために調査をした内容を示すからといって,単に利用された情報であるにすぎず,かかる場合において個人情報が公開すべきとされている,又は公開されているという慣行はない。 また,本件取引事例事項が公開されないことにより,誰の生命,健康等がどのように侵害されるか,また,公開によりその保護にどのように資するのか,具体的に明らかではない。なお,原告は,本件取引事例事項が公開されないと,本件土地に係る整備事業の適法性や妥当性の検討をすることができないと主張するが,本件公文書は,上記整備事業の適法性や妥当性の検討の実施のために必要不可欠であるとまではいえないから,原告の主張はその前提において誤っているといわざるを得ない。 したがって,本件取引事例事項は,本件条例6条2号ただし書にいう同号ア及びウに該当せず,同号ただし書に該当しない。 b 取引事例の土地の所有者が法人の場合(a) 本件取引事例事項は,いずれも,本件公文書に記載され,公開された時点修正率,交通接近条件,環境条件,行政的条件などの他の情報や,不動産登記簿,路線価などの公の情報と照合することにより,当該土地の所有者,すなわち特定の法人を識別し得る。 法人においても,その権利及び利益,内部管理情報は守らなければならないことは本件条例6条3号の定めるところである。公とされていない資産情報(取引価格等)は上記の内部管理 ち特定の法人を識別し得る。 法人においても,その権利及び利益,内部管理情報は守らなければならないことは本件条例6条3号の定めるところである。公とされていない資産情報(取引価格等)は上記の内部管理情報であり,これを公開すれば,当該法人の権利又は利益を害することは明らかであり,本件取引事例事項は,同号本文にいう同号アに該当する。 (b) 本件取引事例事項について,公開されないことにより,誰の生命,健康等がどのように侵害されるか,また,公開によりその保護にどのように資するのか,具体的に明らかではないこと,本件土地に係る整備事業の適法性や妥当性の検討の実施のために必要不可欠であるとまではいえないことは,前記a(b)に述べたところと同様である。 (原告の主張の要点)ア本件条例における公開請求権は憲法上の権利の具体化であり,かつ,その権利は,表現の自由(いわゆる知る権利が含まれる。)という国民主権の原理,住民自治と表裏一体を成す憲法上優越する地位を有する権利であって,最大限保障されるべきものであり,仮に制約する根拠がある場合も,知る権利が最大限保障される方向で利益衡量等の解釈がされなければならない。 加えて,本件条例上も,情報は公開されるのが原則となっており,非公開は飽くまで例外的に認められ得るにすぎない(同条例6条)。 これらのことから,非公開情報は飽くまで限定的に解釈されるべきであり,また,その内容は,知る権利への制約が正当化されるほどに具体的かつ客観的なものでなければならない。 被告は,非公開情報の該当性について,同条例の規定の意味するところを合理的に解釈すべきである旨の主張をするところ,この「合理的」の趣旨が,被告に広い裁量を認めるものであって,知る権利に対する具体的な対立利益を前提とせず,理由なく知る権利に対する の意味するところを合理的に解釈すべきである旨の主張をするところ,この「合理的」の趣旨が,被告に広い裁量を認めるものであって,知る権利に対する具体的な対立利益を前提とせず,理由なく知る権利に対する制約を認めるものであるとすれば,それは誤りである。 イ本件変更決定において非公開情報に該当するとされたものについての個別の主張は,以下のとおりである。 (ア) 不動産鑑定業者の契印,社印及び代表取締役印の各印影(別表記載 1(1),(5)及び2(1))についてa そもそも,不動産鑑定業者の社印,代表取締役印等の印影が公開されることにより,偽造による法人の財産等を侵害するおそれが具体的に存在するものとは到底いえない。 また,不動産鑑定を行った会社が事業活動を行う上で代表者印を押印している文書が多数あるはずであり,かかる実態を勘案すれば,不特定多数の者に上記の各印影が広く知れ渡ることを容認し,上記の各印影はそうした文書を介して広く知られ得る状態に置かれているということができる。したがって,これらを公開しても,同社の正当な利益等が損なわれるとは認められない。 b 法人の事業において頻繁に外部に対して使用されている印鑑の情報を秘密にしておく法的な利益を,法人がなぜ有することになるか,明らかではない。 また,被告は,不動産鑑定業者の社印,代表取締役印等が,重要な書類に使用され,不特定多数の者に提示されることを予定していないと主張するが,このことから,これらの印影の偽造の具体的なおそれがなぜ導かれるか,また,偽造によりどのように法人の財産等を侵害することになるのかは,何ら明らかではない。 さらに,被告は,不動産鑑定業者の社印,代表取締役印等の各印影について,みだりに他に公開,公表されない利益を有していると主張するが,このことから,不 害することになるのかは,何ら明らかではない。 さらに,被告は,不動産鑑定業者の社印,代表取締役印等の各印影について,みだりに他に公開,公表されない利益を有していると主張するが,このことから,不動産鑑定業者の社印,代表取締役印等の各印影の偽造の具体的なおそれがなぜ導かれるか,また,偽造によりどのように法人の財産等を侵害することになるのかも,何ら明らかではない。 なお,被告の主張における前提となっている「重要書類」の意義は曖昧であり,そのことは,社印,代表取締役印等の各印影について非 公開情報としなければならないことに確たる根拠がないことを示すものである。また,被告のいう「内部管理情報」の具体的な意味も明らかでない。さらに,公開請求に応じて情報を公開することは,そもそも,被告のいう「みだりに他に公開,公表」するということにはならない。 c 被告は,今日の電子機器の技術の発達により,複製機器やプリンターなどの精度が上がっていて,精巧な印影の偽造のリスクが高まっている,特に3Dプリンターの開発により,極めて精巧な複製の作成が危惧され,偽造が極めて容易に可能であることは明らかである旨の主張をするが,被告は,この具体的な根拠を客観的に示していない。 また,上記の被告の主張を前提とすれば,社印,代表取締役印等の各印影がある書類はどのような場合も公開されるべきではないことになるが,公文書の公開請求以外に公開される場合はもちろんある。 そして,取引の相手方に開示されるものについて,その相手方やその関係者が偽造するおそれはなぜないといえるのか,全く不明である。 また,他の機関,例えば,裁判所で訴訟記録の閲覧及び謄写をする場合,当該部分を含めて閲覧及び謄写をすることができるのが通常であるところ,上記の被告の主張を前提とすれば,これらの場合 く不明である。 また,他の機関,例えば,裁判所で訴訟記録の閲覧及び謄写をする場合,当該部分を含めて閲覧及び謄写をすることができるのが通常であるところ,上記の被告の主張を前提とすれば,これらの場合には偽造のおそれがあるにもかかわらず,閲覧や謄写が認められているということになり,極めて不合理である。 d 被告は,代表取締役印が押印された文書を受領するのは限られた範囲の者である旨の主張をするが,「限られた範囲の者」の具体的な意味が明らかではない。また,文書に押印をする者は,文書を直接受領した者のみならず,それ以外の者も広く同文書を取得したり,目にしたりすることがあることを,それを排除する意思表示をしている例外的な場合を除き,前提としている。 また,被告は,本件公文書はいずれも公にすることが予定されているものではない旨の主張をするが,本件公文書は,被告が不動産を購入するに当たっての鑑定の結果を示すものであり,広く公にされることが予定されているものであり,その鑑定は,地方自治体が公費により不動産を購入する際のものであって,鑑定書の真正がより一層厳格に求められるから,印影を含めて公開されるべきである。 さらに,被告は,広く知れ渡ることを容認するという主観によって,情報の公開,非公開が左右されるものではない旨の主張をするが,本件条例6条3号アは,該当者の権利の侵害を問題としているところ,該当者の主観がその権利の侵害の有無や程度に影響を及ぼすことは明らかである。 また,被告は,仮に,本件公文書が公にすることが予定された情報が含まれる文書であっても,公にすることが予定された情報があることから,当該文書中の不動産鑑定業者の契印,社印及び代表取締役印を公開すべきことにはならない旨の主張をするが,その根拠を本件に即して何ら示していない。 っても,公にすることが予定された情報があることから,当該文書中の不動産鑑定業者の契印,社印及び代表取締役印を公開すべきことにはならない旨の主張をするが,その根拠を本件に即して何ら示していない。 (イ) 不動産鑑定士の署名及び印影(別表記載1(2),(6)及び2(2))についてa そもそも,不動産鑑定士の署名及び印影が公開されることにより,偽造による当該不動産鑑定士の生活及び財産に不利益を及ぼすおそれが具体的に存在するものとは到底いえない。 また,不動産鑑定士が事業活動を行う上で署名や押印をしている文書が多数あるはずであり,かかる実態を勘案すれば,不特定多数の者に上記の署名や印影が広く知れ渡ることを容認し,上記の署名や印影はそうした文書を介して広く知られ得る状態に置かれているということができる。したがって,これらの署名や印影を公開しても,不動産 鑑定士の生活及び財産が損なわれるとは認められない。 b 被告は,押印された印鑑が不動産鑑定士の「専用印」である旨の主張をするが,その意味が不明である。 また,被告は,鑑定評価書における不動産鑑定士の署名及び印影が,社会生活上の重要性を有するものとして内部管理情報として秘密にしておくことが是認されると主張するが,社会生活上の重要性を有するものであるということから,なぜ内部管理情報として秘密にしておくことが是認されるということになるか,不明である。 むしろ,不動産鑑定士の署名及び押印は,法律上,鑑定評価書に表示しなければならないとされているのであって,その署名及び押印は,当該評価書の有効性や信用性を判断するに当たり,その有無及び内容を確認することが不可欠のものであるから,不動産鑑定士がその署名及び押印を外部に表示しないことにつき正当な利益を有しているとはいえない。 さらに,不動 や信用性を判断するに当たり,その有無及び内容を確認することが不可欠のものであるから,不動産鑑定士がその署名及び押印を外部に表示しないことにつき正当な利益を有しているとはいえない。 さらに,不動産鑑定士の署名及び印影を公開することにより,それらの偽造の具体的なおそれがなぜ導かれるか,また,偽造によりどのように不動産鑑定士の生活や財産を侵害することになるのかは,何ら明らかではない。 c 被告は,今日の技術水準では,筆跡の偽造,精巧な印鑑の偽造のリスクが高まっている旨の主張をするが,この具体的な根拠を客観的に示していない。 そのほか,上記の被告の主張を前提に不動産鑑定士の署名及び印影を非公開情報とすることが不合理であることは,前記(ア)cと同様である。 d 被告は,不動産鑑定士の署名及び印影のある文書を受領するのは限られた範囲の者である旨の主張をするが,「限られた範囲の者」の具 体的な意味が明らかではないし,文書に署名及び押印をする者は,文書を直接に受領した者のみならず,それ以外の者も広く同文書を取得したり,目にしたりすることがあることを,それを排除する意思表示をしている例外的な場合を除き,前提としている。 また,被告は,本件公文書が公にすることが予定されている情報ではなく,広く知れ渡ることを容認するという主観によって,情報の公開,非公開が左右されるものではない旨の主張をするが,本件公文書は,公の財産に関する鑑定評価書であり,公にされることは十分考えられるし,広く知れ渡ることを容認するという主観があれば,その主観がない場合に比べ,それだけ情報公開を妨げる事情や根拠は少なくなるのであるから,その主観により情報の公開,非公開が左右されるものではないとも到底いえない。 e 署名及び押印は,その署名及び押印がされる書面の真正を示 それだけ情報公開を妨げる事情や根拠は少なくなるのであるから,その主観により情報の公開,非公開が左右されるものではないとも到底いえない。 e 署名及び押印は,その署名及び押印がされる書面の真正を示すものである。また,署名及び押印には,対外的にその署名及び押印がされたことを示す意義もあり,このことは,取り分け,自治体の契約等の行為につき,被告の条例が住民自治の仕組みとしての位置付けを高く有するものであり,また,知る権利を具体化するものであることからも妥当するものである。これらのことから、不動産鑑定士の署名及び印影は公開されるべきである。 (ウ) 本件土地の所有者個人の氏名(別表記載1(3)及び2(3))についてa 個人の氏名は,法務局における全部事項証明書の取得等により,容易に判明する事項であり,本件条例6条2号ただし書にいう同号アの「法令の規定により又は慣行として公にされ,又は公にすることが予定されている情報」に該当し,公開されるべきである。 b 被告は,個人の氏名が本件条例6条2号本文の「他の情報と照合することにより,特定の個人を識別することができることとなるもの」 に該当する旨の主張をするが,同号においては,ただし書(同号アからウまでに掲げる情報を除く旨を定める。)に該当すれば本文に該当しないことになるのであるから,上記の主張には根本的に理由がない。 また,被告は,個人の氏名が編集加工による新しい情報であり,同号アには該当しない旨の主張をするが,本件公文書には土地の所在,地番,地目及び地積の内容が記載されており,所有者のみが非公開情報とされているのであり,これは登記簿等により容易に判明するものであって,非公開情報とする合理的な理由はない。 (エ) 土地に関する情報(別表記載1(4)及び2(4)。本件取引事例事項)に 公開情報とされているのであり,これは登記簿等により容易に判明するものであって,非公開情報とする合理的な理由はない。 (エ) 土地に関する情報(別表記載1(4)及び2(4)。本件取引事例事項)についてa 取引事例の土地の所有者が個人の場合(a) 本件取引事例事項を全て非公開情報としなければ特定の個人が識別されるという事情は存在しない。また,本件取引事例事項は,被告から委託を受けた不動産鑑定業者が,買収予定地の価格を決定するために調査した内容を示すもので,個人情報としてのプライバシー性は希薄である。そして,個々の情報に関するプライバシー性の濃淡は,当該情報が非公開情報に当たるか否かを判断する上で参照される内容である。したがって,本件取引事例事項の全部が本件条例6条2号本文に該当するものではない。 (b) 不動産の鑑定評価書において取引事例は鑑定評価の根拠や正当性を検討する上で重要であるところ,本件取引事例事項が公開されなければ,その検討をすることができず,それにより,被告が行う本件土地に係る整備事業の適法性や妥当性を放置すること,住民自治が全うされないこと,住民の税金に関する無駄遣いを是認することにもつながる。 したがって,仮に,本件取引事例事項が本件条例6条2号本文に 該当するとしても,これらは,同号ただし書にいう同号ウの「人の生命,健康,生活又は財産を保護するため,公にすることが必要であると認められる情報」に当たる。 (c) 本件取引事例事項は,不動産鑑定業者が,客観的にふさわしいと評価した取引の事例に関するものであり,評価価格の規準となるものであって,その性質上,非公開とされるべきものではない。また,鑑定書には,その取引事例につき,個人が識別されないよう工夫をして記載するのが通例である。 b 取引事例の土地 評価価格の規準となるものであって,その性質上,非公開とされるべきものではない。また,鑑定書には,その取引事例につき,個人が識別されないよう工夫をして記載するのが通例である。 b 取引事例の土地の所有者が法人の場合(a) 本件取引事例事項を全て非公開情報としなければ特定の法人が識別されるという事情は存在しない。また,法人の情報の場合,識別性はそもそも問題とならず,仮に特定の法人が識別され得るとしても,そのことによって,当該法人の競争上又は事業運営上の地位,社会的信用その他正当な利益が損なわれるとは認め難い。 (b) 不動産の鑑定評価書において取引事例は鑑定評価の根拠や正当性を検討する上で重要であるところ,本件取引事例事項が公開されなければ,その検討をすることができず,それにより,被告が行う本件土地に係る整備事業の適法性や妥当性を放置すること,住民自治が全うされないこと,住民の税金に関する無駄遣いを是認することにもつながる。 したがって,仮に,本件取引事例事項が本件条例6条3号本文に該当するとしても,これらは,同号ただし書の「人の生命,健康,生活又は財産を保護するため,公開することが必要であると認められる情報」に当たる。 (2) 争点(2)(本件従前決定の違法性等(本件国家賠償請求関係))について(原告の主張の要点) ア被告の平成26年度予算案において,α防災公園(仮称)の整備が含まれており,本件土地は上記の整備事業に係るものであるところ,敷地面積は約5000平方メートル,施設は防災公園と高齢者住宅等とされているなど,大規模な計画であって,これにつき被告が不動産鑑定を行った上で本件土地の売買を進めることは当然のことであり,また,そのことは公知の事実でもある。 そして,不動産鑑定の結果は,被告の判断の資料となるも 規模な計画であって,これにつき被告が不動産鑑定を行った上で本件土地の売買を進めることは当然のことであり,また,そのことは公知の事実でもある。 そして,不動産鑑定の結果は,被告の判断の資料となるものであるところ,その内容を確認することは,今後進行する計画の適法性や妥当性を検討する上で必要不可欠なものである。 加えて,土地の価格は,土地の形状その他を基に調査し,おおよその見当を付けることができるものである。また,不動産鑑定の結果は,実際の不動産の売買金額そのものを示すものでもない。これらのことから,鑑定結果が公になることにより,取引の相手方との信頼関係が損なわれることにはならないし,その相手方との交渉に支障が生ずるともいえない。 したがって,本件公文書は本件条例6条6号イの非公開情報に該当せず,本件従前決定は違法なものであった。 イ前記アのとおり,本件従前決定は違法なものであったところ,原告は,本件従前決定により,精神的な損害を受けたものであり,その損害は,金銭に評価して100万円を下らない。 また,原告は,本件訴えを提起するために弁護士に委任する必要があり,それに要する弁護士費用は20万円を下らない。 ウなお,本件訴えにおける国家賠償請求は,本件変更決定により何ら内容が変わるものではない。 (被告の主張の要点)ア本件従前決定が適法であること(ア) 本件従前決定は,本件公文書に記載されている情報が本件条例6条 6号イに掲げる非公開情報に該当するものとして行われたものであるところ,同号イに掲げるおそれがあるものが非公開情報とされた趣旨は,相手方との交渉が必要とされる契約を行う場合などに,契約の交渉を進める上での準拠となるべき金額や交渉の方針を利害の対立する相手方に明らかにしてしまうと,交渉が相手方に一方的に有利と とされた趣旨は,相手方との交渉が必要とされる契約を行う場合などに,契約の交渉を進める上での準拠となるべき金額や交渉の方針を利害の対立する相手方に明らかにしてしまうと,交渉が相手方に一方的に有利となって,地方公共団体の財産上の利益や当事者としての有利に交渉を進める地位が不当に害されてしまうからである。 (イ) 渋谷区のβ・γ地区は,木造住宅が密集する地域(渋谷区のδ地区)に隣接し,災害時の大規模な一時集合場所が近隣に少なかったため,防災公園の整備が重要かつ緊急の課題であった。このような状況の下,本件土地は,β・γ地区において防災公園の候補地となり得る立地,広さ等の条件を備えていた。 そこで,被告において,防災公園の整備のほかに高齢者住宅等の福祉施設の建設に向けて,本件土地の権利者に対して用地取得の交渉を開始したものである。 本件従前決定の段階においては,被告と本件土地の複数の権利者との間で売買交渉が続けられており,いまだ本件土地の売買価格その他諸条件について合意には至っていない。このような売買交渉中の段階で,本件公文書が公開されて鑑定の内容及び鑑定評価額が明らかにされると,上記の売買交渉における準拠となるべき金額が知られることになって,被告は,契約当事者の立場として有利に交渉を進めることができなくなる。本件公文書の公開によって,上記の売買交渉に支障が生じることは明らかである。 また,取引の相手方は,いまだ交渉段階であるにもかかわらず,自らの財産の評価に関わる情報である鑑定評価額が買収する側である被告によって第三者に公開されれば,被告に対して不信,不快の念を抱くこと は容易に想像することができる。本件土地の権利者からすれば,被告に売却してもいない本件土地の評価額をその意思に反して公開されることになりかねず,本件土地の権利 に対して不信,不快の念を抱くこと は容易に想像することができる。本件土地の権利者からすれば,被告に売却してもいない本件土地の評価額をその意思に反して公開されることになりかねず,本件土地の権利者と被告との間の信頼関係が大きく損なわれることはいうまでもない。そうすると,被告は,当事者として円滑,有利に交渉を進めることができなくなり,本件土地を取得するためには,本件土地の権利者との信頼関係の再構築を迫られることになる。 さらに,本件土地の売買は飽くまでも任意の売買であり,本件土地の権利者は,買収に応じなければならない義務はなく,本件公文書の公開により鑑定評価額を知って,より高額での売買を希望することも十分にあり得る。そうすると,本件土地の売買交渉が長引くなど難航し,ひいては売買契約の成立が困難となる事態となりかねない。 (ウ) 以上のとおり,本件従前決定の当時に本件公文書を公開すれば,被告の財産上の利益や当事者として有利に交渉を進める地位が不当に害されるおそれが生じることは明らかであり,その結果,防災公園の整備が遅れて,緊急性の高い防災事業自体の適正な執行に支障が生じかねない。 β・γ地区において防災公園等の候補地に適した土地はなかなかなく,本件土地の売買交渉に支障が生じれば,防災事業等の適正な執行に支障が生じるおそれがある。 したがって,本件従前決定の当時,本件公文書に記載されている情報は本件条例6条6号イに掲げるおそれがある非公開情報に該当し,本件従前決定は適法である。 イ国家賠償法1条1項にいう違法がないこと(ア) 前記アのとおり,本件従前決定は適法であるところ,仮に本件従前決定が違法であるとしても,国家賠償法1条1項にいう違法はなく,被告に賠償責任は認められない。 (イ) ある行政処分について国家賠償法1条1項にい おり,本件従前決定は適法であるところ,仮に本件従前決定が違法であるとしても,国家賠償法1条1項にいう違法はなく,被告に賠償責任は認められない。 (イ) ある行政処分について国家賠償法1条1項にいう違法があるという ためには,当該処分が客観的に法令に違反しているというだけでは足りず,そのような法令違反を行った公務員が職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と当該処分をしたと認め得るような事情が認められる場合に限るとするのが合理的である(最高裁平成元年(オ)第930号,同年(オ)第1093号同5年3月11日第一小法廷判決・民集47巻4号2863頁参照)。 (ウ) 渋谷区長は,本件土地の売買交渉中であるから,契約当事者としての被告の立場が不当に害されるおそれがあることを考慮して,本件条例6条6号イに掲げるおそれがある非公開情報に該当すると判断したものであり,職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と当該処分をしたと認め得るような事情は認められない。 (エ) したがって,渋谷区長が本件従前決定をしたことに国家賠償法1条1項にいう違法はなく,原告が主張する精神的損害について検討するまでもなく,渋谷区に賠償責任は認められないというべきである。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)(本件変更決定後の本件決定の適法性(本件取消請求及び本件義務付け請求関係))について(1) 不動産鑑定業者の契印,社印及び代表取締役印の各印影(別表記載1(1),(5)及び2(1))及び不動産鑑定士の署名及び印影(別表記載1(2),(6)及び2(2))についてア認定事実証拠(甲15,16,乙8,9)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 (ア) 本件鑑定評価書①についてa 本件鑑定評価書①の3枚目には,5か所に印影が ))についてア認定事実証拠(甲15,16,乙8,9)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 (ア) 本件鑑定評価書①についてa 本件鑑定評価書①の3枚目には,5か所に印影があるところ,そのうち,上から1番目は契印,2番目は本件鑑定評価書①を作成した株 式会社P1(以下「P1社」という。)の社印,3番目は同社の代表取締役印により顕出されたものである。また,本件鑑定評価書①の最終頁には,3か所に印影があるところ,そのうち,上から1番目は社印,2番目は代表取締役印により顕出されたものである。 上記のうち,代表取締役印は,「代表取締役之印」と刻まれており,法務局に提出された印鑑であって,法務局からその印鑑の証明書の交付を請求することができるもの(商業登記法12条,20条参照)である。そして,この代表取締役印は,年間約120通の書類に押捺されているところ,これらの書類は,いずれも,同社において同社を代表する権限のある者が行うことが必要とされている行為に係る書類(不動産鑑定評価書,調査報告書,意見書,契約書,登記申請書等)である。 上記のうち,社印は,「株式会社P1之印」と刻まれており,上記の代表取締役印を押捺する年間約120通の書類に使用されている。 上記のうち,契印は,「契」と刻まれており,不動産鑑定評価書,調査報告書,意見書等の年間約100通の書類に押捺されている。この契印は,2通の書類が同一の内容で作成されたことの証として,その書類の偽造及び変造を防止するために,2通にまたがって押捺されるものである。 b 本件鑑定評価書①の3枚目には,「不動産鑑定士」の欄に,P1社の代表取締役であり,不動産鑑定士であるP2(以下「P1社代表者」という。)の署名が記載され,その名下には,同人の印鑑により顕出された印影 件鑑定評価書①の3枚目には,「不動産鑑定士」の欄に,P1社の代表取締役であり,不動産鑑定士であるP2(以下「P1社代表者」という。)の署名が記載され,その名下には,同人の印鑑により顕出された印影がある。また,本件鑑定評価書①の最終頁の上から3番目の印影は,上記の印鑑により顕出されたものである。 上記の印鑑は,「不動産鑑定士 P2」と刻まれており,同人が不動産鑑定士の資格に基づき作成する年間約100通の書類に押捺され ている。 c 前記aの代表取締役印,社印,契印及び前記bの印鑑は,いずれも,P1社代表者が,鍵の掛かる箱に入れて管理し,使用の都度,鍵を開けて印鑑を取り出した上で押捺しており,同人以外の者が押捺することはない。 dP1社において外部に対し広く交付するものとされている年間約200通の書類(領収書等)には,前記aの代表取締役印,社印,契印及び前記bの印鑑は用いられず,これらとは別の「取引使用印」が押捺されている。この印鑑は,鍵の掛かる箱には入れられておらず,同社の経理担当者等により随時使用されている。 (イ) 本件鑑定評価書②についてa 本件鑑定評価書②の3枚目には,3か所に印影があるところ,そのうち,上から1番目は,本件鑑定評価書②を作成した株式会社P3(以下「P3社」という。)の代表取締役印により顕出されたものである。 上記の印鑑は,中央に「代表取締役印」,その周りに同社の社名が刻まれており,法務局に提出された印鑑であって,法務局からその印鑑の証明書の交付を請求することができるものである。そして,この代表取締役印は,年間約500通の書類に押捺されているところ,これらの書類は,いずれも,同社において重要な書類とされている不動産鑑定評価書,契約書,請求書,申請書等の書類である。 上記の印鑑は,P3社の代 役印は,年間約500通の書類に押捺されているところ,これらの書類は,いずれも,同社において重要な書類とされている不動産鑑定評価書,契約書,請求書,申請書等の書類である。 上記の印鑑は,P3社の代表取締役であるP4(以下「P3社代表者」という。)が,箱に入れ,その箱を鍵の掛かる金庫に入れて管理し,使用の都度,金庫から取り出した上で押捺し,「押印簿」に押捺した年月日及び押捺した書類の記録を残している。 b 本件鑑定評価書②の3枚目には,「総括不動産鑑定士」の欄に,不 動産鑑定士であるP3社代表者の署名が記載され,その名下には,同人の印鑑により顕出された印影があり,「不動産鑑定士」の欄に,P3社に所属する別の不動産鑑定士の署名が記載され,その名下には,同人の印鑑により顕出された印影がある。 上記の印鑑は,いずれも,中央に「不動産鑑定士」,その左右に不動産鑑定士の氏名が刻まれており,箱に入れられ,鍵の掛かる金庫に入れられて管理されているところ,各不動産鑑定士が,使用の都度,その金庫から取り出した上で押捺し,押印簿に押捺した年月日及び押捺した書類の記録を残している。 cP3社において外部に対し広く交付するものとされている年間約100通の書類(受領書等)には,以上とは異なり,鍵の掛かる金庫に入れられていない印鑑が押捺されており,この印鑑は,同社の経理の担当者等により随時使用されている。 イ不動産鑑定業者の契印,社印及び代表取締役印の各印影(別表記載1(1),(5)及び2(1))について(ア) 本件条例6条3号アは,法人等に関する情報であって,公にすることにより,当該法人等の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるものを非公開情報として定めるところ,同条例が,公開請求に係る公文書を原則として公開しなければならない あって,公にすることにより,当該法人等の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるものを非公開情報として定めるところ,同条例が,公開請求に係る公文書を原則として公開しなければならない旨を定めること(6条の柱書き参照)などに照らすと,上記の非公開情報に当たるといえるためには,主観的に他人に知られたくない情報であるというのみでは足りず,情報を公開することにより,当該法人等の権利又は正当な利益を害するおそれが客観的に認められることが必要であると解される。 また,上記のおそれが客観的に認められるというためには,上記の権利等を害されることの単なる可能性があるというのみでは足りず,権利等を害されることの相当の蓋然性があることが求められるというべきであ る。 (イ) 前記アのとおり,本件公文書にある不動産鑑定業者の代表取締役印の各印影は,いずれも,法務局に提出され,法務局からその証明書の交付を請求することができる印鑑により顕出されたものである上,その印鑑は,鍵の掛かる箱又は鍵の掛かる金庫の中の箱に入れて管理され,使用の都度,不動産鑑定業者の代表者が取り出して押捺している。また,本件鑑定評価書①にあるP1社の社印及び契印の各印影は,代表取締役印と同様に管理され,使用の都度,P1社代表者が取り出して押捺している。そして,以上のように厳重に管理されているこれらの印鑑は,P1社及びP3社において重要な書類とされているものにのみ押捺されることとされているところ,その重要な書類とは,不動産鑑定評価書,調査報告書,意見書,契約書,登記申請書等であって,これらは,一般に,法人又は不動産鑑定業者の業務において重要性があるということができるものである。 そうすると,本件公文書にある不動産鑑定業者の契印,社印及び代表取締役印の各印影は,いずれも て,これらは,一般に,法人又は不動産鑑定業者の業務において重要性があるということができるものである。 そうすると,本件公文書にある不動産鑑定業者の契印,社印及び代表取締役印の各印影は,いずれも,これが広く公開されると,これを用いて文書の偽造がされることなどにより(なお,今日の電子機器の技術等をもってすれば,印影が公開された場合に,容易かつ精巧にそれが複製されるおそれがあることは明らかである。),当該不動産鑑定業者の権利又は正当な利益が害される相当の蓋然性があるということができる。 (ウ) 以上によれば,本件公文書にある不動産鑑定業者の契印,社印及び代表取締役印の各印影は,いずれも,本件条例6条3号本文にいう同号ア該当し,同号に定める非公開情報に当たるというべきである。 ウ不動産鑑定士の署名及び印影(別表記載1(2),(6)及び2(2))について(ア) 本件条例6条4号は,公にすることにより,人の生活又は財産を侵 害するおそれがある情報を非公開情報として定めるところ,前記イ(ア)に述べたところと同様に,上記の非公開情報に当たるといえるためには,情報を公開することにより,人の生活又は財産が侵害されるおそれが客観的に認められることが必要であり,人の生活又は財産が侵害されることの相当の蓋然性があることが求められるというべきである。 (イ) 前記アのとおり,本件公文書にある不動産鑑定士の名下の印影は,いずれも,不動産鑑定士がその資格に基づき作成する書類に押捺する印鑑により顕出されたものであって,その印鑑は,外部に対し広く交付するものとされている書類には用いられず,不動産鑑定業者の代表取締役印等と同様に,厳重に管理されている。このことに加えて,不動産の鑑定評価に関する法律39条2項は,鑑定評価書には,その不動産の鑑定評価に関与 されている書類には用いられず,不動産鑑定業者の代表取締役印等と同様に,厳重に管理されている。このことに加えて,不動産の鑑定評価に関する法律39条2項は,鑑定評価書には,その不動産の鑑定評価に関与した不動産鑑定士がその資格を表示して署名押印しなければならない旨を定めることも考慮すると,鑑定評価書である本件公文書にある不動産鑑定士の署名及び同人の印鑑により顕出された印影は,いずれも,これが広く公開されると,これを用いて鑑定評価書の偽造がされることなどにより,当該不動産鑑定士の権利又は正当な利益が害される相当の蓋然性があるということができる。 (ウ) 以上によれば,本件公文書にある不動産鑑定士の署名及び同人の印鑑により顕出された印影は,いずれも,本件条例6条4号に定める非公開情報に当たるというべきである。 (2) 本件土地の所有者個人の氏名(別表記載1(3)及び2(3))についてア証拠(甲15,16)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる.(ア) 本件鑑定評価書①の28頁には,「B.登記簿上の各筆の明細について」との標題で,本件土地(9筆)についての「所在」,「地目」,「登記簿面積」及び「所有者」として,本件土地の登記簿上の所在,地番, 地目,地積及び所有者が記載されているところ,そのうち,6筆について,それぞれ,共有持分4分の3を有する者と4分の1を有する者として登記簿に記録されている個人の氏名が記載されている。 (イ) 本件鑑定評価書②の1頁には,「Ⅱ.対象不動産の表示」との標題で,本件土地についての「所在・地番」,「地目」,「地積」及び「所有者」が記載されているところ,所有者としては,本件土地の一部の所有者として登記簿に記録されている個人の氏名に「外」を付け加えた記載がされている。 また,本件鑑定評価書② 地目」,「地積」及び「所有者」が記載されているところ,所有者としては,本件土地の一部の所有者として登記簿に記録されている個人の氏名に「外」を付け加えた記載がされている。 また,本件鑑定評価書②の3頁には,「Ⅷ.対象不動産の確認」「二. 権利の態様の確認」「1.所有権」「(1)所有者」として,本件土地の一部の所有者として登記簿に記録されている個人の氏名に「外」を付け加えた記載がされている。 そして,本件鑑定評価書②の27枚目(23頁の次の頁)には,「<土地表示一覧表>」との標題で,本件土地(9筆)についての「所在」,「地番」,「地目」,「地積(㎡)」及び「所有者」として,本件土地の登記簿上の所在,地番,地目,地積及び所有者が記載されているところ,そのうち,6筆について,それぞれ,共有持分4分の3を有する者と4分の1を有する者として登記簿に記録されている個人の氏名が記載されている。 イ被告は,本件公文書にある個人の氏名について,本件条例6条2号に定める非公開情報に当たる旨の主張をする。 そこで検討するに,まず,個人の氏名は,個人に関する情報で特定の個人を識別することができるものであることが明らかであるから,同号本文に該当する。 しかしながら,本件公文書は,本件土地の鑑定評価書であり,本件土地に係る情報として,本件公開請求がされる前である平成26年2月には, 被告が作成した「平成26年度渋谷区当初予算案の概要」中の「平成26年度当初予算案事業シート」に「α×地内」であることが,また,「α防災公園(仮称)整備位置図」に「整備地区」として線で囲まれた場所であることが,それぞれ記載されており,既に公にされていたこと(甲3の1~3,乙2,弁論の全趣旨)からすれば,これらの情報によって,本件土地の位置は特定し得る状況にあったというべ て線で囲まれた場所であることが,それぞれ記載されており,既に公にされていたこと(甲3の1~3,乙2,弁論の全趣旨)からすれば,これらの情報によって,本件土地の位置は特定し得る状況にあったというべきであるところ,前記アのとおり,本件公文書にある個人の氏名は,いずれも,本件土地の所有者として登記簿に記録されているものであるから,上記の個人の氏名は,本件土地の位置に関する上記の情報を基にして,登記官に対し,登記記録に記録されている事項の全部又は一部を証明した書面の交付を請求することにより,得ることが可能な情報であるということができる(不動産登記法119条1項。なお,本件公文書には,本件土地についての登記簿上の所在,地番,地目及び地積が記載され,これらの情報は本件変更決定により公開されているから,これらの情報を基にすれば,本件土地の登記簿上の所有者個人の氏名についての情報を得ることは容易である。)。 そうすると,本件公文書にある本件土地の所有者個人の氏名は,法令の規定により公にされている情報であるといえるから,本件条例6条2号ただし書にいう同号アに該当し,同号に定める非公開情報には当たらないことになるというべきである。 なお,被告は,本件公文書にある個人の氏名の情報が「編集加工による新しい情報」であり,同号アに該当しない旨の主張をするが,上記に述べたとおり,本件公文書にある個人の氏名は,いずれも登記簿に記録された本件土地の所有者がそのまま記載されているのであって,「編集加工」をされたものとはいえないから,上記の主張は,その前提を欠き,採用することはできない。 (3) 土地に関する情報(別表記載1(4)及び2(4)。本件取引事例事項)につ いてア認定事実証拠(甲15,16)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 ことはできない。 (3) 土地に関する情報(別表記載1(4)及び2(4)。本件取引事例事項)につ いてア認定事実証拠(甲15,16)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 (ア) 本件鑑定評価書①においては,本件土地の鑑定評価をするに当たり,「取引事例比較法による比準価格」と「基準地の標準価格と比準した価格[規準価格]」が算定されているところ(18頁参照),本件鑑定評価書①の33枚目(28頁の次の頁から数えて2枚目)には,上記取引事例比較法による比準価格の算定のための資料として,4件の事例が取り上げられ,それぞれの事例につき,本件取引事例事項(本件鑑定評価書①に係るもの)のほか,「個別的要因と標準化補正率」として当該事例における土地の形状等,「地域要因及び格差修正率」として「環境条件」,「行政的条件」,「街路条件」等といった種々の情報が記載されている。 (イ) 本件鑑定評価書②においては,本件土地の鑑定評価をするに当たり,取引事例比較法による比準価格,「収益還元法(土地残余法)による収益価格」等が算定されているところ(19~22頁参照),本件鑑定評価書②の29~31枚目(23頁の次の頁から数えて3~5枚目)及び40枚目(「履歴管理表」の次の頁であり,甲16においては省かれている。)には,上記取引事例比較法による比準価格の算定のための資料として,「資料1」から「資料3」まで及び「位置図」が添付されて5件の事例が取り上げられ,それぞれの事例につき,本件取引事例事項(本件鑑定評価書②に係るもの)のほか,「資料1」においては「備考」として当該事例における土地の形状等,「資料2」においては当該事例における取引価格から比準価格の算定の過程(取引価格に乗ずる修正率等),「資料3」においては「街路条件」,「環境条件」, ては「備考」として当該事例における土地の形状等,「資料2」においては当該事例における取引価格から比準価格の算定の過程(取引価格に乗ずる修正率等),「資料3」においては「街路条件」,「環境条件」,「行政的条件」等といった種々の情報が記載されている。 (ウ) 本件取引事例事項のうち,取引価格については,本件鑑定評価書①及び本件鑑定評価書②のいずれにおいても,1平方メートル当たりの価格が記載されている。 イ取引事例の土地の所有者が個人の場合について(ア) 本件取引事例事項のうち,取引価格以外のものは,取引がされた土地の所在,地積,取引時点等であって,そのいずれかが公開されると,登記簿等から得られる情報と照合することにより,特定の個人を識別することができるものであるといえるから,本件条例6条2号本文に該当する。 原告は,本件取引事例事項が公開されなければ,鑑定評価の根拠や正当性を検討することができず,それにより,住民の税金に関する無駄遣いを是認することにもつながることなどから,本件取引事例事項は同号ただし書にいう同号ウに該当し,同号に定める非公開情報に当たらない旨の主張をする。しかしながら,一般に,地方自治体の購入する不動産の鑑定評価の根拠や正当性を検討することが,その地方自治体の住民等の財産を保護することにつながり得るものであるとしても,前記アのとおり,本件鑑定評価書①及び本件鑑定評価書②のいずれにおいても,取引事例比較法による比準価格の算定のために取り上げられた事例における土地の形状等や,比準価格を算定するために取引価格に乗ずる修正率を定めるための諸条件に係る情報の多くは公開されている上,本件土地の鑑定評価の内容については,取引事例比較法による比準価格に関する資料のほかに非公開とされたものはなく,これら公開された情 ずる修正率を定めるための諸条件に係る情報の多くは公開されている上,本件土地の鑑定評価の内容については,取引事例比較法による比準価格に関する資料のほかに非公開とされたものはなく,これら公開された情報によって,本件土地の鑑定評価の根拠や正当性の検討をすることは可能であって,事例として取り上げられた取引をした特定の個人を識別することができる情報を公開するまでの必要があるとはいい難い。したがって,原告の上記の主張を採用することはできない。 以上のほか,本件取引事例事項のうち,取引価格以外のものについて,同号ただし書にいう同号アからウまでに該当するといえる事情は認められないから,上記の情報は,同号に定める非公開情報に当たるというべきである。 (イ) 他方,本件取引事例事項のうち,取引価格については,それが公開されたからといって,事例として取り上げられた取引がされた土地の当該取引における1平方メートル当たりの価格が明らかになるにすぎず,公にされている情報や,本件変更決定により公開された情報などの他の情報と照合することによっても,特定の個人を識別することができるものであるとはいい難いから,本件条例6条2号本文には該当せず,同号に定める非公開情報には当たらないというべきである。 なお,前記アのとおり,本件鑑定評価書①及び本件鑑定評価書②のいずれにおいても,比準価格の算定の過程が記載されており,取引価格に乗ずる修正率とこれを乗じた算定の結果である比準価格は既に公開されているから,これらを用いて,取引価格を計算し直すことができる。 ウ取引事例の土地の所有者が法人の場合について(ア) 本件取引事例事項のうち,取引価格以外のものは,取引がされた土地の所在,地積,取引時点等であって,そのいずれかが公開されると,登記簿等から得られる情報と照 土地の所有者が法人の場合について(ア) 本件取引事例事項のうち,取引価格以外のものは,取引がされた土地の所在,地積,取引時点等であって,そのいずれかが公開されると,登記簿等から得られる情報と照合することにより,取引をした特定の法人を識別することができる。そして,法人が不動産の取引をすることは,一般に,当該法人の意思に反してそれが公にされた場合に,当該法人の競争上の地位を害する相当の蓋然性があるものであるといえるから,本件条例6条3号本文にいう同号アに該当する。 原告は,本件取引事例事項が公開されなければ,鑑定評価の根拠や正当性を検討することができず,それにより,住民の税金に関する無駄遣いを是認することにもつながることなどから,本件取引事例事項は同号 ただし書に該当する旨の主張をするが,前記イ(ア)に述べたところと同様に,本件土地の鑑定評価の根拠や正当性の検討をするために,取引事例比較法による比準価格の算定に当たり事例として取り上げられた取引をした法人の競争上の地位を害するおそれを生じさせるまでのことをして,当該法人を識別することができる情報を公開する必要があるとはいい難いから,原告の上記の主張を採用することはできない。 以上によれば,本件取引事例事項のうち,取引価格以外のものは,同号に定める非公開情報に当たるというべきである。 (イ) 他方,本件取引事例事項のうち,取引価格については,それが公開されたからといって,事例として取り上げられた取引がされた土地の当該取引における1平方メートル当たりの価格が明らかになるにすぎず,公にされている情報や,本件変更決定により公開された情報などの他の情報と照合することによっても,取引をした特定の法人を識別することができるものであるとはいい難い。 そして,前記(ア)のとおり,本件取引事例 ている情報や,本件変更決定により公開された情報などの他の情報と照合することによっても,取引をした特定の法人を識別することができるものであるとはいい難い。 そして,前記(ア)のとおり,本件取引事例事項のうち取引価格以外のものは,本件条例6条3号に定める非公開情報に当たり,そのほか,本件変更決定により公開された情報を基にしても,事例として取り上げられた取引をした特定の法人を識別することはできない。また,前記イ(イ)に述べたとおり,本件公文書において既に公開されている情報を基にして,当該取引における1平方メートル当たりの価格を計算し直すことができる。 以上の事情の下においては,本件取引事例事項のうち,取引価格の情報が公開されても,事例として取り上げられた取引をした法人の競争上の地位を害する相当の蓋然性があるということはできない。そうすると,上記の取引価格については,本件条例6条3号本文にいう同号アには該当せず,同号に定める非公開情報に当たらないというべきである。 エ以上によれば,本件取引事例事項のうち,取引価格以外のものについては非公開情報に当たるが,取引価格については非公開情報に当たらないというべきである。 (4) まとめ以上によれば,本件変更決定後の本件決定のうち,非公開情報に当たらない個人の氏名(別表記載1(3)及び2(3))及び本件取引事例事項(別表記載1(4)及び2(4))のうちの取引価格を公開しない旨の部分(別紙公文書目録記載4の部分。以下,まとめて「違法部分」という。)には違法があり,その余の部分は適法である。 したがって,①本件訴えのうちの本件義務付け請求に係る部分のうち,本件変更決定によってもいまだ公開されていない部分から違法部分を除いたもの(別紙公文書目録記載5の部分)について,渋谷区長が公開する旨 したがって,①本件訴えのうちの本件義務付け請求に係る部分のうち,本件変更決定によってもいまだ公開されていない部分から違法部分を除いたもの(別紙公文書目録記載5の部分)について,渋谷区長が公開する旨の決定をすべき旨を命ずることを求めるものは,不適法であるから却下し(行政事件訴訟法37条の3第1項2号参照),②本件取消請求のうち,本件変更決定後の本件決定のうちの違法部分を公開しない旨の部分を取り消すことを求める部分は,理由があるから認容し,③本件義務付け請求のうち,違法部分について,渋谷区長が公開する旨の決定をすべき旨を命ずることを求める部分は,理由があるから認容し(同条5項参照),④本件取消請求のうち,その余の部分は,理由がないから棄却すべきである。 2 争点(2)(本件従前決定の違法性等(本件国家賠償請求関係))について(1) 前提事実に証拠(甲3,17,18,22,46,47,乙2)及び弁論の全趣旨を併せると,次の事実が認められる。 ア被告は,事業名を「α防災公園(仮称)整備」とする事業を計画し,平成26年度にその用地となる本件土地を取得して,平成28年度に防災公園を開設し,平成29年度に高齢者住宅等を開設することを予定していたところ,P1社及びP3社との間で本件土地の鑑定評価の業務を委託する 旨の契約を締結し,この契約に基づき,本件鑑定評価書①(平成26年3月10日付け)及び本件鑑定評価書②(同月14日付け)が作成された。 イ原告は,平成26年7月28日に本件公開請求をし,渋谷区長は,同年8月11日付けで本件従前決定をしたところ,本件従前決定の当時,被告は,本件土地の所有者らとの間で,本件土地を買い受ける旨の契約をいまだ締結していなかった。 ウ被告は,平成27年2月23日,本件土地を買い受ける旨の契約を締結し, ころ,本件従前決定の当時,被告は,本件土地の所有者らとの間で,本件土地を買い受ける旨の契約をいまだ締結していなかった。 ウ被告は,平成27年2月23日,本件土地を買い受ける旨の契約を締結し,同年3月4日,その売主に対して売買代金を支払った。 エ渋谷区長は,平成27年3月11日付けで,本件変更決定をした。 (2) 本件条例6条6号イは,実施機関が行う事業に関する情報であって,公にすることにより,契約又は交渉に係る事務に関し,実施機関の財産上の利益を不当に害するおそれがあるものを非公開情報として定めるところ,同条例が,公開請求に係る公文書を原則として公開しなければならない旨を定めること(6条の柱書き参照)などに照らすと,上記の非公開情報に当たるといえるためには,情報を公開することにより,上記のおそれが客観的に認められること,すなわち,実施機関の財産上の利益を不当に害する相当の蓋然性があることが求められるというべきである。 そこで検討するに,前記(1)のとおり,本件従前決定の当時,被告は,本件土地を買い受ける旨の契約をいまだ締結していなかったところ,その前後の事実経過も併せると,その当時においては,被告と本件土地の所有者らとの間で,本件土地の買収についての交渉を継続していたことが認められる。 そして,本件公文書(本件鑑定評価書①及び本件鑑定評価書②)は,いずれも,本件土地の鑑定評価をしたものであるから,これが本件土地の買収についての交渉を継続している間に公にされると,そのことが本件土地の所有者らに知れることとなった場合に,売買代金の額につき被告にとって有利に交渉を進めることが困難となるおそれがあった上,本件土地の所有者らが,鑑 定評価額が公になったこと自体に対する不快感等を示すことにより,被告にとって交渉を進めること自体が困難 被告にとって有利に交渉を進めることが困難となるおそれがあった上,本件土地の所有者らが,鑑 定評価額が公になったこと自体に対する不快感等を示すことにより,被告にとって交渉を進めること自体が困難となるおそれがあったというべきである。 そうすると,本件従前決定の当時においては,本件公文書を公にすることにより,実施機関の財産上の利益を不当に害する相当の蓋然性があったということができる。 以上によれば,本件従前決定の当時,本件公文書は本件条例6条6号イに定める非公開情報に当たり,本件従前決定は適法なものであったというべきである。 したがって,その余の点について判断するまでもなく,本件国家賠償請求は理由がないからこれを棄却すべきである。 3 結論よって,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第3部 裁判長裁判官舘 内 比佐志 裁判官大竹敬人 裁判官大畠崇史 (別紙)公文書目録 1 東京都渋谷区α×番1ほか8筆に係る(1) 株式会社P1作成の平成26年3月10日付けの不動産鑑定評価書(「発行番号鑑第○号」とあるもの。甲15はその抜粋の写し。)(2) 株式会社P3作成の平成26年3月14日付けの不動産鑑定評価書(「第○号」とあるもの。甲16はその抜粋の写し。) 2 前記1の公文書のうち,別表記載の部分 3 前記1の公文書のうち,前記2の部分を除く部分4(1) 前記1(1)の公文書のうち,別表記載1(3)の部分(2) 前記1(1)の公文書のうち,別表記載1(4)のうちの「取引価格:金額(単価)」の部分(3) 前記1(2)の公文書のうち,別表記載2(3)(4) 前記1(2)の公 記載1(3)の部分(2) 前記1(1)の公文書のうち,別表記載1(4)のうちの「取引価格:金額(単価)」の部分(3) 前記1(2)の公文書のうち,別表記載2(3)(4) 前記1(2)の公文書のうち,別表記載2(4)のうちの「金額(単価)」の部分 5 前記2の部分のうち,前記4の部分を除くもの以上

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る