令和4(モ)1308 文書提出命令の申立て

裁判年月日・裁判所
令和5年9月19日 大阪地方裁判所
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判決文本文12,767 文字)

主文 1 相手方は、本決定確定の日から2か月以内に、令和元年12月6日から9日まで、及び同月12日における検察官のCに対する取調べにおいてCの供述及びその状況を録音及び録画を同時に行う方法により記録した記録媒体のうち、以下⑴から⑸までの日時部分を記録した記録媒体を当裁判所に提出せよ。 ⑴ 同月6日午後7時17分から午後11時2分まで⑵ 同月7日午後5時20分から午後9時25分まで⑶ 同月8日午後5時20分から午後8時24分まで⑷ 同月9日午後5時17分から午後8時21分まで⑸ 同月12日午後6時4分から午後9時52分まで 2 申立人のその余の申立てをいずれも却下する。 理由 第1 申立ての趣旨相手方は、以下の準文書を提出せよ。 1 後記本件横領事件に関するC(以下「C」という。)の取調べ(令和元年12 月5日~同月24日)の録音録画に係る動画ファイルを記録した記録媒体(以下「C録音録画」という。) 2 後記本件横領事件に関するD(以下「D」という。)の取調べ(令和元年12月5日~同月25日)の録音録画に係る動画ファイルを記録した記録媒体(以下「D録音録画」という。) 3 後記本件横領事件に関する申立人の取調べ(令和元年12月16日~同月25日)の録音録画に係る動画ファイルを記録した記録媒体(以下「申立人録音録画」という)第2 申立ての理由及び相手方の意見 1 申立ての理由 申立ての理由は、別紙1「文書提出命令申立書」(令和4年12月1日付け)及 び別紙2「文書提出命令申立てについての意見書」(令和5年5月12日付け)のとおりである(ただし、添付書類を除く。)。 2 相手方の意見相手方の意見は、別紙3「文書提出命令申立てに対する意見 び別紙2「文書提出命令申立てについての意見書」(令和5年5月12日付け)のとおりである(ただし、添付書類を除く。)。 2 相手方の意見相手方の意見は、別紙3「文書提出命令申立てに対する意見書」(令和5年1月27日付け)、別紙4「文書提出命令申立てに対する意見書⑵」(同年7月3日付 け)及び別紙5「文書提出命令申立てに対する意見書⑶」(同年9月12日付け)のとおりである(ただし、添付書類を除く。)。 第3 事案の概要等 1 事案の概要基本事件は、学校法人明浄学院(以下「本件学院」という。)に対する21億円 の業務上横領事件(以下「本件横領事件」という。)の被疑者として逮捕、勾留され、業務上横領の公訴事実で起訴されたものの、第一審で無罪判決の確定した申立人(原告)が、検察官の違法な逮捕、勾留、起訴(以下、それぞれ「本件逮捕」などという。)及び違法な取調べにより損害を被ったとして、相手方(被告)に対し、国家賠償法1条1項に基づき、申立人に生じた損害78億7276万178 0円のうち7億7000万円(損害の一部である7億円及び弁護士費用7000万円)及びこれに対する本件横領事件の起訴の日である令和元年12月25日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 基本事件における責任論についての主要な争点は、国家賠償法上、①検察官に よる本件起訴が違法か、②検察官による本件逮捕、勾留が違法か、③申立人に対する取調べが違法か、という点である。争点①、②との関連で検察官のC、Dに対する取調べにおける供述の信用性評価、争点③との関連で検察官の申立人に対する取調べが申立人の黙秘権及び弁護人依頼権を侵害するものであるか、不当な利益誘導であるかという点 との関連で検察官のC、Dに対する取調べにおける供述の信用性評価、争点③との関連で検察官の申立人に対する取調べが申立人の黙秘権及び弁護人依頼権を侵害するものであるか、不当な利益誘導であるかという点について当事者間に争いがある。申立人は、検察官の C、D及び申立人に対する取調べの具体的状況及び内容を証明するため、申立て の趣旨記載の準文書につき本件申立てをした。 2 一件記録によれば、次の各事実が認められる。 ⑴ 本件横領事件本件横領事件の公訴事実の概要は、本件学院理事長としてその業務全般を統括し本件学院の資産を適切に保管管理するなどの業務に従事していたE(以下 「E」という。)、不動産の管理等を行う株式会社ティー・ワイエフ及び株式会社ピアグレースの各代表取締役を務めていたD、不動産の仲介業等を行う株式会社サン企画の代表取締役を務めていたF、前記サン企画顧問の肩書で活動していたG、不動産の売買等を行う株式会社プレサンスリアルエステートの代表取締役を務めていたC、経営コンサルタント事業等を行う株式会社スコーレメ ディアの代表取締役を務めていたHら並びに不動産の売買等を行う株式会社プレサンスコーポレーションの代表取締役を務めていた申立人が、共謀の上、平成29年7月6日頃、大阪市a区bにある本件学院所有の土地(以下「本件土地」という。)につき、本件学院を売主、前記ピアグレースを買主、売買代金を31億9635万1000円とする売買契約を締結させ、同月6日、前記ピア グレースから本件学院名義の預金口座に、同売買契約の手付金として21億円の振込入金をさせ、これをEが本件学院のために業務上預かり保管中、同人らの用途に充てる目的で、前記21億円を、同口座から前記サン企画名義の預金口座、前記スコーレメディア名義の預金口 金として21億円の振込入金をさせ、これをEが本件学院のために業務上預かり保管中、同人らの用途に充てる目的で、前記21億円を、同口座から前記サン企画名義の預金口座、前記スコーレメディア名義の預金口座、前記ティー・ワイエフの預金口座に順次振込送金し、もって横領したというものである。 ⑵ C、D及び申立人の逮捕勾留等令和元年12月5日、C及びDは、Eらとともに本件横領事件の被疑者として通常逮捕され、同月6日から勾留された。逮捕、勾留中の取調べは、CについてはI検事(以下「I検事」という。)、DについてはJ検事(以下「J検事」という。)が担当した。申立人も、同月16日、Eらと共謀したとして、本件横 領事件の被疑者として通常逮捕され、同月17日から勾留された。申立人の逮 捕、勾留中の取調べはK検事(以下「K検事」という。)が担当した。 ⑶ C及びDの供述経過Eは、申立人がその個人資産から支出した18億円を元に本件学院の経営権を買収し、後に本件土地に係る売買契約の手付金でこれを返済していたところ、申立人の刑事責任については、申立人とEらとの共謀の有無、中でも申立人が 18億円の貸付先がE個人であると認識していたかが問題となった。 この点、Cは、逮捕後の当初の取調べでは申立人に対し18億円の貸付先がE個人である旨の説明をしておらず、使途につき再建費用と説明したと供述したが、勾留後の同月9日以降の取調べでは、申立人に対して貸付先がE個人である旨の説明をしたと供述した。 Dは、逮捕後の当初の取調べでは申立人に対し貸付先がE個人である旨の説明をしていなかったと供述したが、勾留後の同月8日の取調べでは、申立人に対して貸付先がE個人である旨の説明をしたと供述した。また、Dは、同月16日の取調べでは、J検事に対し、 先がE個人である旨の説明をしていなかったと供述したが、勾留後の同月8日の取調べでは、申立人に対して貸付先がE個人である旨の説明をしたと供述した。また、Dは、同月16日の取調べでは、J検事に対し、申立人が本件横領事件に関与したとする従前の供述を撤回したいと申し出たが、J検事は供述内容を変更する旨の供述調 書は作成しなかった。 ⑷ 公訴提起と第1審公判手続の帰趨申立人は同月25日に本件横領事件における共謀に加担したという公訴事実で起訴され、第1審の公判において、検察官は、申立人において、18億円がE個人に貸し付けられ、Eらが本件学院の理事に就任するための買収資金とし て使われることや、本件土地の売却時の手付金から返済されることを認識していた、つまり、E個人の貸金債務を本件学院の資産によって返済しようとしていることを認識していたから、業務上横領の故意及び共謀が認められると主張し、他方、弁護人は、申立人は18億円については再建費用として本件学院に貸し付けられると認識していたから、故意も共謀も認められないと主張した。 令和3年10月28日、大阪地裁は申立人に対し無罪の判決を宣告し、同年 11月12日、同判決は確定した。 ⑸ 申立人とCの間の和解申立人は、令和4年頃、Cを被告として、当庁に対し、損害賠償請求を求める民事訴訟を提起したところ(当庁令和4年(ワ)第3598号事件。以下、「別件訴訟」という。)、同事件については、令和5年3月24日に訴訟上の和 解が成立した。同和解においては、Cは、基本事件でのC録音録画の証拠採用について、前向きに検討し、反対しないこと、その際には、申立人が、①顔のモザイク、②声の加工、③プライバシー情報を出さないこと、④報道機関に実名報道を避ける旨を申し入れること等、Cの 録画の証拠採用について、前向きに検討し、反対しないこと、その際には、申立人が、①顔のモザイク、②声の加工、③プライバシー情報を出さないこと、④報道機関に実名報道を避ける旨を申し入れること等、Cのプライバシーの保護に最大限配慮することを確認する旨がその内容とされている。 ⑹ 基本事件における検察官のC、D及び申立人に対する取調べに関する当事者の主張ア申立人(原告)の主張Cは逮捕当初、申立人の関与につき否定していたが、脅迫行為や机をたたく等のI検事の違法な取調べによって検察官に迎合し申立人に貸付先がE個 人である旨の説明をしたと供述するに至った。Cの供述は信用性がないものであるから、本件横領事件について申立人の逮捕当初から申立人の嫌疑は存在していなかった。 また、Dも逮捕当初、申立人に対して本件学院に対する貸付であると説明していたと供述していたが、J検事の脅迫行為や利益誘導を行う等の違法な 取調べによって申立人が本件横領事件に関与したとの供述をするに至った。 Dの供述は信用性がないものであるから、本件横領事件について申立人の逮捕当初から申立人の嫌疑は存在していなかった。 申立人の取調べを担当していたK検事は、弁護人との接見内容を聞き出そうとして秘密交通権を侵害したほか、弁護人の弁護方針を批判し、弁護人の 交代を勧めて弁護人選任権を侵害し、さらに、不正な利益誘導を行うなど違 法な取調べをした。 イ相手方(被告)の主張Cの供述の重要部分は証拠物によって裏付けられており、事実関係に照らし合理的かつ自然なものである。供述の変遷についても、逮捕、勾留当初は口裏合わせ工作の影響により申立人をかばう供述をしていたCが、I検事の説 得によって真実の供述をするに至ったと評価することが十分可能なもので 然なものである。供述の変遷についても、逮捕、勾留当初は口裏合わせ工作の影響により申立人をかばう供述をしていたCが、I検事の説 得によって真実の供述をするに至ったと評価することが十分可能なものであった。 Dの供述についても、取調べにおけるJ検事の発言は脅迫や利益誘導と評価できるものでもない。供述の変遷についても、当初はプレサンスに忖度して申立人をかばう供述をしていたものの、J検事の説得によって正直に話す ことを決意したためであると評価できるものであった。 また、K検事の取調べにおける発言は、前後の発言内容や発言がされるに至った経緯を踏まえれば黙秘権、弁護人依頼権の侵害や不正な利益誘導とは評価できず、違法な取調べがあったとは言えない。 ⑺ なお、C録音録画、D録音録画、申立人録音録画が存在し、これを相手方が 所持することについては当事者間に争いはない。 第4 当裁判所の判断 1 証明すべき事実⑴ 証明すべき事実については、裁判所が証拠としての必要性を判断することを可能ならしめるとともに、相手方の防御権を保障させるとの趣旨からできる限 り具体的であることが望ましいが、裁判所における証拠調べの必要性や提出義務の有無の判断や相手方の防御に特段の支障がないのであれば、ある程度概括的な主張も許されるものと解される。 ⑵ 本件においては、基本事件の責任論の各争点(①検察官による本件起訴が違法か、②検察官による本件逮捕、勾留が違法か、③申立人に対する取調べが違 法か)について、当事者双方から詳細な主張がされており、かかる争点に関す る主張を踏まえれば、申立人の主張する「当該記録に係る取調べの具体的状況及び内容」という証明すべき事実と上記各争点との関係や位置付けなどは容易に理解し得るものであって、裁判所が証 点に関す る主張を踏まえれば、申立人の主張する「当該記録に係る取調べの具体的状況及び内容」という証明すべき事実と上記各争点との関係や位置付けなどは容易に理解し得るものであって、裁判所が証拠調べの必要性や提出義務の有無についての判断を行うことにも特段の支障はない。 相手方は、申立人がいかなる事実を逮捕及び勾留の違法性、公訴提起の違法 性を基礎付けるものと主張するのかが定かではないため証拠調べの必要性につき適切な反論ができず、防御権を侵害するおそれがあるとか、申立人の主張に係る非言語的要素が明らかにされていないから、証明すべき事実の特定を欠いていると主張する。しかしながら、前述のとおり、基本事件における当事者双方の主張を踏まえると、申立人の主張に係る証明すべき事実と基本事件の各争 点に関する主張との関係は明らかであるし、問題とされる取調べの箇所やその内容についても基本事件において双方から主張がされており、どのような非言語的要素が問題にされているかについても言及がされているのであるから、その防御の対象が特定されていないともいえず、相手方の防御権を侵害するおそれがあるとはいえない。したがって、相手方の上記主張は採用できない。 ⑶ よって、本件においては、申立人の主張に係る証明すべき事実の記載について具体性に欠けるとは認められない。 2 証拠調べの必要性⑴ C録音録画についてア基本事件においては、I検事の取調べを経たCの供述の信用性が争われて いるところ、申立人は、令和元年12月6日から8日までのCに対する取調べではI検事が恫喝や机をたたく行為を行っており、同9日の取調べではI検事が決して穏やかとはいえない厳しい口調であったこと、同12日の取調べでは再度I検事が恫喝を行っていたことなど、自白を強 る取調べではI検事が恫喝や机をたたく行為を行っており、同9日の取調べではI検事が決して穏やかとはいえない厳しい口調であったこと、同12日の取調べでは再度I検事が恫喝を行っていたことなど、自白を強要したり利益誘導したりした違法な取調べがあったと主張する。このような違法な取調べが行 われていたことの立証のためには、取調べにおけるI検事の発言内容だけに 留まらず、その口調や動作といった非言語的な要素も、その発言内容と一体となって、取調べを受けるCを畏怖させ、その供述態度に影響を及ぼしかねないものというべきであるから、Cの供述の信用性判断において重要であるといえる。そうすると、このような非言語的な要素が客観的な形で記録されているC録音録画は証明すべき事実(要証事実)との関係で最も適切な証拠 であると認められるし、人証や反訳書による代替立証も困難であると言わざるを得ない。 よって、C録音録画のうち、令和元年12月6日から9日まで及び同12日分のうち上述の非言語的要素が指摘されている部分について取り調べる必要性は認められるというべきである。そして、上述の各日のうち、非言語的要 素について基本事件の準備書面において指摘がある部分を含む取調べの時間帯は主文1⑴から⑸までに記載の時間帯である。 イ申立人は、一連の取調べの流れを把握しなければCに対する違法な取調べの全体像は把握できないことから、C録音録画の全てについて取調べの必要があると主張する。しかしながら、前記で必要性を認めた部分以外のCに対 する取調べについては、そもそも何らの指摘もしていないか、指摘をしていたとしてもCの供述調書の信用性判断に影響すると認められるI検事の非言語的要素の主張はなく、その取調べにおける発言内容は相手方が提出したI検事のCに対す もそも何らの指摘もしていないか、指摘をしていたとしてもCの供述調書の信用性判断に影響すると認められるI検事の非言語的要素の主張はなく、その取調べにおける発言内容は相手方が提出したI検事のCに対する取調べにおけるやりとりを反訳した報告書(乙B25)や当事者間に争いのないやりとりの内容から明らかであって、これに加えてC 録音録画の全体を取り調べないとCに対する取調べの全体像が把握できないものではない。したがって、申立人の上記主張は採用できない。 ⑵ D録音録画について申立人は基本事件において、J検事が、Dに対し、その取調べで、このままではEと同等の刑になる、申立人の関与を認めれば量刑が変わる等と申し向け て、申立人が本件横領事件に関与したとの供述をさせたことが利益誘導に当た り、また、Dのした申立人に有利な供述や供述撤回を録取せずに隠蔽を図ったことから、同取調べは違法であると主張し、これを立証するためにD録音録画の取調べが必要であるとする。 しかしながら、基本事件において相手方が提出したJ検事のDに対する取調べにおけるやりとりを反訳した報告書(乙B36)によれば、申立人の上記主 張に係る部分の発言内容は明らかになっているほか、反訳の提出されていない部分については、相手方は申立人の主張する発言内容を争っていない。よって、申立人の主張のうち、利益誘導の有無については上記取調べにおける具体的な発言内容を評価すれば足り、また、Dの供述の変遷後に調書が作成されなかったことは前提事実⑶に記載のとおりで当事者間に争いがないのであって、D録 音録画を取り調べる必要性があると認めるに足りない。 申立人は基本事件において、利益誘導の有無については、取調べにおけるDの表情等や態度、J検事の態度も判断の要素である旨主張してい て、D録 音録画を取り調べる必要性があると認めるに足りない。 申立人は基本事件において、利益誘導の有無については、取調べにおけるDの表情等や態度、J検事の態度も判断の要素である旨主張しているが、申立人の主張の当否を判断するにあたっては上述のとおり取調べにおける具体的な発言内容及びDの供述の変遷後に調書が作成されなかったことにつき評価をすれ ば足りるのであるから、これに加えてDの表情等といった非言語的要素を立証する必要性は認められない。 よって、D録音録画についての申立ては理由がない。 ⑶ 申立人録音録画について申立人は基本事件において、K検事が、申立人と弁護人との接見内容を聞き 出そうとして秘密交通権を侵害したほか、弁護人の弁護方針を批判し、弁護人の交代を勧めて弁護人選任権を侵害し、さらに、否認すれば裁判が長引く、事実を認めれば執行猶予判決になる可能性がある等と申し向けて、不正な利益誘導を行うなど、申立人に対する取調べは違法であると主張し、これを立証するために申立人録音録画の取調べが必要であるとする。 しかしながら、基本事件において相手方が提出したK検事の申立人に対する 取調べにおけるやりとりを反訳した報告書(乙B41)によれば、申立人の上記主張に係る部分の発言内容は明らかになっており、秘密交通権の侵害、弁護人選任権の侵害、不正な利益誘導の有無のいずれについても、上記取調べにおける具体的な発言内容を評価すれば足りるのであるから、これに加えて非言語的要素を立証する必要性は認められず、申立人録音録画を取り調べる必要性が あると認めるに足りない。 よって、原告録音録画についての申立ては理由がない。 3 C録音録画の民訴法220条3号後段該当性⑴ 文書提出命令の申立てに係る文書が法律関係 り調べる必要性が あると認めるに足りない。 よって、原告録音録画についての申立ては理由がない。 3 C録音録画の民訴法220条3号後段該当性⑴ 文書提出命令の申立てに係る文書が法律関係文書に該当するか否かについては、民訴法220条3号後段の文言及び沿革に照らし、当該文書の記載内容や その作成の経緯及び目的等を参酌して判断するのが相当である(最高裁令和元年(許)第11号同2年3月24第三小法廷決定・民集74巻3号455頁参照)。 この点、C録音録画は、刑訴法301条の2第1項3号により作成が義務付けられた検察官のCに対する取調べの機会の開始から終了に至るまでの間にお けるCの供述及びその状況を録音・録画したものであるところ、同条の趣旨は被疑者・被告人の供述の任意性その他の事項についての的確な立証を担保するとともに取調べの適正な実施に資することにある。そうであるところ、本件のように、後に至って当該取調べが不適正で違法であるとして提起された国家賠償訴訟は、同条に基づく録音録画を利用することが有用な訴訟類型であるとい える。 また、本件においては、C録音録画は、Cの供述の信用性の重要な判断資料となるもので、Cの供述は、申立人が本件横領事件の共謀に関与したことを立証する主要な証拠の一つであったから、C録音録画もCの供述と一体となって、申立人を本件横領事件に加担したという公訴事実で公訴提起するかどうかを決 める重要な判断資料であったといえる。このように、本件では、C録音録画は、 検察官において、申立人に対して公訴提起し、申立人を被告人の地位に置くという法律関係を生じさせる判断に当たり、重要な判断資料であったことが認められる。 以上からすれば、C録音録画は、民訴法220条3号後段における挙証者 に対して公訴提起し、申立人を被告人の地位に置くという法律関係を生じさせる判断に当たり、重要な判断資料であったことが認められる。 以上からすれば、C録音録画は、民訴法220条3号後段における挙証者と文書の所持者との間の法律関係について作成されたものと認めるのが相当であ る。 ⑵ これに対し、相手方は、取調べで供述を得ることや、供述調書を作成することは任意捜査と位置付けられているから、取調べや供述調書の作成により直ちに捜査機関と被疑者との間に権利義務関係が生じるものではなく、それは取調べの録音録画についても同様である、供述調書や録音録画媒体が法律関係文書 に該当するのは強制捜査における令状発付の判断に直接の影響を及ぼす事項が記載されており、かつ、法律の規定に従って疎明資料とされた場合に限られる、公訴提起があったこと自体から被告人と捜査機関の間に権利義務関係が生じるものとは解されないと主張する。 しかしながら、捜査機関の取調べによって直ちに権利義務関係が生じないと しても、公訴提起によって申立人は刑事事件の被告人としての地位におかれるのであり、申立人において刑事法上の法律関係が生じたことは否定し難い。また、前記のとおり、ある文書が法律関係文書に該当するか否かについては、民訴法220条3号後段の文言及び沿革に照らし、当該文書の記載内容やその作成の経緯及び目的等を参酌して判断すべきものであり、令状発付の場面以外に ついて一律に供述調書や録音録画媒体の法律関係文書該当性が否定されるものではない。したがって、相手方の主張は採用できない。 4 C録音録画を提出しないことについて、保管検察官の裁量権の濫用又は逸脱がないか否か相手方は、C録音録画が民訴法220条3号後段の準文書に該当するとしても、 C録音録画は きない。 4 C録音録画を提出しないことについて、保管検察官の裁量権の濫用又は逸脱がないか否か相手方は、C録音録画が民訴法220条3号後段の準文書に該当するとしても、 C録音録画は刑事関係書類であり、本件横領事件の刑事事件の公判に提出された 記録(C録音録画のうち、令和元年12月9日午後5時39分47秒から午後6時27分58秒までを記録したもの。以下、「公判提出部分」という。)については刑訴法53条、刑事確定訴訟記録法4条により、C録音録画のうち、公判提出部分を除いた部分(以下「公判不提出部分」という。ただし、前記2で取調べの必要性を認めた部分に限る。)については刑訴法47条により、提出義務がないと 主張する。 ⑴ 公判提出部分についてア刑訴法53条によれば、何人も、被告事件の終結後、訴訟記録を閲覧することができることとされているが、無制限な記録の公開を許すと被告人保護の見地などから弊害が生ずることに留意する必要があり、刑事確定訴訟記録 法4条2項各号に該当する場合には閲覧を許さないものとされている。 イ本件の公判提出部分は、刑事確定訴訟記録法4条2項1、2、3又は6号に該当しないことは明らかである。また、公判提出部分は、本件横領事件の刑事事件の公判廷において取調べ済みであることや、別件訴訟の訴訟上の和解において、CがC録音録画の証拠採用に反対しないこと及び申立人がCの プライバシーに最大限配慮することを確認していることからすれば、基本事件において公判提出部分が取り調べられたとしても、Cの改善更生を著しく妨げたり、Cや関係人の名誉又は生活の平穏を著しく害したりするおそれは認められず、同項4号又は5号にも該当しない。 相手方は、刑事確定訴訟記録法の規定に照らして閲覧制限事由があると 更生を著しく妨げたり、Cや関係人の名誉又は生活の平穏を著しく害したりするおそれは認められず、同項4号又は5号にも該当しない。 相手方は、刑事確定訴訟記録法の規定に照らして閲覧制限事由があるとか、 本件申立てが認められることにより「犯人の改善及び更生を妨げ、又は関係人の名誉若しくは生活の平穏を害する行為」をする恐れがあると認められる相当の理由がある等と主張するが、上述に照らし、採用の限りではない。 ウそうすると、本件の公判提出部分が民訴訟220条3号後段の準文書に該当することは前記3のとおりである上に、本件の公判提出部分は刑事確定訴 訟記録法4条2項各号にも該当しないのであるから、相手方に提出義務を認 めるのに支障はない。 ⑵ 公判不提出部分についてア C録音録画のうち、公判不提出部分は刑訴法47条の「訴訟に関する書類」に該当する。そして、公判不提出部分が法律関係文書に該当すれば、公判不提出部分が同条所定の「訴訟に関する書類」に該当するとしても、その保管 者による提出の拒否が当該保管者の有する裁量権の範囲を逸脱し又は濫用するものである場合には、裁判所は、その提出を命ずることができるとするのが相当である(最高裁平成15年(許)第40号同16年5月25日第三小法廷決定・民集58巻5号1135頁参照)。 イ公判不提出部分については、前記2⑴アのとおり、検察官がCに対する取 調べにおいて、机を叩く、恫喝する等の非言語的要素があったと指摘されており、基本事件においてこれを取り調べる必要性は高い。また、Cは、別件訴訟の訴訟上の和解において、C録音録画が公になることについて同意し,申立人もCのプライバシーの保護について最大限配慮することを確認しているのであって、被告人、被疑者及び関係人の名誉、プライバ 別件訴訟の訴訟上の和解において、C録音録画が公になることについて同意し,申立人もCのプライバシーの保護について最大限配慮することを確認しているのであって、被告人、被疑者及び関係人の名誉、プライバシーの侵害のお それがあるともいえない。さらに、本件横領事件における被告人のほとんどは有罪判決が確定していること、基本事件において公判不提出部分についての反訳が記載された報告書が提出され、詳細に主張の中で引用されていることからすれば、C録音録画が開示されたからといって本件横領事件の捜査、公判に不当な影響を与えるおそれはなく、C録音録画を公表した場合に他に 何らかの支障が生じるおそれをうかがわせる事情も見当たらない。 ウこれに対し、相手方は、別件訴訟の訴訟上の和解の記載内容を過大評価すべきではなく、Cの名誉・プライバシー等に対する配慮が必要であるとか、相手方が無条件に証拠申出を行えば、Cの名誉・プライバシー等を侵害する可能性が極めて高い、国民の捜査機関への協力確保が困難になるなどと主張 する。しかし、別件訴訟が訴訟上の和解手続によっていることからすれば、 Cにおいては、その合意内容の利害得失を十分に検討する機会があったものと考えられる。そして、Cは、申立人がCのプライバシーに最大限配慮する限りにおいては、C録音録画の証拠採用に反対しないとしているのであるから、Cはプライバシーの保護についての列記された以上の具体的措置を申立人に委ねているものと解すべく、相手方に公判不提出部分の提出を命ずるこ とが、Cの名誉・プライバシーの侵害につながるものとは認められない。また、公判不提出部分の提出を命じたとしても国民の捜査機関への協力確保が困難になるとは認められない。 また、相手方は、本件申立てが、訴訟上の権能を濫用す ーの侵害につながるものとは認められない。また、公判不提出部分の提出を命じたとしても国民の捜査機関への協力確保が困難になるとは認められない。 また、相手方は、本件申立てが、訴訟上の権能を濫用するものであるとも主張する。しかし、申立人が相手方の提案する任意提出の条件を受諾しない としても、申立人において受諾すべき義務もない上に、このことは、相当と考える任意提出の条件について当事者間に見解の相違があったということを意味するにすぎない。申立人が別件訴訟でCのプライバシーの保護について最大限配慮することを確認していることからしても、本件申立てが申立人において訴訟上の権能を濫用するものと認めることはできない。 エよって、C録音録画のうち公判不提出部分については取調べの必要性が高い反面、開示による弊害があるとは認められないから、公判不提出部分の提出を拒否することは、保管検察官の裁量権の範囲を逸脱し又は濫用するものというべきである。 5 以上によれば、本件申立てについては、主文第1項掲記の限度で理由があるか ら、この限度でこれを認容し、その余は、証拠調べの必要性を欠くから、却下することとして、主文のとおり決定する。 令和5年9月19日大阪地方裁判所第12民事部 裁判長裁判官小田真治 裁判官大谷智彦 裁判官伊藤佳子 (別紙1~5の掲載省略)

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