主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 控訴人(1) 原判決の主文第1項を取り消す。 (2) 原判決の主文第1項に係る被控訴人の請求を棄却する。 (3) 訴訟費用は,第1,2審を通じて,被控訴人の負担とする。 2 被控訴人主文と同旨第2 事案の概要等 1 事案の概要(1) 被控訴人は,富山県情報公開条例(昭和61年9月30日条例第51号。以下「本条例」という。)に基づき,控訴人に対し,富山県の富山土木事務所,魚津土木事務所及び富山農地林務事務所と株式会社甲との間の取引等に関する公文書について開示を請求したところ,控訴人は,平成11年1月26日,一部の公文書については,本条例10条3号(法人等事業活動情報)に該当するとの理由で公文書を開示しない旨の公文書非開示決定(以下「本件非開示決定」という。)をし,また,同日,一部の公文書については存在しない旨の通知(以下「本件各不存在通知」という。)をした。 (2) 本件は,上記(1)の争いのない事実関係の下で,被控訴人が,控訴人に対して,本件非開示決定のうち,① 物品購入に係る当該物品の品質・規格,数量及び単価に関する情報,② 納入業者の名称が識別され得る情報(債権者名,納入者氏名,請求者名,支払先名,債主コード,住所及び印影)及び③ 納入業者の取引金融機関に関する情報(取引金融機関名,預金種別,口座番号及び口座名義人)を非開示とした処分の取消しを求めるとともに,本件各不存在通知の取消しを求めた事案の控訴審である。 (3) 原審は,被控 引金融機関に関する情報(取引金融機関名,預金種別,口座番号及び口座名義人)を非開示とした処分の取消しを求めるとともに,本件各不存在通知の取消しを求めた事案の控訴審である。 (3) 原審は,被控訴人の請求のうち,本件非開示決定についての取消請求を認容し(原判決主文第1項),本件各不存在通知の取消請求を棄却した。原判決主文第1項を不服とする控訴人が本件控訴に及んだ。 なお,被控訴人は原判決に対する不服申立てをしていないため,原審が本件各不存在通知の取消請求を棄却した部分については,当審の審理の対象とならない。 2 本条例の定め及び前提となる事実(1) 本条例の定め次のとおり補正するほかは,原判決の「事実及び理由」の第2の1に記載のとおりであるから,これを引用する。 (原判決の補正)ア原判決3頁1行目と2行目の間に,次のとおり付加する。 「(2) 実施機関本条例2条3項は,本条例における実施機関を,知事,教育委員会,選挙管理委員会,人事委員会,監査委員,地方労働委員会,収用委員会,海区漁業調整委員会,内水面漁場管理委員会及び公営企業管理者とする旨定めている。 (3) 公文書の開示請求権者本条例6条1項は,富山県内に住所を有する個人並びに富山県内に事務所又は事業所を有する個人及び法人その他の団体は,実施機関に対し,公文書の開示を請求することができるものと定めている。」イ原判決3頁2行目の「(2) 公文書の非開示事由」を「(4) 公文書の非開示事由」と改める。 ウ原判決3頁21行目の「(3) 理由付記」を「(5) 理由付記」と改める。 (2) 前提となる事実(当事者間に争いのない事実及び証拠等によって容易に認められる事実)次 改める。 ウ原判決3頁21行目の「(3) 理由付記」を「(5) 理由付記」と改める。 (2) 前提となる事実(当事者間に争いのない事実及び証拠等によって容易に認められる事実)次のとおり補正するほかは,原判決の「事実及び理由」の第2の2(1)ないし(4)に記載のとおりであるから,これを引用する。 (原判決の補正)ア原判決4頁6行目と7行目の間に,次のとおり付加する。 「ウ株式会社甲(以下「甲」という。)は,事務用品等の小売販売を業とする株式会社であり,富山県の富山土木事務所等に対して,事務用品の納入をしていた(弁論の全趣旨)。」イ原判決5頁11行目の「物品購入に係る当該物品の品質・規格,数量及び単価に関する情報」の次に「(以下,これらの情報を総称して「単価等情報」という。)」と付加する。 ウ原判決5頁12,13行目の「納入業者の名称が識別され得る情報(債権者名,納入者氏名,請求者名,支払先名,債主コード,住所及び印影)」の次に「(以下,これらの情報を総称して「債権者名等情報」という。)」と付加する。 エ原判決5頁14,15行目の「納入業者の取引金融機関に関する情報(取引金融機関名,預金種別,口座番号及び口座名義人)」の次に「(以下,これらの情報を総称して「取引金融機関情報」という。)」と付加する。 オ原判決5頁21,22行目の「不適法却下した。」を「不適法却下した(甲4)。」と改める。 3 当審における争点及び当事者の主張次のとおり付加するほかは,原判決の「事実及び理由」の第2の3の(4)及び(5)(原判決8頁6行目から14頁16行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 (当審における控訴人の補充主張)(1) 単価等情報について び理由」の第2の3の(4)及び(5)(原判決8頁6行目から14頁16行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 (当審における控訴人の補充主張)(1) 単価等情報について甲のような官庁への納入業者の場合は,見積りや入札が必要であり,同業者間の競争が激しい。しかも,甲の扱う商品は,事務用品という汎用品であって,発注者側において,その品質規格が指定されているものである。このような場合,価格がほとんど唯一の競争手段であることは明らかである。すなわち,物品を製造することなく,単に販売するにすぎない納入業者にとって,そのノウハウは販売価格を如何にするかに限られており,材質・機材の調達,加工方法,必要な技術の有無等,様々なノウハウの積み重ねの結果として価格が決定されるサービスや工事等の価格とは性格が異なるのである。 甲のような文具小売業者にとって,同業者との競争に打ち勝つためには,販売単価が最も重要な要素となっているのであり,本件条例10条3号にいう競争上の利益とは,営業状態全般が明らかになるものに限られるものではなく,単価そのものが明らかになるだけで該当する場合もあるのである。 しかも,官公庁に対する納品価格は,一般企業に対する場合に比較して10パーセント程度安価になっているのが通常であり,そのことが公となることによって,一般企業からの反発が生じて,一般企業への販売価格を引き下げなければならなくなるおそれもある。 原判決は,実際に納品されなかった物品の単価は開示されても支障がないというが,納品されなかった物品の価格が恣意的に適当に表示されているわけではなく,実際に納品することを想定して単価が決定され,表示されているのであるから,現実には納品されなかったとしても,そのこと故に当該価格の重要性がな った物品の価格が恣意的に適当に表示されているわけではなく,実際に納品することを想定して単価が決定され,表示されているのであるから,現実には納品されなかったとしても,そのこと故に当該価格の重要性がなくなるわけではない。 したがって,単価等情報を開示すれば,甲の競争上の地位を損なうことになるから,単価等情報は,本条例10条3号に該当し,非開示とすべき情報である。 (2) 債権者名等情報について債権者名等情報が開示されるときは,当該情報は,既に開示されている購入物品等の情報と一体の文書として被控訴人に開示されることになるため,写しが作成され,その写しが一般に流布されることになる結果,その写し自体により,甲がいわゆる「預け金」に関与したものであることが明らかとなってしまうのである。 富山土木事務所等と特定の会社との間で,いわゆる「預け金」による取引がなされていたとのマスコミ報道が,本件公文書開示請求以前からなされているが,その報道においてさえ,甲の名称等は表示されていない。また,平成11年2月の県議会常任委員会においてなされた富山土木事務所等に関する調査報告においても,甲の名称等は表示されていない。そこで,甲の名称が公表されると,格別非難されるべき点のない甲にとって,不適正な取引に加担した業者であるとの誤解が生じるなど,その社会的な評価や信用等は大きく損なわれるおそれが十分にある。このような状況において,開示公文書自体から,債権者として甲が識別されることは,甲の社会的な評価や信用等が損なわれるかどうかに関して重要な事柄である。 また,債権者名等情報が開示されると,単価等情報と相まって,甲の競争上の地位を損なうことにもなる。 したがって,債権者名等情報は,本条例10条3号に該当し,非開示とすべき情 柄である。 また,債権者名等情報が開示されると,単価等情報と相まって,甲の競争上の地位を損なうことにもなる。 したがって,債権者名等情報は,本条例10条3号に該当し,非開示とすべき情報である。 (3) 取引金融機関情報について甲を含む取引業者の取引金融機関情報は,請求書等の交付を受ける県を含む顧客との関係では一般に知られ得る情報ではあるが,債権者たる当該業者が自らの営業活動の中で使用するものあり,その開示範囲は当該業者自らが選択できるものであって,顧客以外の者との関係では,公開せずに重要な内部管理情報として管理するのが通常である。 また,取引金融機関については,どこの金融機関と取引があるかが当該法人の信用に影響することが考えられ,さらに,口座番号が公開されると,社会に潜む悪意者が当該口座を標的としてこれを利用した執拗な嫌がらせ行為に及ぶなど当該業者の金銭管理に混乱ないし支障を生じる場合もある。 したがって,取引金融機関情報は,重要な内部管理情報であり,本条例10条3号に該当し,非開示とすべき情報である。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も,本件非開示決定のうち,単価等情報,債権者名等情報及び取引金融機関情報を非開示とした処分の取消しを求める被控訴人の請求を認容すべきであると判断するが,その理由は,2項以下のとおり補正し,付加するほかは,原判決の「事実及び理由」の第3の2(1)及び3(15頁23行目から17頁15行目まで及び19頁10行目から22頁2行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 2 原判決の補正(1) 原判決19頁19行目の「が損なわれる」から同23行目末尾までを次のとおり改める。 「の,正当な事業活動上の利益が損なわれると認められるものを指すと解するのが相 2 原判決の補正(1) 原判決19頁19行目の「が損なわれる」から同23行目末尾までを次のとおり改める。 「の,正当な事業活動上の利益が損なわれると認められるものを指すと解するのが相当であり,そして,法人等又は事業を営む個人の当該事業に関する情報の開示が上記正当な事業活動上の利益を損なうものか否かは,法人等又は事業を営む個人の当該事業の事業内容に照らし,当該情報を開示した場合に生ずる影響を個別,具体的に検討して判断すべきものである。」(2) 原判決19頁24,25行目を次のとおり改める。 「(2) 甲は,前記第2の2(2)のとおり,事務用品等の小売販売を業とする株式会社であるから,本件非開示決定に係る物品購入伺書及び支出決議書中の単価等情報,債権者名情報及び取引金融機関情報が,いずれも,甲という法人の事業に関する情報に該当することは明らかである。 ところで,本条例は,その1条において,この条例の目的について,「公文書の開示を請求する県民の権利を明らかにするとともに,情報公開の総合的な推進に関し必要な事項を定めることにより,県民の県政に対する理解と信頼を深め,県民参加の開かれた県政を一層推進すること」と定め,その4条においては,この条例の解釈及び運用について,「実施機関は,公文書の開示を請求する県民の権利が十分に尊重されるようこの条例を解釈し,及び運用するものとする。この場合において,実施機関は,個人に関する情報がみだりに公にされることがないように最大限の配慮をしなければならない。」と定めた上,その6条ないし9条において,公文書の開示請求の手続及び開示の手続を定め,その10条において,公文書の開示請求があっても,開示しないことができる事由を列挙しているのである(乙1)から,本条例10条は,公文書の開示 条において,公文書の開示請求の手続及び開示の手続を定め,その10条において,公文書の開示請求があっても,開示しないことができる事由を列挙しているのである(乙1)から,本条例10条は,公文書の開示の原則に対する例外としての非開示事由を限定列挙したものと解することができる。したがって,実施機関である控訴人が,県と業者間の物品売買に関する契約に関する公文書について本条例に基づく開示請求を受けた場合には,その契約内容は,価格部分を含めて,これを公開するのを原則とするのであり,本条例10条4号に該当するとして,同契約内容の全部又は一部を非開示とするには,当該非開示部分の開示により,当該業者の「競争上の又は事業運営上の地位その他の社会的な地位が損なわれる」ことを主張し立証する責任があるのである。 他方,地方公共団体における債務負担等の財務会計上の行為については,それが公金の支出に係わるものであるため,行政の透明性や公金の公正,適正な運用の確保の要請から,地方自治法等により種々の法的規制に服するものとされているのであり,そのため,一般に,地方公共団体との間で物品売買に関する契約を締結する業者においては,私人や私法人と同種の契約を締結する場合とは異なる制約を甘受せざるを得ない面があることは否定できないところ,本条例は,上記のとおり,公文書の原則公開による県民の県政に対する理解と信頼,さらには県民参加の開かれた県政の推進を目的とするものであるから,本条例の下で県との間で物品売買に関する契約を締結する業者においては,同契約の契約内容は本条例に従って原則として公開されるものであることを承知し,あるいは,少なくとも,これを予期して同契約を締結するものというべきである。 そこで,(3)以下において,上記のような本条例の目的等及び地方公 て原則として公開されるものであることを承知し,あるいは,少なくとも,これを予期して同契約を締結するものというべきである。 そこで,(3)以下において,上記のような本条例の目的等及び地方公共団体における財務会計上の行為に関する特殊性も考慮し,単価等情報,債権者名情報及び取引金融機関情報について,これを開示することにより,甲の上記事業に関して,本条例10条3号にいう「競争上の又は事業運営上の地位その他の社会的な地位が損なわれる」と認められるか否かを個別に検討することとする。」(3) 原判決20頁19行目と20行目の間に次のとおり付加する。 「 したがって,単価等情報は,甲の事務用品小売販売事業に関して,その開示により,競争上の又は事業運営上の地位その他の社会的な地位が損なわれる情報であると認めることはできない。」(4) 原判決21頁7行目と8行目の間に次のとおり付加する。 「 したがって,債権者名情報は,甲の事務用品小売販売事業に関して,その開示により,競争上の又は事業運営上の地位その他の社会的な地位が損なわれる情報であると認めることはできない。」(5) 原判決21頁21行目の「(3)」を「(4)」と改め,同21行目と22行目の間に次のとおり付加する。 「 したがって,取引金融機関情報は,甲の事務用品小売販売事業に関して,その開示により,競争上の又は事業運営上の地位その他の社会的な地位が損なわれる情報であると認めることはできない。」 3 当審における控訴人の補充主張に対する判断(1) 単価等情報についてア控訴人は,県が指定する品質,規格の汎用品を県に販売する甲のような事務用品小売業者にとっては,販売価格がほとんど唯一の競争手段であるから,単価等情報(特に販売単価)が重要な営業上のノウ てア控訴人は,県が指定する品質,規格の汎用品を県に販売する甲のような事務用品小売業者にとっては,販売価格がほとんど唯一の競争手段であるから,単価等情報(特に販売単価)が重要な営業上のノウハウであり,営業秘密であるため,これを開示すれば,同業者との関係で甲の競争上の地位を損なうことになる旨主張する。 なるほど,証拠(甲6)及び弁論の全趣旨によれば,甲は,県が指定する品質,規格の汎用品である事務用品等の物品を県に販売しているため,その販売に当たっては,販売価格が重要な要因となり,またその後の販売にあたっても,販売価格が重要な要因となることが認められないではないから,甲が県に販売している事務用品等の物品に関する単価等情報が同業者に明らかになることにより,同業者との間で,より価格競争が激化し,甲が県に対して事務用品等の物品を販売できなくなるおそれがないわけではない。 しかしながら,地方自治法は,地方公共団体の締結する契約については,その価格等の公正,適正を担保するため,一般競争入札の方法によるべきことを原則とし,随意契約等のこれ以外の方法によることを例外的なものとしている(同法234条1項,2項)のであって,地方公共団体の締結する契約について業者間において公正な価格競争が行われることは,地方自治法が本来予定しているところである。そして,県では,談合等の防止や公平な競争の確保の観点から,公共事業の入札に関して,落札者,落札価格及び設計書(設計単価を除く。)はこれを公表し,また,随意契約の方法で締結されるのを通常とする食糧費の支出に関する契約についても,飲食等の債権者名(飲食店名)や支出内容等は原則としてこれを開示していることが認められる(甲6,弁論の全趣旨)から,前記の本条例の目的等に照らすと,県が一般競争入札以外 の支出に関する契約についても,飲食等の債権者名(飲食店名)や支出内容等は原則としてこれを開示していることが認められる(甲6,弁論の全趣旨)から,前記の本条例の目的等に照らすと,県が一般競争入札以外の方法により締結した契約についても,その価格部分を含む契約内容は原則としてこれを公開すべきことが要請されているものと解されるのであり,そのことにより,県との間で契約を締結する業者について,その業務にある程度の影響が生ずることがあっても,前記のような本条例の目的等及び地方公共団体における財務会計上の行為に関する特殊性,特に本条例の下で県との間で物品販売に関する契約を締結する業者においては,同契約の契約内容は本条例に従って原則として公開されるものであることを承知し,あるいは,これを予期して同契約を締結するものであることにかんがみれば,これを受忍すべきものである。 したがって,甲が県に販売している事務用品等の物品に関する単価等情報が同業者に明らかになることにより,同業者との間で,価格競争が激化し,その結果,甲が県に対して事務用品等の物品を販売できない場合が生じることがあっても,そのことをもって直ちに,甲の業務に関して競争上の又は事業運営上の地位その他の社会的な地位が損なわれるものと認めることはできない。 そして,甲については,県に対して事務用品等の物品を販売する事務用品小売業者であることを認めることができるものの,それ以外には,その規模,業務形態等を明らかにすべき証拠はないから,甲が県に販売する事務用品等の物品についての単価に関する情報が開示されて,同業他社に判明することになったとしても,甲が当該単価を設定するに至った原価(仕入れ値や経費等)及び甲全体の価格体系等が明らかになるものと認めることはできず,単なる販売単価をもって営 が開示されて,同業他社に判明することになったとしても,甲が当該単価を設定するに至った原価(仕入れ値や経費等)及び甲全体の価格体系等が明らかになるものと認めることはできず,単なる販売単価をもって営業上のノウハウあるいは営業秘密であるとする事情を認めるに足りる証拠もない(事務用品等の小売販売業者が私人や私法人に事務用品等を販売する場合において,これを購入した者が,その購入価格を他の同業者に明らかにして,価格等の面で一層の好条件での取引を持ちかけることがあったとしても,そのことが当該事務用品等の小売販売業者の営業上のノウハウあるいは営業秘密を明らかにしたものとして非難されるものではない。)。なお,証拠(甲6)及び弁論の全趣旨によれば,県が指定する品質,規格の汎用品である事務用品等の物品を県に販売して業者としての地位を維持するためには,販売価格が重要であるが,それとともに,注文の物品を安定的に納品できることも重要であることが認められないではないから,単価等情報がほとんど唯一の競争手段であるとの控訴人の主張は採用できない。 イまた,控訴人は,官公庁に対する販売価格が,一般企業に対する場合に比較して10パーセント程度安価になっているのが通常であり,そのことが公となることにより一般企業への販売価格を引き下げなければならなくなるおそれがある旨主張する。 しかし,甲の県に対する事務用品等の物品の販売価格が一般企業に対する小売価格より安価であるとの事実を認めるべき証拠はない。また,仮にそのような事実がある場合には,控訴人主張のような可能性が一般的,抽象的にはないわけではないけれども,甲が県に対しては,一般企業に対するよりも低価格で事務用品等の物品を販売していることが一般に開示されたとしても,それは,県が地方公共団体という,支払の確実性 的,抽象的にはないわけではないけれども,甲が県に対しては,一般企業に対するよりも低価格で事務用品等の物品を販売していることが一般に開示されたとしても,それは,県が地方公共団体という,支払の確実性や販売数量の規模等において一般企業とは異なる地位にあることに基づく特別な販売条件によるものであることは容易に理解されることであるから,一般企業から,県に対する販売価格を理由とする反発が起こり,具体的な値引き要求がされ,甲においてこれに応ぜざるを得なくなるような事態は直ちには想定し難いところであるし,そのような事態が生ずることについて,これを認めるに足りる証拠もない。 ウそして,他に単価等情報が開示されることにより,甲の業務に関して競争上の又は事業運営上の地位その他の社会的な地位が損なわれることを認めるに足りる証拠はなく,結局,その点についての立証がないというほかない。 したがって,単価等情報が本条例10条3号に該当し,非開示とすべき情報である旨の控訴人の主張は,これを採用することができない。 (2) 債権者名等情報についてア控訴人は,開示公文書自体から債権者として甲が識別されることにより,いわゆる預け金問題で格別非難されべき点のない甲にとって,不適正な取引に加担した業者であるとの誤解が生じるなど,その社会的な評価や信用等が大きく損なわれるおそれがある旨主張する。 しかしながら,控訴人主張の上記おそれは,抽象的なものにすぎず,債権者名等情報の開示によって,甲の社会的な評価や信用等が損なわれるおそれがあることを具体的に推認させる証拠はない。 また,証拠(甲6,乙2,4,5)及び弁論の全趣旨によれば,甲は,いわゆる預け金処理によって,自らが納入していない事務用品等の物品についての内容虚偽の見積書や 体的に推認させる証拠はない。 また,証拠(甲6,乙2,4,5)及び弁論の全趣旨によれば,甲は,いわゆる預け金処理によって,自らが納入していない事務用品等の物品についての内容虚偽の見積書や請求書を作成し,その代金名目で公金の支払を受けるなど,県の出先機関である富山土木事務所等による違法な財務会計行為に協力していたことが認められるから,仮に債権者名等情報の開示により,上記事実が一般に知られ,そのことである程度その社会的な評価や信用等において不利益は受けることがあったとしても,甲としてはこれを甘受すべき立場にあるのであり,他方,債権者名等情報を非開示にすることは,かえって,上記違法な財務会計行為の事実関係を曖昧にすることになって,前記の本条例の目的に沿わないこととなるのであり,したがって,甲に生じるかもしれない上記不利益をもって債権者名等情報の非開示を正当化する理由とすることは相当でない。 イそして,他に単価等情報が開示されることにより,甲の業務に関して競争上の又は事業運営上の地位その他の社会的な地位が損なわれることを認めるに足りる証拠はなく,結局,その点についての立証がないというほかない。 したがって,債権者名等情報が本条例10条3号に該当し,非開示とすべき情報である旨の控訴人の主張は,これを採用することができない。 (3) 取引金融機関情報についてア控訴人は,取引金融機関の開示が当該法人の信用に影響することが考えられ,また,口座番号の開示により,当該口座を利用した執拗な嫌がらせ行為がされて当該業者の金銭管理について混乱ないし支障が生じる場合もある旨主張する。 しかしながら,控訴人の上記主張は,上記影響や支障の抽象的な危険を指摘するものにすぎず,これが蓋然性のある具体的なものであること 銭管理について混乱ないし支障が生じる場合もある旨主張する。 しかしながら,控訴人の上記主張は,上記影響や支障の抽象的な危険を指摘するものにすぎず,これが蓋然性のある具体的なものであることを認めるに足りる証拠はないから,到底採用することができない。 イそして,他に取引金融機関情報が開示されることにより,甲の業務に関して競争上の又は事業運営上の地位その他の社会的な地位が損なわれることを認めるに足りる証拠はなく,結局,その点についての立証がないというほかない。 したがって,取引金融機関情報が本条例10条3号に該当し,非開示とすべき情報である旨の控訴人の主張は,採用することができない。 4 結論以上によれば,本件非開示決定のうち,単価等情報,債権者名等情報及び取引金融機関情報を非開示とした処分の取消しを求める被控訴人の請求を認容した原判決は相当である。 よって,本件控訴は,理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。 名古屋高等裁判所金沢支部第1部 裁判長裁判官長門栄吉裁判官源孝治裁判官渡邉和義
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