主文 被告人Aを懲役1年6月に,被告人Bを懲役1年にそれぞれ処する。 被告人両名に対し,この判決確定の日からいずれも3年間,上記各刑の執行を猶予する。 被告人Bから金23万円を追徴する。 理由 (罪となるべき事実)被告人Aは,平成12年4月1日から平成13年3月31日まで,C労働局職業安定部職業安定課地方雇用保険監察官であった者,被告人Bは,有限会社D(以下「D」という。)の代表取締役であるが,第1 被告人Aは,平成12年12月6日,名古屋市a区b町c丁目d番地所在のEにおいて,上記Bから,公共職業安定所の職業紹介を受けずにDに就職していたF及びGについて,公共職業安定所の職業紹介によりDに就職した旨の内容虚偽の紹介証明書を,公共職業安定所の担当者に依頼して不正に作成,交付するようあっせんして欲しい旨の請託を受け,同月7日,同市a区bc丁目d番e号所在のH公共職業安定所において,同所における職業紹介に関する事務担当者である受付・自主選択部門雇用指導官Iに対し,その職務に関し,上記F及びGをDに紹介した事実がないのに,H公共職業安定所の職業紹介により,上記F及びGがDに就職した旨の内容虚偽の紹介証明書を作成,交付してもらいたい旨申し向け,職務上不正の行為をさせるようあっせんし,平成13年4月10日,同市a区b町c番d号所在のJ3階D事務所において,上記Bから,上記の職務上不正の行為をあっせんしたことの謝礼として現金23万円の供与を受けて賄賂を収受し,第2 被告人Bは,平成12年12月6日,上記Eにおいて,上記Aに対し,上記請託をし,平成13年4月10日,上記D事務所において,上記Aに対し,上記あっせんの謝礼として現金23万円を供与した。 (証拠の標目)(省略)(法令の適用) 1 罰条判示第1の事実につき 年4月10日,上記D事務所において,上記Aに対し,上記あっせんの謝礼として現金23万円を供与した。 (証拠の標目)(省略)(法令の適用) 1 罰条判示第1の事実につき刑法197条の4判示第2の事実につき刑法198条(197条の4) 2 刑種の選択判示第2の罪につき懲役刑を選択 3 執行猶予被告人両名につき刑法25条1項 4 追徴被告人Aにつき刑法197条の5後段(被告人Aが判示第1の犯行により収受した賄賂は没収することができないので,その価額金23万円を同被告人から追徴する。)(量刑の理由)本件は,新規・成長分野雇用奨励金の不正受給を企てた被告人Bが,内容虚偽の紹介証明書を入手するため,かねて昵懇の被告人Aに,公共職業安定所の職員へのあっせんを依頼した上,これに応じた被告人Aの求めにより,その謝礼として現金23万円を供与し,被告人Aがこれを収受したという,あっせん贈収賄の事案である。 C労働局職業安定部職業安定課地方雇用保険監察官の地位にあった被告人Aは,公共職業安定所を監督する立場を利用して,同所の担当職員に内容虚偽の紹介証明書を作成するようあっせんして交付させ,これを用いて被告人Bが現に奨励金を不正に受給しており,公務員の職務の公正さとこれに対する社会の信頼を大きく損なった点において,本件犯行は悪質である。 被告人Aは,平成11年夏ころから多数回にわたり被告人Bによる飲食等の供応接待を受けて次第に癒着の度を深め,本件犯行の際には,引き続き接待を受けることを期待して不正行為と知りながら安易にあっせんに応じた上,その後クレジット代金の支払いに窮するやその見返りとして被告人Bに金30万円の供与を要求して本件賄賂を収受しており ,引き続き接待を受けることを期待して不正行為と知りながら安易にあっせんに応じた上,その後クレジット代金の支払いに窮するやその見返りとして被告人Bに金30万円の供与を要求して本件賄賂を収受しており,そこには公務員に求められる廉潔性は既になく,その規範意識は麻痺していたといわなければならない。 他方,被告人Bも,助成金や許認可についての情報を得ることなどを期待して被告人Aに近づき,同人への接待を続けていた上,経営する会社の運転資金や交際女性に与える金銭を入手するため,奨励金を不正受給すべく被告人Aに積極的に働きかけて本件犯行に及んでおり,動機に酌量の余地はなく,犯情はよくない。 そうすると,被告人両名の刑事責任はいずれも軽く見ることはできない。 しかしながら,被告人Aが被告人Bから依頼を受けたときには,被告人両名に賄賂として現金を授受する意思はなく,相当期間経過後に被告人Aが金に困ったことから賄賂の授受に至ったもので,請託と賄賂との結びつきはそれほど強くなかったこと,被告人Bが不正受給した奨励金の全額を返還していること,被告人両名は当公判廷において反省の態度を示していること,それぞれの妻が各被告人の更生に助力する旨述べていること,加えて,被告人Aには,既に懲戒処分を受けるなど一定の社会的制裁を受け公務員も退職していること,前科前歴がないこと等の,被告人Bには,本件犯行が発覚して取引先を失うなど一定の社会的制裁を受けていること,古い罰金前科しかないこと等の酌むべき事情がそれぞれ認められるので,被告人両名についてそれぞれ主文のとおり量刑した上で,特に刑の執行を猶予することにした。 (求刑-被告人Aにつき懲役1年6月及び追徴23万円,被告人Bにつき懲役1年)平成15年5月29日名古屋地方裁判所刑事第5部裁判長裁判官伊藤新一郎 特に刑の執行を猶予することにした。 (求刑-被告人Aにつき懲役1年6月及び追徴23万円,被告人Bにつき懲役1年)平成15年5月29日名古屋地方裁判所刑事第5部裁判長裁判官伊藤新一郎裁判官後藤眞知子裁判官高橋信幸
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