主文 一被告東京入国管理局長が、原告P1に対して平成15年3月19日付けでした同原告の出入国管理及び難民認定法49条1項に基づく異議の申出は理由がない旨の裁決を取り消す。 二被告東京入国管理局主任審査官が、原告P1に対して平成15年5月7日付けでした退去強制令書発付処分を取り消す。 三その余の原告らの請求をいずれも棄却する。 四訴訟費用は、原告P2に生じた費用の全部、被告東京入国管理局長に生じた費用の6分の1及び被告東京入国管理局主任審査官に生じた費用の6分の1を同原告の負担とし、原告P3に生じた費用の全部、被告東京入国管理局長に生じた費用の6分の1及び被告東京入国管理局主任審査官に生じた費用の6分の1を同原告の負担とし、原告P4に生じた費用の全部、被告東京入国管理局長に生じた費用の6分の1及び被告東京入国管理局主任審査官に生じた費用の6分の1を同原告の負担とし、原告P5に生じた費用の全部、被告東京入国管理局長に生じた費用の6分の1及び被告東京入国管理局主任審査官に生じた費用の6分の1を同原告の負担とし、原告P6に生じた費用の全部、被告東京入国管理局長に生じた費用の6分の1及び被告東京入国管理局主任審査官に生じた費用の6分の1を同原告の負担とし、原告P1に生じた費用の2分の1及び被告東京入国管理局長に生じた費用の6分の1を同被告の負担とし、原告P1に生じた費用の2分の1及び被告東京入国管理局主任審査官に生じた費用の6分の1を同被告の負担とする。 事実及び理由 第一請求一被告東京入国管理局長が、原告P2に対して平成15年3月19日付けでした出入国管理及び難民認定法49条1項に基づく同原告の異議の申出は理由がない旨の裁決を取り消す。 二被告 第一請求一被告東京入国管理局長が、原告P2に対して平成15年3月19日付けでした出入国管理及び難民認定法49条1項に基づく同原告の異議の申出は理由がない旨の裁決を取り消す。 二被告東京入国管理局主任審査官が、原告P2に対して平成15年5月7日付けでした退去強制令書発付処分を取り消す。 三被告東京入国管理局長が、原告P3に対して平成15年3月19日付けでした出入国管理及び難民認定法49条1項に基づく同原告の異議の申出は理由がない旨の裁決を取り消す。 四被告東京入国管理局主任審査官が、原告P3に対して平成15年5月7日付けでした退去強制令書発付処分を取り消す。 五主文第一項と同旨六主文第二項と同旨七被告東京入国管理局長が、原告P4に対して平成15年3月19日付けでした同原告の出入国管理及び難民認定法49条1項に基づく異議の申出は理由がない旨の裁決を取り消す。 八被告東京入国管理局主任審査官が、原告P4に対して平成15年5月7日付けでした退去強制令書発付処分を取り消す。 九被告東京入国管理局長が、原告P5に対して平成15年3月19日付けでした同原告の出入国管理及び難民認定法49条1項に基づく異議の申出は理由がない旨の裁決を取り消す。 一〇 被告東京入国管理局主任審査官が、原告P5に対して平成15年5月7日付けでした退去強制令書発付処分を取り消す。 一一被告東京入国管理局長が、原告P6に対して平成15年3月19日付けでした同原告の出入国管理及び難民認定法49条1項に基づく異議の申出は理由がない旨の裁決を取り消す。 一二被告東京入国管理局主任審査官が、原告P6に対して平成15年5月7日付けでした退去強制令書発付処分を取り消す。 第二事案の概要本件は、法務大臣か ない旨の裁決を取り消す。 一二被告東京入国管理局主任審査官が、原告P6に対して平成15年5月7日付けでした退去強制令書発付処分を取り消す。 第二事案の概要本件は、法務大臣から権限の委任を受けた被告東京入国管理局長(以下「被告入管局長」という。)から出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」という。)49条1項に基づく異議の申出は理由がない旨の各裁決を受け、被告東京入国管理局主任審査官(以下「被告主任審査官」という。)から退去強制令書の各発付処分を受けた原告らが、上記各裁決には、①被告入管局長が原告らの退去強制が著しく不当であると判断しなかったことについて事実誤認の違法、②被告入管局長が原告らに在留特別許可を付与しなかったことについて裁量権の範囲を逸脱又は濫用した違法があり、③これらの裁決を前提としてされた退去強制令書の各発付処分も違法である旨主張して、各裁決及び各発付処分の取消しを求める事案である。 一前提事実証拠により容易に認めることのできる事実は、その旨付記してあり、それ以外の事実は当事者間に争いがない。 1 原告らの身分事項について(一) 原告P2は、昭和○年(○年)○月○日、フィリピン共和国(以下「フィリピン」という。)において出生したフィリピン国籍を有する男性の外国人である。 (二) 原告P3は、昭和○年(○年)○月○日、フィリピンにおいて出生したフィリピン国籍を有する女性の外国人である。 (三) 原告P2と原告P3は、昭和61年(1986年)1月15日にフィリピンにおいて婚姻をした夫婦である(乙17の2、18の6)。 (四) 原告P1は、昭和○年(○年)○月○日、日本において出生したフィリピン国籍を有する女性の外国人である。 にフィリピンにおいて婚姻をした夫婦である(乙17の2、18の6)。 (四) 原告P1は、昭和○年(○年)○月○日、日本において出生したフィリピン国籍を有する女性の外国人である。 (五) 原告P4は、平成○年○月○日、日本において出生したフィリピン国籍を有する男性の外国人である。 (六) 原告P5は、平成○年○月○日、日本において出生したフィリピン国籍を有する男性の外国人である。 (七) 原告P6(以下、原告P1、原告P4、原告P5及び原告P6を総称して「原告子ら」という。)は、平成○年○月○日、日本において出生したフィリピン国籍を有する男性の外国人である。 2 原告らの入国・在留状況について(一) 原告P3は、昭和61年(1986年)4月12日ころ、新東京国際空港(以下「成田空港」という。)に到着し、東京入国管理局(以下「東京入管」という。)成田支局入国審査官に対し、他人である「P7」名義の偽造旅券を提示して、本邦に不法に入国した。 (二) 原告P2は、昭和61年5月15日、成田空港に到着し、東京入管成田支局入国審査官から、平成元年法律第79号による改正前の入管法(以下「旧入管法」という。)4条1項4号所定の在留資格、在留期間15日とする上陸許可を受けて、本邦に上陸した。 その後、原告P2は、在留資格の変更又は在留期間の更新を受けることなく、在留期限である同月30日を超えて、本邦に不法残留している。 (三) 原告P3は、昭和○年○月○日、群馬県群馬郡α所在の病院において、原告P2との間の子である原告P1を出産した。 原告P1は、旧入管法22条の2第1項の定める在留期限である同年8月19日を超えて、本邦に不法残留し 馬県群馬郡α所在の病院において、原告P2との間の子である原告P1を出産した。 原告P1は、旧入管法22条の2第1項の定める在留期限である同年8月19日を超えて、本邦に不法残留している。 (四) 原告P3は、平成○年○月○日、長野県λ市(以下「λ市」という。)所在の病院において、原告P2との間の子である原告P4を出産した。 原告P4は、平成13年法律第136号による改正前の入管法(以下「改正前入管法」という。)22条の2第1項の定める在留期限である同年3月29日を超えて、本邦に不法残留している。 (五) 原告P3は、平成○年○月○日、λ市所在の病院において、原告P2との間の子である原告P5を出産した。 原告P5は、改正前入管法22条の2第1項の定める在留期限である同年4月22日を超えて、本邦に不法残留している。 (六) 原告P3は、平成○年○月○日、長野県β所在の病院において、原告P2との間の子である原告P6を出産した。 原告P6は、改正前入管法22条の2第1項の定める在留期限である平成12年2月19日を超えて、本邦に不法残留している。 (七)(1) 原告P2は、長野県λ市長(以下「λ市長」という。)に対し、平成5年12月8日、外国人登録法(以下「外登法」という。)に基づく新規登録申請をした。 (2) 原告P1及び原告P4は、λ市長に対し、平成5年12月8日、それぞれ出生を事由とする外登法に基づく新規登録申請をした。 (3) 原告P5は、λ市長に対し、平成9年3月13日、出生を事由とする外登法に基づく新規登録申請をした。 (4) 原告P6は、λ市長に対し、平成12年3月16日 。 (3) 原告P5は、λ市長に対し、平成9年3月13日、出生を事由とする外登法に基づく新規登録申請をした。 (4) 原告P6は、λ市長に対し、平成12年3月16日、出生を事由とする外登法に基づく新規登録申請をした。 (5) 原告P3は、λ市長に対し、平成12年8月30日、本名である「P3」名義で外登法に基づく新規登録申請をした。 (八)(1) 原告P2は、平成13年3月12日に、原告子らは、同月13日に、原告P3は、同年8月13日に、それぞれλ市長に対し、外登法に基づく居住地変更登録をした。 (2) 原告P2及び原告P3は、平成14年5月13日に、原告子らは、同月15日に、それぞれλ市長に対し、外登法に基づく居住地変更登録をした。 3 原告らの退去強制手続について(一) 原告P2の退去強制手続について(1) 東京入管入国警備官は、平成11年11月15日、長野県λ警察署警察官とともに、自宅にいた原告P2を摘発した。 東京入管入国警備官は、違反調査の結果、原告P2が改正前入管法24条4号ロ(不法残留)に該当すると疑うに足りる相当の理由があるとして、平成12年12月25日、被告主任審査官から収容令書の発付を受けた。東京入管入国警備官は、同月27日、同令書を執行して、改正前入管法24条4号ロ該当容疑者として、原告P2を東京入管入国審査官に引き渡した。 被告主任審査官は、原告P2に対し、同日、仮放免を許可した。 (2) 東京入管入国審査官は、原告P2に関する違反審査を行った結果、平成13年3月23日、原告P2が改正前入管法24条4号ロに該当する旨の認定をし、原告P2に通知した。 許可した。 (2) 東京入管入国審査官は、原告P2に関する違反審査を行った結果、平成13年3月23日、原告P2が改正前入管法24条4号ロに該当する旨の認定をし、原告P2に通知した。原告P2は、同日、口頭審理を請求した。 (3) 東京入管特別審理官は、平成14年10月18日、原告P2に関する口頭審理を行い、その結果、同日、東京入管入国審査官の認定に誤りのない旨判定し、原告P2にこれを通知した。原告P2は、法務大臣に対し、同日、異議の申出をした。 (4) 法務大臣から権限の委任を受けた被告入管局長は、平成15年3月19日、原告P2からの異議の申出については理由がない旨の裁決(以下「本件裁決1」という。)をし、被告主任審査官に通知した。被告主任審査官は、同年5月7日、原告P2に上記裁決を通知するとともに、退去強制令書を発付し(以下、この発付処分を「本件退令処分1」という。)、同日、原告P2を東京入管収容場に収容した。 (二) 原告P3の退去強制手続について(1) 東京入管入国警備官は、平成11年11月15日、長野県λ警察署警察官とともに、λ市内のスナックにいた原告P3を摘発した。 東京入管入国警備官は、違反調査の結果、原告P3が改正前入管法24条1号(不法入国)に該当すると疑うに足りる相当の理由があるとして、平成12年12月25日、被告主任審査官から収容令書の発付を受けた。東京入管入国警備官は、同月27日、同令書を執行して、改正前入管法24条1号該当容疑者として、原告P3を東京入管入国審査官に引き渡した。 被告主任審査官は、原告P3に対し、同日、仮放免を許可した。 (2) 東京入管入国審査官は、原告P3に関する として、原告P3を東京入管入国審査官に引き渡した。 被告主任審査官は、原告P3に対し、同日、仮放免を許可した。 (2) 東京入管入国審査官は、原告P3に関する違反審査を行った結果、平成13年3月27日、原告P3が改正前入管法24条1号に該当する旨の認定をし、原告P3に通知した。原告P3は、同日、口頭審理を請求した。 (3) 東京入管特別審理官は、平成14年11月18日、原告P3に関する口頭審理を行い、その結果、同日、東京入管入国審査官の認定に誤りのない旨判定し、原告P3にこれを通知した。原告P3は、法務大臣に対し、同日、異議の申出をした。 (4) 法務大臣から権限の委任を受けた被告入管局長は、平成15年3月19日、原告P3からの異議の申出については理由がない旨の裁決(以下「本件裁決2」という。)をし、被告主任審査官に通知した。被告主任審査官は、同年5月7日、原告P3に上記裁決を通知するとともに、同日、退去強制令書を発付した(以下、この発付処分を「本件退令処分2」という。)。 被告主任審査官は、原告P3に対し、同日、仮放免を許可した。 (三) 原告子らの退去強制手続について(1) 東京入管入国警備員は、違反調査の結果、原告子らが改正前入管法24条7号(不法残留)に該当すると疑うに足りる相当の理由があるとして、平成12年12月25日、被告主任審査官から収容令書の発付を受けた。東京入管入国警備官は、同月27日、同令書を執行して、改正前入管法24条7号該当容疑者として、原告子らを東京入管入国審査官に引き渡した。 被告主任審査官は、原告子らに対し、同日、仮放免を許可した。 (2) 東京入管入国 入管法24条7号該当容疑者として、原告子らを東京入管入国審査官に引き渡した。 被告主任審査官は、原告子らに対し、同日、仮放免を許可した。 (2) 東京入管入国審査官は、原告子らに関する違反審査を行った結果、平成13年3月27日、原告子らが改正前入管法24条7号に該当する旨の認定をし、原告子らに通知した。原告子らは、同日、口頭審理を請求した。 (3) 東京入管特別審理官は、平成14年11月18日、原告子らに関する口頭審理を行い、その結果、同日、東京入管入国審査官の認定に誤りのない旨判定し、原告子らにこれを通知した。原告子らは、法務大臣に対し、同日、異議の申出をした。 (4) 法務大臣から権限の委任を受けた被告入管局長は、平成15年3月19日、原告子らからの異議の申出については理由がない旨の各裁決(以下、原告P1に対する裁決を「本件裁決3」、原告P4に対する裁決を「本件裁決4」、原告P5に対する裁決を「本件裁決5」、原告P6に対する裁決を「本件裁決6」といい、本件裁決1から6までを併せて「本件各裁決」という。)をした。上記各裁決の通知を受けた被告主任審査官は、同年5月7日、原告子らに各人に対する裁決を通知するとともに、同日、各人に対する退去強制令書を発付した(以下、原告P1に対する発付処分を「本件退令処分3」といい、原告P4に対する発付処分を「本件退令処分4」、原告P5に対する発付処分を「本件退令処分5」、原告P6に対する発付処分を「本件退令処分6」といい、本件退令処分1から6までを併せて「本件各退令処分」という。)。 被告主任審査官は、原告子らに対し、同日、仮放免を許可した。 二争点 1 本件各裁決について、原告らの退去強制が著しく不 でを併せて「本件各退令処分」という。)。 被告主任審査官は、原告子らに対し、同日、仮放免を許可した。 二争点 1 本件各裁決について、原告らの退去強制が著しく不当であるのに、被告入管局長がそうではないと事実誤認したことによる違法があるか否か。 2 被告入管局長は、原告らについて、特別に在留を許可すべき事情があるとは認められないとして、本件各裁決をしているが、この判断は、被告入管局長の有する裁量権の範囲を逸脱又は濫用したものといえるか。 3 被告主任審査官は、本件各裁決を受けて、原告らに対し、本件各退令処分をしているが、この処分が違法なものといえるか。 三当事者の主張の要旨 1 争点1について(原告らの主張)(一) 入管法49条1項所定の異議の申出があった場合、①異議の申出に理由があるかどうかの内部的な判断があり、②異議の申出に理由がないと認められた場合であっても、入管法50条1項各号の在留特別許可を付与すべきかどうかという判断がされ、③いずれも認められないときに、入管法49条3項所定の異議の申出に理由がない旨の裁決がされるものである。 そこで、本件各裁決の違法性を検討するに当たっては、①異議の申出に理由があるかどうかという判断と、②在留特別許可を付与すべきかどうかという判断の二段階に分けて検討する必要がある。 (二) 入管法49条1項の異議の理由が何であるかは、入管法に定められていないが、出入国管理及び難民認定法施行規則(以下「入管法施行規則」という。)42条は、「法第49条第1項の規定による異議の申出は、別記第60号様式による異議申出書1通及び次の各号の一に該当する不服の理由を示す資料各1通を提出して行わなければなら 入管法施行規則」という。)42条は、「法第49条第1項の規定による異議の申出は、別記第60号様式による異議申出書1通及び次の各号の一に該当する不服の理由を示す資料各1通を提出して行わなければならない。」とし、不服の理由として、1号から4号までを規定している。 そして、入管法施行規則42条4号は、「退去強制が著しく不当であることを理由として申し出るときは、審査、口頭審理及び証拠に現われている事実で退去強制が著しく不当であることを信ずるに足りるもの」と規定している。これらの規定によれば、「退去強制が著しく不当であること」が入管法49条1項の異議の理由となっていることが分かる。 したがって、「退去強制が著しく不当」であるにもかかわらず、被告入管局長がそうではないと判断した場合、在留特別許可を付与するか否かの場面と異なり、被告入管局長による裁決は、事実誤認があるものとして違法となる。この判断は、事実認定作業であって裁量処分ではないので、裁量権の範囲の逸脱又は濫用は問題にならない。 (三) 原告らの日本での生活状況は以下のとおりである。 (1) 原告P2及び原告P3についてア原告P2は、来日後約17年間、建設作業員などとして働き、原告子らを養育するなどして、日本の習慣・文化の中で家族のきずなを作り上げながら生活していた。 原告P3は、来日後、原告P2との間に一女四男の子供を授かり、子供たち全員が、日本の充実した教育環境・制度の下で、自由かつ責任ある人格を形成してほしいと考え、それぞれの発育段階に応じて、保育園・小学校・中学校に進学させてきた。 イ原告P2及び原告P3は、原告子らの幸せを願い、日本人と全く同じよ 責任ある人格を形成してほしいと考え、それぞれの発育段階に応じて、保育園・小学校・中学校に進学させてきた。 イ原告P2及び原告P3は、原告子らの幸せを願い、日本人と全く同じように育つための努力は惜しまないと考えてきた。そこで、原告P2及び原告P3は、原告P1が幼少のころから、原告P1との会話をすべて日本語で行うように努力するなど、原告子らができる限り深く日本の文化・習慣になじむことができるように養育してきた。 ウ原告P2及び原告P3にとって、来日後約17年間の生活は、経済的には必ずしも楽なものではなかったが、原告子らが成長していくにつれ、日本人の友人との交流も増え、彼らによる親身な支援及び協力を受けながら、日本における安定した生活基盤を築いてきた。その間、原告P2及び原告P3は、入管法違反以外には法に触れることもなく、平穏に生活しており、原告子らの学校の行事等にはできる限り参加するなど、地域に溶け込んだ生活を送ってきた。原告らが、原告P1の通っていた中学校のPTAから支援を受けている事実からも、原告らが地域に溶け込んでいるということが分かる。 (2) 原告P1についてア原告P1は、λ市で出生し、λ市内の保育園、小学校及び中学校に通い、本件裁決3の当時は、中学校2年生であった。 原告P1は、一貫して日本語のみによる教育を受けており、原告ら家族間の会話もすべて日本語を使用していることもあって、日常生活では英語やタガログ語を全く使用しておらず、日本語が唯一の母国語である。 イ原告P1は、日本語を通じて日本文化に慣れ親しんでおり、日本人の友人も多く、積極的な交流を持ち、良好な友人関係を築いている。 日本語が唯一の母国語である。 イ原告P1は、日本語を通じて日本文化に慣れ親しんでおり、日本人の友人も多く、積極的な交流を持ち、良好な友人関係を築いている。 原告P1は、現在まで多くの書道展やコンクールにおいて、極めて優秀な成績を修めている。 ウ原告P1は、中学校においても、他の日本人生徒以上に勤勉に努力し、優秀な成績を修めて、充実した学校生活を送っていた。また、原告P1は、学級活動などの特別活動にも主体的かつ積極的な姿勢で取り組んでいた。 そして、原告P1は、優秀な学業成績を維持しており、本件裁決3の当時、中学校における進路指導において、本人が希望するλ市内の県立高校へ確実に進学可能な学力を有していると評価されていた。 エ原告P1の生活様式や思考過程は、完全に日本人と同化しており、フィリピンの生活様式等が日本の生活様式等とかけ離れていることを考えると、原告P1をフィリピンに帰国させることは、原告P1のこれまで築き上げてきた人格、人間関係、価値観等のすべてを根底から覆して破壊するものである。 日本人以上に勉学に励んでいる原告P1がフィリピンに帰国した場合には、勉学を続けることにすら相当な困難が伴い、生涯いやすことの困難な精神的苦痛を受けることになる。 (3) 原告P4についてア原告P4は、λ市内で出生し、λ市内の保育園及び小学校に通い、本件裁決4の当時は、小学校4年生であった。原告P4は、一貫して日本語のみによる教育を受けており、原告ら家族間の会話もすべて日本語を使用していることもあって、日常生活では英語やタガログ語を全く使用しておらず、日本語が唯一の母国語で あった。原告P4は、一貫して日本語のみによる教育を受けており、原告ら家族間の会話もすべて日本語を使用していることもあって、日常生活では英語やタガログ語を全く使用しておらず、日本語が唯一の母国語である。 イ原告P4は、完全に日本の生活習慣等になじんでおり、日本に在留して勉学を継続すること及び家族全員がそろって日本で生活することを強く希望している。 ウ原告P4は、小学校において、意欲的に学習に取り組んでおり、他の日本人生徒と同じように良好な成績を維持している。 エ原告P4が、日本で生育し、日本語しか話すことができず、日本の文化、風俗や慣習に慣れ親しみ、憲法で保障された個人の尊厳、自由主義、男女平等、平和主義に基づく教育を受けている以上、言語はもちろん、生活習慣、文化の点で日本とかけ離れたフィリピンでの生活を強いることは、原告P4にとって余りにも酷である。 (4) 原告P5及び原告P6について原告P5及び原告P6は、いずれもλ市内で出生し、日本語のみを使用し、日本の文化になじんだ人格形成を行っている。 (四) 上記の原告らの日本での生活状況に照らすと、本件については、以下のとおり、「退去強制が著しく不当」な場合に該当する。 (1) 居住の自由(憲法22条1項)の侵害ア憲法22条1項が「何人」も「公共の福祉に反しない限り」居住の自由を有すると規定する以上、適法な在留資格を有しない外国人についても、憲法上の居住の自由の保障が及ぶものである。そして、「公共の福祉に反しない限り」という制約の合理性の判断に際し、在留資格の有無が考慮されるにすぎないと解するべきである。 すな 上の居住の自由の保障が及ぶものである。そして、「公共の福祉に反しない限り」という制約の合理性の判断に際し、在留資格の有無が考慮されるにすぎないと解するべきである。 すなわち、外国人を退去強制することによる居住の自由の制約も、全く憲法から自由なフリーハンドを有するわけではない。入管法が「すべての人の出入国の公正な管理」を目的とし(1条)、その目的達成のための一つの制度として、在留特別許可の制度(50条1項)を用意していることは、居住権すなわち恣意的に退去強制されない権利を、正規滞在者のみならず非正規滞在者にも保障していることの現れである。 換言すれば、在留特別許可の制度は、憲法22条1項が保障する外国人の居住権を具体化しているものである。 イ最高裁判所昭和53年10月4日大法廷判決・民集32巻7号1223頁(以下「昭和53年大法廷判決」という。)は、「外国人に対する憲法の基本的人権の保障は、右のような外国人在留制度のわく内で与えられているにすぎないものと解するのが相当」という判示に続けて、「在留期間中の憲法の基本的人権の保障を受ける行為を在留期間の更新の際に消極的な事情としてしんしゃくされないことまでの保障が与えられているものと解することはできない」と判示している。 そうすると、昭和53年大法廷判決は、原則として外国人に政治活動の自由を認めつつ、在留期間更新の拒否を判断するに当たって当該活動をしんしゃくすることができるという意味で、政治活動の自由に一定の制限を加えることができるということを述べているのみである。すなわち、昭和53年大法廷判決は、外国人在留制度が基本的人権の保障に優先するということを述べているわけではない。 由に一定の制限を加えることができるということを述べているのみである。すなわち、昭和53年大法廷判決は、外国人在留制度が基本的人権の保障に優先するということを述べているわけではない。 ウ憲法の基本的人権は、人が生来的に有する権利を確認するものであって、人権を後発的に創設するものではない。基本的人権とは、憲法よりも上位に位置するものである。 これに対して、外国人在留制度は、入管法という憲法よりも下位に位置する規範によって定められているものであって、外国人の人権が入管法の法律の枠内でのみ保障されるという解釈は、明らかな誤りである。 外国人にも当然に人権は保障されるが、出入国の適正な管理という、日本人とは異なる観点からの制約原理が働くにすぎない。 エ昭和53年大法廷判決は、「特別の条約がない限り、外国人を自国内に受け入れるかどうか、また、これを受け入れる場合にいかなる条件を付するかを、当該国家が自由に決定することができるものとされている」と判示しており、「特別の条約」がある場合には、外国人の入国の自由や在留の権利が保障される旨述べている。 そして、昭和53年大法廷判決以降、日本は、昭和54年8月4日に「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」及び「市民的及び政治的権利に関する国際規約」、昭和56年10月15日に「難民の地位に関する条約」、平成6年5月16日に「児童の権利に関する条約」(以下「児童の権利条約」という。)、平成7年12月20日に「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約」及び「拷問等禁止条約」を批准等してきた。これらの条約は、昭和53年大法廷判決のいう「特別の条約」に該当し、外国人の居住の自由を根拠 7年12月20日に「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約」及び「拷問等禁止条約」を批准等してきた。これらの条約は、昭和53年大法廷判決のいう「特別の条約」に該当し、外国人の居住の自由を根拠付けるものである。 本件では、児童の権利条約は、原告らの居住の自由を基礎付ける「特別の条約」に該当し、原告らには居住の自由が保障される。 オ居住の自由に加えられた制約が合理的なものであるか否かの判断については、居住の自由は、人の人格的自律にとって基本的な自由であることから、単に抽象的に公共の福祉を考えるのではなく、国家が害されるとする「公益」と個人が失うであろう「私益」を個別具体的に検討した上で、制約の合理性を判断すべきである。 (ア) 原告P2及び原告P3は、約17年間にわたり、日本において安定した生活基盤を築き上げてきたのであり、両原告をフィリピンに強制送還することは、生活基盤を根こそぎ剥奪するという極めて重大な不利益を与えることになる。 また、原告子らを両親の国籍国という以外には何ら縁もゆかりもないフィリピンに強制送還することは、学習を受ける機会を剥奪し、かつ、友人らとの交流を絶つことになり、これによって受ける不利益は著しい。 そうすると、本件各裁決により失う原告らの利益は、重大かつ回復不可能なものである。 (イ) 原告らは、本邦入国後、入管法違反以外には何ら法を犯すことなく、善良な市民として地域社会に溶け込んだ生活を送ってきた。 したがって、原告らに在留資格を認めることによって、日本の善良な風俗・秩序に就労環境の安定などの好影響を与えることこそあれ、悪 て地域社会に溶け込んだ生活を送ってきた。 したがって、原告らに在留資格を認めることによって、日本の善良な風俗・秩序に就労環境の安定などの好影響を与えることこそあれ、悪影響を与えることは想定し難い。すなわち、原告らに在留資格を認めないことによって保護されるべき国の利益は存在しない。 カ以上によれば、原告らを退去強制することは、原告らの居住の権利を侵害するものであり、入管法施行規則42条4号の「退去強制が著しく不当」な場合に該当することが明らかである。 (2) 児童の権利条約3条1項違反ア児童の権利条約3条1項は、「児童に関するすべての措置をとるに当たっては、公的若しくは私的な社会福祉施設、裁判所、行政当局又は立法機関のいずれによって行われるものであっても、児童の最善の利益が主として考慮されるものとする。」と規定している。 したがって、長期に滞在する国で養育された子供が、親と共に正規化を望む場合、その子供を退去強制するに当たっては、「児童の最善の利益」が配慮されるべきである。 イ児童の権利条約は、在留資格のない児童についても適用されるものである。 (ア) 児童の権利条約2条1項は、「締約国は、その管轄の下にある児童に対し、児童又はその父母若しくは法定保護者の人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的意見その他の意見、国民的、種族的若しくは社会的出身、財産、心身障害、出生又は他の地位にかかわらず、いかなる差別もなしにこの条約に定める権利を尊重し、及び確保する」としており、国籍や在留資格の有無にかかわらず、締約国の管轄の下にあるすべての児童が、この条約の適用対象になることを明らかにしてい 、いかなる差別もなしにこの条約に定める権利を尊重し、及び確保する」としており、国籍や在留資格の有無にかかわらず、締約国の管轄の下にあるすべての児童が、この条約の適用対象になることを明らかにしている。 (イ) また、児童の権利条約の成立の経緯を見ても、児童の権利保障については国境の壁が取り払われ、締約国が一致共同して、人類の次の世代の育成を約束したものであることが明らかであり、児童の権利条約は、自国の管轄の下にあるすべての児童に対し、この条約の権利保障を義務付けている。 (ウ) 児童の権利条約の国際的実施機関である児童の権利委員会の「条約第44条1項(b)に基づいて締約国によって提出される定期報告書の形式および内容に関する一般指針」パラグラフ35は、児童の権利条約3条1項の解釈として、児童の最善の利益の原則が外国人の子供の在留に関する手続にも適用されることを示している。 (エ) 仮に、出入国の管理の適正という利益が児童の利益に対立する場合も、児童の「最善の利益」は、在留資格制度の枠内で考慮されるというのではなく、対立する利益の内実を慎重に検討しながら、「最善の利益」を害しても真にやむを得ない事情があるのかどうかについて判断されるべきである。 (オ) カナダ、ニュージーランド及びオーストラリア連邦の判例においても、在留資格を有しない児童について、その「最善の利益」を考慮するとされている。 ウ原告子らは、いずれも日本で出生し、日本語環境のみで生育しており、その精神構造は、日本人そのものである。 原告子らにとって、フィリピンへの強制送還は、母国への帰還ではなく、母国からの追放を意味する。 みで生育しており、その精神構造は、日本人そのものである。 原告子らにとって、フィリピンへの強制送還は、母国への帰還ではなく、母国からの追放を意味する。 このような原告子らと、その養育の責務を負っている原告P2及び原告P3について、異議の申出に理由がないとした本件各裁決は、原告子らの「最善の利益」を全く考慮しておらず、児童の権利条約3条1項に違反する。 エ以上によれば、原告らを退去強制することは、児童の権利条約3条1項に違反するものであり、入管法施行規則42条4号の「退去強制が著しく不当」な場合に該当することが明らかである。 (3) 平等原則(憲法14条1項)違反ア平成14年2月以降、少なくとも次の4条件を満たす外国人家族には、在留特別許可が付与されている。 ① 親の日本における在留期間が10年以上であること。 ② 裁決時に最年長の子供が中学校1年生以上であること。 ③ 入管法以外の逮捕歴等がないこと。 ④ 両親がそろっていること。 イ原告らは上記4条件を満たしているにもかかわらず、被告入管局長が原告らの異議の申出に理由がないとしたことは、合理性の見いだせない差別である。 したがって、原告らを退去強制することは、平等原則(憲法14条1項)に違反するものであり、入管法施行規則42条4号の「退去強制が著しく不当」な場合に該当することが明らかである。 (五) 以上のとおり、原告らを退去強制することは、①居住の自由の侵害、②児童の最善の利益の侵害、③平等原則違反というそれぞれの点で、「著し く不当」な場合に該当することが明らかである。 (五) 以上のとおり、原告らを退去強制することは、①居住の自由の侵害、②児童の最善の利益の侵害、③平等原則違反というそれぞれの点で、「著しく不当」(入管法施行規則42条4号)であるにもかかわらず、これを看過して、原告らの異議の申出に理由がないと判断した本件各裁決は、重大な事実誤認があり、違法である。 (被告らの主張)入管法施行規則42条4号の「退去強制が著しく不当である」とは、容疑者が退去強制事由の一に該当するとの入国審査官の認定に誤りがないとした特別審理官の判定は適法であるが、諸般の事情を考慮すれば、なお退去強制が著しく不当であると認められることをいう。入管法施行規則が、このような理由書の提出を認めたのは、入管法50条の定める法務大臣による在留特別許可の許否の判断の参考とするためであって、「退去強制が著しく不当とは認められないので異議の申出に理由がない」という判断が存在するという前提に立つものではない。 したがって、原告らの主張は失当である。 2 争点2について(原告らの主張)(一) 仮に、「退去強制が著しく不当」な場合に該当しないとしても、原告らに在留特別許可を付与しなかった本件各裁決は、被告入管局長が裁量権の範囲を逸脱又は濫用したものとして、違法である。 (二) 被告入管局長の裁量権(1) 被告入管局長は、法務省の局の一つである入国管理局の下に八つある地方入国管理局のうちの一つの長にすぎない。 被告入管局長の下には、総務課、職員課、経理課、用度課の4課、審査管理部門、就労審査部門、永住審査部門、違反審査部門、審判部門などの15部門等があるだけであ の長にすぎない。 被告入管局長の下には、総務課、職員課、経理課、用度課の4課、審査管理部門、就労審査部門、永住審査部門、違反審査部門、審判部門などの15部門等があるだけである。被告入管局長は、法務大臣と異なり、閣議に出席するわけでも、内閣の一員として国会に対して責任を負うわけでもない。 したがって、被告入管局長は、東京入管の管轄する地域における外国人の在留状況や、過去の在留特別許可に関する取扱いについて通暁しているとしても、その時々の国内の政治・経済・社会等の諸事情、外交政策、当該外国人の本国との外交関係等の諸般の事情を総合的に考慮する特別な能力もなければ、政治的配慮をする資格もない。 (2) 在留特別許可を付与するか否かの判断については、おおむね画一的な判断がされてきた。入管法69条の2、入管法施行規則61条の2第10号が、在留特別許可の許否に関する法務大臣の権限を地方入国管理局長に委任するとしたのは、在留特別許可を付与される者が多数に上り、ごく特殊な事件を除き、その許否に関する判断が画一的に行われていた実態を素直に認めたものである。 (3) したがって、被告入管局長は、事実を正確に把握した上で、各種通達、先例、出入国管理基本計画、国際的な準則等の示すところに従い、退去強制が著しく不当であるか否かを慎重に判断すべきで、考慮すべき事実を考慮せず、考慮すべきでない事実を考慮して処分の理由が判断された場合、あるいは、その判断が合理性を持たない場合には、裁量権の範囲の逸脱又は濫用があるとして、違法となる。 (三) 本件各裁決における裁量権の範囲の逸脱又は濫用前記のとおり、本件各裁決については、前記の原告らの日本での生活状況に照らすと、 濫用があるとして、違法となる。 (三) 本件各裁決における裁量権の範囲の逸脱又は濫用前記のとおり、本件各裁決については、前記の原告らの日本での生活状況に照らすと、①居住の自由の侵害、②児童の最善の利益の侵害、③平等原則違反があり、被告入管局長が、原告らに在留特別許可を付与しなかった判断には、裁量権の範囲の逸脱又は濫用があることが明らかである。 (四) 比例原則違反(1) 被告入管局長の裁量は、比例原則によって拘束されているが、本件各裁決は、以下のとおり、比例原則の中でも狭義の比例性(当該手段を用いることによって得られる利益が当該手段によって損なわれる利益を上回っていること)に違反する。 (2) まず、前記のとおり、原告らが退去強制によって奪われる利益が甚大であることは明らかである。 (3) これに対し、原告らは、善良な市民として地域社会に溶け込んだ生活を送っており、次のとおり、原告らに在留資格を与えないことによって保護されるべき国の利益は何も存在しない。 ア在留特別許可の制度は、そもそも非正規滞在者を対象としているものであるから、原告らに在留資格を与えたとしても、在留資格制度の根底を揺るがし、公正な出入国管理の秩序を乱すことにはならない。 また、原告らは、日本において長年善良な市民として生活を送り、勤労の義務や納税の義務等を果たしてきたものであって、原告らに在留資格を与え、従来どおりの生活を続けさせることが、日本の出入国管理の秩序を乱すとは考えられない。 イ日本政府は、公式見解として外国人単純労働者の受入れを行わないとしながら、日系人を初め、研修生・技能実習生、資格外就労許可を 、日本の出入国管理の秩序を乱すとは考えられない。 イ日本政府は、公式見解として外国人単純労働者の受入れを行わないとしながら、日系人を初め、研修生・技能実習生、資格外就労許可を得た留学生・就学生、超過滞在者などの非公式な単純労働者を受け入れている。 平成12年11月に行われた世論調査の結果でも、合計で7割近くの国民が、外国人を単純労働力の担い手とすることを容認している。 このように、外国人による単純労働に対する需要は現に存在し、既に非公式には受け入れられているのであり、国民による総意も存在している。 したがって、原告らに在留資格を認めることにより、日本人労働者の労働条件の向上が阻害されたり、雇用不安が増大するということは考えられない。 ウアメリカ合衆国、フランス共和国、イタリア共和国、スペイン、ポルトガル共和国、ギリシャ共和国、オランダ王国、ベルギー王国、英国、カナダ、オーストラリア連邦、タイ王国、大韓民国(以下「韓国」という。)及び台湾においては、国益にかなうものであることを理由にして、大規模な非正規滞在者の正規化が行われている。 これら諸外国における実績から見ても、在留資格がない者を正規化することが、一概に国益を害するものであるといえないことは明らかである。 エ原告らと同様に在留特別許可の付与を求めた外国人家族に対して在留特別許可が付与されることを希望する署名は4万6101名分も集まっている。 また、原告らの支援者から、原告らの在留を希望する署名も1062名分集まっている。 さらに、593名の研究者は、超過滞在外国人に在留特別許可を付与する 分も集まっている。 また、原告らの支援者から、原告らの在留を希望する署名も1062名分集まっている。 さらに、593名の研究者は、超過滞在外国人に在留特別許可を付与するよう求める共同声明を発表している。 したがって、原告らに在留特別許可を付与することは、公益を害するものではなく、むしろ市民の声に合致するものである。 (4) 原告らが平穏に長期間滞在しているという事実は、在留特別許可を付与するか否かの判断に当たっては、在留特別許可の付与を求める者にとって有利な事情の第一に挙げることが、実務上少なくとも黙示的な基準として確立している。 ア在留資格を持たないまま、長期にわたって在留を継続する者が相当数に上っていることは公知の事実であるが、そのような事態は相当以前から継続している。 昭和56年の入管法改正の際、同年5月15日の衆議院法務委員会において、横山利秋委員が、「密入国してから10年以上くらいたった者、そしていま大臣のおっしゃるように社会生活も素行も生活水準も安定をしておるという者については、自主申告をした場合には検討に値するというふうな水準だと言われておるのですが、いかがですか。」と質問したところ、当時の法務省入国管理局長(以下「法務省入管局長」という。)は、「個々の事案につきましては、その不法入国者の居住歴、家族状況等、諸般の事情を慎重に検討して、人道的配慮を要する場合には特にその在留を認めているわけでございます。したがいまして、不法入国者が摘発されまして強制退去の手続がとられた後でも、法務大臣の特別在留許可がこういう場合には出るということになります。」とした上、「潜在不法入国者のうちには、子供がいよいよ学齢に達した 、不法入国者が摘発されまして強制退去の手続がとられた後でも、法務大臣の特別在留許可がこういう場合には出るということになります。」とした上、「潜在不法入国者のうちには、子供がいよいよ学齢に達したとか、そういう事情からみずから名のり出て、先生のおっしゃいましたいわゆる自主申告をする人がおります。こういう場合には、私どもといたしましては、当然、情状を考慮するに当たりましてプラスの材料と考えております。」と答弁しており、当時の法務大臣も、「特別在留許可あるいは永住許可をもらえるのはどういう人であるかというある程度の基準が明らかになってくることも、私はいまのようなお話を伺っていますと大切なことじゃないかなと思います。これまでやってきたことを振り返ってみて、まとめるのも一つかなと、いまお話を伺いながら考えたわけであります。さらに、個々の事案について処理する場合にも、従来以上に人道的な配慮を加えていくことも一つの転換になるんじゃないかな、こう思うわけでございまして、私としてはできる限り人道的な配慮というものを重く見ていきたいな、こう思っております。」と答弁している。 イまた、昭和56年の入管法改正によって、入管法61条の9及び10が新設され、同条に基づいて平成12年3月24日に策定された第2次出入国管理基本計画(法務省告示第119号)は、「在留特別許可を受けた外国人の多くは、日本人等との密接な身分関係を有し、また実態として、様々な面で、我が国に将来にわたる生活の基盤を築いているような人である。より具体的な例としては、日本人と婚姻し、その婚姻の実態がある場合で、入管法以外の法令に違反していない外国人が挙げられる。法務大臣は、この在留特別許可の判断に当たっては、個々の事案ごとに在留を希望する理由、その外国人の家族状況、生活状況 、その婚姻の実態がある場合で、入管法以外の法令に違反していない外国人が挙げられる。法務大臣は、この在留特別許可の判断に当たっては、個々の事案ごとに在留を希望する理由、その外国人の家族状況、生活状況、素行その他の事情を、その外国人に対する人道的な配慮の必要性と他の不法滞在者に及ぼす影響とを含めて総合的に考慮し、基本的に、その外国人と我が国社会のつながりが深く、その外国人を退去強制することが、人道的な観点等から問題が大きいと認められる場合に在留を特別に許可している。」と明記している。 この趣旨は、我が国において、将来にわたる生活の基盤を築き、在留中の素行に問題がなく、その外国人と我が国社会のつながりが深いことは、在留特別許可を付与する方向に考慮すべき有利な事情としていると認めることができる。 ウ内閣総理大臣小渕恵三(以下「小渕総理大臣」という。)は、出入国管理行政に関する質問に対して、平成12年1月28日、「これらの韓国人でその在留を特別に許可されたのは、我が国において同国人の永住者や日本人等と婚姻した場合又は不法入国者同士の夫婦がいずれも十数年以上という長期にわたり我が国に在留していた場合等である。 」と答弁し、「不法入国者同士の夫婦がいずれも十数年以上という長期にわたり我が国に在留していた」という事実が、韓国人の永住者や日本人等と婚姻した場合と同様に有利な事情の第一となっていることを認めている。 その上で、小渕総理大臣は、「約27万人の不法残留者の多くは、我が国において、そのような家族を形成した者でも長期間在留している者でもないので、この種の事案と同列に扱うことはできないと考える。 」と答弁している。 この答弁によれば、内閣総理大臣 いて、そのような家族を形成した者でも長期間在留している者でもないので、この種の事案と同列に扱うことはできないと考える。 」と答弁している。 この答弁によれば、内閣総理大臣も、在留特別許可を付与するに当たっては、超過滞在者等が韓国人か他の外国人かを問わず、「我が国において、そのような家族を形成した者」又は「長期間在留している者」であることを在留特別許可の付与を求める者にとって有利な事情の第一に挙げることが、実務上少なくとも黙示的な基準として確立していることを認めている。 (5) 以上のとおり、本件各裁決によって損なわれる利益と得られる利益とを比較衡量すると、損なわれる利益の方がはるかに大きいことは明らかである。 したがって、被告入管局長による本件各裁決は、比例原則に違反するものであって、違法である。 (被告らの主張)(一) 在留特別許可に関する裁量権について(1) 在留特別許可の許否を的確に判断するには、外国人に対する出入国の管理及び在留の規制目的である国内の治安と善良な風俗の維持、保健・衛生の確保、労働事情の安定等、国益の保持の見地に立って、当該外国人の在留中の一切の行状等の個人的な事情のみならず、国内の政治・経済・社会等の諸事情、国際情勢、外交関係、国際礼譲等、諸般の事情が総合的に考慮されなければならない。このような見地から、入管法は、在留特別許可の付与を国内及び国外の情勢について通暁する法務大臣及び法務大臣から権限の委任を受けた地方入国管理局長(以下、併せて「法務大臣等」という。)の裁量にゆだねたものである。 そして、在留特別許可における法務大臣等の裁量は、在留期間更新許可における裁量の範囲よりも質的に格段 理局長(以下、併せて「法務大臣等」という。)の裁量にゆだねたものである。 そして、在留特別許可における法務大臣等の裁量は、在留期間更新許可における裁量の範囲よりも質的に格段に広範なものであるから、在留特別許可における判断が違法となる事態は容易には考え難く、極めて例外的にその判断が違法となり得る場合があるとしても、それは、在留特別許可の制度を設けた入管法の趣旨に明らかに反するなど極めて特別な事情が認められる場合に限られると解される。 上記の特別な事情としては、法律上当然退去強制されるべき外国人であっても、なおかつ本邦に在留することを認めなければならない積極的な理由が必要であり、このような極めて特別な事情が存在する場合に、初めて在留特別許可を付与しないことが違法となる余地が生ずるにすぎない。 (2) 入管法は、その権限を被告入管局長に委任するに際し、何ら制約を設けていないのであるから、同権限が法務大臣から被告入管局長に委任されたことをもって、従前法務大臣に与えられていた裁量権の範囲が法的に狭まるということはできない。 また、被告入管局長について、閣議に出席しないからといって、政治・経済・社会等の諸事情、外交政策等の諸般の事情を判断する能力がないということはできないし、管轄外の地域の事情に疎いという根拠もない。 そして、在留特別許可の制度が画一的に運用されているという証拠はないし、仮にそのような運用が行われ、その根拠となる行政庁の準則があったとしても、この準則に違反してされた処分が当然に違法となるものではない。 (二) 本件各裁決について(1) 原告P2及び原告P3は、本邦入国の目的がそもそも不法就労であっ しても、この準則に違反してされた処分が当然に違法となるものではない。 (二) 本件各裁決について(1) 原告P2及び原告P3は、本邦入国の目的がそもそも不法就労であった。そして、原告P2は、本邦入国時において入国目的を明らかにすれば入国が不可能であると考え、入国審査官に虚偽の申告をした上、不正に上陸許可を得たものであり、原告P3は、有効な旅券を所持することなく他人名義の旅券を使用して不法に本邦に入国したものである。 原告P2及び原告P3はそれぞれ、本邦入国後間もなくから不法就労を継続していたのであり、両原告の不法残留・不法入国及び不法就労に至った経緯は極めて計画的であって、その在留状況は不良であり、出入国管理行政上看過し難い。 (2) 原告P2は、従前、自動車を保有し、無免許運転を繰り返していたものであり、このような行為は、道路交通法64条の要件を構成し、同法117条の4第1号の罰則の対象となるものである。 また、原告P3は、平成15年○月○日○時00分ころ、普通乗用自動車を無免許で運転し、長野県の交差点に赤色信号を無視して侵入した上、物損事故を引き起こしたことから、長野県望月警察署に検挙され、平成16年3月9日、λ簡易裁判所において、無免許運転により、○の刑に処せられている。 さらに、原告らの支援者であったP8は、「原告P2が注意されても無免許運転をやめないこと、知人の借金を返済しないことなどから原告らの在留が認められることに疑問がある。」旨述べ、従前原告らの身元保証人となったP9は、「原告らは生活が苦しいと言って借金をする割には、原告P2らが車を買って運転し、原告子らがねだるものを買ってやったりするなど生活が苦しいように がある。」旨述べ、従前原告らの身元保証人となったP9は、「原告らは生活が苦しいと言って借金をする割には、原告P2らが車を買って運転し、原告子らがねだるものを買ってやったりするなど生活が苦しいようには思われず、借金は踏み倒して勤務先をやめたり、勤務先の軽油を抜き取ろうとする。」旨述べている。これらに照らせば、原告らについて、善良な市民として地域社会に溶け込んだ生活を送っていたなどと評価することは大いに疑問である。 (3) 原告P2及び原告P3は、フィリピンで出生して成育し、本国内で生活を営んできた者であって、来日するまで我が国とは何ら関わりのなかった者である。また、原告P2及び原告P3は、十分な稼動能力を有する成人である上、原告P1の祖母、叔母、従兄弟等の親戚がフィリピンで生活している。そして、原告P2及び原告P3が、不法就労による収入をこれら親戚に送金していたほか、電話やクリスマスカード等による交流があったものである。これらを併せ考えれば、原告らがフィリピンに帰国したとしても、本国での生活に特段の支障があるとは認められない。 (4) 原告子らは、いまだ可塑性に富む年齢にあり、仮に当初は、言語や生活習慣の面で多少の困難を感じることがあるとしても、両親と共に帰国するのが原告子らの福祉又は最善の利益にかなうことは明らかである。 また、原告子らが、自国の生活習慣及び言語等に習熟した原告P2及び原告P3と共に帰国し、他の親族の在住するフィリピンでの生活に慣れ親しむことは十分に可能である。仮に、帰国当初、生活様式、言語や友人関係等の面で多少の困難を感じることがあるとしても、このような事態は、親の海外転勤や国内異動等に伴う国内外への住居移転や転校においても、多かれ少なかれ生じ得るものであって、在 、生活様式、言語や友人関係等の面で多少の困難を感じることがあるとしても、このような事態は、親の海外転勤や国内異動等に伴う国内外への住居移転や転校においても、多かれ少なかれ生じ得るものであって、在留特別許可の制度を設けた趣旨に明らかに反するような特別の事情と評価すべきものではない。そして、フィリピンの教育事情や福祉事情等について、児童の生育上特段の問題があるとも認められない。 そもそも、原告子らへの教育や保護の責任は、親である原告P2及び原告P3、次いで国籍国であるフィリピン政府にある。したがって、将来、フィリピンで原告子らの生活に困難が生じ得るというのならば、そうならないように原告P2及び原告P3が配慮すべきであった。 仮に、何らかの不利益が原告子らに生じ得るとしても、それは原告P2及び原告P3が自ら招いた事態であって、原告らに在留特別許可を付与しなかった被告入管局長が、その裁量権の範囲を逸脱又は濫用したことにならないことは明らかである。 (5) 憲法上、外国人は、本邦に入国する自由を保障されているのではないことはもちろん、在留の権利又は引き続き本邦に在留することを要求する権利を保障されているものでもないから、本件各裁決が原告らの居住の自由を侵害するものということはできない。 (6) 児童の権利条約は、個々の具体的な権利について規定したものとみることはできず、裁判規範として直接適用可能なものということはできない。 また、児童の権利条約が、外国人が本邦に在留する権利までも保障したものではないことは、9条4項が、父母の一方若しくは双方又は児童の退去強制の措置に基づき、父母と児童が分離されることがあり得ることを予定していることからも明らかであ 本邦に在留する権利までも保障したものではないことは、9条4項が、父母の一方若しくは双方又は児童の退去強制の措置に基づき、父母と児童が分離されることがあり得ることを予定していることからも明らかであり、児童の権利条約が、国際慣習法上の原則を基本的に変更するものとは解されない。 そして、原告子らの「最善の利益」は、在留制度の枠内で保障されるにすぎないものであり、本件各裁決は児童の権利条約3条に違反するものではない。 (7) 在留特別許可は、諸般の事情を総合的に考慮した上で、個別的に決定されるべき恩恵的措置であって、その許否を拘束する行政先例又は一義的、固有的基準は存在しないから、本件各裁決が平等原則に違反して違法になるということはできない。 このことは、在留特別許可について、その付与すべき要件が何ら具体的に規定されていないのは、その判断を法務大臣等の裁量に任せ、その裁量権の範囲を広範なものとする趣旨からであるとと解されることなどに照らしても明らかである。 (8)ア在留特別許可は、退去強制事由のある外国人に対して、法務大臣等が恩恵的に付与するものであり、比例原則にのっとって許否の判断をするものではない。在留特別許可を付与するか否かの判断が、法務大臣等の広範な裁量にゆだねられていることからすれば、その司法審査のあり方としては、裁判所が法務大臣等と同一の立場に立って在留特別許可を付与すべきであったか否かを判断し、原告らの利益と国益を比較衡量するべきものではなく、法務大臣等の第一次的な裁量判断が既に存在することを前提として、在留特別許可の制度を設けた入管法の趣旨に明らかに反するような特別の事情が認められるか否かが判断されるべきである。 イ(ア) 在留 一次的な裁量判断が既に存在することを前提として、在留特別許可の制度を設けた入管法の趣旨に明らかに反するような特別の事情が認められるか否かが判断されるべきである。 イ(ア) 在留特別許可は、退去強制事由に該当する外国人について、その在留中の一切の行状等の個別的事情を考慮するのみならず、国内の治安や善良な風俗の維持、保健衛生の確保、労働市場の安定等の政治、経済、社会等の諸事情、当該外国人の本国との外交関係、我が国の外交政策、国際情勢といった様々な事情を、その時々に応じ、将来の変化にも配慮するなどして総合的に考慮した結果、我が国の国益に利すると認められる場合に、法務大臣等が恩恵的に付与するものであり、付与に当たっての法務大臣等の裁量は極めて広範なものである。平穏に長期間滞在した事実を、在留特別許可を付与するか否かの判断に当たって、第一の考慮事情とすべき実務上の基準があるわけではない。 (イ) そもそも不法入国は入管法70条1項1号、不法残留は同項5号又は8号による処罰の対象となる違法行為であり、不法残留者を雇用することもまた、入管法73条の2によって処罰の対象とされている。 原告P2及び原告P3が、本邦において長期間不法就労活動を行ったという事実は、違法行為が長期間に及んだことを意味するものであるから、被告入管局長が、原告らの在留特別許可の許否を判断する上で、当該事実を原告らに有利な事情と解しなければならない理由はない。むしろ、長期にわたる不法残留等の事実や不法就労の事実等は、在留特別許可の判断において消極的要素として評価されるべきものである(ウ) 昭和56年5月15日の衆議院法務委員会における法務省入管局長の答弁については、長期間我が国に在留 在留特別許可の判断において消極的要素として評価されるべきものである(ウ) 昭和56年5月15日の衆議院法務委員会における法務省入管局長の答弁については、長期間我が国に在留している在日韓国・朝鮮人について、自主的に申告してきた場合には、自主申告の点についてはプラスに評価すると述べているにすぎず、最終的に在留特別許可を付与するか否かは、個別の事案ごとに、居住歴、家族状況等諸般の事情を考慮して、人道的配慮を要する場合には、在留を認める場合もあると述べているものである。 (エ) 第2次出入国管理計画は、不法滞在の長期化が問題であることを明確に示した上で、個別の事情を考慮して在留特別許可の制度を設けていることを述べ、日本人の配偶者のような我が国と密接な身分上の関係を有する者で、かつ、婚姻の実態があるような将来にわたる生活の基盤が既にある者について、在留特別許可を付与する場合があるとしているのであって、原告らのような、単に我が国に長期間滞在している外国人について述べているものではない。 (オ) 小渕総理大臣の答弁は、我が国社会と密接な関係を有する場合がある韓国からの非正規入国者についてのものである上、上記答弁は、結局、最終的に在留特別許可を付与するか否かは、個別の事案ごとに、家族状況や内外の諸情勢等を総合的に考慮して判断すると述べているものである。 ウ不法残留者を中心とする不法就労者が我が国に多数存在することは事実であるが、それは多数の不法就労者が新たに発生し続けている結果であって、不法就労活動が我が国の社会に容認されているからでもなければ、厳格な取締りが行われていないからでもない。 また、一定の時点で違法労働者を合法化する政策で いる結果であって、不法就労活動が我が国の社会に容認されているからでもなければ、厳格な取締りが行われていないからでもない。 また、一定の時点で違法労働者を合法化する政策であるアムネスティについては、様々な問題点が指摘されている。例えば、アムネスティは、出入国管理制度の基本を揺るがしかねない危険があるとされている。つまり、非合法で入国した人々が合法化されることになれば、以後非合法な入国をあえてすることで得られるであろうメリットに変わりがない限り、新たな非合法入国者が後を絶たなくなるおそれが大きい。 アムネスティは、違法労働者の入国規制を強化する政策と同時に行われて初めて意味をなすことから、違法労働者の雇用に関係した使用者やブローカーなどに対する規制強化、特に処罰などを伴うことになる。この結果、使用者は、アムネスティの条件を満たさず、合法化されない違法労働者を新たに雇うことはしなくなるから、これらの労働者は、より劣悪な非合法労働市場に潜伏することになる旨の指摘もある。 このようにアムネスティについては、様々な問題点が指摘されており、アムネスティを行うことが国益にかなうなどという評価が定まっている状況にはない。 エ以上によれば、長期間在留したことを第一の考慮事情とすべき実務上の基準が確立していたなどということはできない。 (9) 原告らは、入管法24条4号ロ、同条1号又は同条7号に該当することは明らかであり、以上のとおり、在留特別許可の制度を設けた入管法の趣旨に明らかに反するような特別の事情も認められないから、本件各裁決は適法である。 3 争点3について(原告らの主張)退去強制手続において の制度を設けた入管法の趣旨に明らかに反するような特別の事情も認められないから、本件各裁決は適法である。 3 争点3について(原告らの主張)退去強制手続において、法務大臣から権限の委任を受けた被告入管局長は、入管法49条1項の異議の申出に対し、異議の申出に理由があるかどうかを裁決して、その結果を被告主任審査官に通知しなければならず、被告主任審査官は、被告入管局長から異議の申出に理由がない旨の裁決をした旨の通知を受けたときは、速やかに退去強制令書を発付しなければならないとされている。 したがって、違法な本件各裁決に引き続いて行われた本件各退令処分も、本件各裁決の違法を承継し、違法である。 (被告らの主張)退去強制手続において、法務大臣等から、異議の申出に理由がない旨の裁決をした旨の通知を受けた場合、主任審査官は、退去強制令書を発付するにつき全く裁量の余地はないのであるから、本件各退去強制令書の発付処分も適法である。 第三当裁判所の判断一認定事実前記前提事実に加え、証拠(各事実の後に付記する。)及び弁論の全趣旨を総合すると、以下の事実を認めることができる。 1 原告P2及び原告P3の入国状況等について(一) 原告P2の入国状況等について原告P2は、昭和○年(○年)○月○日、フィリピンにおいて出生したフィリピン国籍を有する男性の外国人であり、大学を約2年間で中退した後、トラック運転手として働いていた(乙9の3の1、17の2、20の2)。 原告P2は、昭和61年(1986年)1月15日、フィリピンにおいて原告P3と婚姻し、トラック運転手として生活に困らない程度の収入を得ていたが、今後の生 、17の2、20の2)。 原告P2は、昭和61年(1986年)1月15日、フィリピンにおいて原告P3と婚姻し、トラック運転手として生活に困らない程度の収入を得ていたが、今後の生活に不安があったため、日本で働いて収入を得ようと考えた(乙9の3の1、17の2)。 そして、原告P2は、同年5月15日、日本で働いて収入を得る目的で、成田空港に到着し、東京入管成田支局入国審査官から、旧入管法4条1項4号所定の在留資格、在留期間15日とする上陸許可を受けて、本邦に上陸した。 (二) 原告P3の入国状況等について原告P3は、昭和○年○月○日、フィリピンにおいて出生したフィリピン国籍を有する女性の外国人であり、高校を卒業した後、デパートの販売員として働いていた(乙10の3の2、18の6)。 原告P3は、昭和61年1月15日、フィリピンにおいて原告P2と婚姻した後、仕事を辞めて、父親と原告P2の収入で生活していた。原告P3は、平均的な水準の生活を送っていたが、将来子供が出生した後の生活などを考え、日本で働いて収入を得ようと考えた。(乙10の3の2、18の6)原告P3は、旅券を所持していなかったため、日本円にして約15万円程度を支払って、原告P3の写真の貼付された「P7」名義の偽造旅券を入手した(乙10の1、18の6)。 そして、原告P3は、昭和61年4月12日ころ、日本で働いて収入を得る目的で、成田空港に到着し、東京入管成田支局入国審査官に対し、他人である「P7」名義の偽造旅券を提示して、本邦に不法に入国した。 2 原告らの在留状況について(一) 原告P2の在留状況について(1) 原告P2は 官に対し、他人である「P7」名義の偽造旅券を提示して、本邦に不法に入国した。 2 原告らの在留状況について(一) 原告P2の在留状況について(1) 原告P2は、本邦に上陸した後、在留資格の変更又は在留期間の更新を受けることなく、在留期限である昭和61年5月30日を超えて、現在まで本邦に不法残留している。 (2) 原告P2は、昭和61年5月15日に本邦に上陸した後、既に原告P3が居住していた長野県小諸市に移動し、原告P3と共にホテルの清掃員として働き始めた(乙9の3の1、17の2)。 原告P2は、昭和62年ころ、群馬県αに転居し、電機会社で工員として約2年間勤務し、その間、原告P1が出生した(乙11の2、17の2)。 (3) その後、原告P2は、λ市に転居し、γ有限会社に建設作業員として約7年間勤務し、平成8年ころから、δ有限会社に建設作業員として勤務した。その間、原告P4、原告P5及び原告P6が出生した。(乙11の2、17の2)原告P2は、平成13年3月ころ、λ市ε所在のζ5号室から、δの寮であるλ市η所在の一軒家に転居した(乙1の1、18の6、20の1及び2)。 原告P2は、平成14年5月にδを退職し、λ市ε所在のθ501号室に転居した(乙1の1、18の6、20の1及び2)。 なお、原告P2は、仮放免中であったにもかかわらず、平成13年3月に仮放免許可書記載の住所である前記のζ5号室から転居したことを東京入管に届け出ていなかったため、原告らの所在が一時的に東京入管に分からなくなるということがあった(乙20の1、32の2)。 (4) 原告P2は、本件退令処分1によ ら転居したことを東京入管に届け出ていなかったため、原告らの所在が一時的に東京入管に分からなくなるということがあった(乙20の1、32の2)。 (4) 原告P2は、本件退令処分1による収容に至るまで、原告P3及び原告子らと同居し、円満な家庭生活を営んできた(乙20の1)。 (5) 原告P2は、δを退職した後、建設作業員のアルバイトなどをし、平成14年8月から本件退令処分1により収容されるまで、γに建設作業員として勤務していた(乙20の1)。 原告P2は、γにおいて、月曜日から土曜日までの間、朝8時から夕方5時まで勤務し、月に手取りで約20万円の収入を得ていた(乙20の1)。 原告P2は、前記のθ501号室の家賃・共益費として毎月5万円を支払っていた(乙20の1)。 また、原告P2は、δの社長からの借金や原告子らの出産費用の借金を有していたが、徐々に返済して、借金の残額は減っていた(乙18の6、20の1)。 (6) 原告P2は、平成13年ころ、軽ワゴン車を所有して、無免許運転を繰り返していたが、逮捕されたり、刑事処分を受けたりしたことはなかった(乙20の1、原告P1本人、弁論の全趣旨)。 (7) 原告P2は、タガログ語、英語及びスペイン語を使用することができるほか、日常生活に支障のない程度に日本語を話すことができ、日本語のスポーツ新聞を読むこともできる(乙9の2、17の2、20の1)。 (8) 原告P2は、日本にもフィリピンにも貯金などのめぼしい財産を有していない(乙17の2、原告P1本人)。 原告P2は、病気を患っていた原告P3の母親や兄弟に1回当たり2万円くらいを不定期 、日本にもフィリピンにも貯金などのめぼしい財産を有していない(乙17の2、原告P1本人)。 原告P2は、病気を患っていた原告P3の母親や兄弟に1回当たり2万円くらいを不定期に送金していた(原告P1本人)。 (9) 原告P2の家族は、母と姉がカナダ、弟がアメリカ合衆国に在住しているほか、姉と3人の兄弟はフィリピンに在住している(乙17の2、20の1)。 原告P2は、毎年、両親の誕生日のころ、フィリピンの実家に集まった親族と連絡を取っていた(乙20の1)。 (10) 原告らについては、λ市及びその近隣に居住する1062名から、原告らの在留を希望する旨の署名が提出されている(甲47)。 (二) 原告P3の在留状況について(1) 原告P3は、昭和61年4月12日ころに本邦に不法入国した後、現在まで本邦に不法在留している。 (2) 原告P3は、本邦に不法入国した後、長野県小諸市に転居し、原告P2と共にホテルで清掃員として働き始めた。約1年9か月間ホテルで働いた後、原告P3は、原告P2と共に群馬県αに移動し、電機会社の工員として勤務していた。(乙10の3の2、18の6)原告P3は、昭和○年○月○日、群馬県群馬郡α所在の病院において、原告P2との間の子である原告P1を出産した。原告P3は、原告P1の出産後、子育てのために仕事を辞め、原告P2の収入で生活していた。(乙10の3の2、18の6)(3) 原告P3は、原告P2と共に、λ市に転居し、平成○年○月○日に原告P4、平成○年○月○日に原告P5、平成○年○月○日に原告P6を出産した(乙18の6)。 原告P3は、平成12年 告P3は、原告P2と共に、λ市に転居し、平成○年○月○日に原告P4、平成○年○月○日に原告P5、平成○年○月○日に原告P6を出産した(乙18の6)。 原告P3は、平成12年ころから、再びホテルで清掃員として働くとともに、モーター作りの内職をして、月額約10万円の収入を得ていた。しかし、原告P3は、原告P1の学校の都合などのため、約1年間ほどで、ホテルの仕事を辞め、本件裁決2まで、カメラの部品作りの内職をしていた。(乙18の6、20の1)(4) 原告P3は、タガログ語及び英語を使用することができるほか、日常生活に支障のない程度に日本語を話すことができるが、平仮名、片仮名及び簡単な漢字しか日本語の読み書きをすることができない(乙18の6、20の2)。 (5) 原告P3の家族は、母親と6人の兄弟姉妹がフィリピンに在住している(乙18の6)。 原告P3は、フィリピン在住の親族とは国際電話やクリスマスカードを通じての交流がある(原告P1本人)。 (三) 原告P1の在留状況について(1) 原告P1は、昭和○年○月○日、群馬県群馬郡α所在の病院において出生した。 原告P1は、旧入管法22条の2第1項の定める在留期限である同年8月19日を超えて、本邦に不法残留している。 (2) 原告P1は、λ市内の保育園に通った後、平成7年4月に、λ市立ε小学校に入学し、近所の友人と共に片道40分くらいかけて毎日通学していた(甲12の1、31、原告P1本人)。 原告P1は、小学校で多数の日本人生徒と友人となり、友人からは「P1」と呼ばれていた。原告P1の言葉も生活習慣も、日本人の友人たちと何ら変わるこ の1、31、原告P1本人)。 原告P1は、小学校で多数の日本人生徒と友人となり、友人からは「P1」と呼ばれていた。原告P1の言葉も生活習慣も、日本人の友人たちと何ら変わることがなく、原告P1も周囲の友人たちも原告が外国人であることを全く意識することはなかった。(甲12の2、31、原告P1本人)原告P1は、特に習ったわけではなかったが、書道が上手であり、小学校から中学校にかけて、毎年のように書道展や書道コンクールで表彰されたり、作品が巡回展で展示されたりしていた(甲6の1から5まで、24の1及び2、31、原告P1本人)。 (3) 原告P1は、原告P2及び原告P3が、不法入国・不法残留している者であることを全く知らなかった。そして、原告P1は、小学校5年生であった平成11年11月に、原告P2と原告P3が東京入管入国警備官に摘発されたときに、自らが不法残留者であることを初めて知り、非常にショックを受け、その後約2週間、通学することができなかった。(甲31、原告P1本人)原告P1は、友人から手紙や電話により励まされたことや、平成11年12月に、小学校の助け合い委員会の委員長になったことから、再度登校するようになった(原告P1本人)。 (4) 原告P1は、上記委員会の委員長として、福祉施設や老人ホームを訪問して、入所者と話をしたり、歌を歌ったりする活動を行うようになった。原告P1は、上記活動をきっかけに、将来は福祉の仕事に携わりたいと考えるようになった。(甲31、原告P1本人)原告P1は、平成12年4月に小学校6年生になると、最上級生として、ドッジボールクラブの部長や運動会のリレーチームのキャプテンになったり、卒業文集 。(甲31、原告P1本人)原告P1は、平成12年4月に小学校6年生になると、最上級生として、ドッジボールクラブの部長や運動会のリレーチームのキャプテンになったり、卒業文集の編集委員になったりするなどして、勉強以外の活動も積極的に行っていた(甲5、31、原告P1本人)。 (5) 原告P1は、平成13年4月にλ市立ε中学校に入学し、片道1時間くらいかけて、毎日通学するようになった(甲31、原告P1本人)。 原告P1は、中学校1年生の秋にバスケットボール部に入部し、友人や先輩に支えられて、毎日の厳しい練習も頑張っていたが、中学校2年生の終わりに膝のけがで部活をやめることになった(甲31、原告P1本人)。 原告P1は、勉強についても、試験の順位が常に学年で30番以内に入るなど、優れた成績を修めており、特に、国語及び社会科の成績が優れていたが、英語の成績はそれほど良くはなかった(甲7、8、31、原告P1本人)。 原告P1は、中学校2年生の夏に応援委員会の副委員長に任命され、体育大会の壮行会の際に応援団として、応援を行うなどしていた(甲31、原告P1本人)。 原告P1は、中学校でも多数の友人を作り、勉強や様々な課外活動にも積極的に参加していた(甲12の3、31、原告P1本人)。 原告P1は、担任教師や親しくなった教師に勉強や部活のこと、在留資格のことなどについて相談することもあった(甲31、原告P1本人)。 (6) 平成15年3月19日付けで本件裁決3がされ、同年5月7日、中学校3年生になったばかりの原告P1に本件裁決3が告知されるとともに、本件退令処分3がされた(甲31、乙16の3 (6) 平成15年3月19日付けで本件裁決3がされ、同年5月7日、中学校3年生になったばかりの原告P1に本件裁決3が告知されるとともに、本件退令処分3がされた(甲31、乙16の3、24の3、27の3、原告P1本人)。 原告P1は、本件退令処分1により収容された原告P2と離れて生活しなければならない寂しさに耐えながら、引き続き受験勉強や委員会活動を行い、長野県立κ高校に合格して、平成16年4月から、同校で勉学を続けている(原告P1本人)。 (7) 以上のとおり、原告P1は、保育園・小学校・中学校と、日本人生徒と全く変わりない生活を送り、学習面でも優れた成績を修め、学校での様々な活動にも積極的に参加していた。 また、本件退令処分1による原告P2の収容後、原告P3が生活費を稼ぐため仕事をしているため、原告P1は、炊事、洗濯、掃除といった家事を原告P3に代わって行い、弟らの世話もしている(原告P1本人)。 (8) 原告P2及び原告P3は、二人で話すときはタガログ語を使用するが、それ以外の家族の会話は日本語で行っている。そのため、原告P1は、日本語の会話や読み書きの能力には全く問題がないが、タガログ語は全く理解することができず、英語についても、学校で勉強しただけである。(甲31、原告P1本人)また、原告P1は、出生以来一度もフィリピンを訪れたことがなく、フィリピンについては、親戚が住んでいる外国という印象しか持っておらず、その生活習慣や歴史などについての知識も持っていない(甲31、原告P1本人)。 原告P1は、原告ら家族全員で、日本に引き続き在留して、学習を継続し、将来は福祉など人の助けになる仕事に就きたいと 史などについての知識も持っていない(甲31、原告P1本人)。 原告P1は、原告ら家族全員で、日本に引き続き在留して、学習を継続し、将来は福祉など人の助けになる仕事に就きたいと強く希望している(甲31、原告P1本人)。 (四) 原告P4、原告P5及び原告P6の在留状況について(1) 原告P4は、平成○年○月○日、λ市所在の病院において、原告P2及び原告P3の間の子として出生した。 原告P4は、改正前入管法22条の2第1項の定める在留期限である同年3月29日を超えて、本邦に不法残留している。 (2) 原告P5は、平成○年○月○日、λ市所在の病院において、原告P2及び原告P3の間の子として出生した。 原告P5は、改正前入管法22条の2第1項の定める在留期限である同年4月22日を超えて、本邦に不法残留している。 (3) 原告P6は、平成○年○月○日、長野県β所在の病院において、原告P2及び原告P3の間の子として出生した。 原告P6は、改正前入管法22条の2第1項の定める在留期限である平成12年2月19日を超えて、本邦に不法残留している。 (4) 原告P4は、λ市内の保育園に通った後、λ市立ε小学校に通学し、本件裁決4の当時、小学校4年生であった(乙20の1、23の3)。 原告P5は、本件裁決5の当時、λ市内の保育園の年長組に在籍しており、原告P6は、本件裁決6の当時、同保育園の三歳未満児の組に在籍していた(乙23の4及び5)。 (5) 原告P4及び原告P5は、出生以来一度もフィリピンを訪れたことがなく、日本語は不自由なく使用することができるが、タガ 育園の三歳未満児の組に在籍していた(乙23の4及び5)。 (5) 原告P4及び原告P5は、出生以来一度もフィリピンを訪れたことがなく、日本語は不自由なく使用することができるが、タガログ語は全く理解することができない(乙20の1)。 原告P6は、出生以来一度もフィリピンを訪れたことがなく、日本語をようやく理解し始めたところである(乙20の1)。 二争点1(本件各裁決における事実誤認の違法の有無)について原告らは、入管法施行規則42条4号を根拠として、原告らを退去強制することは「著しく不当」であるから、これを看過して、原告らの異議の申出に理由がないと判断した本件各裁決は、重大な事実誤認があり、当然に違法である旨主張する。そこで、まず、被告入管局長が、退去強制が著しく不当であるにもかかわらず、そうではないと事実誤認して入管法49条1項に基づく異議の申出に理由がない旨の裁決をした場合、裁量権の範囲の逸脱又は濫用の問題とは別に、同裁決が当然に違法となるか否かについて検討する。 1 入管法の退去強制手続についてまず、入管法の退去強制手続について概観する。 (一) 入国審査官は、入管法44条の規定により、入国警備官から、入管法24条各号の一に該当すると思料される外国人(以下「容疑者」という。)の引渡しを受けたときは、容疑者が入管法24条各号の一に該当するかどうかを速やかに審査し(入管法45条1項)、審査の結果、容疑者が入管法24条各号のいずれにも該当しないと認定したときは、直ちにその者を放免しなければならず(入管法47条1項)、逆に、容疑者が入管法24条各号の一に該当すると認定したときは、速やかに理由を付して書面をもって、主任審査官及びその者にその旨を知らせな きは、直ちにその者を放免しなければならず(入管法47条1項)、逆に、容疑者が入管法24条各号の一に該当すると認定したときは、速やかに理由を付して書面をもって、主任審査官及びその者にその旨を知らせなければならない(入管法47条2項)。 (二) 上記通知を受けた容疑者は、入国審査官の認定に異議があるときは、その通知を受けた日から3日以内に、口頭をもって、特別審理官に対し口頭審理の請求をすることができ(入管法48条1項)、特別審理官は、 口頭審理の結果、入国審理官の認定が事実に相違すると判定したときは、直ちにその者を放免しなければならず(同条6項)、逆に、入国審理官の認定が誤りがないと判定したときは、速やかに主任審査官及び当該容疑者にその旨を知らせるとともに、当該容疑者に対し、入管法49条の規定により異議を申し出ることができる旨を知らせなければならない(入管法48条7項)。 (三) 上記通知を受けた容疑者は、特別審理官の判定に異議があるときは、その通知を受けた日から3日以内に、法務省令で定める手続により、不服の事由を記載した書面を主任審査官に提出して、法務大臣に対し異議を申し出ることができる(入管法49条1項)。 (四) 入管法49条1項の規定による法務大臣に対する異議の申出は、異議申出書1通、及び①審査手続に法令の違反があってその違反が判定に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として申し出るときは、審査、口頭審理及び証拠に現れている事実で明らかに判定に影響を及ぼすべき法令の違反があることを信ずるに足りるもの(入管法施行規則42条1号)、②法令の適用に誤りがあってその誤りが判定に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として申し出るときは、その誤り及び誤りが明らかに判定に影響を及ぼすと信ずるに足りるもの 入管法施行規則42条1号)、②法令の適用に誤りがあってその誤りが判定に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として申し出るときは、その誤り及び誤りが明らかに判定に影響を及ぼすと信ずるに足りるもの(同条2号)、③事実の誤認があってその誤認が判定に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として申し出るときは、審査、口頭審理及び証拠に現れている事実で明らかに判定に影響を及ぼすべき誤認があることを信ずるに足りるもの(同条3号)、④退去強制が著しく不当であることを理由として申し出るときは、審査、口頭審理及び証拠に現れている事実で退去強制が著しく不当であることを信ずるに足りるもの(同条4号)の一に該当する不服の理由を示す資料各一通を提出して行わなければならない(入管法施行規則42条)。 (五) 法務大臣は、入管法49条1項の規定による異議の申出を受理したときは、異議の申出が理由があるかどうかを裁決して、その結果を主任審査官に通知しなければならない(同条3項)。 (六) 法務大臣は、入管法49条3項の裁決に当たって、異議の申出が理由がないと認める場合でも、当該容疑者が、永住許可を受けているとき(入管法50条1項1号)、かつて日本国民として本邦に本籍を有したことがあるとき(同項2号)、その他法務大臣が特別に在留を許可すべき事情があると認めるとき(同項3号)のいずれかに該当するときは、その者の在留を特別に許可することができ(入管法50条1項)、入管法50条1項の許可は、入管法49条4項の適用については、異議の申出に理由がある旨の裁決とみなされる(入管法50条3項)。 (七) 主任審査官は、法務大臣から異議の申出が理由があると裁決した旨の通知を受けたときは、直ちに当該容疑者を放免しなければならず(入管法49条4項) とみなされる(入管法50条3項)。 (七) 主任審査官は、法務大臣から異議の申出が理由があると裁決した旨の通知を受けたときは、直ちに当該容疑者を放免しなければならず(入管法49条4項)、法務大臣から異議の申出に理由がないと裁決した旨の通知を受けたときは、速やかに当該容疑者に対し、その旨を知らせるとともに、入管法51条の規定による退去強制令書を発付しなければならない(入管法49条5項)。 2 以上のとおり、入管法49条1項の規定による法務大臣に対する異議の申出は、容疑者が入管法24条各号の一に該当する旨の入国審査官の認定について、特別審理官が入国審理官の認定に誤りがないと判定したことに対する不服申立てである。 そして、入管法49条1項の規定による異議の申出を受理したときは、法務大臣は、容疑者が入管法24条各号の一に該当する旨の入国審査官の認定に誤りがない旨の特別審理官の判定について、誤りがあるかどうかを審査し、誤りがないことが認められれば、入管法49条1項に基づく異議の申出が理由がない旨の裁決をすることになる。 そうすると、法務大臣は、入管法49条1項の規定による異議の申出に対して、容疑者が入管法24条各号の一に該当する旨の入国審査官の認定に誤りがない旨の特別審理官の判定について、明らかに判定に影響を及ぼすべき審査手続における法令の違反(入管法施行規則42条1号)、判定に影響を及ぼすことが明らかな法令の適用の誤り(同条2号)及び判定に影響を及ぼすことが明らかな事実誤認(同条3号)の誤りがあるかどうかを判定し、その結果、異議の申出に理由があるかどうかを判断するものであるから、退去強制することが著しく不当であるか否かは、異議の申出に理由があるかどうかの判断に影響を及ぼすものではないというべき かを判定し、その結果、異議の申出に理由があるかどうかを判断するものであるから、退去強制することが著しく不当であるか否かは、異議の申出に理由があるかどうかの判断に影響を及ぼすものではないというべきである。 もっとも、法務大臣は、入管法49条3項の裁決に当たって、異議の申出に理由がないと認める場合でも、特別に在留を許可すべき事情があると判断するときは、その者の在留を特別に許可することができ(入管法50条1項)、同許可は、入管法49条4項の適用については、異議の申出が理由がある旨の裁決とみなされ(入管法50条3項)、同許可が付与されるときは、異議の申出に理由がない旨の裁決がされることはない。そこで、このような在留特別許可を付与することができる法務大臣の権限にかんがみ、入管法施行規則42条4号は、容疑者が入管法24条各号の一に該当する旨の入国審査官の認定が誤りがない旨の特別審理官の判定に誤りがないが、それを考慮すれば、なおその容疑者を退去強制することが著しく不当であると認められる諸般の事情の存在及びその内容を指摘する機会を容疑者に与える趣旨で、「退去強制が著しく不当であること」を異議の申出の理由の一つに掲げたものと解することができる。 そして、前記入管法50条1項の規定及び「第1項の許可は、前条第4項の適用については、異議の申出が理由がある旨の裁決とみなす。」という同法50条3項の規定があり、かつ、在留特別許可については、その申請権を認める規定も、また、その不許可決定をする根拠規定もないという入管法の仕組みに照らすと、入管法49条1項に基づく異議の申出に理由がない旨の裁決は、在留特別許可を付与しないという判断も含むので、この在留特別許可を付与しないという判断が違法な場合は、当該裁決も違法になるという関係になる 、入管法49条1項に基づく異議の申出に理由がない旨の裁決は、在留特別許可を付与しないという判断も含むので、この在留特別許可を付与しないという判断が違法な場合は、当該裁決も違法になるという関係になるにすぎないと解すべきである。 3 以上によると、入管法50条1項に規定する在留特別許可を付与するかどうかを判断する際に考慮されるべき事項であるというべきであり、在留特別許可を付与しなかった判断の適否とは別に、退去強制が著しく不当であるにもかかわらずそうではないとの事実誤認があった場合には、入管法施行規則42条4号を根拠として、入管法49条1項に基づく異議の申出は理由がない旨の裁決が当然に違法となると解することはできないというべきである。 4 そうすると、争点1に関する原告らの主張は、その余の点について判断するまでもなく、理由がないというべきである。 5 そして、前記前提事実及び前記認定事実によると、原告P2は改正前入管法24条4号ロ、原告P3は改正前入管法24条1号、原告子らは改正前入管法24条7号の退去強制事由にそれぞれ該当することは明らかであるから、被告入管局長が、原告らが入管法24条各号の一に該当する旨の入国審査官の認定に誤りがない旨の特別審理官の判定に誤りがないと判断したことは適法というべきである。 三争点2(被告入管局長の判断における裁量権の範囲の逸脱又は濫用の有無)について原告らは、被告入管局長が原告らに対して在留特別許可を付与しなかったことが、裁量権の範囲を逸脱又は濫用したものであるから、本件各裁決は違法である旨主張する。 1 そこで、まず、在留特別許可の付与に関する被告入管局長の裁量権について検討することとする。 (一) そもそも、憲法22条1項は、日本国内における居住 は違法である旨主張する。 1 そこで、まず、在留特別許可の付与に関する被告入管局長の裁量権について検討することとする。 (一) そもそも、憲法22条1項は、日本国内における居住・移転の自由を保障するにとどまっており、憲法は、外国人の日本へ入国する権利や在留する権利等について何ら規定しておらず、日本への入国又は在留を許容すべきことを義務付けている条項は存在しない。このことは、国際慣習法上、国家は外国人を受け入れる義務を負うものではなく、特別な条約がない限り、外国人を受け入れるかどうか、受け入れる場合にいかなる条件を付するかについては、当該国家が自由に決定することができるとされていることと考えを同じくするものと解される。 したがって、憲法上、外国人は、日本に入国する自由が保障されていないことはもとより、在留する権利又は引き続き在留することを要求する権利を保障されているということはできないというべきである。このように、外国人の入国及び在留の許否は国家が自由に決定することができるのであるから、我が国に在留する外国人は、入管法に基づく外国人在留制度の枠内においてのみ憲法に規定される基本的人権の保障が与えられているものと解するのが相当である(昭和53年大法廷判決、最高裁判所昭和32年6月19日大法廷判決・刑集11巻6号1663頁参照)。 (二) 入管法2条の2、7条等は、憲法の上記の趣旨を前提として、外国人に対し原則として一定の期間を限り特定の資格により我が国への上陸、在留を許すものとしている。したがって、上陸を許された外国人は、その在留期間が経過した場合は当然我が国から退去しなければならないことになる。そして、入管法21条は、当該外国人が在留期間の更新を申請することができることとしているが、この 、上陸を許された外国人は、その在留期間が経過した場合は当然我が国から退去しなければならないことになる。そして、入管法21条は、当該外国人が在留期間の更新を申請することができることとしているが、この申請に対しては法務大臣が「在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるときに限り、これを許可することができる。」ものと定められている。これらによると、入管法においても、在留期間の更新が当該外国人の権利として保障されていないことは明らかであり、法務大臣は、更新事由の有無の判断につき広範な裁量権を有するというべきである(昭和53年大法廷判決参照)。 (三) 入管法50条1項3号は、入管法49条1項所定の異議の申出を受理したときにおける同条3項所定の裁決に当たって、異議の申出が理由がないと認める場合でも、法務大臣は在留を特別に許可することができるとし、入管法50条3項は、上記の許可をもって異議の申出が理由がある旨の裁決とみなす旨定めている。 しかし、①前記のように外国人には我が国における在留を要求する権利が当然にあるわけではないこと、②入管法50条1項柱書及び同項3号は、「特別に在留を許可すべき事情があると認めるとき」に在留を特別に許可することができると規定するだけであって、前記の在留期間の更新の場合以上に抽象的な定めとなっており、在留特別許可の判断の要件、基準等については何ら定められていないこと、③入管法には、そのほか、上記在留特別許可の許否の判断に当たって考慮しなければならない事項の定めなど上記の判断を覊束するような規定は何も存在しないこと、④在留特別許可の判断の対象となる者は、前述した在留期間更新の場合のように適法に在留している外国人とは異なり、既に入管法24条各号の規定する退去強制事由に該当し、本 うな規定は何も存在しないこと、④在留特別許可の判断の対象となる者は、前述した在留期間更新の場合のように適法に在留している外国人とは異なり、既に入管法24条各号の規定する退去強制事由に該当し、本来的には退去強制の対象となる外国人であること、⑤外国人の出入国管理は、国内の治安と善良な風俗の維持、保健・衛生の確保、外交関係の安定、労働市場の安定等、種々の国益の保持を目的として行われるものであって、このような国益の保持の判断については、広く情報を収集し、時宜に応じた専門的・政策的考慮を行うことが必要であり、時には高度な政治的判断を要することもあり、特に、既に退去強制されるべき地位にある者に対してされる在留特別許可の許否の判断に当たっては、このような考慮が必要であることを総合勘案すると、上記在留特別許可を付与するか否かの判断は、法務大臣の極めて広範な裁量にゆだねられていると解すべきである。 (四) したがって、これらの点からすれば、在留特別許可を付与するか否かについての法務大臣の判断が違法とされるのは、その判断が全く事実の基礎を欠き又は社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかであるなど、法務大臣が裁量権の範囲を逸脱又は濫用した場合に限られるというべきである。 原告らは、本件各裁決における裁量は、比例原則によって拘束されており、本件各裁決は、当該手段を用いることによって得られる利益が当該手段によって損なわれる利益を上回っているという狭義の比例性に違反するので、違法である旨主張するが、このような判断枠組みを採用することができないことは、以上の判示から明らかである。 (五) そして、入管法69条の2、入管法施行規則61条の2第9項は、入管法49条3項所定の裁決の処分権限を地方入国管理局長に委任することができ ないことは、以上の判示から明らかである。 (五) そして、入管法69条の2、入管法施行規則61条の2第9項は、入管法49条3項所定の裁決の処分権限を地方入国管理局長に委任することができることを規定しており、本件各裁決も上記規定に基づいて法務大臣から権限の委任を受けた被告入管局長により行われたものであるところ、法務大臣が入管法49条3項所定の裁決を行う場合について、上記(一)から(四)までにおいて説示したことは、当然、法務大臣から権限の委任を受けた地方入国管理局長が入管法49条3項所定の裁決を行う場合についても妥当するということができる。 この点につき、原告らは、被告入管局長は、その時々の国内の政治・経済・社会等の諸事情、外交政策、当該外国人の本国との外交関係等の諸般の事情を総合的に考慮する特別な能力もなければ、政治的配慮をする資格もなく、各種通達、先例、出入国管理基本計画、国際的な準則等の示すところに従い、退去強制が著しく不当であるか否かを判断すべきである旨主張する。 しかし、入管法及び入管法施行規則は、入管法49条3項所定の裁決の処分権限を法務大臣から被告入管局長に委任するに際し、委任する権限の内容について何ら制約を設けておらず(入管法69条の2、入管法施行規則61条の2第9項)、法務大臣から被告入管局長に権限が委任されたことをもって、従前法務大臣に与えられていた裁量権の範囲が法的に狭まると解することはできない。 また、実際上も、法務大臣による判断も、地方入国管理局長による判断も、行政庁が組織として行っているのであり、その間に大きな差異はないし、また、あってはならないものである。 そうすると、在留特別許可を付与するか否かについての被告入管局長の判 断も、行政庁が組織として行っているのであり、その間に大きな差異はないし、また、あってはならないものである。 そうすると、在留特別許可を付与するか否かについての被告入管局長の判断が違法とされるのは、法務大臣による判断の場合と同様に、その判断が全く事実の基礎を欠き又は社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかであるなど、被告入管局長が裁量権の範囲を逸脱又は濫用した場合に限られるというべきである。 したがって、原告らの上記主張は、採用することができない。 2 被告入管局長の判断における裁量権の範囲の逸脱又は濫用の有無について以上の判断の枠組みに従って、原告らに対して在留特別許可を付与しないとした被告入管局長の判断に裁量権の範囲の逸脱又は濫用があるといえるか否かについて検討する。 (一) 原告P2について(1) 前記前提事実及び前記認定事実によると、①原告P2は、当初から不法就労の目的を有していたにもかかわらず、入国目的を偽って本邦に入国したこと、②原告P2は、在留期限である昭和61年5月30日を超えて本邦に不法に残留しており、改正前入管法24条4号ロの退去強制事由に該当すること、③原告P2は、本件裁決1まで、約17年間もの長期間にわたり、入管法に違反して不法残留を続け、その間、不法就労を継続していたこと、④原告P2は、平成5年12月まで、外登法に違反して、外国人登録を行わなかったこと、⑤原告P2は、仮放免中にもかかわらず、転居したことを東京入管に届け出ていなかったため、原告らの所在が一時的に東京入管に分からなくなるということがあったこと、⑥原告P2は、平成13年ころ、軽ワゴン車を所有して、無免許運転を繰り返していたことが認められる。 ため、原告らの所在が一時的に東京入管に分からなくなるということがあったこと、⑥原告P2は、平成13年ころ、軽ワゴン車を所有して、無免許運転を繰り返していたことが認められる。 そうすると、他方において、①原告P2は、本邦において、建設作業員等として働いて、原告P3及び原告子らとの安定した家庭生活を維持してきたこと、②原告P2は、長期間平穏に本邦で生活を継続し、本邦において逮捕されたり、刑事処分を受けたりしたことはないこと、③λ市及びその近隣に居住する1062名から、原告らの在留を希望する旨の署名が提出されていることなどを考慮しても、原告P2の本邦における在留状況は極めて不良というほかなく、かつ、このような入国経緯及び不法就労・不法残留の期間が長期に及んでいることは、我が国の出入国管理行政の適正を著しく害するものといわざるを得ない。 (2) そして、前記認定事実によると、原告P2は、フィリピンで出生して成年に達し、大学を中退して働いていたのであるから、フィリピンにおいて就職することが困難であるとは認め難い。また、フィリピンには原告P2の兄弟姉妹が居住していて、これらの親族による生活の支援も期待することができるものと推認することができるから、原告P2がフィリピンに帰国した場合、原告P2の生活が著しく困難な状況に置かれるとまでは考え難く、他にそのように困難な状態に置かれると認めるに足りる証拠はない。 (3)アこれに対し、原告P2は、本件裁決1は憲法22条1項の居住の自由を侵害するものであって、違法である旨主張する。 しかしながら、前示のとおり、憲法上、外国人が本邦に在留を求める権利は保障されていないものと解すべきであり、我が国に在留する外国人は、入管法に基づく 法である旨主張する。 しかしながら、前示のとおり、憲法上、外国人が本邦に在留を求める権利は保障されていないものと解すべきであり、我が国に在留する外国人は、入管法に基づく外国人在留制度の枠内でのみ、憲法の基本的人権の保障が与えられているにすぎないというべきであって、在留の許否を決定する国家の裁量を拘束するまでの保障が与えられているものと解することはできない(昭和53年大法廷判決参照)。 また、日本が児童の権利条約を批准したことによって、原告P2のように、未成年の児童の親権者に対して、本邦における居住の自由が保障されることになったものと解することもできない。 以上のように、原告P2が主張する憲法上の居住の自由は、外国人在留制度の枠内でのみ保障されていると解されることからすると、本件裁決1が原告P2の居住の自由を侵害するものであるということはできない。 イまた、原告P2は、原告P2に在留特別許可を付与しなかった本件裁決1は、児童の権利条約3条1項に違反するものであって、違法である旨主張する。 しかしながら、前示のとおり、憲法上、外国人が本邦に在留を求める権利は保障されていないものと解すべきであり、外国人の本邦への在留の許否については、国際慣習法上、国家が裁量により決定し得るものとされている。また、児童の権利条約9条4項が、父母の一方又は双方と児童との分離が、「締約国がとった父母の一方若しくは双方又は児童の抑留、拘禁、追放、退去強制、死亡(…略…)等のいずれかの措置に基づく場合には、当該締約国は、要請に応じ、父母、児童又は適当な場合には家族の他の構成員に対し、家族のうち不在となっているものの所在に関する重要な情報を 退去強制、死亡(…略…)等のいずれかの措置に基づく場合には、当該締約国は、要請に応じ、父母、児童又は適当な場合には家族の他の構成員に対し、家族のうち不在となっているものの所在に関する重要な情報を提供する」と規定していることに照らせば、児童の権利条約自体も、外国人の出入国を管理する法令に基づく退去強制の結果として、児童が父母から分離されることをも予定していると解することができる。 そうすると、児童の権利条約における児童の「最善の利益」は、外国人在留制度を前提にした上で、その枠内において考慮されるべきものと解すべきである。そして、児童の権利条約3条1項が、原告P2のような入管法の定める退去強制事由に該当する者について、未成年の児童を子供に持つ親権者であることのみを理由として、本邦における在留を保障していると解することはできない。 したがって、原告P2に在留特別許可を付与しないことが、児童の権利条約3条1項に違反するという余地はないから、原告P2の前記主張は、児童の権利条約の効力等その余の点について検討するまでもなく、採用することができない。 ウ原告P2は、原告P2に在留特別許可を付与しなかった本件裁決1は、憲法14条1項の平等原則に違反するものであって、違法である旨主張する。 確かに、証拠(甲1から4まで)によれば、新聞記事や書籍には、本邦での在留期間が10年近くになり、学校に通う子供がいるイラン人、フィリピン人、ペルー人及びミャンマー人の家族が、東京入管に出頭し、その後在留特別許可を付与された事例がある旨記載されていることが認められる。しかしながら、これらの記事等のみをもって、原告らが主張するように、平成14年2月以降、①親の日本にお 、東京入管に出頭し、その後在留特別許可を付与された事例がある旨記載されていることが認められる。しかしながら、これらの記事等のみをもって、原告らが主張するように、平成14年2月以降、①親の日本における在留期間が10年以上であること、②裁決時に最年長の子供が中学校1年生以上であること、③入管法以外の逮捕歴等がないこと、④両親がそろっていることの4条件を満たす外国人家族には、在留特別許可が付与されていると認めることはできないし、現に、上記書籍に記載された事例の中にも、上記4条件を満たしているように見えるにもかかわらず、在留特別許可が付与されなかった事例も存在する。 加えて、前示のとおり、在留特別許可を付与するかどうかは、諸般の事情を総合的に考慮した上で、個別的に決定されるべきものであるから、単に在留特別許可を付与された家族の構成が類似していることのみをもって、原告P2に在留特別許可を付与しなかった本件裁決1が平等原則に違反するということはできない。 したがって、原告P2に在留特別許可を付与しなかった本件裁決1が、憲法14条1項に違反するものであるということはできない。 エ(ア) 原告P2は、原告P2に在留資格を認めないことによって保護されるべき国の利益は何も存在せず、原告P2が平穏に長期間滞在しているという事実は、在留特別許可を付与するか否かの判断に当たっては、在留特別許可の付与を求める者にとって有利な事情の第一に挙げることが、実務上少なくとも黙示的な基準として確立しているから、原告P2に在留特別許可を付与しなかった本件裁決1は、比例原則に違反する旨主張する。そして、原告P2は、上記黙示的な基準が確立していることの根拠として、①昭和56年5月15日の衆議院法務委員会に ら、原告P2に在留特別許可を付与しなかった本件裁決1は、比例原則に違反する旨主張する。そして、原告P2は、上記黙示的な基準が確立していることの根拠として、①昭和56年5月15日の衆議院法務委員会における法務省入管局長の答弁、②平成12年3月24日の第2次出入国管理計画、③同年1月28日の小渕総理大臣の答弁を挙げる。 (イ) しかしながら、原告P2の上記主張は、在留特別許可の許否の判断が、比例原則によってされるべきであることを前提としているものであり、この前提自体採用し難いところであるが、この点をさておくとしても、前記のとおり、原告P2の本邦における在留状況は極めて不良というほかなく、かつ、このような入国経緯及び不法就労・不法残留の期間が長期に及んでいることは、我が国の出入国管理行政の適正を著しく害するものといわざるを得ず、原告P2に在留特別許可を付与しないことによって保護すべき国益が存在しないなどということはできない。 また、外国人を単純労働者として受け入れたり、原告P2のような不法残留者に在留特別許可を付与したりすることについての国民の総意が形成されていると認めるに足りる証拠はない上、外国人労働者の受入れや一定の時点で違法労働者を合法化する政策であるアムネスティの実施といった事項は、出入国管理行政に関する政策的判断にゆだねられるべきものであって、これらのため、原告P2に在留特別許可を付与しないことによって保護すべき国益が存在しないとか、原告P2に在留特別許可を付与すべき理由となるということはできない。 (ウ) また、そもそも、在留資格を有して在留している者ではない外国人の在留の継続は違法状態の継続にほかならないのであるから、それが長期間平穏に継続されたから とはできない。 (ウ) また、そもそも、在留資格を有して在留している者ではない外国人の在留の継続は違法状態の継続にほかならないのであるから、それが長期間平穏に継続されたからといって直ちに法的保護を受け得る筋合いのものではない。 確かに、前記(ア)①から③までの答弁等は存在するが、①の法務省入管局長の答弁は、長期間我が国に在留している朝鮮半島出身者について、自主的に申告してきた場合には、自主申告の点についてはプラスに評価すると述べ、最終的に在留特別許可を付与するか否かは、個別の事案ごとに、居住歴、家族状況等諸般の事情を考慮して、人道的配慮を要する場合には、在留を認める場合もあると述べているものである(甲14及び乙34により認められる。)。また、②の第2次出入国管理計画は、不法滞在の長期化が問題であることを明確に示した上で、個別の事情を考慮して在留特別許可の制度を設けていることを述べ、日本人等との身分関係を有するなど、我が国社会とのつながりが十分に密接と認められる外国人について、在留特別許可を付与する場合があると述べているのであって、単に我が国に長期間滞在している外国人について言及したものではない(乙35により認められる。)。さらに、③の小渕総理大臣の答弁は、結局、最終的に在留特別許可を付与するか否かは、個別の事案ごとに、家族状況、素行、内外の諸情勢等を総合的に考慮して判断すると述べているものである(甲30により認められる。)。 そうすると、前記(ア)①から③までは、結局、個別の事案ごとに諸般の事情を考慮して、在留特別許可を付与する場合もあると述べているにすぎず、平穏に長期間滞在しているという事実を在留特別許可の付与を求める者にとって有利な事情の第一に挙 は、結局、個別の事案ごとに諸般の事情を考慮して、在留特別許可を付与する場合もあると述べているにすぎず、平穏に長期間滞在しているという事実を在留特別許可の付与を求める者にとって有利な事情の第一に挙げることが、実務上少なくとも黙示的な基準として確立していることの根拠となるものと認めることはできない。 以上によれば、原告P2の前記(ア)の主張は、採用することができない。 (4) 以上の検討を踏まえて、前示のとおり、在留特別許可を付与するか否かについて被告入管局長に与えられた裁量権が極めて広範なものであることを前提に、原告P2の入国の経緯、在留状況が極めて不良であることなどを併せ考えると、原告P2は、本件裁決1の当時、約17年間も日本で暮らしており、このまま家族と共に日本に在留したい心情は理解し得るものの、原告らの本邦在留を望む旨の署名が多数提出されていることなど原告P2に有利な事情すべてを考慮しても、原告P2に在留特別許可を付与しなかった本件裁決1について、被告入管局長の判断が全くの事実の基礎を欠き又は社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかであるなど、裁量権の範囲の逸脱又は濫用があるということはできない。 なお、後に判示するとおり、原告P1に在留特別許可を付与しなかった本件裁決3は違法というべきであるが、原告P1について、在留特別許可が付与されるべきであるとしても、そのことによって、前述した原告P2の本邦における在留状況が極めて不良である上、原告P2の入国経緯等が我が国の出入国管理行政の適正を著しく害するものであるという事情を打ち消すことができるわけではない。また、子供に対して在留特別許可が付与されたとしても、直ちに、その子供を養育する親権者に対して在留特別許可が付与さ 理行政の適正を著しく害するものであるという事情を打ち消すことができるわけではない。また、子供に対して在留特別許可が付与されたとしても、直ちに、その子供を養育する親権者に対して在留特別許可が付与されるべきであるということはできず、あくまで在留特別許可を付与するか否かは、諸般の事情を考慮した上、個別に判断されるべきものである。そうすると、原告P1に在留特別許可が付与されるべきであったとしても、原告P2に在留特別許可を付与しなかった本件裁決1について、被告入管局長の判断が全くの事実の基礎を欠き又は社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかであるなど、裁量権の範囲の逸脱又は濫用があるということはできない。 そのほか、原告P2に在留特別許可を付与しなかったことが、裁量権の範囲の逸脱又は濫用に当たると認めるに足りる証拠はない。 (5) したがって、本件裁決1は適法というべきである。 (二) 原告P3について(1) 前記前提事実及び前記認定事実によると、①原告P3は、昭和61年4月12日ころ、本邦において働いて収入を得る目的で、他人である「P7」名義の偽造旅券を使用して、本邦に不法に入国したものであり、改正前入管法24条1号の退去強制事由に該当すること、②原告P3は、本件裁決2まで、約17年間もの長期間にわたり、入管法に違反して不法残留を続け、原告P1の出生まで不法就労をし、その後、再度平成12年ころから不法就労を継続していたことが認められる。 そうすると、原告P3は、本邦において、長期間平穏に在留を継続し、原告子らを出産・養育してきたこと、λ市及びその近隣に居住する1062名から、原告らの在留を希望する旨の嘆願書が提出されていること等を考慮しても、原告P3の 本邦において、長期間平穏に在留を継続し、原告子らを出産・養育してきたこと、λ市及びその近隣に居住する1062名から、原告らの在留を希望する旨の嘆願書が提出されていること等を考慮しても、原告P3の本邦における在留状況は極めて不良というほかなく、かつ、このような入国経緯及び不法残留の期間が長期に及んでいることは、我が国の出入国管理行政の適正を著しく害するものといわざるを得ない。 (2) これに対し、原告P3は、本件裁決2が、憲法22条1項の居住の自由、児童の権利条約3条1項、憲法14条1項の平等原則及び比例原則に違反する旨主張する。 しかしながら、原告P2による居住の自由、児童の権利条約、平等原則及び比例原則違反の主張に対して判断したことは、原告P3についても同様に該当するから、原告P3の上記主張を採用することはできない。 (3) そして、前示のとおり、在留特別許可を付与するか否かについて被告入管局長に与えられた裁量権が極めて広範なものであることを前提に、原告P3の入国の経緯、在留状況が極めて不良であることなどを併せ考えると、原告P3は、本件裁決2の当時、約17年間も日本で暮らして4人の子供をもうけており、このまま家族と共に日本に在留したいという心情は理解し得るものの、原告らの本邦在留を望む旨の署名が提出されていることなど原告P3に有利な事情すべてを考慮しても、原告P3に在留特別許可を付与しなかった本件裁決2について、被告入管局長の判断が全くの事実の基礎を欠き又は社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかであるなど、裁量権の範囲の逸脱又は濫用があるということはできない。 なお、原告P1に在留特別許可が付与されるべきであったとしても、原告P3に在留特別許可を付与しなか が明らかであるなど、裁量権の範囲の逸脱又は濫用があるということはできない。 なお、原告P1に在留特別許可が付与されるべきであったとしても、原告P3に在留特別許可を付与しなかった本件裁決2について、被告入管局長の判断が全くの事実の基礎を欠き又は社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかであるなど、裁量権の範囲の逸脱又は濫用があるということはできないことは、原告P2の場合と同様である。 そのほか、原告P3に在留特別許可を付与しなかったことが、裁量権の範囲の逸脱又は濫用に当たると認めるに足りる証拠はない。 (4) したがって、本件裁決2は適法というべきである。 (三) 原告P1について(1) 前記前提事実及び前記認定事実によると、①原告P1は、昭和○年○月○日、本邦において、原告P2と原告P3との間の子として出生したこと、②原告P1は、改正前入管法22条の2第1項に定めた在留期限である昭和63年8月19日を超えて本邦に不法に残留していること、③原告P1は、λ市内で保育園、小学校及び中学校に通学し、本件裁決3の当時、中学校3年生になる直前であったこと、④原告P1は、その言葉も生活習慣も日本人の友人たちと何ら変わることがなく、原告P1も周囲の友人たちも、原告P1が外国人であることを全く意識することはなかったこと、⑤原告P1は、書道が得意であるなど、日本の文化にも深くなじんでいること、⑥原告P1は、小学校5年生のときに、原告P3が東京入管入国警備官に摘発されるまで、自らが不法残留者であることを知らなかったこと、⑦原告P1は、小学校、中学校を通じて、優れた学業成績を残しており、クラブ活動や様々な課外活動にも積極的に参加してきたこと、⑧原告P1は、出生から本件裁決 らが不法残留者であることを知らなかったこと、⑦原告P1は、小学校、中学校を通じて、優れた学業成績を残しており、クラブ活動や様々な課外活動にも積極的に参加してきたこと、⑧原告P1は、出生から本件裁決3までの約15年間、日本人の子供と全く変わりがない生活を送ってきており、日本に引き続き残留して学習を継続し、将来は福祉の仕事等に就きたいと強く希望していること、⑨原告P1は、フィリピンに行ったことがなく、タガログ語を理解することはできず、フィリピンの生活習慣等にも全くなじみがないことが認められる。 そうすると、原告P1は、不法残留者である原告P2及び原告P3の間に出生したという、原告P1にはいかんともし難い事情により、本邦において不法残留者として生活することになったものであり、不法残留について、原告P1に何らの責任もないということができる。また、原告P1は、本件裁決3の当時、約15年間も、日本社会において、日本人の子供と全く変わりのない生活を継続しており、日本の生活習慣や文化に十分なじんでいる一方、言語も生活習慣も全く異なるフィリピンで生活することには、非常な困難が生じるであろうと推測するに難くない。さらに、原告P1は、本件裁決3の当時、中学校3年生になる直前であり、自らの将来について自分で判断することができる年齢になっていたということができる。そして、甲第31号証及び原告P1の本人尋問の結果によると、本件裁決3の当時、原告P1は、日本での学習を継続し、将来日本で仕事をすることを強く希望するなど、自らの将来について自分で考えていたことが認められる。 (2) ところが、証拠(乙17の2、18の6、20の1及び2)並びに弁論の全趣旨を総合すると、東京入管入国審査官や東京入管特別審理官は、違反審査や口頭審理に いたことが認められる。 (2) ところが、証拠(乙17の2、18の6、20の1及び2)並びに弁論の全趣旨を総合すると、東京入管入国審査官や東京入管特別審理官は、違反審査や口頭審理において、原告P1から直接事情を聴取したり、原告P1の具体的な生活状況や学習状況などについて原告P2及び原告P3から詳細に事情を聴取したり、資料を収集するなどの調査をすることをしなかったものであり、被告入管局長が本件裁決3をする際にも、原告P1の具体的な生活状況や学習状況などについて、十分考慮することがなかったことが認められる。 しかし、既に判示したところに照らせば、原告P1は、約15年間も日本社会において、日本人の子供と全く変わりのない生活を継続しており、その生活状況や学習状況に照らすと、今後とも学習を継続し、日本社会に溶け込んで、日本社会に貢献することも十分に考えられるところである。そうすると、被告入管局長が、原告P1の生活状況や学習状況について、前記判示のように適正に認定していれば、被告入管局長は、原告P1に在留特別許可を付与した可能性が相当に高いと認めることができる。 以上によると、原告P1に在留特別許可を付与しなかった本件裁決3は、その判断が全く事実の基礎を欠くことが明らかである。 (3) また、仮に、被告入管局長が前記(1)及び(2)のような事実関係を把握しても、原告P1の年齢の低いことを過度に重視し、あるいは、不法残留につき原告P1を責めることができないことや、原告P1が今後とも日本社会に溶け込んで、日本社会に貢献し得ることを軽視して、在留特別許可を付与しないという判断に達するというのであれば、そのような判断は、社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかであるというべきであ 本社会に溶け込んで、日本社会に貢献し得ることを軽視して、在留特別許可を付与しないという判断に達するというのであれば、そのような判断は、社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかであるというべきである。 (4) もっとも、既に判示したように、原告P2及び原告P3に在留特別許可を付与しなかった本件裁決1及び2は適法というべきであるから、原告P2及び原告P3が本件退令処分1及び2に基づき、フィリピンに送還され、原告P1が日本に残る場合は、フィリピンで生活することになる両親と別れて暮らす結果となり、日本において両親の監護を受けられず、原告P1が経済的にも生活を維持することが困難になるとも考えられる。 しかしながら、在留特別許可を付与されたとしても、原告P1がフィリピンに自主的に帰国して、原告P2及び原告P3との生活を継続することを選択することも当然可能であるし、本件裁決3の時点において、原告P1は既に中学校3年生になる直前であったのであるから、その判断をすることも十分に可能であったと考えられる。逆に、原告P1において、日本において学習を継続することを希望すれば、フィリピンに帰った原告P2及び原告P3並びにその親族からの援助や、日本の児童福祉制度等による公的援助、さらには、地域住民や学校関係者らの協力により、日本での生活を継続することも、必ずしも不可能であるとはいえない。 また、日本において両親の監護を受けられないことによる原告P1に対する心理的、物理的影響も軽視し難いということができる。しかし、中学校高学年程度の児童や高校生が親元を離れて暮らすことは、日本人であっても必ずしも珍しいことではなく、この点を本人の判断を無視するほどに重視することは相当ではない。 し、中学校高学年程度の児童や高校生が親元を離れて暮らすことは、日本人であっても必ずしも珍しいことではなく、この点を本人の判断を無視するほどに重視することは相当ではない。 そして、本件で問題となっているのは、本人の選択によらずに強制的に国外に退去させるのが著しく妥当性を欠くのか否かということであることや、不法残留者の家族についても、あくまで在留特別許可の許否は、個別に判断されることが原則であることからすると、中学3年生になる間近の原告P1のみについて在留特別許可を付与するという判断は、不自然なものではなく、十分合理性を有するものというべきである。 (5) そうすると、前記のとおり、在留特別許可を付与するか否かについて法務大臣から権限の委任を受けた被告入管局長に与えられた裁量権が極めて広範なものであることを前提としても、原告P1に在留特別許可を付与しないとする被告入管局長の判断は、全く事実の基礎を欠くことが明らかであるか又は社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかであり、裁量権の範囲の逸脱又は濫用に当たるというべきである。 したがって、その余の点について判断するまでもなく、本件裁決3は違法であるというべきである。 (四) 原告P4、原告P5及び原告P6について(1) 前記前提事実及び前記認定事実によると、①原告P4は、平成○年○月○日、原告P5は平成○年○月○日、原告P6は平成○年○月○日に、本邦において、原告P2と原告P3との間の子として出生したこと、②原告P4、原告P5及び原告P6は、それぞれ、改正前入管法22条の2第1項に定めた在留期限である平成5年3月29日、平成9年4月22日及び平成12年2月19日を超えて本邦に不法に残留していること、③ 告P4、原告P5及び原告P6は、それぞれ、改正前入管法22条の2第1項に定めた在留期限である平成5年3月29日、平成9年4月22日及び平成12年2月19日を超えて本邦に不法に残留していること、③本件裁決4から6までの当時、原告P4は小学校4年生であり、原告P5及び原告P6は保育園に通っていたこと、④原告P4及び原告P5は、日本語を不自由なく使用することができるが、タガログ語や英語は全く理解することができず、原告P6は、日本語をようやく理解し始めたところであること、⑤原告P4、原告P5及び原告P6は、出生以来一度もフィリピンに行ったことがなく、フィリピンの生活習慣等にもなじみがないことが認められる。 (2) そうすると、原告P4、原告P5及び原告P6は、本邦において出生、成長し、タガログ語や英語を全く話すことができず、フィリピンで暮らした経験もないことにかんがみると、これら3人が、フィリピンに強制送還されて、周囲の生活環境や教育環境が変化することによって受けるであろう心理的、物理的影響が大きいことは容易に想像がつくところである。そして、前記のように、原告P4、原告P5及び原告P6も、原告P1と同様に自身が退去強制事由に該当することとなったことについて何らの責任もないことを考慮すると、これら3人の原告をフィリピンに強制送還することによって同人らが受けるであろう上記影響は、軽視し難いということができる。 このように考えると、原告P4、原告P5及び原告P6についても、原告P1と同様に、在留特別許可を付与すべきか否かを検討する必要性があるということができる。 (3) しかしながら、同時に、本件各裁決の当時、原告P4が約10歳、原告P5が約6歳、原告P6が約3歳半と幼いことからすると、これら 否かを検討する必要性があるということができる。 (3) しかしながら、同時に、本件各裁決の当時、原告P4が約10歳、原告P5が約6歳、原告P6が約3歳半と幼いことからすると、これら3人が、自分の意思で、今後日本で生活していくべきか否かを適正に判断することができるとは想定し難いところである。 また、原告P4、原告P5及び原告P6は、その年齢に照らし、環境の変化に対する順応性や可塑性を相当に有しているであろうことも容易に推認することができる。原告P4及び原告P5は、フィリピンに強制送還された場合に言葉の点で不便であろうが、両原告が約10歳又は約6歳であること、原告P2及び原告P3がタガログ語及び英語での日常会話に不自由せず、原告P4及び原告P5に対する配慮をし得ることにかんがみれば、原告P4及び原告P5も、時の経過とともにフィリピンにおける生活環境になじみ得るであろうと考えられる。 しかも、前記判示のとおり、原告P2及び原告P3に在留特別許可を付与しないとの被告入管局長の判断は違法であるということはできないのであるから、仮に、原告P4、原告P5及び原告P6に対する前記(2)記載の心理的、物理的影響を重視してこれら3人の原告に在留特別許可を付与しても、その場合には、3人は、原告P2及び原告P3と離れて暮らさなければならないということになる。 その場合、原告P4、原告P5及び原告P6の年齢が低く、まだ十分な判断能力等を有していないことにかんがみると、子供らの心情や福祉という観点から考察してみても、原告P4、原告P5及び原告P6がフィリピンに強制送還されることによって受ける心理的、物理的な悪影響よりも、原告P2及び原告P3と共に暮らすことができない場合の心理的、物理的悪影響の方が小さ ても、原告P4、原告P5及び原告P6がフィリピンに強制送還されることによって受ける心理的、物理的な悪影響よりも、原告P2及び原告P3と共に暮らすことができない場合の心理的、物理的悪影響の方が小さいと判断することはできない。 (4) このように検討すると、原告P4、原告P5及び原告P6をフィリピンに強制送還した場合、しばらくの間は心理的、物理的に相当な負担を負うとしても、このことを理由として、これら3人の原告をフィリピンに強制送還することが人道に反するとまではいい難いというべきである。 (5) これに対し、原告P4、原告P5及び原告P6は、本件裁決4から6までが、憲法22条1項の居住の自由、児童の権利条約3条1項、憲法14条1項の平等原則及び比例原則に違反する旨主張する。 しかしながら、原告P2による居住の自由及び平等原則違反の主張に対して判断したことは、原告P4、原告P5及び原告P6についても同様に該当する。また、原告P2による児童の権利条約及び比例原則違反の主張に対する前記判断に加え、前記(2)及び(3)において判示したことからすると、本件裁決4から6までが、児童の権利条約3条1項及び比例原則に違反するということはできないから、原告P4、原告P5及び原告P6の上記主張を採用することはできない。 (6) 以上によると、原告P4、原告P5及び原告P6に在留特別許可を付与しなかった本件裁決4から6までについて、その判断が全く事実の基礎を欠き又は社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかであるなど、被告入管局長が裁量権の範囲を逸脱又は濫用したものであるということはできない。 そのほか、原告P4、原告P5及び原告P6に在留特別許可を付与しなかったことが、裁 かであるなど、被告入管局長が裁量権の範囲を逸脱又は濫用したものであるということはできない。 そのほか、原告P4、原告P5及び原告P6に在留特別許可を付与しなかったことが、裁量権の範囲の逸脱又は濫用に当たると認めるに足りる証拠はない。 (7) したがって、本件裁決4から6までは適法というべきである。 四争点3について被告入管局長は、入管法49条1項による異議の申出を受理したときには、異議の申出が理由があるかどうかを裁決して、その結果を被告主任審査官に通知しなければならず(同条3項)、被告主任審査官は、被告入管局長から異議の申出が理由がないと裁決した旨の通知を受けたときには、速やかに当該容疑者に対し、その旨を知らせるとともに、入管法51条の規定する退去強制令書を発付しなければならない(入管法49条5項)。 したがって、被告主任審査官は、被告入管局長から前記のとおり適法な本件裁決の通知を受けた以上、これに従って退去強制令書を発付するほかない。 そうすると、前示のとおり、原告P1に対する本件裁決3は違法であるから、それに基づく本件退令処分3も違法というべきであり、また、その余の原告らに対する本件裁決1、2、4から6まではいずれも適法であるから、本件退令処分1、2、4から6までも適法というべきである。 五結論以上によれば、原告P1の請求はいずれも理由があるから、これを認容することとし、その余の原告らの請求はいずれも理由がないから、これらを棄却することとし、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条、64条を適用して、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第38部裁判長裁判官菅野博之 訟費用の負担について行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条、64条を適用して、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第38部裁判長裁判官菅野博之裁判官鈴木正紀裁判官馬場俊宏
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